山犬
更新日: 2011-05-01 (日) 13:21:27
今は亡き新*49*99が指定したシチュを書(描)くスレの850です。
まとめサイトの復活待ちしてたら、スレ落ちちゃった……(´・ω・`)
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| ボッケェキョウテェ風にしてみました
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| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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<リク内容>
妖怪を調伏しようとして失敗。
逆に囚われて、体を弄ばれる新米退魔師をお願いします。
新米だけど、少年よりは青年寄りが嬉しいです。
「お助けしたいのはやまやまじゃが、先生はお留守でお力になれん」
だから他の拝み屋へ、と言おうとした三郎は老人の涙を見て口ごもった。
「そう言わんと助けてつかぁさい、この通りじゃ、この通りじゃ……」
老人は皺だらけの分厚い手を合わせ、三和土に膝をついて三郎を拝んでいる。
助けを求めて背後を振り返っても、無人の屋敷からはしんと冷えた沈黙だけが流れてくるばかりで、いつもなら「入ってもらえ」と静かな
声をかける師匠の不在を三郎に再認識させただけだった。
「おじいさん」
三郎は袴の裾を軽く叩いて老人の前にしゃがむと、震えるその手を包むように己の手を重ねた。
「わしは先生のお手伝いをしとる若輩者じゃ。先生みたいに、物の怪を祓ったりする力まだないけん、こらえてつかぁさい……」
しかし、老人は三郎の言葉が耳に届いていないのか、ただひたすらに「孫娘を助けてつかぁさい、助けてつかぁさい」と繰り返すだけだっ
た。
――先生なら、どうするだろうか。
まだ幼さの残るふっくらした唇を軽く噛んで、三郎は考えた。
師匠の言うことは想像がつく。首を突っ込むな、身の程を知れヒヨッコが……だ。
ひそひそと後ろ暗い噂を流される、東国育ちの歯に衣着せぬ拝み屋に、十六で弟子入りしてからようやく三年。
前の名前を捨て「三郎」と呼ばれることにすっかり慣れた今も、仕事を任されたことは数度しかない。
(……話くらい)
三郎は、そう考えた。
話くらい聞いても、バチは当たるまい。
老人の手を取って、奥へと招いた。
三郎は、師匠が自分のことをよく理解しているという事実を知らなかった。
話を聞けば、無下に断れないという損な性格であることを、師匠は承知の上だからこそ「首を突っ込むな」と警告していたのに。
老人の話は、こうだ。
老人は街中ではなく、近隣の農村で少々の田畑を持っている農民だった。
数人の子供に恵まれ、そのうちの長男が賢い子供で、長じて教師になり、今は岡山の師範学校で教鞭を取っている。
この長男は妻に先立たれ、後妻をもらおうとしているのだが、この女が長男の二番目の娘とソリが合わない。
老人からすれば孫娘にあたるこの少女は、家を飛び出して老人の元に身を寄せた。
ちょうど老人は妻を亡くして間もなく、家事炊事に難渋していたので、孫娘が家のことをしてくれるのはとてもありがたいし、かわいい孫
娘が継母と辛い鞘当をするのもかわいそうだと、しばらく二人暮らしをしていた。
六日前のことだ。
老人は風邪ぎみの孫娘に精をつけさせようと、猟銃を持って山に入った。
猪を狩ろうと探したが、獲物は見つからない。
あきらめて帰ろうとしたところで、木々の間で動く黒い影を見つけた。
猪かと思い銃を構えたところ、それは大きな山犬だった。
山犬がこちらを見て牙を剥いた。老人は、引鉄を引いた。
手応えは確かにあった。しかし山犬は耳鳴りのするような咆哮を残して、つむじ風のように去った。
夕刻。
三郎は、孫娘と老人の前にいた。
孫娘は姿勢を崩して座り、その目はどこも見ていない。いや、夢の世界を見ている。
話しかけても「ふん」「ふぅン」と呆けたような生返事をするばかりで、白痴めいたとろんとした微笑みを浮かべたまま、熱っぽい顔つきで
くねくねしている。
動くたびに、すえたような甘い臭いと、獣のような生臭さが漂った。
その姿が自分の母親に重なり、三郎はゾッとして身を引いた。
夜になると、家の中に黒い獣の影がうろつくのだと老人は言った。
「初めは恐(きょう)とうて、何もできなんだが」
そんな老人も、その影が孫娘に無体を働いているのだと、そう思うと老人に少しの勇気がわいた。
老人は猟銃を手に、影の後をつけた。
そして見た。 その影が、嬌声を上げる孫娘に布団のようにのしかかっている。
影は血の様に赤い眼をした、巨大な山犬だった。
腰を抜かした老人の耳に、あの日と同じ低い男の笑い声が聞こえた。
――お前の精と肉にはもう飽いた。明日ははらわたを喰らうとしよう――
それが昨日のことだという。
つまり、孫娘の命は今夜尽きるのだ。老人に傷つけられた山犬の牙にかかって。
老人は畳に額をすりつけ、三郎を拝み続けた。
師匠に電報を打ったものの、瀬戸内から帰って来るには時間がかかるだろう。
三郎は、老人と孫娘を蔵に押し込め、水と塩でその周囲を清めてから扉を閉めた。さらに、真言を唱えながらその上に札を貼った。
次いで、孫娘の部屋に布団を敷くと、その上に適当に束ねた藁を置いた。農家だけあって藁束には事欠かない。
その藁の中に孫娘の髪を仕込み、孫娘の服を着せると、そっと布団をかけた。
(騙されてくれればええが)
外を見れば、もう陽は落ちかけていた。
「いかん」
三郎は慌てて隣室の四隅に塩を盛り、障子を閉めると上に札を貼った。それから部屋の中央に正座すると、早口で真言を唱えながら印
を組んだ。
手首に巻いた数珠がじゃらりと鳴る。
遠くで犬の遠吠えがした。
待つというのは存外に疲れる。
夜半過ぎ、三郎は緊張と疲労で頭痛をおぼえた。
(そもそも)
集中力の切れた三郎は、ぼんやりと自分に問う。
("それ"はほんまに山犬なんじゃろうか。どこぞの男が夜這っとるだけじゃなかろうか。あの爺様は、それを物の怪と見間違うとるだけじゃ
なかろうか)
時折そういうことがあった。
魔が人に憑くのではなく、人が魔を作り上げることが。
三郎は、老人もその類かと疑っていた。
いずれにせよ、今夜孫娘が無事ならば、老人は落ち着くだろう。
本当に物の怪の仕業なら、明日まで持ちこたえれば師匠が帰って来る。
三郎は油断していた。
孫娘からただよう獣臭に潜む妖気に気付いてさえいれば、一緒に蔵の中にいただろう。
過信と意地もあった。
師匠はいつも自分を子供扱いする。そろそろ髭も生えようという年になっても、おつかい程度の仕事しかさせてもらえないのが、三郎に
は不満だった。
もしも。
今晩物の怪をやり過ごせば、師匠は自分を見直すのではないだろうか。
そうすれば留守番などせずにすむかもしれない。
広く暗い屋敷に一人でいることは、三郎には応えた。
それは「三郎」になる前の暮らしを思い出させる。
まだ、怪異を警戒して念仏を唱えているほうがいい。
フランネルのシャツの上に着物を着けた書生姿に、山から吹き降ろす冬間際の風は冷たい。
足袋を履いてくれば良かったと思いながら、三郎は数珠を持った手に息を吐きかけた。
その時。
みしり。と家が鳴った。
三郎ははっと顔を上げた。
みしり。ともう一度家が鳴る。床ではない、家全体が怯えたように、歪んだように鳴った。
冷たいはずだった空気の温度と湿度が上がっていた。
つんとする匂いに吐き気をもよおす。血の匂いだ。そして、濡れた獣の毛の匂い。聞こえた息遣いに心の臓が強張った。
ぎし、ぎし、と今度は廊下が鳴る。
背筋を伝う冷たい汗を感じながら、三郎は印を組んだ。
足音はどんどん近付き、部屋の前で止まった。
三郎のいる部屋の前で。
――小僧――
その声に三郎は声のない悲鳴を上げた。
――俺をたばかれると思ったか――
ばれている。しかし何故だ。教わった通りに結界を作った。教わった通りにまじないを唱えた。間違えてなどいないはずだ。
混乱する頭で部屋を見回した時、「それ」に気付いて今度こそ短い悲鳴が喉から飛び出した。
札が、さかさまになっている。
誰そ彼時が終わり、物の怪の時間になろうとしていたために、慌てて札を貼ったのがまずかった。
低い笑い声がした。それには、獣の低いうなり声が重なっていた。 三郎が立ち上がるのと、障子を突き破って跳び込んできた黒いもの
が三郎を突き倒したのは、ほとんど一緒だった。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 今日は疲れたからここまで。
| | | | ピッ (・∀・ )
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改行規制に引っかかって、ナンバリングおかしくなりました。
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