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古畑ファイナル第二夜 弟→兄

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 | __________  |     古.畑ファイナル第二夜の弟→兄
 | |                | |     過去捏造とかしてるので注意だよ
 | | |> PLAY.       | |     ――――――v――――――――
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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彼は俺のヒーローだった。

――貴方にお父さんができるの。
――お兄さんもできて、これからは四人家族になるのよ。
母親に連れられて初めて顔を合わせた日、大人二人がどうやって俺達を打ち解けさせようかもぞもぞ
しているのを察したのか、彼は僕の手を引いて、近くの空き地に連れて行った。
こっちは幼児だったが、向こうはもう中高生だ。母親違いなどという複雑な事情を理解したうえでの行為
だったのだろう。
俺が不思議そうな顔をしていると、彼は俺が初めて見る白いボールを手にして、ごく軽く投げて寄越した。
反応できなかった俺はボールをこぼし、慌てて拾いに行く。
「キャッチボール、知ってる?」
俺が首を横に振ると、彼はここに投げてごらん、と右手を出した。俺は恐る恐るボールを投げ返す。
ボールはとんでもない所にひょろひょろと飛んでいったが、彼は腕を伸ばして上手にキャッチした。
「ナイスピッチ」
そう言うと、彼は優しく微笑んだ。
言葉の意味は解らなかったが、その瞬間から、俺は「キャッチボール」と「兄さん」が、大好きになった。

面会室に入ると、兄は腰を上げ、立会の看守に礼をした。看守が面会は三十分までですと告げる。
透明なアクリルの板に隔てられ、兄弟が向かい合う。
「こう尋ねるのもおかしいが、元気にしているか」
「動けないと身体がだるいよ……それより」
ああ、と兄は勢い込む俺を手で制した。
「代理人の人は対応に追われていてね、今日も来る予定だったんだが」
「そうじゃない、兄貴は」
俺の問いを理解するのに、兄は少し時間を要したようだった。一拍置いて口を開く。
「書類送検はされたんだが、不起訴になるかもしれない……
 古.畑さんが申し出てくれてね、普段は強く出ない人なのに」
「なら、良かった」
良かった――のかな、と兄は消え入りそうな声で呟く。良かったさと返し、アクリル板に規則的に穿たれた
穴を、何ともなしに指でなぞる。
一枚板を隔てただけで決して触れられない、このもどかしさは何だ?
会話が途切れたのを見て、看守がこっちに視線を寄越す。早々に切り上げられるのを防ぐために、兄は
とりとめもない事を話した。
マスコミの姿勢はどちらかといえば同情的であること。海の向こうでも騒ぎになっているらしいこと。あのデコ
の広い人は随分ショックを受けていたということ。
会話は核心――そんなものがあるのかも解らないが――に触れることもなく、面会の三十分間を上滑りして
いく。
この感覚は初めてではない。
それどころか俺はずっと、心の奥にある種の焦れる気持ちを抱えていたように思う。
兄と出会った日から、ずっと。

不気味なほど月が暗かったことを覚えている。空を仰いだ俺は大きく息を吸って、自転車を漕ぎ出した。
もう夜道には人気がない。ぽつぽつと灯る街灯を便りに川沿いの土手を走る。
自転車を軽く軋ませながら走っていると、前方から誰かが駆けてくるのが見えた。
「兄貴?」
ばたばたと走ってきた兄が二十メートルほど前で立ち止まり、息を整えた。
驚いて兄の許まで行くと、彼は息を切らせながら片手を上げた。自転車を降り、並んで歩く。
「迎えに来て貰う年でもないだろ」
ああ、と兄は言い淀んだ。言い辛いことがあるらしい。解り易い人だ。
暫くああとかうんとか唸りながら、やがて兄は口を開いた。
「喧嘩、したって連絡があってな」
「殴り合ってはいない」
「それは」
「見てた奴等がびっくりして知らせたんだろうけど、大袈裟なんだよ」
街灯の灯りが途切れ、足許が暗くなる。

俺達が兄弟になって十年ほど後。キャッチボールも知らなかった俺は高校球児になっていた。
兄は補欠ながら甲子園に進んだものの、野球を続けることを選ばず、卒業後に警察官になっていた。
俺は本格的に野球に入れ込み、毎日のトレーニングと自己管理で少しずつ確実に実力をつけていた。
今日もグラウンド整備の後に残って走り込みに加わっていると、顧問の教師が声をかけてきた。
――継続と努力はいいことだ。
――その上お前は結果を出している。
――兄さんとは違うな。

言われた途端、身体がすっと冷え、直後熱くなった。
教師の許までずかずか歩み出て、真正面から向き合う。手を出すことはしなかった。
余程俺は怒りに満ちた表情をしていたのだろう。周りにいた仲間が驚いて俺を止めた。教師はぎょっとした
顔をしていたが、何も言わず慌てて離れていった。
自分を取り戻すまでに、数秒掛かった。
腹が立ったのだ。自分でも信じ難いほどに。

「先生も、一体どこで兄貴の話を聞いてきたんだろうな」
俺が軽く言うと、兄は複雑な表情をした。
「お前は優秀なんだ、将来はプロにだってなれるかも知れない……今学校と諍うことは避けろ」
「だから諍ったわけじゃないって。 兄貴を悪く言われたんだ、黙ってられるかよ」
「俺のことなんかでそう憤るな」
「なんかって何だよ」
暗くて見えないが、兄が困った顔をしているのが解る。
「俺自身をどう言われようが構わない――けど、兄貴のことだから怒ったんだ」
ちかちかと瞬く街灯の下を通り過ぎる。兄は何も言わない。明滅する視界に、昂じる気持ちは勢いを増す。
兄は優しいので、例え直接悪く言われても強く言い返すことはない。それをいいことに好き勝手言う輩を、
俺はいつも苦々しく思っていた。
俺の兄貴を傷つける奴は、許さない。許せない。
この気持ちは、まるで――

「俺は、兄貴が」
「一.朗」
小さくも硬い声で遮られ、胸がびくりと震えた。
兄は眼を伏せたまま、悲しそうな顔で首を横に振った。
それを目にした俺は――酷く狼狽えた。
いつも真っ直ぐに、平静に保っていた筈の心が、動揺でぐらぐらと揺れる。
違う。
俺はそんな顔をさせたいんじゃない。

街灯の光が届かなくなり、再び辺りが暗くなる。
それから家に着くまで、俺達はひとことも言葉を交わさなかった。

「あの刑事――古.畑さんは、俺が兄貴を救ったって言ったんだ」
つまらない話を遮って唐突にそう言うと、兄は古.畑さんが、と呟いた。
兄弟を隔てる一枚の硬い板。高校生の俺は、このアクリル板を無理矢理破ろうとしていたのかもしれない。
そして俺はその頃となにも変わっていない。
教師の言葉に憤った。郡.山を手に掛けた。ひとつだけ、嘘をついた。全ての動機は同じだ。
俺はずっと、恋にも似た思いをもって、ただ兄を守りたがるガキだった。兄を救えるなら、それでいいと
思っていた。
しかし――俺のこの思いが、兄の笑顔を消してしまうのだとしたら、俺は。
俺のしてきたことは。
「兄貴」
重たい口を開く。出ない声を無理矢理絞り出す。怯えているのか。

「……俺は、兄貴が好きだ」
今度は、兄は遮らなかった。
胸がぐっと緊張する。無理矢理、顔を上げる。今の俺は相当情けない顔をしているんだろう。
俺は、兄ちゃんを好きでいていいのかな。
声にならなかった。

少し間を置いて、俺の目にきちんと向かうと、兄はいつものように優しく微笑み、少しだけ頷いた。

憑き物が落ちたように、俺の肩からすっと力が抜けるのが解った。
この表情を守れたなら、何も悔いはない。
会話が途切れたのを見計らったのか、立会の看守がではそろそろ、と呟いた。
兄は立ち上がり、深々と頭を下げる。
促されて立ち上がり、退室しようとすると、後ろから兄が声をかけてきた。
「俺は、お前を待ってる」
「――……」
「お前とまたキャッチボールするの、楽しみにしてるからな」
振り向かずに、小さく頷いた。

いつか、この透明な板を越えて向かい合えた時、兄貴にちゃんと伝えよう。
ありがとう、と。
そして、俺は兄貴の弟で良かった、と。

俺は心の裡で微笑んで、面会室を後にした。

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 | __________  |     お粗末様でした
 | |                | |     しかしあの兄弟愛は激しかったな
 | | □ STOP.       | |     ――――――v―――――――― 
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