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鎧×トカゲ

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  >>281姐さんに刺激されて書き掛け一気に仕上げちゃったよ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  鎧×トカゲだってさ
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ マダミンナゲンキナコロダッテヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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印フェル視あの神々などと呼ばれてはいるが、裁きの石版が沈黙している
今は暇でしかないのだった。

 彩りも何も無い神々の谷にて。冥府/十神は思い思いの場所に陣取り、
思い思いの事をして悪戯に時を消費していた。

 畏怖リートは昼寝、ティ太ーンはしきりにヘアスタイルの具合を気に
している。ゴーゴンは枝毛でも探しているような仕草ではあったが、
実際は頭に飼い慣らす蛇どもの世話をしているらしい。それを横目にスフィン楠は
読書、トー度は壁への落書きに熱中し、細黒プスは愛用の銃の手入れに
余念がない。駄ゴンは何やら瞑想に耽り、そんなことは気にも留めていない
歪バーンは現在は二人に分裂しているクイーンバンパイアと他愛もないおしゃべりに興じていた。

「あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
そんな思いがけずまったりした一時をぶち壊したのは、『印フェルしあの荒ぶる英雄』
奴隷区の絶叫だった。
「ンだよこの退屈さ加減はよォ! 暇すぎて身体が鈍るどころか石になっちまわァ!!
もう我慢できねェ人間界で暴れ倒してやる!」
「奴隷区、闇の戒律を忘れたのですか」
本日何度目かの奴隷区の繰言にも、スフィン楠はその度にわざわざ本を閉じて付き合う。
しかしその一本調子な諌めが血の気の多い奴隷区に通じるはずもなく、
その度に他の神であるいずれかが本格的に宥めにかかる、というのがここ最近の『奴隷区が騒ぎ出した時の対処法』だった。
 一度目は奴隷区の横顔にトー度がヘドロ色のシャボン玉を吹き付けて怒りの矛先を逸らした。
 二度目はゴーゴンがしなだれかかって奴隷区を宥めた。
 三度目はマイペースなティ太ーンが徐に五目並べ勝負を仕掛けて誤魔化した。
 四度目は奴隷区と同じく直情的な畏怖リートがマルデヨウナ世界に
奴隷区を誘い出し、やがて日が暮れた頃妙に爽やかな顔つきで帰って来た。

さて、次は誰がこの暴れ者を諌めるか。

 互いに視線を交わし、牽制やら何やらを始める。しかし奴隷区はそれすら
待てないらしく、愛用の剣を持ち出し勝手に人間界への門を開いている。

「奴隷区! お待ちなさい、人間界に神罰を下せるのは裁きの石版――」
「ンマなんざどうでもいいんだよさっきからおんなじ事ばっかり言いやがって、
問題はこの俺様が暇で退屈で死にそうだって事なんだよ!!」
三賢/神の一柱かつ最も生真面目なスフィン楠が恫喝されてしまうのなら、
もう口で勝てるものなどいなかった。むしろこの闘争本能のかたまりに口喧嘩を
挑もうなどとは誰も思わない。

 ――いや。

「――待て、奴隷区」
重厚な響きを持った声が、ぼそりと奴隷区を引き止めた。
「……ンだよ、スレイプニル」
その場の全員の眼が、一段上がった場所に鎮座する二/極神の一柱・スレイプニルに注がれた。
 真っ黒な鎧に身を包んだスレイプニルは、ゆっくりと歩き出す。段を降り、
知らず道を開ける他の神々には見向きもせずに奴隷区の前に立ちはだかった。
「…………そんなに、暇か」
「……お、おう、暇だ。暇で暇で死にそうだ」
同じ二/極神の片割れの登場に多少たじろいだかに見えた奴隷区だったが、
すぐにいつも通りの粗野な口調で言い捨てた。
 スレイプニルはいつも通りの聞いているのかいないのか微妙な佇まいでそれを
聞いていたが、やがてゆっくりと頷いた。

「分かった。――暇を潰せば、いいわけだな?」
「ああ」
「そうか…………久方ぶりに、遊んでやろう。奴隷区」
「――何?」
「スレイプニル――」
「安心しろ、手合わせするだけだ。マルデヨウナ世界にも行かん。構わんな?」
断続的に被せるようなスレイプニルの言葉に、さしものスフィン楠も沈黙するしかなかった。

「え? えぇ? いいんですか、歪バーン様ぁ」
「歪バーン様ぁ~」
ナイとメアが困ったように見上げてくるのを和んだような笑顔で見ていた
ワイバーンだったが、問い掛けには眉を少し上げるだけだ。
「いいんじゃない? 正直ね、僕もちょっと楽しみなんだよ。印フェルしあの
矛と盾……面白いカードじゃないかい?」

 神々の谷の外れに、スレイプニルと奴隷区は差し向かいで立っている。
 スレイプニルの手には槍、奴隷区の手には剣が握られている。どちらも愛用
のそれで、決して手合わせ用の贋物などではない。
「んもお、二人ともヒマ人だなあ。ボクにはさっぱりわかんないよお」
「そう言うなって。奴隷区がこれで少しは大人しくなるなら俺は賛成するね」
基本的に怠惰な神々は、魔法で岩壁に映し出したその風景を眺めているだけだ。
膨れっ面のトー度をティ太ーンが宥める側から、奴隷区が踏み込んだ。

「――――らああああァアっ」
奴隷区は盾を持たない。両手で握られた剣の一撃は、スレイプニルの篭手で
防がれ弾かれた。
 上げられた左脇の隙を突いて奴隷区が掟破りにも蹴りを繰り出す。重い蹴りの
ために軋む鎧の音にも表情を変えることなく、スレイプニルは正確に奴隷区の胸を突いた。
ガキッと金属の擦れ合う不快な音が響き渡り、奴隷区が軽く仰け反る。
竜神の鎧によりダメージはまるで無く、後ずさった足でしっかり身体を
支えているので倒れる事はない。再度奴隷区の斬撃がスレイプニルを襲う。

 ガチィッ

 斬る、と言うよりは横殴りの一撃がスレイプニルの顔面に炸裂した。剣の腹
によるものなので斬られはしていないが、衝撃は相当のものだったろう。
スレイプニルは低く呻いてたたらを踏み、素人目には大した事のないような
小さな小さな仕草で頭を軽く振った。

 万事が本能優先で行われる奴隷区の戦法はまるで型と言う物がない。
反対にそこそこに騎士としての礼節が整ったスレイプニルはその予測のつかない攻撃が見えない。

 ――と、観戦していた側にはそう見えた。
 
 スレイプニルの隙のない構えが崩されたのを見て好機と取ったか、声にならない
気合を一閃させ奴隷区が突っ込んでくる。スレイプニルは奴隷区を見ていない。

 が。

剣を真正面に構え突き進んでいった奴隷区の視界から、スレイプニルが消えた。
「――――――な!?」
疑問を発する余地も無く、奴隷区の身体は地面に倒れ臥していた。
 その背はスレイプニルの槍が容赦なく押さえ込んでいる。奴隷区が竜神の鎧
を着ていなければ怪我は免れないような強さで持って押さえているはずなのだが、
当のスレイプニルはその脇で涼しい顔で槍を持っているだけのように見えた。

「どーいう事よ」
ゴー権が不満たらたら、と言った表情で呟いた。
「―――――避けたな」
それに答える形で最黒プスが呟いた。
駄権はまるで表情を変えることなく映像を眺めている。まるで最初からこうなる
事が分かっているかのようだった。

 実際、スレイプニルはダメージなど受けていなかったのである。
 あの型破りな剣による殴打を予測していたかどうかまでは分からないが、とにかくわざと態勢を崩し、奴隷区を誘い出したのだ。

 日頃骨のある相手に当たらないと愚痴を零すだけあって、奴隷区の戦闘能力
は高い。だが、それ故に油断が出た。鉄壁であるはずの鎧と、自身の力を逆手に
取られて奴隷区は地に倒れ臥したのだ。

「ケッ、相変わらずお行儀のいい戦いだこって」
「……暇は潰れたか」
「まあな」
顔の半分を地面につけたまま、奴隷区は言い捨てた。だが、その声音に
先ほどの刺々しさは無い。

 負けはしたが、楽しかったのだ。

 奴隷区とスレイプニルは、矛と盾との称に違わず正反対で。
 正反対な相手と手合わせするというのは、どちらにも楽しめる遊びのような
ものだったが、如何せん二/極神という立場ゆえ積極的にやりあうわけにも
行かず、それが奴隷区のイライラの根源でもあった。
 そして、久し振りの手合わせは奴隷区の意識の奥にあったもやもやを霧散させていた。

「――で、そろそろオレ帰りてェんだけど」
「……ほう」
奴隷区の遠回しな『槍をどけろ』という言葉にも、スレイプニルは生返事を
返すのみだった。
「だから、早くどかせよ」
「随分とムシのいい話だな――オレはまるで暇を潰せていない」
あっさりと直球に切り替えた奴隷区に対し、スレイプニルはそう言い放った。何を! とすぐさまいきり立つ奴隷区を無視し、スレイプニルはその横に片膝を突いた。

 そして盾を放り捨て、空いた手で奴隷区の頭を掴む。槍も手放されたが、奴隷区は動けない。
「な、スレイプ――――ヒッ」
奴隷区の言葉は途中で中断された。

 スレイプニルの口が、奴隷区のうなじに寄せられたからだ。
 ちゅ、と微かな水音を立てて、スレイプニルの舌が下から上へと奴隷区の
鱗を這った。

 唯一鎧に守られていない弱点を攻められ奴隷区はもがいた。
「ア――、うぁ……やめ、ろ! ンなとこ……舐めんじゃねェよ――――!!」
奴隷区の声にも耳を傾けることなく、スレイプニルは高級な氷菓でも味わうような
ねちっこい舌使いで奴隷区を攻め立てる。ひとしきり楽しんだ後、やがて
ぢゅっと一吸いしてからようやく顔を上げた。

「――――今度は、俺が“暇潰し”させて貰う」
「何だと!? わっ……やめろ、やめろよォ―――――っふ」

ついに懇願の混じり始めた声と共に、奴隷区が自由な首から下をくねらせる。
頭が抑えられているせいでうまく立ち上がれず、更にスレイプニルの巧みな舌技に
よって力も入らないようだった。

 スレイプニルの舌は休まない。全体を使ってうなじをべっとりと舐め上げ、
舌先でもって擽るように鱗の端を突く。びくっびくっと跳ね上がる奴隷区の
身体を楽しむように、右手は奴隷区の背中から腰にかけてをゆったりと撫で回す。
肌にくちづけ、顔全体を動かし唇の柔い肉で焦らすように愛撫すると、奴隷区は
もどかしげな嬌声を上げた。鱗の縁を伝うように舌先が這い回り、奴隷区を悶えさせた。

「んぁ――――あ、クソ、そこ、嫌だ…………はぁっ――んう……」

奴隷区の声が、神々の谷に延々と響いていく。

「ティ太ーンー、ちょっと何も見えないんだけどお」
「いーから。お前は菓子でも食ってろ」
ティ太ーンがトー度の眼を片手で塞ぎ、空いた手でせっせとその口に
菓子を突っ込んでいる。
 ゴー権はキリキリと歯軋りしながら髪の蛇を引っ掴み、哀れな蛇が悲鳴を上げる。
 スフィン楠は読書に戻り、畏怖リートは欠伸を一つして苛立たしげに炎を一つ吐いた。
 最黒プスはほんの数瞬臨界点を突破したような雄叫びを上げたが、
やがて自主的に我を取り戻した。
 それから徐に親指で顎を撫で、愛銃をゆっくりと二/極神が乳繰り合って
いる方角へと向けた。

「あっはっは、ダメだよ最黒プス。神々同士でやり合っちゃあンマ、
復活しないかもしれないだろ?」

歪バーンがにこやかに最黒プスを諌めた。その笑顔に底冷えするものを感じてか、
ナイとメアがひーん、と悲鳴を上げてひしと抱き合う。
「ああ、そんなにびっくりしなくてもいいからね。スレイプニルってあんな風だけど、
たまーにネジが飛ぶんだよねえ――――――ったく、ふざけてんじゃねェよあのバカ二極/神が」
ついに歪バーンが張り付いたような笑顔を取り払った後ろで、駄権は無言で彼らを見つめていた。

「…………おのれ、ブレイ/ジェル」
まるで言いがかりはあるが、とにかく恨みのたっぷり篭った呟きが、神々の谷に消えていった。

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 | | □ STOP.       | |
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捏造だったり戦闘下手だったりして申し訳ナサス。オチは>>281神に影響をうっすら受けました。


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