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あぶない刑事(デカ)

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  映/画公開中の「アヴナイデ力」からモナ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  エロくはないけど、アホな大人の色気を目指したらしいよ
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 成功?失敗?ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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「フフッ…その愛の言葉、信じていいのかしら。…多寡山さん?…永遠を誓える?」
目の前のワイン色をした唇が、艶然と笑いながら囁く。
控えめに流れるジャズに埋没するようなその問い掛け。理解がほんの少し遅れた。致命的なミスだった。
『勿論さ』そう言うはずだった多寡山の口元は、瞬く間に白けたらしい女性の視線に晒される。
「ごちそうさま」
女性は、バーのスツールを下りてさっさと立ち去ってしまった。彼女が残したものは、飲みさしのシャンディ・ガフ(当然のよ
うに支払いは多寡山らしい)と、「誓う」という言葉の意味。
「…夕力。…らしくないじゃない」
女性と入れ違うようにカウンター脇に現れた相棒の姿に、多寡山は眉を上げた表情だけで不首尾を認めた。ダークスーツの内ポ
ケットから取り出した煙草に、マッチで火を点ける。そこから紫煙が立ち昇るころには、先ほどまで多寡山好みの“イイ女”が
座っていた席には、多寡山に負けず劣らずの“イイ男”…多寡山の相棒である多下が腰を下ろしていた。
「どこから見てたんだ?」
「…どこって…夕力、それ、タイミングの話?場所の話?」
「両方」
「あぁ、彼女が立ち去る少し前から…あの場所で」
店の入り口には、厚みの少ない水槽が置かれており、内部をシャンパンゴールドの気泡が立ち昇っている。それが、入店し立て
の客が店内へ向ける視線を遮っていて、客たちは他者の視線を気にせず酒を楽しめるようになっているのだ。その水槽の影を指
差して、多下が首を竦める。『夕力のデートなんて見るつもりはなかった。偶然なんだ』そう言っているらしい。

「ユーヅ、一人なのか?」
「…夕力、見れば分かるでしょ。そういう台詞は、女性か指名手配犯相手に語った方がいいんじゃない?」
「そうだな。愚問だった」
「今日はたまたま。たまたま一人なの。…ドライベルモット」
多下がカウンター内へ酒をオーダーするのを横目に、多寡山は煙草をくゆらせ、しかしその火をすぐに消した。多下は何かを考
えるような多寡山の表情に何か尋ねるでもなく、じきにバーテンダーから出された小ぶりなグラスを手にした。
「誓えるか、とね。そう言われた」
多寡山の台詞には何の前触れもなかったが、女性が立ち去った理由を語り出したのだということはすぐに知れた。
「誓い?」
「あぁ、永遠を誓えるか、と来た」
「女性には大事だよそういうの」
「知ってるさ」
「夕力のことだから、こう…『モチロンさ』って答えたんでしょ?」
 幾分声を低めて多寡山の物まねをすると、多下は多寡山に笑いを含んだ視線を向けたが、相棒が頷かないのを見て、目を瞠る。
「あれ?夕力、そう言わなかった?」
「…言おうとはした」
「言わなかったんだ」
「言う前に、彼女が立ち去ったんだ」
「何、夕力らしくない」
「…」
そうだな、と言うように多寡山は苦い表情で頷き、手にしたままのタンカレーのグラスを煽った。僅かに残った氷がカランと音
を立てる。

「なんとなく、ピンと来ないんだ」
多寡山の声は、哀愁のブルースジャズに輪郭を溶け込ませるほど渋く低い。多下は先を促すように、多寡山へ視線をチラリと流
す。
「永遠を誓う、というのがピンと来ない。誓うという行為に何の意味があるんだ?」
「世界中の花嫁さんには聞かせられない台詞だね。病メル時モ健ヤカナル時モ…」
「どうせ俺は牧師や神父にはなれないだろう」
「火薬の匂いがする神父サンってのは、褒められたもんじゃないね」
「それならユーヅだって」
「俺は…ほら、信仰心のカタマリみたいなもんだから」
「どの口がそんなこと言うんだ」
「この口」
アヒルのような口をしてみせて笑う多下に、多寡山も思わず笑みを返す。軽く考えていいことかもしれない。「永遠を誓う」こ
とに疑問を感じているとしても、そのことが多寡山の男の価値を下げるとは到底思えやしない。
多下は笑みの名残を目元に留まらせたまま、声のテンションを落とす。
「大体、俺たちの“永遠”なんて誓えるほど確固たるものじゃあないんだから」
「…そうだな」

いつも危険なことばかり繰り返す二人にとって、ショー夕イムのようなその時間も自分たちの命との対価でしかなく、他者との安寧はそれを購うことは出来ない。それを分かっていればこそ、安易に誓うなんてことが出来ないのであって。
「俺たちに出来ることは、八マに巣食うダニを掃除することぐらいさ」
「それで君の日々が安らかに実りあるものになるのなら、それが俺から君への愛の証だ」
「うん、夕力らしいイイ口説き文句じゃない」
「あぁ」
そうかな、と多寡山も多下も笑い、頷き。
そして全く思いがけないタイミングで多下の携帯が鳴った。
「はい多下。…なんだトオノレ。情けねぇ声出してんじゃねェよ。まだ仕事してたのか、まったくトロい動物め!…ハァ?…分かった」
電話を切った多下が、多寡山を見てニヤリと笑う。
「ついさっき、明日、大きなヤクの取引があるってタレコミがあったってさ」
「…大きなダニか?」
「あぁ、久しぶりに…木黄シ兵から追い出し甲斐のある大きなダニだ」
「まぁ…」
グラスを揺らす。もう氷はすっかり溶けていて、滑らかにグラスの底を揺れるタンカレーを多寡山は一息に煽った。
「ユーヅと俺がいれば、八マの平和は約束されたも同然だろう」
「そだね。それこそ俺らと八マは一心同体、みたいな」
「じゃ、ハマのこの先の平和のために乾杯」
多寡山は空のグラスを持ち上げて、多下のベルモットのグラスにカチンと軽い音をさせてぶつける。戯れの乾杯に二人は大いに笑った。
そんな言動のひとつひとつが、二人の永遠を誓うものとほぼ同意だということに、彼らが気付く様子は無かった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 50になってもカコイイおじさんたちに萌えたんだ
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