■掲示板に戻る■ 元のスレッド 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501-  

モララーのビデオ棚in801板65

1風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:36:02.80 ID:/JKJVE2m0
   ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板64
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/801/1299475095/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/


2風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:36:33.63 ID:/JKJVE2m0
★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
  長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
  再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
(5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
   また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
   作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://bbs.kazeki.net/morara/

■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。


3風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:37:04.68 ID:/JKJVE2m0
2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


4風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:37:51.02 ID:/JKJVE2m0
3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


5風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:39:37.40 ID:/JKJVE2m0
テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘



6風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:40:15.61 ID:/JKJVE2m0
テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ


7風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:40:32.27 ID:/JKJVE2m0
テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


8風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:41:04.09 ID:/JKJVE2m0
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。


9風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 15:41:22.88 ID:/JKJVE2m0
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)


10ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼6 6/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/16(木) 17:45:03.77 ID:z1W0Wwrn0
1乙です!
久しぶりの投稿過ぎてマナーを欠いていました。
私のせいで新ルール作成と大変なことになったようで申し訳ないです。
これからは一週間置きくらいにきます。
トリップつけようとしましたが、名前が長すぎるらしいので、
ジャンル名省略させていただきます。

11風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 18:02:49.73 ID:gW+ar76UO
>>1
>>10
一週間で一度ならいいと思うよ
前から他の人とかの間でも問題だったし、調度良い

12風と木の名無しさん :2011/06/16(木) 19:34:21.01 ID:n9fFhkb80
>>10
乙…ていうか文句言ってるほうが

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://bbs.kazeki.net/morara/

を無視してておかしいんだから反応しないでほしかったけど

なお規制で投下できない人のために試験的に代行依頼板ができてるよ

13KING OF MY HERO 1/3 :2011/06/16(木) 23:34:12.59 ID:tJLD5x730
虎&兎 の空折です
・助走が長いので今回の投稿では全然な状況までしかありません。<続く>
・最終的にもドEROは無い予定です。   ・話しの展開の為、オリキャラが出てきます。嫌いな方は注意。    ・女子登場注意    ・擬態ハァハァ!!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

イワンは一人、トレーニングを続けていた。外では雨が降っている。強固なビルの中では音こそしないが、そのどんよりとした雰囲気は、室内の雰囲気を重々しくさせていた。
ダンベルフライを止めると、ゴトンとダンベルを置き、熱を持った胸に手を当てた。他の男性ヒーローに比べて圧倒的に弱々しい自身の身体。鍛えてもなかなか期待通りの結果にならない。
遠目に、ベンチプレスを軽々と上げるアントニオの姿があった。横でサボッてくだを巻いている虎徹を、面倒くさそうに時折一蹴している。ベンチプレスの重さに押しつぶされそうになる自分とは大違いだとイワンは思った。
「HI!順調かい?」
声をかけられ、イワンはその方向を向いた。返答に一瞬詰まってから、ハハ、と空笑いをしてみせる。
「あ、はい……順調です」
「それは良かった!」
真っ白な歯を見せて笑うキング・オブ・ヒーローがそこに居た。そして、屈託なく、人を疑う事を知らない笑顔でイワンを見つめている。
イワンはタオルを拾い上げ、取り繕うように汗を拭いた。
「ヒーローは毎日のトレーニングが欠かせない。大変だが、がんばらないといけないな!」
「そうですね」
淡々と答えたイワンだったが、イワンの予想に反してキースは何かを感づいたらしく、首を傾げると呟いた。
「元気がないのかい?」
「え?」
「いや、いつも通りの折紙君だが……いや、いつも通りでない折り紙君のような……」
思わず顔を上げたイワンと、キースの視線がぶつかる。キースの眼差しは、まるで保護者のような温かさを含んでいた。
「どうしたんだい?」
ニッコリと笑い、白い歯を見せる。
「スカイハイさん……」
イワンの胸の奥が締め付けられる。この人になら全てを言っても大丈夫なのではないかと一瞬頭を過ぎった。
全てを言ってしまいたい。全てを知ってもらいたい。
ごくりと唾を飲み込んで、縋るような瞳でキースを見つめる。

14KING OF MY HERO 2/3 :2011/06/16(木) 23:37:30.23 ID:tJLD5x730
「あの……」
「折紙サイクロン。ちょっと」
トレーニングルームにアニエスが顔を出し、手で廊下を指す。
何事かとキョトンとしているキースに軽く礼をすると、イワンは頷いて、アニエスに従いトレーニングルームから退出する。
廊下に出たところで、用心深く周囲を警戒しながらアニエスが口を開いた。
「シュテルンビルト市街のサウスゴールドで今日殺害予告があったの。対象は政治家トム・サリバンの娘よ」
「はい」
「先日の法改正で、サリバンが圧倒的な支持を受けて可決した法案があるでしょ。その復讐だと声明が出されてる」
「・・・・・・はい」
「まだ、予告だから事件があるとは限らない。だから貴方に行ってもらうことになったわ」
「・・・・・・僕が、戦えないから・・・・・・ですか」
その言葉を聞き、アニエスは怪訝な表情をした。イワンは自信なさげに俯いており、アニエスと目線を合わせようとしない。
「ばかね。あなたの能力を使うのよ」
アニエスは、イワンの腕を掴んだ。ハッと顔を上げるイワンに向かって、鼓舞するように言う。
「まだ事件が起こってないからこそ、あなたにしかできない解決法があるのよ。自信持っていきなさい!」

イワンはアニエスに連れられ別室に向かった。
会議室のドアを開けると、女性がアイマスクをつけて椅子に座っているのが目に入る。思わず立ち止まった。
「あなたの姿を見られるのは、営業に差し支えがあるからよ。――おまたせしました、ルビーさん」
アニエスはイワンの頭の中などお見通しだとでも言うように、さらりと説明をして部屋の鍵を閉める。
二人は女性の前に立った。アニエスが女性を指す。
「彼女がルビー・サリバンさん。トム・サリバン氏のお嬢様で、大学に通ってるわ」
「よ、よろしくお願いします」
ルビーが震えた声を出して、会釈をした。
アイマスクをしたその目は確認できないが、茶色の髪が肩のあたりまであり、健康そうな普通の女の子だとイワンは思った。
アニエスがイワンに視線を投げる。
「いい?あなたが擬態をし、家の中で犯人を待ち構える。現時点では予告だから、
 ウチ以外のマスコミにも嗅ぎ取られないようにしなさい。ヘタにばれると危ないわよ。
 カメラは外部から2台で家屋を撮影してるわ。動きがあれば、すぐに連絡を頂戴。応援はいつでもいけるように待機させておくから」

15KING OF MY HERO 3/3 :2011/06/16(木) 23:39:47.20 ID:tJLD5x730
「はい」
「もちろんヒーローの突入とともにカメラも入るから、きっちり仕事してよね」
「……はい」
「できれば室内にもカメラをセットしたいところなんだけど……声明に撮影禁止って書かれちゃってるからできないのよね」
「あの、それって……その状況なのに外から撮影するってことは……」
イワンが不安げに声を出した。アニエスが微笑んだ。
「そう。相手を怒らせる可能性もある。だからこそ、貴方なのよ、折紙サイクロン」
『納得できるような……できないような……』
「それとも、撮影もナシ?もちろんポイントだって無いし、いい格好だって見せられないケド」
「あ、いえ。あの……遠くからならいいです……」
「じゃぁ頑張って」
アニエスがぐい、とイワンを押し出す。
目の前には、椅子に座った女性。緊張気味に肩をすくませ、膝の上で握られた拳は小刻みに震えている。
「えっと……ルビーさん、ちょっと手に触れますよ」
イワンがそっとルビーの拳に手を添える。ルビーはビクリと身体を震わせた。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
あわてて手を離し、頭を掻くイワンの姿を、アニエスは呆れたように見ている。イワンがあたふたと喋りだした。
「あの、ルビーさん、あなたに触れますけど……痛いとか、怖いとか、そういうのは無いので、安心してください」
アニエスは懇切丁寧に説明をするイワンを今にも「まどろっこしい」と一喝しそうになりながら、自分を抑える。
イワンの説明が功を奏したのか、ルビーは漸く緊張を解いて頷いた。
ゆっくりとルビーの肩に手を当てイワンが集中する。爆発的な眩い光が部屋を包み込み、アニエスは顔を覆った。
一瞬の突風の後、静寂が訪れる。
「完了しました」
ルビーの声で目を開けると、アニエスの前には二人のルビーがいた。
立っていたルビーは自分のアイマスクをはずすと、アニエスへ恥ずかしそうに微笑みかけ、座っていたルビーのアイマスクをそっとはずし

た。
座っていたルビーは、椅子から転げ落ちそうな勢いで驚き、口に手をやる。立っているルビーは、イワンの声で言った。
「拙者が折紙サイクロンでござるよ!君を、守ってみせるでござる!」

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!  マダ モエマデ タドリツカネー!!

16風と木の名無しさん :2011/06/17(金) 12:41:03.10 ID:/f5SVz9zO
前スレ478kbだからまだ入ると思うの

17風と木の名無しさん :2011/06/19(日) 21:08:08.81 ID:85lyIhYZ0
前スレ埋めてくれた女神様たちありがとー
貴女方のおかげて良い萌えを享受する事ができます
本当にありがとう!

そして>>15は心置きなく続きを投下すれば良いと思うの

18風と木の名無しさん :2011/06/20(月) 00:51:24.11 ID:8CmC+MYn0
前スレ >>523 さん萌えぉありがとう!
脳からなんかいろんなもんが出てきた
いっしょに電磁王×教授でぐるぐるし続けたすぎる。。。

19風と木の名無しさん :2011/06/20(月) 08:19:28.03 ID:a3XmDFBP0
避難所の掲示板に投下代行スレが立ちました。
ご協力できる方、よろしくお願いします。
http://bbs.kazeki.net/morara/

20Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 1/7 :2011/06/20(月) 13:30:45.03 ID:2As85rnXi
殺し屋さんの不良少年と不良中年で、年下視点の父の日ネタ。
劇中のあんなことやこんなことが片付いて、事務所を構え直した設定です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 岩西の事務所に向かう途中、アジサイが目に留まって、花屋の前で無意識のうちに立
ち止まった。青、青紫、赤紫と微妙に違う色のアジサイの中央で、赤と青をちょうど同
じくらい混ぜたような紫の花と、青と黄色をちょうど同じくらい混ぜたような緑の葉が
輝いていて、無性に腹が立った。ムカつく理由は分かってる。岩西の目と髪の色だから
だ。普段はあいつの性格をそのまま映したみたいに暗く冷たい色をしているのに、光を
受けると淡く柔らかい色になる、紫色の目と緑色の髪。くそ、イライラする!
「お好きなんですか?」
「誰が! あんな奴大っ嫌いだ!」
 背後からふわりと耳に届いた甘ったるい声に、反射的に怒鳴って振り返ると、俺より
少し年上くらいの、背の低い茶髪の女が、驚いた顔で俺を凝視していた。エプロンを付
けているから、多分、花屋の店員だ。しまった、と思う。この女は、俺がアジサイを好
きかどうか聞いてるのに、とんちんかんなことを口走っちまった。とっさの言い訳が思
いつかねぇ俺が固まっていると、女はにっこりと微笑んだ。

21Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 2/7 :2011/06/20(月) 13:32:26.91 ID:2As85rnXi
「そっか、大っ嫌いなんですね。分かる分かる。私もすっごい仲悪いんですよ。もう、
中年の男性って、何でみんなああなんでしょうね?」
 どうやら俺は、自分では気付かずに、何か独り言を呟いていたらしい。そんなのビョ
ーキじゃねぇか。何もかもあのカマキリのせいだ、ちくしょう。
「あいつに比べたら、そいつは百万倍マシな人間だと思うぜ?」
「そうかなぁ」
 そうだよ、だからその上司で我慢しとけよ。心の中でそう言って、事務所に向かう足
を再び動かそうとすると、女はアジサイを見下ろしながら、俺に話し掛けてきた。
「紫陽花ってね、こんなに綺麗な花なのに、花言葉は結構辛辣なんですよ。辛抱強い、
浮気、高慢、無情、冷淡――まあ、愛情や家族を象徴する花でもあるんですけどね」
 俺もアジサイを見下ろす。
「……ふーん」
 人間が勝手にその花の意味を決め付けるなんて、イカれてるとしか思えない。

22Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 3/7 :2011/06/20(月) 13:32:59.67 ID:2As85rnXi
「おひとつ、いかがですか? 驚くと思いますよ。驚いた顔、見たくありません?」
 わざとじゃないのかもしれねぇけど、人に媚びるような笑顔がうっとうしい。バカな
男なら、喜んで買うんだろうな。水商売でもやれば、結構金稼げるんじゃねぇの?
「別に。あんな奴に物をくれてやるなんて、想像しただけで反吐が出る」
 俺は買わねぇ、という意味を込めて女の横顔を睨んでやったが、アジサイをじっと見
つめている女は気付かない。
「あげなくてもいいんですよ。あなたが花束を持ってるところを見るだけで、自然と顔
に締りが無くなりますから。喜んでいるところを、鼻で笑ってやればいいんですよ。家
に飾りたくて、自分のために買って来ただけだ、何勘違いしてるんだって。あんなにじ
っと見つめてたってことは、アジサイはお好きなんでしょう?」
 面倒臭い。周りに人が居なければ、とっくに顔を殴っていたと思う。しかし、仕事に
必死になるのは、生きるために必死になるのは当たり前だ。買えばこの女からすぐに解
放される。だから、仕方無く買ってやることにした。

23Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 4/7 :2011/06/20(月) 13:33:55.08 ID:2As85rnXi
 事務所のドアを開けて、岩西が踏ん反り返っているデスクに向かう。
「遅ぇぞクソガキ! 大人をどれだけ待たせるんだ。ジャック・クリスピン曰く――」
 花束なんて似合わねぇもんを持ってる俺を見た岩西は、眼鏡のレンズの奥の鋭い目を
見開いて、ぽかんと口を開けた後、顔をにやつかせた。
「ひひっ。何だ? その花束は。爆弾でも入ってんじゃねぇだろうな」
 驚いた顔も、締りの無ぇ顔も、バカみたいでケッサクだ。俺は鼻で笑ってやった。目
的を達成したあとは、もう女の言葉に従う必要は無い。俺は俺のやりたいようにやる。
「花屋の店員にムリヤリ買わされた。俺は要らねぇから、事務所にでも飾っとけ」
 俺は花束を岩西のデスクに置いた。岩西は意味ありげに俺を見上げて、くつくつと喉
を鳴らして、小刻みに肩を震わせている。何かが変だ。何だよ? 何なんだよ岩西? 
「ひっひっひっ……はははははははは!」
 今度は、俺が目を見開いて、ぽかんと口を開けるはめになった。岩西は、そりゃあも
う可笑しそうに、楽しそうに、文字通り腹を抱えてけたけたと大爆笑している。こいつ、
このまま革椅子から落ちるか、革椅子ごと引っくり返るんじゃねぇだろうか。あ、まさ
にこれに当てはまる四文字熟語があったような……何だっけ。ホークフ……ホーフクゼ
ットー?

24Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 5/7 :2011/06/20(月) 13:34:29.21 ID:2As85rnXi
「……ひーっ……死ぬ……腹痛い……!」
 ああ、そうだな。本当に笑い死にそうだよ、お前。低い声が変に裏返って、目には涙
が浮かんでいた。涙に濡れた紫から、雨に濡れたアジサイを連想する。あんな神秘的な
もんと、この人でなしが繋がっていいはずがないのに。
「何なんだよ岩西! 花買って来たくらいで、そこまで笑わなくたっていいだろ!」
 俺が叫ぶように言うと、岩西は眼鏡を外して涙を指で拭った。そして、にやにやしな
がら俺の顔を見る。
「蝉。さてはお前、今日が何の日か知らねぇだろ?」
「ああ?」
 俺だって、祝日くらいは何となく覚えてる。けど、俺の記憶の中のカレンダーには何
も書いちゃいない。六月に祝日は無い。今日はただの日曜日だ。間違いねぇ。
「騙そうったってそうはいかねぇよ。六月に祝日は無いぜ?」
 岩西は眼鏡を掛け直すと、今度は真面目な顔をして俺を見た。

25Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 6/7 :2011/06/20(月) 13:35:06.64 ID:2As85rnXi
「父の日だよ」
「チチの日?」
 岩西はまたにやにやと笑う。
「おっと、おっぱいの日じゃねぇぞ。今日はな、オトーサンの日だ。ここの近くの花屋
で買ったんなら、ポスターが貼ってあったろ? 六月の第三日曜日、日頃の感謝の気持
ちを込めて、大切な人に花を贈りませんか――ってな」
 ポスターなんか見てないけど、思い出しちまった。五月の日曜日に、母の日ってのが
あったはずだ。そういえば、あの花屋、妙に客が多かったような。あの女が言った「中
年の男性」って、もしかして。つーことは、多分、嘘じゃ、ない?
「そうかそうか、お前は俺のことを父親みてぇだと思ってたのか。知らなかったなァ、
蝉。くくっ……」
「違っ……俺が買ったのは、そのっ、綺麗だと思って、自分で鑑賞しようと……」
 熱い。顔が熱い。もうマジ訳分かんねぇ。
「ほー、『綺麗だと思って』買ったのか。『花屋の店員にムリヤリ買わされた』んじゃ
なかったんだな。『自分で鑑賞しようと』……ねぇ。『俺は要らねぇから、事務所にで
も飾っとけ』って言ったのは、どこのどいつだったっけか?」
 そうだよ、それを言ったのはお前んとこの俺だよ。何も言い返せねぇ。


26Waltz 岩西×蝉 「紫陽花」 7/7 :2011/06/20(月) 13:35:43.58 ID:2As85rnXi
「ありがとうな、息子よ。お父さんは涙が出るくらい嬉しいぜ。ひひひ」
「気色悪ぃこと言うな! 殺すぞ!」
「ごめんな、先月のこどもの日は何も用意しなくてさ。来年もお前が生きてたら、ちゃ
んと用意するから。くっ……ははははは! マジで傑作だぜ、こりゃ! バカだなー!」
 岩西は、またホーフクゼットーし始めた。
「笑うな、笑うな、笑うなーっ!」
 岩西も花屋の店員も半殺しにしてやりたいけど、笑ってる岩西が、まるで、人を殺し
たことの無い普通の男みたいに見えるのは、ほんのちょっとだけ面白いから、二人とも
特別に許してやるよ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

27風と木の名無しさん :2011/06/20(月) 14:15:24.77 ID:W0+DmwDT0
前スレ>>523
ありがとう。自分も今回の最新作で腐にまみれたからこうゆうの見たかった!
すげぇ嬉しい!

28風と木の名無しさん :2011/06/20(月) 20:49:42.76 ID:kpbqFWoB0
>>26
GJ、この二人はまさにこんな感じですよね! 前のも萌えました!

29とある土×上 fragments 1/6 :2011/06/20(月) 21:17:55.08 ID:laBgdQx80
とある魔術の〜で土帝×上條です。キスどまり。
伏字これで大丈夫か改行大丈夫か、そもそも中身が…と不安が尽きないけど投下。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「まいかのおうち、すっごくすっごく楽しみなんだよ!」
「ふっふっふっ。これだけ食べてくれる人が来るとなれば、私の腕も鳴るというものー」
土帝の義妹・舞花が、インデックスを寮に招きたいのだという話は、実は前々からよくしていた。
舞花が通う繚乱家政女学校は、プロのメイド養成学校である。
実地研修を許されている舞花は自分の寮での生活に拘っていないようだが、
インデックスが遊びに行きたがっていたし、実際舞花も料理を振る舞うのを楽しみにしていたらしい。
舞花はいつものように、週末、土帝の部屋で食事の作り置きを済ませたところで、
インデックスを伴って出掛ける前に、上條も一緒に夕食に招かれたのだった。
「大丈夫か? こいつの腹はマジで遠慮知らないぞ」
「とうま、その言い方はちょっと失礼かも!」
インデックスがキラリと犬歯を光らせた。
何しろこの銀髪腹ペコシスター、なりは小さいが胃袋は底なしである。
「まー任せときなってー。何人かクラスの子も巻き込んでるしー」
「だったら心配いらないか」
「舞花に満足しちまったら、カミやんとこに戻ってきた時大変だったりしてにゃー」
メイドお手製の豪華なフルコースに慣れきったインデックスが帰ってきたら、どうなるのか……。
それを想像して上條は思わず肩を落とした。
「新たなる不幸の予感……」


30とある土×上 fragments 2/6 :2011/06/20(月) 21:21:17.55 ID:laBgdQx80
とは言え、舞花の寮で過ごすことはきっとインデックスにとって
いいことだろう、と上條は考えていた。
イギリス清教にはインデックスの監督―――と言うと禁書目録を本当にモノ扱いしているようで
気に入らないのだが―――、要は学園都市での保護というか世話を任されている。
実際にどういう経緯でそうなったのか、詳しくは上條にもよくわからない。
上條は訳あって記憶喪失なのだった。
病室で包帯まみれで目が覚めた夏休みのあの日。それより前のことは、きれいサッパリ覚えていない。
インデックスは記憶を失くす前の自分に助けられたのだという。
彼女はなんだか当たり前みたいなことのように、上條の部屋で暮らしている。
年頃の少年と少女が男子寮の一室で同棲、である。
上條が学校に行っている間も含めて、インデックスはほとんどの時間を部屋で過ごす。
ただでさえインデックスは学園都市での知り合いが少ない。
しかも学園都市外部の人間のため、うろついている所をアンチスキルにでも見咎められると面倒なことになる。
女の子一人を匿って閉じ込めているも同然だった。
どう考えても健全とは言い難かった。


31とある土×上 fragments 3/6 :2011/06/20(月) 21:24:07.50 ID:laBgdQx80
「じゃあなー。一気に食って週の半ばで死にそうになっても助けてやらないぞー、ダメ兄貴ー」
「そん時はカミやん家の世話になるにゃー」
「それは食費出してくれるってことですよね、土帝さん?」
「……」
「スルーか!」
「それじゃ、いってきまーすなんだよ」
「おう。あんま迷惑かけんなよ」
遅くならないうちにと、舞花はお泊りセットを持ったインデックスを連れて土帝の部屋を後にした。
二人の少女が去ると、さっきまでのかしましさが嘘のように一気に静けさが訪れた。
色も音も元に戻ったただの男子寮の一室はわびしいものだ。
「さて、と。洗い物くらいしてくよ」
「そうしてくれると助かるぜよ」
寮の部屋の作りは所謂ワンルームなので、台所のスペースなどたかが知れている。
男二人が洗い場に立つと、それだけで窮屈さを覚えた。
こんな手狭な所で、よくあんなに手間の掛かりそうな料理をいくつも作るものだと、舞花には感心するばかりだ。
上條は自炊派だが、単身赴任中のお父さんが仕方なく覚えた、程度の腕前だった。

32とある土×上 fragments 4/6 :2011/06/20(月) 21:26:56.45 ID:laBgdQx80
「久し振りにベッドで眠れるなあ……」
「どーいう意味ぜよ」
皿を洗いながらの無駄話も尽きかけたところで、なんとなく呟いた一言に土帝が食いついてきた。
「いや、普段風呂場で寝てるし」
「マジで!?」
土帝の手が止まる。心底驚いているっぽい。
と言うかまさかインデックスと一緒に寝てると思われてたのだろうか。
「いや、だって、よくないだろ……! つか、寝惚けたあいつは本当に凶悪なんだって!」
「間違いを起こすのがこわいのかにゃー?」
「あんま深く考えさせないでください」
「……やっぱりカミやんは、あれは間違いだったと思ってるのかにゃー」
思わせぶりな土帝の言葉に今度は上條の手が止まった。
―――あれ、ってなんだ。
繰り返すが上條は記憶喪失だ。その上、それを周囲の人達に隠している。
意識を取り戻したばかりの自分に泣いて笑ってくれた少女のために、
記憶を失くしたことは隠し通さなければならないと、心の中で決めたから。
それ故、記憶喪失以前に起きたことについてはほとんど何も知らないのだ。
まさかインデックスと何か―――?
咄嗟に浮かぶ考えに、眩暈が起きそうになった上條だが。
「俺が何も言わなきゃ、本当にこのままなかったことにするつもりだろう?」
今度は突然そんなことを言われた。ワントーン落ちた土帝の声からは、普段のちゃらけた調子が消えていた。

33とある土×上 fragments 5/6 :2011/06/20(月) 21:28:36.56 ID:laBgdQx80
真意がわからなくて土帝の顔を見る。
サングラスの青いレンズ越しでも、土帝が真剣な目をしているのがはっきりとわかった。
寮の隣人兼クラスメイトの時の顔ではなく、魔術師として仕事をしている時のような。
普段は見せない表情をしている土帝がそこにいた。
「つちみか―――」
最後まで名前を呼ぶことは出来なかった。
濡れたままの腕を掴んで引っ張られたかと思うと、自分の唇に土帝のそれが重なっていた。
「……!」
咄嗟に後退ると、触れていただけの唇はすぐに離れた。
(間違いって、なかったこと、って……)
改めて見た土帝は、どこか寂しそうな目をしていた。
そこでようやく悟った。土帝と前にもこういうことがあったのだと。
「―――――……」
次第に事の重大さの方へと意識が回ってくる。
今の上條の記憶にはキスの経験などない。けれど、男同士でするのは普通じゃない、と上條の知識は言っている。
間違い。その言葉が現実味を帯びて頭の中に広がっていく。
何か、言わなければ。でも何を言えばいい。
記憶喪失ですので覚えてません、なんて死んでも言いたくなかった。
逡巡していた上條に再び唇が降ってくる。
今度は舌で唇を抉じ開けられた。
柔らかで生ぬるいそれに粘膜を探られる感触に、肌が粟立った。

34とある土×上 fragments 6/6 :2011/06/20(月) 21:36:10.12 ID:laBgdQx80
「―――ん、…うぅ……、」
土帝はクラスメイトで隣人で、大事な親友だ。
その関係を守るために今すぐ突き飛ばして離れるべきだ、と思う。
けれど、土帝の『なかったことにするつもりか』という言葉が頭から拭えない上條は、動くことが出来ない。
その言葉は上條にとって鬼門と言ってもいい。
記憶を失くす前に起きた出来事をなかったことにするなんて、絶対にありえない。
たとえそれがどんな事実であっても。
いつしか上條は土帝の舌に拙いやり方で応えていた。
掴まれた腕が熱を持っている。まるで火傷したみたいだった。
互いの口の中で濡れた音が立つ度、朦朧としていく。溺れていく。
口蓋を舌先でそろりとくすぐられると、頭の芯が甘く痺れた。
「は……、」
うまく呼吸ができず息が上がった頃に、土帝はようやく解放してくれた。
霞がかかったように頭が働かない。きっと今、自分はとんでもなく呆けた顔をしている、と上條は思った。
そのままでいると、下唇を親指で拭われた。そうしながら土帝は喉奥で微かに笑っている。
「今日は随分しおらしいにゃー」
「………るさい」
じゃあ、今日じゃなかった時は? もっと大胆だった? それとも、もっと無遠慮だった。
かつての自分がどう振る舞ったのか。そればかりが気になって仕方なかった。
そのまま土帝にそっと抱き締められる。上條を簡単に伸してしまうことの出来る土帝の腕が
こんなに優しく触れてくるなんて、何かの冗談みたいだった。
「泊まってけよ」
耳に直接囁く土帝の声がくすぐったい。熱っぽい吐息がかかる度に、ますます体に力が入らなくなっていく。
今度こそ拒まないと、もう後には退けない気がするのに。
上條は目を閉じて、土帝の腕の中で一度だけ首を縦に振った。

35とある土×上 fragments 終わり :2011/06/20(月) 21:39:07.87 ID:laBgdQx80
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最後改行にひっかかってしまったorz
記憶喪失おいしいです。エロは挫折した。

36堅物と自由業 1/7 :2011/06/20(月) 22:48:52.75 ID:vNc5a8l60
オリジナル。絡みスレの
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/801/1308154369/232-234
を見て脳内に浮かんだストーリーを書いたら、元と全然違ったものになったでござる。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 カーニバルの前日は、町中がどこか浮き足立っている。
教会前の広場にはイベント用の巨大なステージが立ち、目抜き通りには途切れることのない長い長い花飾り、
それぞれの家のドアは、人々が思い思いに工夫を凝らした飾り付けであふれ、
伝統的な白い壁と紅い屋根が並ぶその町に、いつもとは違う華やかな彩りを与えている。

 午後5時。祭り本番を待ちきれないかのように点灯されたイルミネーションの中、
一軒の古ぼけた家の前に、これまた面白みの無い大衆車が止まった。
ドアが開き、すらりと背が高い男が降りてくる。
少しくすんだブロンドの髪を乱れなく整え、仕立ては良さそうだがやや流行遅れのスーツを着込み、
端正な顔立ちをどこか野暮ったく堅苦しいオーラで包み込んでいる。
 彼は幻想的な町の雰囲気などまるで意に介さないかのように、てきぱきと車から荷物を降ろし、
振り返りもせず一直線に玄関に向かった。ポケットから鍵を取り出す。

37堅物と自由業 2/7 :2011/06/20(月) 22:50:31.48 ID:vNc5a8l60
 男がドアを開けると、誰もいないはずのリビングからほんのりと光が漏れている。泥棒か強盗かもしれない。
「誰かいるのか?」
少なからぬ警戒心を持って男が問うと、リビングから聞きなれた声が返ってきた。
「おかえり」

「どうやって入ったんだ」
荷物を抱えたまま、呆れ果てた表情をして男は言った。
「ダイニングの窓の鍵を壊しておいたんだ」
ソファにラフに座っている、侵入者である男が答えた。
傍らにノートPCを広げ、そのモニターから発せられる青白い光だけが、
彼の少し乱れた漆黒の髪と、それに反比例するかのように白い肌をぼうと浮かび上がらせている。

「……お前じゃなかったら器物破損と家宅侵入で通報してるところだ」
家の持ち主であるブロンドの男が、溜息をつきながら部屋の明かりを点けた。
「ああ、もう日が暮れてたのか。仕事してたから気がつかなかった」
黒髪の男は気だるげに伸びをした。

38堅物と自由業 3/7 :2011/06/20(月) 22:52:28.31 ID:vNc5a8l60
「どうでもいいが、なんでうちで仕事してるんだ」
ブロンドの男はスーツの上着を脱ぎ、荷物を片付ける手を止めないまま訊ねた。
「物書きはPCさえあればどこでも仕事できるのさ」
「どこでもできるんなら自分の家でもできるだろ」
「自分の家だと何故だかいい文章が浮かばないんだ」
「そりゃ早急に引っ越した方がいいな」
「ベストな場所がここにあるんだから、いいじゃないの」
「それで不法侵入か」
「インスピレーションは小説家の命だよ。その為ならなんだってするさ」

 黒髪の男はノートPCを閉じると、ソファに座りなおして言った。
「で、今日はずいぶん早いけど夕飯どうする? こないだ三番街にできたイタリアン行ってみる?
観光客で混んでるかな? それともケータリングでも頼んで」
「あいにくだがまだ仕事が残ってるんだ。着替えと、あと書類を取りに一旦戻ってきたんだよ」
「ええーっ!」
そりゃないよ、をそのまま固めたような顔をして、黒髪の男は家の主を見た。
「ここのところ一日も休んでないし、帰ってくるのは真夜中じゃないか。
明日はカーニバルなんだよ? 今日だって前夜祭なのに」

39堅物と自由業 4/7 :2011/06/20(月) 22:54:32.66 ID:vNc5a8l60
「明日はカーニバルで今日は前夜祭だからだ」
今度はキャビネットの引き出しから何やら書類を取り出し、中を確認しながらブロンドの男が答える。

「お偉いさんとの会合が終わったから、最終のリハーサルにちょっとでも立ち会わなきゃならん。
ステージ前の客席の設置が遅れてて終わってない。飾りつけには貴重な伝統品もあるんだ。警備も再確認しなきゃならん」
「警備なんて警察に任せておけばいいじゃないか。なんでそんなに何でも引き受けなきゃなんないんだよ」
「人手が足りないんだ。来月には選挙もある。そっちにも人を取られてる」
「増やせばいいじゃない、人手を。それかもっと給料を上げてもらいなよ。割に合わないよ」
「公務員の増員か給与引き上げね。議会がすんなり承認してくれることを願うよ」
黒髪の男が口を尖らせる。そのまま反論しようとするのを制して、ブロンドの男は続けた。
「誰かがやらなきゃならないんだ。公務員がやるってルールが一番平等で分かりやすくて効率がいいんだよ」
「そのルールに縛られてややこしくなってるのが公務員でしょ」
「そうかもしれないな。でも決まりは決まりだ」
「はっ、つまんないの」

 シャワーを浴びて着替えてくる、と言い残して、ブロンドの男はリビングを出ていった。
後ろ手に閉めたドアに、何かが投げられてぶつかる音がした。

40堅物と自由業 5/7 :2011/06/20(月) 22:56:32.79 ID:vNc5a8l60
 ブロンドの男が作業着に着替えてリビングに戻ると、件の彼はそこにはいなかった。
代わりにダイニングから灯りが漏れ、鼻腔をくすぐる良い香りが漂ってくる。

 覗き込んだブロンドの男は、おやおやと言わんばかりに片方の眉を上げた。
テーブルの上に、フレッシュコンビーフやチェダーチーズを挟んだサンドイッチが並んでいる。
インスタントだろうが、ご丁寧にマッシュポテトとスープも添えられている。
「これから夜中まで何も食べずに働くつもり?」
上目遣いの正論に、降参のポーズをとってから向かいの席に座るしか彼に答えは無かった。

 おとなしく椅子に座った恋人に満足したのか、黒髪の男は少し機嫌を直したようだった。
自分もサンドイッチをつまみながら、次回作のプロットを語りだす。

「今度、インターネットをテーマにした話を書こうと思ってるんだよ」
「時流に沿ってる。ウケるんじゃないか?」
「そう思う? いろんな国の人達が関わってくるストーリーにしたいんだよね。
それで今は日本のインターネットスラングやミームについていろいろ調べてるんだけど、
その中に『乙』っていうのがあってね、これは『otukaresama』っていう単語の略なんだ」
「ほう」

41風と木の名無しさん :2011/06/20(月) 22:58:46.78 ID:fEXwLXYa0
支援

42堅物と自由業 6/7 :2011/06/20(月) 23:02:23.68 ID:vNc5a8l60
「『otukaresama』っていうのは、本当にいろんな意味に使われる言葉なんだけど、
その中の一つにnice jobの意味もある。
さらに『乙』っていう漢字の形は、アルファベットの『Z』にそっくりなんだ。
それで僕は思ったんだよ。思いついたと言ってもいい。
『Z』ってまるで、Aから順番にアルファベットを唱えてラストまで読みきった人を
ラストで褒めてるみたいじゃないかって」

「うーん。『Z』は『Z』で、単に最後のアルファベットだろう? 褒めてどうするんだ?」
「…………」
「それに、こちらの文化に他国の文化を無理やり当てはめて解釈するのはあまり感心しないな」

機嫌良く話していた黒髪の男の、整った眉と眉の間にみるみるしわが寄る。
「そうだったよ、あんたはそういう男だったね。小説家のファンタジーとロマンを全部否定しないでくれる?
ああもう! 話した僕が馬鹿だったよ! 糞ったれ!」
「別に馬鹿にした訳じゃないんだが」
ブロンドの男は立ち上がり、眉間にしわを寄せたままの彼に言った。
「美味しかったよ、有難う」

43堅物と自由業 7/7 :2011/06/20(月) 23:04:10.52 ID:vNc5a8l60
 書類を入れたカバンを手に取り、玄関に向かうブロンドの男の背中に向かって黒髪の男が声を上げた。
「それだけ? 感謝のキスぐらいしてよ! 公務員なら僕みたいな納税者の願いは聞くべきじゃない?」
「そのルールに従うなら、俺は町中の納税者とキスしなきゃならないな」
「ルールルールって! あんたとキスしたがるのは僕くらいのもんだよ!」

 歩みを止め、口元に笑みを浮かべて戻ってきたブロンドの男は、黒髪の男の顎にそっと手をかけた。
「どこでも仕事できるんだろう? じゃあベッドの中で仕事してろ。ついでにベッド、暖めとけ」
その答えが呟かれる前に、唇がふさがれた。
 荒々しく貪るような、本当は今すぐお前を喰らいたいのだとすぐに分かるようなキス。
しかし添えられた手はどこまでも優しかった。

 唇が離れる。
「あとこれ」
ブロンドの男はカバンから鍵の束を取り出してそのうちの一つを外し、恋人の手に握らせた。
「合鍵だ。もう窓の鍵を壊すなよ」
そして今度こそ振り向かずにドアを開け、彼のやるべき仕事が待つ前夜祭の町に旅立っていった。

 黒髪の男は紅潮した顔に抗議のまなざしを浮かべていた。
「そんなとこで書けるわけないだろ!」
小さな声で、閉じられたドアに向かってつぶやいていた。

44堅物と自由業 終わり :2011/06/20(月) 23:05:55.46 ID:vNc5a8l60
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!

>>41
支援感謝です。

45風と木の名無しさん :2011/06/21(火) 00:00:53.66 ID:TsKpgv7MO
>>26さんGJ。
大好きだー
大好きだー
大好きだー


また書いてもらえたら嬉しいです。

46風と木の名無しさん :2011/06/21(火) 00:21:42.52 ID:VDZOPSLT0
>>44
あなたは神か
マジで尊敬するGJ!

47風と木の名無しさん :2011/06/21(火) 00:36:03.51 ID:FxTqeQrS0
>>28
>>45
ありがとうございます!
ちなみに、私が彼らの話を書いたのは初めてなので、
以前棚に投下された方とは別人ですよー。

48夜空 1/5 :2011/06/21(火) 00:45:51.98 ID:xGbydpPrO
オリジナル投下させてください。元兵士の話

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


こんな形で再会することになるとは思わなかった。
アルは病室で天井を見つめたままベッドに横たわっている。シーツの片側がつぶれているのは、右腕がなくなっているからだ。
そばに行こうとしても足が動かない。それを見て彼の母親はお願い、と言った。
「あの子は右腕と同時に心まで吹き飛ばされてしまったんです。これが一時的なものか、ずっとこのままなのかは分からないと言われて」
右腕以外に身体に損傷はないらしいが、外部に対しての反応が全くないのだという。
ただ点滴をして、ベッドの上で生きているだけのような状態。
退役した友人にはこんな風に何かしら心の病を患っている奴が何人もいる。
そういう自分だって、しばらくは薬を飲まなきゃ眠れなかった。
外から聞こえるクラクションの音が、人の大声が、振動が僕を戦場に戻してしまう。神経が研ぎすまされ、嫌な汗が出た。
もしかしたら彼は今も心の中で戦場にいるのかもしれない。
「お友達の姿を見れば、何かしらの反応が出るかもと思って、何人もの人に来ていただいているのですが」
母親はうつむいた。声が震えている。
「話しかけてやってください。お願い、アルを戻して」
彼女は廊下に出て行く。耐え切れないのだろう。そばにいるのに、何もしてやれないことに。
でも彼はあなたを愛しています。
「戻ったら、お袋の作ったマフィンが食べたい。甘いものあまり好きじゃないのに、そんなことばかり考えてるんだ」
彼はいつもあなたの話ばかり。笑顔でマフィンを焼く姿を想像して、いつか会ってみたいと思っていたけれど。

ベッドの横に座って、彼の顔に手をかざして振ってみた。目が動いていない。
髪はすっきりと刈られ、髭も剃られている。
僕の知っているアルはいつも無精髭で、ヘルメットからバサバサになった金髪がはみ出していた。
顔は大抵迷彩塗料が塗られていたし、日焼けもしていたから、今の彼は別人みたいだ。

49夜空 2/5 :2011/06/21(火) 00:48:19.22 ID:xGbydpPrO
残っている方の手に触れた。暖かい。確実に生きているのに、君はどこへ行ってしまったんだい。
彼の手を顔に押し当てたまま泣くしかなかった。
「会いたかった。聞こえてないかもしれないけど」
そう言って、僕はとりとめもないことを話すことにした。

兵役で初めて配属先に着いたとき、僕は戦地にいるという何ともいえない恐怖感と緊張でピリピリしていた。
見張り役は常にベテランと新人という組み合わせになっていて、僕はアルと組むことになった。
挨拶に行くと、彼は衛生兵に腕の手当をしてもらっている。青ざめている僕を見て大笑いされた。
「いやいや、撃たれたとかじゃなくて、遊んでてそこの丘からずり落ちちまってね。擦り傷」
ここはそんなに危険な場所ではないらしい。お前はラッキーだよと言った後、あ、俺もか、と笑った。
そんな風にいつも彼は笑顔で、僕を安心させてくれた。
同じ時期に入った奴は酷い先輩と組んだらしく、ほとんど小間使いみたいになってると嘆いていたっけ。
どちらにせよ、新人というものはからかって遊ばれる。要は暇つぶし用の新しいおもちゃが来たみたいなものだ。
シャワー中に水を止められたり、食事を盗まれたり、川に突き落とされたりと、子供じみた行為ばかり。
しかしここは戦場で、そんな最中にも別の部隊の応援に行った兵士が死体になって戻ってきたりする。爆撃もある。
それはあまりにも今までの生活と違っていて、僕を混乱させ、精神的にまいらせた。

深夜、彼と基地の端で見張りの仕事をしていたとき、爆撃音が聞こえてきた。身体が震える。
「大丈夫だよ。遠い。ここには来ない」
横で仰向けになり、煙草をふかしながら夜空を眺めていたアルは、そう言って僕をなだめた。
「分かってます。その、まだ身体が慣れてなくて。無意識に」
「半年もすりゃ慣れる。慣れる、じゃないな。麻痺するんだ」
彼は何人もの兵士の死を見ている。
「目の前で仲間の体が吹き飛んでも何とも思わなくなる。急いで後ろにずり下がりながら、自分が怪我してないか確かめるくらいで」

50夜空 3/5 :2011/06/21(火) 00:51:14.83 ID:xGbydpPrO
怪我かと思ったら誰かの血しぶきがついただけなんてこともあった、とジョークかのように話す。
「震えてるってのは、まだ人間的な感覚が残ってるってことさ」
彼は、僕を引き寄せて背中をさすった。肌の温もりが気持ちを落ち着かせてくれる。
今度は安心したせいで涙が出てきた。張りつめていたものが一気にほどけたように。
「なんだよ、お前忙しい奴。大丈夫だから」
彼はクスクスと笑っていたが、僕は恥ずかしさとおかしな安堵感でいつまでも泣いていた。

アルは色々話してくれた。
生まれてすぐに父親が死んでしまったこと。姉が結婚して遠くに住んでいて、今家にいるのは母親一人だけだということ。
まだ会ったことのない甥っ子が最近歩き始めたこと。思い浮かぶのはキッチンに立って料理をしている母親の後ろ姿ばかりだということ。
マザコンだ、と言うと
「そうだよ、悪いか。こんな殺伐としたところにいりゃあ、誰でも母親が恋しくなるさ」
と頭をつつかれた。

ここは中継地点のようなもので、直接攻撃が起きるなんてことはあまりないので気が緩んでいたのかもしれない。
夜中にいきなり銃撃戦が始まったことがある。
僕は後方で弾補充をした。寝ていたところを叩き起こされたので、とにかく教えられたことを正確にこなすことに必死になっていた。
向こうが偵察に来たところ、こちらの見張りに見つかって交戦状態になったらしい。人数的にも圧勝でほどなく治まった。
放心状態になって座り込んでいると、救護班! と叫ぶ声がした。手伝おうと声の方向に行くと誰かが倒れている。
そいつは腹が血でびしょ濡れになっていて、口から血を少し吐いたきり動かなくなった。
今夜の当番だった。
同期で入った奴だった。
最悪なのはその次の日の夜間の見張りが自分たちだったこと。
僕は無言のままうつぶせに銃を構え、ずっと正面を睨み続けていた。アルは相変わらず仰向けになって鼻歌を歌ったりしている。
時折ちょっかいを出すものの、僕が相手にしないのでつまらなそうに舌打ちをした。
「昨日の今日なんだから、むしろ何もないと思うけどねえ」
麻痺してる。
「俺が?」
首を振る。そうじゃない。

51夜空 4/5 :2011/06/21(火) 00:54:22.18 ID:xGbydpPrO

「死んだ奴、僕と同期なんです。あの大量の血を見たとき、悲しいとか悔しいとかよりも、恐怖心でいっぱいになった」
恐怖心があるならまだいいさ、と呟くと、彼は体を起こして僕の肩に触れた。
「お前ガチガチだな。恐いからって、これじゃ敵が来たって撃てやしない。もっと力抜かないと」
と言った途端、脇に手を入れて僕をくすぐった。
笑ってしまいつつも体から離れようと彼の胸を押した。ずっと同じ体勢で構えていたせいで、肘から下がしびれて力が入らない。
諦めて仰向けになった。吸い込まれそうな夜空が広がる。
「……死ぬの、恐くないですか?」
「生きるので精一杯でね。こんな場所じゃ、いちいち考えてらんない。おまえのその感情が羨ましいよ」
そう言うと僕の頭を引き寄せて撫でた。耳元から聞こえてくる彼の息づかいが心地いい。
ここの夜はあまりにも暗く、星がよく見える。今夜は特に静かで、自分がどこにいるのか分からなくなる。
生きていることさえも。
「僕、生きてますよね?」
そんな馬鹿げた質問に答えるように、彼は強く抱きしめてくれた。大丈夫だと言われている気がした。
熱を持った身体が僕を覆う。服に滑り込んだアルの手が背骨をなぞる。
気がつくと僕は彼にしがみついていた。
彼の指先に、彼の唇に、舌に身体が反応する。
蒸し暑くて、二人とも汗だくだったけれど離れたくなかった。久しぶりの柔らかい感触。人肌が恋しかった。
何度も声が出そうになって、その度に自分の指を強く噛んだ。血がにじむ。生きてる。
多分アルも同じことを考えていたに違いない。人間的な感情があるってことを、確かめたかったんだ。

やがて彼は別の部隊に配置が決まり、そこを離れ、僕らは別々になった。
ずっと、生きてくれてればいいと思っていた。会いたくてどうしようもなかった。

52夜空 5/5 :2011/06/21(火) 00:57:12.66 ID:xGbydpPrO

僕は病室で、できるだけ楽しかったことを話した。
アルがふざけて僕の耳に花を挿して飾ったり、こっそり二人で川に水浴びに行ったこと、寝ている上官の顔に落書きしたこととか。
でもベッドで寝ている姿を見たくなくて目を瞑っていた。
ふと、顔に押し当てていた彼の手が動いた気がして、目を開く。天井を見つめたままの目から涙がつたっている。
「アル?」
反応はないけれど、確かに左手が動いている。微かに横に、手を振るように。
彼の手を頭に乗せてみた。気のせいじゃない。アルは僕の頭を撫でている。
僕は慌てて彼の母親を呼んだ。

声が聞きたい。片手でいいから抱きしめて欲しい。笑顔の彼に会いたいから。また二人で星が見たいから。
だから、絶対にアルを戦場からこっちに戻してみせる。
そんなことを言うと、もっと力抜かないとって笑われるんだろうな。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ありがとうございました!特にどこの戦争とかは考えてません。

53風と木の名無しさん :2011/06/21(火) 01:01:30.21 ID:aRwabHJG0
>>36
絡みスレが落ちると元ネタわかんなくなるから貼っておく
何をどうすると234の二行でその長文が出てくるんだか謎だw

> 232 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2011/06/20(月) 02:38:34.99 ID:ZISZxi0EO
> 絡みにきた内容忘れてた
>
> ソムリエ823
> 要は
> 見た目がショタ×大人(ガチムチ以外)の同級生のカプ希望ってことか
> 1行で済む内容がなんでそんなに分かりにくい文章になるんだ…
>
> 233 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2011/06/20(月) 02:49:21.27 ID:SZ+XdtdIO
> >>232
> IDがやたらかっこいい
>
> 234 名前:風と木の名無しさん 投稿日:2011/06/20(月) 02:58:05.95 ID:M/hcPwEh0
> 絡み>>233
> 白は白黒は黒Zは2ではないの堅物公務員攻めZISZ x 0でもOでも意味がわかるならどっちだっていいじゃない
> と融通の利く世慣れたフリーランス自由業i0EO受けを連想した

54風と木の名無しさん :2011/06/21(火) 04:39:16.81 ID:GBLe/mfO0
遅レスかもしれんが前スレ>>523
GJGJ!
今一番萌えてるカポーでの作品が読めて幸せだ
ありがとう

55風と木の名無しさん :2011/06/21(火) 05:37:51.01 ID:FzVhnaDH0
>>52
うわああああ続きを書いてくれ頼む

56ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼7 6/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/22(水) 00:53:51.25 ID:uaFKkIp30
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )色々とありがとうございます!!

そう思ってはみたが、確かにヴァンパイアである。
ちょいちょい、と頬をなでるが、特に起き上がる気配もなく、夢の中に入ってしまっていた。
バルドは酒場での友人たちとの会話を思い出した。
『なあ、気の弱いヴァンパイアがいたらどうする?』
日本酒を流し込みながら、バルドは友人数人と会話した。
突然の質問内容に、皆は驚いたが、すぐに笑い出した。
『何を言う、そんな吸血鬼などどこにおるというのだ、奴らは気位がやたら高い、人間を馬鹿にしていると相場は決まっておる』
日倭戦士の友人は、軽く笑ってその言葉を流した。
もちろん彼も随分とやり手の冒険者。ほかの友人も同様で、世界を回っては様々な敵と戦い、宝を手に入れたりしている。
『気の弱いって、考えたこともなかった。新手のジョークかい?バルド?』
マニカパの僧侶の友人まで笑い出した。
『だよな、大体ヴァンパイアって言ったら、性格悪いよな。絶対人間になつかねーって、そう思うよな。寂しがり屋のヴァンパイアとかどうだよ、いたら面白いとおもわね?』
バルドは夜桜のことを思い浮かべた。
人間と話したい、旅をしたい、添い寝されたかった、そして添い寝してやれば、腕の中で安心して眠ってしまう。
何かあればすぐに謝るし、常に困った顔でおろおろしている様は、バルドにとっては新鮮だった。
『面白い、けど』
『そんな吸血鬼は存在せん、断言しよう』
友人たちは揃って口にした。
そこまで思いだした。
(存在するってーの。しかも、名前がないから決めてほしい、とか、寂しくて話をしてくれとせがむとか、本当にいるんだっつーの)
でもなぜこの部屋で寝ているのか。それに、とても安らかな寝顔。
ヴァンパイアは人間より嗅覚が優れているらしい。
(俺の匂いで安心して寝ちまった?)
そんなまさか、と自分の考えを笑って打ち消した。
「夜桜、起きねーとまたキスしちまうぞ」
夜桜の頬をぺちぺち叩くと、その刺激に反応して、小さく声を漏らした。
「ん、んん…」
口が少し動いた。
声には出ていないが、その唇は間違いなく『バルド』と、動いた。
「こら、起きろ。土産もあるぞ」

57ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼7 3/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/22(水) 00:55:05.13 ID:uaFKkIp30
「…、あっ、しまった、寝てしまった!お帰り、バルド。すまない、起きているつもりだったのだが!!」
明らかにぎくしゃくしているのは、昼に口づけされてのことを意識してだろう。
その様子を軽く笑いながら、荷物の中に入っている包みを開けた。
何かの葉で巻かれた甘味である。
「?」
ガルズヘイムにしか知識がなかった夜桜は、全くそれが分からず、興味を持ってみたが、やはり判らない様子だった。
「食えよ、人間の食い物も美味いんだ。柏餅ってやつでなあ、ここ日倭ではよく食われている奴なんだ。せっかくこの俺が買ってきたんだぞ、ほら、無理してでも食え」
さすがは自分勝手なバルド、勝手に買ってきたものを押しつける。
 夜桜はそれを受け取ると、白いその柏餅に口をつけた。
しばらくもぐもぐと食べていたが、あんこの味が口に広がると、驚いた顔をしたが、吐き出すということはしなかった。むしろ、嬉しそうな顔をしていた。
「!!ほいひい」
「バーカ、なんて言ってんのかわかんねーよ、全部食べてから言え。茶も持ってくるけど、抹茶と普通の茶どっちがいい、甘いやつには抹茶がいいぞ」
ハムハムと一気に柏餅をたいらげた。
初めて食べた人間の食べ物、柏餅は夜桜にとって忘れられないほど美味しかった。
ガルズヘイムでは絶対食べられない菓子なだけに、希少だろう。
「抹茶か」
出された抹茶はとても少なく、濃い緑で泡立っていた。
口の中が甘いので、その抹茶を一気に飲んで、むせた。
物凄く苦い。
「な、なんだこれは…」
「甘い和菓子には抹茶って相場は決まってるんだよ。口の中甘ったるいときにそれ飲むとすっきりするだろ。日倭の酒場行くと大抵これと和菓子もおいてあるぜ。酒場というのもちょっとおかしいが、飲み屋に近いかな」
ごほごほとむせて、苦みが舌に強烈に残る。
出した当の本人は、もう一つ抹茶を作ると、丁寧に作法の通りにして、ゆっくりと飲んだ。
ことんと、丁寧に器を置いた。
よく見れば、その器も高そうなものだが、アイテムの価値までは夜桜にはわからない。
「俺日倭の血が入ってるから結構こういうの平気」
「口直しに何か食べたい…」
「んじゃ俺の血吸えよ」
と、ハイネックを少し下ろして首筋を見せる。

58ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼7 4/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/22(水) 00:56:23.30 ID:uaFKkIp30
どくどくと脈打つ血管にかぶりつきたくなるが、吸いすぎたら、と、夜桜は身を引いて小さく手を振った。
「いっ、いい、殺してしまったら大変だ」
「ちょっとだけ飲めばいーじゃん」
「うう…いただきます」
首筋に軽くかみつくと、すぐに血の味が口の中に広がった。先ほどの和菓子より、数段甘く、まるでチョコレート。日倭にはそんなものないだろうが、ガルズヘイムでは菓子として売られている。
「よし、いい子だ」
かみつかれながら、バルドは余裕を持って夜桜の髪をなでた。

「バルド、話をしてほしい」
やはり夜も時間を過ぎると、バルドが布団の中で本を読んでいるのを、夜桜が邪魔をした。
読んでいる本はガルズヘイム製のもので、内容は夜桜にも分かった。
「おおー、いいぞ。その前にお前、読書は好きー?」
「好きだ」
頷くと同時に、本を押しつけられた。
人間の、この世界での出来事をまとめた本だった。それはバルドが今読んでいる本と全く同じで、夜桜用にと二冊買ってきたという。
(バルドは意外に優しいんだ)
「世界史だ、何年にどの国王が変わったとか書いてあるし、ほかの街や国についても詳しく載ってるぜ。俺がいねー時にでも読んどけよ、いつか連れてってやっからよ」
随分高そうに分厚い本。
それを二冊、そういえば茶菓子もくれた。
夜桜は座ったまま深々とお礼した。
 本当に興味すらなければこんなに世話まで焼いてくれないだろう。
「ありがとう、バルド」
「なんだよー、このバルド様がこれくらい買うのは普通普通!バルド様は金持ちで有名だからな!」
おちゃらけて笑うが、その言い方に悪気はなく、むしろ夜桜を安心させた。
「そうだ、バルドの話がまた聞きたい。特に、その、バルドがどんなふうに恋愛してきたか」
そうだ、こいつはモテる。
その割に結婚しないというのはどういう意味なのかが分からなかった。
「ん?いいぜいいぜ、よし、もっとこっち来い」
そこまではいつくばっていくと、夜桜は遠慮がちにバルドに抱きついた。
昨日のように腕の中に入れてほしいことを訴えているのだ。
バルドはそれに気づいて、腕を広げて抱きよせる。
(バルドの匂い…)

59ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼7 6/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/22(水) 01:01:48.62 ID:uaFKkIp30
「俺がなー、冒険に出たのは十六歳、成人してからだ。親父の後をついて回ってよ、まあその親父も俺が二十歳になると死んじまって、
祖父母もいないし、母親はすでにいなかったから、事実上一人になっちまったな。まあ、酒場にいたところにあの二人と出会ってリーダーに
なってから、七年間ずっと一緒。でも不思議と仲間と恋愛に発展することはなかったな」
バルドの匂いに安心しながら、夜桜は聞き続けた。
くん、とかぐたびに、優しいにおいがする。それがバルドの匂い、ほかの誰も持っていない。
「シルフが暴れてるってんで、ためしに挑んだらあっさり倒れて。それからよく人が勝手に宿訪ねてくるようになったな」
「人間は単純だな」
「そうなんだ。愛とか関係なしに、『あの有名人だから』って来るんだ。ちょっと複雑だけど、据え膳食わねばなんとやら。結構食ってきたなー」
(私が、抱けと言ったら、抱くのだろうか)
自分が変なことを考えているのに気づいて、夜桜は軽く首を振る。
 あくまで考えていることは、賭けに負けてしまうということだ。
「だから何度も言うけど、そういう無防備なところ見せてると俺食っちゃうよ?」
「鈍器で殴られたいようだな」
「ふっ、その割に目がとろんとしてるし。可愛い可愛い」
ぐりぐりと夜桜の頭をなでた。
それを片目をつむって、おとなしく受ける。
脅し文句ですら迫力のない声で、今にも眠ってしまいそうな弱い声だった。
「でも、バルドといれば寂しくないのは事実だ」
「お、デレた」
「何語だそれは。事実を言ってはいけないのか」
少しすねて膨れて、服をきつく握る夜桜を見て、バルドがまた笑い飛ばす。
「はは、そういうところも他のと違うよな。ま、それで今に至るんだが、最近は女遊びしてないな。周りは結婚してるんだが」
そこでバルドの顔を見上げた。
目つきは悪いほうだが、にこにこ笑っていて、怖くもない。
大体ヴァンパイアというものを見る人間の目つきは殺気があふれていて、問答無用で戦闘になる。
それどころか、彼は夜桜を連れて帰った。
 気まぐれにしてもおかしな男。そう思って、言葉を紡いだ。
「なぜバルドは結婚しない?二十七といえば人間は大抵結婚しているし、子供がいるのが多い」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )後数回で終わります

60風と木の名無しさん :2011/06/22(水) 01:04:02.29 ID:MHjJgX/NO
初めてリアルタイムで見た、乙です!
吸血鬼可愛すぎハスハス

61風と木の名無しさん :2011/06/22(水) 21:19:14.69 ID:RaP0C0nt0
>>52
泣いた

62仁−JIN− 龍馬×仁 part1 :2011/06/22(水) 21:40:57.51 ID:5c2csjEE0
JIN−仁− 龍馬×仁
現代同棲妄想です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

連日降り続いた雨がやんだ。
今朝はからりと晴れ上がり 窓から零れるその光で目が覚めた。
(ほんと…晴れ男なんだなぁ…)
日もずいぶん高くのぼっている
南方仁はぼんやりとした頭でそんなことを思った
隣でまだ寝息をたてる男をちらりと見やれば
(子供…だな)
思わず笑みが零れた
男の癖のある柔らかな髪に指を絡めれば 何事か呟いた後もぞもぞと身を寄せてくる
大きな体に似合わぬその様子に こみ上げる愛しさを隠しもせず微笑み指を絡め続ける

63仁−JIN− 龍馬×仁 part2 :2011/06/22(水) 21:43:39.00 ID:5c2csjEE0
「…せんせぃ…?」
男の目がこちらを向く
はっきりとした二重の力強い瞳 その瞳も今は眠気に負けてとろけている
「もう、朝かぇ…」
「はい。すごく良い天気ですよ龍馬さん。」
昨日までの雨が嘘みたいだ とそう伝えれば
ちらりと窓を見やり 眩しさに目を細めた後それから逃げるように戻ってくる
「眩しいのぅ…」
「はい。お出かけ日和です。」
「…もうちっくと雨が降っちょってもえぃのに」
「え?」
意外な言葉に思わず分からぬという目を向ける
「今日は買い物に行く日だから、さっさと雨なんかやめば良いって、龍馬さん言ってたじゃないですか」

64仁−JIN− 龍馬×仁 part3 :2011/06/22(水) 21:50:12.96 ID:5c2csjEE0
昨日の夜
降り続ける雨を窓辺から見ながら確かに言ったのだ
(まっこと…よう降るのぅ…あいたはせっかくのでーとっちゅうのに)
(デートって…)
(なぁんじゃ。間違ってないろう。)
(あ、はは、まぁ)
(あいたの朝には晴れちょったらえぃの)
(そうですね。荷物も多くなるでしょうし。)
(てるてる坊主でも作ろうかの!)
まるで子供のように雨がやむのを願った男が 今は掌を返すように雨が降れば良いと言う
「龍馬さん?」
何も言わぬ男の真意を探ろうと顔を覗き込むように近付いた
途端
頭を大きな手で包み込まれ 引き寄せられ
「え?…っ!」
口付けられた

65仁−JIN− 龍馬×仁 5/14 :2011/06/22(水) 21:58:51.65 ID:5c2csjEE0
「っ…りょ、まさ…んっ」
めまぐるしくてついていけない 息継ぎさえままならない
苦しくて
「ふ、ぅ…んぅ…」
甘ったるい自分の声と
粘膜の絡まる音と
「せん、せ…」
男の 龍馬の
「…もうちっくと」
欲を孕んだ けれどどこまでも優しい
「せんせぃとこうしちょきたいがじゃ」

「!」
あぁ
そんな顔をするから そんな目をするから
こうやってまた 俺は
「えぃかえ?せんせ…」
俺は
「――はい」

66仁−JIN− 龍馬×仁 6/14 :2011/06/22(水) 21:59:58.50 ID:5c2csjEE0
―――……

結局その日は買い物には出なかった
出られなかった
朝に見た日の光はそのキラキラした光から穏やかな西日に変わろうとしていた
「せんせ…大丈夫かぇ?」
朝日だろうが夕日だろうが
太陽がとても似合うこの男の顔を今は少し恨めしげに見上げる
「夕飯…自分で作ってくださいね…」
あの時
受け入れたのは自分なのだから文句は言えないことぐらい分かっている
だが しかし それでも
こちらは腰も立たずへばりきっているというのに
まだまだ余裕の残る顔をしているこの男には
一言二言の嫌味も言いたくなる
男として
「これじゃ仕事してたほうが楽だな…」
何の為の休みなのだと一人ごちる

67仁−JIN− 龍馬×仁 7/14 :2011/06/22(水) 22:02:11.14 ID:5c2csjEE0
「せんせ…」
ぶつくさと呟き続ける想い人に
さすがに申し訳なく思うのか
龍馬は眉をハの字に下げて仁の様子を伺っている
「すまん…ちっくと、加減できんかったき…」
「ちっくと?」
すかさずじとりと睨まれる
「いや、その、なんじゃ…先生があんまり可愛らしゅうて、ねゃ」
たはは、と乾いた笑い声だけが響いた
「せんせぃ…堪忍しとーせ。ちゃんと謝るき。の?こんとーりじゃ」
ついに男は居住まいを正し
頭を下げた

68仁−JIN− 龍馬×仁 8/14 :2011/06/22(水) 22:04:16.89 ID:5c2csjEE0
この男はただただまっすぐに自分を想ってくれている
親友として 恋人として
すべての想いが優しさに満ちている
こんな風に大人げなく拗ねてみせるのだって
本当は彼のその想いに浸りたいだけなのだ
愛されていると
そんなことは分かりきっていることなのに
つい先程まで
彼はそれを惜しげもなく自分に与えてくれていたというのに
それでも
もっと
もっと
いつから自分はこんなに貪欲になったのだろう


69仁−JIN− 龍馬×仁 9/14 :2011/06/22(水) 22:05:40.74 ID:5c2csjEE0
そんなことを思い
苦笑いを漏らしながら
下げられた頭がこちらに向くよう
そっと手を添えた
「すみません。ちょっと意地悪したかったんです。」
大人げないですよねぇ と
ふにゃりと笑う
「意地悪ぅ?」
「だって。龍馬さんまだまだ余裕じゃないですか。わたしはへとへとなのに。」
悔しいじゃないですか と
建前だけを伝える
人の心の機微に聡いこの男のこと
それが建前であるとは感じているだろう
けれど
やっぱり
今は
(このぐらいのプライドは許されるよな)

70仁−JIN− 龍馬×仁 10/14 :2011/06/22(水) 22:07:13.53 ID:5c2csjEE0
「もう、意地悪は終いかぇ?」
一人満足顔の仁に問えば
「はい。終いです。」
ふわりと
いつもの優しい笑みを向けられる
「ほうかぇ」
その笑みにつられるように龍馬も笑う
彼がそれで良いと言うのなら今はそれで良いのだろう
彼の笑顔に嘘はない
龍馬はそう思った
「ほいたら遠慮のぅ、せんせぃの横で眠れるぜよ」
ニッと笑って布団にもぐりこむと
ごくごく自然に寄り添ってくる仁が愛しい

71仁−JIN− 龍馬×仁 11/14 :2011/06/22(水) 22:08:36.35 ID:5c2csjEE0
隣り合って眠ることに慣れた男の無意識の癖が
まるで自分にだけぴたりと馴染む唯一の物のような気がして
ただただ純粋に嬉しいという気持ちと
自分だけのものだという独占欲と支配欲が
龍馬の中でないまぜになって渦巻く
この言い様のない気持ちも
南方仁に出逢ってから抱くようになったものだ
いつかこの思いが
自分を
南方仁を
壊してしまうのではと恐ろしくなったこともある
(まっこと…)

72仁−JIN− 龍馬×仁 12/14 :2011/06/22(水) 22:09:40.75 ID:5c2csjEE0
龍馬はそっと仁の髪に手をのばした
すでにうとうとと舟を漕いでいる彼の
自分とは違うさらさらと流れるような髪を梳くようにすれば
(まっこと…無自覚とは恐ろしいのぅ)
うっすらと微笑みを浮かべ
その身を任せてくる
(こがぁな顔をして…加減をせぃちゅうんが無理な話ぜよ)
放っておけば
再び頭をもたげようとする欲望に
ひとり 苦笑いを漏らす
「せんせぃは罪作りなお人じゃのぅ」
安心しきった顔に声をかける
が 先ほどまで言葉を紡いでいた口許からは
ついに穏やかな息遣いが零れはじめた

73仁−JIN− 龍馬×仁 13/14 :2011/06/22(水) 22:11:11.42 ID:5c2csjEE0
「眠ってしもうたがかぇ?」
うっすらと開いた唇に胸がときめく
心だけでは飽き足らず
彼の体を抱いて抱いて抱きつくしてもこの様である
いずれ
自分は本当に南方仁に壊されるかもしれない
もうとっくに壊れているのかもしれない
けれどそれが悪いことだとは龍馬には到底思えなかった
ただただ
南方仁という男が愛しくてたまらなかった

74仁−JIN− 龍馬×仁 14/14 :2011/06/22(水) 22:12:45.73 ID:5c2csjEE0
「まっこと、せんせぃは………ねゃ」
己の腕の中で
無防備な寝顔を晒す仁を見つめて
詰まるところ
この顔には勝てないのだ とそう思う
阿呆かと呆れられても
龍馬にとってはそれこそが真実で
今はただただ
この腕の中のぬくもりを離さぬよう
ただそれだけを思いながら
龍馬は仁を抱く腕に力をこめた

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

二人で買い物に行かせようとしたところ結局家から一歩も出ず…
買い物も書きたいなー!

75風と木の名無しさん :2011/06/22(水) 22:15:08.27 ID:JqOPzJu90
改行を工夫すれば10レスに収まると思うんだが…

76風と木の名無しさん :2011/06/22(水) 22:48:04.92 ID:2qBy1caB0
つか、よくさるさんに捕まらなかったものだ
●持ちさんなのかな?
これからも投下するのなら>>2をよく読んでくれると嬉しい

77風と木の名無しさん :2011/06/23(木) 11:05:52.24 ID:jIR5q+eS0
>>75
>>76
62-74の者です。
ご指摘ありがとうございます。
>>2を熟読し、以後このようなことのないように気をつけます。

78風と木の名無しさん :2011/06/24(金) 23:27:34.89 ID:KAsRnmRG0
せっかく投下したのに評価して貰えないとか。。。
残念無念また来週〜

79兎→虎4 1/4 ◆dU4hlANcIg :2011/06/25(土) 21:21:00.23 ID:tl8pp/5P0
アニメ虎&兎の兎→虎です
前スレより続いております
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

トレーニングルームに隣接したロッカールームに入る。
おじさんを降ろすと、ものすごい盛大にため息をつかれた。
随分ですね。ファンの方からの手紙には僕にお姫様だっこされたいとよく書いてあるのに。
手紙と言えば…だっこしている間ずっとおじさんが抱きしめていたその封筒。
「…それ、セキュリティシステムには通されていないんですか?」
大事に持つ価値もない卑猥なファンレター。
通常、送られてきた全ての物はセキュリティシステムに通されている。
危険な物や精神的にダメージのある内容の物は全て弾かれるはずだ。
「セキュリティシステムってのは、キーワードを拾って弾いてるだけだ。それさえ載って無かったら通過するようにできてる。
 ひっかかりそうなもんはぜーんぶ隠してるみたいでな。あったまいいよな〜…これだって、手で隠れてたりしてたんだろ。」
さっき見たあの卑猥な画像が頭に浮かぶ。
「ああ、確かに…。」
「う…記憶してんなよバニー。早く忘れてくれ」
「この人からの物は受け取らないように言っておけばいいのでは?」
「……んん、でもな、ファンだから俺の。」
「あなたを快く思っていない人物の嫌がらせの可能性もありますが。」
「えぇっそうなの??!!…いやでもぉ!好きですって書いてあるし」
「書くでしょうそのくらい」
呆れた。
この人はこんな所でもこうなのか。
…ん?
「ちょっと待って下さい」
「あっちょ、おま」
なんだこれは
おじさんが開けたロッカーの一角に同じような茶封筒が数十通見えた。
ゴチャゴチャに物が入っているのにそこだけ妙に奇麗に整列している。今日届いた封筒もそこに重ねるつもりだ。

80兎→虎4 2/4 ◆dU4hlANcIg :2011/06/25(土) 21:21:45.45 ID:tl8pp/5P0
「なんで捨ててないんですか!」
「こんなもんそのへんに捨てて誰かに見られたらどうすんだ!…かといって家に持って帰るのも…それに…本当のファンかもしんねぇし」
立ちくらみがする。
「あなたが捨てられないなら僕が捨てます」
「だから、誰かに見られたら…」
「僕の家にはシュレッダーがあります。あなた、会社でシュレッダーにかけている時に見られるのを心配しているんでしょう?」
「バニーが見るのも嫌なんだよ!」
「見ませんよ」
「絶対?絶対に絶対?」
「しつこいですよおじさん。だいたい、僕はあなたの卑猥な画像に興味ありませんから。」
おじさんが変な顔で考えている。
無理矢理奪った方が良さそうだ。
手を伸ばすと、おじさんが封筒をギュッと抱きしめて僕に背を向けた。
「駄目だ!やっぱり捨てない!俺のファンだこいつは!」
…なんでそうなるんですか。
「嫌いな奴のために時間かけてこんなモン作らねーよ。うん。」
そう言って大事そうにしまった。
なんだろう。まただ。またイライラする。
博愛主義だろうか。
ルナティックは気に入らないがあいつの言う事には一理あると思っている。
僕だって両親を殺した犯人が目の前に現れたら、殺す事しか考えていなかった。
捕まえるだけだなんて。
殺さないという選択肢なんておじさんと逢う前までは考えた事も無かった。
僕に自分の価値観を押し付けるのはやめてほしい。
だけど…。
考え事をしている僕をよそに、封筒をしまって一息ついたおじさんが着替えをはじめた。
ネクタイに手をかける。グイ、と引かれたネクタイは形を崩し、やがて一本の棒になる。
きっちり止まっていたシャツのボタンを少し骨ばった指が外していく。
「…おいバニー、いくら俺でもな、そう見られてたら着替えにくいんだよ。」
「何がです?男同士ですよ。」
「そうだけど…なんつーか…」

81兎→虎4 3/4 ◆dU4hlANcIg :2011/06/25(土) 21:22:49.10 ID:tl8pp/5P0
そう言いながらも行為は続けられる。
シャツが肌蹴られ、上半身が露出する。
トレーニングしているところなんか見た事無いのに、随分引き締まった腹筋をしているな。
僕より少し薄い胸板だけどしっかり筋肉が乗って盛り上がっている。
「おじさんの割にはいい身体ですね。」
「おっそうだろそうだろ?おじさんの割にってのは余計だけどな。」
おじさんが嬉しそうに力こぶを作る。
「僕よりは劣りますけど、まぁ、充分いい身体と言えると思いますよ。」
「うるせぇ」
そういえば、肩の傷は治ったんだろうか。
見てみようと近付くとふわっと甘い香りがした。
おじさんから香っているのだろうか。
首筋に鼻を近づけようとしたら、おじさんが後ろに引いた。
「ちょっと、避けないでください。」
ロッカーの前に追い詰め、顔の横に手をつき逃げ場を無くした。
おじさんの眉毛がハの字になる。何が嫌なんです。
もう一度近付いて息を吸い込む。
やっぱりおじさんからだ。香水をつけているのか。
そういえば、身に着けている物も洋服も、なかなか気を遣っている気がする。
がさつなだけかと思っていたのに、意外と繊細な部分もあるんだな。
…右肩にはっきり残るまるで斬撃のような火傷の跡。痛々しい…
「痛みは…まだあるんですか?」
「え?何が?」
「…ここですよ」
傷をそっとなぞるとおじさんがビクッと震えた。
「やはり痛みが…」
「もう痛くもかゆくもねぇよ」
どけとでも言うように胸を押される。あれ、なんかイライラする。
もう少しおじさんに近づきたいのに。

82兎→虎4 4/4 ◆dU4hlANcIg :2011/06/25(土) 21:23:50.62 ID:tl8pp/5P0
「おいバニー、もういいだろ。そんな心配すんな」
もういい?ちっともよくない。
「だって、僕を助けたせいで…この傷、残ってしまうんでしょうか…」
もう一度肩に触れると、やはりおじさんがビクリと動いた。
…変な反応だ。こうしたらどうなる?
右肩から首筋にかけて撫で上げると、おじさんはくすぐったいのか肩をすくめた。
「バニー!」
「なんですか?」
「早く着替えて行こうぜ。トレーニングの時間終わっちまうぞ。」
「話を逸らさないでください。」
「もういいだろう」
「よくありません。おじさん、いつもそうやってはぐらかしていませんか?」
あんな手紙を送った人間の事でさえ信じたのに。
いつもいつも、どこかで僕に立ち入らせない何かがある気がする。
「おはよう!!そしておはよう!!…あれ?君たち一体何をやってるんだい?」
「!おぉ、お疲れさーん」
隙を突かれた。強めに押し返されおじさんが僕から離れる。
やっぱり、か。
気のせいじゃなかったんだ。
僕の心に土足でずかずか入り込んでおいて、僕には入らせないですって?
そんなのは許せません。
正直、未だに僕はよくわからないんです。
あなたを信じていいのか。
こんな事は初めてだから…自信なんかあるわけがない。
人を信じるという事は僕にとって恐怖ですらあるんです。
あなたが僕を信じてくれないのなら、僕もあなたを拒絶します。
だけどもし、僕の中であなたの存在が拒絶できないほど大きくなっているとしたら…
どうしたらいいんだろう…

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
読んで頂いてありがとうございました。

83風と木の名無しさん :2011/06/26(日) 09:08:18.64 ID:TmeMBrn+0
つまんね

84風と木の名無しさん :2011/06/26(日) 12:23:35.86 ID:arXKXW180
>>79-82
続き待ってましたGJ!
おっさんを可愛く思える日がくるなんて…!w

85風と木の名無しさん :2011/06/26(日) 18:07:00.21 ID:K96sBKNt0
いつの間にか続きが! 待ってました!
おっさん可愛いよおっさん

86流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 0/17 :2011/06/27(月) 23:18:40.33 ID:4X4AyL1d0
流石兄弟 兄者×弟者
ねらー語(?)多めにつき苦手な人は注意
      
                        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                         |  素直にテンプレAAを使えばいいのに
                        |  何で私たちが……
                        |    カイシ ット
                        \           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                           ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄|  勿論このテンプレ改変AAもネタなのじゃ!
                                   |  18歳以上のよいこだけしか見れないのじゃ!
                                   \
 ____________                    ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |             /(∞))∧
 | |                | |            (´<_` ∬    
 | | |> PLAY.       | |           ∬ヽ__ノ∬ ) 〃'´⌒` ヽ
 | |                | |         ピッ  (:::::::::ノ::|:`{ 〈((リノ )))i iヽ
 | |                | |         ◇⊂ }=、-::}、i!、{  从・∀・ノ!リ人
 | |                | |          .、-''"~''''"ーヽ ヽ⊂)丕i(9mヽ)__
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―//!/!!/!!i!l|!i、:ヽノ: 0/0|j_ ゝ____||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)               ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

87流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 1/17 :2011/06/27(月) 23:22:10.05 ID:4X4AyL1d0

どうしてこういう時に限って目覚ましの音に気付かないのだろうか。
いや、あながち兄者がうるさいからと言って消した可能性もある。
仮にもしそうだとしたら、いますぐ隣で寝ている兄者を叩き起こしてやりたい。
一応兄者も大学に在籍しているのに、何故こんなに暢気でいられるのだろうか。
そんな風だから一年ダブって俺と同じ学年になった事を自覚しているのか…いや、していないだろうな。
だから兄者はこうして今も眠っているのだ。そのうち俺の後輩にならないか心配だ。割と本気で。
服を着替えていると、ベッドからもそもそ動く身体が見えた。
相手が誰かわかっているのでベッドの方を見ずにジーパンを履いていると、背中から寝起きの声が聞こえた。

「おはよう弟者」
「おはよう。しかし暢気な事を言っている場合ではないのだ」

ちらりと後方を見ると、布団から顔を出している兄者が見えた。
身体を起こして、大きく伸びをすると、俺を見て一瞬何をしているのかわからないような顔をした。
流石引き蘢り。今日が平日ということもとうとうわからなくなったか。

「今日学校か?」
「当たり前だろう。だから今こうして急いでいるのが見えないのか」
「ふーん…」

興味がなさそうに返事をする。
俺も兄者に構っている暇がないので、気にせず上着を脱いで適当なシャツを取り出した。
上半身裸になると、それまで大きな欠伸をしていた兄者が俺の方をじっと見つめて来る。
視線が気になってどうにも無視できない。
俺は兄者の方を見ると、目で何用だと尋ねた。

「何か俺についているのか?」
「いやー……まぁいいか」

88流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 2/17 :2011/06/27(月) 23:23:53.60 ID:4X4AyL1d0

ニヤニヤと笑っている兄者が気持ち悪い。
未だに俺の方を見ている視線が、どこか性的な意味も含まれているような気がする。
朝から何を考えているんだろうか、こいつは。

「言いたい事があるならはっきり言え」
「別にない」
「嘘付け、顔が笑っているぞ」

相も変わらず兄者は笑っている。笑みを崩さぬまま、兄者は答えをはぐらかした。
横から視線を感じながら、兄者がベッドから降りる気配を感じる。
きっとこのままいつもの定位置に座って一日中パソコンをするのだろう。
ずっと家にいて退屈ではないのだろうか。
俺も大概人の事を言えないが、兄者の引き蘢り癖には程々飽きれていた。
週に一度外に出るか出ないか。最悪一ヶ月外に出なかった時もある。
対人関係は得意ではないが別に誰とも話せない訳でもないのに、何が兄者を家にいさせるのだろうか。
含み笑いも聞こえて来た。何がおかしくてそんなに笑っているのだろう。
いつもならここで無理矢理にでも理由を問いつめる所だが、生憎今は時間に追われている。
着替えを終え、既に準備を整えた鞄を持って部屋から出ようとした。
しかし、ドアの前で立ちふさがる兄者が邪魔で部屋から出られない。
今までパソコンにいるだろうと思っていたが、どうやら誤算だったらしい。
時間はあまりない。行き先を遮る兄者に俺は少なからず苛立ちを感じていた。

「急いでいると言ったんだが」
「いってきますのキスしてない」
「…普段していないだろう」
「弟者が寝てる時にはしてる。でも今日はしていない。アンダスタンド?」
「兄者の事情なんて聞いてられるか。いいから退け引き蘢り」
「だが断る」


89流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 0/17 :2011/06/27(月) 23:25:23.53 ID:4X4AyL1d0

眠っている時にしているだとか、是非とも問いつめたいことをさらりと言ってきた。
しかし今はそんな事すら霞むほど焦っている。
力関係では俺の方が断然上だ。兄者をはっ倒してそのまま進む事は簡単にできる。
しかし兄者は俺に抱きついて来て、思うように動けない。
ひ弱な腕だがこういう時だけは何故か力が強い。
腰に回された腕を離そうにも中々離れる気配がない。
そうしている内にも、授業開始の時間は刻々と迫っている。
振り払うより、実行に移した方が早いのかもしれない。
そう判断した俺は、少々どころかかなり抵抗を感じながら兄者の頬に唇を押し当てた。
キスだなんて甘いものではない。文字通り唇を当てただけの物だ。
しかし兄者には効果的だったようで、顔を緩ませると俺の唇にキスを一つ落として来た。
ただ触れ合っただけなのに胸が熱い。自分から兄者にするのと、してもらうのではこんな違う物なのか。

「…今回だけだぞ」

恥ずかしくて突き放したような返事をしてしまう。
けれど兄者の事だから、俺の発言が照れ隠しという事を知っているんだろう。
その証拠に、兄者変わらず嬉しそうに笑いながら俺を抱きしめている。
笑っているのは起きてからずっと変わっていないが、明らかに気味の悪い笑みとは違う。
心から嬉しくて、幸せそうな顔をしていた。


90流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 4/17 :2011/06/27(月) 23:27:17.36 ID:4X4AyL1d0

「勉学に励むがよい、可愛い弟よ」
「同じ大学の同じ学部の同じ学年の兄者には言われたくないな」
「…耳が痛い話だな」
「そう思うなら出席しろ。だから単位が足りなくて留年なぞするのだ」

現実的な話になると、兄者は視線を逸らして気まずそうな顔をした。
そんな顔をするくらいなら学校に行けばいいのに。
口には出さず、兄者の腕を振りほどくと早足で廊下を駆け抜けた。
もう朝飯を食べている時間はない。一直線で玄関まで行くと靴の踵を履き潰して外に出た。

「いってらっしゃい」

含み笑いの兄者の声を聞きながら、俺は学校へと走り出した。



結果を言ってしまえば、何とか受けるべき授業は受けられた。
朝食も食べ損ねた為、何でもいいから口に入れて空腹を満たしたかった。
午前の講義は終了したため、通常の昼休みより先に食堂に行く。
昼前とはいえ、それなりに人が集まっていた。

「おお、弟者」

学食のメニューを見ていると、友人の友者が呼ぶ声が聞こえた。
元々兄者の友人であるが、兄弟だからという事で後輩の俺に対しても気さくに話しかけてくれる。
最も、今は友人であった兄者も後輩になっているが。


91流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 5/17 :2011/06/27(月) 23:28:30.14 ID:4X4AyL1d0

「友者、久しぶりだな」
「そうだな。兄者の方はまーだ引き蘢りか」
「今更言うまでもないだろう」

今ここにはいない兄者の話をする。
一番の共通の話題が兄者である俺達は、必然とこの話題になってしまうのだ。
しかしそこは普段から奇妙な事をしている兄者だ。
この話題だけで半日は使えるのではないかと思うくらい、兄者にまつわる話は沢山あった。

「まぁ、詳しい話は飯でも食べながらしようか」
「そうだな」
「さて、何を食べようか…ん?」

メニューを見ていた友者の目が俺を捉えた。
正確には俺の身体を捉えたと言った方がいいのだろうか。目が身体に向けられている。
BLもいけるとは聞いていたが、ガチホモとは聞いていないぞ。
いぶかしげな目で見つめてくる友者の視線に耐えきれず、こちらから話を切り出した。

「何かあるのか?」
「いや…随分とお盛んな事だなぁと」
「…は?」
「あれ?気付いていないのか」

そう言うと、友者は自分の首筋を指差した。
そのジェスチャーの意味を理解した俺の背中を嫌な汗が流れる。
友者に指を指された首筋を押さえると、俺は友者を置いて食堂から出た。
向かう先はただ一つ、鏡がデフォで備え付けられているトイレだ。

92流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 6/17 :2011/06/27(月) 23:30:52.18 ID:4X4AyL1d0

「あのクソ兄者…!」

首筋に付けられた赤い痕は、これでもかという位はっきりと付いていた。
それだけではなく付けられた位置が悪い。
上着で隠しきれず、かつ他人からの視線にほぼ高確率で見られるという位置。
それも虫で付けられたという言い訳も出来かねない、明らかに人為的に付けられたような色をしていた。
兄者にキスマークをつけられるのは今に始まったことではない。
だが、人目につくようなつけられ方をされたのは初めてだった。
鏡の前で一人怒りと格闘しながら、ポケットに入れていた携帯を取り出す。
電話をかける相手はただ一人、この痕をつけた張本人だ。

『へいへーい、俺です』

数コールで出た兄者は間の抜けたような声で返事をする。
それが更に、俺を苛立たせる要因となった。

「暢気に言っている場合かこのクソ野郎…!」
『お、その様子だと気付いたみたいだな。意外と早かったなー』

きっと電話の向こうで、朝俺に向けたような気味の悪い笑みを浮かべているんだろう。
それどころじゃない俺は、声を荒げて続ける。

「アンタ、悪戯にしては質が悪いと思うんだが」
『悪戯なんかじゃないさ、俺はただ付けたかっただけ。暗くて付ける場所までは確認出来なかったしな』
「つ、付けられる側の事も考えろ!」
『へいへいスマンカッタ。ところでお前そんな大声出していいのか?』

兄者に言われて口元を押さえる。
人があまりいないトイレを選んだが、それでも大声を出せば外に漏れてしまうだろう。


93流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 7/17 :2011/06/27(月) 23:34:49.75 ID:4X4AyL1d0

「…トイレにいるんだ。流石にそれくらいの対処は出来てる。兄者と違ってな」
『ほう、流石俺の弟。お陰で特定出来た』
「は?」

何を言っているんだと思った瞬間、トイレに人が入って来た。
ドアを開けたのは、何日ぶりかに見る兄者の私服姿。
ささっとトイレに入ると、兄者は俺に抱きついて来た。

「特定しますた」
「…何しに来た。何故特定できた」
「授業受けに。お前が出た後、俺もすぐ出たんだ」
「今更出ても単位取り返せないだろ」
「今は補講という素晴らしいシステムがあってだな、それの申請も兼ねて来たんだ」

会話の合間合間にキスが振って来る。
振り払おうにも抱きしめられて満足に出来ない。
…満足に抵抗しない理由は、俺も心のどこかで兄者を許してしまっているからだろう。

「ちなみに特定出来たのは、たまたまここのトイレ付近を歩いていたからだ。偶然ってやつ」
「わかったから場所を考えろ、離せ」
「優秀な俺の弟が、人気のないトイレを選んでくれたから問題ない」

94流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 0/17 :2011/06/27(月) 23:35:56.52 ID:4X4AyL1d0

異議有りを出す前に個室に押し込められた。
鍵をかけ、蓋をしている洋式便所の上に座らされ、身動きが取れない。
次いで兄者にキスをされる。今度はさっきと違ってもっと深いキスだ。
気持ちが良くて抵抗を忘れてしまう。このままだと流されてしまうのに止められない。
キスをしながら兄者が俺のシャツに手をかける。器用に片手でボタンを外して、胸がはだけられた。
首筋を舌が這い、胸を撫でられればもう俺は何も出来ない。
俺の弱い所を知り尽くした兄者の手に掛かれば、俺を黙らせることくらい簡単なことなんだ。

「弟者、キスマーク付けていい?」

耳を舐められながら聞かれた言葉は、いつもより低い声で身体がぞくぞく震える。
意識がまだそちらに向いていない俺は首を横に振って拒否をした。

「いいじゃん。今度は目立たない場所に付けるから」

拒否をした意味は何だったんだろうか。こいつ人の話をちゃんと聞いているのか。
兄者は俺のズボン下着ごとを下ろし、股を広げ、太腿に唇を這わせた。
いつもはしない行動に身体が興奮している。兄者の行動に視線が釘付けになり、目が離せない。
股間に近いところで兄者の唇が止まる。かと思うと太腿から血を吸われるような感覚が襲って来た。
ちぅと聞こえる音が更に行為に火をつける。
その音にすらしっかり反応している俺のモノは、兄者の近くで少しずつ頭を持ち上げていた。

「ん、これでいいだろ」

唇を離し、遠目からでも分かる程濃く付けられた痕を見て兄者はニヤリと笑った。

「良い訳あるかこの変態…!」
「の割には全然抵抗もしないしこっちもしっかり反応してる訳ですが?」

95風と木の名無しさん :2011/06/27(月) 23:39:37.72 ID:4X4AyL1d0
間が悪いですが連投規制防止につき一旦停止
しばらくしたら再開します

ちなみに>>89は3/17、>>94が8/17です
                        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                         |  
                        |  改めてみたら言うほどにちゃん語多くなかったわ
                        |
                        \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                           ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄|  続きはWebなのじゃ
                                   \
 ____________                    ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |            /(∞))∧
 | |                | |            (´<_` ∬    
 | | □ STOP.        | |           ∬ヽ__ノ∬ ) 〃'´⌒` ヽ
 | |                | |         ピッ  (:::::::::ノ::|:`{ 〈((リノ )))i iヽ
 | |                | |         ◇⊂ }=、-::}、i!、{  从・∀・ノ!リ人
 | |                | |          .、-''"~''''"ーヽ ヽ⊂)丕i(つヽ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―//!/!!/!!i!l|!i、:ヽノ: 0/0|j_ ゝ____||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)               ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


96流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 0/17 :2011/06/28(火) 00:13:05.02 ID:kHTHXUHd0
流石兄弟 兄者×弟者
再開します

      
                        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                         |  エロで何が難しいって動作が難しいわ
                        |  気をつけないとどう濡れスレに飛ばされちゃう…
                        |    サイカイ ット
                        \           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                           ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄|  アーアーキコエナイー
                                   \
 ____________                    ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |             /(∞))∧
 | |                | |            (´<_` ∬    
 | | |> PLAY.       | |           ∬ヽ__ノ∬ )  〃'´⌒` ヽ
 | |                | |         ピッ  (:::::::::ノ::|:`{  〈((リノ )))i iヽ
 | |                | |         ◇⊂ }=、-::}、i!、{  (从・∀・ノ∩人
 | |                | |          .、-''"~''''"ーヽ ヽ  )丕i( 丿 ヽ)_
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―//!/!!/!!i!l|!i、:ヽノ: 0/0|j_ ゝ____||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)               ||  |
 ̄ ̄

97流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 9/17 :2011/06/28(火) 00:14:40.81 ID:kHTHXUHd0

亀頭を指でつついた兄者は、下から俺を見上げる。
挑発的という言葉が実に良く似合う視線に、俺は言おうとした文句を飲み込んだ。

「そういう顔、すげー好きだ」

涙目になって、きっと顔も信じられない位赤い俺の顔を見て兄者は満足気に笑う。
俺自身の根元から先まで舐め上げ、そのまま兄者の口内へ収まる一連の動作。
俺は耐えきれず、慌てて兄者の頭を押しのけようとする。
しかし分が悪い。兄者に吸われてしまっては残っていた力すらも抜けていってしまう。
下部から聞こえる水音がいつも以上に響いて聞こえるのはトイレの反響音のせいだ。
野外。校内。いつ誰に見られるかもわからない行為を兄と行っている。
そのシチュエーションがより一層俺を興奮させた。

「兄者、ほんと。止めろって」

絞り出すように出した声は涙声そのものだった。
顔どころか全身熱くて堪らないし、頬から流れる涙で顔はぐしゃぐしゃになっているだろう。
それでも快楽に溺れないよう理性を保ち、甘い声を漏らさないように下唇を噛み締める。
そんな俺におかまいなく、兄者は時々俺を見上げながら楽しそうに笑っていた。

98流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 10/17 :2011/06/28(火) 00:16:17.91 ID:kHTHXUHd0

「我慢出来ないんじゃないのか?」
「我慢出来ない状況を、つくったのは、どこの誰だと……」

文句の弁は途中で切り上げられる。
先ほどより兄者が俺のを舐める動作を激しくしてきたからだ。
予想外の行動に思わず大きな声をあげてしまう。
いつもの声じゃない、兄者の下でしか出さない声がトイレ内に響いた。

「ばっ…か、も、いいから。放せ……」
「んー……。いいよ、出しちまえよ」
「んなとこで、出来るわけないだろ…!」

しかし身体は正直だ。
俺の良いところを知り尽くした兄者の舌技によって、既に射精感が全身に駆け抜けていた。
それを抑える術を知らない俺が兄者の口内へ自らの精を吐き出すのに時間はかからない。
快楽に耐えきれず、情けない声を出しながら俺は一人達した。
言わば賢者タイムともいえる倦怠感に身を任せている俺の下で、兄者は俺の精を飲み込もうとしていた。
この世界が二次元BL界ならいとも簡単に飲み干し、勝ち誇った視線を俺に向けてくるのだろう。
だがヘタレの兄者にそんな事出来るはずもなく、俺は黙ってトイレットペーパーを差し出した。

「毎度毎度よく頑張るな、この変態」
「にげぇ……飲める訳ねーよ、マジ鬼畜弟者」
「誰が強要した。勝手にアンタがやったんだろうが」

ついでに飲みきれず唇の端に零れたものも拭う。
こちらとしては暢気に顔を拭いていないで、さっさと退いてほしいというのが本音だ。
スボンも下着も兄者が所持していて、俺は未だ下半身を晒したまま開脚中だった。
けれど兄者は退かない。それどころか先ほど付けたキスマークを誇らしげに眺めていた。


99流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 11/17 :2011/06/28(火) 00:17:37.56 ID:kHTHXUHd0

「流石だよな俺、綺麗にくっきりついている」
「流石だな兄者、ネット弁慶に留まらず俺にも弁慶っぷりを発揮しやがって」

賢者タイムも終わりを迎えている。そろそろ現状の格好に羞恥心が沸き上がってきた。
兄者の顔を踏みつけるように、退けという意思を示すと兄者は簡単に立ち上がって個室から出て行った。
それもご丁寧に俺のズボンとパンツも渡してきた。
また悪戯の一つや二つ仕掛けるだろうと思っていた俺は一人肩すかしを食らっていた。

何も言わずに衣服を整えていると、反響した兄者の声がドアの向こう側から聞こえてきた。

「なぁ、弟者」
「何だ」
「俺は思うんだ、恋愛は一種の支配欲のようなものじゃないかってな」

いきなり何を言い出すかと思ったが、いつにも増して真剣な物言いに、黙って耳を傾ける事にする。

「正直俺はお前に学校などいかずに俺と一緒に引き蘢ってほしいと思っている」
「だが断る。…が、何故そう思う?」
「お前を独り占めしたいからだ」
「ガキの思考だな」
「ああ、ガキの思考だ。だが俺はそんな思考に捕われてしまう位お前が好きだ」

衣服を整え終えた後も俺は個室から出なかった。
ドアに背を預け、壁越しの会話を続ける。

「しかし現実問題お前と引き蘢るのは無理だとわかっている」
「母者がいるから?」
「母者がいるから」

まあ、その母者のお陰で本当の引き篭もりにならずまっとうな人生を送れているのは間違いない話ではあるが。

100流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 12/17 :2011/06/28(火) 00:18:19.37 ID:kHTHXUHd0

「だがお前には俺以上に中の良い友達がいっぱいいるだろう?俺にはそれが堪え難い」
「何故だ」
「友達から恋人同士に発展するパターンもある、最初から恋人狙いで友達をするパターンもあるだろう」
「二次元の世界と三次元をごっちゃにするのは間違っているぞ」
「逆だ、三次元であり得るからこそ二次元に反映されるのだ」

何となく、兄者の言いたい事が分かってきた。
兄者の言う『独占欲』というのは、簡単に言えば『嫉妬』だろう。
直感的にそう思った俺は、その事をすぐ口にした。

「…嫉妬なんて誰だって抱く感情じゃないか?」
「残念だが嫉妬じゃない。俺がネットだけじゃなくリアルでも見えない敵と戦っているとでも思っているのか?」
「違うのか?」
「弟者たんおにいちゃん凹んじゃう……」
「回りくどいな。言いたい事があるならはっきり言え」

外れた直感以外に兄者が言わんとしていることが掴めない。
そろそろ壁越しの会話も面倒になってきたので、個室から出る事にした。

人が来ないようにだろうか、兄者はトイレのドアに背を預けて立っていた。
これでいきなりドアが空いて兄者が転んだら、なんて事を考えてみたり。

「主張したいんだ」
「何をだ」
「弟者君には誰か分からないけどキスマークをつけられるくらい親密な相手がいるっている主張だ」

兄者の視線が首筋のキスマークに向けられているのが分かる。
顔が熱っぽくなるのを感じながら、俺はキスマークを手で覆い隠した。

101流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 13/17 :2011/06/28(火) 00:19:55.74 ID:kHTHXUHd0

「兄弟で、男同士で、付き合ってまーすなんて言える訳ないだろう?」
「そりゃあな」
「友人間で恋愛話に花が咲いたとしても、余計な詮索をされたくないから彼女いない暦=年齢にするだろう?」
「当たり前だ…つーか彼女いない暦=年齢は余計だ…」
「俺はそれが嫌だ。隠す事は仕方ないと思うが、それによって弟者を狙う敵が増えるのは嫌なんだ」

兄者がこちらへ近づいてくる。
狭いトイレじゃ他に逃げ場もない。
気がつけば俺は壁に追いやられていて、真正面ど真ん中に兄者が立っていた。

「例えば」

兄者の右手が俺の頬に触れる。
撫でるように手を滑り込ませると、そのまま顎を持ち上げて無理矢理視線を合わせられた。
近づく兄者の顔に何をされるのか分かった俺は、反射的に目を閉じた。
だが、やってくるであろう口づけは一向に来ない。
どういう事かと瞼を開ければ、変わらず俺を見ている兄者がいた。

「キスをする時、必ず目を閉じるよな」
「そりゃあそうだろ……まさかアンタは閉じないのか?」
「閉じないが?」
「おま……いや、なんでもない…」

文句を言おうと思ったが、ネジが一本どころか十本近く緩んでいる兄者に言っても無駄だと思い言うのをやめた。
次いで兄者は俺の首筋に下を這わせる。
正面には現実とを結ぶドアがある状況下にも関わらず、俺は興奮していた。
時折音を立てて舐める動作が、より俺をその気にさせた。


102流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 14/17 :2011/06/28(火) 00:22:51.48 ID:kHTHXUHd0

「…っ」
「またしたくなったのか?」
「アンタのせいだろう…」
「興味ないフリして実は期待しているエロさも良いな」

首筋に軽い痛みが走る。
昨晩されたように、先ほどされたように、また一つ俺の身体にキスマークがつけられた。
詳しい位置は特定出来ないが、服に隠れる範囲内につけられたのは理解出来た。

「そういう顔も反応も、俺にしか見せなければ良い」

耳元で囁かれた声は、行為の時にしか出さない低い声だ。

「他の奴に渡したくない。相手が男だろうが女だろうが、唾をつけられる事すら許しがたい」
「だから、アンタは俺にキスマークをつけるし、この感情を独占欲と言うのか?」
「そうだ」

ガキだと思う。
まるでお気に入りのおもちゃを誰かが触ったりするだけでも怒るガキのようだ。
けれどそんなガキを好きになったのは俺だし、こんな事を言われて嬉しいと思っているのも俺な訳で。

「…馬鹿だよな俺ら」


103流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 15/17 :2011/06/28(火) 00:26:33.58 ID:kHTHXUHd0

「何だ、俺はいつだって天才的な発想構想空想をだな」
「妄想乙。いい加減退け。いつまでもここで乳繰りあってる暇はない」

兄者の胸を押しのけ、距離をとる。
若干名残惜しそうな顔をしたが、こんな馬鹿にも常識というものは存在している。
仕方ない、と呟いて兄者は俺に背を向けた。

「しかしチチクリって中々久々に聞いた言葉だな。弟者卑猥」
「校内で盛るアンタよりはましだ」

くだらない事を言い合いながら二人揃ってトイレから出ようとする。
すると、ドアを開けようとした兄者より早く向こう側からドアを開ける人物がいた。
その人物に気づかない兄者は、絵に描いたようにドアに額をぶつけ、その場に踞った。
転ぶ事はなかったが、予想が微妙に当たった事に吹きそうになる。

「あれ、弟者じゃん」
「友者」
「お、珍しい兄者もいるのか」
「おま…普通俺だろ先に気づくのは………」

痛みで動けない兄者を尻目に、友者は再び俺の首筋を指差した。

「弟者、早速噂になってたぞ。彼女いない暦=年齢の弟者君が童貞卒業したって」

厳密にはまだ童貞のままだというのは秘密にしておこう。



104流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 16/16(17) :2011/06/28(火) 00:27:08.95 ID:kHTHXUHd0

「……そうだな、そろそろ彼女いない暦=年齢を撤回しにいくか」
「へええぇぇ、撤回しちゃうんだ?」

そう言う友者の視線は兄者を見ていた。
無論友者に俺たちの事は言っていないはずだが、何となく察しているというやつなんだろうか。

「ああ、そうでもしないと嫉妬し続けるガキがいるからな」

ニヤニヤしながら友者が俺と兄者を交互に見ている。やっぱり気づいているじゃないかコイツ。
相変わらず踞ったままの兄者だが、微かに嬉しそうな表情を浮かべたのを俺は見逃さなかった。
心で示しても満足しない、独占欲丸出しのガキみたいな恋人の背中を軽く小突く。
俺は兄者の所有の証を指でなぞりながら、秘密の恋人のことをなんと言おうか思案することにしたのだった。



105流石兄弟 兄者×弟者 「キスマーク」 0/17 :2011/06/28(火) 00:28:31.53 ID:kHTHXUHd0
投下終了です
投下数計算ミスっていました、すみません

                        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                         |  正直本編とは関係のない
                        |  余計な会話が多かったと思うのは間違いじゃないわ
                        |
                        \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                           ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄|  話の脱線は仕様なのじゃ!
                                   \
 ____________                    ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |            /(∞))∧
 | |                | |            (´<_` ∬    
 | | □ STOP.        | |           ∬ヽ__ノ∬ ) 〃'´⌒` ヽ
 | |                | |         ピッ  (:::::::::ノ::|:`{ 〈((リノ )))i iヽ
 | |                | |         ◇⊂ }=、-::}、i!、{  从・∀・ノ!リ人
 | |                | |          .、-''"~''''"ーヽ ヽ⊂)丕i(つヽ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―//!/!!/!!i!l|!i、:ヽノ: 0/0|j_ ゝ____||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)               ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ありがとうございました


106風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 00:37:18.22 ID:wSsDYxpwO
最近ルールも守れない困ったちゃんが良く湧いてるのはなんでなんだせ

107風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 00:41:02.01 ID:K2Tp53mIO
テンプレなんで読まないんだろうね

108風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 01:15:48.07 ID:cdFRFqLO0
またしても●持ちの暴走か
最低限のルールは守って欲しいんだぜ…

109風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 08:30:46.94 ID:t9PB/mck0
もしかして、

>(4)一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)

って書いてあるから、連投規制に引っかからなきゃ10レス以上投下していい、って解釈してるんかね
そういう意味じゃないんだが

110風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 08:39:16.66 ID:NeQjcOky0
擁護する気はないけど一応本人としては中断して間をとったつもりなんでは?
「他の人に迷惑がかからないよう間をおいてください」という表現になってるので
わかりにくいかも知れない
何時間、あるいは何日以上間をおいてくださいとか、
途中に何レス以上はさんでくださいとしたほうがいいかも

111風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 13:14:35.11 ID:ITZjv9cv0
分割して投下して下さいとか一時中断を入れて下さい、とか?

112風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 13:42:49.06 ID:b+q7v/s90
間に他の作品を1つ以上、とかでいいんじゃね

113風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 14:01:45.21 ID:HdA3Lxo50
>>112
それに限定するのはさすがにきつくない?
全然投下されない時もあるし

テンプレAA含め10レス以上となる長編は一度に投下せず、
他作品が投稿された後、もしくは数日様子を見るなどの中断期間を挟んでから
続きを投下するようにしてください

くらいがいいんじゃないかなあ
長いか…

114風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 15:39:12.23 ID:xjY0Ri6J0
つか既に>>2に書いてあるんだけどね
>長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
>再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
この「ある程度」を具体的に決めようって話なら、これ以上は避難所でやらないか?

115風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 17:30:54.70 ID:ITZjv9cv0
じゃあ(連投規制に引っかかります)だけ削れば誤解はなくなるかな?

116風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 22:40:05.61 ID:qKsHONu50
ルールに反しようとは思わないけど、おっかない人多いな。
ここの投稿頻度からして10レス以上の連投によって誰かが迷惑を被ることなんて稀だし、
そうなった場合でも少し待てばいいだけなんだから、もっと優しく指摘してあげてもいいのに。

117風と木の名無しさん :2011/06/28(火) 23:29:26.26 ID:XE/qNaVg0
テンプレ呼んでるから一旦中断したんじゃないかな
正直今のペースならこれくらい問題ないと思うが

118風と木の名無しさん :2011/06/29(水) 11:09:28.74 ID:v9cm42ye0
つーか、毎回毎回これで揉めるんだから、
具体的にルール決めてくれよ、と投稿する側としても思う。
間に1作品ならそれでもいいからさ。
どんなに作品投下が無くても一月待つってことはないんだし、待つよそれぐらい。
雰囲気が悪くなるほうが投下しずらいです。

119異邦の日頃 1/3 :2011/06/29(水) 13:44:53.04 ID:BWe+p6AE0
オリジナル異世界(古代?神話時代?風)ファンタジー キス止まり
>>1-9読了、初投稿です
・キャラ命名は思いつきなので既存キャラと被っている可能性もあります
・シーン切り取りで本筋は特にないです
※男×男ですが女体験済みという補足的描写があります。地雷注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


青い布張りの上等な椅子に背もたれ腰掛けたホーンの膝先まで擦り寄り見上げれば、
彫像のように整った怜悧な面立ちが、ドラグルの遠慮ない視線を受けてふっと揺らぎ、目線を逸らした。
魂胆のない、他愛ない好意に対して彼(ホーン)は寛容であり、それを好み愛でる風情すら普段は漂わせている。
「女子供は善い」と目を細めて呟き花摘みの踊り子たちを眺めていたホーンをドラグルは知っている。
異民族の兵であったドラグルの処刑を望む強行派の司祭たちからドラグルの処遇権利を実質的に購い配下に置いた理由は、「土と緑の匂いがする」――。
ドラグルが彼自身から聞いた言葉はそれだけであった。
存外、彼は進歩的な文明権威主義の隆盛と謳歌に懐疑的であり、その点で同族から浮いた存在であると言えよう。
しかし彼の王からの寵愛は、彼を決して表立って厚遇せず階級を上げないことによって
妬み僻みの謗りから庇護しようとするまでに強く、それがまた癪に触る鼻つまみ者がくだらない事ばかり思いつく。

「奴さんに犯された貴族の子女が言うには二股に分かれていて両方の穴に入れられちまったって話だ」

ホーンの配下、つまりドラグルの今の同僚から聞かされた話であり、彼はホーンを敬愛するがゆえに噂を嗤ったに過ぎないが、
実際はおてんばの過ぎた名家の令嬢が藪の中で怪我をしていたところ、ホーンとドラグルが発見して手当を施し家に送っただけであったと説明した。
ホーンはともかく泣いて軽率を詫びていたあのお嬢さんに不名誉な噂はドラグル自身許せない、当然ホーンも不快であろう。

だが余計な弁明だったかもしれぬ、と気付いたドラグルはホーンにそれを打ち明けていない。

120異邦の日頃 2/3 :2011/06/29(水) 13:45:24.85 ID:BWe+p6AE0
跪かれることには慣れているホーンだが、ドラグルが下男のように膝をついて自分を見上げていると落ち着かない。
所在ないとはこのことか、と自覚するほど心乱れ、目を合わせているのがつらくなる。
邪な視線であれば無論目を逸らすわけもなく、また召使や奉公人が粗相を気にして顔色を窺う際には適切な言葉が出るというのに。


善い男には違いない。

弱い者には迷わず手を貸してやる優しさを持ち、また勇気を躊躇いなく力に換える果敢さを併せ持つ。
「蛮族」と彼を蔑む者もいるが、悪辣な思惑によって焼かれてしまうには惜しい男だ――と思ったので彼の身柄を買った。
彼は宮廷や学者たち、それらに媚び諂うあさましい乞食どもには疎まれ、時には酷い偏見混じりの陰口を耳にすることもある。
だが彼の才気や人柄に惹かれる者は多い。
市井の商人・技工師・農民、とりわけ女子供や老人に好かれやすく、また気さくで面倒見のよいところが配下の兵卒にも好ましく受け止められている。
善いものを手に入れた、と満足しているのは確かだ。
しかしこの男はよくあるように反射的に傅いて膝をつくわけでもなければ、某かの魂胆や目論見があって膝をつくわけでもない。
「どうした?そんなに目をそらして頬を染めているとまるで粉屋の娘のようだ」
からかうように言うが、粉屋の娘は今、出入りの商人の若者が気になって仕方がない様子だと周りの者らは大っぴらに言わずにいることを。
「あんな愛らしい顔はしていない」
思わず顔を背けて言い捨てると、すっくと立ち上がった青年に両手で顔を挟み込むように掴まれ、上向かせられた。
「そうだな、あの娘はそんな綺麗な顔立ちではない。しかし険が消えればお前も相応に可愛らしい顔になるぞ?」

よく恥ずかしげもなくそんなことを…!と気が昂り睨みつければドラグルはそれが合図であるかのように顔を近づけホーンの口を塞ぐ。
拒否するためにドラグルの面に触れたホーンの指先が、彫りの深い顔立ちをなぞり、滑らかな肌をいとおしむだけに終わってしまうのはいつものこと。



ホーンは叔父から与えられた女に寝屋の中ですることを教わった。
少年はどうか?と問われた時、「興味がない」と答えたらそれ以上薦められはしなかった。
ホーンに善からぬ行いを振る舞おうとした者の玉は遠慮なく蹴り上げた。

121異邦の日頃 3/3 :2011/06/29(水) 13:45:39.82 ID:BWe+p6AE0
しかしドラグルのやり方はホーンが知るそれとはまったく違っていたので、うっかりホーンは組み敷かれてしまったのだ。
初めて身体の中を侵されて、今まで味わったことのない衝撃と歓喜にうち震えたホーンの身体はすっかりドラグルに馴染んでしまった。
身体だけではなく、背後にドラグルの気配があるだけで、ホーンは安堵と、そして血肉湧き踊る興奮を得られるようになった。


量感のある舌を口の中に受け入れながら、自身もドラグルの口腔に侵入して唾液を絡め取ろうとするホーンの舌と、
それをあやすように転がしながら要求に応じるドラグルの舌がすり合わされ、ぬめりが滴り始めれば飲み下そうとホーンの喉が切なげに喘ぐ。
子供のように素直に物欲しがるホーンがいじらしくてドラグルはいつまでもこうしていたいとすら願ってしまうが求める行為はそこで終わらない。
そっと口を離すとすっかり朦朧とした表情のホーンの熱い息が頬を撫でる。
氷のように硬質な色の睫毛の隙間から、澄み切った湖水によく似た深さをたたえる瞳が覗けば潤みが煌めき光を放つ。
父母弟妹に見せてやりたかったものがここにある。
普段は口にしない、故国の祈りの言葉を呟きながらもう一度口を塞ぐと、背後に回ったホーンの腕に強く抱き寄せられた。

ホーンと出会い、ホーンが引き寄せてくれなければ処刑を免れたとて異郷に置かれて身も心も荒んで希望や活力は失せていたかもしれない。

寝台へ向かうために椅子に腰かけたままのホーンの手を取ると、拗ねたように俯いた様子が可笑しくて軽い笑いが漏れた。
それを侮りと受け取ったのか、憤然と立ち上がってドラグルの腕を掴み歩き出したホーンに引きずられ、よくよく人を引き寄せる男だとまた笑ってしまった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

122ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼8 1/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/29(水) 21:01:37.49 ID:gCH6E6vL0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )一週間たったので投稿しに来ました〜。


うーん、と、バルドは考えた。
「なんとなく」
「賭け」
と、夜桜は一言だけ言った。
「負けない…」
「じゃあ俺も言うよ」
ぐ、と、顎を軽くつかみ、目線を合わせる。
バルドは口の端を持ち上げて、自信ありげな顔だった。
八の字の眉毛になって困り果てる夜桜とは正反対だ。
「俺も負ける気がしない」

その夜、ヴァンパイアは落ちているローブをこっそり借りて、家を抜け出し、ダンジョンにもぐった。
 都市ダンジョンに依頼はなかったらしく、相変わらず鬼畜な顔ぶれがそろい、目の前をサキュバス系九体がよぎった。
とはいってもここは日倭なので、呼ばれ方は違うが、言葉は大体共通しているので、彼女らの噂話は理解できた。
「あらん」
サキュバスの一人が足を止めて、こちらを見る。
「いい男じゃない、でもちょっと気がよわそー、あなた吸血鬼系ネ、見た目からするとガルズヘイム?」
一人止まれば皆止まる。
一気に九人のサキュバス系に囲まれて、夜桜は戸惑った。
「が、ガルズヘイムヴァンパイアだ、君たちみたいなのを探していた」
「あらあら、この九人のうちだれがターゲットー?」
サキュバス系は一斉に笑い出した。
サキュバス系といえば初心者殺しで有名。
 ヴァンパイアと違って、ボスモンスターが九体みっしりいればいいと思えば、どれだけ強いか理解できるだろう。
とは言え彼女らも女の子、ガルズヘイムのサキュバス系と同じく、恋愛話に無理やり持っていった。
「誰もターゲットじゃなくて…、むしろ困っている。人間と今暮らしているのだが」
「え?」
というわけで、越後屋の布団の上に皆で座ると、相談事を始めた。九人のサキュバス系は、興味を持って話を聞いた。
「人間と暮らしてるって、本気?」

123ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼8 2/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/29(水) 21:02:50.82 ID:gCH6E6vL0
「どんな子!?可愛い子!?私たちより可愛かったら許せないわね、うふふ、殺しちゃうかも…」
ゾクッと背中に寒い言葉が走る。
サキュバス系は見た目と違って案外残酷だったのを忘れていた。
それはどこの国も共通しているらしい。
「いや、ただの人間の男だ。多分この国の君たちなら知っている。バルドというガルズヘイムの男だ」
キャー、と黄色い声が上がった。
彼女らも見たことがあるらしく、そうねそうね、と口々に噂話を始めた。
正直テンションの高いこのノリにはついていけない。
「バルドと言ったら財力もあってー」
「案外無邪気な性格でかっこよくてー」
「おまけに強いときた」
「確か善と秩序系の人間よねー」
「私が人間だったらアプローチしてるわー」
「ガルズヘイムの戦士って結構素敵よね、でも、私は日倭戦士が好みー」
サキュバスが、夜桜にもっともっとと話をせがむ。
バルドの名前を出した途端の食いつきようと言ったら。
これで彼女たちに人殺し癖がなければ完璧なのだが、と夜桜は思った。
「私は気が弱い。人間に生まれたかった、戦闘を拒否したら、殴られてここに連れてこられた」
「あらまー、拉致に近いわね」
「人間に生まれたい吸血鬼というのも珍しいわ」
「それで何悩んでるのー?」
「バルドの私生活ってどんなのー?」
「ガルズヘイムの話聞きたいー」
いっぺんに言われても、と、夜桜は戸惑い、かいつまんで話をした。
まず寂しがり屋という自分の性格と、バルドが毎日添い寝してくれていることと、名前をつけてくれていること、話をしたいと言えば話をしてくれる。
「それってほぼ同棲ね」
「うんうん、うふふ、可愛いわ、あなた」
「いいないいなー、私も名前ほしいのに!!」
「添い寝とか!」
「夜桜なんて可愛い名前!でも女の子みたーい」
一気に九人に夜桜と連呼された。
「でもうまくいっているみたいだけど?異世界で人間と吸血鬼が旅するお話あったよねー」

124ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼8 3/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/29(水) 21:03:51.15 ID:gCH6E6vL0
「あったあった、それもうまくいってるみたいだから、悩みごとないじゃない」
とにかく話を聞いてくれ、と、夜桜はいったん彼女らを黙らせた。
彼女たちサキュバス系の目はわくわくと好奇心で満ちていて、今更ながらこの九人に話をしたことを後悔した。
せっかくなら死神系にでも言えばよかった。
馬鹿にされそうだが。
「賭けをしようと言い出した。私が抱いている感情が恋愛ならバルドの勝ち、違ったら私の勝ち、正直負けたくはないけど、バルドは負ける気がしないと言いだした」
「男のほうが趣味なのかあ、バルドもあなたも」
「同性愛者はこの世に何人かいるからねー」
あらあらと九人は話しこみだした。
何度も言うが、この女子の恋愛話好きなノリにはついていけない。
若干疲れながらも、夜桜は続けた。
「それが、恋愛したことないからわからないのだ。それにからかわれているだけで、バルドにはその気がないのではないかと思う」
大丈夫、同性愛に偏見なんてないから、と、何人かが口をそろえて言うが、明らかに恋愛話なら何でもよしな流れだ。
そのうち一人がその話を聞いて、意味深な発言をした。
「添い寝されて寝ちゃったんでしょ。あの吸血鬼系のあなたが。何回も」
「?そうだが?」
「じゃあ負けね!」
「は…」
思わず口をあけて、眉をしかめる。
なぜに負けたのか意味がわかっていない夜桜に、そのサキュバスはにっこり笑った。
 モンスターでありながら、笑えば人間の女以上に可愛い。
それはもちろんサキュバス系であるから。
けれど夜桜は心が動じることはなかった。
「今あなたの心にいる人はだーれ?いつも思い浮かぶ人はだーれ?大事な人と言ったらだーれ?添い寝されて、安心して寝ちゃったのだーれ?」
「!!」
その言葉にやっと気付いた。
負けの意味は、つまり自分がバルドが好き、ということだ。
認めたくない。
負けたくない。ただその心があるけれど、いつも心にあるのは、誰か。
「あああああああ」
夜桜は腹の底から苦い声を出した。
 そしてその場で頭を抱えて蹲る。

125ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼8 4/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/29(水) 21:04:48.55 ID:gCH6E6vL0
「いくら私たちでも、知らない男に添い寝されたら殺しちゃうわ」
「話してもらって安心とかないよねー」
「だって私たちは、私たちだけいればいいんだもん」
一部百合な関係がいるようで、二人のサキュバス系が抱き合ってきゃっきゃと声を出した。
追い打ちにしかならなかった。
「わ、私がバルドが好きなら、去るしかないのか…、バルドにとっていい迷惑になってしまう。一カ月が過ぎたら、どこかのダンジョンにもぐろう…」
しゅんと落ち込む夜桜に、九人のサキュバス達は一斉に声を張り上げた。
 あまりにも小さな部屋に甲高い声が響いて、思わず耳をふさいだ。
が、そのうち一人が怒ったようにその耳をふさぐ手を払いのけた。
「何言ってんの?人間だって、興味ない相手にそんなことしないんじゃないの?」
「相手の心とかちゃんと確認してるのかしら?私たちが言えることじゃないけど、好きな人できたら相手の心まで気にならない?例えばあなたなら、バルドがどう思ってるの、とか」
中々はっきりしない態度に彼女たちも本気になってきた。
若干怖いと思いながら、その言葉に圧倒される。
 バルドの心まで知りたい?
「それが普通なのか」
バルドはいつでも笑顔だった。からかってはきたが、添い寝すると言ってきたのもバルドだ。
「バルドは…いつでも優しかった」
「夜桜ちゃん」
一人のサキュバスが、夜桜の頭を軽くなでた。
「今から帰って、彼の本心聞いてみなよ。中々教えてくれないと思うけど!名前まできちんとつけてくれるなんて、相当夜桜ちゃんのことお気に入りよ?」
「日が昇ると人間たちに気付かれちゃうから、早く帰りなさいな」
意外にも彼女達の目は優しかった。
恋愛に関してはプロフェッショナル、同じモンスター関しては優しい。
その言葉に、小さな勇気が芽生えた。
「聞いて、見る…」
夜桜は小さく声に出した。
きっと普通のヴァンパイアや、サキュバス達だったら普通に聞けたであろうことを、彼は小心者すぎて聞けない。
それでも彼女たちが押してくれたおかげで、何とか、聞くことを心に決めた。
「…ら…」
遠くで声が聞こえた。
「!バルド…」
耳のいい夜桜にはその声の主がバルドであることに気付いた。

126ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼8 5/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/29(水) 21:05:57.73 ID:gCH6E6vL0
次々と障子をあけていく音を感じ、サキュバス系の彼女たちは、殺されてはたまらない、と相談しあって逃げることにした。
「じゃあね、夜桜ちゃん。また何かあったらおいでー」
反対側の障子をあけて悠々と去っていく彼女たちに、小さく手を振った。
「夜桜!!」
彼女たちが去っていくと同時に、勢いよく障子が開けられた。
布団の上に座っている夜桜に、バルドは安心たように息をついた。
「いきなりいなくなってるからびっくりしたぞ…」
手を差し伸べてくる。
その手を恐る恐る取りながら、夜桜は小さな声で聞いた。
「怒らないのか?」
「あ?なんでだよ」
「う…」
駄目だ、聞かないと。
でもここはモンスターが多すぎる。
家へ帰ろう、と夜桜が言おうとするより少し早く、バルドが言った。
「家へ帰るぞ!」
「…ああ」
同じことを考えているとわかると、照れてくる。
頷くと、バルドと家へと帰って行った。

時間は午前四時だった。
結構長い間、ダンジョンで話し込んでしまったらしい。
 運がよく、人の少ない時間だったせいか、ヴァンパイアだとは気付かれることなく、無事に家に着いた。
バルドの部屋に入ると、バルドが目の前に夜桜を座らせた。
「あれだけ外に出たら危ないと言っただろうが!」
きつい喝に、思わず、びくりと体が震える。
さすがは日倭の血が入っているだけあって、怒ったバルドの威圧感はかなりのものがあった。
「…人間には相談できないから…モンスターたちに意見を聞きに行こうとして…」
しどろもどろになりながら、何とか状況を話した。
都市ダンジョンで、サキュバス系に出会い、話を聞いてもらったことも説明すると、バルドがあからさまにつまらなそうな顔をした。
否、つまらないというより、若干怒っている。
「それで?何か得るもんでもあったのかよ、俺嫌いなんだよ、サキュバス系っつーとこの国では鬼子母神か」

127ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼8 6/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/06/29(水) 21:07:45.14 ID:gCH6E6vL0
「あ、ああ、彼女たちはうるさいが、親身になって聞いてくれた」
あ、そう。その言葉だけ吐くと、バルドはそっぽを向いて横になった。
「バルド」
「…」
答えてくれないが、それでも何とか勇気を振り絞った。
「賭けは私の負けだ」
「…何?」
「けど、その前に聞きたいことがある、答えてくれないか?」
こちらに向けた顔をちらちらと見ながら、夜桜は手をにぎりしめた。
聞かなければ。
「バルドは…夜桜と名前をつけてくれた私のことを、どう思っている?」
突然の質問に、バルドが大きく目を見開いた。
「面白いとは言ってくれた、だけど、好きだとは聞いたことがない、好きじゃないなら、約束の一カ月たったら、去る」
気がつけば夜桜は泣いていた。ごしごしと手のひらで涙をぬぐいながら、何とか小さな声でつづけた。
「私だけ、好きなのはいやだ、バルドがただの興味本位だけなら、私は、いやだ…」
戸惑ったのはバルドだった。
正直、面白いとしか思っていなかった。
 捜しに出かけたのは事実だが、それでもどこかで夜桜が死んでいないか心配になった、それ以外に理由がなかった。
もし恋愛感情抱いていたなら面白い。
「それは…」
バルドは言葉に詰まった。
とりあえず起き上がって、夜桜の涙をぬぐってやる。
いつも以上に悲しそうに顔をしている夜桜を見て、そっと髪をなでてやる。
「そうだなー」
バルドは考えた。
「正直に言うと、面白い程度にしか考えてなかった」
「…」
でも、とバルドは続けた。
「出会ってまだ五日じゃん?そりゃ俺男だって行けるし女だって行けるけど、お前とはな、種族違う。夜桜、確かに俺はお前をからかってたよ。
でもあと一カ月は最低でも期間あるんだ。その間に、何かあるっていう可能性はないのかよ?こんな寂しがり屋で気の弱い夜桜、普通に手放せると思うか?」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ちょっと微妙な関係になりました

128醒めない夢 1/4 :2011/06/29(水) 21:57:26.68 ID:RsYyVkDoO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマス!
×麺 若磁界×若教授 やっぱりエロしかない。
磁界視点だけでは収まらず、今度は教授視点でとトライしたら、教授の方がグルグル度が激しく…


この快楽は誰のものなのだろう。
ベッドの上に組み敷かれ、膝裏に手を掛け足を開かされるあられもない格好を自覚しながら、その足の間に
受け入れた圧し掛かってくる重みにふとそんな意識が浮かび上がる。
自分の上で欲を追う男の律動は激しく、しかしその勢いのまま貫かれた時の痛みは、今はもうすでに遠くなっていた。
代わりに感じるのは、そこばかりは鍛えようのない柔い粘膜を容赦なく擦り立てられ、上がる体内の熱。
悲鳴は気づけば、鼻にかかるような甘ったるい響きを伴ううめきばかりになっていた。
それが時折戻る理性をたまらなく追い詰める。
なんとか押さえたいと半ば無意識に身をよじりかけるが、そんな動きはこの時、冷たい鉄のパイプによって
拘束された頭上の手首に遮られる。
感じる、自分を逃すまいとする男の意思。
擦れる手首の薄い皮膚が、痛い、苦しい、熱い……繋がれたすべての部分から溶けてしまいそうだ……
相手の思うままに揺さぶられながらそんな事を思い、たえ切れぬようにうっすらと瞳を開けば、そこには
自分を生きながらに食らう男の顔があった。
目の焦点が上手く定まらない。それでも思い出す。
自分が彼をこんなふうに見上げるのは二度目だった。
だからもう一度思う。
この快楽は彼のものなのだろうか。
だって、でなければ…もう自分の足には感覚が無いのに……


129醒めない夢 2/4 :2011/06/29(水) 22:00:50.78 ID:RsYyVkDoO
今と過去が錯綜する思考がもつれ合いながら落ちる記憶は、その時自分の脳裏に白い浜辺の像を結んだ。
あの日、自分達を襲った人間達に報復の牙を剥いた彼を、自分は懸命に止めようとしていた。
様々な要因が重なって、あの時自分の能力は彼には効かなかった。
だから身体ごとぶつかるしかなかった。
争い、絡まるように二人して砂の地面に倒れ込んで、彼を抑え込もうとする。
しかしそんな自分に彼は容赦なかった。
『暴れないでくれ。傷つけたくないんだ』
殊勝な言葉とは裏腹な力で逆に強かに殴りつけられ、一瞬目の前が暗くなる。
本来なら体力的にも体格的にも腕力で敵う相手ではなかった。それでも止めなくてはいけなくて。
普段の冷静な思考も計算もかなぐり捨てて、他の誰より何より、彼の為に止めなくてはいけなくて。
自分に背を向け、再び敵と定めた目標と相対しようとする彼を追って、朦朧とした意識のまま立ち上がる。
そんな自分にあの時、あの鉛玉は襲ったのだ。
それは自分と同じように彼を止めようとした者が放った銃弾だった。
しかし彼の力はそのすべてを跳ね返し、その一つがこの身深くに突き刺さる。
ちょうど腰の上の辺り。それは正確な残酷さで脊髄を……
全身を貫くような激痛に叫びと共にその場に崩れ落ちた、そんな自分の元にあの瞬間、彼は弾かれるように
駆け戻ってきた。
慌てた手つきで自分を抱き起こし、この顔をのぞき込んでくる。
呼びかけられ必死に目を開け見上げた彼は、その時ひどく取り乱した表情をしていた。
後悔、焦り、労わり、悲しみ、そして怒り。
混乱しながら再び暴走しようとする、そんな彼を自分はもはや残酷な言葉で止める事しか出来なかった。
『君のせいだ』
嘘だ。これが不可抗力だと言う事はわかっていた。
それでもあの時、彼を鎮める為に使える自分の武器はもう言葉しかなかったから。
『味方でいてくれ』
一緒にいてくれ。そばにいてくれ。言葉にならないまま伝わってくる彼の弱々しいまでの本音を知りながら、
自分はどうしてもそんな彼に頷いてやる事が出来なかった。そして、
『君と僕の理想は違う』
告げた刹那、あの時見た彼の顔を自分はきっと一生忘れないだろうと思う。


130醒めない夢 3/4 :2011/06/29(水) 22:04:40.74 ID:RsYyVkDoO
信じられないようにこちらを見下ろしてくる顔。傷ついた顔。そして……諦めた顔。
結局自分は彼にそんな顔しかさせてやれなかった。
出逢って、別れるまで。共に過ごした時間はそれほど長いものでは無かったけれど、それでも彼のこれまでの
生き方を知り、その心の奥にも触れた事があったのに、結局、何一つ……
救ってやれなかったと許しを求める事はきっと傲慢ですらあるのだろう。
だから、自分達の道は別たれるしかなかった。
何度も何度も思い返し、その度に同じ結論に辿り着く。
それは今日も同じ……そう吐息が零れそうになった瞬間、不意に後ろ髪を強く引かれ、反射的に咽喉元が仰け反った。
意識が引き戻され、開いた瞳の中に再び飛び込んできたまるで人に懐かぬ獣のような彼のまなざしに、
自分が犯されていた事を思い出す。
こんな時に他事を考えていた事に対する怒りだろうか、自分に向けられる彼の瞳の深く濃いものだった。
怒っているのだろうか。それならばそれでいい。
辱める為だけの快楽による責苦よりは、怒りに任せた力尽くの暴力の方がまだ心は軋まない。
だから、憎んでくれればいい。
そうであってくれ。
「……工リ…ック…」
だから確かめたくて、名を呼んだ。見上げる彼の頭上にはこの時自分の力を遮る覆いは無くて、ならば
もっと触れればその心が読めるかと思った。
その為にも手を解いて欲しい…
しかしそんな自分の願いは彼には通じなかった。その代わり、
『…チャーノレズ…』
不意に頭上から降り注いだのは返された自分の名前と、そしてキス。
髪を掴んでいた手が頬に滑り落ち、逃げるなとばかりに軽く力が込められ顎を固定される。
そしてそのまま唇の深くなる交わりに、この時自然に自分の中へ流れ込んでくる彼の心があった。
それは一つの名を呼び続けていた。

…チャーノレズ……チャーノレズ……チャー……

まるで子供のような独占欲で何度も何度も。
それに唇を解けぬまま、自分はこの時ずるいじゃないかとその瞳を歪めていた。

131醒めない夢 4/4 :2011/06/29(水) 22:09:31.81 ID:RsYyVkDoO
こんなに君が素直だなんて、ずるいじゃないか。
君はいつも頑固で、身勝手で、皮肉屋で、でも……どこか寂しくて。
溢れ出す想いが止まらなくなる。それと同時に、触れた彼の剥き出しの心に自分の嘘が暴かれていくのも知る。
憎んでくれればいいなんてのは強がりだ。
ただ、犯される様に抱かれるのがつらいのも本当で。
だから、僕は……
奪われるばかりだったキスに初めて自らも舌を差し出すように応え、自分はこの時もう一度頭の中で手を解いてくれと
静かに念じる。
その願いは今度こそ彼に伝わったようだった。
ゆっくりと冷たい鉄の戒めが手首から離れてゆく感触にほっとしたのも束の間、その手首が彼の武骨な手の平に
包み込まれれば、反射的に肌が震えた。
しかし彼はこの時もう、自分をこれまでのように乱暴には扱わなかった、
それどころか頭上から大事そうに手を引き下ろさせると、強く捕らえられていた事によって出来たのだろう鬱血の跡を
手首の上に見つけ、そこへ静かにその唇を寄せてくる。
労わるようになぞり這わされる、その柔らかい感触がたまらなくて、自分は瞬間その手をやんわりと彼から取り戻すと
そのまま目の前の首筋に両の腕を滑らせるように回した。
足が動かなくなって、自分は少し横になる時間が増えた。
それゆえの、これは夢なのかもしれなかった。
浅い午睡か、夜明け前の一瞬の深層の眠りか。
そのどちらでもかまわず、ただ目覚めの鳥よ、今しばし鳴いてくれるなと祈る。
先程までとは明らかに色の違えた彼の優しい愛撫に再び狂いだしながら、それでも今度は緩やかに突き上げられる
動きに合わせて、自らも目の前の彼の身体に腕を足をせがむように絡めてゆく。
求める心を伝えられる今は動く自分の足に感謝をすれば、知らず眦から一筋の涙が伝い落ちた。
気を緩めればすぐにも霧散してしまいそうな夢の欠片をかき集めるように、
まださめないで。もう少しだけ自分の中に。
しがみつく背に爪を立てながら懇願する。

まだ、いかないで…くれ……

夢の中さらけ出す浅ましさが罪だと言うのならば、今この身に与えられる罰はあまりに甘い毒のようだった。


132風と木の名無しさん :2011/06/29(水) 22:10:58.73 ID:RsYyVkDoO
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンガオオクリシマシタ。
前回感想と、情報豊富なスレ住人サマありがとうございます。現実が映画並みに喜でたまりませんw
セリフはかなりあやふやですが、ニュアンス的には間違ってない、はず。



133風と木の名無しさん :2011/06/29(水) 22:17:47.12 ID:x5OmFIlCO
>>132
うぉー!ほぼリアルタイムで素敵な萌に出会えました!ありがとうございます!

切な甘い2人イイ!


134風と木の名無しさん :2011/06/29(水) 23:05:50.34 ID:Qp3KdJhe0
>>119-121代理投下して頂いた者です
長文投下できなかったのでありがとうございました

>>120に修正2箇所あります

07行目 ×宮廷や学者たち→ ○宮廷の権威者や学者たち
21行目 ×遠慮なく蹴り上げた。→ ○容赦なく蹴り上げた。

今後また投稿機会があればチェック見逃しに気をつけます
すみませんでした

135風と木の名無しさん :2011/06/30(木) 21:44:36.59 ID:aa2mavOgO
>>128>>132
乙です!映画で萌えたのでこんな良作を読めて嬉しいです
前作の続きにもなっていて両視点どちらもとても楽しませて頂きました
素敵な関係を素晴らしい作品にして下さってありがとうございます
宜しければ更なる作品も期待したいと思います応援しています


136風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 12:44:06.08 ID:fg148op50
半生  異流操作
科学/捜査/研究所/係官×科学/捜査係/主査

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース

萌えが昂じてしまいました



137異流操作 1/3 :2011/07/01(金) 12:45:42.39 ID:fg148op50
「だーかーら!いっつも!言ってますよね!!」
「はい」
「私はね、あなたの専属係官じゃないんですよ!?今だってホラ、こーーんな山ほど仕事抱えてるんです!それに、だいたい何時だと思ってるんですか!無理ですよ!」
「はい」
いちいち素直に相槌を打たれ、余計に苛々が増す。
相手は一向に目を向けてくれなかったものの、私が指差した先の壁のアナログ時計では、既に短針が夜9時を指していた。
さっきまで、やりたくもない残業のため、研究所の暗い部屋で一人地道な作業をしていたところだった。
まだまだ優先順位の高い仕事がウンザリするほど待ってるってのに、このタイミングで一番勘弁してもらいたい来訪者が現れるとは。
いや、なぜか嫌な予感はしていたんだ。
胸がザワザワと妙に落ち着かないというか。虫の知らせというか。
来るのか…来るんじゃないかな…いや、きっと来るに違いない。
あーむしろ、来るなら早く来てくれ!
そんな自棄になった気分で、訳もなく戦々恐々としていたことは確かだ。
だからと言って、こうやって実際に来られちゃ堪らない。
情けなく宙を指し示したままの指先を戻すと、今度は、厚かましく私のデスクに置かれたダンボール箱を指差した。
「それが何ですか?え?明日までにこの厖大な画像解析しろって?」
「はい」
「あなた馬鹿じゃないんですか」
「はい」
満面の笑顔で、向かいの男が大きく頷く。
しかもなぜか嬉しそうに。
まさに暖簾に腕押し。同じ日本人であるはずなのに日本語が通じていない。
…なんだか頭が痛くなってきた。
思わず項垂れて盛大に溜め息をついてしまう。
こめかみに親指を押し当ててグリグリと揉み込みつつ、口調は我ながら力ないものに変わっていた。


138異流操作 2/3 :2011/07/01(金) 12:47:07.32 ID:fg148op50
「…あー、糸/村さん、糸/村さん、ねえ、糸/村さん、本っ当にちょっと糸/村さん」
「村/木さん、僕の名前呼び過ぎ」
目の前の男はクスクスと可笑しそうに笑っていたが、
「そんなことはどーでも良いんですよッ!そこに座ってください!」
「はい」
私の大声に驚いたのか、コクリと頷いて早速斜め掛けのショルダーバックを背中に回すと、隣の椅子にちょこんと腰を下ろした。
行儀良く両手を膝の上に置き、何が始まるのかと期待に満ちた大きな瞳でこちらを見つめてくる。
…ポヤポヤとした茶色の髪といい、これでアラフィフに片足突っ込んだ同い年っていうんだから嫌になる。
私は一度、スウッと大きく息を吸い込んだ。今日こそは言ってやらねば。
「前から言おう言おうと思ってたんですけどね、糸/村さん。本当に私の言ってること分かってますか?ちゃんと理解してます?」
「はい」
嘘だ、絶対に理解していない。もはや同じ地球人とも思えない。
「もう一度言いますから、よーく聞いてください。…無理です!」
無理なものは無理なんだ。
いつも思い通りになる私だと思ったら大間違いなんですよ、糸/村さん。
最後通牒を突きつけた私は、満足気に腕を組んで椅子の上でふんぞり返った。
しかし、当の相手は。
全く思い掛けない事態に遭遇したとでも言うように不思議そうな顔をして、しばしの沈黙。
それから突如、また満面の笑みに戻ると、馴れ馴れしく私の両肩に手を置いて大きくグラグラと揺さ振ってきた。
「またまたぁ、出来ますって村/木さんなら」
「無理です」
「村/木さんに出来ないわけないじゃないですかぁ」
「いーや無理です」
「そんなこと言わずに、ね?」
「だから無理だって」
「今度ディナーご馳走しますから」
ディナーという言葉に反射してしまった私も大人気ないが。
その瞬間、思いっ切り身体を振って相手の手を逃れると、その勢いのまま椅子から立ち上がっていた。


139異流操作 3/3 :2011/07/01(金) 12:48:38.75 ID:fg148op50
「ッんなこと言って、あなた今まで一度だって約束守ってくれたことないじゃないですか!」
「えー、そうでしたっけ?」
上目遣いで見上げてくる顔には、全く屈託がない。
そうだよ、この男は。こういう人間だった。
心底全く憶えちゃいないんだ。
…いや、よく考えろ。こんな奴から、むしろディナーに釣られる程度の男だと思ってもらっても困る。
生憎、物で懐柔されるようなお手軽な人間じゃないんだ、私は。
最前までムキになっていた自分に気恥ずかしさを憶え、再び椅子に腰を下ろしながら、私は多少ぎこちなく口を開いた。
「いや、勘違いしないでくださいよ。私だってね、そんな度量の狭い男じゃないんです。これが可愛い彼女のおねだりだって言うんならね、ほっぺに“チュッ”だけで後は何にも―――」

「―――チュッ」

―――?
なんだ、今の感触は?
右の頬に感じた、柔らかく生暖かく濡れたようなこの感触は。
「あれ、これじゃダメ?あ、そうか、可愛いおねだりか!」
状況を把握できず、呆然としたままの私の目に、
「村/木さん、オ・ネ・ガ・イ!」
組み合わせた両手をまるで祈るように捧げ、最後にニッコリ笑って小首を傾げる男の姿が妙に鮮明に映った。
多分、いやきっと、私は間抜けな顔でしばらく固まっていたに違いない。
焦れたように腕時計を見た目の前の男が、急に椅子から立ち上がる。
「あーヤバイ、僕、そろそろ行かなくちゃ。じゃあ、後は宜しくお願いします」
そして慌しくショルダーバックを直しながら、振り返りもせずにサッサと部屋を出て行った。
一拍おいて聞こえてきたドアの閉まる音さえも、どこか遠くに感じる。
待て、待て、落ち着け。
えーと、なんだ、今のは、その、つまり―――。
「―――え?……え、えぇッ…!?」
急激に顔に上ってきた血と早鐘を打つ心臓に阻まれ、全く思考がまとまらない。
その後、空が白むまで仕事が手に付かなかったことは言うまでもない。



140風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 12:49:26.45 ID:fg148op50

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!




141風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 12:59:25.74 ID:C1whak3m0
>>140
わあああ乙!!ドラマでもこの二人気になってたから読めて嬉しい!!
天然小悪魔め…

今調べたけど糸/村さんの中の人アラフィフなのか…若いな…

142風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 13:22:18.38 ID:7kchdENA0
984 :風と木の名無しさん:2011/07/01(金) 13:14:34.88 ID:lXysBL3o0
棚136
逆だったら良かったのに
棚でこんなに腹立たしく思ったの初めてだわ
もう二度と書き込むな

143風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 13:27:26.74 ID:YXqXIqjN0
>>136
984 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2011/07/01(金) 13:14:34.88 ID:lXysBL3o0
棚136
逆だったら最高に萌えたのにいいいいいいい
棚でこんなこと思ったの初めてだ
でも萌えたからここでGJさせていただく

自分絡みの984じゃないけど↑のお陰で良い物読めたGJ

144風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 20:14:46.83 ID:CC8lxQPM0
貼らなくていいよ

145風と木の名無しさん :2011/07/01(金) 20:29:59.06 ID:GYbTrAJn0
てか>>142が絡みの書込をわざわざ改変してペーストしてるから
>>143がフォローしたんだと思うけどまあイラネったら要らぬお世話だな

146風と木の名無しさん :2011/07/02(土) 14:16:17.01 ID:IikdcKTV0
嫉妬コワイネー

147風と木の名無しさん :2011/07/02(土) 17:22:31.37 ID:hNlKmDwz0
>>145
荒らしにフォローはいらないので

148風と木の名無しさん :2011/07/04(月) 11:36:40.82 ID:PVWpOJjsO
>>147
絡みスレで元の書き込みした人に対するフォローでしょ
あなた荒らし本人?

149風と木の名無しさん :2011/07/04(月) 12:33:23.45 ID:JYrkUWO80
>>142-148

※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://bbs.kazeki.net/morara/

深呼吸10回して、>>1を100回読んでから書き込もうな。

150風と木の名無しさん :2011/07/04(月) 13:46:45.51 ID:zbYFp+dcO
>>149
このスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。

151仮面ライダー000パンツ腕1/6 :2011/07/05(火) 11:19:34.56 ID:2pb9gRhj0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

…カチカチカチカチカチ
やたら時計の秒針が気になる。
眠むれない。
時計の針はもうすぐ午前二時を指すところだ。
いくら俺がグリードでもこの肉体は人間だ。
寝なきゃ色々不都合なことになる。
解ってはいるが眠れない。
寝てはいけない。
チッ、俺はなんて馬鹿なことを。
盛大に舌打ちしたいがぐっとこらえて息を潜めている。
仕方ないだろう、あれだけコアの気配をさせられちゃあ。
やばい。
じゃあなんで今度は逃げ出さないんだ?
コアを手に入れるチャンスだろ。
それにグリードの俺が人間相手に逃げ出すなんて。
後一秒で丁度二時。
違うだろ?

本当は、待ってるんだろ?

馬鹿な!
俺が…
カチ
そこで思考が停止した。
あれだけ大きく聞こえた秒針の音も消えまったくの静寂。
来た。
奴が目覚めた。

152風と木の名無しさん :2011/07/05(火) 11:28:39.42 ID:2pb9gRhj0
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

仮面ライダー000代行者です。
どうやら私もエラーになるみたいです。
すいませんが、どなたか続きお願いします。

153仮面ライダー000パンツ腕2/6 :2011/07/05(火) 18:05:04.03 ID:1CtELViM0
俺はこのくそ暑いのにすっぽりと包まった赤いシーツをさらに強く握り締めた。
暑くてダラダラ汗かいてるのに寒気が止まらない。
気配はゆっくりと俺に近づくのが解る。
駄目元で声をかけようとした時。
俺はシーツごと寝床から引きずり下ろされ床に叩きつけられた。
くそっ。思いっきりシーツ握りすぎた。
「おい!エイジ!お前っ…」
急いでシーツから抜け出ると俺は奴に掴みかかろうとして…
やめた。
奴の目は何も映して無いからだ。
ただ無表情に俺を見下ろしているだけ。
人間の感情を映す筈の目は無機質に淡く紫に光っていた。
「お前、またなのか…?」
判っていたんだからなんとも間抜けな質問だ。
チッ、やっぱり逃げとけばよかったぜ。
エイジがこの状態になるのは始めてじゃない。
昼間に紫のやつになると夜は必ずこうなる。
何も見ない、何も話さない。何も感じない。
ただ、事をすますだけ。
わかってるんだから俺も逃げれば良かったんだ。
コアなんかこの状態で奪えるはず無い。
「おい、おいエイジ、っちょっと待て…」
ビリビリビリ!
あっと言う間に俺のシャツは襤褸切れに変わった。
「これ気に入ってたんだぞ!」
怒鳴ったところでコイツには届かない。
シンプルな白いシャツはまた雛の手でド派手な再生をされることが決まった。
奴は邪魔だとばかりに俺のパンツにも手を掛け下着ごと引きちぎろうとする。

154仮面ライダー000パンツ腕3/6 :2011/07/05(火) 18:06:15.69 ID:1CtELViM0
「わかった、俺がやるから」
渾身の力で奴を押し戻し急いで身につけていた衣服を脱ぎ捨てた。
チッ、なんでコイツは何時もパンツ一枚なんだ。
全裸になった俺を獲物でも見たかの様に舌なめずりをした。
明らかに人間の物とは違う、長く爬虫類のような舌はぞろりと動く。
俺はそのおぞましさに身動きひとつ出来なくなった。
これはコイツの食事なんだ。
俺はコイツの餌にされるんだ。

奴はゆっくりと俺の顎を掴む。
俺はまったく動けずなすがままに口を開いた。
抵抗なんてまったく無駄だと最初に思い知らされていた。
無駄にあばれなければ事はさっさと済む。
気持ち良いだけで終わるんだ。
そこに感情はなくていい。
目をそらすことすら、閉じることすら出来ないまま奴の忌々しい舌が俺の口腔を蹂躙する。
舌は圧倒的な質量で口の中を埋め尽くし、その先は喉の奥まで達していた。
苦しくて吐き出したいが動けない。
そのうち、何かが喉を下っていく感覚がした。
ああ、まただ。
今日もわからなくなってしまう。
舌が抜け出た後も口を閉じることが出来なくなっていた。
飲み込んだ何かは胃まで落ち体は異常に熱を帯びる。
さっきまでの寒気はまるで無くなり、いくら荒く息を吐いても熱が体から出て行かない。
増してこんな熱帯夜は最悪だ。
熱は胃からどんどん下がっていき股間にたまる。
もう駄目だ…
俺は流れ出す唾液をそのままに股間に手を伸ばした。
早く、早くこの熱を開放したい。
それはもう硬く勃起していて触れた瞬間に膝から崩れ落ちた。
「はっ…ああ…」

155仮面ライダー000パンツ腕4/6 :2011/07/05(火) 18:07:23.91 ID:1CtELViM0
奴は勃起を掴んだまま動けなくなった俺の肩を掴むと素早く反転させる。
掴まれた肩ですらジンジンと甘くしびれた。
髪を後ろから鷲掴みにされ床に押し付けられる。
自然と尻が高く持ち上がり、俺の秘部が外気に晒される。
こんな屈辱的なこと!
頭のどこかで俺が言うが体は何も出来ず、むしろ待っていたようだ。
ぬるぬるとした怒涛が肛門に当てがわれた。
「あっんんっ」
来る。
なんのためらいも無くそいつは俺を串刺しにする。
その瞬間、俺は快感で意識を飛ばし開放される。
……いつもなら
それはぬるぬると入り口を行ったり来たりするだけで入っては来なかった。
俺のそこは飲み込もうと淫猥な口を開いたり閉じたりするが一向に入ってこない。
気が狂いそうになる。
「早くっ、エイジ早く、」
俺は思わず口走った。
頭の奥にいる冷静な俺が舌打ちしたが構う事はない。
どうせ明日にはまったく記憶がないんだ。
あいつは何時もと同じように戻ってる。
自分の股間を擦り上げ俺は尻をさらに高く持ち上げた。
………クックククク……
噛み締めた笑い声。
「いい格好だな、アンク」
何…?
何が起きたんだ?
熱に犯された頭じゃ思考が追いつかない。
「え、エイジ…?」
俺は無理やり振り向くとそこには確かに紫に目を光らせたエイジがいる。
でもやつは確実に俺を見ていた。

156仮面ライダー000パンツ腕5/6 :2011/07/05(火) 18:08:21.32 ID:1CtELViM0
「可愛いよ。そーゆーのも。」
ニヤニヤと笑って俺を押さえつける力は到底人とは思えない。
だけど、確かにしゃべって俺を見ている。
あの、エイジが。
「エイジ、おまえ、判るのか…?意識、あるのか?」
声が惨めに震えた。
「変身をコントロール出来るようになったんだ。こっちも出来るようになったとはおもわなかった?」
…まったく思わなかった。
「ま、最初から記憶はあったよ。でもなんか可哀想だったから気づかない振りしてただけ。」
可哀想、だと?
こいつ調子に乗りやがって。
コロス。
と思った瞬間、ぐっと股間を握りこまれた。
「あっ、」
思わず声が漏れてかっと頭に血が上った。
クックックッとまた笑いを噛み締める声がする。
「グリードでも恥ずかしいの?いいじゃん、これも欲望だよ?性欲って言う。」
こんな奴だったか?
こんな笑い方して、こんなこと言うやつだったか?
「大丈夫。ちゃんと明日からも忘れた振りするよ。恥ずかしいんだろ?何時もの俺に戻ってあげる。…だから…」
再び奴のモノが俺の秘部にあてがわれた。
「おねだりして。欲しいって。俺が、欲しいって。」
なんでもないことのように言われた台詞は俺を震えさせた。
あいつがこんな事をするのか?
「選択は出来ないんだよ。判ってると思うけど…」
俺はお前を自由に出来る力がある。
言われなくてもわかっている。
何ひとつかなわないのはわかってる。
でも思い通りになるようじゃ面白くない。
早く返事をよこせと乳首をつねり上げられてもじれた快感になるだけ。
俺は残ったプライドをかき集めて唇を噛み締めた。
震える唇を血が滲むほど強く。

157仮面ライダー000パンツ腕6/6 :2011/07/05(火) 18:09:09.22 ID:1CtELViM0
「言えないの?だめかぁ…。じゃあ…」
それが奴には気に食わなかったのかもしれない。
前髪をつかまれ思いっきり引かれ後ろに仰け反らされる。
痛みすらも快感になる俺の耳元で静かに、熱を帯びた声で囁く。

「全てを俺に差し出せ。アンク。」

その声はまさに…
……オーズ

もう何も判らなくなってきた。
ここはいつなのか、コイツは誰なのか。
俺はいつの間にかな何かを口走っていたようだ。
欲していたそいつが体に潜り込んでくると俺は狂ったように感じて喘いだ。
今までとはまるで違う。
身体だけじゃなく魂まで貪るような。
俺も必死で奴を奪おうともがいた。
涙腺は壊れたようにひたすら涙をこぼし、奴の息使いと俺の喘ぎと卑猥な粘膜の擦れる音が部屋中に響いた。
記憶がぐるぐると目まぐるしく入れ替わり、まぶたに現れた光の渦に飲み込まれる。
その光の果てで見えたものは。
「…ンク、アンク、アンク、アンク、…」
必死で俺の名前を呼び続けてしがみつく男の姿。
馬鹿だな、エイジ。泣くなよ。
俺の欲望は、、、、なんだから。

158仮面ライダー000パンツ腕7/6 :2011/07/05(火) 18:11:19.39 ID:1CtELViM0
頭が痛い。体も。
意識が戻ったのは午前五時。
あれから三時間しかたってない。
まるで何事も無かったように俺は何時もの姿で何時もの場所に寝ていた。
体は全て清潔に拭われていて、秘部のしびれたような痛みさえなければ本当に夢のようだ。
俺は物音を立てず、自分の寝床から飛び降りた。
着地のとき散々使った後肛に甘い痛みが走ったが無視する。
こちらに背を向けて静かに寝息をたてる奴を覗き込んだ。
うっすらと涙の跡が残っている。
これで何も無かったような顔をするつもりなのだろうか。
寝息は単調に繰り返している。
本当に寝てるのか?
まあいい。どちらでも。
聞こえても、聞こえなくてもいい。
俺は奴の耳元で囁いた。
「エイジ。今度は俺の全てを奪え。腕だけじゃなく全てだ。」
そのために俺は全てを取り戻す。
おまえの欲望を解放するため。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

以上、代行スレよりお送りしました
改行大杉エラーのためナンバリングが増えてしまってすみません

159風と木の名無しさん :2011/07/06(水) 07:17:54.34 ID:7ez2cw5rO
>>151
素晴らしい欲望だよ!!
パンツ鬼畜だよパンツ、そして相変わらずパンイチで吹いたww
腕ツン健気で可愛かったです、そして切ない…最後は本当に幸せになってほしい二人だ。
妄想闇ーを量産しながら乙!

160風と木の名無しさん :2011/07/06(水) 10:52:04.63 ID:SnbfwPYEO
>>151
ありがとうございます。
>>158
ありがとうございます。
改行大杉はダメなんですね。
勉強になります!
またよろしくお願いします。

161甘い毒 1/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 05:33:06.87 ID:/g4YSOXl0
・映画版 無宇 画頼×夕鬼で、今回夕鬼誘い受け。リバ回想もあり。
・ぬるいけどエチあり
・映画のラスト辺りのネタバレがありますので、無宇を見ていない方は避けて下さい。
・勢いだけで書き、設定理解が出来ておらず漫画ともごっちゃになってると思いますが、生暖かい目で見て頂けると幸いです。
※ぬる過ぎだけど一応、監禁・拘束・無理やりなので注意


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

体が重くて堪らない。必死で両手両足を動かしているが、気を抜けば今にも沈みそうだ。
体のあちこちが痛み、何処かが損傷しているのは分かる。
塩水が切り傷に染み込み、鈍い痛みも止まることがない。
――だが、落ちた場所がここであった事を感謝しなくてはならない。
そして、月明かりさえ無いこの夜にも感謝を。
漸く岸辺に着くと海から上がり、疲労ですぐに横たわってしまう。チラリと見た海上では、飛行機の燃えカスがゆっくりと沈んでいっていた。
耳を済ませば、先程起きた爆破音で今だ辺りも騒然としているようだった。
「……」
夕鬼は片腕を上げると、腕時計に付いたボタンを何度も押したりして操作する。
液晶のそれは壊れてはおらず、バックライトが付くと操作の度に色々な物が映った。指を不意に止め、画面にハッキリ赤い点が映っているのを見て、暫く考え事をしているようだった。
だが、ため息を付くと身を起こし、歩き出す。
(この近くに隠れ家の一つがあったな…騒ぎが収まる前に急ごう。混乱に乗じて、あのバカを引き揚げねば)
数時間後――夕鬼の企みは成功し、画頼を引き揚げることが出来た。

それは正に奇跡としか言いようがなかった。MWを抱えあの高さから落ちて、骨に何箇所かのヒビと打撲だけですんだのだから。
……かと言って、それが喜ばしい奇跡であるかは別だ。
彼を悩ます悪魔―オレ―も同じ様に助かったのだから。

162甘い毒 2/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 05:34:40.21 ID:/g4YSOXl0
「なぁ、画頼。本当に神は、面白いことをするな」
夕鬼は新聞を片手に椅子に腰掛けて、珈琲を一口飲み、ベッドに横たわる画頼に声をかけた。
都内の外れの隠れ家に、二人は身を潜めていた。地上を数百メートル離れた場所から落ちて助かったとは言え、所詮は人の子だ。流石に傷を癒さなければ、行動もままならない。
『傷が痛み失敗した』などと言うことは避けたい……傷が全快するまでは表立って動かない事を、夕鬼は決めた。
もっとも己が動かずとも手足になって動く奴らは幾らでもいるし、生活も活動も一切困りはしないが。
「……」
問題は、コイツ―画頼―だった。
あの日以来、ベッドに縛り付ける様にしてある。手足を広げるようにして鎖で繋ぎ、怪我の世話、下の世話、食事の世話を自分一人でしていた。
体が痛むと、「己も怪我人なのに何をしているのだ」と自傷気味に思う。その原因は分かっている。
実はベッドから離す事も出来るのだが、ふと、「またあのような事をされては…」と思ってしまうのだ。
今日はワイシャツ一枚で、ベッドに繋いであった。
傷は全て手当てしており、包帯が所々見える。あの日から大分、日は経っており、これでも痛々しい姿はましになった方だった。
だが、肌には所々朱い鬱血痕があり…別な意味で痛々しい。
「あの事は一切、テレビにも新聞にも上がら無くなった。――お前の神は、本当にお許しになったようだ」
「――違う!神は、」
「オレ達の島での事さえも今だ咎めない神がなんになる。信仰なぞ、捨ててしまえ」
「…それは…」
夕鬼が突き付ける事実に、画頼は押し黙った。
夕鬼は時折、こうして画頼を精神的に虐めた。綺麗事に生きようとする画頼に、己が見ている世界を見せ付ける為に。そして、それも現実であると分からせる為に。
神などいないと言うのに、現実を見ながらも、感じながらも、理想を信仰する画頼に苛立ちを感じて止まらなくなる。

163甘い毒3/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 05:35:21.60 ID:/g4YSOXl0
画頼の精神のよりどころを侮辱する――これは思い通りにならない奴への、当て付けの一つだった。
椅子から立ち上がると、新聞も珈琲もテーブルに置いたまま、画頼の横たわるベッドに向かう。
夕鬼がベッドの端に腰掛けると、画頼の体がビクッとした。それを気にもかけず、夕鬼はワイシャツの上から画頼の身体を撫で回す。
「……それより、どうだ?もう一度」
「や……止めろ!」
画頼は身をよじって逃げようとするが、ベッドに括り付けられていては逃げられない。夕鬼はワイシャツの上から胸の突起を探すと、微かに指に触る物があり、それを摘む。途端に画頼が小さな声を上げて、両脚をすり合わせる様に動かした。
「今朝もしたばかりと言うのに…正直だな」
隠そうとしたそこは、ワイシャツの隙間から見えていて隠れてはいない。画頼とは違って新聞を買う為に出掛けた夕鬼は、Tシャツにズボン姿だった。
「もう、止めてくれ……た…!?」
続く言葉は、喉で止まった。突起を離した手が下へと下り、下半身を……一物を捕らえたのだ。
ゆっくり根元から上へと撫でる様に動く手に、画頼の喉が鳴る。
「身体は正直だぞ、画頼」
少し擦り上げただけでそれは硬く反り返った。抵抗するように目をつぶり顔を背け、脚を擦り合わせているが、身体は与えられる刺激に震えている。
「バカ!止めろ!!」
「……今度はオレが、乗ってやるよ」
そういうと、画頼は思わず夕鬼を見た。
「!」
だが視線が合わさるとすぐに、顔を背けてしまった。その横顔は、頬どころか耳まで赤い……夕鬼は思考を読み取り、舌なめずりをした。
手にしていた一物を手放し、ベッド脇のサイドテーブルから潤滑液の入ったボトルを取り出して傍らに置き、ズボンと下着を素早く脱ぎ捨てる。
盗み見る画頼の喉が鳴り、夕鬼は肌が粟立つのを感じた。共に上しか着ていない状態で、立ち上がった下半身を曝すのは――二人にとっては卑猥な格好でしかないかったからだ。
夕鬼が身体の上に跨がるようにベッドに乗り上げると、画頼は視線を動かしチラリと見て、直ぐに目を閉じた。

164甘い毒4/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 05:36:01.42 ID:/g4YSOXl0
(フン、いい加減、正直になれよな…神父サマ!)
けなしながらも、容器を取り上げて潤滑液を画頼の一物にかけた。温めてもいないそれの冷たさに小さな悲鳴が聞こえるが、気にも止めずにかけ、容器の蓋を閉めると側に放った。
両手で一物に馴染ませる様に撫で回すと、派手な粘着質の水音がする。
「おいおい、もうガチガチじゃないか……止めろって言葉はどうした?」
そういってやると、画頼は歯ぎしりをした。
「……」
だが、もう「止めろ」とは言わなかった。代わりに、身体が、下半身が、求めている。
亀頭の先の緩やかな溝を人差し指で撫でてやると、画頼は下半身に力を入れて堪えるようにした。
「……言わなければ、このまま放置をしてやろうか」
意地悪く先っぽの穴をグリグリと押してそう言うと、画頼は目を見開いた。けして夕鬼を見ないが、身体は指の動きに合わせて震えている。
「そうだな…まだ、お前の尻は緩いままだろう?オレからの慈悲として、オモチャを入れておいてやるよ。この前の様にな」
そういわれると画頼は、先日の行為を思い出した。


その日は抱かれるのだと思っていたのに、いきなり男根の形をしたオモチャを挿されて、己の一物の根を縛り上げて放置されたのだ。
身体の中を暴れ狂う様にずっと震えているそれに堪える画頼を、夕鬼はビデオカメラを回しながら見ていた。
――正確には、カメラは固定して置き、椅子にかけて見物していた。
その上で、何時もの夕鬼の言葉の責めがきた。
『信仰など捨てろ――捨てて、オレに帰依しろ』
嫌だと言えば、遠隔操作も出来るそれのパワーを最大にされる。
『オレの手伝いをしろ』
それも嫌だと言えば、身体の中で震えていたそれが急に止まった。ホッとしたのもつかの間、パワーが最大になったそれが暴れた。
止まったり動いたりとするそれに、快楽の波も止まったり激しくなったりと延々と煽り続けられて…気が狂いそうになる。

165甘い毒5/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 05:36:37.74 ID:/g4YSOXl0
透明な先走りの液に白い液が何度も混ざった暫くの後、画頼は思い出すのも憚れるような言葉を吐いた。


快楽の地獄というそれを思い出して、下半身を益々熱くさせるが、同時にぞっとする。
その攻めは、夕鬼の気が変わらなければ終わらない攻めなのだ。
『頼む、もう私を楽にしてくれ!!』
そう懇願した画頼を鼻で笑い、ただ見つめているだけだった。口の端を上げて、さも可笑しいものを見ている様な顔。画頼が乱れる姿を見ても、少しも動じていないような様子で椅子に腰掛けていた。

何度も何度も惨めに懇願した後、我慢が理性が綺麗に吹き飛んで画頼は欲に負けた言葉を叫んだ。
それで漸く、夕鬼の愛撫を、男根からほとばしる熱を貰えたのだ。
思い出すだけでおぞましくなるも、同時に身体が熱くなった。
「ゆ……夕鬼!」
涙目になりそうになりながらも、画頼は唇を開く。惨めに懇願し続けた上に、あんな言葉は言いたくない。早くラクになるには、夕鬼の気が変わらぬ内に頼むことだけだった。
「夕鬼が欲しい!今すぐに、お前の中に入れさせてくれ!!」
熱が篭った目で見上げ続ければ、暫くして口の端を上げて夕鬼が笑った。
「……上出来、だ。やれば出来るじゃないか、画頼」
一物から両手を離した夕鬼は、画頼の両脇に手を付いて唇ヘとキスを落とした。
軽く触れるだけのそれをもどかしく思う画頼を余所に、夕鬼は身体を起こす。片手で画頼の肉棒を掴むと、自分の後穴に当てて一気に腰を落とした。
硬く反り立ったそれを、潤滑液のおかげで難無く飲み込んでいく様子を画頼は見つめる。
温かい夕鬼の体内は柔らかくも、けして離さないようにキツく締め上げる。根元まで入り込むと、夕鬼は恍惚の表情を見せた。
――画頼の喉が鳴る。
画頼の腹の上に両手を乗せた夕鬼は、腰をくねらせるように動かした。上気した頬、その表情に、その腰の動き。ゆったりと動かされるのに堪らず、鎖を握り締めた。
(これさえなければ――!)
今すぐ、夕鬼の腰を掴んで突き上げまくって犯したい!夕鬼のあの理性の飛んだ喘ぎ声が聞きたい!

166風と木の名無しさん :2011/07/07(木) 05:50:35.27 ID:VRvXdsH0O
規制解除?

167甘い毒5/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 05:51:39.15 ID:/g4YSOXl0
そんな妄想が頭の中を過ぎり、慌てて打ち消す。
(……獣に劣る…何て罪深い事を!)
僅かに残った理性が、画頼を戒めた。
だが、それは夕鬼が腰を激しく振り始めてすぐに飛んだ。声も絶え絶えに、ベッドのスプリングを利用して激しく振る。
スプリングの軋む音がする度に画頼の理性は崩れ、しまいには己も下から突き上げるように腰を振った。
「ゆ…ッ夕鬼!私の手を…手を自由にッしてくれ」
そう懇願すると、夕鬼は濡れた瞳で見下ろしてきた。
「うる…さい!お前……ッンん!…は…そのまま、腰を振って……ぁあッ」
夕鬼が快感に身体を震わせ、のけ反らせる。
顎のラインと首筋のその美しく流れるような反り具合、胸の突起がピンと張り詰めているさま。荒い息遣い、股間で揺れて透明な液を垂らしているそれ――何もかもが卑猥だった。
それを求め触れたくて懇願したのに、触れさせて貰えないとは!
画頼の中に行き場の無い怒りが込み上げるも、ただ鎖を握り締めるしか無かった。代わりに、下から一層激しく無茶苦茶に突き上げてやる。
治りきっていない身体が悲鳴を上げていたが、快楽の奴隷と化していた画頼には意味の無いものだった。
いきなり、無茶苦茶に突き上げられ始め、感じ入るように閉じていた夕鬼の目は見開いた。
自ら腰を振るのを止めても、画頼が振り続けているおかげで止まらない。
「や……!!あっ…、ンッんんッ…ァあ…」
急速に追い立てられる感覚に、慌てて押さえ付けるように身体を強張らせる。止めようとしても何度も力強く押し入って来る画頼の男根に堪らず、今度は夕鬼が懇願する番だった。
「ァ…が…画頼!!ダメ…だ、もぅ…もうッ少しゆ…ッ…んぅ…!!」
ガクガクと揺さ振られ息も絶え絶えに懇願するが、画頼は止まらない。
身体をベッドに縛り付けられていても、的確に夕鬼の感じる場所を突き上げて来る。口では綺麗事をどんなに並べていても、身体では激しく正直に夕鬼を求めているのだ。
(嫌な、男だ……)
夕鬼もそうは思いながらも、画頼を激しく求めていた。画頼の腰の動きに合わせ、夕鬼の腰が無意識に動き始める。

168甘い毒7/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 06:13:50.85 ID:/g4YSOXl0
何度身体を合わせても、現実を、事実を、受け入れない相手に強い苛立ちを自覚していた。だからこそ、夕鬼は時折画頼の信仰を激しくなじりながら焦らすように性交をする。
身体が反応し始めると、画頼はそれを免罪符に夕鬼と激しく交わるのだ。
『愚かな…最悪な神父だ!』と思いながらも、そんな画頼が愛しくて堪らなかった。
"何時こちら側に堕ちるか?"と愉しみながらする行為は、終わった後に期待を裏切るという苦痛をいつも伴うが……まるで甘い毒のようだった。

「ンふ……ぅ、あ……ア…ぁ…」
何度も突き上げられ、限界を迎えた夕鬼の雄の先から精液が零れた。勢いは無く、トロリと零れたそれは、画頼の腹の上に滴り汚した。
キュ…と後穴が一層絞まり、画頼は呆気なく夕鬼の体内に熱を打ち上げた。勢いよく体内に打ち上げられる熱に、夕鬼の身体は、内股は、震える。
力尽きたように画頼に覆いかぶさるようにのしかかる間も、熱いほとばしりは体内を埋め尽くした。
夕鬼は荒い息を整えている間、画頼の荒い息に聴き入った。大分、収まると、抱く時も抱かれる時にも画頼は何時も…悔い入るように目をつぶる。夕鬼はそれに気が付くと、何時も腹立たしくて歯ぎしりをする。
しかし、今日は満足な攻め具合だったから許してやる事にして、目を閉じた。


画頼の身体を拭い綺麗にし、己もシャワーを浴びて汚れを綺麗に洗い落とす。そうして、画頼の横たわるベッドに、己も寄り添うように横たわった。
「この前の襲撃で、余所に移されただろうが……MWは、まだ沢山あった。オレは残りを探し出して、絶対に手に入れてみせる」
そう夕鬼が言うと、画頼が反応して首を動かし見つめてきた。それに素知らぬそぶりをしながら、夕鬼は言葉を続ける。
「オレの時間は、そう長くは無いだろう…だが、生きている限りは何年かかろうともMWを探す!」
夕鬼はそう言い切ると、画頼の肩口から彼を見上げた。
「……画頼、オレが志半ばで死んだら代わりに探し出してくれ」
真摯に見つめながら言うと、画頼は目を見張った。そうして唇を震わせているが、漸く口を開いた。

169甘い毒8/8 ◆0RGDUEL5Cm4p :2011/07/07(木) 06:17:03.08 ID:/g4YSOXl0
「――それで、世界を滅ぼせと?」
そう聞くと息を飲む画頼に、口の端を上げて夕鬼は嘲う。
「その時は、お前の好きにしろ。……だが、あれがこの世に存在する限り、第二第三のオレ達の故郷が出来ることを忘れるな」

『だから、オレを手伝え。画頼』
そう甘い毒を囁きながら、夕鬼は身を起こし、画頼に口づけをした。浅く、深くと口づけると、あっさりとそれに応えて画頼は口を吸ってきた。
夕鬼が片手を動かし鎖の戒めを解いてやると、画頼はすぐに夕鬼の身体にむしゃぶり付く。
首筋に何度と無く吸い付き、欲望のままに求めて来る彼を嘲笑いながらも、夕鬼は愛おしそうに抱きしめた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
>>166 規制解除ありがとうございました。
投下ミス多発で本当申し訳ありません。ご観覧、ありがとうございました。


170KING OF MY HERO 1/7 :2011/07/09(土) 04:06:16.56 ID:kEW7vdLt0
>>16.>>17 すみませんでした。前スレに投下すれば良かった…アドバイスありがとうございます。
      そして皆様すみませんでした。気をつけていきます。
>>15の続き 虎&兎 の空折です
・話しの展開の為、オリキャラが出てきます。嫌いな方は注意。     ・擬態ハァハァ!!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


ルビーに擬態したイワンはヘリに乗り込んで街を見下ろした。
日中のシュテルンビルトは、いくつもの高層ビルに陽の光が反射して輝いている。夜ともなれば灯りが灯り、キラキラと眩いばかりだ。
これから向かうサウスゴールドは、富裕層の暮らす区域で民家が多い。
計画では一旦某企業ビル屋上のヘリポートに降り、体裁を取り繕うためだけに用意されたボディーガード2名とイワンがリムジンに乗り込

んで、自宅へ向かうことになっている。
ヘリが無事にヘリポートへ着くと、風圧と爆音の中アニエスが声を張り上げた。
「折紙サイクロン、無茶だけはすんじゃないわよ」
「はい!」
女性の姿をしたイワンは、ヘリの風で翻るスカートをオロオロと押さえながら、ビルの中へと消えていった。


「はぁ……」
イワンはため息をついて、ソファに深く身をゆだねる。
ボディーガードはあくまでも形だけだったので、すでに裏口から去ってしまった。今はルビーの自宅リビングに一人きりだ。
もし本当に犯行グループがやってきたら、他のヒーローが投入される。
ボディーガードを撤退させたのも、戦闘になったら一般の彼らを守りぬくのが困難かもしれないからというのが理由だった。
デメリットは早々に排除すべきというアニエスの意見は最もだったが、同時にイワンの身を危険に晒す可能性は高まった。
『もう、なるようにしかならないな……』
イワンは自分の手を見つめた。何時もの自分の手と違う、一回り小さく、細く、頼りない女性の手がそこにある。
右手で、左腕を掴んでみる。筋肉の隆起を感じない、しっとりとした肌。ガラスが填められたドアに映る自分の顔は、まったく知らない他

人の顔だった。
三階建ての洒落た豪邸の中には、イワンしかいない。デジタルの時計が点滅するのみで、しんと静寂が続いている。

171KING OF MY HERO 2/7 :2011/07/09(土) 04:07:55.32 ID:kEW7vdLt0
閉めきった窓のせいで揺らぎすら無い空気に耐えかね、のろのろとリモコンを手にとった。
テレビを付けると午後のワイドショーが映し出され、そこでは昨日のヒーローの活躍が話題に上がっている。
≪昨日、最高でしたね!ドラゴンキッドの素早い動きがなかったら、きっとバーナビーだって間に合ってなかったですよ!≫
女性アナウンサーが興奮気味に言うと、男性コメンテーターが咄嗟に返す。
≪いや、皆さんそう思うでしょう?でもね、ヒーローアカデミー助教授の私としては、バーナビーはあのタイミングを……≫
≪ワイルドタイガーの安定感も最近良いですよね。安心感があるっていうか≫
「……安心感……」
ぽつりとイワンが呟いた。言われた事の無い言葉。テレビから垂れ流れるコメントは、自分と全く関係のない世界の話しのように思えた。
≪でも皆さん、やっぱり……≫
画面の中で何かを言いかけた女性アナウンサーは、出演者全員と一緒に顔を見合わせて、わざとらしく大きく頷いている。
≪ですよね!そうですよね、やっぱり大活躍は我らがスカイハイ!ということで、スカイハイの特集を組んじゃいましたー!≫
盛り上がるスタジオの中。そこにある大型モニタにはスカイハイが映し出される。
イワンの胸がドクンと鳴った。
≪「みなさんの応援のおかげで、私たちは活動ができるのです。ありがとう!そして、ありがとう!」≫
膝の上においていた手が、気付かぬうちにスカートをぎゅっと掴んでいた。
「僕は……僕は、あなたがいるから活動ができてるんだ……」
イワンは呆然とテレビを見ながら、切なく語りかけるように呟く。脳裏には幾度となく助けられた記憶が甦った。
見切れることばかりを考え、戦闘そっちのけで夢中になった結果、爆発や落下物に巻き込まれた事は数え切れない。
その度にスカイハイは折紙サイクロンを助け、のちイワンがロックバイソンに怒られていればさりげなくイワンを庇った。
――スポンサーを目立たせるっていうのは、我々にとって実は大事なことだ。そうだろう?――
落ち込むイワンの肩ををぽんぽんと叩き、視線を合わせれば歯を見せて笑う。
そんな状況を思い出せば思い出す程、イワンの胸は苦しくなった。


172KING OF MY HERO 3/7 :2011/07/09(土) 04:09:44.81 ID:kEW7vdLt0
『スポンサーは大切だけど……本当はそれだけじゃだめなのも、スカイハイさんは知ってるのに』
息が詰まりそうになり、思わず胸に手を当てる。だが、そこにあった柔らかさに驚いて咄嗟に手を離した。
『あっ、……うわ……ッ、なんてこと……』
紛れも無い女性の身体に触れてしまい、イワンは思わず顔を赤らめた。
できるだけ意識して触れないようにしてきた、擬態の身体。自分で触れた感触も、熱も、はっきりとわかる。
今のイワンの身体は、依頼者ルビーの身体がそのままコピーされた状態だ。
イワンは息を整えると、自分の顔をパシンと両手で打った。
「だめだめ!」
仕事だ、と自身を一喝して、イワンはテレビの中で未だに続くスカイハイ特集に見入った。

しばらくテレビを見入っていたが、犯人グループからの連絡も、外部の動きも何も無い。
イワンはテレビを消すとカーテンを閉め切った窓に近づき、そっと隙間から外を覗き見た。――静寂――恐ろしい程の静寂。
眉間に皺を寄せる。違和感を感じたその時だった。警告音とともに手首に巻いていたPDAが赤く光る。
『ボンジュール、ヒーロー。ノースゴールドの銀行で爆破予告よ。軍から出動要請があったわ。出動して』
イワンはゴクリと唾を飲み下した。
「あの、アニエスさん!ぼくは……」
『折紙サイクロンはそのまま任務について。同じ犯行グループだから、どちらかがフェイクの可能性もある』
「はい……」
イワンは唇を尖らせ、ため息を吐いてまたソファに身体を沈めた。仲間が戦いに赴くのに、自分がやっていることは正しいのかと自問する。
ピンポーン、という間の抜けたチャイムが鳴った。はっと顔を上げ、視線を廊下に向ける。再度チャイムが鳴った。
全身に沸騰した血液が巡った。五感全てを使って音の方角へ集中する。
『来た……!!』
ピンポーン、ピンポーンと連続してチャイムが鳴った。
イワンは立ち上がりリビングの入り口へ歩み寄ると、身を隠しながら玄関へ視線を固定した。
廊下の奥に見える青い玄関扉から、コンコン、とドアをノックする乾いた音が響く。
『ノック……?これから殺そうとする相手に対して、ノック??』
イワンは手のひらにかいた汗をスカートにこすりつけると、ゆっくりと廊下を進んで玄関の覗き穴をそっと覗き込んだ。

173KING OF MY HERO 4/7 :2011/07/09(土) 04:10:56.70 ID:kEW7vdLt0
「……っ!どうして」
驚き、一瞬イワンが身を引いた。覗き穴の湾曲したレンズごしに、紛れも無いスカイハイが佇んでいる。
室内からの反応が無い為か、頭をポリポリと掻き、扉からちょっと離れてみたり近寄ってみたり、離れたりを繰り返している。
近寄ったスカイハイがコンコン、とドアをノックした。
イワンは電子ロックを解除してから、鍵を捻る。カチャンという軽い音とともに、扉はゆっくりと内側へ開いた。
隙間から風が吹き込み、同時にはためくマントが視界に入る。やがて目の前には、まるで後光を背負ったかのようなスカイハイが現れた。
陽の光に照らされた銀色のボディは眩いばかりだった。額のランプは空に負けない青さで輝いている。
「君がルビー・サリバンくんかい?私はスカイハイ!君を守りにきたんだ」
ポカンと見上げるルビー(イワン)に対して、一瞬スカイハイは固まり、小さく「あれ?」と呟いた。
「あー……君がルビー・サリバンくんかい?私はスカイハイ!君を」
「すみません、ボーっとして。どうぞ、入ってください」
言って、イワンは視線を逸らすと室内へとスカイハイを誘い、扉を閉めロックをかけた。
擬態をしているイワンから見るスカイハイは、いつも以上に大きく、たくましく見える。
廊下を進むイワンの後ろを、スカイハイが付いて行った。
イワンがソファに座る。
「私もいいかな?」
返答を待たずに、スカイハイはその隣に座った。
驚きと不安が同席した表情で、イワンがスカイハイを見た。
「大丈夫だったかい?何事もなかったかい?」
スカイハイはルビー(イワン)を覗き込むように言った。ルビー(イワン)が頷く。
マスクの奥でどんな表情をしてるんだろう、とイワンは思った。そしてそれを想像すると胸が痛くなった。
『スカイハイはシュテルンビルトの市民を守る、優しくて強いキング・オブ・ヒーローの視線で今僕を見ているんだ……』
今まで一度も見られたことのない視点で自身を見つめられていると気付き、途端にイワンの心臓は早く打ち始めた。

174KING OF MY HERO 5/7 :2011/07/09(土) 04:12:08.74 ID:kEW7vdLt0
スカイハイは、黙り込んで自分を見つめているルビー(イワン)を目の前に、バツが悪そうにきょろきょろする。
そして大きな手で、ぽんぽんとルビー(イワン)の頭を優しくなでた。
「大丈夫だ、心配はいらない。君は私が守る。そして、守る!」
ルビー(イワン)は首から顔までをも真っ赤にして、頷いた。


アナログの壁掛け時計が、かちかちと音を立てて時を刻んでいる。
スカイハイがイワンの下へとやって来てから、既に五時間が経過した。
外は暗くなっているだろうが、カーテンすら閉めきった室内からは外の様子がわからない。
二人はまんじりともせずにソファに座ったまま、殺害予告の時間が過ぎるのを待っていた。
スカイハイはたまに大きく息を吐き、手でパタパタとマスクを仰いでいる。イワンがそれに気付いた。
「スカイハイさん……、暑いんですか?」
「え?あ、ああ。いや……」
言い澱むスカイハイを見て、思わずイワンが噴出した。きょとんとした様子で、スカイハイはルビー(イワン)を見返す。
ルビー(イワン)が微笑んだ。
「暑いなら、マスクを脱いでも大丈夫ですよ」
「いや、いやいやそれはできない。できないよ」
「大丈夫ですよ、ぼく……私は……あなたの素顔を、見たことあるんです」
スカイハイは押し黙った。ハッとし、咄嗟にルビー(イワン)が声を荒げる。
「ち、ちがうんです!あの……アポロンメディアに、見学に行ったときに……あの、なんか……皆さんが……」
ごにょごにょと語尾をごまかすと、スカイハイが天井を見上げて「ああ」と言った。
「あの時かな……でも脱いでなかったと思うのだが……」
「……すごく恰好良かったです」
少々訝しげに首を傾げるスカイハイは、自分を見上げるルビー(イワン)の瞳に押され、はは、と笑った。
「では、私の正体はヒミツにしてもらえるね?」
「はい」
スカイハイがゆっくりとマスクを脱ぐ。汗が顎から滴り落ち、睫にも雫がからんでいる。
濡れたような金髪が現れ、やがてゆっくりと瞳を開いた。青く澄んだ眼差しをルビー(イワン)に投げ掛ける。
イワンは思わずぼんやりと口をあけて見とれた。こんなに近くでキースを凝視し、互いに見詰め合うなどしたことがなかった。
キースが白い歯を見せて笑った。

175風と木の名無しさん :2011/07/09(土) 04:46:42.06 ID:xySxjP7wO
支援
改行おかしいとこあるよー

176KING OF MY HERO 6/7 :2011/07/09(土) 05:33:41.85 ID:kEW7vdLt0
                >>175  ありがとうございました
「はじめまして、私がスカイハイだ」
「やっぱり、恰好いいですね……」
キースは照れ臭そうにハハッと笑う。イワンの胸が締め付けられるように痛んだ。
『僕は、僕じゃない。これは、イワンに向けての笑顔じゃないんだ……』
イワンは自分の変化に戸惑った。呼吸が浅くなり、喉の奥が閉じきったかのような苦しさが込み上げた。
まるで全身が絶望を受けて、血液の流れを止めたようだった。

キースは、突然言葉を失ったルビー(イワン)を少々困った顔で見つめ返した後、
ちいさく「そうか」と呟いて手の平を上に向けるとふんわりと風を起こし、自分とルビー(イワン)を涼ませようとし始めた。
擬態したイワンの髪を、キースが作り出した風が優しくなでていく。
それは頬に触れて汗ばんだ首筋を通り、部屋の中で柔らかな渦を巻いた。
イワンは緊張をほぐしながら前髪を揺らしていく風を受け、瞳を閉じた。思わず笑みがこぼれた。
誰に対しても優しい、優しいヒーロー。
一所懸命で努力家のヒーロー。
でも天然で、だからこそ皆からも愛されるヒーロー。
自分が持っていないものを沢山持っていて、それを惜しみなく人に分け与えるヒーロー。
「大好きです」
ルビー(イワン)が思わず呟いた。「え」と言うと、一瞬キースの表情が変わる。
キースの目の前に座る女性は、瞳を閉じたまま微笑んでいた。
イワンは穏やかな胸の内を、誰に対しても恥ずかしくない気持ちだと自信を持って思えた。
そんなやましい事だと思っていた事がまるで馬鹿馬鹿しい事のようだ。
皆が愛するヒーローだから、自分だって大好きでいる事に誰が異を唱えようか。
「スカイハイさんが好きです。大好きです」
気持ちが抑えられず、言葉が溢れた。薄く口紅をひいた、自分のものでない唇で、声で、愛を呟く。
「あなたの強いところも、真面目なところも、一所懸命なところも、時々ドジなところも、全部」
その言葉の最後が不安定に揺れた。
「好きなんです」
不意に、イワンは自分の瞳からボロボロと涙がこぼれている事に気付いた。キースの顔を見られない。
キングオブヒーローが、どんな表情で自分を見ているのかを考えると恐ろしかった。

177KING OF MY HERO 7/7 :2011/07/09(土) 05:35:44.60 ID:kEW7vdLt0
きっと、“ヒーローに助けに来てもらったファンの興奮している姿”程度の醜態をさらしているのだろう。
涙は腹の底から上がってきて、大粒で落ちていく。
目を閉じて押さえようとしても、柔らかな睫の間をぬって、意地でも膝を濡らそうと涙が出てくる。
嗚咽を漏らしながら、腕でゴシゴシと涙を拭いた。
「大丈夫だ。大丈夫だよ」
キースの穏やかな言葉が、イワンの耳に届く。
「君は私の友人に似ている。彼は真面目で、一所懸命だ。そして真面目だ」
スカイハイのグローブがイワンの髪に触れる。柔らかな綿毛のようなその髪を、そっとなでた。
「自分をヒーローに向いてないと言ったり、拗ねたり、私は放ってはおけなくてね」
優しく響く朗々とした語り口を聞きながら、まだ止まらない涙をイワンは必死で拭った。キースの顔を見上げる勇気は、一向に出てこない。
キースは言葉を続けた。
「前に、一人で潜入を申し出たことがあってね。それは恐ろしかっただろう。でもその能力も、勇気も彼にしかないものだった」
「ご、ごめんなさ……」
思わずイワンが謝る。キースは、紫色の瞳から延々と零れ落ちる涙をグローブの親指で拭った。
「君が謝る必要はない。なにもない。私はそんな、強くて勇気のある彼を大事に思っているんだ」
スカイハイの親指に、イワンの涙が絡む。今度は人差し指でその頬を拭った。
「それがどんな気持ちなのかは、まだ解らないけれど……彼を泣かせたくはないよ」
イワンがそっと目を開ける。目の前には、いつもの白い歯を見せて笑顔で笑うキースがいた。
「ほら、笑ってごらん」
言われて、イワンは嗚咽を漏らしながら笑った。照れ臭そうに笑うその頬を、スカイハイのグローブがぐいっと挟み込む。
拍子抜けして、潤んだ瞳をぱちくりさせるイワンを見つめて、キースは声を上げて笑った。
「やっぱり君は笑顔の方が似合う。とても似合うよ」
言うと、ゆっくりと顔を寄せてイワンの額にキスをした。

178KING OF MY HERO END :2011/07/09(土) 05:36:53.33 ID:kEW7vdLt0
結局――。ノースゴールドの爆破予告は本当の事だったものの、設置してあった時限爆弾をタイガー&バーナビーが解除し
犯人グループはドラゴンキッドの雷に打たれて一網打尽、逃げようとした車両もロックバイソンに投擲され、確保された。
なぜか登場しなかったキングオブヒーローに対しての住民からの苦情はすさまじく、HERO TVに残る地味な汚点となったが、
そんなことは、緊張が切れてソファで頭を寄せて眠る二人には関係のない事だった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
あぁぁ最後計算ミスで予定より1レス多くなってしまいました。すみません。
明日の放映がどうなるのか不安だったので、間に合うように投下しました。
ありがとうございました。

179ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9 1/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/09(土) 21:21:32.22 ID:hUwMWkAi0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ヴァンパイア気が弱いへたれくん。

「私とバルドでは種族が違う…」
「そうだな、違うな。なあ、例の相談した奴らに言われなかったか?人間となんてってさー」
それを聞いて、思い出す。
例の彼女たちは、『人間と』という言葉を使っていた。
それなりに知識がある、強い種族である者たちは、人間を嫌う。
 納得はするが理解はできない。
夜桜はそう思って、涙をぬぐうと、鋭い目つきになった。
初めてだろうか。いつも困った顔ばかりしている夜桜が、少し強気な表情を見せたのは。
「どちらにせよ、私は負けた。バルドが言う通り、何でもしよう。確か家事だったか。私は人間の生活に慣れていないから、教えてほしい」
「ん、おうよ、わかった。ま、その前に寝ようぜ、朝だ。朝はお前も苦手だろ」
今度は布団の中に入ると、いつものように両手を広げた。
早く来いということだ。
おとなしく夜桜は彼の腕の中に入ると、目を閉じた。

それから一週間が過ぎた。
最初作った味噌汁はひどいものだったが、一週間もたてば慣れたものである。
ガルズヘイム人でありながら日倭を愛するバルドの食事や風呂や洗濯といったものは大変だったが、何とかできるようになってきた。
しかし真昼の外に出なければならない洗濯物を干すという作業だけはできないので、それはバルドがしていた。
(水を使う仕事も苦手だが、約束は約束だし…)
いちいち水を使って洗い物をするたびに小さな火傷を負っていたが、すぐに癒えた。
「おーいそろそろ風呂ー」
バルドはここぞとばかりに夜桜をこき使った。
今まで家のことはすべて自分でしていたなだけに、周りのことをやってもらってもらうというのはバルドにとってはとても好都合だった。
 その間バルドは、本を読んだり外に出たりしていた。
「あ、ああ、すぐやる」
風呂だってガルズヘイム式とだいぶ違う。
五右エ門風呂にせっせと水を入れ、そのままでは入れないので下のほうに丸い木の板を入れる。
更に火を焚いて、わかす。
熱すぎてもいけない、冷たすぎてもいけないという風呂加減は難しいが、うっかりその時夜桜は風呂の加減を見ようとして足を滑らせ、風呂の中に体を突っ込んだ。
中はほぼ水だった。

180ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9 2/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/09(土) 21:23:32.88 ID:hUwMWkAi0
体中に小さな火傷を負って、痛くて痛くて、すぐに外に出た。
 ぜえぜえと息をつくが、その時に響いた声で、バルドが駆けつけてきた頃には、夜桜は頭からつま先まで、水浸しだった。
小さな火傷のあとがいくつもできているのを見て、バルドが慌てて拭いてやる。
「ば、バルド…」
「馬鹿…。全身びしょ濡れじゃねーか、あ、ヴァンパイアは水が苦手なんだっけ。とにかく着がえないとまた怪我するぞ」
手を引いて、バルドはぐったりと首を垂れる夜桜を部屋に連れていく。
バルドの服は大きすぎるが、これしかないので仕方ない。いつもの黒いズボンとハイネックをとっとと脱がすと、タオルを渡した。
「い、痛い…、すまないバルド、迷惑をかけた」
それよりも脱いだ白い肌には、かなりの火傷で赤くなっていて、痛そうだ。仕方なく持っていたキュアパウダーをかけてやると、少しは傷が癒える。
「早く着がえろよー」
しかし、と改めて着替えている夜桜を見る。
肌が白くて、本当に陽に当たっていないことが分かる。
胸板も薄いし、筋肉もあまりついていないくせにやけに力が強かったりするし、それでいて銀髪は美しい。
今は体に火傷を負っているのでそれが痛々しいが、それさえなければ、と考えて、バルドは何か妙なことに気付いた。
(?)
「どうした?バルドのズボンは大きいな」
意気揚々と着がえている夜桜相手に妙な感情が芽生えた。
すぐそばの引きっぱなしの布団の上で、ズボンをはいて、大きめのバルドのトレーナーを着こもうと手にかけたところを、バルドが引っ張った。
「!?」
自分の腕の中に入れたかと思うと、そのまま押し倒す。
わけがわからずされるがままの夜桜は、バルドの目の奥に妙な欲望があるのを感じて、困惑した。
「な、にを?」
「黙ってれば痛くしないから」
肌に手を滑らせるバルドに、思わず夜桜は抵抗した。
バタバタと暴れて、バルドを引きはがす。
人間とヴァンパイアでは明らかにヴァンパイアの方が力が強い。
そのせいか、バルドは壁に背をぶつけたが、すぐに同じ行動に出た。
今度は夜桜の腕を片手でつかんで、また押し倒す。
「バルド、嫌だ!!」
「おとなしくしろ、俺のこと好きなんだろ!?」
バルドのしようとしていることは、強姦そのものだった。

181ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9 3/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/09(土) 21:24:44.33 ID:hUwMWkAi0
荒い息をしながら、夜桜の首をなめるバルドに、夜桜はそれを感じて、ひたすら怖がった。
足を使ってけりだおそうとするが、うまくかわされてしまう。
「バルド、お願いだから、嫌だ、嫌だ!!何でこんなことをする、バルドは…!!」
「夜桜!」
「私のことなんて好きでもないくせに、こんなことをするのか!?」
その言葉にやっと自分自身を取り戻したバルドは、手を緩めた。
ヴァンパイアのくせに寂しがりやで小心者。
そのせいか夜桜は、怯えきっていた。
「…、悪い、つい…」
「…」
「ごめん、忘れてくれ…」
だん、と壁を殴りつけると、バルドはうつむいて部屋から出て行った。
(何してんだ、俺…)
「っく…」
手早く服を着ると、すぐに夜桜は自分の部屋へ戻った。

結局その夜は夜桜は食事を作らず、部屋にこもりっきりだった。
バルドは自分のしたことを後悔したが、なぜにあのような行動に出たかをまだ理解していない。
 ただ、誰にも手をつけられていない、未知の種族を味わってみたかっただけか。
(違う、そんなんじゃねぇ)
もっと違う、今までに感じたことのない感情だ。
(何なんだよ!!)
あいつが悪い。あいつが悪い。
 あんな格好で無防備な姿を見せる、夜桜が悪い。
ずっとそう思おうとしたが、できなかった。
(…拒絶されるかも、だけど…、あやまんねぇと…)
台所にお椀を乱暴に放り投げると、バルドは夜桜の部屋へ向かった。

(満月…)
窓を開けて、外を見ていた。
バルドに襲われたからといって、この家を出ていくことはしなかったが、食事を作りに台所に行く気はしなかった。
また、バルドからも食事を作れとは言わず、お互いに気まずい状態だった。

182ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9 4/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/09(土) 21:25:27.53 ID:hUwMWkAi0
窓から見た桜はもう散ってしまっていた。
だんだん葉桜に変化する桜の木を眺める。
ガルズヘイムにはない不思議な木だと、夜桜は感じる。
「夜桜」
と、声がした。すぐ戸の前にバルドにいるのに気がつかなかった。
「すまない、謝ることだけさせてくれ。入ってもいいか」
夜桜はどうするかで大変悩んで、返事をしないことに決めた。
入ってきたければ入ってくればいい。
入りたくないなら入らなければいい。
それしか考えられなかった。
「…入るぞ」
「…」
入ってきたバルドは、バスローブ姿だった。
夜桜はバルドの服を着ていたが、そでをまくったりしていた。
お互いに無言が続いたが、バルドは夜桜の前に座ると、手を伸ばしてきたので、夜桜はとっさに身を引いた。
「怖かったよな、ごめんな。自分でもよくわかってねぇんだ、でも謝んないとと思ってよ…」
自分でもよくわかってない。
 その言葉に、夜桜でもプッツンと何かが頭の中で音を立てて切れた。
「…殴る」
「ん?」
ぼそ、と、夜桜はつぶやいた。
手元には正義の鉄槌が置いてあった。
「襲ってきたら鈍器で殴るって言った…」
「うっ、ちょ、ちょっと待て、なんで正義の鉄槌…、せめてストーンクラブ+0かコンドル…」
正義の鉄槌をにぎりしめた夜桜は、ゆらりと立ち上がる。
そしてバルドの頭めがけ、思いっきり正義の鉄槌を振りおろした。
その瞬間、屋敷中にバルドの叫び声が響いた。
大丈夫、正義の鉄槌はいわゆる不殺武器。絶対に殺すことはできない。
 とはいっても、ヴァンパイアの力で正義の鉄槌が振り下ろされたとき、バルドは頭に大きなたんこぶ作って倒れていた。

183ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9 5/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/09(土) 21:25:51.74 ID:hUwMWkAi0
バスローブだけしか羽織っていない彼の、体力の半分以上がガリガリと削られたのはいうまでもない。

がばっと起き上がった。
何があったのか思いだそうとして、頭にどでかいたんこぶがあることに気付いた。
謝りに行った際についにブチ切れた夜桜に殴られたことを思い出す。
「…」
「ってぇ、夜桜?」
起き上がった時に目の前にあったのは、夜桜の寝顔。
しかしバルドの体に掛け布団がかけられていて、頭はちょうど夜桜の膝の上にあった。
彼は座りながら寝ている。
外を見てみれば、もう昼になっている。
障子越しに随分と明るい日差しが入ってきているが、夜桜はその陽の光に負けて眠っているところだった。
「夜桜…」
賭けに負けた、と一週間前に自分から言ってきた。ということは本当にバルドのことが好きなわけだ。
それなのにバルドは、ただ好きなら体の関係くらいあっても良いだろうと押し倒した。その時のおびえた表情は忘れられない。
(ヴァンパイアの夜桜より人間の俺のほうが不純)
参ったな、と頭をかいて、こぶに当たって少し苦しんだ。
今で抱いてきた連中のことを思い出せば、誰もバルドの本音や思いなどどうでもよくて、ただ、『英雄』という肩書に惹かれてやってきた。
(俺も、似たようなもんか。好きなら抱かれたくて当然とか勝手に。それ以前に抱かれる気があるのかすら確認してなかったけど。男だし)
夜桜は純情すぎる。
「お前、抱かれる覚悟ぐらい見せろよ。俺は抱く側にしか回んないからな」
うつらうつらとしながらも、何度か頷いたように見えた気がして、彼の髪をなでた。
「…バルド…」
起きたのか、と思ったが、目元が動かないのを見て、寝言だということに気付いた。
「…き」

184ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼9 6/6 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/09(土) 21:27:01.70 ID:hUwMWkAi0
「?」
「…い…」
「??」
薄い唇が何かを言いかけて、止まる。
夢を見ているのか、小さな言葉ばかり。

夢の中では、夜桜は記憶を遡っていた。
もうどれほど昔のことなのかはわからない。
物心ついた時にすでに両親はなく、ガルズヘイムのダンジョンを転々としていた。
都市ダンジョンに行けば、先輩のヴァンパイアが世話をやいてくれることもあった。
姿は今と変わらないけれど、確かにその時の彼は子供だった。
「いいかい、人間とは関ってはならないよ。奴らは何でも殺したがるからね」
ふっ、と口元を緩める先輩ヴァンパイアの言葉に、夜桜は首をかしげる。
「でも、人間は、とても面白いよ。ゲートから落ちそうになった私を助けてくれたり、迷子になると、行き先を教えてくれる」
「それでも駄目だ、奴らは君が人間だと思っているからね。君はちょっと気が弱いし、甘いところがあるからなおさら心配だよ…」
「私は気が弱いけれど、いい人間もいる」
そう、例えば…

「バルド…とか…」
「なんだ夜桜」
目を開けたら、バルドが目の前にいて、頭をなでていた。
そうだ、殴った後に気絶したバルドを介抱していて眠ってしまったのだ。
目の前にあるバルドの顔をそっと両手で包む。
襲われても殴っても結局惚れた弱み、嫌いになんかなれやしない。
先輩冒険者に言われたことを夢の中で思い出した。人間と関わるな、と。
「あと三週間…、バルドは、もしも私のことを好きなってくれたなら、ヴァンパイアになってくれるか?」
ヴァンパイアにならなかったなら、ここを去る。なるのだったら、あの異世界の二人のように。
「本気で愛したら、ヴァンパイアになるかもな」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )バルド暴走でした

185絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 0/6 :2011/07/09(土) 23:48:46.67 ID:l46Sz7Y70
ドラマスレの913です。津鴨っちゃんへの追悼の意を込めて。

※半ナマです
※攻めも受けもノンケです
※攻め×元カノ(捏造設定)の描写があります

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

186絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 1/6 :2011/07/09(土) 23:51:09.00 ID:l46Sz7Y70
「深澤ぁ」
 仕事を終えて一階へ降りるエレベーターの扉が閉まった瞬間、薄藍鼠のジャケットと
柄の悪いサングラスを身に着けた、俺より十五センチ以上は身長の低い、六つも年上の
先輩が、隣の俺を見上げて名前を呼んだ。
「何ですか、塚元さん」
 彼の顔を見ずに呼び掛けに答える。
「お前の異動祝いに、二人で飲まねぇか?」
「は?」
 思わぬ誘いに、ほとんど睨むように塚元さんを見下ろした。異動祝いの酒の席なら、
つい先日、四係のみんなに無理矢理連れて行かれた。そこにあんたもいたでしょう。大
体、真逆のタイプの仲の悪い人間と二人きりで酒を飲んで、何が楽しいんだ。
「今のうちに、言っておきてぇこと全部言わなきゃな、と思ってよ。お前も俺に言いて
ぇこと山ほどあるだろ?」
 要するに、罵り合おうってことですか。馬鹿馬鹿しい。
「別に」
 俺がまた正面を向いて彼の顔を見るのをやめると、皮肉たっぷりの声が狭い空間に響
いた。
「へぇ〜。じゃあ、お前から見て俺は完璧な男って訳か。やったね」
 今、この人はにやにやと笑っているに違いない。そうこうしているうちに、一階に着
いた。扉が開いたと同時に、二人とも歩き出す。

187絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 2/6 :2011/07/09(土) 23:53:34.40 ID:l46Sz7Y70
「あんたに限ってそれはないです」
「じゃあ、飲もうぜ」
 隣を歩く彼の声から皮肉が消える。
「お断りします」
「んだよ、先輩の誘いを断る気か!?」
 喚いて、行く手を阻むように俺の前に立ち塞がった。本当に短気で乱暴な人だ。
「塚元さんは巡査部長で俺は警部、階級は俺の方が上なんですが」
 彼は暫く俺の顔を睨み上げた後、背を向けてゆっくり歩を進めながら、普段の軽薄さ
が感じられる口調ではなく、捜査中に時々聞くことが出来る、低い真面目な口調でこう
言った。
「階級なんざ知るかよ。そりゃあ、お前はもうすぐ係長になるから、部署は違っても上
司になっちまうけど、今はまだ同僚だろ。立場は同等だ」
 ……同等? あんたは、後輩だからって理由だけで俺を見下してたんじゃないんです
か? この人の体術は、刑事の中でもずば抜けて優秀だ。だけど、体は小さくて、年相
応に少し贅肉が付いている。体が大きくて、柔道も剣道も成績優秀だった俺が、全く敵
わない相手じゃない。彼の唯一の特技でも、俺は彼が自分より下だと思っている。それ
なのにこの人は、俺を自分より下ではなく、同等だと思ってたのか。
「……分かりましたよ」
 うんざりしながら俺が承諾すると、振り返った塚元さんはサングラスを外して、悪戯
に成功した子供みたいに、無邪気に笑った。
「へへ、俺の勝ちだな! 口喧嘩でお前に勝ったのは初めてだ」
 俺はたっぷりと皮肉を込めて言う。
「最初で最後ですけどね」
「今の俺は、お前にどんな皮肉を言われても全然腹が立たねぇ」
 上機嫌の塚元さんを見て思う。どうしようもない単細胞だ、この人は。

188絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 3/6 :2011/07/09(土) 23:56:23.09 ID:l46Sz7Y70
 酔っ払いの中年親父に肩を貸しながら、大都市の繁華街を歩く。塚元さんが何度か行
ったことがあるという居酒屋では、ほとんど彼が一方的に俺に話し掛けるだけだった。
しかしそれも長くは続かず、一緒にいる意味なんか無いくらい、お互い無言で目を合わ
せることすらなく酒を呷った。ペースを全く考えずに飲んだ塚元さんは、自力で歩けな
いほどに酔っている。刑事がこんな無防備な姿を晒していいはずがない。傍に同じ刑事
がいるから別に良いとでも思ってるのか。
「深澤ァ、このまま俺んちまで送ってけよ〜」
「家、近いんですか?」
「まあまあ遠いかな」
「意識がはっきりしていてまともな会話が出来るんなら、自分で歩いてくれませんかね」
「眠くて体に力が入んねぇんだよ。俺だって、出来ればお前の肩なんか借りたくねぇ」
「分かりました。あんたのこと道端に捨てるんで、這い蹲ってでもタクシー拾って下さ
い」
「酔い潰れた俺が親父狩りとかで死んだら、お前のせいだからな」
「その辺の暴漢に襲われて死ぬようなタマじゃないでしょう、あんたは」
「うん、まあ返り討ちにしてやるけど。あー、やべぇ。マジ眠ぃ。寝たい。もう駄目だ。
深澤、俺のこと捨てていいぞ。俺は寝る」
「……道端で寝るか、まあまあ近くにある俺の家のソファで寝るか選んで下さい」
「あア? ……何が悲しくて野郎の家に泊まんなきゃならねぇんだよ……あれか、お前
ゲイだったのか」
「同性の家に泊まるってだけでそういう想像する方がゲイなんじゃないですか」

189絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 4/6 :2011/07/09(土) 23:58:24.99 ID:l46Sz7Y70
「はー。こりゃ随分と小綺麗なマンションに住んでんなー。独身の男の部屋とは思えね
ぇぞ。彼女に掃除して貰ってんのか?」
 リビングを見渡して、塚元さんが心底驚いたように言う。彼女は今はいない。大学生
の頃から付き合っていた女性がいたが、数年前に性格の不一致が理由で別れた。
「光井にフラれてばかりで彼女のいない塚元さんの部屋は、さぞかし汚いんでしょうね」
「うるせぇ! お前が想像してるよりは綺麗だよ! ちょっとぐれぇ汚いのはしょうが
ねーだろ。忙しくて非番の日じゃなきゃ掃除してる暇なんてねぇし……」
 俺はぶつぶつ呟く塚元さんをソファに座らせる。彼はだるそうにジャケットを脱いで、
ネクタイを外して、シャツのボタンを幾つか開けて、瞼を閉じて、倒れるようにソファ
に横になった。俺は彼が床に落としたジャケットとネクタイを畳んで、床に置き直す。
何で俺がこんなことまでしなくちゃならないんだよ。仕事の疲れとアルコールのせいで
重く感じる足をキッチンまで動かして、冷蔵庫からミネラルウォーターの五百ミリリッ
トルのペットボトルを取って、二人掛けのダイニングテーブルに座った。テレビのリモ
コンの電源と消音のボタンを押して、昔と比べて何倍も綺麗になった映像に目を向ける。
塚元さんが好きそうな下らないバラエティの方がまだマシなんじゃないかと思うような、
理不尽で下らないニュースがやっていた。水を飲みながら何も考えずにテレビを見てい
ると、塚元さんがむくりと起き上がった。
「……深澤……ちょっとトイレ借りるわ……」
 聞こえるか聞こえないかの声量で俺に一声掛けて、覚束無い足取りでトイレへ向かう。
トイレに行った塚元さんは、十分経っても戻ってこなかった。力尽きてトイレや廊下で
眠っているんじゃないかと思い、確認するため椅子から立ち上がる。廊下、トイレ、洗
面所と見回ったがどこにも居らず、消去法で寝室に向かった。

190絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 5/6 :2011/07/10(日) 00:01:10.25 ID:pgGQp+lO0
 寝室の電気を点ける。予想はしていたものの、流石に呆れた。
「……何やってんですか、あんたは」
「……んー……? ……見りゃ分かんだろ……寝よーとしてんだよ……」
「汚い服着たまま人のベットで寝ないで貰えますか」
 目を閉じたまま、塚元さんは口元で笑う。
「やっぱり綺麗好きなんだな、お前……ゆうきちゃんの嫌がることしてやろうと思って
よ……」
 馬鹿にするように下の名前で呼ばれて、いつかの下らないやり取りを思い出す。
(なあなあ深澤! お前の名前と一字違いの『フ/カ/サ/ワ/ユ/ウ/キ』ってグラビアア
イドルがいるんだけど、知ってたか? ゆうきちゃ〜ん)
(ユニセックスな名前を馬鹿にするなんて、まさしく頭と性格の悪い人のやることです
ね、恵吾さん)
(下の名前で呼ぶんじゃねぇよ、気持ち悪ぃ。さぶいぼ立ったっつーの)
(あんたが先に呼んだんでしょうが)
 こんな程度の低いことをする人を相手に腹を立てたら負けだ。
「寝るんなら勝手にどうぞ」
「おう、勝手にさせて貰うわ……おやすみー……」
 頭と性格の悪い先輩を無視して、寝室の電気を消してリビングに戻った。

191絶対0℃ 深澤×塚元 「悲しい夢」前編 6/6 :2011/07/10(日) 00:04:47.38 ID:pgGQp+lO0
 風呂に入るために、パジャマと下着を取りに再び寝室へ向かう。電気を点けても、何
の反応も無かった。クローゼットを開ける前に、どうしてもあることが気になって、ベ
ッドに近づく。ベッドサイドにしゃがみ、静かに寝息を立てている塚元さんの左腕の袖
のボタンを外して、シャツを捲くった。気になっていたそれを――学/校/飼/育/動/物/
連続殺傷事件の捜査で負った切創を観察する。
(人が傷付くの見て、そんなに面白ぇか!)
 短気で乱暴な人だが、完全に理性を失うほど激昂している彼を見たのは、あれが最初
で最後だった。本人は掠り傷だと言っていたが、この傷跡はずっと残りそうだ。これを
大したことが無いと言えてしまうなら、もっと酷い怪我をしたことでもあるんだろうか。
頭で考えるよりも先に、直感の赴くままに体が動いてしまうこの人ならありえる。シャ
ツの袖を下ろしてボタンを嵌めていると、突然、塚元さんが眉を八の字にして眉間に皺
を寄せた。
「……母さん……」
 失笑した。三十九歳の男が魘されながら母親を呼ぶなんて、マザコン以外の何者でも
ない。正直、軽蔑する。
「約束……守れなくてごめん……」
 彼はまるで苦痛に耐えるように喘ぎながら、両手の指先を枕に食い込ませた。
「……母さんを轢き殺した奴は……俺が、この手で捕まえるって、約束したのにな……」
 ――思考が一瞬、止まった。あんた、今、何て言った? 轢き殺した……?
「……時効……なんて……何の……ために……あるんだよ……畜生ォ……っ……」
 生まれて初めて、頭で考えるよりも先に体が動いてしまった。俺の右手が黒子のある
左頬をそっと撫でて、流れ落ちた涙を拭った。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

他の書き手さんの作品が三つ以上投下されたら、後編を投下する予定です。
それ以上の間隔を開けた方が良いのであれば、姐さん方の意見に従います。

192バガボンド植田×清十郎 1/6 :2011/07/10(日) 21:25:35.51 ID:wOU45eag0
代行スレよりお送りします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

四十九日を待って出立の準備を整えた。伝七郎の旅に供することは植田にとってあまりに
当然で、同門の徒らもまた然り。止められるどころか、義務であるかのように渡された餞
別袋の重さが、植田に与えられた責任の重さであるということは、自明である。
仏間に長く手を合わせた後、それこそ義務で新当主の部屋を伺うと、浅い時間なのに返事
があったのは、今夜が四十九日で、曲りなりにも喪主という自覚からか。
「格式ばった挨拶はよしてよ」
正座するため腰を落せば機先を制され、苦笑いしながら胡坐を掻く。それでも相手の横臥
に比べれば畏まっている筈だ。涅槃に因んだ格好だという解釈には無理がある。
「ん」
「どうも」
袂を探っていると、清十郎は慇懃に灰皿を差し出し、瓢箪に口つけ、薄い喉を鳴らした。
毀れた酒が後れ毛を伝わり、青畳に染みを作る様が不吉で、目を逸らし彼の肩を見る。平
素は派手な着流しであるが、畏まって黒羽二重を着ると肩の細さが顕著で。
何もかもが似ていない。顔も、体格も、剣も。なのに才だけが色濃くこの人に流れていて、
だからこそ何もかもが似ている伝七郎には歯がゆいのだろう。自分以上に才を受け継いだ
兄の事を。幼いころから共に育ってきた植田には、彼等以上にそれが良く見えていた。
それゆえに、伝七郎に後を継いで欲しいと思っていた。自分を人に至らしめた一の太刀を
次の世代に受け継げるのは、地に脚をつけ必死にもがく伝七郎のほかには有り得ないと未
だ信じている。
「吸わないの、それ」
指に挟んだ煙管。一言断りを入れてから、葉に火を灯せば、甘い香が広がって。
「オレにも、一口」
「あ」
頬に当たった長い睫毛。吸い口を攫われ、緩やかな紫煙が立ち上り、やがて酒の匂いが唇
に当たる。
「――」
清十郎の唇は、女子のように甘かった。

193バガボンド植田×清十郎 2/6 :2011/07/10(日) 21:25:59.64 ID:wOU45eag0
細くて厚い手首を握りながら、獣のような口付けを繰り返す。意外にも清十郎の息が色濃
くなっていくことに、酷く興奮して。
故人の遺言を聞いた時から、こうなることは予感していた。
何故伝七郎ではないのかという憤り。才のみを評価した先代への不信。だがしかし、そん
な感情を遥かに凌駕するのは、拳法先生への深い感謝と尊敬だった。自分を育ててくれた
吉岡への忠誠心が、伝七郎に対する肉親へのそれといっても過言ではない親愛の情を越え
ていた。
それは即ち、吉岡の象徴となった清十郎への傾倒を意味する。

「いったた…」
「すみません、つい力が入りすぎてしまって」
「15,6のガキみたい」
尖らせる唇を貪りながら、再び、今度は可能な限り静かに髪を撫でた。総髪の乱れを厭わ
ず、指のすべりに任せ緩やかに目蓋が閉じられると、睫毛が炎に揺らめいて。
吐息を楽しみながら、耳、頬、顎、喉仏と、執拗に唇で焦らせば、互いのからだは堪りか
ね捩れる。
鎖骨の窪みに鼻を宛がい、袷にかけた指を握られた時、清十郎の視線はどこか遠くにあっ
た。
「長襦袢脱ぎたくないんだけれど」
「汚れるかもしれませんが」
「何とかなるでしょ」
意志は固いらしく、自ら帯はそのままで、袴のみを脱ぎ始めた。随分長らく着用している
のを目にしていないせいか、まごついている。
男色の趣味はない。時折酒の席で誰某の小姓との武勇伝を耳にすることもあるが、一般的
な猥談程度にしか理解できていない自分に対するこの人なりの気遣いであろうと勝手に納
得し、出来るだけ露出の少ない体勢を目指すことにする。
手持ち無沙汰に再び煙管を飲んでいると、自ら脱ぎ終えた手が植田の袴を解き始めた。
「若、舌を…」
赤く伸ばした舌に、左の人差し指を宛がえば、仔猫のように小さく舐められて。丸めた舌
で包むように咥えられると、わざと掠められる下半身を嫌でも意識してしまう。


194バガボンド植田×清十郎 3/6 :2011/07/10(日) 21:26:36.16 ID:wOU45eag0
当主になった清十郎に植田が傾倒するわけにはいかなかった。
長年教育係であった伝七郎への後見が、先代の意であり、そしてそれは清十郎とて望んで
いることだ。
であれば、伝七郎の独立へ後押しすることになる。今の当主が気に食わないのであれば、
分家として伝七郎と出て行けばいいだけの話である。しかしそれは誰もが望まない。故人
も、門弟も、清十郎も、伝七郎も、植田も望まない形だ。
結局、根付いてしまっているのだ。幼いころから育ってきたこの吉岡道場を離れるなんて、
誰一人できやしない。
謀反も離反も出来ないのであれば、共に手を取る他道はない。
「女泣かせなんですね、若の舌は」
器用に動く舌に、どうしようもないほど一物は反応して。男との経験はあるのか尋ねよう
としたが、意味のないことだと思い直し、ただ口淫を堪能するに徹すっれば、硬さは充分
なまでに導かれ。
こちらを見上げる白い顔に、かけたいと思った。それは植田が行為のとき頻繁に起きる衝
動。そういうことを許す女が好みだったが、清十郎にそれを求めるのはあまりにあつかま
しい。必要なだけの準備が整えばそれで充分だった。
清十郎ももちろん理解していて、次の段階に取り掛かるため、四つんばいになった。
「めくってもいいですか? 」
「見ても萎えないなら」
「大丈夫です」
裾を上げ、自分が収まるその箇所を確かめるように指で撫でる。もちろん、女のあそこと
は違う。渇いた部分に人差し指を宛がうが、侵入を許す気配などあるはずもなく、聞きか
じった知識だけで愛撫を行いながら、部屋の中を見回す。
「これ、使いますね」
「え…酒? 」
使用意図は察しているようで、しかもかなり嫌がっている。しかし他に方法はなく、それ
で痛い思いをするのは自分だという事実に、清十郎も首を縦に振るしかなかった。
「傷口にかけるくらいだし、悪いものじゃないですよ」
掌に零し、指先で掬い、菊座に揉みこむように撫でていく。冷たさのせいか、清十郎の息
が小さく弾み、それに酷くそそられた。
入り口が解れれば、濡れた中指を少しずつ捩じ込む。よほど気になるのか、何度も振り返
りこちらを向く頬が、薄っすらと上気して、小さく熱いと息を切らす。

195バガボンド植田×清十郎 4/6 :2011/07/10(日) 21:27:07.84 ID:wOU45eag0
「酒、そっちからだと効くみたい」
「効くというと? 」
「植田は、閨ではそういう風なんだ」
調子に乗りすぎたようだ。
楽しむことも、快楽を追求することも、必要ではない。ただ、行為の事実だけが必要だっ
た。

清十郎は浮雲だった。
誰とも、何とも繋がらない。ただ交わるだけ。剣で男と、からだで女と交わる、そういう
風にしか他者との関係を築こうとしない。
だから必要な行為だった。
清十郎が唯一剣で交わるわけにはいけない相手が、植田だった。交われなければ執着しな
い、ただ切り捨てていく浮雲。しかし、植田とは交わらないわけにはいかない。
道場のためにも、伝七郎のためにも。当主として、兄として、植田は清十郎にとって必要
な人間だった。
「もう、大丈夫だよ」
感じるところを見つけ、執拗にそこを愛撫していた。そのたびに反る背中の、着物を脱が
せ肌に口付けたいと思った。
儀式に近い行為とはいえ、性行為だ。どうしても情欲は動く。下手に抑えて、わざとつま
らないものにする気はない。相手が感じてくれればいいと思うし、自分だっていい思いは
したい。過剰にならない程度の、ぎりぎりの按配を、お互い上手く保てていた。つまり、
相性がいいのだ。
「では、挿れますね」
生娘よりもきつく、なのに痺れるような熱さは、酒の作用だろう。指で拓いた経路を慎重
に進めば、肉襞が複雑に絡みついて。衆道の味をしめた男の力説が、頭をよぎった。
「ねえ、今どのくらい? 」
「半分を超えたくらいです」
植田の返事に、息を呑むのが聞こえた。少し後退し、それに気が緩んだのを見計らってか
なり奥へ進めば、背中が大きく反り返る。指で何度も攻め立てたそこは、指の時以上に感
じるようで、暫くそこだけを楽しんだ。
嬌声に近くなった吐息を抑えようと口を手で覆う仕草に、興奮する。吉岡清十郎だ。名実
共に都一の剣士吉岡清十郎を、後ろから攻め立てているのだ。

196バガボンド植田×清十郎 5/6 :2011/07/10(日) 21:27:30.99 ID:wOU45eag0
もっと感じさせたいと思った。服を剥ぎ取り、様々な体位でそこを突いて、女にするよう
な愛撫をしつこく繰り返す。快感で屈服させ、思うように喘がし、卑猥な行為を強要した
い。
「植田、もう、そこ、いいから――」
当主の言葉にはっとする。
それは許されない。いや、それ以前に不可能だ。清十郎が望んでいない事を強要した時点
で、自分の逸物は切り離されているだろう。それだけのことはやる人だし、出来る人だっ
た。
思ったより前戯が長くなったことが不本意なのだろう。植田は、清十郎が早く終息を望ん
でいる事を察する。
「失礼します」
「え…ひゃあっ!! 」
一気に最奥を突いて、幾度か激しく繰り返したところで、清十郎の陰茎に触れた。確かに
脈打つそこを扱きながら、互いの終焉を目指す。

再びぎこちない手つきを見かねて、着付けを手伝った。帯を回した時、まだ残る熱に気づ
き、思わず口付けると、背中に爪を立てられた。
「ねえ、明日何時ごろ発つの? 」
「早朝を予定しています」
「なら、見送れないね。寝てるから」
期待していないとか、いちいち言う必要のないことなので飲み込む。
「ちゃんと着るのであれば、長襦袢から着付けなおしたほうが…」
想定以上に乱れていた。一度では収まりがつかず、どちらが誘うということもなく二回戦
へ突入するくらいに。相性がよすぎたのだ。過剰な性の喜びに、危うさを感じてしまう。


197バガボンド植田×清十郎 6/6 :2011/07/10(日) 21:27:58.13 ID:wOU45eag0
「じゃあ、伝七郎を宜しくね」
「もちろん」
そのために抱いたのだから。
家のために、清十郎のために、植田のために、そして伝七郎のためにふたりは寝た。剣か
からだでしか交われない。しかし剣で交わるわけにはいかなかった。結果、からだで交わ
るしかなく、ふたりの間に何とか関係性を築くことが出来た。それだけのこと。
伝七郎がいなければ、迷わず剣を交わしていただろう、それだけのことである。
「一服していきなよ。その匂い、好きなんだ」
煙草をくゆらせながら、植田は次回の逢瀬を予感していた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


198影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 1/8 :2011/07/12(火) 02:15:41.00 ID:J4Dm9lPV0
代行スレより
WAR/LOCK IN LOVE
影の狩人 魔法使い×黒髪狩人

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

がくん――と頭が落ちて、マ/グ/ナ/スは慌てて姿勢を正した。一瞬居眠りをしてしまったらしい。
顔を上げると、カーテンの隙間から見える窓の外は、漆黒の闇から明け方の薄紫に変わりつつある。もうこんな時間だ。
マグナスは目をこすって息をつき、目の前のベッドに視線を落とした。白いシーツに包まれて、黒髪の少年――ア/レ/ク・ラ/イ/ト/ウ/ッ/ドが静かに眠っている。
「…なあ、まだ目を覚まさないのか?」
眠ったままの青白い顔に、マ/グ/ナ/スはそっと話しかけた。
ア/レ/クの額にかかった黒髪をはらいのける。その下のまぶたは、美しい青い瞳を隠して閉じられたままだ。
彼の身体を侵していた毒はすべて抜いた。骨や内臓の損傷も治っているはずだ。あとは意識が戻って、後遺症がない事を確認できれば安心できるのに。
早く目を覚ませよ、とマ/グ/ナ/スはア/レ/クを見つめて呟いた。
目を覚まして、俺が来たのが手遅れでなかったと証明してくれ。

199影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 2/8 :2011/07/12(火) 02:19:04.87 ID:J4Dm9lPV0
昨夜マ/グ/ナ/スがこの研究所に駆けつけた時には、ア/レ/クは既に意識がなく、妖魔の毒を注ぎ込まれた胸はどす黒く変色しつつあった。
それを見た時には、これはもう手の施しようがないのではないかと、マ/グ/ナ/スは自分の背中を冷たい絶望が撫でるのを感じた。
どうしてもっと早く俺を呼ばないんだと怒鳴りつけたくなるのを抑えて、彼の妹を病室から追い出した。
そして毒を抜くために、何時間もかけてありったけの魔法をア/レ/クの身体に注ぎ込んだのだ。

「何をやってるんだろうな、俺は…」
ベッドから離れて窓辺に立ち、ぼんやりと外を見つめながらマ/グ/ナ/スは呟いた。
ガラスに映った自分と目が合う。ひどい格好だ。下ろしたままの長い黒髪は乱れ、シャツは皺が寄ってくしゃくしゃだ。
ア/レ/クが死にかかっていると聞いて、髪も服も整えるのを忘れて飛び出してきたからだ。
イカれてるな。俺らしくもない。
マ/グ/ナ/スは自嘲した。何たる慌てぶり。この俺が髪をセットしないで外に出たなど、何十年ぶりだろう。
この偉大なる高位魔法使いマ/グ/ナ/ス・ベ/イ/ンが。影の狩人たちの隠れ家まであわをくって駆けつけ、魔力をありったけ使ってア/レ/クを癒し、ベッドのそばに一晩中付き添って…
――あのパーティの夜、たった一度会って、ほんの少し言葉を交わしただけだというのに、どうして俺はこの黒髪の少年のためにこんな事をしているんだ?

マ/グ/ナ/スはゆっくりとベッドの傍らに戻り、ふたたびア/レ/クを見下ろした。
「ア/レ/ク…」
ためらいながら、小さくその名を呟いてみる。
あの夜には、まだその名前すら知らなかった。ただ、名も知らない物静かな彼の、黒髪の下でランプのように輝く青い瞳が、たまらなく美しいと思った。
マ/グ/ナ/スはシーツの上のア/レ/クの手を握り、その閉ざされたまぶたの上に静かに唇をかさねた。
なあ、俺たちはまだ出会ったばかりだぜ。これきりにするのはあまりに勿体無い。
目を覚ませよ。俺は、もっときみと話がしてみたい。

200影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 3/8 :2011/07/12(火) 02:20:55.30 ID:J4Dm9lPV0
手の中に握ったア/レ/クの指がぴくっと動いた。
「ア/レ/ク?」
慌てて顔を覗き込むと、青ざめたまぶたがかすかに震えてゆっくりと開き、ふたつのみごとな青い瞳が現れた。
ああ、やっぱりこいつの眼はいいな――
マ/グ/ナ/スの唇に笑みが浮かんだ。
近くで見ると、ア/レ/クの深いブルーの両目はまるで宝石だ。見つめると吸い込まれそうになる。
「眠り姫のお目覚めだな。――俺がわかるか?ア/レ/ク/サ/ン/ダ/ー・ラ/イ/ト/ウ/ッ/ド」
「マ…グ/ナ/ス・ベ/イ/ン…?」
マ/グ/ナ/スを見上げ、かすれた声でア/レ/クが呟いた。周囲を見回し、もう一度視線をマ/グ/ナ/スに戻す。目の中に混乱の色が見える。
「どうしてあんたがここに――」
どうやら意識ははっきりしているようだ。マ/グ/ナ/スは幾分ほっとしながら、彼の問いに答えた。
「きみはジ/ェ/イ/スとかいうあの金髪の坊やと妖魔の間に飛び出して、毒の爪で切り裂かれたんだ。覚えてないか?」
記憶が甦ったらしく、ア/レ/クはハッと目を開き、自分の胸にさわった。
「あれだけ高位の妖魔の毒には、この研究所の解毒剤では対応しきれない。そこで、ブルックリンの高位魔法使いたる俺様が、かわりにきみの傷を癒したというわけだ。――失礼」
マ/グ/ナ/スはシーツをそっとめくって夜着をひらき、ア/レ/クの身体を確認した。
昨夜は妖魔の毒で黒く染まっていたア/レ/クの胸は、今はやや青白いものの、きれいな肌色に戻っている。醜い傷跡は残っていない。マ/グ/ナ/スは自分の腕前に満足した。
「まだどこか痛むか?」
ア/レ/クは小さく首を振った。
「…みんなは?」
「あの影の狩人の坊やたちの事か?全員元気だ。つまりきみ以外は、って事だが」
ア/レ/クはほっとしたようにうなずき、そして不思議そうな目でマ/グ/ナ/スを見上げた。
「なぜ来てくれたんだ?」
「と言うと?」

201影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 4/8 :2011/07/12(火) 02:23:17.73 ID:J4Dm9lPV0
「あんたは僕たちの事は嫌いなんだと思っていた。助ける義理もないはずだ」
「俺はダ/ウ/ン/ワ/ー/ル/ダ/ーだが、別にネ/フ/ィ/リ/ムは嫌いじゃないさ。まあ好きでもないがね。ただ――」
マ/グ/ナ/スは首をかしげて少し考えると、手を伸ばしてア/レ/クの顔に触れた。
「――この眼がもう一度見たかったんだ」
眼を傷付けないように注意しながら長い爪でそっと黒い睫毛をなぞると、ア/レ/クは赤くなってその手を払いのけた。
「やめろ。ふざけるなよ」
マ/グ/ナ/スはおとなしく手を引っ込めて、椅子にどかっとふんぞり返った。そして足を組んで尊大にア/レ/クを見下ろした。
「――まったく、馬鹿なまねをしたもんだな。俺が来るのが少し遅ければ、きみは死ぬところだったんだぜ」
ア/レ/クはため息をついて、意外にも素直に応えた。
「…そうだな。馬鹿なまねをしたよ」
「――きみはそんなにあの坊やが好きか?」
ふと思いついて不躾に尋ねると、ア/レ/クは顔から血の気を消し、明らかな狼狽の色を浮かべてマ/グ/ナ/スを見上げた。
「何の話だ?僕は別に――」
「隠すなよ」
マ/グ/ナ/スは面倒くさそうにア/レ/クをさえぎった。
ア/レ/クが無茶をしたのは、話を聞く限り、彼の幼馴染で義兄弟のジ/ェ/イ/スの為だ。淡い金髪に、蜂蜜のように輝く金色の瞳の、天使のように美しい(性格は悪いが)あの少年――
パーティの夜、自分の傍らに立つ彼をひそかに見つめていたア/レ/クのまなざしを、マ/グ/ナ/スは今でも思い出せた。
「隠さなくていい。きみはゲイだし、きみは彼を愛している。俺にはわかるんだ。――だがあいつのどこがいいのかはわからないな。俺には性格の悪いクソガキにしか見えないんだが」
ア/レ/クはむっとしたようにマ/グ/ナ/スを睨み上げた。
「それに――あいつはストレートだろう」
何故かかすかな胸の痛みを覚えながら、マ/グ/ナ/スは付け加えた。
「どんなに愛したところで、あいつはきみを愛さないのに」
ア/レ/クの顔が鋭さを増し、マ/グ/ナ/スは自分の言葉が彼を傷付けたのを知った。
怒り出すかと思ったが、ア/レ/クはやがて目から険を消し、ふっと力を抜いて目を閉じた。
「――わかってたよ」
ア/レ/クは言った。

202影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 5/8 :2011/07/12(火) 02:25:07.03 ID:J4Dm9lPV0
「…わかってた、そんな事。僕はジ/ェ/イ/スに愛されない」
溜息の混じった、静かな声だった。
「――でもそれでいいと思ってたんだ。一生親友として彼のそばにいられれば、彼の隣で命が尽きる日まで戦友として戦っていられれば、それで十分だって」
再び開かれたア/レ/クの青い瞳はわずかに潤んでおり、そこに顕れた意外な脆さに、マ/グ/ナ/スは胸が奇妙にざわつくのを感じた。
「でも…いざジ/ェ/イ/スが本気で――遊びじゃなくて、はじめて本気でひとりの女の子を愛しはじめたら、僕は全然平気でいられなかった。動揺して、嫉妬して、みっともないまねを沢山してしまった。これもそのひとつだ」
ア/レ/クは昨夜まで醜い傷に侵されていた自分の胸に触れた。
「僕は子供だな。恥ずかしいよ」
マ/グ/ナ/スは少し考えて、静かに答えた。
「心ある生き物は愛で愚かになるものだ。別にきみだけじゃない。恥ずかしい事でもない」
「…あんたも?」
マ/グ/ナ/スは少し笑った。
「そうだな。俺も愚かになる。誰かを愛すれば」
「誰にも話したことがないんだ。その…ジ/ェ/イ/スを…愛しているって」
「そうか」
「イ/ザ/ベ/ルにすら話したことがないのに、何であんたには話してしまったんだろう。今の話、誰にも言わないで」
「心配しなくても、誰にも言わない」マ/グ/ナ/スは肩をすくめた。「面白い話でもないしな」
ア/レ/クは小さく息をついて、安心したように目を閉じた。
「ふふ…『性格の悪いクソガキ』か」
ふいにア/レ/クは笑い声を立てた。
「本当にそうだよな。――でも、あいつあれで結構可愛いところもあるんだよ」
耳に心地よい、風のような笑い声だとマ/グ/ナ/スは思った。その響きに、胸が軽く締め付けられる。こいつはもっと笑えばいいのに。

203影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 6/8 :2011/07/12(火) 02:25:40.57 ID:J4Dm9lPV0
「――どうやらもう大丈夫そうだな。意識もはっきりしているし、毒の後遺症もなさそうだ」
マ/グ/ナ/スは欠伸をして椅子から立ち上がった。
「それじゃあ、俺は帰るぞ。徹夜して疲れた」
「マ/グ/ナ/ス」
ア/レ/クは慌ててマ/グ/ナ/スを呼び止めた。
「その…ありがとう。色々」
マ/グ/ナ/スは鼻を鳴らした。
「礼はいらない。後で代金をきっちりもらうからな。俺はタダ働きはしないんだ」
「代金?」
不安げな顔になったア/レ/クを見てにやっと笑うと、マ/グ/ナ/スは横たわったままの彼の上に素早くかがみこんで、唇に優しく触れるようにキスをした。
部屋に沈黙が降りた。軽く触れるように押さえた手の下で、ア/レ/クの肩が硬くこわばるのをマ/グ/ナ/スは感じた。
そっと唇を離して目を合わせると、ア/レ/クはマ/グ/ナ/スを見つめて硬直したまま、見る見る真っ赤になった。
「…そういう反応をされると、俺の方が照れちまうんだが」
「うるさい!」
あまりに初心すぎる反応に、何だか子供に悪さをしてしまったような気分になってマ/グ/ナ/スは頭を掻いた。もしかしてこいつはキスをしたことがないのか?――ないかもしれない。
何しろ今までずっと、こいつは全く脈のない片想いの義兄弟しか目に入っていなかったのだから。
マ/グ/ナ/スは人差し指で自分の唇に触れ、首を振った。
「…ま、これじゃ全然足りないが…、今日はこれでいい。残りの『代金』を支払う気になったら、いつでも俺の家に来てくれ」
ア/レ/クは慌てて起き上がって、立ち去ろうとしたマ/グ/ナ/スのシャツの裾を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待って!だっ…だだ代金って、なに?」
「家に来たら教えてやる」
マ/グ/ナ/スはそう言ってウィンクし、ますます赤くなるア/レ/クをながめて楽しんだ。
それからふと真面目な顔になって、いった。
「――なあア/レ/ク、真面目な話、本気で俺を試してみないか?」
「は?」

204影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 7/8 :2011/07/12(火) 02:27:09.29 ID:J4Dm9lPV0
「俺が思うに、きみはそろそろ誰かに愛される事を学ぶべきだ」
マ/グ/ナ/スはさっき見たばかりのア/レ/クの表情を思い出した。天井を見上げてジ/ェ/イ/スの話をしていた時の、寂しそうな色の瞳。
彼はまだ愛される事を知らない、とマ/グ/ナ/スは感じた。
報われないとわかっている相手に愛を注ぎ続ける事に慣れ過ぎていて、自分が愛をもらう事には少しも慣れていない。
だからちょっとした口説き文句にも、挨拶のような軽いキスにすら耐性がない。だから何をされてもすぐに赤くなる。
寂しい事があまりにもあたりまえで、そこから抜け出す事を考えようともしない。
愚かな奴。そんな酷い恋にいつまでしがみついているつもりなんだ?
――俺が教えてやるよ。ア/レ/ク。
愛した者から愛される喜びも、愛し合う快楽も、俺がきみに全部教えてやる。だから――
「…あんな奴忘れて、俺のものになっちまえよ」
自分でも驚くほど真摯な声だった。マ/グ/ナ/スは自分の口から出た言葉に自分で戸惑った。
ア/レ/クは声も出せずに、驚いた顔でマ/グ/ナ/スを見つめていた。
急に気まずくなって、マ/グ/ナ/スは咳払いをした。
「…じゃあ、帰る。またな」

205影の狩人 魔法使い×黒髪狩人 8/8 :2011/07/12(火) 02:27:43.60 ID:J4Dm9lPV0
「…何を言ってるんだ、俺は」
廊下に出ると、マ/グ/ナ/スは病室のドアに背中を預けて息をついた。吐いた息が熱い。胸に手を当ててみると、初めて恋を知った少年のように心臓がドキドキしていた。
マ/グ/ナ/スが少年だったのは、何百年も前の話だ。
「はは…」
マ/グ/ナ/スは思わず声を出して苦笑した。
何て事だ。俺は恋をしているのか。――この俺が、本気で?
このマ/グ/ナ/ス・ベ/イ/ンが。その気になれば、欲しいと思った相手は男でも女でもいくらでも欲しいだけ手に入れられるほど魅力あるこの俺が。あんなキスの仕方ひとつ知らないようなティーンエイジャーのガキに?
しかも――しかも――あろうことか片想いだ。ムカつく。
ムカつくのに、一方で同じだけわくわくしている。退屈な長すぎる人生の中で、思いがけず自分の心を奪う相手に出会えた事に。
「ア/レ/ク…」
既に自分の中で大切な響きになりはじめている名前を、もういちどそっと呟く。呟くだけで、胸が心地よくざわめいた。
――さて、これからどうしようか?
マ/グ/ナ/スは自分に問いかけた。
柔らかい唇だったな。あの先へ進むにはどれくらいかかるだろう?愛の言葉を交わして、互いの肌に触れられるようになるには。
あれだけ初心な坊やだと、どっちにしても最初は俺の方から歩み寄らないと何ともならないな。
とりあえず、次に会ったら、人間の作法に従って携帯電話とやらの番号でも渡してみようか。もっともその前に、俺が人間用の携帯電話を契約する方法を考えないといけないが…
「『俺も愚かになる。誰かを愛すれば』――か」
マ/グ/ナ/スは自分の言葉に独り笑うと、研究所の長い廊下を、家に帰るために歩き出した。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

206風と木の名無しさん :2011/07/14(木) 11:22:05.94 ID:H+4V06PE0
スラッシュが邪魔で読みにくいよぅ(><;)

207風と木の名無しさん :2011/07/14(木) 15:52:26.82 ID:xtInpnTWO
スラッシュ挟みは検索よけにはならない件

208蛙軍曹 黄×緑×黄 1/6 :2011/07/16(土) 11:12:45.95 ID:cMwO4IqWO
蛙軍曹の黄色と緑です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



 ここ最近、ケロロの様子がおかしい。

 自室であるラボのモニターの前に腰掛け、クルルは思考を巡らせていた。
 挙動不審で滑稽で間抜けなのはいつもの事だが、合間にふとした違和感があるのだ。
 一人になったとき、会話の切れ間、一瞬だけひどく冷めたような顔をする。
 「あの頃」とは違う、表情の抜け落ちた黒くてただ深い目に、少し背が冷えた。

 本部からなにか言われたかと調べてみたが、なにも痕跡は無い。
 日向家や隊員ともトラブルは無い。
 誰かに相談している様子も無い。
 調べれば調べるほど分からなくなっていく。

――いっそのこと本人に直接聞くか――

 ケロロの事だ、適当にはぐらかして逃げようとするだろう。
 あの男はどれだけ調べてからかい倒しても、一向に底が知れない。

 景気付けでもするかのようにいつもの笑いを一つ残して、クルルはラボを後にした。

209蛙軍曹 黄×緑×黄 2/6 :2011/07/16(土) 11:13:43.12 ID:cMwO4IqWO
 シューターのような細い通路を通って、ケロロの部屋にでる。部屋の主は少し前から、プラスチックの塊と逢瀬中だ。
 来訪者に気がついていないわけではないだろうが、ケロロは黙ってぱちんぱちんとニッパーを動かしている。

 少し丸まった背中にもたれ掛かるようにして、座った。

「……なんか用でありますか」

 ぼそりと、手を止めず呟くように言われた言葉も、常のような勢いや飄々としたものは無い。
 クルルが自分を調べている事が分かっているのだろう。

「……あんた、最近妙だぜぇ」

 どうせ小手先の技など通用しない。
 ケロロは案外、直球勝負に弱いことがある。それすらポーズの可能性もあるが、クルルには確定しきる術はない。
 遠慮のないクルルの言葉に、ケロロは体中から面倒くさい、というオーラを出しながらニッパーを置いた。

「全く、クルル曹長は優秀でありますな」

「お褒めに預かり光栄なこった、く〜っくっく。……で?」

 なんて事のないトーンでの会話のようだが、その実空気はとことん殺伐としている。
 ただ気怠げで虚ろなケロロと、何としてでも暴ききってやろうというクルル。
 部屋の体感気温は真冬並みである。

210蛙軍曹 黄×緑×黄 3/6 :2011/07/16(土) 11:15:13.05 ID:cMwO4IqWO
「んー、なんちゅーかね、我輩今とってもメンドい事になってんだよね」

 クルルと背中合わせのまま、ぶつぶつとぼやくように言うケロロに、クルルは渋い顔をする。
 冗談やふざけている時以外に面倒などという言葉は、普段のケロロからは出てこない。掴みどころが無さ過ぎる癖に、どこかしら見えない芯がある様な振る舞いをする。
 そんなケロロがわざわざ面倒くさいなどと言う。よっぽどややこしいことなのだろうか?
 弱さも喜びも、深いところは見せないケロロという男が、クルルは歯痒くて堪らない。
 だからこそ、とことん暴いてみたくなる。

「ほうほう、そりゃ気になるなぁ、隊長さんよ」

 愉快犯的な雰囲気は崩さないまま、引く意志が無いことも滲ませていく。
 こんな所で諦められるものか。

 ケロロの全てを知りたい。
 旧友ですら知らない彼を、独占してしまいたい。
 もうずっと前から、 クルルはケロロを求めてやまないのだ。

211蛙軍曹 黄×緑×黄 4/6 :2011/07/16(土) 11:16:48.97 ID:cMwO4IqWO

「流石のクルルだって、知らない方が良いこともあると思うけどなー」

「く〜っくっく、そう言われちゃあ、聞かない訳にはいかねぇなぁ……」

 譲る気などさらさらないクルルに心底呆れた顔をしながら、ケロロは溜め息をついた。

「我輩さぁ、多分ね……」

 ケロロは面倒臭そうに後ろ頭を掻く。

「多分?」

「……多分、恋してるんでありますよ、クルルに」

「……く〜っくっく、そりゃ、確かにメンドクセェこった」

 一瞬硬直したあと、さも愉快そうに笑いだしたクルルと、乾いた視線を空中に向けるケロロ。
 会話の内容とそぐわない、なんとも異様な光景があった。
 いつまでも声をあげて笑い続けるクルルを一瞥して、ケロロは何度目かの溜め息をつく。

「……たのしそーネ、クルルさん」

「そりゃあなぁ。アンタ、俺の反応予測ついてたろう?」

 クルルはケロロを特別な存在だと思っている。あからさまにはしていないが、隠してもいない。
 気がつきにくい好意だが、しっかりした意志がある。

212蛙軍曹 黄×緑×黄 5/6 :2011/07/16(土) 11:17:51.81 ID:cMwO4IqWO
 そんなクルルに、恋をしているなどと告げればどうなるかなど、明白だった。
 そもそもケロロは恋愛など面倒だと思っている。
 隊長システムや自分の気質を理解している為に、諦めに近い感情を持っていた。
 しかし、実際惚れてしまったものは仕方がない。おまけに相手はあの、トラブルとアクシデントをこよなく愛する黄色いひねくれ者である。
 甘酸っぱいときめきや切ない胸の熱さなど殆ど無く、ケロロに去来するのはただひたすらに、面倒臭い。それだけだった。
 恋心が募ると同時に、ややこしい事に対する不満や倦怠感も降り積もっていき、とうとうクルルに直撃される羽目になった。

213蛙軍曹 黄×緑×黄 6/6 :2011/07/16(土) 11:19:22.48 ID:cMwO4IqWO
「……あーあ、だから嫌だったんだよねー、クルルに言うの」

 絶対面白がるデショ、とまたしても大きい溜め息をついたケロロは、ニッパーを取り上げ作業を再開する。
 ひとしきり笑って満足したらしいクルルが立ち上がり、冷蔵庫型の通路のドアの前に立つ。

「ああ、そうだ隊長」

 ケロロは振り返って声をかけてきたクルルに視線だけを向ける。

「言い忘れてた。俺も、あんたに惚れてる」

 言い終わると同時にクルルはドアの向こうに消えた。
 一人きりになったケロロは、今日量産した中でも殊更地の底を這うような溜め息を落として、頭を抱えている。

「……知ってるっつーの、ひねくれ者が……」

 しかし先ほどまでの脱力感は無く、ケロロの顔は湯気でも噴きそうな程真っ赤に染まっている。

 同じ頃、赤面して悶絶するケロロの姿をモニターで確認し、自分も居たたまれない気恥ずかしさを感じて苦悩するクルルがいた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
半乾きのおっさんととことんひねくれた若造が好きすぎます。

214風と木の名無しさん :2011/07/16(土) 11:31:15.50 ID:Wpk7Yfq80
>>208
むっちゃ萌えました!
最後の緑の一言がもう素晴らしいです
黄緑黄美味しいです!本当に萌えを有難うございます!

215風と木の名無しさん :2011/07/16(土) 15:52:40.17 ID:IIpECtcDi
>>208
軍曹さん達にこんな萌えがあるとは!
かわいい、かわいいよ二人とも

216ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10 1/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/17(日) 01:01:44.93 ID:6wsMpeOy0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )もうすぐで終わります。

「本気、か」

そして一カ月が経過した。
バルドに愛が芽生えたのかというとそれはわからない。
一度も愛しているという言葉を聞いたことがないからだ。
二人は正座して向き合っていた。
「じゃあお前にはこのエルブンランス持ってもらって、ローブはミストフード、後は…」
「…うん」
一カ月経過したら人間の魔法使いのようになってもらうという当初の約束通り、夜桜はミストフードとエルブンランスを託された。
もうすぐ他の二人もやってくるらしい。
一人前に人間のように扱われることは夢だった。
そのはずなのに、なんでこんなにも胸にもやがかかったように、すっきりとしない。
「ヒールマッシュルームだろ、あと、灯籠な。ランプリングの方がいいかな、どうしよう。お前フラッシュ使えないし、ま、俺が使えばいいか。とにかくお前は強いから、この程度の装備でも十分いけるはずだ」
「…うん」
「何だ、テンション低いな。人間と旅するの楽しみにしてたんだろ?」
「…当然だ」
人と一緒に旅をして、異世界に行って、結局賭けには負けたが、夜桜のやりたいことがこれからできるようになる。
けれど気になる。
「本当に愛すれば…」
ヴァンパイアになるかもな。
これはバルドが前に言った言葉である。
あれからずっとバルドと夜桜の関係は良好であり、バルドが暴走することもなかった。相当正義の鉄槌での一撃が効いたらしく、平謝りしてきた。
愛すればヴァンパイアに。
愛さなかったらどうなるのだろう。
また独りに戻る?
こんなときに異世界の『レイン』は何をしたのだろう、一緒にただ旅を続けて、死にそうだからヴァンパイアにしたのか。
それともヴァンパイアにずっとしたかったが、することがそれまでできなかったのか。
そんなことを考えて、表情が曇る夜桜の頬に、バルドは手を伸ばした。
途端、仲間二人の大きな声が響いて、バルドの手は引っ込んだ。
「ほら、他の奴らきたぞ。ん、夜桜?」

217ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10 3/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/17(日) 01:03:39.44 ID:6wsMpeOy0
一階へ降りようとするバルドの甲冑の端を、夜桜はつかんだ。
「…好き」
一度それだけ言うと、ふいっとつかんだ甲冑を手放して、突き放した。
「え、あ、夜桜?」
戸惑ってバルドは夜桜を見るが、すぐに仲間の大きな声に、一階へと降りていく。
「ヤッホー、元気にしてたー?」
「予定時刻きっちりに来たな、んじゃ呼んでくるよ」
 そんなやり取りが聞こえる。
もうすぐバルドが来る。
夜桜はその場で正座したまま、エルブンランスを眺めていた。
もしもバルドが好きじゃなかったから立ち去る。そういったはずだ。
けれどバルドの中では、夜桜は仲間になることが決定していて、重要な戦力になると思ったらしい。
結局は利用なのか?
あの時押し倒したのは間違いなく欲情しただけで、愛なんてこれっぽっちもなかった。
夜桜はぽたりとエルブンランスに落ちた涙をぬぐった。
(バルドは愛してなくてただ仲間に。ああ…ああ、ああああああああああああ!!)
ガシャン、と心の何かが壊れるのを聴いた。
 そして窓を開けると、ミストフードをかぶって飛び降りた。

「夜桜、すまん、長くなった。…夜桜?」
開け放たれた窓からは陽の光が入って来ていて、そこにエルブンランスとミストフードはなかった。
当然夜桜はそこに正座しているはずもなく、まさに部屋はもぬけの殻だった。
「何…?」
慌てて窓から見るが、夜桜の姿はなく、人通りは少ない。
『一カ月たったら、去る』
その言葉が頭をよぎった。
まさか、逃げた?
自分が愛してないと言ったから?
それより逃げ出して何をする気だ?
様々な不安がよぎり、慌てて仲間に知らせに行った。

一年が過ぎた。

218ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10 4/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/17(日) 01:06:03.08 ID:6wsMpeOy0
エルブンランスを持ち、ミストフードをかぶった極悪人がいるとのうわさが、ガルズヘイムをかけた。
何でもその髪は銀色で、目の色は邪悪なまでに赤い。
牙を見せてにやりと笑い、警備員ですら歯が立たない。
その噂を耳にしたのは、ずっと夜桜を探してきたバルドだった。
たまたま酒場で夜桜のうわさを探していた時に、まさに条件がぴったりと合う話を耳にした。
「知らないんかい、バルド。このガルズヘイムを、歩きで移動するんだと。だけど走れば人間じゃないくらい早くて、襲うのも決まって夜なんだそうだ。お前も気をつけろよ」
マニカパ僧侶の友人の言葉に、信じられないといった様子でバルドは聞き入った。
干し肉を食いちぎりながら、マニカパの友人は続ける。
「名前?名前は、名乗らないそうだ。だから依頼引き受け人も不明で。ああ、そう、そうだ、依頼受けてるってことは確か闇ギルドに所属してるのかな。ただ、襲われた人間は血がなくなってるって噂だから、ヴァンパイアだったりしてなあー」
(夜桜…?)
夜まで噂を待ち、バルド達はガルズヘイムの都市に宿をとった。
バルドは一人で、ビアドソードを手に、都市を徘徊した。
いつも困った顔をしていた夜桜を思い出す。
(もうあれから一年もたった)
突然いなくなった夜桜は、本物の人間に成り済まして、人を襲っているのだろうか。
突然、背後に気配を感じて、鉄壁の盾をとっさに出すと、エルブンランスが目の前に繰り出されていた。
(来たか!)
「…ちっ」
低い声がした。夜桜の声であって夜桜の声ではない。
一度体制をたて戻すと、相手はミストフードのフードをとった。
まさにその下にあった顔は、夜桜だった。だが、昔のように困った顔ではなく、殺人鬼そのものの顔。
唇が弧を描いて笑う夜桜に、バルドは体が動かなくなるのを感じた。
「これは懐かしい、流石、私がかつて惚れた男…」
「夜桜、なのか…」
「ふふ、君との生活で変わったよ、人間の愚かさを知った。同時に今までの己の愚かさも。
ヴァンパイアというモンスターでありながら人間を殺しては血を吸う毎日、なぜ昔の私はあんなにまで弱かったのかね?」

219ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10 5/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/17(日) 01:09:18.02 ID:6wsMpeOy0
エルブンランスをくるくる回すと、ぴたりとバルドの首をめがけて止めた。
「懐かしいだろう、この武器。みなよ、このミストフードも。すべてが血に汚れて汚れて、あははははははは!!…私の心も、血に汚れた、もはや怖いものは何もない。警備員が来る前にバルド、君は殺してあげる」
目に光がないが、ふと見せた表情には陰りがあった。
それはいつかに見た、悲しげな夜桜の表情だった。
「夜桜…、俺が拒んだせいでこうなったのか?」
バルドが悲しげに減る無の下から言葉を紡ぐ。それを聴いて、夜桜は一瞬笑った。
馬鹿にでもするかのようにくすりと笑い、ランスを振り回す。
「さあ、なんだろうね。私にはわからないよ。ただ、耐えられなかったかな、君とずっと旅をすること。望んでいた、はずなのにね。
所詮人間とヴァンパイアは相いれんのだ、人間はずっと殺人依頼を繰り返す。それを見ているうちに、それを繰り返しているうちに、私には迷いがなくなった。
バルドに惚れていたことは汚点だ。高潔な私がなんて愚かな行為をしたのかと」
好き。
消える直前につぶやいた言葉と全く違う言葉を紡ぐ。
ずっとずっと一カ月の間苦しんでいたなんてバルドは知らないに決まっている。
まさに血の涙が出るほどの思いでバルドのことが好きだったと、最後にしたヘルプのサインですら見逃したバルドなんてもういらない。
 夜桜なんて名前もいらない。
バルドに添い寝してもらった思い出なんていらない。
「…いらない」
夜桜はぼそりと呟く。
月明かりに照らされた。
雲がすっと流れて、月の光が夜桜の顔を照らした。その眼からはぽろぽろと涙がこぼれていた。
「夜桜!」
「来るな!」
夜桜が、走りよるバルドに向けてエルブンランスを繰り出した。
だがそれは、刃の部分をつかんだバルドによって止められた。
手袋で覆われた手は、それが破れて、血がにじみだす。ヴァンパイアの怪力で繰り出されたそのエルブンランスをつかんでいた。
「何で自分の心に嘘をつくんだ、夜桜。お前はそんな奴じゃなかっただろう。
短い間でも、ずっと添い寝してほしい、添い寝すれば腕の中で眠る。俺が愚痴をこぼせば素直に聞いている。優しいヴァンパイアだったじゃないか」
「バルドに何がわかる…」

220ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10 6/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/17(日) 01:10:21.73 ID:6wsMpeOy0
夜桜がエルブンランスを離すと、カランと柄の方が地面に落ちた。
「利用したくせに、利用しようとして、ただ強いから、それだけで旅に連れて行こうとしたんだろう」
夜桜は顔を覆った。強がっていた、先ほどまでの狂気は消えて、その場で蹲り、泣き崩れた。
「違うんだ、夜桜。俺はずっと旅をすればお前に対しての気持ちが変わると思って…、お前は旅をしたがっていたから、喜ぶ顔が…」
途端、バルドの首を、夜桜の右手がつかんだ。
「よくも嘘ばかりがそう出てくるものだ。このままへし折ってくれようか」
好き。
バルド、好き。
愛してくれたらヴァンパイアになってくれる?
いや、一緒に旅をするだけでもいい。
首を折ってやろうと力を込めて、しかしそれがどうしてもできなかった。
月明かりに照らされたバルドの顔は、一年前と変わっていなくて、それでもいつも以上に真剣な表情だった。
なぜその手に力が込められないのか、夜桜はわかっていた。
バルドは殺せない。ずっと殺そうとこの都市で悪事を繰り返してきて、他の人間は殺すことができた。
まさに名前の知れぬ悪の英雄となってしまった夜桜には、もう善人のバルドと釣り合わない。そう思い続けてきた。
血まみれのフードとエルブンランスは何度も人間の喉を割いてきて、もらった当時の美しさはすっかり失せていた。
血は洗っても洗っても取れなくて、何度も宿で泣いた。
「よ…ざ…」
はっと、その言葉で自我が戻る。
いくら力を込めなくても、首を絞めつけていれば死んでしまう。とっさに助けようと手を離した夜桜に、ビアドソードが向けられた。
ごほごほと咳き込むバルドは、夜桜に対して初めて刃を向けた。
「私を殺すのか」
夜桜は、エルブンランスを手に取ろうともせず、かといって魔法を打つこともしない。
バルドはビアドソードを突き付けたまま、微動だにしなかった。
「そうか。殺すのか…」
頭を垂れて涙を流す夜桜を、バルドは見つめていた。
何度も頭の中にあるのは、安心して腕の中で眠る夜桜の寝顔。
いつも寂しいといっては話をせがむ姿。
 ではこの一年、どれだけ夜桜は寂しかったのだろう。
こんなか弱い奴が、どうして悪の英雄にまでなってしまったのだろう。

221ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼10 7/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/17(日) 01:14:57.88 ID:6wsMpeOy0
「殺すなら、早く殺せ。何も抵抗はもうしない。もう疲れた。やはり…私は弱かった。強がっていても、だめだった。もう私は悪の英雄だ、バルドに釣り合わない…。私は…」
すっと顔をあげた。
涙でぬれた夜桜の顔はとても月に映えて美しかった。
「もし、死んだなら、最後にその死体をお前の腕の中で抱いてくれないか。あの時のように」
「っ…、夜桜」
ビアドソードが奇跡を描くのを感じる。
刃が首に来たと思い、夜桜は目をぎゅっと閉じた。
だが、刃が転がる音とともに、夜桜は抱きしめられていた。
「え」
ギュッと抱かれ、その温かさにめまいがした。
一年前に抱きしめられた時を思い出す。その腕の中で眠っていたことを思い出す。
あたたかい、血なんてものよりよっぽどあたたかく、生臭くなく、優しく、ベッドの上に座って暗い顔をしていた自分を自宅にまで連れてきた男の腕。
「夜桜、本当は辛いんだろう。俺にはわかるぞ。夜桜、今心から泣いているな、それも、これも、俺の気まぐれのせいで」
「…あ」
涙がこぼれて、夜桜は顔を覆う。
情けないまでに小さな、蚊の鳴くような声ですすり泣きはじめ、言葉をつづけた。
「強いわけがないじゃないか…。バルドと私は種族が違う、愛することができても、バルドは愛してくれなかった…」
「夜桜」
昔の優しい声が響いた。
耳元で、なでるようなその声に、懐かしさを覚えた。
「やり直そうか」
「バルド…?」
「またうちに来い。また一緒に寝よう。今度はさ、夜桜の心のこと考えるから。こんな弱い奴、手放せないって、言ったよな、昔」
「…うん…、言った…」
「お互い信じられなかったからこう何ったんだろ、今度はもう少し信じよう。俺もお前のことちゃんと考えるから。だけど夜桜も、俺が利用したなんて思わないでくれ」
一つ、息をついて、バルドは夜桜の髪をなでる。
「俺は本当に夜桜が世界を旅して喜ぶところを見たかったんだ。だから、世界のことについて書かれた本を買って渡しただろ」
今でも持っている、荷物の中にあるその本。
いつも宿でその本を出しては、読んで、頬を寄せた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )恐らく次で終わりです、長々と失礼しましたー。

222たにずきんちゃん 1/3 :2011/07/17(日) 07:26:07.94 ID:qkX5Z1090
仙石ナベテレビ/ウツケBarシーズン2 小重郎子×谷愚痴

半生で女装(お可まちゃん)なので苦手な方はスルーでお願いします
ファイナルシーズンで小重郎子のガタイのよさに気付いてつい勢いで

ホテルのダブルベッドに腰掛けて、今かいまかとその時を待っていた谷愚痴はバスルームから現れた小重郎子の姿に呆然とした。
「こ、こ、小重郎子ちゃん、なんか雰囲気違くない?」
「そーお?」
小首を傾げる小重郎子は、ヒールを履いていない分だけ低くなっているとは言え、谷愚痴よりも10センチは高いのではないだろうか。
もともとモデルのようで魅力的だったので身長は問題ない。
トレードマークの赤いドレスにキラキラのまつげ――それもシャワーを浴びたのだからなくていい。
けれど、いい匂いのするくるくるの長い髪までも消えてしまった。
男性的な短い髪に、筋肉が適度についた平らな胸。腰にはタオルを巻いているが薄い布の向こうにはふっくらとした何かがある。
谷愚痴に密かに思いを寄せるウツケBarの可愛いチーママというよりも、イケメンと評した方が相応しい青年がそこにいた。
「か、髪、随分短かったんだね」
「あーあれ、カツラ。あの巻き髪地毛でやるの結構たいへんなのよね、きゃ!」
はらりとバスタオルがおちる。あわてて小重郎子がベッドの上においてあったバスローブを引き寄せたが遅かった。
現れた小重郎子の陰部が目に焼きついてしまった。
「…股間のホトトギス、ちょんぎんったって言ってなかったっけ?」
「言ったかしらねぇ…それ、ノブママの話じゃない?たにやんたら、夜の蝶の言う事いちいち鵜呑みにしちゃだ・め・よ」
「髭も生えてるし」
「髭はもとから生えてるだろ!」
「…なんか、いま男がいた…」
ドスの効いた低い声に竦んだ谷愚痴の肩を、小重郎子が大きな手でぎゅうぎゅうと揉んだ。
「やだ、ごめん。ついね、この格好だと素に、ごほん。ちょっとやんちゃな気分になっちゃうのよね」

223たにずきんちゃん 2/3 :2011/07/17(日) 07:27:21.40 ID:qkX5Z1090
キレイすぎてあまり気にならなかったけど、たしかに髭はあった気がする。
「小重郎子ちゃん、胸も随分と平らで…」
「たにやんって貧乳とか、股間がすこしでっぱってるとか髭が濃いとか、そういう些細なことでヒトのこと判断する人だったんだ…」
些細かどうかはともかく、だいたい貧乳と言えるスタートラインにも立っていないし、股間もすこしどころか立派ではないか。
それでも、すねる小重郎子の機嫌を損ねないようにと谷愚痴は焦った。バスローブ一枚で部屋を飛び出されては困る。
「いや、そんなことないよ!小重郎子ちゃんは俺の好きになった人だし…でもなんか驚いたって言うか、話が違うって言うか…」
「はじめからアタシが男として生まれた事、知ってるじゃない」
「もちろんしってるよ、武将だったってことも。でもさあ」
「たにやん、いくら盾の軍がハデだったからってちょっと考えれば分かると思うんだけど。赤いドレスで戦には出られないと思わない?馬に跨ったらお股全開よ」
「え、じゃあいつも男の格好なの?」
「当たり前じゃない、鎧兜よ」
「ひどい、小重郎子ちゃん。俺のこと騙したんだ」
「騙してないわ…ってああ、めんどくせえ。女装は趣味と実益両方なんだって。俺たちがどんだけ苦労してやってきたと思ってんの?
盾ママも俺も時代の目をよむっつーの?そうやって上手く生き延びてきたわけ」
「時代の目…あれ、小重郎子ちゃんもしかしてチーママの前にちょんまげでスーツ着てサポートセンター勤めした事ある?」
「さ、さあ?人違いじゃない?それよりもたにやん。こんな格好のままあたしのこといつまで放って置くつもり?」
「えーと、えーと…」
「もーそんな顔しないの!あたしのこと誘ったのたにやんだよ」
「そうだっけ」
「もう!武士に二言は禁物よ」
「…俺武士じゃないし」
突然小重郎子の顔が接近し、唇に柔らかいものが当たった。
小重郎子が谷愚痴の目を覗き込んでいる。ノーメイクでも充分に美しい魅力的な眼差しにぼうっとなった。

224たにずきんちゃん 3/3 :2011/07/17(日) 07:29:36.10 ID:qkX5Z1090
「現代社会で戦ってるたにやんは立派な武士だよ」
「そうかなあ」
「そうよたにやん、男の子でしょ!覚悟を決めなきゃ」
「でも俺こういうの初めで」
「大丈夫。痛くしないから」
「痛くって、え?え、俺が入れるんじゃないの逆じゃない?」
「一つになれればいいんだし、細かい事きにしないの」

息苦しさで目が覚めた。
どうやら長い腕に頭を抱え込まれているようだ。
手探りで探し当てた眼鏡を掛けると、穏やかな寝息を立てる小重郎子がいた。
しばらくその顔を眺める。
どうみても男にしか見えないけど。お尻も痛かったけど。
騙された俺に100万も貸してくれると言った。ペンダントに俺の写真なんか持っていた。盾ママのお店を辞めるとも言っていた。
俺なんかのために。
「ん…たにやん、おはよー…」
かすれた声は谷愚痴のものより低く、うっすらと伸びた髭の感じはもともとの口髭と相まって男らしく格好いい。
もっと強くなってこの人を。
「ねえ、小重郎子ちゃん」
「なあに」
「俺さ、ちゃんと小重郎子ちゃんを守るよ」
「たにやん…」
「小重郎子ちゃんだけの武将になってみせる」
「たにやん大好き」
とろける様な笑顔は谷愚痴のよく知っている小重郎子のものだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

すいません、開始のAA漏れちゃいました。

225風と木の名無しさん :2011/07/17(日) 10:45:27.81 ID:TZ4AntK7O
>>224
思わず矢文吹いた。
まさかの鍋か。
GJ。

226海の記憶 1/9 :2011/07/17(日) 23:14:06.24 ID:hS+EZb/eO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
映画「津具名井」の伍長×主人公。中の人目当てで見たら結末がツラすぎて、思わず捏造妄想せずにはおられなく…
あの作品でどうやってな次元のエロがありますのでご注意を。


その女性客が帰ろうと席を立った時、裏口の戸が開いた音が耳に届いて背筋がギクリと強張った。
案の定、そんな自分の異変に気付いたらしい彼女が口を開いてくる。
「どなたかいらっしゃるんですか?」
尋ねられ、しかしそれには表情を変えないよう懸命に堪え、短く「ええ」とだけ答える。
こちらのそんな頑なな気配が伝わったのか、彼女はもうそれ以上を追及してくる事は無かった。
きっと育ちがいいのだろう。
「ありがとうございました。」
見送る玄関先で一度だけ立ち止まり、最後にもう一度礼を言う。
「お聞かせいただいた事は必ずいつか本にしますので。」
そして告げられた事に自分も再び「ええ」とだけ返したが、内心ではそんな事はもうどうでも良かった。
立ち去る後ろ姿が門を出ていくのを確かめ、やや乱暴な手つきで扉を閉め、鍵までも掛ける。
そして踵を返した足がまっすぐに向かったのは裏口のある台所だった。


227海の記憶 2/9 :2011/07/17(日) 23:15:23.29 ID:hS+EZb/eO
部屋の扉を開ければ、そこにはテーブルの上に買いこんできた食材を取り出している青年の姿があった。
自分が入ってくると顔を上げ、微かに笑う。
「誰か来てたのか?」
問われ、ああと曖昧に返す。しかしそんな自分の微妙な反応に彼がこの時気づく様子は無く、手が止まる事も無い。
並べられていくパンや野菜。ちょっと重かったと瓶に詰められた蜂蜜が置かれ、そして、
「いい匂いだったから買ってみた。」
少しいたずらめかすように目を細め、隣りに立とうとしていた自分の鼻先に手にした丸い物体を突きつけてくる。
途端、甘酸っぱい香りが鼻先に広がった、それはオレンジだった。
朝に切って出すのでもいいし、なんならジャムでも作るよ。あれば食べるだろ?
話しながらも動きは止めず、そのまま今度は肉や魚はまだ残りがあったはずと冷蔵庫の方へ行きかける。
その二の腕を自分は掴んでいた。
「…何?」
いぶかしむような表情で彼が問うてくる。しかしそれには何も答えず、自分は掴んだ手の平に力を込めると
彼を己の方へ引き寄せた。
腕の中に抱き留め、そのまま強引にテーブルの上に乗り上げさせるような形で押し倒す。
「何?!」
今度こそはっきりと驚いた叫びが彼から上がる。けれどそれには一切耳を傾けず、
「抱きたい。」
そう一言告げ暴れかける身体を抑えつければ、その拍子に肘にぶつかったオレンジがテーブルから落ち、
夕暮れ時の同系色の光が差し込む石の床の上を転がっていった。


228海の記憶 3/9 :2011/07/17(日) 23:18:39.30 ID:hS+EZb/eO
自分達がこの地に移り住んで一年近くが経とうとしていた。
戦後までなんとか生き抜き、退役した後自分が手に出来た職は、とある海辺に立つコテージの管理の仕事で、
夏場のヴァケーション時以外ならずっと住んでいてくれて構わないと言ってくれたそのコテージの持ち主は
裕福な老夫婦だった。
彼らは自分以外にもう一人、かつての軍人仲間がそこに住む事も気前よく許した。
彼と初めて出会ったのは異国の地だった。
フランスへ派遣された軍の中、隊とはぐれた伍長である自分ともう一人、そして一兵卒の彼。
自軍と合流しなければと進む道行の中で知った彼の人となりはいささか謎めいていた。
戦場には似合わない端正な雰囲気を持つ、どちらかというと小柄な顔立ちの整った青年。
頭もいいのか、時折接触する地元の者達とも言葉を交わせるその教養に1度、「どうしておまえみたいな
上流の男がこんな最前線に?」と尋ねてみた事もあったが、それに返されたのは「俺は別に上流の男じゃない」
というにべもない答えだけだった。
あまり自分の事を話したがらない。しかし生き残りたい意思は強いのか、時として弱音を吐く自分達に
叱咤を飛ばすほどの精神力を持っていた彼が、それでも徐々に異変を見せ出したのは、探していた軍と合流し
自国へ帰る船を待つ浜辺に着いたあたりからだった。
歩く足取りに力が入らずフラフラと辺りを彷徨う姿を見た時には嫌な予感がした。
だから彼の様子を注意して見ていれば、その目から光は徐々に失われ、時としてあらぬうわ言を口にし……
精神的に参ってしまうのは無理からぬことだった。
だからせめて休めと、寝れる場所を探し、荷を下ろさせ、横にさせて昂ぶっているのだろう精神を宥めてやろうとする。
けれど彼の異変の原因は、そんな心的なものだけではあの時無かった。


229海の記憶 4/9 :2011/07/18(月) 00:22:36.34 ID:ofpvV0SjO
身体の下から自分を止めようと名を呼んでくる彼の声がある。
しかしその一切を無視して、眼下のシャツの襟元に手を掛け引き裂く勢いで横に引けば、跳ね飛んだボタンの感触に彼が息を呑んだのがわかった。
近頃暑くなってきたからか、彼はシャツの下に何も着ていなかった。
晒される自分と比べれば遥かに白い肌を綺麗だといつも思う。
けれどそんな想いは、これもいつも腹にある引き攣れた跡を見咎めた瞬間掻き消える。
今はもう大分色素も薄くなった、しかし初めて戦場で見た時、それは爆弾の破片を受けたまままともな治療も
受けられず、赤黒く膿んでいた。
撤退船に乗り込み、帰国する途上で彼の容態は悪化した。
感染症がひどくなれば命にも関わる。
ジリジリした想いで寄港を待ち、到着すると同時に病院へと担ぎ込んだ。
港近くの病院は彼に限らず同じように負傷した兵士達で溢れかえったさながら野戦病院の様相を呈していた。
ベッドも薬も人手も足らない。
そんな中でただ付き添い、出来うる限りの手伝いをして彼の回復を待った。
一時は意識が混濁して危ない状況にまで陥った彼は、それでもギリギリの所で持ち直し、やがてその瞼を持ち上げた。
しかし何もかもが元通りと言う訳にはいかなかった。
敗血症に至る一歩手前の意識障害の名残か。
彼は自分の事を忘れていた。そして何より、己自身の事も何も覚えていなかった。
あの時の衝撃を思い出しながら、乱暴に彼の衣服を剥いでいく。
下肢に手を掛け、スボンを下着ごと器用に引き下ろしてやれば膝にわだかまるその感触に彼が引きつるような
息を洩らした。
首筋に昇る朱がまるで生きている事の証のようで、たまらない感情が腹の底から込み上げる。
遠いあの頃、自分達の周囲には死が満ちていた。
例え病院内であっても手が足りないと放置される死体は幾つもあり、その内の一つが自分の傍らにもあった。
昨日までは生きていた。まるで淋しさや死の恐怖を紛らわせようとするかのように、その男はたまたま隣りにいた自分に
とりとめのない話をし続けた。
その男は言った。自分は親も兄弟も恋人もいない、天涯孤独の身だと。
振り返って、見下ろす。
ようやく目を開けてくれた彼は、これまで訳有りな人生を送ってきた者のようだった。
けれどそれをすべて忘れてしまった。


230海の記憶 5/9 :2011/07/18(月) 00:24:12.79 ID:ofpvV0SjO
見比べる顔と顔。耳に残る過去の事情。
まだ夜の明けきらぬ早朝の病室は寝静まり、自分以外誰もいなかった。
そんな中目に飛び込んできた男の手首のドッグタグ。
恐ろしいほどに罪悪感は無かった。むしろ暗い衝動が自分の中には満ちていた。
彼と男の円形の金属板を入れ替える。
世の中は混乱していた。国中に死が満ちていた。
死体は夕方には運び出され、自分達は彼がわずかでも動けるようになるのを待ってその病院を去った。
追ってくる者、疑問を抱く者は誰もいなかった。
あの瞬間、彼は自分だけのものになったのだ。

その後自分は軍に復帰したが、負傷した彼が徴兵される事は免れた。
戦地へ行き、休暇が取れ、戻る度に彼の記憶がどうなったか、残っていてくれるだろうかと不安を抱き続けたが、
そんな自分の懸念を余所に彼は自分の手の届く場所に留まり続けた。
そして迎えた終戦。自分は彼の手を取って旅に出た。
何もかも失くした彼だが、それでも唯一大事に持ち続けているものがあった。
それは1枚の写真だった。
青い波が打ち寄せる海辺に立つコテージが映るその景色を探しに行こうかと告げれば、彼はそれにうれしそうに笑った。
結局、それと同じ場所は見つける事は出来なかったけれど、それでも似た立地の場所で職と家を手に入れ、
新しい生活は満ち足りたかのように思えた。
しかしそこに彼女は現れた。
突然この家を訪れたその若い女性は、自分の事を彼の恋人だった女性の妹だと告げた。

腕を伸ばし、テーブルの上に置かれたままだった蜂蜜の瓶の蓋を器用に外す。
身体の下の彼は、のしかかり抑えつけてくる重みに徐々に抵抗する気力を無くしているようだった。
しかしその隙をつくように、指にすくい取った蜜をその足の奥に塗り込めてやれば、さすがに我に返ったような反応が戻る。
「そんなもの…っ…いや…だ…」
切れ切れに訴えてくる、しかしそんな声を今の自分は聞いてやる事が出来なかった。
「ひどくはしないから。」
手の動きは止めぬまま、こめかみ、頬、首筋へと宥めるように唇を滑らせていく。
それに彼はギュッと目をつむり、唇を噛み締めた。
ひどくはしない。いや、出来ない。だから十分に慣らしてやりたい。
指先にそんな熱がこもるのはすべて先程聞いた話のせいだった。

231風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 00:28:45.57 ID:ofpvV0SjO
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
すいません。途中で引っかかり長い間中断してしまいました。
続きはあらためて出直します。次の投下を待っていた方がいらしたら申し訳ありませんでした。


232風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 03:44:08.63 ID:hWnpAieq0
>>226
まさかこれが読めるとは……
続きを待ってます
GJさせてくれ!

233風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 05:37:17.07 ID:tRKTlywV0
>>226

続きお待ちしております〜

234海の記憶 6/9 :2011/07/18(月) 07:22:57.87 ID:ofpvV0SjO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )サイカイシテミマス
また引っかかったらすみません。

彼の恋人の妹だと名乗った女性は、これまで謎だった彼のすべてを自分に語った。
彼は彼女の家の使用人の息子だったと言う。
家の援助を受けて大学を出て、医者になる事を目指していた。
その生い立ちの中で主筋にあたる家の娘と恋に落ちた。しかし彼のそんな幸福な時間は長くは続かなかった。
ある日屋敷で起きた事件。
当時、その家に滞在していたある少女が暴漢に襲われた。
その犯人に彼は仕立てられたのだ……
『すべては私のせいです』
彼女はそう言って、あの時自分の前で深く項垂れた。
あの日、彼女は彼と姉の情事を垣間見てしまっていた。
姉に憧れていた。彼は初恋の人でもあった。そして何より自分は子供すぎた。
過度の潔癖と正義感。
自分は少女を襲った男の正体を知っていた。けれどその記憶を彼とすり替え、偽りの証言をした。
彼は刑務所に送られ、それ以降二度と会えてはいない。
『18になって、家を出て、ようやく彼のその後を追う事が出来るようになりました。戦争が始まり、刑期短縮の為
彼が従軍を志願し、フランスに派遣された事まではわかりました。でもその先の情報が途切れてしまった。
そんな中色々調べて、あなたが彼と同じ部隊にいらっしゃった事がわかりました。彼の事を何か覚えては
いらっしゃいませんか?』
懇願するように問われる。それに自分はしばし返事を返す事が出来なかった。
彼女が彼の事を知ってここに来た訳ではない事には安堵の想いが込み上げたが、それ以上になぜという混乱が
頭の中を埋め尽くす。
『どうして…今更そんな事を?』
だから無意識にそんな言葉が零れれば、それに彼女はその眉根を強くしかめた。
『襲われた少女は結婚しました。相手は……私が真実に見た男です。』
彼女はその男の名を言った。それは自分のような人間ですら聞いた事のあるこの国の名士の名だった。
『私は取り返しのつかない事をしてしまいました。今更許されると思ってはいませんが、それでも出来る事なら
一言でもいい、謝りたい。』
涙交じりの訴え。しかしそれが自分の心に届くはずも無かった。

235海の記憶 7/9 :2011/07/18(月) 07:26:21.31 ID:ofpvV0SjO
彼女は語り続けた。自分はいつかこの事を本にしたい。実名も恐れはしない。その為にも彼の事を知りたいのです。
子供だったと彼女は最初に言った。しかし今とてその世間知らずさは大差ないと思う。
本にする?それはいつの事だ。それが成るまでの間、彼女が苦しみ続けるのならそれでいいではないかとさえ思う。
実名公表?それで彼に罪をなすりつけた者達が世間に恥をさらそうが、それで彼に何が戻る?
上流階級の者達が寄ってたかって身分の低い者を虐げた、そんな話は世間にザラにある。それでも、
『出来れば刑務所で何があったのかも、私は知りたい。』
彼女は育ちがいいのだろうと思った。今の境遇がどうあれ、その本質は典型的な上流階級の人間。
刑務所で何があったか。
あんな顔をしあんな雰囲気をまとった男が放り込まれればどんな目にあうか、そんな事は火を見るより明らかだった。
知った真実は自分の心に冷えた怒りだけを生んだ。
だからあの時自分は答えた。
『彼はフランスの浜辺で帰国かなわず、敗血症で亡くなりました。』
それに彼女は瞬間絶望的な目を上げた。しかしそれ以上の感情は必死に押し殺し、最後にこう一言だけ告げた。
『彼を待ち続けた姉も、空襲で亡くなりました。』


指に取った蜂蜜が擦られる熱で緩く溶け出すまで、受け入れさせる場所を解すのを止めない。
傷つけたくはない。その一念からの行為も長すぎれば執拗へと転じてしまうのだろう、気付いた時彼は
手の甲を口元まで持ち上げ、その上に歯を立てて洩れそうになる声を必死に噛み殺していた。
暴れる抵抗は諦めたのか、力の抜けた足はテーブルの下へと投げ出され支えていないとずり落ちそうになる。
だから抱え直す為に一度指を後ろから抜けば、それに彼の目はうっすらと開かれた。
「……もぅ……」
小さく掠れながら零された訴えには、さすがに我に返る憐憫の情があった。
けれどここで止めるにはすでに自分は熱くなりすぎていたから。
「ひどくはしない。」
同じ言葉を繰り返し、取り出した己の欲を彼にあてがい押し込めば、その圧迫感に身体の下でうっすら汗ばんだ肌が跳ねた。
「…あぁっ…く…ぁあ…っ」
身体を割り裂かれる感触にもがき呻き、けれど十分に解されていたせいで痛みは感じないのか、上げる声には
やがて啜る泣く様な響きが混じり出す。

236海の記憶 8/9 :2011/07/18(月) 07:30:43.97 ID:ofpvV0SjO
一旦受け入れてしまえばすぐに淫蕩に溶け落ちる。そんな慣れてしまった身体を自覚するのが辛いのだろう。
再び噛み締めようと上がりかけた彼の手を、しかしその時自分は掴み抑えた。
「声を殺さなくていい。」
けれどそれに彼は首を微かに横に振って拒絶を示すから、続けてこうも告げてやった。
「俺が塞いでいてやるからいい。」
身を伸び上がらせ、重ねる唇。
繋がったまま更に深い奥を突かれ、悲鳴じみた嬌声が彼の咽喉を震わせるのを感じながら自分はこの時、
ふと彼に初めて口づけたのはいつだったろうと思った。
そうして記憶を手繰り寄せれば、それはあの戦場の夜を浮かび上がらせた。
心身共に追い詰められ、彼は当時目を閉じても尚、悪夢にうなされている事が多かった。
兵士達が横になるかろうじて屋根があるだけの場所で上げられる叫びは、周囲の苛立ちを呼び起こし、
それを防ぐ為に自分はかぶる毛布の下で彼の唇を塞いだ。
砂と埃まじりの薄暗い闇の中で交わすそれは必要に迫られた手段だった。が、
「……んぁ…あ…ぁ……」
役目を奪われた彼の手が、自分の肩の上に落とされる。
そして縋るようにしがみつくようにこめられるその指先の力を、今自分はたまらなく愛おしいと思った。
交わす唇の狭間から時折洩れる互いの荒い呼吸の向こうには、遠く海の音が聞こえていた。
寄せては返す波の調べはあの頃と変わらないのに、自分達はひどく遠い所まで来たのだと感じていた。


汗と蜜と吐き出した欲に塗れた身体を湯を張ったバスタブに浸ける。
そしてそれは彼だけではない自分もと踏み込むと、彼は少し戸惑ったようだがそれに何か口を開く事は無かった。
背後へと回り込み、彼を後ろ抱きにするようにして背をバスタブの淵にもたれさせる。
静かだった。
窓から差し込む光はもはやかなり弱く周囲に夜の訪れを告げていたが、白熱灯をわざわざつける気にはならず、
少し薄暗い浴室の中で、彼の肌に手ですくい取った湯を掛けてやる。
幾度も繰り返す、その行為に彼の緊張も徐々に解かれていったようだった。


237風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 07:59:30.30 ID:Vq7bbXhO0
思案

238海の記憶 9/9 :2011/07/18(月) 08:01:11.35 ID:ofpvV0SjO
「……テーブルの上に買ってきたもの出しっぱなしだ…」
やがて前を向いたままポツリと零された言葉に、自分の口元はほのかに緩む。
「後で俺が片づけておくよ。」
「…夕食の用意、何も出来てない…」
「それも俺がやるよ。なんなら風呂でたら近くの店で何か買ってくるか?」
「……いきなりあんなふうにされるのはもう御免だ。」
「……すまない。」
ズバリと言われ、即座に謝る。その素直さに彼のわだかまりは少なからず消えたようだった。
もたれかかってくる身体が不意に重くなる。預けてくるその肌を自分は湯の中で大切に抱いた。
「もうすぐ夏が来る。」
そうしながら話しかける。
「この家の持ち主がやってきたら、その間また旅行にでも行こう。どこか行きたい所はあるか?たまには街中に
出てもいいし、それとも避暑で山にでも行ってみるか。」
饒舌に楽しげに。それに彼はしばし考え込むような沈黙を落とすと、やがてこう返事を返してきた。
「海へ。」
聞こえたのは密やかに乞うような声だった。
それに自分は一瞬絶句しながら、それでもこの時懸命に「そうか」とだけ応えてやる。
彼が探している海は、きっとあの写真の中の海だった。
そしてあの写真を彼に渡したのが彼の恋人だったろう事を、自分は今日知った。
失くしたものを今も無意識に追い求める、そんな彼がひどく痛ましくなる。それでも、
「行こう。」
自分は言った。
「ここではない、どこかの海へ。」
湯の中、手の平で彼の腹の傷を確かめながら誓う。
「一緒に行こう。」
その場所に辿り着けば彼は何かを思い出すかもしれない。しかしそうなっても、
今の自分はただ、彼を愛していた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
やはり最後でひっかかり…色々手間取りすみませんでした。
感想ありがとうございます。面倒をみてくれた伍長の優しさだけが救いでした。

239風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 08:03:27.83 ID:ofpvV0SjO
>>237
支援ありがとうございました。

240風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 15:57:14.71 ID:hWnpAieq0
>>226.234
GJ!GJ!
あのラストはあまりにも悲しかった
せめて妄想の世界でくらいは安らかに生きてほしい

241風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 16:10:45.47 ID:F4vp+PbG0
>>226 >>234
ぎゃ〜〜〜〜〜!まさかこの映画がここで読めるとは!!!
しかも炉美ーに伍長が寄り添ってくれてる。・゚・(ノД`)・゚・。
本編の筋を崩さず新展開あり、かつエロを盛り込みつつ切ないとは・・・
姐さんスゴイよ。姐さんありがとう。

そして>>237姐さん、機転GJです!


242風と木の名無しさん :2011/07/18(月) 18:47:08.37 ID:U/VgxaAuO
>>222
ワロ萌えたwこの2人大好きだ。ありがとう!

243風と木の名無しさん :2011/07/19(火) 13:38:55.27 ID:YMfst1PT0
>>226.234
GJGJGJ!!
また中の人で書いてください

244風と木の名無しさん :2011/07/19(火) 21:03:52.86 ID:p5CpBAiq0
原作知らなくても萌える話が多いなあw
原作を知りたくなるっていうのは素晴らしい!

245反省会(1/2) :2011/07/23(土) 09:25:56.16 ID:4JIq5fvY0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
※モデルはいるがなんかもうオリジ。
※ヘタレ先輩×後輩。中途採用と新卒で同期入社とかだといいな。
※ヤッてもないし甘くもありません。

「あのね、愛想いいだけじゃだめだって、いっつもいってるでしょうが」
「う…」
「交渉するのがアンタの仕事でしょ?要求ぜーんぶ丸呑みでどうするんですか」
「わかってるけど…」
「『けど』じゃない。そういう曖昧なところが…」

『反省会』と称して俺の部屋に上がり込んだ後輩は今日も厳しい口調で説教を始めた。
一応、「恋人」という関係にある俺達なのだが、こと仕事に関して後輩はいつも厳しい。
プロジェクトでチームを組んでいる今はなおさらだ。
なにより、後輩の指摘はいつも的確に俺の痛いところをついてくるので言い返せない。
うっかり言い訳しようものなら口が立つ彼のこと、倍返しは目に見えている。
そんなわけで今日も俺はおとなしく正座をして後輩の説教を聞いているのだった。

…それでも、おあずけをくらった飼い犬のよろしく、説教のあとには甘い雰囲気のひとつも期待する俺だった。
が、しかし、後輩は言うだけいってすっきりするとあっさりと腰をあげた。

「じゃ、俺帰りますから」
「ええ?いや、せっかく来たんだから泊まっていきなよ。ね?」
「何言ってんすか。明日仕事でしょうが」
バッサリと切り捨てられて凹みそうになる。っていうか凹んだ。

246反省会(2/2) :2011/07/23(土) 09:28:39.05 ID:4JIq5fvY0
だいたいいつも俺はこの後輩のペースに振り回されっぱなしだ。
後輩はたしかに優秀だし、仕事もできる。しかし一応俺の方が年上なのだ。
先輩として男として(相手も男だけど)このまま言われっぱなしでいいのか?いやよくない!
「ちょっと待てよ!」
「ちょ…!」
立ち上がろうとした後輩の袖をひっぱるとバランスを崩して倒れ込んできた。
俺はこれ幸いとばかりにそのまま床に押し倒す。
「このまま言われっぱなしでなんか帰さないから…な…」
体格は俺の方が大きいから後輩には抵抗のしようがない、はずなのだが
あせるどころか思いっきり飽きれたような目で俺を見る後輩に強気だった言葉も小さくなる。
「…あんたに無理矢理やる度胸なんてないでしょ」
「そ、そんなことない!」
そういって無理矢理キスしようとする。唇が触れる寸前、後輩が口を開く。
「してもいいけど…そしたらもう口きかないっすよ」
「え!?…あっ!」

思わず緩めた手からするりと抜け出して、ほらねと勝ち誇ったような顔で笑う。
その顔が憎たらしいやらでもかわいいやらで、俺はひたすら敗北感だけを感じていた。


「じゃあ、お休み…」
がっくりしながらとりあえず玄関まで送ると、そんな俺の様子があまりにも情けなかったのか
後輩は飽きれたように肩をすくめてため息をついた。
「ほんと情けないっすね」
「う…」
「今日はかえりますけどね、明後日のプレゼンうまくいったら週末はつきあってあげますよ」
え、と顔をあげた瞬間、すぐ近くに後輩の顔があってびっくりする。

頬に触れたのが、唇の感触だと気づいたときには玄関のドアはもう閉まっていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イキオイデカイタ ハンセイハシテイナイ

247ジャケット 1/4 :2011/07/23(土) 21:58:56.74 ID:qMK08fvT0
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 危険刑事 嵩山←十流
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  マイナー。同士いるといいな
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

248ジャケット 2/4 :2011/07/23(土) 21:59:55.49 ID:qMK08fvT0
 煙草と、彼の体臭の一部と化している硝煙の匂いが染み付いた、仕立てのいいジャケット。
それが、ソファで窮屈に縮こまって眠っていた十流に掛けられていた。窮屈な体勢で眠っていた
せいで痛む体の節々に顔を顰めつつ、十流は見慣れたフロアを見回す。
 時刻は午前一時を少し過ぎたあたり。ジャケットの持ち主も、十流と一緒に当直を務めている
警ら課の警官も見当たらない。
 誰もいないのを確認して、十流はジャケットをそっと抱く。ゆっくり息を吸い込むと、肺が彼の
匂いで満たされる。そのことが少し嬉しくて、嬉しいと思うことに、酷い罪悪感を感じた。
 ――十流は、先輩と慕う男が好きだった。親愛よりも恋愛に近い感情で。
 勿論、最初は否定した。否定して否定して否定して、けれどどうしても否定し切れなくて、半ば
諦めるような形で、十流は自分の感情を認めた。
 しかし、自らの感情を認めたら認めたで、苦しくて悲しい気持ちが胸の中に広がった。何せ彼
と、もう一人十流が先輩と慕う男の絆は強い。誰もが認める女好きの癖に、どうかすると女性より
何より互いを優先してしまうような彼らを見るにつけ、胸がもやもやと苦しくて、痛い。彼にとっ
て特別な、意味のある人間はたった一人なのだと、残酷な現実を突きつけられるからだ。
 だから、ソファで眠っていた自らの上に掛かっていたジャケットが、少し嬉しかった。いつ彼が
ここにきたのかはわからないが、何も掛けずに眠っている自分にこうしてジャケットを貸してくれ
る程度には、彼にとって意味のある人間なのかもしれないと思えて。


249ジャケット 3/4 :2011/07/23(土) 22:00:24.35 ID:qMK08fvT0
「何だ、起きたのか」
「はぁ、今起きました」
 二本のポカリスエット片手に、彼がこちらに歩いてくる。外の自販機へ行っていたらしい。昼間
ならばコーヒーメーカーの中は満たされているが、こんな遅い時間には当然ながらあるはずもない。
自分で淹れるか、自販機へ買いに行くかの二択で、彼は手っ取り早く自販機に行ってきたらしい。
「ほら、やるよ」
 ひょい、と放り投げられたアルミ缶を受け取る。彼が自分の分まで買ってきてくれたということ
が嬉しくて、十流は小さく笑った。
「どうしたんですか? 今日は定時で帰ってましたよね」
「少し気になることがあってな」
 そう言う彼の机の上には、調書がいくつか置かれている。どうやら資料室から引っ張り出してき
たようだ。
「気になること、ですか?」
 ソファから立ち上がって、十流は彼の机へと歩み寄る。表紙に書かれた事件の名称に、十流は顔
を引きつらせた。どれも、吟製会絡みの事件である。それも、裏に同じ幹部が関わっていたのでは
ないかと目されているものばかり。


250ジャケット 4/4 :2011/07/23(土) 22:00:47.57 ID:qMK08fvT0
「先輩、これ不味いんじゃ……」
「だから夜中に戻ってきたんだろ」
 昼間にやると狸が煩いと、平然と言う目の前の男に、十流は何とも言えない気持ちになる。
彼のこういった行動が、今に始まったことではないとはいえ。
「あんまり危ないことしないで下さいよ」
「向こうが危なくするんだよ、向こうが」
「先輩が挑発するからでしょ」
「俺は真面目に捜査してるだけ。挑発して歩いてるのはアイツだろ」
「先輩も人のこと言えないと思いますけど」
 こと、吟製会絡みではどう考えてもこの男のほうがずっと相手を挑発して歩いている。
「ま、そういうわけだから。課長には黙ってろよ、十流。ジャケットも貸してやったし、それも
奢ってやったんだからな」
 途中からなんとなく予想がついたとはいえ、はっきり言われると胸の奥がかすかに痛い。目の前
の彼が、無条件に男に対して優しくしてくれないことくらい、分かっているくせに。
「やっすい口止め料……」
 小さく呟いて、十流は彼のジャケットを調書の上に置いた。

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ カッとなってやった。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

251風と木の名無しさん :2011/07/23(土) 23:54:31.49 ID:KLOnippV0
>>247
ありがとうありがとうもっとカッとなれください

252風と木の名無しさん :2011/07/24(日) 00:10:24.85 ID:xNYAMvXtO
>>246
萌えた!ヘタレ先輩かわいすぎる
ぜひとも週末もお願いします!

253風と木の名無しさん :2011/07/24(日) 01:04:21.23 ID:Kn1XbvkrO
>>247
はああああ!!
懐かしい&新境地に目覚めた!
トロい動物の横恋慕おいしいです

2541/2 :2011/07/25(月) 00:33:18.18 ID:jfV/4S740
オリ リーマン×リーマン
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「え、なにお前ホモなの」
臆面もなく言い放つのは、会社の先輩の粟谷だ。顔がでかいとは思っていたが、
皮まで分厚かったとはね、と思いながら泡の消えたビールをあおる。
カムアウトに勇気のいる人の方が多いが、僕にとっては何でもない。なにしろ
僕は顔が良いので、カムアウトした方が色々捗る。遠巻きに見ていた女の子たちが、
無害なハンサムと認識して懐いてきたり。なにしろ女の子たちには好かれていた方がいい。
「知らなかったんすか」
「え、俺痛いのはいやよ」
体をくねらせながら言う。キモチワル。
「嫌っすよお、俺にだって好みありますもん」
「えー、何なんか変に傷つくんだけど」
じゃあどんなのが好みなの、と聞かれ、僕は粟谷の隣で飲み会だというのに
烏龍茶を啜っている同期の内海君をちらっと見る。つまらなそうだ。
「内海君なら俺痛い方でもいいかなー」
へらへら笑いながら言う。
「はぁー?お前マゾか!」
この冷血漢のがいいとか!と周りに騒がれて内海君は心底嫌そうな顔をして
僕を睨んでいる。確かにマゾかもしれない。愉快になって声をたてて笑う。

2552/2 :2011/07/25(月) 00:34:01.79 ID:jfV/4S740

会計を済ませ、忘れ物チェックをして店を出ると、内海君が一人で立っていた。
「みんな帰った?」
「井園さんが潰れて課長がタクシーに乗せた」
「えー、で、内海君は待っててくれたの?やっさしー」
苦虫を噛み潰したみたいな顔で定員オーバーだっただけだ、と内海君は言う。
「お前なんでそんなヘラヘラしてんだ」
「何が?」
「粟谷の馬鹿にだよ」
「え?ああ、内海君はクローゼットの中だもんね」
にこっと笑いながらいうと、内海君の眉間のシワが深くなった。
カマをかけただけだったけれど、当たったらしい。
「しょうがないじゃん。ノンケなんかみんなあの程度の認識でしょ」
内海君は舌打ちをする。
「それに内海君の事を気に入ってるのはほんとだし」
「俺は嫌いだ」
「あ、ひどーい」
けらけら笑う。
「俺モテるし口堅いよ?」
さっき飲み屋の店員の子がくれた電話番号のメモで口元を隠しながら内海君を覗き込む。
さっきから当たりっぱなしの僕の勘では内海君は僕に惚れている。その証拠に
冷たい目は泳いでいるし、固く結ばれた唇は少し震えている。かわいーの。
僕はやっぱりサディストかもね、そう思いながら薄い唇にキスをした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

256風と木の名無しさん :2011/07/25(月) 10:56:42.16 ID:4RRlB1Vz0
GJです
文体好きな感じ
ちょっと誰が誰か分からないけど

257風と木の名無しさん :2011/07/25(月) 12:07:18.49 ID:9KVzWSfRi
>>247
まじでもっとカッとなってください!!
通るまじでかわいい……

258ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11 1/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/25(月) 21:10:19.07 ID:+czDGZGq0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )これで最後になるはずです!

バルドがいつか来るのを待っていた。それが殺す目的でもよかった。
「異世界の」
バルドが泣いているのがわかった。
声が、少し震えているからだった。
「あのロウッドとレインになろう。この世界で。だから、早く血を吸え」
一瞬彼の言っていることがわからなかった。
レインとロウッドは、異世界で永遠を分かち合う存在になった。
「バルド、馬鹿を言うな…」
ぐ、と、少しだけ力を込めてバルドの胸板を押した。
けれどそれより強い力で、バルドは夜桜を抱きしめた。
「ヴァンパイアになる方法はなんだ?血を吸うことだけじゃないのか?」
「!」
聞いたことがある。
人間をヴァンパイアにしてしまう方法。大抵は手下にするためだが、相手の血を自分の血と混ぜて相手の傷口に入れてしまえば、ヴァンパイアに六日でなる。
だけど、彼には仲間がある。
「できない」
夜桜は小さく首を横に振った。
「何でだ!!」
「バルドの人としての生を壊してしまう」
「馬鹿」
と、でこぴんが軽く夜桜の額に飛んだ。
驚いて目を白黒させる夜桜を見て、バルドはくすくす笑い出した。
「この寂しがりが。永遠にそばに誰かいてやらないとどうせ悲しむくせに。非行に走ったからにはちゃんと面倒見ないとな」
「でも、お前には仲間がっ」
「ああ、あいつらな、あの二人。結婚するんだ。だからあと一週間で仲間から外れるんだ。すでに家も購入済みだし、今後俺一人で夜桜探す予定だった。なんだな、一人になるとわかると寂しいもんだな、お前の気持ち、ま、このバルド様だから少しだけどな、わかるよ」
「…二人を祝福しないと」
にやりと笑うバルドを見て、夜桜は昔に感じた心の熱さを思い出した。
好き。ずっと好き。
一緒にいたい。

259ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11 2/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/25(月) 21:11:29.72 ID:+czDGZGq0
「バルド、一緒にいたい。もし私と共に人生を歩んでくれるのなら、本当にヴァンパイアにしてしまう」
「構わないよ」
それに、とバルドが続ける。
「久しぶりに抱きしめた夜桜、本当に安心した。俺が癒してやってるようで、俺も癒されていたんだなあー」
ほーっとため息をつくバルドを見て、夜桜ははにかんだ。
いちいち臭いセリフはくな、流石はバルド。
そこまで思って、あえて言わなかった。
「俺の宿来いよ。一緒に旅しよう。一人でずっと寂しかったんだろ、夜桜のことだから」
少し離れて、手を伸ばす。その手をとると、夜桜は立ち上がり、エルブンランスを手に取った。
血で黒くなったミストフードがやたら目について、それは夜桜の心からにじみ出た涙の血であることにも気付いた。
「これ」
荷物の中から、普通のローブを取り出した。神聖なローブは夜桜には辛いだろうから、先ほど寺院で購入した、買い物の依頼のローブを渡した。
「着て正体隠せ、警備員に見つかると厄介だ。どうせまた寺院行けば売ってる」
ローブを夜桜がとり変える。
人の目につかないところでローブを脱げば、一年前よりも擦り切れたあの服を着ていた。
「あとさ」
「?」
「もう、お前は夜桜って名乗って良いんだからな」
きついくらい手をつないで、宿までついていく。
「…うん」
少し頬を染めて、夜桜はバルドの方に頭を預ける。
一年ぶりに顔を出すと、仲間たちは驚いて声をあげた。そして名乗らない悪の英雄の正体も夜桜だということを、夜桜自らが話した。
それでも仲間たちは変わっていなくて、もうしないなら、と笑顔で夜桜の頭をなでた。すっかり髪はくしゃくしゃになってしまった。
「二人ともおめでとう」
夜桜は、手櫛で髪を整えながら、優しい笑みを浮かべ、仲間に告げる。この二人は結婚して子孫を作るだろう。
その夜桜の笑顔は、ついさっきまでさっきと悲しみに満ちていたものとは全く違っていた。
バルドはそれを見て、にこりと笑った。
「ありがとう。あなたたちもね」
返された言葉に、バルドが笑みを漏らして続けた。
「俺、もう人間じゃなくなるけど、それでも俺たち仲間だからさ。…夜桜もな」

260ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11 3/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/25(月) 21:12:24.87 ID:+czDGZGq0
「そうね…前から決めてたものね。あなたたちなら害をなすヴァンパイアにはならないと信じているわ。もしよかったら、私たちの子孫の様子、見守っててほしいなあ。ね?」
「そうだな、バルドと夜桜なら…それも良いな。たまに遊びに行くよ」
前から決めていた?
その言葉が夜桜に引っ掛かった。
夜桜は、バルドのひじを引っ張る。
そして何も知らないその赤い瞳で、バルドを見つめた。
「前から決めていた…って?」
ああ、とバルドは頷いた。
少し頬をかいて、夜桜の頭をなでた。
「お前がいなくなった一カ月くらいしてから、またあの異世界のロウッド達の話を読んだんだ。そこで覚悟決めたよ、夜桜を見つけたら、同族になろうって」
「バルド…」
「あーもー、男同士でそういうシチュエーションになるなら、自分の部屋で存分にやれ!!」
仲間に放り出され、二人はバルドがとった部屋に向かった。
扉の向こうで二人が手を振るのを見た後、夜桜は今までの自分の行いを恥じた。
二人でベッドの上に座って、バルドは夜桜の髪をなでていた。
「バルド、ごめん、バルドがそんなに思ってくれてたのに、私は…」
泣きだしそうな顔で謝る夜桜の唇に、バルドは軽く口づけする。
「元のお前に戻ってくれたなら良いんだよ、俺様は心の広い人間だからな。夜桜、ヴァンパイアにする前に、わがまま聞いてくれないか」
「…?」
そのまま、どさっとベッドに押し倒す。けれど、今回は覆いかぶさるだけで、無理強いしようという気はないようだった。
「俺に抱かれてくれ。お前だけをこれから抱きたい」
「…好き?」
まともに目が合うのが恥ずかしくて、夜桜は顔をそらしたが、抗うことはしなかった。
「愛してるよ」
濃厚な口づけが交わされる。ずっとほしかったもの、愛する人が、やっとこの腕の中に降りてきて。夜桜はその夜、バルドに抱かれることになった。ゆっくりとロープを脱がされ、服も脱がされる。バルドは少しじれているのか、息荒く服を脱ぐ。
夜桜の体は傷がなかった。
きっと今まで何度も傷を受けてきただろうが、驚異の治癒能力で治ったのだろう。それでも心はずっと傷ついてきたに違いない。
優しくバルドはもう一度、夜桜の耳に口づける。
肌に触れるたび、夜桜は戸惑った声を出したが、何度もそれを繰り返せば、甘い声に変わった。

261ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11 4/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/25(月) 21:17:32.66 ID:+czDGZGq0

夜が過ぎ、朝が訪れた。
結局夜は、夜桜は初めてだというのに、何度も何度も欲望をぶつけられて、半泣きですがりついてしまったのを覚えている。
痛いのか辛いのか、けれどほとんど最後の方は頭の中が真っ白になるほど、今まで味わったことのないほどの快楽を感じた。
腰のあたりがだるいまま、夜桜は朝に目を覚ますと、隣にバルドが眠っていることに気付いた。
隣、というよりその腕の中に抱かれている。
そこでもう一度確信する。
バルドと本当に心が通じたんだと。
「バルド…」
約束のことだ。
彼を、同族にする。
「…ん、ああ、夜桜…。体は大丈夫か?あー、昨日はすげーよかった。うん、よかった。優しくしたつもりだが、痛がっていたようだけど…おわっ!」
その言葉を聞いて、夜桜は反射的にそばにあったクッションで思いっきりバルドをひっぱたいた。笑いながらクッションを受け止める彼に、夜桜は少しむっとした顔つきになって彼を見る。
「本当に、覚悟はいいのか?ヴァンパイアになるのには六日かかるらしいぞ」
「知ってる、知ってる、何度も本で読んだ。ロウッドの時は重症だったからあれだけど、六日間目覚まさない間、もし仲間が去ってったら俺は無事だから、そのうち遊びに行くって言っといてくれ。善の英雄のバルド様がヴァンパイアなんて、変な気分だなあ」
夜桜の手に口づける。
その目は、早くヴァンパイアにしてくれといっていた。
力強い視線に、夜桜は覚悟を決めて、バルドが抱き締める中、首筋に牙を突き立てた。派手に血が出るほどでもない。少し流れる血を吸いとって、己の舌を噛んで、血を混ぜる。それを傷口に押し込むだけ。
 これでヴァンパイアになるのだろうか。
そう思いながら、その行為を繰り返すと、すとんとバルドから力が抜けた。慌てた夜桜はバルドを揺さぶったが、全く反応がない。
だが心臓はちゃんと動いているし、脈もある。
これが、ヴァンパイアになる過程。
 心を落ち着けて、夜桜は眠ったままのバルドのそばで、六日間、朝になると眠っていた。
それまで夜は何をしていたのかというと、バルドにもらった旅行記や世界に関する話を見ていた。
悪の英雄ヴァンパイアと、善の英雄バルド。
エルブンランスを手に取る。
それを布でふくと、少しだけ輝きが増した。随分とこのアイテムも血を吸ったものだ。

262ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11 6/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/25(月) 21:18:49.21 ID:+czDGZGq0
そして放っておかれているミストフードは本当に血で真っ黒で、何色かもわからない。
そういえば、異世界へ行ったことがない。
バルドがもしも目覚めたら、異世界に行きたい。できればあのカルアディアに。

六日が経過し、流石に心配した仲間がやってきた。
目をつむって横たわるバルドに、二人はやはり慌てた。けれどだんだんとヴァンパイアになっている気配がする。
「夜桜、バルドは」
「もうすぐ目覚めるはず…」
恐らくもうすぐ。外は驚くほど快晴で、木々がざわめいている。
と、がさ、と音がして、バルドの方を見た。
「バルド?」
手がわずかに動き、目が開かれる。青色だった目は赤に染まり、ゆっくりと起き上がった。
「凄いな、ヴァンパイアは。人間とは比べ物にならない力を感じる。なるほど、これならノーライフキングと互角に戦えそうだ。今日は何日だ?」
バルドは赤い瞳のまま、三人を見た。
力があふれ出る。スティールエナジーだってカードがなくても打てる勢いだ。けれどバルドは善人。
どれだけヴァンパイアという悪属性になっても、根っからの善人なのだ。恐らく人殺しはしない。
「六日経った。五月十二日だ。血はほしくないか?」
「きっちり六日か。血は、ほしくないな、ただ喉が渇いた、水がほしいな」
人間とヴァンパイアの中間なのだろうか。それでもバルドはベッドから起きると、水を持ってきた夜桜の頬を撫でた。
「一生一緒にいよう。寂しがり屋の夜桜のためだしな」
「バルド、夜桜大切にしろよ」
仲間の言葉に、バルドは笑みを浮かべて頷いた。
「大切にするさ」
それだけ言うと、世界地図を広げて、夜桜とどこに行くかで話し始めた。

そして半年がたつ。
バルドは相変わらず善の英雄として称賛され続け、ほぼすべての街で善の英雄になった。
一方名前のわからない悪の英雄は現れなくなったことで、半年がたてばすっかり話が上がらなくなった。

263ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼11 7/7 ◆cpNuNaN3vQ :2011/07/25(月) 21:21:35.10 ID:+czDGZGq0
二人は寺院に設置された冒険者用のゲートを前にし、手をつないで異世界へと旅立った。
目的地はカルアディア。ロウッドとレインのいる世界だ。
バルドは相変わらず甲冑を身にまとっていたが、夜桜は新調されたミストフードをかぶって、その世界を渡り歩いた。
イルタール、イレノンモのある世界、海より陸のある世界。
同じ世界もあるが、ずいぶんと違う世界構成の地図を見て、夜桜は歓喜の声をあげた。
来光都市に馬車でたどり着いた二人は、雑踏の中、ある二人とすれ違った。
「あ」
夜桜が、声を出してすれ違った相手の気配に気づいた。
明らかに気配が人間ではないことを、同じ種族である彼は敏感に感じ取った。
相手もローブをはおっていたが、精霊の槍を持った男だった。
ちらりと見えた目は、赤色だった。
「どうした、レイン」
その言葉に確信する。本に書かれていた、あのレインだ。
レインと呼ばれたその男は、立ち止まり、じっと夜桜を眺めていた。
意志の強そうな目は夜桜とは違うが、どこかやさしそうな表情は、今満たされていることがすぐにわかった。
「いや、私と同じことをする同族もいるものだと思ってな。善人と組むのも珍しい。行くぞ、ロウッド」
それだけ呟くと、レインと呼ばれた男はすぐにロマール戦士の元まで歩いて行った。
夜桜は去っていく彼らを見守った。
その夜桜の肩を抱きながら、バルドは宿屋に入っていった。
永遠の幸せと愛の始まりである。



終わり

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )終わりです。短編でアホみたいな小説ができたので、それもいつか公開したいと思います。
感想とか色々とありがとうございます!

264風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 03:00:51.13 ID:awEZHcBo0
もういいよ

265風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 10:47:25.15 ID:oRZ6iMyYO
乙です
楽しませてもらいました!

266風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 13:15:34.97 ID:BoBcdNNv0
サイトあるんだからサイトでやりなよ

267風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 14:23:10.22 ID:eofuWE3hO
何でそんな投下してくれる人が寄り付かなくなりそうな発言するのさ…

268風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 14:36:46.95 ID:Mqk0Tr7j0
サイト持っててもここに投下するって事は、自分のサイトに
人が来ないから少しでも人に読んで欲しいんだろう。
そんで自分のサイトに人が来たらいいなって思ってるんだろう。
まあ2を宣伝場所にする人はもれなく叩かれるもんだしな。エロ広告と一緒。

269風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 14:56:58.78 ID:Af7EG9/u0
>>267
ここ数スレで叩かれてるのって、>>263だけなんだよね
他の連載になってる人は叩かれてないし、単発の人も叩かれてない
連投のルールについては、書く側も見る側も議論である程度納得してるはず

とすると、連載してるから叩かれてるんじゃなくて、>263だから叩かれてるんだよ
コメントとかから感じ取れる、>>263の棚に対する考え方がみんな不快なんじゃないかな
叩いてる人は流石に1人2人だけじゃないと思うよ、時間帯もバラバラだし

だから他の投下者は気にしなくていいかと

270風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 15:02:14.37 ID:etwDKa0i0
連投ルールにも抵触してないのに考え方が合わないからって叩いていいの?
それを認めたら自分が投下したときも理不尽な理由で叩かれそうで怖いわ

あといくらでも自作自演できる場所で「みんな不快に思ってる」と言われてもw

271風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 15:08:35.64 ID:Af7EG9/u0
叩いていい、なんてどこにも書いてない

ただ、叩きのターゲットがここ数スレでは1人に集中してるってことは、
ここのところ時々議論になってた、連投してることそのものが問題なんじゃない、と思われるということ

つーか、今絡み見たらサイト持ちはほぼ確定なのね

272風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 15:15:38.31 ID:l84/3ad/0
サイト持ってても人こなくて、
ここに投下しても毎回叩かれてばかりって、
普通に実力が無いだけじゃね?

まあ、上手くても宣伝は勘弁してほしいけど

273風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 15:19:47.00 ID:ZEM1PYq40
サイト晒せば解決するよ

274風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 15:45:23.66 ID:pndyBImn0
自分もつい絡みで愚痴ってしまいましたが、とりあえずみんなで会議室行こうぜ!

275風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 16:05:44.42 ID:FBUQLIQr0
毎回毎回、会議室行こう、か、
他の人が投下し辛くなる、でうやむやで終わって、
また同じことやって絡みに迷惑かけるくらいなら、
いっそここでじっくり話し合ってすっきりした方がいいんじゃないのかね?
環境のせいで会議室はみれない人もいるみたいだし。
連投じゃなくて、連載のルールを新規に作るとかさ、
サイトがある人はなるべきサイトとジャンル違いか、
短編で頼む、とかさ。

276風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 16:38:26.96 ID:AZDlJbnl0
>>275
なんでわざわざ会議室なんて面倒くさい場を作ったか、
その経緯と意味合いを考えればそんな勝手な発言は出ないようにも思うけどなぁ…
ここはあなたのチラシの裏じゃないんですよ

277風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 16:44:53.26 ID:xtSMqbfL0
これだけ叩かれてもまた来る宣言ってすごいね

擁護してる人だって、この人を叩けばいずれ批判の矛先が
他の作者さんや投下してる自分自身にも向くかも知れないのが怖いって事じゃないの?
◆cpNuNaN3vQがうざいのは事実じゃない?

278風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 16:49:52.34 ID:Af7EG9/u0
>>276
>>275じゃないけど経緯を知らないので(その頃は801板見てなかったので)kwsk

279風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 17:00:23.84 ID:E/7e0jKt0
ルナ丼援護レスって単発IDばっかなのは何故なんだぜ

280風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 17:20:21.67 ID:1Plc/7nQO
サイトがあるとか書いてるひとがいるけどあるの?
いや、サイトアドレスを張ってくれとかじゃなくて
るなどん書いてる人が以前にサイトあるとかレスしたの?

281風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 17:24:12.59 ID:KRZrZKOW0
文章まんまぐぐったら出てきたからそれがサイトじゃないの


282風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 17:41:04.24 ID:pndyBImn0
>>280
ちょっと前に、元ネタが気になってヤフったら小説がヒットして、
棚を利用していてサイトを持っているというコメントがあったので間違いないかと。
そこには、サイトに作品を置きづらい理由がちゃんと書いてあったよ。

283風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 17:53:37.97 ID:T1IswZVQ0
>>279
お前がそう思うんならそうなんだろう
お前の中ではな

つか、ルール守って投下してる人を「気に食わない」って理由で難癖つけてる連中が
どうして自分が叩かれることには疑問を持つのか、がよくわからない

284風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 17:58:25.20 ID:T1IswZVQ0
それから「叩かれるのは本人に問題があるからじゃない?」も意味がわからない
「レイプ事件は、ミニスカートはいてた被害者にも原因がある」論法と一緒だと思うんだが

投下者に問題がある、といえるのは、ローカルルールに違反してるときだけじゃないのか
ルールに従っている人が、それでも気になって仕方がないのなら
投下者に難癖つけるんじゃなくローカルルールの変更を求めるのが筋だろう

285風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 18:20:02.09 ID:B64rA72nO
感想もらえないから棚に来てると言う憶測を見る度に、言ってる方も投下したのに
感想もらえなかった。なのにあっちは、なヒガミ根性な奴が騒いでるんじゃね?と思えてくる。
でなきゃ、毎回騒がなくてもトリをNGにしておけばいいだけじゃないか。
普通気に入らなければ読まない、で済む話なのに、それさえ出来ない奴が
一応ルールは守ってる相手にルール違反な絡み方して大きな顔って変な感じだ。

286風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 18:38:46.88 ID:upF9Xk7AO
サイトに作品を置きづらい理由を明記してるからって…だからってちょっとは考えてほしいわ
棚はルナ丼の人だけのものじゃないのに
テキスポにも同じ文章を投稿してるんでしょ?いわゆるマルチじゃないか

287風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 18:39:49.52 ID:3l53A0s30
本人が悪い訳じゃないが、
そいつが投下するとわらわら叩きが沸く
うんこと蠅みたいだなw

うんこがあるから蠅的には沸かざるをえないのよ!
っていう蠅と、
うんこは悪くない!寄ってくる蠅が悪い!っていううんこ大好きの争いw

288風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 18:42:08.80 ID:OJfCNI6U0
伸びてるからなにか新作投下かと思ったのに…(´・ω・`)ショボーン


289風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 18:44:12.62 ID:7RxUi6Oj0
感想でも投下でもないし、別の場所で話し合った方がよくないか?
それこそ他の人が投下しにくい

290風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 19:00:21.83 ID:T1IswZVQ0
>>286
「他所に投下した作品は、マルチとみなしますので棚への投下はご遠慮ください」
ってこと?

そのルールが必要だとあなたが思うなら、会議室でその提案をしたらどうだ
個人叩いたって意味ないでしょ

291風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 19:03:07.86 ID:T1IswZVQ0
>>289
ごめん

292風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 19:59:43.93 ID:xRlo8tZd0
>>282
サイトに作品を置きづらい理由って何?
自分自身のサイトに置けない作品を、それより開放的な棚に置く理由がわからない。

293風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 20:21:31.89 ID:pndyBImn0
>>292
今から会議室の方に書き込むので、そちらを見て下さい。

294風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 20:44:47.32 ID:VlqP/Eym0
つーかルナドンはもうサイトバレしてるんだから
続き読みたい人はそっちで読めばいいじゃん

マルチって2以前にネットのマナー違反だよ

295風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 21:03:34.97 ID:6BIZp2K10
別にマルチでもいいだろ…
問題はマルチじゃなくて同じシリーズで長期間投下し続けた事がウザがられてるんだろ?

296風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 21:07:18.84 ID:9wEjq50F0
つかもう今の状況のほうがよっぽど
他の人が投下しにくいことになってるから避難所でやろうや
叩きも擁護も「自演じゃないです><」っていいたいならそこでわかるだろ

297風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 22:47:52.49 ID:l1N6TnJl0
避難所見てみたけど、言い訳ばかりの自称低学歴で
嫉妬乙 ID:hWhdWHEw0と、
その ID:hWhdWHEw0に執拗に絡んで
ねちねち論破しようと必死なID:kMGUp0Wg0の
アホみたいなやり取りだけ目に付いてしまったwww

298風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 22:56:09.80 ID:uyzePcPX0
>>297
何が目に付いても、避難所の注意書きぐらいは読んでね
つ※ここでの意見・議論は棚スレや絡みスレ等、外部への持ち出しは禁止です※



299風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 22:57:38.48 ID:Q91Duy3kO
>>297
お前のアホみたいな報告いらねえから

300風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 23:10:09.19 ID:3Q55iD1XO
「ルナドン バルド」でぐぐったら1ページ目でテキスポが引っかかる
そこから投稿者のプロフィール→HPがわかった

てかサイトにBL置きにくいから801板書き捨ててるのかと思ってたけど
テキスポと二股なのな。マルチというか宣伝というか

あっちで「ここと棚保管庫に過去作品ありますから読んでね」言ってるから
本当の意味で棚扱いというか自サイトの別館気分で利用してる人なんだね
ガツガツした書き手さんだなあとちょっと感心した

まあ、ルール違反じゃないから別にいいけど

301風と木の名無しさん :2011/07/26(火) 23:22:32.25 ID:jgko2qbp0
>>295
それだって途中で指摘が入ってからは一定期間開けながら投下してたじゃん
間に別作品を幾つ入れて〜、なんてテンプレに明記されてないんだし

とりあえず、本人がどういうつもりでここを利用していようが、
現時点ではルール違反じゃない以上、投下乙でしたとしか言いようがないね

302風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 00:01:31.83 ID:7EWhE5IQ0
基地アンチが絡んでるようにしか見えないんだが
ルールに抵触してないならどんな投下しようが勝手だろ
嫌なら見なきゃいいんだし

303風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 00:09:38.23 ID:j58CQpTl0
ルール違反ではないが
マナーがなってない

法律に違反してないから逮捕はされないが、
マナーが悪いから村八分になってるのと同じ

304風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 00:33:30.68 ID:A6xbYeLJO
空気読めないのとルール読めないのなら、空気読めない方がマシだと良くわかった。
ルール違反してる方が正義漢ぶってるって滑稽以外の何物でも無い。

3051/4 :2011/07/27(水) 01:31:34.81 ID:Pu6hy0xw0
鬼組 夕凪×時広
マイナーですがどこかに投下したかったので棚失礼します

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「俺の犬になれ」
そう言われて、俺はアンタのモノになった。

白鬼に飼われ、見捨てられればきっと俺は死ぬ。
比喩ではなく其れは現実。鬼の炎に触れた、それは代償。
ご主人サマの機嫌を伺って、必要なら足の裏を舐めてまで、保護を願う。
「一時は緑鬼と呼ばれてた俺が情けないネェ」
自嘲気味に哂ってみても、今の状況は変わる筈はなく。俺に出来るのは諦めて今の状況をこれ以上悪化させない事。
そして、百鬼夜行が潰れるように白鬼に手を貸す事。
その為なら、辛酸だろうが足の裏だろうが、何だって舐めてやるさ。


「あっちぃ…」
焼け付く様な夏の太陽に焼かれ、目深く被った帽子を外し幾らかの風を自分の襟元へと送る。
冷房の効いたコンビニから一歩出れば、外は纏わり付くような熱気。引いていた汗が一気に噴出す。
グラサン越しにでも夏の太陽は眩しく、チカチカと俺の目を焼いた。
「やっぱ冷麺とかの方が良かったかなぁ・・でも、昨日の昼も冷麺だったしぃ〜
 白鬼もたまにはちゃんと食わないとな。部屋は冷房入ってるからまいいか」
そこまでぼやいてから、何で俺がアイツの食生活まで考えなきゃならんのだと深い溜息が落ちる。

何食おうがあいつの勝手…なんだけどなぁ
こうやって一緒に暮らしてると多少なりと気になってしまうものなんですよ。
って、誰に言ってるんだか。
「………げぇ!あの店員あっためた弁当と一緒にチョコも入れてやがるっ!!何考えてんだよあんアマ…っ!」
手の中のコンビニ袋の中には、温めた弁当と白鬼リクエストのチョコレート。
文句を言おうと振り返るも、コンビニの看板は既に遥か遠く。
本日二度目の溜息を落としてマンションへととぼとぼと戻っていった。

まあ、冷やせば食えるでショ。

3062/4 :2011/07/27(水) 01:33:00.85 ID:Pu6hy0xw0
「たっだいまぁ〜熱い〜。白鬼は鳥から弁当と白身フライ弁当どっちが好き〜?
俺としては魚が食べたい気分なんですけど〜…って、寝てんの?」
滝のように流れる汗を拭いながら、部屋に入ると広いベッドで白鬼は熟睡していた。
「ったく…人を炎天下にパシらせといて鬼かよ…ってまあ実際に鬼なんだけどね」
涼しげなクーラーの風にそよそよとあたりながら、気持ち良さそうに眠る様子は年齢より幼く見えて可愛らしい。
平均的な高校生の体型。大ちゃんよりは少し大きいくらいか。
このガタイで俺を地べたに叩き落とし、地面に吐いた自分のモノにまみれた俺を踏みつけた。

「寝てる時にすら殺せるとは思えねえんだよなぁ…」
それが四天王と元緑鬼の力の差か。

「黙ってればカワイイ顔してるんだけどなぁ …ってそう言えばこのヒト年下じゃねぇの」
一人ボケ突っ込みを駆使しながら、くうくうと眠る白鬼の顔を覗き込み、鬱陶しそうに顔にかかっている髪を指で退けてやる。
「白鬼〜?昼飯買ってきましたよ〜?」
「ん・・・」
「あ、起きました…ってぇ?!」
「妙な声出すんじゃねぇ」
妙な声を出すなってのは無理だ。肩を揺すぶっていた俺の腕を掴み、重力に任せてベッドに倒された。しかも男に。
この状態で『いや〜ん』とか言ってやる程俺はノリは良くない。ってか、白鬼も心境としては似たようなもんだろ?!
目が覚めて押し倒した相手がガタイのイイ野郎だったなんて軽いトラウマだ。

「大人しくしてろよ?」
そんな事を言われながら、下を向いていた筈の俺の体はあっと言う間に天井を向いていた。

「ちょっと〜?何寝ぼけてんすか?俺はオンナノコじゃないっすよ?」
「知ってる。こんなガタイの女はキモい」
そりゃそうだ ってじゃあ何でだよ!
「あ、あの〜…昼飯買ってきたんすけど」
「チョコは?」
「ありますけど…」
「さっさと寄越せ」
「この状態で?」
「犬の癖に逆らうのか?」
瞬間、眠そうな瞳が鋭く尖る。
その視線だけで、射殺されそうだ。
「ハイハイ。ご主人様」

3073/4 :2011/07/27(水) 01:33:32.35 ID:Pu6hy0xw0
腕を掴んでいた手が外され、ベッドから起き上がり床に置いていたコンビニの袋から
融けて柔らかくなったチョコレートを取り出してベッドに座ったままのご主人様に手渡した。
「飯食わないんなら俺先に食いますよ?白身魚食べたいんすけど」
「駄目だ」
「…じゃ、鳥でいいですけど」
「おあずけ」
「…俺は犬ですか?」
「犬だろ?」
「…解りましたよ、ご主人様」

ご主人様の命令は絶対ですから。
大げさに溜息をついて、犬らしくフローリングの床に腰を降ろす。冷房で冷えた床はひんやりとして、気持ちが良かった。

「時広」
「はい?」
見上げれば、ちょいちょいと手を振って自分の隣を指差している。
「なんです。溶けてないのは無いですよ」
「それはどうでもいい」
「…っなっ?!」
どうやら、俺は案外学習能力が低いらしい。
あっと言う間にさっきと同じ体勢。
しかも今度は白鬼完全覚醒バージョン。

「ちょ…これは、あんまり楽しい冗談じゃないんですけどぉ〜?」
「当然だ。本気だからな」
「俺みたいなガタイの女が居たらキモいっつったじゃないっすか!」
「女ならな」
「ちょ…マジ待ってくださいってっ!!」
「黙れ犬。ギャンギャン吠えるな」
「ーーーっ!」
ブチブチッ と音がして、俺のシャツのボタンが弾け飛ぶ。
あーあ。これ結構したのになあ…

3084/4 :2011/07/27(水) 01:39:53.06 ID:upgCd2EvO
「…まさか、今これからシようとか…思ってますか?」
「悪いか?」
「ちょ…っ今青が隣、ぅあっ!?」
ひんやりとした掌が肌を撫で、わき腹の辺りにゾクゾクした感触が走った。
完全に肌蹴られた胸元の火傷の跡をを、ゆっくりと長い指がなぞる。
「‥痛々しいな」
「炎鬼に迂闊に手を出したにしちゃ、軽いヤケドですよ」
「……」
「なあ、アンタ、死んだんじゃないの?」
胸のヤケドの痕に残ったでこぼこをなぞる指に身震いしながら、不意にそう聞きたくなって言葉が口をついた。
ベッドの中の睦言にしちゃ物騒すぎる。

「じゃあ。此処に居る俺は誰だ?」
「それが解んねぇんですよね。皆アンタを見れば白鬼だと認めるのに、皆口を揃えて白鬼は死んだと言う」
「じゃあ、俺は白鬼の亡霊だな」
「そんないい加減な…いってぇっ!?」
黙っていろとでも言うように、胸のヤケドの痕に突然噛み付かれた。

「抵抗しなきゃヨくしてやるよ」
「そりゃ御親切に」
男にヤられてよがる趣味はないんだけど

ないんだけど、俺だって若いし。
キモチイイことは嫌いじゃないし。
仕方ないよなぁ…キモチイイんだし。

「…はぁ」
「余裕だな」
「いえいえ、コレでも結構ギリギリなんすよ」
「余裕のないお前が見たいな。いっつもヘラヘラしやがって」
「じゃあ、あんたがそうさせてくださいよ」
「…ああ、そうだな。泣いて喚いて命乞いさせてやる」

コレは、夏の暑さの所為で頭がイカレたんだ。
そう思おう。

思わないと。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最後連投規制の事を忘れていました。すいません

309風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 02:29:20.11 ID:TUwNzHrZ0
はい次の人ー

310風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 07:23:02.59 ID:eAtJzlix0
会議室ID:hWhdWHEw0
=会議室ID:kCzTg4/c0
=るなどんの人

311風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 19:21:17.52 ID:04dHMZFm0
まとまったので報告

・ルナドンの人はルール違反はしていません。だから何も悪くない
 いちゃもんつける人が荒らしなので原則まま、>>3でスルー
 (仮にルールを改定したところで、荒らしは屁理屈をこねるでしょう。
  絡み禁止でも荒らしがルールを守るわけはありません。
  相手をしたら調子に乗らせるだけです。
  つまらないネタの一つだと変換して>>3スルーしましょう)

・マルチ投稿・別館扱いの是非については「個人サイトの管理人」の話なので
 棚でどうこう議論するものではありません
 字書きとしての姿勢に文句をつけたい人、義憤にかられるような人は、
 本人のテキスポなりサイトなりで、直接コメントなりメールしてください
 棚で文句を言うのは意味がありません

・「外部で棚および保管庫の宣伝をしてほしくない」はナンセンスです
 2chに書き込んだ以上、コピペブログなどに転載される可能性はあります
 801板外部で晒されるから投下したくないという人こそ、個人サイトを作るべきです

※外部サイトで棚の宣伝する人の良識については、前述と同じ個人の話であり
 棚で議論することではありません
 文句がある人は当該サイトやブログで直接コメント・メールしてください


312風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 19:24:29.38 ID:04dHMZFm0
あなたの理屈はただの個人叩きの後付ではありませんか?
気に入らない投下者を叩きたいという感情から、理由を考えていませんか?
本当に議論したいのですか?他人の意見を聞き入れるつもりはありますか?
一方的に文句を言いたいだけではないのですか?

「あの人気に食わない!!ほら見てよおかしいでしょうみんなで叩こうよ!!」
そう思われるのが本意ではないのなら
どうぞ感情的でなく建設的、かつ「棚」として議論の価値がある提案を
棚保管庫の会議室で行ってください

以上

313風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 19:49:44.49 ID:LKzgm6tUO
はい次の人ー

314風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 19:52:27.90 ID:FmAiHkGO0
なんかすげームカつく書き方だな
何でこんな必死なの?

315風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:06:54.89 ID:3wsjoyUo0
>>311
まとめありがとーとても分かりやすいよGJ!

嵐もいちゃもんも全てスルーで
次、いってみよう!

316風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:07:53.54 ID:D5WisaRR0
避難所でいろいろな意見が出てるのにヒステリックな噛み付きだけで
「まとまったのぉおー!!」と勝手に仕切り
自分に都合のいい意見だけ勝手に抽出して
勝手に「まとまりましたぁぁ〜ん!」と絶叫してるあたりに
必死さと図々しさが滲み出てるよなー

317風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:11:06.68 ID:6LnTAhUX0
>>314
他のスレにもいるみたいだから、ウンコには触らない方がいい

>>305-308
次に行く前にGJ!

318風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:12:39.76 ID:FmAiHkGO0
>>316
同意
避難所見て来たが、長文で噛みつきまくって上から目線で説教してた奴だろうけど
あまりの噛みつきぶりヒスぶりにみんな引いてるだけじゃんか
それでまとまったとかって図々しい。何様だよ

319317 :2011/07/27(水) 20:23:51.29 ID:6LnTAhUX0
あ、もしかして>>314>>313のことを言っているワケじゃないのかな?
私も完全に納得してはいないけど、これ以上議論しても平行線のままな気がしてしまうんだ。

320風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:28:38.77 ID:T2RcbZ9s0
>>319
同じく、あれ?もうまとまったことになったの?とは思ったけど
おおむね同意できるから私はアレでいい
正直最初からルナどんの人に一人か二人の粘着さんがついてる
だけって認識だったし


321風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:30:54.36 ID:D5WisaRR0
「二重投稿の是非」「個人サイトでの棚スレの宣伝について」
「棚を自分の書庫として使う事の是非」「問題提起はどこでするべきか」等々
少々堂々巡りになっても話し合いたい議題はあったけど
あんな風にヒステリックな人が「とにかくアテクシが正しくてアンタが間違いよウギイイイ」と
喧嘩腰で噛み付きまくった上に「アテクシの考えが総意でまとめでルールだからギャー!!」と
絶叫しながら勝手にまとめるんじゃ、>>319とは別の意味で話し合いなんか無駄だわ

322風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:41:20.64 ID:IZb5qb1ZO
>>321
少し落ち着きなよ
あなたも相当ヒステリックになってると思うよ
そもそも避難所の長文の人とここにまとめ投下した人が同一人物とは限らない

323風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:44:13.31 ID:6LnTAhUX0
>字書きとしての姿勢に文句をつけたい人、義憤にかられるような人は、
>本人のテキスポなりサイトなりで、直接コメントなりメールしてください

>文句がある人は当該サイトやブログで直接コメント・メールしてください


この部分に関しては「文句がある人はサイトに凸していいよ」って意味としか
思えなくて反対なんだけど、もうどうしたらいいかわからないや。

324風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:46:06.09 ID:3wsjoyUo0
えーもうこれ以上の議論なんてそれこそ無駄でしょう
つか別に避難所の掲示板を閉じたわけじゃないんだから
まだ議論したいなら、そっちですれば?

325風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 20:55:27.34 ID:WhkhAXAE0
>>324
貴方のような自演ヒステリーおばさんが管理人でも何でもないのに
勝手に仕切って自分の考えを「総意」にしちゃうんだから
避難所で議論なんかしたって何の意味もないじゃないですかw

326風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 21:20:39.22 ID:mJ6CcRrZ0
最初から、というか前々からこうやって揉めるたびに
タイトルなりトリップなりをNG登録してあぼ〜んすりゃいいだけの話でないの?派だったので
>>311で別に文句ないな

327風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 21:36:55.37 ID:MN9krbI40
避難所の長文の人です。スレ汚しに加担してしまったみたいで申し訳ない。
自分は「あれ?」と思う言い分についてふつうに反論しただけで
他の話し合いはちゃんと進行してましたし、そこに関して邪魔はしてないですよ

328風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 21:44:54.79 ID:KvbeY4V/O
自分もまとまったなんて微塵も思っちゃないが、
なんにせよ納得いかないって言いたいなら避難所こい

329風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 21:50:32.50 ID:abtcEM/00
まだやんのかよう
かといって私自身は投下するSSもないが

330風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 21:58:02.78 ID:T2RcbZ9s0
>>327
どの長文の人かしらんが乙
避難所の方には別にヒステリックな人は見受けられなかったと思うよ

331風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 23:00:27.43 ID:2npi2WNiO
>>327
普通に反論しただけ…?えぇー…

332風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 23:24:47.22 ID:CzWZuSiQ0
避難所見てないからわからないが、このまとめに何の問題があるのかわからん
どうしても見たくない投下あるならならNGしろよ
イチャモン付けてる方がよっぽどスレの空気悪くして投下しにくくしてるって自覚ないのか

333風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 23:34:53.60 ID:Zvw/HQed0
めんどくせーなー、おまいらw

334風と木の名無しさん :2011/07/27(水) 23:59:08.02 ID:VXK+51on0
>>323
避難所にすら来ずに巨大掲示板の匿名性でしか吠えられない人達は
ユーザー登録するテキスポや、接続元が管にバレバレのサイトに凸して
ネガティブコメントする勇気は持ち合わせてないので杞憂ですよ

335風と木の名無しさん :2011/07/28(木) 00:16:38.38 ID:07SrybuuO
いちROMの分際ででしゃばって申し訳ありませんが、
まとまってないのなら、こちらで喧嘩をせずに、もう一回避難所で話し合ってから報告にきてください

336ねた :2011/07/28(木) 19:56:08.35 ID:jG8xsWYp0
愚痴


結局、某ID=某IDの避難所長文さんは
夜中も朝方も昼間も、話しに来た気にいらん意見を
ネチネチ全否定するだけだったな
書き込み→長文で反論の繰り返し・・…
本人の言うとおり本当に反論しかしてなくてうわぁ

批判が感情的とか言いながら、自分も先に感情からくる理詰め攻撃だったし
相手の心理をゲスパーしてわざと厨くさいセリフに仕立ててみせたりさ
あれこそ感情的な煽りだろ。それとも天然であれ?

ちょっと冷静ぽいレスがくれば「保管庫>棚で考えてるあなたが変(すりかえ」
「それは棚で議論すべきことではない(キリッ」


投下の人の方はどうでもいいしルールも現行でおkだったが
ROMりにいってあの長文の方にイラついたのがなんだかな
賛成だけどお前には賛同したくねー



337風と木の名無しさん :2011/07/28(木) 20:59:31.35 ID:6pgpivPh0
>>336
つチラシ

338風と木の名無しさん :2011/07/28(木) 21:56:00.23 ID:SRWwjbPT0
>>337
つチラシからの転載

339風と木の名無しさん :2011/07/28(木) 22:07:05.16 ID:s+mRoqac0
※ここでの意見・議論は棚スレや絡みスレ等、外部への持ち出しは禁止です※

340風と木の名無しさん :2011/07/28(木) 22:10:13.36 ID:6pgpivPh0
>>338
うわ。本当だごめん
見事に釣られてしまった…orz
ここまでが一連のネタという事で、どうかひとつ

341風と木の名無しさん :2011/07/29(金) 01:43:30.48 ID:Q1otBSqS0
>>305
亀だけど姐さんありがとう本当にありがとう
まさか今このスレでブラ男受けが読めるとは思ってなかった
時広が焼かれるシーンはエロかった
ここが2でなければ砂糖の塊みたいなケーキを肴に飲み明かしたい
犬になれ発言と男三人の公式同棲おいしいです

342風と木の名無しさん :2011/07/29(金) 01:56:23.41 ID:YIEtmczAO
自演乙

343風と木の名無しさん :2011/07/29(金) 03:14:47.81 ID:6rmy2Y6O0
なんでやねんw


344風と木の名無しさん :2011/07/29(金) 10:23:16.25 ID:YIEtmczAO
>>341
スレの流れも読めない絡みスレを荒らしたバカ

345風と木の名無しさん :2011/07/29(金) 11:32:06.53 ID:4gTgIRcwO
またにぼしや棚受みたいな面白く空気を一掃出来るような神作品はこないもんだろうか

346風と木の名無しさん :2011/07/29(金) 12:37:43.17 ID:qEKjOvz+0
まだ議論板状態だったんかい。
別にモトになったルナドンなんて、ここでしか見てないし、わざわざ突っ込みしてた
人みたいに検索して探したいって気もないから、どうでもいいです。
個人的神作品は、猿と蚤のヤツだったな。まぁ、数字的じゃなかったけど。

347風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 01:42:52.80 ID:FoDm4/UJ0
なんだこのクソスレは…

348風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 01:43:52.61 ID:Qpmc3jrG0
カディカディアル
コーディコディアル
セレディセレディアール
ホファッカホファクカード

349風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 01:44:28.98 ID:Qpmc3jrG0
すいません誤爆しました

350風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 07:09:11.28 ID:f0TzQLku0
怖いわww

351風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 11:28:43.76 ID:AM0v5y2hO
晒しage

352風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 12:52:47.13 ID:KIaYu72c0
なにこここわい。/(^O^)\

353風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 14:29:03.33 ID:kwzJM2q0O
ヲチ板の晒せにもここのこと書いてあるが

354風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 15:09:18.73 ID:oqR9sFHc0
夏ですなあ

金鳥の夏 日本の夏

355風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 23:36:53.15 ID:TCtaJhlv0
キタンクラブ単行本復活記念
単行本巻末の話の捏造後日談
ぬるいけど小×雅エロ有り 人外君が淫乱気味です。注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

356「妖香」1/5 :2011/07/30(土) 23:38:22.81 ID:TCtaJhlv0
もう何年も打ち捨てられ、朽ちかけていた古い洋館の、灯りの全く無い部屋へ、割れた窓硝子から青白い月の光が差し込み
久方ぶりに帰宅した、この荒れ屋の主の姿を、夜の闇の中にぼんやりと浮かび上がらせている。
埃だらけの寝台に腰掛けて、夜空を見上げている姿はどこか朧で、そのまま闇に溶けていくかのようだった。

この荒れ果てた部屋を、不承不承に片付け始めて、もう何時間たったのだろう、と、小介は、片付けの手を一旦止めて、
暗い部屋の中を見渡してみたが、時計などあるはずもなく。
壊れて歪んだ窓枠の向こうに、高く上った満月を見て、そろそろ夜半を過ぎた頃だと知った。

「おい」
小介の手が止まっているのを目ざとく見つけたこの廃墟の主――久我雅夢が非難めいた声をかける。
「休むな」
雅夢の居丈高な物言いには、随分慣れてきたとはいえ、まだ日のあるうちから何時間も、この蜘蛛の巣だらけの部屋を
片付け続けてきた小介には、聞き流すことなど出来る筈もなく、額に青筋を立てて大声で言い返した。
「だからっ!『片付ける』なんて段階じゃねーって言ってんだっ!!」

小介は、持っていた雑巾を床に叩き付けると、ドンドンとわざと大きな足音を立てて、雅夢に詰め寄った。
「見ろ!昼間っからこんなに汗だくになってやっても終わらねーってのに、これ以上、この電燈も無い部屋を、
 どーやって片付けろってーんだっ!!!」
そう言って、腕まくりをして露わになった二の腕を、雅夢の鼻先に突きつけた。
「確かに、汗臭いな」
匂いを確かめるように、雅夢は、すんっと鼻を鳴らした。

357「妖香」2/5 :2011/07/30(土) 23:40:31.90 ID:TCtaJhlv0
汗ひとつかかず、涼しい顔をしやがって!と、小介が憎々しげに言い募ろうとした、その時。
雅夢の僅かな雰囲気の変化に気が付いて、小介は言葉を詰まらせた。
普段なら、刺々しい空気を身に纏い、何者も近寄りがたい雰囲気を漂わせている雅夢が、ふいにその気が緩んだように
周りの空気を解していき、あまつさえ、どこか誘うようなとろりとした目つきで、ゆっくりと座っていた寝台から身を
伸ばし、小介の方へと顔を近づけていく。

小介の襟元を、くんくんと犬が匂いを嗅ぐようにして、雅夢が低い声で囁いた。
「…好い匂いだ…」
そうして口元を歪ませると、小介の鎖骨の辺りを、紅い舌でぺろりと舐め上げる。
「ぅ、わっ!」
反射的に身をすくめた小介の耳元に、雅夢がまた囁きかけた。
「フェロモン、というのを知っているか?」
「はぁ?」
およそこの場には的外れな、聞き覚えの無い単語を耳にした小介が、頓狂な声をあげた。

「『刺激を運ぶもの』の意だが、一般には発情を誘発させる物質と言われている…」
と、そこまで言って、雅夢はくっくっと、さも可笑しそうに笑った。
「『発情』など、僕には無縁の事だと思っていたが…」
そしてまた、小介の耳へ、吐息を吹きかけるようにして囁く。
「…どうやら、僕にとって、お前の体臭がそうらしいな・・・」
艶かしい吐息を耳の中へ吹きかけられて、思わず首をすくめた小介の襟首を、雅夢が片手でぐいと掴んだ。
そして、その細腕からは、思いもよらないような強い力で、さっきまで自分が座っていた寝台へと、小介の肉付きの良い
体を投げ倒した。

358「妖香」 3/5 :2011/07/30(土) 23:49:16.38 ID:TCtaJhlv0
「っ、痛ぇじゃねーかっ!なにしやが…っ」
固い寝台に放り投げられた小介は、すぐに片肘を付いて起き上がろうとしたが、覆いかぶさってきた黒い影に阻まれた。
黒い影の中で、なお一層暗い、それでいて艶やかな雅夢の髪が、小介の頬にかかる。

「お前にとって・・・僕は、どうだ?」
小介の鼻先には、雅夢の青白い首筋があって、そこから微かに不思議な匂いがした。
「ぁ・・・?」
体臭と言うには、それはあまりにも甘く好い香りで、それを深く吸い込んだ途端、小介は軽い眩暈を感じた。

くすりと、雅夢が薄く微笑った。

雅夢の白くて長い指が、小介の目の前で、己のシャツのボタンを一つ一つ外していく。
ゆっくりと、挑発するように肌蹴られた雅夢の胸元からは、またひどく甘い匂いが立ち上って、小介の鼻を擽る。
その匂いは、小介の頭の芯を痺れさせ、惹き込むように、彼を酔わせていった。

昼間からの片づけでの疲れと、夜半を過ぎた事による眠気と、そして殊の外、噎せ返るような甘い匂いに包まれて、
ぼんやりと、頭の中に霞がかかった様になった小介は、もう何も考えられず、ただ、己の目の前の、妖しいほどに白い
肢体へと、我知らず震える手を伸ばし、本能のままにかき抱いた。

359風と木の名無しさん :2011/07/30(土) 23:50:00.93 ID:QXqVr/7A0
支援

360「妖香」 4/5 :2011/07/30(土) 23:52:54.33 ID:TCtaJhlv0
お互いがお互いを求めながら繋がった体は、燃えるように熱く、小介は意識を彼方へと飛ばしてしまいそうになる。
自分は、夢を見ているのかもしれないと、虚ろな意識の中で、小介は思った。

これは、夢だろうか…そう、夢だ。
夢に違いない。
でなければ―――

組み敷いた白い肢体が、こんなに艶かしいはずがない。
重ねた体の感触が、今まで抱いたどんな女よりも気持ち良いはずがない。
なによりも、月光の下、薄蒼く照らし出された雅夢の横顔を、こんなにも、美しいと思うはずがないのだ―――

夢現の中で、至上と呼べるほどの快楽を味わいながら、小介はいつしか眠りの淵へと落ちていった。

361「妖香」 5/5 :2011/07/30(土) 23:54:14.06 ID:TCtaJhlv0
翌朝。
体中に違和感を感じて、小介は目を覚ました。
全身に残る、気だるさとは別の、どうにも耐え難いこの感覚は…
「痒〜〜〜い〜〜〜!」
固い寝台から、跳ね起きた小介は、ぼりぼりと体中を掻き毟った。
よく見ると、体のあちこちに赤い痕がある。
これは、昨夜の情事の痕などという艶っぽいものではなく。

「こんなダニや蚤だらけの部屋で、寝穢く眠りほうけるから、そんな目にあうんだ。阿呆」
冷ややかな文句を背中に浴びせられ、むっとして振り向けば、そこには既に洋服をきちんと着込んだ雅夢が立っていた。
「お前は、平気なのかよ!」
掻くほどに増す痒みに苦悶しながら、小介が問いかけると、雅夢は、ふんっと鼻で笑った。
「僕の血は、猛毒だ。それを知ってか知らずか虫どもは寄ってもこない」
そう冷たく言い放つと、壊れて開け放たれたままの扉から、朝尚暗い廊下へと出て行こうとする。

「お、おい!」
小介は、床に脱ぎ散らかされたままの着物を拾い、大急ぎで身に着け始める。
そんな姿には一瞥もくれず、つかつかと部屋を出て行った雅夢が、数歩進んだところで踵を返して、いまだ皺だらけの
着物と格闘している小介に、一言、声を投げた。
「片付けの続き」
がくりと、小介が頭をたれた。
それを了承と受け取ったのか、雅夢はまた廊下を玄関のほうへと歩き始めた。

「頼むから、建て替えるか、引っ越せ〜〜〜〜!!」
小介の心からの叫びは、空しく、朝の光の中に消えていくのだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
支援、ありがとうございます。
連投規制で、投下に時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。
お後がよろしいようで。

362風と木の名無しさん :2011/07/31(日) 00:31:23.07 ID:y7hxWYTRO
>>361
おう懐かしい
ばっちりあの絵で情景が浮かびました
淫乱強気人外さんに萌えたー
GJでした!

363目高箱 王⇔行 :2011/07/31(日) 02:47:21.42 ID:sII2Fbb90
飛翔の目高箱で王⇔行な感じ
コミクス一気読みしたら今更この二人にはまってしまった
どうにも萌えて仕方がないので棚をお借りします

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

僕は王土の側が好きだ。

彼の側にいれば、余計なものは何も聞こえない。
ただ
ひとつの強烈な意識だけ。


『俺』


情報の海で溺れそうだった僕を救ってくれた王土。

出会ってからずっと、自分の事しか考えない王土。

その大いなる意識に守られてきたけれど
僕は
ちょっと淋しかった。

364目高箱 王⇔行 2 :2011/07/31(日) 02:49:23.57 ID:sII2Fbb90


でも、このごろ少し変なんだ。

王土の心から「俺」以外の言葉が時々聞こえるようになった。

それはとても小さくて、うっかりすると聞き逃しちゃうけど
でも
それが聞こえると、僕はすごく嬉しくなるんだ。

だって
それは、僕の名前だから


『行橋』


それは、本当に時々で。
時間にしても、一瞬の事だけど
僕の頭にあるアンテナは、ちゃんとそれをキャッチしてくれる。

この「異常性」があって良かったって思える日が来るなんてね。

365目高箱 王⇔行 3 :2011/07/31(日) 02:51:10.80 ID:sII2Fbb90

なんだか可笑しくって、ふふふって小さく笑っちゃったら
また
僕の傍らから聞こえてきたんだ。


『行橋』


だから僕は、つい、王土に言ってしまった。
「僕は、王土の側が、好きだよ」

そしたら王土は、少し驚いたような顔をしてこう言ったんだ。
「それは違うぞ。行橋」

「お前は、『俺』が、好きなのだ」

・・・うん。そうだね。
僕は王土が好き。大好きだよ。

だから、ずっと側にいる。
ずっと
ずっと
君の側にいるよ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

366風と木の名無しさん :2011/07/31(日) 02:55:22.44 ID:HlUCA8zb0
>>321>>325>>336

>今後問題が出てくるにしても、今回絡まれてる人はルール違反してないし
>こっちでひとつひとつ反論されて、つける文句も無くなったら
>本スレで「ネチネチ絡んでくる」とか印象操作しようとするあたり、
>結局「自分の気に食わないやつは投下するな」ってことでしょ?


367風と木の名無しさん :2011/07/31(日) 05:38:52.02 ID:aZr2Q9Oh0
>>366
※ここでの意見・議論は棚スレや絡みスレ等、外部への持ち出しは禁止です※

368風と木の名無しさん :2011/07/31(日) 08:08:05.33 ID:eAXNEqZrO
ネットwatchから来ました
ここが801ですか

369風と木の名無しさん :2011/08/01(月) 12:34:27.45 ID:SmW/pMsb0
>>254-255
遅感想ゴメソですがこういうの好き
動揺してる内海君可愛いよ

370風と木の名無しさん :2011/08/05(金) 16:48:25.97 ID:WYUNs1DVO
>>263
萌えてしまいました
短編楽しみに全裸待機しています

371Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 1/8 :2011/08/05(金) 17:56:30.66 ID:8mmU2Cq+0
殺し屋さんの不良少年と不良中年の同居話。今回も年下視点です。
年上×年下を書いていたはずなのに、いつのまにかリバになっていた。な…何を言っているのか(ry
先月のバックステージや2巻のカバー裏のネタなんかを元に色々と捏造しています。
当方、単行本派なので本誌の展開はうっかり見ちゃったネタバレ以外知りません。

※注意(苦手な方は回避して下さい)※
元ネタに沿った残酷な表現があります。特に、食事中の閲覧はご遠慮下さい。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 首折り男の一件が片づいた後、チクタクに事務所兼自宅のマンションを爆破されてホームレス状態、オマケに
チクタクとの戦いを十日間止めるために岩西が元々持ってた五億、軍隊蟻どもを駆除するのに令嬢(フロイライ
ン)の寺原とかいう社長と命がけの交渉をして投資させた二億、全部で七億の大金を使い切って軍資金ほぼゼロ
の俺達は、しばらくホテルで暮らしてから、業界の組織のものじゃないフツーのマンションの二階に住み始めた。
前の事務所みたいな部屋を借りるためには、たくさん金がいるんだってよ。
 軍資金の調達といえば、チクタクを敵に回した俺達が死ぬと決めつけてた岩西の知り合いの金貸しの連中だけ
ど、岩西がチクタクを壊滅させたことを知ったとたんに手の平返してあいつにすり寄ってきた奴らは「今後とも
ご贔屓に」とか言っておきながらほんのちょっとしか金を貸してくれなくって、岩西の方から連絡した奴らは
「金のことに関してはお前を信用してるが、今のお前には一円たりとも貸すつもりはない」って言ってホントに
一円も貸してくれなかったらしい。
 「一年だ。俺との同居生活を一年だけ我慢しろ。一年以内には、岩西事務所を建て直して、お前が一人暮らし
する部屋を借りるための名義人を買ってやる」って俺に言った岩西は、殺し屋を必要としてる人間の情報を桃か
ら買って、俺達のマンションじゃないどっかで依頼人と契約を結んで、標的(ターゲット)の調査をして、俺に
仕事を殺らせてる。仕事の書類はいらなくなったらすぐに処分して、必要なもんは岩西曰く「どんな天才鍵師で
も絶対に開けられない金庫」にしまってある。

372Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 2/8 :2011/08/05(金) 17:58:28.06 ID:8mmU2Cq+0
 フツーのマンションの二階に住んでるから、当然、近所の人間はフツーに俺達に話しかけてくる。そんで、俺
達は義理の親子のフリをすることにした。クソ西のこの提案を聞いた時は「テメェみたいなインテリヤクザの子
供だと思われるなんて冗談じゃねえぞ! どんな羞恥プレイだ!」って殴りかかったけど、「俺だってこんな非
行少年の親だと思われるなんて恥ずかしい。この設定以外で、どうやって俺達の関係を説明するんだ?」って聞
かれて、頭使って考えてみたら俺もやっぱり親子が一番しっくりきて、しぶしぶそれに決まった。俺達は「松尾」
って偽名を使ってる。「松尾芭蕉」っていう有名な詩人から取ったらしい。まあ、偽名っつっても「蝉」って名
前は岩西がつけたあだ名みたいなもんだし、「岩西」って名前も、あいつが親から受け継いだ名字じゃないのか
もしんねえけど。
 引っ越しの近所へのあいさつ回りに付き合わされた時、隣人の家庭持ちのサラリーマンに「お仕事は何をされ
てるんですか?」って聞かれた岩西が平然と「しがない医者です」と抜かした時は、このオヤジは頭のいいフリ
した大バカヤローだと思った。あんなイヤらしそうな医者がいてたまるか! うさんくさい昆虫顔が、あの闇医
者に教えてもらったイリョウ用語を使って日本のイリョウ問題とやらについてべらべらしゃべったおかげで、金
しか信じられない男をサラリーマンはすっかり信じ込んだ。人の命を助けんのが仕事の医者が、本当は他人を使
って人の命を奪いまくってきた殺し屋のマネージャーだってわかったら、どんな顔すんだか。ちなみに、俺はコ
ンビニ店員ってことになってる。どうせなら、俺の設定も頭が良くなきゃできねぇよーな職業にしやがれっての。
 万が一、俺達の身分を疑う奴がいてもニセの身分証明書があるし、俺達が働いてるってことにしてあるマンシ
ョンから遠く離れたところのコンビニと病院に直接問い合わせても、岩西が手を打ってあるから俺達の正体がバ
レることは多分ない。

373Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 3/8 :2011/08/05(金) 18:00:23.59 ID:8mmU2Cq+0
 今日のターゲットは、定年間近の刑事だった。それ以外のことは知らねェ。岩西がタレ込んだガセネタに騙さ
れて、誰も住んでないボロアパートの二階で張り込みをしてた刑事のじーさんは、合いカギで部屋に入った俺が
ナイフを抜いたと同時に拳銃を抜いて、銃口を向けながら俺を説得しようとした。そんで俺とちょっと会話して、
話せばわかる相手じゃないって理解したじーさんは一発だけイカク射撃をした後、脳天を刺されて死んだ。俺の
話を聞いた優しそうなじーさんは、悲しそうに泣いて「わからない」って言ってた。似たような話を聞いた優し
くないおっさんは、嬉しそうに笑って「わかる」って言ったのに。当たり前の話をしただけなのに、何であいつ
らが泣いたり笑ったりしたのか、どれだけ考えてもわかんねぇから考えるのはやめた。

 ムダに遠かった現場からやっとたどり着いたウチのリビングは、節電なんざ知ったことかよって感じでクーラ
ーがガンガン効いてて気持ちいい。ついでにテレビもつけっ放しだ。そのままキッチンまで歩いて、じーさんの
ハゲ頭から噴水みてぇに出たアレに似た赤くてどろどろしたソースか何かをフライパンで作ってる背の高いおっ
さんの隣に立つ。こいつはもう風呂に入ったみたいで、抹茶頭が少しぬれてる。青いTシャツと白のラインが入
った黒いスウェットっつうラフなカッコで、メガネチェーンを外して髪を下ろしてる岩西は、ビミョーに若く見
えて誰だかわかりづらい。これで黒縁メガネを外すと誰だか全くわかんなくなる。メガネって顔の一部だよなー。
「ただいま」
「おう、おかえり。今日の仕事はどうだったよ?」
 仕事を終えて疲れた体で帰ってきたケナゲな部下は見ないでフライパンを見たままのジコチューな俺の上司は
唇をつり上げた。
「別に。フツーだった」
「そうか。やくざ屋サンを射殺したことのあるマル暴のコワーイ刑事サンも、いたいけな子ウサギちゃんは撃ち
殺せねぇよなぁ」
 ふーん。あのじーさんも人殺しだったのか。あ、違うか。俺達と同じで仕事をしただけだから人殺しじゃねえ
や。言葉間違えちまって悪いな、じーさん。

374風と木の名無しさん :2011/08/05(金) 18:19:50.96 ID:G55OWnIiI
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
連投規制に引っかかってしまいました。また後で来ます。

375Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 4/8 :2011/08/05(金) 18:45:38.93 ID:8mmU2Cq+0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「帰って来たらさっさと風呂入れ。腹減ってんならメシが先でもいいけどよ。もうすぐ出来っから」
 岩西はコンロの火を止めて、フライパンから小皿に移した血の色した液体を右手のオカーサン指ですくって味
見する。
「……それとも、俺にするか?」
 俺を見下ろしたエロ親父は指を舐めながらいつも以上にイヤらしい顔をして、細い目をもっと細くした。セク
ハラが服着て歩いてるヘンタイめ……!
「蝉。何で目を逸らした? 顔が赤いぜ。お決まりのジョークを本気にでもしたかよ、童貞が」
「お前の左胸を今度は折れてないナイフでちょっと刺していいって意味なら、お前を選んでやる」
「ヒヒッ、可愛くねえなあ」
 エロ西が声を出して笑った直後に、俺の腹がぐうーって鳴った。すぐそこにある二枚の丸皿の上に、ゆでたニ
ンジンとブロッコリーと、多分ウシとブタの死体を細かくしたモンをぐちゃぐちゃに混ぜて丸めて焼いたヤツが
乗っかってる。やべ、ヨダレ出てきた。
「で? 今日の晩メシ何? ハンバーグ?」
「お子様が好きなハンバーグとコーンポタージュ。単純なガキにはウレシー献立だろ」
「俺は単純じゃねぇから全然嬉しくなんかねーし。俺はなあ、味がうすくてマズいお前の手料理を毎日ガマンし
て食ってやってるんだぞ。ありがたく思え! お前の舌はタバコの吸いすぎでイカれてるってことをいいかげん
自覚しろっつぅーの」

376Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 5/8 :2011/08/05(金) 18:48:29.16 ID:8mmU2Cq+0
 味オンチはコーンポタージュの鍋をかき混ぜながらげんなりしたカオをして、わざとらしいタメ息をついた。
「俺が作るメシの味が薄いと思うのは、お前がずーっとコンビニ弁当やカップ麺ばっか食ってきたからだっつっ
てんだろ、味オンチめ。若いのほど濃い味が好きってのもあるけどよ。そんなに文句があるなら自分で作れるよ
うになれ。教えて欲しけりゃおじさんがお料理教室開いてやってもいいぞ。もちろん、受講料はお前の報酬から
がっつり引いてやるからヨロシク」
「誰がお前なんかに教わるか、ケチ。お前のそういうとこホント嫌い」
「じゃあ、どういうとこが好きなんだ?」
「何もかも大大大っ嫌いに決まってんだろ!」
 岩西は、また俺を見下ろしてにやりとイヤらしい顔をしやがった。
「ああ、知ってるよ。俺も、お前の何もかもが嫌いだからな。ひひひひ。同族嫌悪ってヤツだよな」
「俺だって、お前のことをずっと前から『ドウゾクケンオ』だと思ってたんだよ!」
「赤ペンでバツだ。『同族嫌悪』の使い方が間違ってるぜ、バカ蝉」
「――っ……! バカ西のバカ!」

377Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 6/8 :2011/08/05(金) 18:51:04.90 ID:8mmU2Cq+0
 メシを食い終わって、俺がやった殺人事件のニュースをテレビで見てから浴室に向かった。湯船につかりなが
らぼーっとする。岩西が入浴剤を入れたからお湯が青くて、熱いのに涼しい感じがする。やっぱ風呂はいいよな
あ。ネカフェ難民だった頃に何が不快だったかって聞かれたら、風呂に入れなかったことって答えると思う。シ
ャワーはある店も多かったけど、さすがに風呂がある店は無かった。
「おい、蝉」
 戸の向こうから俺を呼ぶ声がする。
「寝巻き置いとくぞ。つーかよぉ、いい加減テメェが着る服くらいテメェで用意しやがれ、クソガキ。今時、小
学生でも自分で服選んでるぜ?」
「だって、クソオヤジがコーディネートがどうとかうるせぇんだもん」
「はっ。お前、そんなに俺の着せ替え人形になりてえのかよ?」
「……俺はお前の人形じゃねー……」
「明日、お前の服買ってる店に連れてってやるから自分で買え。店員がどんなに馴れ馴れしくてウザくても殴る
んじゃねーぞ。アレがあいつらの仕事なんだ。ただ楽しいから笑顔で接客してるワケじゃねぇんだよ」
 それきり岩西の声は聞こえなくなった。今頃、食器洗いながら食後の一服でも吸ってんだろ。
 もしも俺の父親が、自分と同年代の男が息子に別の名前を勝手に付けて、テメーがやらなかった男手一つでガ
キの面倒を見るってのを、俺をこき使って金を稼ぐためとはいえ楽しそうにやってんのを見たらどう思うんだろ
うな――何とも思わねぇか。

378風と木の名無しさん :2011/08/05(金) 18:58:22.00 ID:G55OWnIiI
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
どうしても三回投稿すると規制されるようです。したらばの代行スレに行ってきます。

379Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 7/8 :2011/08/05(金) 21:19:09.32 ID:3pTeLSB+0
 ……髪、結構伸びたな。浴槽から出て、鏡に映る自分を見て思う。岩西が買ってきたシャンプーとリンスを使
うようになってから、髪質が変わった。「ボサボサじゃみっともねぇからちゃんと手入れしろ。せっかく殺人犯
らしくねえキラキラした金色の髪の毛と目ン玉持って生まれたんだしよ。自分で気に入ってるから髪伸ばしてん
だろ?」だと。俺の髪が長いのは、美容室に行くのも自分で切るのも面倒だからそのままにしてるだけだ。馴れ
馴れしくてウザい美容師に「殺されたくなかったら少し黙れ」って言っただけでその店を出入り禁止にされたこ
ともあったし、俺と同じような生活してた奴らはヒゲも髪も伸ばしっぱなしの男も結構いたし。そういや、岩西
が毎朝カミソリ使ってヒゲ剃ったり、ワックス使って髪を逆立てたりしてんのが、俺はカミソリもワックスも使
ったことがねぇから最初の頃は珍しくて観察してたよな。今思えば、何であんなの面白がって見てたんだかわか
んねえけど。めんどくせぇ手入れをしなきゃならねえなら俺もあいつくらい短くしてみようかとも思ったけど、
「俺は短い方が好きだから切っちまえ」ってマジなトーンで言われたから、ぜってー切らないことに決めた。誰
が、お前を喜ばせるようなことをわざわざしてやるもんか。

380Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 8/8 :2011/08/05(金) 21:19:20.41 ID:3pTeLSB+0
 二枚の布団が並んだ寝室の、開いてる窓から入ってきた夏風が赤い風鈴を鳴らしてる。俺と同じ名前の虫がう
るさく鳴いてる。蚊取り線香の落ち着く匂いがする。
 まだ寝るには早いけど、俺はもう布団にもぐってる。コンセントで充電中の、俺達が着てるTシャツと同じ色
のピンクと青の携帯のうち、青い方の携帯が短い音を鳴らして光った。ちょうど蚊帳を張り終えた岩西は、小さ
いタンスの上の灰皿でタバコを消して、灰皿のそばに置いておいたタバコの箱から新しいタバコを一本取り出し
て口にくわえた。で、やっぱり灰皿のそばに置いておいたマッチの箱を手に持って歩いて、携帯を充電器から抜
いて、床にあぐらをかく。そのまま右手でメールを打ちながら、器用に左手だけでマッチに火をつけようとした
けど、ほんの一瞬、傷跡の残る指がひくついちまって箱と棒が落下した。
「――ちっ。糞ったれ……」
 岩西は左手をにらんで舌打ちして、携帯を置いてから両手でマッチを擦ってタバコに火を付けた。
 でっけえ犯罪会社の社長にちょん切られた、ちっちぇえ殺人請負事務所の社長の五本の指は、たまに自慢のテ
クを披露できなくなるらしい。初めてこいつの指が動かなくなるところを見た時、「お前の指をくっつけた医者
って、とんだヤブ医者だったんだな。プロなら完ペキな仕事しやがれっての」って呟いた。そしたら、「あー…
…いや、精神的なもんなんじゃねーの? そのうち治るだろ」って、予想外の弱い言葉が返ってきて、「へぇ〜。
お前、拷問されたことがトラウマになってたのかよ。そりゃそうだよなー。俺が助けてやらなきゃ、もっとヒド
い目にあってなぶり殺されてたんだもんなー。助かったとたん、キンチョーの糸が切れたみてえに気絶してたし
よ。ダッセー! お前のド根性だけは認めてやってたのに、がっかりだぜ。スリやる時に動かなくなったらどう
すんだ、岩西ぃ?」ってからかってやったら、「お前は本当にみんみんみんみんうるせぇな、このパーが。深層
心理の問題は根性じゃどうにもならねえだろうが。俺の弱みを一つ見つけた気になってバカにしたつもりみてぇ
だが、俺はお前の弱みをこの手でいくつ握ってるんだろうな? ダッセーのは自分の方だと思うよなあ、蝉ぃ?」
ってからかい返されたことがあった。「深層心理」の意味は後でネットで調べてからわかった。

381Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 9/8 :2011/08/05(金) 21:19:32.35 ID:3pTeLSB+0
 ……眠れない。岩西が電気を消して布団に入ってから結構経つけど、全然寝られない。
「おい、岩西。まだ寝てないなら、窓閉めてクーラーつけろ。暑い」
「あ? ……ひよっこの分際でこの俺に命令しやがるとは、イイ度胸だなあ……?」
 岩西は顔だけ俺の方に向けて、みけんに深いシワを寄せて、不機嫌度百二十パーセントの声を出した。ヤバい。
口元は笑ってるけど、目が笑ってねえ……こいつをキレさせちまったら、後で何されるかわかったもんじゃねー
ぞ……! どうにかしてオッサンをなだめる方法を考えてると、そのオッサンはイヤらしくない感じで笑った。
「たまにはこういうのも、風流でいいじゃねーか」
 ……何だよ、怒ってなかったのかよ……まぎらわしいことすんな、バカ。まあ、確かに、お前の頭の近くにあ
る人を殺すためだけに作られた黒い鉄のカタマリさえなけりゃ、イイ感じなのかもな。こんな住宅街で撃つこと
なんかねぇのに、枕元に拳銃がなきゃ眠れないとか意味わかんねえし。
「お前がよくても俺はよくねぇんだよ、バーカ。暑い。暑すぎ。それに、昆虫の方の蝉がうるさい」
「ったく、どうしてこう現代っ子ってのはワガママなんだ?」
 岩西は本日二度目のタメ息をついた後、何か思いついたようなカオをして、今度はイヤらしさ全開で笑った。
「俺は優しいオトナだから、別の方法で涼しくしてやる」
 ……殺人犯らしい毒々しい紫色の目ン玉が暗闇の中で光った気がして、すげーヤな予感がした。

382Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 10/8 :2011/08/05(金) 21:19:44.07 ID:3pTeLSB+0
 ……眠れない。寝られるはずがねえ……口だけは達者な岩西が語る怪談話なんか聞いたら、涼しいどころか寒
くてますます寝れねーよ……だって、幽霊ってもう死んでるから、ナイフで刺しても意味ないんだろ? そんな
の怖ぇに決まってんじゃん。こいつわかってて怪談話しやがったな、チクショウ。人のことさんざんからかっと
いて、自分だけのんきに寝やがって! 俺はいつでもお前を殺せるんだ。俺がお前を生かしてやってるだけなん
だからな。
「……くかーっ……」
 口半開きで小さないびきかいて、こいつマジ親父くせぇ……俺も二十年後まで生きてたらこうなっちまうのか
よ? つうか、俺に「夏風邪引くから腹出して寝るな。体調管理もプロの仕事だ。ああ、でも夏風邪は馬鹿が引
くって言うから、お前は腹隠したところで無駄だよな」って言った奴が腹出して寝てんじゃねえよ、アホ。あー
もー! お前の腹見てたらイライラしてきたじゃねーか! 戦う時は拳銃頼みの弱っちいデスクワーク派の中年
のくせに、痩せてて筋肉ついてるってのが前々からムカついてたんだよ! ずる賢い頭とデカい身体と、カミサ
マは何でこのド外道にいいもん二つも与えちまったんだ!? とんでもねぇパーだな!

383Waltz 岩蝉岩 「夏蝉」 11/8 :2011/08/05(金) 21:19:59.52 ID:3pTeLSB+0
 そういえば、このおっさん、血生臭い世界で生きてきたくせに、俺の雇い主になってから怪我したとこ以外は
体に目立つ傷が無えんだよな。仲介業者が狙われることは滅多に無いらしいし、ヤバくなったら雇った殺し屋を
生贄にしてきたんだから当たり前なのかもしれねえけど。こいつがあちこち怪我したのはコンビニ店長からの依
頼を請け負ったこいつの自業自得だけど、俺を雇わなきゃあちこち怪我しなかったかもしれねぇワケだ。これっ
てつまり、岩西を殺しかけたのは俺だけってことだよな。俺が仕事でヘタうって死んだり、また捨てられたりし
て岩西の心から俺が消えても、体の傷は――俺が刺してやった左胸の傷は一生消えねぇだろうし。
「……へへっ。ざまーみろ、クソッタレ」
 岩西。お前さ、いつだったか「蜂蜜塗れになって泣いてるチクタクのお姉ちゃんは可愛かったんだぜ。それで
も立ち上がったあの女は、胸は小せぇが抱きたいくらいイイ女だった」って言ってたよな。俺には、俺が初めて
会った、岩西以外のプロ意識のある業界の人間の泣き顔なんて想像できなかった。なあ、岩西。指チョンパされ
た瞬間は、お前みたいな奴でもみっともねえ叫び声を上げたのか? それとも、また歯ぁ食いしばってド根性で
悲鳴を噛み殺したのか? あんなに強かった女が痛くて苦しくて泣いたのに、何でお前は痛くて苦しくても泣か
なかったんだ? 大人の男だからとか? 大人とか子供とか男とか女とか、俺達には関係ねーじゃん。大人より
強い子供も男より強い女も、同業にはいっぱいいるし。
 泣けよ、岩西。俺がお前にすがりついて悔し泣きしちまったんだから、お前も俺にすがりついて悔し泣きしや
がれ。そしたら俺はお前を全力であざ笑ってやった後、お前がいつも俺にするみてぇに、こうやってお前の頭を
なでてバカにしてやるんだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

文章が長すぎると言われたため、定められた分割数をオーバーしてしまいました。申し訳ありません。

384風と木の名無しさん :2011/08/05(金) 22:16:04.74 ID:O9CjToBsO
なんかいろいろとヒドい案配ですねw

385風と木の名無しさん :2011/08/06(土) 02:08:34.63 ID:4QkWK3QQ0
>>371
規制に負けずGJでした!
キャラの雰囲気が良く出てて萌えたよー

386蛙軍曹 緑黄緑 1/3 :2011/08/07(日) 22:53:31.73 ID:iW7XNZlxO
蛙軍曹の緑黄緑で擬人化です。
ヒゲとか煙草とかもう原型どこいったの上、微妙に新刊ネタバレなのでご注意を。




|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!




 殊更大きな満月が登る頃、日向家の屋根の上に影が一つ。くわえ煙草で片膝を立てて座り、月を見上げているのは日向家捕虜第一号、ケロロだった。
 黒目がちの大きな瞳は、何の感情も見えずただ深く凪いでいる。
 しばらく微動だにしなかったケロロが徐に振り向いた。背後で音も立てず超時空ゲートが開く。のそのそと出て来たのは、ケロロの上官にして部下であるクルル曹長だった。
 何も言わずふざけたような敬礼をする年下の上官を軽く一瞥してケロロは前を向く。横に座ったクルルを気にすることもなく月を見上げる。

「珍しいな隊長。煙草なんてずいぶん久々じゃねえか。……まさか、アンタも懐郷病かい?」

「んー、微妙なトコ」

 揶揄するような台詞に曖昧な笑いで返したケロロはがりがりと頭を掻く。

「思い出したり懐かしくなったりはすんだけどね。帰りたいとかはあんまり考えた事無いからさあ」

 鼻から紫煙を吐きながらあっけらかんと話すケロロにクルルは呆れたような視線を向ける。軍事国家の悪習に捕らわれているとはいえ、ケロロにはかの星に家族も友人もいるのだ。
 それをなんて事も無く言ってのける感性は、おそらくは生来の物だろう。

387蛙軍曹 緑黄緑 2/3 :2011/08/07(日) 22:55:42.95 ID:iW7XNZlxO
「クルルはなったことある? 懐郷病」

「……ねぇな」

 クルルにとってかの星は、産まれた所であっても還るべき場所ではない。気の置けない友も掛け替えのない家族も無く、ただ“それだけ”のものだった。
 クルルの返答にへぇ、と気の抜けた声を返したきり、ケロロはまた黙って月を見始めた。
 クルルは、ケロロの日に焼けているくせに血の気の無い横顔を見つめながら、案外鼻が低いな、などと下らない事を考える。
 徐に手を伸ばしケロロの頬に触れると、チリリと指に引っかかる感触がした。そういえば、昔会ったばかりの頃のケロロは顎髭を生やしていた。剃り落としたのはいつからだったか、とぼんやりと考えながら煙草を奪ったクルルはケロロの唇に自分のをそれ重ねた。
 互いに目を開けたまま、触れるだけのキスを数度繰り返す。離れようとしたクルルの後頭部を、いつの間にか回されていたケロロの手が固定した。
 一瞬で主導権がケロロに移る。素早く入り込んできた舌を押し返そうとするが、すぐに絡め取られてしまい、己を好き勝手に蹂躙する男をクルルは心底忌々しげに睨みつけた。

「んっ……は、あ」

 解放されたクルルがケロロの足を蹴ると、さも楽しげにけらけら笑いだす。舌打ちをして口を拭うクルルから煙草を取り戻したケロロは、すっかり短くなっていた煙草を深く吸い込んで灰皿に押し付ける。
 懐からひしゃげたソフトケースを取り出し一本くわえると、クルルにも差し出した。
 同じようにくわえたクルルの煙草と自分の煙草を寄せ、まとめてマッチで火をつける。
 深く吸い込んだ紫煙を吐き出すタイミングが揃って二人で少し、笑った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ナンバリング間違えましたすみませんorz
色々とどうかと思ったがヒゲ萌えが抑えられなかった。

388風と木の名無しさん :2011/08/08(月) 01:09:04.01 ID:I49jM0y20
>>387
ヒゲ萌えイイヨイイヨー
新刊読んで萌えてたところなのですごく嬉しい
ありがとう!GJ!

389泡沫 1/9 :2011/08/08(月) 19:40:03.99 ID:eNdyV4nD0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
映画「津具名井」の伍長×主人公。>>226の翌日談。エロは無し。捏造多め。
一回で終わるはずがもう少し書きたくて、もう少し幸せにしてみたかった。


明け方、ふと目を覚ますと昨夜確かに自分と共に眠ったはずの彼が隣りにいなかった。
それに自分は、あぁまたかと思う。
空は徐々に白み始め、夜の薄闇を西の方角へ追いやる時刻のようだったが、辺りはいまだ仄暗く
ただ窓越しに繰り返し波の音だけが聞こえてくる。
彼はきっとそこにいるのだろう。
思い、伸ばした指先で探ったシーツの上には微かに残るぬくもりがあって、彼がいなくなってから
さほど時が過ぎていない事を自分に教えてくれる。
だから、起き上がった。
まだ少し眠い頭を覚ます様に振りながら着替え、部屋を出ようとする。
とその時、ドアの近くにあった椅子に掛けられていた彼の白いシャツが目に止まった。
少し考え、それに手を伸ばす。
そして今度こそその足は、静かに誰もいない部屋を後にしていた。

390泡沫 2/9 :2011/08/08(月) 19:40:48.21 ID:eNdyV4nD0
夜明け前の波は黒い。
ただ波打ち際で砕ける時だけ白い波頭を見せるそれに服が濡れるのもかまわぬよう、彼は一人海に向かい立っていた。
裸足だった。
靴が周囲に見当たらないところを見ると、家からここまでそのまま歩いてきたのか。
怪我をするぞ。
そんな事を思いながら、後ろ姿に声をかける。
「俺の人魚姫はそんなに海が恋しいのか?」
我ながら芝居がかったそんな言葉に、前方の彼がゆっくりと振り返ってくる。
「誰が人魚姫だって?」
まだ日の昇らぬ空の下では、遠目でははっきりと彼の顔は見えなかった。
それでも、聞こえたその声にはこの時、微かな笑みが滲んでいるようだった。
「おはよう。」
穏やかに告げられる挨拶にこちらも同じ言葉を繰り返す。
そうしながら波打ち際に立つ彼の側にゆっくりと近づいて行くと、自分は手にしていたシャツを彼の肩へそっと掛けた。
「この時間だとまだ海風は冷たいだろう。」
季節は夏にさしかかっているが、日の光が射さない朝方の風は時として肌寒さを感じる。
そんな気遣いが伝わったのか、彼はありがとうと小さく礼を返すと、掛けられたシャツを軽く前で引き寄せた。
そしてもう一度視線を海へと戻す。
静かな表情をしていた。
そんな彼の隣りに立ち、自分も同じように前方の夜の闇と溶けあう水平線を眺めながら再び口を開く。
「眠り、まだ浅いのか。」
もともとぐっすり眠るタイプでは無いようだったが、彼は時折早い時間に目を覚ますとふらりと一人ベッドを
出ていってしまう事があった。
それはこの海辺に居を構えるようになってから数が増えたようにも思える。
最初の頃ほど驚き焦る事も無くなったが、それでも目を覚ました時居るはずの彼の姿が見えないのは
心臓に悪いがゆえの問いに、しかしこの時彼は小さく首を横に振ってきた。

391泡沫 3/9 :2011/08/08(月) 19:41:23.79 ID:eNdyV4nD0
「そう言う訳ではないけど……戦争中に比べればずっとよく眠れているよ。あの頃は夜中に空襲があったりして
ベッドで休む事もろくに出来なかったから。」
「また、そんな極端な例を出されても…しかしあの辺りでもそんなに空襲酷かったのか?だとしたら悪い事をしたな。」
数年前の大戦時、自分が従軍している間、あとに残る彼に自分はそれまで住んでいた己の部屋を提供していた。
別に綺麗でも広い訳でもない、何の変哲もないアパートの一室ではあったけれど、好きに使ってくれればいいと。
そう言ったのは親切心だけでない、どこかで彼を自分の関係するものに縛り付けておきたい独占欲があったのだけれど
しかしそんな自分の意図を知らぬ彼は、少し慌てたように返事を返してくる。
「そんなふうに言わないでくれ。空襲は確かにあったけど、でもロンドンなんかに比べれば小規模なものだったし。
あっちは酷い惨状だったらしいから。それに、」
ふと声に神妙な響きが籠もる。
「感謝してるよ。あの頃、記憶を無くして右も左もわからなかった俺に誰かを待つ場所を与えてくれた事。」
一人きりでは無いのだと実感できる場所で生きていける事は、世情と相まり何もわからず不安定になりがちだった心を
ギリギリの所で支えてくれた。
今更ながらに初めて聞くあの頃の彼の心情に、自分はこの時そうかとだけ告げる。
そうか、それなら良かった。
彼の言葉に色々な意味でホッとするのを隠しきれず、だからきっと複雑な表情になっているのだろう顔を見られるのを
避けたくて、知らず足が彼が立つ場所より少しだけ前へと進み出た。
靴を履いたまま波に濡れるのもかまわず。そんな自分に彼が訝しそうに名を呼んでくる。
けれどその声には答えず、自分はこの時前を向いたまま殊更明るい声で、更なる過去の思い出を口にしていた。
「大家にはおまえの事親戚だって嘘ついたけど、きっとバレてただろうな。」
端正な顔立ちで、自身は覚えていないようだがかつて医者を目指していたと言うほどの教養を持っている彼と
無学平凡な容姿の自分では、明らかに身についた雰囲気が違う。
本来ならば他者への部屋の又貸しは許されない事だったが、時勢が時勢だっただけに金さえ前払いをしておけば
見て見ぬふりをされたのは幸いだった。

392泡沫 4/9 :2011/08/08(月) 19:54:48.17 ID:eNdyV4nD0
あの頃を事をそんなふうに思い出す、そんな自分に添うようにこの時後方からも声がする。
「大家、いい人だったよ。街の事がよくわからない俺を気にして、時々声をかけてくれた。」
「おまえ、気に入られてたんだな。俺には愛想の一つもなかったぞ、あのオヤジ。」
「そうなのか?でもおまえが帰ってくるって手紙くれた時、どうやって迎えようって悩んでた俺におまえの好きな
ワインの銘柄教えてくれたのも大家だったけど。」
それは…捨てたゴミの中味を漁られでもしていたのか。
少しだけうすら寒い感覚に襲われながら、同時に自分はもう一つ、当時の事を思い出す。
「そう言えば、そのワインのおかげで俺はあの時、心臓が止まりそうな思いをさせられたんだったな。」
それは終戦を迎え、ようやく帰還が叶った日の事だった。
自分の生存と帰れるだろう日だけを記した手紙は先に出しておいた。
故郷へ戻る兵で満員の汽車を降り、駅から脇目もふらずまっすぐに帰途につく。
所々戦争の爪痕を残す街中を通り過ぎ、その先に壊れず残っていたかつての住まいの建物の外観を見つければ、
胸の動悸と足取りは更に早いものになった。
長旅の疲れを忘れ足早に玄関へ飛び込むと、その勢いのまま階段を駆け上る。
そして辿り着いた部屋の前で逸る気持ちを抑えながらベルを鳴らしたが、あの時それに返される室内からの
反応は無かった。
2、3度同じ事を繰り返し、それにも応答が無いと持っていた自分の鍵を取り出す。
その脳裏には瞬間、嫌な考えがよぎっていた。
焦る思いで踏み込んだ部屋の中には誰もいなかった。
自分が住んでいた頃に比べ物も少なく綺麗に片づけられたその室内の様子に、先程感じた嫌な感覚が胸の中で
更に大きく膨らんでゆくのをまざまざと感じる。
彼はもしかして記憶を取り戻したのだろうか。
そしてここを出ていった。もしくは、
戦時中に何かに巻き込まれて、死……
それまで考えもしなかった、しかし可能性を否定しきれない想像に背筋に冷たい悪寒が走り、肩が震える。
しかし、その瞬間だった。

393泡沫 5/9 :2011/08/08(月) 19:55:44.06 ID:eNdyV4nD0
不意に耳に届いた扉の開く気配と、部屋の中へ駆け込んでくる足音。
それに反射的に振り返れば、そこには階下から走ってきたのか、大きく息を切らしながらこちらを見つめ立ち尽くす
彼の姿があった。
荒く乱れた呼吸を吐き出す、人より少し赤い唇が動く。
ごめん、下で姿を見たって聞いて。でもこんなに早くだとは思わなかったから今まで買い物に…
まるで言い訳のように腕に抱えていた紙袋を前に突き出し、証拠だとばかりに見せようとしてくる。
そんな不器用な腕を、あの時自分は掴んでいた。
彼の言葉は途中から何も聞こえなくなっていた。
その代わり、ただ一つの想いが身体中を満たしていく。

いた、いてくれた
生きていてくれた……ここに、いてくれた……

互いにただいまやお帰りを言う間も無く、引き寄せ、力の限りで抱き締め、そのまま2人床の上に崩れるように倒れこんで、
あの時自分達は明るい部屋の中でもつれるように愛し合った。

394泡沫 6/9 :2011/08/08(月) 19:56:28.99 ID:eNdyV4nD0
「考えてみたらあの時も買ってきた物全部床に落として、せっかく手に入れたワインも割ってしまったんだよな。」
遠い記憶と昨夜の事が思いもかけず重なり合ったのか、不意にそんな事を告げてくる彼の言葉に、自分の意識は
藪から蛇を出したような気まずい現実に引き戻される。
しかし彼は、それはもう通り過ぎた事だと言うようにクスクス笑って、でも良かったと続けてきた。
「なし崩しだったけど、あの時は俺も実は帰ってきたおまえになんて言えばいいのかわからなかったから。」
今はもう遠くなった昔を懐かしむように語られる。
「手紙をもらってから色々考えてた。おまえが帰って来てからの事を。恋人とかいるなら今度こそ甘えず部屋を
出ていかなきゃいけないよなとか。」
「はぁ?」
唐突にそんな事を言われ、たまらず声が裏返る。
そして思わず振り返ろうとしたその背中にこの時、コツンと当たる彼の温かな額の感触があった。
いつの間に距離を縮めていたのか。
そんな驚きに刹那動きが固まり、それでもなんとか声だけは懸命に絞り出す。
「…そんなもの、あの頃の俺にいた訳ないだろ…」
「うん。でも不思議だよな。こんなに優しいのに。」
尚も、どこか茶化すような忍び笑いが触れられた背中越しに伝わってくる。
それに自分はこの時、ムッとするとも呆れるともつかない感情が胸の内に沸き上がるのを覚えていた。
まったく、人の気も知らないで。
何と告げればいいか、悩んでいたのは自分とて同じだったのに。
気づけばはっきりと自覚できるまでになっていた彼に対する恋情は、離れる度に募り、好きだから側にいて欲しいのだと、
そんな願いをどう切り出せばいいのか、彼の戸惑いを思えば答えはいつも袋小路に陥って、そんな日々を何年も何年も……
それが、あの時一気に決壊した。
言葉より何よりただ勢いだった。
一度堰を切ればもはや止める術のなかった想いのままに、好きだと告げ、名を呼び、幾度となく口づけた。
そしてこれ以上ない宝のように優しく頬を包む、そんな自分の両手の中であの時、彼は泣きそうな目をしながら何度も
小さな頷きを返してくれていた。
あの時、ゆっくりと持ち上がり背に回された彼の手が、今同じぬくもりのまま同じ背に触れてくる。

395泡沫 7/9 :2011/08/08(月) 20:03:04.08 ID:eNdyV4nD0
「俺は幸せだ。」
静かに告げられる、その声の響きは穏やかに柔らかかった。
しかしそれは言葉の意味とは裏腹に、瞬間自分の胸に小さな痛みをもたらした。
何も知らないがゆえに彼が口にする幸福。
それは波がさらえばすべて消えさる、この足元の砂のように脆いものに思えて。
一度は抑えつけたつもりだった心の不安が再び浮かび上がってくる。だから、
「だったらどうして……」
一人で出ていく?
明け方の失踪を微かに咎めるように問えば、それに彼は少し考え込むような沈黙を落とし、しかしそれでも、
「それもやはり……幸せだからだよ。」
紡がれた彼の告白は、どこか遠くで聞こえる歌のように軽やかだった。
目が覚めて、隣りにおまえがいて、その顔を見ていたら幸せで……幸せすぎて。
また目を閉じたらもう二度と眠りから覚められないような気がするから。
起きていようと、思った。
温かなベッドから抜け出て、冷たい波に触れ、それでも世界が変わらなければ、これは夢ではないのだと
やっと安心出来る気がした。ただそれだけ……
「でも、ごめん。心配かけたな。」
そっと謝罪が告げられるのと同時に、背に触れていた彼の額と手が離れてゆくのがわかった。
それを自分は咄嗟に追いかける。
今度こそ振り返り、後ろに下がろうとしていた彼の腕を取って、正面から抱き締める。
短な後ろ髪に指を差し入れ、その頭を自分の肩口に強く押し付ければ、それに彼は驚き少しだけ身体を
強張らせたようだったが、それもわずかな間だった。
「おまえは…思い詰めるといつも言葉より先に身体が動く。」
ポツリと零されたいさめの言葉。しかしその声にはこの時、どこか可笑しそうな笑みが滲んでいた。そして、
「今度は何?」
己の身を覆う突然の激情を宥めるような口調でそう問うてくるから、それに自分は返す言葉に窮した。

396泡沫 8/9 :2011/08/08(月) 20:03:38.74 ID:eNdyV4nD0
今度は何……あぁ、何だろう。
考えた所でこの胸の感情を彼が理解できるように上手く形にする力はきっと自分には無い。ならば、
「……人魚姫、な…」
もういっそ、これも勢いのままに。
不意に呟き落とした、それは先刻戯れに口にし、今また唐突に思い出されたとある童話の主人公の名だった。
学の無い自分でも知っている、恋した相手が真実を見抜けなかったばかりに海の泡と消えた少女。
それが今、自分の中で彼の姿と意図せず重なり深い衝動をもたらすから、無意識に彼を抱く腕に力がこもる。
彼女は海に帰れず、陸にも馴染めず、居場所の無いまま信じた相手にも裏切られた者だった。
が、それでもその相手に悪意はなかった。
ただ知らなかった。
それでも彼女の末路がああも無情なものだったのなら、もしその相手に何かしらの意図があれば、あの話の結末は
更にどれほど酷いものになっていたのだろう。
真実を隠し、偽りを与え、己の望みの為だけに違う人生を歩ませる。そんな欺瞞のからくりを知ってしまったら彼は
怒るだろうか、嘆くだろうか、恨み、去っていくのだろうか。
しかし、もしそうなっても自分は……
「おまえが消えてしまうくらいなら…殺してくれていい…」
きっと今を後悔出来ない。
もはや自分だけが知る唯一の真実。
それを暴かれる事によって彼が再び無実の罪に落とされ、笑顔を失くしてしまうのならば、いっそすべてをその手で、
「殺してくれていいから……」
本当に、そう思う。

397泡沫 9/9 :2011/08/08(月) 20:04:23.54 ID:eNdyV4nD0
繰り返し足元に押し寄せる波に彼がさらわれないよう抱き留めながら、祈り続ける。
そんな自分に彼はしばし逆らわず腕の中にいてくれたが、それでもやがてゆっくりと身を起こすと、その目を上げてきた。
「…どうしたんだ?」
密やかな声と心配そうに自分をうかがい見てくる表情。
いきなり脈絡も無くあんな事を言われれば当然だ。
そう思えば、ああやはり自分は口が下手だと少しだけ可笑しくなった。
だから何でもないと、笑いながら自分はこの時見上げてくる彼の頬に安心させようとその手を添えた。
優しく撫でる、その指先にふわりと淡い光が射した。
「…夜が明けたな。」
スッと向けた視線の先で、白い日の光に浮かび上がった水平線が横一線に広がってゆく。
世界が夢から覚めてゆく。
それを2人で眺めながら、もう一度だけ、

消えないでくれ

そう胸の中で呟いて、自分はこの時、腕の中の彼の視線を自分の方へ戻させるとその唇に深い口づけを落としていた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
代行ありがとうございました。長すぎてすみません。

398風と木の名無しさん :2011/08/08(月) 20:13:19.68 ID:eNdyV4nD0
「泡沫」代行者です。
ageてしまった&規制の為時間がかかってしまい、すみませんでした。

399風と木の名無しさん :2011/08/08(月) 20:27:36.80 ID:DcKq5TCy0
>>389
GJ!GJ!
このふたりなら、偽りをいつか真実にできると思わせてくれるよ
心から幸せになってほしい

>>398
代行お疲れさまでした

400風と木の名無しさん :2011/08/08(月) 21:17:53.53 ID:do57RCJX0
>>389
超GJです!再度ありがとうございました。
こっそり横恋慕?の大家が非常に気になる存在ですがw
従軍時も彼を守ってくれていた彼に泣けた。彼に安らぎを与えてくれてありがとう。
本作と同じくらい姐さん版が大好きだ。

>>398
代行ありがとうございました。感謝です。

401「僕の相方」 1/2 :2011/08/12(金) 23:42:40.95 ID:kn0YoTzS0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
地知ん風井風井 側田アナと九っ寸


見上げた空はどこまでも落ちていけそうな位に澄んでいた。大阪で見ていたのとは全然違っていて、広くて、高くて、
深い深い海の底を眺めている気持ちになる。
首が痛くなるまで見上げても尚、届かないと知りつつ左手を伸ばす。手首にはめているパワーストーンの数珠の水晶が
きらりと光を弾いた。
抜ける様な青空は、このお守りをくれた、1コーナー限定の相方である彼を思い出させる透明さだ。きれいな水を
ふんだんに注がれて育った植物みたいな彼にこの空を見せたら、一体どんな間抜けな言葉で感動を表してくれるんだろう。
本業はDJな筈やのに大丈夫なんかなぁ、あの日本語の間違いっぷり。でもあの天然さが憎めない。
九っ寸、元気にしてるかなぁ。
里心がつきそうになって、慌てて首を振った。
旅はまだ半分も過ぎていない。局から言い渡された企画は60日間でほぼ世界を一周するものなのだから。
あぁ、でも、九っ寸、今頃何してるんかなぁ。仁志さんとロケで歩いてるかな。それとも他の仕事かな。いやいや
ほんまはお休みで、大好きな自転車で走ったりしてるんやろうか。中継の後で聞いてみたら良かったかな。
どっちにしろ、元気にやってるんやろうけど。って、時差あるやん。今頃日本は何時なんやろ。
「あー…………会いたい、なぁ」
心の奥底から浮かび上がってきた言葉が、無意識に声になってぽとりと空に落ちる。
旅立つ僕を見送ってくれた時のあのくしゃくしゃの泣き顔や、ロケの時の苦しそうな泣き出す寸前の顔が頭を過ぎった。
どうせなら笑ってる顔がいいんやけど。
笑顔、笑顔。頭の中のデータベースから、束になって仕舞われているそれを引っ張り出す。彼独特の、目が糸みたいに
細くなる、顔の全部で笑うあの笑顔。
離れて想う九っ寸は、普段のイライラさせる言動や気弱な表情がない分、すごく良い部分だけが強調される。近くにいれば
ヘタレな男は離れていれば天使みたいやった。
「……阿呆やな、俺」
いい歳をした男相手に天使って、何?

402「僕の相方」 2/2 :2011/08/12(金) 23:45:54.84 ID:kn0YoTzS0
旅の疲れが脳に回ってるんとちゃうん。ないわ。めっちゃないわ。
あぁ、でもなぁ、大変やねんって、海外って! 日本でもそうやけど、いい人ばっかりちゃうねんもん。
カッチーンてくる事も多いし、正直めげたくなる時もある。よぉ二志さんは達成しはったよな。その仁志さんは
僕は前向きやし、何処に行っても大丈夫って太鼓判押してくれた。アナウンサーとしても尊敬する先輩な仁志さんの
言葉やし嬉しいけど、僕はそんな頑張れる子とちゃいますよーって弱音を吐きたくなる瞬間もある。でもそんな時、
いつも九っ寸のくれた手作りの数珠が助けてくれる。
手首の上で存在感を示すこれが目に入ると「がんばろう」って自然に思えた。この10ヶ月、新大阪から仙台まで届く
距離の間、僕はずっと九っ寸の前を歩いてきた。すごい雪の冬も、暑い夏の日も、大雨に降られた夜も、ぽかぽかした
春の日差しと桜の花の下でも。
負けへんよ、大丈夫。僕が負けたら九っ寸はまた泣くやろうから。……達成して凱旋帰国しても泣くやろうけど。
号泣やろうな、絶対に。
傍にいても、離れていても、九っ寸のくれた想いは一緒に居てくれる。世界の何処にいたって僕は一人やない。
なぁ九っ寸。九っ寸が言うてたみたいに、一回り成長して帰るから。その間、代打の二志さんと一緒に頑張ってて。
二志さんは40過ぎて独身やけど面倒見の良いいい人やから、きっと九っ寸を助けてくれはるよ。……でも九っ寸が
僕と歩くより二志さんとの方がいいわーって思ったら嫌やけど。九っ寸の相方は僕でありたいねん。ウクレレみたいに
二志さんにあげてしまう訳にはいかない。
僕は頑張って約束した通り無事に帰るから、忘れんと『側田さん、おかえりなさい!』ってふにゃふにゃの笑顔で
迎えて欲しい。百万円賭けてもいいくらいに号泣するやろうけど、最後には笑って欲しい。
疲れてきたから腕を下ろす。小さな音を立てた数珠。身につけてると万事上手くいくし、いざって時にはぷつんと切れて
ばらばらになって、僕の身代わりになってくれるらしい。おなか痛くなった時とか。そう思うとなんか笑えてきた。
笑えてる間は大丈夫や。

403「僕の相方」 3/2 :2011/08/12(金) 23:46:15.85 ID:kn0YoTzS0
明日にはまた違う国に移動するから、この広い空も見納めかも知れへんな。この空の下に九っ寸もいてる。二志さんも
隅さんも、みんながいてる日本と繋がってる。今日もきっと、あの番組を楽しいものにする為にみんな頑張ってるやろう。
せやから僕も頑張ろう。
ほないっちょ、やりますか。
心の中だけで呟いて立ち上がる。
会いたいけれど、今はお預け。遠い遠い日本にいる彼をもう一度思い返して。そっと数珠に指先で触れた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
なんだかんだといいコンビな二人がいとしいです。
投下代行ありがとうございました。


404風と木の名無しさん :2011/08/13(土) 00:43:06.78 ID:57sql3w20
>>403
GJ!この二人、ツイッターでフォローしあったりしてホント仲良いよね
切な萌えありがとう!

投下代行者様もお疲れ様でした

405架空のスタッフ・某ローディー×師/匠 1/4  ◆zT1lbr0CW2 :2011/08/14(日) 19:49:48.86 ID:Sf8QWbpw0
架空のスタッフ・某ローディー×師/匠です。
だんだん某ローディー君寄りになってまいりました。
名前を出さないようにキミ、あいつ、師/匠呼びにしてあります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「どうしようもなくムラムラする」
「はぁ?」
最近師/匠のツイッターのフォロアー数が5万を超えた。
そのご褒美として出た企画が「師/匠を5万/秒/監視できる権」だった。
師/匠が日々仕事している所をustで生中継する。
なんかつまらなそうだなーなんて思いながら第一回を見た、ら。次の日こいつがうるさい。
「なんだろあのイケナイ事をしている感は!なんだろあの盗撮動画を見ている感は!
 一時間なんてニヤニヤしてたらあっという間でさー、
 なんか「今まさにこの時間の師/匠を見てるんだなー」て思ったら愛しさまで湧いてくるんだよなー!!」
とか言ってた。
それから中継がある日は毎日その時間に合わせて帰ったり仕事中見たり。録画をまた見たりしているらしい。
「何だと思って見てんの?」
「師/匠のエロ盗撮動画」
「…。」
ずーっとベラベラ喋っている。

406架空のスタッフ・某ローディー×師/匠 2/4  ◆zT1lbr0CW2 :2011/08/14(日) 19:50:42.83 ID:Sf8QWbpw0
「なんだろうこのどうしようもなく湧きあがる欲情感は!」とか知らない。
「横顔、首筋、意外と厚い胸板、しっかり筋肉のついた男の腕、骨ばった指、
 のけぞる仕草も暑がる仕草も背筋を伸ばした時も全部全部…エッrrrrrrrロイ!!!」とか頭おかしい。
「歌ってるとことかもうなんか…ヤバすぎてもう」お前スタッフだしよく見るシーンだろ
「なんか違うんだよ音が無いとか半そでとかなんかこうこのなんていうの?」リハん時は半そで着てる時もあるだろ
「お前も見たらわかる!!」
「見たよ昨日も」
「見てんのに?!なんとも思わない?!」
「別に。」
「考えられない。これ見てなんも思わないとか考えられない!」って言われても。
まぁ、強いて言えば…扇子で顔隠して必死にドアを閉めようとしてる所なんかが変態から見たらエロいんだろうなぁとは思った。
目を閉じてぐったりしてる所とか?
「…このあと師/匠ん家行くんだけどさすがに俺まで撮られたりしないよなぁ…」
「ハァ??!!!なんでよ俺も行くし」
「馬鹿仕事だよ…暑そうだなー」
またお前ばっかり!!ずるい!!!とうるさいヤツを置いて師/匠の家に向かった。

インターフォンを押そうと思ったらものすごい勢いでドアが開いた。
「だから…びっくりするからやめてください」
「ご」
今日のツイートには配信予告が無かったから、大丈夫なはず…。
師/匠の家は相変わらずくそ暑い。
クーラー嫌いな師/匠はめったにエアコンをつけない。だいたいは扇風機か空調/服で済ませる。
早く仕事して早く帰ろう。
スタジオに入るとふとあの監/視動画を思い出した。
あの椅子に座って、あっちの防音ブースで歌録りして…
「エロい」ねぇ…そうかなぁ…

407架空のスタッフ・某ローディー×師/匠 3/4  ◆zT1lbr0CW2 :2011/08/14(日) 19:51:39.10 ID:Sf8QWbpw0
作業をしながらチラリと師/匠を見ると、配信時よりも胸元を開けて扇風機にあたりながら仕事をしていた。
やっぱり配信の時は「見られてる」っていうのは意識してるんだよなぁ
いつもよりキリッとしてるし、身なりもきっちりだし。
「…そのくらい胸元開けたらもっとファンに喜ばれるんじゃないですか?」
「なーんで喜ばせなきゃなんないの」
あ、やっぱり喜ぶのはわかってるんですね。
そうだよなぁ慣れてるよなこの人は。
「ツイッターのコメントとか相変わらずなんか、変態多いですよね」
「…え、配信見てる?」
「…見ましたよ。………あのー、あいつがなんかすげー喜んでましたよ。あいつも変態だから。」
なんか、見たって言った事を一瞬「しまった」って思っちゃったからついあいつの話に変えちゃった。
あいつが盗撮とか言ったせいだしょうがない。
黙った師/匠を不思議に思って見ると、なんか扇子で顔を不自然なほど仰いでいる。
俺と目があったらその扇子で顔を隠された。
「いや、え?」
「見るんじゃない」
「えっ…」
やべ。
ちらっと見たら、またサッと扇子で隠された。
動画もこんなだったなぁ
たまに隠し切れて無い所がかわいくて笑っちゃったり。
思い出してつい吹き出す。
「俺相手に何やってるんですか」
この人が5万人にツイッターを見られてる人だっていうのがなんだか不思議だ。
こんなに近くに居るのになぁ。

408架空のスタッフ・某ローディー×師/匠 4/4 ◆zT1lbr0CW2 :2011/08/14(日) 19:59:50.96 ID:o8Yj+SLbO
「あのねぇ。あんなのねぇ。よっぽどのファンしか見ないんですから。5万人いるけど見てんの2,000人以下くらいでしょ。」
「…あー…よっぽどのファン…」
そうでしょうね。本当に師/匠が作業してるだけの映像だもん。
でも、目が離せない…んだよなぁ…
「それをねぇ、私のよく知ってるキミがねぇ……暇なの?ちょっと見たら飽きるでしょ」
「…いやでも、毎回見てますけど。」
「毎回?!昨日も?」
「はい。まぁ。」
「どうして?」
「俺もよっぽどのファンなんで。」
師/匠が吹き出して、また扇子で顔を隠した。
「サインください」
師/匠が声を出して笑う。ファンの人には本当にめったに見られない場面だ。
本当はよく笑う人なんだけどなぁ
やばいなぁ…俺まで師/匠がかわいいとか思っちゃってるかもしれない。

あいつのせいだわ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

スタッフが師/匠宅に行く用事が無いのでいつもどこで何やってるかわからない無理矢理な仕事させております。
師/匠宅も色々改造しております。ご了承ください。

連投規制につき最後は携帯より。長い時間失礼しました。

409夏祭り1/2 :2011/08/15(月) 02:39:46.50 ID:6zgxohK00
豆消防車なバンドの秋田×北海道。
北海道視点。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

さっきまでの夕立は、気温を下げる為にはあまり役に立たなかったらしい。
が、日没から少し時間がたった今は、直射日光を浴びずに済む分、少しはましになっていた。
会場内を、特に目的も無く一人歩き回っていたが、たまたま通りかかったヨーヨー釣りがちょうど空いていたのでやってみる事にした。
とりあえず1つに狙いを定めて鉤を引っ掛けようとするが、なかなか上手くいかない。
幸いというか紐は意外と切れにくく、しばらくの間夢中になって格闘していた。
途中、もう一人客が隣に来たようだったが、夢中になっていたので大して気にしなかった。
ようやくお目当てを釣り上げる。それとほぼ同時に、隣の人もうまくいったらしい。
そこで初めて隣が誰なのかに気づく。
「だいご?」
まさかここで会うとは思わなかった。
「もしかして、今まで気づかなかったんですか?俺は見てすぐ分かったから隣に行ったのに」
確かにかなり夢中になってはいたが、すぐ隣にいたのに気づかなかったとはなあ…と思いながら頷く。
1人?と訊ねるとええ、と答えが返ってきたので、そのまま誘って一緒に回る事にする。

410夏祭り2/2 :2011/08/15(月) 02:43:10.20 ID:6zgxohK00
最終日な上に、花火もあったため、その日はどこも人でいっぱいだった。
そんな中で会場内をあちこち見て回り、花火見物の為に少しでも良い場所をと歩き回り、
加えて普段着慣れない和装だった事もあって、祭りが終わる頃には思ったより疲れてしまっていた。
帰る途中、小さな公園を見つけ、少し休んでいこうかと提案される。
中にはベンチが1つだけあったが、夕方の雨で半分位濡れてしまっていた。
これは1人しか座れないんじゃ…と思っていると、だいごが先に座り、そして腕を引っ張られた。
不意の動きに驚き、されるがままに引き寄せられる。そして、バランスを崩したところを抱えるようにして膝の上に横抱きの体勢で座らされた。
「ち、ちょっとっ、待っ…」
慌てて立ち上がろうとしたが、上半身を抱くように押さえられる。それでも少し抵抗を試みたが、力が違いすぎて結局諦めてしまった。
「大丈夫ですよ、人いないし暗いし」
言いながら片手で頭から背中を撫でられる。
しばらくそうしているうちに次第に緊張が解け、それにつれて疲れていた事を思い出した。

そのまま身体を預けて目を閉じた後は、時間を置かずに眠りに引き込まれていった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

この2人大好きだ、なかなか萌え同志がいないけど。

411風と木の名無しさん :2011/08/15(月) 23:18:01.79 ID:9pADZo5b0
>>405
変態の一人なので読みながら架空のスタッフの意見に同意しまくりでしたw
照れる師/匠可愛すぎです。ありがとうございました!

412玩具屋@ :2011/08/16(火) 00:35:32.56 ID:M7fwm8RHO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル(先輩←後輩)

若葉はすっかり青葉になってしまった。
伸び茂った木々の緑。騒々しいばかりの蝉しぐれ。暦のうえでは秋だが、外はまだまだ夏だ。
だけど多分、新型ピストンバイブの開発に没頭しているボスは、夏の訪れに気づいていない。
もう、お盆ですよー。先輩の初盆なのにいいのかな?胡瓜の馬も茄子の牛も作ってないんじゃないですか。
そういえば、おととし、会長の初盆の時、先輩はバイブとローターを用意してた。
「バイブが胡瓜のかわり。茄子はローターでよくね?フォルムが似てるから問題ねーよ」
両手に弊社のナイト用メンズ玩具を持って、先輩は眩しい笑顔で笑ってた。
ご先祖さまに早く帰って来て欲しいから、お迎えは胡瓜のお馬。帰りは、ゆっくり戻って欲しいから、歩みの遅い牛。確かそんな理由でこの国じゃ、盆に胡瓜の馬と茄子の牛をそなえるようになったはずだけど、
先輩はそこらへん、絶対、わかってなかった気がするなぁ。
まあ、会長はバイブやローターを使って攻めるのが、とにかく大好きな人だったから、ナイス供え物なんて思ってたかもだけど。
社長、元気かな〜。向こうで鬼のパンツずりおろして、「あっ、あん、あ、あぁぁぁぁ!!」って、喘がせてそうだ。汗ばみ悶える鬼が浮かぶよ。
それにしても、ほぼ老衰だった社長はともかく、今年28歳の先輩が、もうこの世にいない人だなんて嘘みたいだ。
ボスがつくらないなら、僕が胡瓜と茄子で馬と牛をつくろうか。僕は先輩と先輩が作る、平明で詩情あふれるバイブが好きだった。
先輩は自作のバイブを必ず自分のお尻でチェックする人で、僕やボスが作業してる脇で足を投げ出し、
アロマオイルで後孔をキラキラさせて、バイブを出したり入れたりしていた。
アナルでオナニーをしている時の先輩は、疑いようがなく美しかった。

413玩具屋 @つづき(完) :2011/08/16(火) 00:39:17.59 ID:M7fwm8RHO
いつも、いつも目を奪われた。引き込まれた。見る上に見た。マジ、ガン見してました。ごめんなさい。
いつか、先輩の大きなうるおいのある瞳だとか、イッてる時のはかなげな表情が、
記憶の層の奥に埋もれて眠ってしまう日がくるのかな……。
物思いにふけっていたらボスに呼ばれた。そうして、フォルムは胡瓜な、出来立ての赤いピストンバイブを見せられた。
「イメージは赤兎馬。あいつの初盆に、間に合って良かったぜ!」
嗚呼……、この人、ちゃんと覚えていたんだ。
「早く帰ってこねーかな……」
窓の外を眺めて、ボスは遠い目をした。大丈夫です。赤い馬はきっと3倍速いと思います。
赤いピストンバイブは名馬になって、先輩を悦ばしながら3倍速で彼岸から駆けてくるはずです。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

414訂正 :2011/08/16(火) 00:45:58.66 ID:M7fwm8RHO
×社長
○会長

何箇所か書き間違えたorz...ごめんなさい。
おととし死んだのが会長。
今年、初盆なのが先輩です。
社長は出番無し。

415おっさん vs 巨乳 1/6 :2011/08/16(火) 04:28:11.24 ID:8OJc58Bq0
半生注意。U者良彦と魔王の城より、U者→弾正……か? 萌えません。
書いてるうちにどんどん801じゃなくなってきた気がするが気にしない。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 どうにもこうにも背が痛い。耐えられぬほどの痛みではないが、衣服を脱ぐ時、横になる時、
ふとしたはずみで背がどこかに触れると、ずんとした痛みが襲ってくる。
 気になって背に手をやれば、かさぶたが並ぶ様がざらりと指先に感じられ、
傷がかなり大きいことと、それが治りつつあるのだということが分かる。

 これほどの傷であるにもかかわらず、己を傷つけたのが何者であるのか分からないとは奇妙なものだ。
心当たりはあるかと仲間に尋ねてみても、誰もが知らぬ存ぜぬとそっけない。

 そのそっけない三者のうちの一人、弾正が中でもとりわけ気になった。
彼も他者と同様、聞かれれば知らんと答えるが、答える時にいちいち目をそらす。
声にはいつも通りの力強さがあるが、顔には後ろめたいような表情が浮かんでいる。

 何か自分には言ってはならない理由があるのだろう。それは分かる。
だが、弾正がそれを隠していることそのものに苦しみ、忸怩たる思いを抱えて
悩んでいるかのように見えることが、良彦はどうにも心苦しかった。

416おっさん vs 巨乳 2/6 :2011/08/16(火) 04:30:16.70 ID:8OJc58Bq0
「弾正さん、話があります」
良彦の突然の申し出に、少しとまどったように弾正は答えた。
「なんだ?」
「私の背中の傷についてですが」
「知らんと言った筈だ」
「言いにくいことなのかもしれませんが、教えてもらえませんか?
私のこの背中の傷が、後々の戦いで差し触りになるかもしれません。
その時になって、知らなかったから仕方ないとは言いたくないのです。
私は勇者です。例えそれが私にとって恥ずべきことだったとしても、
自分の身に起きたことをありのままに知っておきたい。
いや、もし弾正さんにとってあまりにも恥ずかしいことだから言えないのだとしても、
それを聞いても私は決して笑いません。私は勇者ですから!」
「知らんと言ってるだろうが!」
どれほど熱心に訴えても、弾正は答えようとはしなかった。

翌日も良彦は尋ねた。
「弾正さん、お話が」
「傷のことなら俺は知らん」

翌々日も良彦は尋ねた。
「弾正さん、私の」
「知らんぞ」

その翌日も良彦は尋ねた。
「弾正さん、教えてください」
「知らんというのに」

417おっさん vs 巨乳 3/6 :2011/08/16(火) 04:32:26.14 ID:8OJc58Bq0
※さらにその翌日も良彦は尋ねた。
「弾正さん、お願いです」
「知らん!」

さらにその翌日も良彦は尋ねた。
「弾正さん、あの」
「知らんと言ったら知らん!」

さらにその翌日も良彦は尋ねた。
「弾正さん」
「いい加減にあきらめたらどうだ?」

さらにその翌日も良彦は尋ねた。
「だんじょ」
「いい加減にしろっ!」

さらにその翌日も良彦は尋ねた。
「だん」
「知らないのよホントーに勘弁してよもう!」※

(※〜※を貴方のお好きなだけ繰り返してお読み下さい)

さらにその翌日も良彦は尋ねた。
「だ」
「うぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 勇者は、すごくしつこかった。

418風と木の名無しさん :2011/08/16(火) 04:43:53.29 ID:Ek3NLHfX0
sien

419おっさん vs 巨乳 4/6 :2011/08/16(火) 04:55:22.36 ID:uQKpXRfq0
「おっさんさぁ、もうめんどくさいから言っちゃえば? まずかったらどうせまた仏ビームで記憶消されんでしょ」
「おっさんはやめろ。……俺が混乱したばっかりに良彦を傷つけたことは確かなんだ。
その上俺は、良彦の代わりに奇神の兜を手に入れることもできなかった……」

 意図したことではないにしろ、結果的に良彦を傷付けてしまった。
その自責の念から、自分が奇神の兜を手に入れなければと思った。
傷つき死んでしまうかもしれないことも覚悟の上で。

「おっさんのせいじゃないって。仕方ないよ」
「あんまり自分を責めない方がいいぞ? 良彦の傷も治ってきてるんだし」
 そこまで言って、芽レ部は梨園という女を思い出した。
弾正によって傷ついた良彦を担ぎこんだ診療所にいた、巨乳、しかもすごく巨乳の女である。
その巨乳に夢中になり、巨乳に頭を支配され、魔王の事をすっかり忘れた良彦は、
仏のビームを浴びて、弾正に斬られてから村を出るまでの記憶を消されたのだ。

「傷の事より巨乳の方が問題じゃないか? うかつに話して梨園の事を思い出したら絶対巨乳も思い出すよ?
かなりクリアに思い出すよ? んでまた巨乳で頭いっぱいになって、魔王なんかより巨乳、
巨乳巨乳叫びながら野山を駆け巡るよ?
つーか俺も今、脳内に鮮やかに巨乳を思い出したし。ゆっさゆっさ揺れてるとこまで完璧に思い出したし」
「巨乳巨乳うるせーんだよ喧嘩売ってんのか!」

 紫が芽レ部を引っ込むやつで刺し殺そうとした時、部屋の引き戸がガラリと開いた。
「どうして言ってくれなかったんですか!」
「良彦!」
「聞いてたのか」
「立ち聞きかよ」

420おっさん vs 巨乳 5/6 :2011/08/16(火) 04:58:47.26 ID:uQKpXRfq0
「なんてことだ……」
良彦は芽レ部と紫などまるでその場にいないかのように華麗にスルーし、
もどかしげに弾正の傍まで駆け寄り、そして物凄い勢いで抱きついた。ひしと。

 抱きついたまま、弾正の顔を見つめて語りだす。
「近い! 顔近い!」
「私の為に奇神の兜を手に入れようとしてくれた弾正さんの愛に……、
他の誰でもない、この私のためだけに、命がけで戦ってくれた弾正さんの愛に……、
今までどうして気付かなかったんだ! 私はなんて愚かだったんだ!
私は間違っていました。巨乳が私の為に命がけで戦ってくれるでしょうか?
巨乳が私を傷つけたことで自分自身を責め続け、苦しむことがあるでしょうか?
いや、無い。巨乳はただそこで揺れ続けることしかできない。ただそれだけだっ!」
「あのな良彦」

 この辺でいろいろほとばしってきたらしく、感極まった良彦は弾正に抱きついたまま涙ぐんだ。
「弾正さん、今まで私に言えなかったのは照れくさかったからですね? 分かります。
ですが巨乳にどれほど目が釘付けになっても、どれほど揉みしだいても弾正さんの私に対する愛には勝てません!
いいでしょう! 受け止めてみせましょう貴方の愛を! どうぞ私にちゅーして下さい!
巨乳より熱く柔らかく情熱的なちゅーをして下さい! いや、貴方はちゅーをするべきなんだ!
そのダンディなもみ上げを全力で私にこすりつけつつ、めいっぱいいやらしくちゅーするべきなんだ!」
「良彦ちょっと何言ってんだか分からん……」
「弾正さん、ちゅーはちょっぴり恥ずかしいかもしれません。だが私は決して笑いません! 勇者ですから!」

421おっさん vs 巨乳 6/6 :2011/08/16(火) 05:01:16.87 ID:uQKpXRfq0
 唇をちゅーに固定したまま押し倒す勢いで迫る良彦と、必死にそれをかわそうとする弾正を、
魔法使いと素人の女が並んでぼんやりと眺めていた。

「……俺は揉みしだきたいけどね、巨乳を」
つぶやいた芽レ部の後頭部に、ちょっとこれマジで死ぬよねレベルのチョップが横から振り下ろされたが、
今の弾正と勇者にとって、そんなことはどうでもいいことであった。

 芽レ部はゆっくりとその場に崩れ落ち、良彦は弾正に力技で投げ飛ばされた。ちゅーしてもらえなかった。


良彦は走った。野を山を森を走った。走りながら声の限り叫んだ。
「南の魔法使いぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい!
弾正さんがわたしにちゅーしたくてたまらなくなる魔法をかけろぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
勇者の魂の叫びは野山に響き渡り、こだまとなって木々を揺らした。

 弾正は、巨乳に勝った。

「……兄様。ヒサは心配です」
ヒサ、これまでに無いくらい心の底からの言葉であった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

さるさんに引っかかったので繋ぎ変えたため、途中でID変わってます。すみません。
>>418さん、支援感謝です。

422風と木の名無しさん :2011/08/16(火) 08:16:10.45 ID:oicRJwP70
>>415
本編のテイストそのままで朝から笑わせて頂きましたw
U者の天然真っ直ぐっぷりが素晴らしすぎる…!
楽しさありがとう

423風と木の名無しさん :2011/08/16(火) 10:32:44.99 ID:ndStwX4W0
>>412
お盆をネタになんちゅうエロいもんをっ…!
でも胡瓜と茄子ってエロいよねwGJでした!

424玩具屋A 1/4 :2011/08/16(火) 22:47:38.50 ID:M7fwm8RHO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル(ボス←先輩)


その昔、故・会長は弟さんに「俺は最強のバイブをつくる。お前は最強のオナホをつくれ」と言い、
夜用メンズ玩具の工房、城東製作所(kitou Factory Company, Limited)を立ち上げた。
最強のオナホを突いても、決して虚しくならないバイブ。俺は、そんな最強のバイブが作りたくて、城東製作所の職人になった。
まさか、こころざし半ばで自分が他界するなんて思ってなくて、
死んだ直後は、意識が混濁してたし、いくつもの手が乗れ乗れって背中を押すから、舟に乗り込んで向こう岸に渡ってしまって
気がつけばサンなんとかの川を越えていた。ありえねーと思ったけど、
盆に親族が迎えの馬を寄越すまで帰れないって、一緒に川を渡った人に聞かされた。
俺、ガチでみなしごだったから、親族とかいないし、サンタみたく馬もこねーかもなって凹んだ。


425玩具屋A 2/4 :2011/08/16(火) 22:50:42.78 ID:M7fwm8RHO
盆が来て、よそ様のどう見ても胡瓜な迎え馬が次々とやって来た。馬どもが競馬場みたく鼻先並べてるのを人ごとの目で眺めてたら、もろバイブな馬が俺の前でいなないた。
真っ赤で、超かっこいい馬だった。直感で工房からの迎えだってわかった。
何て言うか、身内こそいねーけど工房から迎えが来たのが、とにかくもう嬉しくて、いそいそ跨がった瞬間、
赤い馬はピストン運動をはじめた。あぁッ……、この馬、ボスのお手製バイブの化身だ。間違いねぇ。
「バイブのキモはピストン」。ボスはいつも、そう言ってた。死んでからは、そこそこ清く正しい生活をしてたから、久しぶりの刺激はたまらなかった。
バイブは、普通のセックスより動きのロスがない。
気持ち良さに翻弄された。イキまくってるうちに工房着。うちの馬は、よその馬より3倍近く速かった。
帰省中、たぶん、俺はいわゆるゴーストで、ボスも後輩も、俺のことが見えてなかったし、声も聞こえちゃいなかった。
それでも盆休みは楽しくて、「盆明け」だからって、16日の夕方に霊を帰す送り火とかいう火を焚かれた時、煙りが目にしみて泣けてきた。


426玩具屋A 3/4 :2011/08/16(火) 22:53:27.46 ID:M7fwm8RHO
まだ、帰りたくなかった。ずっとこの世にいたい。だって俺、まだ最強のバイブをつくってねーよ。
ボスは盆休み返上で、彼岸過ぎ迄に納品しなければいけない、AC電源で力強いピストン運動をする新型マシンの製作に励んでた。
後輩は、前立腺サーチ機能を搭載したバイブづくりに燃えていた。羨ましくてたまらない。
生前、俺はアナル初心者も気持ちよくなれる、ゆったりとしたストロークのロマンス・バイブを探求してた。
この世にはバイブでしか味わえない快感がまだまだあるはずなのに、俺はバイブを極めることがもうできない。
動きはなめらかで、スロー。だけどちゃんと刺激的なバイブを作りたかった。
道を踏み外しちゃった男たちだけが味わえる、射精より気持ちいいフィニッシュに、
もっともっと貢献したかった。前立腺も中の奥もとろける、官能ライフをアシストするバイブを作りたかった。
俺が思う最強のバイブは、ただスカッとするだけじゃない、余韻が長く残る、心慰められるようなバイブだ。そんなバイブを俺はつくれるって思ってた。
バイブづくりも、アナルでオナニーするのも、本当マジで好きだった。もっとエロくなりたいし、エロい玩具をつくりたかった。
もーね、この世に未練たらたら。成仏なんて、できねーし、したくねーよ。
それにまだ、ボスに確かめたい事だってあるんだぜ。


427玩具屋A 4/4 :2011/08/16(火) 22:56:47.21 ID:M7fwm8RHO
なぁ、ボス?工房で徹夜してた時、俺が睡魔に負けてうたた寝してたら、あんたキスしたよな?
目ぇ閉じて寝たふりしてたけど、わかったぜ。あれは絶対にキスだった。フェチなのか、あえて唇をさけたのか、
ジンチュウっていうんだっけ? 唇の上で鼻の下の、溝? みたいなアソコにキス落としやがったよな。
俺はバイブのサンプルができたら、具合を調べるのに、ボスや後輩がいても平気で股開いて挿入したりしてたから、
ボスには、後ろの孔も俺のジュニアも、ジュニアが気持ち良くて濡れちゃってるのも、日常的に見られてたのに、
寝顔を見られてたかもしれないのが、すげー恥ずかしかった。
ジンチュウにキスされたのも超ドキドキしたんだ。俺はただの、アナルバイブ好きで、男好きじゃないから、
キスされた瞬間、バイブで遊んで喘いでいる時みたく先端がうるんだのは、絶対にあんたのせいだよ。
あんたは、金ない時にメシ食わせてくれたり、煮詰まってる時にアドバイスくれたり、
太過ぎるバイブを試して孔を痛めた時、指の腹で優しく薬を塗ってくれた。黄色い軟膏をたっぷり馴染ませてくれたの覚えてる。
俺、あの晩、差し込まれたあんたの指に感じてた。ジンジンしてたんだぜ。
背高のとことか、エロそうな垂れ目の優男面も嫌いじゃねーよ。
男にキスされて感じたのは、あんただからなんだ。なあ、あのキス、何だったんだよ。
死んでから思い知ったぜ。俺、あんたが好きだ。皆で温泉行ったとき見たあんたの持ち物は、
俺がつくるバイブより細いし短小だし、持ちだって遥かに悪いと思うんだ。だけど、突かれたかった。あんたを、くわえ込んでみたかったです。
送り火が燃えてる。帰りたくねーよ。だけど、ローターめいた送り牛が俺を促すんだ。嗚呼、お別れだ。俺は透けた手で工房の皆に手を振った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

428風と木の名無しさん :2011/08/16(火) 23:43:55.68 ID:j9gd/5rt0
>>424
つい思わず繰り返し読んだ。
端から端までエロいのに心温まる。
遡って前作も見ました。
ナイスSSうp乙でした。いい職場だなあもうw

429風と木の名無しさん :2011/08/17(水) 15:01:34.25 ID:rj8dhVUmO
>>415
脳内映像再生余裕でした
義彦真面目受けすぎるwww

430風と木の名無しさん :2011/08/17(水) 17:35:40.93 ID:XMUWVMgL0
>>424
前作と合わせて何だこの謎の感動w
一見アホエロなのに根底に淡い恋心とか悲恋とかがあって切な萌えた…
gjを捧げたい!

431風と木の名無しさん :2011/08/18(木) 01:18:47.46 ID:Mtwf3JWqO
>>415
チョイキルトGJ!
そのまま本編でも違和感ないくらい素晴らしいですw
ちゅーして欲しい天然襲い受U者が可愛すぎる

ありがとうございました!

432風と木の名無しさん :2011/08/18(木) 18:50:44.29 ID:xJUejUQH0
>>415
脳内で見事に再生されて噴いたwそして勿論萌えた
ありがとう

433風と木の名無しさん :2011/08/18(木) 22:35:46.86 ID:n9qn+eW20
U者って気真面目すぎてむしろ馬鹿なんじゃないかとたまに思うよねw
そんな感じが良く出てて面白い

434玩具屋B 1/3 :2011/08/21(日) 12:47:45.03 ID:3bX2wgeAO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル(先輩←ボス)


「花に嵐の例えもあるぜ? バイブは男の代わりになれるけど、男はバイブの代わりになれねーよ」
「先輩、それ逆じゃないですか?? 『花に嵐』の意味わかってます?」
「知ってますぅー。花を楽しんでんのに、桜が風でイクことだろ? まだ、盛っていて欲しいのに、ぴゅーって終わる感じは、男も桜と同じだぜ? その点、バイブは萎えたりしねーもん!」
病床のバイブ職人は、後輩と突っ込みどころ満載の会話をしていた。
俺は可愛い弟子どもを生暖かい目でみながら、病人がナースやドクターに見つからないよう病室に持ち込んだ、
静音設計のバイブをサイドボードから発掘し、没収した。ハイパワーながら50dB以下。とても静かなこのバイブは、音を気にせずオナれるすぐれものだ。
「ボス〜」
返して下さいよぉーと泣きつく病人を俺は叱った。
「消灯後、こそこそオナってるから退院できねーんだよ。元気になるまで慎め」
己の穴で、自作バイブの動きや長さ、太さ、硬さを必ず確かめるご自愛好きのバイブ職人は、不満そうに唇を尖らせ、笑顔でほざいた。
「病院のベッドって、興奮するんですよ。マジで!」
口角がキュッと上がった、好奇心旺盛そうなエロいエロい笑顔だった。そう、あの日もあいつは、実に元気な患者だった。
まさか翌日、雪だるまが消えるようにスッと逝ってしまうなんて思っていなかった。
あいつはもういない。月に叢雲、花に風。オナニーぐらい、思う存分させてやればよかったぜ。

435玩具屋B 2/3 :2011/08/21(日) 12:50:25.10 ID:3bX2wgeAO

世間的に男のアナルオナニーは、まだまだマイナーでアブノーマルなホビーだ。
メンズ用アナル玩具を作っているうちの工房でさえ、自作バイブでMを調教したいSばかりで、アナニストはあいつだけだった。
だけど日中、工房で、あっけらかんとバイブを挿入し、サンプルチェックをしているあいつを見ていたら、
アナルを慰めることが、忌むべき浅ましい自慰には思えなかった。
バイブをハメると満たされる。後ろでイクと、受け止めても受け止めても、受け止め切れないほどの快感を味わえる。
生前あいつは、そんな事を言ってキラキラ笑ってた。明るく笑うあいつの笑顔が、今も心を離れない。
いつだって、あいつの一番いい笑顔を引き出すのはバイブだった。
工房でバイブ職人の頭をしてる俺は、バイブが生身の男では埋められない充実感や幸福感を与えてくれる事を知っている。
バイブの力は侮れない。見た目、技術、素材。何より用途。時代のニーズと共にバイブは鮮やかに変化してきた。
身体。喉。心。バイブは意外と奥まで届く。凄えんだよ、バイブは。単なるペニスの代替品なんかじゃねえ。
だけど俺は、嬉々としてバイブを語るあいつの目が、輝けば輝くほど、バイブより俺が、あいつを笑顔にしたくなった。
あいつの中の、バイブでさえ届かない場所を、俺が激しく刺激したかった。


436玩具屋B 3/3 :2011/08/21(日) 12:53:06.38 ID:3bX2wgeAO

今、たまらなく、あいつのことが気にかかる。
霊感とやらが、これっぽっちもない俺は、盆に帰って来てたはずの、あいつの声さえ聞き取れやしなかった。
盆はあっという間に開け、Uターンラッシュも落ち着いた今日この頃。
あいつも、向こうに無事、着いただろうか。最強のバイブを作る。あいつには、そんなどでかい夢があったから、
この世に未練たっぷりで、浮遊霊みたくフヨフヨしてそうな気がするぜ?
俺がそなえた、深紅のバイブと濃紺のローターが、あいつをちゃんと昇天させてくれてればいいんだが。
一人前のバイブ職人にして、生粋のアナニスト。あいつは、誰よりもバイブと共にあった。
バイブを愛し、バイブに愛されていた。そんなあいつの後釜が、きょう工房に来る。
あいつを失い、工房にはアナルでバイブの良し悪しを見極めることができる男がいなくなった。
ずっと求人を出してはいたが、アナルバイブ経験者の応募はなく、あいつの席はしばらく空いたままだった。
新人は、性感開発とバイブ改造が趣味の、ほの暗い美青年だ。
面接時、とつとつと、「バイブは何のためにあるのか。一生かけて、その答えを見つけたい」と語ったのが実に印象的だった。
前任者の穴を埋めるのは大変だせ。諦めず、腐らず、負けるな!

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

437風と木の名無しさん :2011/08/22(月) 12:15:41.27 ID:vpdEtfsK0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
忍たま(落第忍者)乱太郎で伏木蔵×伊作。スカネタです

(くっ……僕としたことが……)

――――六年は組保健委員長の善法寺伊作は、自らの不注意を後悔していた。
少し前、伊作の煎じた薬を一年生ろ組の保健委員の鶴町伏木蔵が誤って口に入れてしまったのだ。
だが、それは伊作の意図とは裏腹の効果を発揮し、伏木蔵の力“何百万倍”にも強化することとなってしまった。

「……伊作先輩ってば、可愛いです……」

薬物の効果により強化された力の前には、伊作の豊富な薬の知識も、力も、何の役にも立たない。
かつては、5つも年下で10歳あった伏木蔵に、伊作は 赤子の手を捻るがごとく 組み伏せられてしまった。
そして今、伊作は力なく四つん這いになり、伏木蔵はそんな彼を愛でるかのような言葉を漏らしている。
どうやら、伊作が調合した薬は、力を増加させる効果に加え、アルコールを摂取した時のような効果もあるようだ。

438>>437の続き :2011/08/22(月) 12:17:05.62 ID:vpdEtfsK0
「先輩……浣腸、しちゃいますね、浣腸……」
「伏木蔵っ!! やめろっ!! ひっ、ひゃううううっ!?」

伏木蔵は、伊作の褌を取ってゆく。
そうして、ひっそりと息づく窄まりを注射器の先端で貫いた。
伏木蔵が薬液を注射してゆくたびに、冷たい液体が 伊作の直腸に流れ込んでゆく。
その不快感が、伊作から冷静さを剥ぎ取り、均整の取れた肢体が激しく痙攣する。

「ふぅ……うぐ、っ!! く、くるし……!!」

しかも、その浣腸液の量たるや、常人に投与限界量の2倍はあるだろう。
冷たい液は伊作から体温を奪いながら直腸の隅々まで染み渡り、その内側にある固形便を攪拌してゆく。

「うふふふふ……それじゃあ、もっと足を開いて〜〜」
「ふ、伏木蔵……何をするつもりだ!?」

439風と木の名無しさん :2011/08/22(月) 12:25:25.29 ID:b1uQGcZd0
すいません>>437-438の訂正です。
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ

440忍たま1/6 :2011/08/22(月) 12:27:53.39 ID:b1uQGcZd0
(くっ……僕としたことが……)

――――六年は組保健委員長の善法寺伊作は、自らの不注意を後悔していた。
少し前、伊作の煎じた薬を一年生ろ組の保健委員の鶴町伏木蔵が誤って口に入れてしまったのだ。
だが、それは伊作の意図とは裏腹の効果を発揮し、伏木蔵の力“何百万倍”にも強化することとなってしまった。

「……伊作先輩ってば、可愛いです……」

薬物の効果により強化された力の前には、伊作の豊富な薬の知識も、力も、何の役にも立たない。
かつては、5つも年下で10歳あった伏木蔵に、伊作は 赤子の手を捻るがごとく 組み伏せられてしまった。
そして今、伊作は力なく四つん這いになり、伏木蔵はそんな彼を愛でるかのような言葉を漏らしている。
どうやら、伊作が調合した薬は、力を増加させる効果に加え、アルコールを摂取した時のような効果もあるようだ。

441忍たま2/6 :2011/08/22(月) 12:32:01.69 ID:b1uQGcZd0
「先輩……浣腸、しちゃいますね、浣腸……」
「伏木蔵っ!! やめろっ!! ひっ、ひゃううううっ!?」

伏木蔵は、伊作の褌を取ってゆく。
そうして、ひっそりと息づく窄まりを注射器の先端で貫いた。
伏木蔵が薬液を注射してゆくたびに、冷たい液体が 伊作の直腸に流れ込んでゆく。
その不快感が、伊作から冷静さを剥ぎ取り、均整の取れた肢体が激しく痙攣する。

「ふぅ……うぐ、っ!! く、くるし……!!」

しかも、その浣腸液の量たるや、常人に投与限界量の2倍はあるだろう。
冷たい液は伊作から体温を奪いながら直腸の隅々まで染み渡り、その内側にある固形便を攪拌してゆく。

「うふふふふ……それじゃあ、もっと足を開いて〜〜」
「ふ、伏木蔵……何をするつもりだ!?」

442忍たま3/6 :2011/08/22(月) 12:43:41.17 ID:dsQuoRMi0
身体の内側から膨れ上がるような圧迫感に 伊作は息を詰まらせながら耐えるも
容赦の無い伏木蔵の魔の手が襲い掛かる。伊作は四つん這いのまま抵抗しようとするが
今の伏木蔵には力では敵わず、まして浣腸薬を投与されていては手も足も出ない。
簡単に抑えつけられてしまい、四つん這い体勢のままロープで身体を固定されてしまう。

「ま、まさか……や、やめろっ!! 不注意だった僕が悪かった! 早くこの拘束を解いてくれ――」
「さすがは先輩。 もう、わかりましたか? 僕のしたいこと」

ぐぎゅるるるるるるるるるる……!!

伊作は、その体勢に、血の気を引かせながらうろたえる。
浣腸薬は直腸内を巡りきり、もはや何時 肛門が結界して糞便を噴出してもおかしくはない。
けれども伊作は、この場所で後輩に醜態をみせたくないと思った

「や、やめろっ! やめ――――っく、ふぐぅぅっ!? うぁぁ……!!」

ぶぴゅぅぅぅ……!!

443忍たま4/6 :2011/08/22(月) 12:47:55.62 ID:dsQuoRMi0
伊作の悲痛な命令の言葉は、次の瞬間 耐え切れないような苦悶の呻き声へと変わり
尻穴の窄まりから下品な水音が響いた。浣腸液と糞便の入り混じった茶色の液体が
僅かに肛門から滴り、医務室の床を汚す。
自らの排泄したものとはいえ、糞便の悪臭と汚辱感に嫌悪を露にする。
伊作は目の端に涙さえ浮かべ、必死の形相で伏木蔵に許しを請うた。

「伏木蔵、頼むからもう許してくれ……!!」
「…………ふーん、“許してくれ”?”ごめんなさい”じゃないんですね?」

次の瞬間、訝しげな伏木蔵の声が響いた。
伊作の腹部を 伏木蔵の掌が優しく擦り、そのまま、じわじわと圧迫が加えられてゆく。
伊作は肛門に全神経を集中させて耐えるも、このままでは決壊するのは時間の問題だ。

「うぁ、ぁぅぅっ!! うくっ! うぁああああぁっ!!
 ご、ごめんなさい!伏木蔵……!  トイレにぃ……! トイレに行かせてっ!!」

444忍たま5/6 :2011/08/22(月) 12:54:21.70 ID:6lOI/n+E0
プライドも何もかもをかなぐり捨て、伊作は絶叫するように伏木蔵に懇願した。
瞳からポロポロと涙を零しながら、肛門からはポタポタと琥珀色の汚液を滴らせる。
一切の余裕すらも消えうせたブザマな様子からは、“みんなのお兄さん”と呼ばれていた
優しい彼を想像することは誰にも出来はしまい。
尤も、伊作のそんな哀願すらも――――

「だぁ〜め、今更遅いですよ。そ〜れ」

――――伏木蔵の目には、最高学年としての“あざとさ”としか映らなかった。
掛け声と共に、伏木蔵は 伊作の腹部に 強烈な一押しを加える。

「ひぃっ! やっ、ひゃっ、あううっ!! ダメっ!! ダメえええええっ!!」

ぶぴゅううううううっ!!ぶり、ぶりりっ!! ぶりゅううぅっ!!

445忍たま6/6 :2011/08/22(月) 13:01:07.00 ID:9RcHr8V+0
伏木蔵の加えた圧迫によって、伊作の尻穴からぐじゅぐじゅに攪拌された糞便が迸る。
決壊してしまった肛門を押さえるほどの精神力は、もはや伊作に望むべくもない。
腸液と浣腸液、消化が完了した汚物が混濁した最悪の汚水は
重力に導かれるままにますます床を汚していった。

「すごいスリルー。先輩……後輩の前で脱糞した気分は!」
「んっ、んぅぅっ……」
もはや伊作激しい羞恥心と壊されたプライド残るだけだった。

――――――――――――――――END
時間は夜中で寝姿です。伊作は原作の黒髪、アニメの茶髪どちらでも自由に想像していいです

446風と木の名無しさん :2011/08/22(月) 13:04:09.51 ID:9RcHr8V+0
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘

447風と木の名無しさん :2011/08/24(水) 23:20:52.07 ID:YT2BAwERO
こいつかよ…

448風と木の名無しさん :2011/08/27(土) 01:20:18.15 ID:Tj+QxKDOO
>>436
最後の「前任者の〜」一文でワロタ。GJ

449玩具屋C 1/4 :2011/08/27(土) 15:37:45.79 ID:bgl6ihBSO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル(年下の先輩←新入り)


よく熾った炭は茜色だ。夕焼け空のように美しい。火力は十分。溶けた銅と錫が土器の中で混ざり、ピカピカの10円玉みたく光ってる。
もうすぐだ。もうすぐ日本最古のバイブが完成する。
俺はいま、転職先の工房で、某工業大学の先生方と飛鳥時代の青銅製バイブの復元に取り組んでいる。
復元するにあたり、銅:錫の成分比で悩んだが、「周礼考工記」という書物に、青銅の「矛の類」は銅:錫比4:1と記されていた為
俺は先生方に「4:1で」と主張した。たとえどんなに文献をあさっても、青銅製バイブの成分比なんて出てくるわけがない。
だったら、もう「矛の類」でいいんじゃないかと俺は思う。
バイブは立派な矛の類だ。
「バイブを矛に、オナホを盾に例えるのは、珍しくありません。業界の常識です」
俺は4:1をゴリ押しし、いま、銅と錫は青銅となり、珪素分の多い耐熱土器の中で熱く煮え立っている。
本当のところ、俺はツルッとしたメタル系のバイブより、モチッとしたシリコン系が好きなのだが、
この日本最古のバイブには胸が高鳴る。早く作り上げたい。使ってみたくてたまらない。

450玩具屋C 2/4 :2011/08/27(土) 15:40:21.13 ID:bgl6ihBSO

それにしても、飛鳥時代に、振動こそしないがバイブがあったなんて驚きだ。腐りきっている俺は、ついつい聖徳太子と蘇我蝦夷の閨を妄想してしまう。
あられもない姿で、熱い吐息を漏らす容顔美麗な太子。蝦夷の熱い口づけでほぐされた太子の後孔は濡れそぼり、股間も熱く潤いはじめてる。
蝦夷が欲しくて欲しくてたまらない。そんな太子の情を通ずる穴に、遣唐使が持ち帰った青銅製の張形を穿つ蝦夷。
「私は達すれば萎えてしまいます。その点、張形は幾久しい」。蝦夷っ、蝦夷っと、涙を頬に流す太子を笑顔であしらい、
張形を手に延々と、太子に快楽を送り続ける蝦夷。「あっ…ぁあ…っ」 。蝦夷の執拗な責めに
大きく開いた両脚を激しく震わせて達する太子。蝦夷は股の間をしとどに濡らした太子に傅き、
柔らかな美しい布で残滓を清め、恥じらう太子の先端を、甘く優しく強く吸う。
「あっ…ああぁっ、んっ…、ああっ……!」
達したばかりにもかかわらず太子は、…stop!! 鎮まれ自分。まだ仕事中だ。つい妄想が駆け出してしまった。
幸い俺は、感情が顔に出ないタイプの人間だ。よく爬虫類に例えられる目と蟷螂みたいだと言われるV字の顎を持っている。良からぬ事を考えて
一人激しく萌えていたが、傍らの先生方は気づいてない。俺は、炭の燃え具合を一心に見ていたフリをした。
「集中して下さい。火を扱ってるんですよ」
学者先生にはバレていなかったが、年下の先輩には見透かされていた。



451玩具屋C 3/4 :2011/08/27(土) 15:43:53.36 ID:bgl6ihBSO

「そんなんだから、前任者と比べられるんですよ」
年下の先輩は小声でそう言った。工房の皆が俺と前任者を比較しているのは空気でわかる。
俺の前任者は、急性肺炎で一週間患って彼岸に逝ってしまったそうだ。
皆様方の思い出話に、いつも出てくる青年は、明るく快活で、根暗な俺にはない、爽やかさを持っている。
正直、妬ましい。けれど俺にはバイブがある。人としての魅力は数段下だが、誰にも負けない深い知識と蘊蓄を、俺はバイブ限定で持っている。
「……ごめんなさい」
茜色に燃える炭を見つめていると、年下の先輩が突然俺に謝った。
「あんたはあんたなのにな。ついつい、いつも、『先輩』はそんな事しないって比べてる。あんたのアラばかり探してるかも……」
自分がこんな嫌らしい男だなんて思ってなかったです。と、年下の先輩はつぶやき
『先輩』の席に俺が座っているだけで、胸がむかつくのだと吐き出した。
「すみません」
俺にはどうすることもできなくて、仕方がないから謝った。
「何で? 何に、すみませんなわけ? 僕が謝ってんだけど? あんたが謝るのおかしいでしょ?」
シュッとした顔にフチの茶色い眼鏡をかけた年下の先輩は、不満そうな口振りでまくし立てた。
「やっぱりあんたとは、友達になれそうもないな」
「仕事関係の人間と友達になる必要はないかと……」


452風と木の名無しさん :2011/08/27(土) 15:53:20.98 ID:eBNYi+Xg0
支援

453玩具屋C 4/4 :2011/08/27(土) 16:01:59.57 ID:bgl6ihBSO

俺は越境的なコミュニケーションが苦手だ。職場の人と友達になるという発想はちょっとない。
学生の頃から、バイブとローションだけが友達だ。人は信じちゃいけない。少なくとも俺は誰かの仲間や友達になれる人間じゃない。
俺がこの工房に潜り込んだのは、データを盗むため。俺の本当の雇い主は業界最大手の玩具屋だ。
「とりあえず週末、あんたの新歓するらしいんで予定入れないで下さい」
不意にそう言われ、俺は年下の先輩を見た。
「先生方も一緒にどうですか? 角のすき焼き屋うまいんですよ」
俺は学者先生に声をかけている年下の先輩の横顔をまじまじと見た。
正気か? スパイの歓迎会なんて聞いた事ないぞ。
俺が青銅製バイブの復元なんてアナログな仕事を任されているのは、顔はエロいが聡そうなボスが、俺をやや警戒してるからではないかと思っていた。……違うのか?
俺はたかが、すき焼きぐらいで、生卵を絡めて食べる柔らかい肉だとか、
肉よりうまい春菊だとか、味のしみた豆腐やシメのうどんなんかで、懐柔されたりはしない。しないんだからなっ!


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
支援ありがとうございます。

454風と木の名無しさん :2011/08/27(土) 22:37:53.70 ID:BzG4ogY/0
>449-451
>453
投下乙!いい感じにツンデレ風味ー(・∀・)

455風と木の名無しさん :2011/08/28(日) 21:12:15.14 ID:E6d6wrYS0
>>453
おつー 
すき焼き食てええ

456P4主人公×尚紀 バッドED後 :2011/08/28(日) 23:32:43.19 ID:p4L9iXtk0
「俺は、だから何でもしますよ、あなたのためなら」
頭がくらくらした。…またなんてことを言うんだ。
叫び出したくなる、電話で「会いたい」と言われた時もそうだった。
俺達は、いや俺は人殺しだぞ、と。
でもそんなこと出来やしない。吐き出したところでどうにもならない。この荷物を尚紀にも背負わせるだけだ。
…そうして背負わせたところで自分の分が軽くなるわけでもない。
臆病で卑怯な男は、尚紀を抱きしめた。
尚紀の身体が一瞬震えた。
「…何、でも?」
意地汚い問いに、尚紀はただこくりと頷く。
「本当に?」
「…本当、です。」
尚紀は、ぎこちなく腕を回してきた。

457P4主人公×尚紀 バッドED後 :2011/08/28(日) 23:34:28.01 ID:p4L9iXtk0
苦しくなるまでキスして、服を脱がして、肌に吸い付く。
こんなこと初めてなのに、変にすんなり身体は動く。でも行為に没頭しているわけではなく、
どこか冷静に「馬鹿だな」と俺を嘲る自分がいて、「馬鹿だな」と尚紀を哀れむ自分がいた。
苦しげに喘ぐ尚紀の表情は嗜虐心を煽る。
そう、今にして思えば、つらそうな尚紀の顔は好きだった。
絆を深めていくうちに、だんだんその表情をみることは少なくなって。
どこか暗く寂しげな笑顔も明るくなっていくのが嬉しかった。それは本当だ。
その一方で、
この信頼を裏切ったらどうなるだろう。あの寂しそうな、悲しそうな、悔しそうな顔で
泣くだろうか。

458P4主人公×尚紀 バッドED後 :2011/08/28(日) 23:44:09.20 ID:p4L9iXtk0
「ぅ、くあ…ぁ…」
うめくような喘ぎ声とともに、尚紀の瞳から一筋涙が零れた。
瞬間、動きが止まる。後悔が押し寄せる。
今ならまだ……
止められる?引き返せる?
謝って途中でやめたところで、もう元には戻らない、前と同じように、なんていくわけがない。だったら
もう全部、ひっくり返せばいいじゃないか。
誰かの声、いやもうわかってる、他でもない自分の声。自分の中のどこかにいる、たくさんの自分の中の誰か。
天使のように優しい自分。悪魔のように残酷な自分。無数の仮面、それを使役する力。
ペルソナ
…なら今は、欲望を司る仮面でも被ろうか。
彼はもう考えることを止め、ただ尚紀の身体を貪り始めた。

459風と木の名無しさん :2011/08/29(月) 01:21:01.85 ID:vulFPw+g0
えっと…お終いかな?
せっかく素敵なお話なんだから投下前にテンプレ読んだほうがいいよ

460風と木の名無しさん :2011/08/30(火) 00:06:09.31 ID:PhMNLIh+0
>>459
こういう唐突なのって、どこかのを勝手に貼っているんじゃないの?
違っていたら悪いけど。

461風と木の名無しさん :2011/08/30(火) 03:14:51.14 ID:pU3XTEpg0
連投規制で中断したんじゃないの

462風と木の名無しさん :2011/08/30(火) 10:36:55.73 ID:VO2pWZki0
開始と終了のAAいれてないし
自分もどっかからの無断コピペだと思う
以前にもあったよね?

そうじゃないとしても
テンプレ無視の投下は、勘ぐられても仕方ないでしょ

463風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 18:02:01.45 ID:oksxDx5ci
>>453
もしかして以前オナホの話を投下されてた方ですかね?
とにかくエロ面白いのに切なくて、大好きです!乙でしたー。

464蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 :2011/09/02(金) 18:44:30.99 ID:6ohZgOY90
罰☆ 蟻亜土ねスレより
兎と愚痴の逃避行話に滾り過ぎたので今更ですが落とさせて頂きます 半生注意

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

465兎愚痴 :2011/09/02(金) 18:56:46.65 ID:6ohZgOY90
すみません、規制がハンパなくて全然書き込めない…
別機で後ほど出直します スレ汚し申し訳ないです

466蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 1/8 :2011/09/02(金) 19:20:24.03 ID:nxrr+Km10
「―――警察はこのまま沈黙を通すのでしょうか。今後の展開が注目されます」

カチリ。
そのまま画面を落とした彼が間髪入れずに振り向いたので、驚いて咽そうになった。
「大丈夫?ゆっくり食べなよ、時間はたっぷりあるんだから」
静寂の中、可笑しそうに云う彼の声が響く。
そのまま靴音もさせずに近づいてくるのをぼんやり見上げていると、食事を摂っている―――摂らされている、というのが正しい表現なのかも
しれないが―――自分のすぐ横に、手近な椅子を引き寄せて彼が座った。

467蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 2/8 :2011/09/02(金) 19:30:52.69 ID:nxrr+Km10
「兎見さん…」
意味もなく名前を呼ぶとくすりと彼が笑う。口元を指で拭われ、それを彼が自分の口に含んだ。
「美味しいね?」
「…………。」
気を付けていたのに―――。度々の己の失態に羞恥しつつ、味が良いのは事実だと思ったので俯くように頷く。
無音すぎる空間は自分が咀嚼を繰り返す僅かな音すら煩いと感じるのに、そうやってじっと見つめられると本当に食べづらい。
だが、それを不満として口にすることは憚られた。云ったところで彼の機嫌が悪くなることも、こちらに危害を加えることもないのは解っていたが。

468蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 3/8 :2011/09/02(金) 19:34:03.58 ID:nxrr+Km10
「なに?」
「……ちゃんとご飯、食べてますか」
肘を付いてこちらを見ていた彼が息を吐くように笑った。
「食べてるよ。どうして?」
「僕のこと危機感がないって笑ってたけど、人質にこうやって規則的な食事を提供している兎見さんだって、」
「人質に、じゃないよ。田愚痴先生だからちゃんとしてあげてるんだよ」

469兎愚痴 :2011/09/02(金) 19:48:04.78 ID:nxrr+Km10
本文長すぎで怒られまくってますOTL 調整して↑の有様…
既に1時間以上スレ占拠してしまってますので深夜か後日に続きを投下します
重ね重ね本当に申し訳ないです

470風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 19:53:38.14 ID:RqezW2zh0
>>469
どうしてもうまくいかないなら、投下代行たのんだら?

471風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 20:21:16.36 ID:nxrr+Km10
>>470
頼める人がいないんです…
つか、すごく見苦しいですよね?規制喰らってるからって1レスが短すぎるし…
投下はじめちゃった以上最後まで落とすべきかと思いましたが、こんな様子じゃ
もう止めといたほうがいいのかなとも考えてます…

472風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 20:49:05.13 ID:k0NLghgo0
>>471
投下代行スレのことだよ
http://bbs.kazeki.net/morara/


473風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 22:58:20.62 ID:nxrr+Km10
>>470,472
存在を知りませんでした…教えてくださってありがとうございます
うpはしたのですが肝心の代行スレに書き込めず…(もうやだ泣)
もしお目に留めてくださり、且つ代行してやってもいいよ、てな方が
いらしたらよろしくお願いします 兎愚痴というtxtファイルです…

474風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 23:13:23.96 ID:lppU448/0
>>473
ここで頼んでもしょうがないだろう

475風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 23:41:29.62 ID:8KfZx+YaO
>>473
逃避行モノ投下サンクスです。蟻モノの投下に嬉しくて小躍りしました。
兎エロくていいですね!愚痴、無垢な感じで可愛いなぁ。
続きが気になります。代行スレ行ったけど、ファイル見つかりませんでした…。
ウP気長にお待ちしています。

476風と木の名無しさん :2011/09/02(金) 23:55:53.18 ID:wyELLQFD0
>>473
ファイル発見!うp乙でした
>>468の続きから投下代行やってみます


477蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 4/8 :2011/09/02(金) 23:57:30.70 ID:wyELLQFD0
長い鎖に繋がれた手錠は片腕だけに嵌められているので別段不自由もない。
そもそもここに連れて来られる迄も兎見が自分を連れ回すのを迷っているように感じる瞬間が度々あり―――彼はいま、単に一人で居たくないだけ
なのかもしれないと―――リミットは末先事件の判決だろうというのもなんとなく見当がついていたので、それならとことん付き合おうと思った。
実際無罪判決が出たあの日、兎見はドアを施錠しないまま出掛けていった。部屋中を探せば手錠の鍵もあったのだろうと思う。
戻ってきた中に自分を認めた彼の安堵したような、縋るような目の色に、ああやはりこれで良かったのだと感じた。
白取が聞いたら呆れるか激怒するか。いずれにしても良い反応はされないだろうが、いまの兎見の傍に居てやりたいというのは医者としての自分の
性分なので仕方がない。



地下にあるらしいこの場所はバーか何かだったようで、テーブルや椅子がところどころに積み上げられ、業務用だったのか単に飾りだったのかは
知らないが、ワイン樽や木製の篭などもあちこちに点在していた。
睡眠をとるときは同じくその辺りにあったソファをくっつけた、まさに簡易ベッドといえる代物に横になっていた。
埃まみれの床に座って仮眠をとる程度だろうと想像していたので、兎見がそんなことをしてくれるのが少し意外だったが。
寝ろと云われた通りにそこへ転がったらふっと笑われ、それにむっとしたら余計笑われた。あえて何のコメントがないのがまた憎らしい。
長身の彼には窮屈だろう寝床も、小柄な自分には確かにそれで十分ではあったが。


「……ちょっと違う拘束の仕方をしようと思って」


とある夜、懐に持っているはずのものを使おうとしない彼に内心首を傾げていると、そんな説明があった。
互いを手錠で繋ぎ、横たわる自分の傍らに蹲るようにして兎見はいつも仮眠をとる。
とうとう紐か粘着テープで全身を固定されるのだろうか、それだと自力では脱出できないからちょっと困る―――などとつらつら考えていると、靴を
履いたまま兎見が隣に乗ってきた。

478蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 5/6 :2011/09/02(金) 23:59:36.61 ID:wyELLQFD0
「狭いね」
そのまま背中から抱き込むようにされ、さすがに驚く。
「……僕、逃げませんけど……」
「知ってる」
囁くように返事をして更に腕の力を込めてくるのに、もう何かを問うのはやめようと目を閉じた。
おそらく警/察/庁のなかでも他の捜査員とは一線を画す存在であろうこの男に、深い孤独のような何かが横たわっているのはここ数日で感じている。
命令とはいえ、父とも慕う人を自分の手で殺させられた、痛み。
こんなことでそれが少しでも和らぐのなら、好きにすれば良いと思ったのだ。
喜多山との過去に何があったのか、これから何をしようとしているのか。
訊ねたところでまともな返事などないのだろうけど。それでも、とやはり懲りもせず薄く瞼を開き、背後の男に問い掛ける。
「兎見さん……」
「………なに」
「ひとつだけ―――。あなたが持っている真実を、ひとつでいいから教えて貰えませんか」



「……そうだな」
長い、もう眠ってしまったのかと思うほどの沈黙のあと、やがて彼が口を開いた。
「俺はあんたが好きだ」
「兎見さん」
真面目に訊いたのに。文句を言おうとしたところへ、強烈な睡魔に襲われる。
ああ、さっきの食事か……思ったときにはもう瞼が上がらなかった。
僕、やっぱり危機感なさすぎだなあ…。薄れゆく意識の中で“真実”という言葉を耳にした気がする。
頬を滑り、唇にふわりと触れた記憶は、夢か現か。
「……今となっちゃそれだけが俺の真実だよ、田愚痴先生」

479蟻亜土ね 兎愚痴逃避行 6/6 :2011/09/03(土) 00:03:53.72 ID:+QMBXk700
目覚めると、当然というべきか彼は居なかった。
ノートPCなども持ち去られている。思っていた通り、もうここには戻らないつもりなのだろう。
身体を起こす。携帯、財布―――取り上げられたものが全て揃えて置いてあった。
地上への階段を上がった先に開けた視界は覚えのある風景で、意外に近いところに居たのかと驚く。とりあえず愁/訴/外/来をコールしようした矢先、
不意にそれが震えて着信を伝えた。
一瞬びくりとはしたものの、見知った名前が表示されるのにほっと息をつきながら通話ボタンを押す。
「……もしもし」
『愚っ痴ー!?やっと繋がったよいまドコ!!兎見は!!』
「あー…えーと、ですね…」
何からどう説明しようかと彷徨わせていた視線が、大型家電量販店のガラス越しに映されたテレビ画面に吸い寄せられた。
遺憾ながら殺人事件など日常茶飯であるこの国。だが女子高生が被害者であるというそのニュースは何かの警告のようで妙に気になった。
何があったのか。何をしようとしているのか。
『わかんないならとりあえず目に映るものを云ってよ。いま迎えに…』
あの男は、いまどこかでこの映像を見ているだろうか。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

時系列はなるべく考慮したつもりですがラストは9話予告の想像だけで書いているので実際のOAとはちょっと違うかも
愚痴には手酷くできない兎が好きなんだ…
代行スレの存在を知らず何度も失礼致しました 代行投下してくださった方本当にありがとうございます


480風と木の名無しさん :2011/09/03(土) 00:08:00.30 ID:+QMBXk700
投下代行者です
分割が元ファイルと違うことに気がつかず
途中でタイトル横の分母を勝手にかえてしまいました
ややこしくてすいませんでした

改めて、作者様GJでした!

481475 :2011/09/03(土) 00:25:36.34 ID:GChMau+7O
作者さま、代行者さま乙でした。

兎、温もりが欲しかったんだね(しみじみ)
兎が愚痴を抱きしめて眠るとこ、萌々でしたw
愚痴は可愛くてぬいぐるみみたいw
兎は愚痴と一緒に居たくて人質に選んだんだね。
全てを受け入れて兎の側にいてあげる愚痴、まさに蟻亜土根、女神w
風のように消えてしまう兎… らしいなぁ

描写が二人らしくて、脳内ではっきり像が浮かびました。
素敵なSS蟻亜土根!!

482風と木の名無しさん :2011/09/03(土) 22:59:33.27 ID:uEz9fyVY0
この忍者システムはSSを書きづらくなったねえ……
他の板も書きにくそうな感じだし。

どうにかアラシと区別してほしいけどまあそうもいかないんだろなあw

483風と木の名無しさん :2011/09/04(日) 00:50:38.82 ID:RFCN5Jr1O
携帯から失礼します…

>>477-480
作者です!お手数おかけしました、ありがとうございました
感想くださった姐さんもありがとう

484推理好きの隣人 1/6 :2011/09/04(日) 20:22:31.74 ID:jSUcOfEA0
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
BSで放送されたドラマ「現代版 斜ー口ック」からほぼ医者の探偵語り。
基礎知識は薄いので基本ドラマの印象だけで書きました。


喧嘩をした。
いや、正確には喧嘩にもなっていないのかもしれない。
なにせ会話が繋がらない。
その事に一方的に怒って、一方的に言いたかった事を断ち切られ、一方的に部屋を後にするのはいつも自分だ。
彼は動かない。
興味のある事が無ければ部屋から一歩も。
必要に迫られなければ、それこそ座っているソファから一歩も。
お茶もパソコンもペンの一本ですら自分に取らせようとする。
その為なら、外出中の自分に携帯までかけてくる始末だ。
そのくせ興味が沸けばあっという間に外に飛び出してゆく。
警察へも、事件現場へも、必要ならば海外にだって着の身着のままで飛んでゆくだろう。
ただし空港からパスポートを持って来いと自分に電話をかけてくる可能性が大だが。
そしてそんな彼に自分はなぜか逆らえない。
どんな事件でもろくに説明もされないままただついて来いと。
ついてくるだろう、ついて来ないはずがないと人の心を見透かすように先へどんどん行ってしまう。
変人、奇人、傍若無人。
でも事実、その見透かし通りな自分がかなり悔しい。
どうしていつも自分はこうなんだろうと、自問自答をすればそれさえも読んだように彼は言う。
『君はスリルジャンキーなんだろう』
身も蓋も無い。まったく人を病気みたいに言うな。
実際ちょっと前までは確かに病気持ちだったが……いや、病気なのだと思い込んでいたのだが。


485推理好きの隣人 2/6 :2011/09/04(日) 20:22:49.85 ID:jSUcOfEA0
本当に何もかもが見えているようだ。
だから自分のような単純な人間を振り回すのが楽しいのか。
しかしこの疑問にアパートの大家夫人は肯定とも否定ともつかない返事を返してくれた。
『単純でも複雑でも彼が周囲を振り回すのは皆同じよ。でもあなたが楽しいのは確かでしょうね』
お茶の席でそう言われ、はぁ?となり、だからどうして問えばすぐにこう言われた。
『だって、あなた素直だもの』
さも当たり前のように言われ、更に頭の中の?マークが増えていく。
そんな自分に夫人は説明してくれた。
『彼は立て板に水のようにしゃべるでしょう?』
それはもう澱みなく迷いなく、他者に一切の口を挟ませず最後まで一気に謎を解いていく。
あれは単純に凄いと告げれば、夫人はほら、それと笑った。
彼の推理はほぼ当たる。けれどそれはあくまでほぼで100%ではない。
例えば自分などは家族構成や経歴を初めて会った時に一目で当てられた。
ただし年上の兄弟は兄ではなく姉だった。戦場で負った傷は足ではなく肩だった。
けれどそんな事は物事の本質を曲げない程度の些末なものでやはりあの観察眼は凄いと告げれば、
でも普通の人はそうは思わないのよ、と軽く流された。
普通の人間はどんなにそれが正論でも、反論の余地を与えられず上から目線で偉そうに断定されれば
いわゆるカチンときてしまう。そしてその中に一つでもあやまちを見つければそれ見た事かと反撃に出る。
そう言えば、出会った当初に彼もそんな事を言っていた気がする。
彼の話に対する世間一般の反応は大概『うるさい』の一言なのだと。
『けれどあなたは違う。彼の推理を丸ごと受け止め、凄いと感心し、忌憚なく褒める。それはもう本心からサラリと。
これはやっぱり楽しいわよ』
そんなもんなんだろうかと思わず口にすれば、そんなものなのよと夫人はあの時ビスケットをつまみながら笑った。

486推理好きの隣人 3/6 :2011/09/04(日) 20:23:04.86 ID:jSUcOfEA0
でも、だが、しかし、だからと言っていつも部屋を出て行くのが自分ばかりだと言うのは理不尽だと思う。
しかもその家出先がほとんど部屋から徒歩5分圏内にある行きつけの店だというのにも情けなさに拍車をかける。
扉を押し、そこそこ混んでいながらも空いていたいつもの席に座り、慣れ親しんだメニューを見る。
選ぶのも食べるのもここ最近はすっかり早くなってしまった。
これも全部彼のせいだ。
もたもたしていると彼はいつも食べている途中で何かを思いついたり見つけたりして、突然飛び出して行ってしまう。
おかげで彼との食事は大概食いっぱぐれる。
しかも代金は払わなければならないのだからこの上なく経済的に悪い。
せめて注文前に出てくれれば……
家賃も折半しなければやっていけない経済状況な中、つい愚痴が所帯じみてくる。
しかしそんな世知辛さを振り切り今日は1人だ、最後までゆっくり食うぞと決意を固めて注文すれば、
その横から不意に声をかけられた。
「おや、今日は1人か」
だからいつも2人一緒が当たり前のように言わないでくれ。
声の主はこの店のオーナー兼、昔は押し込み強盗兼、その犯罪立証がアリバイとなって他の犯罪の濡れ衣を彼によって
晴らされた自称彼の熱烈なシンパだった。
大柄で気前良く、でも思い込みは結構激しい方。
「喧嘩でもしたのか?」
ついでに推理も結構当たる。と言うか、自分の周りは意外と推理が得意な人間が集まっているのだろうか。
ただしその推理は往々にして斜めな方角へズレていくのだが。
「あまり意地張るなよ。あいつがあんたを気に入ってるのは確かなんだから」
だからどうしてみんな口をそろえて同じ事を言うんだ!
たまらずそう口走ってしまえば、オーナーは少し驚いた表情を見せ、しかしすぐにさも当たり前のように答えを返してきた。
「そりゃ、気に入ってでもいなけりゃあいつが誰かと一緒に暮らせたりなんかするもんか」
そうか、どれだけ心酔していても彼の人間性に関してはそれなりに思う所もあるのか……
なんだかグッタリ疲れた自分に、オーナーは「まぁ、ゆっくり頭冷やしていけ」と一言残して去っていた。

487推理好きの隣人 4/6 :2011/09/04(日) 20:23:18.84 ID:jSUcOfEA0
しばらくして頼んだものが運ばれてきた。
ほとんどヤケ食いになった。
ガツガツと、それでも凄いぞ、最後までちゃんと食べ終わったぞとよく考えれば虚しい満足感にしばし浸る。
こうなったら優雅に酒でも飲んでいってやろうか。
調子に乗って追加オーダーしてやろうかと思う自分の元に、しかしまたオーナーが戻ってくる。
そして彼は手にしていた紙袋を自分の前にドンッと置いた。
「おまえがいないなら、あいつどうせろくに何も食べてやしないだろう。俺からの差し入れだ。持ってってやってくれ」
言われ、紙袋とオーナーを無言で交互に見、目で開けても?と問うと、オーナーはうなづいた。
紙袋の中身はある意味さすがシンパなチョイスだった。
片手で食べられるサンドイッチ。取っ手付きカップに入ったスープ。そして、
……キャンドルはいらない、キャンドルは……
しかし自分の心を知らずにオーナーはウインクと親指を立ててくる。
親指もいらない……
「さて、あんたもまだ他に何か頼むか?」
問われ、しかし自分はこの時少し考えて首を横に振った。
そして帰るよ、とそう一言告げればオーナーは嬉しそうに笑ってその日の代金をおごりにしてくれた。
まぁ、なんだその……経済的には助かった。

488推理好きの隣人 5/6 :2011/09/04(日) 20:23:34.27 ID:jSUcOfEA0
部屋に戻れば彼はいなかった。
もう寝たのかと思い、彼の寝室をのぞいたがやっぱりいない。
出て行ったのか?何か事件でもあったか。
だとしたら置いて行かれたような一抹の寂しさを覚えつつ、でもしょうがないかと自分は上の階の自分の寝室へ戻る。
そこに彼はいた。
入口でしばし固まって、何でとただ混乱する。
喧嘩を謝ろうと待っていたのか。
いや、それは絶対無い。
喧嘩で腹立てて嫌がらせでもしにきていたんだろうか。
いや、そんな事に労力使うような奴でも無い。
じゃあ、何か借りたいものでもあって、勝手に探している間に面倒くさくなって寝てしまったとか……
一番妥当かもしれない。
なんにしたって迷惑な!
だから叩き起こしてやろうかと彼の寝ている自分のベッドの側まで近づくが、その勢いは彼の寝顔を見たらなんとなく
萎んでしまった。
こうして寝ていれば可愛く見えない事も……やっぱり無い。まったくあどけなくも無い。
だってデカいし。ヒョロいけどデカいし。身長と比例するようにベッドを占領する態度もデカいし!
でもその成りや態度に見合うだけの、彼はやはり“天才”なのだとも思う。一部常識の欠如を除いて。
だから、仕方が無い。
「食い物、ここに置いてくからな」
聞こえていない事を知りながら一応声に出して言って、手にしていた紙袋をサイドテーブルの上に置く。
そして自分はもう一度部屋に降りると、いつもは彼が占領しているソファで一晩不貞寝しようとした。
ただその前にこの理不尽な状況を一言ブログに書き記しておく。
『喧嘩をした。それなのにどうして僕のベッドで寝てるんだ!』
このブログによって、どこからともない国家監視と、警察の随時チェックと、一部不思議な愛読者層と、世界的犯罪者組織から
シャー口ックの弱点はワ卜ソンと自ら喧伝して回っていた事に本人が気づくのはもう少し先の事である。

489推理好きの隣人 6/6 :2011/09/04(日) 20:23:45.46 ID:jSUcOfEA0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
代行ありがとうございました。
イギリス好きだw

490風と木の名無しさん :2011/09/05(月) 00:23:26.53 ID:Nlpo3NRZ0
>>489
乙GJ!医者も探偵もかわいくて萌えた
垣間見える医者の愛もいい!
あとキャンドルはいらないにふいたww

491傷 1/6 :2011/09/05(月) 00:43:18.98 ID:Ilfjxq5v0
現代版ドラマシャ一ロック@ビビシ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


真っ直ぐに伸びた、美しい白い指先が、目先を横切る。
「コニ一のあの傷はきれいだった、とでも思い出したか?」
破傷風菌の潜伏期間とその後それが人体に何をするかを知れば、ワトンソはとてもあの傷が美しいとは思えない。だから、彼は間違っている。しかしホ一ムズは満足げだ。
眉根を寄せ、口端をへし曲げてはいても、今自分の眼が間違いなく微笑んでいるからだ。
そこから少なからず困惑を読みとってくれたら、という願望は益体ないこと。
「子供の頃、一週間ほど傷の観察をしたことがある。切り傷だ。シャワー室でつけた。ノズルの先にでもひっかけたんだろう。放っておいた。幸い破傷風にはならなかったから今こうして話している。」
一息おいて、ホ一ムズはそこに傷があったと思しい左手人差し指の付け根を顔面へ近づける。つまらないことを話している、という自覚がそうさせるのか、そこにワトンソがいないようにまるでこちらを見ない。
「傷はその後膿んだ。医者に見せ塗り薬をもらってこいとク口フトが言ったから膿んだ。」
「正論なのに兄さんのせいか。彼の親切まで嫌う必要はないだろう?」
「助言など必要ない。やつの助言が今まで役に立ったか?」

492傷 2/6 :2011/09/05(月) 00:44:38.40 ID:Ilfjxq5v0
ワトンソは黙って、同じ表情を極力ホ一ムズに見えないよう、寝返ってみる。しかし背筋が粟立つきりで、あまり防御にならなかった。
「それは面白かった。」というそれが一瞬わからず、ああ、とワトンソは傷にもう一度眉根が寄る。「経過に関しては興味ないだろうから省くが、一週間退屈せずに済んだ。」
「嫌な子供だな。」
「子供が何であれ興味を持つことに親は喜ぶ。例えばモルフォ蝶の生態とか、ダイナソーエイジを生き延びその後繁栄した有袋類の生命力、エトセトラ、エトセトラ。」
「株操作や内部告発もか?」今度はホ一ムズが眉根を寄せる番。
「冗談だ。」「いや、先週投機が混乱したのはリャドの15歳がある風評をネット上に流したからだ。その理由は…君は知りたくないだろう。」
「…嫌な時代だな。」
なぜ?といぶかしむホ一ムズに、ワトンソはやはり苦笑を背けた。
彼はいまだに判然としない。犯罪を好きな振りは犯罪を封じる道義心への隠れ蓑(パフォーマンス)?
しかしホ一ムズには正義を問えない。彼は知っている、それが既に絶滅して久しいから、軽口にのぼらせる栄誉すら授ける気もない。

493傷 3/6 :2011/09/05(月) 00:46:05.70 ID:Ilfjxq5v0
「だがク口フトがママに告げ口して、結局抗生剤を塗られた。」
そこでホ一ムズは身体を起こしもう一度、塗られた、無理やり、と言う。おや、さっき君が使って置いたLubeはまだキャップを閉めていないな、と言いたげに目線が床面へと流れる。
いや、置いたんじゃないし、キャップの在り処ももうわからない。実際投げ捨てたし、あんなものが用意されていたことにワトンソは動揺した。
そんな涼しげな顔で言うから、忘れた方がいいのだと思い込もうとしたじゃないか。
そして思い出した自分に彼が楽しげなのを、ワトンソは喜ぶべきか?
「傷は痕も残らず、すぐに消えてしまった。つまらない。」
「きれいな手のほうがいいぞ、女性にもてる。」
わざと言ってみたが、そんな気まずさの隠蔽にはホ一ムズは応じはしない。
「指に一生消えない傷をつけるにはどうすればいいか。考えたことは?」
あると思うのか?そう言いかけ、ワトンソは逡巡し、「継続だ。鍵のかかる容器に専用の小型刃物。肌身離さず持ち歩き、管理を徹底させる。」
「ある種の束縛か。君がロマンティストとはね。悪くはないが、ひとつ問題だ。」
「不衛生か。なら軟膏もセットさ。」
「痛みは不要だろう?痛みはさほど楽しい感覚ではない。」
時折ホ一ムズは彼らしくないことを言うように感じる。なぜなら、捜査に行き詰った時の懊悩を、本心では嫌がっていないように見えるからだ。

494傷 4/6 :2011/09/05(月) 00:53:27.06 ID:Ilfjxq5v0
いや、こういう思考も悪い癖だ。他人に吹聴してはいけない、特にサリーのようなレイシストには。
「じゃあ君の提案は実現不可能ということになるが?」
「ひとつ、良い方法があるぞ。」
答えを開陳する際に見せる彼の喜悦に、ワトンソの腹底が疼く。嫌なのだ、ずっと。その顔は事件現場でしょっちゅう顕れるから、気が気ではない。自分以外に見せて欲しくないからするな、と、喉元まできているのに、言い出せる日なぞ来るはずもない。
「その答えもぼくは知らない方が良さそうだ。」精一杯の抵抗。
「切り落とせば良い、指自体をね。そうすれば記憶に留めずとも見ればいつでも思い出す。」
「思い出すだって?馬鹿な。そんな理由で自傷を肯定するほど君が浅はかとは思いたくないね!」
ホ一ムズの顔色がまた変わる。驚いている。なぜ相手が怒っているのか、皆目わからない。白紙の顔だ。
「別に実行しろとは言ってない。観察が面倒になったそのあと思いついただけだ。」
意外だな、と言いたげだが、それを声にしてくれないのがホ一ムズの矜持だ。
悔しがってもしかたない、ワトンソの背はもう一度ひるがえる、音のないため息と共に。

495傷 5/6 :2011/09/05(月) 00:54:50.33 ID:Ilfjxq5v0
「でも傷なんてそんなものだ。君だってそうだろう?」
「ぼくのなんだって?」どうか苛立ちが含まれたことに彼が気づいていませんように。
「アフガニスタンのつけた惨い傷も時間がさっと一掃だ。」「…それはまだ従軍している者たちへの…」「冒涜か?」「…そこまで言うつもりは…」「軽んじている?」「もういいから続きを…」言うがいい。
「実際杖に頼り足をひきずって歩く君はいただけなかった。間違えるな。心の傷のせいにして殻へ閉じこもうとするジョソ・ワトンソの安全圏への撤退がいただけないだけだ。」
「負傷者を馬鹿にしているわけじゃないことぐらいわかっている。」
ホ一ムズの破顔が、どうせ自分には嬉しい、瞼をおろすワトンソ。
「良かったじゃないか。もとより傷など存在しなかったように走り回ることができて。」
「そうだな。来年の五輪にも出場できるだろうよ。」
「……まあいい。」定期的におとずれる退屈の語源にまたひとつ追加、曰く『スポーツの祭典』。遺憾に思います、バロン・ク一ベルタン。
それなのに、寄せる肌は冷え始めたとはいえ、まだ先刻の熱が放出をこらえてくすぶるように、ワトンソへ触れた肘先から体幹へその存在を主張する。
「…あーシャ一ロック、君はそうしているだけだからいいけれど、ぼくはその…応じるのは難しいと思う。」
「良くやったと褒めればいいのか?」続けられるのか? またなんと変わった誘惑だろう。
「もうひとつ問題がある。」不如意だ、尖った顎を傾げるだけで心外を表すホ一ムズに、やはり言わねばならないか。このいたたまれなさを裏切る自身の変化にも、ワトンソはやりきれなさを覚える。

496傷 6/6 :2011/09/05(月) 00:56:06.64 ID:Ilfjxq5v0
「君に愚かさを指摘されるのは一向に平気だが…だめなんだ、自分がその、あまりにも馬鹿みたいに思えて。」最中に、と告げるのだけはお許しください、神よ。
「その馬鹿みたいな『営み』でこの国が延々?栄してきたことを、ぼくは否定もしないし非難する気もない。」
「…いや、そうおおごとに考えてもらわなくても…ああ、くそっ、つまり…」
「いいから構わずおのれの本能に従え、ジョソ・ワトンソ。命令されたいのか?そういう方が好みか?」
ホ一ムズの厄介なところは、爪垢もそう思っていないくせにその言質には本心と思わせられることだ。
「オーケー、わかりました、仰せのままに。」
身体を深く沈めながら、おかしい、徴(しるし)をつけたのは自分の方なのに、ワトンソはホ一ムズの滑らかなうなじに口づけながら自問する。
ただ、彼のどこにも傷などつけたくはない、そんなもの、彼には似合わない、と、石膏像に紛う肌理に眩む前に、ワトンソは右手を伸ばしサイドランプの明度を下げる。ホ一ムズの上半身を、そっと反転させる。無理強いではないぞ、これも君の意志だ、との私見はみずから却下。

Fin

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

497玩具屋D 1/5 :2011/09/05(月) 12:12:27.36 ID:aRrdpddmO
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! [463]:Yes!!
オリジナル(先輩←後輩)


萩の花が工房の中庭で豊かに咲きこぼれている。薄紅色が美しい。だけど、ちょっと卑猥だ。
この花を指差し、先輩が「超おま〇こ」なんて言ってたから、僕にはもう、この紅い花びらが女性器の外陰部にしか見えない。
たぶん僕は一生、外陰部を連想するんだ。そうして、秋風に萩の花が揺れる度、先輩の下ネタと、下ネタ中も爽やかだったあの明るい笑顔を思い出すんだろう。



498玩具屋D 2/5 :2011/09/05(月) 12:15:07.31 ID:aRrdpddmO
萩を見ながら工房の縁側で弁当を食べていたら、おにぎりを手にボスがやってきた。「おっ、萩が咲いたな」。「もうすぐ、お彼岸ですよー」。
今年の秋のお彼岸は、彼岸入りが 9月20日。お中日が 23日。彼岸明けが 26日だ。この期間に供養をすると仏様が極楽浄土へ行けるらしいのにいいのかな?
アンタまだ、仏壇・仏具はもとより、お墓の掃除もしてないんじゃないですか。身寄りのない先輩が他界した日、ボスは「あいつを無縁仏にしたくねェ」と言い、
親兄弟に頭を下げて、先輩をボスの家のお墓に入れてしまった。あれは、絶ッ対、ボスが先輩と同じお墓に入りたかったからに決まってる。
そのくせ、ボスの机まわりを見るかぎり、ボスが片付けられない男なのは明白で、仏具やお墓の掃除を、ちゃんとしてるとは思えない。
「お彼岸の準備してますか?」。尋ねた俺にボスは決め顔で、「当たり前だろ」と笑った。あぁ、そうか。そう、ですよね……。
先輩はボスの特別だ。そして先輩の視線の先には、いつだってボスがいた。
ストーカー並に先輩を見ていた僕が言うんだから間違いない。
悔しいけれど、僕は「後輩」のままだった。僕なりにあれこれアプローチしてたんだけど完敗です。ペコペコにへこんでる僕の気も知らないで、
ボスは、近所の神社の氏子衆に頼まれた、ご神体・大麻良さま(おおまら様)の神前に供える男根形の型を削っている新入りに声をかけた。
「お前も来いよ。墓参り一緒に行こうぜ」。ハァ? と思った。何でこいつを誘うんですか。ぶっちゃけた話、僕はこの新入りが生理的にNGだ。

499玩具屋D 3/5 :2011/09/05(月) 12:17:25.46 ID:aRrdpddmO
氷に閉ざされた北国で病気がちな家族に囲まれて育ったような陰気さ。黒い髪、青白い肌。尖りきった鼻と顎。何より、蛇みたく妖しい目。
見るからに不健康そうで不気味な男が、我が物顔で先輩の席に座っているのがたえられない。
僕にはこいつが、先輩を連れ去った死神に見える。しかもこいつは、僕が開発している、前立腺サーチ機能を搭載した新型バイブの実験データを狙ってる盗っ人かもしれないのだ。
証拠はないが僕は確信している。何か考えがあるのか、今のところボスはこいつを泳がせているけれど、正直、僕はつまみ出したい。
耳に入っていないのか、新入りはボスの声を無視した。うちに来る前は、フリーのバイブ原型師だったという新入りは、
一心不乱に蝋の塊を削っている。蝋を削って型を作り、その型を石膏で覆い固め、火を当てると中の蝋だけが溶ける。
蝋が溶けてなくなった空洞に溶かした黒銅を流し込めば、祭事用のディルドもとい男根形の出来上がりだ。
「お前、昼飯ちゃんと食ったのか?」。ボスはわき目もふらず蝋を彫っている新入りに声をかけた。ボス、こんなやつ気にかけてやんなくていいですよ。
こいつは、ひょろいくせに大食らいの早食いだ。ついさっき、超大盛りバケツ型カップ麺を神速ですすっているのを僕は見た。
よっぽど集中しているのか、新入りにボスの声は届いていない。僕は代わりに「食ってましたよ」と返事をした。

500風と木の名無しさん :2011/09/05(月) 12:27:54.99 ID:9wtf8rjg0
紫煙?

501玩具屋D 4/5 :2011/09/05(月) 12:29:25.16 ID:aRrdpddmO
「お前、意外と見てんだなぁ〜」。ボスに感心され僕は吐き捨てた。「目に入っただけです」。ボスは苦笑いひとつ、「あんまり毛嫌いするなよな」と言った。
それから、「甘辛の割り下で煮込んだ肉を、卵にくぐらせてマイルドにして食べる! あの旨さがわかるやつに、悪いやつはいねェよ」と、豪快に笑った。
ボス曰く、新歓の時、新入りは実にうまそうにすき焼きを食っていたそうだ。
しかも、うま味が染みた豆腐をご飯の上に乗せ、グシャッと崩して食べていたらしい。
ボスの方が僕よりずっと見てんじゃないですか。すき焼きの豆腐で豆腐丼をつくってかきこむ。
そんな、まんま先輩と同じ事をあいつがしてたと聞かされ、僕は動揺した。
肉、春菊。肉肉肉、春菊。肉、豆腐、うどん。すき焼きに舌鼓をうっていた先輩が、瞼に浮かび、鼻の奥がツンとした。
白菜、ねぎ、椎茸。肉と春菊ばかり取る先輩の器に、真横であれこれ入れて、僕はいつも、嫌がられてた。
だけど先輩、貴方は、ボスが入れるシラタキと糸こんは、がっつり食べてましたよね……。変だな、目の奥が熱い。
「泣くなよなぁ〜」。「泣いてません!」。僕の後頭部をガシガシ撫でるボスの手を振り払っていたら、新入りと目が合った。
こっち見んな! キッと新入りを見た僕の手に、ボスは財布を握らせた。
「お前、後でアイツと三丁目の和菓子屋に、おはぎ買いに行ってこい」。先輩はあそこの赤紫蘇おはぎと、青紫蘇おはぎを愛してた。

502玩具屋D 5/5 :2011/09/05(月) 12:33:01.12 ID:aRrdpddmO
僕も、甘さよりも先においしさを感じるあんこと、紫蘇の程よい塩加減が大好きだ。
ボスは新入りをチラリと見て、俺に囁いた。「俺はあいつに何も盗らせねェ。先にあいつのハートを盗もうぜ」。
臭過ぎるセリフにドン引きしてる僕の背を一発叩き、ボスは颯爽と去って行った。
角のすき焼き屋。三丁目の和菓子屋。筋向かいの蕎麦屋。結論から言うと、ボスはこの三軒で新入りを懐柔した。
蕎麦屋の鴨汁と蕎麦がきで落ちた新入りは、洗いざらい吐き、お中日のきょう、工房の一員として先輩のお墓参りに来た。
ボスはいま、先輩に新入りを紹介し、「こいつも、うまいもんが、気持ちいいバイブと同じぐらい好きなんだぜ」と語りかけている。
先輩はもう、大好きだったバイブでオナれない。肉もおはぎも蕎麦がきも、僕らと一緒に食べられない。
そう思ったら、無性に泣けてきた。涙と洟がだらだら垂れる。ボタボタ、ポタポタ止まらない。
もしも、あの世に、極楽だとか浄土がリアルにあるのなら、どうか先輩が、迷うことなく真っすぐ辿り着けますように。
秋の彼岸、春の彼岸、お盆。繰り返す供養は、僕らのオナニーかもだけど、
繰り返し繰り返し祈ることで、若くして逝った先輩の魂が、少しずつ癒されていくんだって信じたい。
あぁ、やばいな。ちょっとマジで、嗚咽が止まらない。手を合わせてしゃがんだまま、立ち上がれずにいたら、突然、新入りに背中をさすられた。
思いの外、暖かく優しい手だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!《完》
支援ありがとうございます。助かりました。感想、嬉しかったです。

503風と木の名無しさん :2011/09/05(月) 16:50:04.88 ID:5HqEQCWd0
おーなんか読み応えのあるやつがいっぱい落ちとる
ホムズ現代版もバイブ屋も楽しかった。乙です

504風と木の名無しさん :2011/09/06(火) 03:00:09.68 ID:QTMcXmyL0
現代版ホムズがいっぱいで幸せ?!!
バイブの人もいつも笑わせて貰ったり、ほろりとしたり美味しかったです。

どちらもごちそうさまでした!

505風と木の名無しさん :2011/09/07(水) 00:55:43.89 ID:pl71mYCk0
おーなんかいっぱい落ちとるー
全くスレが伸びない日と降臨しまくる日と色々だねえw

506風と木の名無しさん :2011/09/07(水) 20:46:31.86 ID:mTtP3vjZ0
>>497
やはりオナホ姐さんでしたか…。独特の文章が大好きです。今回もホロリとするお話、ごちそうさまでした!いつかで良いので、後輩と新入りのその後期待してます。

507はじめての 前編 :2011/09/08(木) 23:06:08.58 ID:krZoxtr+0
昨年のタイガーリョマ伝です。
ヤンデレお馬鹿弟子⇒堅物優等生師匠で。
ずいぶん前に本スレであったネタなのですが、今だに妄想が止まらず
ついにネタを拝借させていただくことにしました。
あの時の姐さん、お借りします、そして妄想のネタをありがとうございましたw
尚、訛りは物凄く適当でお送りしますので間違いが有ったらすみませんです。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


508はじめての 前編  1/8 :2011/09/08(木) 23:11:03.34 ID:krZoxtr+0

二人の男たちに着いていくと城の庭に通された。
庭と言うにはあまりに狭く、家の裏とでも言った方が相応しいような場所だったけれど、
岡田伊蔵に正しい名称は分からない。無知だから知らないだけなのだろう。
ぽかんとしているとその場にひれ伏すように促され、伊蔵は慌てて膝を着いた。
伊蔵は下士で足軽なのだからお殿様のお城で頭を上げていてはいけないのだろう。
土佐に生まれた者としてそんなことくらいなら分かっている。
けれど、伊蔵には先ほどから分からない事が有った。
(足軽のわしがお城へ入ってもええのじゃろうか)
この土佐に於いて上士と下士との身分差は強大だ。
白札である彼の師ならばまだ登城の機会もあるのかもしれないが、
足軽である伊蔵はお城と己は無縁なのだと思っていた。
師はお城に対してそしてそこに住まうお殿様に対して崇拝に近い情を抱いており、
弟子たちにも殿様を崇まうことこそが武士のあるべき姿なのだと説いていたけれど、
伊蔵が敬うことが出来るのは雲の上の殿よりも目の前の師であり、
だからお城に対してはなんの興味も感慨も抱いたことは無かったのだ。
―――先ほど、お城からの迎えが来るまでは。
それは正式なお迎えと言うよりは人目を憚るような様子だったから、
きっと知らぬ間になにやら大変な過ちを犯して己は処罰されるのであろうと思ったのだが
捕縛されるでもなく庭に連れて来られ、今こうして地べたで額づいている。
何度考えても訳が分からず、伊蔵は本当に困っていた。


509はじめての 前編  2/8 :2011/09/08(木) 23:17:20.83 ID:krZoxtr+0

「来たか。面を上げや」
振ってきた声に身をすくめる。
聞いたことが無い声だったけれどお城に居るくらいだからお偉い方に違いないだろう。
もう一度促されてそろりと顔を上げると、何やら立派な身なりの人物が縁側から見下ろしていた。
部屋の左右には上士と思しき武士が数人おり、奥の布団には誰か伏せっているようだ。
病だろうか。治せと言うのだろうか。頭の悪い伊蔵に出来るわけもないのだけれど。
(どういてわしが)
こんなお偉そうな人たちに囲まれればならないのだろう。
まさか伊蔵が足軽だからといつものようにいたぶる為に呼び出したわけではあるまい―――と思うのだが。
伊蔵はおどおどと立派な人物を見上げた。
「ほう。おんしが岡田伊蔵か」
それは伊蔵にと言うよりは他の誰かに聞かせるかのような響きを伴っていた。
「い、ぞ……?」
知らないモノばかりに囲まれて小さくなっていた伊蔵の耳に、唯一聞いたことのある声が飛び込んだ。
伊蔵は身を起こした。伊蔵がその声を聞き間違えるはずがない。
「先……生?」
「どういて……おまんが此処へ」
「話通り岡田は頑是ない童のような目をしておる、―――のう武知」
奥の布団でよろりと起き上がったのは彼の師、武知半平太だった。


510はじめての 前編  3/8 :2011/09/08(木) 23:19:00.67 ID:krZoxtr+0

「どういたながですか先生ッ」
駆け寄ろうと座敷に上ろうとして取り押さえられる。
己の身分を思いだして慌てて座りなおしながら伊蔵は武知に目を注いだ。
部屋の奥で半身を起した武知は明らかに何時もと様相が違っている。
解れた襟足の髪。緩んだ襟元。乱れた裾。
あれだけ折り目正しく礼儀に厚く、謹厳実直を生真面目で塗り固めたような武知に何が起きたと言うのだろう。
「大殿様、伊蔵がなんぞご無礼を」
「弟子が気にかかるか武知?安心せい、咎める為に来させたのではないわ」
膝を正して問うた武知を振り返らず、大殿は伊蔵を見て笑う。
「ただ―――代わりは居らぬかと思うてのう」
「それは」
武知が顔をこわばらせてふらりと立ち上がる。
その顔色は酷く悪く、伊蔵は目の前の大殿よりも奥に居る師が気にかかった。
「岡田伊蔵」
大殿に名を呼ばれ、伊蔵は慌てて目を向ける。武知の様子ばかり気にしているのが気に障ったのだろうか。
「おんしは武知の一番弟子じゃと言うのは誠か」
「わしが?」
信じられない言葉に、伊蔵は喜びを通り越して唖然とした。


511はじめての 前編  4/8 :2011/09/08(木) 23:21:41.35 ID:krZoxtr+0

平井周二郎でもなく。坂本涼真でもなく。
最下層の足軽で。皆より年下で。頭の回転も学も無い。只、剣が少しばかり上手いだけの伊蔵が。
『あの』武知半平太の一番弟子―――だと言ったのか。
大殿様が伊蔵の事などを知るはずがなかった。
ならば。
武知が話したのだ。岡田伊蔵が己の一番の弟子なのだと、武知半平太が大殿様に申し上げたのだ。
伊蔵が武知に嘘をついた事が無いように、武知が大殿様に嘘をつくはずがない。
くらくらと目眩がした。これは現のことだろうか。
「もし誠であるならば、師の代わりを務め助けるのも一番弟子の為すべきこととわしは思うちょるが」
大殿様の言葉に伊蔵は身を震わせる。
この岡田伊蔵が、武知を助ける事が出来る?この出来の悪い伊蔵があの武知を?しかも一番弟子として?
なんと甘美な言の葉であることか。
まさに彼の願望そのものだった。武知の右腕となる己を何度夢想したことだろう。
「ま……誠ですき、わしは武知先生の一番の」
「伊蔵!」
伊蔵が言い募ると、何故か武知が悲鳴染みた声を上げ大殿様はにやりと笑った。


512はじめての 前編  5/8 :2011/09/08(木) 23:30:17.77 ID:krZoxtr+0

「お―――お待ちを大殿様ッ」
武知が大殿様に駆け寄り裾に取り縋った。見たことのない武知の取り乱す姿に、伊蔵は目を見張る。
「下がれ武知、おまんにはもう用など無いわッ」
「待ってつかあさい、待ってつかあさい大殿様、どうか、どうかお待ちを」
「黙れッ」
縋りつく武知を、大殿様が蹴倒した。
反射的に刀の柄に手をやった伊蔵は、今いる処が何処であるかを思い出してなんとか思い留まる。
城で殿に向かって抜刀すれば罰せられるのは多分伊蔵だけではないであろうし、
なによりもそんなことをしてしまえばもはや伊蔵は武士であるとは言えない。
武士で無くなってしまうのは嫌だった。
農民と変わらぬ生活を送り蔑まれる事の多い中で、僅かでも矜持を保ってこられたのは武士であったからだ。
貧しくとも身分が低くとも頭が悪くとも、武知の弟子になることが出来たのは武士であったからだ。
そして武知は武士らしく在れという言葉で伊蔵の進むべき道を照らしだし、だから彼は武士らしく在ろうと努力をした。
そんな伊蔵を武知はとても褒めてくれた。とても嬉しかった。
武士であることは伊蔵と武知を繋ぐ数少ない絆だったのだ。
「おまんが使えのぉなったから岡田を使うだけぜよ」
「わ、わしはまだ使えますきッ」
冷たく言い放つ大殿様の前に武知は廻り込み必死で頭を下げる。伊蔵には武知の背中しか見えなくなった。とても小さかった。
武知の背中がこんなに潰れそうに見えたことはない。何時だって凛々しく頼もしかった。伊蔵はなんだか悲しくなった。
武知と大殿様の言っていることの意味はよく分からない。伊蔵が武知を助けるという話は何処かへ行ってしまったようだ。
けれど、大殿様がなにかを伊蔵にしようとしていて武知はそれを庇ってくれているのであろうという推測は出来た。


513はじめての 前編  6/8 :2011/09/08(木) 23:31:29.78 ID:krZoxtr+0

(ほがなこと、してくれのうて良いやがき)
だってその背中は消えそうだ。
だってその身体はふらふらだ。
そんな武知の陰に隠れて自分だけ逃れたいと、どうして伊蔵が思えるだろう。
話の内容は全く掴めないけれど、一つだけは伊蔵にも分かっていた。……伊蔵の存在が、武知を苦しめている。
「伊蔵はまだ若輩ですき、どうかどうかご容赦を……わしが、この武知が、どがなお望みでも―――」
「応えると?」
武知が一層深く額づくと、大殿様は目を細めた。屈みこみ武知の肩に手を置く。
「おまんの胸の内はよう分かった」
「ご温情に御礼申し上げますき、大殿様」
安堵の為か、武知の背中の緊張が解けた。それを見て伊蔵もなんとなく嬉しくなった。武知が喜べば伊蔵だって喜ぶのだ。
その武知に大殿様はにやりと笑う。
「ならばおまんが岡田とせい」
「―――は?」
武知半平太の間の抜けた声というものを、伊蔵は初めて耳にした。
「そ、それは」
「気ぃが進まんがか?」
大殿様は武知の前から立ち上がり、伊蔵に近づいてきた。急に大殿様と目が合い、伊蔵は身を縮める。
「そうか、武知は下がってええぜよ。岡田、近う来ぃや」
「お―――お待ちをッ」
武知が再び大殿様の前に回り込む。大殿様の姿がまた見えなくなった。武知の背中はもう、伊蔵の眼前だ。
傲然と無言で見下ろす大殿様を前に、武知は僅かに逡巡した。
しばし言い淀んで、やがて膝を正すときちりと叩頭する。
「……大殿様のお手を煩わす事は出来やせんがです。……わしが、致しますき」
「おまんがそう言うならば―――是非に及ばんのう」
深く嘆息した武知をよそに、大殿様が口の端を吊り上げるのが伊蔵には見えた。


514はじめての 前編  7/8 :2011/09/08(木) 23:32:51.00 ID:krZoxtr+0

大殿様は武知の前から立ち上がり、部屋の隅に坐した。
その傍に居る上士たちは下卑た笑いで武知を見ている。伊蔵は気が立つ思いだった。
頭脳も剣術も人柄も武知に遠く及ばぬような輩が、何故あんな目で武知を見ているのだろう。
否、考えるまでも無い。ここが土佐で、あそこに座っているのは上士で、武知が下士だからだ。
ただそれだけであいつらは全てが許されるのだ。
(たった、一言でええやがき)
一言で良い。武知が不快を示してくれれば伊蔵は飛び出せる。
抜刀は流石に出来まいが、二三人殴り倒すことくらいは出来よう。
勿論下士の身でそれをしてお咎めが無いわけもない。
それでもあの目をあの笑いを止めさせることができるのならば、例えその後に待っているのがどんな事であっても耐えられる。
しかし武知は上士には目もくれなかった。
大殿様が眼前から立ち去ると、平伏からゆるりと身を起こしてしばし天井を仰ぐ。
「先生、お身体は大丈夫ですろうか」
消えてしまいそうな武知に不安になり、伊蔵は声を掛けた。
その声にびくりと身を震わせた武知は気重げに振り返り、やがて伊蔵の姿を認めるとゆるゆると微笑んだ。
「伊蔵、こちらへ上がりや」
「けんど、先生」
伊蔵は武知の呼びかけに躊躇した。
足軽がお城へ上がってもよいと言うことにも戸惑いが有るし、なによりもこの薄汚い恰好である。
乱れているとはいえ武知はとても整った服装をしていたし、大殿様や上士が身にまとっているのは明らかに絹だった。
それなのに、襤褸を纏うているに等しい伊蔵が上がり込んでも良いものなのだろうか。
己の着物を見まわしていた伊蔵に武知は優しく笑った。
「お許しは頂いちょるぜよ、安心しいや」
武知がそう言うならば伊蔵に迷う理由は無い。縁に上がり、畳に二歩ほど入って武知の正面に正座した。
間近で見る武知の顔色はやはり悪く、伊蔵は不安を募らせた。
笑顔なのにどこか辛そうに見える事もそれを煽りたてている。
それでも武知が口を開いたので伊蔵は言葉を待った。


515はじめての 前編  8/8 :2011/09/08(木) 23:38:22.34 ID:krZoxtr+0

武知は何故かそこで言い淀み目を落としていたが、やがてとても真剣に伊蔵の眼を覗き込んできた。
「伊蔵、おまん、女子と契りを交わした事は」
「……有りますき」
いきなりの話に少し困惑したけれど、伊蔵は素直に頷いた。
皆が言うほどには伊蔵は幼くは無いのだ。
「そうか」
武知は少し顔を綻ばせた。伊蔵の返答に僅かに安堵したようだった。
どうやら武知の問いに対する正しい答えを出す事が出来たらしい。伊蔵は嬉しくなった。
「ならば今、情が通じた女子は居るちやな」
「それは居りませんき」
伊蔵に恋人などいない。
だからそう答えたのだが、武知は何故かうろたえた顔になった。
うろうろと眼を彷徨わせて、何を思いついたのか急に顔を上げると伊蔵の肩を掴む。
「じゃったら、じゃったらせめて―――誰ぞ想う者は」
それならば、たった今。
距離二尺ほどの目の前に。
だから、こくりと頷いた。
ほりゃあ良かった、という小さな呟きが聞こえた。
武知は何故かそこで言い淀み目を落としていたが、やがてとても真剣に伊蔵の眼を覗き込んできた。
「伊蔵、おまん、女子と契りを交わした事は」
「……有りますき」
いきなりの話に少し困惑したけれど、伊蔵は素直に頷いた。
皆が言うほどには伊蔵は幼くは無いのだ。
「そうか」
武知は少し顔を綻ばせた。伊蔵の返答に僅かに安堵したようだった。
どうやら武知の問いに対する正しい答えを出す事が出来たらしい。伊蔵は嬉しくなった。
「ならば今、情が通じた女子は居るちやな」
「それは居りませんき」
伊蔵に恋人などいない。
だからそう答えたのだが、武知は何故かうろたえた顔になった。
うろうろと眼を彷徨わせて、何を思いついたのか急に顔を上げると伊蔵の肩を掴む。
「じゃったら、じゃったらせめて―――誰ぞ想う者は」
それならば、たった今。
距離二尺ほどの目の前に。
だから、こくりと頷いた。
ほりゃあ良かった、という小さな呟きが聞こえた。
救われたような顔をしている武知に己の成功を見て、伊蔵は胸を撫で下ろした。



516風と木の名無しさん :2011/09/08(木) 23:56:24.33 ID:M0dVgOC50
紫煙?

517はじめての 前編   :2011/09/09(金) 00:06:22.39 ID:QjnGMY9o0
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

もう全文出来ているので前後篇のつもりで投下を始めたんですが、
以前よりはるかに一回当たりの投下できる量が少ないんですね……
全中後篇か全四回になってしまうかもしれません。
読み違えてしまい申し訳ありません。さるにもひっかかるし……

連投になってしまうので続きは一週間空けます。

518はじめての 前編   :2011/09/09(金) 00:07:54.46 ID:krZoxtr+0
>>518
更新しておらず支援に気が付きませんでしたすみません!
おかげで締めが投下できました、ありがとうございました。

519原因と結果U 0/3 :2011/09/09(金) 13:56:15.98 ID:GG9IDVTI0


                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  六角形なクイズ番組の煙草銘柄ユニット紫色×水色
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  水色が連続で縄跳び失敗した回より
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

520原因と結果U 1/3 :2011/09/09(金) 13:56:57.44 ID:GG9IDVTI0
あ、つむじ。
そういえば新年会で、匂いを嗅いだなー。
みんなすごく盛り上がってたっけ。

ってそんな事を思い出してる場合じゃない。
彷徨い出す思考を強制的に止める。



何故自分よりも背が高い人物のつむじを見下ろしているのか。
答えは、簡単。
目の前で土下座しているからだ。
いくらみんなが先に帰ったからと言っても俺たちの楽屋は大部屋で、いつ誰が入ってくるかも分からない。
いつまでもこんな格好をさせておくわけにはいかない。
急いで言った「もういいですよ、立ってください」の声に嬉しそうに上げられた顔は、目が合った瞬間に曇った。

「マジで悪かったって」
「分かりましたよ」
「でも比呂巳まだ怒ってるだろ?」
「怒ってないです」


いくら言っても信じる様子は無く、こちらの顔色を伺っているのが分かる。
確かに不機嫌なのは自覚している。
他のみんなが居たときには得意のポーカーフェイスで隠していて、誰にも気付かれなかった自信はある。
それが二人きりになった途端、感情の抑制が効かなくなるのは多分この人に甘えてるから。
この不機嫌は縄跳での失態が原因だと思ってるみたいだけど、本当は違う。
そりゃあ、いつもより踏ん張りがきかなかったのは確かだけれど。

521原因と結果U 2/3 :2011/09/09(金) 13:57:53.85 ID:GG9IDVTI0
俺が縄跳で失敗したのは、縄に合わせて跳べなかったからだ。
昨夜、目の前の相手に激しく打ち込まれたリズムが体の芯に残っていて、それに引き摺られた。
そんな理由を説明できるわけがないし、自分の責任だから転嫁する気は無い。
それにも増して、不機嫌の本当の理由は口が裂けても言いたくない。
だから余計に不機嫌な顔になっているのだ。


『ずっといて欲しい、一緒に』


笑いを取るために反射的に言ったであろう一言が、心に突き刺さった。
そこに深い意味は無くとも、その言葉が自分ではない人間に向けられた事に滑稽な程ショックを受けた。
そしてショックを受けた事自体がまたショックだった。

……俺にはそんな事言ったことないくせに。

要は僻んでいるのだ。
口に出せば、驚くだろうなと思う。
喜ぶかもしれないとも思う。
でも言わない。
絶対に。

甘い言葉を欲しがるなんて出来ない。
言われれば勿論嬉しい。
でも自分からねだるなんて無理だ。
絶対に無理。
それなのに、ネタでも他人に言った事を根に持ってしまう。

欲しいくせに素直に言えないし、くれないと黙って拗ねる。
こんな面倒くさい性格によく付き合ってられるな、と感心する。
どこがいいのか一度聞いてみたい気もするけど、それも同じ理由で出来ない。
「私のどこが好き?」と訊く女の子は可愛いかもしれない。
でも俺は無理。
可愛くないし。俺じゃ。
我ながらどうしようもないな、と少し可笑しくなった。

面倒くさい性格ですみません。
でもあなたが色々と俺を妬かせるようなことをするんだから、我慢してくださいね。
心の中でこっそりと謝る。

522原因と結果U 3/3 :2011/09/09(金) 14:09:02.31 ID:GG9IDVTI0
ちらちらとこっちを見ながらリュックに荷物を詰める人に
「悪いと思ってるんなら、ビール奢ってくださいね。冷蔵庫の買い置き、もう無くなってましたよ」
と声をかける。
「今日も泊まるのか?」
途端に明るくなった表情に釣られて緩む頬を引き締め、
「で も!」
分厚い胸板に人差し指を突きつけ、一応釘を刺す。
「今日は『ナシ』!ですからね」
「おっけー!分かってる分かってる」
そんなことは全く意に介さないとでも言うように、うきうきした様子に笑いが漏れる。
『ナシ』と言ったのを何が?と問い返されなくて安心したような、却って恥ずかしいような。

立てなくなるほどは困るけど、一回くらいならいいかな。
そんなことを思いつつ、広い背中を追って廊下へと出た。

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ <番組続クトイイナ……
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

523風と木の名無しさん :2011/09/09(金) 22:55:46.71 ID:m2UV84HaO
>>519

不器用な水色に何回も読み返してしまう(´ω`)

紫もぐるぐる考えてそう

524原因と結果U 3/3 :2011/09/10(土) 10:17:12.97 ID:cGKJwpkI0
>>522
ちょうどスレで話題が出てたから見直したところだった!
読んでもう一度見直してnynyしたよ

525風と木の名無しさん :2011/09/11(日) 01:25:33.02 ID:oFXmnYeb0
志村ー!名前!名前ー!!

526風と木の名無しさん :2011/09/11(日) 04:31:12.41 ID:BH8JHY4EO
これは恥ずかしい

527風と木の名無しさん :2011/09/11(日) 20:25:29.28 ID:1Gss/BDL0
空しくならないんだろうか…果てしなく憐れだ

528風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 00:26:04.78 ID:Zxstx6aOO
うわ、めっちゃ痛いの見ちゃったなw

529風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 09:00:03.92 ID:LCKH2+BC0
最初、シムラがどうした?と思っちゃったw
やっちまったな

530風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 10:24:42.76 ID:FRAL9VrRO
同好の士かと(´・ω・`)

531風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 10:44:44.97 ID:PyLwHb0O0
新手の嫌がらせだったりして

532風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 13:56:32.25 ID:9ASJW15j0
いや、フツーにやっちまったんだろう
痛々しくて見てられん…

533風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 14:27:43.41 ID:HgMEzF1x0
そろそろ許してやれよ。・゜・(ノД`)・゜・。

534風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 16:50:29.70 ID:cwWvknn7O
つうか、>>3
どうしても続けたければ適スレで

535風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 17:03:32.20 ID:HuW3hDiC0
>>533
で終わればよかったのに

536風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 17:21:21.80 ID:cwWvknn7O
>>525の間違いじゃないの

537風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 20:55:46.02 ID:yv2vdngGO
A Retrieved Reformation by O. Henry ベン×ジミー

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


棚から取り出したローションで後孔を解され
ののしりながらもジミーはベン・プライスの
書き物机の上で切なげに眉を寄せた。
きもちいいのが恥ずかしい。ベンの指に喘がされ
込み上げる羞恥心にジミーは顔を染めた。
みみずくの鳴き声よりも、軋む机の音よりも
はめられた指がクチュクチュ大きな音を立てている。
全てをベンにさらし、差し込む月明かりの中
てらてらと股間を先走りで濡らしたジミーは、
がまんができず、指よりもベンが欲しいのだと
ネダった。いつになく素直にネダったジミーは
タ焼け空のように頬を赤く染め、ベンは愛しいジミーを掻き抱いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ


538風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 23:05:22.14 ID:LU7v129F0
お見事だとは思うが、これだけお見事だと最後から二番目がちょっと惜しいw

539風と木の名無しさん :2011/09/12(月) 23:30:21.29 ID:kMw3rcne0
>>537
最後の行もわざとの文字トリックなのか、単にお手上げだったのかw
いやでもお見事です

540風と木の名無しさん :2011/09/13(火) 00:00:10.04 ID:SCo7/ZnF0
おお!そうか!
初見では分からんかった
>>538-539ありがとう!

そして>>537本当にお見事です。感服。

541風と木の名無しさん :2011/09/13(火) 02:52:40.16 ID:1Sz3ItMB0
>>537
すげええええ!素晴らしいの一言に尽きるね

542風と木の名無しさん :2011/09/13(火) 20:13:40.65 ID:/Ajnb6t80
何がどうすごいのかさっぱりわからんかったけど、今やっとわかったw
てか自分はA Retrieved Reformationて素晴らしい短編を知ることができて
それに感謝 原作にすっげぇ萌えたww

543虎と兎のエトセトラ 1/5 :2011/09/14(水) 01:01:11.65 ID:k6imrqZM0
オリジナル。
虎ファン(複数)×兎ファン

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「いえ〜い! 勝った〜!」
今日は久々に一人でドームに観戦に来ていた。
いつもなら後輩をつれて来るのだが、今日は誰も相手にしてくれなかった。
相手にしてくれなかった、という表現は悪いが実際そうだったので包み隠さず言うことにする。
昼間ふと、どうしても野球をナマで見たい気分だったので夜仕事が終わったあと球場に足を運んだ。
今日のドームは伝統の一戦だったし、いい試合だった。
応援しているチームが勝つと、とてもいい気分である。
「ふっふふー」
のんきに鼻歌なんて歌いながら駅までの道のりを歩いていると、
道端に黄色い塊が見えた。
いや、正しくは黄色い服を着た人達の塊だ。
「くそ、くそっ!」
「あそこで、兄貴が打てば…!」
「ちゃうわ、前の粗いが打てば…!」
「てか、あいつら打たねぇじゃろけ!!!」
「主軸が機能してないんやもん…ありえへん…」
こてこての関西弁が耳に入る。
俺は本能で察知した。
あまり関わらない方がいいであろうと。
しかし、そんな俺の警戒をよそにその黄色い塊は俺を囲むように近づいてきた。
俺だって背はそんなに小さい方ではないのにその軍団は俺をすっぽりと囲んだ。
「……え。な、なに…?」
「コイツ読売ファンやな」
「そやな。こんな日に鼻歌歌ってるヤツは読売ファンに決まっとる」
「東京もんのくせに生意気や」
男の一人が何かを思い出したかのように、俺の手をガッと掴んだ。
あまりの勢いに俺はその男を凝視する。
「おいおい、何処に行くんだ?」
「ええとこよ」
「は、離せっ!」
「離せいうて、離すやつおらんやろ〜」
「痛っ! 痛いってば!」
「せやかて、お前が逃げようとするからなあ」
男はそう言うと俺を後ろからガッと羽交い締めしてきた。
その行動に俺は驚き咄嗟に行動が取れなくなる。

544虎と兎のエトセトラ 2/5 :2011/09/14(水) 01:02:56.65 ID:k6imrqZM0
「な、にを!」
「兄ちゃん、よーけ顔整ってるのう、モテるやろ?」
「は、はぁ?」
「俺らな、今たまっとんねん」
「……へ?」
「試合負けとうて、六本木行く金もあらへん」
「だから…?」
「そういうことよ」
別の男が俺の腕を引っ張る。
「っ…!」
軽い痛みが腕から脳に伝わる。
腕を見ると男がなにやら細い注射のようなものを俺に刺していた。
「な、にを―――!」
俺は言葉をいい終える前に意識を飛ばした。

………。
……。
…。

545虎と兎のエトセトラ 3/5 :2011/09/14(水) 01:03:55.91 ID:k6imrqZM0
グリッ!!!
「ぐあああっ」 
俺は叫ぶと同時に目が覚めた。
激痛が走る。
どこからその激痛が走っているのかはまだぼんやりとした脳では理解することが出来ない。
暗がりでまだ視界が不安定だ。
ここはどこだろう、と俺は頭をクリアにしようとする。
「可愛がってやるわ…玉つぶされたくなかったらおとなしくしてろや」
こてこての関西弁が聞こえる。
気がつくと手は上部で縛られていた。
「無駄やで、逃げようとしてもな」
暴れれば暴れるほど縄は手首にキツク食い込んだ。
「くっ…! あ、ぁ? う、ん…あ?」
そして、先ほどから妙に汗が止まらない。
動機は激しく、息が整わない。
身体中が何だか自分のモノじゃないかのようにおかしくなっている。

546風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 01:12:58.50 ID:k6imrqZM0
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
連投規制に引っかかってしまいました。

547風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 01:22:32.50 ID:QAsb9HkI0
支援?

548風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 01:22:53.71 ID:aN1B2Vpz0
しえん

549虎と兎のエトセトラ 4/5 :2011/09/14(水) 01:27:58.89 ID:k6imrqZM0
再開します

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ぁ、熱い…何だ、身体が熱くなってきて…何だ、これは???」
「グッフフッフフ」
そう言い男たちはジーンズの上から俺の双丘を優しく撫で始めた。
「くぁっ、ぁ!?」
「どないしたんよ、変な声出しおうて」
「や、やめてくれ…やだ、それ…だめだ…!」
「グッフフ、ええことよ。薬が効いてきたみたいやな」
「薬? そういえば、さっき…」
頭はだいぶクリアになっていた。
意識を失う前、羽交い締めにされた時に変な注射のようなものを刺された記憶がよみがえる。
男たちの手が大きく俺の双丘を撫で回す。
俺の身体は、男たちが打った注射で全身を駆け巡り熱に浮かされたように熱くそして身体全体が敏感になっていた。
ジーンズの上から双丘を撫で回されるとゾクゾクとした不思議な感じが全身に伝わる。
「…! んっ! …あ、ぁぅ!」
「ええことしたるで、グフフ」
にたりと笑みを浮かべた男は俺の唇をふさぐ。
そして、器用に胸をはだけさせてその胸の頂を指の先ではじく。
ひくっと俺の身体が震え、ふさがれた口から小さなくぐもった悲鳴が漏れた。

550風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 01:43:51.06 ID:dzy0FmYF0
[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
ちょっと間あけます

551風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 06:12:01.90 ID:M3DNATrM0
支援しときます

552風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 08:32:31.84 ID:6QHvfbOtO
ヤフー知恵袋の「NLの女性向け男性向けについて」
という質問で「同じ男女カプ萌えでも男と女では好みのカプやシチュの違いが一目瞭然」とか
「男の男女本を買う女や女の男女本を買うひとは少ない」とかいう回答がベストアンサーに選ばれているのに、
とらのあなでも女作家がかいたノマカプやノマエロには「女性向」表示がわざわざつけられるシステムなのに、
2ちゃんの男女カプスレではたいがい男とおぼしき人と
女とおぼしき人間が普通に入り乱れている不思議。

553虎と兎のエトセトラ 5/5 :2011/09/14(水) 20:05:33.49 ID:k6imrqZM0
再開します

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「…ん、んふぅっ!んっ!!」
「どや?」
「ぁ、あうっ! っく……はぁうっ!! あぁぁっ!」
「そんなにええのか? ええんか? ええのんか?」
「ぃ、いやっだあ! 離せ……っぁああぅ、あぁぁ!」
「離せ言われて離すバカはおらんやろ、なあ?」
「ん、はぅっ!! あぅっ……ひゃうぅうっ!」
「ここか、ここがええんか」
「胸……なめるなぁ、よ、やだぁ、あ……あああぁんっ! はぁっ!!!」
その言葉も無視して男はちるちると胸の頂を舐め上げ、歯でしごいて見せる。
すでに俺の頬は真っ赤になっている。
路地の奥まった暗い場所でひくりひくりと身体を震わせている。
そして、胸を舐め上げながら男は俺の下半身をも露にさせる。
「や、だ、やめろ、やめろっっおおお!!!」
「ほう。もう随分堅くなっとるやんけ」
「やめ……やだ、やだやだっ!!」
「止めへんよ、止めるわけないやろ!!!」
そう言って、男は俺の腹に拳を思いっきりたたき込んだ。
「ぐ、あ……!」
目の前が真っ暗になる。
俺はこれから、どうなってしまうんだ―――。
しかし、更なる悲劇がその肉体を襲うこととなろうとは、そのときの俺には思う由もなかった…。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ スレ占拠スイマセン

554風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 23:09:26.77 ID:/kYmu6QE0
>>553
乙でした

それにしても連投規制が厳しくなってるよね?忍法帖の影響?

555風と木の名無しさん :2011/09/14(水) 23:27:46.54 ID:T7fnWUyP0
避難所に代行スレあるから使えばいいのに

556風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 01:13:05.10 ID:k2a4AVWn0
飛翔 助っ人箪笥

前会長⇔現会長ですが恋愛未満エロ無し小話
今週(40)号のネタバレを含みますので、ご注意ください。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


557「after WJ40」 1/4 :2011/09/15(木) 01:16:11.48 ID:k2a4AVWn0

―――本当にいい天気だなぁ
 
校舎の屋上に一人、澄み切った空を見上げて、安形惣司郎は、思った。

―――俺の心も、この空と同じだ。
   実に晴れ晴れとした、清清しい気分!

生徒会のことは、もうずいぶん前に後輩に任せられたし、
自分自身の卒業と進路も決まった。
大事な大事な妹の悩みが、解消…とまではいかなくても、
とりあえず、自分の中では、ある程度の決着が付いた事で、
己が、変に誤解していた悩みからも開放された。

―――なによりも、サーヤの好きな奴がアイツじゃなくて、本当に良かった!

そう思いながら、青空に向かって、大きく伸びをしていると、後ろから声がかかった。
「会長」
凛としたその声は、安形が今まさに思い馳せていたアイツ…椿佐介のものだった。
「こんなところに、いらしたんですか」
にこやかに近づいてくる椿を見つめる安形の視線は、とても優しい。

「聞きました。東大に合格されたそうですね。おめでとうございます!」
そう言って、深々と頭を下げる椿の背中を、ポンポンと軽く叩きながら、安形は笑った。
「かっかっかっ!!
 なぁに、大した事じゃないけどな!」


558「after WJ40」 2/4 :2011/09/15(木) 01:18:11.58 ID:k2a4AVWn0
「いえ、素晴らしいです!
 ボクも、会長の後塵を拝し、日々、精進して行きたいと思っております」
顔を上げ、姿勢を正した椿の肩に安形は軽く手を置いた。
「おいおい、そんな堅っ苦しいコト、言ってんじゃないよ。
 もっと、気楽に行こうぜ!!かっかっかっ!」
白い歯を見せて豪快に笑う安形に、つられる様にして椿もニッコリと微笑んだ。

―――こらこら。
   そんな可愛らしい顔で、笑うんじゃないよ!
   抱きしめちゃうぞー!

あー、でも、それもいいかもなぁと、安形は思った。
今ここで抱きしめて、今までの思いの丈を告白して、思いっきり濃厚なキスをして
いっそ、そのまま押し倒して、この澄み渡る晴天の下で青か…んっと、いやいや。
いかんいかん。
ソコまでしたら、椿の奴、血管切れまくって、死んでしまいそうだ。

でも、さ。
キッスぐらいなら、いいんじゃないの?
だって、ほら。俺。東大受かったし。
それくらいのご褒美は、ねぇ?
いいよね?ね?

「・・・会長?どうかなさったんですか?」
ちょっと小首をかしげる仕草も、とても可愛らく安形の目には映る。

―――つか、可愛すぎるだろ!
   お前、本当に、男子高校生か?!!


559風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 01:23:29.67 ID:7MANsg8W0
しえん?

560「after WJ40」 3/4 :2011/09/15(木) 01:23:55.78 ID:k2a4AVWn0

「椿・・・」
椿の肩に置いた安形の手に力がこもる。
「はい・・・?」
安形が少し体を近づけると、椿のほうは、一歩下がろうとする。
そうはさせじと、左手でもう片方の肩もつかんで、また少し距離を縮めた。

―――逃がさないよ?

「会長?」
安形が正面から見つめる椿の瞳は、黒目の中に青い空を映してキラキラ光る。
その澄んだ瞳に引き込まれるように、安形はゆっくりと顔を近づけていく。
椿の目に映る安形の影が大きくなったその時。

「会長!!」
安形が呼ばれ慣れたその呼び方は、しかし彼を呼んだものではなく。
「キリ!どうした?!」
椿は、驚いたように声を上げると、声の主のほうへと小走りに近づいていった。

「どうしたもこうしたもありません。
 卒業式の準備の最中に、会長がこんな所にいらしては、困ります。
 他の者も、探しておりました」
自分よりも背の高い後輩に咎められて、椿はばつが悪そうに、頭をかいた。
「そうだな。すまん。すぐ、戻ろう」
そう言って、椿は安形を振り返った。
「すいません、会長、お話の途中ですが、失礼いたします」
そしてまた深々と頭を下げると、椿は、校舎の中へと消えていった。

つい先ほどまで、自分の手の内に会った愛おしい体が、するりとその甘い戒めを解いて、
風のように逃げていってしまった空しさで、安形はしばらくその場から動けないでいた。


561「after WJ40」 4/4 :2011/09/15(木) 01:25:59.13 ID:k2a4AVWn0

「何を、なさっていたんですか?」
白々しいとは思いながらも、加藤は椿に問い質す。
「いや?特に何も・・・ただ、会長がボクの顔をずっと睨み付けてて・・・」

(いや、あれは、どう見ても、キスされかかってたでしょう!)
加藤は、そうツッコミたかったが、心の中だけに留めておいた。
「ボクの顔に、何か、付いてるのかな?」
一点の曇りもない瞳でそう問い返されて、加藤は返答に困る。
「・・・いえ。何も、付いていませんが」
そうぶっきらぼうに答えて、加藤はそっぽを向いた。
「そうか。良かった。」
安堵した椿の声を背中に聞いて、そっと振り返りながら加藤は思った。
確かに、椿の顔には何も付いてないけれど、大きく『天然』の文字が浮かび上がって見えるようだ、と。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

支援、ありがとうございます!!
先週から萌えて萌えて書かずにはいられず…
お目汚し失礼しました

562「僕の相方」 3/2 :2011/09/15(木) 01:55:56.63 ID:AYaVRGKy0
現在473KB
そろそろ次スレ?

563風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 01:56:34.40 ID:AYaVRGKy0
ぎにゃー、名前欄代行のままだったorz

564風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 07:42:31.63 ID:34idYj+W0
>>561
投下乙です
と、言いたいところだけど、文体とかが、
某スレの作家さんの劣化コピーみたいで、笑えない

ジャンルも違うし、もしかしたら、その作家さんへの
リスペクトから生まれた結果ということで、
悪気はないのかもしれないけど、
ちょっと目についたので、敢えて指摘しておく

折角の自分の作品なんだから、もう少し工夫した方が良いと思う

565風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 12:01:45.78 ID:B4slAdbJ0
>>564
あなたの、句読点の、うちかたが、きに、なります。

566風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 12:47:13.78 ID:ahlgJFO20
戦場カメラ◯ン乙

567風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 12:51:01.50 ID:YfRAOQSq0
某作家とかわかんないけど
561も584も言われてみれば句読点の打ち方にクセあるなw
国語的に妙な句読点と体言止めの文末多いのは
携帯や十代の文体の特徴だと思ってたわ

568風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 12:56:23.74 ID:CwUf7jcw0
>>584の句読点に期待

569584 :2011/09/15(木) 15:04:47.76 ID:L0tLhmVMO
課長×帰国子女

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

数珠屋にファックスで「ふたえにしてくびにかけるじゅず」を注文したところ
ありえねーほど長い数珠をつくりやがった。あの馬鹿は、「二重にして、首にかける数珠」と読んだ様だが、
俺が注文したのは「二重にし、手首にかける数珠」だ。
海外ぐらしが長かった俺は、今のところ平仮名しか書けない。でもうちは外資。公用語は英語だから、そんなに困ってない。
だから、まさか、広報課の課長に送ったデートのお誘いメールが、薄毛に悩む課長を傷つけたなんて思わなかった。
「はげたかちょうおもしろいから見に行こう」
俺は禿げた課長、超面白いから見に行こうなんて思う社員じゃねえよ。
禿げてもかつらでもアンタが好きだ。
見たいのはハゲタカ。NHKの土曜ドラマが映画化したんです!
日本語ってクソ難しいな。誰か俺に句読点、教えろよ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


570風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 16:04:33.93 ID:RLwb+Q7Q0
>>569
ワロタ&ほのぼのと萌えたw

571風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 16:11:17.57 ID:/vGxs6yb0
女装大学生の日常

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

女装は初めてでは無かったがトイレの個室で行うのは少しばかり手間取ってしまった。
私は他の人の気配が無くなるのを待って個室から抜け出し走ってトイレから出た。
幸運にも誰にも見られる事は無かったようだ。

教室に入りあまり目立たない席に座る。
今日の目標は取り敢えず女装で授業を受ける事だ。
いったん座ってしまえばそんなに注目される事もないだろう。出席はカードなので問題ない。

普段は寝て過ごしている授業だが女装しているからなのか、真面目にノートを取っている私がいた。
冒険心ゆえの女装外出だったが意外に実用的だったのかも知れない。

幸い、私には友人は居ないので誰かに私だとバレる心配も無いだろう。
授業が終わり教室から人が減って行く。

「あの…ちょっといいですか」
「ひ、ひゃい?!」

いきなり声かけられて心臓止まるかと思った。
振り向くと根暗そうな女の子が私の肩を叩き呼んだのだという事が分かった。

「な、なんでしょう」

私はなんとか女に聞こえるよう声を作りながら根暗女に返事を返す。

「失礼ですけど、あなた男ですよね……?」

なっ?!バレ……

「あ、安心して下さい。私……いえ、俺も男だから」

……女装って流行ってるんですかね?

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


572風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 16:40:14.55 ID:AYaVRGKy0
次スレどうぞー

モララーのビデオ棚in801板66
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/801/1316072222/


573風と木の名無しさん :2011/09/15(木) 23:36:01.64 ID:L0tLhmVMO
ベン×ジミー

>>538 アドバイス Thank you!! リライト シテミタ!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

棚から取り出したローションで後孔を解され
ののしりながらもジミーはベン・プライスの
書き物机の上で切なげに眉を寄せた。
きもちいいのが恥ずかしい。ベンの指に喘がされ
込み上げる羞恥心にジミーは顔を染めた。
みみずくの鳴き声よりも、軋む机の音よりも
はめられた指がクチュクチュ大きな音を立てている。
全てをベンにさらし、差し込む月明かりの中、
てんてんとインク染みがついた机の上で、ジミーは悶え、
がまんができず、指ばかりで攻め立てるベンの
ネクタイを掴んで強く引き寄せると、目で誘い
タバコの匂いがする唇に噛み付く様なキスをした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

574風と木の名無しさん :2011/09/16(金) 00:20:11.24 ID:6a/7h4Et0
なんだろう神がいっぱいいる…ありがてぇ

575538 :2011/09/16(金) 00:24:36.36 ID:PDdsX5TK0
おお、すばらしい!文句なしにお見事ですw
最後の行も完璧w

576風と木の名無しさん :2011/09/16(金) 06:52:20.40 ID:NARsqBb40
うわぁこれは…惚れ惚れするわ!!
GJ!!!

577風と木の名無しさん :2011/09/16(金) 12:38:16.84 ID:5VBqrnCd0
>>542と同じく>>537で初めてこのすばらしい原作を知れた
青空文庫で読んで来たけどなにこの萌える短編名作…!!
1pでこの破壊力すげーわ。
投下共々感謝

578風と木の名無しさん :2011/09/16(金) 13:52:00.10 ID:BHapqAGe0
更に進化したすげえええ!
自分も青空文庫で読んできたけど原作も萌えるわ
gjgj!

579風と木の名無しさん :2011/09/16(金) 16:02:56.85 ID:3Radt03C0

スミマセン…生なのに…見た瞬間禿萌えて筆が滑りました
某総合電機メーカーのCM−ひたちのヒト−
動作担当B×制御担当A

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース


580動作担当B×制御担当A @ :2011/09/16(金) 16:04:45.16 ID:3Radt03C0
あぁ、頭が痛い。っていうか、心が痛い。
さっきからチクチクと指摘される動作の不具合の数々に、心臓がキュウキュウ締め付けられる。

A「ロボットは望まれる存在であるべきでしょ」
B「そんなこと分かってますよ」

いい歳してガキみたいに不貞腐れた自分の言い草に、言ってる方が恥ずかしくなるけど。
それにしたって、アナタだって言い様ってもんがあるはずだ。
俺はメカニズム担当だから、当然、コッチに求められてるものが何なのか分かってる。
分かってるんだけど、いつもその要求は余りにも高い。

B「ちゃんと動かないと意味がない」
A「―――役に立たないと、意味がない」

…ッたく。
そんな噛んで含めるように言い直さなくても良いじゃないか。
あーそーですよ、ただ動くだけだったら、それこそただの機械ですからね。
ちゃんと動くのは当たり前。
でもそれじゃ、ロボットである意味がない。その辺に転がってる石ころと同じ。
俺達が作ってるのは、そんなモノじゃないんだ。

A「人のカタチをしてるんだったら、人のカタチ相当の動きをしてほしい」
B「そんなこと分かってますよ」

相変わらずの嫌味な言い方に、つい苦笑が漏れる。まったく、この人はいっつもいつも。
アナタに言われなくたって、俺自身が十分に分かってますよ。
どうやら、またアナタを満足させられなかったってことぐらい。
目立つことが好きな俺が、形を優先した結果発生した今回の不具合。
毎度毎度、バッサリ切り捨てられるこの瞬間は、もはや快感ですらある。

A「僕の合格点には、まだ来ないな」

581動作担当B×制御担当A A :2011/09/16(金) 16:06:17.58 ID:3Radt03C0
ナンだってんだ、その上から目線。その偉そうな言い草。
ちょっとばかり先輩だからって(だいたい、歳なんか1コしか違わないのに)。
ちょっとばかり“研究所でトップクラスの天才”なんて言われてるからって。
思わず遠くに目線を泳がしてしまう。
あー何もかもが暗い。
研究所の部屋はいつもどおり薄暗いし、俺の頭の中もどんよりと重く暗い。
完全に壁にぶち当たったこの感じ。
解決すべき難問を鮮やかにクリアしてくれる魔法の呪文が欲しい。
でもそんなモノがあるはずもない。
結局は地道な作業を繰り返すことでしか、解決策は見出せない。

B「そんなこと、分かってますよ」

仕方なく繰り返す。
彼女も作んないで、こんな穴倉の中で、いったい俺は何を一生懸命になってるんだろう。
いったい何のために、俺はここで頭を抱えてゴールの見えない作業を繰り返してるんだろう。
――――いや、本当は分かってる。
分かってて、何年もこうやってきたんだ。
そんなこと、今さら自分で再確認しなくても分かってるよ。

B「…先端技術とか、何か人が見たがことないとか、世界で初めてとか、そういうことをしたい。作りたいからロボットやってるんです」

でも、ただ作りたいってだけじゃない。
アナタと一緒に、アナタと一緒だから作りたいんだ。
そのためだけに、俺は好き好んでこんな穴倉にいるんだから。
そのためだけに、黙々と地道な作業を繰り返してるんだから。

A「そんなこと、分かってるって」

582動作担当B×制御担当A B :2011/09/16(金) 16:23:56.19 ID:3Radt03C0
俺の心中を知ってか知らずか、想う相手は細い指先で眼鏡を押し上げながら、ようやく少し満足そうにフフンと笑ってくれた。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

最後が書き込めず、時間がかかってしまって申し訳ありませんでした
当然のことながら一切がフィクションです
同CMの「はいてクノロじーず」版も素晴らしく萌え



583観葉樹×植木鉢 :2011/09/17(土) 04:42:53.70 ID:k5HPBUMiO

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

植木鉢は受け皿に溜まった水で鉢底をしとどに濡らしながら荒い息で喘いだ。
彼が共に過ごしてきた観葉樹は、大きく育ち3年に一度の植え替えの時期をむかえている。
根が鉢一杯に回り、根詰まりした株は激しく鉢を犯した。全身に鈍い痛みが走る。
鉢の小さな体ではもう、伸びゆく観葉樹を受けとめる事ができない。
身の内に広がる観葉樹の根に喘ぎ喘ぎ、鉢は鈍痛を伴う強い快感に身悶え涙した。
別れは辛いが、これ以上根が詰まれば鉢の中の空気は減り、根は呼吸できずに枯れてしまうだろう。
観葉樹の為にも鉢の為にも、もはや植え替えは避けられなかった。そしてその時が訪れる。
ゆっくりゆっくり根が引き抜かれ、鉢は抜かれる刺激に声を上げた。
鉢が観葉樹と用土を失った喪失感にうちひしがれていると、園芸家は鉢の寂しい身体に勢いよくホースで水をかけた。
ホースが気持ちいいなんて知らなかった。ほとばしる水を受け、身体をびしょびしょに濡らした鉢は、新たな快感に目覚めた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


584風と木の名無しさん :2011/09/17(土) 11:51:46.70 ID:aQllf8JH0
>>583
切ないんだか笑えるんだか良く分からないが…GJ

585風と木の名無しさん :2011/09/17(土) 11:59:30.77 ID:LrnzEzqC0
>>583
懐かしの「い も お と」スレを思い出した
こういうの好きw

586風と木の名無しさん :2011/09/17(土) 12:13:10.16 ID:xLTxsh01i
鉢は淫乱受なんだな……GJ!!!

587風と木の名無しさん :2011/09/18(日) 13:31:01.05 ID:80CHo9ixO


アラウンド70歳


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


離宮の豪奢な寝台で麗しく老いた公爵は、老いてなお精悍な皇帝の口内に花芯を委ねていた。

「はぁあっ…!!」
気品ある老齢の公爵は、己の下肢に顔を埋める皇帝の頭を抱え掠れた声で喘いだ。金獅子王と呼ばれていた皇帝の金髪はすっかり銀色だ。
二人は事に及ぶ前に杯を交わし、強壮の薬用酒で老いた身体を高めてはいたが、もはや若くはない花芯は勃ち上がるまでに時を要した。
必然的に二人の夜は、舌や唇での愛撫が長くなる。

麗老の公爵の花芯は皇帝の巧みな口淫で頭を擡げ始めた。
皇帝は芳香花の精油で公爵の固い蕾を濡らし、老いて腰を病んだ恋人を労り、そっと羽毛の枕をあてがった。
脚腰が弱くなった公爵は、若い頃の様に腰を高く保つ体位がとれない。膝をつき四つに這う姿勢もだ。
皇帝に労られながら愛され、恥じらいながら感じ入った公爵は、花芯の頂きから若い頃よりさらさらとした淫蜜を流し
公爵の淫らな姿に、萎れていた皇帝の前は勃ち上がり、熟した蜜瓜の果肉の様に先端が濡れた。
皇帝は公爵の目尻の皴に接吻し長い脚を抱えると、香り高い精油で八分咲きに綻んだそこに自身を押し当てた。
香油で濡れたそこを皇帝に力強く穿たれ、公爵は年甲斐もなく乱れたが、達する前に皇帝は中折れしてしまった。
公爵は悔しげに自嘲する皇帝の首に腕を回し、己が腰を労られた様に途中で萎えた皇帝を労り、優しく微笑んだ。
年をとれば夜の営みも思うようには行かなくなる。老いた身体を皴深い手で労り合いながら、皇帝と公爵はむつみあった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

588風と木の名無しさん :2011/09/18(日) 21:29:31.50 ID:Hqgkfv5m0
>>587
新たな萌えの扉が開いた気がする・・・GJ!

589風と木の名無しさん :2011/09/19(月) 09:34:33.93 ID:ejFZ6KvdO

 叩き上げ次長×エリート部長 襲い受け

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


次長にM字騎乗で跨がった若輩者のエリート部長は、卑猥なケツを自ら振りまくり、薄汚い白濁を□の割れた腹筋に発射した

部長はノンストップでイキながら自分の乳首を弄ってヨガリ、股間をジットリと濡らしている
次長は部長の自分本意なイキっぷりを冷めた目で眺めた

次長のそこは部長のヌレヌレ状態のケツにくわえこまれたままだ
吐き気がする

九州なまりで喘ぐ部長の嬌声を聞きたくない次長は耳を塞ぐ

嫌われているのを知っているくせに毎度次長を押し倒しては強制勃起させ、喜々として跨がる部長の気がしれない


しかし最悪だったパワハラももう終わる。部長はリストラされいなくなるそうだ。こんなめでたい事はない
口煩くダメ出しと粗探ししかせず、年長者を顎で使うエリート部長は嫌われ者だ。次長だけでなくフロアの全員から嫌われていた
誰も言い出さなかったので送別会はなかった


部長が去って暫くしてから飲みの席で専務が言った
専務は「部長には言わないでくれと頼まれていたが、お前達は知っておくべきだ」と言った
部長は部署の人員削減を命じられ、高給取りの自分の首を切ったそうだ
自分が退社した後、業務が滞らないよう部下に厳しく接しているように見えたと専務は語った

次長はベッドでも身勝手だった部長を思い出した
何故に部長は自分をベッドに誘ったのだろう。今となっては確かめる術もないが
自分と良く似た部長の九州なまりが耳に残って離れない
もしも「ご出身は?」と尋ねていれば、郷土の思い出話に花咲く夜があったかもしれない

次長はグッと芋焼酎を飲み干し両手で顔を覆った

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



590<修正> :2011/09/19(月) 11:33:10.31 ID:ejFZ6KvdO

薄汚い白濁を□の割れた腹筋に発射した
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
薄汚い白濁を次長の割れた腹筋に発射した


591俺の○であがけ 一也×山口(今回は山口×新率高)1/5 :2011/09/19(月) 12:13:00.54 ID:RTTA0Rzz0

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

久し振りにゲームやったら山口さんのその後に妄想が広がったので投下。
隷属ED×3のその後。いろいろ鬼畜注意。

 ガチャガチャと鎖の鳴る音と、獣じみた息遣いだけが薄暗い室内を満たす。
 壁際に座り込んだ山口は、ぼんやりと正面の闇に浮かぶ煉瓦造りの壁を見つめていた。
 全裸で、首や手首には拘束具を填められていたが、山口のそれはどこにも繋がれてはいない。
 音の出どころは、山口の左右に拘束された青年達だった。
 荒い息遣いは、右隣の青年のもの。こちらに背を向けて毛布にくるまり、じっと横たわっている。
 時折、譫言のようにあの男の名を呟く以外に、彼から言葉らしきものが聞けなくなって久しい。
 鎖の音は左隣の青年からだ。10cm程度の短い鎖が彼の手首と首とを繋いでいて、
脚の間に渡された鉄棒の両端の枷が、両足を開いたままに拘束していた。
 特に刺激が与えられているわけではないのだが、山口の知る限り、彼はこの1週間、
1度も射精していない。開発され尽くした身体が疼いて仕方がないのだろう。自慰ができない
よう拘束された青年は、さっきから落ち着かなげに身悶えを繰り返している。
 ――異常だ、と山口は今更のように思う。
 ここは中世の牢獄ではなく、都心のありふれた高級マンションの一室だ。階下には普通の日常が
繰り広げられているはずだというのに、この空間には人権も何もありはしない。
 1人の男――壱哉に奉仕することだけが、日常の全てという空間。そして、繋がれてもいないのに
こうして壱哉の訪れを待っている自分の異様さはどうだろう。

592俺の○であがけ 一也×山口(今回は山口×新率高)2/5 :2011/09/19(月) 12:15:25.58 ID:RTTA0Rzz0
 まるで人間扱いされていない他の2人に比べると、山口ははるかに厚遇されている。禁じられて
いるのは勝手な性接触と自慰くらい。この数年、壱哉は山口の拘束を外したままにしており、実際に
山口は何度もここを出ていた。外に出るのは容易で、力ずくで連れ戻されるわけでもない。
 なのに、山口はここで1日を過ごす。―――そんな日々が、もう半年も続いていた。
 鎖など無くとも逃げられはしないのだ、と山口は苦く思う。
 山口も最初のうちは、鎖を外されれば迷うことなく、やむなく両親に預けた一也の元に戻っていた。
 だが、一度は受け入れた取引という思いと、壱哉の生い立ちへの同情、何より、一也の命を救って
くれたという事実が見えない鎖となり、数日も経たずに壱哉の元へ戻るのが常だった。
 ――自分なりのプライドと、同情と、感謝。それだけが理由だったはずなのに。
 今の山口には、ここを離れて一也に会うことが怖かった。
勿論、息子には会いたい。中学生になり、受験を控えた息子のことが気にならないわけがない。
 けれども、自分がここで強要されてきた行為の数々と、それによる自分自身の変化が、山口に
息子と会うことを怖気させていた。
 小さく虚弱だった一也も、今では大人の匂いを帯び始めている。自分がそれに対して、父親としての
正常な反応を取り続けられるか、山口には自信がなかった。
(そんなことは考えたくもないけれど……僕は……)
 半年前。最後に一也と会った時、ふと脳裡を過ったのは、初めて引き合わされた時の新のことだった。
 あの時の新と、今の一也。さして年は変わらない。成長期の数歳の差は大きいが、それは山口の慰め
にはならなかった。

593俺の○であがけ 一也×山口(今回は山口×新率高)3/5 :2011/09/19(月) 12:21:43.13 ID:hoiH7JwA0
 子供となんてできない、と最初は拒否したが、結局は快楽に負けて腰を振っていた、自分。
 一也に性的な匂いを感じてしまうのではないか。そしてそれに対して自分はどんな反応をして
しまうのか、山口には怖かった。
「――ッ、山口…さん…」
 不意に悲鳴のような声で呼ばれて、山口は思索の底から現実に引き戻される。
 年若い青年――もう少年ではなくなっていた――が、身悶えしながら自分を見つめていた。
「イきたいッ!……も…我慢…できないッ!」
 青年の手首の鎖がガチャガチャと鳴る。
「イかせて!……俺もっ、口で、する……から……」
 言うなり、青年は不自由な体を伸ばして山口の方ににじり寄ってきたが、首輪の鎖は
山口の座っているところまでは届かない。
 這いつくばり、遊びに誘う犬のような姿勢で青年は懇願する。
「おね…がい……」
 その言葉と、興奮に上気した彼の表情に、山口は自分の身体が熱を帯び始めたのを自覚する。
 努めて平静な声をしぼり出した。
「バレたら、また罰を受けるよ」
 山口が言うと、青年は虚ろに笑った。
「罰でも……クロ…サ…さ…抱いてくれる……」
 外界から隔絶されて久しい彼には、壱哉に抱かれることだけが喜びとなっていた。
 そこまで堕ちきれた青年が、むしろ山口は羨ましい。
 山口は小さく溜息を吐いて、自分を見つめる瞳に言った。
「……僕にも、してくれるかい?」
 喜色を浮かべてコクコクと頷くと、青年は犬のように仰向けに転がった。青年の身体を覆うように
山口は這い、解放を求めて揺れている性器を口に含む。慣れた味に、快楽の予感を感じて身体の熱が
一気に高ぶる。

594俺の○であがけ 一也×山口(今回は山口×新率高)4/5 :2011/09/19(月) 12:29:52.61 ID:GGi/8SV/0
 それに追い打ちをかけるように、暖かく濡れたものが山口の性器を包んだ。
 シックスナインの体勢で互いの性器をむさぼりながら、山口は理性の片隅だけで苦笑した。
 こんな事をしている卑しい男が、どうして父親面して一也に会えるだろう?
 絶望から目を背けるように、山口は快楽に没頭していった。

 * * *

 幼い頃、漠然とした記憶にある父は優しかったと思う。
 よく覚えてはいないが、優しかったというぼんやりとした感情は残っていた。
 けれど、滅多に帰ってこない今の父は、帰ってきたらきたでぼんやりしていることが多く、自分に
「ちょっと見ない間にまた大きくなったな」と微笑みかけるだけで、まるで親戚の叔父さんか
何かのようだった。
 こんな人じゃなかった――気がしたが、幼い頃の難病の治療費返済のために働いている
のだと祖父母に聞かされていたし、帰ってこないのも、どこか人が変わってしまったのも
自分のせいなのだろう。だから、いっそ滅多に帰ってこないのは有難かった。
 会うたびに、失望と罪悪感を感じずにはいられなかったのだ。

 だが、中学三年のその日。思いもかけない場所で父と対面することになった。
 その日、友人達と見ていたのは、いわゆるアダルト動画というやつで、勿論、本来自分達の
年齢では見てはいけないものだった。が、見れるものを敢えて見ないという謙虚さが、性への
好奇心に飢えた中学生にあるはずも無い。友人達と嬌声を上げながら動画を見ているうちに、
別のジャンルの動画をたまたま開いてしまった。
「うわー。なんだこれ!?男同士かよ」

595俺の○であがけ 一也×山口(今回は山口×新率高)5/5 :2011/09/19(月) 12:33:24.38 ID:GGi/8SV/0
悪い偶然だった。動画の中で大股を開き、快楽に惚けたような顔をして男を受け入れている男。
 その男の顔を、一也は知っていた。
(……お父さん…!?)
 最後に会った時よりも随分と若く見えるが、それは間違いなく父だった。
「こいつすげー。ケツにこんなに入るんだ」
 嬌声を上げる友人達の中、1人絶句する一也の前で、動画の中の父は玩具と男根の両方に犯されながら、
別の男の欲望を喉に受け止めていた。レイプモノらしく、口が自由になると時折拒絶を叫んではいるが、
目立った抵抗をする様子はない。何より父のソレは固く張り詰めて上を向いていた。
一也の脳裏に、遠い遠い記憶が唐突に蘇った。幼いあの日。大手術を受けた日。
 今までどうして思い出さなかったのだろう。手術の翌日。父から電話があったことを。
 電話口の父の様子はおかしかった。元気か?と聞いた後、聴こえてきたのは苦しげなーーそして甘い、
呻き声だけで、こちらの言葉にまともに答えられない様子だった。
 そう。ちょうどこの動画のような。
(……もしかして、あの時も?)
 父が帰ってこないのは、金を作るというのは、こういうことだったのだろうか?
(あの時から、ずっと?――今も?)
「おい?一也、マジな顔してどうしたんだよ?もしかして興奮しちゃったの?」
 友人にからかわれて、一也はハッと我に返る。
「ち、違うよバーカ!こんなおっさん見てらんねーよ。さっきのに戻ろうぜ」
 友人達とのバカ気た会話に戻りながら、一也は決心していた。
 ――父が本当に会社で働いているのか、明日確かめよう。
 確かめてどうしたいのかは、一也にも分からなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
 
 続く。ハッピーエンドにするつもりだったけど、どうなることか…

596スイートルーム 1/7 :2011/09/21(水) 02:12:11.63 ID:n47DjQ6p0
生。名前は勿論仮名です。去年の夏を想定。萌えをこじらせて書いてしまいました。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 ホテルはスイートルームだった。大きく取られた窓から、街が一望できる。
「陸、俺シャワー浴びるからお前適当にしてろよ」
窓際に立つ俺に、彼――有川君が声をかけてくる。君づけで呼んでるけど、先輩だ。
この部屋は一日2公演のソロツアーライブの主役というハードな日程をこなす為
休憩場所として、会場近くのホテルを自分でとったものらしい。
俺は、後輩の特権を利用してひょっこり楽日のステージにお邪魔し、
ダラダラしながら打ち上げにも混ぜて貰い、その後ホテルに戻る彼に、
追い払われないのを良いことに、そのまま着いてきてしまった。
 「うん」
 俺は遠慮なく、そうすることにした。備え付けの冷蔵庫を開け、
缶ビールを勝手に飲ませて貰う。ゴクゴクと飲みほしつつ、
昼間聴いた彼の歌を鼻歌で歌いながら部屋をうろうろしてると、
金属を柔らかく叩いたようなポンという音がした。
これ、判る。iPhoneのメール着信音だ。でも俺のじゃない。
音のほうに目をやると、彼の荷物が入った大きなバッグがあった。
広いスイートの中、他にあるのは、椅子に掛けられたジャケットや、揃えられた靴、
飲みかけの緑茶のペットボトル、
デスクの上には、サングラスと腕時計とその他いくつかのアクセサリー、彼愛用らしきノートPC。
日の長い真夏とは言え、もうすっかり街は夜だった。缶ビールが空くころ、
バスローブに着替えた有川君がシャワーから出てきた。
 「陸ー、ビール、俺にも」
 頭を拭きながらちょっとダルそうにそう言って、広いソファに腰かける。
 「はいはい」
 俺はいそいそと冷蔵庫から新しい缶ビールを取り出し有川君に投げた。
 「ちょ……バカ、投げんなよ」

597スイートルーム 2/7 :2011/09/21(水) 02:13:32.34 ID:n47DjQ6p0
文句を言いながらもナイスキャッチ。
タオルを肩にかけてプルトップを開けるとゴクゴクと飲んで、ふうっとため息をついた。
いつも上めのテンションを保っている有川君なのに、今日はさすがに疲れがにじむ。
ステージや番組を何度も一緒にやってきたので、
彼のバスローブ姿を見たのは初めてではないけど、今日はお疲れのせいか、……何だかエロい。
 「おー、陸」
 「なに?」
 「肩揉め、肩。お前、こんなとこまで来たんだからちょっとは役に立てよ」
 ひっどいなあ。
でもこんな乱暴な言い方も、気を許してもらってるからかな?なんて嬉しくなっちゃう単純な俺。
 「はいはい、分かりましたよ」
 俺は飲み終わった缶を窓際に置いて、ソファの後ろに回り、有川君の両肩を掴む。
決して大柄ではないけど、カッチリ筋肉がついている。でも少し痩せたかな? 
今回のライブツアーもハードだったろうけど、今年は年明けからずっと仕事が詰まってて、
しかも今では立場的にも、普段から彼が背負ってるものは少なくない。
その上俺みたいなダメな後輩の面倒まで見てくれてるわけで。
 「お客さん、好みのタイプ。うんとサービスしてあげちゃうv」
 「バカ。そういうの、いいから。もっと力入れろ」
 「注文の多いお客さんですねー」
 言われた通りもう少し指先に力を込める。
 「あー、その辺その辺……ん、あ、……んん」
 クタリと力を抜いた有川君の体から、蒸気とともにシャワージェルかシャンプーか、
いい匂いが立ち昇ってくる。
 「うまいじゃんお前……ん、あ、あ……ちょ、バカ陸! お前どこ触ってんだよ!!」
「乳首ですけど何か」
だってさあ、こんなカッコであんな声出されて、催さないほうがおかしいじゃん?
俺は、左腕で有川君の首を固定して彼の抵抗を封じながら、胸元に忍ばせた右手で、
彼の乳首をエローく刺激した。するとすぐに立ってきた。ほら、イイんじゃん。
「やめろっつってんだろ!」
有川君の腕が、俺の腕をはがしにかかる。慌ててはいるけどまだ怒ってない声に、
もうひと押ししてみる。

598スイートルーム 3/7 :2011/09/21(水) 02:15:33.51 ID:n47DjQ6p0
「えー俺、有川君と久しぶりにやりたいなー」
耳元で囁き、そのまま彼の耳に舌を這わせる。あ、ちょっとビクっとした。
「ダメだって! 俺今日はマジ疲れてんの」
「いいじゃん。どうせ明日オフでしょー」
「ホント今日は体力の限界なの!」
「じゃあさー、やらなくてもいいよ。俺が抜いたげるだけ。それならいいっしょ?」
「……」
おっ、ちょっと考えてる。かわいいなー。その隙に俺は彼の正面に回りこんだ。
両足の間に跪いて入り込み、バスローブの奥の、彼の芯を握る。
ちょっとしっとりしてあったかい。そこもやっぱり、シャワージェルの匂いがした。
「バカ! 俺、いいって言ってないだろ!」
「だって俺がやりたいんだもん」
やわらかく刺激してやると、少しずつ固くなってくる。
「お前、どんだけ勝手なんだよ! やめ……って、あ、ん……」
この声だよ、これが聴きたかったの。少しハスキーなエロボイス。
今までの経験上、有川君の弱いところは分かっているので、そこを攻めていく。
ちょっと観念してきた? 有川君の顔に目をやると、目を閉じて形の良いまなじりを眇めている。
ときどき、俺の手つきに合わせて、閉じられた瞼がビクビクッとするのなんかホント、
たまんない。普段、皆の先頭に立ってキングのように振る舞う彼から、俺のいいように反応を引き出す作業は、オスの征服欲を刺激する。
「もっとサービスしちゃおっかな〜」
俺は有川君の芯をくわえた。彼からどう見えているかを想像しながら、
温かいそれにヤラシイ感じで舌を這わせる。
「……つか陸、お前……フェラするときは、帽子取れよ……」
頭が軽くなって、顔を上にあげる。有川君が、俺のお気に入りのハットを右手で掴んでぽいと投げる。
そのまま俺を見下ろす目と目が合った。お、意外にクールな表情。
させてやってんだぞ、って感じ。まあ別に俺はそれでいいですけど。
だって、そういう、偉そうにしてる人を泣かせたいワケで。俺も大概悪趣味だ。
もう少し攻めていくか。すっかり固くなってるソレを指で支えながら、
すぼめた唇で先端を挟んで舌で刺激する。途端に有川君が背をのけ反らせた。いいねえ。


掲示板に戻る 戻る