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明×秀二

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                    |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ドラマ「野ブ夕。をプロデュース」パロだってさ。
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秋晴れの空は抜けるような青で、俺の目の前に広がっていた。
冷たい手すりから指を離すと、俺はさっきから黙りこくったまま(まぁいつものことなんだけど)の野ブ夕の風に揺れた黒髪をみつめた。
腕時計をチラと確認する。…次の授業が始まるまであと5分。そろそろ戻って、この休み時間中に教室で起こった出来事を把握しておきたい。
誰が、話題の中心で、何の話で盛り上がったのか。…気にしだすと止まらない。
常にみんなの人気者の秀二君を演じるには、それなりの準備が必要なのだ。
「…で。話って何だよ」
俺を呼び出した割には、いつまでも口を開こうとしない野ブ夕に焦れたように俺の口調は少しトゲトゲしくなった。野ブ夕は少し肩を強ばらせてから、ようやくゆっくりと俺に視線を向けた。
「………草里予くんが……」
ボソボソと小さい声に俺は必死に耳を澄ます。
「草里予が?」
「……ずっと休んでます……」
「ああ。風邪だろ?……なんとかは風邪ひかないって、あれ…嘘だな」
確かに、三日前から草里予は学校に姿をみせていない。いつもベッタリと煩いアイツがいないせいで、この屋上の風景もなんだかボヤっとしてみえる。
「……お見舞い。……行かなくていいんですか……」
野ブ夕の声に、俺は驚いて顔をあげた。
「お見舞い?なんで?!俺が?……なんで…」
「と、友達。だから。……し、心配、だから」
「友達?俺が…?草里予の?」

俺は大袈裟に自分を指差してみせた。
確かに俺たちは成りゆきでこの目の前の野ブ夕を人気者にしてやるというプロジェクトを一緒に進めている。だけど、だからといってあんな不思議君と友達になったつもりは……。
「草里予くんは…たぶん、霧谷くんが病気になったら、お見舞いに行くと思う……」
野ブ夕は力強い声で言うと、真直ぐな瞳で俺をみつめた。俺はこの視線に、弱い。
何かを確信しているような、自分の核を持っているようなこの瞳。
俺は仕方なく肩を竦めてみせた。
「わかったよ…。行けばいいんだろ、行けば」
そう言った俺に向かって野ブ夕はホッとしたように頬を緩めた。コイツをいつも覆っている暗いオーラが少し和らぐ。……いつもこんな顔をしていたらいいのに。
「お前も行くんだろ?」
俺が当然のように聞くと野ブ夕はブンブンと首を振った。
「今日は、霧谷くん。…明日は私が行く……」
「なんだよ。面倒クセェじゃん。なんでわけるの?」
「いいから……」
その時、チャイムの音聞こえた。やべえ!戻らないと。
「古谷!走るぞ!」
「ちゃんと、行って下さいね。お見舞い。約束……」
「わかったよ、約束する!」
俺は言うと、野ブ夕の背中を押すようにして走りだした。

放課後。果たして、俺はヤツの居候する豆腐屋の前にいた。
ったく…何で俺が……。貴重な放課後の時間を割いてまで…。そんなことをブツブツ呟いていたら、店の奥からこの店の主人である平谷間さんに声をかけられた。
「おっ!秀二くんじゃないか?どうしたの?……まさか、お見舞いに来てくれたのか?」
その、まさか。ですけど。
俺が何も言えずに戸惑っていると、平谷間さんは強引に俺の腕をひっぱり店の中に案内した。
「良かったなぁ…。明のヤツも喜ぶよ。熱がなかなか下がらなくてウンウン言ってんだ。二階で寝てるから、顔みせてやってくれ」
「はあ……」
「持つべきものは友達だねぇ。さ、さ。あがってあがって…」
そう言って俺の背中をバンと叩くと、平谷間のオッサンは店にきたお客のほうに行ってしまった。俺は小さくため息をこぼすと、階段を一歩一歩上っていった。
ヤツの部屋の前に立ち、コンコンをそのドアをノックする。ま。一応は礼儀だしな。
その音に、ドアの向こう側から、ヤツのくぐもった声がした。
「誰?」
いつも違う、そっけない声に俺は少し驚きながら、返事をする。
「オレ。……霧谷、だけど」
「嘘。嘘ピョン……まじで?」
いつもの草里予の声が聞こえて。俺はゆっくりとドアを開けた。
「邪魔するぜ」
草里予は大きなマスクをして布団にちんまりと横になっていた。熱があるヤツ特有のトロンとした眼をしていた。俺はヤツの布団の側に近付くと、横に胡座をかいて座った。
「秀二くんじゃん……。何しに来たの?」
「見舞い以外の用事があるか?この状況で」
俺の素早い切り替えしに、草里予は大袈裟に天を仰ぐフリをした。たぶん38度をゆうに超してるんだろうな、と思わせる頬の色。
「大丈夫かよ?熱、下がらないんだって?」
「んーんー。そうなのです。……ワシはいつまでたっても熱い男じゃけん」
そう言うと草里予はいつものように小さく笑った。そしてゼエゼエと苦しそうな息をした。

「医者には行ったのかよ?」
「……」
「行ってないのか?」
「お医者さんは嫌いなんですもの」
俺はため息をついた。市販の薬だけでも飲んでいることを願うばかりだ。この摩訶不思議な男は、自力で風邪を治すと言い出しかねないからだ。しかし。
「ちゃんと真面目に治癒に専念しろよ…。お前が学校に顔をださないから、古谷が寂しそうだぞ…」
「ふうん…」
俺の声に、草里予は短く返事をする。そして、それきり黙ってしまった。
早くも気まずい沈黙が流れた。だから友情ごっこはニガテなんだ……。大体コイツって何を考えてるか、さっぱりわかんねえし…。
俺は立ち上がるキッカケを探して、キョロキョロと部屋を見回した。

「そろそろ…」と俺が立ち上がろうとした時、布団のなかの草里予が、思い出したように喋り始めた。
「野ブ夕ちゃん。寂しそうだったのデスカ…」
「ああ…」
「秀二くんも、寂しくって泣きそうだったのデスカ?」
「はあ?!」
調子にのったヤツの声に、俺は上ずったような声をあげた。
「な、な、なんでオレが!?んなワケねぇーだろ!」
「あ。焦ってる焦ってる。余計怪しいっつうの」
「おい、いい加減に……!」
「ありがと」
さっきまで笑っていたのに、草里予は急に真面目な顔になって俺に向かって頷いた。
俺は完全に虚を突かれたように、二の句がつげなくなりニワトリみたいに口をパクパクさせて、ヤツを見つめかえした。そんな俺の顔を指差すとヤツはいつものようにヒャハハと笑った。完全にからかわれている。
「てめえ……!」
俺は頭から湯気をあげながら立ち上がろうとした。全く不愉快なヤツ!
すると、草里予は熱があるなんて真っ赤な嘘みたいな素早い動きで布団から起き上がると、俺の手首を掴んだ。あまりの力に俺は慌てたような声をあげる。
「なんだよ!……離せ…」
そう言いかけて、唇に当たるあったかい感触に俺の脳みそは完全に停止した。ブチュッっとなにかあったかくて…いや、熱くて、柔らかいものが、俺の唇を塞いでいる…。
それがヤツの唇だと気付いたのは、既に草里予の舌が俺の唇を割って入り込んだ後だった。

「んぅ……!」
な、何する…。言いかけようとしても、ヤツの熱い舌に邪魔されて言葉に出来ない。いつのまにか俺はヤツに組み敷かれる形で床に倒れ込んでいた。俺は今、コイツに何をされてるんだ?!まさか、キス……!?冗談だろ?俺のファーストキスだぞ!
俺は思いっきり足を暴れさせ、抵抗を試みたが、病人であるヤツはビクともしない。コイツ、どんだけ力があるんだよ…と呆れながらも悔しさに目に涙が滲んだ。
あきらかに慣れている。ヤツの舌に俺は為すすべもなく悶え…まるで背中から腰に電流が流れたみたいに俺の身体はフニャフニャになってしまった。
「……アッ」
とうとう漏れてしまった俺の喘ぎ声みたいな気色の悪い高い息を聞くと、ヤツは満足したようにやっと俺の唇を解放した。そして俺の頬を両手で挟むとニッコリと笑った。
「かーわいい、秀二くん。ホッペタが真っ赤でござる」
「このヤロオ…」
俺は俺を見下ろす草里予の顔を殴ってやろうと、腕に力を込めたが、熱っぽい身体はまるで言うことを聞いてくれなかった。
「ヘンタイ!何しやがるんだよ…!」
「何って?王子様からお姫さまへのキスだっちゃ」
「頭おかしいんじゃねえの!?」
俺は怒りで目の前が真っ白になる気がした。コイツ…やっぱりおかしい!
「秀二くんがいつまでも怒ってるから、機嫌を直してもらおうと思っただけじゃーん。なんにもおかしく無いナリ」
「それがおかしいって……ああ!もう!話になんねえ!!」
俺は頭を掻きむしると、ヨロヨロと立ち上がった。何故か腰のあたりがジンジンと熱くて、目眩がしそうだった。
「あれ、もう帰っちゃうの?」
「こんなとこ一分もいられるかよ!」
「あれ、もしかして、秀二くん。まだ怒ってる?」
「当たり前だろ!?お前、自分が何をしたか……!」
「だあって、治癒に専念しろってアナタが言ったから……」
突然言い出したヤツの言い分に俺は目をパチクリとさせた。そんな俺を見ると草里予はもう一度繰りかえした。

「僕が学校こないから野ブ夕ちゃん、寂しがってるんでショ?ほんでーはやく風邪を治さんといかんのでしょー?」
「…それが…」
「マウス・トゥー・マウス。僕ってば人に伝染さないと風邪、治らないタイプなんです!」
そう言うとヤツは何故か偉そうに、胸を張った。っておい、まさか……。
「だから今、キミとボクがチュウしたっしょ?っつーことで、僕の風邪、明日には治ってると思われます」
「お、おまえ…俺に風邪をうつすために、キス、したって……言うのかよ……」
俺は余りのショックで声を震わせながら呟いた。
「イエスアイドゥー!正解!………ヒャハハ!!」
ヤツは無邪気に笑って俺を指差すと、思い出したようにコンコンと咳をした。
「アレ?まさか……秀二くん、初めてのチュウ?」
コイツ……コイツ……この野郎……よくも……!
その時完全に、俺の頭の中から、草里予は病人なんだって概念は消えていた。
バコッ!
俺は草里予の頭を思いきりはたくと、ヤツの部屋を後にした。「いたあーい」というヤツのふざけた声を聞きながら。

あの野郎、あの野郎…!
俺はいまだヤツの感触が消えない唇を手の甲で擦ると、家路を急いだ。認めたく無いけど腰の奥がモヤモヤしていて、明らかにヤツのキスに感じてしまった自分を心のなかで罵った。
しっかりしろ!霧谷秀二!しっかりしろったら……。
玄関に到着した頃、俺は立て続けに二度、派手なくしゃみを連発した。背筋をゾゾと悪寒が走った。
まさか…まさかだろ!?

翌朝、まんまと草里予の作戦は成功した。つまり、俺が大風邪をひいたってこと。
午後、満面の笑顔のヤツが野ブ夕を連れて見舞いにやってきた。
「ほーら、アンタの見たかった古谷のスマイルだっちゃ」
草里予はそう言うと、ヒャハハとなんとも健康そうに笑った。そんなヤツを見て、野ブ夕は不思議そうにポカンとしている。
俺は怒りに燃えながら草里予のヤツにまた風邪を伝染し返してやろうと考えた。しかし、すぐに却下だ。

俺はもう二度とこんなヤツとキスをするのはゴメンだからだ。

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