風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 16:55:44 ID:r4zZX10+0<>    ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板57
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1269551387/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/ <>モララーのビデオ棚in801板58 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 16:57:06 ID:r4zZX10+0<> ★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間(30分以上)に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>4-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。
(4) 一度にテンプレAA含め10レス以上投下しないで下さい(連投規制に引っかかります)
   長編の場合は10レス未満で一旦区切り、テンプレAAを置いて中断してください。
   再開はある程度時間をおき、他の投稿者の迷惑にならないようにして下さい。
5)シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
 また、長期連載される書き手さんはトリップを付ける事を推奨します。
(参照:トリップの付け方→名前欄に「#好きな文字列」をいれる)
(6)感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬や、書き手個人への賞賛レスはほどほどに。
 作品について語りたいときは保管庫の掲示板か、作品が収録されたページにコメントして下さい。

※シリーズ物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara

■投稿に当たっての注意
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 16:57:46 ID:r4zZX10+0<> 2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 16:58:12 ID:r4zZX10+0<> 3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 16:58:51 ID:r4zZX10+0<> テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 16:59:15 ID:r4zZX10+0<> テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 17:03:52 ID:r4zZX10+0<> テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 17:04:22 ID:r4zZX10+0<>  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 17:04:50 ID:r4zZX10+0<>    |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/(     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/12(水) 22:31:08 ID:i0hoKGIJ0<> >1乙です! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/13(木) 01:53:18 ID:n1wdECHl0<> >>1乙カレー <> 「髭.よさ.らば」1/6<>sage<>2010/05/13(木) 19:41:59 ID:MlqdJn2k0<> 向こうが500超えたようなのでこちらをお借りします
鳥九スピンオフ・毛い無補谷部毛ん増より帽子←ヲタクでギャグ
時系列的には、2話と3話の間くらいです
エロなしですが暴力描写があるのでご注意ください
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

秋歯が公.安課に戻った時、室内には一人の男をのぞいて誰もいなかった。窓の外はすでに夜の気配が濃い。
疲れきった秋歯は提げた紙袋を探り、薄いファイルを取り出しながら言った。
「つき返されちゃいましたよ失部さん。書類のあちこちに不備があるから、書き直してほしいそうです」
話しかけられた男、失部毛ん増はしかしこちらに背を向けて椅子に座ったまま何も応えない。
理不尽な怒声を覚悟していた秋歯は肩透かしを食らった思いで自分の上司をよく見つめた。訳はすぐにわかった。
腕を組み、あごを上げ、失部は眠っていたのである。片足などはご丁寧にも秋歯のデスクの上に土足で投げ出してあった。
そっと正面に周ると、右に傾いだ首元とぽかりと開いた大きな口がよく見える。秋歯はなんだか脱力した。
(失部さんが、居残って仕事なんて、するわけないもんなあ)
上司はサボりの天才なのだ。部下に雑務を押し付けて、うたた寝をするその姿はいかにも失部らしかった。
「あのー、すみません失部さん、ちょっと。起きてくださーい」
ともかく書類を書き直してもらわねばならない。明日に回すと書類が増えて面倒だ。面倒なのはいやだった。
「失部さーん。失部さんっ。失部、毛ん増さーん。毛ん増くん?…失部っ!やべー!」
あれこれ話しかけても揺すっても失部は目を覚まさない。口を開けたまま喉の奥から、ぐ、と短く呻いたきりだ。
苛立ちと悪ふざけに任せて、秋歯はそっと失部の鼻をつまんでみた。反応なし。頬をやさしく叩く。反応なし。
この人、よく公.安に来れたな。と、自らを棚にあげて呆れる一方で、秋歯は少し楽しくなってきた。 <> 「髭.よさ.らば」2/6<>sage<>2010/05/13(木) 19:43:07 ID:MlqdJn2k0<> 普段頑なに(その頭部のために)周囲を警戒する男が、無防備に眠りこけているのだ。床に下ろされている方の脚を
慎重に跨ぐと、秋歯はわくわくしながら身をかがめた。あごを下から手でそっと挟み、持ち上げてみる。
「…ウワーッ、すげー、口の中ってこうなってるのかあ、リアルだー…」
よくわからない感慨にふけりながら秋歯はぶつぶつと呟いた。依然失部は目覚めない。あごを持ち上げたせいで
失部の頭はますます大きく傾き、唾を飲み込むためか、喉仏が二度、上下した。それを見ると少し変な気分だった。
その気分の正体を秋歯がはっきりと捉える前に異変が起こった。失部の髪の毛が、という呼び方に問題があるなら
”黒くてフサフサしたかたまり”が、その正しい位置から大きく後ろへずり下がったのだ。
「あっ、あ!」
秋歯はとっさに右手を伸ばし、すんでのところでその自由落下を阻止した。掴んだ”かたまり”を素早く戻し、ほっと安堵する。
(危なかった!)
だがその時、秋歯のため息をあざ笑うように、”かたまり”から飛び出したものがあった。
飛び出した小さな金属片は失部の頬をかすめて落ち、開襟シャツの襟元にもぐりこんで姿を消していった。
「ええっ!今、の…、あ、ピン?ピンかあコレの!?…わあ、どうしようどうしようどうしよう!」
飛びのこうとした勢いでバランスを崩し、秋歯は床にしゃがみこむ。どうやら失部の頭部の留め具を外してしまったらしい。
「落ち着け、落ち着いて考えろ秋歯原ん土ー、えーともし今失部さんを起こして、バレたら、怒られる。うん。
 で、このまま帰ったらー、書類が出せないから、怒られる。ダメだっ!どっちもダメーっ!」
取り乱した秋歯はひとしきり独り言をいうと、意を決して立ち上がった。
(失部さんを起こさないようにピンを回収して、アレに取り付けてから起こして、書類を出す。これしかない!)
忍び足で椅子に近づくと、失部が突然みじろぎをした。ぐにゃぐにゃと不明瞭な寝言を言い、
どうやら眠りが浅くなっているらしい。それを見て秋歯は躊躇したが、やがて顔をそむけたまま、襟元に指を滑り込ませた。
妙に暖かい肌の感触に顔が歪む。むさくるしい髭面の中年男が意識のないヅラの中年男をまさぐっている図は、
爽やかなものではない。 <> 「髭.よさ.らば」3/6<>sage<>2010/05/13(木) 19:44:14 ID:MlqdJn2k0<> (腕組みしてるから、ピンは胸の辺りで止まってるはず…ないぞ。どこだ。脇の方か?)
焦ってより深く手を突っ込むと、指先に薄い金属の感触があった。慎重に、落とさぬように、ピンをずらし上げる。
手の平でしっかりとピンを握ったその時、触れた胸板が大きく上下した。
「んんー…」
ため息まじりの声とともに、失部の手が硬直した秋歯の腕をつかんだ。飛び出しかけた悲鳴を何とか殺して失部の顔に目をやる。
失部は目を薄く開け、まだ眠りの中に留まっているらしい。何か子供でも諌めるように、あるいはいとおしむように、
うんうんと鷹揚にうなずき、掴んだその手で秋歯の腕を何度も撫でた。
「ん、きょうはな、…また、ええときにな」
そして視線をすっと秋歯の顔に向けた。
秋歯が汗の噴きだした手をシャツから引き抜くのと、失部が大きな目をはっきりと開くのとはほとんど同時だった。
うしろに飛びのき、握った拳をひとまず体の影に隠す。失部は眩しそうに目をしばたたかせて周りを見渡してから、
「お、なんや秋歯か。なんや誰かとまちごうた。はは」と少し照れくさそうに言った。
「あ、お、起こしてすみません、失部さん」秋歯はポケットにピンを移すタイミングを探りつつ応えた。
「はは、まちごうた、すまん。……ん?……秋歯」
「ハイッ」
「お前なにしとったんや」
「何…えー、と、ですね失部さん」
「なぁんで、手ェ入れとったんや!」
「…………………虫が」
勢いよく立ち上がった失部に対して、秋歯が背を向けて逃げ出したのは悪い手だったと言わざるを得なかった。
後ろからタックルをかけられ、転ばされ、いとも簡単にひっくり返されて、気付くと秋歯は完璧にマウントポジションを
とられていた。椅子がホワイトボードにぶつかってけたたましい音をたてるのが聞こえた。 <> 「髭.よさ.らば」4/6<>sage<>2010/05/13(木) 19:45:26 ID:MlqdJn2k0<> 「『虫が』やあるかいや、ボケ!」ばしーん、と平手が秋歯の頭に飛ぶ。
「いたいっ!ありがとーございます!」
「なにやっとった、お前ぇ、お前なにやっとったんじゃ」
「何でもないっす!…あれっ!?」秋歯が突然素っ頓狂な声をあげる。
「なんや」
(…ピン)いつの間にやら、手の中からピンの感触がない。
(…ピンがない…)
「あ、いや、何でもありません」
上の空で答えたのが失部の逆鱗に触れたらしかった。失部は身を乗り出し、秋歯のあごをガッチリと掴むと、もう片方の手で
だらしなく伸びた秋歯の顎髭に指をかけた。
「答えんかい、ちゅうとるん、じゃっ」あごからブツッ、と嫌な音がした。
「あああ!痛い!痛いです!ほんとに何でもないっすよっ!」
「お前アホか、お前、どこの世界に寝てる上司をまさぐるやつがおるんじゃ、理由も、ないの、にっ!」
「あ゙ーーーっ、ママ!もうちょっと優しく、優しくやってください」
「ママてなんじゃアホンダラ、おい秋歯ぁ、言うとくけどなあ、答えるまでお前のきったない髭、ぜんっぶ抜くからなぁ!」
「痛いいたいっ、それいいい痛いです、やめて!」
「優しくせえ言うたんお前やないか。どうせO村課長に内部調査でも頼まれたか。髭なくなったら眉毛も抜くぞ」
悲鳴をあげる以外の行動を一切封じ込められた秋歯は、自分の声で頭がくらくらしてきた。
どう対処するか考えることをやめてただされるがまま、痛みにひたすら耐え、
”へえ、ほんとに出るんだ、生理的な涙って。エロ漫画にしかないと思ってた”というような思考に逃げこみはじめた時、
ガチャッ、とドアの開く音が耳に飛び込んできた。
「………」 <> 「髭.よさ.らば」5/6<>sage<>2010/05/13(木) 19:46:34 ID:MlqdJn2k0<> 入ってきた男、庶務係の佐倉木はぽかんとした表情でドアノブを握りしめたまま動きを止めていた。もっとも佐倉木はいつも
ぽかんとした顔をしているから、何を思っているのか実際にはわからない。
「刑.事.く.ん、なんぞ用でもあんのか」失部が馬乗りになったまま凄んでみせる。
「いえ、大したことじゃ…伝票ファイルの棚の鍵、間違えて持って帰っちゃったんで、返しにきたんです」
佐倉木はそう言うと、二人を注視したまま鍵を定められた場所に戻し、また視線を外さずに扉へ取って返した。
「すいませんでした。じゃ」
ドアが閉まるまでの佐倉木の所作を、馬乗りになられた男と馬乗りになった男はただ見送っていた。
「なんやねんあいつ」
「あのー失部さん、もしかして今、ものすごい誤解されたんじゃないですかね」
「はぁ?」
その途端ドアが再び開いた。困惑顔の佐倉木は失部のところに駆け寄ってくると、中腰になって言った。
「まずいですよ、失部さん」
「ほらあ」
「せやからなんやねん!」
「いくら失部さんでも、部下と合意なしにっていうのは、ちょっと。それに場所が場所ですから」
抗議などめったに口にしない佐倉木は戸惑っているらしく、おろおろと視線の定まる先を探している。
「は…はあ!?お前冗談もたいがいにせえよ、刑.事.く.ん、それはちゃうぞ。違う!」
そう言ってから失部は自分の体勢に説得力がないことに気付き、あわてて立ち上がった。
「違うんですか?失部さんが襲ってて、秋歯さんが泣いてたんで、『関係を強要』してるのかと…」
「おそ、ムチャクチャいうな、ぎゃ、逆や逆!」
「逆?」
「いや、逆いうんは、秋歯がわしの指示と逆のことをしたっちゅう意味や。秋歯!しょうもないミスすんな!」
「すみませんっ!」と秋歯も正座で調子を合わせる。 <> 「髭.よさ.らば」6/6<>sage<>2010/05/13(木) 19:47:42 ID:MlqdJn2k0<> 「たしかにちょっと制裁がすぎたかもせんのお。刑.事.く.ん、まあそういう訳や。安心して帰ってええぞ」
「はあ」
まだ訝しそうにしている佐倉木を失部は蹴りのそぶりで追い出してしまうと、今度は秋歯に向かって拳を振り上げた。
秋歯はとっさに身をすくめた。が、拳は落ちてこない。
「もうええわい。刑.事.く.んのせいで気ぃ抜けた。それにわし、今日はO村課長と潜入捜査報告会に出なあかんのや」
「キャバクラですね」
失部は秋歯を強く睨みつけたが、その時に何かを見つけたらしい。サッと床から何かをつまみ上げたのを秋歯は見逃さなかった。
そのまま扉から出て行こうとして、失部はふと振り返り、にやっとしながら言った。
「秋歯。お前わしのこと好きなんか」
「ち、違います」
「おもろないのお」
失部が鼻でふふんと笑って出て行ったあと、ひとり取り残された秋歯はふらつきながら立ち上がった。
あれだけ騒ぎに騒いだせいか、今は部屋がいやに広く、静かに思える。外はもうすっかり夜だ。秋歯は机に尻をもたせかけた。
ささいなことでとんだ目にあった。あごを触ってみると、片側だけが異様にすべすべで、不思議な気持ちがする。
せっかくここまで伸ばしたのに、などとぼんやり考えていたら、急に血液が頭に上ってくるのを感じた。
それから、失部の顔に触れた時、反り返った喉が妙に隙だらけで、何かをかき立てられたことを思い出した。
むしられた髭のあとがじりじり痛む。顔が熱くなるにつれ、響く痛みが皮膚を侵す。
(剃刀買って帰らないと…ああ痛い、痛い、ん?)
あごを撫でた指にべたついたものを感じて、秋歯はもう一度注意深くあごを確認した。
「……これは、涙?泣いているのは、私?……血だ。髭血だ!あの人ひでー!」
疲れきった秋歯はひたすらハイテンションに呟いていたが、出し抜けに叫んだ。
「ていうか、誰かって、誰かって、誰と間違えたんだよおーっ!!」
ついに書類を出せなかった男の絶叫がひと気のない部屋に満ち、すぐに消えた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
4話の秋歯は驚きの萌えキャラぶりでした。6話は一代目も出る(?)みたいだし、楽しみだ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/14(金) 02:12:38 ID:WLEUlUka0<> >>12
うおおお!禿げ萌えた!
ほぼ自家発電状態だったからうれしくて、毛根壊滅した!
映像が目に浮かんでニヤニヤした <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/14(金) 13:46:43 ID:q/qy0YgRO<> >>12
帽子ktkr!!
禿げ散らかす程萌えまくりましたw
まさに「ありがとうございますっ!!」ですw

>>18
さぁその自家発電を形にする作業に入ろうか(・∀・) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/15(土) 00:04:23 ID:rHFRQwRy0<> 生、エロなし、某役者×某製作者
本人たちが仲良すぎて耐えきれず書いてしまった
場所が謎ですがどこか室内ということで
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


軍事訓練の時に教官にされたこともある。若い頃の喧嘩でされたこともあった。どちらも背中を強打してしばらく何も言えなくなったほどだったか。
でもどうやら今回は、同じ状況でも今までとは違うらしい。
視線で苦痛を訴えると、上から見下ろす相手は即座に謝罪を重ねてきた。
「す、すいません痛いですよねいや本当すいません」
いやだから、痛いのは経験上知っているんだ。それよりも問題なのはこの状況だ。
そう伝えたいのに喉は震えない。これも経験上知っているが。
相手は、彼は、一体何がしたいんだ?
―――それも経験上、薄々感づいているが。
「いつまで僕はこの体勢でおればええの?」
そう掠れた声で伝えると彼はまた謝り、両腕を押さえる力を少し強く込め直した。
ああ、逃がしたくないんか。
「それはですね、その。あああこんなにあっさり押し倒せると思わなかったからその先が思いつかねええええ!!」
「あっさり出来るに決まってるやないですか、僕は弱いおっさんですから」
「嘘だッ!筋トレしていることぐらい知ってますってー」
彼の視線が上下する。今乳首ネタをしてきたら流石に笑って返せる余裕はないな、と思っていたらその視線は眼の少し下、顎付近でぴたりと止まった。
「頬、痩けてません?」
「ちょっと海外出張が堪えた感じですよ」
若い時分ならまだしも、この年であのスケジュールは無茶だとは思っていた。誰かの喜ぶ顔が見たい、その一心で動き続けたお陰で背中がエヴァンゲリオンになってしまった訳だ。
少し笑って返すと彼は真剣な声で言う。
「どうして続けるんです?」
「続けなければ僕は死んでしまいますよ」
「誰かと苦痛を背負い合えばいいのに」
「自分で全部やらんと気が済まないんですよ」
「なら体をもっと大事にすればいいのに」
「それ、今一番不似合いなセリフやと思いますよ」
「もっと完璧な人だと思っていたのに」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/15(土) 00:05:19 ID:rHFRQwRy0<> 「僕はただのおっさんですよ」
「ただのおっさんにアプローチされまくってこんな隙見せられたら嫌でも惚れますよ」
ああやっぱり、そうだったか。アプローチ染みたことはしていたが、ここまでに発展するとは。違う、発展させる気はなかった。
させてもどうにもならない。
だから冗談で返そう。
「そんなこと言っちゃって、数十億人の女性ファンを泣かしますよ?」
「そっちこそ、数兆人のファンを泣かせるのは駄目ですよ?」
「僕は嫁に泣かれるのが怖いです」
「なんてこったい!」
ネット上で見たことのあるあのポーズを彼が取った隙に、頭を少し上に持ち上げて彼の唇に軽く触れてみた。
呆然とした顔が、急速に赤らんでいくのが面白い。
「えっちょっ、いいいいいいま」
「さーてそろそろ床に寝ているのも辛いから起き上がらせてもらいますね〜」
わざとふざけた調子で言い力を込めて彼を跳ね除け起き上がる。
立ち上がり服の埃を払う横で、へたりこんだままの彼はこちらに指を突きつける。
「やっぱり強いじゃないですか!だったらもっと早く逃げれば」
「“僕が好きなら歩いてきなさい”」
「えっ」
それには答えず、歩きながら、歌うように。
そして振り返ってVサインを向ける。
「“恋は盲目ってね”」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ラジオ楽しみです <> 千のキスと堕ちた願い<>sage<>2010/05/15(土) 13:11:35 ID:bWeVIxHH0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  舞台版/黒/執/事 オリキャラの二人です
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ネタバレ有りなので観劇後に
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 千のキスと堕ちた願い 1/3<>sage<>2010/05/15(土) 13:12:30 ID:bWeVIxHH0<> 時間は真夜中だったがまだ工リックは机に向かっていた。
ロンドンの地図と書き散らしたメモ。
慎重に計画を練っていた。
隣のベッドに眠る男を起こさぬように小さなランプ一つをつけていた。
「んっ……!」
急に息苦しいそうな声がする。
眠っていたアラソが胸を押さえて苦しみ始めた。
咄嗟に工リックは立ち上がりアラソの肩を掴んだ。
「アラソ!大丈夫か?」
その苦しむ表情を見るだけで工リックの心は締め付けられる。
肩を揺さぶられやっとアラソは目を覚ます。
「あっ…ごめん……」
胸を押さえたまま呼吸を整えようとしていた。
「痛むのか?」
死の棘に蝕まれた心臓。
「違うんだ。胸が苦しいだけだよ」
肉体的な痛みではなく精神的な痛み。
死神に忍び寄る死。
「君や友達や今まで出会った人がいた。みんな遠ざかっていく。僕は胸が苦しくて追い

かけることもできないんだ」
苦しそうに目には涙が浮かんでいた。
「馬鹿言うな。俺が離れることなんかねえよ!」
ぎゅっとアラソを抱き締める。 <> 千のキスと堕ちた願い 2/3<>sage<>2010/05/15(土) 13:13:24 ID:bWeVIxHH0<> 精神的に不安になっているのがわかってもこうすることしかできなかった。
もう既に職場の先輩後輩の領域は越えていた。
「ありがとう、工リック。迷惑かけてごめん」
謝るアラソを更に強く抱き締める。
「迷惑なんて考えるな。迷惑だって思っていたら最初から側にいるわけないだろ」
優しい言葉が染みる。
「うん。ありがとう」
「喉乾いてないか?水でも飲むか?」
髪を撫でながら言うがアラソは首を振る。
「いらない。もう少しこのままでいて」
それが精一杯の甘えだった。
工リックは頬と額に軽くキスをしてアラソを寝かせた。
そして子供にするように添い寝をすると安心したのかやっと落ち着きを取り戻した。
「工リックが居てくれて良かった。一人だったらきっと耐えられないよ。人間はこんな

感情を持って生きているんだね」
胸にしがみつくアラソの柔らかな茶髪にキスを落とす。
「お前は優しすぎるんだよ。死神は人間のことを理解する必要はねえよ」
わざとぶっきらぼうに言い放つ。
「よく言われるよ。でもそんな死神が一人くらいいてもいいかなって思っているんだ」 <> 千のキスと堕ちた願い 3/3<>sage<>2010/05/15(土) 13:14:03 ID:bWeVIxHH0<> 虚ろに呟く。
そっと首筋に吸い付くいた。
アラソはくすぐったそうに微笑む。
首筋から鎖骨、そして胸元に唇を這わす。
このまま棘を吸い出せたらいいのに……わざと痕が残るように吸い付く。
ほんの少しだけ戯れるがそんな時間がたまらなく貴重だった。
体力が以前よりも弱くなっているのかアラソは睡眠をよく取るようになっていた。
すぐにまた眠気が訪れる。
「寝てしまえ。明日も仕事があるぞ」
「うん……わかった」
小さく頷くとそのまま返事が消える。
工リックは手を伸ばしアラソの胸元に手を差し入れた。
心音を確認する。確認しなければ安心できなくなっていた。
「俺は一人の命を救うために手段を選ばない死神がいてもいいと思っている」
この心音を止めさせはしない。
どんなことがあっても。


例えばこのままアラソを攫って誰も知らない場所で最後の瞬間を二人で迎えるのはどう

だ。
しかし残された工リックは発狂してしまうかもしれない。
誰にも理解されない関係。
ならば一筋でも希望があるならそれに縋るしかない。
この手を染めたとしても。 <> 千のキスと堕ちた願い 終<>sage<>2010/05/15(土) 13:15:49 ID:bWeVIxHH0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お付き合いどうも!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
オチもなくてゴメン。
堕ちた二人だからさ…w
あまりにかわいいオリキャラだったので萌えた! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/15(土) 13:18:15 ID:bWeVIxHH0<> ごめんなさい。
改行がおかしかったみたいです。
色々反省。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 00:54:01 ID:zm1/JB2MO<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )元ネタは特になし、禁酒法時代のアメリカが舞台の兄弟モノです。



大好きだった兄さんは、正直少し間抜けだった。俺とそっくりなのは少し大きめな鼻と、栗色の髪だけ。
目尻は垂れていて、口角も上がっているからいつも笑っているような顔だった。
俺と違ってスポーツだってからっきし。手先は器用だけど、嘘がつけない、騙されやすい、お人好し過ぎる
って意味ではとても不器用だった。
そんな兄さんは俺達を食わすために靴磨きをしていた。手際はいいし、真面目だし、何よりいつもニコニコ
してる兄さんには常連が何人もついていた。出勤前の事務員や警官、中にはちょっと名の売れた俳優もいたくらいだ。
『ディノはとろくさいがイイヤツだ 』。
それが兄さんと付き合いのある人間がよくいう言葉だった。
兄さんはいつも仕事が終わると、稼ぎをみんな母さんに渡していた。いや、丸々
全部ってわけじゃない。
「ヴィンチェ。おいでおいで。」
1日の終わり、兄さんはベッドの上からそう俺を呼んだ。俺は喜んで兄さんのところへ走っていく。
それからスプリングの壊れたベッドに勢いよく飛び乗った。
「今日ヴィンチェはいい子にしてた?」
「うん!今日はね、ママとご飯作ったよ!お皿も洗ったの!」
「うんうん、ヴィンチェはいい子にしてたんだね。じゃあ今日もこれあげる。」
兄さんがくれたのはニッケル硬貨。俺がいい子にしてると、兄さんはいつもチップで貰う一セント硬貨を
一つくれた。俺はそれがとても嬉しかった。別に金が貰えるからってわけじゃない。俺は兄さんが大好きで、
兄さんが俺を褒めてくれることが嬉しかったし、兄さんの笑顔を独り占めできるのが誇らしかったんだ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 00:56:11 ID:zm1/JB2MO<> 俺はニッケルを貰うと、いつもそれをピクルスの空き瓶に入れていた。小さいころの俺は、瓶がいっぱいに
なったら、兄さんに格好いいシャツを買ってあげたいと思っていた。兄さんはハンサムだったから、
きっとどんなシャツでも似合うだろう。友達もみんな格好いいって羨ましがるはずだ。
子供のころはそんなことばかり考えていた。
「ヴィンチェ、もう遅いよ。ねんね、ねんね。」
兄さんがそう言うと俺は兄さんのベッドに潜り込んだ。俺にも拾ってきたボロいベッドがあったけれど、
兄さんと一緒に寝ることが好きだった。狭いし身動きもしにくいけれど、どうしても暑苦しい時以外は
こうしてくっついて寝ている。
「ディノ、明日は学校休みなんだ。お仕事、一緒に行っていい?」
「いいよ。それじゃあママにヴィンチェの分のお弁当作ってもらわなきゃ。」
兄さんはにっこり笑ってキスをしてくれた。
少し埃臭い布団に挟まれて、俺は兄さんと色々な話をした。どれもどうでもいいような話題だけど、俺は
兄さんと話すのが大好きだった。兄さんの温もりが大好きだった。

本当に本当に、大好きだった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 00:58:49 ID:zm1/JB2MO<> 兄さんが殺されたのは、俺が12の時。空が高く晴れ上がった、気持ちがいい日だった。
駅前でいつも通り兄さんが靴磨きをしていた時、帽子を深く被った男が二人やってきて、弾装が空になるまで
鉛を兄さんにぶち込んだ。
その日俺は偶然兄さんにくっついきていて、偶然昼飯を買いに離れた食い物屋に行っていた。
俺が戻ってきた時、兄さんはもう死んでいた。真っ赤な血溜まりの中、兄さんは肉片や泥にまみれて倒れていた。
顔と身体にはいくつも穴ともつかない穴が開いていて、よくわからないものにまみれていた。
俺とそっくりな大きめな鼻はぶっ飛んでグシャグシャになっていた。俺は何度も兄さんを呼んだ。
もう意味がないって頭じゃわかっていたけど、呼ばずにはいられなくて、何度も兄さんを呼んだ。
いくらかして、俺は兄さんの右手が固く握られているのに気付いた。俺は恐る恐る兄さんの指をほどいて、手の内を見た。
そこには真っ赤に染まったニッケルが三枚、握られていた。
「ディノ!ディノ!!ディノ!!!嫌だよ起きて!!!ディノ!!!!」
俺は何度も兄さんを呼んだ。泣きながら呼んだ。 <> 風と木の名無しさん<><>2010/05/16(日) 01:01:27 ID:zm1/JB2MO<> 兄さんの墓参りにいくと、品の良さそうな男が、二人の大男を連れて立っていた。
「ヴィンチェンツィオ?ディノの弟の。」
俺が頷くと男達は帽子を脱ぎ、頭を下げてきた。
「俺達のシマだったのに、兄さん、ディノには悪いことをした。」
男達はマフィアだった。彼らがいうには、兄さんは兄さんと似た殺し屋と間違われ、
敵対するファミリーに殺されたらしい。もう殺った奴らも割れているという。
「……それで?どうしてそれを俺に?」
「せめてもの詫びだよ。君さえよければ、“準備”はさせてもらう。」
それはつまり、敵討ちというやつなんだろう。本当に詫びのつもりなのか、何か別の意図があってのことなのか。
今考えるとその両方だったんだろうと思うが、当時の俺にはそんなこと関係なかった。
「俺はどこで誰を殺せばいいんです?」
兄さんを殺した奴らは、絶対に許さない。
俺はすぐに誘いに乗った。


復讐は実に呆気なく終わった。
奴らのドンと、兄さんを殺した殺し屋ども。
慎重にタイミングを見計らい、奴らが集まるアジトで待ち伏せた。
そして一人くる度、胸に一発。
頭に一発。
淡々と引き金を引いた。
まさかこんなガキにやられるだなんて、奴らも思わなかったろう。
本当に簡単で、単純で、つまらなかった。
死体が三つ並んだところで、俺は奴らだった物の上にニッケルを投げた。
兄さんが握ってたやつだ。証拠だとか、脚がつくだなんて考えなかった。
ただあの日から赤茶色に鈍っていた光が、また新しい赤に染まっていくのが何だか不思議で、
しばらくぼおっと見ていた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 01:04:43 ID:zm1/JB2MO<> そういえば昔、ニンジン頭のじいさんの葬式を見たっけ。
頭の悪いアイリッシュにしては気のいいじいさんで、生きてるときにはそれなりに付き合いがあった。
そのじいさんの棺桶を閉めるとき、一人の女の子が小さなコインをじいさんの瞼に置いていた。
何でそんなことするのかと聞くと、
「カロンの渡し賃なんだって。おばあちゃんが言ってた。」
と言った。どうやらあの世に行くにはコインが必要らしい。
「……ディノにはコイン、あげなかったっけ。」
顔の返り血を拭いながら、俺はポツリと呟いた。



奴らを殺したその晩から、夢に兄さんが出てきてくれるようになった。
俺はそれが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
奴らをやって以来、俺はファミリーに迎え入れられた。
名前もヴィンセントに変えて、仕事も斡旋してもらうようになって、前よりずっといい暮らしを出来るようになった。
知らなかったことにもたくさん触れることができた。だから色んなことを兄さんに話した。
「昨日はフルーツを買ったんだ。そしたらママがフルーツタルトを作ってくれたんだよ。こんな大きいやつ。」
「ディノ、俺ドンの叔父さんって人に会ったよ。砂漠でカジノをやってるんだってさ。
今度遊びに来いって招待されちゃったんだ。」
「週末サッカーやるんだけどさ、実は二つのチームから誘いをうけてるんだよ。
一つはドンの息子さんのチームで、もう一つは娘さんの彼氏のチームなんだよ。どうしたらいいかな。」
兄さんは微かに目を細めながらながら俺の話を聞いてくれた。
相変わらず兄さんは俺をヴィンチェと呼んでくれたし、それからハグもしてくれた。
前みたいにニコニコ笑ってはくれてないけど、構うもんか。兄さんといられるだけでいい。
夢の中で俺はこれ以上ない幸せを感じていた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 01:08:41 ID:zm1/JB2MO<> 仕事を終わらせると、いつものようにニッケルを投げた。
瓶の中から適当に掴んできたものだ。数は気にしないで持ってきたから、もしかしたら足りないんじゃ
ないかと思ったけど、足元に転がっている死体五つ。ニッケルは十二。余裕で足りる。
杞憂というやつだったらしい。
この仕事ももう随分慣れたけれど、俺はこういう詰めがまだ甘い。
ドンやファミリーのお偉方はこうやって俺が残すニッケルを目印に、息のかかった警官に始末を頼んでいるらしい。
だから本当はもっときっちりやらなくちゃならないんだけれど。
兄さんが死んで以来、どうも現実感が湧かない。
それにうまく頭がはっきりしないというか、何にも興味が湧かないようになったし、どうでもよくなった。
夢の中で兄さんと会える時以外、俺はそれこそ夢遊病患者みたいだ。
それなら兄さんのいないこっちが夢で、兄さんがいるあっちが現実なのかもしれない。
ああ、それなら納得がいくし、その方が俺も嬉しいな。
「お前らもそう思うだろ?ははっ。」
一番のデブを爪先で小突きながら独り言を呟いた。当然変事なんかない。
馬鹿だなあって自分でも思う。
それから、そんな馬鹿な自分のことを兄さんに話そうと思った。



仕事に行くとき、俺はいつも瓶の中からニッケルを持っていった。兄さんがくれたニッケルはどんどん
減っていった。
兄さんを殺したファミリーや、そいつらとつるんでいたファミリー。
その他にも、兄さんを殺した奴ら、いや兄さんを殺したこの街。
みんな殺して、みんなきれいにしていったから。
ニッケルはどんどん減っていった。減れば減るほど街はきれいになった。
「ディノ、俺ね、願掛けしてるんだよ。あの瓶が空っぽになったら“掃除”は終わり。
きれいさっぱり、終わりってさ。」
兄さんにそう話したら、兄さんは悲しそうな顔してハグをしてくれた。
「そんな顔しないでよ、ディノ。もうちょっとで終わりなんだからさ。ね。ディノ、俺頑張るから。」
兄さんは何も答えてくれなかったけど、そう約束してから、俺は仕事に出かけた。
瓶の底からかき集めたニッケルを全部ポケットに押し込んで、行きつけの店が並ぶ裏路地を通って行く。
いつものコースだ。果物屋、レストラン、煙草屋。見慣れた街をフラフラと歩く。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 01:11:02 ID:zm1/JB2MO<> 「ヴィンセント・ダイノス?」
知らない声が聞こえた。新しい名前を呼ぶ声が。
ゆっくり振り向くと同時に、何か熱いものが胸が抉られた。
「ああ、そうか…」
撃たれた。
そうすぐにわかった。周りが騒がしくなって、悲鳴なんかが響いた。
俺はのろのろと近くに停まっていた車にもたれ掛かる。
胸の熱い部分を見ると、シャツが赤く濡れていた。白と赤のコントラストは、何度も見てきた光景だ。
そしてその光景の先にあるものも俺は知っている。
俺は重い腕を持ち上げ、ポケットをまさぐった。
シャラっと軽い音がして、いくつかの欠片が掌に転がり込んでくる。霞む目を凝らして、その欠片を見てみる。
鮮やかな赤に染まったニッケルが三つ。
「ふふっ…これで、ディノに……渡せるか、コイン……」
誰かが俺を覗き込んだ。
せっかく兄さんに、俺のエゴで十年間こっちに縛り付けた兄さんにコインを渡すチャンスなんだ。
他の奴なんかに絶対に渡してなんかやるもんか。
俺は手を堅く、堅く握り締めた。
かわいた、軽い音がした。
意識が遠退く。
ふと目の前に光が指して、誰かがそっと手を差し伸べた。
「やぁ、ディノ……会いたかった…ずっとずっと、あい、たか、た……」
「……ヴィンチェ、もう大丈夫だよ。ゆっくり寝よう。ねんね、ねんね。」
「…う、ん……」
俺は兄さんの手を取ると、ゆっくり瞼をおろした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 01:14:34 ID:zm1/JB2MO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )以上です。後うっかりしてましたが元ネタは実在した
ギャングです。駆け足な展開でしたが、それは腰のヘルニアの痛みがそう
させたのだと思います。ヘルニア痛いです。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 02:16:51 ID:ba2daqQ40<> >>28
ギャングもの怖いけど不思議な魅力がありますね。
兄弟の心情に泣けました。腰お大事に! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 03:18:17 ID:Nc6USDySO<> とても惹きこまれました
素敵な兄弟愛をありがとうございます <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 03:56:06 ID:wfUe0Myr0<> >>35
乙&お大事に、ですがせめてタイトルだけでも…… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 06:03:19 ID:fQmCAA+O0<> >>20
もしやフリーダム声優と監督だろうか?
最近気になっていたんだ、ごちそうさまでした! <> 土山 1/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:09:09 ID:lwBf6k9M0<> 銀/魂の土方×山崎 本番なしですがエロ
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ひでーツラだな。」
紫煙をくゆらせながら山崎の報告を聞いていた土方は、ふいに口をはさんだ。
対する山崎は報告を中断させられたことにむっときたのか、わずかな気力を振り絞り生気のない顔をしかめた。
土方の無理な指令のせいで、此処のところろくに睡眠もとれていないのだ。
「おかげさまで。」
と一言はさみ、山崎はさっさと報告を続けた。

山のような資料に一通り目を通し「御苦労」と労いの言葉をかけると、土方は忙しなく出かけの支度を始めた。
「これから外に?」
無造作に置かれた資料を整えながら山崎が問う。
「ああ、まぁ付き合いでな。」
「また遊郭ですかぁ?いい御身分ですね〜」
その口調は嫌みではなく、心底羨ましそうだ。
「仕事だっつってんだろ。そんな楽しいもんじゃねーよ。」
「それでも羨ましいですよ。たまには俺らも連れて行ってくださいね。」
疲れきった抑揚のない声では冗談もそう聞こえない。

「なんだ、お前溜まってんの?」
いささか予想外な問いかけに、山崎は資料を整える手を止めた。

「・・・なんですか突然。」
「いや、別に。」
土方は相変わらず支度を続けていて、その表情を窺い知ることはできない。
そんな土方の背中を一瞥して、山崎はまた作業に戻った。 <> 土山 2/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:10:26 ID:lwBf6k9M0<> 「まぁ・・・、俺も男ですから。」
ひとり言のようにそう呟くと、山崎は資料の端をトントンと揃え立ち上がった。

退室の挨拶をし、そそくさと部屋を後にしようとした時、「おい」という声に呼び止められる。
また仕事か・・・、と山崎は肩を落として振り返った。
「こっち来い。俺が抜いてやるよ。」

一瞬、山崎の疲れきった頭は活動を停止し、それからゆっくりと土方の発した言葉を解析し始めた。
数秒の空白の後、山崎が口を開いた。

「はぁ?・・・え・・・あの、何言ってるんですか副長。」
「欲求不満なんだろ?早くしろ、時間ねぇんだから。」
土方はそう言うと山崎の腕をつかみ、強引に部屋へ引きずり戻した。
「ちょっ、冗談よしてくださいよ!何考えてんですか。」
衝撃で畳に倒れ込んだ山崎は土方を見上げた。
疲れきってぼーっとしていた頭はみるみる冴え渡っていく。
「別に男所帯じゃよくあることだろ。そう深く考えるな。」
(確かにそんな話は聞いたことあるけど・・・)
混乱する山崎をよそに、至って真面目な表情の土方は部屋の奥へ向かいどっかりと座りこんだ。
「上着脱いでこっち来い。」
山崎は畳にしゃがみこんだまま何も言えずにいる。
しかしその間にも徐々に冷静さを取り戻していた。
「・・・結構です」
「副長命令」
「・・・・・・」
土方はいつもの鋭い眼差しを山崎に投げかける。
しかしその口調は心なしか楽しげだ。
(ほんと何考えてんだ、この人は・・・)
土方の真意が読めず、山崎は呆れたような表情で土方を見つめるばかり。 <> 土山 3/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:14:12 ID:lwBf6k9M0<> しかし、この時山崎の頭にある考えが浮かんだ。

―――――これはチャンスかもしれない

山崎の心の片隅に巣食う、靄のかかったような土方へのある思い
その思いが本物なのかを確かめる、いい機会かもしれない。
山崎は日頃から少なからず、このもやもやしたものを鬱陶しく思っていた。
早く決着をつけたかったのだ。
男である土方に触れられていい気がするはずがない。
不快感を感じればこの思いも消えるだろう、と山崎は考えた。

覚悟を決めたように立ち上がり、俯いたまま隊服の上着に手をかけた。

ワイシャツ姿になった山崎はゆっくりと土方に近づき、何も言わず土方の目の前に座る。
「意外と素直だな。」
土方は山崎の両肩をつかみ後ろを向かせ、自分は山崎を包み込むように座りなおした。
「なっ・・・」
「こうしねーとやりづらいだろ」
一気に二人の距離が近づき、山崎はうろたえた。
背中が土方の胸板に密着し、鼓動が直に伝わってきそうだ。
仄かな煙草が香る。 <> 土山 4/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:15:07 ID:lwBf6k9M0<> 両脇から土方の手が伸びて生きて、ズボンの金具に手をかけた。
性急な一連の動作に、山崎の思考はついていけない。
「そんなに硬くなるなよ。」
フリーズしている山崎に、土方はからかうように言った。
「目ぇつぶって、女にされてると思えばいい。」
土方の手が下着に潜り込んだ時、山崎はぎゅっと目をつぶった。
まだ何も変化のない山崎自身を、土方は優しくさする。
「・・・ッ」
久々の他人の手の感触は、山崎の予想以上のものだった。
加えて最近の激務で、一人で慰めることもできていなかったのだ。
(ヤバいかも・・・)
この時点であっけなく賭けに負けてしまった山崎は、絶望に近いものを感じていた。
男である土方に触れられて、不快どころかひどく感じてしまっている。

下着の中でしばらく擦ったあと、それを取り出しまたゆっくりと扱き始めた。
自身を外気に晒され、山崎は小さく身体を震わせた。
強弱をつけた巧みな動きにだんだんと追い込まれていく。 <> 土山 5/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:16:01 ID:lwBf6k9M0<> 「早いな」
その土方の言葉に、山崎はそれまで固く閉じていた目を見開いた。
「ウソ・・・」
山崎の目線の先には無骨な手に包まれ透明な液を滴らせる山崎自身。
それはすでに十分な硬さを持っている。
先端から溢れる液体を塗り込むようにし、その滑りで手の動きはさらに激しさを増した。
次第に淫靡な水音が部屋に響き、山崎の聴覚を犯していく。
「あ・・・ッ、ん」
思わず漏れた声をせき止めるように、山崎は両手で口を押さえた。
「誰も来やしねーよ」
そう耳元でささやく土方の声には、心なしか熱がこもっている。
空いている手で山崎の口をふさいでいる手を優しく外した。
そのまま手をワイシャツの下に滑り込ませ、胸の突起を探る。
「やっ・・・!?何を・・・」
「気持ちいいだろ?」
土方は巧みにそこををまさぐる。
「ん、なんか・・・くすぐったい、です・・・」
口ではそういうものの、土方は自分の手の中で山崎自身の質量がさらに増したことを感じた。
そんな山崎の反応を観察しながら、疎かになっていた片方の手の動きを一気に速める。
「あァッ・・・!」
急な刺激に、山崎は思わず一際大きな声をあげる。
すでに本来の目的を忘れ、ひたすら快感を追うことしかできなかった。
上司である土方に一方的に慰められている、そんな異様な状況に山崎はなぜかひどく興奮していた。
呼吸は浅くなり、頭に血が上っていく。 <> 土山 6/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:17:01 ID:lwBf6k9M0<> 「ふ・・・副長、もう・・・いい、です・・・」
息が上がり、途切れ途切れになりながらも限界が近いことを知らせるが、土方はその手を止めようとはせずさらに動きを速めた。
片方の手は相変わらず胸の突起を弄んでいる。
「やっ・・・!!ほんと、やめてくださ・・・汚れちゃう・・・」
「かまわねーよ」
山崎は激しさを増す土方の手を掴み動きを制止しようとするが、力が入らずただ添えるだけとなっていた。
次第に視界が白みがかる。
土方はさらに身体を密着させ、山崎の耳元に唇を寄せた。
「あっ・・・あァ・・・だめ、もう・・・いッ・・!」
「・・・イけよ」
土方は低く熱のこもった声でそうささやき、自らの舌を山崎の耳の差し込んだ。
クチュ、といやらしい水音が耳元で響き、山崎は大きく身体を震わせた。
「あっ!!あぁダメっ・・・土方さんッ!あああぁ・・・!!」
容赦なく畳み掛ける刺激に耐え切れず、体を弓なりに反らせ山崎は達した。
勢いよく白濁を飛び散らせたが、強すぎる快感が収まらないのか山崎は小さく体を痙攣させる。
一度吐き出した後も絞り出すように強く、ゆっくりと土方が扱くと、その度にドクドクと白濁を溢れさせた。
「あ・・・あぁ・・・・あっ・・・」
脱力した体を土方に預け、肩口に頭をのせて天を仰ぐ山崎は、吐精の度にビク、ビクと体を震わせうわ言のような声を漏らした。 <> 土山 7/7<>sage<>2010/05/16(日) 22:19:56 ID:lwBf6k9M0<> 「すげー大量・・・本当に溜まってたみたいだな」
ようやく長い吐精がおさまり、はぁ、と大きく息をつくと、山崎はちらりと下の方へ目をやった。
そこには白濁にまみれいやらしく光る山崎自身と土方の手が。
その浅ましい光景に、恥ずかしさのあまり泣きそうになるのをこらえた。
「・・・す、すいません!すぐ片付けますんで・・・」
快感の余韻に浸る間もなく、焦った山崎はティッシュをとりに行こうとする。
そんな山崎を引き留めるように、土方はワイシャツの下に忍ばせてた手を腰に回し、ぎゅっと抱きしめた。
「ふく・・・ちょう・・・?」
土方の突然の行動に驚く山崎だったが、背中の下部に当たる熱いモノに気づきさらに驚愕する。
「!? ちょっ、なんでアンタまで興奮してんですか!?」
「負けた」
「は?」
「試してたんだよ、お前がよがってるとこ見てなんも感じなかったら俺は正常だ、って。それがこのざまだ。」

土方は山崎と同じ‘賭け’をしていたのだ。
そして同じく、その賭けに負けた。

土方の真意がやっとわかった山崎は、どうあがいても引き返せないところまで来てしまったことに気付く。

「お前ヤらしすぎ。責任とれよな。」
「・・・横暴。」

いつの間にか体勢が変わり、天井を見つめながらいつ自分の気持ちを伝えようか考えを巡らせる山崎だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ヤマなしイミなしオチなし エロい山崎が描きたかった! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/16(日) 22:41:10 ID:lwBf6k9M0<> ヤマなしオチなしイミなしだったwどうでもいいとこ間違えた
無駄に区切りすぎたかもです すいません <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/17(月) 01:57:50 ID:WqvbCKM7O<> >>46
わ、わっふるしてえ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/17(月) 19:47:29 ID:UCgDzyreO<> >>46エロい山崎が良かったです。この後の展開を妄想してしまう(笑)横暴(・∀・)イイ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/21(金) 00:47:31 ID:JmM4j9DP0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  莫迦ノ フィーロとチェス ショタ注意です
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  2002 Bsideネタバレあります
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

・男のDNAに挑戦しつづける男も、さすがにもうエニスとしたよね前提。 <> フィーロ×チェス 1/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:48:16 ID:JmM4j9DP0<> 「ヒマだなあ」
「………」
「エニス、今日は帰りが遅いんだよなあ」
「………」
「帰ったら三人で飯食べに行こうって……それまで何してたらいいんだ」
「…………」
「あー! ヒマだヒマだー!」
「…………少し静かにしてよ、フィーロお兄ちゃん」
NY、リトルイタリーのとあるアパートメントの一室。
ソファの上でヒマだヒマだと子供のように喚いているのはフィーロ・プロシェンツォ。
年齢よりも二・三歳若く見られる童顔の青年だが、
ここNYに縄張りを持つカモッラ、マルディージョ・ファミリーの若き幹部だ。
そんなフィーロを向かいのソファから新聞ごしに冷ややかに見つめている十歳くらいの少年は、チェスワフ・メイエル。
通称チェス。先ほどフィーロが名前を口にしたエニス……フィーロの妻の弟として、フィーロの家に同居している。
少年の外見をしているが、三百年近く生きている不死者である。同じく不死者であるフィーロより年齢は上だ。
「そう思うなら新聞なんか読んでないで、俺の相手をしろ」
「えー、やだよ」
「おら、こっち来い!」
「わーっ! ちょっとなにするのお兄ちゃん!」
テーブル越しに軽々と持ち上げられて、チェスは新聞を掴んだまま手足をばたつかせた。
「よっと」
フィーロはチェスを空中で半回転させると、自分の膝の上に座らせた。
そのままチェスの身体に腕を回して抱っこの体勢を取る。 <> フィーロ×チェス 2/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:48:54 ID:JmM4j9DP0<> 「もう」
チェスはため息を吐いた。抱きつかれているので新聞も広げづらい。
しかし、文句を言いつつフィーロの行動に嫌悪や鬱陶しさは微塵も感じていなかった。
抱きしめられる体温に、例えようもない安堵と甘い安らぎを覚えている。
今まで長く生きてきて、こんなに心温まる環境に置かれたことがあっただろうか。
あの、アドウェナ・アウィス号以来、チェスには安らぎの時などなかった。
いや、あの時の保護者に感じていた信頼や愛情でさえも……まやかしだったのかも知れない。
チェスはギュッと眼を固くつぶった。フェルメートが生きている。信じられなかったが現実だ。
日本での再会を思い出すと身体が震えそうになる。フィーロに気付かれないよう、チェスは震えを必死で抑えた。
――大丈夫、フィーロが、エニスが傍にいる。今の僕は一人ではない……。
フィーロとエニスが自分に向けてくれる愛情は本物だ。
チェスはマイザー達との旅を終え、二人の愛情を素直に受け入れることが出来るようになった。
甘えてもいいのだ。わがままや、生意気なことを言って叱られるのもいい。
(これが、家族……そうだったな……)
遠い昔に失って、もはや忘れかけていたもの。
フィーロの胸に背中を預けると、頭の上でフィーロが微笑むのを感じる。
こんな何でもないことが幸せなのだ。
チェスは実際にはフィーロより遥かに年上だが、フィーロやエニスの前では外見相応の振る舞いをしていた。
かつては意図的に。だが今は自然に
時々年上めいた言動をしてフィーロが戸惑うのを見るのも面白かった。 <> フィーロ×チェス 3/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:49:29 ID:JmM4j9DP0<> 「なんか面白い記事でもあるかー?」
チェスの身体をゆらゆら揺すりながら、チェスの顔の横から新聞を覗き込むフィーロ。
耳許から聞こえる声がくすぐったい。それがなんだか嬉しい。もちろんそんな感情は表には出さないが。
「ううん。別に大したニュースはないよ」
本当は大したことはあるのだが、あまりに毎日似たような記事なので、いちいち取り上げる気にもならない。
先年NYを震撼させたテロの結果、遠い地で起きている戦争の記事が、相も変わらず紙面に踊っていた。
どこか現実味のない戦争の報道に、チェスの目が滑る。人間の営みを見続けて三百年。
”まだ”三百年かもしれないが、同じことばかりが繰り返されていてあまりにも進歩がない。今日もそれを確認しただけだ。
「そっかあ、なにもないか。そりゃあつまらないなあ」
今度はチェスの頭に顎を乗せてくる。少し重いが文句を言うほどではない。
「あんまり事件ばっかり起きても困るよ」
「それもそうだな。しかし、またヒマに戻っちまったな……しかたない……」
チェスを抱きしめる腕が、ぎゅっと捕まえる腕に変わった。
「……フィーロお兄ちゃん?」
恐る恐る振りかえるチェスに、フィーロはニヤーっと悪戯っぽく笑った。
「チェスで遊ぶとするか!」
言うなり、フィーロの両手は一斉にチェスの身体をくすぐり始めた。
「ちょっ……あはっ…はははははははッ! やめてやめて! くすぐった…ッ」
「このこのこのこの!」
「あははははっ! やめてお兄ちゃんあはははははは!」
笑いながら逃げようとするチェスと、それを捕まえるフィーロがもみ合っているうちに、
ソファの上にチェスを押し倒すような体勢になってしまった。
「逃がさねえぞチェス〜」
指をわきわきとくねらせながら迫ってくるフィーロを、笑いながら押し返そうとして、チェスの表情が凍り付いた。
「あ……」 <> フィーロ×チェス 4/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:50:02 ID:JmM4j9DP0<> ――あの男が…あの男が僕にのし掛かってくる。
「チェス?」
チェスの変化に、フィーロが訝しげな顔をした。
(思い出すな! 二度と思い出さないと決めたじゃないか!)
だが、日本で出遭ってしまった男の存在が、チェスの記憶を引きずり出してくる。
――僕はベッドに縛り付けられて動けない。どんなにイヤだって言っても、あいつは笑うだけだ。
「あ……ああああ…!」
――いやがる僕を押さえつけて、喉を思い切り締め上げるんだ!
――そして僕の喉が潰れて、僕は動けなくなる……。
(思い出すな! 今僕の前にいるのは……あの男じゃない!)
「どうしたんだ、チェス!」
――そうして、動けなくなった僕の服を剥ぎ取って、僕の身体を……
――僕の身体を……あいつは……
「あ……あああ……あああああ…!」
「おい、大丈夫か!」
急に怯えて震えだしたチェスの肩にフィーロが触れる。
「僕に触るな!」
「!」
チェスの右手がフィーロの手をぱちんと音を立てて弾いた。
その音で、チェスは我に返る。
「あ……ごめんなさい……僕……」
恐る恐る、フィーロを窺う。
フィーロは弾かれた手を眺めて呆然としていた。
いや、違う。目線は手に注がれているが、その目はここにある何も見ていない。
やがて、フィーロはチェスを見た。
愕然とした目だった。
「チェス……お前……やっぱり……」
「お兄ちゃん?」 <> フィーロ×チェス 5/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:50:36 ID:JmM4j9DP0<> フィーロは苦悩に顔を歪めていたが、やがてチェスを安心させるように、笑顔を作って見せた。
「大丈夫、大丈夫だチェス……俺はラブロとは違う……お前を傷つけたりはしない……!」
 フィーロの手が柔らかく、優しくチェスの頬をなでる。
「お……お兄ちゃん?」
「チェス、俺見るつもりは無かった。このラブロって男の記憶だけは覗かないつもりだったのに、
 今の弾みで……見ちまった。お前……お前、この男に……」
「やめて!」
チェスは頬を撫でるフィーロの手にしがみついた。
同時に混乱していた。
(なぜだ、フェルメートは僕が喰った! なのに……なぜその記憶がフィーロの中に……セラードの中にある!?)
 ェルメートはチェスが喰ったはずだった。フェルメートの記憶はちゃんとチェスの中にある。
だが、フェルメートは生きていた。チェスの前にまた現れた。あるはずがない、あり得ないことが起きた。
だから、フィーロの中にもラブロ……フェルメートの記憶があるという、あり得ないことですらも……あり得るのかも知れない。
チェスがフェルメートを喰ったことも、喰われたはずのフェルメートが生きていたことも知らないフィーロは
チェスが苦しんでいるのは虐待の記憶に苛まれているのだと錯覚した。
(ひでえ……)
好むと好まざるとに関わらず、ラブロの記憶がフィーロの中に湧き上がってくる。
(どうしたら、チェスに…こんな小さい子供にこれほど酷いことが出来るんだ)
フィーロの痛ましいものを見るような目に、チェスは全てを知られたことを悟った。
理由はどうあれフェルメートによる虐待の記憶がフィーロの中にあることは間違いないようだ。
チェスはため息を吐いて、自嘲気味に笑った。
「……知られたくなかったんだけどな。見ちゃったんだね……フィーロお兄ちゃん」
「チェス……?」
「そうだよ、僕はその男に虐待されていたんだ。肉体的にも……性的にもね……」
「……!」
フィーロが顔をしかめる。 <> フィーロ×チェス 6/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:51:10 ID:JmM4j9DP0<> 「そんな顔しないでよ。……もう終わったことなんだから」
そう、僕があいつを喰って終わらせた。どうしてもその一言は言えなかった。
知られたくない。
(僕が誰かを喰ったことを、フィーロには知られたくない)
だから言えなかった。日本でフェルメートに遭ったことを。本当は終わってなどいないことをフィーロには言えなかった。
それを伝えるにはフィーロに言わなければならないからだ。
チェスがフェルメートを喰ったことを。
それを聞いて、悲しむフィーロの顔が見たくなかった。
「そいつの記憶はお兄ちゃんの中にある。つまりそいつは喰われた。だからお終い」
チェスは笑顔を作ってみせた。上手く笑えている自信はあった。作り笑いは得意だ。
「終わってなんか無いだろ」
「え?」
フィーロの顔は険しいままだった。チェスは笑顔を浮かべたまま、首を傾げてみせる。
「お前さ、……夜ひどくうなされてるんだよ。何かに怯えるみたいに、苦しそうに」
チェスの顔から笑顔が消えた。
「マイザーさんとの旅を終えてから少なくなってたけど、日本から帰ってきてまた増えてきた」
「………」
寝ている時のことまで考えには及ばなかった。誤魔化せてなんかいなかったのだ。最初から。
「あいつの夢を見てるんだろ。お前は夢の中でまだ、苦しんでる」
「……だったら、どうだっていうんだ……」
「え?」
チェスの中で、押さえきれない何かが爆発した。
「そうだよ、夢の中にはまだあの男が出て来て、僕をぐちゃぐちゃにするんだ! 
 焼け火箸を目に突っ込んだり、燃えさかる暖炉に放り込んだり! ベッドに縛り付けて肛門を犯したりね! 
 でも、それがなんだよ! それを知ってお兄ちゃんに何が出来るっていうのさ! 何も出来ないだろ!」
無力なフィーロを嘲笑ってやるつもりだった。お前に出来ることなどなにもないと。
だが、実際にはチェスは笑うどころか顔を涙でぐしゃぐしゃにして泣きじゃくっていた。
両手を広げて迎えてくれた、フィーロの胸にすがりついて震えている。
「つらかったな、チェス」
服を涙で濡らすチェスを、フィーロは優しく抱きしめた。 <> フィーロ×チェス 7/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:51:40 ID:JmM4j9DP0<> 「けど大丈夫。もうチェスを酷い目に遭わせる奴はいないし、俺がさせない。
 チェスは俺の大事な家族だ。家族は俺が守ってみせる」
「怖い夢を見たら……?」
「俺が夢の中に助けに行ってやる! 家長として!」
「いい加減なこと言って……」
チェスは涙に濡れた顔をほころばせた。
「俺は真剣だぞ」
フィーロは心外そうに言う。
――百歳近い男の言うことか……?
苦笑いを浮かべて、チェスはフィーロの背中に腕を回した。
(あったかい……)
フィーロに抱きしめられて、チェスはその温もりを全身に感じながら眼を閉じた。
こうしていれば、恐ろしい夢など見ないでいられるかもしれない。
けれど、まだ足りない。身体に染みついた恐怖の記憶を拭うには、もっと決定的なものが欲しかった。
しかし、その願いを口にすることで今の幸せを失うかもしれない。それが今のチェスには怖かった。
「どうした、チェス?」
物言いたげなチェスに気付いたフィーロに優しく促され、願いは口をついて出てしまった。
「……お願いがあるんだ」
「ん? なんだ?」
「お兄ちゃんにしか、頼めないことなんだ」
「なんだよ、言ってみろよ」
「……僕を抱いて欲しいんだ」
フィーロはぽかんと口を開けて、チェスの顔を見つめた。
「………今抱いてるじゃないか」
「そういう意味じゃなくて!」
「じゃあどういう意味だよ」
「僕を犯して欲しい……セックスしてって言ってるんだよ!」
「はあああ?」
フィーロが呆気にとられた様子で、目を見開いた。 <> フィーロ×チェス 8/19<>sage<>2010/05/21(金) 00:52:05 ID:JmM4j9DP0<> 言ってしまった以上、後には引けない。チェスは必死にフィーロに縋り付く。
「僕はね、お兄ちゃん。ひどいセックスしかしたことがない。ひどい奴に、乱暴に抱かれたことしかないんだよ。
 好きな人に、大切に思われながら抱かれるって経験を一度もしていないんだ。
 僕はフィーロお兄ちゃんのこと好きだし、そんなお兄ちゃんに優しく抱いてもらえれば……
 あの男に犯された記憶を塗り替えられるような気がする。あいつに犯される夢なんかきっと見なくなる」
「待て待て待て待て!」
フィーロは右手で自分の頭を抱えて、左手でチェスの肩を掴んだ。
「それは無理だ」
「どうして?」
「俺はお前みたいな子供に欲情できる変態じゃない! 確かにお前は大事な家族だし、愛してるけれど!」
「愛してるなら、出来るでしょ!」
「愛してるよ、弟として。分かるだろ、全然違うんだ。お前とセックスするなんて、想像も出来ない」
「僕は身体が子供だから、女の子を抱いたり出来ない。……抱いてもらうしかないんだ。
 その相手は、お兄ちゃんがいい! 今、僕が、全力で愛されていると思える人に。
 あなたに……あなたに抱いてもらいたいんだ……」
「チェス……」
大人の口調へと変わったチェスに、その言葉が本気であることを悟ったフィーロは呻いた。
涙で腫れたチェスの目を食い入るように見つめ、自問していたフィーロは、苦しそうに眼を閉じた。
「……すまない……」
チェスは唇を噛んで俯いた。ここで諦めれば、きっとフィーロは何事もなかったことにしてくれる。
家族に傷は残らない。自分が間違っているのは分かっていた。
(でも、引き下がれない)
チェスはキッと顔を上げて、フィーロを真っ直ぐ見つめた。
「分かった。でもせめて……僕の身体に触って欲しい。優しく撫でてもらった事もないんだ。それだけで充分だから」
「…………そのくらいなら」
かなりの逡巡の後、フィーロはそれでも苦しげに頷いた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/21(金) 00:53:09 ID:JmM4j9DP0<> [][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
長文につき、ここで中断します。連投すみません。 <> フィーロ×チェス 9/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:11:42 ID:JmM4j9DP0<> >>58の続き 再開します。

フィーロとエニスは結婚してもベッドは別々だった。ダブルベッドなどではない辺りがフィーロのフィーロたる所以だ。
そのフィーロのベッドの上で、二人は向かい合っていた。服は着ていない。
「……なんか、妙な感じだな」
「そうだね」
普段一緒にシャワーを浴びるわけでもないから、互いの裸などろくに見たこともない。どうにも落ち着かない気分だ。
「さて、どうすりゃいいんだ、俺は」
「そうだね……キス、するとか」
「キスねえ……」
フィーロはふーっと息をつくと、左手でチェスの頭を引き寄せた。
眼を閉じたチェスの前髪を右手でかき上げると、フィーロは額に柔らかく唇を落とした。
「おでこって……」
「当たり前だろバーカ」
不満そうに口を尖らせるチェスの髪を、左手でぐちゃぐちゃとかき回す。チェスの頬がぷっと膨らんだ。
「ははっ! ふくれてるふくれてる。チェスのほっぺは柔らけえなー」
フィーロはチェスのぷにぷにした頬を摘んだり撫でたりつついたりして遊んでいる。
「もう、もっと真面目にやってよ!」
「真面目にってなんだよ」
「こんなふうに……」
チェスはフィーロの右手を取り、自分の薄くて柔らかい胸板に押しつけた。
フィーロがビクリと手を引こうとするが、チェスはそれを許さない。
「触って……お兄ちゃん……」
フィーロは躊躇い、迷った末に、裸のチェスを抱き寄せた。チェスに導かれるままに、そっと小さな身体を愛撫する。
「……っ……あ……っ」
「へ、変な声出すなチェス!」 <> フィーロ×チェス 10/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:12:17 ID:JmM4j9DP0<> 「ご、ごめん。だけど……」
わざとじゃないんだ、そう呟くチェスに嘘はなかった。
最初は感じている演技をして、フィーロの性欲を無理矢理にでも煽ってやろうと思っていたのだが。
演技など必要なかった。フィーロに触れられたびに頭の中が痺れたようになって、身体が熱くなり、自然と声が出る。
「全然違う……」
「え?」
「身体を触られるなんて、気持ち悪くて、嫌なだけだと思ってたのに。好きな人に触られるってこんなに気持ちいいんだ……」
「チェ、チェス……」
「気持ちいいよ……フィーロお兄ちゃん」
チェスの喘ぎ声にフィーロは狼狽した。
「こ、子供がそんな声出すんじゃねえよ」
「何言ってるの、子供だって性感はあるんだよ」
「そ、そうなのか……?」
「自分だって昔は子供だったのに、忘れちゃった?」
頬を上気させ、いたずらっぽく笑うチェスの異様な艶めかしさに、フィーロは慌てて目を逸らした。思わず生唾を飲み込む。
「僕も……」
チェスはフィーロの胸にもたれかかり、胸板から脇腹を撫で始めた。
「ちょっ……お前何を……っ!」
「だって、セックスってお互いの身体に触れ合うものでしょ」
「いや、そうだけど……」
「ふふ……フィーロお兄ちゃん。すこし勃ってるよ……」
「うわっ! チェスてめえどこ……っ!」
チェスの小さな手に性器を握り込まれて、フィーロは息を詰めた。
同性同士、どこが感じるかなんて手に取るように分かる。チェスはその小さな手でどんどんフィーロを追い込んでいく。
「くそっ……やめろ……っ」
「僕のも触って……」 <> フィーロ×チェス 11/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:12:48 ID:JmM4j9DP0<> 引き剥がそうと伸ばされた手を捕らえて、チェスは己の性器に導く。
幼いながらも張り詰めたチェスの性器に触れ、フィーロの手がビクリと震えた。
その間もチェスの手はフィーロを追い詰めていくのをやめない。
「触ってもらって、気持ちよくなったら手を動かせなくなるかもね」
「いい根性してるな、お前は……」
フィーロはこめかみに青筋を浮かべてチェスを睨み付ける。
しかし、そうしていたところで事態が好転するわけもなかった。実際、もう余裕はなくなっている。
「ええい、このっ!」
フィーロがチェスの性器を握り込むと、チェスは静かに息を詰めた。
一瞬、フィーロの性器を弄る手を止め、また動かし始める。
フィーロもチェスの性器を握った手を、静かに動かし始めた。
もはや言葉を交わす余地は無くなっている。互いの荒い息遣いだけが部屋に響いていた。
「あっ……!」
先に音を上げたのはチェスだった。フィーロの胸に額をすりつけ、荒い息を吐き、喘いでいる。
チェスの手の動きは止まっていたが、フィーロの手は止まらない。
「あっ……あっ……あああ……っ!」
チェスの身体がビクビクと跳ねる。絶頂に達したのだ。
「あれ……?」
フィーロは不思議そうな顔で右手を眺めた。ついているべきものがついてない。
「……何もつかないよ。だって、僕、子供だから出ないんだ」
フィーロの疑問を察してチェスが答えた。
フィーロはしばらく首を傾げていたが、やがてチェスの言葉の意味を悟って青ざめた。
「な……んだって?」
精通も迎えていない子供と性的行為に及んだと知ったショックに、フィーロは打ちのめされる。 <> フィーロ×チェス 12/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:13:25 ID:JmM4j9DP0<> 「いや、お兄ちゃん。今更落ち込まないでよ」
「ちょっと黙ってろお前……」
フィーロは頭を抱えたままうめき声を上げた。
「そんなのおっ勃てたまま落ち込まれてもかっこつかないよ」
「う……」
チェスの手で強引に追い立てられた性器は、未だそそり立ったままだ。
「入れてよ……お兄ちゃん」
「それは……」
「触ってもらっただけで、こんなに幸せな気持ちなんだ。入れてもらえたら、きっと悪い過去も忘れられる」
卑怯なことを言っている自覚はあった。こんな迫り方をされて、優しいフィーロがどれだけ追い込まれるのかも。
性器に触れて絶頂に導いただけで、これほど落ち込むフィーロに、酷なことを要求しているのも分かっていた。
優しさにつけ込む真似をしてでも、今はフィーロに愛されたい。フィーロを自分のものにしたかった。
「ごめんな、チェス」
縋るように見上げるチェスの髪を左手で撫でると、フィーロはベッドから降りた。
「え……?」
ベッドにチェスを残したまま、フィーロは部屋を出て行ってしまう。
ドアの閉まる音で、チェスは我に返った。
「あ……」
フィーロが行ってしまった。
ようやく認識が現実に追いついた時、チェスは目の前が真っ暗になるような絶望感に襲われた。
――おいて、いかれた……?
――やはり、望みすぎたのか……?
――いや、最初から望むべきではなかったのだ。だから見捨てられてしまって……。
知らないうちに涙があふれ出ていた。拭っても拭っても止められない。
「行かないで……お兄ちゃん……戻ってきて!」
チェスはベッドシーツを握りしめて、泣きながら叫んだ。
<> フィーロ×チェス 13/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:13:55 ID:JmM4j9DP0<> 「何もいらないから、そばにいてよ、お兄ちゃん!」
今、フィーロに背を向けられたら……何を頼りに生きていけばいいのか分からない。
「うわっ! なに泣いてるんだチェス!」
ドアを開けて戻ってきたフィーロが、ギョッとしてチェスに駆け寄る。
「お兄ちゃん……!?」
「どうしたんだよ、泣くなよ……」
縋り付いて泣きじゃくるチェスを、フィーロは懸命になだめた。
「よかった……戻ってきてくれて……」
「はあ? 何言ってるんだ?」
「だって、ごめんって謝るから……もう僕のこといやになっちゃったんだと……」
「ああ、それはその……俺は経験ないから分からないけど……こっから先は痛いんだろ? だから、ごめんなって……」
そう言うと、フィーロは手に持っているものを差し出した。
「オリーブオイル……?」
「なんか滑りのよさそうなもの探したんだけど、これぐらいしか無かった。悪いな」
「それ、取りに行ってたの……?」
身体からへなへなと力が抜けた。
見捨てられたのでは無かったという安堵と、紛らわしいことするな、という怒りが同時にこみ上げてくる。
「どうしたんだよ。蜂蜜もあったから、あっちの方が良かったのかな?」
「ううん、それでいいよフィーロお兄ちゃん」
チェスは慌ててフィーロを止めた。蟻に集られでもしたら目も当てられない。
「こうなったら、最後まで付き合ってやるよ。……今回だけだからな」
「……ありがとう」
フィーロはチェスの唇に、そっと触れるだけのキスをした。 <> フィーロ×チェス 14/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:25:18 ID:JmM4j9DP0<> 「こんな感じで……いいのかな?」
フィーロはオリーブオイルを纏わせた指を、そっとチェスの秘部に差し入れた。
「う……」
途端にチェスが苦しそうに眉を寄せる。
「い、痛いのか?」
「少しね。気にしないで続けて……」
「でも……」
「ここでちゃんとしてくれないと、後でもっと痛いから……。
 と言っても、いつも無理矢理突っ込まれてたから、本当のところは良く知らないんだけどね」
そこまで言われて続けないわけにはいかなかった。
フィーロは恐る恐る、チェスの中を探るように指を動かす。チェスは小さくて狭くて、壊してしまいそうで怖かった。
傷つけてもすぐに再生する、そう分かっていても乱暴に扱うことは考えられない。
出来うる限り優しくしてやりたくて、慎重な動きになった。
そんな緩い刺激でも、チェスの中に甘いしびれが溜まって、また幼い性器が張り詰めていく。
フィーロの指が自分の中で動いているのだと思うだけで、身体が熱くなった。
――本当に、違う。好きな相手にしてもらうって、なんて気持ちいい。
「ああ……っ」
自然と艶を帯びた声が漏れた。さすがに今度はフィーロも動揺しない。感じさせるために触っているのだから当然だ。
チェスの反応に安心したのか、フィーロはもう少し大胆に指を動かし始めた。
抜き差しの度にオイルがくちゅくちゅと音を立てるのが、次第にフィーロの性欲を煽っていく。
フィーロの息が荒くなっていくのを聞いて、チェスの中に期待と喜びが膨らんできた。
フィーロが自分で欲情してくれている。それが今日の、この時だけのことだとしても嬉しくてたまらない。
<> フィーロ×チェス 15/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:25:49 ID:JmM4j9DP0<> 「指……増やすぞ……」
「うん……」
宣言通り、チェスの中に差し込まれる指が二本に増やされた。圧迫感は増したが、我慢できないほどではない。
かき回す指が、小さなしこりに触れた。
「あうっ……!」
途端にチェスの身体が激しく跳ね上がる。思いもよらない過敏な反応に、フィーロもビクリと肩をすくめた。
「え……? ここ……感じるのか?」
フィーロが恐る恐る、といった感じで再び同じ場所をもう少し強く押してみる。
「あっ……ああ……っ!」
チェスはビクビクと震えながら、フィーロにしがみついた。
子供の薄い爪が食い込んで痛いが、それがチェスの身体を苛む快楽の深さを示している。
「すげえな、おい」
「やっ、お兄ちゃん待って…………ああああッ!」
チェスが再び射精を伴わない絶頂を迎えた。
ガクガクと痙攣しながらしがみついた手の小さな爪が、フィーロの腕の皮を破る。
刺すような痛みにフィーロは思わず顔をしかめるが、滲んだ血も裂けた皮も、みるみるうちに再生していく。
「え、チェス、もしかして今ので……イッた?」
「……そ、そこ……触られると男は誰でも感じるんだよ。お兄ちゃんだってそうさ……」
「マジで!? ケツに指突っ込まれる趣味ないから全然知らなかった!」
「……僕だって別に趣味じゃないよ」
「……ああ、悪ぃ……」
チェスの性的知識は強姦によるものなのだ。そこに本人の意志は存在していない。
フィーロは自分の軽率さを恥じた。 <> フィーロ×チェス 16/19<>sage<>2010/05/21(金) 07:26:17 ID:JmM4j9DP0<> 「謝らなくていいよ……。こんなに気持ちよくイかせてもらったの初めてだし」
「そ、そういうことを恥ずかし気もなく堂々と言うな!」
フィーロは顔を真っ赤にして叫んだ。
「ね……多分もう、入れても大丈夫だと思うんだ」
なるべくフィーロの負担にならないように、出来る限り軽い口調で、チェスは続きを促す。
「あ、ああ……」
いよいよか、とフィーロはぎこちなく頷いた。はっきり言って未知の領域すぎて、ここから先チェスをどう扱えば良いのか分からない。
探せば、セラードに喰われた者の中に男色家がいるかもしれないが、あまり記憶を覗きたいとは思えない。ラブロの記憶など論外だ。
チェスの小さな身体の上にのし掛かって、脚を割り広げる。それだけでも凄まじい背徳感に襲われた。
本当にこのまま進めて良いのか。まだ引き返せるんじゃないか。
どれだけためらってみても、縋るように見上げてくるチェスの瞳を裏切れなかった。
左手でチェスの腰を抱え、右手で己の性器を握って狙いを定める。
(これ、ホントに入るのかよ……?)
あまりに狭い入り口に、また躊躇する。どう見てもフィーロのものとサイズが合わなかった。
こんなところに滑りもなく突き入れられるラブロという男はなるほど鬼畜と呼ぶしかない。
「お兄ちゃん……」
(ええい、くそっ!)
チェスに急かされて、フィーロは覚悟を決めた。右手を添えた性器を狭いチェスの中へ慎重に、慎重に押し込んでいく。
「う……っ……」
チェスが苦しげな声を上げた。見れば、顔を歪めて、両手でシーツを力一杯握りしめている。
「チェス、つらいのか?」
「いいから続けて……」
――そうは言われてもなあ……
チェスの顔から視線を戻して、ギョッとした。
<> フィーロ×チェス 17/19<>sage<>2010/05/21(金) 08:02:04 ID:JmM4j9DP0<> 「チェ、チェス。裂けてる、血、出てる!」
「そりゃ裂けるよ。そんな大きさのもの入れるんだから」
「痛いんじゃないのか……?」
「まあね。でも仕方ないよ。すぐに治るんだし気にしないで」
言った傍から流れた血が生き物のようにチェスに吸い込まれていく。
「むしろ途中で止められる方が、また裂けて痛いんだけど」
「う……わ、分かったよ……」
フィーロは意を決して、しかしゆっくりと腰を進めていく。
「う……っ……くぅ……っ」
チェスは唇を噛み締めて背筋を貫くような痛みに耐える。
久々に味わう痛みは他のどんな痛みにも似ていなかった。
だが今日は違う。ただ苦しいだけの痛みではない。
チェスを貫いているのはフィーロだ。
優しく、愛情を込めて、チェスのことを大事に想って抱いてくれている。
そう感じるだけで、引き裂かれる痛みも、甘い痺れに変わっていくようだった。
「くっ……」
狭くて小さいチェスにきつく締め付けられ、フィーロも顔を歪めてうめき声を上げた。
互いに苦痛を伴う交わりに、自然と汗が滲んでくる。
「お兄ちゃん……」
気遣うチェスの髪をフィーロは左手で撫でる。じっとりと汗が出て、前髪が張り付いていた。
「大丈夫か? チェス……」
お互いの身体が密着するほど、フィーロはチェスの中に深く入り込んでいる。
チェスは限界を超えて押し広げられ、かなりの苦痛を感じているはずだ。
「平気だよ……僕の中にいるのがお兄ちゃんだから……すごく嬉しいんだ」
「チェス……」 <> フィーロ×チェス 18/19<>sage<>2010/05/21(金) 08:02:39 ID:JmM4j9DP0<> 「やっぱり痛いし、苦しいけど……でも気持ちいいよ、フィーロお兄ちゃん……」
「チェス……!」
フィーロは最大限にチェスをいたわりながら、ゆるゆると腰を動かし始めた。
「ん……ああ……っ!」
苦痛と快感が一度に襲ってきて、チェスは甘い喘ぎ声を上げる。
――こんなの、知らない。
――これが、こんなに気持ちよかったなんて……!
チェスは夢中になってフィーロの首に縋り付いた。チェスを見つめるフィーロの眼差しはどこまでも優しい。
「好きだよ、お兄ちゃん」
「ああ、俺もチェスが好きだよ」
フィーロとチェスの『好き』は家族としてのそれだ。
身体を結ぶような真似をしても、その感情にぶれが全くないことを確認できて、二人は微笑み合う。
次第にフィーロの腰の動きが速くなった。
「あっあっ…ああっ……」
小刻みに揺さぶられながら、チェスがあられもなく喘ぐ。フィーロに縋り付く腕に力が入った。
上気した顔には幸せそうな笑みが浮かんでいる。
「チェス……!」
フィーロがチェスの中で果てた。精液が勢いよくチェスの中に叩きつけられる。
「あ……あああっ!」
熱い迸りを受けて、チェスもビクビクと身体を跳ねさせながら達した。
二人は抱き合ったまま、荒くなった息を整える。
「ずっと傍にいさせてね、お兄ちゃん……。エニスお姉ちゃんと、三人で一緒にずっと……」
いつもは素直に言えない言葉も、今は自然に口から出て来る。
チェスの顔には、外見相応の子供らしい笑顔が浮かんでいた。
「ああ。俺たち家族だからな。当たり前だ」
フィーロは慈しむようにチェスを抱きしめた。
<> フィーロ×チェス 19/19<>sage<>2010/05/21(金) 08:03:06 ID:JmM4j9DP0<> 「ただいま戻りました。遅くなって申し訳ありません」
アパートのドアを開けて、エニスが帰ってきた。
エニスの口調はフィーロと結婚した今も相変わらず敬語だ。
「おかえり、エニス」
「……あの、フィーロ。今晩は外で食事をするはずでは?」
それなのになぜかフィーロはエプロンを着けて夕食の支度をしている。
フィーロはにやっと笑って、ソファの方を指さした。
「……まあ」
ソファではチェスがすやすやと眠っていた。毛布はフィーロが掛けたようだ。
「気持ちよさそうに寝てるだろ?」
「ええ、起こさない方がいいですね」
眠るチェスの横に腰掛けて、エニスはチェスの髪を優しく撫でた。
チェスの口元に笑みが浮かぶ。
「可愛いですね」
「ああ、可愛いな。寝てる時は」
「フィーロ」
「冗談。起きてる時も可愛いさ」
エニスはにっこりと微笑んで、またチェスを愛しげに見つめている。
チェスが目覚めた時に見るのはエニスとフィーロの笑顔だ。
それは、これからもずっと変わらない。絶対に変えさせない。
家族の光景に、フィーロも目を細めた。
――この眺めを、この笑顔を守るためなら、何だってしてみせるさ。
フィーロは自分の家族を、命がけで守っていく決意を改めて固めた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書き始めてから「しまった両方受けだ」と気付いた。まあいい。
フィーロがチェスをフェルメートから守ってくれると信じている。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/21(金) 17:27:51 ID:oHmdN/thO<> ショタかあいいなあ(;´д`)ハアハア
GJでした! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/22(土) 22:19:41 ID:b8zVgtry0<> GJ!
ああプロシェンツォ一家やっぱり好きだなあ
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/23(日) 17:15:14 ID:aMhW7LKQ0<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの飛来×武智。20話後の話。なのにエロ有り。ようするに夢オチです。


横になった身の、着物の合わせ目に忍び込む気配。
ひやりとした感触に胸元を撫でられ、戯れるように尖りを捉えられる。
男のそこが感じるようになるなど自分には厭わしいだけだったが、それでも今はそれで
彼が喜ぶのならもういいと思う。
背後から抱き込まれ、緩やかな愛撫を施され、むず痒さにも似た甘い痛みが身体の芯に火を
灯すのにもさして時間はかからず、それでも知らず揺れていた腰に気付き、さすがの羞恥に
堪えようとすれば、それを察したように瞬間、裾を割り滑り込んでくる手の感触があった。
すでに熱を持ちつつあった己に指を絡められ、逃げるのを封じるように擦り上げてくる。
強く、弱く、この身の事はすべて知り尽くしているかのような巧みな煽り立てに、たまらず
背が仰け反り、唇からは喜悦交じりの吐息が洩れた。
熱く淫らがましい。長く耳にするだけで苛まれたその響きも、今はもう抑える気力も無い。
だから望まれるままに流されて、その腕の中で吐精する。
余韻は痺れるように甘かった。
渇ききっていた身と心に沁みいる水のように、それは己を刹那満たしてくれた。
だから、感謝の想いで振り返る。
ゆっくりと、消えてしまわないように。
見遣った背後には死んだ男の顔があった。
『収次郎……』
その名を唇が呼ぶ。
指先が伸びて、頬に触れる。そこに温もりはなかった。
死人の冷たさ。
しかしそれでも構わないほど……愛しい男がそこにはいてくれた。 <> 夢間 2/6  ◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/05/23(日) 17:18:29 ID:aMhW7LKQ0<> 彼が逝ったのは初夏の頃だった。
藩政改革の名目で、藩に無断で朝廷に取り入った罪による切腹。
罪状に間違いはない。しかしそれが言いがかりにも等しい罠によるものだと言う事は一目瞭然だった。
それがわかっていながら、自分は彼を救ってやれなかった。
しかしそんな自分にも彼は最後まで恨み事一つ言わず、それどころか、
――――幸せだった、と
拷問を受け、傷だらけの身になってまでそう言って笑った。
あれから、自分には昼も夜も無くなっていた。
すべての感覚が虚ろに目の前を流れてゆく。
それでも過ぎる時間の中でなら、夜の方がまだましだった。
眠れぬ日々は続いたけれど、それでも限界のように意識が落ちれば、そこに時折彼は現れてくれた。
再びまみえた彼には痛々しい傷は無かった。
在りし日のままの顔と声で、在りし日のまま自分を心配する言葉を口にした。
『そんなに嘆かんでつかぁさい。心残りでついこうして出てきてしまう』
出てこればいいと思う。
彼はずっと自分の言う事を聞いてくれた。だからこれからも聞いてくれればいい。
腕が伸び、その首筋に縋りつく。
何をねだるのか、言葉にせずとも彼には伝わるはずだった。
それでもそんな自分の心中を察した彼が、その手にあった先程の精を後ろに塗りこめようとしてこれば
それに自分は小刻みに首を打ち振った。
彼の顔にまたかと、少し困ったような表情が浮かぶ。しかしそれにも自分は違うと瞳を揺らす。
確かに、自分は長く心を閉ざしていた時期があった。
信頼、期待、裏切り、憎悪。己を取り巻くあらゆるものに追い詰められ、汚れる事と引き替えに
手に入れたものにすら平穏を見い出せず、その不安を己が身を傷つける事で打ち消そうとした。
その行為に、彼を巻き込んだ。
すまん……すまん……
今となっては、なんと惨い事に手を科させたか。
繰り返し詫びる自分に、ならばとやはり困った彼の声が届く。
それでもやはり今、自分に彼の労わりはいらない。その時間すら、惜しかった。 <> 夢間 3/6 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/05/23(日) 17:20:15 ID:aMhW7LKQ0<> 夢はいつ醒めるかわからない。
ならば一刻でも早く結ばれたい。奥まで深く繋がりたかった。
痛みなどかまわない。慣れている。
いや、考えてみたらおまんととて初めはそうじゃったろう。
不意に思い出した己らの過去を訴えれば、それに彼は途端気まずそうに破顔した。
『あの時は驚いたぞ』
『すみません。それでも、どうしても欲しかった』
『どういて』
『ずっとずっと好いちょりました』
『知らんかった』
『あまりに高望みすぎて、振り向いてもらえんでもええとさえ思うちょりましたから』
『阿呆』
『でも結局は我慢しきれんかった。それで……傷つけてしもうたがです』
冷たい指先が愛しげに頬に触れてくる。それに自分はまた首を横に振る。
『いいや、ええ。無理矢理でも抱いてくれて良かった。その後も側におってくれて良かった。
謝るならわしの方、傷つけたのもわしの方じゃ。わしはずっとおまんに心を開かんかった』
『それでも、今はこうしていてくれる。いつからやったがですか?』
『いつ?』
『あなたの中に入り込めたのは』
それはもう今となっては笑い話のように、見下ろしてくる彼の顔はひどく優しげだった。
それが愛しくも儚くて、自分は答えを返せない。
『内緒じゃ』
何もかも伝えたらもうこうして現れてはくれなくなりそうで、答えられなかった。
憶病で、弱くて、永遠に失ったから怖くて…怖くて…
そんな竦んだ自分の心を知るかのようにこの時、背に彼の腕が回される。
包み込むように抱き締められる、その優しさに自分は耐えられぬように縋りついた。
もっと強く、もっと深く、貫き、繋ぎとめて欲しかった。
冷たい彼の肌に熱を分け与え、いっそ一つに溶けあうまで。
人と幽鬼の交わりでは叶わぬ事と知りながら、それでも願わずにはいられない。
それほどにこの夢の中、自分は干からび、飢えていた。 <> 夢間 4/6
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/05/23(日) 17:22:19 ID:aMhW7LKQ0<> 縺れるように求めあい、与えあい、快楽以外何も考えられぬほどの淫蕩に溺れながら、
それでもそんな熱の果てにも互いを隔てる境界の線は無くならず……
『もうこれ以上は』
長い情交の終わり、そんな言葉と共に体を離そうとした彼に、しかし自分はしばしその絡めた手足を
解く事が出来なかった。
まだ……
小さな呟きに、頭上で苦笑めいた吐息が零される。
『お体に障ります』
宥め諭すような、そんな戒めめいた言葉はいらないと思う。今更こんな身を案じてどうするというのだ。
しかしそんな自虐に陥りそうになる自分の心を、この時彼は見透かしたようだった。
火照った肌に冷たい指先の感触がこめかみを伝い頬へと落ちる。
それに自分がわずかに顔を起こせば、更に滑らせた手で捉えた顎をやんわりと引き上げてきた。
近づけられる顔。そして唇が静かに触れ合う。
それに自分は驚いた。
『…何じゃ?』
突然の行為の意味がわからず目を瞬かせれば、それに彼は悪戯っぽく口元を緩ませる。
『内緒です』
そして返された言葉は先刻の自分に対するまるで意趣返しのようで、それに思わず眉根が寄れば
彼はそんな自分を宥めるように、再びその行為を繰り返してきた。
『言うと、怒りますき』
唇が重ねられる寸前、囁かれた言葉の意味がわからず、それでも問い詰める事は吐息さえ封じられてもう出来ず。
食むように唇を吸われ、戸惑い開いた歯列に舌を差し入れられれば、その感触には無意識に身が逃げかけた。
しかしそれをこの時彼は許してはくれなかった。
顎を捉えていた手が首の後ろに回り、より強く引き寄せてくる。
仰け反る喉元。塞がれ、呼吸を継ぐ間もわからず、息苦しさに頭の芯が霞みがかってくる。
それでも、耳に届く舌を撫で合わせる際に立つ小さな水音は、背徳的にひどく淫らで、熱のまだ冷めやらぬ
肌の奥の埋み火を再び掻き立てた。
交わっていられる事が気持ちがいい。だから、

あの時もこうしてやれば良かった、と……

閉じた瞼の裏に浮かんだ過去の光景は、自分と彼が最後に会った牢獄内のものだった。 <> 夢間 5/6 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/05/23(日) 17:24:09 ID:aMhW7LKQ0<> あの時、全身傷だらけだった彼のどこに触れていいのかわからず、自分はただ手を握ってやる事しか出来なかった。
そしてそんな動揺する自分の為に、無理を押して起き上がろうとする彼に伸ばした手は、支える為だけの
意図のものだった。
この口から告げねばならなかった死の宣告。
恨んでくれていい。罵ってくれればいい。
そう思っていたのに、それでも彼は最後まで一言も自分を責めなくて……
だから辛くて、悲しくて―――愛しくて……
ただ縋るようにその身に抱きついて泣く事しか出来なかった。

あの時に、こうしてやれば良かった。

唇ならば彼の身も痛まなかっただろう。舌の熱なら、着物越しの肌よりもこの想いが伝わっただろうに。
取り返す事の出来ない悔恨がこの時、涙に変わり眦を伝い落ちる。
それを彼はその冷たい指先で拭ってきた。
『泣かんでつかぁさい』
唇を解かぬまま、脳裏に声が響いてくる。
『わしは欲のある男ですき。その涙が自分の為だけのもんやと思うと、うれしゅうて……もっと
泣かせとうなってしまう』
『……あほう』
茶化すような言葉に、思わず咎めるような反駁が浮かぶ。
それに彼はこの時笑ったようだった。
優しく穏やかな声が聞こえ続ける。
『そばにおります』
それは真摯な響きで最後、自分にこう告げた。

体は失くしても、ずっとその心のそばに。それが終生変わらぬ、わしの幸せですき―――
<> 夢間 6/6 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/05/23(日) 17:27:16 ID:aMhW7LKQ0<> 意識の戻りはまるで満ち引く潮のようだった。
耳に夜明けを告げる鳥の声が届く。
瞼の裏にまで忍び込む白んじた明るさは、姿を現した陽の光か。
それでもこの時武智はまだその瞳を開ける事は出来なかった。
横になり閉じ続ける目の、その眦に一筋伝い落ちる涙。
それだけが、まだ夢と自分を繋ぎとめる唯一の縁だった。





□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最初にナンバリングつけ忘れました。すみません。

シュージロの最後まで男前っぷりはスゴかった。
そしてそれを受けての先生のボロボロッぶりには驚いた…

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/23(日) 20:37:06 ID:x0WCC/GFO<> 遅レスだが

>>22
GJ!!GJ!!
自分もあの二人の関係にはハァハァしたよ <> 選択は自由 1/6<>sage<>2010/05/24(月) 22:55:22 ID:0igLI1ES0<> オリジナル 社会人×社会人あほの子です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「俺、先輩ならバックバージン捧げてもいいと思ってますー」
「また言ってるよ」
サークルOBが集まっての飲み会の後、先輩のアパートで飲み直しの真っ最中。
いつか言ってやろうと思ってはいたんだ。先輩はオットコ前ですって、言いてぇなあーと思っていたまま、なかなか会えなかったのだ。
「いやいや、本気ですしー」
「あ、そ」
「ほんとほんと、本気にしてくださぁーいー」
「酔っぱらいに言われてもな」
「酔ってませんって」
「へいへい」
「どーしたら俺の本気がわかってもらえますかぁー」
「わかってるわかってる」
「んー、じゃあ先輩キスしましょぉー」
「はいはい」
ベッドに背中を預けて、どうでもいいように顔をこちらに向けた先輩の首に手を回して、んーちゅっと軽くキスをする。
酒が入るとキスがしたくなると言うのは、寂しんぼだからだ、と、ついこないだ振られた彼女に言われた言葉だけど、そうかもねーと思う。
キスはいい。
いいのよキスは。
飲み会となると俺はあちこちでキスしているらしい。
俺は寂しい。正直、彼女とヨリを戻せねぇかなあ、と頭の隅で考える。
両手で先輩の顔をはさみ、よくよく見つめてみる。んー、男の俺から見てもかっこいい。
「ほんっとぉ、先輩っていい男っすねー、無精髭っぽい髭似合うかもー。ジョニデみたいかもー」
「はいはいどうもどうも。相変わらずお前はキス魔だね」
「そうなんすよー。でへへ」
唇をとがらせてもう一度キスしようとしたら、先輩の手で避けられた。 <> 選択は自由 2/6<>sage<>2010/05/24(月) 22:57:49 ID:0igLI1ES0<> 「先輩、俺今日泊まりますねー」
「いいよ」
「先輩、俺と一緒の布団で寝ましょうねー」
「やだよ」
「ええー、なんでー、ほんと、俺、先輩ならバックバージン捧げてもいいくらい先輩のことが好きなのにぃー」
「やだよ、お前みたいな面倒なの」
「ええー? 俺面倒じゃないっすよー? 寝相はいいですもん」
「面倒だよ、ストレートでノーマルな男なんか。お前、エッチだって正常位だけだろ」
「んなことないっすよぉー、いろいろやりますって」
どーも先輩の言ってることと俺の言ってることのニュアンスがイマイチ違う気がするな、と思いつつ、ここで引くわけにはいかないからムキになる。
ノーマルったってエロ話だって好きだし、AVも大好きだし、あれこれだって大好きだ。
先輩は缶ビールをぐびりと飲むと、横目でこちらを見て、
「んじゃ、お願いしてみな」
と言った。
「はい? お願い? なんすか?」
「『どうぞ、俺と寝てくださいお願いします』」
「はい?」
「『どうぞ』」
「どうぞ」
「『俺と』」
「俺と」
「『寝てくださいお願いします』」
「寝てくださいお願いします」
先輩はにやりと笑うと、もう一口ビールを飲んでベッドに腰掛けた。
「んじゃ、俺の前で正座してもう一回言ってみ」
なんかやっぱりちょっと俺の意図する所と違うような気がするな? と思いながら、先輩の前に正座して、顔を見上げ、
「どうぞ俺と寝てくださいお願いします」
と言った。
先輩の顔を下から見上げると、えらく男っぽい。
こんな角度で人の顔を見るって、普通無くない? つか、正座して見下ろされる、この体勢って何。 <> 選択は自由 3/6<>sage<>2010/05/24(月) 23:00:50 ID:0igLI1ES0<> 先輩の視線が俺の顔からゆっくりと下に下がっていって、首筋とか、胸とか、腰とかを眺められる。
落ち着かなくて、なんかこう、先輩ってドSくさーと思う。付き合い長いけど、先輩ってこんなキャラだったっけか。
「覚悟が足りないなあ」
「なんすか、覚悟って」
「お前酔っぱらってるしなあ。酔っぱらいと寝る趣味ねぇの、俺」
「すぐ醒めますってー」
「じゃあ、酔い醒ましに散歩がてら買い物行ってこいや」
「よろこんでエー」
パシリになる、それで覚悟とやらが先輩に伝わるならおやすい御用ー。
「駅の近くにドラッグストアがあったろ。あそこ、終電近くまでやってっから」
先輩は紙の切れっぱしに何かメモをして俺に渡してよこした。
「後で金はやるから、立て替えといて」
「喜んでェー」
正座したまま片っぽうの尻をくいっと持ち上げてジーンズのポケットにメモをねじくりこむと、立ち上がる。
先輩も一緒に立ち上がると、俺の目の前に立ち、
「口ちょっと開けてみ」
と言って、訳が分からんうちに顎をつかまれてキスされた。
キスって言うのはこう言うの、と言うようなキスだった。深い。深くて俺の舌に絡んで来る先輩の舌がエロい。
これが女の子だったら確実に腰が砕けてる。
「お前が選ぶんだからな」
唇が離れると、すぐにくっつきそうな距離で囁かれる。
「はい? 買うものを?」
「まあいいから行ってこい」
とん、と肩を押された。勢いでよろめく。おお、やっぱり俺酔ってるわ。
アパートの玄関で靴を履いていると、また声をかけられた。
「携帯と財布持ったか? 忘れ物ねぇか」
「? なんすか、実は俺追い出されモード?」
「いやいや、泊めてやるよ、もちろん。お前が戻ってこれたらな」
「えぇ? 酔ってたって迷子にゃなりませんよー。ってきます」
「おう」
夜の住宅街をぶらぶら歩き、ドラッグストアの手前で自販機を見つけ、のどの渇きを覚えてスポーツ飲料を一つ買う。 <> 選択は自由 4/6<>sage<>2010/05/24(月) 23:04:11 ID:0igLI1ES0<> ペットボトルの半分を一気に飲むと、体中に水分が行き渡った気がして一息ついた。
酔ってる時はスポーツ飲料は良くないんだっけかなあ、と思いつつ、残りも飲み干して、ゴミ箱にペットボトルを投げ込む。
歩いたのと、冷たいものを飲んだので頭がさっぱりして、少し酔いが醒めた気になる。
こうこうと白い明りが目にまぶしいドラッグストアに入り、おびただしい商品の棚の中を歩いて、そう言えば、と尻のポケットからメモを取り出す。

 ・ゴム(L)
 ・ローション

殴り書きの先輩の字。
なんだよゴムって。Lサイズとか見栄張っちゃってぇ。
ってゆーか、なにこれ、他人のコンドーム買わされるなんてどう言う羞恥プレイ。
ぶふふふっと笑いながら、カゴにご指定のLサイズを入れる。
あとローションって何だ、化粧水か。先輩ってオシャレさん。イケメンはたゆみない努力で作り上げられているのだな。
「男性用化粧品」のボードが天井から下がっている棚の所へ移動していろいろ見るが、どれがいいのか分からない。
携帯でメールする。

 先輩の化粧水何ですか

しばらくして、手の中の携帯がぶるっと震える。

 化粧水じゃなくてゴムの横に並
 んでるヤツだよ
 お前の好きなのどれでもいいよ

ん?
なんだか目が滑って、液晶をじっと見つめる。
ゴムの横?
もう一度、コンドームだなんだが置いてあった棚の前に移動して、ようやく理解する。
ローションって、あれか! アレの時に使うぬるぬるするアレか!
俺の好きなの、って、なんだそりゃ。わかんねえ。とりあえず、ピンク色のチューブを適当に選んでかごに入れる。 <> 選択は自由 5/6<>sage<>2010/05/24(月) 23:06:36 ID:0igLI1ES0<> ほんとこれ、酔いも醒める羞恥プレイだわー。鬼畜だわー。こんなこと考えつく先輩ってある意味すげぇわ。
そういや他にも何か書いてあったな、とメモを見直す。

 ・ゴム(L)
 ・ローション
 ・イチジク浣腸2コ

「え?」
さっきは目が滑って見えてなかったと言うか、単語が頭に入らなかったそれが、今度はしっかりと目に飛び込んできた。
「え?」
そして、そこで初めて、俺が言ったことと先輩が言っていたこととメモに書いてあることが繋がった。
さーっとすごい勢いで酔いが醒める。

誰かが俺を見たら、コンドームの棚の前で、ぽかんと口を開けてアホみたいにメモを見つめて固まる男が一人と思われただろう。

(面倒だよ、ストレートでノーマルな男なんか)
(どうぞ、俺と寝てくださいお願いします)
(覚悟が足りないなあ)
(終電近くまでやってっから)
(忘れ物ねぇか)
(お前が戻ってこれたらな)
(お前が選ぶんだからな)

(お前が選ぶんだからな)

先輩が言った言葉が頭の中でぐるぐる回る。
まだ間に合う終電。
先輩のアパートには忘れ物は無い。うん、無い。
正座した俺、
深いキス、
俺の舌に絡まる先輩のエロい舌、
無精髭が似合いそうな男前の先輩。 <> 選択は自由 6/6<>sage<>2010/05/24(月) 23:09:10 ID:0igLI1ES0<> 終電までまだ時間はある。駅はすぐそこ。逃げ道を用意したのは先輩。
その時、手の中の携帯が勢いよく震え出した。
驚いて取り落としそうになりながら、発信者を見ると、ヨリを戻してぇなと思っていた元カノだった。
俺はヨリを戻したいと思っていた。
そうだ、電話に出れば。そして電車に乗れば。逃げ道はすぐそこに。
終電、
元カノからの電話、
アパートにいる先輩、
選ぶのは俺、
…俺?
って、何で俺、迷ってるの? 普通は迷わずに電話出るコースだよね?
すぐさま店を出て駅に向かって電車に乗るコースだよね?
え?

…え?

俺はコンドームの棚の前で、震え続ける携帯を手に、立ち続けている。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/24(月) 23:32:41 ID:3t3KfCdxO<> >>85
あほの子かわいい…!萌えました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/24(月) 23:36:13 ID:1VxaDr0K0<> >>80
GJ!
あほの子かわいい! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 01:22:15 ID:HiNqqTon0<> >>73
飛来×武智があぁああっーーーーーーー!
GJ過ぎです。萌えて泣けて萌えつきますた <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 01:36:10 ID:fDC68MSVO<> >>85
GJ
しかしドキドキしつつ読んでたらなんという生殺し…!w
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 11:04:23 ID:5uwQMqeR0<> >>80
面白い!見事!GJ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 11:58:55 ID:xkT4fX1L0<> >>85GJ
半殺しじゃあー!先輩このやろう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 12:04:28 ID:3Uqcz4WvO<> >>85
面白い!どうするどうなる!あほの子頑張れ〜 <> Out of hours 1/3<>sage<>2010/05/25(火) 13:02:56 ID:XqIHQRG3O<> 機動戦士ぜーたガソダムの赤い人×艦長です。艦長受けを探し求める皆様に捧げます。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

以前より気後れがなくなった。
ブライ├は自分の経験が私のそれと比べて少ないことを気にしており、それ故に衝動を
抑え込んでしまうことがあった。

私から言わせれば、それは経験の差の問題ではなく、彼の生真面目な性格からくる当然
の戸惑いであり、むしろ好ましい性質だ。
だが、同時に躊躇は捨ててもいいのだと導くように教え込んでゆくと、彼の身体からは
力が抜け、思いのままに振る舞うことも多くなった。

今私の部屋に来た時も、以前のように目を合わせようとしないまま扉を背に動かない、
などとということはなく、積極的に口づけを仕掛けてきて欲情を隠さない。

ブライ├の愛撫は穏やかで優しく、心地いい。私の髪がよほど気に入っているのか、頭
皮に沿うように指でとかしつけることを繰り返す。
彼の文官らしい白く骨ばった長い指が通る感覚は、うっとりするほど気持ちいい。

ゆるやかな煽動を繰り返しては、溜まった熱を湿った息にして逃す。穏やかな接合はお
互いをゆっくりと、確実に高みにみちぴいていく。
こすれあう部分の汗と体液は確実に増えていて、些細な動きでも卑猥な音を作り出し、
興奮を倍増させる。
もうブライ├の喉から出るのは吐息だけではない。
まるで酸素の薄い空間にいるようで、頭の芯までまでぼうっとしてくる。
ふいにブライ├の動きが止まった。不審に思い目をあけると、正気に戻りつつある戸惑
いを浮かべた目とぶつかった。身体を支えていたはずの腕が、宙をさまよった形のまま行
き場を失っている。 <> Out of hours 2/3<>sage<>2010/05/25(火) 13:04:08 ID:XqIHQRG3O<> 自分を客観視する余裕など、あるはずはないのに。

その先を汲み取って、腰を支えていた腕を外し、震えている局部を包み込むように撫で
上げ、球をそっと転がした。
「ああっ!!」
ブライ├の腕は自重を支えるために再び脇につかれる。
熱く溶けていた粘膜は、収縮を繰り返して締め付けてくる。
動きも先ほどより大きくなり、摩擦が更なる快感を生む。
たまらず射精し、ひと息つくと、再びブライ├の収縮がきつくなってたかぶりを呼び起こす。
熱い飛沫を受け止めた手をそっと外してみると、まだそこはゆっくりと粘液をこぼし続
けていた。
全体を包み込みながら指の腹で先端をくるりと撫でると、肉を呑み込んでいる部分も連
動して、更に吸いつくような動きを見せる。
そのまま射精後の送り火のような快感に浸っていると、上の身
体が息を詰めた気配があった。
愛撫を止めて肩に手をかけると、そのまま抵抗せずに倒れ込んでくる。
指一つ動かす気力も湧かないようで、目を閉じたまま隣で荒い息をついている。

汗で張り付いている前髪をかきあげ、秀でた額を露わにする。そのまま耳の輪郭を辿っ
ていると、少しずつ呼吸音が通常時のものに近づいてきた。
「落ち着いたか?」
「ええ、なんとか」
その言葉を聞いて、すぐさま半身を起こしブライ├の身体を仰向けに敷き込むと、状況を
飲み込めてない男が怪訝な顔をする。
まだ気付かないのが彼らしい。
「君の流儀は十分堪能した。今度は私のやり方につきあってもらう」
だめ押しで告げるとやっと狼狽しあがき始めるが、もう遅い。それにまだ身体には力が
入らないはずだ。
片脚を担ぎ上げ、拓いた部分に自分の身体の一部が呑み込まれる様を見る。ブライ├も
私の視線の先に気付き、何を見て興奮しているのかを理解したらしく、珍しく悪態をついている。
「悪趣味だ…!」
もう抵抗する気配はないのに、言葉は随分辛辣だ。事実なので否定する気はないが。 <> Out of hours 3/3<>sage<>2010/05/25(火) 13:07:17 ID:XqIHQRG3O<> 「君は本当に面白いな」
そのまま前立腺に擦り付けるように動きを始めると、ブライ├は一見すると苦悶にしか
見えない表情を浮かべながら、聞いたことのない声をあげ続けた。

「最初の頃のあなたはもっと紳士でした」
事後とは思えない、いつも通りの緑髪の艦長の口調だ。
「こんな関係になっても終始態度の変わらない男なんて、君ぐらいのものだよ」
「なにかご不満でも?」
「心外だな。そんなつもりは全くない」
むしろそんな堅物が、戸惑いつつもこちらに歩み寄る様が興をそそるのだ。
ゆっくりとほころびていく部分と、変わらずにある頑なさ。まるで良識と常識だけの面
白味のない四角四面な軍人だと思っていたのに、これからどうなっていくのが非常に興味
深い。彼と関わっている自分の変化も含めて。

「艦長席からのよく通る声が聞けなくなるのは私としても不本意だ。次からは対策を考え
ておく」

一呼吸おいて言葉の意味を理解した男は、先ほどの痴態を完全に思い出したらしく、耳ま
で朱に染め上げ固まってしまった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 18:20:12 ID:j8l4qjxq0<> >>80
(*´д`*)ハァハァ
続き待ってます!!!!!!!!1 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/25(火) 23:10:07 ID:yiVzNcBV0<> >>95
うわぁぁぁぁ!禿げ萌えたよ!GJ!

萌とは違うけど
>艦長席からのよく通る声が聞けなくなる〜
↑で、涙出そうになったよ…(´;ω;`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/26(水) 00:29:48 ID:tLX7Ly9C0<> >>95
GJ!超GJ!
赤い人に開発されてく艦長に萌え転がりました(*´д`*) <> キスと嫉妬とラブレター 1/4<>sage<>2010/05/26(水) 00:49:01 ID:XbnnOK5Y0<> 生 昇天 紫緑+灰(合点) 23日の3問目にやられました。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

収録のドサクサに紛れたのであろう、という事だけはよく分かっていたので、楽屋に戻って着物を
脱いだ唄丸は自分のジャケットのポケットに入れた覚えのない紙切れが入っていても
全く驚きはしなかった。
古風に結び文にされている紙には見覚えがある。6代目の手帳の中身と同じもの。
開けるまでもなく、筆跡にも見覚えがあるのだろうと苦笑いを浮かべた。いつの間に書いたのだろうと
疑問には思う。今日はラブレターの日であり、日本で初めて映画のキスシーンが上映された日だという、
収録にも使われた薀蓄を博識な6代目ならば知っていたのだろうか。
ちらりと視線を声のする楽屋の入り口に近い方へと向けると、着物姿のままで翔太相手に何やら
言い合っている6代目の姿が其処にある。唄丸はの視線に敏感に気付いたらしく、口元に微かな笑みが
浮かぶ。余裕のある事で、と唄丸は呆れて息を吐いた。
大体、二人が何を言い合っているのかなんて容易に想像がつくのだ。先刻の三問目を巡って、6代目が
翔太に絡んでいるのだ。何かに唇を寄せて……という問題で、歌丸の名前を出したは6代目と翔太。
黄色い河童に襲われたのは香樂一人。災難な香樂は兎も角としても、翔太に他意はなかったし、内容的にも
何も色っぽいものは訳で、だから絡むのはただの嫉妬。否、デモンストレーションなのだろう。
翔太に対してではなくて、唄丸に対して、の。
――翔太さんもいい迷惑だろうねぇ。
また浮かんだ苦笑いを、今度はこわいもので飲み下す。ここで笑っては6代目を付け上がらせるだけだ。
ジャケットに袖を通し終わると、唄丸は渋々といった体で歩き出した。行き先は勿論6代目の元だ。
最大九人+スタッフが寛ぐ事もある楽屋はそれなりに広い。最年長の唄丸は古株程奥に座るという
寄席の習いに従って、楽屋の奥が定位置でもある。近付いてくる歌丸に、最早6代目は気も漫ろなのだろう。
翔太があからさまな溜息を吐いた。 <> キスと嫉妬とラブレター 2/4<>sage<>2010/05/26(水) 00:49:37 ID:XbnnOK5Y0<> 「ちょっと宴樂さん、うちの若い衆をいじめないで貰いたいね」
「若い衆って、どうなんですか。翔太なんてもう五十じゃないですか、ご・じゅ・う。独身の癖に五十ですよ」
「気にしてるんだから連呼しないで下さい」
「だったら早く結婚しちゃどうなの」
「やまかしですよっ。もう、宴樂師匠こそ、待ち人が来たんだからさっさと俺を解放してくれたら
どうなんですか」
「はいはい、いいよ。ご苦労さん」
ここぞとばかりに6代目を押し付けて、お役御免だとばかりに場を離れようとした翔太に歌丸が声をかける。
「翔太さん」
「はい」
「ああいう問題の時に、あなたは気軽にあたしの名前を出さないで下さいよ」
「何でですか?」
「ただでさえ大層なヤキモチ妬きが一人いるんだから、他の人にまで妬かれても、あたしは対処出来ません
からね。って理由で合点して頂けましたか?」
揶揄交じりに軽く、けれどしっかりとした意趣返しに、翔太は何とも言えず情けない表情になる。性格も
趣味も真逆な、年齢こそ違う同期の二人は、旅をした世界中でゲイだと思われている程仲が良い。
それが勘繰りなのか否なのかは確かめた事はないけれど。
「ししょお〜」
同じ協会に所属しているから、入門当時から翔太を見ているけれど、こういう顔は前座の頃から
変わらないので唄丸はついつい笑ってしまいそうになる頬を引き締めた。
「言われるのが嫌だったら、さっさと身を固めりゃいいんですよ」
「そんな簡単に言わないで下さいよ。接着剤でもあるまいし」
「あなたか士の輔さんのどっちかが女だったら良かったのにねぇ」
「いやいや、今は外国じゃ男同士、女同士でも結婚出来る国がありますから」 <> キスと嫉妬とラブレター 3/4<>sage<>2010/05/26(水) 00:50:16 ID:XbnnOK5Y0<> 「そういやそうだね、宴樂さん。あんた達、しょっちゅう二人で遊びに行ってるんだから、そういう国に
行ってくりゃいいじゃない」
「もぉそろそろ勘弁して下さいよっ」
「フラフラしてるから揶揄われるんですよ。あんたが還暦まで独り身だったら、士の輔さんに責任取らせます
からね」
大げさに溜息を吐きながら告げる唄丸にすみませんと頭を下げて翔太は逃げ出した。八つ当たりされた上に
説教までされるなんて、割に合わないと心の中で叫んでいるに違いない。
「まぁまぁ、翔太もあれはあれでいいんじゃないんですか?」
「本人がいいならいいのかも知れないけどね、端から見てたら心配ですよ」
「賭けてもいいですけど、十年後、唄丸師匠は士の輔んとこ乗り込んで膝詰めで説教してますよ」
「だろうねぇ。ほんっとに困ったもんですよ。あんたはあんたで子供っぽさが抜けないし。名前は変わっても、
器の容量は変わらないみたいだね」
「師匠が絡んだ時だけですよ。……恋は人を狭量にしますから」
気障に片目を閉じてみせた6代目に唄丸は肩を竦める。声音に混じった微かな本気のトーンにはあえて
気付いてはやらない。
やってられないという仕草で離れかけた唄丸を、6代目は引き止めなかった。どうせこの後収録メンバーで
近くの蕎麦屋に行くのが通常の流れだから、今あえて引っ張る必要はないのだろう。
それでも何となく背中を見送ろうとする目が寂しそうに見えて、唄丸はこういうのを魔が刺したと
いうのだろうかと考える。
近付けた指先の中で唇に触れたのは人差し指と中指。いい歳をして何をやっているんだという疑問は
浮かぶ前に打ち消した。後は勢いだけで、その指先を6代目の方へ軽く逸らす。
俗に言う投げキッスというものをしたのは初めてだった。
思いがけない唄丸の仕草に6代目は一瞬目を大きく見開いた後、へにゃっと相好を崩す。全くもって色男が
台無しなにやけ面だ。
デレデレなその表情に急に気恥ずかしさに襲われる。後悔先に立たずだけれど自業自得だと嘆きも出来ない。 <> キスと嫉妬とラブレター 4/4<>sage<>2010/05/26(水) 00:50:52 ID:XbnnOK5Y0<> 翔太が時折みせる滑舌の悪さを生かした回答みたいに無理矢理こじつけると、『投げキッスで嘆きっす』に
なるのだろうかと唄丸は思ったけれど、あまり上手くはないなとさっさと座布団を取り上げるみたいに
頭の中から消去した。
選択した照れ隠しはつんとした態度でこう告げる事。
「あんたもさっさと着替えなさいよ」
「はい、師匠」
いい子なお返事を寄越した6代目を今度は振り返らずに、唄丸は自分の荷物をまとめようと楽屋の奥へと
足を向ける。ふとジャケットのポケットに、先刻唇に触れた指先を触れさせた。
其処に入っているのは、読まなくても分かる恋文だ。恋は人を狭量にもするが、浮かれた馬鹿にもするものだ。わざ

わざ書いて忍ばせた6代目もそうだし、貰って喜んでいる自分もそうなのだから。
誰にも見咎められない様に俯きながら、唄丸は微かに微笑んだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
あの方々の可愛らしさは実にけしからん。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/26(水) 21:41:55 ID:418LLaDbP<> >>99
GJ!
この二人大好きだー(*´д`*) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/26(水) 22:33:01 ID:4ld7p2PM0<> >>99
まったくもってけしからん!
GJ!としか言いようがないっす!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/27(木) 22:27:19 ID:dusHAkC10<> >>99
禿げました(*´∀`*)ノ口 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/28(金) 07:46:36 ID:/igAgYbVO<> >>99
GJです!
投げキッス緑がかわいいすぎてもう……!
本当にけしからん方々だと思う <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/28(金) 22:02:50 ID:LT7rVVfK0<> 遅レスですが
>>46
GJ!ザキエロい……
この後の展開にワッフルワッフル!! <> 夢の終わるところ 0/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:22:53 ID:4FRwkkqF0<> 日本フォモ協会ドラマ「チェ椅子」 晴馬×群雲

ネタバレ有りなので、再放送で視聴予定の方は注意。



|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 夢の終わるところ 1/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:25:25 ID:4FRwkkqF0<>  少し滴の垂れている髪のまま現れた彼は、今まで纏っていた何かを脱ぎ捨てたかのように清らかだった。白い肌の上には紅い痣が闘争のしるしを残していた。顔色は、暗さを増した部屋の中で青ざめても見えた。
 清潔そうなシャツの左の袖口に質量はない。
 事故の傷がまだ痛むのか、ゆっくりした歩みはややアンバランスだ。
 物憂げに、群雲修辞は視線を運び、こちらへと向けた。
「お先にいただきました。晴馬さんもどうぞ」
 晴馬走輔はソファの一つに陣取ったまま応える。
「俺はいい。顔を洗ったからな」
「心配ですか」
と、唇だけで微笑む。
「大丈夫ですよ。逃げたりはしません」
「いや、そうじゃない」
図星を突かれて慌てる。
「じゃあ入らせてもらうよ」
立ち上がり、すれ違いざまバツの悪さをごまかすために、
「まだ濡れてるぞ。ちゃんと拭いとけ」
群雲の髪を乱暴に混ぜると、彼は嫌がるようにわずかに眉を寄せて首をすくめた。

 逃げたりはしない、と群雲は言ったが、晴馬は半信半疑でいる。
 だが、半分は信じているのだからずいぶんと心境の変化があったものだ。昨日までの自分なら髪の毛一筋も信用しない。
 その原因のひとつには、自分がここでこうして彼と相対し、目的を果たしたことにある。自分は正義を行使するために来たのではない。気の済むようにしたかっただけなのだ。今となっては彼が行方をくらましたところで一向に構わない。
 もうひとつは群雲自身にあった。以前の彼は底知れぬ深淵を見据えたような目をしていたが、今の彼にその影はない。
 おそらく、終わったのだ。
 自分と彼との、彼と世界との長い長い戦いが、ここで、すべて。

 十分ほどでバスルームから戻ると、群雲はリビングにいなかった。
 リビングから連なるバルコニーに、日が落ちた海に向かい、風に髪を乱されながらぼんやりと佇む姿を認める。
 横に並んだ。 <> 夢の終わるところ 2/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:26:50 ID:4FRwkkqF0<>  タックスヘイブンのこの島には、世界中の富豪の別荘や邸宅が集っている。それらを見下ろせるこのバルコニーからは、彼らの誇る豪奢な人工庭のライトアップされた光が地図に付けられた印のように夜景を形作っている。
 海岸のところどころに灯されている照明は砂浜に立てられた椰子の葉の傘を照らし、その下では若者たちが寄り添って歩いている。
 白く泡立つ波打ち際の向こうには、光を吸い込んで黒々と揺れる海原。
 海山との境界線だけを藍色に染め残した空で、東京にいては見られないほど多くの星がすでにまたたき始めていた。
 しかし、群雲の目はそれらの何をも映してはいなかった。
 捕らわれ続けていた過去と、光なき未来との狭間にある、現在という不安定な足場の上に立ち続けるしかない迷い人の横顔。
 それでも。
 正気に戻っただけいい。
 晴馬は思う。
 深い放心の中をたゆたっていた視線が、気配を捉えた。
 幻想から現実へと浮かび上がってきた揺らぎのない瞳が晴馬の顔に留められる。
「俺は逃げない」
「ああ」
 晴馬はうなずく。
 群雲は目を逸らすと、強くなる風音と吐息に隠すように何かをつぶやいた。
「え?」
訊き返す晴馬に答えず、地平の遠くへと視線を移す。
「夢のようだ」
 独り言ちる。
「ずっと、夢のようだった」
 群雲はうわ言のように繰り返す。
「あの時からずっと。奈良、大阪、東京、シンガポール、香港、カリブ。嫌な匂いのする綺麗な夢だった。息苦しいほど懐かしい、ただの悪い夢だった」
「お前」
止めようと触れた肩の冷たさに、晴馬は思わず手を離した。
「夢の中で俺は溺れてた。どちらが上かもわからずに、いつまでも」
「もういい。夢は覚めたんだ」
 群雲は冴え冴えとした目を晴馬に向けた。
「夢の中の人間は夢が覚めたらどこへいけばいい」
 晴馬は言葉に詰まる。
 それを見ると、群雲は怖ろしいほど優美な微笑を浮かべた。
「何か飲みませんか」 <> 夢の終わるところ 3/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:28:58 ID:4FRwkkqF0<>
 テーブルには五本のボトルが並んだ。
 晴馬はエチケットを確認する。
「ロマネコンティ、モンラッシェ、シャトールパン、スクリーミングイーグル? 一財産だな」
「ワインがお好きですか」
「高級ワインの相場ぐらい知ってる。査察官は目利きができなきゃ務まらない。金はいろんなものに化けるからな。俺はビール専門だ」
「あいにくとビールはありません」
 群雲はグラスと氷を置くと、絆創膏を晴馬に手渡し、
「血が出てる」
自分の頬骨のあたりを指でつついた。
 晴馬が手当をしている間に群雲はロマネコンティを抜栓した。
「このボトルは?」
「ラムです。カリブの特産品ですよ」
ワインを注ぎながら上機嫌に言う。
 それぞれグラスを取り上げ、顔の前に掲げる。
 群雲が言う。
「晴馬査察官の大手柄に」
 一瞬考え、晴馬が返す。
「群雲修辞の大失敗に」

 しばらく前から群雲は無口だった。二人でロマネコンティを空けたあと、モンラッシェを抜栓して少し飲んだだけで、彼はラムのボトルを開けて飲み始めた。酔っているのか、ロックグラスの氷を回し融かしながら、時々思い出したように口をつけている。
「なあ群雲」
晴馬はグラスの底のワインを飲み干し、話を切り出した。
「お前は利口だし、才能もある。今回のことで懲役を食らったとしてもせいぜい六年だ。こっちに出てきて十分やり直せる。お母さんを引き取って一緒に暮らせばいい」
 群雲は不審げな顔を見せた。
「変わるのは苦しいかもしれない。不安かもしれない。だがな、変われない人間なんていないんだ」
 彼は再び視線を落とした。アルコールに濡れた唇が動く。
「どう終わるのがいいのか、まだわからないんです」
「罪を償えばきれいな体になれる。どうしようもなく辛くなったら、その時は、俺を頼れ」
その言葉を聞いて、少し微笑む。
 くるくると氷をグラスの中で滑らせていた彼は、おもむろに口を開いた。 <> 夢の終わるところ 4/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:30:31 ID:4FRwkkqF0<> 「カリブは夢のようなところだ」
晴馬は黙って次の言葉を待つ。
「裕福なのは外から来た者たちだ。美しい自然も、文化も、彼らを楽しませるためのものだ。裕福な者にとってここは楽園だ。俺はここで夢を見ていたかった。でも無理だった」
手の中でカラリと氷が鳴る。
「夢の子供に夢は見れない」
彼は自嘲の笑みを浮かべた。
 晴馬は彼に向き直り、まっすぐに見つめて言った。
「夢から覚めても、お前はお前だ」
「優しいな、あんたは」
無感動につぶやいて、気怠げに瞬く。
 酔いが回ったせいか紅さを増した目尻の痣がうごめいた。
 そこに光るものを見出して、晴馬は注意を向ける。
「血が出てるぞ」
「え?」
ほら、と手を伸ばす。
 だが、指先が触れたものは血ではなかった。
 気付いて思わず彼を見ると、少しだけ見開いた目が近くで見ないとわからないほどに濡れている。
 晴馬は息を飲んだ。
 これは群雲修辞ではない。
 三十四年前、誘拐され、腕を切り落とされ、震えて助けを待っていた、沢邑芳矢がそこにいた。
 母親が見た残酷な夢の代償に、自分の夢を見失った、あの日の少年だった。
 傷つきやすい無垢をむき出しのまま、瘡蓋のように狂気をまとい、自分を守り続けて生きてきた、一人の悲しい少年だった。
 彼は声も立てず、身動ぎもせず、救いを求めるように晴馬を見つめ続ける。
 晴馬はその濁りなく黒い目に吸い込まれるような感覚に陥った。
 彼の瞳は深い海のようでどれほど近付いても底が見えない。
 彼の体温が手の中にある。
 彼の白い肌が艶めく。
 彼の吐息を頬に感じる。
 たちのぼるラムの香り。
 潤んだ唇が灯りを映して光る。
 その奥にのぞく桃色の舌先。
 晴馬は、時を忘れて見とれた。 <> 夢の終わるところ 5/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:32:39 ID:4FRwkkqF0<>  群雲がわずかに身を起こした。
 熱を持った唇が触れる。
 彼の右腕が晴馬の首に回される。その手に握っていたグラスがこぼれ落ちて床の上で砕けた。
 滑らかで柔らかい唇が、急くように吸い付く。
 晴馬は彼の髪に指を挿し入れ、仰け反る頭を支えながら、迷い出た小さな舌を受け入れる。
 絡め、撫で擦り、今度は彼の方に分け入った。
 頬の粘膜に、歯の内側に、舌の裏に感じる微かなラムの残り香を、すべて舐め取る。
 高まる熱とは裏腹に勢いをなくした彼の舌先を突付くと、愛撫を求めて追ってくる。こちら側に差し出されたそれを唇で噛む。
 そのまま舌でなぞりながら顔を離す。まず唇が離れ、次に互いの舌が糸を引きながら離れた。
 群雲は恍惚の表情で薄く目を開いた。
 晴馬が自分を見つめているのを認めると、彼は再び目を閉じた。
 彼の腕は、いつの間にか晴馬の肩にすがりつくだけの役割になっていた。晴馬はその手を取り、自分の左手に重ね合わせる。
 群雲の背を支えてソファに横たえ、覆いかぶさる格好で再び重なる。
 より深く、触れ合うために。

 服を脱いで腕の傷跡をさらすとき、彼は逡巡した。
 左の鎖骨に歯を立てたとき、彼は体を震わせた。
 ともに昇り詰めようとするとき、
「晴馬さん」
と彼は荒い息の下で言った。
「晴馬さん」
と彼は肩ごしに指をさまよわせた。
「握っていて」
 晴馬は自分の指を絡め、固く握りしめた。

 キングサイズのベッドなど、しがない公務員である晴馬には馴染みが無くて落ち着かない。こんな経験は最初で最後だろうとぼんやりと考える。
 うつ伏せのまま呼吸を整えていた群雲はようやく落ち着いたらしく、晴馬に髪を撫でられながら気持ちよさそうに目を閉じている。
 こうしていると本当に少年のようだと晴馬は思った。
 幼い頃、母親に添い寝してもらっている彼はこんな風だったのだろうか。
 眺めていると、彼がゆっくりと目を開けた。 <> 夢の終わるところ 6/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:34:53 ID:4FRwkkqF0<> 「晴馬さん」
かすれた声で小さく言う。
「どうして俺を殺さないんだ」
「何言ってる」
「あんたにはその資格がある」
黒い目でじっと見据える。
 晴馬は溜め息をついた。
「言ったはずだ。俺はそんなこと望んじゃいない。お前は司法に裁かれる。それだけだ」
憤然として吐き捨てる。
「俺の相棒は死んだ」
 群雲は晴馬を視線に捉えたまま言った。
「俺のスキームで」
 その目は晴馬の視線を縛り付ける。
「俺が殺した」
 深い深い引きずり込まれるような黒。
 瞬きとともに溢れ出る一粒。
「どう終わるのがいいのかわからないんだ」
 晴馬はその言葉の真意を知った。
「馬鹿なこと考えるな」
 思わず腕を伸ばし、肩を寄せる。
 彼は狂おしく母親の愛情を追い求めるあまり、自ら闇に踏み込んだ。他人を傷付け、自分を傷付けても、永遠に報われない渇望に、転がり落ちていく自分を止めたかった。
 彼が待っていたのは天からの蜘蛛の糸ではなく、底知れぬ海溝のような破滅だったのだ。
 今、彼は、破滅に逆らう心と、それでもなお破滅に惹かれる心の狭間で苦しんでいる。運命の断罪を待ちわびている。だが救いは向こうにはない。彼は必ず生きねばならない。
 俺がさせるか。
 その危うい存在を両腕で包み込む。
 腕の中の群雲は睫毛を伏せた。
「晴馬さん、頼みがある」
「何だ」
 彼は隠れるように晴馬の肩に顔をうずめる。
 吐息混じりの囁き。
「もう一度だけ抱いて」 <> 夢の終わるところ 7/7<>sage<>2010/05/29(土) 21:37:14 ID:4FRwkkqF0<>
 日が高くなるとじっとしているだけでも体温が上がる。シャワーを浴びたばかりですぐに汗だくなってしまうのには辟易した。
 この家の大きく広がる吹き抜け構造が、湿気を含んだ外の風を冷ましながら通していく。風が最も心地良いところを探し、汗が引くのを待つ。
「ここは暑いな」
階上の足音に向けて話しかける。
「日本はまだ寒いぞ。覚悟しとけ」
 頭の上から聞こえていた足音が降りてくる。
 しわ一つないシャツのボタンを上まできっちりと留めて汗もかかず涼し気な顔をした群雲が、バッグとコートを提げて現れた。
 その上品さと顔の痣があまりにもそぐわない。晴馬は彼の顎に指を滑らせた。
「ひどい顔だな」
揶揄するように言うと、
「あんたこそ」
返して、不敵に笑った。
「マフィアみたいだ。空港で止められても知らないよ」
「俺みたいな男前がか? ふざけろよ」
「誰がだよ」
彼は小さく吹き出す。
 呼び鈴が鳴った。
「空港までの車を頼んであるんだ」
言って、群雲は玄関へ向かった。晴馬も荷物をとって後に続く。
 迎えたのは小太りのヨーロッパ人で、彼のここでの友人らしかった。上等な普段着にブレゲの時計をつけているところから見て、近在の富豪の一人だろう。キングオブカリビアン、君がここを離れるのはとても残念だと嘆いた。
 路上に駐めてあったBMWのトランクにバッグを詰め込み、晴馬は群雲に目をやった。
 まぶしげに自邸を見つめている。
 ここで何が起こったのか、晴馬は知らない。おそらく天国とも地獄ともつかない夢のような混沌があったのだろう。
 群雲は一瞬切なげな表情をすると、視線を剥がして車に乗り込んだ。
 三人を乗せ、車が発進する。
 その後、二度と彼が振り返ることはなかった。 <> 夢の終わるところ 完<>sage<>2010/05/29(土) 21:38:30 ID:4FRwkkqF0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


この後空港シーンにつなげてください。
EDテーマはこの二人のソングだと思っているので少しからめてみました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/29(土) 21:40:58 ID:wQjNvRwa0<> >>108
ъ(゚Д゚)グッジョブ!!

血ェ椅子は話が進むにつれて晴馬の攻っぷりがまして
いいドラマだったなーー
最初は後輩×晴馬だったのにww <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/29(土) 22:19:47 ID:8zK8PL5a0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  莫迦之 マイザー×フィーロ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 1960年代くらいの設定です
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> マイザー×フィーロ 1/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:27:06 ID:8zK8PL5a0<> NY、リトルイタリーの一角のとあるビル。
この辺りを縄張りとするカモッラ、マルティージョ・ファミリーのオフィスがあった。
日も暮れかかったこの時間に、マルティージョ・ファミリーの幹部である青年、フィーロ・プロシェンツォは帳簿の前で悪戦苦闘している。
頭をガリガリ掻きむしりながら、帳簿の前のページと後ろのページを行ったり来たりしていた。
「随分苦労してるようですね、フィーロ」
スーツ姿に眼鏡を掛けた男が、ノックと共にドアを開けて部屋へ入って来る。
「マイザーさん」
フィーロがホッとしたような声を上げた。
「さて、どこが分からないんですか? ……ああ、なるほど」
帳簿をざっと眺めたマイザーは、デスク上の東洋式の計算機、ソロバンを素早くはじくと、あっという間に空白だった部分を埋めていく。
マイザーの手際にフィーロはため息を吐いた。
「マイザーさん。やっぱり俺には出納係(コンタユオーロ)なんて無理ですよ。なんせ頭悪いんですから」
マイザーはマルティージョ・ファミリーの出納係(コンタユオーロ)だ。フィーロは最近、マイザーから出納係(コンタユオーロ)の手ほどきを受けていた。
しかし理解する脳がないのか、要領が悪いのか。フィーロの仕事の覚えは絶望的に遅かった。 <> マイザー×フィーロ 2/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:28:02 ID:8zK8PL5a0<> 「大丈夫、時間さえかければフィーロにも必ず覚えられます。焦らないでゆっくり行きましょう。何しろ時間だけはたっぷりあるんですから」
フィーロもマイザーも不死になる酒を飲んだ、不死者だ。彼らは老いて死ぬこともないので、マイザーの言葉通り時間だけは豊富にあった。
「……時間があっても上手くいかないことだってあります」
フィーロがぼそっと呟くように言った。それは出納係(コンタユオーロ)の仕事に関することではないと、マイザーは敏感に察知した。
「なにかお悩みですか、フィーロ」
「…………」
「フィーロ、たまには飲みに行きましょうか。ああ、店だとみんなに聞かれて話しづらいですかね」
マルティージョの経営している店で悩み相談などしようものなら、翌日には組織中に内容が広まってしまう。
「私の家なんてどうです?」
「マイザーさんの家ですか?」
「ちょっと良いお酒もありますし。いかがです?」
「いいですね! 遅くなるって電話しておきます」
フィーロはデスクの電話で自宅に連絡を入れる。
「ああ、俺だよ。マイザーさんと飲むから遅くなる。うん、エニスにも伝えておいてくれ。……ああ、分かってるよ」
「……チェスですか?」
「はい。『飲み過ぎないようにね、お兄ちゃん』って釘を刺されました」
「ははは、仲良くやっているようでなによりです。では、行きましょうか」
マイザーは、上着を着たフィーロの背中を軽く叩いて促した。 <> マイザー×フィーロ 3/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:29:15 ID:8zK8PL5a0<>
マイザーの家はフィーロ同様にリトルイタリーにあるアパートだった。フィーロの家に輪を掛けて個性のない、はっきりいえば殺風景な部屋だ。
――マイザーさんは、この家にずっと一人で住んでるんだよな……。
フィーロはここ三十年以上、エニスとチェスという同居人を得て、それなりに賑やかに暮らしてきた。
だからだろうか、余計にマイザーの孤独をこの部屋に感じずにはいられない。
マイザーが出してくれた酒は、なるほど滅多にお目に掛かれない一級品だった。
これってとっておきなんじゃ、と思わずフィーロがひるんでしまうほどに。
「それで、フィーロは何に悩んでいるんですか?」
三十分ほど酒を飲みながら雑談していた二人だったが、話が途切れたところでマイザーが切り出した。途端にフィーロの口が重くなる。
「……言いづらいことですか?」
「言いづらいというか……恥ずかしいというか……」
童顔の青年は顔をみるみる赤くして俯いてしまう。
――ははあ、これは……
あらかた察しをつけたマイザーはずばりと言った。
「エニスのことですね、フィーロ」
「な、なんで、分かるんですか!?」
目を見開いて驚くフィーロに、マイザーは苦笑するしかない。
「さすがに、キスくらいはしたんでしょう?」
だがマイザーはフィーロを見くびっていた。
「い、いやだけど、マイザーさん、キスって告白とかしてからじゃないと駄目だと思うんですよ。
だけど、告白っていっても、その、エニスが俺のことどう思ってるか全然分からないし、もし俺のこと嫌だったらどうしようって思うと……」
今度はマイザーが目を丸くする番だ。
フィーロとエニスが同居を始めて三十年以上。いつまでも結婚の話が出ないところをみると、あまり進展していないのは想像が付いていた。
もしかするとチェスが一緒に住んでいるのが邪魔なのだろうかと思い、チェスを引き取ろうかと考えたこともあった。
(フィーロ達と住む方がチェスのために良いと思って実行はしなかったが)
だがこれはチェスがいるからどうこうの問題ではないようだ。
フィーロの気持ちに気付かないエニスも朴念仁がすぎるが、彼女は人間ではないのだから仕方がない。
やはり問題はフィーロだ。ここまで奥手だとはさすがのマイザーも思ってはいなかった。 <> マイザー×フィーロ 4/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:30:01 ID:8zK8PL5a0<> 「フィーロ、あなたもしかして……」
「え?」
「いえ、ガンドールの方達に聞いたのですが、あなた子供の頃に女の子に間違えられて、いたずら目的で誘拐された事があったとか」
「……! あ、あいつら余計な事を……! な、何もなかったんですよ! 俺、何もされてません!」
「ええ、それも知ってます。ただ、それがきっかけで女に手を出そうとする男が汚らわしいと感じるようになったとか……これも聞いた話ですが」
「それはあいつらが勝手に言ってるだけです!」
「そうでしょうか」
「え?」
「あなた、自分がエニスに性的な欲求を抱くことを汚らわしいと感じているのではないですか? だから、彼女に触れることを過剰に禁忌としている」
「そんなことは……」
「好きな女性に触れたいと思うのは汚らわしいことではありません。キスだけじゃない、セックスだってそうです。
あなたはセックスを必要以上に汚らわしいものと思っているのではないでしょうか。フィーロ、不躾ですがセックスの経験は?」
「………」
フィーロは耳まで真っ赤になって俯いてしまった。エニスへの奥手さ加減で予想は付いていたが、やはりフィーロの性的経験は皆無だった。
しかし五十年以上生きてきてこの純粋さはもはや異常だ。
「フィーロ、セックスは汚くもなければ、怖いものでもありません。あなたはエニスを本当に好きなのだし、エニスも恐らくあなたの事を好いています。
エニスにそれを求めても、悪いことではないんですよ」
「……理屈では分かってるんです。キースもベルガも結婚してるし、あのクレアだって子供がいる。
多分、アイザックやミリアも。みんな当たり前にしてることだって……」
フィーロは手にした酒を見つめて、訥々と語る。 <> マイザー×フィーロ 5/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:31:06 ID:8zK8PL5a0<> マイザーはやれやれとため息を吐いた。フィーロは奥手をこじらせて仙人か何かの領域に達しようとしている。
不幸なのは、仙人になりきるほどには煩悩とは無縁になれないでいることだ。
マイザーはしばらく眼を閉じて何かを考えていたが、やがて顔を上げて言った。
「フィーロ、あなたは一度経験しておいたほうがいいかもしれませんね」
「……何をですか?」
「セックスを」
マイザーは事も無げに言い放つ。
「マイザーさん、お、俺はエニス以外の女とは、その……したいとは思いません!」
風俗に連れて行かれるのかと早合点したフィーロは慌てて叫んだ。
マイザーはそんなフィーロを片手で制して、とんでもないことを告げた。
「違います、フィーロ。あなたは私と寝るんです」
「え?」
フィーロは、今、自分が何を聞いたのかさっぱり分からなかった。
聞き違いではないかと、耳を疑う。
「私と寝なさい、フィーロ」
聞き間違いではなかった。マイザーはフィーロと寝ると宣言したのだ。
「どうして、そうなるんですか?」
「あなたには荒療治しかありません。セックスは汚くも怖くもないと、私があなたに教えてあげましょう」
マイザーの細い目に射すくめられて、フィーロは拒否する、逃げるといった選択肢を思い浮かべることすら出来なくなった。
フィーロは唐突な成り行きに呆然としながら、今日は遅くなるじゃなくて、帰れないと電話すべきだったなと考えていた。
<> マイザー×フィーロ 6/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:32:14 ID:8zK8PL5a0<> シャワーを浴びてきなさい、とフィーロはシャワールームに放り込まれた。
仕方なく服を脱ぎ、使い慣れない他人の家のシャワーをもたもたと使う。
熱いお湯を身体に浴びながら、とんでもないことになったという実感が今更になって湧いてきた。
あと何十分か後にはこの肌にマイザーが触れるのだ。まさか初めての相手が男、それもマイザーになるとは。
マイザーと知り合って何十年と経つが、こんな事になるとは想像もしていなかった。
男色家だという話も聞かないし、そんな事実もないはずだ。だから密かにフィーロの事を狙っていたということも考えられない。
マイザーが何を考えているのか、フィーロには良く分からなかった。
「フィーロ、タオルここに置いておきますね」
「あ、はい!」
ドアの向こうからマイザーに声をかけられ、フィーロの思考は打ち切られた。
――まあ、考えても仕方がないか。
どうあがいても、これからフィーロがマイザーに抱かれるのだという事実は変わらないのだから。
「あれ?」
シャワーを終えて脱衣所でタオルを使っていたフィーロは、脱いだ服が消えていることに気付いた。
代わりに白いバスローブが置いてある。さっきタオルを置きに来た時に、服を持って行ったに違いない。
「マイザーさん、手回しのいい……」
逃がしませんよ、というマイザーの声が聞こえるようだった。
バスローブを着たフィーロが出て来ると、グラスを傾けながら待っていたマイザーが、入れ違いにシャワールームへ消えた。
しばらくして、シャワーの水音が聞こえてくる。
フィーロはさっきまで使っていたグラスに氷と酒を足してあおった。
せめて酒の力を借りたい、というわけでもないが、何かしていないと落ち着かない。グラスを回して氷でカラカラと音を立てた。 <> マイザー×フィーロ 7/14<>sage<>2010/05/29(土) 22:33:09 ID:8zK8PL5a0<> 「フィーロ」
随分とぼんやりしていたらしい。いつの間にかシャワーを終えたマイザーが立っていた。
フィーロのようなバスローブではなく、タオルを腰に巻いただけの恰好だ。
「行きましょうか」
グラスを回す手を押さえて、マイザーが告げた。グラスを置かせると、そのままフィーロの手を取って立ち上がらせ、寝室へと導いていく。
「先に言っておきますが、私は男性と寝るのは初めてです。上手くできるかどうか自信はありませんよ」
「……マイザーさん、上手いもなにも、俺こういうこと全然分かりませんから」
フィーロが苦笑してみせると、マイザーも軽く笑った。
寝室は暗くてよく見えない。だがきれいに整えられているのは感じられた。
「灯りは消したままにしておきましょう」
マイザーの言葉に頷くと、フィーロは促されるままにベッドに腰掛けた。
カーテンの向こうから漏れる街の光で、部屋は完全な暗闇にはならない。隣に座るマイザーの姿もちゃんと見ることが出来る。
右手で肩を抱かれ、左手で頭を引き寄せられた。
「目を閉じて、フィーロ……」
フィーロの最初のキスはマイザーによって奪われた。
二度、三度と触れるだけのキスを繰り返し、四回目でマイザーは舌を忍ばせる。
初めてのディープキスに、フィーロは目を白黒させた。マイザーの舌が生き物のように口内を動き回り、フィーロの息が上がっていく。
やがてフィーロは苦しそうにマイザーの背中を叩いた。何事かとマイザーが唇を離すと、フィーロはのど元に手を添えてぜえぜえと呼吸を整えている。
「……マイザー……さん……っ、息が……出来ません……」
「フィーロ…………鼻で息をして下さい」
マイザーは呆れたように言うと、フッと息を吐いて笑った。実際のところマイザーも少し緊張していたのだが、それが今のやり取りで解れたらしい。
マイザーはもう一度フィーロに舌を絡めるキスをすると、ベッドに横になるよう促した。フィーロはまだ緊張していて、ぎこちなくシーツの上に横たわる。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/29(土) 22:33:55 ID:8zK8PL5a0<> [][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
半端に長くなってしまったので、ここで一旦切ります。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/29(土) 22:53:53 ID:O8CLv9L10<> >>116
泣きました。
この2人は鉄板だ。

>>117
年下攻めいいよね。
自分は若社長×邑蜘蛛だったよw <> マイザー×フィーロ 8/14<>sage<>2010/05/30(日) 06:26:03 ID:8CKZjzEm0<> >>125の続き 再開します。

ギュッと目をつぶっているフィーロに、マイザーはまたキスを落とす。今度はかなり長く舌を絡め合った。フィーロは口内を好きなように蹂躙されながらも、懸命に呼吸を確保する。
フィーロが身に纏っていたバスローブはいつの間にか脱がされ、マイザーの腰のバスタオルもベッドの下に落ち、二人は一糸まとわぬ姿になっていた。
ようやくマイザーが唇を解放した時には、フィーロは息も絶え絶えになっていた。長く絡め合っていたので、唾液が糸を引いて二人の舌を繋いでいる。
「今、結構いやらしい顔してますよ、フィーロ」
「やめて下さいよ……」
「いえいえ、感じていただけてなによりです」
言いつつ、マイザーはフィーロの首筋に唇を這わせた。耳の後ろまで舐め上げられ、フィーロがビクリと身体を震わせた。
「あ……」
声を上げそうになったフィーロは慌てて口を塞ぐ。
「良いんですよ、声を出して」
マイザーは口を塞いでいたフィーロの右手を取ると、そのままベッドに縫いつけてしまった。
「マ、マイザーさん……うあ……っ……はっ……」
マイザーが身体にキスを落とす度に、フィーロが上擦った声を上げる。その声がどんどん艶めいて来て、フィーロ自身が戸惑う。
(なんて声出してるんだ俺……!)
だが自然に漏れ出す声は、手で抑えることも封じられていた。マイザーの唇で愛撫されるままに、フィーロは声を上げる。
そんなフィーロの様子に手応えを感じていたマイザーは、いきなりフィーロの性器に右手で触れた。それはマイザーのキスと愛撫によって、もう硬くなっている。
「マイザーさん、そこは!」
「いいから、任せておいて下さい」
「ふ……くっ……ああっ……」
マイザーはフィーロの性器をリズミカルにこすり上げ追い込んでいく。 <> マイザー×フィーロ 9/14<>sage<>2010/05/30(日) 06:27:55 ID:8CKZjzEm0<> 既に充分感じさせられていたことと、他人から与えられる快感に慣れていないことで、フィーロはあっさりと達してしまう。
「ああああっ!」
快感で身体を痙攣させるフィーロを満足げに見下ろしていたマイザーは、右手を汚した白濁をペロリと舐めた。
そのままその液体をフィーロの奥に塗り込んでいく。初めは周辺を解すようにしていたが、充分解れたと感じると、中指をぐっと中へ侵入させた。
「……あっ!」
突然の異物感と痛みにフィーロが思わず声を上げる。マイザーの指はまるで生き物のようにフィーロの中で蠢いた。フィーロは感覚に耐えるようにシーツを握りしめる。
「フィーロ、あまり力を入れないで」
言いつつ、マイザーは挿入する指を増やす。言う通りに力を抜こうと息を吐き出すフィーロを、マイザーは微笑んで見つめていた。
「そうそう、そうやって力を抜いていて下さいね」
マイザーは指を引き抜くと、フィーロの脚を持って押し広げた。いきり立ったマイザーの物が押しつけられるのを感じて、フィーロはギュッと目を閉じる。
「行きますよ……」
マイザーがグッと腰を入れた。マイザーの性器が少しずつ、だが確実にフィーロの中に入り込んで来る。
「ぐっ……くぅ……っ!」
経験したことのない大きさのものを受け入れて、フィーロが呻いた。
無意識に上へ逃げようとするフィーロの腰を捕らえて、マイザーは深く深く挿入を続ける。
最後は少し腰を揺するようにして、マイザーは根本まで自分をフィーロの中に埋め込んだ。
「……入りましたよ、フィーロ」
「は……あぁ……あ……」
口を開けば、息と共におかしな声が出るだけだ。
――ああ……マイザーさんが……俺の中に入っている……
感じられるのは痛みと異物感と、中にいるマイザーの熱だけだった。
右手でフィーロの頬を優しく撫でると、マイザーはまた舌を絡めるキスをする。
マイザーはフィーロが感覚に慣れるまで、待っているようだ。
キスに応えている間に、フィーロの強ばりもだいぶ緩んでくる。
それを見て取ったのか、マイザーは身体を起こすとフィーロの腰を抱え込んだ。
「そろそろいいですか? 動きますよ……」
マイザーはゆっくりと抽挿を開始した。 <> マイザー×フィーロ 10/14<>sage<>2010/05/30(日) 06:29:19 ID:8CKZjzEm0<> 「ぐ……っ……あっああっ……っ」
フィーロは名状しがたい痛みと、じわじわと痺れるような快感に喘いだ。口を塞ごうとした手は再び捕らえられ、シーツに押しつけられてしまう。
「ああっ! ……あっ…あっ…あっ…!」
マイザーに揺すり上げられるまま、フィーロは声を上げ続けた。
フィーロの中のある一点にマイザーのものが当たる度、フィーロの身体はビクリと跳ね、一際大きな声を出した。
「…はあ……っあっ…マイザーさん……声……が……」
「声を出したくありませんか?」
そう言うと、マイザーはフィーロと唇を重ね、舌を絡めた。
声は確かに止まったが、フィーロのくぐもった喘ぎと、ぎこちない息遣いは、より一層マイザーの情欲を駆り立てる結果となった。
マイザーの腰の動きが一層速くなる。中を勢いよく擦り上げられて、もうフィーロは限界だった。
それを察したマイザーは、張り詰めたフィーロをそっと握って、到達へと導く。
「ん……んんん……んんっ!!」
フィーロはマイザーと唇を合わせたまま達した。白い飛沫がマイザーの引き締まった腹にかかる。
「はあ……あ……」
唇を解くと、フィーロは達したままのうつろな目で喘いでいた。
「フィーロ、大丈夫ですか?」
「……はい……なんとか……」
「そうですか」
マイザーはとろりとした表情のフィーロの頬を撫でていたが、不意に両手で腰を掴んでひっくり返した。
まだマイザーは挿入されたままだったので、中を擦られてフィーロはうめき声をあげる。
いきなり俯せに返されたフィーロは驚愕の表情を浮かべてマイザーを振りかえった。
「マイザーさ……」 <> マイザー×フィーロ 11/14<>sage<>2010/05/30(日) 06:30:45 ID:8CKZjzEm0<> 「フィーロは気持ちよくイけたようですが、実は私はまだなので……」
未だマイザーはフィーロの中で達することなく硬度を保っている。フィーロが若干青ざめた。
「もう少し付き合ってもらいますよ、フィーロ」
マイザーはフィーロに四つんばいの姿勢を取らせると、最初から勢いよく腰を叩きつけ出した。
「マイザー……さんっ……待っ……あっあっああっ!」
フィーロはマイザーに強引に揺さぶられ、感じさせられるままに声を上げる。
背後から性器を握られると、あまりに強い刺激にもう声も出なくなった。
「行きますよ、フィーロ!」
マイザーは最後に一際激しく腰を揺すると、フィーロの中に欲望を吐きだした。
「あっ……ああ……っああ……!」
二度、三度とその迸りを受け止める度に、フィーロの身体がビクンビクンと跳ねる。フィーロはマイザーの手によって、同時に絶頂に達していた。
マイザーがずるりと中から抜けると、フィーロはくたりと、ベッドに倒れ込んだ。
いきなり二度も絶頂に導かれ、このまま眠ってしまいそうなほど疲労している。
「フィーロ、寝ないで下さい」
「へ……?」
気付くと、仰向けになったフィーロの膝裏を取ったマイザーのものが、フィーロの中に再び突き込まれるところだった。
否、突き込まれた後だった。しかも間髪入れずにマイザーは腰を動かし始めている。
「あっ…はあ……っ、マ、マイザーさんっ?」
先ほど中で放ったマイザーの精液が、ぐちゅぐちゅと間断無く音を立ててフィーロの耳を犯した。
「申し訳ありません、久方ぶりなので昂ぶってしまいまして……治まるまでお付き合い願えませんか、フィーロ?」
「そんな……マイザーさん……っ…ああっ!」
フィーロは一晩中、マイザーの下で声を上げ続けた。 <> マイザー×フィーロ 12/14<>sage<>2010/05/30(日) 06:31:46 ID:8CKZjzEm0<>

フィーロが目覚めたのはマイザーのベッドの上だった。後ろからマイザーに抱きしめられている。二人とも裸のままだ。
カーテンの向こうは白く明るくなってきていた。
フィーロはマイザーを起こさないようにそっと腕をほどくと、そろそろとベッドから降りて立ち上がった。
いつの間に眠ったのか全く覚えていない。もしかしたら気絶したのかもしれない。
あれほど動いたのだから、腰や足が痛いのではないかと恐れていたが、不死者の身体はそんな不調も治してしまうらしい。
恐らく裂けて出血していただろう場所も、なんの痛みもなく元どおりだ。
「フィーロ、お目覚めですか」
「おはようございます、マイザーさん」
マイザーはベッドスタンドの眼鏡を掛けて、微笑んでいる。
「そういえば、ゆうべはずっと掛けてましたね、眼鏡」
「そうでないと、フィーロの可愛い顔が見られないじゃありませんか」
「やめてくださいよ、もう」
「いやいや、実際、かなり可愛かったですよ?」
おかげで随分張り切ってしまったのだが、それはフィーロには伏せておくことにした。
交代でさっさとシャワーを浴びてしまうと、マイザーが作った軽い朝食を二人で食べる。
話題も最近の組織の運営のことや、チェスの事だったりと、色っぽい話は皆無だった。
「さて、昨夜私たちはベッドを共にしたわけですが……」
朝食を食べ終えたところでマイザーが言った。
「フィーロ、私が怖いですか?」 <> マイザー×フィーロ 13/14<>sage<>2010/05/30(日) 06:51:20 ID:8CKZjzEm0<> 「まさか」
フィーロは慌てて首を振った。
「あなたに、あんなことをした私は汚らわしいですか?」
「そんなことありません」
実際、あそこまでマイザーが激しいとは思ってもみなかったが、それでマイザーを嫌いになったり、汚いなどとは考えられなかった。
「マイザーさんはマイザーさんです。俺にとって、それはずっと何があっても変わりません」
「そうでしょう?」
大したことではないんですよ、とマイザーは微笑んだ。
「さあ、フィーロ。あなたはセックスがどんなものかも、それが汚らわしくないことも、これで知りましたね」
「マイザーさん……」
「でもまあ、焦らず、ゆっくり……そう、想いを彼女に伝えることから始めましょう。言葉で言わないと伝わらないこともあります。
勇気を出して、そしてキスをしなさい。大丈夫、きっと彼女には分かってもらえます」
「はい、俺、ちゃんとエニスに伝えます! 俺がとてもエニスを好きだってことを……」


この朝、帰宅するなりエニスに「好きだ」と言ってキスをしたフィーロを、チェスは信じられない物を見るような目で見ていた。
(マイザーが何かしたのか?)
珍しく帰ってこなかった夜にフィーロに何があったのか、さすがのチェスにも想像が及ばなかった。 <> マイザー×フィーロ 14/14<>sage<>2010/05/30(日) 07:01:48 ID:8CKZjzEm0<> 後日――

「フィーロお兄ちゃん、僕ね、昨日エニスお姉ちゃんにキスされたんだ」
「え……?」
「なんでも『これは、好きな人にするんだそうです。フィーロさんに教わりました。チェス君のことがとても好きなので、私もしました』だって。
 すごく嬉しそうだったから、水を差したくないし、僕も喜んでおいたよ」
「エ、エニス……」
間違っていないけど、何か違う。
俺の気持ちの伝え方の、何が間違っていたのかとフィーロは頭を抱えた。
「あと、僕もキスを返さないといけない雰囲気だったから、お姉ちゃんにキスしたけど……問題ないよね?」
「ねえよ!」
さすがに子供にヤキモチ焼くほど駄目な人間ではない。
「まあ、お兄ちゃんのキスを嫌がってないって分かったからいいじゃない」
「そ、そうだよな」
「うん、キスできただけすごい進歩だと思うよ。正直ここまで根性あるとは思ってなかった。頑張ってね、お兄ちゃん」
「お、おう。頑張るよ」
チェスに相当ひどいことを言われているのに、フィーロは気付いていない。
そしてフィーロの想いがエニスに通じて、二人が結婚するのはこれから二十年後のことだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
やっぱりマイザーもフィーロも両方受けのような気がして仕方ない。まあいい。
計算道具がソロバンなのはヤグルマさんの影響ってことで。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/30(日) 10:34:13 ID:JT9EfMhM0<> >108
まさかのチェ椅子!
すごく切なくて萌えました。ありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/05/31(月) 19:29:42 ID:yJRW627C0<> >>108
追跡キテタ━━━(゚∀゚)━━━ しかもエンディングテーマ再現…!
普通に役者で絵が浮かんで弱った。
ドラマを見たときと同じように萌え泣きました。
姐さんありがとう…!

<> 大人の… 1/6<>sage<>2010/05/31(月) 23:28:02 ID:DsHnmYMp0<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
鯛蛾なドラマの中の人達。ナマモノ注意。ラジオネタとか飲み会ネタとかのほのぼののつもり。


「竹知せんせぃ〜、どこ行くがですか〜」
「手水だよ、手水。」
ドラマの中の役の名を呼び、しな垂れかかってくる共演者兼事務所の後輩の手を振り切り
席を立った大守は、フロア内の段差を軽くまたぐと一度背後を振り返った。
ムードよく照明を落とした一角、そこには店内の雰囲気とは若干違う温度差で盛り上がっている
一団があった。
(みんな、かなりデキあがってきたなぁ)
撮影終了後、飲み会になだれ込んだ金曜の夜。
あと二日は休みだ〜とばかりに解放されている面々を見ながら、俺明日何だっけ?と
自らのスケジュールを振り返る。
休みでは確かなかった。なら、これ以上は飲み過ぎない方がいいか。
今ですら少しフワフワとしている足元を自覚しながら、通りがかった店員にトイレの場所を聞き、
そちらに足を向ける。
今日の飲み会はいつもに比べれば綺麗めかつ高級なビル上階にある店だった。
出ているドラマの影響上、出来ればセキュリティーが少しでも良い所を、とこっそり某マネージャーに
願われたその理由は、今回参加の一人にあった。その名は、
「尊?」
角を曲がった所で見つけた人影。それに声をかければビクッとしたようにその顔を返してくる。
今日の飲み会最年少メンバーにして、大手事務所の大事な若手エース。
その肩書きにふさわしいルックスの中でも、常人離れをした大きな目がこちらを認め、声を発してきた。
「大守さん。」
目元がほんのりと赤い。
「冷やしてるのか?」
だからそう尋ねれば、尊は一瞬何を言われたのかわからないかのようなキョトンとした顔をしながら、
それでもすぐハッと気付いた様にコクコクと首を縦に振ってきた。
そんな彼の後ろには大きな窓。
階下に綺麗な夜景が臨めるその付近は、確かに少しひんやりしていそうだった。 <> 大人の… 2/6<>sage<>2010/05/31(月) 23:29:13 ID:DsHnmYMp0<> 「あんまり無理するなよ。あいつらと一緒のペースで飲んでたら確実に潰れるから。」
他のメンバーの惨状を思い出しながら、自分もそんな彼の隣りに立つ。
するとそれに尊は瞬間クスリと笑うと、その大きな目をまっすぐに自分に向けてきた。
「大守さんは今日はあまり飲まれてませんよね。」
「ん?」
「いえ、前の時は結構しっかり酔っ払われてましたから。」
「…………」
見られていたか。それはたぶん、ドラマの放映が開始される前の時の事だった。
撮影だけはビッシリと先まで進んでいて、今回のメンバーとは役柄上一緒にいる時間も多くて、
ガッチリ結ばれたチームワークのまま、飲み会を重ねていた。
「あの時はテレビ局の近くの居酒屋っぽい所で、みんな大盛り上がりで楽しかったなぁ。」
「今日はそうでもない?」
「あっ、そう言う意味じゃなくて!ただ……このお店の選択、やっぱり俺のせいですか?」
うかがってくるような声と目線。それに大守はやはり頭のいい子だなと思う。
なんとなくな雰囲気の違いに気付いていた、その繊細さはこの業界に生きる者としては必要なもの
ではあるのだろうけれど、このくらいの年齢でそれを持ちすぎていると言うのもある意味、
難儀な事にも思えた。
自分が彼くらいの年の頃には、おそらく何も考えずに生きていた。
「一番年下がそんな事気にする必要はないよ。」
だから否定も肯定もせずただそれだけを言ってやれば、そんな大守の心中を察したらしい尊は
その口元にあいまいな笑みを浮かべてくる。
それに大守は更に言葉を継いでやった。
「預かったよそ様の大事な子をそれなりの配慮で守るのは年長者の義務だ。特にこのドラマ
張られてるからな。まぁ、それで一番餌食になってるのは俺だけど……それにあいつらに至っては
酒飲めれば細かい事は気にしないタチだから。気に病むだけ損だぞ。」
ダメだな、イマイチ説得力ないな。言いながらの自分の立場の無さに思わず頭をかくと、
それを見ていた尊が小さく吹き出した。 <> 大人の… 3/6<>sage<>2010/05/31(月) 23:30:24 ID:DsHnmYMp0<> 「なんか、カッコイイなぁ。」
そしてポツリと呟かれた言葉に大守は?と思う。
「なにが?」
「いえ、大守さんて飾らないし、人の目あんまり気にしませんよね。」
「……まぁ、どっちかって言うと、な。」
「飄々と固執しないのに自分の場所はしっかりある感じで、ちょっと羨ましいな。」
「……そんな聞こえのいいもんでもないけどな。」
確かに自分はあまり周囲の目は気にしない。それは生まれつきと言うよりは、育った一種独特な
家庭環境に寄る所が多大にあった。
人並に喧嘩もしたし、衝突する事もあったが、根に持つ事は少なく、まぁいいかと大概の事は流せ、
自分に無理なく要領よく立ち回れる処世術。
そこに思春期によくある自己嫌悪だの自己欺瞞だのという感情を持ち合わせるような年でももう無いから。
今まで出会った人の中で、三本の指に入るくらい楽に立っている人。
少し前に共演した女優にサラリと言われた言葉をふと思い出す。
もっともそれが良い事なのか悪い事なのか、自分ではあまりよくわからないのだが。
「でもまぁ、こんな性格だから。なんかしんどい事があったら話くらいは聞くよ。聞くだけで
なんの助けにもならないかもしれないが、それでも、」
一人でため込むよりはマシだろう。そう言ってみる。
同じ業界、同じ仕事に就いてはいるが、自分と彼とでは周囲から求められている物が違う。
彼は華やかに人目を集め、そしてその為に人目を気にするのが仕事の内の人間だ。
それが何年も何年も続く。この若さでその先の見えなさは時として息苦しくもなるだろう。
そんな時は吐き出しにこればいい、この出会いも何かの縁だと、一応は大人の立場から告げてみれば、
それにタケルは瞬間その瞳を更に大きく見開くと、瞬きを忘れたジッとした視線を向けてきた。
その目力の強さに大守は一瞬、俺なんかマズい事言ったか?と内心ひるむ。
が、そんな尊の表情は、大守の視線の先でこの時ふわりと緩んだ。
「ありがとうございます。」
微笑みながらまっすぐな声で告げてくる、その素直な響きがちょっと胸にキた。
可愛いねぇ、自分がこの年の頃、たぶんこんな可愛らしさは無かった。
思わず我が身を振り返り、反省と共に無性に目の前の彼を猫っ可愛がりしたくなる。 <> 大人の… 4/6<>sage<>2010/05/31(月) 23:31:43 ID:DsHnmYMp0<> だから頭でも撫でてやろうかと大守が手を伸ばしたその瞬間、何を思ったのかこの時尊は
ハッとしたようにその口元を両手で覆い隠してきた。
「はっ?」
「えっ?」
2人同時に驚いた声を出してその場に固まる。
これは、ええっと、つまり。
色々聞いてるな。
そう大守は瞬時に悟る。
色々とは今回のメンバーではない、大人メンバーとの間でも行われている飲み会での事だった。
そのメンバーの中には自分ともう一人、酔うと厄介な行動に出る人がいて……その犠牲者になった者が
何か言ったのか。
そう思えば、目の前の尊の反射的な怯えが逆に面白く感じてしまって、大守はこの時
伸ばしかけだった手をしっかり尊の頭の上に置くと、そのまま髪をグリグリと撫で回してやった。
「大守さん?」
「心配しなくても今日はそこまで酔ってない。だから大人のはまた今度な。」
言うとすばやく、キョトンとした表情が変わらないままのその大きな目の間の少し上辺りに軽く唇を
押し当ててやる。
触れたのはほんの一瞬。しかしそれでも尊の顔は、その感触にあっという間に赤さを増した。
それをやはり可愛いなと思いながら大守はサッと手と体を離す。
「じゃっ、俺トイレ行ってくるから。」
そして軽やかに笑いかけ踵を返せば、歩き出したその背にワンテンポ遅れて尊の叫びが届いた。
「しっかり酔ってるじゃないですかーっ!」
そうか?うーん、そうかもしれないな。
思わず込み上げてくる笑いを口元だけで抑えながら、大守はこの時すっと片手を上げる。
そして後ろは振り向かぬままヒラヒラと、それを振る事で彼に返事を返してやっていた。 <> 大人の… 5/6<>sage<>2010/05/31(月) 23:32:56 ID:DsHnmYMp0<> 数日後。
「うちの大事な後輩に手出さないで下さいよ。」
撮影終了後、休憩室でその日の仕事納めの一服をしていた肩越し。
ヌッと囁かれた低音美声に、大守は思わずその背をソファから浮かせていた。
口にしていた煙草を外し、反射的に振り返る。その背後にはまだ撮影が終わらないのか、役の扮装を
解かぬままでいるこのドラマの主演様の姿があった。
「手…って…」
いきなりの驚きで短な単語しか出てこない。
するとそんな大守に低音美声の主演様こと副山は、ソファの背に上半身をかぶせる姿勢で、のて〜と
口を開いてきた。
「この前、また俺に声をかけないで飲み会があったって言うから、尊を捕まえて聞いてやったんですよ。
大丈夫だったか?って。そしたら、」
「…そしたら?」
「耳が赤くなった。」
「…………」
「まさか、俺と同じ目に合わせてないでしょうね。」
「あっ、合わせてない!合わせてない!」
「本当ですかぁ?」
「本当ですって。」
ネチネチチクチクと責められる、それは自分が以前この人にした悪ふざけを指摘していた。
親交を深める為に開いたごく内輪の飲み会で、あの時は自分は確かに酔っていた。デキ上がっていた。
だから勢いと癖でつい…
しかしあの後、自分はちゃんと謝ったのだ。するとそれにこの年上の綺麗な顔をした人は、しれっと
「まっ、上手かったからいいですけどね」とのたまわった挙句、それを自分のラジオ番組でものの見事に
バラしてくれたのだ。 <> 大人の… 6/6<>sage<>2010/05/31(月) 23:35:25 ID:DsHnmYMp0<> あれにはさすがにビックリした。だからつい態度も神妙にもなる。
けれどそれと同時に思う。下手な事は出来ないだろう、あんな素直な子供には。だから、
「尊には、まだ取ってあります。」
手にしていた煙草を咥え、再び前を向きながらそんな事を言ってやれば、それに副山はこの時
「なんですか、それは」といささか呆れたような声を発してきた。
肩越しに交わす会話。
「俺は汚しといて、尊は大事大事ですか?それはそれで妬けるな。」
「汚し…って、人聞きの悪い。」
「じゃあ俺が初めてだったのに!ってあの時泣いたらどうするつもりだったんですか。」
「ありえんでしょう、こんな仕事してて。」
「仕事ではね。」
ふふっと含み笑いを洩らしながら、この時副山はソファからスッと上半身を起こす。
するとその時、スタジオの方角から本番の準備が整った事を告げるスタッフの声が聞こえた。
それに視線を向けながら、福山の口が開く。
「まっ、いいつきあいをしてやって下さい。あいつは俺の大事な後輩ですから。」
同じ事務所の先輩後輩。しかしそんな肩書きをとったとしても可愛がっているのだろう、大きな目を
した素直な青年の事を思い出し、大守は「はい」と副山の言葉を肝に命じる。
命じたのに…

「チューですけどね。尊にはまだしてないみたいですよ。取ってあるって。ご褒美か何かなんでしょうかね?」

綺麗な顔した年上の人のほがらかな声。もしかしてなにげに根に持ってたのだろうか?
自分の酒の上での悪行は後日、やはりラジオでまた思いっきりバラされたのだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
大人も子供もカワイイことはイイことだ。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/01(火) 00:08:54 ID:7tBPrB6e0<> >>137姐さんアリガトー!!!
中の人たちみんな仲良しで可愛いよね、萌えましたww <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/01(火) 00:52:28 ID:s7qYbcDm0<> >>137
中の人ネタ +.(・∀・)゚+.゚イイ!!
姐さんアリガトー <> 狐の嫁入り 1/5<>sage<>2010/06/02(水) 07:32:59 ID:fMYK9TgZ0<>
国民的大泥棒と、その相棒の話。
数年ぶりに、ビッグウェーブが来ましたってわけで、お邪魔します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 狐の嫁入り 2/5<>sage<>2010/06/02(水) 07:35:43 ID:fMYK9TgZ0<>
 大航海時代という名の仰々しい「夜明け」まで、この土地は美しいマングローブの生い茂った湿地帯に、
ポツポツと島の散らばった、小さな田舎漁村の集まりに過ぎなかった。それが17世紀に入り、イギリスの
手によって点在する七つの島の埋め立てが始まると、景色は一変した。元々良質の湾港であった上に鉄道
網の普及、更にスエズ運河開通を起爆剤にして、この人工半島は一躍、アジア圏で権勢を誇る一大商業都
市へとのし上がった。
 しかしながら、元来が湿地帯の土地だ。加えて、年がら年中、最高気温が30度付近をうろうろするとき
ている。
 洗練された高層ビルの一群からはみ出した片隅、ダーラーヴィー地区の薄汚れた雑居ビルの一室で、ル
パンはうず高く積まれた本の山に両足を投げ出し、だらしなく椅子に身を沈めていた。
 日曜日の昼下がりだというのに、室内は陰気な暗がりの中にひたひたと沈んでいる。
 腹の上に置き去りにされているノートパソコンが、主人を呼ぶように光を点滅させていたが、主がその
呼びかけに答えることはなかった。
白昼夢でも見てるかのように、ルパンはぼうっと口をあけたまま、肘掛を人差し指やら中指やらでトン
トン叩いている。
 まだ雨季に入ったわけでもないのに、今日は朝からしとしとと雨が降り続いている。
 ルパンは相変わらず指で肘掛を叩きながら、所々折れ曲がったブラインド越しに、外を見た。といって
も、何が見えるわけでもない。ここと同じ、黒ずんだ陰気くさいビルがすぐ鼻先に突っ立っているだけだ。
景色も何もあったもんじゃない。
 ルパンは目をとろんとさせたまま、静かにガラスを滑り落ちる雨滴の動きを追っていた。その間も、指
は独立した生き物のように、トントンと肘掛を叩き続ける。
 事実、その指は、「今」のルパンとは、別次元にいる生き物であった。
 ルパンは決して、自分の思考回路を「形」として何かに残すような真似はしない。計画は全て、脳細胞
に詰め込む。それが一番安全であり、的確だ。脳内に詰め込まれた膨大な情報量は、まるで細密なペルシ
ア絨毯を織り込むように「指」でより分けられ、凄まじいほどの速さで一分の隙もなく組み込まれていく。
<> 狐の嫁入り 3/5<>sage<>2010/06/02(水) 07:37:46 ID:fMYK9TgZ0<>  だが、「指」が計画を織り成す時、決まって、酷く物憂い気持ちに襲われる。自分の一部だけが取り残さ
れたような、或いは、弾き飛ばされてしまったような、訳のわからない、正体不明の疎外感だけが腹の底に
燻っている。
 そういう時は、大体誰にも会わないようにしていた。何故なら、この疎外感は原始的な感情と密着してい
るらしく、自分でも何をしでかすか分からないのだ。言うなれば、いつも世界を覆いつくしている理性とい
う名の海が引き潮になっている状態で、深海の底に押しつけられた「何だかわけのわかんないモノ」がぬっと
顔をもたげる。そいつの機嫌が良ければ、何も起きない。良くなければ、何かが起こる。だから、出来るだ
け刺激しないように、他人と接触しない。
(こーゆーの、何て言うんだったっけかな)
 柔らかな白い光が、繊細な雨だれを微笑むように包んでいる。
 と、視界の隅で何かが動いた。
 目だけをそちらへ向けると、窓の縁に小さな黒い虫が止まっていた。ルパンの視線に気づいたのか、虫は音
もなく飛び立つと、ブラインドの陰に隠れた。だが、それでも気が休まらないのか、再び飛び立つと、今度は
ガラスに縋り付く。しかし、足場が安定しないのか、何度も滑り落ち、よじ登り、また滑り落ちてはよじ登る。
 まどろむような眼球の奥で、曖昧な光が揺れた。虫は依然、ブラインドの陰に隠れて、必死に足を動かして
いる。
 耳鳴りがしたような気がしたが、やはり気のせいかもしれない。
 音はない。音は、何もなかった。
 腹の奥底で、突如、荒々しい濁流が堰を切って押し寄せる。視線の先で、虫はそれに感付いたのか、逃げ惑う
ように足をばたつかせた。その時、初めて己の羽に気付いたのか、飛んでみたがすぐに落下した。
 酷く、残酷なことを考えていた。だが、実感はなかった。音が無いせいかもしれない。
 ガラス一枚隔てた世界では、ぼんやりと明るい雨が降り続いている。その優しい雨粒に足を取られるかのよう
に、虫は滑稽なほど懸命に、ガラスをよじ登ろうともがいていた。
 不意に、人の笑い声のようなものが微かに耳を掠めた。
 気だるそうに頭を巡らせてみれば、部屋の隅に置かれた椅子の天辺で、鉛筆を握った手がブラブラしている。 <> 狐の嫁入り 4/5<>sage<>2010/06/02(水) 07:40:01 ID:fMYK9TgZ0<>  再び、歓声のようなものが上がったが、それが目の前の人物のものでないことはすぐに分かった。安物の
イヤホンの音漏れだ。
(そーいや、そうだった)
 あいつもここに居るんだったと、今更のようにルパンは相棒の存在をぼんやりとした意識の中で認識した。
「なあ」
「なんだよ、ルパン」
 生返事ではあったが、意外にもイヤホンをはめたままの相棒は、ちゃんと返事を返してきた。しかし、目
線はずっと、穴だらけのクロスワードパズルから離れない。
「なァんで、殺し屋なわけ?」
 椅子の上でブラブラしていた相棒の手が止まったが、一瞬だけだった。
 いつものルパンならば、こんな質問はしないだろう。他人の思考回路の三歩先を読んだ、それでいて、相
手に選択の余地があるように見せかける問いかけをする。
 それにまた、相棒は過去を自分から話すような人種ではないし、話してほしいような類でもない。それは、
ルパンもよく承知している。
 だが、今はどうにも物憂くて仕方ない。虫もまだ、ガラスの前でもがいている。
 答えない相棒を無視して、ルパンは更に続けた。
「俺ァさ、タコと殺し屋はでぇっきれーなのよ。あーいう連中ってのは、とどのつまり、ヒトサマを痛めつ
けるだけ痛めつけて、テメエをスカっとさせてえって輩だろ。気取った美学おったててるくせに、何にもね
えんだよな。虫唾が走らァ、コロシ屋なんてのは」
 独り言のようにもごもごと呟いた後、こりゃ、まずいな、とルパンは思った。
 そりゃあ、てめえも同じだろとか、てめえが言えた立場かとか、はたまた無言で出て行くとか、兎に角、
良い気分でないことは明確だ。最悪、鉛玉を喰らうことになるんだろうか。
 どてっ腹に穴の開いた自分を想像していた時、長いため息とともに鉛筆が転がる音が聞こえた。
「俺はお前さんの、なんつーか、フツーを八段飛びしたドえらいとこが気に入ってると思っていたわけだ
が、なぁ、ルパン」
 そう言うと、次元は頭の後ろで両手を組み、体を反らすように椅子を傾けた。
「しかしながら、お前さんのそういうダメなところを見ると、俺は非常に安心する。俺はお前のダメなと
こが好きなんだ。長年の修行の賜物ってヤツだな」
<> 狐の嫁入り 5/5<>sage<>2010/06/02(水) 07:43:49 ID:fMYK9TgZ0<>  足を組み、器用にブラブラさせていた椅子がピタリと止まる。暫くして、次元は小さく笑った。
「いや、いや、違うな。ハハ、俺はお前のことが好きなんだ」
 そうして次元は独りで愉快げに笑っていたが、急に椅子がバランスを崩して後ろ向きに倒れた。殆ど反射
的に落ちかけた帽子を手で押さえていると、いつの間にそこに来ていたのか、ルパンの顔が目の前を覆った。
いつもの茶化したようなそれではなく、いつになく、真剣な表情をしている。
「今のさ」
「あんだよ。暑いんだから、近寄るな」
 鼻の先まで迫っていたルパンの顔を手で押しのけたが、ルパンは食い下がるようにずいと顔を近づけた。
「もっかい」
「へ?」
「もっかい、言って」
 一瞬、何のことだか分からず、次元は口をまごつかせた。
「あ?えー、フ、フツーを八段跳びした…」
「違うっての!そのあァとっ!」
 噛み付くように怒鳴られた直後、外れたイヤホンから、「チャンカチャチャカチャカ、チャンチャン」と陽気
なメロディが流れてきた。
「あ!タ、タンマ!」
「何でよ!」
「始まる」
「何が?」
「『便所でお尻を副会長』」
「はあ?!」
 その後、ルパンと次元の間で壮絶なイヤホンの取り合い合戦が繰り広げられたことは言うまでもない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
好きだぜ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/02(水) 10:34:11 ID:sADvZVOm0<> >>145
GJ!GJ!
私も大好きだー! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/02(水) 17:01:06 ID:5X3OMewDO<> >145
あ な た が 神 か ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/02(水) 19:39:23 ID:Cbx/k3xW0<> >>145
まさにあの声あのビジュアルで再生されたw超超GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/02(水) 22:41:51 ID:bOpyZ7840<> >>145
GJ!
萌えでぐるんぐるんしてる所に昇天オチで吹いたw <> 昔も今も 1/3<>sage<>2010/06/02(水) 23:16:32 ID:yNSkTD+60<> ドラマ紅将軍の外線/白×紅

昨晩のアレにやられました。
短いですが失礼します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「早見、体は大丈夫なのか?」
「なんのことだ」
「この前、倒れかけただろう」
白取の言葉に、早見は薄い笑いを浮かべた。
「あの程度のことを気にかけて様子をみにくるとは、高楼省も暇らしいな」
デスクに肘を付いたまま、扉の前の白取を上目で見る。
「はぐらかすな」
白取がわずかに声を荒げると、早見は椅子から立ち上がった。
そしてデスクの前に立ち、術衣を軽く捲ってみせる。
「そんなに心配なら触診でもさせてやろうか」
歯を見せて挑発的に笑う早見に、白取が詰め寄る。
「いい加減にしろ」
「…全く、何もわかってないな」
言葉に混じって漏れた息は、表情にそぐわず甘ったるい匂いを含んでいた。
「何がだ」
もったいつけるような言い方にむっとして逸らした視線は、視界の端にあったアメのタワーに向く。
このタワーこそが甘ったるさの原因なのだろうと思った。 <> 昔も今も 2/3<>sage<>2010/06/02(水) 23:18:38 ID:yNSkTD+60<> すると、軽くネクタイを引かれて視線を戻された瞬間に、甘ったるい匂いが唇へと触れた。
性急に舌が絡んでくれば、甘ったるさはより強くなる。
人工的につくられた苺の味だ。
思わず、肩を押した。
「誘ってるんだ」
その目は濡れて、強い色香を含んでいる。
関係を持っていた若い頃のことを思い起こさせる目だ。
「…その味、どうにかならないのか」
早見は悪戯に笑うと、体を少し捻ってタワーへと手を伸ばす。
「気に入らないか?」
二本ほどアメを手にして、白取に差し出した。
「好きな味に変えてやるから、選べ」
白取はその手からアメをとり上げ、デスクの上に置く。
「アメばっかり食べてるからこんなに痩せる訳だな」
横腹をそっと撫ると、早見の目が細められる。
「昔より痩せただろう」
「さぁな」
「食事くらいまともに、」
言葉を塞ぐように早見は唇を重ねてきた。
余計な事を喋っていないでさっさとしろ、と言いたげだ。 <> 昔も今も 3/3<>sage<>2010/06/02(水) 23:21:16 ID:yNSkTD+60<> こういうところは昔と変わりないらしい。
それに応えてしまう俺も昔と変わりないな、と白取は苦笑しそうだった。
早見の体から力が抜けてゆくのと共に、あの甘ったるさも心地よいものへと変わる。
「ん…っ…」
艶やかな声が漏れたと思ったら、強く肩を押された。
「急患だ」
呆気にとられている白取を押し退けて、早見は部屋を出て行った。
一人になってはじめて、白取はモニターの動きに気付いた。
急患が搬送され慌しく動いている医師の様子が映っている。
自分は行為に没頭していたというのに、早見は最中でもこのモニターを意識していたらしい。
「本当に、昔と変わらないな」
昔もこんなふうに振り回されてばかりだった。
既にモニターの中にいる早見を見て、白取は小さく笑った。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

同期萌えがとまりません。
次回が楽しみ過ぎる…。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/03(木) 00:54:17 ID:7ATCykXhO<> >>154
GJ!しかし、これからという時に休刊がきて白も私も生殺し状態。紅、恐ろしい子。 <> 夢の終わるところ2 0/5<>sage<>2010/06/03(木) 21:05:14 ID:pAyODgcD0<> 日本フォモ協会ドラマ「チェ椅子」 輝一→群雲
ほぼ輝一の独白。一応>>108-116の続きなので関連はありますが内容は独立してます。
ネタバレ注意。病んでるの注意。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 夢の終わるところ2 1/5<>sage<>2010/06/03(木) 21:06:44 ID:pAyODgcD0<>  二人の男が向い合って座っている。
 彼らは二三言葉を交わし、片方はレンタカーの受付カウンターへ、片方はその場を離れた。
 後者の男を尾ける。
 彼は大勢が行き交う空港の通路を通り、奥まって人気のないトイレへと姿を消す。
 追って中に入ると、彼はこちらに背を向けていた。懐に忍ばせた凶器を確かめつつ、ゆっくりとその後姿に近づく。

 なあ、群雲さん。
 あんた覚えてるか。初めて会ったときのこと。
 俺さ、最初あんたを見たとき、とてもじゃないが仕事は頼めないと思った。あんたはただの真面目なサラリーマンに見えたんだ。
 けど、たったの十分話しただけで見事にひっくり返してくれたよ。
 あんな風に頭の切れる人だなんて思いもしなかった。
 俺はどう見えてた?
 ただの浮かれたガキ? それとも最初から金に見えてたのか?
 俺、今でも覚えてる。コックピットの中であんたが語った、タックスヘイブンの話。あのとき俺の中で、夢の扉が開く音がしたんだ。
 夢の扉の向こうに、充ち満ちた光の中にあんたが立ってるような、そんな気がしたんだよ。
 あんたのスキームはいつも完璧だった。
 旅客機をリースして減価償却する。墜落事故の違約金で一度に元を取る。
 死ぬ予定の人間を社長にしてペーパーカンパニーを作る。
 リチウム採掘所を爆破して相続税を絞る。
 でっかくて複雑で、俺には理解できないことだらけだ。
 実業家の息子を騙して、親の資産そっくりいただこうなんて。
 あんたすごいよ。マジですごい。
 いつも完璧だったよ。
 最後まで、さ。

 背後に人の気配を感じて、咄嗟に個室へと身を隠す。
 後から入ってきた人間は、手を洗っただけで出ていったようだ。
 気配をうかがいつつ、機を待つ。 <> 夢の終わるところ2 2/5<>sage<>2010/06/03(木) 21:07:34 ID:pAyODgcD0<>
 ほんと尊敬する。いや、憧れるね。
 俺、男に憧れたのあんたが初めてだ。というか、あんた以外に誰もいない。
 俺ってほら、顔もスタイルも良くて、運動神経抜群で、頭も良くてさ。さらに金持ちの一人息子で、会社も持ってて、ビジネスセンスもある。最強じゃん?
 けどあんたには敵わない。
 佳織があんたの女だってことはあのクラブで会ったときから分かってたよ。あんたみたいなすごい男のそばにいて、惚れない方がおかしいよ。
 それでも俺は佳織を欲しかった。佳織はいい女だもん。
 もしかしたら光も俺の子じゃないかもって思ってたよ。
 けどさ、群雲さん。
 けど。
 根こそぎ奪ってくことないじゃん。
 俺が何をしたんだよ。
 俺があんたに何をした? そんなに許されないことした?
 親父の死を代償にして手に入れた財産全部、俺が愛してた家族全部奪ってって、俺そんなにあんたに嫌われてたのか? 憎まれてたのか? いったいなんで?
 わかんない。
 わかんないよ群雲さん。
 だからさ。
 俺、憎んでいいよね。
 殺したいほど憎んでいいよね。
 俺今どん底なんだ。会社もガサ入れされちゃった。もうおしまいだ。
 だから俺、あんたを憎むことにしたよ。

 彼は水道の前にいる。
 手を洗い、布で拭っている彼の背後から、襲いかかる。
 羽交い締めし、個室に無理やり連れ込む。

 俺、あんたのことが憎いよ。
 憎くて憎くて死にそうなくらい憎いよ。
 俺たちうまくやってたのに、あんなに笑い合ったのに、一緒に歩いてけるって思ってたのに。
 裏切りやがって。
 ねえ、群雲さん。
 佳織はいい女だよね。 <> 夢の終わるところ2 3/5<>sage<>2010/06/03(木) 21:08:44 ID:pAyODgcD0<>  あんたのそばであんたの仕事を見てるのに、怖気もしない。彼女のそんなとこを知って、ますます惚れたんだ。
 俺は佳織を妻にする。
 あんたは俺の妻を抱く。
 そうやって、俺とあんたは佳織の上で重なり合う。
 佳織を抱いてるとき、あんた、俺のこと考えたことある?
 どうだった? 何とも思わなかった? それとも、俺に嫉妬したりした?
 俺、もしあんたがちょっとでも嫉妬してたらなんて想像してさ。
 最っ高に興奮した。
 俺とあんたの最初のスキームで、墜落事故のときあんたが電話で言ってたこと、今でも忘れられない。
「おめでとうございます」「節税に」「成功したんです」「合法的に」
 これだよ。
 これがあんただ。
 大勢の命と引き換えに脱税スキームを成功させといて、あんたは笑ってた。
 そのときわかったんだ。あんたの後ろに差してる光は天から降る恵みの光じゃない、地の底から湧き上がるマグマの放つ光だって。
 ひとつひとつの言葉が耳元を舐め上げるように甘美で、噴き出すマグマの黒い絶頂に俺は抗いようもなく引きずり込まれた。
 もうあんたから離れられなくなった。
 だから、あんたが見てる真っ黒な夢を俺も見たくて頑張ったんだよ。
 親父の生命維持装置、止めたんだよ。
 こんなに頑張ったんだよ。
 なのになんで。
 俺を捨てたんだ。

 個室の壁に彼の背中を押し付ける。
 少し藻掻いた彼は、こちらの顔を認めて目を見開いた。抵抗がなくなる。
 輝一はナイフを取り出して、彼の腹にあてがった。
 彼はそれを見ても眉ひとつ動かさない。
「逃げないの」
押し殺した声で言った。
「ああ」
見たこともないような穏やかな顔で彼は言う。怯える様子も、怒る様子もない。
「俺を見くびってるのか」
輝一がうめくと、彼は静かに答えた。 <> 夢の終わるところ2 4/5<>sage<>2010/06/03(木) 21:09:42 ID:pAyODgcD0<> 「俺は逃げない。逃げられない」
 彼の言葉を聞いて、不意に悲しくなる。
「群雲さん」
輝一はうなだれる。
「俺んとこへ帰って来てよ」
 彼は首を横に振った。
「もう夢は終わったんだ」
「ふざけんなっ」
 輝一は空いた腕で彼の首根を掴み上げた。
 そっちが勝手に終わらせておいて。俺はまだあの輝きを忘れていないのに。あんたと一緒に高みへ、高みへと昇り詰めていくあの愉悦を覚えているのに。
 夢が終わったって言うなら、あんただけでも奪ってやる。
 圧迫から解放すると、彼は荒い息をついて壁に背を凭せかけた。その顎を持ち上げる。
 食い付く寸前に顔を逸らされた。
「やめろ」
 かすれた声がやけにはっきりと頭の中にこだまする。
 へえ。
 嫌なんだ。俺に触れられんの。
 最後まで俺を拒否るんだ。
 なんで?
 ねえ、俺、痛いよ。
 胸がすごく痛くて辛い。
 助けてくれないのかよ。
 ああ。
 そっか。
 もう終わりなんだね。
 残酷な音を立てて夢の扉が閉じていく。その向こうにあんたも消えてくよ。
 せめて最期の瞬間までは、俺だけを恨んでいてくれ。
 彼は苦しい息を吐きながら、慈しむような眼差しを向けた。
「ごめんな」
 暖かい手が頬を撫でる。
「輝一」 <> 夢の終わるところ2 5/5<>sage<>2010/06/03(木) 21:10:18 ID:pAyODgcD0<>
 そのとき俺は思い出してた。
 俺には兄貴がいたってこと。
 親父の相続人を調べていて、親父に昔愛人がいたことを知った。
 女も息子も死んだって聞いたから忘れてたけど。
 あの子供いくつだったっけなあ。生きてたらいくつになるんだっけ。誘拐事件で左手を切り落とされたあの子。
 まさかね、群雲さん。
 そんなのないよ。
 俺のことが憎かった? 愛される子供が憎かった?
 だから全部奪ったの?
 俺、本当に一人になっちゃった。
 戻りたいなあ。
 佳織がいて、親父がいて、俺がいて、あの、変な日本語話す中国人がいて。
 真ん中には、あんたがいて。
 どうやって税金減らそうとか、どうやって査察騙そうとか言ってたあの頃。
 すげーな群雲さん、って俺が言ったら、あんたが笑う。
 俺は笑いながら、親友みたく肩を組む。
 兄弟だったら、抱きしめてもいいのかな。
 そうじゃなくても抱きしめたかった。
 頼むよ。
 憎めよ。俺を恨めよ。
 今だけ俺のこと考えていてよ。
 俺、あんたを殺す権利なんてないんだよ。
 全部俺が悪かったんだ。俺が親父の息子だったから。
 俺があんたを不幸にしてたんだね。
 ごめんね、群雲さん。
 ごめんなさい。

 いなくならないで。 <> 夢の終わるところ2 完<>sage<>2010/06/03(木) 21:10:43 ID:pAyODgcD0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

本編内で輝一が既に個室にいる行動矛盾について配慮してみた。
個室の位置とかが説明つかないけどそれは見ないふりしてください。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/03(木) 21:56:10 ID:zMQoBalv0<> >>164
おおおおGJ!
この弟×兄カプたまらん。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/03(木) 22:13:47 ID:aYgNOfKw0<> >>164
再放送で寝不足の頭にとどめをありがとうw
いろいろと間違ってしまったけど、あれほど甘く歪んだ兄弟関係もないとおもう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/04(金) 08:07:45 ID:3Qdex2VM0<> >>164
ドラマのほう見てないけどすごくおもしろかった
>>108もそうだったけど、引き込まれたよ
原作知らないのが悔やまれる <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/04(金) 19:45:35 ID:XK4XrQlW0<> >>167
チェ椅子は単行本化したので是非読んでみてほしい <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 <><>2010/06/04(金) 23:42:21 ID:5EDmUUec0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  俳聖×鬼弟子ダヨ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  デモ蕎麦ニミエナクモナイヨ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヌルヌルジャナカッタドキドキシテキタ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 1/5<><>2010/06/04(金) 23:43:44 ID:5EDmUUec0<> 「ではごゆっくり」
 夕餉の膳を下げ寝床を整えた女が頭を下げ、戸が閉められる。
 「どうも」と返してそれを見送った部屋の客は、くたびれた初老の男と妙に威圧感のある若い男の二人連れ――陸奥を旅する『俳聖』松.尾芭.蕉とその弟子曽.良である。 
「安宿の割に食事はそこそこでしたね」
「うん美味しかったー!ちょっと量は物足りないけど……」
 おかずのいくつかを曽.良に奪われた芭.蕉は恨めしげに言い添えたが、弟子は意にも介さず窓の外へ目を向けている。
「見てください芭.蕉さん、今夜は満月ですよ」
「いつもながら鮮やかなスルースキル!」
 だがそんなのは日常茶飯事というものだ。
 追求は早々に諦めて、芭.蕉も弟子が開け放った障子戸の外を見上げた。
 風呂は既に済ませてある。少々早いが休んで旅の疲れを癒そうか、それとももうしばらく望月を楽しもうか。
 腹のくちた師弟に、珍しくまったりと穏やかな空気が訪れていた。
 そのとき。
「……あれ、おまえさまおよしになって」
 隣室から。
「いやですよ、こんな壁の薄そうな部屋で……あ、駄目ですったら」
 なにやら悩ましげな女性の声が。
「いいじゃねえか、こんな旅先の宿だからこそだろ」
「あっそんな……」
 あとは続くは声と物音は……推して知るべし。
「…………」
「随分安普請のようですね」
 表情ひとつ変えず壁の薄さを指摘する弟子に対し、師の方はホゲゲーン!と口をあけっぴろげて壁の方を見たまま固まってしまっている。
 やがて弟子のあからさまなため息で我に返ると、芭.蕉は赤い顔でオロオロ意味も無く左右を見回したり、両手を上げ下げした挙句、例のぐったりした人形を抱きしめてすわと立ち上がった。
「ね、寝よう!もう寝よう!いやー今日も良く歩いたよね!うん!松尾疲労困憊!曽良君も もう休みなさい、ね!」
 言うなり「おやすみっ!」と延べられた布団の一方に飛び込む。
 あまりにも分かりやすく動揺されて、もはやからかうのもツッコむのも面倒くさくなった冷静な弟子は、再びため息を零すと行灯の火を消した。 <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 2/5<><>2010/06/04(金) 23:48:14 ID:5EDmUUec0<> 「……そらくんもう寝た?」
 床に就いてから暫く経った頃、隣の布団から恐る恐る声がかけられた。
 人の房事を盗み聞きする趣味も無いのでさっさと寝てしまうつもりだったのに、芭.蕉がやたら居心地悪げにしているものだから、いつ蹴飛ばしてやろうかと思っているうちに眠りそびれたのだ。
「てか寝てたら返事しないじゃん……もう、松尾のドジッコ!」
 不愉快なセルフ突っ込みに曽.良は目を開ける。と言っても背を向ける格好で寝ていたので芭.蕉には気づかれない。
「……返事が無いってことは寝てるんだよね?」
 芭.蕉はさらに念を押してくる。
「寝てるんだよね?念のためにもっかい聞くけど寝てるよね?」
 身じろぐ気配と衣擦れの音。半ば予想していたとはいえ、曽.良は内心でため息をつくことを禁じえなかった。――隣から聞こえる息遣いが荒くなっていく。隣と言っても隣室ではない、隣の布団にいる師匠の、だ。
「起きて…たら…許さんぞこの、鬼畜弟子、めー……」
 そこまで言うなら鬼畜らしく振舞ってやるのが礼儀だろうか。曽.良は躊躇い無く上体を起こした。
「……何してるんですか芭.蕉さん」
「ギャヒン!起きてたよこの狸弟子!」
「あれだけ熱心に呼びかけられたら誰だって起きます。安眠妨害で訴えますよ……で、何してるんですか」
「うわあ改めて聞いてきたよ!もう勘付いてるくせにっていうか確信してあえて聞いてるよこの人!松尾ば傷心…」
 灯りは落としたが雨戸までは閉めていなかった。障子越しの望月の明かりで室内はぼんやりと蒼く浮き上がって見えた。
 芭.蕉は布団に包まったままなので、身体を起こした曽.良が自然見下す格好になる。弟子の冷ややかな視線に見下ろされながら師匠は進退窮まっていた。
 乱れた呼吸は隠しようも無く、ぬめりけを帯びた手を寝間着や宿の布団で拭くわけにもいかない。せめて手拭いを用意してから事に及ぶべきであったと悔やんでも後の祭り。
「……色気の無い道中でしたから分からなくもないですが……弟子の前でというのは如何なものかと思いますよ。それとも見られるかもしれないと言うスリルがたまらない
 わけですか」 <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 3/5<><>2010/06/04(金) 23:51:11 ID:5EDmUUec0<> 「人を特殊な嗜好みたいに言わないでよ!だから寝てるのって何度も確認したじゃないかチクショー!」
「壁薄いんですから静かにしてください」
「ボンゴレビアンコッ!!」
 横たわる芭.蕉の肩口に手刀がめりこんだ。
「まったく仕方が無いですね」
 掛布を片手でどける。立ち上がる距離でもないので四つん這いで隣の布団に向かうと、何事かと硬直する師に構わずそのまま布団を剥いだ。
「ふもがーーー!!」
 奇声を上げる事は予想済みなので、一瞬早く口に小汚い綿袋(マーフィー君ともいう)を詰め込んでおいた。
「静かにしろと言ったでしょう…」
「ふがっふぁふぃふんぼっ」
「何って、何をしてるのかは芭.蕉さんがご存知でしょう」
 隣人のあられもない声に年甲斐も無く煽られて、ナニに及んでいたのは芭.蕉自身だ。
 曽.良の視線の下で芭.蕉の寝間着の裾は開かれ、萎えかけた一物が本人の右手に収まっている。要するに、なんの言い逃れも出来ない状況だった。
 芭.蕉の羞恥心は一般人とは異なる基準で働いている節があるのだが、さすがにこれは普通に恥ずかしいらしく、赤面を通り越して青ざめながらモゴモゴと口を動かすばかりで声も無い。開閉の途中で綿袋(マーフィー君ともいう)が転げ落ちた。
「芭.蕉さん」
「…………は、はいっ」
「声を立てたらちょん切りますよ」
「ヒギャッ」
 曽.良は自分の布団の下から大鋏を掴み出すと芭.蕉の枕元に突き立てる。
 竦み上がった芭.蕉が両手で口を押さえて何度も頷くのを確認し、おもむろに曽.良は身を屈めた。
「――宿の布団を汚すわけにもいきませんから」
<> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 4/5<><>2010/06/04(金) 23:52:54 ID:5EDmUUec0<> 「そ、そらくん……」
 顔の真横にある鋏を気にしつつ、必死に声を潜めて呼びかける。我が身に何が起きているのか分からない……いや、起きている事は分かるがどうしてそうなっているのかが理解出来ない。
 片手で口元を押さえ、反対の腕で身体を支えて顔を上げる。
 目に入るのは大きく左右に割り広げられた寝間着の裾。だらしなく開いた自分の膝。
 その間に恐るべき弟子が身を屈め、卑猥な水音を立てている――いやこの際はっきり言ってしまおう、曽.良君が、あの恐ろしい曽.良君が、松尾.芭.蕉の一物を舐めしゃぶっている――うわあ自分で言ってて恐ろしい。ありえない。
 しかし戦慄し混乱する理性を他所に身体の方は正直だ。自分で慰めていた時とは比べようも無いほど自身は昂ぶり、張り詰めている。熱く滑らかな口腔の感触が堪らない。
 そしてなにより、月明かりに浮かぶ曽.良の端正な面立ちや動きに合わせて揺れる黒髪が芭.蕉を興奮させた。日頃虐待の限りを尽くすあの鉄面皮が、自分の下腹部に伏せられ奉仕に励んでいる……その視覚的衝撃は大きかった。
「ひっ、そらくん…!やばいってこれ…あ、あ…ふ…っ」
 黙っていろと言う代わりなのか、一度強く吸われて息が詰まる。腰から背中にかけてびりびりと強い快楽が突き上げ、両足の筋肉は痙攣しそうだ。
「あ…っあ、も、だめ……っ」
 出してしまう。
 顔を押しのけようと手を伸ばすが、曽.良が先端にかすかに歯を立てるほうが早かった。瞬間、抗いようの無い衝撃が脳天まで駆け抜けた。
「―――っ!!」
 仰け反り、きつく目を瞑って遂情する。
 その間も曽.良は容赦なく吸いながら擦り上げることを止めなかった。
「……ひっ…あ、あう……」
 長い絶頂に耐え切れず喉が震える段になって、仕上げとばかりに唇で扱きながらようやく解放された。
「はあっ」
 芭.蕉は大きく息をつきながら布団にひっくり返った。濡れた股間が空気に触れてすうすうするのが落ち着かない。
(ひー…最後の一滴まで搾り取られた……どこでこんなん覚えたの)
 よろよろと身体を起こすと、予想外に床上手だった弟子が口の中のものを飲み下すところだった。 <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 5<><>2010/06/04(金) 23:55:35 ID:5EDmUUec0<> 「ホババアーッ!ちょっなにしてんの!」
「うるさいですよ」
「ゴルゴンゾーラッ」
 手が汚れているからか、今度は蹴りが来た。
「その辺に吐き出すわけにも行かないでしょう……芭.蕉さん片手無事なんですから、荷物から手拭い取って下さい」
「はい……」
 左手でなんとか手拭いを探し出して、つい真っ先に自分の右手を拭こうとしたら顔が変形するほど蹴られた。驚くほどいつもどおりの鬼弟子だ。
 鬼弟子は汚れた口元と両手を拭き清めると、手拭いを畳み直して芭.蕉の右手もきれいに拭ってくれた。
「あ、ありがとう」
「いいえ」
 汚れた部分が内側になるようにもう一度畳み直し、芭.蕉の荷物に戻す。
「明日どこか人気の無いところで洗うんですよ」
「私が洗うんだ……」
「当たり前じゃないですか」
 言い捨てて曽.良は来た時と同じく膝をついたまま自分の布団に戻ろうとする。
「それじゃ…」
「そっ曽.良君!」
 このまま眠って、明日には無かったことにされる。
 そんな気がして思わず言葉を遮ってしまった。だが、なんと続けたら良いのか分からない。
 どうしてこんなことをしたの?慣れてるの?他の人にもするの?君は私とこんなことをして平気なの?――どれも声にならない。
 言いたいことが多すぎて口篭る芭.蕉に、仕方ないなと言いたげな表情で曽.良が代わりに口を開く。
「多少スッキリしましたか」
「うぇっ?」
「男二人。いくら芭.蕉さんが枯れかけの老いぼれだといっても、長い貧乏旅行ならこういう状況も有り得るだろうと思っていました。予想の範囲内だったというだけです」
「つまり私が欲求不満になったときは自分が……って?」
「もしくはちょんぎるか」
「五分の確率でちょんぎられてたの!?やめて!この歳で人生の再スタート切らせないで!」
「満足していただけたようで良かったです」
「またもスルー!?」
 ショックを受けつつ、ふと曽.良の言葉が気になった。
 その言い方だとまるで。
「足りないって言ったら……もっとしてくれるの…?」 <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 6<><>2010/06/04(金) 23:56:32 ID:5EDmUUec0<>  ギロリと睨まれて思わず喉から変な音が出た。
 しかし曽.良は殴る事も否定する事もしない。
 恐る恐る、ゆっくりと手を伸ばす。頬に届いても、手は払い除けられなかった。若い肌の感触が吸い付くようだ。
 正直に言えば、まだ足りない。
 一方的に施されるのではなく、自分も彼に触れたい。もっと。出来るものならば普段見たり触れたり出来ない部分まで。
 半ば無意識に手が動く。艶やかな黒髪を掠め、首筋を撫で下ろし、寝間着の襟に指をかけ――
「やっぱいかーーーーん!」
 どーんと両手を突っ張る。バランスを崩された曽.良が布団の上に尻餅をつく格好
になったが芭.蕉にはもはや目に入っていなかった。
(曽.良くんは私の弟子だ)
 それも、苦難が待つと分かっている長旅に唯一人同行してくれるような優しい
(ところもたまにはあるはずの)弟子だ。
 うっかり勢いで手をつけたとあっては松尾.芭.蕉、末代までの恥!
「ちょっと頭冷やしてくる!曽.良君先に休んでて!おやすみ!」
 一息で捲くし立てると、そのまま部屋を飛び出した。
 目を瞑ったまま走り出したので、敷居の所でしこたま足の小指をぶつけてしまった。あまりの
痛みに「これ絶対折れてる!」と思いつつ我慢して悲鳴も上げずに駆け続けた。
 気付けば屋外にいた。
 まろび出た先で待っていたのは、大きな満月。
 お世辞にも手入れの良いとは言いがたい庭で、芭.蕉は肩で息をしつつ丸い月を見上げた。
「これでよかったんだよねお月様……」
 酷い仕打ちをされる事が多くとも、自分は曽.良のことが好きで、大事なのだ。
「軽はずみな事は出来ない……したくないよ……」
 足の指は折れていなかった。


 一方部屋に一人残された弟子は、薄闇の中で舌打ちをひとつ。
「……ちっ、ヘタレジジイが……」 <> ギ/ャ/グ/マ/ンガ日/和 ばそ「ねな/いこだ/れだ」 終<><>2010/06/04(金) 23:57:28 ID:5EDmUUec0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 鬼畜受ッテムズカシイネ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
分割失敗スマソ… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 00:03:03 ID:CncMTicsO<> >>176
GGGGGGGGGJ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 00:45:35 ID:U9z3MyftO<> >>176
GJだけどsageて〜

最後弟子がばしょんぼりで可愛いw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 04:07:45 ID:GanmziokO<> >>176
うおおおお貴重なばそを有難う!
最後の台詞がなんとも言えないぐらい萌えた。 <> どうしたって遠い1/2<>sage<>2010/06/05(土) 10:28:39 ID:VAGA9cERO<> 白饅頭工房の錬金術師に萌えて書きました。
後輩←錬金術師です。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


血塗れの後輩を夢に視た。
軽薄な笑顔を覆い尽くす赤、朱。
自分よりも余程「錬金術師」だった男。
道化めいた振る舞いに隠された狂気。
多分気付いていたとしても止められなかった。

「おめーは馬鹿だお」

こちらに伸ばされた手を見ずに言う。
彼が死んでから何年が経ったろうか。 <> どうしたって遠い2/2<>sage<>2010/06/05(土) 10:29:59 ID:VAGA9cERO<>
こうして夢で彼に喚ばれるのは何度目になるだろうか。


「おめーは本当に大馬鹿野郎だお」

朝になったら全て忘れて、小さな同居人を小突いて、偶には散歩でもしてみよう。
夢は唯の夢で。彼はもう何処にも居なくて。
それなのに、喚ぶのなら。

「勝手に馬鹿やって、死んでんじゃねーお」

悲しくなかったとでも、思っているのだろうか。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )マイナースギル… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 13:17:14 ID:AFX3UkS+0<> >>167
硬派なドラマで萌えられるなら見てないのはもったいないよ
「チェ椅子」は9月にデブイデが出るから借りるなり何なり検討してみて <> 便利屋、掃除もいたします 1/2<>sage<>2010/06/05(土) 14:54:14 ID:lLLRMjUY0<> オリジナル 便利屋×便利屋
なんか突然萌えてしまった「填め殺し窓」とツナギの男達

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「俺いっつも思うんだけどさぁ」
相棒がビル入り口から続く窓ガラスにスクィーザーをなめらかに滑らせながら言い出した。
「填め殺しってコトバなんかいやらしくねぇ?」
「あぁ?」
「ハメ殺し」
「あぁ」
「なんつうの、ハメてあげたらよすぎて死んじゃいました、みたいな?」
「填め殺しの窓掃除しながらそんなこと考えんのお前だけじゃね」
「そぉ?」
硬質な窓ガラスの上を液状の泡が滑り落ち、黒いゴムの細長い板が動いて、透明な向こうが現れる。
スクィーザーを握る奴の手は、ガラスと同じように硬質な感じがする。
「どーよ、今晩」
「おっさんくさ」
俺は床に跪いて汚れを掻き取る。人間が歩く所、一体どうしてこれほど汚れがこびりつくのか。
サラリーマンの革靴には、全身のよどみが溜っていて、それが歩くたびに溢れているのかもしれない。
昔自分がそうだったように。
「いいけど」
返事を聞いた奴の声が少し低く、小さくなる。
「おっしゃ。仕事終わりのシャワー無しな」
「勘弁しろよ。これだけ汗かいて、気持ちわりぃ」
「汗かいたお前の匂いが好きなんだよ」
思い出したのか、舌なめずりをしているような声。 <> 便利屋、掃除もいたします 2/2<>sage<>2010/06/05(土) 14:56:52 ID:lLLRMjUY0<> 「変態」
「ハメて、よがらせて死ぬって言わせてやるから」
「遠慮します」
「好きなくせに」
跪いた格好のまま奴を見上げると、窓を拭き終わって、腰に下げたSSホルダーに折り畳んだスクィーザーを入れている所だった。
汚れた運動靴とツナギの脚が近づいて来、俺の前に立つ。
見上げると俺を見下ろす相棒の顔がニヤニヤと笑っている。
「好きなくせに」
「好きだけど?」
「全身舐めてやるから」
「シャワー無しなら却下」
「じゃあシャワーしてもいいよ」
「あー」
「舐めてやるしさぁ、舐めさせてもやるから、ハメられてよくなったら死ぬぅって言えよ」
何だって俺はこんな変態に惚れているのかとため息をつきながら、立ち上がった。
「俺はいつだってお前に殺されてるじゃねぇか」
「ん?」
「なんでもねぇよ。次進め、次。まだまだやることあるだろうが」
「へーい」
仕事をしているサラリーマン達やOLにとって、俺達は透明人間のようだ。
小声ではあるが、こんなセックスの最中のような話をしていても誰も聞きとがめない。
受付のきれいなお姉さん然り。書類の入った茶封筒を持ったサラリーマン然り。
透明人間には透明人間の仕事がある。
掃除用の物品が乗った台車を押す。俺達の仕事はまだまだ続く。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
だって萌えちゃったんだ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 21:29:26 ID:l90JgUog0<> >>183
自分も萌えたよ!すっげー好み。シリーズ化してほしいくらいだ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 22:07:49 ID:qEBwsZYSO<> 183
GJ!
何気なくエロエロしくて。
具体的に受けも攻めもビジュアル描写がないから、いろいろ想像の余地があっていい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 22:23:35 ID:AFX3UkS+0<> >>183
GJ! なんかいい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/05(土) 22:51:36 ID:te92+rcf0<> >>183
続編がよみたい
GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/06(日) 11:08:22 ID:1bu/QDXbO<> >>180 台詞的に某や/る夫スレだよね?
まさかこんな所で見つけるとは…いいぞもっとだ <> アイアン男 1/2<>sage<>2010/06/06(日) 22:14:26 ID:0iBuzDPc0<>

洋画、2公開間近アイアン男、1の社長とイソセソ、えろなし。
1のねたばれ注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 「動くと死ぬぞ」
 初めて出会ったとき、君は俺にそう言った。のんびりした声で。飲み食いをしながら。
君が俺の命の恩人であるなどとは、その後の説明で分かった事だ。あの瞬間俺は
激しく君を憎んだ。殴ってやりたいくらいだった。そもそも俺は医者が嫌いなんだ。
 君の説明は簡潔で分かり易かった。俺の体が負った深刻な損傷と、それより更に
深刻な俺達の状況について、君は淡々と語った。同じように無感動な調子で、君は
テロリストと交渉し、通訳をした。俺は君の指示に従った。他人の指示に従うなんて、
二十年ぶりの経験だった。ホールドアップをしながら、俺はジュニアハイスクールの
教師を思い出していた。

 熱プラズマ反応炉を作り終えたとき、君は「普通の人生なら5回分は心臓を動かせる」
と言った。正確な計算だった。そして控え目ではあるが言葉には紛れもない賞賛が
籠められていた。どこかむず痒いような気持ちがしたが、その感情が何か当時の
俺には分からなかった。今は少し分かる。俺は君に感心されて嬉しかったんだ。
人生で何億回も賞賛されるうちに麻痺していたが、そういえば人間は褒められたら
嬉しくなる動物だったな。

 君はとびきり優秀な助手という訳ではなかったが、しかし恐ろしいほど忍耐強かった。
頭の中のプランに手が追いつかず、ヒステリーを起こした俺が汚い言葉で罵っても、
君は眉一つ動かさず俺を諌めた。その眼鏡の奥の変わらない温度の目には、
人を落ち着かせる作用があった。あの地獄のように暑い洞窟の中で、君はいつもきちんと
ネクタイを締め、俺達はジョークを言い合った。まるで一等地のオフィスにいるかのように。
<> アイアン男 2/2<>sage<>2010/06/06(日) 22:15:22 ID:0iBuzDPc0<>
 しかしイソセソ。君は俺を騙していた。君は嘘をついていた。それも酷い嘘だ。
君は出会った時、俺の中に死ぬ理由を見つけたんだ。
 計画通りにやれと俺は叫んだ。しかし君は出て行った。裏のドアから庭に出て行く
ような気軽な足取りで。この地上に俺の命令を聞かない人間がいるという事実を
久し振りに思い出したよイソセソ。どれほど俺が傷付いたか、君に分かるだろうか。
どれほど裏切られた、惨めな気持ちになったことか。君は酷いやつだ。
 だが俺の計画よりは君の計画の方が完璧だった。それは認めよう。君は俺の命を
救い、そして君の目的もきちんと果たした。最後に見た君の笑顔はやはり穏やかだった。


 イソセソ。俺は今空を飛んでいる。こう見えてなかなか忙しい。
そして信じられないことに楽しい。
 速く飛ぶと、或いは高く飛ぶと、君の居る場所が見えるのじゃないかという気が時々する。
いや姿は無理にしても、声くらいは。
 会いたかった家族には会えたか?揃って出てきて俺に紹介してはどうだ?そうしたら俺は
君がどんなに酷いやつかを君の家族に告げ口するのに。・・・いや、嘘だ。そんな事しない。

 空は最高だ。時々戦闘機に撃ち落されたりもするが大した事はない。高くて気分がいい。

 イソセソ。どうだ?出てきて俺と話をしないか?



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

<> 何てこと!(意訳)1/4<>sage<>2010/06/07(月) 01:16:57 ID:d7Y7x5P50<> 某有名なストーリーの、マイナーキャラ二人で。
映画化もされてて今さらかもしれないんですが、
生で見る場合のネタバレにちかい設定が、ちょこっとあります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



背後からぬっと、ミソスビールの瓶が、俺の頭の上に降りてきた。
こういうことをするのが誰かなんて、わかりきってる。

「……あー、ありがとさん」

ため息をつく一瞬前、のことだった。俺はちょっと息を整えて、何とかさらりと答えるふりをした。
ホテル先の船着き場の、その桟橋の上は静かだった。さあさあと波の音が耳に、頭に心地いい。
夏真っ盛りの夜空の色は、それこそ真下の地中海の海の色とそう変わりはなかった。どこか光を
秘めているかいないか、真っ白にこぼれるような月がそこにあるかないか、の違いだけ。
風も当然優しく胸を高鳴らせて、そして俺はそこに至ってまたため息をついた。

「ええい、また振られちまったい!」

くそーっ、とビール片手にひっくり返ると、エディはエディでビールに口を付けながら傍らに
座り込んで、にやにやしながらこちらを見ていた。月が明るいとそこまで見えてしまう。
笑うな、っつってもなー。笑うだろうよ、こいつは。

「ばーか。客に手え出すな、って何回目だ、お前。ペッパー」
「いいじゃんかよ、あっちだって一夏のバカンスって、こういうの期待して来てるんだし」
「じゃあ割り切れよ。振られて毎回凹むの、ヤメロ、うぜえ」
「……俺ぁ、エディと違って繊細なの!毎回それなりに本気の愛なの!」

へいへい、ってエディはくすくす笑っていなしやがる。マジムカつくな、こいつ。
付き合い長いぶん、そういうのはバレてるってか、ちぇ。 <> 何てこと!2/4<>sage<>2010/06/07(月) 01:18:21 ID:d7Y7x5P50<> 追い打ち。くそ、うるっせえな。
傍らに裸足の足で蹴りを入れても、桟橋の柱にもたれるようにしながら、エディはそれも難なく
いなした。俺より圧倒的に背が高いから、手足も無駄に長くてさ。リーチの差は歴然としてる。
本当に、着てるアロハシャツの裾をばさりとも言わせないんだ。まったくさ。
振られた親友を慰めに来たんなら、もっと親身になれってんだ。同情の一個も見せろよ、ったく。
ビールを一気にあけた。
あー、やっぱり夏のコレは最高だね、うん。
本当は俺たちは二人とも、叶わぬ恋をしている。

「あ、冷蔵庫に、お前二本買って戻しとけよ」
「え?……ってナニ、これ、タヴェルナからかっぱらってきたの!?」
「そ。ドナにバレたら最悪だから、後はペッパーよろしく」
「ちょっと待て!!バカかエディ!!」

俺たちのご主人様、ホテルも兼ねてるサマーナイトシティタヴェルナのオーナー様を怒らせたら、
どんな目に遭うか!!
美人なぶんだけ怖いんだ、かんしゃく持ちだし口は悪いし!!
確かに俺ら、あんまり優秀な従業員ってわけじゃないのは自覚してるから、怒鳴られるのもいつもの
ことっちゃあことなんだけど、それでも避けたい、出来るなら逃げたい!!
俺は思わず飛び起きた。だけどエディはちょっとタレ目気味の顔でのほほんと笑って、どこ吹く風
みたいな様子だ。
二十歳そこそこ、なのはお互い様なんだけど、何でだろう。
何でエディは、ドナなんだろう。

「や、俺は逃げるし」
「逃げるなよ!俺を一人にするな!」
「知らねえよ」

そんで、何で俺は、お前なんだろう。
エディはげらげら笑った。

「ペッパーが振られた分だけビールが無くなる、って、そろそろドナも気づいてっぞ」 <> 何てこと!3/4<>sage<>2010/06/07(月) 01:19:17 ID:d7Y7x5P50<> 俺をからかうように、そして自分も一気に瓶を空けた。
お前の相手は二十歳近く年上で、どうせ振られるのにって俺はずっと思ってた。なのにそんな風に、
振られた俺を慰めるみたいに余裕なのは何でだよ。
だけど俺は、相手がお前で、親友のお前で、だから振られるのなんて目に見えてて、何も言えねえ。
言いたくもない。
年上で上司で、いい年の娘まで(またこれが、ドナそっくりの強敵)いるドナに、遊ばれてる
んだって、エディ。
だからそんな風にさ、幸せそうな顔するなよ。
俺たちのは二人とも、叶わない恋なんだよ。

「……じゃ、お前が振られたときには、島中のビール買い占めてやるよ、俺が」

何でだか、むかっ腹が立っていた。
お前だけ満ち足りてるのが、そんな風に見えるのが、本当に嫌だった。
俺だけ逃げようとしてるのに、我慢しようとしてるのに、なのにって。だからわざと、傷つけるみたいに
ひどく核心を、俺は突いた。
ざんざん、波が足もとの橋を打っていた。空には月、流れる雲の影、さっきまで誰か達が歌っていた
歌声の名残。

「どーせさ。恋なんていつか終わるわけだし」
「ん?」
「どんなに繋がってるって思ってても終わるし。……本気なわけ、ねえよな」

最後は、主語は、ぼかした。
エディは多分、俺には隠してるつもりだ。何も言わない。
そんでドナも俺には、それにソフィ(あの強敵の、娘)にも何も言わないのは多分、隠してるってこと、
なんだろう。
それに気づいたとき俺は、本当に叫び出しそうだった。
叶わないと思ってるのは俺だけ、お前が遊ばれてると思ってるのは、俺だけかもしれない。
きっと、多分、もしかして。このビールだってお前、お前と彼女の分なんじゃないのかよ。

「……お前、そんな金ねえだろうが」 <> 何てこと!4/4<>sage<>2010/06/07(月) 01:20:41 ID:d7Y7x5P50<> もし彼女が本気なら、お前の恋が終わらなかったら、俺は。
そんなぐるぐるが、俺の頭を締め付けた。
終わってくれ。終わってくれよ。
頼むから、いつかそんなの、終わるってわかってくれよ。
思わずがりがり髪をひっかく俺に、そのときエディは静かに言って、もたれていた柱にそのままおでこを
くっつけて、短い髪も同じようにさせて、そして黙った。
あ。

「……エディ?」

こいつ。
わかってる。

「はは……」

俺の乾いた笑い声は、自分の耳にすら変に聞こえた。
わかってる。エディはわかってる。
叶わない恋をしてるんだって、いつか終わりがくるんだって、わかってる。

「……じゃあ、その場合はペッパースペシャルで」
「イヤだよ、お前のカクテル、えげつない味する」
「考えとくよ、旨いのを」

俺は傷つけようとして、そしてお前はちゃんと傷ついた。ああ、イヤだ。こんなの、イヤだ。
おかしいな、振られて慰められてるはずなのは、最初は俺の方だったのにな。
真っ白い月を見上げながら、俺は思った。はっきり気づいて思った。
お前が傷つくのは、俺がつらい。
俺のこれは叶わなくても。お前のほうは、幸せでいてくれ。
終わりなんか、来なくていい。いいんだ。 <> 何てこと!5/4<>sage<>2010/06/07(月) 01:21:15 ID:d7Y7x5P50<> 「期待は、しない」
「んだと!」
「それよか、明日からは立ち直れよ」

終わらなければ、俺のこれは、本当に叶わないんだけれど。それでも。
親友でいいよ。悪友で。何でもいいや、なんだって。
本当に、何で俺はお前なんだろう。何でお前が好きなのか、俺にもよくわからない。
でも恋なんて理由つけて、するもんじゃないんだよなあ。俺もお前も、お互いにさ。
特に本気の、場合ってのは。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
はみ出しすみません。 <> つけたし<>sage<>2010/06/07(月) 01:23:45 ID:d7Y7x5P50<> 1と2の間に
「お前の本気なんて、そうそう見たことねぇけど」
というセリフが抜けていました。 <> 光と影に祝福を1/3<>sage<>2010/06/07(月) 19:48:20 ID:UR7OyyB4O<> テイルズオブ明星、百合触れ
某フェスでコンビ部門1位と聞いてたぎりますた


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

小柄などとは程遠い長身を覆うのは繊細な刺繍がいくつも施された純白のヴェール。
花嫁の証であるそれを纏ったフレンは未だ自分の置かれた状況が夢の中の出来事ではないのかとしつこく疑っていた。
それもそのはず。
帝国随一の剣の腕と信念を貫き通す強き心、そしてそれらを決して驕らぬ謙虚さを持つフレンはどこからどう引っくり返してみても男でしかない。
その彼が幼なじみの男のもとへ嫁ぐと言うのだから真っ当な神経の持ち主であれば腰を抜かして驚くか、あるいは侮蔑の眼差しの一つや二つはくれそうなものだがこの街は様子が違った。

意を決して打ち明けた下町のリーダー格であるハンクス老人は目を細め、それからおめでとうと祝福の言葉を贈ってくれた。
そこからあっという間に話が広まり、噂を耳に入れた若き皇帝が帝都全体を挙げて祝おうと提案した時にはフレンの方が腰を抜かしてしまった。
無様に床に這い蹲らずに済んだのはひとえに彼の結婚相手である幼なじみの青年が極度の貴族嫌いを発揮してくれたおかげだ。
「大きなお節介アリガトウゴザイマス、皇帝陛下。あんたのお手を煩わせるまでもねえよ」
がくがくと震え今にも崩れ落ちそうになる体を利き腕でない右手で引き上げてくれた彼のなんと頼もしいことか。
皇帝に対する言葉遣いは最悪であったが、それは惚れ直すには十分すぎる一件となった。 <> 光と影に祝福を2/3<>sage<>2010/06/07(月) 19:49:09 ID:UR7OyyB4O<>
ヨーデル皇帝陛下の申し出を断った二人は生まれ育った下町の片隅にひっそりと建つ教会で結ばれることを選んだ。
堅実で慎ましく、しかし街の人々の細やかな手入れで今もなお美しくあり続けるそこは同性という壁を乗り越えて愛を育んでいくフレンたちに相応しい場所のように思えた。
ぼろだの潰れそうだのと散々悪態をついていた彼もフレンの言葉を聞いて小さな街の教会を気に入ったようだった。

その後、花嫁衣装つまりドレスを着るよう勧める街の女性らを説得し、なんとか手作りのヴェールをつけることで妥協してもらうなど諸々の問題を片付けながら結婚式の準備は進んでいった。
そのあいだフレンはずっと夢を見ているような心地良く、曖昧な感情を胸に抱いていた。
規律と法を重んじる立場である自らが許されない恋を実らせ、人々に祝福されることの違和感。
しかしそれを補って余りある抱えきれないほどの幸福がフレンの夢見心地を誘う。
これほどに甘くしあわせな出来事が夢でなく現実だと言うのなら。
そこまで考えてフレンは故意に巡らせていた思考を断ち切った。
今はしあわせな現実だけを見ていよう。 <> 光と影に祝福を3/3<>sage<>2010/06/07(月) 19:51:58 ID:UR7OyyB4O<> 長く、時間としてはほんの数分の回想を終えたフレンは俯いていた視界に映り込んだ己ではない黒い革靴の持ち主に足元からゆっくりと視線を辿らせていく。
白いヴェール越しに闇色の瞳と目が合い、まるで初心な少女にでもなってしまったかのように頬に熱が集まっていくのを感じる。
ずるい。
フレンは心の中で叫ぶ。
艶やかな黒髪を首の後ろで一つに纏め、死んでも着ないと言い張った白色ではなくスマートな印象を与える黒のタキシードに身を包んだ彼は今までに見たことがないくらいにかっこいい。
物心ついた時にはもう一緒だったからさほど意識したことはなかったが、こうして改めて見ると自分には勿体ないくらいの美丈夫である。
実感したからと言って今さら誰かに譲る気はないのだが。

彼はフレンがいいと言ったのだ。
フレンでなければダメだ、とも。
だったらそれに応えよう。
世界でたった一人の彼のフレンであるために、持てるすべてを尽くして彼とともに歩んでいこう。

神に、祝福に訪れた人々に、目の前の彼に。
そして自らに誓いを立てる。
甘く視界を彩っていたヴェールが愛しき指によって開かれ、フレンの青い瞳に最愛の人の微笑みが染み渡っていく。
「愛してる、フレン」
耳元に寄せられた唇から紡がれた音がまるで初めからそこにあったかのようにフレンの胸の奥底にすとんと落ちて馴染んだ。
「…僕も、」
蕩けきった笑みを浮かべ、愛の告白に応えようとしていたフレンは己の身に降りかかった災難を知りぎょっと目を見開く。
あれほど誓いのキスは頬にしろと言ったにも関わらず、今彼が塞がれているのは唇である。
それはフレンに負けず劣らず意志の固い彼がその正義を貫いた瞬間だった。
公衆の面前、それも神聖な結婚式の最中に新郎を引っ叩くなどできるはずもなく、フレンは唇を抉じ開け強引に押し入ろうとする舌を辛うじて、しかしじわじわと守りを崩されていく圧倒的に不利な状況の中で天使とさえ称された愛らしい面立ちに似合わぬ暴言を吐いた。

なにを考えているんだ、バカユーリ!!


もちろん心の中で、だ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
スペース感謝です。 <> それからとこれから1/9<>sage<>2010/06/07(月) 22:58:30 ID:/XdEaQp90<> お借りします。
某妹の為にお兄ちゃん全部滅ぼしちゃうアクションゲーの
少年期に身売りしてたときのお話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
変わったものがひとつ。
ヨナの笑顔を見る回数。
変わらないものがひとつ。
真っ白な天井を見つめる回数。

男が口に加えている紙の筒は遥か昔の時代の嗜好品だという。
パイプと同じだと男は言うが、ニーアにとって見た目が違う以外のことは分からなかった。
男の吐き出す煙を半分だけ開いたドアの隙間からニーアは目で追った。
その様子に気が付いた男は口の端を片方だけ持ち上げる。
ニーアが一番嫌いな男の表情だった。
男は何も言わず、ただこちらへ来いと半月状に細めた目の視線で伝えてくる。
今すぐ後ろを向いて、ここから走って逃げたかった。
しかし、ニーアが今出来る事は首を横にして男から顔を背け、引きずるように足
を動かして男の前に立つことだけだった。
今さえ我慢をすればヨナが報われる。また笑顔が見れる。
目の前の憎みに憎む男の前にニーアは立っていられる理由はそれだけだった。 <> それからとこれから2/9<>sage<>2010/06/07(月) 22:59:52 ID:/XdEaQp90<> 男の腕が伸び、強い力でニーアの手首を掴んだ。
乱雑に手袋を腕から引き抜かれそのまま男の胸の中に引き寄せられる。
ニーアは表情を変えずただ黙ってあらわになった自分の手を見つめていた。
海岸の町に向かう際に、南の平原で狩った鹿の血が爪の間にこびりついていた。
(さっさとすればいいのに)
心の中で毒づくのを見透かしているかのように男の動きは緩慢だった。
厚い皮で覆われた指はがさついていて、生暖かい。
皮膚に透けて見える血管を爪でひっかかれ思わず身がすくんだ。
「急所が好きなのか?」
「・・・ちが・・・」
くぐもった笑い声を男は上げ、口に加えていた紙のパイプを手に取り、
ニーアの手首に近づける。
「やめて!腕だけはどうか・・・」
途端、無表情を崩し怯えた様子を見せると男は満足げに笑い、
紙のパイプを硝子で出来た平皿に押し付けた。
「俺も刀を使う人間の一人だ。そこまで悪趣味じゃない」
豆だらけの手の平をゆっくりと撫でられ鳥肌が立つ。
品定めをするように指の一本一本を摘まれ、爪の先から水掻きの間まで、何度も男の指が往来する。
次に指先を口に含まれ、爪の間を舌が這いわざとらしく音を立ながら指を吸われ
た。
「血の味がするな」 <> それからとこれから3/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:01:18 ID:/XdEaQp90<> 見せ付けるように目の前で指先を舌で嬲られる。仄暗い欲に塗れた男の目
を見て体の内側からじわりと熱を感じて、吐き気がした。唇を噛み締め漏れそうになる声
をニーアは堪える。行為を繰り返す毎に男の動きに合わせて己の体が反応を示す
ようになっていることを認めたくなかった。
(慣れるもんか慣れるもんか)
「なんだ?」
「・・・」
「相変わらず可愛い気のないガキだ」
指先を噛まれるのと同時に足の間に男の膝が入りこみ、付け根を強く押された。
「・・・うぁ・・・」
男はニーアが声を上げる場所を良く知っていた。幾度も弱い場所に膝を押し込ま
れ、萎えていた性器が頭を擡げ下着を湿らせていくのを感じる
ぶるりと体が振え、声を出すまいと開きそうになるのを再度、必死に唇を噛み締めて堪
えた。
「鳴けよ。盛り上がらないだろ?」
嘲笑う男の声が耳障りだった。いやいやをするようにニーア首を振ると男は舌打
ちをし、ニーアの顎を引き寄せ唇を押し付けた。指で無理矢理歯をこじ開け口腔
に入り込んだ男の舌が暴れる。逃げようとする舌を絡めとられて何度も吸われ
た。先程まで男が口にしていた紙パイプの味に舌が痺れた。
流し込まれる唾液と自分のものが混ざり、飲みきれない分が口の端から流れ落ちる。 <> それからとこれから4/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:02:03 ID:/XdEaQp90<> まるで口移しで毒を流し込まれているような最悪の気分だった。
男の手が下に降り、服をたくし上げられる。
薄い筋肉の張った胸をさすられ、胸の飾りを強く摘まれた。
「ひっ・・・」
同時に脇腹を捕まれ腰が浮く。
執拗に爪で引っかれた胸元は固く勃ち上がり、赤く充血していた。
口づけが止み、男の顔が離れるとニーアは唾液がこぼれ落ちることも気にせず、
口を開けて荒い呼吸続けた。
「鏡でみせてやろうか?あばずれも顔負けだ」
からかう男の言葉に羞恥で顔が赤くなる。
これで終わるはずがないことはニーアは良く知っている。これからが最も嫌なこ
とも良く知っていた。
男は腰のベルトを緩め、下穿から固く勃起した性器を取り出した。
赤黒く充血したそれをニーアの白い頬に擦りつけ、先走りを塗り付けた。
「あ・・・」
「口だけ開けていろ。」
髪を掴まれ口の中に男の性器が無理矢理押し込まれる。
「んぐっ・・・んう・・・」
喉の奥に亀頭が当たり、えずきそうになるのを堪えた。
苦しげなニーアの様子に構うことなく男は乱暴に腰を振り、抜き出しを繰り返す。
「喜べよ。女よりもよっぽど具合がいい」
荒い息を吐く男の声に体が震える。
頭を撫でられて体の中の熱がさらに上がるのを感じた。 <> それからとこれから5/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:03:19 ID:/XdEaQp90<> (いやだ。いやだ。苦しい。辛い。)
生理的な涙が留めなく流れた。
男の腰の動きが荒くなり口の中の性器の質量がさらに増し、固くなってていくのを感じた
。顎が痛くて仕方がなかった。
びくりと男の性器が跳ね、乱暴に後頭部を手で捕まれて頭を男の腰に押し付けら
れる。
「んん・・・んぐっ・・・」
「こぼすなよ」
吐き出された男の性液が喉の奥に流し込まれる。息をつく間もなく注がれる
それを喉を鳴らしながらニーアは飲み込んだ。口から性器を引き抜かれ溜まってい
た唾液が糸を引いてシーツに零れ落ちた。
ニーアの唇の端についた唾液と性液を指先で掬い、その手でニーあの乱れた銀髪を梳いた

嫌悪にニーアが顔を歪めるのを男は愉快そうに笑う。
「待ちくたびれたか?ちゃんとお前の大好きな尻も可愛がってやる」
煽る男の声を聞き流しニーアは唇を噛んで堪える。目を閉じると男の平手が飛ぶ
のを知っていた。腰を押さえ付けられ下穿きを下着ごと引き抜かれる。既に勃ち上がった
性器が外気に触れて震え、先走りを零す様が見えて目を逸らした。
男はニーアの両膝を掴み大きく足を広げさせる。
「・・・やめて・・・」
すべてをさらけ出す格好にされてニーア悲鳴を上げる。
「嘘つきめ」
「っ・・・」 <> それからとこれから6/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:04:43 ID:/XdEaQp90<> 勃ち上がって充血した性器を乱暴に扱かれニーアは消えいりそうな声でやめてくれ、と無駄だと分かっていながらも懇願する。
当然のようにその声は無視され男の指が窄まった蕾を撫でた。
「ひっ・・・」
片方の手で襞の一本一本を撫であげ、もう片方の手でニーアの先走りを掬い取り塗りこんでいく。
そして慣らしきらないまま両方の指で穴をこじ開けられた。
「・・・ひっ・・・」
「あいかわらずうまそうな肉の色だ」
さらに開かれて尻穴がびくつくのを感じた。幾度も繰り返された行為に体が馴
染んでしまっていた。心は否定しようとも体が反応して欲している。
二本の指が捩込まれ円を描くように掻き混ぜられると空気が隙間から入り込み指の動きに合わせて水音を慣らした。
「聞こえてるだろ?そんなに俺の指がうまいか?」
「ちが、ちがう・・・ひぁっ」
首を振って否定をしようとすると、尻たぶを強く叩かれた。
「認めろよ」
「やだ・・・いやだぁ・・・あああぁ」
「お前は立派な淫乱だよ」
浅い場所のしこりを触れられて甲高い声を上がる。何度も同じ場所をひっかかれ
、男の動きにあわせて内側の肉がぎゅうぎゅうと指を締め付けていた。
不意に腰を持ち上げられ、体を俯せにされた。そして再び腰を持ち上げられ四つん這いの格好をさせられる。
<> それからとこれから7/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:09:18 ID:/XdEaQp90<> 「自分で拡げろ」
逆らえない悔しさにニーアは唇を噛み締める。ぶつりと音がして口の中に血の味が広がった。
一度だけ体を震わせ、ニーアは男の前に赤く腫れた蕾をさらけ出し、自らの手で広げてみせた。
全て見られていた。先走りを垂らす性器もびくつく尻穴も中の肉も震える膝も何もかも。
亀頭が押し付けられ蕾が割り裂かれる。そして加減なく一息に男の性器が捩込ま
れた。
「・・・ああぁ・・・痛いっ・・いた・・・い」
「この間の道具で緩んじまったかとおもったが、心配なかったか」
先日、異物を入れられ排泄紛いの行為を強いられた記憶が思い出して吐きそうになる。
むしろ全てを吐き出して男の顔にぶちまけてやりたかった。 <> それからとこれから8/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:10:41 ID:/XdEaQp90<> 乱暴に何度も突き上げられ呼吸もままならない。
意識がぼんやりと遠退きかける度に尻を強く叩かれて引き戻された。
「っ・・・んあっ・・・あ・・・ひっ」
やがて痛みと快楽が混ざり合い、留めなくあがる声を両手で塞いで堪えようとし
たがすぐに男の手によって剥がされ悲鳴のような声ばかりがあがる。
一際強く腰を打ち付けられると、どろりとした熱い液体が腸壁を叩きつけるのを感じた。
同時にニーアの性器からも涙を流すように静かに精液が飛び散った。

互いの息が収まる頃、男の性器がゆっくりと引き抜かれる。
すぐさまニーアは起き上がり、体をよろめかせながらベッドを降りた。
(帰らなきゃ・・・) <> それからとこれから9/9<>sage<>2010/06/07(月) 23:11:22 ID:/XdEaQp90<> 投げ出された下着を手に取り、男の方を振り向いて手を差し出す。
鈍い水音を立てて男の吐き出した精液がニーアの太股を流れて汚す。
男は鼻で笑い、ベッドの横に置かれた棚から紙幣を取り出しニーアに差し出した。
「あばずれには愛の語らいは不要か」
ニーアは表情を歪め差し出された金を引ったくると紙幣の枚数を指おり数えた。
その様子を見て男は嘲笑う。
「娼婦め」
ニーアには男の声はもう聞こえなかった。
これからやることがたくさんあるのだから。

帰りに村のおばさんに頼まれた球根を買って、酒場でおいしい魚料理を食べよう。
ヨナはサーディンのパスタが大好きだからお土産に油漬けを買っていこう、
それから海岸で白い貝がらを拾って、帰ったらブレスレットを作ってポポルさん達にプレゼン
トしよう。それからそれから・・・

またひとつ。
ひとつ。
増えては消える。
生まれては壊れる。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
拙い文章、失礼いたしました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/08(火) 01:42:22 ID:Ff60/XvGO<> >>190
つい最近DVD見たばっかりだ。
泣いた。
ありがとう。 <> 便利屋、なんでもいたします 1/3<>sage<>2010/06/08(火) 21:21:15 ID:hu9kItRR0<> 便利屋のお話の続き。これでおしまいです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

仕事の〆は、一週間留守にするナカムラのおばあちゃんのかわりに外猫に餌をやることだった。
夕方の5時。軒下に設置してあるフード付きの猫トイレを掃除し、皿も外水道で洗ってしまうと今日は終いだ。
トイレの砂を蓋付きのゴミ箱に捨て、手を洗いながら、猫をからかっている相棒に声をかける。
「明日の予定は」
「ああ、俺、告別式の参列代行だから、朝イチで髪切りに行かねぇとだわ」
「じゃあ朝の餌やりは俺が来る」
「頼む」
軽のワゴンに戻りながらツナギの上半身を脱いで、腰に袖を縛り付ける。
上がランニングだけになると、身体が軽くなってほっとする。
「ヨシさんの所で切るんなら、飯食って風呂入ってもまだ間に合う時間じゃねぇ? 行ってくれば?」
「やだね。今日はハメ殺しの日なんだからね」
「それは失礼しました」
奴は一回が長い。
挿入までが長くて、挿入してからも長い。
だからそうそう毎日はしないし、やる時はちゃんと時間がある日だ。
「お楽しみは時間をかけないとお楽しみじゃない」
そう言って、本当にセックスを楽しむ。
今日はもう仕事は無いから、すっかりその気になっているようだ。
運転席に座ってこちらを見た相棒は、俺の肩に手を延ばしてポンポンと叩いてきた。
「筋肉付いてきたねえ。ほんとお前って俺の好み」
奴の下について便利屋になって2年。
サラリーマンの頃には付いたことのない部分の筋肉が鍛えられて、確かに身体が違ってきてるかも。 <> 便利屋、なんでもいたします 2/3<>sage<>2010/06/08(火) 21:26:07 ID:hu9kItRR0<> ファミレスで軽く飯を食い、相棒は事務所兼自宅の平屋の小さな貸家に、俺は徒歩3分のアパートに戻ってゆっくり風呂に入り、事前の身支度をすませた。
ほら、入れられる方はいろいろとあるから。
そんなこんなで、今、俺は、奴のベッドで奴にハメられている。
日中の宣言通り、全身を舐められた。
手の指も足の指も、末端に至るまで文字通り口と舌で愛撫され、同じように俺も舐めさせられた。
でろんでろんとか、どろんどろんとか、そんな擬態語がぴったり合うような状態で、とにかく俺は喘いでいる。
「あー……」
そろそろお互い、ラストスパートをかけるというところで、相棒が耳を噛んできた。
「…言うこと、あるだろ?」
「んん」
「まだ聞いて、ないぞ」
せり上がって来る。
声にならない声が出て、口を閉じるとくぅっと喉が鳴る。
「ほら」
ああ、もうダメだ、
「こ…」
「ほら」
達する瞬間。
「っ、殺されるぅー…」
引き攣ったように口に出す。
奴も俺の上で身体をこわばらせ、息を止め、吠えた。
荒い息をしながら俺の上にどさりと被さってきて、
「このやろう」
相棒が笑い出す。奴が笑う度、俺の身体も揺れる。
俺も笑いがこみ上げて、肩口の上に置かれた奴の頭に指を差し込んでくくくと笑った。
男の頭皮が汗をかいている。髪の毛も濡れて、ずいぶん運動したもんだ。
「殺されるじゃねぇだろ、死ぬぅだろー?」
「同じだろ」 <> 便利屋、なんでもいたします 3/3<>sage<>2010/06/08(火) 21:30:06 ID:hu9kItRR0<> 「ニュアンスが違うだろー。情緒ってもんがあるだろ」
「『肛門性交はお好きですか』の人に比べたら」
「そりゃあお前、せいてきしこうを先に確認しとかないと口説けねぇじゃん」
せいてきしこう、が「性的嗜好」に変換されるまで一拍を要した。
性的嗜好ね、うん。
鎖骨のあたりに鼻を擦り付けて、相棒が俺の匂いを嗅ぐ。
「んー、お前っていい匂い」
「そろそろ股関節が痛ぇ。どいてくれ」
「ああ悪ぃ。おいしょ」
おっさんくさいかけ声をかけて、相棒が俺の隣に転がる。
俺たちの関係は、バーで奴に声をかけられて始まったのだが、第一声が「肛門性交はお好きですか」だった。
あんまりだ。
あんまりだが、俺もその時仕事のことでヤケになっていて、そしていろいろと溜っていたので、それより何より、ものすごく好みの顔だったので、「かなり好きです」と答えたのだった。
結局似合いの二人と言うことだ。
はー、はー、と言う呼吸が少しずつゆっくりになって、平常に戻ると、俺を口できれいにしてくれた。
性的な意味の無い舌の動きは穏やかで、先端に時折ちゅと口づけされる。愛されてるなーと思う。
シャワーを浴びて、Tシャツと下着で、セミダブルのベッドに二人で入る。
シングルよりは広いという程度のベッドに、大の男が二人は狭い。
けれどその狭さが、身体を繋いだ後には心地いい。
とろとろと眠りに落ちながら、明日の予定を頭で組み立てる。奴に髭もちゃんと剃るように言わないと。
猫の餌やりの後は電話番をして、午後はヤマザワさん宅で草刈りだったはず。クマザサが生えてたから、スチール刃の草刈り機の方だな。
刃の予備があるか確認して、無ければホームセンターに寄らないと…。刈った草を入れるゴミ袋も…。
便利屋は、便利に使っていただいてこその便利屋だ。
最近ようやくそれがわかってきた。汚くてきっつい仕事も山ほどあるけども。
誠心誠意、お仕事いたします。
俺達二人、あなたのための便利屋です。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書いてて楽しかったヽ(´∀`)ノ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/08(火) 22:17:46 ID:vBJ1RLtq0<> >>211
GJ!
やっぱなんかいいー。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/09(水) 00:35:04 ID:rgn+fDjS0<> >>213
こっちも読んでて楽しかった (*´ー`)
GJ! <> 鏡の中の紙幣は重いのか1/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:32:19 ID:g+fqkvXI0<> 再度お借りします。
某妹の為にお兄ちゃん全部滅ぼしちゃうアクションゲーの
少年主人公のお道具プレイです。
ッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
今日は男の機嫌がすこぶる悪かった。
このような日にはろくな目に合わないことをニーアは身を持って知っていた。
顔だけは殴られないようにしなければ、また村の人に疑われてしまう。
なによりもヨナに余計な心配をかけさせるのが一番嫌だった。
(この間はどう言ってごまかしたんだっけ・・・)
頭を枕に押さえ付けられながら、冷静にニーアは考える。
解けた髪が口の中に入って鬱陶しい。
下ろしているのが好きだと言い、ここに来ると男はすぐにニーアの髪を解いてしまう。
事が済んだ後に部屋に飾られた大きな鏡で、疲れ切った顔を見ながら髪を結い直すのがニーアの習慣になっていた。
両腕を背中に回され、布できつく縛られる。肩が外れてしまいそうだったが文句を言ったところでどうにもならない。
むしろ余計に酷くされることは分かっていた。
痛みに呻いて体を揺らすと男が舌なめずりをする音が背中越しに聞こえた。
衣服は剥ぎ取られており、男から見ればこちらから裸の尻を振って差し
出しているようなものだった。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか2/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:33:32 ID:g+fqkvXI0<> 「っう・・・」
後ろから項に思い切り噛みつかれる。
角度を変えて何度も男の犬歯が首筋に刺さり、まるで獣に捕食されているような気分だった。
襟足を舌で舐められ、擦れる音が耳元でする。
荒く熱い息が耳にかかり身体が弛緩する。頭を押さえ付けていた手が離れ、そのまま男の両手がニーアの尻を掴んで揉みしだく。
始めは撫でるだけだった手に力が込められ、爪を立てて引っかかれた。
「いたっ・・・」
皮膚の薄い場所に付けられた傷が熱を持ち疼きだすのを感じる。ミミズ腫れを撫でられる度に膝が震えた。
痛みと熱で流れる涙を拭いたかったが両手が塞がれていて叶わない。
ぐしゃぐしゃになっている顔を男に見られないように枕に顔を押し付けたが男に髪を捕まれ無理矢理顔を上げさせられた。
「見な」
男はニーアの目の前に大きさの異なる球体が紐で繋げられた道具を突き付けた。
それが何かわからずニーアが焦点の合わない目で見つめていると、
尻に生温かい粘りのある液体をかけられた。液体を指でのばしながら尻を何度も撫でられる。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか3/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:34:54 ID:g+fqkvXI0<> まだ固く閉ざしている蕾へ指が宛がわれ、その中にも液体が注がれる。
ぐちぐちと音を立てながら性急な動きで指が出し入れされ、気持ちが悪くて仕方がない。
「んんっ・・・」
いつもは粘着質な動きをする男の指が、なぜかすぐに引き抜かれた。
ニーアが不審がって男の方を振り向く。
それを待っていたかのように男はニーアの目の前で先程の道具に液体を垂らした。
満遍なく液体が絡まると男は先端に付いている球体をニーアの尻の
方へと持っていき、慣らしきれていない蕾へと押し付けた。
「そ、そんなの・・・いれ・・な・・・」
水音と共に一つ目が押し込まれ、すぐに二つ目が入れられた。
何の抵抗もなく液体のぬめりに任せて球体が入ってしまったことに顔が熱くなる。
間を置くことなくひとつ、またひとつと押し込まれる度に下腹部が圧迫されて苦しかった。
息苦しさを和らげようと腰を揺らすと中の異物が蠢いてさらに不快だった。ニーアは舌を出し荒い息を吐く。
下肢に鈍い痛みを感じ、視線を下に降ろせば一度も触れられていない性器が勃ちあがり先走りを流しているのが目に入った。
「うそ・・・な・・・んで・・・」
「気にいったか?」
球体が全て入りきると、男は先端の紐を一度だけ強く引っ張った。
「ひっ・・・」
内臓を引きずり出される感覚に悲鳴が上がる。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか4/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:38:00 ID:g+fqkvXI0<> その拍子に最後に入れられた球体が体内から抜け落ち、
男はそれを再び蕾に押し付け先程よりもさらに奥へ押し込んだ。
「・・・いぁ・・・くるし・・・くるしいっ・・・」
赤く充血した入口が異物を吐きだそうと震えている。
動けないニーアを抱き起こし、男は自分の顔の方へニーアの尻を向かせて膝立ちにさせた。
「だらしないな。もう出てきてるぞ」
開いた入口から球体が顔を覗かせているのを男は凝視し、ニーアを煽る。
「・・・うっ・・・ううっ・・・」
あまりの羞恥に堪えられなくなり、ニーアは啜り泣きを始めた。
「みっともなく泣くなよ。泣くなら・・・」
男は再度紐を勢い良く引っぱり、中に入っていた球体を幾つか取り出して
先程と同じように押し込み直した。
「・・・やだ・・・やだ・・・やめて・・・っ」
「愛らしく泣き喚いて、稼がないとな」
「・・・あぁっ・・・いやだあぁ・・・」
勃ちあがった性器を扱かれながら何度も出し入れを繰り返えされ、
男の腹の上に自分の精液を飛び散らせていることにニーアは気が付かなかった。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか5/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:39:02 ID:g+fqkvXI0<> 不意に動きが止み、突然のことにニーアは枯れた喉で間の抜けた声を上げた。
「あ・・・」
「自分で全部出してみろ」
「っ・・・そんなの・・・できなっ・・・」
首を振って嫌がるニーアの腹を男が背中から回した手で強く押した。
あまりの激痛にニーアは身を捩じらせる。
「ぐっ・・・あぁ・・・」
「やれ」
ニーアは振り向き様に男を睨みつけ舌打ちをした。男はただそれに対して笑っただけだった。
諦めるしか方法がないのが悔しくて仕方がなかった。乱れたままの息を無理矢理整え、
腹に力を込めるとゆっくりと出口に向かって腸壁を押し分けながら球体が移動していくのを感じた。
「んう・・・んんっ・・・」
内側から蕾が押し開かれ、流し込まれた液体を零しながら一つ目の球体が姿を見せる。
「ふぁ・・・あぁっ・・・」
排泄に似た快楽に身の毛がよだつ。
同時に身体の力が抜けてもう一つ球体が蕾からこぼれ落ち、また声があがる。
「まだ半分だ」
「ひっ・・・」
男がニーアの腰を掴んで揺らす。
体内に残っている球体が前立腺を叩きニーアは髪を振り乱し、膝立ちだった体を丸めた。
下がった頭の先には勃ちあがった男の性器があった。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか6/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:40:56 ID:g+fqkvXI0<> 男が片手で尻を強く揉む。言いたいことは分かっていた。
ニーアは口を開け、男の性器に嫌々ながら舌を這わした。
腹に再び力を入れると中に入っていた3つ目の球体が外に出た。
中に入れられた時に入った空気が音をたてて抜けるのが恥ずかしくて堪らない。
唾液をこぼしながらひたすら男の性器を口に含めて舐めていると、
男の手がニーアの口から性器からを引き抜き、もう片方の手で残りの球体を一度に引き抜き抜いた。
「うあっ・・・ああぁっ・・・あ・・・」
喘ぐニーアの顔に男の精液をぶちまけられる。
抵抗する力もなく、ニーアは顔についた精液を垂らしながら俯き、荒い呼吸を繰り返した。
「緩んだままだな」
開いたまま液体を零し続ける入口の襞を男が指で撫であげる。
「・・・っふ・・・うぅ・・・」
敏感になっているそこには強すぎる刺激だった。膝の力もとうとう
抜けてべたべたになった尻を男の胸の上に落とした。
立ち上がろうとしても力が入らずニーアは身体を震わす。
その様子を男は笑い、立ち上がれないニーアを起き上がらせ、自分の正面に身体を向かせて腹の上に座らせた。
縛っていた手を解放し、尻の割れ目に再び勃ちあがった性器を擦り付ける。
「自分でやれ」
「や・・・」
遅かった。男の平手がニーアの右頬を打った。
加減なく打たれて口の中が切れてしまったようだ。噛み締める唇の端から血が流れた。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか7/9<>sage<>2010/06/10(木) 02:43:21 ID:g+fqkvXI0<> これから腫れ上がっていく頬の事を考えると憂鬱だった。
(また言い訳を考えなくちゃ・・・)
ニーアは痺れる手で自分の唾液で濡らした男の性器を掴み尻穴へと宛がい、腰を降ろした。
液体の助けもありすんなりと男の性器が中に収まってしまい、恥ずかしさで涙が零れた。
男が腰を揺らし前立腺に性器を擦りつけ、一度だけ強く突き上げる。
「・・・ひっ・・・あぁっ」
「上手に振れよ」
男は情欲に満ちた声でニーアの耳元で囁き、ねじ込まれた性器で少しばかり膨らんだ下腹を指で押した。
「う・・・うあ・・」
観念したニーアは男の腹の上に手を乗せゆっくりと腰を浮かし、先端が抜け切るところで腰を下ろす。
亀頭が直腸の奥を叩く音が聞こえた気がした。
「っ・・・はぁ・・・はっ・・・」
息を乱しながらニーアは腰の動きをだんだんと速める。限界が近付い
ているのは膨れ上がった自分の性器を見て分かっていた。そ
れは男も同じでニーアの腰を両手で捕んで下から激しく打ち付けてきた。
ニーアの性器から精液が噴き出し、その衝撃で腹に力が入り、体内に埋め込まれた男の性器をさらに締め付けた。
「んっ・・んうっ・・・んんっ・・・」
せめてもの抵抗にと、漏れそうになる嬌声を歯を食いしばって堪える。
吐き出された熱い精液が直腸を犯していく感覚を、ニーアは強く目を瞑って紛らわした。 <> 鏡の中の紙幣は重いのか8/8<>sage<>2010/06/10(木) 02:46:37 ID:g+fqkvXI0<> 男は上に乗っていたニーアを押しのけ、性器を引き抜く。
汚れたそれをニーアの内股にこすりつけて落とし、すぐに衣服を身につけた。
そしてポケットから取り出した金をニーアに投げつけると、男は黙って部屋から出て行った。
取り残されたニーアは寝台の上を這って進み、捨て置かれた紙幣とコインを掴み、力一杯握りしめた。
(これでまたしばらくヨナに薬を買ってあげられる・・・)

豪奢な鏡の前で傷だらけの子供が泣いていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
失礼しました。ページ数を間違えていました。
スペースありがとうございました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/10(木) 02:58:23 ID:ftBEPeoc0<> 銀魂の沖田総悟フィギュア

http://www.1999.co.jp/image/10119518a/20/1 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/10(木) 04:19:37 ID:Hri30qKM0<> >201,216
原作知らないけれど話が好みでとうとうググって軽く調べてきてしまった
(つД`)こらぁ切ねぇGJだ! <> 税男 1/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:39:03 ID:DHYuRhJ10<> 「あーもう、何なんだよ、最悪……」
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  税男(要英訳)、6さんと25
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ケーブルで見た記念に書いたよ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ カロウジテホモフウミ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 税男 2/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:39:48 ID:DHYuRhJ10<>  黒いスーツとサングラス、数字にちなんだコード・ネーム。
 これだけ挙げるとメン・イン・ブラックかマトリックスかというところだが、TA×MENとはつまるところ、単なる公務員である。
 各自の本名は(めんどくさいから)明かされることはまずないが、別段、抹消されてもいないし、上には当然バレているし、気心の知れたコンビなら、互いに教え合うこともある。
 住所その他も同じこと。知られて当然のものなのだ。TA×MENなどというカッコよさげな通称はあっても、彼らは公僕、ぶっちゃけるなら、所詮は税金の取り立て屋。妖怪人間ではないのだから、闇に隠れて生きることはない。
 ……という建前で、6は相棒、25の住所を聞き出している。
 正しく言えば「聞き出した」という表現は的確なものではない。6は上からあらかじめ、25の住所を知らされている。それを踏まえて、改めて、25の口から言わせたのだ。
 何故なら。
 相棒のアパートは、便利な場所にあったので。 <> 税男 3/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:40:46 ID:DHYuRhJ10<> 「25ー」
 頭を掻きながら、寝室から顔を出す。
 勝手知ったる場所ではあるが、この部屋は、6の住まいではない。無料のビジネスホテルだ。もとい、相棒である25の部屋だ。
 うっかり終電を逃したとき、終電はあるが乗りたくないとき、DVDをなるべくデカいTVで観たいときなどに、6は(途中のコンビニで買った)土産を手にして、ここへ来る。
 ちなみに昨夜は何となく25んちで飲みたかったので来た。相棒の都合は聞いていない。あと途中から記憶がない。どうしてベッドで寝ていたものか、これっぽっちも覚えがない。
 だが、その辺りは後回しである。
 6は今、腹が減っていた。
「25ー。25くーん。にこにこぷーん」
 返事がない。ただの不在のようだ。相棒は勿論、じゃじゃ丸もピッコロもぽろりも応える気配がない。
「おーい。2ー5ー」
 腹減ったー、と、今年で三十六になる男とは思えない声を上げながら、マッチ棒(っぽい相棒)の姿を探して歩き回る。その先々で目につくドアは、片っ端から開けてみた。
「お風呂ですかー」
 違ったようだ。
「うんこですかー」
 トイレでもない。
「んじゃ外ですかー。外でうんこかー」
 お隣の奥さんに睨まれた。
「んーだよ、何処行ったんだよ、あいつ。腹減ったって言ってんじゃねえか」
 客を放って部屋を空けるとは、家主の風上にも置けない。
 ぶつくさ言いつつ玄関を離れ、部屋の中心まで戻る。そして、ごきりと関節を鳴らすと、6は大きく、伸びをした。
 さっきは気に留めなかったが、明るい陽がよく射し込んでいる。もう昼過ぎかと思っていたが、まだまだ朝の範疇だ。ヴェランダに続く窓の向こうには、ごみごみとした東京がある。
「お」
 その姿を眺めたところで、6は、ソファにある影に気付いた。
「世界ふしぎじゃないもの発見」
 それはともかく縦に長い。片方の端にはもしゃもしゃとした、茶色の毛玉が付いている。そこから先を目で追うと、まず、ありふれた白いワイシャツ、続いて、ありふれた黒いズボン、そして、ありふれた足がある。
 25だ。
 まだ若い相棒は、6と似たような格好のまま、ソファで爆睡中だった。 <> 税男 4/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:41:23 ID:DHYuRhJ10<> 「お寝坊さんめ」
 というよりは、寝ついたばかりという印象だ。だらしない顔を一瞥してから、6は、ぐるりと部屋を見渡す。
 昨夜の宴会の痕跡は、きれいに片付けられている。かなり散らかした気がするが、ゴミの一つも落ちていない。
 脱ぎっぱなしにしたはずの上着はハンガーにかけられている。男二人の家飲みで使う食器もないのだが、その数少ない食器さえ、水切りかごに置かれていた。
 6が寝たあとに25が一人で片したことは明白だ。自分を起こさず片付けるには、かなりの時間が要ったろう。
「マメねー、お前。おマメちゃんね。……あ、何かエロいな、今の」
 などと一人で遊んでいても、凹んだ腹は膨れない。
 切なくなるような事実に気付き、勝手に冷蔵庫を開ける。中に納豆を見つけると、卵と辛子も一緒に取り出し、炊飯器から茶碗によそった飯にぶちまけて、もりもり喰った。酒を飲むときは酒に集中するのが6の常だから、量を飲んだ翌日は、大概、腹が減っている。
 使った食器を水に浸け、爪楊枝を咥えると、6は再び、25の転がるソファの傍らに立ってみた。楊枝の頭を揺らしながら、相棒の顔を覗き込む。
 イケメンである。腹の立つことに、腹が立つくらい、イケメンだ。自分だって決して不細工な方だとは思っていないのだが、というか自分ほどイケてる三十路もそうそういないと思うのだが、それでも自分では敵わないレベルのイケメンであるとも思う。
「お父さんとお母さんに感謝しろよー、この野郎」
 呟きながら、高く尖った鼻の頭を指でつまむ。ふぐ、と魚の名を呼ぶような濁った声を漏らした25は、息苦しそうな顔は見せたが、目を覚ますには至らなかった。 <> 税男 5/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:41:45 ID:DHYuRhJ10<> 「よーし、よく寝ろ。寝る子は育つ」
 満足しながら頷きつつも、鼻から離れた6の指は、自然とマジックを探している。人の寝顔を目にしたら、額に「肉」と書かねばなるまい。これはもう人間の使命とか宿業とかの類いである。
 じっくりと部屋を眺めたものの、終ぞマジックは見つからなかった。それどころかボールペンやシャーペンさえ見当たらない。
「もうこいつでいいんじゃないかな」
 咥えていた楊枝を吐き出す。
「痛かったらごめーんね」
 そして、先んじて謝っておく。
 流石に「肉」は書けないだろう。せいぜい「内」くらいだろうか。むしろ一画めが終わるまで眠っていてくれるだろうか。
(うん、無理っぽい)
 それでも急には止まれないのが男である。
(最悪、千昌夫で妥協しよう)
 なら一撃だ。一撃で済む。
 何となくプロの殺し屋じみたシリアスな心境になりながら、6は構えた楊枝の先を、そろそろと25へと近付ける。
 息を潜める。
 間近にしても、イケメンはやはりイケメンだ。つるつるの肌、通った鼻筋、濃い睫毛、艶のある唇。
(……ん?)
 妙だ。
 さっきより、例のイケメンが近い気がする。
(あら?)
 どうやら気のせいではない。
 確かに、さっきよりも近い。
(おお?)
 やっぱり近付いている。
 それも次第に、加速度的に。
(ちょ、待、やっそん)
 そこでようやく、6は自分が相棒の顔に、顔を寄せていることに気付いた。 <> 税男 6/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:42:07 ID:DHYuRhJ10<>  理由は知れない。だが、止まらない。吸い込まれていくかのようだ。相棒のシャープな輪郭はもはや視界に収まらず、鼻や唇といったパーツしか、6の目には入らない。
 楊枝は。楊枝は何処へ行った。千昌夫は。昌夫は何処だ。
 何とかそっちに意識を向かせようとするものの、叶わない。
(ええー、俺、ヤバいんじゃないの、これ)
 もうイケメンは目前である。このまま行くと、何と言うのか、衝突事故が起こってしまう。
(あーれー)
 殺し屋から一転、帯を解かれる町娘のような心境に陥りながら、6が色々なものを諦めようと思った、ちょうどそのとき。

「ん、」
 相棒が、目を覚ました。
 その焦点が、6に合う。
 で。 <> 税男 7/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:42:28 ID:DHYuRhJ10<> 「おぅわ!?」
 体を起こさないまま離れるという荒業をこなし、25は両目を真ん丸くして、口をぱくぱくと開閉させた。ちょうど間にソファを挟んで対峙するような格好で、狼狽している相棒と、楊枝を手にした6は向き合う。
「な、な、な、な、」
「何してんすか」
「こっちの台詞ですけど!?」
「うん」
 まったくもってその通りである。異論も反論も一切ない。
 不思議と急速に冷却された頭が滑らかに回り始める。
「な、何が、今、6さん、俺に、」
「あ、冷蔵庫の納豆もらった」
「この状況でその報告!? ていうか言われてみれば臭ッ! 納豆臭いっすよ6さん!」
「失礼しちゃう。楊枝使ったのに」
「楊枝で何がどうなるんすか! せめて磨いてくださいよ! 洗面所に歯ブラシあるでしょ!?」
「お前な、納豆喰ったばかりの男にキスされるのと、納豆喰った男に歯ブラシ使われるのと、どっちがいいんだ」
「究極の選択!」
「ちなみに俺はどっちも嫌だ」
「だったら俺にも拒否権を与えてくれていいんじゃないすか!?」
 尤もなことを叫んだ25は、そこで一旦、言葉を切った。というより、息が切れたというのが、正確な状態であると見える。
「あーもう、何なんだよ、最悪……」
 もしゃもしゃ頭が項垂れる。起きたばかりで疲労困憊している相棒に近付くと、6は落とされた肩を叩いて、心からの労いをかけた。 <> 税男 8/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:42:50 ID:DHYuRhJ10<> 「いやー助かった。よく起きてくれた。もう少しで何かの線を踏み越えちゃうとこだった」
「俺も命を拾いましたよ」
「ジト目で見んなよ。事故だ事故」
「何をどうすりゃあんな事故が起こるんですか!?」
「さあ」
「さあ!?」
「キン肉マンを千昌夫にしようと思ってたら吸い込まれた」
「済みません日本語で話してください」
 話しているつもりなのだが。
「お前さ、何か、男を引き寄せるフェロモン的なもの持ってない? もしくは男が熱狂せざるを得ないバイク乗りっぽいオーラ」
「何の話!?」
「あーめんどくせ。ゴノレゴムの仕業。気の迷い」
「気の迷いで男からキスされそうになったんですか俺!?」
「本気だったと言ってほしいのか」
「気の迷い最高です」
「よし握手」
 二人、手と手を握り合い、そして、その手をすぐさま離す。
「いやー清々しい朝だな、25。外を見てみろ、仕事日和だ」
「いい風が吹いてますよ、6さん」
「窓閉まってるぞ」
「いっけね」
「はっは」
「………」
「………」
「着替えていいすか」
「うん、その、ごめんね」
 寝室に消える相棒の背中に右手を振りながら、すっかり冷えた6の頭は、過去を振り返ろうとする。
 何があった。25の言うとおり、何がどうしてああなった。どうして自分は、相棒の、
「ベッドで寝てたんだろうなあ。あ、多分、酔い潰れた俺を、あいつが運んでくれたんだな。きっとそうだ。そうに違いない。25君ってば、やっさしーんだー」
 一人呟く6の目は、現実ではなく、遠くを見ていた。 <> 税男 9/9<>sage<>2010/06/11(金) 23:43:57 ID:DHYuRhJ10<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ カップリングがはっきりしないのはゴノレゴムの仕業だが私は謝らないって
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 通りすがりのおばあちゃんが言っていた
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

最初のAAに変な一行入って正直すまんかった <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 00:04:04 ID:jv0heCO30<> >>226
すごく好きな感じだー。
ぐぐってしまったよ。
歯ブラシは一人一本でお願いしますw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 02:05:15 ID:Dglv29CDO<> >>226
GJ!
録画したの見終わったばっかだったんだよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 06:05:41 ID:Sq8vioSsO<> >>226
GJ!
2人の距離感に凄く萌えた。朝から萌えをありがとう。
CPを定めさせなかったゴルゴムにお礼を言いたい気分だ <> 交錯する思い1/3<>sage<>2010/06/12(土) 21:18:34 ID:3iJ2kwVM0<> 今更ながら、S*IREN2の自衛隊2人。
若干、パラレル気味。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

なぁ、永井。
どうして、そんなに嫌うかな。

絶命したはず沖田が、ゆっくりと立ち上がり、
部下のお前を狙撃したとき、俺は、お前に狙撃命令を出したな。
なぜ、俺ではなく、お前に沖田を狙撃させたか分かるか。
沖田は、お前を気に入っていた。
何に対しても全力だけれど、無鉄砲な一面もあって、そんな危ういお前を、
沖田は1人の上官として、1人の男として、お前を見守っていた。
だからこそなのだろう。お前はよく沖田に懐いていた。
その反面、お前は俺には懐かなかったな。
いつも、俺と距離を置き、お前は怯えていたな。
だから、俺はお前に沖田への狙撃を命じた。
俺よりもお前に生を絶たれる方が、沖田は救われるだろう。
俺よりもお前が沖田の生を絶つ方が、お前が救われるだろう。
そう、思ったからだった。
なぁ、永井。
沖田の機関銃を、沖田の形見を、使っているお前を、
俺が、どんな思いで見ていたか分かるか。
沖田の形見が、お前の生を守っていると考えると、
柄にもなく、胸のあたりが締め付けられる感覚があった。
お前の眼には、俺の姿が映っているか。
お前の耳には、俺の声が届いているか。
お前の手には、俺の体温が伝わっているか。
なぁ、永井。 <> 交錯する思い2/3<>sage<>2010/06/12(土) 21:20:42 ID:3iJ2kwVM0<> 三沢三佐。
初めて、あなたの訓練を受けたとき、俺は、入隊したことを後悔しかけました。
どの上官よりも張り詰めた、あなたの雰囲気が苦手でした。
だけれど、今の俺は知っています。
あなたが、無闇に厳しくしている訳ではないことを。
ちょっとした言葉の陰に、あなたなりの優しさがあることを。
沖田さんに、あなたのことを相談したとき、教えてくれました。
あなたが、俺に一目置いていること。
だからこそ、他の同期よりも指導に熱が入ってしまうこと。
そして、たまの休暇で、沖田さんと酒を飲みながら、
「今日は、やり過ぎた。」と、反省していること。
そのことを聞いたとき、俺は湧き起る喜びを感じました。
優秀なあなたに認めれた、それだけで俺の誇りでした。
けれども。あなたは、僕の思いを知らない。
最早、あなたへの思いが、「尊敬」という枠を超えてしまったことを。
あなたに、もっと気に入られたいと思うことを。
そして、あなたの中で1番の存在になりたいことを。
本当は伝えてしまいたい。
あなたに、全てを打ち明けてしまいたい。
だけれど、あなたに見捨てられるのが怖かった。
公私混同をしている俺を、規律を乱す俺を、見切ってしまうあなたが怖かった。
だから、勘の鋭いあなたに見透かされないように、
必死で、あなたに特別な感情を抱く前の俺のように、あなたと接していました。
そして、三佐が不器用な優しさが隠れた言葉を、俺に与えてくれたとき、
俺は、何度もその言葉を復唱し、あなたの優しさを噛み締めていました。
三沢三佐。
あなたの眼には、俺は優秀な士長として映っていますか。
あなたの耳には、俺の隠し切れない思いが届いてしまっていませんか。
あなたの手には、あなたの手に触れた喜びが伝わってしまっていませんか。
<> 交錯する思い3/3<>sage<>2010/06/12(土) 21:22:58 ID:3iJ2kwVM0<> 「ようし。ここを登るぞ。」

寂れた気味の悪い遊園地を抜けるとき、
俺は、永井の手を借りて先に上に上がり、永井に手を差し伸べた。

沖田さんと仲間を残して、この遊園地を脱出するとき、
先に壁を上った三佐が、俺に手を差し伸べてきた。

この先、どうなるのだろう。
沖田のような「敵」がいるのだろうか。
俺と永井は、無事に基地に戻れるのだろうか。
不安が入り混じる。
何が起きようとも、俺は、この手を掴む永井を離さない。
永井、俺はお前を死なせない。

一体、どうなっているのだろう。
生きているはずのない仲間が俺たちを攻撃してくる。
俺も、いつか沖田さんのようになって、三佐を狙撃してしまうのだろうか。
三佐が掴んだ感覚が烙印のように、強く俺の手に残り続けている。
三沢三佐、俺はあなたにどこまでも着いて行きます。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

擦れ違う2人を、とことん切なく書きたかった。
そんな意思が伝わっていたら嬉しいです。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 22:02:35 ID:LFXqHe5e0<> >>226
やっそんで死んだwwww <> 「ゴードンとねがいのかなうき」1/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:37:12 ID:PzwIXD3k0<> 需要はなさそうなんですが・・・SS苦手なんですが、書いちゃったから投げていきますわ。

きかんしゃトー枡、大型青×大型緑、エロなし
「ゴードンでよかった」の後、って感じで。

堀川&内海ボイスでの再生をお奨めいたします。

多少、数をお借りいたします。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

つい魔がさして。大事な記録のためとはいえ、ヘンリーのための特別な石炭を使ってしまった。
まさか、自分が積んだものが最後だったとは・・・。
いくら言い訳しようとしても、結局記録も成し得なかったのだし、何もかもが台無しだ。
身体に合わない石炭を使わされたヘンリーが受けたダメージは思いの他大きく、謝ったくらいではとても許されない気がした。
炭水車を交換していつもの石炭に入れ替える処置をしたとはいえ、それまで随分長く走りすぎたせいで車軸は傷み、ボイラーは煤だらけだ。
煙突も鼻も煤で詰まり、懸命にくしゃみを我慢する彼は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「ホームでくしゃみをされたら大変だ。ほら、さっさと移動してくれよ。」
駅員にホームから追い出されたゴードンとヘンリーの二台は、待避線に並んだ。
「大掃除しなくちゃな・・・。炭水車を付け替えて、石炭の積み替えも・・・」
ヘンリーの機関士と助手が肩を落とす。目の前に鎮座した大仕事を前に途方にくれている。
「申し訳ないことをした。俺達も手伝うよ。」
ゴードンの機関士と助手が言う。
石炭を積んだのはゴードンだが、石炭の違いは見ればわかる。彼らの責任でもあるのだ。
「そう気を落とさないで。ぼくは大丈夫だから。」
まだ少し青い顔で、ヘンリーが言う。
(そういえばさっきも、こんな顔色で、俺を応援してくれたな。)
炭水車をもう一度入れ替えながら、ゴードンはさっきまでの出来事を思い返した。
青い顔で黒い煙を吐きながら、車輪をがくがく言わせて、それでも懸命に笑顔をつくり声援をくれた友人を、改めて見る。
(随分としおらしくなったもんだ・・・)
<> 「ゴードンとねがいのかなうき」2/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:38:20 ID:PzwIXD3k0<> 近頃のヘンリーは大人しすぎる。ゴードンはそう感じていた。
憎まれ口を叩くこともめっきり少なくなって、彼と最後にした口喧嘩が随分昔の出来事だったように思われる。
エミリーがソドー鉄道に来てからは、『やっかいな三台の大型機関車』の列から、ヘンリーの名が除外されているようなものだった。
客車には見向きもせず、好んで牽くのは貨物ばかり。森での仕事なら自ら飛んで牽きに行く。
急行好きのゴードンはもちろん、客車好きのエミリーやジェームスとやりあうこともほとんどない。
時々来る「特別な仕事」をやりたがる事もあるが、大抵はゴードンかエミリーが指名されることが多く、ヘンリーの出番は少ない。
以前はその決定に鼻息荒く不平を漏らしたりもしたが、最近はただ黙って悲しそうな顔をするだけだ。
そんなヘンリーを見るたびに、ゴードンの胸にはいつも何かが引っかかった。
(この引っかかりは何だ?俺はあいつの何を気にしている?)
悔しく、悲しく、もどかしく、とても耐え難いような、理由のわからない不快な心のもやが、とても気持ち悪かった。
何が原因なのかさっぱり見当もつかない。ずっと解けそうもないと思っていた。
だが意外にも、それは突然、しかもあっさりと解けてしまった。
とっさに取った、自らの行動で。
(なんてこった・・・まさか俺が・・・)
正直、認めたくない内容だったが、それしか思いつかないのだ。
<> 「ゴードンとねがいのかなうき」3/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:38:52 ID:PzwIXD3k0<> もんもんと考え込むゴードンの隣で、二人の機関士と二人の助手と数人の整備員が、せっせとヘンリーをいつもの姿に戻していく。
ボイラーや煙突の煤を払い出し、火室の灰もきれいさっぱりかき出して、いつもの石炭に入れ替えて火をつける。
車輪や車軸、隅から隅まで油を差し、グリスを塗り、黒煙で汚れたボディをごしごし磨く。
最後の点検をおえた整備主任が作業終了の声をかけると、ヘンリーに笑顔が戻った。
「ひとっ走りして油をなじませれば、いつものようにスムーズに走れるようになるぞ。森にでも、行ってみるかい?」
ヘンリーの機関士が機関室から顔を出して言う。
「うん!」
森と聞いてヘンリーは嬉しそうに頷いたが、助手が火室をいじりながら言った。
「まだ火が弱いから、蒸気がたまるまでしばらく時間がかかるぞ。」
「それじゃぁ、日が暮れてしまう・・・森まで行くのは無理か。」
途端にヘンリーの笑顔が消え、しゅんとなる。
それを見て、ゴードンは思わず言ってしまった。
「俺が、森まで牽いて行こう。」

「頼むぞ、ゴードン。ヘンリーに合わせて、ゆっくり、慎重に走ってくれよ。」
ゴードンの機関士が声をかけた。
「まかせろ。壊れ物の扱いは、慣れっこだ。」
連結が完了すると、ヘンリーは足の力を抜いて身体を楽にして備える。
「いつでもいいよ。」
「よし、行くぞ。」
ヘンリーが苦しい思いをしないように、細心の注意を払いながら牽いて走る。
走りながら、ゴードンは思った。
(もう少し付き合って、確かめよう。・・・・答えあわせだ。)
<> 「ゴードンとねがいのかなうき」4/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:39:52 ID:PzwIXD3k0<> 森に着くと、ヘンリーの案内で彼のお気に入りの場所まで進む。
給水棟と待避線がある、『願いの叶う木』のすぐそばの線路だ。
近くには池があって水場に集まる動物達の姿を見ることが出来るし、向こうの広場から続く道から人間が遊びにくることもある。
昼間は子供達の楽しそうな声が響き、夕方は木に願いを託す恋人達で賑わう。今日は一組、先客がいるようだ。
「ごめんね、ゴードン。こんなことまでさせてしまって、申し訳ないよ。」
待避線に押し込まれながら、ヘンリーが言う。
「気にするな。元はといえば俺が悪いんだ。」
ヘンリーとの連結をはずし、ゴードンは本線に戻る。そして二台は並列で並んだ。
「俺達は、あっちで休んでくるよ。あずまやがあるんだ。」
ヘンリーの機関士が水筒と持ち合わせたお菓子を抱えて降りると、他の三人もそれに続く。
四人の背中を見送りながら、ゴードンとヘンリーはしばらく無言で森の空気を味わった。
今日の作業はもう終わっているから、辺りはとても静かだ。木々のざわめきと小鳥達の声が、時々聞こえてくる。
大きく深呼吸して、ゴードンが口を開く。
「たまには森もいいもんだな。とても、いいにおいがする。」
「木のにおいだよ。とても優しい気持ちになれるんだ。」
「木もだが・・・ここに来て気が付いた。お前からもいい香りがする。」
「石炭のせいかな?きみとは違う石炭を使っているから、そう感じるのかもね。」
「そうかもな。・・・落ち着く香りだ。」
「きみも、さっきまで使っていたくせに。」
「・・・言うなよ。」
二台は顔を見合わせて、ぷっと吹き出して笑う。
夕暮れの風が少し冷たくて、まだ火室の火を弱く抑えているヘンリーには肌寒く感じる。
軽く身震いをすると、ゴードンが心配そうに聞いた。
「まだ具合がよくならないのか?」
「もう平気だよ。火室の火がまだ弱いだけ。」
本当はまだきしむ車軸も痛くないことにして、精一杯元気な笑顔で答えると、ゴードンも安心した顔になった。
「それにしても、ゴードンは本当に上手に走るね。きみに牽かれてみて、客車たちがうらやましくなったよ。」
「何故うらやましいんだ?」
「気持ちよくってね。」
「牽かれるのがか。」
「うん。牽かれて気持ちがいいだなんて、蒸気機関車として情けない事だけどね。」 <> 「ゴードンとねがいのかなうき」5/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:41:08 ID:PzwIXD3k0<> 「情けないなんて・・・」
そんなことはない、とは言い切れず、口をつぐむ。
貨車や客車を牽いて役に立つ。それが機関車の誇りだ。
牽いてもらうのは故障や立ち往生したときくらいで、本来、自力で動けないというのはとても情けない事なのだ。
好意で牽いて来たつもりが逆に傷つけてしまったかもしれない。
後悔の気持ちがゴードンの顔にじわりとにじんでいたが、それに気付かないヘンリーは明るい声で続ける。
「ねぇゴードン、あの木が『願いの叶う木』だよ。ゴードンもお願いしてみたら?次こそは記録達成!ってね。」
まるで家族に恋人を紹介するように、得意げにお気に入りの一本を紹介する。
「ただの木じゃないか。」
「ただの木じゃないよ。この木にお願いをすると、願いが叶うんだよ。」
「叶ったのか?」
「わかんない。」
「・・・おい。」
ゴードンの突っ込みを気にも留めず、ヘンリーは木に向かってお願い事を始める。
「ゴードンの記録が、次こそは無事に達成できますように・・・。」
「木に頼らなくても、次の記録くらいすぐに出せるさ。」
ふん、と鼻を鳴らして意気込んで見せると、急にヘンリーの顔が曇った。
「どうした?」
「今日、本当は、出来ていたんだよね。・・・ぼくが足を引っ張らなければ・・・」
「引っ張られてなんかいないぞ。」
「・・・客車たちが言っていたよ。あの時、きみは駅に着いていたって。なのにきみはぼくのところに戻った。」
「いいや、まだ着いていなかった。」
「あと一度車輪を回せば着くところまで行っていたんだろ。それなのに・・・ぼくなんかに構うから・・・」
「あんな状態のお前を放っておくなんて、俺には出来ないね。」
「そのせいで、ソドー島一の機関車の、きみの記録が台無しになってしまったんだよ?」
ヘンリーの声が荒くなる。
「なんで・・・そう平気にしていられるのさ・・・」
ゴードンは冷静に、淡々と答えた。
「記録なんてどうでもいいからな。」
「・・・きみらしくない。」
「らしくなくないさ。」
「らしくないよ。」 <> 「ゴードンとねがいのかなうき」6/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:42:06 ID:PzwIXD3k0<> 「いいや。非常に俺らしく、大切なことを優先しただけだ。」
「・・・そりゃあ、友達を助けるのは大切なことだけど・・・」
「お前じゃなければ放っておいたさ。」
「ぼくの石炭を使っていたからかい?」
「違う、そうじゃない。」
「だったら、なんで・・・」
「お前のことが好きだからだ。」
「・・・・」
一瞬、空気が固まる。曇りが吹き飛び、驚きから戸惑い、困惑。
短時間で百面相をしたヘンリーは最後にふうっと、深い息と一緒に、次の言葉を吐き出した。
「・・・ありがとう。きみにそう言ってもらえると、すごく、嬉しい。」
「そうか。」
「ぼくは、きみに嫌われていると思ってた。」
「そっ・・・そうなのか?」
「うん・・・たまに、厳しいこと言われたりしたし。」
「・・・悪かった。」
「仕方ないよ。客車も貨車も、きみほど上手には牽けないもの。でも、こんなにポンコツなぼくのことを、仲間として認めてくれていたんだね。」
「・・・・んん?」
ゴードンの目が点になった。
(こいつ、わかっていない?・・・これ以上を言わせるつもりか・・・)
「・・・お前、勘違いしているだろ。」
「勘違い?」
「俺が言っているのは、ああぁいう事だ。」
ゴードンの答え合わせが始まる。
これから先は、きっと、自分に言い聞かせる言葉にもなる。
ゴードンは願いの叶う木の横で肩を寄せ合う恋人達に視線を向けた。
ヘンリーも視線でそれを追う。
「・・・人?」
「俺自身も、さっき気が付いた。・・・俺はお前に恋をしている。」
「・・・ぼくに、恋?」
「俺達は蒸気機関車で、男同士だ。それでも・・・」
「え・・・ちょっ・・・ちょっ・・・」 <> 「ゴードンとねがいのかなうき」7/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:42:34 ID:PzwIXD3k0<> 「お前を、愛しているんだ、ヘンリー。」
「・・・・・・なに・・・言って・・・」
「・・・世界で一番、ヘンリーのことが好きなんだ。」
「・・・・・・」
「お前のことが大切だから戻った。他に理由なんて、ない。」
全く予想もしていなかった言葉に、ヘンリーの頭の中は突然真っ白になる。
胸の奥底から正体のわからない何かがこみ上げてきて、瞳からポロリとそれが零れ落ちた気がした。
動かせなくなった視界の先で寄り添い合う恋人達の姿が、だんだんとぼやけていく。
いつか海に落ちて水に包まれたときのように、周囲の音の全てが遠くなって思うように聞こえない。
(なにを言っているの、ゴードン?)
火室の火はまだ燃え盛るには早すぎるのに、頭の中が熱くて熱くてぐらぐらした。
いつもの石炭に入れ替えたはずなのに、また身体が震えだしてがくがくした。
「・・・・・・っ」
何か言わなくちゃ、そう思っても、うまく言葉がまとまってくれない。
出てくるのは涙ばかりで、タンクの水が空になるんじゃないかとか、どうでもいいことがヘンリーの頭の中をぐるぐる巡る。
「・・・ンリー?おい、ヘンリー?」
(ゴードン・・・ぼくは・・・)
どのくらい長い間、無音と闇の世界に包まれただろうか。
ようやく耳が聞こえ、視界が晴れた頃には、心も妙にすっきりとしていた。
乱れていた呼吸を整えるため、ヘンリーは深い息を吐く。
「落ち着いたか?」
「・・・うん。」
とても穏やかに暖かいまなざしを向けてくれているゴードンを、ヘンリーはしっかりと見つめ返す。
「理解、出来たか?」
「・・・うん。」
「もう泣くなよ。お前の涙は見たくない。笑っていろ。」
「・・・うん。」
ゴードンの言葉が心地よくて、自然と笑顔になる。
「ねぇ、ゴードン。」
「ん?」
「ぼくも、きみと同じことに気が付いたみたいだ。」
「・・・そうか。」 <> 「ゴードンとねがいのかなうき」8/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:43:17 ID:PzwIXD3k0<> 「気付かせてくれてありがとう。」
そう言うと、ヘンリーは目を閉じた。夕暮れの冷たい風が、火照った身体に心地良い。
「きみと同じ蒸気機関車に生まれてこれてよかった。」
「そうだな。・・・だが、蒸気機関車では困ることもある。」
「困ること?」
「俺が人間なら、二本の腕でお前を思い切り抱きしめてやりたいんだが・・・」
それを聞いて、ヘンリーの頬が赤く染まる。
「・・・ぼくが人間なら、きみの胸に思い切り飛び込みたい・・・」
「それができたら、どんなにいいか。・・・だが」
ゴードンが、情けなさそうに蒸気をぽふっと吐く。
「今の俺達がそれをやったら、間違いなく衝突事故だ。」
ヘンリーも、つられて蒸気をぽふっと吐いて、笑う。
「だね。」

離れたところで休憩を取っていた機関士達が、二人のもとに帰って来るのが見えた。
「そろそろ帰らなくちゃ。」
「帰りも牽いていってやるよ。連結するくらいじゃ、抱きしめる代わりにもならないが・・・」
「十分、嬉しいよ。少しでもきみの近くにいられるなら。」
帰りも牽いてかえる旨を機関士たちに伝え、ゴードンがヘンリーの前に付く。
二台の機関車が手と手をぎゅっと握り合うように連結器をつなぐと、助手がねじをきつく締める。
ゆっくりと慎重に走り出しながら、ゴードンはまっすぐに願いの叶う木を見つめて、誰にも聞こえないように小さく小さくつぶやいた。
「・・・もし、本当に願いが叶うのなら・・・夢でいい。一度だけでいい。あいつを、抱きしめさせてくれ。」
<> 「ゴードンとねがいのかなうき」9/9<>sage<>2010/06/12(土) 22:44:13 ID:PzwIXD3k0<> 翌日、まだ早く暗いテッドマス機関庫の中で、二台の大きな機関車が同時に飛び起きた。
青い機関車ゴードンの両頬は赤く染まり、目は大きく開いている。
ため息をひとつ。そして、興奮気味に、小さくつぶやいた。
「・・・まさか本当に飛び込んでくるとは思わなかった・・・」
「!!」
隣で目覚めた緑の機関車ヘンリーの身体がびくっと固まる。
止まっていた呼吸をなんとか吐いて、吸って、小さくつぶやいた。
「・・・馬鹿力すぎてつぶれちゃうかと思ったよ・・・」
「!!」
「・・・・・」
長い沈黙の後、二台はゆっくりと、確かめ合うように視線を合わせて微笑んだ。
とても満足げで、幸せそうに。

「また、森に行こう。願いの叶う木に、お礼を言いに。」




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

きかんしゃのままが自分的にベストなんですが、たまにはハグハグさせてあげたいんですわ。
お目汚し失礼いたしました〜
<> Ruina アベリオン×シーフォン 1/15<>sage<>2010/06/12(土) 23:53:59 ID:wwpFm8KX0<> シチュエーションは少し違ってしまいましたが、
したらばにて天啓を下さったテレージャ姐さんに捧げます。
一部の台詞を原作より引用させて頂きました。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「ぷはー!生き返ったぜ!」

赤い落日の光を顔に浴びて、パリスが大きく息をついた。

「はぁ……。確かに、空気が違うな」

その後ろにいたシーフォンも、少し土埃の付いた顔をローブの袖で拭いながら
安堵したようなため息を吐いている。
今まさに遺跡から這い出てきた彼らには、地上の清廉な空気が何よりのご馳走だった。
一体何年の間埋もれていたのか分からない遺跡の中は、ひたすらに空気が停滞しており、
夜種を産む瘴気すら含んだそれは地上のものとは明らかに異なっている。
しかも今回は、行き先が行き先だった。

「あー、自分で自分が汗くせえ。このまま河に飛び込みたい」
「お前みたいなのに風呂代わりにされちゃアークフィアも迷惑だろうよ」
「……ホント可愛くねえなお前。使ってる精霊は可愛いくせによ」
「うるさい。あれが一番エネルギー効率のいい形状なんだ。
 球は数術学的にも立体として完全な……」
「ま、まあまあ。でも驚いたね、地下にあんな所があったなんて」

放っておけばすぐに喧嘩を始めてしまうパリスとシーフォンの間に
アベリオンが割って入るのは、この数日間でお定まりになりつつあった。
ひばり亭にいる時はまだ、まさに天真爛漫なネルが間を取り成してくれたり、
正義感たっぷりのアルソンが例のような発言で逆に二人の神経を同時に逆撫でたりしていたのだが、
三人パーティではその加重がアベリオンのみに降りかかってしまっていた。
今回のパーティは失敗だったか、と彼は心中でため息をつく。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 23:55:21 ID:wwpFm8KX0<> 「まあな。エルフのときも驚いたが、今度はドワーフ……
 この目で見てなきゃ絶対信じねー」
「しっかも、あの溶岩!あいつらよくあんな所で暮らしてるよな〜!」
「早く帰って、皆にお土産話してあげよう」
「おう。腹も減ったしな」

長い影を連れて歩き出した三人は、遺跡の奥深く、
灼熱の塔の中でドワーフ族の戦争の終結に一役買ってきた所なのだった。
ひとつの指輪が発端だったその戦争は、多少の犠牲を払ったものの
おそらく可能な中ではほとんど最善だと思われる位置に着地した。
裏でこの戦いを操作していた魔将も退け、誠実なダリムが王に就いた。
歩きながらまた口喧嘩を始めようとしている二人も、それをなだめるアベリオンも
そこまでの事を成し遂げたという達成感と高揚感にふんわりと包まれていた。

―――

その晩のひばり亭のホールは、災厄が始まってからまれに見るような盛り上がりを見せた。
タイタス十六世を打ち倒したときの祝いの晩には及ばないものの、
もとよりよく口の回るシーフォンやパリスが小人の塔での出来事を上手く演出しながら話すものだから
普段の仲間内だけでなく、他の冒険者や商人たちもその輪に加わり
興味深そうな顔で共にテーブルを囲んでいた。

しかしその語りの中、パリスの大鞭で敵の兵士たちをなぎ払っただとか、
シーフォンの雷で黒鉄の戦車をバラバラにしただとか、アベリオンの氷が魔将を串刺しにしただとか――
そういった武勇伝の中に、その存在すらを一切語られなかったものがあった。
3人が3人とも、仲間に語るどころか、思い出したくすらなかったのである。
暗黙の了解として、「なかったこと」にされてしまっていた。
フリルとドレープのたっぷり効いた、美しいドレスをまとった姫との邂逅は。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 23:56:24 ID:wwpFm8KX0<> まさに語る事すら忌まわしい出来事だった。
まず、「姫」と聞き、そして棺からはみ出た美しいドレスの裾に惹かれて
いの一番に棺を開けたパリスが逞しい腕に捕らえられ、瞬く間に肺の中を空気を吸い尽くされた。
そして慌てて駆け寄ったアベリオンも、酸欠と衝撃に失神したパリスの身体を放り投げた腕に
そのまま掴まれてしまい、全く同じ目に合った。

『ぷはあっ!情熱ゥ!!』

現れたのは悪夢だった。
これよりは、宮殿にいくつも転がっていた棺の中の、ぐしゃぐしゃに腐食した死体や
畸形の胎児などの方がまだマシだと三人が三人とも思った。

『―――っ!!』

首根っこを捕まえられていたアベリオンが、ごとりと床に落とされ
一人残ったシーフォンは声も出せずに半歩あとずさる。
一気に血の気の引いた顔から、冷や汗がぽつりと滴り落ちた。

『愛を求めて二千年。今宵もキッスが火を吹くわ』

冷や汗の流れる量が増えた。
シーフォンは、今までに経験した事がないほどの本能的な危険を感じ、
後ろ手でドアを探りながらじりじりと後ずさって行った。

『……な!?』

しかし、その背中は空しく石の扉に「とん」と軽い音を立てて突き当たってしまった。
いつの間にか、玄室の扉ががっちりと閉まっている。
慌てて振り向き、取っ手をガチャガチャと前後にゆすりたてても
不気味なほどに頑丈なそれはびくりとも動かなかった。
背後には、なぜこれに棺を開ける前に気づかなかったのだろうと思うほどの
禍々しいオーラをだだ漏れにした怪異が迫っている。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/12(土) 23:57:38 ID:wwpFm8KX0<> 『フフフ。わしと接吻せずして、この部屋を出ること叶わず。
 さあ、熱いベーゼでこのわしを倒してみれ!』
『ひいいぃ!?』
『……っ、し、シーフォン……』

最大限の恐怖に混乱するシーフォンに、苦しげな声がかけられた。
はっとシーフォンがその方向へ視線を向けると、
アベリオンが息も絶え絶えの様子で地面に倒れ伏している。
白目を剥いて倒れているパリスとは違い、彼ははかろうじて意識だけは保っているようだった。
しかし、立ち上がる気力すら吸われ尽くしてしまったらしく
わずかに身じろぎをする身体は本人の意思どおりにも動かないようだ。
秀麗な眉が苦痛に歪められ、それでも彼はシーフォンを見上げて唇を開く。

『シーフォンっ…………頼む、こいつを倒して……』
『ふ、ふざけんな、誰が!死ね!』
『だって、多分……』

シーフォンとアベリオンが切羽詰った会話をしている間にも、
「姫」はにじりにじりとシーフォンに迫り寄って来ていた。

『むふふ。少年よ、わしの恐ろしさに怯えているようだな』
『多分……』
『多分、何だよ!?さっさと言え!!』
『……それを倒さなきゃ……生きて帰れないと、思う……』
『っ!』

アベリオンの言葉を聞いて、シーフォンは赤い瞳を見開く。彼の言う事はもっともだった。
既に二人が戦闘不能、残る一人も窮地に追い込まれている。
仮にシーフォンだけがこの部屋から上手く逃げおおせたとしても、
夜種の蠢くこの深い遺跡から一人で無事に地上まで帰還できる保証はない。
三人で組んでやっと潜ってきた深層なのだ、ここは。
――そして、何よりも。目の前の怪異がむざむざ獲物を逃がすとは思えない。 <> Ruina アベリオン×シーフォン 5/15<>sage<>2010/06/12(土) 23:59:02 ID:wwpFm8KX0<> このまま勝負に敗れてしまえば、本当に精も根も吸われ尽くしてしまいそうな恐怖がある。
今まで様々なピンチを乗り越えてきた彼らだが、今がまさに最大級の絶体絶命だと思われた。
緊張の糸がキリキリと引き絞られ、きしんだ音を立てている。

『でーれん。でーれん。でーれんでーれんでーれー……』
『あああ畜生、やりゃあいいんだろやりゃあ!!!
 オラッ来いよ、吸い殺してやる!!』

とうとう、どこかが切れた。

――だが、その「切れた」シーフォンの活躍により
三人はどうにかその部屋から脱出することが出来たのだった。
全員が半泣きだったけれども。

しかし、吸い殺したか吸い殺されたかの違いだけで、
全員が同じ目に合ったことは間違いないのだ。
だからこれは三人の間だけで黙殺されるべき出来事だった。
けして、三人の間でそういった取り決めがあったわけではないが、
何もなくとも誰も何も言わないのがその証だった。

話はひばり亭に戻る。
いつもより少し豪華な料理で空腹を満たしたアベリオンたちは、
その忌まわしい出来事を意識して頭の隅に追いやり、縛り付けて引き出しに叩き込み、
楽しい夕食を終えようとしていた。

「じゃ、僕、そろそろ帰るよ」
「何だよ。アベリオン、まだ宵の口だろー?」
「ううん、帰ってから師匠に顔見せてないし。心配してるだろうから」

おもむろに立ち上がり、外套を羽織り始めたアベリオンに
パリスは不満げな顔をして琥珀色の液体が入ったグラスを突き出して見せた。
しかし、傍らのネルは得心したような顔をして頷く。 <> Ruina アベリオン×シーフォン 6/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:00:19 ID:wwpFm8KX0<> 「そうだねー。おじいちゃん、アベリオンがいない間ちょっと寂しそうだもん」
「あ、それではこちらのパイなど、包んでお持ちになりませんか。
 残り物で申し訳ありませんが……」
「わ、ありがとう」

半分ほど残っていたほうれん草とチーズのパイを、フランがてきぱきと油紙に包み
アベリオンに手渡してくれた。
ここいらの手際は流石に現役メイドと言うべきであるが、
それになぜ料理の腕が付随しないのだろうと誰もが思っている。

ともあれ、アベリオンはまだほとんど頭数の減らない宴席に背を向け
夜の挨拶をしてから肌寒い店の外へドアをくぐっていったのだった。

ひばり亭から自宅へは、まっすぐ西に向かうだけでいい。
ほとんど町外れと言ってもいいそこまでは距離が少しあるものの、
元々が小さい町なので離れていると言っても高が知れている。
とっぷりと暮れた空を見て、魔法の鬼火をひとつ灯したアベリオンは
その炎を従えて西の方角へと歩き出した。

「おい」

しかし、その背に声をかける者があった。
彼も少し寒いのか、いつものぶかぶかのローブの上にケープを羽織っている。
アベリオンと同じように傍らに灯した鬼火が
彼の赤い髪を燃え上がるように更に赤く見せていた。
広場の中心にあるオベリスクに背を預け、尊大に腕を組んだ彼は
挑戦的な視線をアベリオンへ向けている。

「あれ?どうしたの、シーフォン」

いつの間に店を抜け出していたのだろう。
反射的に振り返ったアベリオンは、不思議そうな声で彼に答えた。 <> 256<>sage<>2010/06/13(日) 00:06:25 ID:Xc6phrdTO<> すみませんいきなり回線が落ちました
中断させて頂きます
続きは直ってから、申し訳ありません <> Ruina アベリオン×シーフォン 7/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:23:15 ID:OIglESLW0<> 「話がある。ちょっと来い」

くい、と顎でしゃくるようにしてアベリオンを呼ぶ仕草はこれ以上ないほど生意気だったが
今ではアベリオンもすっかりそれに慣れてしまっている。

「なに?」

パイの包みを抱えたままてくてくと歩いてきたアベリオンがシーフォンの目の前に立った。
2つの鬼火に照らされたオベリスクが、2つの長い影を冷たい地面に落としている。
ゆらゆらと揺れる炎に合わせて蠢くそれは、
昼間、町のシンボル的な存在である時とは異なったひどく不気味な様子だった。

「僕と勝負しろ」
「……ま、またそれ?」

シーフォンの申し出に、アベリオンは顔を引きつらせる。
元々シーフォンほど好戦的な性格ではないのに、降りかかる火の粉を払うように彼の相手をしていたら
いつの間にかこんな、定期的に決闘を申し込まれる関係になってしまった。
実際は決闘と称しただけの強盗行為であることも多い。
しかし今、数日間遺跡に潜りっ放しだった身体は
慣れ親しんだ自分の寝台での休息を欲しがっていた。

「また今度にしない?シーフォンも疲れてるんじゃ……」
「別に、体力は使わせねえよ。今日は魔法じゃない」
「え」

どういう意味だと聞き返す前に、シーフォンの細い両腕がアベリオンの肩を掴んだ。
抵抗する間もなくその両腕がアベリオンの背をオベリスクへと押し付ける。
二人の傍の鬼火が大きく揺れ、先ほどまでとは完全に入れ替わるような体勢になってしまった。

「――これで勝負だ」
「え、え?」 <> Ruina アベリオン×シーフォン 8/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:24:16 ID:OIglESLW0<> あまりにも真剣な赤茶色の瞳が間近に迫ったかと思うと
状況を把握する暇すら与えられず、アベリオンは唇を奪われてしまった。
ふっとアルコールの香りが鼻先をかすめる。
衝撃で、パイの包みが二人の足元へと落ちた。

「っ!!?」

驚いた。
それはもう、驚いた。
正直言って夜種プリンセスに同じ事をされたときよりも驚いた。

あの奇っ怪な夜種については、もうどうしようもないと諦めは付いているのだ。
遺跡の所々で出現するアレはもう避けられない天災のようなもので、
パーティを好きなだけかき回して混乱させたあと去っていく台風だった。
今度の件も、アベリオンは玄室の床に沈みながら『ああ、また出たか……』と
もはや泣き寝入りのような気持ちもあった。

なのに、まさか仲間にまで同じ事をされるとは。
訳も分からずひたすら混乱しているアベリオンをよそに、
シーフォンはどこか必死の様子で彼の肩を掴んだまま唇を押し付けている。

彼の思考回路はこうだった。
夜種プリンセスとの勝負で、アベリオンは一瞬にして敗北を喫した。
しかしその姫を自分は倒した。
ということは、『アベリオン<プリンセス<<<僕様(最強)』ではないのかと。
いやそうに違いない。魔法ではあと一歩の所で適わない事が多かったが、
この勝負ならアベリオンを昏倒させ、ボコボコにし、魔法書でも何でも奪う事が出来る。
シーフォンはもはや周りが全く見えていなかった。
元々そういうところのある性格なのだ。
夕食の席で舐めるようにして飲んでいた葡萄酒のせいもあるかもしれない。 <> Ruina アベリオン×シーフォン 9/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:25:22 ID:OIglESLW0<> しかし、夜種との対決のときの「切れてしまった」状態とは異なっているシーフォンは、
自ら舌を侵入させることに戸惑っているのか
唇を押し付けたままの状態で固まってしまっている。
開いたままの赤い瞳は相変わらず挑戦的にアベリオンを睨みつけてくるものの、
そこから先どうしていいか分からなくなってしまったようだ。

そんな彼とは対照的に、アベリオンは徐々に冷静さを取り戻しつつあった。
この凄まじい状況も把握し、シーフォンがどうしてこういう行動に至ったかも概ね予想は付いた。
問題はこれからどうするかだ。シーフォンの両腕でオベリスクに押し付けられているとはいえ、
元々自分より背も低い彼の腕は華奢で、わずかに震えてすらいる。振り払う事はたやすいだろう。
でも、とアベリオンは思う。
シーフォンは勝負を放棄される事を何より嫌うのだ。
一度そういうことをされると、親の仇ほど根に持ち更に反抗的にアベリオンを付け狙うようになる。

――それならば、徹底的に叩きのめした方が。

繰り返すが、アベリオンはシーフォンほど好戦的な性格ではない。
しかし、売られた喧嘩を買わずに済ませるほど大人しいわけでもなかった。
だからこそこんな関係になってしまったのだ。

ぐい、と唐突にシーフォンの顎を取る。
不意を突いて軽くそれを引き下げると、薄い唇を割り、
隙間の開いた歯列からアベリオンはシーフォンの口腔へ自らの舌をねじ入れた。

「ッ!!」

今度はシーフォンの驚く番だった。
涼しげな顔とは違い、意外に肉厚なそれはシーフォンの小さな舌を容易に押さえ込む。
有無を言わせぬまま敏感な上顎をねっとりと舐め上げられ、
シーフォンは反射的にぴくりと肩を跳ねさせた。

「んっ、ん……ふ……っ!」 <> Ruina アベリオン×シーフォン 10/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:26:21 ID:OIglESLW0<> 舌全体を使って擦られるように何度も舐められたかと思ったら、
先端だけが触れるか触れないかといった微妙な強さでくすぐっていく。
規則性のないその動きに、シーフォンは早くも翻弄されそうになってしまっていた。

(くそ、ま、負けるかっ……!)

しかしやっと衝撃から立ち直った彼は、ふと気が付いたようにアベリオンに対して抵抗をし始めた。
舌を強く出してアベリオンのそれを押し返すだけでなく、
逆に彼の口腔へ押し入ろうとしている。
すると意外にもアベリオンはその動きに逆らわず、誘い入れるようにしてシーフォンの舌を迎えた。
だが、それが自分の領域に来るとすぐさま強めに吸い上げる。
またぴくんとシーフォンの肩が震えた。
そのまま舌を柔らかく甘噛みし、歯で軽くしごくようにして刺激する。
たまらず逃げ出そうとするのをまた吸い上げて止め、引きつる舌を何度も食んだ。

「くふ、っ……」

そうしているうちに、抵抗を試みていたシーフォンの舌も段々と力を失ってくる。
それを柔らかく押し返して再び彼の口内に進入を果たしたアベリオンは、
彼の舌の裏側に自分のそれを押し込み、つるりとしたそこへ何度も舌先を往復させた。

(な、なんだコイツ…ぅ……っ)

シーフォンは最早、息苦しさと、それ以上の何かで顔を真っ赤に紅潮させ
背中や肩をぴくぴくと震わせながらアベリオンの舌に翻弄されるばかりになっていた。
時折思い出したように舌を使って抵抗を試みようとするものの、
弱々しい仕草のそれは抵抗と言うよりも甘いいらえのようにしか感じられない。
声にならない声だけが互いの唇の合間から漏れていく。

「ぅ、う……っぁふ……っ」 <> Ruina アベリオン×シーフォン 11/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:27:22 ID:OIglESLW0<> 目を閉じては駄目だと思っても、目の前が霞んで、もう何がなにやら分からない。
かろうじて、涙の膜の向こう、自分とよく似た色の瞳が弧を描くように形を変えるのだけが見えた。
揺れる鬼火の灯火に、見慣れたはずの白子の姿が何か壮絶な別のものに見える。

「……ッくぅ!」

しつこく小さな舌を愛撫していたアベリオンの舌先が、裏側の最も奥深く
舌の根の脇を強めにつついたとき、ひときわ大きくシーフォンの身体が跳ねた。
硬く尖らせた舌先でそこをえぐるように何度も刺激されると
意思に反して水っぽい唾液がとめどなく溢れてくる。
飲み込む隙すら与えられないたっぷりの水の中を掻き分けるようにしてまた舌を吸われ
シーフォンは唇の端からその唾液と共に殺しきれない声をこぼした。

「ふぁ、ぁ、んぅ……っ!くぅっん……ッ」

アベリオンを逃がすまいと柱に押し付けていたはずの腕は、
いつの間にか弱々しく彼の外套を掴んで縋りつくだけになってしまっている。
切なげに寄せた眉の下で閉じられた瞼の下には、わずかな涙が滲み、
赤い鬼火がそれを強く照らし出していた。

(も、う…………っ)

彼が覚えているのはそこまでだった。

―――

「――――はっ!?」

翌朝、シーフォンはひばり亭にある自室の寝台の上で目を覚ました。
目が開くと同時に反射的にがばっと起き上がった上体に、自分で驚いてしまう。

「……え……?」 <> Ruina アベリオン×シーフォン 12/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:33:16 ID:OIglESLW0<> じっとりと寝汗をかいた額に手を当て、シーフォンはしばらく状況を把握する事が出来なかった。
まず自分がどうしてベッドに寝ていたのかがよく分からない。その前後の事も。
なんだかとんでもない事をしてしまったような気もするが、
それらを正しく認識する事は彼の寝起きの頭には荷が重かったようだ。

「や、やな夢だった……」

ばくばくと脈を打つ胸に手を当て、シーフォンはため息と共にそう呟いた。
眉間の辺りが痛む。きっと飲みすぎたせいだろう。
だからあんな、普段の悪夢ともまた違ったヘンな夢を見るんだ。
シーフォンは自分自身をそう納得させ、
もう一度ベッドに沈んで寝直そうかとも考えたが

酒のためかどうにも喉が渇いており仕方なく階下へ降りることにした。
唇の少しひりつくような感じも、乾いているためだ。水を飲めば治る。
普段から整っているとは言えない髪を更にぼさぼさにしたまま、
シーフォンはふらふらと部屋を出た。しかし、廊下を半ばほど行ったところで
階下から上がってきたアルソンと鉢合わせになる。

「あ、おはようございます!ちょうど今様子を見に行こうと思ってたんですよ」
「はァ?」

何を言ってるんだコイツは、とシーフォンは苦々しい顔をしてアルソンを睨んだ。
いつものことながら、よくも朝からこんなでかい声が出るもんだ。
頭に響くから黙れ。そう言いたかったが、
声に出すのすら億劫でシーフォンは視線に疑問だけをこめて投げつける。

「ゆうべ、またアベリオンさんと決闘したんでしょう?
 負けて気絶しちゃったからってアベリオンさんが
 ひばり亭まで運んできてくれたんですよ。
 さすがに階段を上がるのは無理だったから、僕もお手伝いしたんですけど。
 完全に失神しちゃってましたから、覚えてないですよね」 <> Ruina アベリオン×シーフォン 13/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:34:54 ID:OIglESLW0<> 「…………は?」

先ほどと、音はほとんど同じでありながら、意味は全く違った言葉がシーフォンの口からこぼれた。

「なん……何だって?」
「んん、決闘の事も覚えてないんですか?大丈夫です?頭とか打ったのかな」

「触んじゃねえよボケなす!!」
「わ。それだけ元気があったらきっと大丈夫ですね」

シーフォンの頭にこぶやあざが出来てないかどうかを確認しようと、
おもむろに伸ばされたアルソンの腕を彼は勢いよく叩き落とし、ひどく慌てた様子で踵を返した。
アルソンはそんな事も気にせずに相変わらずニコニコと笑っている。

「ぼ、僕はもうちょっと寝る!今日は探索にも行かないからな!
 うあーあと水、水持ってこさせろっ」
「え、僕は今からテオルの所に行かなきゃ行けないんですけど」
「テメーに頼んでねえだろ!店員がいるだろが!」

それだけ言い捨ててバタバタと自分の部屋に戻っていってしまったシーフォンに
アルソンは首をかしげながらも、言われるまま元来た階段を下へと降りていった。

(うそだろ、うそだろ、うそだろ!!)


大きな足音とドアの音を立てて自室へと駆け込んだシーフォンは、
その勢いのまま狭いベッドへ飛び込んだ。
心臓は起きたときよりももっと派手に脈を打っている。
枕にうずめた顔が熱くなるのが、嫌気がさすほどはっきりと感じ取られた。
まさか、夢だと思っていたあんな出来事が現実だったなんて。
それが本当だとしたら、自分は進んでアベリオンにキスし、唇を吸われ、
挙句の果てに相手へ縋りつかないとならないほど感じさせられた上、気絶したということになる。 <> Ruina アベリオン×シーフォン 14/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:36:12 ID:OIglESLW0<> (うわああああ!!!)

今なら恥ずかしさで死ねるのではないかとシーフォンは思った。
あまりの事態に、両腕でがっしりと枕を抱きかかえたまま
寝台の上をごろんごろんと左右に転がってしまう。
しかし、じたばたと身悶える彼の身体は軽いノックの音によってその動きを止められた。
驚きにびくりと身体全体が揺れる。
一瞬口から心臓が出そうになってしまったシーフォンだったが、
すぐに店員が水を持ってきたのだろうと思い当たった。
慌てて毛布を被り、さも具合が悪くて寝ていますという状況を作り出す。

「あ、開いてる」

できるだけ平静を装って出した声は、それでも少し上擦っていた。
その返答を聞いてノックの主が片手でドアを開けて入ってくる。
もう片方の手に持った盆の上へは水差しとグラスが確かに乗っている。

「おはよ」

しかし、にっこりと微笑んだその上の顔は、シーフォンが今最も見たくないものだった。

「て、てめ……っ!?」
「今朝食の時間帯で、オハラさんもフランも忙しいから。僕が持って来たんだ」

窓からの朝日に照らされて、
白金色の髪の毛だけでなく睫毛までもが輝くような彼の姿は、
昨夜の鬼火に照らされた姿とはまるで別人のようだった。
同じ微笑みのはずなのに、闇の中で霞んだ目の向こうに見たものと
今の光の中のものはとても同じものだとは思えない。

「やややっぱりいらねー!帰れ!!」 <> Ruina アベリオン×シーフォン 15/15<>sage<>2010/06/13(日) 00:37:52 ID:OIglESLW0<> あんな事があったというのに、どうして顔などまともに見られようか。
涙目で言い放ったシーフォンに、アベリオンはひとつ小首を傾げたものの
そのままずかずかと部屋へ入ってきてしまった。

「どうして。喉渇いてるんでしょ?」
「いらねえっつったらいらねえ!」
「朝は水分取らないと身体に悪いよ」

寝台のヘッドボードに背中が付くほどずり上がり、
枕を抱えたままわめくように拒絶の言葉を吐くシーフォン。
しかしそんな彼の様子を気にする風でもなく
アベリオンはサイドテーブルへ水差しの乗った盆をことりと置いた。

「いつもの事ながら、わがままだなあ」
「嫌ならさっさと出てけよ!?」
「身体は大丈夫?ごめんね、まさか気絶するとは思わなかったから」
「〜〜〜〜〜ッ!!!」

シーフォンは、それでなくとも赤かった顔を耳まで真っ赤にしてしまった。
明らかに狼狽したその肩をアベリオンが乱暴でない程度に掴む。
押し倒されたと気づいたのは、乱れた自分の髪が顔にかかってからだった。
抱えていた枕が二人の間でぽふんと音を立てる。

「――口うつしで、飲ませてあげようか?」

逆光の中で見上げた微笑みは、やっぱり、昨夜鬼火と共に見たものと全く同じだった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
いつも、自分から仕掛けては返り討ちに遭うしーぽんが好きです。
途中名前欄の抜けや中断など、お見苦しい点がありましたことをお詫びします。
失礼しました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/13(日) 21:49:49 ID:SBzYik4DO<> 乙
ぬとぬとしたアベシーキス対決きたあああああ!!
このゲームは私たちにとって嬉しいイベントがありすぎる。 <> 風と木の名無しさん<><>2010/06/14(月) 00:40:02 ID:95eeKwc+O<> >>226
遅レススマソ
まさか税男のSSが読めるとは…!
二人の会話がナチュラルに脳内再生されて萌えた
激しくGJ! <> 朱の魚 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:29:17 ID:/0KO1tr90<> >PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの飛来と武智の子供時代の話。エロは無し。
本編がツライ展開なので過去に遡ってみた。



そこは小さな庭の向こう側にあった。
日が落ち、辺りが暗くなり出した夕暮れ時。
人の気配のある居間の前を背をかがめて通り抜け、辿りついた障子戸の前で、収次郎は一度息を整える。
この向こうには小さいけれど、それでも独立した子供部屋あった。
そこにその人はいるはずだった。
もし眠っていたら、これだけを置いて帰ろう。
思いながら視線を落とした先には、しっかりと両手で握り持たれた少し太めの竹の筒がある。
それを片手に持ち直し、空いた手でそっと引いた障子。
中には一組の布団が敷かれていた。
そしてそこから、
「誰じゃ?」
この時、密かに零された声とゆっくり起き上がる人影。
あぁ、起こしてしもうたか。
瞬間、思う心にあったのは申し訳なさと……それでも会えた嬉しさ。だから、
「わしです。」
小さく告げ、顔を上げた。そんな自分にこの時、寝巻き姿で上半身を起こした武智は、微かに
驚いたようだった。 <> 朱の魚 2/7 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:30:36 ID:/0KO1tr90<> 「体の具合はどうですろうか?」
明かりを灯さぬ薄暗い部屋の中、襖一枚を隔てた隣の部屋にいるだろう家人に気付かれないよう、
声をひそめて尋ねる。
そんな収次郎にこの時武智は、静かな笑みを浮かべながら「なんちゃあない」と答えてきた。
「ちっくと熱が出ただけじゃ。心配してもらうようなもんではない。むしろこんな夏に風邪を
ひくとは情けない話じゃ。」
自戒を込めたように呟かれる。それに収次郎は、そんな事はないですろうとしか返しようがなかった。
武智はこの春から一人、城下の剣術道場に通っていた。
そこは上司の子弟が通う名門道場で、白札とはいえ下司には変わりの無い武智が入門出来たのは
異例の事だった。
腕はある。それでも気苦労は絶えないだろう。それが祟っての今回の季節外れの熱ではないのか。
武智が倒れたという話を聞き、仲間内で口々に語りあった事を思い出しながら収次郎が視線を
上げると、そこには記憶のものより少し痩せたように見える武智の顔があった。
だからそれに思わず眉根が寄ってしまう。
するとそんな収次郎を安心させるかのように、武智はまたも穏やかに笑うと、その口を開いてきた。
「みんなは元気かえ?」
道場に通うようになってから会う回数の減った、そんな幼馴染の者達の事を気にかけてくる。
それに収次郎は素早く頷きを返した。
「みんな元気すぎるくらい元気です。特に伊蔵は武智さんに会いたいと毎日うるさいくらいじゃ。
それを涼真がなだめながら世話を焼いとりますき。」
「涼真が?」
「あいつもここんところ背ばかり伸びてと思うちょりましたが、中身も多少は成長しちょるようです。」
「またおまんは、そう言うきつい物言いをして。」
精一杯大人ぶりながら発した言葉。けれどそれに武智はこの時、怒ると言うよりはたしなめるような
苦笑を洩らしてきた。そして、
「そんなに無理をせんでもええぞ。」
ひそりと落とされた呟き。それに収次郎がえっ?と視線を上げれば、その先で武智はなにもかも
見透かしたような口調で告げてきた。 <> 朱の魚 3/7 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:32:06 ID:/0KO1tr90<> 「おまんが年の割にはしっかりしちゅうのは昔からやけんど、それでも涼真とは同い年やし、
伊蔵ともさしては変わらん。それなのにわざわざきつい事を言うてつきあい方をおかしゅうせんでもええ。
今はこんな不甲斐ない事になっちゅうけんど、何かあった時の面倒はわしがみちゃるき。
おまんらは仲良うしいや。」
「……武智さん…」
「おまんはいつもがんばって、わしの代わりをしてくれようとしとるからのう。」
言いながら穏やかな笑みと共に、腕が伸ばされる。
そしてその手で優しく撫でられる頭。そのくすぐったくもあまりに守られている感触には、瞬間
収次郎の中で膨れ上がる感情があった。だから、
「代わりやなんて…思うた事ありません。」
少しだけ瞳を伏せながら言う。
「武智さんの代わりになんか、わしがなれるはずがない。わしは…わしはただ…」
少しでも助けになれたらと………
幼馴染といいながらも、自分達の集まりの中で武智は一人、その年も分別も抜きん出ていた。
だから何事も一人で背負いこみ、矢面に立たされ。
そんな武智の背中を自分はいつも頼もしく見上げていた。
すごいと尊敬し、憧れ、そしてそれと同時に少しだけ……淋しそうだとも。だから、
「わしは知っちょりますから。武智さんが……実はめっぽう、淋しがりやや言う事を…」
それは深い考えも無く、思わず口から出た言葉だった。
「収次郎?」
それ故、次の瞬間怪訝そうに呼ばれた名。それに収次郎ははっと我に返る。
「あっ、いえ、これは…そのっ」
たまらずしどろもどろになってしまう。そしてその先が紡げず、どうしようにもなくなって固く目を閉じ
うつむくと、そんな自分に少しの間の後、武智は小さな問いを発してきた。
「もしかして、だからそれなのか?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
だから恐る恐るもう一度目を開け、顔を上げれば、そこにはこちらを少し困った様に見つめながら、
その視線をすっと自分の横合いに落としてくる武智の瞳があった。
思わず反射的にその視線の行く先を追ってしまう。
するとそこには正座する自分の隣り、部屋に上がりこんだ時から置いてた竹の筒があった。
武智の見舞いにと持ってきた、その中には一匹の赤い金魚が泳いでいた。 <> 朱の魚 4/7 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:33:24 ID:/0KO1tr90<> 病床の武智に何を持ってゆけばよいか、散々に考え、その上で子供のこずかい程度で買えたもの。
当初は彼が眠っていたらこれだけを置いて行こうと思っていた、しかし会えた嬉しさからすっかり
渡す事を忘れていたその赤い魚を、収次郎は慌てて差し出す。
「すいませんっ、これ、一匹しか買えんかったがですけど。」
両手で捧げ持った、それを武智はこちらも両手で受け取る。
そしてその中を見、微かに口元をほころばせながら、それでも武智はこの時こう言った。
「やはり、無理はせんでもええぞ。」
「えっ?」
「せっかくの小遣いをわしの為なんぞに。」
気に入っては……もらえなかったのだろうか。
向けられた言葉にやはり無難に菓子くらいにしておけばよかったか、と瞬間収次郎の胸に
重い後悔が圧しかかる。
けれど、そんな収次郎の心中とは裏腹に、この時武智のどこか軽やかな声は続いた。
「こんな事をしてくれんでも、わしはわかっちょるから。」
それはどこかで聞いたような言い回しだった。
それゆえ収次郎がはっとその目を上げれば、その正面、武智はこちらをじっと笑みを含んだような
目で見つめながらこの時、密やかな声で告げてきた。
「おまんが、実はまっこと優しい男や言う事は。」
言葉が出なかった。それどころか息をするのも忘れ、ただ目の前の人を見つめてしまう。
しかし、その時、
「…っ、収次郎!ちっくとこっちに来いやっ。」
突然、鋭く言われその手首を掴まれた。
それを強く引かれ、意味がわからないまま布団の中に引き入れられる。
「武智さん?!」
「静かに、」
かける声さえ制せられ、抱き込まれる胸元。その上に武智はこの時、2人の身を頭から覆うように
布団を被せてきた。
いったい何が?
動転し、混乱するその耳に、その時布団越しすっと何かが開かれる音が聞こえた。 <> 朱の魚 5/7 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:35:41 ID:/0KO1tr90<> 自分を抱き締めてくる武智の胸の鼓動が早まったのがわかる。
そのまま押し殺される息。
そんな武智の気配に包まれてどれくらいの時がたったか。
「もう…大丈夫かのう。」
不意に頭上で呟きが零されると同時に、拘束の力が緩められ、武智の身がゆっくりと起こされる。
覆っていた布団が剥がされ、籠もった熱い空気が解放される。
上げる視線。その先で、武智はこの時部屋の襖の方をうかがう様に見遣り、そこに何の変化も
無い事を認めると、その視線を今度は布団の中でまだ起き上がれずにいる収次郎の方へと戻してきた。
「声に気付かれたかのう。様子を見に来られたようじゃったが、見つからずにすんで良かった。」
彼にしては珍しい悪戯めいた口調で囁かれ、その手を伸ばされる。
起き上がる手伝いの為の。しかしそれを収次郎はこの時取る事が出来なかった。
「…だっ、大丈夫ですき…」
なんとかそれだけを言って自分で起き上がる。
すると武智はそれにはもう何も言わず、その代わりすぐにその視線を布団の影になっている部分へと向けた。
「これも見つからずに済んだようじゃ。ありがとうな、収次郎。大事にする。」
言いながら再び手に取られたのは、筒の中の金魚だった。
優しい声色。穏やかな笑み。告げられる感謝の言葉。そして……
それが限界だった。だから、
「あのっ…わし、そろそろ帰りますき。」
「そうか?」
「武智さん、お体には気をつけて。」
「おまんも、大分暗くなってきたから帰り道には気ぃつけや。」
こそこそといとまの言葉を交わして、逃げるように飛び出た武智の部屋。
辞する時、武智の顔をまともに見る事が出来なかった。
行きにあれほど気をつけた庭先をどのようにして駆け抜けたか。暗い夜道をどんな風に家まで辿りついたか。
記憶は一切ない。
ただ一つ覚えているのは…熱。
夏だった。昼の熱気がまだ冷めやらぬ外の空気は蒸し暑く、しかしそれ以上に熱いのは記憶の中の温度。
覆う布団の中で抱き寄せられ、閉ざされた視界の代わりに触れて知った感覚。
わずかに着崩れた襟元からのぞいた肌に押し当てられた自分の頬がそれからいつまでも熱かったのは、
おそらく彼の人の病のせいだけではないはずだった。 <> 朱の魚 6/7 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:37:38 ID:/0KO1tr90<> 「収次郎が寝込んだ?」
道場へ通う道すがら、久方ぶりに会った仲間達に捕まりそう教えられ、瞬間武智は驚いた声を上げていた。
「武智さんが治ったと思ったら、今度は収次郎さんじゃき。」
「いったい、いつ…」
「数日前やそうです。香尾が言うには夜遅くに帰ってきた日に鼻血を出して寝込んだんじゃと。」
「鼻血?悪い病気じゃないがか?」
「ここんところ暑かったからのぼせたのかもしれんなぁ。」
「収次郎さん、普段から血の気が多いからのぉ。」
心配しているのか、からかいまじりなのか。そんな言葉を交わす仲間達の中から、この時涼真が
自分に向けて、話しかけてくる。
「それで、今からみんなで収次郎さんのお見舞いに行こうっちゅう話になっちょったんですけど、
武智さんも一緒にどうですろうか。」
無邪気な声色。先日収次郎が言っていた通り、背は順調に伸びているようだが、まだ声に幼さの残る
遠縁の幼馴染に、武智は少しだけ返事に困る。
見舞いにはすぐに行ってやりたかった。
しかし自分も数日寝込んでいた分、道場通いをこれ以上休む訳にもいかず。だから、
「悪いが、今日は無理じゃ。その代わり……明日、明日うかがわせてもらう様にするからと、
収次郎や飛来家の方には伝えておいてくれ。」
そう告げれば、途端腰にぶつかるように巻きついてくる腕の感触があった。
「えーっ、武智さん一緒に行けんがか?」
見下ろせば、そこにはこちらを見上げてくる伊蔵の大きな目があった。
「せっかく久しぶりに会えたのに、一緒に行けんのはやじゃやじゃ!」
こちらは涼真より更に幼い仕草で自分に縋りついてくる。
そんな伊蔵の頭を、武智はこの時優しく撫でてやった。
「すまんな、伊蔵。今度また時間作るき。そん時また一緒に遊ぼうな。」
「今度?まっことに?」
「ああ、まっことじゃ。」
言い含めるように告げ、その手を離させる。
そして「じゃあ、わしらは行ってきますきに」と立ち去る一団を見送って、武智は再び道場へのその歩を進めた。
<> 朱の魚 7/7 
◆DEP4IVx7X6 <>sage<>2010/06/14(月) 02:40:38 ID:/0KO1tr90<> 「収次郎が寝込んだ……わしが風邪をうつしてしもうたんじゃろうか?」
歩きながら数日前、夕暮れ時に自分を訪れ、見舞いの品を置いていってくれた収次郎の姿を思い出す。
あの時は元気そうじゃったが。しかし狭い部屋の中で、自分の寝ていた布団の中にまで引き入れて
しもうたからのう…
「もしそうなら収次郎には悪い事をした…」
そう一人ごち、武智は約束した明日へと思いを馳せる。
家にうかがうなら、今度は自分が何か見舞いの物を持って行かねばならない。
はたして収次郎は何が好きだったか。
記憶を辿り、考えを巡らせ、その末に武智は今日、絵具を買って帰ろうと思う。
色は朱。それで、
今晩、金魚の絵を描こう。

『わしは知っちょりますから。武智さんが……実はめっぽう、淋しがりやや言う事を…』

耳に蘇る収次郎の声。
自分にそう告げた彼にもう一匹同じ金魚を与えてやれば、それはそろいで淋しさも少しは減るだろうか。
思う脳裏にひらりと赤い尾ひれが揺らめく。
それはこの時、優美な色鮮やかさで収次郎を想う自分の心を染めていた。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
放送で思いっきり金魚が大写しになって焦りまくったのはナイショ。
専スレで今もシュージローが元気なのは癒しです。


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/14(月) 16:20:13 ID:LS5bKxqXO<> >>269
GJ!
みんな可愛いなあ。ほのぼのした
姐さんの文章好きなんで、また読めて嬉しいです <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/14(月) 16:45:06 ID:3vGQvdNzO<> >>269
優しい言葉、態度=優しいではないですよね
収が優しい人間であることを幼いころから見抜いてるタケチさん…きゅんとしました
そっちの目覚めの相手もタケチさんて収カワユスw
<> 俺たちは攘夷じゃない!1/7<>sage<>2010/06/14(月) 22:35:49 ID:MOHToD8N0<> 某リョマ電
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


元治元年(1864年)6月ついに捕縛されたイゾは土佐へと戻された。
ゴトウショジロは苛立っていた。
再三、容堂公へ「オカダイゾへの尋問を厳しゅうさせてつかあさい」との上申したが許されなかったからである。
学のない、志の無いイゾである。ショジロにとってみれば、容易くトーヨー殺しを自白しそうであるだけに、ぬるいヨードー公の対応に苛立っていた。
<> 俺たちは攘夷じゃない!2/7<><>2010/06/14(月) 22:37:59 ID:MOHToD8N0<> その苛立ちは牢の中のイゾに向けらた。
「わしゃ、なんちゃ知らん・・・」
人斬りが鮮やかなだけに、京では怪物のように形容されていたが、後ろ手に縄にされた本人は存外に幼い子供の様でもある。しかし、人を殺めた狂気が澱のように瞳の奥底にたまり、ソクっとするような色香がただよっているのも事実である。

「正直に言わんと命は無うなるぜよ」
「タケチセンセに合わせてくれ・・」
イゾはその、一点張りである。

「なんで、牢問ができんがですか!!」
取り調べ役の牢番の訴えは、そのままショジロの気持を代弁していた。
寛保2年に制定された公事方御定書によって、笞打・石抱は「牢問」、海老責・釣責は「拷問」というように区別して呼ばれ、実施には容堂の許可が必要だった。
『笞打のための箒尻や石抱きをさせる十露盤(そろばん)板も伊豆石も既に用意させているのに・・・』後ろ手に縛られ、自由を奪われたイゾの顎をつかみ、上を向かせる。ふと、ショジロの眼にはだけた合わせの肌が目に付いた。
<> 俺たちは攘夷じゃない!3/7<>sage<>2010/06/14(月) 22:46:37 ID:MOHToD8N0<> 「大殿さまの命令で、拷問はできんがのぅ・・・」にやりとショジロは垢じみた着物から露出されている若い肌に目をやると、白い歯をほころばせた。
なまじ、整った容姿なだけに笑みの記号をつくりながら、全く笑っていない輝いた目は、牢番の背筋をぞっとさせた。
しかし、輝いた目むけられた、当のイゾは「タケチせんせいに逢わせてくれ、お願いですきに」と哀願を繰り返すだけである。
巷で知られる殺人鬼とは相反するその振る舞いがどれだけ、保護欲と加虐欲をかきたてさせるか、本人に自覚は無かった・・・。 <> 俺たちは攘夷じゃない!3/7<>sage<>2010/06/14(月) 22:48:48 ID:MOHToD8N0<> イゾは、突然、わけもわからず、引き立てられた。
どこに連れ去られるか知らされぬまま、二人の牢番に引きずられるように引ったれられて、牢の外に出され、前を歩く大観察の象二郎の後を続く。
不思議なこしらえをした牢の前に引き立てられたとき、「イゾー!? イゾー!!」突然に懐かしい声が以蔵の耳にはいった。「・・・タ ケ チ・・先生・・・?」
目を見開くイゾの前に、夢にまで見た姿があった。背が高くで美丈夫な男は幼馴染みであり、師であり、そして自分を駒のように扱い、身体に記憶を刻みつけ、どこにでも行けばいいと言い放ち・・・、だけどイゾにとっては本能で求めてしまう男。
「先生・・・」
「生きとったかイゾ!」
やつれた、げっそりとした頬に無精ひげ、余計ものがそげ落ちて、昔の頃のようなタケチが自分に「よかった。よかった・・。」と語りかける。
ずいぶん昔であり、つい今しがたのようでもある。「先生まで・・牢にいれられちゅう!?どういで?」イゾは混乱した。自分が人切りであり、罪人であるのは自覚できていた。
しかし、立派な士志であるタケチ先生が牢にいれられているのかイゾには、理解できなかった。
「どういで、せんせまでこんな目にあわされるですろ?」「イゾ、大きい声だすなや」
「なんちゃ喋っちゃいかん」イゾに理解できたのはこの言葉だけだった。
唐突に「オカダを戻せ、オカダをもどせ!」苛立ちを隠そうともしないショジロの声がが二人を引き裂いた。 <> 俺たちは攘夷じゃない!5/7<>sage<>2010/06/14(月) 22:50:37 ID:MOHToD8N0<> 「いやじゃ、いやじゃわしは先生と一緒にいたい。先生!・・・・タケチせんせ・・・」
捕縛され、衰弱しきっていたと思われた以蔵にどんな力が残っていたのか、後手にしていたにもかかわらず、やっとのことで牢番二人掛かりで元の牢に戻された。
暴れたせいで、左肩がはだけて、肩から胸にかけて露わになっている以蔵にむかってショジロはにかっと笑った。
「牢問は許されとらんきにぃ」そういいながら、着物の前をはだけさせると下帯の上から、むずっとイゾの中心を握った。
「・・!」ショジロの唐突な行動にイゾははっと目を開きショジロを見つめる。「ほう、犬猫以下の下士じゃ思うとったけんど・・・。」
嘲笑うように下腹部に刺激を与える。捕縛されてから、全く自由がきかなかったイゾの男の性が少しの刺激で反応する。
生理的快感を恐れて身体全体をばたつかせて、ショジロから逃げようとするイゾを面白そうに見つめ、「動かんように押さえつけちょれ!」二人の牢番に命じる。
首縄をつけられ、両手は後ろでに縛られたまま牢の中で仰向けに二人がかりで押さえつけられたイゾには抵抗するすべはなかった。
<> 俺たちは攘夷じゃない!6/7<>sage<>2010/06/14(月) 22:55:51 ID:MOHToD8N0<> あがらったのために大きくはだけた着物合わせをさらに開き、胸まで露わにさせる。
瑞々しい野生の獣のような滑らかな肌が与えられた性的な刺激に艶めかして波打つ。
「残念じゃのぅ。おなごのような顔をしちょうが、乳房は無かがか。
牢問は大殿様から許されとらんきに、・・・かわいがっちゃるがのう」そういうと、胸にまわされた荒縄を上下させて、以蔵の胸元を乱暴こする。
「・・・あっ・・」垢と埃に隠れていた、突起がこすられて、充血しぷっくりと赤みを帯びて膨らみ、浜にうちあげらた魚のように身体がびくんと反応した。
以蔵目の縁に朱が走ったのを象二郎は見逃さなかった。
 「タケチィがしたようにしちゃろうか。ありがたいと思いや。タケチにおまんの声をきかせてやりや。」
 「タケチ」という単語に以蔵が面白いようにと反応し、いやいやをするように首を振る。「先生はそんな人や・・ひっ!」充分に弄んだ以蔵の幼さの残る中心から出た先走りのぬめりを手助けにに以蔵の後孔を指で拡げる。

土佐藩は江戸末期になっても衆道の風習が盛んな藩である。
以蔵は象二郎の意図することが解らないほど初心ではない。
元服した後も、女っ気のない土佐謹皇党で、からかい半分に押し倒されたこともある。
しかし、以蔵の剣の腕前を知っている党員は強引にコトに及ぶことはなく、タケチ先生、リョマ以外に気をやったことはなかった。
ショジロは僅かに袴の下肢をくつろげると、おののく罪人の上に強引に伸し掛かった。
股を強引にМ字にひろげ、膝が両耳の横にくるまで折りたたむ。
こうされると、後ろ手に縛られた以蔵には抵抗の余地がない。
<> 俺たちは攘夷じゃない!6.5/7<>sage<>2010/06/14(月) 23:00:52 ID:MOHToD8N0<> 「あ・・あぁ」充分にほぐれていないところにねじ込まれて、痛みに呻く声色の甘さに、ショジロの余裕が無くなる。
イゾが楽になろうと、息を吐いた瞬間、さらに腰を進め、乱暴に抜き差しを行った。
一方的に自分が満足すると、ショジロはイゾを壊れた玩具のように解放した。
懐紙で自分の逸物だけ清めると、汚されたイゾはそのままに、牢を出た。
「タケチ・・センセィ・・」二三歩して、牢から声にならない声が聞こえて、ショジロは、キッと目を吊り上げて振り返った。胎児のように身体を丸め、キツク眉根をしかめた以蔵が唇だけ動かしていた。
<> 俺たちは攘夷じゃない!7/7<>sage<>2010/06/14(月) 23:03:41 ID:MOHToD8N0<>  タケチはほんの一瞬逢えたイゾの姿に心乱されていた。
その意味ではショジロが突いてきた急所は的確だったといえる。
タケチにとって、イゾは攘夷という大義のためのコマにすぎないはずだった。
しかし、自分を崇拝するのが充分すぎるだけに、暗殺者にしたてあげた自分が厭になる存在でもあった。
自分のために人斬りをするイゾに自分の醜さを見るようであった。
暗殺の褒美にと、自分との繋がりを求める以蔵に、自己嫌悪に陥り、次第に邪嫌にしか扱えなくなっていった。
「どこいでも行け!」非道な言葉を投げかけ、遠ざけた。
「思想」ではなく、「情」で自分に付いて来て、思想のためではなく自分のために、人斬りとして孤独・孤立の道を歩ませてしまった弟子。
一度は念弟して身体を繋いだ中だけに、瑞々しい若木のような身体を知っているだけに、心は乱された。

 「タケチィ〜。大殿さまから、イゾの牢問が許されたがや」ニヤッと狂気じみた笑みを浮かべ、ショジロがわざわざタケチの牢へやってきたのは、それから間もなくしてのことだった。
「ここまで聞こえるよう、いい声で鳴かせちゃるがや・・・」
<> 俺たちは攘夷じゃない!ストップ<>sage<>2010/06/14(月) 23:04:31 ID:MOHToD8N0<>
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/15(火) 00:27:38 ID:h7zGFuK50<> イゾ受けをここで初めて読み、最後までドキドキしました。
ショジロ何だかんだ言ってさっくりイゾに欲情する様がいい!
幼さと色気の融合したイゾ、滾りましたー!!!
また続編or別シチュもどうかお願いします。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/15(火) 01:42:03 ID:wAG3M1VGO<> >>269
姐さんのシュータケがほんと好きだ!
また読めてうれしかったです
GJ!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/15(火) 09:37:45 ID:vYiYiIYj0<> >>278
うおおおGJGJ!!
最近テレビの前でのた打ち回るぐらいイゾが好きなので、
がっつり萌えました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/15(火) 22:22:19 ID:h7zGFuK50<> >>137
どうか、どうか。
その後のお話をお願いします
事後とかw
どうかーーーー!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/16(水) 22:35:25 ID:XHUuAEJu0<> 亀も亀レスですが、>>80GJGJ!
アホの子かわいくて萌えビッグウエーブ
サークル時代から先輩悶々としてたのかなーとか想像しちゃう
アホの子Lサイズに泣かされるといいなあ〜
これで終わりもいいまとめかたですが、続きあるならゼヒゼヒ! <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん<>sage<>2010/06/17(木) 05:58:01 ID:SXIvBCz80<> 度子藻の釣り針がデカすぎてガッツリ釣られてやっちまったものです…ぬるくてすいません
携帯の機能とか、最新機種うんぬんに疎いので、そこらへんあやふやです
CM通り、犬さんが携帯の擬人化なので苦手な方はご注意下さい
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん1/6<>sage<>2010/06/17(木) 05:59:29 ID:SXIvBCz80<> 「じゃじゃーん」
「…あ」
「いいだろ〜」
「おぉー、見せて見せて」
同僚が携帯を新調した。最新型の人気モデルだった。
シンプルなデザインとパソコン並の機能性が、いかにも出来る男のマストアイテムとして華を添える。
地味に選びがちなカラーは鮮やかなライトブルーでカバーしていた。しかもよく見ると洒落た有名ブランドとのコラボだ。
「カッコイイじゃん。…ってか、また変えたのかよ」
「こっちもね」
「あ」
スッと目の前に出てきた財布にも呆気に取られてしまった。確か先週、テレビで話題になってた夏の新作じゃないか。
彼が社内で断トツにモテる理由が分かる。イケメンで性格が良い、だけじゃない。この男はまめだ。
流行に対して常に敏感で、自分への投資を惜しまない。スーツや靴、髪型に至るまでとことんやる。だが、さりげない。
こういう奴は人間関係も素晴らしく要領が良いわけで。ああ、なんてずるいんだ。
…などと小さい僻みを持ったりしている自分の性格はというと正反対。結果は言わずもがな。溜息の一つや二つも出るもんだ。
「溜息つくと幸せが逃げてくぜー」
「どーせ俺はがさつです。そこまで気ぃ使うなんて面倒くさいだろ」
「それがダメなんだよ。小さい事にも気を抜かない!競争率が激しい時代だからなっ!」
「なんの競争だよ…」
「そういやお前、今日携帯は?」
「……家に忘れた」
「そういうところだぞー。今日、合コンだったらどうすんだよ。土砂降りのベンチに忘れてくるなんて間抜けな事も、もうすんなよ」
「分かってるって!」
痛いところをつかれて慌ててビールを一気に喉へ流し込むと同僚は爆笑した。
よく物を落とす。忘れ物も、遅刻も、その他色々やらかす。
人間だからしょうがない、とは言ってられない程おっちょこちょいなのは自覚していた。こればかりは何故か小学生から直ってない。 <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん2/6<>sage<>2010/06/17(木) 06:00:15 ID:SXIvBCz80<> 居酒屋に入ってかれこれ二時間弱、気分が緩んでいたせいか口元がむずむずしていた。
目の前のイケている同僚に話してみようか、という考えが頭をよぎる。
ずっと秘密を抱えていると、関係無さそうな人にさらりと言ってみたくなるという事はないだろうか。
ここ最近、奇妙な出来事に巻き込まれていた事をふと思い出したのだ。同僚が携帯なんぞ新調するからである。
その奇妙が、当たり前の様に生活に馴染みすぎていたせいもある。よくよく考えれば奇妙どころの騒ぎじゃない出来事だったのに。
言うか言うまいか迷っている間に、勝手に口が開いていた。
「携帯」
「んー」
「おまえの…その新しい携帯」
「何?」
「それさ、…喋る?」
「おいっ!電話は喋るためのもんだろー!…うーん、今のはあんまウケないな」
「違くって……わ、笑ったり、とかさ、心配してくれたり、いじけたり……し、ないよ、ね」
「…は?」
「俺の携帯…、その、たまに…お、俺の隣に…ほら、いるの…見えるかなー?なんて…はは、は…」
「………え、…は?」
「うわあああ!ごめん!ごめんマジでごめん忘れて!つか頼む忘れてくれえええ!」
壮絶に後悔して額を勢いよく下げると、ポンポンと背中を叩かれた。
「今度、誰か良い子紹介するよ…。希望、持てよ。な?まだ若いし…大丈夫だって」
「………」
慰めを含んだ反応を返されて、情けなくなりながらも心の底で安堵する。
彼女にふられたショックと酒で変な事を言い出したと思ってくれた同僚は、律儀にタクシーを捕まえて車内に放り込んでくれた。
やっぱりまめだ。モテる男はここが違う。
トチ狂ったわけじゃない。いや、最初は頭がおかしくなったと思ってたが、違うんだ。
秘密がある。
一人暮らしなのに、部屋でアホみたいに喋るのは自分ぐらいなものだろう。
俺の携帯は、俺の携帯は、俺の携帯は…
側で笑ったり、心配してくれたり、いじけたりする、人間みたいな携帯なのだ。 <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん3/6<>sage<>2010/06/17(木) 06:01:20 ID:SXIvBCz80<> 自宅アパートの玄関を開けると、真っ暗な室内でチカチカと白い光が点滅していた。
電気をスイッチを押す前に、『彼』が鳴った。
「おかえりなさい」
「た、ただいま」
「ご友人と上司の方からお手紙、届いてますよ」
「あぁ、うん」
部屋の明かりを点けると、朝忘れて行った時と同じ状態で『彼』はベッドの上に正座していた。
携帯が正座をして、おかえりなさいと言う。これが秘密だ。

携帯デビューは遅咲きの高校生の時。
頻繁に新調する事は無いが、それでも人並みに飽きたりして何度目かの買い替えで立ち寄ったショップで
欲しかった黒いデザインは生憎どの機種も欠品だった。
その中で一つだけ、在庫一点と書かれた札をぶら下げた黒い携帯が目に入った瞬間、気づけばカウンターで購入手続きをしていた。
物に対して言う言葉じゃないが、運命を感じた。
しかし、だらしない性格は説明書を最も嫌う。その夜、扱い操作に匙を投げベッドへ寝転んだ時だった。
「もう少し構ってよ。ね」
知らない男の声に飛び起き、ベッドからずり落ちて尻餅をついた。
痛さなど感じる暇もない。叫び声も出ないぐらいの衝撃だ。
散らばった箱と説明書の側に、中年の男がいる。
思わず殺される!だの、襲われる!と身構えたが、男性は俺をまじまじとこちらを見ているだけだった。
「ど、どど!?ど、どちら様!ですかっ…!!?」
「えっ。…酷いなあ」
まとまらない思考でようやく出てきた言葉に、男は少し傷付いたような顔をしてから、柔らかく笑った。
「今日からあなたの側で役目を果たす携帯です。よろしくね」

朝、目覚めると夢じゃなかったことに再度、衝撃を受けた。
寝ている自分を、昨晩の男が覗き込んでいた。 <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん4/6<>sage<>2010/06/17(木) 06:02:20 ID:SXIvBCz80<> あれから三ヶ月。分かったことは、彼は本当に自分の携帯で、俺の頭はまともだったということ。
彼はどっかで見た俳優になんとなく似ている渋いイケメンで、どうやら他人には姿が見えないということ。
携帯なのに性格があったこと。
几帳面で世話焼きでとても優しい。意外とナイーブで茶目っ気がある。実は寂しがり屋だった。それと、雨は嫌いじゃない。
堅苦しいスーツを脱ぎ捨てて部屋着に着替えながら謝った。
「今日、忘れちゃってごめんね」
「遅刻しちゃった?」
「ぎりぎりセーフ!」
「それは良かった!」
「でもさ、参っちゃったよ。連絡取れないから課長にだらしないって言われちゃってさぁ」
「じゃあ、明日は連れてってね」
「もちろん」
彼の前に座って左手を握ってやると、シャツに浮かんでいた光が消えた。
人間でいう心臓あたりが彼のライトだ。左手は電源やクリアボタンらしい、というのは出会って一週間目で見つけた。
俺の携帯はもちろん服を着る。
今日はYシャツ姿のまま忘れてしまったので、新しくおろしたスウェットを渡すと喜んで着替えてくれた。
「あれ。お手紙読まないの?」
「んー、じゃあ変わりに読んで」
「いいの?」
「いいよ」
ニコニコしながら話し出す。彼の笑顔は可愛い。
「26日は接待ゴルフだって」
「はぁ!?マジで!?せっかくの休みだったのに…最悪だ…」
「ま、気楽に行きましょうよ。私も最後までお付き合いしますから。一緒に乗り切りましょう」
ふと彼の顔を見る。目が合って、彼が微笑んだ瞬間それは起きた。
胸がジリジリと痛い。まただ。
正直に白状すると、俺の頭はまともじゃない。
まともなふりをしていただけだと、思い知らされた。 <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん5/6<>sage<>2010/06/17(木) 06:10:11 ID:jrTCfONjO<> 数日前から、彼の存在にドキリとする事が続いている。
慌てて話題を変える自分が滑稽でならないが、滑稽でなければやってられなかった。
「あ、あのさ。ずっと聞きたい事があったんだけど」
「うん、なにかな」
「君と俺みたいなコンビって、その、他にいるの?」
「あぁ、私と喋ったりすることかな?」
「そうそう」
「んー………。……」
黙り込んでしまった。目を伏せ、眉根を寄せながら腕組みをしている彼は難しい顔で動かない。
(……なんか変な質問した?…よな、絶対)
沈黙に緊張していると、彼は静かな口調で言った。
「いますよ」
「へー…やっぱいるんだ…」
「でもすごく少ないかも」
「なんで?」
聞き返すと、困ったように彼は笑った。
こんな顔、初めて見た。そして、どうしようもなくなってしまった。
「お互い、愛着が沸いたり…思い入れが強くないとね、こんな風にはならないみたいで。
………私はずっと一人だったので。だから…少しでも運命を感じてくれたのが嬉しくてたまらなかった」
衝撃的な出会いの後、彼といることが安心に繋がって、一緒にいるのを心強く思う。
そしてあまりに彼が人間的で、あまりに自分の支えになっていた。
彼は携帯だ。自分は持ち主の人間だ。
彼を愛用しているどころの気持ちじゃなくなっていた。
ドキドキと脈打つ心音が耳に響きすぎて、クラクラしていると彼はまた優しく笑った。
ああ、もうダメだ。その花のような優しい笑顔が大好きなんだ。 <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん6/6<>sage<>2010/06/17(木) 06:12:35 ID:jrTCfONjO<> 「さ。疲れてるでしょう。そろそろ寝ましょうね」
「え、あ…そっか、そうだね」
電気を消して、彼の側に近づく。携帯とか、人間だとか、どうでもよくなるぐらい思考が回らない。
「…充電、しといていいかな」
「お好きにどうぞ。でも今日はあまり電池を使ってませんよ」
「ううん、俺の充電」
カーテンの隙間から僅かに漏れる月明かりで彼のきょとんとした顔が見える。
そのままベッドの上の彼に覆いかぶさる様に倒れ込んだ。
抱きついたせいで顔は見えないが、いつも穏やかな彼がすこしばかり動揺しているのが伝わってくる。
つい悪ノリしてギュッと肩口に顔を寄せると、しばらくしてから彼は素っ頓狂な事を言ってのけた。
「そんなに疲れてたんですか。充電しなきゃなんて、携帯みたい人だなぁ」
「あはは、それは君だろ」
また一つ分かったことがある。彼は中々の天然か、結構な照れ屋だ。そして俺は、かなりの甘ったれだった。
電気の熱かもしれないが、彼の温度だから心地よく体に入ってくる。そんな気がした。
「明日は朝はシャワーを浴びないと。6:30に起こしますからね」
「うん」
「テーブルの方に行ってましょうか」
「大丈夫、起きれるから…ベッドにいてよ」
返事の変わりに頭を撫ぜられる。彼の与えてくれる眠気が気持ち良かった。
明日は仕事帰りに、彼に似合うストラップを一緒に選びに行こう。
その次の日も、そのまた次の日もずっと一緒にいよう。
楽しいことも、辛いことも、いろんなことを一緒に経験したい。

俺には秘密がある。
それはとても、幸せな秘密だ。

END. <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん<>sage<>2010/06/17(木) 06:14:49 ID:jrTCfONjO<> CM見てリアルに萌え叫んだのは初めてです 息出来ないorz
これが公式が最大手ってやつですか そうかそうか <> 度子藻CM 雄火田×擬人化携帯・犬さん<>sage<>2010/06/17(木) 06:34:49 ID:SXIvBCz80<> 訂正
>>295 ×電気をスイッチ ◎電気のスイッチ
>>295 ×男性は俺をまじまじとこちらを ◎男性はまじまじとこちらを

すいませんでしたごめんなさいorz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/17(木) 10:49:35 ID:5ZJKNi4UO<> >>292

朝からいいもの読ませていただきました(´∀`)
GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/17(木) 12:35:06 ID:YP+7CdJXO<> >>292
ももも萌えた…!
あのCMを初めて観た時から夢見てたよー!
良いものを読ませて頂いてありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/17(木) 18:02:18 ID:eYlu6qLR0<> >>292
CM見た時から悶えてたんだw
誰か書いてくれないかと思ってたの
ありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/17(木) 18:58:17 ID:EKSNkJUV0<> >>292
ありがとうございます!
ばっちりあの二人の声で再生されましたよムハー!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/17(木) 19:58:50 ID:KGBK6Xy2O<> >>292
萌えたし面白かったし非常にGJ!
なんだか携帯を大切にしたくなったよww <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/18(金) 03:08:37 ID:7gAfBdFaO<> >>292
CMで萌え死ぬかと思ってたのがまさか棚に…超GJ!
相当久しぶりにこのスレ来たんだが運命感じましたw
萌えを本当にありがとう! <> 異邦人は苦労する 1/4<>sage<>2010/06/18(金) 14:14:56 ID:tfg2rnoVO<> >PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某洋ゲー『外世界』の教授と山下



 通風孔の細い柵から、淡く光が漏れる。下では、物々しい靴音が何度も行き来していた。
 レスターはその仄暗い闇の中で、張り詰めていた息をそっと吐いた。咽がカラカラに渇いている。一息つく間
もなく、もうずっと走りっぱなしだったのだ。
(コーラ飲みたい…)
 口の中に炭酸のあわ立つ刺激が蘇り、汗ばんだ咽がぐっと動いた。
 そろそろと手を脇腹にやると、突然、鋭い痛みが身体を走り抜けた。暗くてよく見えないが、掌が血でぬるりと
滑っているようだった。そうだ。そう言えばここへ来る途中、敵に撃たれたのだ。撃たれた時はジンジンと疼
いたが、走っているうちに、どういうわけだか疼きが消えていた。脳内物質が痛みを消したのか、それとも、こ
の異世界の未知の力か何かがそうさせたのだろうか。
 「異世界」という言葉を、レスターはもう一度口の中で呟いた。
 ふと隣を見ると、薄暗がりの中で、大柄の男が一人、見慣れない透明な四角い物体を何度も引きちぎり、手
の中でこね回している。
それが一体、何の物体なのか、レスターには分からない。いや、「彼」が何者であるか
<> 異邦人は苦労する 2/4<>sage<>2010/06/18(金) 14:18:22 ID:tfg2rnoVO<> も分からない。名前も知らない。何も分からないまま、「彼」と逃亡を続けている。
 全ての始まりは、粒子加速の実験中に起こった。一人研究所で実験の結果が出るのを待っていたとき、研究
所に大きな雷が落ち、一瞬にして視界が激しい白い光に包まれた。爆発音が耳を掠めたのを、おぼろげに覚
えている。そして、気が付いていたとき、レスターはこの世界に居た。
 右も左も分からぬまま捕らえられた先で出会ったのが、今隣に居る男だ。
 無論、言語は通じなかったが、意図するところは同じようだった。つまり、脱獄だ。最初は何かの罠かと疑った
レスターだったが、道中を共にするうちに、その誤解は解けていった。
 自分より一回り以上も大きな身体に似合わず、「彼」の動きは俊敏だった。これまで何度も窮地に追い詰め
られたが、いつも寸でのところで「彼」に助けられた。感謝の言葉の一つでも言いたいのだが、如何せん、言
葉が通じない。歯がゆさを抱きつつ、
(何にせよ、ここを出てからだ)
 自分に言い聞かせていた。
 トントンと肩に何かが当たり、レスターは振り返った。「彼」だ。「彼」が指
で自分の肩を叩いていた。
「何だ?」
 問いかけてみるが、答えは返ってこない。掌にある透明なジェル状の物体を指差しながら、「彼」は自分の
身体に塗りつけた。 <> 異邦人は苦労する 3/4<>sage<>2010/06/18(金) 14:26:08 ID:tfg2rnoVO<>  レスターは、あっと叫んだ。みるみる内に、血の滲んだ傷跡が消えていく。
「さっきから何してるのかと思ってたけど、そうか。つまりそれは、傷薬の一種だったわけか」
 なるほど、と感心していると、「彼」が自分の方を指差した。指の指し示す方へ視線を落とすと、脇腹の傷に
辿りついた。
(これで治せってか?)
 などと悠長に考えていた矢先、「彼」の手が服をめくった。驚くレスターを気にも留めず、「彼」は透明のジェ
ルを傷口に塗りつけた。
ジェルは膜のように傷を包み込むと、サアッと白く泡立ち、瞬く間に傷口を跡形もなく呑み込んでしまった。
 すっかり綺麗になった皮膚の上を、レスターは恐る恐る指でなぞった。全く信じられないことだが、確かに傷
も痛みも煙のように消えてしまっていた。
 顔を上げると、「彼」が心の底から嬉しそうに笑っていた。
 レスターは口をへの字に曲げ、もう一度、消えてしまった傷跡を見下ろした。一体全体、信じられない。信じ
られないが、現に自分はその一部始終をこの眼で見た。ならば、信じるしかない。
(ちょっと次元が違うだけで、世界ってのはこんなに不可解なのか?)
 尚も変な顔で傷跡を探っていると、突然、粟立つような刺激がレスタを襲った。
「ちょ…ちょっと、なっ……ンだよ、これ」
 背筋をぞくぞくとしたものが走り、手に力が入らない。前のめりに蹲ると、額から汗が一筋伝って落ちた。
 緩やかに息を吐きながら、レスターは砕け散りそうな理性の手綱を必死になって掴んだ。
 一瞬、毒という言葉が脳裏を過ぎり、レスターはその言葉を振り払うように激しく首を振った。
(こいつが嘘をつくはずがない…。ということは、この透明な物体はこいつらには適正な薬になるが、俺にとって
は過剰すぎる薬ということなのか?)
 その時、胸の先端が床を擦り、レスターの肩がびくりと震えた。
「…ア」
 声が漏れた瞬間、レスターは慌てて口を両手で塞いだ。
(まずい。い、今、へ、変な声上げそうになった)
<> 異邦人は苦労する 4/4<>sage<>2010/06/18(金) 14:30:54 ID:tfg2rnoVO<>  「まずい」という言葉が、脳の中で鐘のように反響する。身体の奥がジンと熱くなって、彼はぐっと目を
つぶった。
 目を開けた瞬間、大きな手が現れた。指の間から、「彼」が困ったような目で自分を見ていた。
 もう一方の手には、例のジェルを持っている。顔から血の気が引くのが、自分でも分かった。
「タ、タタ、タンマ!タンマ!タンマって言ってるだろ!!」
 レスターは遮二無二叫び続けたが、善意の手は止まらなかった。薬が効かなかったのかと思ったらしく、更に
丹念に傷口に塗りつけていく。
「…ん……ンンっ」
 「彼」の腕を払いのけようと思っても、力が入らない。痺れるような感覚が全身を覆い、思考力が削がれていく。
 このままじゃダメだと、心の中で叫んだ。だが、どうすればいいのか分からない。
 喘ぐような熱っぽい息が、口から漏れる。
 レスターはぐっと奥歯を噛んだ。
「……っるな」
 呟きに気付いたらしく、「彼」が小首を傾げる。その彼を、レスターはきっと睨んだ。
「だから、見るなって言ってるだろーー!!」
 俄然起き上がると、飛び掛るように「彼」の上に馬乗りになった。うろたえながら自分を見つめる目を、有無を
言わさず手で塞ぐ。そうして、声が漏れないように、着ていたTシャツの端を咥えた。
(こんな…こんな敵がうようよいる所で…)
 床下から響く慌しい靴の音で、心臓が破れそうだった。
 そろそろと、震える指先を下半身に潜り込ませる。目元がじわりと熱くなった。泣きそうだった。
 指の腹がそれに触れるたび、ぐっと背を丸め、必死になってシャツの裾を噛んだ。寄った眉間の間を汗が流
れ、床の上に滴り落ちる。
 情けなさと羞恥と快感がごちゃ混ぜになって、何も考えられなかった。 
 びくりと身体が震え、張り詰めていた体から力が抜ける。
<> 異邦人は苦労する 5/4<>sage<>2010/06/18(金) 14:37:01 ID:tfg2rnoVO<>  軽い虚脱感に項垂れていると、不意に、「彼」と目が合った。不思議そうな、真ん丸い目でこちらを見つめてい
る。
 それを見たとき、かっと頭に血が昇った。
「おまっ、おま、お前が!お前がこんな変なモン塗るから、こんな、こんな!バカー!バカバカーー!!」
 言葉は分からないが、怒られているのは分かったらしい。「彼」は飛び上がると、頭を抱えて逃げ出した。
レスターは顔を真っ赤にして追いかけたが、善良な友人を捉えて殴りつけることは、遂に出来なかった。


□STOP ピッ◇イジョウジサクジエンデシタ!
分母とか分子とかウッカリ間違えた
好きだぜ!
<> 「ヘンリーとうわきもの」1/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:25:54 ID:MK+mIBVF0<> きかんしゃ10マス。大型青×大型緑で擬人化梨でエロナッシン。
普通石炭使用時ヘンリーの性能並の脳みそから妄想絞りだしてみました。

少々、場所をお借りしますわ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

フライング・キッパーの日はとにかく早起きで、いつもの仕事より、余計に疲れる。
だから仕事が終えたらすぐ機関庫に飛び込んで休みたいところなんだけど……
今、ぼくは森で『待ちぼうけ』をしている。
「なぁ、ヘンリー。いつまで居る気だい?」
ぼくの機関士が、ぼくのバンパーの上で背伸びをしながら言った。
機関士の隣で寝転ぶ助手はもう夢の中。朝が早かったんだ、無理もない。
「お前が森を好きなことは知っているけど、森林浴にしては長すぎるんじゃないか?」
理由も言わずに長いことここを動かないから、そろそろ痺れを切らしてしまったみたいだ。
「ごめん。もう少しだけ……」
「はぁ。……わかったよ」
機関士は諦めたようにぼくのバンパーの上で横になって目を閉じた。長期戦の構えだ。
この人にはいつも迷惑をかけてばかりいるから、本当に申し訳ないと思っている。とても優しい人だからつい甘えてしまう。
理由を言いたくないわけじゃないけど、なんとなく、言えない。
待ち合わせの相手がゴードンで、愛の告白が目的だなんて、どう説明していいか判らないし。 <> 「ヘンリーとうわきもの」2/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:26:48 ID:MK+mIBVF0<> 今日はどうしても、ここでゴードンに会わなくちゃならない。
もうだいぶ前になるけど、ぼくはこの場所で、彼から愛の告白をされた。
突然のことだったから本当にびっくりして、混乱して、泣いてしまったけど、とても嬉しかった。
ぼくがずっとゴードンに憧れていた気持ち、それは恋だったんだろうって事は、あの時に理解できた。
「好き」なのは間違いない、けれど「愛している」と言えるかどうかは、正直まだ判らなかった。
だから、その場でははっきりとした言葉では答えられなかった。そして、その後、しばらく考えた。
ようやく気持ちがまとまったから、呼び出してはみたものの……
「待ち人来たらず……か?」
あれれ、寝たかと思っていたのに。
ソドー島に来た頃からの付き合いだもの、この人には、やっぱり隠せないかな。
「うん、実は……」
言いかけたとき、森の外から汽笛が聞こえた。

エドワードだ。
エドワードが森に来るなんて、珍しい事もあるものだ。彼は息を切らしながら走ってくると、ぼくに声をかけた。
「居た居た! ヘンリー、ゴードンからの伝言だよ!」
「伝言?」
「『すまん、今日は無理だ。』だって。これだけ言えば伝わると言われたけど、わかるかい?」
「う、うん。……わかるよ」
身体の力が一気に抜けていく。ぱんぱんに張り詰めていた気合が、蒸気を全部吐き出したみたいに空っぽになる。
機関士のため息も聞こえる。長々付き合わせてこれだもの。ため息も出るよね……。
「ゴードンに、急な仕事が入ったんだ。トップハム・ハット卿からの特別な仕事だよ」
エドワードが説明してくれる。
「臨時で客車を牽く機関車が一台必要になってね。ぼくがモリーを推薦したんだ。
だけど彼女は一度も客車を牽いたことがなかったから、ゴードンが教えることになったんだよ」
「そう……」
モリーはいつも空の貨車を牽いている黄色いテンダー式の女の子だ。
なるほど彼女なら、気が利くし丁寧な仕事をするし、客車を牽くのには適しているかもね。
観察力の優れた青い機関車は言った。
「待ち合わせしていたんだろう?残念だったね」
「あはは、そうだね……」
一言多いよ。 <> 「ヘンリーとうわきもの」3/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:28:04 ID:MK+mIBVF0<> ぼくはエドワードと一緒に、機関庫に帰ることにした。
というかエドワード、きみが推したならきみが教えればいいのに。
心の声が聞こえました、と言わんばかりのタイミングで、エドワードが言った。
「ゴードンはソドー島一上手に客車を牽ける機関車だから、教えるのもきっと一番上手だよ!」
……確かにね。
「それに、モリーもゴードンのことをとても尊敬しているから、彼女も喜んでいるよ」
その分、ぼくは悲しいんですけど。
モリーがゴードンを?それは初耳。尊敬だよね、尊敬。確認したいけど、確認したら怪しい。
エドワードは観察力が優れているけど、勘違いも多い。ぼくがモリーを気にしているなんて思われでもしたら大変だ。
それにしても、機関庫までの道がとてつもなく長く遠く感じる。
決心がそがれて気が抜けて、車輪が重い。
朝が早くて疲れていたのも思い出して、まぶたも重くなってくる。
途中、トンネルをくぐったら、上の路線をゴードンとモリーが重連で客車を牽きながら通過していった。
重連……『俺の走りを身体で覚えろ!』ってやつ?
指導は順調に行っているんだろうな。二台とも、楽しそうに笑っていたから。
きっと、下の線路に居るぼくには気付いていない。
胸の奥がもやもやしてきた。これがヤキモチってやつかな。
ごめんねモリー、きみは悪くない。それはわかっているんだけど。 <> 「ヘンリーとうわきもの」4/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:29:17 ID:MK+mIBVF0<> とにかく眠くなるのを我慢して、操車場まで帰ってきた。
「疲れているみたいだね。休む前に、身体を磨いてもらうといいよ。油を注したら、車輪もすっきりするよ。」
「そうだね、そうするよ」
「ぼくも手入れしてもらおうかな。こっちだよ」
エドワードはとにかく気を使ってくれる。
道中もぼくが居眠りしないように、ずっと話しかけてくれていた。
彼は何か気付いているかな?なんて、あるわけないか。
もう考えるのはやめよう。また、仕切りなおし……。
ぼくはエドワードに続いて、整備場へ向かった。
整備のための所定の位置に停車して操車場を見渡すと、いつの間に戻ってきていたのか、ゴードンとモリーの姿があった。
整備をしてもらいながら、二台の様子を眺める。
客車を連結しては外して、また連結して、を繰り返している。連結の練習をしているようだ。
あれってコツがいるんだよね。ぼくは苦手だけど……。ゴードンに手取り足取り教えてもらえたら、ぼくも上手くなれるかな?
かすかにだけど、声が届く。
上手いぞ!とか、その調子だ!とか、ゴードンの声は嬉しそう。彼女は飲み込みが早いようだね。
ゴードンが誰かを褒めるなんて、普段はほとんどないのにさ。
ぼくがまだしてもらったことのないことをモリーにしてあげている。
仕事だから、別に、なんともないことだけど。トップハム・ハット卿からの命令らしいし。気にすることはないんだけど。
……楽しそうだなぁ。 <> 「ヘンリーとうわきもの」5/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:30:24 ID:MK+mIBVF0<> ふと足元の線路をよくみれば、ゴードンの元へ続いている。
これをまっすぐに進めば、彼の元へいける?
あそこまで行って、ぼくも参加する?
そんなこと出来るわけない。これ以上見ていたら、いけない。
襲ってくる睡魔と、これは、嫉妬心?
整備してもらってすっきりするどころか、頭がぐつぐつ湧いてくるようだ。
火室が燃えすぎ?お湯が沸きすぎているのかな。
なんだよ、せっかく、今日こそは伝えようと思っていたのに。
ゴードンも、きっと、ぼくの返事を待っていてくれたはず。
すごい決心をしたのに、こんなのでくじかれるのか。
本当なら今頃は気持ちを伝えて、幸せな気持ちで心がぽかぽかしているはずなんだけどな。
ヤキモチで頭がぽかぽかなんて、馬鹿みたいだ。
おもしろくない。
くやしい。
そう思った瞬間、車輪はもう動いていた。
ゴードンまではかなりの距離があったけど、あっという間に近づいた。
機関士も疲れていたんだろう、ブレーキをかけるのが遅かった。
急ブレーキがかかる衝撃と緩衝器が思い切りぶつかる衝撃とが、ほぼ同時にボディに響く。
ぼくは思い切り、ゴードンの後ろに体当たりをした。
「浮気もの……!」
思わず口からこぼれた言葉に、自分自身で驚いた。
嫌な言葉。想いを伝える前から浮気って……。
モリーがびっくりした顔でぼくを見ている。
聞かれちゃったかな。
まぁ、いいや。 <> 「ヘンリーとうわきもの」6/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:31:19 ID:MK+mIBVF0<> 目を開けたら、操車場は夜の色。
ぼくは整備場で整備してもらっていて、あたりはまだ明るかった。ハズ。
今居る場所は確かに整備場のようだけど…あれれ?
記憶が飛んでいる気がする。頭が、醒めていない。
「目が覚めたか?」
隣から、渋い声が聞こえる。
「うん。……おはよう? ゴードン」
「まだ、こんばんは、だ」
呆れたような口調。呆れられるようなこと、したかな。
「ごめん、ぼく……何したの?」
表情を変えずに、ゴードンは横目でちらりとぼくを見た。そして言った。
「俺の背中に体当たりした」
「……体当たり?」
段々頭が醒めてきて、色々思い出し始める。
「ごめん! そうだった、ぼくはなんてこと…」
「別にいい。怪我したわけじゃないからな」
呆れたような物言いだけど、怒った感じはしない。
でも、ゴードンの顔を直視することは、とても恥ずかしくて、出来なかった。
少しの沈黙がとても長く感じた。
一秒ごとに、ちらり、ちらり、と罪悪感が雪のように舞い降り積もっていく。
これなら、いっそ怒られたほうがずっとずっと楽かもしれない。
「ひとつだけ言っておく」
「うん」
「俺は浮気なんかしない! お前だけだ」
「……うん」
そうだった。思わず口にした言葉。
しっかり、聞かれていたんだ。
あんなことを言うなんて、ぼくは本当に馬鹿だ。
「ごめんね。ほんとうに、ごめんね」 <> 「ヘンリーとうわきもの」7/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:32:09 ID:MK+mIBVF0<> 「もういい。もういいから、そんなに落ち込むな」
声が、優しい。
みんなといる時は威張った感じの話し方をするけど、ぼくと二台きりだと、心のそこから暖かくなるような優しい声になる。
今のゴードンは、ぼくだけのゴードンの声。とても、ほっとする。
目を見て、話さなくちゃ。大切なことを、伝えなくちゃ。
場所は森じゃなくても構わない。ここで、いい。
「……ぼくも、浮気は絶対にしないよ」
「あのな、浮気なんてのは、そもそも」
ぼくはゴードンの言葉をさえぎって、彼の目を見て、言った。
「ゴードン、ぼくは、きみのことが好き。愛しているよ」
彼はとてもまっすぐに、ぼくの目を見てくれている。
「だから、きみを悲しませるようなことはしない。誓うよ」
「ヘンリー……ありがとう」
ゴードンが、とてもやわらかく微笑んだ。
ぼくも、微笑み返した。
やっと言えた。ほっとした。心が暖かくて、ものすごく、幸せ。
「ずっと、言えなくてごめん」
「悩んでいたんだろう? 難しいことだからな」
「少しだけ、ね」
「今日の約束は、このことだったのか?」
「うん。きみが好きだと言ってくれたあの森で、ぼくの気持ちを伝えたかったんだ」
「そうか。すまなかったな」
「仕事だから、仕方がないよ」
「モリーに、謝っておけよ」
「うん。そうする」 <> 「ヘンリーとうわきもの」8/8<>sage<>2010/06/18(金) 21:33:45 ID:MK+mIBVF0<> 「モリーは痴話喧嘩に巻き込まれたってワケか。可哀相になぁ」
ぼくの下から声がする。
「「あ」」
ゴードンとぼくは同時に声を上げて、固まった。
ぼくら以外の存在の確認を、完全に忘れてしまっていた。
「なるほどなるほど。俺の大事な息子を泣かすなよ、ゴードン?」
ぼくの機関士が、ゴードンの緩衝器をぽんぽんと叩きながら言った。
「ははは……泣かすわけがないでしょう、お父様」
ゴードンの顔は引きつっていた。
苦々しくしわだらけの、けれど整ったりりしい顔。
うん、やっぱりゴードンはかっこいい。
「でも、身体を使っての愛情表現は勘弁してくれよな」
ゴードンの機関士が、ぼくの緩衝器をぽんぽんと叩きながら言った。
「あはは……気をつけます」
大丈夫。
そんなことをする必要は、もうない。
ゴードンとぼくの心の連結は、きっとずっと、外れないからね。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

やっぱり文章を書くのって難しいですわ。
書いているときはむっちゃ楽しいっすけど。
黄色い彼女は美人さんですよね。
女性なのがもったいないですわ。

お目汚し失礼いたしました。
<> 夜中の出来事1/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:20:50 ID:3iXVJsry0<> >PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
大きな河のドラマ、リョマ→イゾベースのヤタイゾ未満
エロなしグロあり捏造設定です。同作品の連投になるので待っていましたが、
明日の放送後だと設定が合わなくなるのですいません。


 僅かに月明かりが差し込む牢の真ん中で、数刻前に投げ入れられた体制のまま男は倒れていた。
牢番はうたた寝を邪魔されたことで大層機嫌が悪く
「朝になればまた打たれるのに、手当てなぞ薬が勿体無い」と文句を言いながら錠を開けた。
「……全て吐かせるまではくたばらんように面倒を見ろと言われちょるんじゃ…」
「だったらもうちっと加減しや、ここ数日は飯も食えんくなっとる。
食っても血と一緒に吐いとるからな…はらわたが破れちょったらもう長くは持たんぞ」
淡々と呟やきながら鍵の差し込まれた錠ごとヤタロに押し付け、
「儂は詰め所にもどるき、鍵は後でちゃんと返しに来いや」
とぞんざいに言い放ち去っていった。
随分といい加減なものだ。
ヤタロが今はゴトウから直々に役目を与えられ罪人の取調べを行う立場である為か、
いや、もう自らの力では立つのはおろか這うことすらままならないこの牢の男に過剰な警備は必要ないということだろう。
<> 夜中の出来事2/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:21:27 ID:3iXVJsry0<>  別棟にある竹地の牢では、牢番の菓子達が密かに竹地の支援者となり、監督役の上司の目を盗んで
捕縛されていない菌能等員達との文のやり取りを買って出ているらしい。
さらに城下では竹地を救出するために菓子が結束して戦を起こすなどという根も葉もない流言まで飛び交う始末で、
緊張した状態が続いている。
 牢に入れられてなお、人を動かし政局に働きかけようとする竹地には恐れ入るが
、ここで踏み潰された蟻のように惨めな姿で眠っている男が一言漏らしてしまえば全てが終わってしまうのに。
ヤタロはゴトーに命じられ幾度か竹地の説得を試みたが、
「自分等は何も間違ったことはしちょらん」だの「藩のため、大殿様のため」だの繰り返し、未だ折れる気配は微塵もない。
その矜持を守るため、幼子の頃から目をかけてきた愛弟子が今も命を削って耐えているのをあのお偉い先生はわかっているのか。
まったく侍というものは馬鹿馬鹿しい。
さっさとこんなお役目から離れて商売に戻りたい。
<> 夜中の出来事3/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:21:56 ID:3iXVJsry0<>  うつ伏せに倒れたまま声をかけても反応がないので、
とりあえず背中の傷を見るため血と泥がこびり付いた襤褸布をずらした。
血や膿の嫌な匂いがして、灯りに乏しい牢の中でも惨たらしい傷口はよくわかる。
希瀬が山草から煎じてくれた毒消薬をそっと塗りつけた。
「……っ………」
無反応だった体が急に強張り、小さく息が漏れた。薬が染みるのだろう、しかし男は眠り続けたままだ。
愛娘を撫でる時の様に、できるかぎり精一杯優しく薬を塗りつけて、ボロボロの着物を着せ直した。
男にしては薄すぎる躰を抱えて仰向けにし、襟をはだけて具合を確かめる。
背中程酷くはないが、それでも傷だらけの肋骨が浮いた胸にまた薬を塗った。
一瞬着物の裾から覗く足にも目をやるが、肉が割れて骨が砕けてしまったそれをどうしてやればいいのか、
ヤタロには見当もつかなかった。

「なんでさっさとしゃべらんのじゃ……」
イゾウがここまで追い詰められてなお、竹地を庇い責めに耐え続けるのがヤタロにはさっぱり理解できなiい。
とぼける芝居も一人前にできないこの男は、もともと素直な性分なのだろう、
「わしは何も知らん!!」と言いつつも、大きな瞳やくるくる変わる表情のせいで嘘をついていることが手に取るようにわかるのだ。
唇の端に血を滴らせ、「竹地先生は素晴らしいお方じゃ…」と恍惚とした表情で言い放つ様は
ゴトウや役人共の神経を逆撫でし、昂ぶらせ、益々狂ったようにイゾウを嬲り続ける。
悲惨だがある意味滑稽で、地獄絵図とはきっとこんな光景を言うのだ。
<> 夜中の出来事4/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:22:25 ID:3iXVJsry0<>  牢の格子の傍に、干からびた小さな芋がいくつか転がっていた。
囚人に与えられる食事だが、ことあるごとに頬を張られ、
牢番の話では腹の中も傷付いているだろう人間にこんな硬い芋が食えるわけがない。
せめて水だけでも飲ませてやろうと、なるべく傷に触れないようにゆっくりイゾウを抱き起こした。
湯のみを口元に当ててやって少しずつ流し込むが、唇の端から流れ落ちてしまう。
「おい、イゾウ、水じゃ!飲め!」
軽く揺すって声をかけるが目を覚ます気配はない。
ふと既視感を感じ記憶を辿ると愛娘の顔を思い出した。
先日春ZIが熱を出した時に、医者が煎じた薬が苦かったのか、嫌がって飲まなくて希瀬が困り果ていたことがあった。
結局希瀬は自ら薬を口に含み、口移しでゆっくりゆっくり飲ませてやっていたのだ。
「赤子と一緒じゃのう…」
ヤタロは水を口に含んで、直接流し込んでやった。しばらく咥内に残っていたが、やがてゆっくり嚥下したのが喉の動きでわかる。
上手くいった事に気を良くして二口目を飲まそうと唇を舐めると鉄の味がする。唇ごしにイゾウの血が付いたようだ。
「なんじゃ、顔も随分きちゃないのう…」
ついでなので持っていた手ぬぐいに水を浸し、そっと顔を拭いてやった。
こびり付いた血の後や泥やら煤やらのせいで白かった手ぬぐいが真っ黒になってしまった。
「後で髭も剃っっちゃるかの…」
もう一度水を口に含んで、口移しで飲ませた。短気なヤタロにしては珍しく、ゆっくりゆっくり少しずつ飲ませる。
<> 夜中の出来事5/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:22:54 ID:3iXVJsry0<>  何度か繰り返すうちに、抱えている腕の中でイゾウが身じろいだ。
水を流し込んで唇を離そうとしたら突然イゾウの舌が動いてヤタロのそれに絡みつく。
「なっなんじゃぁ!?」
「……あ…りょ……おま?」
予想もしなかった名前がイゾウの唇から零れた。
「はあ?良間ぁ?」
ヤタロの素っとん狂な声に意識を取り戻したのか、イゾウがぱっちり目を開けた。
「なんじゃ、おまんか。…夢の中で…口を吸われたから良間が…おるのかと思った…ここにおるわけないのにの…」
虚ろな瞳で天井を見ながらぽつりぽつりと呟く。
「…なんで良間がおまんの口を吸うんじゃ…?」
何やら状況と会話の内容が合っていないことは自覚していたが、思わずヤタロは聞いてしまった。
「異国の挨拶ぜよ。両間が教えてくれてのう、本当に中のええ友達同士で交わす方法じゃと言うとった…
顔を合わせたときと、別れるときに吸い合うんじゃ。気持ちええししょっちゅうしてくれた…
でも誰にも言うちゃいかんき、先生に異国かぶれじゃと叱られてしまうぜよ…今更どうでもええことじゃがの…」
いたずらがばれてしまった子供のようにくすくす笑うイゾウは、騙されていることに全く気付いていない。
確かに異国の風習では挨拶に唇を使うが、イゾウが教えられた口吸いは男女のまぐわいの中で行われる行為だ。気持ちよくなって当たり前。
(あの女たらしのアホ…男までたらしとるのか!!!こんな何も知らん馬鹿正直なアホを騙して
堂々と吸っとったんか、全く信じられん。男なんか何がええんじゃ…)
<> 夜中の出来事6/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:30:48 ID:3iXVJsry0<>  楽しかった頃の思い出に意識を飛ばしているのか、穏やかな表情で目を閉じているイゾウの顔をまじまじと見る。
殴られ、腫れて傷だらけでも小ぶりな整った顔は少女の様だ。
(華緒や希瀬とはまた違った種類の美人じゃの…わしもあいつも面食いじゃし女子の好みは似ちょるかもしれん………)
「………って、違ーうっ!!!わしは何を考えとるんじゃ!!!」
「いっ……急に離すなっ!!」
突然地面にほおりだされたイゾウがしたたかに背中を打って悲鳴を上げる。
しかしヤタロは己の思いつきに混乱し、構ってやる余裕はない。
(髭じゃ!!ちゃんと髭が生えちょる!!こいつは男じゃ!罪人じゃ!ヤタロ、しっかりし!!!)
頭を掻き毟りながら一人でバタバタ歩き回るヤタロを横目で見ながら、イゾウは静かに目を閉じる。
ヤタロは恨んでも恨みきれない上士側の人間だが、拷問中まるで自分が打たれているかのように
悲鳴を上げて後藤たちにどやされているのを見るとなんだか憎めない。

しかし、イゾウはやっぱりヤタロが嫌いになった。
<> 夜中の出来事7/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:31:14 ID:3iXVJsry0<>  先ほどからうずくまって何をしているのやらと思えば、桶の水を地面に垂らして子供の様に泥を練っている。
ぶつぶつ何か呟いているがよく聞き取れない。
突然くわっとイゾウを睨むと、泥だらけの掌をぺたぺたイゾウの顔に擦り付けてきた。
「…っなっ、何をしゆう!!やめてくれ!!沁みる!痛い!」
「だまっちょれ!!おまんの為にしてやっとるんじゃ!!そんな顔しちょったらあかん!!」
「意味がわからんぜよ、おまんがさっき血を拭ってくれたんじゃないがか!?」
「うるさい!着物もちゃんと着い!だらしない!!」
「…布が擦れて痛いぜよ……」

顔を元のように泥だらけにし、ボロボロの着物をきっちり合わせるとヤタロは満足した表情で、
「うんうん、わしは違うんじゃ。」
とわけのわからないことを呟き牢から出て行き、イゾウはわけがわからず呆然とそれを見送った。
今更ながら、ヤタロが薬を塗ってくれたことに気付き、
「礼をいわないかんかったのう…」と一人呟いた。
<> 真夜中の出来事8/8<>sage<>2010/06/19(土) 14:41:34 ID:1YGV08igO<>  夜明けまでまだ数刻時間がある。日が昇ればまたあの恐ろしい責が始まると思うと体がガタガタ震えだす。
あんなに痛いのに、どくどく血は流れているのに、いつまでもしぶとく生きている頑丈な自分の体を呪う。
いつの間にか涙が滲んできて、でも拭う為に腕を上げるのを億劫に思っていると、バタバタと派手な足音が近づいてきた。

息を切らせてヤタロが戻ってきた。
「かっ、鍵を、鍵を閉めるのを忘れちょったっ!!!
おまん、ちゃんとおるな、逃げてないな!?」
格子の隅に転がっていた錠を慌しくかけて、
「鍵を忘れたことちくったらいかんぜよっ!!」
と怒鳴って走り去った。
「………なんなんじゃあ、あいつは……」
あまりの馬鹿馬鹿しさに涙も引っ込み、イゾウは大の字に寝転がった。

□STOP ピッ◇イジョウジサクジエンデシタ!
ようやくこの二人の接点ができたのでwwラストで規制にあっちまいました…
<> 風と木の名無しさん<><>2010/06/19(土) 16:36:26 ID:Yd1jrZJDO<> 失せろ下手くそ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/19(土) 16:45:11 ID:y/eR3qVe0<> >>320
おお口移し萌えGJ!
氏にゆくイゾタンに愛の手が差し伸べられるのは嬉し <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/19(土) 19:49:36 ID:RJ+YzZG7O<> 可哀想だけど、イゾにもヤタにも萌えました…! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/19(土) 20:00:01 ID:NTL47qYI0<> つらい状況の筈なのにどこかコミカルなやりとりに切な萌え
GJじゃき!!
リョマの出番は名前が出ただけだというのにしっかり存在主張しちょった…w <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/20(日) 18:17:25 ID:7SGwGBf2O<> >>307
幽霊とりつく(要訳)の制作者インタビューで知ったばかりなので
タイムリーさに噴いた
なんだこのかわいい教授
萌えた <> 架空のスタッフ×某師/匠1/4
◆zT1lbr0CW2 <>sage<>2010/06/20(日) 18:27:04 ID:e9XRiOo2O<> 架空のスタッフ×某師/匠
今回より、師/匠の名前は伏せます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガオオクリシマース!
「飽きた」
堂々とそんな宣言をしてパソコンを閉じた。
曲作りの壁にぶち当たったらしい。
「しばらく脳内に線を引く。」
たまにはダラダラしたらいいのに。
俺なんか一日何もしないでダラーっと過ごしてる日が週一回はあるよ。無いと死ぬ。
でもこの人は逆で、止まったら死ぬんだ。いつだって働いている。
「じゃあ、キミ、なんか面白い事やって。」
「は?」
「私の気分が切り替わるような素晴らしい事をしてくれると聞いたので。」
「誰にですか。無茶ぶりやめてください」
出たよ。出たよ出たよ。いじめだよ。
そんな期待した目で見て。もー。
どうするかなぁ…んー…とりあえず、そろそろ腹が減ったような。
「…………じゃあ、イカ焼きでも作りましょうか」
「…イカ抜きで。」
「もちろん。」
「じゃあ面白い「焼き」を作ってくれると聞いたので。」
「面白いとは言ってませんけどね」
俺は「焼き」の材料を調達しに買い物に出かけた。

帰ってきたら、師/匠はなんだか楽しそうに異国の女性達とスカイプで話していた。
さて、「焼き」でも作りますか。
昔テキ屋でバイトしてたから、この手の料理は結構得意だ。
あんまり使ったことが無さそうな師/匠の家のフライパンを借りて、手際よく調理は進む。 <> 架空のスタッフ×某師/匠2/4
◆zT1lbr0CW2 <>sage<>2010/06/20(日) 18:28:42 ID:e9XRiOo2O<> ソースが焦げるいい匂いがしたからか、師/匠が振り向いた。
「できましたよー」
一口食べて、師/匠がこちらを見る。おお、ドキドキする…
「…面白くないけど、褒めてやる。」
やったーーー俺、大成功!
師/匠はパクパクと一枚全部食べてくれた。
薄いけど小食の師/匠にしてはいっぱい食べた方だ。
「また今度作りましょうか?」
「うん。」
うんだって!っかー!!
「面白くないけどおいしいので。」
「マジッすか!!」
「マジッす。」
「マジッすか〜!」
「マジッす。」
感無量です。幸せだなー。
「ただ惜しい事に私はまだ脳内に線が引けていない。」
「え?」
「しかし幸いな事にキミが何か面白い事をしてくれると聞いたので。」
「だから誰も言ってませんて。」
「青天の霹靂のような出来事で私に衝撃を与えてくれると聞いたので。」
何しろっつーんだよ。師/匠が気に入るような面白い事なんか俺にあるわけないじゃん。

だいたい最新の珍しい機器とかいっつも先に知ってるじゃないですか。
どうするどうする?えーとえーと…
「ねぇ、まだ〜?」
「早いし。いやいや、俺、そんな面白い人間でも無いですし」
うわーなんも思いつかねぇー!どうする、どうする
「脳内に直角に線を引いて頭が切り替わるような画期的な面白い事をしてくれると聞いたので。」
線曲ってんのかよ。お…。そうだ… <> 架空のスタッフ×某師/匠3/4
◆zT1lbr0CW2 <>sage<>2010/06/20(日) 18:29:56 ID:e9XRiOo2O<> 「頭が…切り替わればいいんですよね?」
「それが目的なので。」
「……じゃあ、食欲の後は、やっぱり…性欲じゃないですかねぇ?」
あっいぶかしげな目になった。頑張れ俺。行け俺。こんな無理難題持ちかけてくる師/匠が悪いんだから。
「それは面白くなさそうなので。」
「面白いかもしれないじゃないですか。ちょっとじゃあ、ちょっと」
座っている師匠の側に行くと反対側へ立ちあがってしまった。逃がすか。
腕を掴んで逃げないようにして素早く移動。脇と膝の裏に手を回し、掬いあげるように抱きあげた。
お姫様だっこできたあああああああああああああ
「いてっ叩かないでくださいよ!」
「この無礼者。変態。」
「なんとでも。師/匠がなんかしてって言ったんですよ。」
「面白くない事は却下。」
「面白いかもしれませんよ。」
とりあえずソファまでたどり着いたのでゆっくり降ろし、逃げないように後から抱きしめる。
「この、変態」
「頭切り替えたいんでしょ、師/匠。大人しくしてください。」
動かないように師/匠の腕ごと片腕で抱き込む。
シャツのボタンをはずせるところまで外す。抱き込んでるせいであんまり開かない。
隙間から手を突っ込み、左腹から脇腹あたりをなぞると、師/匠が震えた。
相変わらず、50代の腹じゃないよなぁ。軽く押せばその中に筋肉があるのがわかる。
「離せー馬鹿者ー」
「 変態とか離せとか言われたら逆に興奮するんですけど」
「やかましい変態」
あーたまんねぇ。どうしよ、グッチャグチャにしたい。できないけど。
脇腹からスゥと5本の指で道を作る。上へ上へ。
あ、見つけた…
「やっぱり師/匠にもあるんですね…ここ」
「……」 <> 架空のスタッフ×某師/匠4/4
◆zT1lbr0CW2 <>sage<>2010/06/20(日) 18:31:27 ID:e9XRiOo2O<> いつも出ても腕だけだから、裸体なんか想像できなかった。不思議なほど。
そう思ったら見てみたくなってシャツを開いて覗き込んで見てみた。おお、ある。
珍しい物を見た。興味本位でちょっとつついていたらぷくっと出てきた。
ヤバイなこれ。セックスしそうだ。
しばらくいじっていたら、無言だった師匠が息を飲む声が聞こえた。
「…気持ちいいですか?」
「……」
喘いでくれないかなぁ…喘ぎ声が聞きたくてしょうがないんだけど。
ここじゃ喘がないか。
じゃあ、こっちなら…
「もう駄目」
「えっ」
「それ以上やったらお前クビな。」
「えっ!」
「クビ。」
「いやいやいやえ、ここで?」
「今のは忘れてください。私とした事が。乗ってしまった。」
「じゃあもうちょっと」
「一生の不覚です。あと2秒で離さなかったらクビ。いち、に」
「はやっっちょちょちょcまっ」
慌てて離す。
振り向きざまにでこぴんされた。
乱れたシャツのボタンを留めながら一瞥された。で、
「この変態め」
なんて言ってきた。

だからぁ、それ、興奮するって言ってるでしょおおおーーーー!!

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/20(日) 23:26:22 ID:E53oSwsX0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  現在アニメ放送中の虹のヘイタイ×アンチャン
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  原作ネタバレあるので未読の人は要注意!
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

現実逃避しようとしてしきれませんでした。ちょっと暗いです <> 虹の兵隊×アンチャン<>sage<>2010/06/20(日) 23:28:24 ID:E53oSwsX0<> 障子越しに差し込む光の白さで目が覚めた。
ばっと上半身を起こす。寝過ごしたか!?と焦り、周囲を見回して、ほっと胸をなでおろした。
(ああ、そうだった、今日は ──── )
今日は非番だ。だから昨日は外泊許可を取って、このアンチャンの家を訪れた。
ちょっと高めのいい酒を手土産に、たまにはアンチャンと二人でゆっくり飯でも……と思ったのが自分の甘さだったのか。
いったい話をどこから聞きつけたのか(まあ間違いなくアンチャンからだろうが)、ほかの五人もわらわらとやってきた。
というかまず、呼び鈴を鳴らして、玄関の戸を開けてくれたのがジョーだった。
居間のほうからはスッポンとバレモトのぎゃいぎゃいいい合う声が聞こえてきて、台所からはキャベツとマリオが皿を運んでいる姿がちらりと見えて、ヘイタイははぁっとため息一つついたのだ。
終わった…と思わなくもなかった。
ゆっくりどころか、いつもどおりの賑やかな飲み会へと移行して、あとの始末もまた、いつもどおりだ。
朝日の眩しさなどものともせずに、ジョーとキャベツとスッポンとバレモトが雑魚寝している。
マリオがいないのは、走り込みにでも行っているのだろう。アンチャンも一緒だろうか。
ヘイタイは軽い伸びをすると、鈍い頭痛をこらえて布団を出た。
水をもらおうと台所の戸を引いて、ヘイタイは瞬いた。
「起きたのか」
「アンチャン……、マリオと走りにいったんじゃ、なかったのか?」
予期せぬ姿に、みょうにたどたどしく尋ねれば、アンチャンはくすりと笑った。
「マリオよりずいぶん先に起きちまったからな。一人で行ってきたんだ。あいつとは入れ違いになっちまったよ」
それはそれは、マリオはさぞかし悔しがったことだろう…と思いながら突っ立っていると、
「お前は飯は食えそうか?」
と尋ねられて、ヘイタイはただこくこくと頷いた。このくらいの頭痛など、二日酔いのうちにも入らない。 <> 虹の兵隊×アンチャン2/5<>sage<>2010/06/20(日) 23:30:44 ID:E53oSwsX0<> 「そうか。やっぱり自衛隊で鍛えてるから違うのかな」
「 ──── まっ、まあな…!」
アンチャンは何気なく誉めるから心臓に悪い。
そんな、マリオ辺りに聞かれたらぶん殴られそうな事を考えて、ヘイタイは温度の上がった息を吐き出した。


アンチャンと二人っきりで向かい合って飯、というのがどれほど幸運かヘイタイはよく知っている。
なので一口一口、幸せを噛み締めながら飲み込んだ。
だいたいアンチャンの周りには、常日頃から人がいすぎである。
筆頭はマリオだが、ほかの奴らも何かにつけアンチャンアンチャンと。
そりゃあ自分もその中の一人である事を否定はしないが、6人の中では自分が一番自制できている、と思う。
「どうした、ヘイタイ?」
「え、なにが ──── 」
「皺がよってんぞ、ここ」
 ここと、眉間を押されて、ヘイタイはうっかり味噌汁をこぼしそうになった。
梅雨明けの鮮やかな朝日の中で、アンチャンの姿は怖いほどに整っている。そう、怖いほどに。
誰もが目を奪われずにはいられないほどに。
「なんだ、悩みごとか?」
「そんなんじゃねェよ。……俺のことより、アンチャンは大丈夫なのかよ」
 ぱちぱちと、柔らかな眼差しが驚いたように瞬いた。
「なにがだ?」
「なにがって ──── ……」
なにがだったろう?ヘイタイは一瞬だけ戸惑って、すぐに答えを口にした。
「石原に刺された傷とかさ…」
「なにいってるんだ、お前。もう一年も前の話じゃねェか」
「たった一年前の話だろ!だいたい、アンチャンはいつも無理しすぎじゃねェか!一人で何でも抱え込んじまって…!もっと俺たちを頼れよ!!」
思わずちゃぶ台にこぶしを叩きつければ、しぃっと口を塞がれた。 <> 虹の兵隊×アンチャン3/5<>sage<>2010/06/20(日) 23:34:11 ID:E53oSwsX0<> 「あんまりでけェ声だすな、あいつらがまだ寝てるんだ」
「………悪かったよ……」
「いや、俺のほうこそ茶化しちまって悪かった。心配してくれて、ありがとな、ヘイタイ」
微笑まれて、ヘイタイは膝の上でぎゅっとこぶしを握った。
アンチャンは強い。強くて優しい。いや、強いからこそ優しくなれるのか。本当の男の強さっていうのも、きっとこういうものだ。だれも虐げない。
ただすっと背筋を伸ばして立ち続けるような強さ。
それはまるで雑草の花のようで、それでいて、目を奪うほどの鮮烈な光を持っている。
その光を、慕うやつはきっと大勢いる。自分たちのように。
だがその光を、なにがなんでも踏みにじって、汚して、消してしまいたいと思うやつも、おそらくは、少なからずいるのだ。石原のように。
光の美しさに耐え切れなくて。自分の弱さを守るためにアンチャンを潰そうとする。
光に焼かれる事に怯えて、死に物狂いで光を消そうとする。
アンチャンの光は、決してだれかを害するものではないのに、そういう連中にはそれが理解できないのだろう。
「アンチャンは……」
味噌汁をひとくち啜って、ヘイタイはいった。
「アンチャンは、俺たちにとっちゃ、傘みてェだったよ。ずっと雨に打たれて生きてきたのに、
あそこでアンチャンに会って、初めて息がつけた気がした。きっと、あいつらもそうだったんだと思うぜ。でもよ……」
恥ずかしい事を口にしている自覚はあった。頬が熱いのは気のせいではないだろう。
アンチャンがじっとこちらを見て、話を聞いてくれているものだから余計に熱が上がる。
できることならこんな台詞はマリオにでも任せておきたい。けど、いまここにマリオはいない。
いわなかったら、きっと一生後悔すると思った。
「でも、今の俺たちは、自分で傘くらい買えるんだぜ。だから、もう、アンチャンが手ェ広げて、一人で俺たち全員を守ろうとすることはねェよ。
一人で格好つけんなって、前にもいったろ。今度はよ、俺たちが……、俺が、アンチャンを守るから」 <> 虹の兵隊×アンチャン4/5<>sage<>2010/06/20(日) 23:36:01 ID:E53oSwsX0<> 言いきって、ヘイタイは、味噌汁のお椀をがしっと握り締めた。そしてごくごくと飲み干す。
前が見られない。ああでも、飲みきってしまったら、前を向かなくてはならない。
いや無理だ。うつむこう。男は逃げてはいけないがこんな時くらいは逃げてもいい。
きっとアンチャンも許してくれる。許してくれる事を願う。……などとぐるぐる考え込んでいると、ふっと、微かな衣擦れの音がした。
そして、先ほどと同じように、骨ばった人差し指で、眉間をぐっと押された。
「アンチャン!?」
「皺がよってるぜ、ヘイタイ」
「皺って……、皺って…、あんたなァ…!」
茶化すな、と怒鳴るより早く、穏やかな声がいった。
「俺は、おまえ達に、充分助けてもらってるさ」
「……アンチャンは、いつもそういって、一人で無茶すんじゃねェか」
「そんなことねェよ。ほんとうに、おまえ達には助けてもらった」
だから、と、優しい響きで声は続けた。
「後悔なんかしなくていいんだ、ヘイタイ。俺は、おまえ達が幸せになることだけ願ってる」




暗闇の中で、男は一人目を覚ました。
<> 虹の兵隊×アンチャン5/5<>sage<>2010/06/20(日) 23:36:52 ID:E53oSwsX0<> (ああ ──── )
暗闇を睨みつけて、男は歯を食いしばった。湿り気のある空気が、闇を重苦しくさせていく。
片手で目を覆って、男はかすかな息を漏らした。
幸せな夢だった。美しい夢だった。だが、夢はしょせん夢だ。目が覚めてみる夢なら、叶える努力もしよう。
だが眠りながら見る夢は、決して現実にはならないと知っている。
あの人はもういない。
あの人の意志も、心も、たしかに残っているけれど、それでもあの人の眼も手も声も、なにもかもが取り戻せない。
煙とともに空に登って、虹の向こうに行ってしまった。
(なにが、守る、だ ─── っ!!)
心臓が焼きただれる。痛いのか悲しいのかなど、もはやわからない。
衝撃だけが重くて、自分は涙すらろくに流れなかった。
「 ─── ちくしょうッ!!」
この凶器のような現実を、どうやって受け入れろというのか。あの人がいない、この現実を。
あの人の姿を、死を、思うだけで息もできなくなるのに。
だが、それでも。

──── 俺は、おまえ達が幸せになることだけ願ってる。

それでも、そう囁いたアンチャンの微笑だけが、瞼の裏で鮮やかだった。
<> 虹の兵隊×アンチャン5/5<>sage<>2010/06/20(日) 23:38:45 ID:E53oSwsX0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お付き合いくださってありがとう!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヘイタイはアンチャンに対して若干ツンがあるところが萌えるよね! <> 白珠の露 1/4<>sage<>2010/06/21(月) 00:19:58 ID:ONf1GPqJO<> >PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル。逃避行モノ。


「これでどうぞ足を清めて下さい。」
そう言って水の桶を差し出した旅籠の女将の手にさえ、その人は脅えた。
だからあとは私が、とそれを受け取り土間に膝まづく。
上がり框に腰を掛けるその人の草鞋を脱がせ、足袋を解き、現れた素足を水につけてやる。
それにほっと吐き出される吐息。それでもその人はすぐにこう告げる。
「私は負われてきたから足など汚れていない。それよりもおまえの方が。」
思慮深い声だった。優しい言葉だった。
それゆえに、記憶を失くした人だった。

<> 白珠の露 2/4<>sage<>2010/06/21(月) 00:24:01 ID:ONf1GPqJO<> 通されたのは小さいながらも相部屋ではない個室だった。
「どうぞ少し休んでいて下さい。私は風呂の都合を聞いてきますので。」
荷を解き、立ち上がりかける。そんな自分の腕をその時、その人は取ってきた。
「風呂など後でいい。おまえこそ少し休め。」
言いながらその手が自分の腕を労わるようにさすってくる。
「私が途中で歩けなくなったばかりに。背に負って疲れただろう。」
心底申し訳なさそうに言ってくる、それに自分は首を横に振った。
「これくらいの事。力仕事は慣れておりますから。」
学の無い身だった。日々田畑を耕し、酒も息抜きもそれなりにこなし、ただそれでも
不思議と嫁をもらう事には縁遠い身だった。
その身寄りの無さに目をつけられたのだろうか。
ある日、自分の元に持ち込まれた仕事の依頼。それがこの人との出逢いになった。
伏し目がちに腕をさすり続ける人の、その年の頃は自分より五つ程下だと言っていたか。
節くれのない指。大事に育てられ、守られてきた者の手。
それだけに小指の下の腹、まだうっすらと残る赤黒い痣がいっそ生々しく痛々しい。
それは打ちつけられた跡だった。
大事にされ、守られ、その代償に自由を与えられず、大切な者を奪われ、
そこからの解放を願って自身を捉える柵に何度も強く打ちつけられた跡だった。
本来なら触れる事はおろか、あいまみえる事すら考えられなかった身の上の人。
それでも与えられ、就いた仕事によって間近に聞いたその嘆きは、自分のような者でも
たやすく理解できるほど、悲しく普遍的なものだった。
だから日を追うごとに見ていられなくなった。聞いていられなくなった。
しかしその嘆きはある日突然に止んだ。
声を失くし、表情を失くし、そしてその人は記憶をも失くした。
それはその人の限界であると同時に自分の限界でもあった。
もう耐えられない。
そう思う自分の手にはあの時、その人を捕らえる籠の鍵が握られていた。 <> 白珠の露 3/4<>sage<>2010/06/21(月) 00:27:22 ID:ONf1GPqJO<> 「それよりも、このような安宿で申し訳ありません。もう少し町へ出れば、
綺麗な所もあるのでしょうが、今日はここで我慢して下さい。」
あの国を飛び出す時、有り金のすべてを持ち出した。
それまで質素な生活をしていた分、貯まっていたこれだけの額があれば、当面の旅の資金には
困らないはずだった。
しかしそんな自分にその人はまたしても静かに首を振る。
「夜、寝れる場所があればそれだけでいい。」
「?」
「おまえの背に負われて、夜の露は見たくはない。」
意味のわからない言葉だった。
だから困惑の表情のまま眼下の人を見下ろせば、それに気付いたその人がようやくに
その口元をほころばせる。
「伊瀬物語だ。逃げる男と女。世慣れぬ女は夜、男の背に負われながら見た草叢の光の玉を
なんだと問う。しかし男は逃げる事に必死で答えてやれない。その後見つけた小屋で
一夜を明かそうとするが、女を休ませようとしたそこは鬼の棲家で、見張りに立っていた
男は女が上げた悲鳴にも気付く事が出来ず女は鬼に喰われてしまう。朝になって、
大切な人を失ってしまったと気付いた男は、昨夜聞かれた事にちゃんと答えてやればよかった。
あれは草についた露だと答え、そして自分も露のように消えてしまえたらと泣いた。」
「……鬼ですか。」
「そこは作り話だろうが、この話には実話の基礎がある。さらった男は昔の貴族、
さらわれた女は帝の妃となるはずだった姫。想い合う2人は手に手を取って逃げ、
しかし結局は追っ手に捕まり、姫は都に戻される。」
「……………」
「捕まりたくはないな……」
学のある人だった。
記憶を失っても、その素地は残るのか。世間知らずではあっても、物は自分より遥かに多く
知っている人だった。
そんな人がこの時、それまで触れていた自分の腕の中に身を委ねてくる。
<> 白珠の露 4/4<>sage<>2010/06/21(月) 00:31:05 ID:ONf1GPqJO<> 「迷惑をかける。でも私はおまえを頼るしかない。」
腕にくっと立てられ、すがってくる指先の力。
頼られている、それは本来ならば考えられない事だった。
記憶が戻れば、自分が誰で、相手が誰か、理解をすればけしてもう二度と起こりえない事。
それがわかるから、この瞬間自分はその人を抱き締めていた。
逃げたかった。追っ手から。そしてこの人の記憶から。そして、
「私ならすべて答えます。」
そう告げる。
「知っている事は少ないかもしれませんが、それでも答えられる事はすべて。」
悲鳴でも嘆きでもない、この人の言葉を何一つ聞き逃しはしない。
抱く腕に力がこもる。するとそれにその人は少しだけ笑ったようだった。
「ならば、私は喰われてもいいよ。」
「えっ?」
「鬼ではなく、おまえになら喰われてもいいよ。」
それ以外に、返せるものが何もない。
そう言うこの人の言葉に滲む過去には、いったい何が潜んでいるのか。
気にはなる。しかし知るのは怖くて、自分はまた無言のままその人を抱き締め続ける。

白珠か何ぞと人の問ひし時 つゆと答へて消えなましものを

嘆きの歌を口にせずとも良いように。
この人の望むまま海へ行こう。山へ行こう。
世は今、新しく生まれ変わり、そして乱れている。
その混乱の中縫うように歩き続ければ、たとえいつか記憶が戻ったとしても、
この人が一人生きていける安住の地を、自分はこの旅の果てに見つけてやる事が出来るかもしれなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
オリジナルと言いつつ元ネタらしきものはあるので、わかる人はこっそり楽しんでもらえれば。
時代物好きだ。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/21(月) 01:43:43 ID:LizLORqrO<> >>344
童話のようなともすれば稚い、けれどそこはかとなく色の漂う美しい逃避行GJです!
言葉が違った趣でこれまたいい!
姐さんのくれた世界に束の間逃避させていただきました。ありがとう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/21(月) 02:07:41 ID:xdzJ00unO<> >>336
わあぁーっ、いつもの姐さんでしょうか?
とにかく師/匠をお待ちしておりました!
「変/態/ど/も」と言われては興奮するしかありませんよねっ! <> 兄弟ギャング1/7<><>2010/06/21(月) 18:35:41 ID:7Mo7HuPVO<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )兄弟ギャングものですだよ。流血ややグロあり注意!


人生というものは中々上手くはいかないらしい。
赤ん坊の俺と小さなガキだった兄貴が棄てられたころからそれは決まっていたのかもしれない。
それとももう生まれる前から神様とやらが決めていたのかも。
ただ俺には兄貴がいて、兄貴には俺がいて、だからこんなどうしようもない人生でも俺達は幸せだった。
『父さん』に拾われて、俺達は名前を貰って、『仕事』を、生きてていい理由を貰った。
皆嫌がる仕事だったし、俺もそれほど好きじゃなかったけど、兄貴がいつも一緒だったし、
それならいいかと思えた。
人を殺すようになっても、兄貴がいたから耐えられた。
痛くて辛くて悲しくて恐くて、何度も泣いたこともある。
それでも兄貴が抱き締めて、一緒のベッドで眠ってくれれば全部が吹き飛んだ。 <> 兄弟ギャング2/7<>sage<>2010/06/21(月) 18:38:44 ID:7Mo7HuPVO<> 確か『父さん』に呼ばれたのは一週間前。
あるファミリーが『戦争』をはじめて、このところ街に銃声が響かない日がなくなっていた。
俺達のファミリーもいよいよ『戦争』に本腰をいれようということになり、狼煙を上げる人間が必要になった。
それが俺達だったというわけだ。


「兄貴…後何発残ってる?」
「あー…?えーと、モーゼルとルガーのマガジンが一つずつ…まだ撃ってねえピースメーカーが一挺、かな……」
「ルガーのやつくれ。俺もう弾ねえや…」
港の片隅、古びた倉庫の中。
撃ち合いは小康状態。
俺達はそれぞれ少し離れた木箱に隠れていた。
俺と同じく、下に座り込んだ兄貴を見ると、頭から血が流れている。弾でかすったのかな。
カラーも真っ赤に染まって、一張羅が台無しになっていた。
まあこの大人数相手じゃ、今生きてるだけでも奇跡だから仕方ないか。
半分くらいは殺れたと思うけど、多分もうそろそろ潮時だ。 <> 兄弟ギャングもの3/7<>sage<>2010/06/21(月) 18:41:23 ID:7Mo7HuPVO<> 「おら、リロードしとけ。」
カラカラと床を滑ってマガジンが手元にくる。
自由が利かなくなり始めた手に鞭打ち、弾倉を取り換えた。
「……おい、お前腹撃たれたのか?」
俺の方を見ていた兄貴が、不意にこちらに手を伸ばした。
俺が泣いた時、頭を撫でるみたいに、ゆっくりと。
鼓膜に大きな振動を感じた。
銃声と、ボッという不思議な音。
「……っがぁ!!!」
気付けば床に血飛沫が飛び散り、兄貴の指が二、三本吹っ飛んでいた。
「ってぇえええ!畜生、指持ってきやがって!ポーカー出来なくなるだろうがっ!!アホンダラ!!!」
兄貴は手首のあたりを握りながら、大声で怒鳴っていた。
そのピントのズレた発言に、俺も思わず笑ってしまう。 <> 兄弟ギャング4/7<>sage<>2010/06/21(月) 18:48:54 ID:7Mo7HuPVO<> 「へへっ……罰が当たったんだぜ、馬鹿兄…貴…散々俺相手に、イカサマしやがった天罰だ。」
「クソッ!!気付かねえ方が間抜けなんだよ!!馬鹿弟!!」
痛くて痛くて堪らないだろうに、兄貴は笑っていた。
兄貴は昔からそうだ。
俺が痛くて辛くて悲しくて恐くて、何度も泣いていた時、兄貴だって痛くて辛くて悲しくて恐くて、
何度も泣きたかったはずなのに。
兄貴はいつも笑っていた。
俺が不安にならないよう、いつだって笑っていてくれたんだ。
「次はガチンコ勝負だ、馬鹿兄貴。ケホッ、ケホッ。今までの負け分、取り返してやるからな……」
「生意気な口叩きやがって、この野郎っ…、帰ったら、マジで足腰立たないくらいファックしてやる!」
「よく言うぜ…。はははっ、テクも何にもねえ、っ、盛ってる、だけの癖にっ…」
「うるせぇ、アホ。…ぃってぇ…、畜生がっ。早漏野郎、覚悟しとけよ。絶対にイカせまくって、はぁっ、二度と、そんな口叩けねぇようにしてやるからな!」 <> 兄弟ギャング5/7<>sage<>2010/06/21(月) 18:51:12 ID:7Mo7HuPVO<> 『次は』。『帰ったら』。
そんな話をしながら、俺達は最期の準備をする。
お互い笑って、多分もう来ない未来についてダラダラと話ながら。
「お前これ使え……こんな手じゃ二挺もいらねえよ。」
投げて寄越されたのは、リロード済みのモーゼルだ。
べっとりと血がついていて、それを見ると何だか鼻の奥がツンとした。
震える手にネクタイでルガーを縛り付け、ゆっくり息を整える。
目を瞑り、どうやって奴らを道連れにするかをシミュレーションする。
これが最期の『親孝行』。
ファミリーへの、『父さん』への恩返しだ。 <> 兄弟ギャング6/7<>sage<>2010/06/21(月) 18:52:33 ID:7Mo7HuPVO<> 6
「なあ。」
銃声がおさまり、沈黙が広がる中、兄貴の掠れた声がした。
視線だけそちらにやれば、兄貴と眼があう。
これ以上面倒なことは言わなくたっていい。
大体兄貴の考えることなんて黙ってても解る。
それは兄貴も同じことだ。
上手くいかないことだらけの人生だった。
挙げればきりがないくらいのアンラッキーが詰まった一生だった。
ただそんな人生でま、俺の側には兄貴がいて、兄貴の側には俺がいた。
これだけはどんな奴にも胸を張って言える、最高のラッキーだ。 <> 兄弟ギャング7/7<>sage<>2010/06/21(月) 18:55:54 ID:7Mo7HuPVO<> 呼吸を整えて、一瞬天を仰ぐ。
『父さん』に、神に祈る。。
兄貴と一緒に在ることを許してくれた『父達』に心からの感謝を。
そしてもう一度だけ兄貴を見た。
やっぱり兄貴も同時に俺の方を見た。
最期まで俺達は一緒なんだ。
きっと地獄でだって一緒なんだろう。
そう考えたら、なんだかくすぐったくて笑いが込み上げてきた。
ニヤリと俺が笑うと、兄貴も同じように笑い返してきた。
それを合図に、俺達は飛び出していく。
銃声と硝煙が立ち込める、ほの暗い闇の中へ。 <> 兄弟ギャング<>sage<>2010/06/21(月) 18:59:28 ID:7Mo7HuPVO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )以上ですた。眼と眼で語り合う仲モエ- <> 揺らぐは人の心1/5<>sage<>2010/06/21(月) 23:24:42 ID:m8VCB+R90<> 某リョマ電
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


旗なびかず 風なし
揺らぐは人の心なり

逃げても、逃げても追われる。斬られた左腕と、素足に草履で逃げ回った足先にはもう感覚がない。
夢の中で、ああ夢だと思う。ああ、また、あの夢だと
「イゾ―!」「何処じゃイゾ〜」自分を呼ぶ声がどんどん大きくなる。
恐怖がすっぽりと身体を覆い尽くす。
「わぁあああああ!」
無我夢中で斬りかかった。踏み込む足の間合いが甘かった。
刀の下に潜り込まれ、一瞬の間に後ろをとられ、力任せに押さえこまれる。拠り所の刀も奪われ、両腕をとられる。
<> 揺らぐは人の心2/5<>sage<>2010/06/21(月) 23:26:13 ID:m8VCB+R90<> 「リョオマじゃ!わしの顔を見ぃ!リョオマじゃ!!」
信じられない。そこには幼馴染みのリョマの顔があった。
懐かしい温かい瞳が自分を見ている。
「りょおま!?」
「イゾ!おまんを探しちょったがぜよぉ。」
「・・・りょおま・・・りょおま!」
「りょおまぁああ」
子供のように抱きついてしまった。温かい体温に、土佐の匂いに、夢中にしがみついた。
「大丈夫じゃ、大丈夫ぶじゃ・・わしが助けちゃるきに」
低く、柔らかな声が響く。がっしりとしたリョマの手が背中を支える。
それだけで、どこか安心してしまう。
そのまま、温かい腕の中にいられたら・・・・。
<> 揺らぐは人の心3/5<>sage<>2010/06/21(月) 23:28:25 ID:m8VCB+R90<>  牢屋敷の格子越しに届く長い影を作る朝の光で目が覚めた。
下士の中でもさらに身分の低い以蔵の牢は、家畜小屋に似ている。
土間の床に、湿った藁、用を達すための置き便器、木桶に水が置いてあるだけの狭い牢である。ただ、その、扱いは家畜より酷いかもしれない。
朝番の牢世話役によって、ようやくイゾの本縄が解かれた。
牢番はだらしなく乱された牢着にも、明らかに情事の後が残る下肢の様子にも無表情に縄を解くと、再び牢に鍵をかける。

一昼夜、小手高手に縛られていたせいで、イゾの肩から先の腕は自分のものでないよう感覚になっている。
それでも、おぼつかない指先で、自分の下帯を解いき、桶の水で湿らすと、身体につい白濁の後の後始末を行った。
タケチが諭した衆道の作法で、大監察ゴトウの事後の後始末をしている自分が、惨めであった。

―だいたい、リョマはいい加減だ。タケチセンセとは大違いだ。−
夢の続きの囚われの現実に立ち返り、イゾは惨めさを払うようにそっと毒ずく。
<> 揺らぐは人の心4/5<>sage<>2010/06/21(月) 23:33:49 ID:m8VCB+R90<> ―ほんとに、大違いだ。
ああ、そうじゃ!そして、いつも自分はリョマの歩尺に巻き込まれて、わけのわからないことになっちゅう。−
「都の女は気おくれしてまう」京で偶然逢った時、うっかり口を滑らせてしまった時のことが思い出された。
それが、どしてわしが組み敷かれて、リョマと情を交わしちょうことになるんろか・・・。
たしか、「ラケチセンセが念兄やったら、くそ真面目なことしか教えてもらっちょらんやろ。それで、京の女を悦ばすことができるか心配じゃ」そんなことを言われて、連れ込み宿に引き込まれた。 
ところがイゾは、おなごの抱き方を教えてもらっとる筈なのに、気が付いたら淫らに身体に火をつけられ激しく揺さぶられ続けた。
「もう・・無理や、リョマ、リョマ・・・」必死に哀願したが、「そんな色っぽい目で見られたら、止まらんぜよ」と、ちょっと困った様に眉をひそめ、目を細める。
終わった後は、いたずらっ子のような顔をして、「タケチセンセには、黙っときいや」と頭をなでる。
タケチセンセやったら、「侍としてだらしない」と叱られそうだが、そのままリョマの腕の中で丸くなる。リョマの心の臓の音が聞こえる。汗の匂いオスの匂いそして・・土佐の匂い。
<> 揺らぐは人の心5/5<>sage<>2010/06/21(月) 23:36:47 ID:m8VCB+R90<> だが、どうしてだろう。リョマの体にすっぽり包まれても、どこかがで、イゾは自分の帰る処はタケチセンセの処しかないと思っていた。

昨夜見たタケチの姿が、リョマの面影を消していく。『なんちゃ喋っちゃいかん』睦言の様に囁かれた言葉が耳に蘇る。

イゾは「なんちゃ喋っちゃいかん」縄目の擦れた後が残る両腕をさすりながら、自分に言い聞かせるように呟いた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/22(火) 02:29:36 ID:W3jHt4+5O<> >>358
GJ!!
萌えた…萌えすぎて悶えた…。
タケイゾ派ですがタケイゾありきのリョマイゾ萌えます…
大層おいしくいただきましたw
ありがとう!
続編や別編あればまたぜひ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/22(火) 09:05:01 ID:lZq1N1MJ0<> >>357
切ない…でも、かっけー
素晴らしかったです!萌え尽きました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/22(火) 16:52:14 ID:tP56j33e0<> >>350
萌えた。すんげー萌えた。切な萌えた。
軽口叩き合ってるとこととかぐっときた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/22(火) 23:13:55 ID:IJrSpQqH0<> >>358
リョマ電の囚われ人萌え!ですのう <> 愛しくて愛おしくて愛おしい 1/1<>sage<>2010/06/23(水) 02:10:59 ID:SlNqQwV3O<> 素なう最終回間際おもいのたけを短いながらぶつけてみた
医者→春で中路←林田の何話目かの後の医者と林田のやりとり
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「好きなら、好きって、言うのダメですか?」
医者の言葉が突き刺さる。
「だって、そう、……そうしなければ、しなければ」
彼の焦りが言葉を繰り返させる。寄せられた眉間の皺。臆面もなく、好きだと伝える彼は、だがそれでも上手くいかない恋に俯いている。

中路と、春、二人の姿を見て、同じように心を痛める君と僕。

同士のようで、どうしても秘められない彼とどうしても秘めなければならない自分とはどこかで決定的に違う。
「春、春……」
サラリと揺れる髪に触れ、撫で、慰めて慰められた。
切なげに呼ばれる本人は今またその恋しい人と帰る道の上だろうか。
(中路。中路、中路、)
何度も呼んでみる。おまえの隣に今は誰がいる?
欲しいと思う度に諦めが付き纏う。なぜ、こんなにも不自由な気持ちになるのだろう。
「医者、あんな風に伝えたって、春はOKなんて言わないよ」
「……どうして、ですか?」
意地悪な気分で言えば、医者は素直に傷付けられてこちらを見る。あんな風に伝えられるおまえが羨ましい。妬ましい。そんな気持ちで傷付ける俺はそれこそ卑怯だ。
「わかってるよね? 春は、中路を」
「わかりません」
遮る声は思いのほか強い。
「そんなの、わからない。僕は春を好きで、春か僕を好きになってくれたらうれしい。それがすべて」
なんてエゴイズム。
ああだからそんなにもおまえは輝くの。

僕らの恋にどんな未来が来るか、おまえは怖くないのか。
尋ねたいことばかり、浮かんで言葉にできなくて、強い眼差しに堪えかねるように、まぶたを閉じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/23(水) 09:39:27 ID:dEmdUHFt0<> >>367
GJ!林田の切なさが胸に迫ってくる。
医師も真っ直ぐで良いな。だからこそ林田には眩しく写るんだろうな。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/23(水) 22:44:15 ID:UXi4zmHF0<> >>164
亀にもほどがあるけど、ありがとう萌え死んだ
ぐぐってまた萌えた
もし他の話があるのならぜひ読みたい <> 風と木の名無しさん<><>2010/06/26(土) 00:28:10 ID:Mctdmxi9O<> ぐう畜カッスのキンタマキンタマアンドキンタマ <> 小さな力1/4<>sage<>2010/06/26(土) 01:12:50 ID:HOqPVioI0<> タイガのリョマ伝、ワスケ→タケチ
ワスケが紳士すぎて萌えたので勢いで書いてしまいました
医者については完全に捏造、トサ弁もかなり適当ですがご容赦ください

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


白髪混じりの初老の医者から差し出された饅頭に話助は息を呑んだ。
竹の皮に丁寧に包まれたそれは何とも美味そうな饅頭だが、これは天祥丸の粉末を
多量に混ぜて作られた毒饅頭である
「…ありがとうございます、私が必ず武智様にお届け致します」
「天祥丸は時が過ぎれば過ぎるほど効き目が薄くなります故、遅くとも今日明日中に
使われるのが宜しいでしょう」
「承知致しました。…武智様の手紙は焼いて処分されたがですろうか」
「はい、確かに焼いて処分致しました」
話助は医者に頭を下げると、小さく震える手でその毒饅頭を受け取った。
「武智様はいずれきっと牢から出してもらえる、私はそう信じております」
「わしもそう思うちょります」
もう一度医者に頭を下げると、和助は饅頭を懐に隠し足早に医者の元を後にした。

何者かに目撃されぬよう人気の少ないうちに来て欲しいとの医者の言葉を受けて
話助が医者宅へと向かったのは夜が明ける少し前、まだ空が暗い刻だった。
外に出て空を見上げると東方の空が白みを帯び始めている。
辺りに目を配り、近くに人がいないのを確認してから話助は奉行所へと向かった。

急げば、日が昇りきる頃には武智に饅頭を届けることが出来るだろう。 <> 小さな力2/4<>sage<>2010/06/26(土) 01:16:31 ID:HOqPVioI0<> 勤能党の者たちが拷問にかけられていた
耳を覆いたくなるほどの悲鳴にも武智は決して耳を塞ぐことはなく
こぼれ落ちそうになる涙を必死に堪え、それを受け止めていた。
自分を慕い、ついて来た者たちが罪人として厳しい拷問を受けている
その武智の心境はいかばかりだろうかと話助は毎日のように考えていた。

土イ左では上司と下司という徹底した差別が存在している。
下司は上司に跪き頭を下げ道を譲らねばならず、身につける物も制限され
贅沢も禁止されている
同じ人間でありながら下司はまるで犬猫のように扱われてきた。
話助は下司である。
動物のように扱われ、自分は一体何のために生まれたのだろうかと絶望していたときに
同じ下司でありながら藩を動かし幕府を動かし、そして朝廷をも動かした武智の名を耳にした。
話助は牢番という役目からか、勤能党に入ることはできなかったが
絶望しかなかった己の人生に一筋の光を射し入れてくれた武智には
言葉では言い表せないほどの尊敬の念を持っていた。
その武智が牢に入れられると聞いて、話助は驚きを隠せなかったが心のどこかで
憧れである武智に会えるかもしれないという淡い期待を持っていた。
それは「武智が投獄されるなど何かの間違いである」という確信から来るものだったが
その確信はすぐに音を立てて崩れことになる。
毎日のように聞こえてくる伊蔵の悲鳴は武智の精神を容赦なく打ち砕いていった
少しでも何かの救いになればと、話助は手紙を届けたり菓子や花を差し入れることもあったが
それでも武智はやつれていき、虚ろな目で空(くう)を眺めていることが多くなった。
武智が目の前にいるのに何も出来ない自分に悔しさを隠せない
何か自分に出来ることはないだろうか、自分に出来ることがあるならば何でもやろう
話助はそう自分自身に誓っていた。 <> 小さな力3/4<>sage<>2010/06/26(土) 01:19:46 ID:HOqPVioI0<> 「…話助はおるかえ」
「はい、ここに」
武智の呼びかけに話助はすぐに武智の元へと駆け寄り、しっかりとした口調で答えた。
近くで見る武智の顔は見るに堪えないほどにやつれていた。
「おまんに頼みがあるぜよ」
「わしに出来ることがあるやったら、何でも言うてつかあさい武智様」
「……」
武智の沈黙に何か言い難い頼みなのだろうかと話助は耳を近づけた。
「わしの知り合いの医者から天祥丸を貰ろうて来て欲しい」
「天祥丸…?」
耳慣れない言葉に話助は眉を寄せる。
「阿片を使こうた毒薬ぜよ。これを食うと口から泡を吹いて、たちまちのうちに死ぬと言われちょる」
武智からの思わぬ頼みに話助は目を見開いて言葉を失った。
「おまんを見込んでの頼みじゃ、わしは伊蔵を救ってやりたい。どうか頼む話助」
武智は格子の隙間から腕を伸ばし、縋りつくようにして話助の腕を掴んだ。
「頼む、頼む話助…」
うわ言のように繰り返す武智の呼吸は荒く、話助の腕を掴む手もぶるぶると震えている
尋常ではない様子だった。
話助の腕に小さな痛みが走る。どうしたのかと思い腕を見ると
無意識のうちに力を込めてしまっているのか、武智の爪が自分の腕に食い込んでいた。
武智の頼みを断る理由など、どこにあると言うのだろう
話助は武智の目を真っ直ぐに見据えて言った。
「承知致しました。わしが必ずお持ち致します」
「そうかえ、そうかえ。礼を言うぞ話助」
武智のこの言葉だけで話助の胸には、言いようのない嬉しさがこみ上げた。
毒薬を扱うということもあってか武智は医者への手紙を書いた
話助はその手紙を丁寧に手ぬぐいに包んで懐へと隠すように仕舞いこむ
「その手紙は読んだらすぐに焼いて処分するよう言うてくれ、万が一ということもあるきに」
「はい、必ずお伝え致します」
「頼んだぞ話助」

話助は早速、武智の知り合いの医者の元へと走った。 <> 小さな力4/4<>sage<>2010/06/26(土) 01:22:35 ID:HOqPVioI0<> 日が昇りきる頃に話助は奉行所へと着いた、そして武智の牢へと急ぐ。
武智からの手紙を読んだ医者はしばしの間絶句していた
話助は医者に何度も土下座をして、どうか天祥丸を分けて欲しいと頼みこんだ
武智の為ならばと医者は一言「分かりました」と言って首を縦に振る
天祥丸ならば饅頭に混ぜたものがよいと言って、早速手配をした。
そして次の日に渡されたのがこの饅頭である。

「武智様」
牢の武智は力なく格子に凭れ、足を投げ出すようにして座っていた
そしてまた空を見ている、話助の言葉は耳に届いていないのか何の反応もない
周囲に知られてはまずいので大きな声は出せないが話助は何度も武智に呼び掛ける。
「武智様、武智様…!」
三度目の呼びかけでようやく武智が話助の存在に気が付いた
話助は周囲に目をやり誰もいないのを確認すると、懐から医者に渡されれた毒饅頭を取りだした。
「これは天祥丸の粉末を混ぜた毒饅頭です。お医者様の話ではこれは時が過ぎれば
それだけ効果が薄くなってしまいますきに、今日明日中に使われるのが良いそうです」
武智は話助から毒饅頭を受け取ると少しの間それを見つめていた。
弟子のような存在の伊蔵に毒を食らわせるなどとても堪え難いことだろう
「話助、ようやってくれた。おまんにはほんまに感謝しちゅう」
「いえ、武智様のお力になれて、わしはまっこと嬉しいがです」
「…そうか、そうかえ」
武智は少しだけ笑みを浮かべた。
初めて見た武智の微笑みに話助は胸を打たれる
下司として生まれ、何も出来ないと思っていた自分が武智の為に働くことが出来た。
そしてそれが武智の笑みを生み出し、少しでも武智の苦痛を和らげることが出来たのだ
話助にとって、これほど嬉しいことはない。

「わしに出来ることがあるやったら、遠慮のう何でも言うてつかあさい武智様」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 届かぬ祈り1/3<>sage<>2010/06/26(土) 12:29:52 ID:3jQCRAXs0<> テ.イルズオ.ブ深淵の害焔で。シリアス寄りです。
物語後半の一場面(レ.ムの塔前後)を主題としているので、ゲーム未プレイorアニメ未観賞の方はご注意を。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

――奇しくも、復讐は成就することとなる。
それも、彼がまるで想定していなかった方法で。
或いはそれは皮肉か。
積年の復讐心に自分なりにケリをつけ、断髪までして「変わりたい」と宣言した少年を、親友として見守っていこうと思ったその矢先に。
或いはそれは罰か。
"親友"を自称しながら、笑顔の仮面の下に昏く澱んだ殺意の情念を滾らせていたひとときがあったことへの。

ロ.ーレライ教団の総本山、聖地ダ.アトにて。

かつてはその使用人の立場にあった男ガ.イ・セシルは、元主人を殴ったあとでまだじんと痺れる右手を、反対側の手で押さえていた。
その視線は鋭く、唇は固く引き結ばれている。

劣化複写人間(レプリカ)だから、と自分の死をいとも容易く口にする赤毛の少年を、思わず殴りつけていた。
それも、平手ではなく握り拳で。
そして無我夢中で叫んでいた。

「石にしがみついてでも生きることを考えろ」

――「生きなさい」。
それは自分を庇って死んだ姉が、最期にかけてくれた言葉。
「過去に囚われていては前に進めない」と並んで、記憶の深淵から彼を守り支えてきた、もうひとつの"真理"。 <> 届かぬ祈り2/4<>sage<>2010/06/26(土) 12:52:05 ID:3jQCRAXs0<> だが事は単純ではない。 いま惑星オ.ールドラントは有害な障気に包まれつつある。
このままでは遠からずして人類は緩慢な滅亡への道を歩むこととなる。
解決策はひとつ。超振動と呼ばれる力を使える者を人柱として、その命と引き換えに障気を中和すること。
そしてそれが可能な人間は、この世に二人だけ。ア.ッシュとそのレプリカ、ル.ークである。
順当に考えれば、劣等のレプリカ・ル.ークを障気問題解決のために"消費"し、優等の被験者(オリジナル)を生かすのが"正解"だ。
だが従者として、兄として接してきたガ.イは、その"正解"を素直に認められない。
勝手な都合で生み出され、今度は世界のために死を求められる。
十年にも満たぬその短い生涯は、初めから終わりまで為政者たちの、大人たちの都合で翻弄されるというのか。
さりとてそんなガ.イも"大人"だった。
世界のための犠牲とされそうな少年を、例えば連れ出して逃げてしまうようなことは、彼にはできない。
大切な家族に加えて親友まで奪おうとする世界など、いっそ滅べばいい、などという飛躍的な発想は、
21歳となった彼の持ち合わせるところではない。
だが同時に、いくら大人びているとはいえ、仲間のジ.ェイドほど合理的でもいられない。
少なくともル.ークを殴り付け、障気なんてほっとけ、と叫ばずにはいられぬほどには。
<> 届かぬ祈り3/4<>sage<>2010/06/26(土) 12:53:04 ID:3jQCRAXs0<> 代わってやりたくても叶わない。
件のふたりが必要とされる理由は、単身で超振動を起こせるという点にある。
いくら剣の腕が立っても、彼はその意味では悲しいほどに、ただの人間でしかない。
自分の無力さに嫌気が差して目を逸らすと、床に映ったステンドグラスの影が視界に入った。
(そうだ、ここは礼拝堂だったな)
……始祖ユリアに祈れば叶うというなら、いくらでも祈ろう――どうか彼を、ル.ークを死なせないで下さい、と。
あいつはまだ何も知らない。生まれてから七年しか経ってないんです。
俺の故郷のホドは無理だけれど、それでも見せてやりたい景色がたくさんあります。
料理だってちょっとずつ上手くなってるし、それにたぶん、恋だって、してるはずです。
──だが、そのル.ークに残酷な死の未来を課すのが、他ならぬユリアの預言なのだった。
祈る神すらいない。
(駄目だ。一番辛いのは俺じゃなくてあいつなんだからな)
ガ.イは個人的な感傷に浸りかける自分を即座に律する。
(あいつのために俺ができることを、考えよう)
──執行猶予にも似た時間が、徐々に、だが確実に、流れる。

刻限が来た。
世界のために死ねるか、という残酷な問いに対する返答が為される刻限が。
ガ.イはル.ークが先程向かった図書室に入った。 <> 届かぬ祈り4/4<>sage<>2010/06/26(土) 12:55:09 ID:3jQCRAXs0<> ガ.イはそこで整理した自分の気持ちを伝えようとしたのだが――

そこには先客がいた――テ.ィアである。
二人の顔を見て、瞬時にわかったことがある。
きっとル.ークは彼女に、自分にはぶちまけなかった心情の一端を吐露したのだろう。
(あのワガママル.ークお坊ちゃんが、一人前に人の心を気遣ってくれるとはね……)
その背伸びした思いやりが、たとえようもなく、哀しい。
それがもっと違う機に、違う形でもたらされたならば、あるいは。
ともあれ、こうなっては自分の出る幕はない。
ル.ークを前に、言ってやりたいことはある。でも言わない。それはどうしたってエゴにしかならないだろうから。
代わりに、考えに考え抜いて決めたことを、決して口には出さず、胸の内だけで告げる。

――ル.ーク、お前の出した答えが何であれ、俺はお前を全部受け止めるから。
いまここで息をしているお前の存在も、決意も、……あるいはその最期も。
逃げずに、誤魔化さずに、真正面から向き合うから。
「親友(マブダチ)」の称号を偽りとしないためにも。

胸裡に去来する様々の思いをぐっと呑み下し、ガ.イはル.ークに声を掛けた。
「ルーク。陛下たちが呼んでる」
自分の声と表情を、つとめて平静に保ちながら。

……かくして一行はレムの塔へと向かうこととなる。
その白い墓標にも似た塔の頂上で、ガ.イは自らの心に決めた通り、彼にしかできぬことを行うだろう。
障気で覆われた空は、どこまでも禍々しく、昏い──。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
投稿に手間取り、通し番号がおかしくなりました、申し訳ないです。 <> 翌檜1/2<>sage<>2010/06/26(土) 21:46:16 ID:lPWNUsuc0<> SilverSoul(和訳) のヅラ×銀です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「んあ?」
 突然後ろから抱きつかれた。首に絡みつく細い腕。うなじに触れるさらさらとした長い髪。背中全体で感じる体温。
「……なに? どーしたヅラ。一昔前の月9でも見たか?」
「俺はメロドラマ的なもののほうがすきだ」
「そーですか。で、ホントどうしちゃったの」
「欲情した。お前に」
「ああそう…って、冗談も大概にしろよ、テメー」
「冗談じゃない、本気だ」
「……本気だ、じゃねーよ」
 うろたえんのもなんだか癪で、できるだけ冷静ぶって言ってみたけども、頭の中は混乱している。
だって、どーすんのコレ。どう収拾つけんのコレ。ヨクジョーしたとかとんでもなく直球なこと言っちゃって、しかも薄暗い部屋で蒲団の上で、一応お互い座ってる格好とはいえ、なんかすげー密着しちまってて、最早どーやったって言い逃れ出来ねーだろ。
そんでもってなんか、俺も逃げらんねえカンジになっちまうだろ。
「銀時……」
 長い付き合いでも初めて聞くような甘ったるい声で名を呼ばれたかと思うと、首筋に吸い付かれる。一緒に、着ている甚兵衛の合わせから手がするすると入ってきて、鎖骨の辺りを撫でてゆく。背筋がぞくりとした。
「………っ」
 体が強張る。ぞくぞくは収まらない。
なんか、やばくね? なんか、俺、流されそうじゃね? ていうか、もう流されてる? いや、でも流されてるってだけじゃねーよな。嫌ならとっととぶん殴ってでも止めりゃいいのに、どうもそんな気が起こらねえ。
このままだと幼馴染の男となんやかんやすることになりかねない状況だというのに、どうしたことか。
<> 翌檜2/2<>sage<>2010/06/26(土) 21:47:54 ID:lPWNUsuc0<> ぐるぐる考えている間もヅラの掌は引き続き俺の体を撫で回し、段々と背中に掛かる重みが増して、自然、体が前屈みになり片手を蒲団につく。
身長は然程変らないというのにこいつは俺と比べりゃ随分薄っぺらい体をしてやがるから、重量としては大したことはないのだけれど、何やら重たくって温かくてしょうがない。
「なんで、拒まない」
 耳ん中に音、そして触れてくる、濡れた感触。
「……っく……」
 人の耳舐めながらそんなこと、聞いてくんな。
それにな急にそんなことされたら力抜けちまうだろ。文句たらたら、言いたくても言葉にならなかった。
「銀時?」
「っ……知るか……んなの、自分で考えろ、や」
「……分かった」
 小さく笑って桂が言う。くそ。頭が熱い。顔が熱い。背中が熱い。触られたトコが熱い。
今の俺は、どんなみっともねえツラしてんだろーか。んで、コイツは、どんなツラして、こんなこと言って、こんなことしてんだろうか。
「なぁ……顔、見せろ、よ」
 どうしても確認してみたくなり振り返ると、頬に鼻先がぶつかる。至近距離で目が合う。
その目は真剣。脇に汗が滲む。腰の辺が妙な具合に疼く。
「見えた、か?」
「というか、なんか、オメー、声、ひっくり返ってね?」
「というか、貴様こそ」
「というか、元々こんなんです」
「というか、少し黙れ」
「というか、黙らせてみろや」
「……そうだな」
 顎に指、そして、唇に、唇。ああ、俺もすげー欲情してるわ。責任とれよコノヤロー。
 
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/26(土) 22:12:36 ID:+jQRQZLg0<> >379
うわわわ〜なんという寸止め!でもGJでした!!
良ければ続きをお願いします、お願いします。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/26(土) 23:08:41 ID:+ViFp5SF0<> >>379
乙です!
最近結構はまってるカプなんで嬉しかったです
またよろしく〜 <> 実験1/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:08:31 ID:B+P3AlUHO<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ばいきんまん(とドキンちゃん)×カレーパンマン

 薄く色がついた粉が頭上でぶちまけられて、カレーパンマンは咄嗟に腕で口と鼻を覆う。
しかし、ほんの少し吸っただけで効果てきめん、今まで散々アンパンマン達を困らせ、
けれどそれ以上にうっかり手を滑らせたばいきんまん達にも猛威をふるっていたねむりん草の粉末は、
今回もあっという間に彼の意識を拭い去った。
膝の力が抜けて、がくんと地面に落ちる。合わせて、背骨が溶け切ったように背中を支え切れなくなり、
まぶたを持ち上げていられなくなった。
衝撃を和らげるために手を前に出す余裕もなければ、そもそも指先に入れる力もない。
カレーパンマンはばったりと倒れた。
霞む視界の中で、自分とは違ってしっかりと立った二歩足が二人分見えた。
黒と紫とオレンジと赤。
まぶたが閉られる直前、最後に網膜に映されたのはその四色だった。

「はぁああなぁああああせぇええええええええ!!!!」
カレーパンマンは唯一自由な足をしっちゃかめっちゃかに掻き回した。
離せと言うからには彼は今捕まえられていて、確かにぎっちりと隙間なく胴体に巻かれた
黄色いリボンは腕をも巻き込み、更には粗末な椅子の背もたれも一緒になって縛られていた。
ようやく目が覚めてみれば、そこは薄暗く、壁一面に機械が敷き詰められた研究所のような空間だった。
ぶんぶんと頭を振って、これが夢でないことを確認したカレーパンマンは叫ぶ。
離せと言って離してもらえるとは思っていないが、とにかくねむりん草の効き目が切れて、
自分が起きたことを誰かに気付かせ、ここに来させないと。
カレーパンマン以外誰もいないと言う訳ではないが、でもここにいるのは、
「おいロールパンナ! これ外してくれよ、オレたち仲間だろ!」
「…………」 <> 実験2/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:10:03 ID:B+P3AlUHO<> そう頼んでもうんともすんとも言わない無口な女の子だけだから。
散らかったラボの中、堆く積まれたがらくたの天辺に爪先を揃えて立つ覆面の彼女は、
つまらなさそうに彼を一瞥し、すいっと飛んで出ていってしまった。
「あーこら! てめーロールパンナぁ!!」
頭に来てじたばたと暴れる。いや、彼女のことだ、ばいきんまんに拘束しろと言われたからそうしただけに違いない。
カレーパンマン個人にはロールパンナは恨みもなければ興味もないことは解っている。
あの黒い悪魔の、ある種いいなりにならざるを得ない彼女は、
守ってやらねばならない存在だということも、それはもう良く解っている。
でも、
「ほんっとに、メロンパンナとアンパンマンにしか興味ないんだからあんのやろう……!」
と思ってしまうのも事実だった。
「あ、起きたんだ」
じたじた床を踏んでいると、自動開きのドアからドキンちゃんがやって来た。
ピンクと白が渦巻く大きな棒付きキャンディを舐めながらと、よくもまあそんな気軽に声をかけられる!
カレーパンマンはぎいっと睨みつけた。
「怖い顔ー」
ぺろぺろと飴を舐めながら、歌うようにドキンちゃんは言う。
そして大きな動作で振り返った。
「で、どうするのばいきんまん。もう始めちゃっていいのー?」
しかし開け放されたドアの向こうから返事は聞こえてこない。
「なーに始めるつもりだよ!」
「んー、そうねえ、あえて言うなら…ストレス発散?」
ぱきぱきと飴を砕いて口に含み、ドキンちゃんは棒をゴミ箱へと投げる。
そして傍らのデスクに置かれた注射器を手に取った。
暫く、くるくるとそれを手の中で回して、首を傾げる。
僅かに室内に差し込む光で針を照らしながら、ドキンちゃんは呟いた。
「適当に射しても大丈夫よね」
「ばばばばいきんまぁあん!!! 早く来てぇええええ!!」
来たところで今度はそのばいきんまんの手によってまともに注射を打たれるのだろうが、
しかしドキンちゃんの手つきよりは安心できるはずだ……なんてことを考えたのではなくて、
ただ誰でもいいから彼女を止めて欲しかったから呼んだまでだ。 <> 実験3/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:11:20 ID:B+P3AlUHO<> その声が届いたのか、遅れてばいきんまんもラボに入って来た。
「ストレス発散じゃないよドキンちゃん。実験実験」
肩は落ち、しっぽとつのはふにゃんと垂れ、とぼとぼと歩いてくる。
いつものテンションはどこかに落としてきたのか、
発明と同じく大好きな実験にかかろうとしている割には目に見えて沈んでいた。
「なあ、どーしたんだよばいきんまんは」
「アンパンマンに相手にされなくてへこんでるのよ」
「はぁー? そんなのいつものことだろー?」
こそこそと耳打ちする二人だったが、かの人物にはばっちり聞こえていた。
ぴん! とつのとしっぽを立てて、頭上で腕を振る。
「あ、相手にされなかったわけじゃないのだ! ちょっと『今日は忙しいからいたずらしないでね行けないから』
って出会い頭に言われただけ! 望むところだ、今日はいたずらしてやんない!」
言った後、ずかずかとカレーパンマンの所までやってきて、ばいきんまんはドキンちゃんから注射器を取り上げた。
「これはいたずらじゃないってのか!? ひとをさらって縛ってまでしてるくせに!」
「うるさいうるさい! ちょっと黙ってろ!」
カレーパンマンは足をじたばたさせて怒鳴る。
が、ばいきんまんによって注射器から押し出された液体が、目の前でぴゅうっと小さな弧を描いて、彼を怯ませた。
ばいきんまんはリボンの上からカレーパンマンの腕を押さえ、そこに針を刺す。
「ぐ……」
細く鋭いものが服と肉を押し破り、侵入してくる感覚にカレーパンマンは歯を食いしばる。
子どもっぽいと笑われようが、注射は嫌いだ、だいっきらいだ。
カレーパンマンは顔を背けて、ばいきんまんの手元から目を逸らした。
注射器に入っていた液体は無色透明で、いっそ紫だったり緑だったりした方が「いかにもやばそうだ」
と解る分だけ良かったのかもしれない。
「はぁあ……」
針を抜かれ、緊張状態が解かれてぐったりするカレーパンマン。ばいきんまんは注射器を床に投げ捨てた。
「それに、アンパンマンにはこういう手段で勝ちたくないのだ、正々堂々、卑怯とずると悪知恵で負かしてやる!」
「むじゅん!」
覚えたての難しい言葉で指摘する。
が、次の瞬間には体に小さな電気が走ったような感覚に襲われ、カレーパンマンは肩をびくつかせた。 <> 実験4/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:12:30 ID:B+P3AlUHO<> 指先と爪先から、さらさらと砂が流れていくように力が抜けていく。
しかしねむりん草の粉を振られた時のような眠気は訪れない。
「おい! おかしいだろこれ!」
ねむりん草だけでなく、これまでしびれ草やらくしゃみ草、
しゃっくり草やらなんやら食らってきたカレーパンマンだったが、ただ力が抜けていくだけなんて初めてだ。
そんなものジャムおじさんの博識を頼ってみてもきっと存在しない。
「すごいでしょ、体は動かないのに喋れるのよ。久々に傑作ね、ばいきんまん」
「まぁね!」
ドキンちゃんに褒められて嬉しいらしい、ばいきんまんはえへんと胸を張った。
ご機嫌のまま、ばいきんまんは大きな鋏を引っ張り出して、カレーパンマンのリボンをざっくりと切った。
くてんと椅子から転がり落ちて、カレーパンマンは冷たい床にうつ伏せになる。
「ちょ、ちょっと……」
見えるのは二人の足だけ。ここに連れて来られる際と同じ光景だが、
しかしさっきとは違って、目は冴え冴えと覚めている。
黒と紫とオレンジと赤が一歩ずつ近づいてくる。
これから何をされるのかさっぱり解らなくて、さああっと血の気が引いた。


「ごーかんだ! りょーじょくだ! じゅーりんだぁっ!」
穏やかでない言葉を並べ、カレーパンマンはぎゃあぎゃあと喚いた。
その着衣は乱れ…といってもベルトが外され、マントをくくる紐が抜かれて襟元が緩んでいるだけだったが、
何も纏わないばいきんまん達と違って、普段顔以外に肌を全く見せない彼にとってはそれだけでも十分に辱めだった。
カレーパンマンの言葉に、はてなマークを浮かべるふたり。
「カレーパンマンのくせに生意気ね、あたしの知らない言葉使うなんて。どういう意味? ばいきんまん」
「うーん……後で仙人にでも聞いてみるのだ」
「そうね。じゃあ…何からいく?」
「これとか面白いと思う」
ばいきんまんはがらくたの山の中から試験管を取り出した。
頷き、心得たようにドキンちゃんはカレーパンマンを仰向けに引っくり返す。
「いや…無理だよ! 無理だからなそんなの!」 <> 実験5/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:16:06 ID:B+P3AlUHO<> ぞおおおっとカレーパンマンの全身から音を立てて血の気が引いていく。
「やってみないとわかんないじゃない」
「ドキンちゃんの言う通り! パン共にこの手段が有効だと解った暁には、アンパンマンを、アンパンマンを……!!」
「しょくぱんまん様に、しょくぱんまん様を、しょくぱんまん様と……ふふ、ふふふふふ」
この実験結果をしょくぱんまんにどう活用するのかは知らない(考えたくもない)が、いつもの調子でハートマークを飛ばすドキンちゃん
は相当まずい。
が、めらめらと燃えるばいきんまんにも不安にさせられっぱなしだ。
アンパンマンに一体何をしようと言うのか。こっちも考えたくもない!!
「よ、よし! お前らお腹空いてんだ、だからこんな訳わかんないことしちゃうんだ可哀想に! カレー作ってやるよ!」
このふたりを釣るのにはやはり食べ物だ。なんとか気を逸らせようとカレーパンマンはそう提案したが、
「カレー…」
「カレー……」
「そうそうカレーパンマン特製カレー! 甘口辛口激辛、リクエスト通りになんでも作るぜ!」
「………はっ! い、いやドキンちゃん! 実験を優先するのだ! どうせカレーパンマンはすぐ動けないんだし!」
「そっ、そうね! カレーに惑わされちゃ駄目ね!」
今回ばかりはぎりぎり惹かれなかった。
いよいよ追い詰められ、見せつけるように鼻先で揺らされた試験管に、
カレーパンマンはひぃいと喉を引き絞る。
ばいきんまんは、ロングTシャツのように尻を隠していたカレーパンマンの黄色い上着を捲り、
その下に隠されたズボンに手をかける。
冷たいガラスの管が、穴にぴたりと当てられた。
「あっちょっ、だめだっ、て………ばかぁあああああ!!!!」
それが入り込んだ瞬間、カレーパンマンは弾かれたように、喉を振り絞って叫ぶ。
「きつきつなのだ。ドキンちゃん、なんか滑りがよくなるもの持ってない?」
「うーん……。あ、あたしの部屋に日焼け止めクリームがあるわ、それなんてどう?」
ドキンちゃんがぽんと手を叩いて提案し、頷いてばいきんまんは立ち上がった。
ガラスの管はカレーパンマンに浅く突っ込まれたままで、だ。
「あ…ほ! てめこれ……抜けぇっ…!」 <> 実験6/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:18:41 ID:B+P3AlUHO<> これだけでも耐えられない異物感に、カレーパンマンは唯一自由に動く口ですら、既に呂律が回らなくなってきている。
「こんな、こんなことしてぇ…あん、あんぱんまんがだまっちゃ……っだぁあ!!」
はくはくと言葉と紡いでいたカレーパンマンに突き刺さった試験管を、
ただばいきんまんを待っているだけではつまらないドキンちゃんはえいと押し込んでみた。
「あっ、ひゅぁあ――っ!」
みちりと冷たくて固いものが突き入られ、しばらく動かないはずのカレーパンマンの足がびくんと跳ねあがる。
背中が反ったと思えば次の瞬間にはがくっと折れて、頬を押しつぶすように床に顔がついた。
「あ、あほ! ばか、まぬけ! ばかばかばかばかばかばかああああ!!!」
カレーパンマンはやけになって子どものように喚く。
籠った声ではあったが、いたずらが見つかった場合でもここまで怒りをぶつけられない分、
ドキンちゃんはそれなりに驚かされた。
「ご、ごめんね、そんなに痛かった…?」
眼球の奥からぶわあと押し上げてくる涙で視界が歪んでいく。
「しらない、もうお前らなんて知らねー」
ぐず、とカレーパンマンは涙と一緒になって溢れて来た鼻水を啜る。
ばいきんまんがアンパンに勝手に燃やしているライバル意識、
それは常に周りの人間を敵味方関係なく巻き込んで傍迷惑に展開されていく。
ドキンちゃんの恋だってそうで、なあんでこの子はごてごてに変装してから
ストレートを投げるようなことをしているんだろうといつも思う。
今回はその傍迷惑の究極だ。
こいつらアンパンマンとしょくぱんまんのことしか見てないくせに、なんでオレを使うんだ、むかつく、むかつく、オレのことなんてち
っとも見てないくせに。むかつく。
かと言ってばいきんまんがいきなりカレーパンマンに、今の「アンパンマンの仲間」
以上の認識を持って敵対されても困るし、
ドキンちゃんがある日突然しょくぱんまんに見向きもしなくなって………はもっともっと困る。
すぐに、とことこと足音が聞こえてきた。
「ドキンちゃーん! 持ってきたよー!」
「あー、ありがとー!」
小さな瓶を抱えてばいきんまんが足取り軽く寄ってきた。 <> 実験7/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:20:41 ID:B+P3AlUHO<> 「ふええ、まだやんのかよ……」
「これからこれから!」
カレーパンマンの上着を捲り、ばいきんまんはキャップを開けて腰の窪みにクリームを注ぐ。
「ぎゃっ、冷た!」
ばいきんまんは手の平でクリームを混ぜっ返し、自分の体温とカレーパンマンの肌でそれを温める。
手の中で揉み込み、ほんの少し温まったのを確認するとすぐさま穴に塗りつける。
「はああっ、ちょっと、ちょっとぉお……!」
試験管をぐりぐりと上下に動かし、クリームを中に無理やり注いで行く。
思いやりも何もあったもんじゃない。かと言って、
手酷く「カレーパンマンを」いじめつくしてやりたいというわけじゃないのだ。とことん報われない。
溢れてくる涙は痛みのせいだけじゃない。
歯を食いしばって、せめて情けない声を聞かせないように、
実験の効果を自分の反応で知らせないようにと、気丈にもカレーパンマンは身を固くしようとする。
が。
「あっ、…!」
直接体内に流れ込んでくるぬるい液体、それを絡ませながら侵入する管に、カレーパンマンは思わず声をあげてしまう。
「ふんふん。なるほどこうなるのか……ドキンちゃんメモとれる?」
脇に転がっているボードに挟まれた紙とボールペンを手に取り、ドキンちゃんに <> 実験8/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:22:49 ID:B+P3AlUHO<> 渡しながらばいきんまんが問う。
「えーっと、なんて書けばいいの?」
受け取ってペンを走らせ、右上に日付を書いてからドキンちゃんは首を傾げた。
「後でおれさまが補完するから、ほんとにメモ程度でいいのだ。『日焼け止めクリームと試験管による被験者の反応』」
「ひけんしゃ……ってどう書くの?」
「やっぱカレーパンマンでいいのだ」
「『カレーパンマンの反応』、っと。はい、報告どーぞ」
「まずはーおれさま達から見ても解るくらい体温は上昇してるでしょ、
ほっぺたは真っ赤、だいぶん泣いてるし、鼻水ずるずる。あと――」
「このやろ!! ばい…きんまん、それいじょ…いってみろ、はぁっ、おまえらぜった……うぁあん!?」
ぐに、とばいきんまんが引っ掻き回していた試験官の先が、カレーパンマンのつぼを掠める。
「んん?」
いきなり高くなった声に、ばいきんまんは頭を捻る。
ガラス管をしっかりと摘み、ぐりぐりと押し潰すように動かしてみる。
「はっ!? あ、あぁああああ!!?」
真下から真上へと強制的に持ち上げられ、最上まで来たところで一気に足場が崩れ去って、
頭を下にして真っ逆さまに落ちていく――そのような体の変化に、カレーパンマンは目を回す。
瞬きする度に、正気が涙と一緒に体外へ流れていってしまうような不安感を覚えた。
先程と比べれば大袈裟ともとれる反応に、ばいきんまんとドキンちゃんは目を丸くした。
「どうなってんの……?」
「なんかこのへんが弱点らしいのだ。ドキンちゃんそれ貸して。おれさまが書く」
ドキンちゃんからレポートボードを取り上げ、床に置き、空いている片手でメモを取りながら、
ばいきんまんはもう片手でカレーパンマンを貫く。
「あああっやめろぉ! おか、おかしくなっちゃうぁんっ!」
「どれくらい声高くなってんのかな。ドキンちゃん、サウンドセンサー持って来てー、あ、あとサーモグラフィも」
「はいはーい」
「いや! やだ、やだやだやだやぁああああ、うあっ、はぁああ!」
ぼろぼろと涙を流すカレーパンマンを、ちょこっとだけ可哀想かなと思うふたりであったが、
それと実験中止は繋がらなかった。
ドキンちゃんががらくたの中から目当ての機械を探す間、
ばいきんまんは引っ切り無しにカレーパンマンの中をつつき回す。 <> 実験9/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:26:33 ID:B+P3AlUHO<> その都度、顔を突き合わせるたびに自分は辛口だと豪語するカレーパンマンが、
打って変わって甘ったるい声を上げるのは、ばいきんまんにしてみても単純に気分がいい。
ただ、やっぱりほんのすこーし、引け目を感じないでもないので……
「カレーパンマン、いっこ言うの忘れてたんだけど……」
「ぁあ!? なん…だよ!」
「薬の効き目はとっくに切れてるのだ」
「はぁあああああ!?」
「この薬は試作段階で、まだまだ未完成。だから、お前は逃げようと思ったら逃げられるのだ。さっきからずっと逃げられる状態なの!」
「なっ……! あほ、ぼけなす! しんじまえ!!」
善良な町の人たちやヒーロー達だけでなく、悪役であるばいきんまんからしても考えられないような乱暴な言葉に、
彼はぎょっと目を剥く。せっかく教えてあげたのに!
呆気にとられて手が止まった。それはカレーパンマンにとっては脱走のチャンスだったはずなのだが――。
「あ、だめ、もうやだ! ばいきんまんてめえの――!」
ぐっと手に力を込めて、カレーパンマンが上半身を起こす。
すわ反撃か、と身構えてばいきんまんは逃げ出そうとしたが、その足はカレーパンマンに捕らえられた。足払いをかけられ、ばいきんまんは床に尻もちをつく。
「い、いたた…!」
ぴよぴよと小鳥が三匹、ばいきんまんのつのの周りをぐるぐる回る。
頭を振ってそれを打ち消し、ばいきんまんは気を取り直そうとして、で、
「な…なんなのだ!?」
彼の股間にうずくまったカレーパンマンに驚愕した。
「うっせえいいから黙ってろ!」
そう吐き捨てて、カレーパンマンはその大きな口でばいきんまんのつるんとした股間にむしゃぶりついた。
さっきの実験でさんざん口内で分泌された唾液が、熱を持った舌にまぶされ、
それがねっとりとばいきんまんに襲い掛かる。
「えええええ!? なに、なっ、どどどどドキンちゃああああん!!!」
「ふるへぇ! あっむ…はっ、あぐ、む…」
「どしたのばいきんまん。あーっ!?」
がらくたの山に頭を突っ込んでいたドキンちゃんが、
その山をがらがらと崩しながら慌ててばいきんまんの元へと駆け寄った。
「ちょ、ちょっと! ばいきんまんに何してんのよ!」
ばいきんまん同様、彼女もカレーパンマンが何をしているのか解らず、 <> 実験10/10<>sage<>2010/06/27(日) 03:28:42 ID:B+P3AlUHO<> 「あ!? お前らほんとに何も知らねえでこんなことやってたのか!?」
ぎろりと下から睨みつけられ、ドキンちゃんは肩を竦ませて一歩下がる。
いつもの間抜けで騙されやすい、三枚目に徹した彼とは違って、その眼は鋭く磨かれ、
触れ方を少しでも誤ったらすっぱりと斬れてしまいそうだ。
ばいきんまんの股間は障害も何もない穏やかな丘の様で、
どれだけカレーパンマンがねぶっても、とっかかりが一つも見つからない。
むくむくと次第に頭を擡げて現れるものがどこかに潜んでいるわけでもなさそうだ。
本当に、彼らは何も知らないでこんな実験を思いつき、更には実行してしまったのか。
着眼点が鋭いなんてレベルじゃねえぞ。
「っんだよ、出るもんもないのかよ使えねえ!!」
もうほとんどチンピラのような剣幕で、カレーパンマンは言い捨てる。
何がなんだか解らない、解らないんだけど、でもいつものパンチよりも強烈な平手を食らったようなショックを受けて、
ばいきんまんは一瞬で固まり、同時に真っ白になった。
「いい、帰ってアンパンマンのしゃぶるから」
ずっと彼自身を支配していた試験管をなんの躊躇いもなくあっさりと引き抜き、
カレーパンマンはそれを手の中で粉々に砕いた。
ちゃんとゴミ箱の上でその手を広げ、ぱんぱんと手の平同士で打ち払い、ガラスの粉を落とす。
「ちぇっ、中途半端なことしやがって。期待して損したぜ。
こんなだからお前らどっちも、いつまでたっても勝てねぇんだよ」
唖然呆然としているばいきんまんとドキンちゃんの前を横切り、
打っちゃったままにされていたズボンを履いてベルトを締める。
「今日はしょくぱんまんとこに泊めてもらお。アンパンマンはもう寝てるだろーし」
最後にマントを紐でくくりながら、カレーパンマンは独り言を呟いてラボを後にする。
シュイン――と自動ドアが開いて、廊下の光が薄暗い室内を照らすその中、
カレーパンマンは未だ混乱の溶けないふたりに影を作って出ていった。
後に残るのはぽかぁんと目と口を開けたままのばいきんまんとドキンちゃんばかり。
ただ、何時間も後にレポートに書かれる二文字だけは既に決まっていた。「失敗」。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/27(日) 04:35:00 ID:nFqu6GEaO<> わっふる!わっふる! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/27(日) 05:45:56 ID:bq79wo7p0<> >383
展開全てが予想GUY過ぎるww菌は自己増殖だもんね…
色々新しかった。GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/27(日) 08:36:26 ID:WA2C+tnR0<> 時期を外してしまったけどキタンクラブ連載再開記念
小介×雅夢のエロ未満小話
ネムキ5月号のネタなので、雑誌未読・単行本派の人は注意を

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 「受難の帰還」1/2<>sage<>2010/06/27(日) 08:38:36 ID:WA2C+tnR0<> 無理矢理押し込めていた長持の蓋が、バタンと大きな音を立てて開け放たれ、ゆらりと雅夢が立ち上がった。
どうやらもう下半身も出来たらしい。
余分な肉の無い、日本人離れした体つきに、俺はつい見とれてしまった。

前々から中性的な奴だと思っていたが…
融けた蝋よりも白く滑らかで艶やかな肌は、男の物とは思えない。
しかし骨ばった体躯は、女には見えない。
細くすらりと伸びた両足の付け根の、男性器につい目がいった。

「お前、男だったんだなぁ」
「まあ、一応」
相変わらずの無感情な声。
一糸纏わぬ全身をさらけ出して、それでも泰然と立っている。
見ているこっちが恥ずかしくなって、目を逸らした。

「どうした?」
「…なんでもない!」
内心の動揺を隠すように、大声で応えると、すっと近づいてくる気配がした。
「顔が赤い」
ひょいと顔を近づけてくる。
緑色の瞳が俺を覗き込んでいる。
自分でも良くわからない心の内を、透かし見られるようなその瞳。
魅入られたように動けないで居る俺の着物の襟に、雅夢の白い手が伸びてきた。
<> 「受難の帰還」2/2<>sage<>2010/06/27(日) 08:40:22 ID:WA2C+tnR0<> するりと襟元から入ってきた冷たい手が、素肌に触れる。
ひんやりとした感触なのに、俺の体温は跳ね上がる。
「お、おい…なにを…」
「脱げ」
「はぁ?!」
急上昇した体温は、俺の頭を沸騰させ、思考を混乱させる。
「おっ、お前!こんなとこで、何するつもりだ!!」
焦って大声になる俺を、怪訝そうに見つめる奴は、いつもの無表情で。
「こんな格好では外を歩けないから、着物を借りたいだけだ」
「なっ…」
焦って先走っていたところに、盛大な肩すかしをうけて、絶句してしまう。

その隙に、奴はどんどん俺の着物を脱がそうとするので、慌てて押しのけた。
「これを脱がされたら、俺が困るだろうがっ!
 何か着られる物がないか、探してきてやるから、待ってろ!」
そう言い捨てて、階段へ向かった。

暗い階段を下りる俺の頭上から、雅夢の声が降ってきた。
「『こんなとこ』でなかったら、良かったのか?」
冷たい声音の中に、どこか誘うような色香を感じ取った瞬間、鼓動が跳ねて
俺は足を踏み外し、階下まで転がり落ちてしまった。

「阿呆」
心底あきれ返ったような声が、俺の胸に突き刺さる。
どうやら俺の受難の日々が、また帰ってきてしまったようだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 静夜想1/8<>sage<>2010/06/27(日) 14:54:22 ID:3uJ4Ipd90<> 某リョマ電
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


 「タケチ〜。大殿さまから、以蔵の牢問が許されたがや」
そう、勝ち誇ったように伝えた時、その後ここまで自分の気持ちがかき乱さされることになろうとは、ゴトウショジロは思っていなかった。
-
―土佐−
旧暦の6月。
ゴトウショジロウの家の縁側では、妻の磯子が、木箱の上の青梅を転がし、竹串で、ぷつっぷつっと表面に穴を開けている。
梅雨もすっかり明けてしもうたようじゃ。ショジロウはパタパタとセンスで自分を仰いだ。
旧暦の6月。磯子の手でころがされている青梅の産毛が初夏の日差しで霜のように白く反射していた。

 シマムラエイキチが獄死し、しばらくは土佐勤王党への厳しい取調べは許可が下りなかった。エイキチは、拷問4日目に血を吐き、意識を失いそのままあっけなく息を引き取った。最後まで何も喋らなかったため、土佐の監察府は罪に問えなかった。
 タケチを何がなんでも罪人として晒したい。そのためには、どうしてもイゾの口を割らせないかん。ショジロウは、暗い情熱に取りつかれていた。今度は口を割らせるまでは死なせるわけにはいかなかった。

<> 静夜想2/8<>sage<>2010/06/27(日) 14:58:34 ID:3uJ4Ipd90<> 引き立てられた、イゾは、上半身裸にされている。後ろ手首を重ねるように戒められて高い肩の位置にまで引き上げられる形で藁のムシロの上で正座させられ、戒められている。
痩身ではあるが、剣術で鍛え上げられた身体は肩のあたりで盛り上がり、若木のような瑞々しい肌にくい込む縄が、痛々しい。
「吉田東洋さま、暗殺の一件で吟味いたす。殺すように命じたのはだれじゃ」
ショジロウは問う。「知らん!」とイゾは答える。眼が会った瞬間、ぞわっと何かがショジロウの奥で蠢めいた。
「打て!」ショジロウは打ち役に命じた。
「ああっっ」激しい一打が肩から背中にかけて打ちつけられ、以蔵が声を漏らす。
竹で作られた拷問用の打具は、打撃の衝撃を効率よく伝えるように作られている。イゾに呼吸を整える暇を与えず、打ち役は続けざまに打具を振りおろした。
動けぬように縄尻を押さえられているイゾの肌は打たれた処がさっと、赤みを帯び、やがて、皮膚が割れ、血が滲みだしてきた。
「わしゃ、何もしらん・・。」そう、答えるたびに、残酷な打具が立て続けにふりおろされた。
一刻ほどの責め苦ののち、意識を手放す直前にイゾは牢に戻された。
そして、これはまだ地獄の始まりにしか過ぎなかった。イゾにとってもショジロウにとっても・・・。
<> 静夜想3/8<>sage<>2010/06/27(日) 14:59:53 ID:3uJ4Ipd90<> オカダイゾの取り調べは、日を追うごとに、さらに厳しさが増した。証言をなんとしてでも得たいショジロウは、生かさぬよう、殺さぬようと責め手に命じていた。少しづつ苦痛が増し、長引かせるその手法は凄惨であった。

先が鋭く尖った三角形の木を五本並べた十露盤板を視て、両側から牢番に抱き抱えるように連れられてきたイゾは大きな眼に絶望の色を浮かべ、眼を伏せる。
「吉田さまを殺すように命じたのはタケチじゃろ?もう、楽になりや」諭すようにショジロウは問いかける。
前日も同じ石抱きの拷問を受け、柘榴の様になっている膝から下と責め具を交互に見、顎をとり、告白を促す。
「わしは、なんも知らん・・・」言葉とは裏腹に上目遣いに揺れる瞳は苦痛の記憶を蘇らせている。またぞろ、ぞわっとショジロウの身体の奥が疼く。
「吟味を始めい!」それを合図にイゾは十露盤板上に正座させられた。
正座するだけで、イゾは苦悶の表情を浮かべた。堅い木の三角柱が、腫れて、傷ついた足に食い込み、自重だけで、疼痛から、激痛に変わったのだった。
<> 静夜想4/8<>sage<>2010/06/27(日) 15:00:45 ID:3uJ4Ipd90<> ・
「うあぁぁ・・ああああああああ」絞りだすような悲鳴がこだまする。どれだけ、叫んだのか、叫びすぎて、イゾの声はかすれている。
2つほど抱かされた石の上に取調べ係りの役人が腕を置きぐっと上半身をあずけ、覗き込むように以蔵を見る。
「もう・・・今までのようにはいかんぜよ・・・イゾウ」 
イゾは、聞こえているのか、 はぁはぁと息を荒くしてするだけである。
取調べ役はイゾの顔色を見る。もう少し責めれば落ちそうでもある。
だが、絞りだすように出た言葉は、「し・・・しらん。わしは・・・知らん・・・」であった。
 取調べ係りは下人に命じる。「も一つ乗せやーい。」
答応して、二人がかりで、3枚目が載せられた。あたりに“ぐしゃっ”という、何かがつぶれる音が響いた。
「あああっ、あっあっあああ!!」
悲鳴があがる。
あまりの苦しさに前のめりになろうとするイゾの身体は、竹笞で後ろからはがいじめに起こさせる。不安定な身体と石がさらに脛を責め痛みを増す。
<> 静夜想5/8<>sage<>2010/06/27(日) 15:01:42 ID:3uJ4Ipd90<>
パタパタと扇ぎながら、以蔵の悲鳴を涼しげに聞いていた後藤象二郎は「闇討ちを命じたがは、武市せんせじゃろ?」せんせという言葉に馬鹿にしたような響きをのせて以蔵に問うた。
ショジロの問いにも、首を左右に激しく振り、「し・・しらん。しらん。わしは・・知らん・・」とオウムのように同じ言葉を繰り返した。
その答えを聞いたとたん、ショジロウは、ガッと力任せに右足を積んだ石の上に乗せた。
「うああ、はぁ、ああぁ!」
悲鳴だけがあがる、足で石を揺らし、さらに苦痛を与える。
悲鳴がタケチの牢まで、届くように・・・。

 形だけ、医師の手当てを受け、イゾは牢に放り戻された。
立て!と何度も頬を張られたが、ついに自力で歩くことはできなかった。
牢のなかで放り込まれた格好のまま、呻くしかできない。せめて、堅い土間から藁の寝床までともがくが、息をするたびに激痛が走る。ドクン、ドクンと流れる脈に体中が鈍い痛みを訴える。タケチセンセ・・・。

 ショジロは、怖かった。厳しい尋問が許されず、腹いせにイゾを辱めた時に襲われた「めちぇめちゃに壊したい」欲望が怖かった。それは自分の心の闇が増してくるような怖さである。
<> 静夜想6/8<>sage<>2010/06/27(日) 15:02:30 ID:3uJ4Ipd90<> ・・・・
闇におおいつくされる前に・・・。ショジロは、意を決してヨウドウ公にお目通りを願いでた。
「吉田東洋様殺害の一件、連日、岡田以蔵を拷問にかけちょりますけんど、一向に喋る気配がございません。かくなるうえは、武市本人に厳しい取調べを。」
 だが、ヨウドウ公は、武市はもう上士じゃきにと、拷問にかけることを許さなかった。
そんならばと、タケチの格下げを願いでたが、どうしてそこまでタケチに拘るとかえってヨウドウ公の怒りを買ってしまった。
「タケチ、タケチと・・・どういてわしがあんな下賤な男のことを考えんといかんがじゃ!
おまんが、あのオカダとやらに喋らせたらそれですむじゃに・・・。」
それが、ヨウドウ公の命だった。

<> 静夜想7/8<>sage<>2010/06/27(日) 15:05:49 ID:3uJ4Ipd90<> ----
与力町の家に帰ると、梅の匂いが漂っていた。妻の磯子に問うと、梅酢があがってきた甕に揉んだ紫蘇を漬け込んでいたらしい。見ると、爪の縁が赤紫色になっている。
磯子によると「今年は色のあがりが良い」らしい。見せてもらった甕の中では、紫色の紫蘇が梅酢につかり、鮮血のような赤に発色していた。

----
太ももの内側から伝う血の跡が扇情的ですらある。その訳を知ってるものも、知らないものも、もはや茶番劇のように滑稽ですらあるイゾの拷問に付き合う。
滑車に高く吊るし、ショジロウは狂ったように自ら打具を手に取ると、イゾの左背中から、胸から、笞打った。
「喋りや!」そう言いながら、もうイゾが口を割らないことは分かっていた。

少し、滑車から引き下ろし、下人に動かぬように綱を持たせ、右に回り、ショジロは激しく打ち付ける。
「喋りや。イゾ!殺させたがはタケチじゃろうが」。恐怖から逃げるように力まかせに笞打ちを続け、「タケチたけちじゃろうが、タケチじゃろうが、タケチじゃろうが・・・!!!!」と問う。
「・・・タ ケ チせんせいは・・」イゾの絞り出す声にショジロウは手をいったん止めた。
「・・・素晴らしいお方ぜよ・・」
真っ直ぐに、ショジロウを見据えているつもりなのだろうが、黒目の焦点があっていない。どこか、うっとりとした甘い語尾に、ショジロウに修羅が降臨(お)りる。
〜狂ちょる!イゾは狂うちょる〜そして、自分も。
また、笞打を再開する。左肩へ。腹へ。何かから逃れるように・・・。
<> 静夜想8/8<>sage<>2010/06/27(日) 15:06:58 ID:3uJ4Ipd90<> ---
昼間、口から血の泡を吐いたところで、調べが中止になった。
月明かりの夜の牢は恐ろしいほど静まり返っている。イゾはなるべく痛くない姿勢になろうと思ったが、指一本動かすのさえ辛く、牢の格子に背持たれていた。子ネズミが足元を這う。
ゆっくり視線を落とし、師を想う。タケチセンセは正しいきに・・・。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/27(日) 18:32:10 ID:ha12AxYRO<> >383
奇才あらわるwwwww
全体的な描写はきちんと餡パン世界だから何だか凄く和んでしまった……
よいものを読ませていただきました!GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 00:31:34 ID:XiMqarDMO<> >>383
独特な感じかと思いきや世界観はしっかり餡パンマンで面白かった!
餡パンサイドの面々は進んでるなあw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 01:08:06 ID:mVR6cuq60<>
タイガのリョマ伝+舞台IZOのミックス風です シンベ→イゾ→→タケチ
タイガのイゾが可愛くて可愛くて可哀想でたまらず、彼を愛してくれる人募集したら引っ掛かってきました。
薩摩弁にしたかったけど、時間かかるので諦めてしまた。ご容赦ください。

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空蝉1/4

「先生と一緒に寝ゆうが?」
まさに斬りかかられそうな鋭い目で問うてくる
「だとしたらどうする?」
苦しそうにギリリと奥歯を食いしばる井蔵に親兵衛はやれやれという表情で互いの間合いを詰めた。
怒りで今にも斬りかからんとする自分に大胆に近づく親兵衛に井蔵はギョッとなって一瞬ひるんだ。
「な、なんじゃ!」
驚きについ声が大きくなる。
「シッ、もうみんな寝てる。部屋で話そう」
自分と比べると親兵衛は何もかもが大人ですっかりなだめられてしまうのがまた悔しい。
尊敬して止まない武智と義兄弟の契りを交わしただけのことはある人物なのだ。
自分より一枚も二枚も上手で冷静で、ただただ煙たい存在。
これだけ毛嫌いしている井蔵に対し、親兵衛はいつも爽やかな笑顔で接してくる。無二の親友であるかのように。
纏わりついて離れない時もあり、更に鬱陶しい。
お傍に立つ相手を間違っちゅうぞ、と言って怒れば怒るほど愉しげに笑う。
先生との過ごし方を聞いたとしても、からかわれて嫌な思いをするだけなのもわかっているのに、つい無関心ではいられない自分がいる。
今日もまたはぐらかされる、と思っていたが、部屋に入ってからの親兵衛はいつになくどこか興奮しているように見え、自ら会話を繋げてきた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 01:08:55 ID:mVR6cuq60<>
空蝉 2/4
「それほど武智殿のことを知りたいというなら、彼がどのように抱き、抱かれているか知りたくはならないか?」
後ろ手に襖を閉めながら親兵衛ははっきりとそう言った。
その言葉には武智と親兵衛の同衾を示唆するものがあり、井蔵は絶望感と哀しみに涙が出そうになった。
「そんな哀しそうな顔をするな。互いの戦略のためにしていることだ。お前みたいにバカ正直に人斬りを実直にこなすやつばかりではないぞ?」
剣を使う以外とりえがないと自覚する井蔵にとってその言葉は辛かった。
親兵衛は哀しみに耐える井蔵の両肩にそっと手をかけた。
「だから、お前がその気になってくれるならお前の知らない武智殿のことを教えてやってもいい」
「......どういう意味じゃ」
やっとの思いで顔を上げ大きな瞳で井蔵は親兵衛を睨みつけた。
親兵衛はそっと耳打ちをする
「今の俺は武智殿よりむしろお前に興味がある。つまり、武智殿と俺との関係を知りたいのなら、私に抱かれろと言っている」
「な、何?」
突然の親兵衛の言葉に井蔵は思考が止まり、身体を硬直させた。
「斬っている姿を初めてみた時から、俺はお前から目が離せなくなった。
お前の華奢な身体からあれ程の重い刃が繰り出されるとは...鮮やかな様、鋭さ。俺は今までお前の剣ほど、恐ろしく美しい剣を見た事がない。
見惚れて天誅の手が止まりそうになったことがあるほどだ」
親兵衛は自嘲気味に笑みを浮かべて井蔵を熱っぽい目で見つめていた。
いつも冷静で明晰な男がいつの間にか息を荒げている。
「な、何わけのわからんことをッ、、、言うゆう!」
井蔵は親兵衛に見えない刀で追い詰められているような感覚に襲われていた。
「お前が、、、ほしい」
動揺する井蔵を親兵衛は両肩を掴んだまま床にすばやく押し倒した。 <> 空蝉 3/4<>sage<>2010/06/28(月) 01:10:52 ID:mVR6cuq60<> 「何をするんじゃ!止めや!」
襲われる、とやっと理解した井蔵は必死に親兵衛の下から逃れようと暴れた
「武智殿とはまず互いに膝を割って足を絡めるところから始める...」
頼んでもいないのに親兵衛は一方的に武智の話をし始める。
「首筋を吸い、胸を撫でる...」
言葉通りに親兵衛は井蔵の首筋に唇を這わせ、胸元をいやらしく撫でてきた。
「止めッ、親兵衛!」
「武智殿のことを知りたんだろ?大人しくしてろよ」
普段の爽やかな親兵衛からは想像できない陰湿な脅しに絶対に屈服したくないと思いながらも、
武智の名を出されると井蔵はどうしていいかわからなくなってくる。
しかし言葉では圧迫しながらも親兵衛は狼狽する井蔵を解きほぐすように身体の隅々を優しく舐め始めた。
「ハァッ、あっ、あ、嫌じゃ、」
親兵衛の執拗な舌技に押し殺していた切ない喘ぎ声が井蔵の口から漏れ始めた。
「親兵衛...いかんちぁ、、アッ、ンゥ!」
反応し始めた井蔵は急激に淫らな気配を放ちだした。
『これだ...』と親兵衛は息をのんだ。
普段は心情を他人に悟られてしまうほど純朴な井蔵が人斬りの時には狂気的な色気を放つ。
この二面性を目の当たりにした親兵衛はすっかり魅了され、どんな手段を用いても手に入れたいという欲望に駆られるようになっていったのだ。
感じながらも本意ではない井蔵はやはり逃れようとする。しかし逃れようとする度に、親兵衛は耳元で武智の話を聞かせる。
聞きたくない、と言いながら聞き漏らさないように耳に意識を集中させてしまう。
そしてとうとう抵抗することができなくなった井蔵は目を硬く瞑った。
瞼の裏には武智の清廉潔白な姿が映る。 <> 空蝉 4/4<>sage<>2010/06/28(月) 01:12:19 ID:mVR6cuq60<>
内腿から後ろにかけて親兵衛の熱い舌がしつこく行き来し、井蔵は堪えきれずに甘い声をあげ、無意識に敬愛する師の名を呼んだ。。
「武智先生...」
武智を穢しているような後ろめたい思いを感じながらも親兵衛の指と舌に翻弄されていく。
「あ、あ、、、先、、生...」
まるで武智に抱かれているかのような、夢を見ているような不思議な感覚に井蔵は包まれていた。
しかし身体を切り裂くような痛みが中心を走った時、井蔵は現実に引き戻された。
「うあぁッ、痛ッ!!」
それまで親兵衛は武智の名を呼ぶ井蔵に何も言わなかった。
冷静な自分をここまで狂わせる井蔵がこの瞬間だけであろうと、自分の手中にいるということに喜びを感じたからだ。
だが、井蔵を貫いた時、親兵衛の男の意地があらわれた。
「井蔵、お前を今抱いているのは俺だ。田中親兵衛だ。武智ではない」
その言葉を耳にした井蔵は首を左右に振って嫌がるような仕草を見せた。
親兵衛はその姿を切ない目で見つめ、井蔵の身体を責めたてた。
「も...やめ..親兵衛...」
「何を言ってるんだ、井蔵。やっとお前と繋がることができたんだ。止められるはずがないだろう」
「先生...先生...」
それでも井蔵の口から武智の名は途絶えなかった。
「今は身体だけでもいい。しかし、、、必ず俺の方を向かせてやる。俺とお前は、、必ず分かり合える...井蔵」
親兵衛は愛しい井蔵の身体を決して離そうとしなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ウウ、イゾを誰か幸せにしてあげてくで。ほんとに。
タイトルの入れ方間違ってました。途中から直したけど...すみません! <> 籠目の夢 1/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:19:43 ID:Y7o9fFxH0<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
オリジナル。記憶喪失逃避行モノの続き。


暗闇の中に倒れている人影があった。
男だった。顔は見えない。誰かもわからない。
それでも心が叫びを上げる。
『助けて!』
走り寄ろうとする。しかしその行く手は男に届く前、現れた柵に阻まれた。
その隙間から懸命に手を伸ばしてもその身には届かない。
どころか刹那、その肩を突如強引に後ろに引かれる。
冷たい床に引き倒され、その上にのしかかってくる、これもまた黒い人影。
何不自由なく……大事にしてやったのに……あのように下賤な……
呪詛のように落とされる、しかしそんな声も今の自分には遠い。
心はただひたすらに、柵の向こうの存在へと向かう。
『助けて…っ』
捕らえられ逃げられない体勢の下から、それでも必死に手だけを伸ばす。
それしか頼れるよすががないように伸ばす。
けれどその指先にその時、冷たい何かが触れた。
暗闇の中、それでも色はなぜか赤だとわかるそのどろりと冷えたものは、柵の向こうから
流れてきていた。
倒れている男の下から流れてきていた。

それが何かと悟った瞬間、自分の唇から迸った……それは理性を失った獣のような叫びだった。
<> 籠目の夢 2/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:20:52 ID:Y7o9fFxH0<> 自分の声は聞こえなかった。それでも咽喉の痛みから、自分が我を忘れたような悲鳴を
上げている事はわかった。
わからないのは、ここがどこで、自分は誰か……
夜明けのまだ来ぬ暗い部屋の中、その時、間仕切りの衝立を押し退ける勢いで、自分の寝床に
踏み込んで来た男の影があった。
伸ばされた手が両の二の腕を掴み、この身を引き起こしてくる。
そしてその体はそのまま彼の胸元に抱き込まれた。
上げる叫びを抑えようとするかのように、頭を後ろから支え、顔を強く肩口に押し当てられる。
そして耳元、名を呼ばれる。
けれど、その名が本当に己の物なのか、今の自分にはわからない。
何もわからない。それでも心は悲鳴を上げ続ける。そして、
「たす…けて…っ」
ずっと言えずにいた訴えを、ようやく最後まで口に出来ていた。
「たすけて…やってくれ……っ!」
誰を?それは暗い夢の中に見たあの人影を。
名は?……わからない。
こんなに悲しいのに、苦しいのに、自分は呼んでやるべきその者の名を持たない。だから、
救ってやりたいのに名を刻めぬ唇がわななく。混乱と絶望にただ呼気が乱れる。
そんな自分の背をこの時、目の前の男は宥めるように撫でてきた。
頭上から声が聞こえる。
「つらければ、噛んでくれていいですから。」
何を、と理解をする前に更に抱く力を強くされ、目の前に迫った着物に包まれた肩にあぁと思う。
そして逃げ道を見つければもう、耐える事は出来なかった。
腕が上がり、爪を立てるように懸命にその背に縋りつきながら、口を開ける。
歯に感じる布越しの肉の感触。
ぎりぎりと軋む。
そうやって噛み殺したいものがいったい何なのか、今の自分にはやはりわからないままだった。 <> 籠目の夢 3/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:22:03 ID:Y7o9fFxH0<> 再び目を開けた時、部屋はすでに明るい光に満ちていた。
障子戸越し、外からは鳥の鳴く声が聞こえ、廊下の方向からは、足音も大きく行き来する人の気配が
感じられる。
旅宿の朝は忙しない。
この旅の中で初めて知った事に思いをやりながらそっと顔を上げれば、そこにはごく近い距離で
自分を腕に抱いて眠る男の顔があった。
間近に見る、その顔には一夜では抜けきらぬ疲れが少しだけ瞼の辺りに翳を落としているようだった。
その原因を思い、わずかに視線を彼越しの背後に向ければ、そこには夜いつも必要以上に
自分達の寝場所を分け隔てる衝立の影が無かった。
自ら作った境界を飛び越えてまで、彼が自分の側にいる。
そしてこの咽喉の痛み。
(またか……)
覚えがまったく無い訳ではない。それでもその実感は目が覚めればいつもどこか朧げだった。
夢にうなされ、悲鳴を上げて目を覚ます。
そんな夢の内容は、自分の過去の記憶なのか。
ぼんやりと思い出す暗い闇の中には、倒れている男がいた。
あの男の為に……自分は記憶を失くしたのだろうか?
わからない。何も思い出せない。
自分の記憶はある一定の所まで遡ると、その先を見失う。
思い出せる一番古いものは、冷たい床と冷たい柵。
そして光の射さぬどこかの地下らしき檻の中で、事の前後も分からず脅えていた自分に差し伸べられたのは、
今自分を抱く、この腕だった。
もう一度、近くの男の顔に視線を戻しながら、その時の事を思い出す。
かろうじて蝋燭の明かりだけが灯る暗い空間に、あの時響いた鍵が開く重い音。
寄ってくる者の気配はすべて恐ろしかった。だから角に身を寄せ、震える。
けれど、そんな自分の前にあの時彼は膝を折った。
そして自分と目線の高さを同じにし、静かな低い声で、こう告げてきた。
『逃げましょう。あなたは私がお守りします』
<> 籠目の夢 4/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:23:35 ID:Y7o9fFxH0<> 持ち上がった指先が男の頬に触れる。
初めて見た時、髭は無かったと不意に思う。
自分を見張る為にいるとばかり思っていた彼は、しかしあの時も、逃げる途中も、そして今も
不思議な程自分に優しかった。
どうしてだろう。こんな足手まといな自分に。
外に出て痛感した我が身の知識の無さ。それは記憶が無いゆえなのか、それともそれ以前の問題なのか。
自分は一人ではほとんど何も出来ず、そして歩く事すら意のままにはならなかった。
長く捕らわれ足の力が奪われてしまったのか、道行きの途中で歩けなくなった自分を昨日、
彼は背に負ってくれた。
宿の手配も、その金も、すべて彼の差配。
年は自分より幾分か上で、近しい身寄りはいないと言っていた。
しっかりと世慣れした一人前の大人な彼に対し、自分はきっと彼がいなければその日の内に
路頭に迷うだろう。
感謝している。けれどそれと同時に心苦しくもある。
何か少しでも返せるものがあればと思うが、その矢先で自分はこの始末だ。
つこうとした溜息が、痛む咽喉元で引っかかり軽い咳になる。
するとその振動で、この時不意に目の前の体が身じろいだ。
頬に触れていた指をそっと引き戻す。
そしてゆっくりと持ち上がった瞼から覗いた彼の瞳をまっすぐに見つめていると、少しの沈黙の後、
彼は慌ててその身を跳ね起きさせた。
「うわっ…えっ?!」
「…いた…っ…」
巻き込むように抱かれていた腕から投げ出され、布団の上に落ちた痛みを口にすれば、途端、
彼は再び慌てて倒れた自分ににじり寄ってきた。
「申し訳ありません。大丈夫です…つっ、」
かけてくる、しかしその言葉が途中小さく上げられた声によって途切れた。
<> 籠目の夢 5/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:25:03 ID:Y7o9fFxH0<> 「……どうかしたのか?」
痛むのか手首を掴もうとして、しかしその寸前で止まる彼の手元に視線をやりながら問いを口にすれば、
それに彼は少しの逡巡の後、まるでこちらを安心させるかのように苦笑めいた笑みをその口元に浮かべてきた。
「すみません、何でもないのです。ただ、腕が少しだけ痺れて…」
「しびれ……」
「大丈夫です。すぐに治りますから。」
言いながら身を正し、その痺れをやり過ごそうとする。が、その時またしても小さな悲鳴が
彼の口から洩れた。
今度は何?とたまらず自分も身を起こす。
そして心配から彼の様子を不安げにうかがっていれば、彼は腕とは反対側の肩を少し庇っているようで、
その場所に思いが至った瞬間、自分は反射的にその場に立ち上がっていた。
「顔を洗う水を…もらってくる。」
「そんな事は私が、」
「腕が痺れているんだろう。大丈夫、少しは私にも役に立たせてくれ。」
最後はほとんど懇願するように、小さくそう言って部屋を後にする。
そして部屋の戸を閉め一度だけその場で深く息を整えると、自分は人の気配のある階下へその足を向けていた。 <> 籠目の夢 6/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:26:28 ID:Y7o9fFxH0<> 階段を下りてすぐの場所にあった玄関口には、早朝からの出立者の姿がすでに幾人か見えていた。
そこに行き交う宿の者に声をかけようとし、しかしその機会をなかなか捕らえられない。
するとそんな自分に背後から不意に声をかけてくる者があった。
「お客さん、何か御用で?」
見れば、そこにいたのは昨日宿についた時、足を洗う水桶を差し出してくれた女将だった。
人に慣れず咽喉で詰まる声を、自分はそれでもこの時懸命に絞り出そうとする。
「…あの…すまないが、顔を洗う水をもらえないだろうか…」
「顔を洗う水ですか?」
「あぁ、部屋の者が今動けなくて…」
「何かございましたか?」
「いや…昨夜、少し……」
問い返され、しかしどう説明をしたらいいのかわからず、結局口ごもる。
するとそんな自分の様子を察したらしい女将が、突然あぁっと手を叩いてきた。
「もしかして、昨夜大きな声を出されていたのはもしやお客さん方でしたか。」
「…………っ」
いきなり思いもかけず昨夜の事を指摘され、絶句する。
けれど女将はそんな自分の顔を見てもなんら変わることなく、笑いながら言葉を続けてきた。
「うちは安普請ですからね。上の物音は下に筒抜けなんですよ。だから一瞬驚きましたけど、
すぐに静かになりましたし大事は無いかと思っていたんですが。何かありました?」
正面からまっすぐに見つめられ、ますます返答に困ってしまう。だから、
「いや…迷惑をかけて…」
ただ小さくそれだけの謝罪を口にすれば、女将は尚も笑いながら、あら、お客さんを責めてるつもりは
ないんですよと返してきた。
「こんな宿屋をやっていたらいろんな事が起こりますからね。どうぞお気になさらずに。で、
御入り用は水でしたか。今用意させますから少しお待ち下さい。」
そう告げて、自ら奥へ足を向けようとする。
そんな女将の背に自分はこの時、もう一度気力を振り絞って声をかけていた。
「あっ、あのっ」
「まだ何か?」
振り返られ、やはり声が一瞬詰まる。それでも意を決し、手を握り締め、自分はこう告げていた。
「もう一つ、頼みたい事があるんだが。」 <> 籠目の夢 7/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:27:56 ID:Y7o9fFxH0<> 部屋に戻ると、そこはすでに布団も畳まれ、彼が荷物のまとめを行っていた。
「少しはゆっくりしていればいいのに。」
少々の呆れと、昨夜眠りを妨げてしまったことへの後ろめたさから、ぽつりと小さな声を零すと、
それに彼ははっと振り返ってきた。
「申し訳ありません。」
走り寄り、手に持っていた桶を受け取ろうとする。
痺れは取れたのか。しかしその手を自分はこの時制していた。
「座ってくれ。」
言いながら、自分もその場に膝をつく。すると彼は一瞬戸惑った様子を見せながらも、すぐにそんな自分に
従ってきた。
その彼に、自分はこうも続ける。
「着物を脱いでくれ。」
「えっ?」
「右肩だけでいい。」
言われた言葉に、瞬間彼の表情が何かを察したように強張る。
けれどそれにも引かぬ覚悟で自分が押し黙っていると、彼は最後には観念したようにその右肩から
着物を落としてきた。
さらされる、その肩には赤黒く鬱血した噛み跡があった。
想像していたより酷いその傷の状態に、自分の眉根が痛ましく寄る。
それでも自分は次の瞬間その表情を厳しく引き締め直すと、懐から小さな入れ物を取り出し、
蓋を開け、中のものをその指先に取っていた。
「宿の女将から薬をもらった。痛いかもしれないが少しだけ我慢してくれ。」
「……そんな事は自分で、」
「いいからやらせてくれ!」
どこまでも自分の手を遠慮しようとする彼にたまらず叫び、有無を言わせず薬を傷に塗りこんでゆく。
打ち身のようになっているそこは、触れるだけで痛みが走るはずだった。
しかし彼は自分を気遣ってか、痛みに対する声はけして上げようとしない。
それがかえって心に苦しくて、傷を負った訳ではない自分の方がどうしてか泣きそうになってしまう。
だから唇を噛み締め、ただ無心に手当てをし、塗った薬の上に油紙を乗せると、これもまた
もらった細長い布でそれを固定するように縛る。
傷には触れないように柔らかく。するとそれに頭上から彼が声を落としてきた。 <> 籠目の夢 8/8<>sage<>2010/06/28(月) 02:30:21 ID:Y7o9fFxH0<> 「ありがとうございます。」
礼を言われる筋合いは自分にはなかった。
彼にこの傷を負わせたのは自分だ。
何も出来ず、彼に甘え続け、その庇護の下でしか生きていけないのも自分だ。ならばせめて、
「今日は…歩くから。」
「はい?」
「今日は最後まで、自分の足で歩くから…」
せめて足手まといにはならないように、負担にならないように。
だから……捨てないで、置いて行かないで欲しい。
声にならない願いを胸に抱きながら、傷触れぬよう、肌けた彼の肩口にそっとその顔を伏せる。
するとそんな自分に彼は少し驚きながらも、この時それを引き離そうとはしてこなかった。
代わり、彼の大きな手が、自分の後ろ髪に触れる。そして、
「そんな事…あなたは私がお守りしますから。」
だから、共に逃げて下さい。
優しく囁かれる声に、閉じた瞳の淵から涙が溢れた。
本当に、その言葉のままどこまでも逃げられればいいのにと思う。
彼と共に、追手からも、なにもかも。それでも、
彼を傷つけ、自分を捕らえる失われた過去。
今は何もわからない。
けれどあの籠の中の記憶の夢からだけは、この先、自分はどうやっても逃れる事が出来ない予感がしていた。




□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
PC規制解除記念!というよりは、PC規制が解除されてるうちに投下させてもらいました。
規制長いよ…

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 03:16:53 ID:y3dx8mu90<> >>419
続きがきてうれしい!!萌えました。
規制乙です、ほんと、規制って奴は・・・・ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 07:29:07 ID:M/u2QF+6O<> 明らかにパラレルなのに何でオリジナルとか書くかな… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 08:10:51 ID:uvR3XCOE0<> >421
419の人は前回の投下時に
>元ネタらしきものはあるので、わかる人はこっそり楽しんでもらえれば
って書いてるし、自分は元ネタがさっぱりわからないので
オリジナルとして楽しませてもらってるよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 09:00:13 ID:xVblX5vc0<> >>421
同意
自分は元ネタ・元カプ萌えの人間だけど
どう見ても二次なのに「オリジナルです」と書かれると「うーん」ってなる
二次創作のパラレルと書くのが妥当じゃないのかな
オリジナルと書いてあると、完全な一次創作を期待して読むので、もにょってしまう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 09:10:39 ID:9QbTvCPeO<> 自分は粘着回避のためだと思って納得してたけど、やっぱり気になる人は気になるのかねぇ
元ネタの受けの人に変な粘着が付いてるのは、スレ見てても明らかだしな
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 14:40:10 ID:ckhg5+88O<> 粘着がいるのかどうかも知らない他ジャンル者からすると
完全オリジナルと思って面白く読んでたけど、実は他人様のキャラを
借りてるくせにそれを伏せるってどうよと思った
が、議論するなら避難所に移動するべきだな

↓次の投下ドゾー↓ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 21:06:43 ID:Wyjv2c3ZO<> >>412
元ネタわからないけど雰囲気と読みごたえあったよ。GJ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/28(月) 22:51:21 ID:ThdbPX7j0<> >>333
遅まきながら乙です
架空の人の頑張りには毎回wktkしモノです
某虫のお方になって師/匠の生活をヲチしてみたいw <> 「ジェ−ムスはねこである」1/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:36:26 ID:hfyu+5GX0<> 良作だらけの中に駄文投下するのは気が引けますが……ちと長いのでこちらの場所お借りします

きかんしゃト−マスで2号車×5号車の擬人化ちょいエロ
10マス801スレで5号車が猫のようだって言われていたので猫にしてみました
2号車が保健室の先生で5号車が学生さん。10マス801スレにあったSSの設定に乗じました


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


我輩は猫である。
名前は……
「今日から君は、ジェ−ムスだよ」
……ジェ−ムスだ。
数日前のある雨の日、長くて白い上着を着た男に拾われた。
男は我輩を抱き上げ、こう言った。
「僕はエドワ−ドだよ。よろしくね」

我輩はエドワ−ドと一緒に彼の家へ帰った。そして、風呂に入った。彼はとてもきれい好きなようだ。
「キレイに洗えば、君はきっとぴっかぴかになれるよ」
その通りだった。それからは、このふかふかでぴかぴかの毛並みが、我輩の自慢なのである。
あの時着ていた長くて白い服は、仕事で着る服だそうだ。
毎日キレイに洗われて、日当たりの良い場所に干されている。我輩が裾に飛びついて遊ぶと、エドワ−ドにしかられる。
「だめだめ、足跡を付けちゃ。これはいつもきれいにしておかなくてはならないんだよ」
失礼な。我輩の身体はエドワ−ドが洗ってくれているから、いつだってぴっかぴかできれいだぞ。
だが、我輩は聞き分けの良い賢い猫であるから、反論などしない。
「にゃー」と行儀の良い返事を返すと、決まって彼は、我輩の頭を優しくなでてくれるのだ。
それが、至福の時。ゴロゴロと喉を鳴らすと、彼はとてもやわらかく微笑む。 <> 「ジェ−ムスはねこである」2/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:37:19 ID:hfyu+5GX0<> しかし時折、ほんのわずかではあるが、笑顔が曇る時間があることに気付いた。考え事があるようだ。
「ねぇジェ−ムス。君は素直でいいね」
エドワ−ドは吾輩の背をなでながらつぶやいた。
「猫は気まぐれで考えていることが分からないというけど……ジェ−ムスは猫以上だよ」
……わからぬ。吾輩は猫であるが……?
目の前にねこじゃらしのおもちゃが差し出された。今はそんな気分ではないのだが……これも愛猫としての務め、無邪気に飛び掛る。
「うん。やっぱり僕は、ジェ−ムスのことが好きなんだ」
エドワ−ドはこの愛くるしい我輩にぞっこんのようだ。
気持ちがいいので3回転半ジャンプでねこじゃらしを捕まえ、四肢で押さえつける。どんなもんだ。
「……ジェ−ムスは僕のこと、好きになってくれるかな?」
当然であろうに。我輩は「にぃー」と甘い声で鳴きながら、ねこじゃらしを持つエドワ−ドの手にぷにぷに肉球パンチを食らわせた。

毎朝、エドワ−ドは仕事に出かける。エドワ−ドの仕事は『がっこう』の『ほけんしつ』という場所で働くことだ。
彼が『ほけんしつ』から帰るまで、我輩はひとり、部屋でおとなしく待つ。苦ではない。それが役に立つ『イエネコ』の仕事なのだと理解しているし、家の中の仕事もなかなか忙しい。
朝の見送りが終わると座布団に丸まり、朝寝をし、昼飯を食し、家中のパトロールをし、昼寝をし、トイレで用を足し、夕寝をし、夕方のニュース番組が始まるくらいに玄関横の窓に立つ。
そこから顔を覗かせて、彼の帰りを待つのだ。 <> 「ジェ−ムスはねこである」3/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:38:35 ID:hfyu+5GX0<> 今日もいつもの仕事を終えて、夕刻の定位置に座る。
しばし経つと、こちらへ向かって歩いてくる人影が見えた。エドワ−ドだ。
……おや?珍しいこともある。今日は、誰かを連れている。
エドワ−ドは玄関を開け、いつものように我輩に「ただいま」を言った。
連れの男は
「へぇ、猫を飼っていたのか。おじゃまするな〜」
と我輩の頭をわしわしとなでながら家に入った。
連れを室内に招き入れると畳に座布団を敷き席を勧め、お茶を淹れる。
二人分のお茶と茶菓子の用意が揃うと席に着き、エドワ−ドは我輩を膝に乗せて言った。
「紹介するね。彼は僕の同居猫の……ジェ−ムスだよ」
「何で僕の名前付けてるんだよ!」
むむ、僕の名前?ということは、この男の名もジェ−ムスと言うのか。
「どっちも『ジェ−ムス』だなんて、ややこしいなぁ」
「……だって、君とこうなるとは思わなかったから……」
エドワ−ドは両頬を朱に染めながら、我輩をぎゅっと抱きしめる。
「この猫を僕の代わりにしていたのかい!? なんかムカつくなそれ!」
すると奴……ジェ−ムスは、エドワ−ドの腕から我輩を取り上げた。我輩を裏返して、腹の肉と皮をもにゅもにゅと揉む。ぎにゃ、やめろー。
「代わりなんかじゃないよ」
「想い人の名前をつけちゃうって奴だろ?漫画やドラマとかでよくある……」
「そんなんじゃないよ」
「じゃぁ、なんなんだよ」
「君が猫に似ていたから、つい」
「僕が猫だって?」
「うん。……猫はとても気まぐれで、来て欲しいときには来てくれないし、捕まえようとしても捕まってくれない。構って欲しいときにだけふらりと現れて、自分勝手で、なのにとても甘え上手で、僕を夢中にさせるんだ。ね、君みたいでしょ」
「なんだよそれ。……ちっとも似てない」
「すごく似ているよ。見ていて癒されるし、触っても……」
エドワ−ドの手が、ジェ−ムスの頬をなでる。我輩の腹を揉んでいたジェ−ムスの手がぴたりと止まった。
「ほら、やわらかい。猫みたいだよ」 <> 「ジェ−ムスはねこである」4/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:40:02 ID:hfyu+5GX0<> エドワ−ドの指がジェ−ムスの唇をなぞり、その後をエドワ−ドの唇が追う。
舐めたり咥えたりを何度も繰り返され、艶を増して重なりあった唇の隙間からジェ−ムスの吐息が漏れた。
「んっ……」
我輩の腹をつかんでいたジェ−ムスの手が離れてエドワ−ドの首に回されると、それに応えるようにエドワ−ドの腕はジェ−ムスの身体を包む。
我輩は仰向けのまま二人の身体に挟まれて、下から二人を見上げる。
いつも我輩を優しく抱くその腕は、我輩と同じ名の青年を抱いている。
いつも我輩を優しくなでるその手は、我輩の毛並みと同じくらいふわふわの髪をなでている。
なるほど猫以上の気まぐれ猫ジェ−ムスとは彼のことだったのか。そして察するに、ご主人はその猫の捕獲に成功したようだ。
「気まぐれな野良生活は、もう終りだからね」
「わ……わかってるよ」
エドワ−ドはジェ−ムスの服を脱がせながら、ジェ−ムスの首や肩を舐め始めた。
なるほど毛づくろいを始めるようだ。人間と言うものは帰宅したら着替えもしなくてはならないからな。
「んぁっ」
ジェ−ムスが鳴いた。エドワ−ドは毛づくろいが上手だから、気持ちが良いのだろう。丁寧に丁寧に、ジェ−ムスの身体を舐め清めている。
「ちょ……っと、待って」
「どうしたの?」
「猫が見てる……」
ジェ−ムスが我輩のことを気にしているようだ。
「恥ずかしいのかい? ……かわいいなぁ、君は」
「だって……」
ただの毛づくろいを恥ずかしがることもなかろうが……。
だが我輩は賢い猫である。更に窮屈になる二人の間から這い出て、席が空いた座布団に飛び乗り丸くなる。
「……賢い子でしょ、僕のジェ−ムスは」
「『僕の』は、僕のほうだろ」
「……ややこしいね」
「自分のせい……んんっ」
エドワ−ドは文句を言おうとしたジェ−ムスの口を塞ぎ、丁寧に舐め始める。ご主人は奴の唇が好きなようだ。
そして器用にジェ−ムスの服を全て剥ぎ取ると、自分の服も脱ぎ、ジェ−ムスを横に寝かせる。
「彼は毛づくろいくらいにしか思っていないよ。隅々まで、きれいにしてあげるからね」
そう言って、再び身体を舐めて清め始めた。 <> 「ジェ−ムスはねこである」5/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:42:12 ID:hfyu+5GX0<> 「それなんか違っ……あんっ」
ジェ−ムスの身体が時々びくんと跳ね上がる。痒いところにでも当たったか?
毛づくろいはのんびりリラックスして受けるものだが、ジェ−ムスは力いっぱいしがみつくように、エドワ−ドの身体に腕を回している。
エドワ−ドもブラシを使わずに手でなで回したりしているし……我輩の毛づくろいとは、確かに何か違うようだ。猫と人との違いか。
「先生……そこ、もっと……っ」
「二人の時は、エドワ−ド、でしょ。ここがいいの?」
「んっ……うんっ……エドワ−ドぉ、そこ、もっとっ」
おねだりとはなかなかやるな。
エドワ−ドはジェ−ムスの足の間に顔をうずめ、奴が「いい」と言ったところを、丹念に手入れする。
ジェ−ムスの荒い息が聞こえる。畳のすれる音、ピチャピチャと水音を含んだように舐める音も。
まぁいい、ご主人はやりたくてやっているようだから、今日だけは奴に貸してやろう。
夕飯を貰い損ねているようだが、我慢して、眠りにつくことにした。

やはり空腹では朝まで眠れない。
目を覚ますと、エドワ−ドが起きていた。ジェ−ムスはきちんと敷かれた布団にはいり、気持ちよさそうに眠っている。
「やっと起きたね。ごめんよ、君のご飯を作っていなかったよね」
我輩の夕飯がまだだったのを覚えていてくれたようだ。我輩のお皿には、美味しそうなネコマンマが入っている。なんとカツブシ乗りだ。
「にゃーぉ」
いただきます、とエドワ−ドの膝に身体を摺り寄せてから、お行儀よく座ってご飯を頂く。すると、我輩の背中を優しくなでてくれる。
「ジェ−ムス、これから彼がここに来ることが多くなるだろうけど、仲良くしてあげてね」
……まぁ仕方がない。ご主人がそう望むなら。
「僕は先に寝るね。おやすみ」
そう言って、エドワ−ドはジェ−ムスの隣に潜り込んだ。
我輩も、食事が終わるとエドワ−ドの足元に潜り込み丸くなった。 <> 「ジェ−ムスはねこである」6/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:44:00 ID:hfyu+5GX0<> 突然布団を引っぺがされて目が覚める。
「朝だよー! いいお天気だよー! お布団干すから、起きて起きて!」
「うぁ……まだ眠いよ……学校休みなんだから、もっと寝かせろよ〜」
ジェ−ムス、なんとぐうたらな奴。
「だめだよ。早く起きて!」
エドワ−ドはジェ−ムスの身体をゴロゴロと転がして布団を取り上げ、ベランダへ運ぶ。
「もうすぐご飯も出来るから……そうだ、シャワーを浴びてきなよ。着替えは僕のを貸してあげるよ」
「ん〜……」
まだ目が開かないジェ−ムスを、エドワ−ドが風呂場まで引きずっていく。本当にだらしのない奴だ。
だが、エドワ−ドは嬉しそうだ。まるで猫がもう一匹増えたように、奴の世話を楽しんでいる。
ジェ−ムスが風呂から上がると、二人と一匹で食卓を囲む。
食事が終わるとすぐに、ジェ−ムスはまた寝転んだ。
「食べてすぐ横になると牛になってしまうよ」
「ならないよ。僕は猫だから」
ジェ−ムスはふくれっつらでそう言うとゴロゴロと転がり、エドワ−ドの膝に頭を乗せる。
エドワ−ドは我輩が膝に乗ったときにするのと同じように、ジェ−ムスの髪を優しくなでながら笑った。
「猫が二匹になっちゃったね」
「しかも、『ジェ−ムス』猫がね」
「ごめんよ。でも、今から変えるわけにもいかないし」
「変えなくてもいいよ。なぁ、ジェ−ムス」
「なーぉ」
我輩も同意する。
「でもこら、お前まで乗らなくていいだろ!」
エドワ−ドの膝に乗ろうとした我輩を、奴が追い払おうとする。だがしかし、ここは我輩の席。譲るわけにはいかんのだ。
我輩を押しのけようとする手を避け、奴の額をめがけて猫パンチを繰り出す。
「に゛ゃっ!」
「いたっ! こいつ……っ」
「こらこら、ジェ−ムス同士で喧嘩しないでよ」
「僕のほうが『ジェ−ムス』の先輩だぜ。だから今は、ここは僕のものだろ」
ジェ−ムスはエドワ−ドの膝に頬をすり寄せながら言った。 <> 「ジェ−ムスはねこである」7/7<>sage<>2010/06/28(月) 23:45:15 ID:hfyu+5GX0<> 「なんなの、その理屈」
エドワ−ドが笑う。
が、笑い事ではない。ここは我輩の一番好きな場所なのだ。奴の頭が乗っていないスペースに、なんとかよじ登り座る。
「二人一緒でもなんとか乗るじゃない。仲良くしてよね」
……かなり窮屈だが。
「ちぇ」
ジェ−ムスが我輩の鼻を指でピンと弾く。
「くしゅんっ!」
我輩はくしゃみをして、奴の頬に猫パンチを繰り出す。
「痛ぇだろこら!」
「仲良くしなさい!」

今日は本当に良い天気だ。
朝の暖かな日差しの中で、二匹のジェ−ムスによるエドワ−ドの膝枕争奪戦はしばらく続くのであった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

私は何も悪くないです
ジェ−ムスが可愛すぎるのが悪いんです

お目汚し失礼いたしました <> 後輩(既婚者)×先輩(既婚者)1/2<>sage<>2010/06/29(火) 00:32:35 ID:ZzjOT2EO0<> ※モデルはいるけどなんかもう別物。
※後輩(既婚者)×先輩(既婚者)の話。嫁さんが妊娠中という設定なので注意。
※最中ではなく事後ですみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「しかし、お前が父親とはな。まだまだガキだと思ってたけど…」
彼はシャワーを浴びて、用意していた缶ビールを開けながら言う。
「男?女?」
「男だそうですよ」
「うわっ、父親に似て生意気になりそう」
首にバスタオルをかけ、Tシャツにトランクス。プハーとうまそうにビールを煽る。
風呂上がりのおっさんそのものの姿には、先ほどまでの情事の名残などどこにもない。
でも、それがこの人らしいと思う。

以前、恋人、とも呼べない関係だったけれど、俺たちはそういう意味で付き合っていた。
別れを切り出したのは俺の方だけど彼も『まあ潮時だよな』とあっさり了承した。
本当は少しだけ、引き止めてくれるのを期待しいた。
彼の態度にお互いに戯れだったのだとかすかに胸が痛んだのも今は懐かしい思い出だ。

だから、今日のこともちょっとした遊び心。
出張先のホテルでの二人部屋。
彼が「嫁さん妊娠中でたまってるんじゃねーの」とからかうから
「抜いてくれるんですか?」と冗談めかして返したら
なんだかそういうことになったというだけだ。 <> 後輩(既婚者)×先輩(既婚者)2/2<>sage<>2010/06/29(火) 00:33:33 ID:ZzjOT2EO0<> 「大きくなったらうちの娘、嫁にやろうか」
「何ですか、いきなり」
「お前と嫁さんの息子なら顔は保証されてるからな。」
カラカラと笑って彼が言う。
「本気ですか?」
半ば呆れて俺がいうと、彼は軽く肩をすくめて背中を向けた。
「冗談だよ。だいたいお前の子供に惚れたら泣かされるに決まってるじゃん。…」
「え?」
「何でも無い」
最後の方に小さくつぶやかれた言葉は聞き取れなかった。けれど。

『俺みたいに』と、動いたように見えた。

奇妙な沈黙を、カコンと乾いた音が破った。
一瞬間を置いて、彼が空き缶をゴミ箱に投げ入れた音だと理解する。
「さ、寝るか。明日も仕事だ」
「そうですね」

彼はひとつ大きく伸びをしてから使っていなかったベットの方に潜り込む。
情事に使った方は俺が寝ろということらしい。
「先輩」
こちらに向けた背中に向かって呼びかけた。
「ああ?」
肌を重ねたのはほんの戯れ。深い意味などない。あってはならない。
けれど

「大好きです」

「…バーカ」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ワカレテモ、スキナヒト <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/29(火) 01:47:10 ID:CoksXNRK0<> >>435
呼び方は違うけど長年のマイおっさん2人カプに変換できてしまって
めちゃめちゃ萌えました、グッジョブです!! <> ボード 1/3<>sage<>2010/06/29(火) 03:06:36 ID:w0vDZGPdO<> 1
シンプ○ンズでボートです いささか下品な表現があります
規制に引っ掛かりませんように!
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

刑務所を脱獄して二時間になる。
塀を乗り越えてからはまっすぐにあの悪魔の家へと向かっている。
きっと神も今宵は私の1X回目の復讐を支援してくれているのだろう。邪魔者はいな……
おお、なんだオオカミか、脅かすな。あれはなんだ?検問?まさか脱獄がばれたのかいやまさか
ああっ、誰だこんなところにゴキブリホ○ホ○を置いたのは!ああっ、橋が流されてる!
こら服を噛むな!ああ、粘着シートが髪についt

さて、そんなこんなでようやく、あのの家についた。
時刻は深夜二時。脱獄してから十四時間が経過している。
四時間前にコンビニに寄って、準備は万全だ。さて、覚悟はいいか、悪魔の子供よ……
ふふふ……ふははははhふぐうっ!ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ンn……

何故かこの悪魔一家の庭には熊手がそこらじゅうに置いてあった。
突破するのにさらに一時間半を要したが、まあそれはいい(いつものことだ)
私はかつて、正確な回数は忘れたが何度もあの子供の命を狙い、そのたびに失敗し <> 483 ボート2<>sage<>2010/06/29(火) 03:14:51 ID:w0vDZGPdO<> 483の続きです。すみません携帯がよくわからなくて変な投稿です… <> 438 ボート2<>sage<>2010/06/29(火) 03:17:45 ID:w0vDZGPdO<> 438の続きです。ごめんなさい途中送信してまいました

てきた
刑務所で私は考えた。何が原因だったのだろうと。血文字で手紙を書きながら図書室でさんざん考えた。
そしてやっと、分かったのだ。それは計画が原因だと…………。

この家への侵入は簡単だ。まずはあのツリーハウスに上る。そして部屋の窓を刑務所常連の泥棒から
血液五ccで買った(おかしな奴だった)進入技術で侵入する。窓からひらりと飛び移れば、そこには
すやすやと幸せそうに寝るあの悪魔、バートシンプソンがいるというわけだ……さて入るか。

入ると、相変わらず憎きクラスティーだらけの部屋の真ん中で、子供は寝ていた。
ああ、どこまでも私を苦しめる子供よ。私はそっとベッドの端に腰かけ、その白い二の腕をすっとなぞった。
子どもの柔肌が、早くナイフを突き立てろと急かしている。私は一気に小さな体に乗り上げ、そして
その首筋にナイフを押しあてた。引くだけでいい。シンプルイズベスト。無駄がない。
だが待て。私は考えた。その前に少しぐらい余興があってもいいだろう。フフフ、我ながらなんてあくどい計画だ。
私はバートの耳元に口を近づけ、そしてイマジネーションランドのカートマンよろしく囁いた。
「wake up bart」
バートシンプソンはゆっくりと目を開けた。ホーマーシンプソンも子どものころはさぞ美少年だっただろう。
<> 440の続き ボート3<>sage<>2010/06/29(火) 03:23:11 ID:w0vDZGPdO<> その子供は今、私を見つけてやっと声を上げようとしていた
「あーサイドショーボb」
だが私の手が口をふさいだ。バートシンプソンは身動きもできずに私を見ている。ああ、その恐怖に満ちた目の美しいことよ。
「これはこれは、私の宿敵バートシンプソン。最後に何か言いたいことはあるか?」
バートは必死にうなずいた。手を話すとバートは少しせき込み、作り笑いをして言った
「大英」「それはだめだ」「……ケチ」
少年はむくれるといつもの調子に戻った。「で、何の用」
「お前を殺しに来たのだよ、バート」
「なんなのあんた、だいたいさあ、今何時かわかってる?」
「四時だろう、四時十一分だ」
「うちのじいちゃんが起きる時間だ。あんた腎臓と肝臓おかしくない?」
「失礼な、私は健康体だ。少し貧血気味だがな。さて――。」
『ホーマー、ホーマー、入れておくれ、昨日の夜薬を飲み忘れた、このままでは死んじまう』
「……さて、最後に何か言いたいことは、もういいな」
「まって、一つある」
彼の目はもうすっかり醒めたらしい。
バートはいつもの真っ直ぐな目で、あの私を四六時中殺人妄想から離さないその目で、
私の目をしっかりとみつめていた。私は自分のうちに、容易に冷めぬあの芳しい興奮が沸きあがってくるのを感じた。
そうだこの瞬間を私は求めていた。この絶頂にも等しい感覚。悪魔の喉を切り裂くこの最高の瞬間を私は求めていたのだ
「あんたゲイなんじゃないの」
その言葉を飲み込んだ時、どうしてすぐに喉を切り裂かなかったのか、いまでも疑問に思う。
「違う!」
「じゃあなんでチンコ立ってるんだよ!」
見ると、囚人服の下腹部のあたりが明らかに膨らんでいた。その瞬間、私の気分はまっさかさまに落ちた。それもショックだったが
勃起を見られたところで殺せばいいものを、何故かそれができなかったのだ。しかも、信じられないことに、むしろこの少年にもっと、もっと、
見せつけてやりたいと感じていた。
<> 441の続き ボート4終<>sage<>2010/06/29(火) 03:32:23 ID:w0vDZGPdO<> 「くそっ、なんなんだ俺の人生!親父はOPで毎週被ばくするわ、妹は仏教徒だわ、凶悪殺人未遂犯だと思ってたやつはゲイだわ、もうやだ!」
「では死んでみるかバート?死んだらすっきりするかもしれんぞ……」
「いいから帰れってよ!立てながら言われたてなんの感情も湧かないんだよ!」
「その前に一つ」
「なに!」
「腹が減った。クッキーをくれ」
「……台所の二番目の棚の中」
「ありがとう。ミルクはあるか?」
「冷蔵庫の中!」

台所でクッキーをかじりながら、私は自分のしたことが信じられずにいた。
何故殺さなかったのだ。そして何故勃起したのだ。
確かにあの少年に性的興奮を感じたかもしれない。だが今まで自分はストレートだと思っていた。そう思って生きてきた。
しかし、私は男に興奮した。しかも少年にだ。私はペドフィリアだったのだ。小児愛者だったのだ。ああ、なんということだ。
狭い台所を歩き回って、太陽が完全に昇っても、私の悩みが消えることはなかった。私は隣の住人が牛乳瓶を家に入れるより前に
シンプソン家を出た。二階から降りてきた夫人に声をかけてから。

「おはようございますミセスマージー。相変わらずお料理がお上手で」
「ありがとうサイドショーボブ。……サイドショーボブ!?」

end?

□STOPピッ◇⊂(・∀・)オワリデスドウモシツレイシマシタ
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/29(火) 15:22:17 ID:eEbzWhxzO<> >>442
元ネタ詳しくないけど楽しかった、笑ったww!GJ! <> GS3兄×坊ちゃま 1/3<>sage<>2010/06/29(火) 18:41:38 ID:WPjbFlpT0<> 女性向けの、ときめいちゃう目盛ある3
兄王子×先輩ぼっちゃま
ADVモード風、過去捏造
2人のエンディング、弟王子とぼっちゃまの外出イベしか見てないので
見ていないイベントで明かされる事実と違っていたら申し訳ありません。
萌えを抑え切れませんでしたw

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

(やれやれだ…)
面倒臭いとしか思えないコウコウセイカツというのがスタートした。
望む望まないに関わらず、近隣の同世代には悪い意味で有名になってしまっていた俺達は
こちらを見てはヒソヒソと小声で話し、目が合いそうになると反らされるという大半の生徒と
それとは正反対のギラついた敵対心に満ちたいくつかの視線に晒される。

(そりゃそうだ、今日から高校生つったって、何日か前は中学生だ)
中学時代と大差ない同級生とやらにうんざりとした気分になった。
唯一の違いは再開した幼馴染の少女くらいか。
分かれた時そのまま高校生にしたかのような彼女は、中身も変わっていなかった。
俺は随分と変わっていただろうに…その変わらない対応が酷く嬉しい。

「ただいま」
色々な思いに沈み込みそうになる思考を、帰宅したルカの声が引き上げる。
「おかえり」
「今日バイト先に懐かしい奴が来たよ」
「懐かしい奴?」
「そう。セイちゃん」
「セイちゃんだぁ?」
「設楽さんちのお坊ちゃまのセイちゃんだよ。コウのお気に入りだった」
「…うっせーぞ………」
「セイちゃんもはば学だって」
その名前に一気に思い出が甦る。 <> GS3兄×坊ちゃま 2/3<>sage<>2010/06/29(火) 18:42:54 ID:WPjbFlpT0<> あの頃…
近くに住む仲のよかった女の子が引っ越して行った。
それは“別れ”というものを深く考えさせられる人生で二番目の出来事だった。
自分にはどうすることも出来ない。
運命の理不尽さと、現実をどうすることもできない己の無力さと。
いろいろな事から逃げたくなる自分が情けなくて、一人で頭を冷やす為に出かけた公園に彼はいた。
ふわふわと柔らかそうな巻き毛が風に揺れ、猫のような大きな瞳が印象的で思わず見とれる。
「だれ?」
あまりにも不躾に見詰め過ぎたらしい。
不機嫌そうな表情と声に、らしくもなくたじろぐ。
それが出会いだった。

その後どうやってか話をし、彼が近にある馬鹿でかいお屋敷の子供であること
今日はそのお屋敷でティーパーティとやらがあり、母親の友人達に人形代わりの扱いを受けて
それに辟易として逃げ出してきたことを知った。
くるくるとよく動く表情で「人を着せ替え人形か何かだと思っているのか!」と怒る彼は正直とても可愛くて
うっかり笑ったら、ひどく怒られた。
ほんの少し話しただけだが、彼は自分の感情を偽ることをしない。
それをどうしようもなく眩しく感じたことを覚えている。

その後、特に約束をする訳ではないが会って時間があればルカも交えて遊ぶような関係になった。
俺達が年下だと知ったときの憮然とした表情は忘れられない。
「今に見てろよ!」「少しくらい背が高いからって偉くはないんだからな!」
偉そうにした覚えはないんだが…

その年頃の男だったらするような、所謂荒っぽい遊びに彼が加わることはなかったが理由は直ぐに知れた。
彼はピアノを弾くのだという。
一度だけ聞いたそれが、子供の習い事の域をはるかに超えていることは
専門的な知識などない子供に過ぎない自分にすら分かった。
弾いているときの真剣でありながらも楽しそうな表情、
弾き終わったあとの「どうだ」とでも言いた気な表情も容易く思い出せる。
意地っ張りではあったが、己の感情を偽る事をしない彼の存在はどんどん自分の中で大きくなっていった。 <> :GS3兄×坊ちゃま 3/3<>sage<>2010/06/29(火) 18:44:24 ID:WPjbFlpT0<> ある時…自分には分からないピアノに関する話を楽しげに語る彼にどうしようもなく腹がたって意地悪をしたことがあった。
寒い冬が終わり、暖かい日差しに満ちた公園は気持ちがよく
黄色いたんぽぽの花と、その綿毛が風に揺れていた。
せっかくの陽気に身体を動かしたい自分と、自分には分からない話を続ける彼と…
訳も分からず苛々して、ふわふわと揺れるたんぽぽの綿毛を千切って手にし、彼に向かって吹いた。
「何するんだよ」
話を中断された為か、頬に当たる綿毛の感触の為か、その両方か
不機嫌な声でこちらを睨む。
やっとこっちを向いた嬉しさと、これまで放っておかれた苛立ちでつい言ってしまった何処かで聞いた都市伝説じみた話。
「知ってるか?たんぽぽの綿毛が入ると、耳が聞こえなくなるんだぜ」
「嘘だ!」
バッと、音がしそうな猛スピードで彼は耳を押さえる。
「嘘なもんか」
まさか彼がそこまで激しい反応を示すとは思いもしなかった。

そこで止めればよかった。
子供同士の意地の張り合いのようなものだったのだから。
「なあ、耳、聞こえなくなったらどうする?」
なのに続けてしまった。
瞬間、彼の表情は怯えを含んだものになり、大きな瞳には涙が浮かんで
「嘘だ!」
もう一度叫ぶようにして言うと、彼は走り去っていった。
…今なら分かる。
音楽を志す彼にとって耳がどれほど大事かということ。
耳が聞こえなくなると言う事が、普通に暮らす自分とは比較にならないほどの恐怖だということ。
大切な存在になりつつあった彼を、酷く傷つけてしまったということ。

そうして決定的な仲違いと言う程ではないが謝ろうと言う思いと、それ程の事でもないだろという意地との間から少し距離が出来た。
もともと学年が違うのだから、顔を合わさないようにすることは容易い。
一抹の寂しさを抱えながらも、ギクシャクとした感じが解けないまま夏を向かえたある日、偶然顔を合わせた彼から
「ウィーンに行ってしばらくは帰らない」
と、告げられた。 <> GS3兄×坊ちゃま ごめんなさい終わらなかった<>sage<>2010/06/29(火) 18:45:17 ID:WPjbFlpT0<> またか…と思った。
別れは何時だって突然、避け難い現実として目の前に現れる。
だから後悔しないように、大切な奴には優しくしようと思っていた…ハズだった。
…でも、出来なかった。
そしてもっと恐ろしかったのは、自分を置いていこうとする彼に酷い言葉をぶつけそうになった事。
やり場の無い感情が一気に溢れて、
「そうかよ!」
とだけ言ってその場から逃げた。…そう、自分は逃げた。

その後すぐに、ウィーンに行くのは一時的なもので秋には戻るのだと知ったが
あの時の「また置いていかれるのか」という恐怖感と苛立ちと情けない自分と…
久しぶりに聞いた彼の名前はそんな苦いものを思い出させた。

「全然変わってなかったよ」
ルカの声が、思い出から現実へ浮上させる。
「そうか」
「うん」
それだけ言うと、自分の部屋へと入っていった。

『変わってなかった』という彼を、少しだけ見てみたいと思った。
本当に変わっていないのだろうか?
あの真直ぐにこちらを射抜く瞳は…
だとしたら
退屈で煩わしい事ばかりだと思ったコウコウセイカツとやらが、少しは楽しくなりそうな予感がした。


□STOPピッ◇⊂(・∀・)オワリデスドウモシツレイシマシタ

たんぽぽイベと、兄に啼かされていたぼっちゃまに萌えすぎた
しかし、すっごい尻切れトンボにorz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/29(火) 23:45:52 ID:QoHvgqN7O<> >>442
面白かった。ぜひとも続いてほしい <> 「甘い罰」1/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:29:17 ID:4ZHkaoa20<> Silver Soul(和訳)の土×篠
新撰組動乱編の後日談を捏造&妄想
痛めのエロがあります注意!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「ありがとう」と、その人は言った。

大きな夕日が山の端に落ちかかり、夕闇が迫る中で
その人の頬を伝う涙が、やけに輝いて見えた。
そうして、笑顔で、その人は死んでいった。

俺はただ、呆然と立ち尽くしていた。
・・・泣く事さえ、できなかった。 <> 「甘い罰」2/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:31:00 ID:4ZHkaoa20<> その日以来、俺は一睡もできないでいる。
食事も喉を通らない。
何も無い壁を見つめて、昼も夜も無い時を、ただ過ごしていた。

このまま、ゆっくりと死んでいけるだろうか。
いっそ、切腹でも申し付けられれば、喜んで受けるのに。
処分の沙汰すら無いなんて、ありえない。

あの人は死んでしまったのに。
おめおめと生き残って、死ぬ事もできないなんて。
何故、俺は生きているのか。
答えのない疑問を、ただ繰り返す。

そんな俺の目の端に、ゆらりと黒い影が立った。
鼻を突く煙草の匂い。
彼だ。
あの人を、殺した、彼・・・土方十四郎。 <> 「甘い罰」3/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:33:31 ID:4ZHkaoa20<> 「・・・篠原」
低い声が、俺の名を呼ぶ。
目を合わせずに、俺は小さく「はい」と応えた。

ふうっと長く紫煙を吐いて、彼が話し出した。
俺を気遣うようなその声色に、心が波打つ。
なんで、こんな俺の事を、気遣うんですか?
俺たちが、反逆したばかりに、あんたは組を追われて
死にそうな目にあったのに。

「副長」
彼の話を遮る様に、俺は口を開いた。
「あ?」
不機嫌な声が応える。
「俺に、罰を、下さい」
腹から絞り出した声は、震えていた。
「・・・お前には、上から、一ヶ月の謹慎処分が下ってる」
「そんなに、軽いもので済む筈がありません!」
両の拳を握り締めて、俺は叫んだ。
「俺の、罪は・・・そんなっ・・・!」
声も拳も震えている。
「局中法度に反したんです!本来なら、切腹ものでしょう?!
 処分が下りないなら、いっそ俺を、殺してください!」
彼の目を、正面から見据えて、俺は声を振り絞る。
俺を射抜く鋭い眼光が、瞬間、強まった。 <> 「甘い罰」4/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:36:02 ID:4ZHkaoa20<> あの人を切ったその刃で、俺の命も絶って欲しいと
そうすれば、この罪から逃れられると
そう思った、のに。

バシッと痛烈な平手打ちを受けて、目の前に星が飛んだ。
反動で斜め後ろに倒れこむと、黒い影が圧し掛かってきた。
「俺もなぁ、この間の騒ぎのせいで謹慎くらっちまって、くさくさしてんだよ」
ふっと俺の鼻先に、煙を吹きかけて、にやりと口元を歪ませる。
「篠原・・・お前、夜の相手、しろや」
俺は、暫く彼が何を言っているのか、理解できないでいた。
しかし、彼の手が、乱暴に俺の衣服を剥ぎ取っていく事で、ようやくその意味を悟った。

ああ、それも、いいかもしれない。
あの人を殺した男に抱かれるのは、浅ましく生き残った俺に相応しい罰であるような気がした。
俺は、一切の抵抗をせず、ただ荒々しい行為に身を任せて目を閉じた。 <> 「甘い罰」5/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:38:31 ID:4ZHkaoa20<> 「・・・っ、うぁ・・・っ」
優しさの欠片もない手淫。
ただ俺を射精に導くためだけに、上下に強く扱かれて
時折、痛みすら感じながら、それでも俺の中心は、どんどん張り詰めていく。
程なく、俺は彼の手の中に、白い精を吐き出した。

「ふ・・・あっ!」
一息付くまもなく、俺のモノを弄っていた長い指が
今、出したばかりの白濁液を、今度は俺の後孔に塗りこめていく。
「つっ・・・う・・・」
無遠慮に指を出し入れされて、引きつるような痛みに眉根を寄せる。
「痛ぇか?」
今まで、無言で俺を責め続けていた彼が、口を開いた。
感情を押し殺しているような、低い声。
「・・・いいえ」
表情を読まれないように、視線を外して静かに答えると
いきなり、指を2本に増やされた。
「ぅ、あっ!」
「痛ぇだろ?」
俺の短い悲鳴に被せる様に、また彼が尋ねてきた。
「っ、痛く、ありませんっ!」
確かに、引き攣れるような痛みは増すばかりだけれど
あの人が受けた痛みに比べれば、微々たるものに思えた。 <> 「甘い罰」6/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:41:18 ID:4ZHkaoa20<> 片腕をもがれ、あまつさえ、志さえももがれたあの人の痛みは、如何ばかりだったろう。
俺も、その痛みが欲しかった。
あの人に従ってどこまでも、死出の道ですら、一緒に歩んで行きたいと思っていたのに。
生き残ってしまった俺には、もっと酷い痛みが与えられなければならないはずだ。
そして、それは、あの人の仇であった彼から与えられるのが、一番相応しい。
「もっと・・・痛くして・・・酷く、して下さい」
荒くなる呼吸の下で、そう訴えた。
彼の、短い舌打ちが聞こえたような気がした。

彼は、俺の両足を抱え上げると、慣らしきっていない俺の後孔に熱い肉棒をぐいと食い込ませ
俺の内側に、力ずくで押し入ってきた。
「あぁっ・・・!」
焼け付くような痛みが全身を走る。
「っ・・・はっ・・・」
奥へ奥へと穿たれる度に、この身が引き裂かれるようで、声も出ない。
俺の中に、根元まで埋め込んだらしい彼が、ふっと息を吐いて、また俺に同じ問いを投げてきた。
「痛ぇだろう?」
俺は必死でかぶりを振った。
「痛ぇだろうが!」
ぐりっとまた一段と深く突かれて、反らせた背が大きく跳ねる。
その背に彼の両腕が回されて、俺は熱い腕に抱きしめられた。
耳元で、低音の呟きが響く。
「男に貫かれてんだ、痛ぇに決まってんだろが」
「痛・・・く、な・・」
「意地はってんじゃねぇ!」
深く繋がったままで、乱暴に腰を使われて、息も出来ないほどに揺さぶられる。
「あ、あ、っ・・・あぁっ!」
「いいか、この痛みがお前への罰だ。足りなきゃ何度でも与えてやる」 <> 「甘い罰」7/7<>sage<>2010/06/30(水) 00:43:13 ID:4ZHkaoa20<> この痛みが俺の罰?
だとしたら、なんて甘い罰だろうか。
俺が欲しかったのは、こんな痛みじゃない。
自然と涙が溢れ出した。でもこれも、俺が流したかった涙じゃない。

それなのに、俺を抱きしめる男は、流れる涙を唇で掬い取り、俺の瞼に優しく口付けた。
「覚えとけよ。これで、お前は俺のもんだ。そして俺は、この体も心も丸ごと近藤さんのもんだ。
 ・・・つまり、お前は、近藤さんの・・・真選組のもんってこった。
 もう二度と、俺たちを裏切るんじゃねぇぜ」

違う、違う。俺はあの人のものなんだ。
あの人が死んでしまった今でも、これからも、ずっと・・・
・・・ああ、そうか。
この痛みを抱えたまま、生き続けていく事が、俺の本当の罰なのか。
「俺のものだ」「裏切るな」と言ってくれた彼を、これからも裏切り続けて
ただ痛みを与えられるためだけに、体を重ねていくことが俺の罰。

そして、あんたの罰でもあるんですよ、ねぇ、副長。

俺は何故だか腹の底から可笑しくなって、笑おうとしたのに、溢れる涙が止まらなくて
ただひたすら、俺を犯す熱い躯に、縋り付く事しかできなかった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ヤンデレ難しい…お目汚し、失礼しました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/30(水) 03:31:55 ID:xFbu5MR5O<> >>455
乙乙!萌えをありがとう!!
まさか土篠を棚で読めるとはw
篠は攻め推奨派だったけど、篠受けにも目覚めそうだ…
切ないけど、ヤンデレよかったです! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/30(水) 13:36:56 ID:F+mRKioc0<> >>395
乙! なんて懐かしい……
貴重なものをありがとう!


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/06/30(水) 13:52:08 ID:b4UYOCpyO<> >>337
遅レスだけどGJです!
虹が読めるとは思ってなかった!
あああ幸せな夢に胸が締め付けられる… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/01(木) 00:47:24 ID:nYBWzLtD0<> >>395
再開!?再開だとっ
395も457も有難う有難う

雅夢は妖しいわ小介は抜けてるわで萌えました
本当に有難う <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/01(木) 00:47:37 ID:q0AJrf7VO<> >>447
乙!

兄とぼっちゃまの関係に萌えてたから読めて嬉しいw
兄に啼かされるぼっちゃま堪らんなあ・・・ <> GS3 玉×尽 1/5<>sage<>2010/07/01(木) 18:51:48 ID:FwhDWPLx0<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

朝から周りがどうにも騒がしい、生徒会の方もなんだか浮足立っているような気がするし……なんて、僕もそこまで愚かじゃなかった。
伊達に一年で次期の生徒会長になった訳じゃない、女子も男子も浮き足だつ二月の行事なんて、一つしかないじゃないか。
それに、僕にだって無関係というわけじゃないし……。

「思い出すなあ」
「なんだよいきなり、気持ち悪い」

設楽に気味悪がられてしまった、まあ、仕方がないか……。
もうずいぶん昔の話だ。

「ふわぁぁ〜」

自分の前を歩きながら、大あくびをした同級生の後ろ頭を見ていると、視線に気づいたのか眠そうな顔で振り向いた。

「尽、今日も寝不足?もうお姉さんのチョコ作りの手伝いって訳もないのに」
「まあねー、そうなんだけどさぁー」

いつもなら女子が騒ぐ顔は、寝不足が効いているのか若干、顔色が悪い。
ごきごきっと首を鳴らす尽とは、小学校のころからの付き合いだ。

「ほい」
「ありがとう」
「今年はいらねえかと思ったんだけど、まあ一応な」
<> GS3 玉×尽 1/5<>sage<>2010/07/01(木) 18:54:18 ID:FwhDWPLx0<> 「そんなことないよ、ありがとう」
すっかり慣習になってしまったそれは、確か小学生の頃の話だった。

『おい玉緒、どーせお前もらえてないんだろ?しょーがねーなー、ほら、ねーちゃんが作ったあまりだけどやるよ』
「……」
毎年のようにお姉さんの手作りチョコを手伝う尽は、毎年の恒例行事として僕にその残りと言うか、失敗作と言うかそんなチョコレートをくれていた。
「まあ、どーせタマは一つももらえないんだろ?」
小学校の頃は確かに尽の言うとおりだった、あの頃はスポーツができる男子が断然もてる、僕は尽と違って本当にひとつももらえなかった。
勉強も運動も要領はいいし、それでなくとも気づかいのできる尽は彼女が三人もいたとかなんとか……。
中学の一年はいつも通り尽からだけチョコレートをもらって、そして中学の二年で、僕の背がぐっと伸びた時は……。
「ちぇー、なーんでタマが俺よりでっかいんだよ、女子の視線がそっちいくじゃん」
でもそんな事を言いつつ、やっぱりチョコレートをくれた。
残りものとは言いっても器用な尽が手伝っただけあって、他のどの女の子のチョコレートより断然美味しかった。
見た目もあんまり綺麗なんで、姉にからかわれたりもしたけれど……。

中学の三年の時は……。

「……っ」

思い出すと、胸がチクリと痛んだ。
かすかにため息をついて、ちょうど一年前の尽とのやり取りを思い出す。

「今年で最後だなー、しってるかタマ、高校行けば頭のいい方がもてるんだぜ」
そう言ってくれた最後のチョコレート、もうもらえないと言うのは寂しかったけれど、僕は純粋に尽のお姉さんが家を出るから、だからもうわざわざ手伝う事はないからだと思っていたのに……。
「はあ……」
僕は尽も同じく内部進学だと疑ってもいなかった、直前まで一緒にスキーをして滑るだ転ぶだも全く気にしなかった尽がまさか受験生だなんて……だれが思うだろうか。
卒業式の日、春休みはどう遊ぼうか部活はどうするんだと、聞こうと思ったあの日、尽が氷室先生に言われた言葉で知ってしまった。 <> GS3 玉×尽 3/5<>sage<>2010/07/01(木) 18:55:14 ID:FwhDWPLx0<> 「合格おめでとう、推薦とはいえ難関校だったがよくがんばった、寮となると今までと勝手が違うが、まあ君なら大丈夫だろう、しかし困った事があれば連絡しなさい」
「はーい、まあ先生もお元気で」
思い出すと、今でも目が潤む。
知らなかった……。
尽がお姉さんの恩師に勉強を習いに行っているのは知っていたけど、それが外部受験をする為だなんて知らなかった。
僕らは同じはば学の高校生になって、おそらく尽のお姉さんも通った一流大学に一緒に行くんだろうと漠然と思っていた。
ずっと、一緒だと思っていたのに……。
「タマ、へへ」
「尽……寮って……」
笑顔の尽にそれ以上、何も言えず佇んでいた。
もともと喧嘩をする性分じゃないし、僕は怒っていた訳じゃない、あの時はただ……ただ無性に悲しかった。
「まー遠いけどメールとかあるからさ、あ、春休みいっぱいは遊べるぜ、ジェットコースター乗りに行こ」
「うん……」
最後のはばたき市での春休みを、僕の為に使ってくれるのは嬉しかった、でも最後、それがどんな意味か考えずにいたことは、こうして義理も含めたチョコレートに囲まれていると後悔しかない。
メールは今でもやりとりするし、ときには写真付きで送られてくる、だけど声は聞いていない、チョコレートをくれたり、ゲームセンターにひっぱりまわしたり、一日中スキーに付き合ってくれる彼は隣にいない。
「友達は、できたんだけどね……」
「なんだお前、さっきからぶつぶつぶつぶつ」
設楽は設楽でいい友人だとは思うけど、でもやっぱり尽とは違う人間で、僕が卒業式で感じたあの焦燥は……きっと設楽に対するのとは別の感情だ。 <> GS3 玉×尽 4/5<>sage<>2010/07/01(木) 18:56:14 ID:FwhDWPLx0<> 「こっちの話」
「……」
会話を打ち切ると、あからさまなため息をつかれた、けど、こんな話おいそれとすべきじゃない。
初恋の話なんて設楽にはまだ早そうだし……そうだ、きっとあれは僕の初恋だったんだ。
「もっと大人にならないとなあ」
実際に高校生になってみると、尽のお姉さんのことはかなり有名で、ここに通うのはやりづらいだろうというのは痛いほど分かった。
それを一年前の僕は実感もなかったし、無邪気に同じ高校だと信じていた僕は、そんな理由でと反対するだろう事は目に見えてる。
だから、相談してくれなかった事を恨む気持ちはない。
「大人でも子供でもどっちでもいい、早くノートを貸してくれ」
「設楽……本気で真っ白なのはどうかと思うよ」
パソコンを立ち上げて、メールが来るのを心待ちにしたり、きっとお正月には帰ってくるんじゃないかとそわそわしたり、帰ってきたら一緒に行こうと思っていたせいで、今年はまだスキーに行けてない。
「諦めが悪い、われながら……」
目の前の大量の義理チョコの包みをはぎながら、一人で感傷に浸る。
尽のことだ、向こうで可愛い彼女をとっくに捕まえてるだろう。
あいつがここに居れば、はば学の王子様なんて昔の葉月さんみたいに言われたんじゃないかと思う、チョコレートだって僕の10倍くらい……。
「変だなあ」
「どうした、チョコに果物でも入ってたのか」
「いや……」
諦めようとか思っている割に、どんどん思い出が溢れて来てしまって、包をはぎかけたチョコレートをそのまま机の上に置いた。
手持無沙汰でそのチョコレートをちょいちょいっと引っかけて遊ぶ設楽を右手でいなしながら、左手でズレかけた眼鏡を直すと、また小さくため息をつく。
来年度からは生徒会長でもあるんだ……きっと一年の時よりもっともっと忙しい。
この忙しさに紛れて、いつかただの思い出にしてしまえればいいんだけど……。
「ほら、コピー」
いなしていた設楽にノートのコピーを渡すと、ふんっと仰け反った。
「帰る、車を待たせてあるからな」
「はいはい」
やれやれお坊ちゃまのお守も大変で忙しい、今日は塾もないしそうそうに家に帰るか……。 <> GS3 玉×尽 5/5<>sage<>2010/07/01(木) 18:58:08 ID:FwhDWPLx0<> そしていつものように習慣でパソコンを立ち上るとなんと尽からメールが来ていた。
「え?」
今日思い出したばかりのあの笑顔が見えた気がして、思わずパソコンに飛びき、慌ててマウスを握る。
『今年の成果!』
カチッとクリックでそのメールを開くと、写真が添付されて、去年と同じくらいのチョコレートの山と、おそらく尽のピースサインだけが映っていた。
この中に、いくつ本命チョコがあるんだか……。
「……相変わらずだな」
自分の携帯電話で取っているからか、最近は手ぐらいしか映っていない、いいんだけど、あいつだってこれからきっと忙しくなって、メールは減って行くだろうし……。
ふっとため息をついて、そのメールに返信するためにパソコン前の椅子に座った。

「あいかわらずもてるな、元気か?まだ寒いけど風邪をひかないようにそれと……」

書いては消し書いては消し、気持ちが漏れないように、それでも沢山の事を話したくてその日は夜中までメールと格闘することになってしまった。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/01(木) 23:13:11 ID:LY8DSLIhO<> >>455
乙!
土篠初めて読んで大変萌えました!
土方さんが篠崎にもどかしく思ってて冷たくするけど
優しいとこが見えちゃうのや篠崎がやたら可愛くて良かったっす! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/01(木) 23:17:16 ID:LY8DSLIhO<> >>466
篠崎×
篠原〇
失礼しました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/01(木) 23:30:03 ID:g9CevGLE0<> >>435-436
萌えが止まらない!
続いて欲しい <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/02(金) 00:00:09 ID:M3REH/UH0<> >>461
萌えました。ありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/02(金) 00:27:57 ID:WXy8uuHW0<> >>444
ちょっと遅レスですが…
自分もイベントぽつぽつしか見てないけど話の流れがすごくしっくりくる。不思議!
そして萌えた、ありがとう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/02(金) 08:17:13 ID:J0+EJ6Rb0<> そろそろ次スレ?
テンプレの変更は無かったよね? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 11:51:27 ID:x6MOPF+L0<> スレ立て挑戦してくるよー <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 11:57:39 ID:x6MOPF+L0<> 規制されてたorzどなたかよろしくです「モララーのビデオ棚in801板59」
   ___ ___  ___
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  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
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モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
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                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板58
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1273650944/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 12:01:36 ID:QWL9312P0<> いってこよう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 12:03:16 ID:QWL9312P0<> むりでした☆ 以下よろです↓ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 13:35:47 ID:zzAow6Qc0<> やってみる <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 13:43:40 ID:zzAow6Qc0<> モララーのビデオ棚in801板59
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1278218230/

ちょっと失敗したけど、何とか立てたよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 17:20:43 ID:s6EY34O3O<> >>477
乙 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/04(日) 17:32:51 ID:x6MOPF+L0<> >477
乙でしたーありがとうありがとう! <> 運命の必然に関する二三の考察 1/4<>sage<>2010/07/07(水) 00:30:57 ID:/fla+yaP0<> 梅がてら投下させて頂きます。
都市男子達 大岳と喜太郎

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

打ち合わせの為に集まった事務所の一室。前の仕事が長引いた所為で、才木の到着が遅れている。
だから二人でぼんやりと待っている訳なのだけれど、喜太郎が不意に大岳を呼んだ。
「なぁ、おーたけ」
「んー?」
「俺らさぁ、もう三十年以上付き合ってるけど」
「んー」
大岳の返事が生返事なのは、手元の雑誌を捲っていたからであって、喜太郎の言葉など耳に入れる価値など
ないと思ってる所為ではない。けれど他者が語りかけてくる言葉をおざなりに聞いていたしっぺ返しは、
すぐさま与えられた。
「舞台以外でキスって一回もした事ないよな」
「……はぁ?」
何を言われたのか脳が理解するまでに数秒かかった。そして理解した瞬間、大岳はすごい勢いで雑誌から顔を
上げた。幾多郎はというと、部屋にある小型のテレビを見ていて、大岳の方など見ていない。
画面の中では昔のドラマの再放送が流れていて、主役とヒロインが熱いラブシーンの真っ最中という
分かり易さであった。
「ないよな、って当たり前じゃないのか」
「いやぁ、普通付き合って数ヶ月もしたらするもんだろうし、行きずりで出会って数分でする奴もいるだろ。
でも俺ら三十年以上一緒にいてさぁ、した事ないよなーって」
「あのなぁ、一般的な男女関係と、男同士の……こういう付き合いを同等に並べる奴があるかよ」
「今、どういう付き合いか分からなくなって誤魔化しただろ」 <> 運命の必然に関する二三の考察 2/4<>sage<>2010/07/07(水) 00:31:42 ID:/fla+yaP0<> 憎らしい事に意外と鋭い喜太郎は、テレビよりも大岳の方が面白いと踏んだのか、画面から目を離して
大岳を見た。いつ見ても離れた目だなーっと、大岳は思う。日によって目の間の距離が変わる筈もないけれど。
確かに喜太郎の言う通り、この関係をどう形容していいものか、一瞬分からなくなって誤魔化した。
まさしくその通りだ。
仕事仲間ではある。ユニットを組んで三十年以上経つし、仕事仲間と呼んでも差し支えない。
けれどやっぱりそれだけではない。でも友達と呼ぶのも違う。身内だとは思っているが、親兄弟の様な
血の繋がりはない。どんな形容ならしっくりくるのか。
喜太郎は答えない大岳の顔をじーっと見ていたけれど、ふと口元を緩めた。薄い唇が紡いだのは、ほんの一言。
「やっぱり」
顔に出ていたらしいと、大岳は何故だかばつが悪い様な気持ちになって掌で頬を擦った。才木の奴、
何してんだよ。とっとと来い馬鹿と、心の中で八つ当たりを一つ。勿論口にも出してみる。
「じゃぁ、お前は言えるのかよ」
「言えないよ」
「だったら、俺が言えなくても悪くないじゃねぇか」
「誰も悪いなんて言ってないだろ。やだねー、歳取ると僻みっぽくなって」
ささやかな反撃は、かえって攻撃の取っ掛かりを与えてしまっただけだった。あーやだやだとこれ見よがしに
連呼する喜太郎に、大岳はむくれるしかない。大体一歳年上の癖に何言ってんだと思うものの、もうこの歳に
なれば一歳程度の年の差なんてあって無きが如しだった。喜太郎が年上らしく振舞ってる姿なんて
記憶の中にもないのだし。
思えばずっと、喜太郎はこんな風だった。こうして向かい合っていると、ここが才木と同居していた
アパートの一室で、過ごしてきた時間は夢だったんじゃないかと錯覚を起こしそうになる。色んな事があった
三十年が夢だったとして、自分はもう一度同じ三十年を過ごすだろうか。
黙った大岳に喜太郎が僅かに心配そうな顔になる。
「怒った?」
「何で」 <> 運命の必然に関する二三の考察 3/4<>sage<>2010/07/07(水) 00:32:21 ID:/fla+yaP0<> 「黙ったから」
「怒ってねぇよ」
「そっか」
「そうだよ」
「うん。そっか」
あからさまな安堵を喜太郎は浮かべはしなかった。大岳が真剣に怒ってみた所で、喜太郎には痛くも
痒くもない筈なのに、顔色を伺ってくるのはご機嫌を取りたいからじゃない。
例えば、この歳になっても二人は本気で喧嘩をする。演技論を巡って、口も利かなくなる程の大喧嘩に
なった事だってある。それは仲が悪いからじゃなくて、どれだけ喧嘩しても大丈夫だと知っているからだ。
本気でぶつかれる。ぶつかられても、受け止められる。五十歳を過ぎた時、大竹が戯れに「五十過ぎて
仲良しって思われるのも嫌だから、解散でもしようか」と言った事があった。才木も喜太郎もそうだね
と笑っただけだった。大岳は運命論者ではない。けれどもうこれは運命だったと諦めるしかない。
生きている間は、きっと離れられない。離れる離れないなんて、自分達で決める事じゃない。
離れてしまう関係なら、きっとここまで続いていない。
溜息をつきたかったけれど、ぐっと飲み込んで煙草の箱に手を伸ばす。
「んでさぁ、キスだけど」
「話戻すのかよっ」
危うく掴んだ箱を取り落としかけた大岳に、喜太郎がきょとんと細い目を丸くする。
「戻さないの?」
「戻してどうすんだよ」
「だってさぁ、折角振ったんだよ?」
「折角振って頂いたお話ですけどね、謹んでご辞退させて下さいよ」
「まぁ、そう言わずにさぁ、おーたけぇ」
「だからお前はどうしたいんだって」
「同意してよ」 <> 運命の必然に関する二三の考察 4/4<>sage<>2010/07/07(水) 00:32:46 ID:/fla+yaP0<> 「はいはい、そうですね。したことないですね」
「どうしてお前はそう投げやりなの」
「お前が投げやりにさせる様な話題振るからだろうがっ」
前言撤回してやろうかと思ったけれど、ちぇーっとつまらなさそうな顔になった喜太郎を見ていると、
そんな気持ちもなくなってしまう。
「で、才木はまだなの?」
「俺に聞くなよ」
「遅刻は俺の専売特許なのになぁ」
「分かってんなら改めろや」
「遅れようと思って遅れてるんじゃないんだってば」
今日はしていないというのに、普段の遅刻の言い訳をすまなさそうに始めた喜太郎に、大岳は自然と
表情を緩めた。大岳自身は見えないから分かっていないが、それはひどく安心した様な、そういう
笑みだった。
大岳はふと先刻浮かんだ夢想の答えを得る。
もし今目が覚めて、才木と共同生活をしていたあのアパートで目を覚ましたとしたら、きっと同じ
三十年を辿るのだろう。どこかで道筋を違えたら、今目の前にいるのが、今自分達が待っているのが
別に人になってしまうかも知れない。
多分自分達はずーっとこのまんま。キスもしなけりゃ肉体関係も勿論ない、永遠の三角関係だ。
運命だから仕方がない。
そう心の中だけで呟いて、大岳は銜えた煙草に火を点けた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
長年1人で萌えてます。仲良き事は美しき哉。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/07(水) 01:17:28 ID:GeaOSJ3Q0<> >>480
すごい!彼ららしい空気感がなんともいえずよかったです。
永遠の三角関係ってところに感動。ありがとうございました。

こういうのが読めるから棚チェックは欠かせない!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/07(水) 01:27:34 ID:YunvQOHz0<> >>480
まさか棚で彼らの物語が読めるとは!
会話がそのまま脳内再生されました有難う <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/07(水) 02:00:39 ID:SzrD6JIK0<> >>480
GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/07(水) 03:46:58 ID:gDNZvCY5O<> >>480
見つけた瞬間悲鳴をあげてしまった…
ありがとう!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/07(水) 07:16:20 ID:hgcuuqfi0<> >>480
同じく悲鳴を…
ちょうどDVDボックスを買ったところでタイムリーでした
ありがたやありがたや
いいもの読ませてもらいました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/07(水) 14:40:09 ID:KvlO/VkX0<> >>480
ナイス埋め&超GJ!
いいものを読ませてくれてありがとう <> 1/2<>sage<>2010/07/09(金) 20:51:41 ID:zqXFzpk40<> 穴埋め小ネタ。ヤマなし意味なしオチなし。『薔薇の下』3男×5男。『蜂蜜薔薇』時代。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

組み敷いた赤毛が俺の律動に合わせて揺れる。
同時に小さなうめき声も。
のけぞる肩を片手で押さえもう片方の手を腰に沿え、制止の声も無視し、
俺は、奴の、中へ、熱を解放した。


湯を浴び身を清めて戻ってくると上半身を起こしぼんやりとしていたライナスと目が合った。
「なんだ」
「いいえ、なんでも」
ふっと穏やかな笑みを浮かべライナスはのろのろと動き出した。
床に散らばった己の衣服を拾い、ゆっくりと身に着けていく。
シャツを羽織り、ボタンを留め、ズボンに足を通し、サスペンダーを留め・・・
「あの、そんなに見られているとやりにくいんですが」
眉根を寄せ苦笑する。お人よしを絵に描いたような表情。
無性に腹立たしくなり、後ろから手を引きもう一度ベッドに引き込んだ。
「っ・・・!グレグ、いきなり何をするんですか」
<> 2/2<>sage<>2010/07/09(金) 20:52:22 ID:zqXFzpk40<> 抗議の声など無視し首に噛み付く。
ぎりぎりと肉を引きちぎらんばかりに。
「い、いたいいたい!やめてくださ・・・やめ、おい止めろって言ってんだろーが!!」
俺の頭を殴ろうと振り上げられた手が下ろされる前にどんっと思い切り突き飛ばす。
一瞬何が起こったのかわからない、といった間抜けな顔をした後、
状況を理解したのか思い切り睨みつけてきた。
「さっさと出て行け。ここは俺の部屋だ」
「勝手なことを・・・!」
「明日もあのおろかな庶子たちに知恵を授けてやるんだろう牧師様」
「あの子達は素直ないい子だ。そんな言い方は止めろ」
「俺はアルの決定には従う。だが認めたわけではない」
「くっ・・・」
そうしてライナスはさっさと部屋を出て行った。
扉がしまりきる前に、ちらりとこちらに目をやって。
その目に確かに憎しみが浮かんでいる事に安堵した。
「そうだ。それでいい」
俺もお前を憎んでいる。今までもこれからも。
どうかいつまでも憎ませてくれ。
俺にお前を許させたりしないでくれ。
俺を許したりしないでくれ。
いつまでも、俺にお前を穿つ理由を与えてくれ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!5ナンシテンモカキタイカモ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2010/07/09(金) 22:49:11 ID:jm+Ykfxy0<> >>491
元ネタしらないけど萌えた!GJ!
最後の1行がいいねー
良いもえをありがとう <> 名無しさん@そうだ選挙に行こう<>sage<>2010/07/11(日) 00:36:36 ID:7Md5uBIA0<> これで埋まるかな

次スレ
モララーのビデオ棚in801板59
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1278218230/


    ウァ゛ー  
    ∧ ∧γ⌒'ヽ
    (,, ・∀i ミ(二i
    /  っ、,,_| |ノ
  〜( ̄__)_) r-.! !-、
          `'----'


    ウェ゛?
    ∧ ∧γ⌒'ヽ
    (,・∀・ i ミ(二i
    /  っ、,,_| |ノ
  〜( ̄__)_) r-.! !-、
          `'----' <> 名無しさん@そうだ選挙に行こう<>sage<>2010/07/11(日) 00:38:30 ID:7Md5uBIA0<> テスト
___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
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