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寝具

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放映お疲れさまでした。仲良し本音言える兄弟ですよね。
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                    |  つづいてそのあとの時間のドラマ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  あまりの視聴率に笑うしか
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドラマトオナジデハッキリシナイ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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昼間の街の陽射しに眩しそうに目をすがめながら、リョウが店から出てくる。
さっきまでその手はぎんいろの鋏を操って、女の髪を切っていた。
インパクトのある濃紺のイラストが入った白いTシャツ。手描きの一点物だろう。デザインを手がけるアキユキにはわかった。
革のジャケット、それは長身の弟の無駄のないカラダを良く引き立てている。
「なんの用?」
ポケットに両の親指を引っ掛けて不遜に見上げる黒い瞳にも陽が映ってきらきらした。
いくらか鼻にかかった聞き取りにくい声。薄い唇。ヘンに清潔感のある白い歯。
短く切って立たせた髪も艶々と光って、秋の日を集めていた。初めて会ったときから、妙に眩しい存在だった。
あれは春の日だった。 もうすぐ中学生になるという弾んだ気持ちは、母親のヒステリックな声と涙に憂鬱に歪められていた。
何処かの旅館だっただろうか。料亭だっただろうか。おとなたちが話し合う間、こどもたちは一緒に一室に閉じ込められていた。
畳、そこに投げ出された白い靴下の小さな足。むちむちしたなめらかな脚。濃紺の半ズボン。ピンクのシャツ。
春の陽にガラスのようにきらきらしていたのは、ほっそりした、鋏。
弟の、小さな手には握りにくそうな華奢な鋏、
さらさらした黒い髪を少女のように厚く切りそろえた彼は、それに天使の輪を作りながら、無邪気に身を乗り出してきたのだ。
「おにいちゃん、切って」
与えられていた幼児雑誌のふろく、青いネコ型ロボットの名前がきちんと言えなくて、彼はなんども繰り返した。
舌足らずに、鼻にかかった声で、笑った顔で見上げながら。相手が暗い思いを抱えた本当の「おにいちゃん」とも知らずに。

「また、おねえさんに言われた?」
今も、ラの音が上手く言えない。甘い発音と薄い唇の動きが目を引きつける。
そこにさらに見る者の注意を引きつけるほくろがある。リョウはその視線を引っ張るように身を返した。
ビルの壁に背を預けて、わずかに低くなる。
「なに言われても、返さないよ。あの写真は俺の切り札だからね」
黒い眼を上げて、わずかにくちを開け、挑むように呆れるように、見た。
次に会ったときはもう、この顔だった。少女のように可愛らしかった無邪気な顔は、何処か歪んで切り削がれていた。
こけた頬と尖った顎が別人のように見えた。その顔で、彼は兄に金をねだった。もう、兄だと知っていた。
母の違う兄の意味をよくわかっていた。
「親戚の子?」
一緒にいた女が不思議そうに尋ねて、アキユキはその場を取り繕わねばならなかった。
金を出し、彼は長い指で素早く、しかし美しくそれを奪い取り、にやり、と笑って夜の街に消えていった。
詰襟のボタンに、夜の街の明かりが危うく輝いていた。
「おとうとだよ。ワケアリだけどね」
吐き出したのは、その女が親友の姉だったからか。彼女はよく物事を分析できる瞳を見張って、へえ、と呟いたが、
「どうりで、ちょっと似てる。眉とか、目のあたりとか」
眼鏡をかける前のアキユキの顔を彼女は知っていた。
確かに、その女に好かれやすい白木から切り出したような目元は、兄弟に共通したものだった。
同時に、厭うべき父親から譲り受けたものだった。
「こいつを、いくらで買い取ってくれるのか。アナタの俺に対するセイイがわかるってものだよ、にいさん」
黒い携帯電話を長い指にもてあそびながら、リョウは唇の端を吊り上げて、にやり、と笑った。
そのやくざめいた笑いは、不思議に彼を可愛らしく見せた。壁から身を起こし、彼はアキユキの肩をぽんと叩いて歩き出した。
その長身の肩が切る風が頬に届いたとき、ぞくり、とした。
アキユキは振り返った。にいさん、と厭味たらしく呼んだ声が、まるで吐息を含んだささやきのように耳に残って、身震いした。
 黒い革に包まれた弟の背中は、秋の陽の斜めの手さえ振り払うように店へ消えていく。

「なるほどぉ。不肖のおとうと・リョウってわけだ」
 親友の腕はアキユキの胸を後ろから片手で取り巻き、こめかみに指のピストルを突きつけた。
「おまえ、そのシリーズ、やめろって」
 アキユキが振り払うと、ぱっとソファから飛びのいて到来物のクッキーの箱を勝手に開けた。
「でも、そりゃ、お前が悪いんじゃないの。弱味握られてんだから」
 アンゼリカの乗った四角いクッキーを口に咥えながらソファに戻ってきた。
親友の肩が切った風が、ふわり、とアキユキの頬をなぶった。この男も背が高い。しかし、弟とは違う。
のんきそうにクッキーをもぐもぐやる顔は、草食動物のそれに似ている。大きな濡れた眼が、くるりとアキユキを見た。
「なんだよ」
 姉とは似ていない。あまり物事を分析しない瞳である。その代わり直感で動く。そのカンが素晴らしい。
アキユキはつい頼ってしまう。
「あああああっ、オレ、お前になりたいよ」
「なんだ、そりゃ」
 ソファに仰向けに死体になったアキユキにかまわず、もぐもぐクッキーを食べてしまって、
行儀よくティッシュで指とそこらの粉を拭きとって、さらにそれをごみ箱に捨ててから、やっとアキユキの傍に戻ってきた。
「しかし、それで仕事がストップすんのは困る。なあ、俺、いってやろうか」
 顔を覆っていた腕の隙間から、アキユキはちら、と親友を見上げた。
「ほんとに?」
 ひらり、と目の上でスーツのネクタイが踊った。
「よくわかんないけどさ。なんでおとうとにそんな弱腰なわけ? がつーんと言えばいいだろ、がつーん、と」
 その人の良さがアキユキには救いだった。この歪みのない眼なら、あるいは彼にまっすぐ向かえるのかもしれない。
「いってくれる?」
 ちいさく頼りなげに尋ねると、面倒見のいい男は大きくうなずいた。
 スーツのネクタイの端が、ふわり、とアキユキの頬を撫でた。

「で、アナタが来たってわけ?」
バイクのメットをシートに置き、リョウは肩をしゃくって笑った。
サロンの裏口からは幾人かスタッフたちが出ていき、それへ愛想良く手を上げて、挨拶をする。
 夜の闇にそのたび浮かび上がる横顔に、シュンスケは親友と似たところを探そうとした。
夜目にもあざやかな白い歯や、尖った顎は彼とはまったく異なって見えた。
親友は昔から理知的な、それでいて何処かさびしげな冷めた雰囲気を持っていた。
何か隠しているような、深いまなざしがシュンスケには気になって仕方なかった。
 それは今も変わらない。デザインの仕事で独立してからは、そのまなざしはいっそう深くなった。
しかし、それはやわらかな色を帯び、いい傾向のように思われた。
「リョウちゃん」
 まるいキャンディを転がすような声が呼び、彼はそれへ振り向いてふっ、と表情を変えた。
「先、帰ってて。ちょっと、話あるから」
 やさしい、おだやかな声だった。言われた彼女はこっくりとうなずき、あまりシュンスケのほうを見ないようにして、背中を向けた。
「入りません?」
 誰もいなくなったらしいサロンの中を彼は親指でしゃくった。もう、表情も声も、硬い皮肉っぽいものだった。
 それでもシュンスケは彼のあとについて入った。照明の落ちたサロンは鏡や鋏ばかりがぴかぴか光って妙な空間だった。
肩を引くシュンスケの後ろでドアが閉まった。思わず振り向いた彼に、リョウがまた白い歯を目立たせて、肩をしゃくって笑った。
「勝手に閉まるんですよ。オモテは華やかだけど裏はただの商売。ドアなんてどこの裏口も同じもんだ」
 狭いスタッフルームに目もくれずに、彼はフロアに進んだ。
そこは通りに向かったガラスを通して外の明かりが入ってくる。
受付のカウンターに腰のあたりを預けて、リョウはシュンスケに向き合った。

「いつも正しいおにいさまのご友人は、やっぱり正しいってわけだ」
 大きな手をぱっとひらめかせて笑った。手品のように、黒い携帯電話を取り出した。
「コレについては全部聞いたみたいだけど」
 ぽうんとてのひらの上で放り投げて、その危うさにわずかに慌てたシュンスケの表情を見据えるように笑って、
「あのひとがオレを嫌う本当の理由、アナタ知ってるのかな」
 携帯電話のなめらかなボディを親指でひとなでして、ポケットへ落とし込んだ。
 シュンスケは青い闇の中へ一歩踏み出した。
「理由? そんなの知らないけど。でも、ひとつわかったことがある」
 きらり、と闇の中で黒い瞳がそれを見上げた。シュンスケは続けた。
「あいつが言うほど、キミが悪いヤツにも見えない。何か誤解があるんじゃないか? ほら、あいつも不器用なとこあるし、
もう一度よく話し合って」
 くす、と闇の中で息が笑った。ぐす、ぐす、とそれは続いて、やがて肩を伏せての笑声になった。
「はなしあう?」
 ふっと、闇の中で空気が動いた。草食動物めいたシュンスケの眼には、鏡や鋏のきらめきが映ってすぐに消えた。
気づくと、窓から隠れるシャンプー台の横の壁にネクタイをつかまれて押し付けられていた。
「リョウ、く、ん?」
 丈夫そうな白い歯を覗かせた唇が近かった。シュンスケは身をすくめた。
「正しいおにいさまの周りの人間は、みーんな、馬鹿だな。自分の身をまず考えろ、ってね」
 薄い唇が頬をかすめた。
わずかに鼻にかかった低い声は聞き取りにくく、子供っぽさの抜けない甘い口のまわしかたが耳についた。
それは吐息の混ざったような熱っぽさでシュンスケの耳を麻痺させた。
「アイツはそういうヤツだよ。自分が正しい顔をして周りにもそう思わせる。自分が傷ついた顔をして周りにもそう思わせる。
自分がやったほんとのことなんて」
 闇を薙ぎ切る深いまなざしが眼鏡のフレームに手をやるときのアキユキと同じ色だった。
「言わないんだ、誰にも」

 塞がれたのが視界だったか聴覚だったかそれとも他のものだったかシュンスケにはわからない。
ただ、闇に覆われた中で親友のおとうとが抱える幾つかの秘密を押しつけられただけだ。
 腕を離しながらリョウは、唇の端を上げて、悪く、笑った。
 それが妙に親しく、幼く可愛らしく、ふてぶてしく鮮やかで、そして。
 泣いているように見えたのは何故だろうか。
 リョウが開けてくれたドアからシュンスケは外に出た。
 木犀の香りを含んだ風を頬に受けて振り返る。
 若い背中に、リョウはサロンの中の鏡や鋏の夜のきらめきをすべて隠しているように見えた。

 ベッドにもぐりこんで男たちは考える。隣に誰がいても、ひとりの時間だ。
 秋の日、鋏、まなざし、空気、唇、秘密、真実、過去、髪、ネクタイ、ぴかぴか。
 イメージの羅列は眠りを誘って彼らを連れて行く。女たちの知らない時間と空間に今夜も、こうして、この場所から。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ドラマ公式と予告で萌え
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)
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好きな役者ばかり出てるんだが…きびしいな。


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