相棒 杉下→亀山←伊丹
更新日: 2011-05-01 (日) 13:07:09
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 愛某の椙→瓶←「特瓶!」
____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| ちょっと上司が危ない人
| | | | \
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ハゲシク厨ネタ!
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
作曲経過は1904年から5年の間で、後期ロマン派の、ワーグナーの後継者とも言われるリヒャルト・シュトラウスの名を世界に広めた同名の文学作品による一幕のオペラだった。
窓辺でレコードプレイヤーは静かにまわる。
ヘッドフォンは机の上においたまま。
誰にも聞かれることなく、甘やかなメロディーが流れ続けていた。
「……情けは人のためならず」
耳に届いた声に、椙下はガーゼを当てようとした手を止めた。
「はい?」
「いや、最近よくバラエティー番組なんかで『間違って覚えてる慣用句!』とかいって、この言葉がよく出てきてましてね」
ガーゼが目に入らないよう、まぶたを落としたまま瓶山は口を開く。
椙下は膝に乗せた救急箱から薬を取り出しながら、続きを促した。
「情けをかければいずれそれは自分に返ってくるってのが原義でしょ? でも最近の子は情けをかけるのは人のためにならねー、って覚えてるんだそうで」
「そうですか」
「でもね、俺は言いえて妙というか、そっちの方が今の世の中にゃ、あってるって思いますよ。人のためにゃなりませんね! てか誰のためにもならない気すらしますよ」
語気を強めて瓶山が言うのに、椙下はただ苦笑を返すにとどめた。
瓶山の左の頬に細く真一文字についた、ミミズ腫れのような跡。
夕方、所用があって出かけていた彼が特命に戻ってきたときはそこからまだ紅いものが溢れていた。
東京だからいつでもどこでも人が溢れかえっているかというと、そういうことはない。
オフィスビルの立ち並ぶところは勤務時間には誰もいなくなるし、ショッピングモールにもやはり時間帯によって波があるし、ちょっと都心から離れてみれば林立するビルは消えて、代わりに閑静な住宅街が現れる。
つまりどこにでも、人けがなくなる場所があるのだ。
そのとき近道にと瓶山が選んだのが、ちょうどそんな人通りの少ない道だった。
しばらく歩いて、往来の真ん中に見えてきたのは横倒しになった大型のバイク。
女性はそのそばに座り込んでいた。
どうやら、転ぶかどうかして倒れたバイクを立て直そうとするも、その重さをもてあましているようだ。
見たところ大きな怪我はしていない。
どうしたの、と軽く瓶山が近づくと、ほっとしたように女が振り返った。
転んだひょうしに腕を痛めてしまってバイクが起こせないのだ、と苦笑する。
はいはい、と瓶山も笑顔を返してまずは女を立たせてやろうと手を伸ばした、……そのとき。
鋭い痛みが頬を灼いた。
西日に女の手元が光る。
不意のことによろけた瓶山に、不気味な笑みを向けると女は駆け出した。
脱兎のごとくその場から逃げ出す彼女を捕まえることができたのは、ひとえに日ごろの訓練の他ならない。
現職の警察官を相手に選んでしまったその女は、その場で御用となった。
今頃は一課が取調べをしている頃だろう。
「親切心で近寄った相手に切りつける……確かに卑劣極まりない行為です」
「ったく、世も末ですよねー」
「ええ。でも、だからと言って君から人のよさを取って何を残そうというんです?」
「ちょっ、う、卯京さ」
「はい、終わりましたよ」
言いながら、サージカルテープを撫でるようにして肌になじませてやる。
表情のころころ変わる人間だから目元の傷は落ち着かないだろう。
瓶山が目を開く前に、椙下はすばやく立ち上がって、それと悟られないよう距離をとった。
「あ、ども」
見えるはずがないのに瓶山は顔を傾けて、何とか手当ての跡を見ようとしている。
「なんかすいません、全部やってもらっちゃって」
「そうですね、誰かが大仰に手当てされるのが嫌だからと駄々をこねなければ、今頃君は医務室で、僕の手は煩わされることはありませんでした」
あまったガーゼを整えながらにっこりと微笑んでやれば、あはは、とパイプ椅子の上で瓶山は居心地悪そうに身を小さくした。
これくらいの意趣返しは許されるだろう。
「すいません、っていうか……あー、あの、ありがとうございました」
妙に神妙な顔をして言うのがおかしくて、椙下も慇懃に頭を下げる。
「どういたしまして」
「やっぱ卯京さんは手当てがうまいですね」
「そうですか?」
「無駄がない」
救急箱を仕舞いながら椙下はほんの少しだけ肩をすくめてみせた。
手当ての仕方くらい知らなくてどうする、と言いかけたとき、視界の端によく知った人物を捕らえた。
「特命係の手負いの瓶山!」
勝手知ったるなんとやら、ずかずかと生活安全部を横切ると、声の主は苛立った様子で戸のない戸口に立った。
おなじみの声に瓶山の顔がうんざりとしたものに変わる。
それでも律儀に彼は言葉を返すのだ。
小さく笑って、椙下はティーポットに手を伸ばした。
「っだよ、仕事はどうしたんだお前……あ、ついに外されたか?」
笑い含みの瓶山の声を井丹が鼻で笑う。
ふと椙下は手を止めて、隣の気配に注意を凝らした。
普段テンポのよい遣り取りをしている2人なのに珍しく井丹の切り替えしに一呼吸の間があった。
「おめぇじゃあるめえし、誰が外されるかよ」
ちらりと見やって、椙下は眼鏡でごまかせる程度に目をすがめた。
「じゃ、なんだよ? わざわざ一課の井丹様がこーんなところに」
「あぁぁ全くだぜ、怪我人ならわかりやすく医務室にいろってんだ」
「なに言ってん……」
瓶山の言葉をさえぎって、井丹は手にしていた書類を眼前に突きつけた。
「今日中にな」
にたっと笑う彼は、心底楽しそうだ。
怪訝そうにその書類に目を通していた瓶山が、げ、と声を上げた。
「な、なんで俺がこの件の書類を作んなきゃなんねーんだぁ!?」
「そりゃ当事者だしなぁ、特命係の手負いの瓶山」
「うっせ、つーかさっきから手負いとか言うな、クマかよ俺は!」
「はっ! そいつはクマに失礼だろ」
とうとう瓶山が椅子を蹴って立ち上がって、伊丹につかみかからんばかりの勢いで言い合いをはじめた。
大きな音に生活安全部の人間が何事かと振り返ったが、いつものことと気付いてそのまま見物を決め込んだり仕事に戻ったりしてゆく。
いつものこと。
時をかえ場所をかえ、一体何度この光景を目にしたことか。
いつまで経っても顔を付き合わせれば喧嘩ばかり。
まるで子供のような稚拙な遣り取り。
いつになったらこの部下は気付くのだろうか。
相手の言うことを冷静に流せないでいることこそが、相手を認めていることに他ならないということに。
先ほどこの部屋にやってきたとき、彼の肩がらしくなく上下していたことに。
彼のこわばっていた表情が安堵に変わったことに。
(――そして)
そしていつから、自分はその『稚拙な遣り取り』を、単なる雑音と聞き流せなくなったのか。
書類を仕上げるためにぶつぶつ文句を言いながら、瓶山は一課へ資料を求めに行った。
おそらくあちらでまた第2ラウンドが繰り広げられていることだろう。
つい癖で浮かんだ、自分の笑みに似た表情を窓ガラスの映りこみに見てしまって、椙下はティーカップを一気に干した。
ソーサを定位置に戻して、瓶山の手当てのためにかけっぱなしで放り出してしまっていたヘッドフォンを手に取る。
盤面を傷つけないよう丁寧に針をはじめの位置に戻してやって、そのとき初めて指先の引き攣れたような感覚に気付いた。
スタートのボタンを押してレコードを回がまわるのを確認してから、椙下は手元を見る。
褐色の染みが、ぽつりと指先で乾いていた。おそらくは、先ほどの一件で。
ヘッドホンから甘やかなメロディーが流れ始める。
タイトルは「サロメ」。
作曲経過は1904年から5年の間で、後期ロマン派の、ワーグナーの後継者とも言われるリヒャルト・シュトラウスの名を世界に広めた同名の文学作品による一幕のオペラだった。
自分の愛を理解しなかったヨハンの生首を求め、その血を口に含んで彼女が言った言葉はあまりに有名だ。
無表情でいる自分を意識しながら、椙下は指先を口元に近づけた。
『これが、恋の味か』
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 8話が楽しみでついやっちゃったんだってさ。
| | | | ピッ (・∀・ )
| | | | ◇⊂ ) __
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
このページのURL: