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天才びっとくん セイコー×シンヤ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・)
今日行くテレヴィ 金曜六時からの番組
「点差いびっとくん」セィコー×シソヤだってさ

彼の発言は、いつも突然だ。

「なあ、暇だからしりとりでもしようぜ。買った方が金もらえるってコトにしてさ」

…だから、窓の外がすっかり闇に包まれた時間にこんなことを言われても、何をいきなり、なんて突っ込む気ももう起こらなかった。
僕は返事をしないまま、読みかけだった本を閉じて、彼の方へ向き直った。

「シソヤ。もう僕は寝るから、帰れよ」

常識のない男だ。そう思いながらも、そこまではさすがに口にしなかった。

深夜に突然やって来て、こうして空が白み始めるまで僕の部屋で時間を潰す彼。
彼の家から遠く離れたここへ、なぜわざわざやってくるのか、と何度も尋ねた。彼はただ、笑ってはぐらかすだけで答えない。
だから僕は、彼にそれを聞くのはやめて、ただ毎晩彼の暇潰しに付き合っていたのだった。
……いつも、僕が飽きて先に眠ってしまうのだけれど。

しかし、今日は日中の仕事が忙しくて、身体がひどく疲労していた。……彼に付き合う気力も体力もない。
こちらをじっと見ている彼を無視して、僕は下着姿になってベッドに潜り込んだ。

「セィコー、無視すんなよ」

彼の声が背後から飛んで来たが、僕はそれを掛け布団でかわす。
入ったばかりのベッドは冷たくて、なんとか暖めようと僕はじっと身体を丸め、目を閉じた。

「セィコー、おい」

意識が曖昧になっていく。とろとろと瞼を落としていく眠気が、身体全体を支配して、思考も止めようとする。
そんな状態を認識しながら、やっぱり今日は疲れているんだな、と、朦朧な頭で考えた。
彼の声も、だんだんと遠ざかり、彼がそこにいたことすら現実なのか夢なのかわからなくなる。
僕はふうっと息を吐いた。ベッドが暖まってきたようだ。手足がぬくもりを求めて暖かい方へと動く。

──ああ、眠りにつける。

ずっとずっと悩まされてきた問題を解決した時に感じる安堵にも似た感情が、ほっと胸を休ませる。
そのとき、ふと、……シソヤは帰ったのだろうか、と思った。
声も、気配もしない。
諦めて帰ったのだろうか。悪いことをしたなぁ、と考えるも、振り向いて確認まではしたくなかった。
身体を動かせば、せっかく暖まった範囲から外れ、また冷たい布団に触れることになる。
不精とは思いつつも、今はただ早く眠りたかった。

「──」

深い眠りにさらわれて、朝目が覚める。いつも通りのサイクル──

「──コー」

身体がどんどん重たくなって、僕はついに瞼が上がらなくなった。

「……セィコー、おやすみ」

そっと唇に触れる、暖かく柔らかな感触もいつものことで。
このために彼はここへ来ているんだ、と毎晩気付いて、毎朝忘れてしまう。

なかったことにするために、眠りの直前を狙うなんて──

そう言いたかった。しかし、身体が動かない。眠りにさらわれ、遠ざかる意識。

僕だって、君に──
君にキスを、したいのに。

部屋を出て行く気配を追いながら、僕はまた、君のキスを忘れるための夢を見始めていた。

□STOP ピッ ◇⊂(・∀・)
2枚目、タイトルが「1/3」のまんまでした…スマソ…


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