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ブラザー☆ビート 陸×達也

兄弟ドラマ妄想の次男×長男ネタ
暗めなので苦手な人はスルーよろ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 食卓には見覚えのあるすき焼き鍋、パックに入ったままの肉、
ザルに盛られた野菜、それらを囲うように並べられた茶碗と箸と、
「あれ、春江たちは?」
 利区だけだった。
 居間で胡座をかき、テーブルを指差しながら、利区。
「買物。晩飯をすき焼きにしたのはいいけど、いざ準備したら玉子ないのに気づいてさ。
 やっぱあれないとダメじゃん」
「なにやってんだか…じゃあ、帰ってくるまで夕飯はお預けか」
「結構かかると思うけど。あの二人の買物は。」
 悪態代わりにため息をつき、達弥はどっかと腰を下ろす。
 背広を椅子の背にかけ、ネクタイを緩めシャツのボタンを外す。
 煮えていない鍋とはどうしてかくもひとを物悲しい気持ちにさせるのか。
「なあ、兄貴」
 読んでいた雑誌をたたみ、利区が立ち上がる。
 台所に行き冷蔵庫を開ける。缶ビールを取り出し、プルタブを引いてから達弥に手渡し、
「この前の話なんだけどさ」
「この前の、どの話?」
「兄貴が無神経にふった女の話だよ」
 口をつけたビールが、一気にまずくなった気がした。

 ビール缶をテーブルに置き、露骨に嫌そうな顔で達弥は利区を見上げる。
「…またその話か。しつこいんだよお前も春江も。」
「なあ、マジで付き合う気ねーの?今フリーなんだし、試しに遊んでみるとかすればいいじゃん」
「あのな。出来るわけないだろ、そんなこと。」
「なんで?」
「なんでって、」
「他に好きな奴でもいんの?」
 それこそ、なんの前触れもなく。
 笑いたくなるほど真剣な眼をした利区が、無表情に達弥を見下ろしていた。
 椅子の背に手を置き、身体を引き寄せるようにして達弥の顔を覗き込む。
「そんなに元カノのことが忘れらんねーの?」
「それは…」
「別れてからも一途に想って?兄貴らしいよな。
 いつまでも未練がましく引きずっちゃってさ、他の奴なんて眼中にないってか。
 だから誰とも付き合わないって?」
 唇の端を引き、挑発めいた口調で利区が言う。
 達弥は目をそらす。
 沈黙を繋ぐようにビールを飲み、誤魔化すようにテーブルに缶を叩き付けた。
「…お前とは違うんだよ、俺は」

 短い沈黙、の後、
 達弥を見下ろしたまま、利区は「へえ」と低く笑った。
 浅黒く焼けた手に力が篭る。
 片手をテーブルにつき、達弥の行く手を遮るように覆い被さる。
 戸惑った顔で達弥が何か言うより先に、
「なあ兄貴。前から気になってたんだけどさ、誰とも付き合う気ないってことは、
 ずっとしてないんだろ?そういうのってどうしてんの?
 やっぱ一人で抜いてばっかなわけ?」
 椅子の背に置かれた手が、達弥の肩へ、肩から胸に、腰へと伸び、
「利区、」
「今でも元カノをネタにしたりしてる?はっきり言ってキモイよそういうの。
 俺だったら引いちゃうね。女々しいんだよ兄貴は慢性的欲求不満で溜まってんなら
 俺に言えよ弟なんだからそれぐらいしてやるって可哀相で見てらん」
 鈍い音が響き、
 椅子が倒れると同時に、利区も床に転がった。
 拳を握り呼吸を荒くして達弥が立ち尽くす。
 衝撃で缶が転がり、中の液体がテーブルから床へ滴り落ちる。
 殴られた拍子に切れた唇の血を拭い、利区は小ばかにするように達弥を見上げた。

「――なんだよ。本当のこと言われて頭にきたか?」
「利区、お前…!」
「ずっと一人の人間想ってんのが、そんなに偉ぇのかよ!!」
 身体を起こした勢いでそのまま達弥に飛び掛る。
 胸倉をつかまれ、よろめきついでに達弥が冷蔵庫に背中をぶつける。
 骨に響くような痛みに、完全に頭に血が登る。
 負けじと利区に掴みかかった。
「本気で誰かを好きになったことのないお前に、俺の気持ちなんてわかんねーよ!」
「ああわかんないね!わかりたくもねえ!
 好きなら連絡取って言やいいだろ、やり直そうって!
 自分の気持ち伝えることもできねえくせに、説教してんじゃねえよ!」
「ちょ、あ、あんたたち何やってんの!」
 揉み合っていた所為で、玄関の音に気がつかなかった。
 いつのまにか帰宅した春江と順平が、慌ててふたりの間に割ってはいる。
 互いに引き剥がされたものの、興奮冷め遣らぬ達弥の目は未だ怒りを燻らせ、
顔を伏せながら利区は舌打ちする。
 ふと視線を落とせば、床に零れたビールを順平が雑巾で拭っていた。
 こんなときでも冷静な弟を少し尊敬する。
「まったくあんたたちは~。そんなことばっかりしてると、肉抜きよ、肉抜き!」
 買物袋を振り回しながら呆れたように春江が言うが、ふたりの耳には届いていない。
 ただ、うつむいた顔からもう一度だけ利区は達弥を盗み見、

 やがて、何かを堪えるかのように唇を噛んだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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