Top/12-265

TOA ガイ→ルーク

105-110の続きです。T.O.Aガ.イ→ル.ーク
ネタバレあり(ガ.イの過去)なので気を付けてください。
未クリアなのでひょっとしたら矛盾があるかもしれません…。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )

「くだものごはん」のレシピは意外と簡単に手に入った。
城下の食材屋の主人がごく最近、旅のついでに聞いたものだという。
だが、どうせそれは商売上手な主人が作ったでたらめのレシピだろう。
マルクトにこんな果物は自生していないし、なによりあの島は戦争で滅びてしまった。
でも、それでも別に構わないのだ。
嘘だろうと、本当だろうとル.ークにはわからないのだから。

ガ.イは材料を抱え、屋敷の調理場へと向かった。
昼食の後かたづけが済んだ今は、料理人達も休憩に入っているだろう。
その時間帯であれば、料理長は調理場を自由に使うことを許可していた。
ただし、後片づけを神経質なまでにきちんとしないと
料理長からの厳しいお叱りが待っている。
それに、そもそも使用人達の食事はまかないが出るため、
わざわざ料理をする者はあまりいない。
料理人以外にこの調理場を使うのは
おそらく、ル.ークのわがままに付き合うガ.イぐらいのものだろう。
料理長に怒られない程度には、調理場の扱いに慣れていた。
まぁ料理の腕はひどいものだが。

「お買い物の帰り?」
調理場へと向かう廊下にさしかかったとき後ろからファ.ブレ公爵夫人に声をかけられた。
慌てて、ガ.イはお辞儀をしようとすると夫人は手をかざし、それを制した。
「いいのよ、気にしなくて。またル.ークのわがままかしら?」
「あ、いえ。別にそういうわけでは」
「ふふ、わかるわよ、それぐらい。
いつもありがとう、ガ.イがいるとあの子も退屈しなくて済むわ」
「ありがたいお言葉です」
「でもね、あの子が変なことを言ったら叱ってくれていいのよ。
あの子、ガ.イの言うことしか聞かないから」
夫人は、ガ.イと話すとき、主人ではなく一人の母親になる。
ガ.イのことを使用人ではなく、ル.ークの親友として接してくれるのだ。
いつもの毅然とした態度ではなく、とても幸せそうに彼女は笑う。
「はい、肝に銘じておきます」
「ふふ。あ、いけませんわ。あなた、劇に遅れますわよ」
夫人は、思い出したかのように、後ろからゆっくりやってくるファ.ブレ公爵に声をかける。
「先に行ってなさい」
ファ.ブレ公爵は憮然とした態度で夫人に言い、
夫人は置いていきますわよ、と馬車の待つ玄関へと向かっていった。

ファ.ブレ公爵はガ.イのもとへと不機嫌をあらわに近づいてきた。
公爵が一歩を踏み出すごとに重くなる空気に息ができなくなる。
ガ.イはファ.ブレ公爵の冷たい視線に射抜かれ、
操られたかのように片膝を付き、頭を垂れ、臣下の礼をとる。
「人に取り入るのが得意なようだな」
頭上から降るファ.ブレ公爵の言葉に、ガ.イは無言で応えた。
「……何だ、私には尻尾を振らないのか」
誰がそんなこと、という言葉をなんとか飲み下す。
膝を付くのはお前の目を見ないためだ、お前に忠誠を誓っているからではない。
ガ.イは自分に言い聞かせる。
お前の目を見れば、俺は自分を押さえられなくなる。
「まぁいい。ガ.イ、お前にル.ークの世話を任せたのは間違いだと思っている。
まさか、あのような出来損ないになるとはな。
あれでもファ.ブレ家の次期当主なのだ、もっと威厳と誇りを持ってもらわねば困る」
「申し訳ありません」
「まさか、お前はル.ークと対等だと思ってはいないだろうな」
「いえ、そんなこと」
「……使用人風情が、思い上がりおって」
笑みを浮かべながらそう吐き捨て、ファ.ブレ公爵は立ち去った。
ガ.イはその姿のまましばらく立ち上がることもできず、怒りを堪えるのに精一杯で、
握りしめた手のひらに爪が食い込んでも、痛みに気付かなかった。

重い足取りで調理場に着き、料理を始める。
鬱々とした感情に押しつぶされそうになりながら、それを振り切るように支度にかかる。
レシピによると米を甘いミルクで炊き、
いちごをベースとして潰した果物のソースをかけるといった料理らしい。
とても自分の舌には合いそうにないな、とガ.イは苦笑した。
米も果物も素材としてはいいのだから、混ぜてもおいしいはずだ、
というル.ークの言葉を思い出す。
どんなに元が良くても、駄目になることは多いのだ、それを彼は知らない。

ぐつぐつと煮立つ鍋を眺める、手を動かす作業が終わってしまうと
どうしても嫌なことばかり考えてしまう。
「使用人風情」という言葉が頭に浮かんで離れない。
あんなことがなければ、自分だって、ル.ークと同じく貴族の身分であった。
少なくとも人に頭を下げて生きていくような人間ではなかったのだ。
ファ.ブレ公爵は全てを笑いながら奪った。
家族を、親類を、未来を。
五歳の時だった。家族が殺される瞬間のことは覚えていない。
だが、あのファ.ブレ公爵の楽しそうな顔は忘れることはなかった。

自分がこの屋敷にいるのは、ひとえに復讐するためなのだ。
ファ.ブレ公爵を殺すためではない。殺すだけでは飽き足りない。
ファ.ブレ公爵の大切なもの全てを笑いながら壊すためでしかないのだ。
大切な一人息子を殺せば、遺される者の痛みを思い知らせることが出来るだろう。
ファ.ブレ夫人には感謝している。
ル.ークの友達として自分をあてがってくれたのだから。
そこまでお膳立てしてくれれば、あとは気に入られるだけでいい。
言うことはなんでも聞いた。
たとえ仇の子であろうと、復讐のためならなんでも出来た。

その甲斐あってか、ル.ークは一番ガ.イに懐いた。
あとはファ.ブレ公爵の目の前で、どうやって殺すのが一番効果的なのかを考え、
そして実行に移るのも時間の問題だというときに、あの誘拐事件だ。
母である夫人はおろおろと心配し、ついには倒れてしまった。
ファ.ブレ公爵はというと、跡継ぎがいなくなり、ファ.ブレ家の行く末を案じていた。
そのファ.ブレ公爵の態度を見て、
もしかして、自分の復讐は何の意味もなさないのではないかという不安がよぎる。
そして、おそらくそれは正解であっただろう。
記憶喪失のル.ークが発見されてからも、本人には無関心であったのだから。
「ル.ークが生きてさえいれば、家はどうにでもなる」
ファ.ブレ公爵は安堵した様子でそう言っていた。
それなら、ル.ークが成人の儀を行い、ファ.ブレ家当主となった時に殺そうと思い直す。
公爵は「息子」じゃなく「ファ.ブレ家当主」が死んだのなら悲しむに違いない。

夫人の計らいでガ.イはル.ーク専用の護衛兼使用人となった。
一番懐いていたガ.イが側にいれば、いずれ何か思い出すのではという期待があったのだろう。
歩き方や言葉すら忘れたル.ークの世話をするという母親代わりのような役目だった。
その頃からだ、屋敷でガ.イに対する風当たりが強くなったのは。
一人息子の専属使用人という破格の待遇と名誉、
それは人の妬みを刺激するのに十分だったらしい。
十四歳の子どもでしかなかった当時は
喧嘩になっても体格差のせいで、一方的に殴られるだけだった。
顔や体にあざを残すことも度々あった。
何故かル.ークはそれを見てはやたらと触りたがるのだ。
それも嬉しそうに。
こいつは、そんなに人の傷が楽しいのだろうかと不快に思っていた。

ル.ークが一番最初に覚えた言葉は「ガ.イ」だった。
ル.ークはガ.イの手を取り歩くことを覚えた。
ガ.イは日に日に、ル.ークの中での自分の地位が上がっていくことに喜んだ。
ル.ークは実の両親の前に立つと、怯えてガ.イに頼る始末だった。
ガ.イは公爵や夫人よりも自分がル.ークの一番身近な人間なのだと思うと
おかしくて仕方がなかった。

ようやく三歳児程度の言葉が話せるようになったころ、
いつものようにル.ークがガ.イの頬のあざをぺたぺたと触ってきた。
ル.ークが笑っている、それがどうしても気に入らない。
だがあしらうのも面倒なのでガ.イは気にするのを止め、
ル.ークの好きなようにさせておいた。
「いたい?」
「へ?」
「いたいいたい」
ル.ークがガ.イのあざをゴシゴシと遠慮なく、さする。
所作は幼いが体は十歳だ、放っておけるほど生やさしいものではない。
手加減をしらないル.ークの腕をガ.イは乱暴に振り払った。
「ああ、痛いから止めろ」
ガ.イはル.ークにきつく言ったあとで、ふと思い出す。
自分が、ル.ークがケガをしたときに傷を撫でてやっていたことを。
「いたくない、いたくない」
ル.ークが自分の口癖を言っているのに気付いたとき、ふいに涙がこぼれた。
ル.ークはそんなガ.イを見て一瞬きょとんとした顔をしたが、
すぐさま笑顔になってガ.イの頭をなでる。
「笑うと痛くなくなるから、笑え」いつも自分はル.ークにそう言っていた。
笑おうと思った、笑えるのだと思っていた。気持ちは殺せるのだと。
そうやって、今までこの屋敷で過ごしてきた。
何かが切れたように涙が止まらなくなり、ガ.イはル.ークを抱きしめ赤子のように泣いた。
ほんの少し、痛みがひいたような気がした。

どうして、今さらこんなことを思い出したのだろう。
忘れていたわけではなかった、公爵、復讐、憎しみ。
ただ、それが全てではなくなったのだ。
しかし、それは確実に胸の奥に刺さっていて抜けない。
その痛みは、ル.ークとともに笑う自分を否定する。

ガ.イが思考に没頭していると、急に体が重くなった。
「うわっ」
思わず叫び、なんだと思い振り返ると、そこには肩にのしかかるル.ークがいた。
「んだよー、そんなにマジでびびんなよ」
からかっただけなのに、とル.ークは悪びれもせず言う。
「危ねぇな。火使ってんのに」
「つうかさ、それ、ヤバくない?」
鍋を見るとだいぶ水分が少なくなっている、
もうすこしで鍋を焦がすところだった。
ガ.イは慌てて火を消した。
鍋を焦がしたら、まず普通に怒られるだけではすまない。
「ヤバかった。なんとか大丈夫だけど」
「何作ってんだ?」
ル.ークは楽しそうに鍋を覗き込む。
「ああ、こないだ言ってたやつ」
「あれか! 神様が食べるやつ」
「まぁ、そうだな」
供物だからあながち間違いでもないよなとガ.イは思う。
器に盛り、赤いソースをかける。
白と赤の色合いを見て、案外見た目はおいしそうかもな、と少し安心した。

二人して床に座り込んで、食事をする。
メイドに見られたら怒られるな、とは思うが、
ル.ークは普段出来ない行儀の悪いことをするのが好きらしい。
ガ.イは一さじ、口に運ぶ。甘過ぎた。
砂糖の入れすぎだろうか、そもそも甘いごはんというのが気にくわない。
少し落胆しながら、ル.ークに感想を聞いてみる。
「ん? 結構うまいじゃん」
ル.ークは喜んで食べている、鍋ごと食べる気だ。
「でも、なんかなぁ、俺はダメだな」
そんなに甘い物好きだったか、とル.ークに問う。
「そういうわけじゃねぇけど、これはなんか好きだ」
「そうか」
意外な好評にガ.イが喜んでいると、ル.ークは続けて言った。
「まぁ、ガ.イの作るべとべとしたサンドイッチより千倍はマシだな」
一言多いんだ、お前は、とガ.イは心の中で呟いた。
「じゃあ、料理人に作ってもらえばいいだろうが。
大体なんで、俺のまずい料理を食べたがるんだよ」
ガ.イが軽い調子で返すとル.ークは少し考え込む。
「んー、なんでだろ。食べられない味だから」
「なんだよ、それ。作ってもらって食えたもんじゃねぇって」
「いや、そうじゃなくって。料理人じゃ作れねぇんだって」
「まぁ、料理人は食べられない料理は作らないわな」
「だから違うって! 
 面白いっていうか珍しいっていうか、……食べたことのない味だからだ」
だから、お前の料理が嫌いなわけじゃねぇとル.ークはそっぽを向く。
やっと、合点がいった。
くだらないことなのだろうが、
自分がル.ークの世界を広げていることを感じて嬉しくなってしまう。
思わず頬のゆるむガ.イをル.ークは笑うなよ、と小突く。
「さぁて、食ったんなら片づけるぞ。そろそろ夕食の支度もあるだろうしな」
照れ隠しにガ.イはそう言うと、待ってくれとル.ークは口いっぱいに頬張った。

くだらないことで心から笑えるのはル.ークがいるからだとガ.イはいつも思い知らされる。
ル.ークの世話は決して楽な仕事じゃない。
地位と名誉ぐらいであんな重労働が出来るはずがない。
大体、自分以外の誰がル.ークのわがままに付き合えるだろうか。
誰がル.ークの不器用な感情表現を理解できるのか。
馬鹿なことをたくさんした、悪いこともいくつか教えた。
二人だけの秘密も数え切れないほどある。
ル.ークの成人の儀式まであと三年。
おそらく、復讐は果たせない。
なにより、一番悲しむのは自分だとわかりきっているのだ。
なにも、この手で大切な存在を無くす必要はない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ファブレ家、愛と憎しみの日々
なぜか妙に昼ドラチック。
今年が皆さまにとって萌え多き年でありますように。


このページを共有:
  • このページをはてなブックマークに追加 このページを含むはてなブックマーク
  • このページをlivedoor クリップに追加 このページを含むlivedoor クリップ
  • このページをYahoo!ブックマークに追加
  • このページを@niftyクリップに追加
  • このページをdel.icio.usに追加
  • このページをGoogleブックマークに追加

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP