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本日も舞踏中

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )絢/爛舞/踏祭(ゲーム版)の主×艦橋で良く倒れる人。
              ビデオ棚9の146-149の続きになります。
              終わってないけど取りあえず前編投入。

 『周囲に敵艦及び敵R/Bの反応無し。戦闘は終了しました』
 艦を統括しているAIの平板な音声が激戦を終えた事を告げる。
 「やれやれ…今日も一日ご苦労さま、と…」
 水中での高速戦闘による緊張から解き放たれたKはそう呟くと、己が乗るR/Bを制御
している球形ロボット=ボールに艦への帰還ルートを指示し、自分がもたれていたシート
に体重全てを預けて目を閉じた。
 地表の大半を水に覆われた火星において、高速かつ小回りの利く人型兵器=通称R/B
は戦闘の要だ。
 数々の艦が大量のR/Bを投入し数と機動力で圧倒するのに対し、Kが乗り込んでいる
『夜明/けの船』はR/Bが僅か4機。
 『夜明/けの船』自体がかなり強力な兵器を積んでいるとは言え、通常であれば苦戦せ
ざるを得ない戦闘において対等、あるいはそれ以上に渡り合えているのは、館長を始めと
した各人員の実力もさる事ながら、艦内において数少ないR/B乗りであるKが飛び抜け
た活躍をしているからでもあった。
 彼一人で叩き出した撃墜数は既に300機以上。
 高速戦闘を行う為に卓越した空間認識感覚を必要とされるR/B乗りの中でもこの戦歴
は異常な数値を示しているのだが、その本人はと言うと。
 「……このまま寝ちゃ駄目かなぁ」
 かなり緩んでいた。
 「あ、そうだ。もしもーし、飛行/長、ひこーちょー」
 『何だ』
 操縦系統をボールに任せたままKがコクピット内の通信機で艦へと呼び掛けると、機械
を通した男の声がすぐに届く。

 『昔からの友』であり、戦友である男だ。
 Kはだらしなくシートに身体を預けたまま、その男=Yに向けて話し出した。
 「今回も無事に戦闘終了。と言う事で、一緒に夕飯を食べるのはどうよ」
 『俺は仕事が残っている』
 「堅い事言うなよ、飛行/長殿。少しは休憩しないと、またそこで倒れるぞー?」
 『大きなお世話だ』
 「ったく、相変わらずだなぁ」
 食事の誘いをあっさりと断られたKは気を落とすでも無く呟いて、次の一手を考えよう
とした。
 その時である。
 今迄艦に帰還する為の制動を行っていたボールが不意に馴染みの有る電子音を小さく鳴
らし、コクピット前面に映し出されていたレーダー画面の端に新しいデータを映し出した
のだ。
 何のデータを。とKが身を乗り出してそれを凝視する。
 「……っ!!」
 途端、彼は盛大に吹き出した。
 『どうした』
 「あ、いや……何でも無い」
 『かなり怪しいぞ、その間は。一体何が有った』
 「人の追及は躱す癖に、俺に対しては厳しいよな、Y…」
 幸い、こちらのモニター状況はデータを送信しない限りは艦側には反映されない。
 Kは突然とんでも無いデータを表示したボールの頂点に当たる部分を右手でぺちぺちと
叩き、Yに聞こえぬ様に嘆息する。
 それは懐かしいとも言える物だった。
 以前、頑張る自分にご褒美を。例えばプライスレスな思い出を頂戴。等と言うかなり馬
鹿げた提案の結果、食堂でYに口付けた。
 その時に撮影されていたらしい画像データが映し出されていたのである。
 おそらく、食べ終えた後の食器を回収しに来ていたボールが犯人だろうが、まさかそれ
が回り回って自分のR/Bにまで到達しているとは予想もしなかった。
 まぁ、結構長い時間口付けを交わしていたのだな。とKは何処か呑気に思いながらも、
さてこの窮地をどう脱しようかとも考える。
 しかし、この場合、抜け出すのは難しそうではあった。

 「大した事じゃあないから。本当に」
 『K、お前が俺に隠し事をするとはな…』
 「…何だ、その古女房みたいな発言は」
 『それもある意味間違いじゃあないな。だから、素直に言え』
 音声のみの会話だが、相手が微かに笑っている様な、そんな声色である事は分かる。
 きっとデータを実際に見れば怒るに違いないのだが、Kはいつもは気難しい男が自分の
発言を認めたのに言い様の無い、一番近い物を上げるとすれば喜び。を感じていた。
 Yが考えている全てをKは知らないし、知ろうとも思わない。
 自分はYに踊らされているのかもしれない。そう考えた事も有るが、それがどうしたと
すぐに己で考え直し、Yに踊らされていていようが何を求められようが、Yがこの世界に
自分を呼んだ以上、答えるのが友と言うモノだろう。そう結論付けた。
 だからこそ、裏が有る無しに関わらずYに言われるのは、正直に嬉しいと思う。
 Kは自分の口元が自然と緩むのを感じながら、再び口を開いた。
 「仕方無いなぁ……じゃあ、帰還したらデッキに来てくれ。素直に話すとするよ」
 『了解した。では、一度通信を切るぞ』
 「こちらも了解」
 ぷつりと微かな通信途絶の音と共に、コクピット内に静寂が訪れる。
 「さてと……殴られでもしたら、お前のせいだからな?」
 『キュ…ピビビ?』
 やれやれと二度シートに身体を預けたKは、自分がした事の重大さを全く気付いていな
いらしいボールにそう言うと、返って来た電子音に苦笑してから目を閉じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ヒトマズココマデ。
              次はもうちょっと早く続きカクヨー!!


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