風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:21:40 ID:B/lx9nwm0<>    ___ ___  ___
  (_  _)(___)(___)      / ̄ ̄ヽ
  (_  _)(__  l (__  | ( ̄ ̄ ̄) | lフ ハ  }
     |__)    ノ_,ノ__ ノ_,ノ  ̄ ̄ ̄ ヽ_ノ,⊥∠、_
         l⌒LOO (  ★★) _l⌒L ┌'^┐l ロ | ロ |
   ∧_∧| __)( ̄ ̄ ̄ )(_,   _)フ 「 | ロ | ロ |
  ( ・∀・)、__)  ̄フ 厂  (_,ィ |  </LトJ_几l_几! in 801板
                  ̄       ̄
        ◎ Morara's Movie Shelf. ◎

モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_||  |      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ]_||
   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]._\______   ____________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |[]_|| / |/    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |[]_||
    |[][][][][][][]//||  | ̄∧_∧     |[][][][][][][][].||  |  ̄
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.||  |
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ|8l|.|[][][][]_[][][]_.|| /
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    (__)_)
前スレ
モララーのビデオ棚in801板51
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1250428669/

ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-9のあたり

保管サイト(携帯可/お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://morara.kazeki.net/ <>モララーのビデオ棚in801板52 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:22:15 ID:B/lx9nwm0<> ★モララーのビデオ棚in801板ローカルルール★

1.ノンジャンルの自作ネタ発表の場です。
書き込むネタはノンジャンル。SS・小ネタ・AAネタ等801ネタであれば何でもあり。

(1)長時間に及ぶスレ占拠防止のためリアルタイムでの書き込みは控え、
   あらかじめメモ帳等に書いた物をコピペで投下してください。
(2)第三者から見ての投下終了判断のため作品の前後に開始AAと終了AA(>>3-7辺り)を入れて下さい。
(3)作品のナンバリングは「タイトル1/9」〜「タイトル9/9」のように投下数の分数明記を推奨。
   また、複数の書き手による同ジャンルの作品判別のためサブタイトルを付けて頂くと助かります。

※シリーズ物・長編物の規制はありませんが、連投規制やスレ容量(500KB)を確認してスレを占拠しないようお願いします。
※感想レスに対するレス等の馴れ合いレス応酬はほどほどに。
※「公共の場」である事を念頭にお互い譲り合いの精神を忘れずに。

相談・議論等は避難所の掲示板で
http://s.z-z.jp/?morara

■投稿に当たっての注意
現在連投規制が厳しくなっており、10レス連続投稿すると、ばいばいさるさんに引っかかります。
長い作品の場合は、分割して、時間をずらして投下することをおすすめします。
1レスあたりの最大行数は32行、タイトルは全角24文字まで、最大byte数は2048byte、
レス投下可能最短間隔は30秒ですが、Samba規定値に引っかからないよう、一分くらいがベターかと。
ご利用はテンプレをよくお読みの上、計画的に。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:22:56 ID:B/lx9nwm0<> 2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリー物であろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . |
                               | | [][] PAUSE       | . |
                ∧_∧         | |                  | . |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |                  | . |
          | |,,  (    つ◇       | |                  | . |
          | ||―(_ ┐┐―||        |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:23:30 ID:B/lx9nwm0<> 3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。

別に義務ではないけどね。

テンプレ1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:24:04 ID:B/lx9nwm0<> テンプレ2
          _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│たまにはみんなと一緒に見るよ
                └───────────────

          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) ヤッパリ ヒトリデコソーリミルヨ
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:26:33 ID:B/lx9nwm0<> テンプレ3
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < みんなで
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ワイワイ
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 見るからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < やっぱり
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < この体勢は
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 無理があるからな
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:27:06 ID:B/lx9nwm0<> テンプレ4

携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:27:45 ID:B/lx9nwm0<>  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/29(火) 16:28:21 ID:B/lx9nwm0<> |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/(     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 00:23:53 ID:7UI4KKVI0<> >>1乙! <> 君は魔法が使えたんだ0/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:35:01 ID:is8SSpfU0<> >>1さん乙です
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  オリジナルぷろやきう とうしゅ←ほしゅ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  後味おいしくないです
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ zZZ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(-Д- )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 君は魔法が使えたんだ1/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:37:33 ID:is8SSpfU0<>
二次会も終わりに近付いたその空気はあまり宜しくもなく、面白くもなく、更に好ましくもなかった。
便所の鏡に向かって呟くと、えも言われぬ悲壮感がただでさえ重い両肩を下げる。
心臓は随分前に鷲掴んですっかり捻り潰されてしまっていた。
洒落た居酒屋の雰囲気は、未だに明るい。貸し切りというのも困りものだと、もう一度溜息をついた。
ぱちんと音を立て開いた携帯電話のディスプレイには、明け方を知らせる時刻が映し出されている。
アルコールが胃に溜まったこの状態で、今日の練習のメニューを反芻した。どうにもこうにも胃が重い。
いっそのこと今日は自主トレーニングの日なのだから、己の判断に任せて自堕落を極めようかとも思う。
胃の中に落ちたアルコールが、今更焼けるように沁みた。
(第一俺はハートブレイク真っ最中ですよっと)
しかしその思考は咄嗟に止めた。待て、よく考えろ。
一般のライフワークでこれを例えるならば、傷心で会社を無断欠勤することに何ら変わりないじゃないか。
職に対して変に真摯な自分を今だけは嘲笑いたい気持ちだ。元旦ですら未だにトレーニングを欠かしたことが無い。
すっかり落としていた視線と肩を緩慢な動きで上げてみると、鏡の中の自分は随分と酷い顔をしていた。
某誌の“格好良い選手”だったか、“結婚したい選手”だったか、或いはその両方だったかも忘れたが、ランキング二位なぞ嘘のような話だ。
――ああいう顔だけで付くようなファンは欲しくない。強く唇を噛み締める。
傲慢なのか綺麗なのか、そんな気持ちを綯い交ぜにプロ入りからずっとあの手の取材を断って来たが、今またその気持ちは強固になる。
こんな汚い顔の、一体どこを好んでいるのだろう。 <> 君は魔法が使えたんだ2/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:39:00 ID:is8SSpfU0<>
たとえ相当鈍感でも、今時時代遅れの熱血漢でも。奴の方がよっぽど、格好良かった。
皆が皆競って横文字高級車を買っている様子を尻目に、社会人時代世話になった会社の車に乗る。
携帯電話の待ち受けを奥さんにしている。
ついでにあいつのスーツは、全て二着で一着半額とかそういう場所で買ったものだ。
あいつがブランド物のスーツを着ているところなど、プロ入りしてから一度も見かけたことが無い。
むしろあいつがそれを着たとして、今となっては逆に違和を感じてしまうのでは無かろうか。三冠王の表彰台すら、ノーブランドのスーツで登った男だ。
あの大きく縦に割れるドロップも、息づいたように沈み込むシンカーも、全てがあいつの全て――なのだ。
大きく振りかぶりミットに届く衝撃を、あいつが先発する金曜日を、今年一年楽しみにしていた。
たったのワンイニングだった。自分とあいつは、高校の全日本選抜でバッテリーを組んだことがある。
プロ入り直後はそう取って付けたような、すぐに忘れてしまう話の種でしかないナレーションやテロップを付けられたものだ。
正直なところ、あの日はあいつを含めて五人のピッチャーと組み、尚且つ大会が始まって以来
五本の指に入るような乱打戦が繰り広げられた為、いちいち全員の球種なんぞ記憶していない。
しかし、コーチはその“取って付けたようなもの”に大いに注目し、自分とあいつにバッテリーを組ませたのだった。 <> 君は魔法が使えたんだ3/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:40:38 ID:is8SSpfU0<>
生来自分はご都合主義の感覚人間で、あいつの几帳面さや真面目さ、正義感に満ち溢れた人間像が、少しどころかとても苦手だった。
関わるときっと面倒だろう――そんな理由で、新人合同自主トレーニングの時から何となく敬遠していたのに。
コーチはそれを知ってか知らずか、そのバッテリーをしばらく固定した。大学を卒業したばかりの、プロ入り一年目の自分と、だ。
自分のキャッチングの練習相手はあいつに、あいつのピッチングの練習相手は自分に。勿論自分にとってそれは十分な苦痛だった。
――球種、他に無い?配球ちょっと……困るんだけど。
確かにあれは青臭い腹いせだったはずだ。しかし自分との相性の悪化を望んで教えたシンカーが、今やあいつの決め球だ。 
誰が想像した未来だろう。
しかもそのシンカーで最終打者を空振り三振で飾り、あいつがプロ入り初めての完封勝利を成し遂げた日には、
ご丁寧に自分は自軍で唯一の得点となるスリーランホームランを放ってしまったのだった。
初めてのヒーローインタビューまで同じくしてしまったあの時、自分は心の底から後悔した。

あんなに格好良く男泣きする奴だなんて、思わなかった。
嬉しくて仕方がないという風に、薄い膜を瞳に張ったまま六センチ上であいつは歓喜に震えていた。
マイクを渡そうとした一瞬に見たあいつの表情は、誇張表現でも何でもなく一生忘れることが出来ないだろう。
白い歯の陰影と、一重瞼の大きな目があまりに印象的だった。
余韻を残したロッカーで、あいつが電話を通して誰かといつもより大きな声で話していた時、自分には気付いたことがあった。
今思えばそれは気が付いてはいけないことで、もっと、その電話の相手が――彼女だったとか、そういうことに気が付けば良かったのだ。
薄っぺらな携帯電話に、ストラップが揺れている。
それだけではない。そのストラップには自分も見覚えがあり、みっともなく取り乱しつつも、
そろそろ自分の名前が定着しつつあるロッカーから電話を取り出した。 <> 君は魔法が使えたんだ4/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:42:12 ID:is8SSpfU0<>
目線の先端で揺れていたのは、間違いなく同じものだった。
違うのは配色だけ。思い出を必死に手繰り寄せる。
全日本高校選抜のアメリカ遠征で成田から飛び立つ直前、自分は免税店でストラップを買った。
二本でセットになっている、背伸びをしたら手が届く――かもといった高校生にしては少々お高い、そこそこ名の知れた有名ブランドのものだ。
欲しいなあと正直その位の気持ちで眺めていたのだが、二本組というのがどうも気になる。
周りを見回してみるも、単品で購入可能の記述は見当たらない。向こうで買う土産代の勘定をする。
――割り勘しよっか?
諦め掛けた時、横から掛けられた声だった。
ふと後ろへ振り向くと、確かハットリと言ったピッチャーが立っていて、少しその低めだった目線は、俺ピンク好きなんだよといたずらっぽく笑う。
思わずその見た目にそぐわない趣味に笑って、紙幣を一枚ずつ差し出し合ったのだった。段々と鮮明になる記憶に、鳥肌がたつ。
チームメイトからはしきりにござるだとかニンニンだとか、ちょっと飛んでシノブやら散々なあだ名を付けられていたあいつは、
ハットリ、ハットリ何という名前だった?どんな顔をしていた?

自分の学年はいわゆる不作と呼ばれる世代で、
スポーツ誌には『どうなるドラフト!高卒飢饉』なんてあんまりな見出しを付けられる始末だった。
とにかく、突出した人材がいない。
実際夏の甲子園大会では輝ける新星と呼ばれるエースも、恐るべき怪物といったスラッガーもあの場所に住む魔物に遭遇することは無かった。
それゆえ、上位校で編成される全日本選抜は、やはりアメリカにお世辞にも良い数字を残せずじまい。
今では野球とは縁の切れた生活をしている者がほとんどだった。 <> 君は魔法が使えたんだ5/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:44:14 ID:is8SSpfU0<> 大学四年間の月日はそんな思い出すら風化させて、自分を擦れた人間へと育て上げた。
残暑もそれ程厳しいとは思えない四回生の夏の終わり。
都市対抗野球大会の決勝戦を、クーラーのきいた寮の食堂でテキストを開きながら観戦し、
フクベなんて珍しい読み方だな、あのドロップすげえな、あいつタメらしいよ、
マジかよ、それよりお前単位大丈夫なの、お前さこの前紹介してもらった子最悪なんだけど、とそぞろ言に自分を費やしていた。

ハットリ、イコール、フクベ。気付くのが遅過ぎた。
人間は何らかの衝撃が無いと、痛みという痛みでも大抵のことを忘れてしまう。
彼とあいつの一致に気付いた時、自分の頭は今までに経験の無い大きさで揺れた。
全日本選抜の時は監督の方針で全員が全員を名前やニックネームで呼び合っていたとは言え、
バッテリーを組んだピッチャーの名前を忘れるなど、キャッチャーとしてもプロとしても前代未聞だろう。
いくら野球ばかりで今でも横文字に弱いからとは言え、ピッチャー交代の場内コール位聞き取れなかったのか。
どれだけ余裕が無かったのか、そしてそんな中での『希望の欠片』――今思えばこれまた大概な評価を与えられていた自分に、
どれだけ酔っていたのか。
そして絶対的ポジションの違いから同期選手であるあいつの調べを疎かにしていたことを、ただ強烈に恥じた。
ストラップはと言えば、取り出したはいいものの、またそれをロッカーにしまい込んで。
あの時の自分に、シリアルナンバーを合わせてみようなどと提案する勇気は無かった。 <> 君は魔法が使えたんだ6/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:45:36 ID:is8SSpfU0<>
結局あれから五年の月日が経ち、電話の向こうの彼女と二週間前、あいつは結婚した。
「これが最後のブランド、か」
曇った眼鏡から覗く視界にストラップが揺れる。
過剰にそれが右へ左へと行ったり来たりしている風に見えるのは、
自分の視界がいつぞやのあいつのように、薄い膜を張っているからだ。
あの時のあいつのそれとは全く意味も純粋さも何もかも違うのに、同じ泣涕なのだから言語とはどこか不便である。
画面を覗けば、ずらり着信履歴。
(便利な男の子達は、そろそろ片付けた方がいいのかね――なんておーぐろまきかっつの)
そんな意気地も無い筈なのに、そのような意地を脳裏に過らせてみる。
ごつごつとした人差し指で、もう一度ストラップを撫でた。さあ、しっかりしろ徹、しっかりするんだ。
ポケットに携帯を滑り込ませたその手とストラップを撫でた手で、思いきり両頬を挟み込んだ。
響き渡る乾いた音はすぐに消えてしまう。静寂に蘇るのはやっぱりあいつの声だなんて、始末に負えない。

――俺は覚えてたよ、大橋のこと。
静寂に耳を澄ませると、未だ冷めやらぬ宴会の様子が、ドア越しに伝わる。
――東都も自分で観に行ってた。バッテリー組めねえかなって、いっつも。
馬鹿みたいに明るい低い笑い声と、服部、マサルとあいつを呼ぶ声。
――俺のキャッチャーはお前しかいない、とか今日位言ってもいい?
同じシリアルナンバーが刻印されたストラップを突き出し、あいつは白い歯を浮かせて笑っていた。 <> 君は魔法が使えたんだ7/7<>sage<>2009/09/30(水) 00:47:51 ID:is8SSpfU0<>
「あいつ本当に、最低――最低だ」
こんな日だからこそ、あんな台詞はしまっておくべきだ。
たとえあいつが自分のことを唯一無二の相方として認めていたとしても、自分があいつの配球には信頼による絶対の自信があるとしても。
お前のキャッチャーは、お前の奥さんしかいちゃいけないんだ。その一言すら喉につかえた。
小さく呟いても音はまたどこかへ姿を消すものだから、いつまで親友でいることが出来るのかという自問自答が、
更に難解な問題となってしまう。やはり今日のトレーニングは、精神衛生上控えるべきだろうか。
あいつと同じメーカーの、同じステッチが施された、同じ“Trust you, Trust me.”の刺繍が入った、
形と色だけが違うキャッチャーミットが今はどうしても見たくない。お前を信じるから俺を信じろだと。とんだ笑い草だ。
もう一度浅劣に口角を上げた。
次は女に生まれたい、いやあいつが一緒な時代に生まれてなきゃ意味ねえな、
また同性だったらどうしようか、と取り留めもなく考える自分は思ったよりも成長が無い。
しかしこれ程前世に大罪を犯しているのだから、次こそ人類に生まれる保証は無いような気さえした。
歪んだ横恋慕という大罪は、必ずしも大辟を与えられる運命にあるというのか。
(神様、こんな苦しいとこでいつまで泳いでたらいいの)
そうごちると、一層追悔が鼻梁を冷たく濡らした。 <> 君は魔法が使えたんだ おわり<>sage<>2009/09/30(水) 00:50:01 ID:is8SSpfU0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

長めなのでこちらに失礼しました
なんか字がぎっちり読み辛かったら申し訳ない… <> 前ナイカク 0/1<>sage<>2009/09/30(水) 01:18:00 ID:38QH6IOf0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  セイジものだモナ。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ここに投下しちゃうからな。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ シラネーゾオイ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 前ナイカク 1/2<>sage<>2009/09/30(水) 01:18:48 ID:38QH6IOf0<> これは夢か。現実なのか。
何故か目の前は有り得ない位真っ白で、体はふわふわとした浮遊感に包まれている。
自分は天国に着いたのか。
ゆっくりと体が引き上げられた先には、無垢な笑顔で出迎えてくれる天使が…天使…が…。
「おい、寝惚けてんじゃねぇぞ!起きろショウイチ!」
襟元を掴まれてぶんぶんと体を揺すられ、はっとして目を開けると、
渋い顔をした男二人が自分を覗き込んでいるのが見えた。
「大丈夫か?ナカガワサン」
「喋ってる途中でいきなり寝るなよ!びっくりするじゃねぇか」
ああ、そうだった。
今は国会開催中で、答弁や各種会議の合間を縫って、国際会議に出席する自分のために
アソウとヨサノが原稿内容の吟味に立ち会ってくれているのだ。
天使などとは似ても似つかぬ二人の姿に、ショウイチは内心苦笑しながら頭を下げていた。
「すみません、ちょっと疲れてて」
「おいおい、お前がこの中で一番若ぇんだぞ。何言ってやがる」
目を剥いてそう言って見せるアソウに、まあまあと嗜めるようにヨサノは手を振って立ち上がった。
「いや、ソウリ、実際根を詰めすぎましたよ。…コーヒーでも淹れてきますか」
年齢と立場を感じさせない腰の軽さで部屋を出ていく。
さり気なく室内を二人きりにしてくれたことに気付き、アソウは軽く黙礼していた。
決定事項を直ぐに文章に起こせるように、次の間には秘書官や次官達が控えている。
事を荒立てて情報を漏らせば、弱みに付け込まれることになるだろう…政敵からも、身内の敵からも。
アソウは声を潜めてショウイチを問い詰めた。
「また腰か?大分悪いのか。薬、やってるのか」
「何ですか、人聞きの悪い」
笑ってそれをかわそうとしたショウイチだったが、アソウに手首を掴まれ顔を強張らせた。
ショウイチの腰痛は相当に酷いもので、腰痛を和らげるという触れ込みのクッションを常に持ち歩くほどだった。
長時間同じ姿勢を続けざるを得ない今の職務は、腰には最悪なのだ。
痛み、というよりはズキンズキンとした痺れが脳天を直撃する。 <> 前ナイカク 2/2<>sage<>2009/09/30(水) 01:19:41 ID:38QH6IOf0<> それに耐えようとして痛み止めを飲み胃を荒らし吐き気に苦しみ胃薬を飲み…そしてその間隔が徐々に短くなり。
「…医者には診てもらってるのか」
「……ソウリ、おわかりでしょう、私は…」
ショウイチが病院になど行ける訳がない。
アソウにも、無論わかっていた。
大臣であるという立場がそれを許さない。そんな時間などあるはずもない。
わかっていても口にせずにはいられなかった。
そして何の役にも立たなかった。
アソウが言えたのは、ただ「済まん」との一言だけだった。
「ソウリ、私は『全力でソウリを支える』とお誓い申し上げた。それだけですよ」
口の端を挙げて見せたショウイチだったが、目が笑っていなかった。
寧ろ凄惨さを感じさせる笑みに、アソウは黙って頷くことで応えた。
そこへ、ドアの外から微かな陶器の触れ合う音が聞こえ、アソウはふっと視線を外した。
「大事にしてくれ…頼む」
ヨサノを迎えるために立ち上がったアソウが小声で早口に囁いた言葉が、ショウイチの耳に長く残った。

「さてと。ソウリは3つ、でしたね。ナカガワサンはブラック?」
シュガーポットから自分のカップに角砂糖を2個入れながら、ヨサノはショウイチに声をかけた。
「あ、僕は…」
「どうせならよ、正気付けに塩でもぶちこんどけばいいんだよ、海軍式にな」
スプーンでカップの中をぐるぐるかき混ぜて毒づくアソウに、ショウイチは露骨に顔を顰める。
「うぇ…しょっぱいコーヒーなんて御免ですよ〜」
「なら、ご自分でお入れなさいな」
ちょっと考えてから、カップに角砂糖を4個放り込むショウイチに、二人は軽く溜め息をついた。
なんだかんだ言っても、結局は皆、甘党なのだった。 <> 前ナイカク <>sage<>2009/09/30(水) 01:21:02 ID:38QH6IOf0<>
          _________
       |┌───────┐|
       |│ロ stop.      │|
       |│              |│
       |│              |│
       |│              |│
       |└───────┘|
         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]

                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) あんまり萌えじゃないね。
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |                                |
  └────────────────┘ <> ピロートーク不要<>sage<>2009/09/30(水) 01:57:10 ID:iuTC9gLU0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  Q係 主任×青山羊×主任
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  恋愛じゃない二人。無糖です。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

<> ピロートーク不要1/4<>sage<>2009/09/30(水) 02:10:06 ID:iuTC9gLU0<>  そもそも、村背の職場には変人が多かった。捜査となれば切れ者だが、普段は庁舎内で煮炊きをしている
(そういえば最近、上は何も言ってこない。諦めたのか)上司だとか、頼れるが、年齢と美容、男関係に触れ
ると目が笑っていないコンビの相方、金銭的にコンビを組んでる相方に甘すぎる同僚に、最近回りの変人に毒
されつつある気がする後輩。
 しかし、一番頭の痛い変人は誰かと言われれば、それは彼の隣でタバコを吸っている男しかいない。正直、
ほかの面々のやることなど可愛いものである。特に誰が迷惑するわけでもないし。まぁ、煮炊きされるとにお
いが染み付くぐらいだ。それは大したことじゃない、多分。
「主任さん、眉間に皺よってるよ」
「……誰のせいだと」
「俺? 最近自重してんじゃん」
 とりあえず自覚はあるらしい。軽い調子で青山羊は言った。その言い方が、酷く村背の癪に障る。胃に穴が
開いたら絶対この男のせいだ。
「今は、ね」
 取調べの最中、よく青山羊は机を放り投げる。それで壊れた机は数知れない。最近、どういうわけか割合大
人しくしているが、せいぜい後一月持つかどうかといったところだろうと村背は睨んでいる。 <> ピロートーク不要2/4<>sage<>2009/09/30(水) 02:19:29 ID:iuTC9gLU0<>  それに、取調べ中に机を放り投げるのがまずいのは、何も机が壊れるからだけ
ではない。公判で、刑事に脅されて仕方なく自供したと言われかねないからだ。
目の前で机を放り投げられるというのが、結構な恐怖を与えるのは間違いない。
今のところ公判でそう述べた被告はいないが、今後出ないとも限らないのだ。
「取調室の可視化も叫ばれてますし、今後の刑事人生ずっと自重してくださると
ありがたいんですがね、青山羊さん」
「向こうがきりきり吐けば、俺は手荒なまねはしないよ」
「きりきり吐かなくてもそうしていただきたいんですよ。公判で不利になります」
「検察がな」
「警察も、です」
「主任さんの出世に響く?」
「一個人の出世云々という問題ではありません。警察全体の信用が低下します」
「今更だと思うけどな」
「だからこそ、我々一人一人が気を付けなければならないんですよ」
「信用なんて、もうゼロなんじゃねえ?」
 短くなったタバコを灰皿に押し付けながら、軽い調子で青山羊は言う。その言い草
に、眉間の皺が深くなるのを、村背は感じた。
「マイナスになっては不味いでしょう。治安悪化に繋がる」
「それも今更だと思うけどな、俺は。――それよりさ、主任さん」
「何ですか」
「こんなところで、あんなことヤった後の話にゃ向かないと思うぜ、それ」
 二本目のタバコを銜え、しかし火は付けずに青山羊は言った。 <> ピロートーク不要3/4<>sage<>2009/09/30(水) 02:27:23 ID:iuTC9gLU0<>  二人がいるのは、繁華街から少々外れた場所にある、場末のラブホテルだ。そんなところに入って
やることなんて一つしかない。彼らの職務上、時々そういう目的以外で入ることもあるが、今は職務
を離れた時間であり、つまりはそういうことである。
 そもそも、何故青山羊と関係を持っているのか。その当たりがイマイチよく分からない。発端は強
かに酔ったある日の夜、酒の勢いでやらかしたことだが、どうしてそれが一度きりの過ちですまなか
ったのか、それがわからない。月に一度か二度、適当なラブホテルで落ち合い、関係を持つ。それが
ずっと続いていた。
 別に愛だとか恋だとか、そういう感情が互いの間にあるわけではない。むしろ、そういう感情から
程遠いところにいるのは間違いない。二人の間にあるのはもっとこう、どろどろしていてぐちゃぐち
ゃで、相手の全てを貪り食うような貪欲で凶暴な獣性だ。日常の仮面の下に隠したそういう面を、た
だ相手にぶつける。そういう関係でしかない。
「じゃあ、話題に何をお望みですか? 歯の浮くような甘ったるい睦言でも?」
「ジョーダン。俺とあんたでそりゃないぜ」
「そうですね。自分で言って鳥肌が立ちました、気持ち悪くて」
「じゃあ言うなよ」
 銜えていたタバコを放り投げると、青山羊はにやりと笑った。
「俺らにゃさ、ピロートークなんていらねぇんだよ。そういうのは恋人同士がやるもんだろ?」
「ええ、そうですね」
「つーわけで、第2ラウンド。さっき俺乗っかられたからさ、乗っかっていい?」
「……好きにしてください」
「あれ、珍しいね。普段は色々言うじゃん」
「精神的疲労が大きくてそれどころじゃないんですよ」
「ふーん? じゃあ遠慮なく」
 裸の体に、青山羊の手が触れる。
 今日はあと何回、この行為を繰り返すのだろう。快感を感じ始めた頭の
片隅で、ぼんやり村背は思った。 <> ピロートーク不要<>sage<>2009/09/30(水) 02:33:03 ID:iuTC9gLU0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ Q係萌えで突っ走った。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
投下してみたら、三分割で平気でした。ナンバリング間違えてすいません。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 08:17:18 ID:+dw1J/grO<> >>11
萌えた 萌えたよ…!
切ないね また楽しみにしてます <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 10:31:53 ID:GgEkvR+v0<> >>20
GJ!笑わせて頂きました。

>天使などとは似ても似つかぬ二人の姿
wwwwwww

不覚にも感動した。なんて健気(「けんき」と読まぬように)なんだ。>ショウイチ
大人の気遣いできる、良識人なヨサノさんも(・∀・)イイ!
そして、シモジモの者には真似のできない美しい言葉遣いと優雅な物腰が、
いかにもあのセメント屋のお坊ちゃまらしいですw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 12:00:04 ID:bIkx8XJl0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  半生 究明
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|   新堂と佐和井 受け攻めどっちでも
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 新堂と佐和井 1/3<>sage<>2009/09/30(水) 12:01:11 ID:bIkx8XJl0<> ナースステーションの受付に、この場にはどこか不釣り合いな、
しかしどこか懐かしいスーツ姿が映る。
「新堂先生はいらっしゃいますか」
顔を上げた看護師の驚きの声。
その姿はまぎれもなく前医局長の佐和井だった。

「単原先生達もほとんど慣れたようですね」
医局に少し顔を出したあと、佐和井は新堂に連れられ処置室へと入った。
医療の現場から離れた佐和井には、すれ違う白衣やカルテが並ぶ医局の机、
そして今腰をおろしているこの処置室のベッドと、目に入るものすべてが懐かしいものだった。
「あんたはどうなんだ」
捲った裾からのぞく傷痕に触れながら、新堂は佐和井に話しかける。
ちらりと佐和井が新堂を見ると、それに合わせたかのように新堂が視線を合わせた。
「新堂先生が頑張っている限り、私は倒れるわけにはいきません」
「曖昧な答えだな」
らしくない、と新堂は再び佐和井の足へと視線を戻した。
自分でも、なぜこんなに的外れな返事をしたのかと佐和井は不思議だった。
現場を離れ、改革機構の常任理事という立場に立ったのは確かに自分の意志だった。
現場に立ちつつこなしていたメディア露出なども、以前ほどの回数は重ねてはいない。
離れた立場でしかできないことをやろうという気持ちは変わらないが、
事を進ませるというのは思っていた以上に時間と根気がいるものだった。
「メディアで頻繁に発言できるほど、今抱えている問題が片付いたわけではありませんから」
またもや出てしまった噛み合わない答えに、弱気だな、と
佐和井は自嘲するように、そらされた進藤の視線の脇で笑った。 <> 新堂と佐和井 2/3<>sage<>2009/09/30(水) 12:02:37 ID:bIkx8XJl0<> 新堂という男とは、一生分かり合えないのではないかと佐和井はずっと思っていた。
患者と真摯に向き合い、ひたむきに命を救おうとするそのストイックさに、
佐和井は共感を覚えると同時に、ある種の嫌悪感を感じずにはいられなかった。
新堂という男に近づけば近づくほど、自分の心の奥に仕舞いこんできたある人物を思い出す。
渦を巻くようなその葛藤に、佐和井は新堂のことを考えない時はなかった。
『救える命を見捨てるのは犯罪だ』
佐和井の中で、ますます二つの感情が絡み合う。
新堂という男は、自分が目指していた姿だった。
自分の中に仕舞いこんでいた姿であり、
それでもなお心と体に今でも染みついているあの日の輝いていた姿でもあるのだった。

肌をなぞる新堂の指に、佐和井はそっと目を閉じた。
一度として触れることがなかった新堂の感触。
ここを去る時でさえ、新堂は佐和井が求めた握手に答えることはなかった。
『約束を忘れないで欲しい』
明日のことを任せるからと、今いる自分達を救ってくれという答えだった。
あれからどれくらいの月日が流れただろう。
差し出した手を新堂が握り返す様子を、佐和井はいつも想像して過ごしてきた。
新堂と交わした約束を果たす。
それが一番の支えでもあった。
しかし、こうして弱気な姿をさらすのは、よりによって本人である新堂の目の前なのだった。 <> 新堂と佐和井 3/3<>sage<>2009/09/30(水) 12:04:08 ID:bIkx8XJl0<> 「もうここへ来る理由もなくなりますね」
うっすら残った傷痕をなぞる新堂に、佐和井は独り言のように話しかけた。
杖がなくても歩けるようになると、佐和井はセンターに顔を出さなくなった。
連絡先を教えた元同僚たちは、時々顔が見たいと声をかけてくれた。
しかし、佐和井が再び姿を現すことはなかった。
これ以上「主治医」に顔を見せては、いつまでも自分は甘えてしまうばかりだと考えたのだった。
「適切な処置、素晴らしかったです」
自分をなぞる指が止まり、佐和井はゆっくりと目を開けた。
台に乗せていた足をおろし、改めて新堂という男と向き合う。
一度としてそんな気持ちを抱いた記憶はなかったが、佐和井はやはり自分はこの男が好きなのだと、
一緒にいた短い日々を思い出してそう確信したのだった。
「新堂先生、ひとつよろしいでしょうか」
会話こそ何度も交わしたものの、お互いの気持ちに迫るような言葉を告げることは、
自分はもちろん、目の前の男も皆無だった。
「私にもあなたに触れさせてください」
言葉に詰まった新堂の頬に、佐和井の指がそっと触れた。
少しだけ伸びた爪が目尻をかすめ、ぎこちない動きで髪を梳く。
指先から伝わる新堂という男の感触を、佐和井はひとつひとつ体に染みこませるように感じていた。
ふと迷いがちに指を止める。
どうかしたのかという新堂の視線。
少しだけ考えた後、佐和井は同じものを重ねるかのように新堂の唇を指でゆっくりとなぞっていった。
「新堂先生」
何か言いたげな新堂が口を開くと同時に、佐和井の指が新堂から離れた。
むきになったのか手を伸ばそうとする新堂を遮るように、佐和井はゆっくりと言葉を続ける。
「約束は必ず果たします」
少し間を置いて、「そうか」と小さくつぶやくと、新堂はふいに顔をそらした。
はっきりとは見えなかったが、一瞬見えた口元は微かに笑みを含んでいた。
「新堂先生も笑う時があるんですね」
「そうだな」
再びお互いの視線が交わる。
新堂の目に映った佐和井が微かに笑っていたことに、佐和井自身が気付くことはなかった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 12:05:52 ID:bIkx8XJl0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 冬のSPが楽しみ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 20:59:25 ID:ny/MiXwd0<> >>24
まさかこの二人のぴろートークが読めるとは…!禿萌えたよ、GJ!!
恋愛じゃないと思いながらも気付いたときには手遅れになってるといいよ、お互いになw
これからはリピる度にニヤニヤしてしまいそうだw萌えをありがとう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/09/30(水) 23:37:51 ID:iulR/Ysn0<> >>24
GJ!!蒼ちゃんは下っぽいがプライドが許さないような気がするって思ってたけど、そうかリバなら全て解決する!
あと込山さんの描写が的確すぎて吹いたw <> 夜が明ける前の話<>sage<>2009/10/01(木) 02:00:47 ID:NFZYSavT0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  Q係 係長×青年
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  事後。甘め、若干シリアス。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 夜が明ける前の話1/5<>sage<>2009/10/01(木) 02:02:53 ID:NFZYSavT0<>  裸のまま横たわる布団の中。情事の余韻の残る体を、後ろからそっと抱き締められた。
「麻輪くん」
 耳元で、名前を呼ばれる。
「はい」
「麻輪くん」
「はい」
「麻輪くん」
 繰り返し呼ばれる名前。日中に呼ばれるのとは違う、甘く、言葉にするのは面映い何かを含ん
だ声で呼ばれると。何ともいえない幸福が、胸を満たすのだ。
「麻輪くん」
「何ですか」
「呼んだだけ」
 耳朶を食むようにして、彼の声が流れ込んでくる。笑いを含んだ声が脳に滑り込むと、酷くゾ
クゾクとした何かが駆け巡る。痺れるような恍惚。中毒になりそうな、甘やかなそれに、どんど
ん溺れていく、戻れないところまで。 <> 夜が明ける前の話2/5<>sage<>2009/10/01(木) 02:04:33 ID:NFZYSavT0<>  もぞもぞと動いて、麻輪は寝返りを打つ。正面には、上司としての顔(あまり上司然とした表
情を見せないが)をどこかにおいてきた加能が、こちらを見ている。
「……係長」
「うん?」
 そっと、顔を近付けて。加能の唇に、触れるだけのキスをした。きょとんとした顔に、小さく
笑う。
「どうしたの?」
「キス、したくなったんです」
「そう。――じゃあ、」
 加能の顔が、近付いてくる。すばやく近付いた唇が、掠めるように麻輪の唇に触れた。
「僕も、したくなった、今」
 笑って、加能が言う。
「ねえ」
「はい」
「もっとしても、いい?」
「どうぞ」 <> 夜が明ける前の話3/5<>sage<>2009/10/01(木) 02:06:56 ID:NFZYSavT0<>  麻輪の返事に満足げに目を細めると、加能は触れるだけのキスを繰り返す。
「麻輪くん」
「はい」
「麻輪くん」
 キスの合間に、名前を呼ばれる。愛おしげに呼ぶ彼が、麻輪には愛おしく思えたから。
「係長」
 今度はこちらが、相手を呼んでみる。こちらを見詰める目が、やわらかい光をたたえていた。
酷く、穏やかだった。
「もっと、呼んでよ」
「はい」
 触れるだけの穏やかなキス、その合間に相手を呼ぶ。それだけで、とても幸福な気分になる。
まるで、世界に二人だけ残されたような、そんな時間。夜が明けなければいいなんて、どうしよ
うもなく馬鹿なことを思った。
 自由な時間などないような仕事の合間を縫って、どれだけ逢瀬を重ねても。夜が明けたら、二
人は上司と部下の関係に戻る。けして許容されるような関係でも、環境でもないのだから。 <> 夜が明ける前の話4/5<>sage<>2009/10/01(木) 02:12:29 ID:NFZYSavT0<> 「麻輪くん」
 不意に、強く抱き締められる。抱きこまれた腕の中、心臓の鼓動が響いて伝わる。
「辛い?」
 静かな声が、降ってくる。
「何がですか」
「この、関係」
「……幸せですよ」
 ずっと離れた年齢、男同士、上司と部下。恋愛になるには、障害となるものが多い。子孫を残
すという本能に逆らう、不自然な関係ではある。
 それでも、惹かれ合わなければ良かったとは思わない。けれど、隠す関係に疲れないといえば
嘘になる。不安に思う日もある。いつだって、気軽に恋人として会えるわけじゃない。そんな関
係をを辛いと思う日だってある。当たり前だ。それでも、幸せだと、言える。 <> 夜が明ける前の話5/5<>sage<>2009/10/01(木) 02:14:50 ID:NFZYSavT0<>  年齢も、性別も、立場も。全て、この関係の枷にしかならない。けれど、一つでも違えばきっ
と出会わなかった。何か一つ違ったら、きっと惹かれることもなかった。
 辛いこともある。けど、辛いことしかないわけではない。
「そりゃ、不安になることもありますけど、でも、そういうもんですよ、きっと」
「そっか」
「はい」
「……もう一回、キスしていい?」
「どうぞ、係長の好きなだけ」
 唇が、近付いてくる。あと少しで触れるというところまで近付いたところで、
「好きだよ」
「俺も、です」
 唇が完全に触れ合う。深く長いキスの中で、不安に思う気持ちも、ただ名前を呼ばれるだけで
幸せになる気持ちも、全部全部届けばいい。そんなことを、麻輪は思った。 <> その後の二人<>sage<>2009/10/01(木) 02:16:22 ID:lvuOnVok0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 半生 織吐露酢の戌 先生×神の手
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  終了後。ネタバレ。エロありだがエロくない。
                         深刻ぶっててスマン。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> 夜が明ける前の話<>sage<>2009/10/01(木) 02:17:03 ID:NFZYSavT0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 年の差万歳。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
4/5、最後の行をが一つ多いです、すいません。 <> その後の二人1/6<>sage<>2009/10/01(木) 02:23:03 ID:lvuOnVok0<> 「ただいま」
 そう言ってドアを開ける瞬間はいつも少しだけ緊張する。
 僕が学校に行っている間に、兄−−流崎新司が、現れた時のようにふらりと、
消えてしまうのではないかという不安が胸を過ぎるのだ。
 「ああ」
 聞こえてきたその声に今日も安心しながら靴を脱ぎ、台所に入る。ダイニング
テーブルの椅子に片膝を立てただらしない格好で座っていた兄は、またいつもの
画集を広げていた。ギュスターブ・モローのそれは、兄が収監されていた部屋に
張られていたポスターの絵も収録されている。牢獄に絵画という不似合いさから
記憶に残っていたその絵を誰が描いたのか、特徴的な画題でもあり調べるのはそ
んなに大変なことではなかった。
 「……メシにするか。腹減ってるだろ、量介」
 「うん。でもその前に軽くシャワー浴びてくるよ」
 「判った。その間に準備しておく」
 画集をパタンと閉じると台所に立って、作り置きしていたらしい夕食を用意し
始める。その音を聞きながら僕は荷物を置き、ジャケットを脱いでネクタイを外
し、脱衣場で服を脱ぎ、風呂場に入るとシャワーのコックをひねる。
 兄が戻ってきたのは唐突だった。でも思えば、それまでだっていつも、兄の登
場は唐突だったけれど。
 あれは事件が終わって半年経ってない頃だった。いつものように帰宅するとア
パートのドアの前に兄が立っていたのだ。
 「学校の先生ってのは案外帰りが遅いんだな」
 「……今日はテストの採点があったんだ」
 余りに平然としている兄に対して、胸の中にこみ上げるうねりのようなものを
表に出すのもはばかられて、僕もまるで当然のように−−まるで毎日そうしてい
るかのように、兄を部屋へと迎え入れた。
 それからもう半年が経つ。 <> その後の二人2/6<>sage<>2009/10/01(木) 02:25:37 ID:lvuOnVok0<>  シャワーを出て部屋着に着替え、ダイニングテーブルにつく。
 「別に毎日料理しなくてもいいよ」
 「ヒマだからな」
 テーブルに、味噌汁と白飯と焼き魚、おひたしが並べられていく。暮らして
みると兄は意外にマメだった。元々の性格もそうなのかも知れないが、刑務所
暮らしが長かったせいか、こうして「生活する」ということが楽しいらしい。料
理も最初はたどたどしかったが、昼間、料理番組などを見て研究しているらし
く、だいぶ上達してきた。
 二人揃って箸をつける。
 「……うまいよ。もう、僕より兄貴の方が料理上手いんじゃないか」
 「当たり前だ。俺はお前の兄貴だからな」
 「料理にそれは関係ないよ」
 こんなたわいのない会話に嬉しさが滲んでくる。もう一緒に暮らすようにな
って半年以上経つのに、まだ僕は目の前にこの人がいる奇跡に、心が震える。
 「でも、半年くらいで随分上達したよ。驚いてる」
 「……お前時々、ものの言い方が先生ぽくなるな」
 「先生だからね」
「あと、気づいてるか? お前、帰ってきてすぐは自分のことを『僕』って呼
んで、暫くすると『俺』に戻るんだ」
 「……そうだった? 学校では『僕』で通してるから、出ちゃうのかもな」
 答えながら、口元が緩む。僕はこんな風に、兄が僕のことを語るのが凄く嬉
しい。
 「『俺』の方がお前らしいのに。社会人ってのは色々あるんだな」
 兄も微笑む。今のところ兄は出て行く気配はない。働きに行く気配もない。
このまま家に居てくれれば、いい。いいというか、そうしていて欲しい。兄の
世界にいるのは「俺」一人でいい。混じりけのない独占欲で僕はそう思う。 <> その後の二人3/6<>sage<>2009/10/01(木) 02:27:36 ID:lvuOnVok0<> 別に兄は働く必要もない。うちに居付いて暫く経った頃、「そう言えば」と言
って兄は通帳を投げて寄越した。「お前が持ってろ」 流崎新司名義のそこには
億近くの金が入っていた。「坂木や佐波村に言われて何人か治したことがあった。
その報酬だ」 その額面に二の句が告げない僕に対して、面倒くさそうに説明す
る。「お前だって、あの力を上手く使えばそれくらい稼げたさ」 シニカルな口
調でそう続けてから、ハッとしたように「忘れてくれ」と言った。
 一緒に暮らして判ったことは、兄のシニカルな物言いの奥に、とても純粋で
まっすぐな魂があるということだ。いや、僕はわかっていた。途中で気づいた。
もしかしたら、あの女刑事は僕より先に気づいていたのかも知れないと思うと、
今でも嫉妬を感じる。馳辺さんのお陰で流崎に――兄に会えたのだから感謝し
なければいけないとわかっているのだが。
 「そう言えば、この間学校に、あの女刑事さんが来たよ」
 食後の洗い物は僕の仕事だ。台所を片付け、酒の入ったグラスを、自分の分
と兄の分、二つ持って、居間に座り込んでジグソーパズルをやっている兄に話
し掛ける。
 「確か、兄貴が犬を拾ってきちゃった日だ」
 「……ああ」
 あまり面白く無さそうにうなずきながらグラスを受け取り、口をつける。
 河原で見つけたんだ、と兄が嬉しそうに子犬を連れて帰ってきたのは、先週
のことだった。このアパートでペットは飼えない。また捨ててこなくちゃ、と
いう僕に、兄はまるで自分が捨てられるような顔をした。結局、僕の実家で飼
っている。妹が可愛がるかと思ったが、父や母の方が夢中のようだ。
 「刑事さんは何て言ってた」
 「兄貴のこと、言ってたよ。行方は結局わからず仕舞だって」 <> その後の二人4/6<>sage<>2009/10/01(木) 02:29:37 ID:lvuOnVok0<>  「美緒のことは何か言ってたか。あの女刑事さんちの子供のことは」
 「ああ、熱を出してても遊びたがるぐらい元気で困る、とかって」
 「……そうか」
 兄が、フッと柔らかく微笑む。その笑顔が余りに美しくて見とれた。吸い込
まれる、ということが本当にあるのだ。神の力を宿すに相応しい清冽な美貌。
でも僕は、兄の顔は、神そのものというよりは、神のために一途に生きる巡礼
者のような面差しをしていると思う。それは兄が好んでよく眺める、あのモロ
ーの絵のような……。
 けれど兄が背負っていた十字架は罪などではない。いつだってそれは僕への
深すぎる愛で、その深さはそのまま、兄の孤独でもあった。
 兄を見つめている僕の目と、目が合って兄は、首を傾け少し目を伏せる。
 その頬に血が上るのを見て、あの時、龍国ダムの上で、いや、病院でも、ビ
ルの屋上でも、もしかしたら初めて出会ったあの独房でも感じていた衝動のま
まに僕は兄の首から顎へ手をかけ、口付けた。 <> その後の二人5/6<>sage<>2009/10/01(木) 02:31:30 ID:lvuOnVok0<>  兄の口内を埋めるように舌を入れる。
 「……ん、ふ……」
 兄のグラスをそっと取り上げ床に置く。キスを深めながら、兄の吐息を味
わう。
 声を出したほうが楽だよ、と教えたのは僕だ。兄は素直にそうするように
なった。
 いつ味わっても兄は恍惚の味がした。

 ベッドに腰掛けた僕の、開いた足の間に兄は納まって、舌を出して一心不乱
に兄は僕のものを舐めしゃぶっている。これは兄の気に入りの行為だった。思
春期に10年も独房にいたという兄が、いつどこでこんな行為を知ったのか、
或いは、知らないからこそ抵抗無く出来るのか、判らないが、何故か兄はこれ
をしたがるのだった。
 何かを待ち受けるように伏せられた兄の瞼の下、僕の大好きな、左眼の下の
ほくろを掠めるように、汗なのか涙なのか、水滴が滑り落ちる。髪は額に貼り
つき、美しい口の周りは濡れてべとべとだ。ペロリと赤い舌が出て唇を舐める
。瞼を開けて上目遣いに僕を見た。
 もう限界だ。兄を犬の格好に這わせて、覆い被さって後ろから貫く。
 僕の右手が兄の右手を包む。力をこめて、握る。
 「あ……っ、あっ、あ、あ、あ、……ん。りょう、すけ……あ、」
 「……兄貴……っ」
 放たれた犬のように、僕は一点を目指し突き進む。 <> その後の二人6/6<>sage<>2009/10/01(木) 02:32:54 ID:lvuOnVok0<>  兄は僕に生を与えてくれた。それも、何度も。なのに僕が与えられるとした
ら死だけだった。
 どうしたら埋められるんだ。
 兄が僕のために引き受けた孤独を。
 こうして瞬間の死と生を繰り返しながら、僕がどんなにあんたを愛してもあ
んたの愛の深さには届かない。
 なんであんたはそんなに僕を愛しているんだ。
 それを尋ねる替わりに僕は毎晩、兄を抱く。
 そして自分に問う。なんで僕はこんなにあんたを愛しているんだ。
 少しでも兄の愛を埋められるようにと、一心不乱に駈けていくこの道のりが
余りに果てしなくて、時々泣けてくる。
 獣の形に交わったまま、兄は絶頂を迎えた。僕も兄の中で果てる。
 半ば倒れこむように二人してベッドに体を横たえる。後ろから兄を抱きしめ
た体勢のまま僕の頬を涙が伝った。
 「泣いてるのか」
 僕は答えない。どうして気づいたんだ。声なんて出してなかったのに。
 兄が体の向きを変えた。こちらを向いて微笑む。指をそっとのばして僕の頬、
そして涙に触れる。
 「俺は、お前の気持ちが判るんだよ。……全部、伝わってるよ」
 「……」
 「……まったく、世話の焼ける弟だ」
 笑顔でそう言った兄の声が余りに優しくて、僕はとうとう声を出して泣いた。
  <> その後の二人<>sage<>2009/10/01(木) 02:35:44 ID:lvuOnVok0<>
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
初めての投稿だったので不手際ありましたらお許しください。
というか38さんスミマセン…。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/01(木) 10:21:32 ID:0iHD8DzC0<> >>38
わああああ係長の包容力たまらん!!!!
普通に二人の声で台詞が再生できたよ。この二人萌えるなあ…
gjでした! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/01(木) 11:13:26 ID:pn8J5TR+O<> >>44
GJ!GJ!
相変わらず先生には甘い兄に、兄貴がまたいなくなるんじゃないかと不安な先生…
最高でした
また書いてくれたら嬉しいです <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/01(木) 16:38:10 ID:ZxVW6IsAO<> >>44
ありがとおおおおおお!
萌え禿げた兄弟最高だ
迂闊にも今電車に乗りながらだったから
一人ニヤニヤして怪しい人だったよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/01(木) 19:11:29 ID:kBR0O+whO<> >>44
ああああ萌えた!ありがとう!!
二人ともお互いを好きすぎて禿げる
個人的に、最終回で兄の言った「世話のやける弟だ」が
めちゃくちゃツボだったから、最後に使われてて余計萌えた
ほんとにGJ!
次回作も期待…していいですか? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/01(木) 19:28:18 ID:pUz2G/tzO<> >>44
兄受け萌えすぎるっ
兄のご奉仕好きがまたまたたまらん。

またよろしく頼みます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/01(木) 22:33:33 ID:EpEY2gwW0<> >>24>>38
きたああああ!!!!
あんなに萌えがとっちらかってるドラマなのに
Q係の小説ってほとんど見かけないのでとても嬉しかったです!
ありがとう!! <> 風と木の名無しさん<><>2009/10/02(金) 02:26:02 ID:om8LetOz0<> >>24
>>38
Q係2連発 k t k r !!!!
係長と青年のこのムードが素敵。
主蒼主のリバカポーがハマりすぎて素敵。
どちらもありがとうございました!!!! <> どうしようもない<>sage<>2009/10/03(土) 01:25:43 ID:t8IK4+2i0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  Q係 主任×青山羊×主任
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  >>24の後日談。無糖。
 | |                | |             \ 
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> どうしようもない1/4<>sage<>2009/10/03(土) 01:29:26 ID:t8IK4+2i0<> 「あれって嘘だよな」
「は?」
 何の因果か、青山羊と二人っきりの昼休み。唐突な言葉に、村背は眉を顰めた。
「ほら、映画とかでよくあるじゃん。正反対で、喧嘩ばかりの二人が恋に落ちるって」
「ああ、確かに」
「けどさ、俺ら全然違うじゃん。ヤることヤってるけど」
「当然でしょう。気味の悪いこと言わないでくださいよ。……それとも、そういう関係になりた
いとでも?」
「んなわけねぇよ」
「それはよかった」
 青山羊の否定に、村背はシニカルな笑みを浮かべて言う。
「現実なんてそんなもんだよなぁ」
「ええ、現実なんてそんなもんです。――あるいは」
「あるいは?」 <> どうしようもない2/4<>sage<>2009/10/03(土) 01:32:01 ID:t8IK4+2i0<> 「本当に何から何まで正反対なら、あるいはありえるのかもしれません。僕たちと違って、ね」
 自分と青山羊の関係は、歪んだ鏡像のようなものじゃないかと村背は思っている。正反対のよ
うでありながら、似通った何かを抱える二人は、それゆえ強烈な違和感と反発を互いに抱く。な
まじ似通ったものがあるせいで、自分と違う部分が酷く鼻に付くのだ。
「ああ、そうかもな。何から何まで違えば逆に許容できるもんなぁ」
「だから僕たちは、そういう形に収まることはないんですよ」
 ただの同僚という立場から大きく踏み外した二人の関係は、綺麗な呼び名が付けられるような
ものではない。歪んだ鏡像同士のだらだらとした関係なのだから。
「ところで青山羊さん」
「あ?」
「あなたなら、どう呼びますか? この関係」
「あんたならなんて言うんだよ?」
「質問に質問で返すのは感心できる態度じゃありませんね」
「俺だけ言うって不公平じゃねぇ?」
「じゃあ、お互い“せーの”で言いますか?」
「ん、いいぜ。――せーの、」 <> どうしようもない3/4<>sage<>2009/10/03(土) 01:35:15 ID:t8IK4+2i0<> 「依存でしょう」
「依存だろ」
 同じ言葉で、二人はこの関係を呼んだ。嫌そうな、それでいてどこか愉しそうな顔で、二人は
肩をすくめた。
「ハモったな」
「ハモりましたねぇ」
 こういう似通った部分があるから駄目なのだろう。踏み外しさえしなければ、反発しあう同僚
以外の何者でもなかったのだが。
 踏み外した今となっては、反発しながら依存する、どうしようもない関係になってしまう。似
通う部分に苛立つから恋愛にはならない。その癖、似通う部分に甘えるから依存にはなる。救い
ようがないとはきっとこの関係を指すのだろう。
「どうしようもねぇな」
「まったくです」 <> どうしようもない4/4<>sage<>2009/10/03(土) 01:36:39 ID:t8IK4+2i0<> 「こーゆー関係がさ、一番タチ悪ィんだよなぁ」
「依存ですからね。恋愛のごたごたで犯罪犯す奴のほうが正常かもしれない」
「そんなのが刑事か」
「そんなのが刑事ですよ」
「どうしようもねぇな」
「まったくです」
 肩をすくめた青山羊はふと思いついたように、
「主任さん、今日暇?」
「事件さえ起きなければ」
「んじゃ、いつものところな。部屋取ったらメールすっから」
「了解」
 もうじき、昼休みが終わる。外で昼食を取った面々が戻ってくる声が、廊下から響いてくる。
 きっと、誰も自分と青山羊が単なる同僚と言う立場から逸脱しているなんて気付いてはいない
だろう。それが酷く、愉快だった。
「本当に、どうしようもないな」
 自嘲気味に呟いた声は、同僚たちの賑やかな声にかき消された。 <> どうしようもない<>sage<>2009/10/03(土) 01:38:55 ID:t8IK4+2i0<>  ____________
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 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ どうしようもない二人。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 03:12:58 ID:tKuFoXVi0<> >>60
gj!!!
この二人の何とも言えない空気が良いわー
見事に本人の声で再生される台詞使い、最高です! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 03:40:02 ID:93QlAFv10<> >>20-23
遅レスですが…

萌えたじゃねえかよこのヤロー!
絶対戻って来いよ酒ー!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 07:40:19 ID:7MPvNYbj0<> >>20-23
腰が砕けますた(*´д`) <> 赤僕/藤拓<>sage<>2009/10/03(土) 15:52:21 ID:7V3L68R30<> ・久々に読んだら辛抱溜まらんくなったのでやった。
・書きたい部分だけ書くので場面が突然変わります。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 赤僕/藤拓 1/5<>sage<>2009/10/03(土) 15:54:45 ID:7V3L68R30<> 人の告白になんて出くわしてもいいことはない。まして、実らなかったらなおさら。
拓也が次の授業の準備の為に渡り廊下を歩いていると、風に乗って藤井の声が届
いてきた。
曰く、俺、そういうの興味ないから。
いくら鈍い拓也であろうと、人通りの少ない渡り廊下近くの校舎の裏は場所柄告白
スポットとして多用されることは知っていたし、二人の姿は見えなくても、藤井のその
言葉の意味が何を意味するのかは理解できた。
藤井の言葉の直後、軽い足音が校舎の奥に駆け足で消えていく音が聞こえる。その
後、渡り廊下側に藤井の姿が見えた。藤井は頭をかいていたが、拓也の姿を見つけ
て目をぱちくりと見開く。
「榎木」
どきりとする。あんな場面に出くわしたのもあったし、偶然とは言え結果的に立ち聞き
してしまった罪悪感もあった。
「ふ、藤井君」
「どこ行くの」
「あ、えと、次の授業の教材を……」
「国語だっけか」
「う、うん」
中学生になり、藤井君は今までに増してモテるようになった、と拓也は思う。女の子に
呼び出されるなんてしょっちゅうであったし、同学年だけでなく先輩からの呼び出しも
あるようだ。
(藤井君かっこいいもんなぁ)
当然だよね、と拓也は納得しながらも、何でか抑えられないもやもやを抱えていた。
恐らく告白玉砕の場面に立ち会ったせいだろう。
「手伝うよ」
「え」
「あのセンセ、いつも教材多いだろ」
「あ、ありがとう」
藤井の靴は上履きだった。校舎の周りはコンクリートで固められており、数歩以内で
あれば土を踏むことはない。藤井はそのまま渡り廊下を伝って、南校舎へと入る。
(僕が聞いてたこと、知らないのかな) <> 赤僕/藤拓 2/5<>sage<>2009/10/03(土) 15:55:57 ID:7V3L68R30<> それとも誰に聞かれようが気にしないんだろうか。そうかもしれない。藤井君動じない
もん。負けず嫌いで兄弟思いで努力家だけど、やっぱり根本はクールなのだ。
告白の返事だって、「ごめん」とは言わなかった。
(興味……ないのかな)
拓也はまだ実でいっぱいいっぱいで、恋はよく分からなかったけれど、大人びた藤井
が興味ないというのは不思議に思えた。
(藤井君だって一加ちゃんとマー坊いるもんなぁ)
大変なのかな。大変だよなぁ。でも確かに恋にときめく藤井君のほうが想像できない
かも。そんな失礼なことを思いながら、拓也は藤井に半分教材を持ってもらって教室
へと戻る。
「なあ」
「ん、あ、何?」
「榎木ってモテるよな」
「ふえ!?」
「何だよ」
「え、だって」
何でそうなるんだろうか。先程まで告白されてたのは藤井君のほうなのに。
「モテるのは藤井君のほうじゃない?」
「んー、あのさ、榎木は告白されたら付き合おうって思うか?」
これ相談されてるのかな。真面目な拓也はううむと真剣に考える。拓也に現在好きな
女の子はいない。もう少し実が成長したら自分にも恋ができるようになるのだろうか、
と漠然とは思うが、現在は難しいだろう。
「付き合わないかな。僕、好きな女の子いないし。告白されたら嬉しいけど、きっと同じ
くらい申し訳ないと思うよ。応えられないもん」
「ふーん」
「藤井君は……」
どうなの、と聞こうとして拓也ははっと先程の場面を思い出した。興味ないんだっけ。う
っかり聞いてしまった。
「俺、好きな奴、いるから」
(えっ……) <> 赤僕/藤拓 3/5<>sage<>2009/10/03(土) 15:58:04 ID:7V3L68R30<> 「顔にすぐ出る」
「うわっ!ご、ごめん」
「いや、悪いこたねーけど」
(藤井君が……)
彼女を作る。先日まで小学生だった拓也にとって、恋人ができるというだけで大人な
気がする。小学生の時もあの子が好きこの子が好き、という話はあったけれど、結局
付き合うだとかそういう浮いた話はなかった。
告白したら、女の子は迷うことなく了解するだろう。何せ相手は藤井君だもんな。
「榎木」
藤井は教室へと入る前に、拓也を振り返った。
「応援してくれるか?」
「……うん」
藤井の恋を応援する必要があるのかは拓也には分からなかったが、にこりと珍しく微
笑んだ藤井に思わず首を縦に振った。もやもやは広がるばかりで、拓也はそっと胸を
押さえた。


□ 一時STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ココ、バメントブ!ギョウカン ヨンデクダサレ

「な、何でか分からないんだけど、でも何だか……」
拓也は必死にこの感覚を藤井に伝えようとする。制服のが皺になることも構わず胸を
掻き毟って、心臓を上から押さえるが言うことを聞かない。
「藤井君だけ大人になっちゃうみたいで、嫌なのかと思ったんだけど、」
藤井は黙って聞いていた。拓也の必死を笑うこともなく、受け流すでもなく、真剣な表
情で聞いてくれる。
「違うみたい、で……おかしい、のは分かってるんだけど」
でも、何だか、嫌なんだ。
何が言いたいのかめちゃくちゃだと拓也は思う。もやもやして、自分が汚いみたいで、
言いたいことも言えず拓也は目に涙を堪えた。

<> 赤僕/藤拓 4/5<>sage<>2009/10/03(土) 15:59:00 ID:7V3L68R30<> でも、何だか、嫌なんだ。
何が言いたいのかめちゃくちゃだと拓也は思う。もやもやして、自分が汚いみたいで、
言いたいことも言えず拓也は目に涙を堪えた。
「俺が誰かと付き合うのが嫌なんだな」
うん。拓也は頷く。
「俺が告白されるのも嫌なんだな」
うん。
「俺と遊べなくなるからか」
うん。
「それだけじゃないだろ、榎木」
え。
「俺のこと、好きなんだろ」
拓也が藤井の言葉に顔を上げると、藤井の顔がすぐ傍にあった。教室の西日を浴び
て左側半分を赤く染めた藤井の顔は、近距離で見てもやはり整っていた。
「藤井君、を?」
「そうだよ」
「だって、友達なのに……」
「見たこともない女にいつの間にか惚れてるよりは普通だろ」
「でも、僕、男だし……」
「偏見ある?」
そう言われれば、ない。黙り込んだ拓也の額に藤井はちゅっとキスをする。
「……え?」
「ラッキー。俺も、榎木のこと好き」
え?え?真っ赤になって西日のせいだけでなく顔を赤く染める拓也に、藤井は目を細
めて笑いかける。
「俺、告白しようと思ってたの榎木なんだぜ」
キスされた額が熱い。拓也はじわじわと上がる熱に、額を押さえた。まだ感触が残っ
ている。
「応援してくれるんだろ」
意地悪そうに笑う藤井の顔はやっぱりかっこよくて、拓也はうわあ、と口を押さえて机
に突っ伏した。 <> 赤僕/藤拓<>sage<>2009/10/03(土) 16:00:08 ID:7V3L68R30<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
・一個ナンバリングが余りました
・すごく…王道な感じです…
・楽しかったです。ありがとうございました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 18:57:55 ID:yFrVzo1b0<> >>69-74
うわわわわわ、今になって読めるとは思わなかった!!
ありがとう姐さん!
中学生ふじいくんかっこよすぎるんだぜ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 19:49:16 ID:ZbaEro5a0<> >>69
ああありがとうありがとう
胸につかえていたものがとれたようだありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 20:31:10 ID:EOARHq2v0<> >>69-74
萌え果てた… <> 契約<>sage<>2009/10/03(土) 21:03:40 ID:i0YC9oeV0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 半生 織吐露酢の戌 佐波村×先生
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  船に久万切殺しに行く前くらい。
                              エロあり。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

前に『その後の二人』を投下したものです。
今度は先生受…。 <> 契約1/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:05:50 ID:i0YC9oeV0<>  待たされた部屋の中は随分と暑かった。僕はジャケットを脱ぎ、出されたアイ
スコーヒーをとうとう全部飲んでしまった。舌の上に残る苦味に、かえって喉が
渇いてくる。
 契約に必要だからと言われ持参した印鑑ケースを手の中で転がしながら、居心
地の悪い思いをしていると、ノックも無く唐突にドアが開いた。
 「失礼しました、仕事が長引いて」
 「いえ……佐波村さんもお忙しいでしょうから」
 現れたのはヒョロリとした長身に無精ひげ、収まりの悪い癖っ毛に、ノーネク
タイとラフな佇まいに、得体の知れない笑みを浮かべた男。警察庁警備企画課の
佐波村理事官だった。
 椅子から立ち上がって軽く一礼する。
 「ああ、座ってください」
 佐波村は少し芝居ががったしぐさで椅子を示してそう言い、自身は僕の斜め前
に座った。小会議室といったところか、8客ほどの椅子が長机を取り囲んでいる。
その角に僕たちは座っていた。
 佐波村は持ってきたプリントを広げた。そこには、「業務委託契約」と書かれ
ている。
 「この間も少し説明しましたが、折角、あなたが、その力を国家のために有効
に使おうと決心してくれたのですから、善は急げです。我々警察庁警備企画課と、
正式に業務委託契約を結んでいただこうと思いましてね。煩雑だが、必要な事務
手続きです」
 「……」
 「それが済めばあなたの力は我々が管理することになる」
 僕が『悪魔の手』で行ってしまった何件もの殺人。
 だが、この国の法では僕の罪は立証しようが無いという。
 自分のこの途方も無い力を軽はずみに使わないよう、散々悩んだ末、権力の管
理下に置こうと、佐波村のもとを自発的に尋ねた。 <> 契約2/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:07:24 ID:i0YC9oeV0<>  どこか得体の知れないところのある佐波村を、心から信頼した訳ではない。だ
けど職務には人一倍熱心だとは感じていた。
 「さて、簡単に契約書の内容を説明しましょう。あなたの場合、まずは短期で
の契約になる。請け負って頂くのは、その才能を生かした“殺人”ということで、
この業務目標の達成過程において……」
 殺人が業務の達成目標なのかと、シュールな言葉の組み合わせに乾いた笑いが
浮かびそうになる。佐波村の、とうとうと淀みない説明を聞きながら、たとえで
はなく、少し気が遠くなってきた。この部屋が暑すぎるせいかもしれない。或い
は風邪だろうか。
 「それから、この第14条の、あなたの能力による成果の帰属先ですが、これ
は警察庁、ひいては国家ということになります。あなたが個人としてその能力を
行使することは今後無く、全ては上司である私の命令で行う。だから、その成果
について、個人的に悔やんだりする必要はなくなるわけです」
 『俺たちは駒なんかじゃない。俺たちはプレイヤーなんだ』
 流崎の顔が何故か思い出された。
 自分の力の使い方は自分で決める、と言い切った流崎。 
 僕はずっと自分がこの力を持っている意味を考えつづけてきた。
 流崎の力は奇跡だが、僕の力は、罪だ。
 国家の死刑執行人。多分、これがきっと唯一の僕の力の正しい使い道なんだ。
 佐波村が、契約書の最後、署名と捺印の欄を芝居がかったしぐさで指し示す。
 「さあ、どうぞ」
 僕はよどみなく署名し、捺印をすませた。
 「……これでひと安心」
 佐波村がにこりと微笑んで、握手を求めてくる。不思議と、この男が笑う時の
目は焦点が合っていないような気がする。或いはこちらを見つめているようで、
もっと違うものに目線を合わせているのか。
 朦朧としながらも、求められるままに差し出した右手をがっちりと握られたと
き、僕はこの男と契約してしまったのだという実感が湧いた。これで、良かった
んだ。自分に言い聞かせる。 <> 契約3/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:09:07 ID:i0YC9oeV0<>  「あなたは、恐らく今のところ世界にたった一人の、貴重な“兵器”です。さっ
きも言ったとおり、今後は私が責任を持って、あなたを管理する。あなたのその
能力も、あなた自身も」
 「……は……?」
 あまり説明が頭に入らない。気持ちが悪い。やけに動悸が激しい。それに……
何だか……。
 僕は座っている位置を少しずらした。
 「どうしました? ……これはいけない。顔が赤いな」
 「大丈……夫です。それより……トイレを、お借りできますか」
 立ち上がろうとして、ふらついたところを佐波村に支えられる。掴まれた腕が
妙に熱い。
 なんだこれは。全然身体に力が入らない。
 「おいおい、大丈夫じゃないでしょう! 随分具合が悪そうだ。ひとまず医務
室で休んだほうが良いですよ」
 「医務……室?」
 「案内しましょう」
 もはや、帰りたいと主張する気力さえもなく、僕は佐波村に抱えられるように
して立ち上がり、その部屋を出た。
 そして気が付けば医務室のベッドに横たえられていた。佐波村が妙に底光りす
る目で僕を見下ろしている。
 「あの、後は自分で……佐波村さんもお忙し……」
 「あなたは」
 硬い声に言葉を遮られて驚く。
 「契約したことを後悔していませんか?」
 「こう、かい……?」
 「私はね、心配なんです。あなたが流崎に唆されて、あちらへ行ってしまわな
いかとね」
 何を言っているのだろう。僕が流崎のシンパになるとでも?
<> 契約4/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:10:44 ID:i0YC9oeV0<>  「な、にを……」
 「だから、まずは私のものになって貰う」
 言いながら、佐波村が僕のシャツに手をかけた。一つ一つ、丁寧にボタンを外
していく。起き上がろうとするのに、身体が言うことを聞かない。
 「な……やめて下さい」
 起きていることの意味が判らない。
 「大丈夫だ。あなたはすぐに自分から欲しがるようになる」
 何が……何を?
 プレゼントの包み紙を開けるような顔で僕のシャツの前を広げた佐波村が、そ
の右手で僕の肌に直接触れる。
 びくり、と身体が反応して、自分が驚いた。なんだ、今のは。触られただけだ
ろう?
 「うん、だいぶ薬が効いてきたようだ」
 「く……す、り?」
 佐波村は口を小さく、くの形にして声無く楽しそうに小さく笑う。
 「何しろ触れただけで人を殺せる蒼井さんだ。無理やり事に至っては、あなた
の能力を身をもって体験する、なんてことに成りかねない」
 そこで、佐波村はかがんで僕の耳に唇を寄せた。吐息がかかり、僕は身じろぐ。
 「だから、あなたにその気になってもらうことにしたんです」
 そっと小声で囁く。
 あのコーヒーか。僕は悟った。
 胸に置かれた右手がいきなり乳首を弾いた。
 「ああっ!」
 自分でも聞いたことの無い濡れた声が出て、そのことにまた驚く。
 「いい反応だ」
 頭の働きが鈍っている今の状態でも、ようやく今自分がどんな目に遭おうと
しているのか、想像がついてきた。
 「やめ……止め、ろ」
 「うん? だから大丈夫。すぐにあなたの気は変わる。大体ここだってもう、」
 そういって佐波村は、デニム地の上から少し強く、僕の股間を揉んだ。
 「!」
 「……こんなだ」 <> 契約5/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:12:15 ID:i0YC9oeV0<>  ハハハ……と楽しそうに笑いながら、佐波村は僕のベルトを外し力任せに引き
抜くと、ジーンズの前を開け、僕の昂ぶった性器を取り出した。
 ダメだ。まったく、言葉が通じない。まるで笑顔で出来た仮面に向かって話し
掛けているようだ。
 何とか佐波村の手から抜けだそうと身をよじっていると、佐波村が僕の性器を
しごいてきた。
 「驚いたな。こんな、女みたいに濡らして」
 「ああ……っ、んあ、あ、あ、……」
 僕の身体が跳ねた。こんなに意識は朦朧としているのに、快感だけは針のよう
に鋭く、僕の全身を焼く。鼓動が、聞いたことのない大きさで全身を叩く。呼吸
はもう上がりっぱなしだった。
 ゆさ、とベッドが揺れた。佐波村が僕の両足ににまたがる形で膝をつき、見下
ろしてくる。目が合うと佐波村が獰猛な笑顔に口をゆがめた。
 「……普段はあんな、虫も殺さないような顔をして、それでいて万能の殺人者。
かと思うと、なんて乱れ方だ。実にそそられる」
 「だ……れのせい、だ……っ」
 「まあ、セックスなんて、娼婦が乱れるより淑女が乱れるほうがいいに決まっ
てる。楽しませてもらいますよ……“蒼井先生”」
 最後の呼びかけを僕の耳元で囁いたかと思うと、耳朶を噛んでくる。歯が肉に
食い込む感触で身体が竦む。ぴちゃぴちゃと舌が耳の周りを這いずる音が脳を犯
す。
 「ひ……あっ」
 佐波村の指が乳首をこねてきた。
 「立ってますね」
 そのたびに電撃のような鋭い快感が身体を苛む。
 「な……は、ふあっ、ア、ア、ア、ア……」
 「いい声だ。もっと鳴けばいい」
 指ではなく、今度は舌が右胸を這いずる。無精髭が胸に擦れて痛痒い。生温か
い舌に右乳首を蹂躙されながら、左は指で捏ねられ、間断の無い責めに身体が追
い上げられていく。 <> 契約6/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:14:14 ID:i0YC9oeV0<>  「も……や、やめ……」
 「簡単にはイかせませんよ。あなたが私に従順に従うようになるまでは」
 こんなヤツにこんな風に――という感情は、早くイきたい、という肉体の欲求
に、だんだん蹴散らされていく。
 大きな手のひらで体中を撫でまわされる。気持ち悪いはずなのに、許したくな
いのに、触られたところから、舐められたところから、染みるように快感が広がっ
て頭が真っ白に染め上げられていく。なけなしのプライドはとっくにへし折られ
て、のしかかられた体の重みさえも気持ちよかった。
 「あなたは私の兵器になる契約をした」
 佐波村が立ち上がっている僕の性器の根元をあぶるように柔らかくいじる。
 「は、……あっ、ああ、も……っ」
 「兵器は意思を持ってはいけない」
 そこじゃなくて、もっと別のところをいじって欲しいと思い、愕然とする。 
 「命令に忠実に、猟犬のように獲物をしとめる」
 「はあ……っ、あ……い……っ」
 少しずつ、佐波村の指が性器の先端へと上がってくる。僕の目はそこに釘付け
だった。
 「そのためには訓練と調教が必要だ」
 指が止まる。
 僕の顔を見て、佐波村が満面の笑みを浮かべる。
 「実に浅ましい、いい顔だ。私の犬に相応しい」
 そしてその指を僕の口に入れてくる。
 「しゃぶれ」
 押し込まれた指を、僕は受け止めて舌で捏ねる。口の端から唾液が溢れ、顎ま
で垂れていった。中の粘膜を指でなぞられ、そこからも脳が痺れるような快感が
生まれる。それは、これからされることの予行演習だった。もうそれでいいと、
思った。
 
 ジーンズと下着をいっしょくたに脱がされた。腹から、腿へと佐波村の手が滑っ
ていく。一番欲しい部分は放って置かれたまま。 <> 契約7/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:15:56 ID:i0YC9oeV0<>  「あ……も、もう……」
 「こらえ性のない犬だ。欲しければ自分で自分の腿を抱えるんだ」
 言われるままに抱える。
 「いい子だ」
 言葉と同時に、蕾の部分に何かが垂らされた。そのぬめりを借りて、ぐい、と
何かが入ってくる。指だ。
 「ア……ッ。や……いっ、うぁ……」
 自分の中を佐波村の指が探っている。痛いのに、もどかしいような鈍さが生ま
れて驚く。
 同時に乳首も舐められる。
 「ああッ」
 「中が動いたぞ。面白い」
 またザリと舐められる。その間に、指がもう一本増えていた。痛さで強張ると
乳首を責められ、快感に緩むと指が中を責める。身体が追い上げられたまま、前
は放置され、茂みがびっしょり濡れているのが自分でも判った。
 「ダ、メ……、も……」
 「まだだよ」
 自分の中を探られるのなんて初めてだ。そこがもう熱くて熱くて堪らない。中
の粘膜をさすられたり押されたり、そのたびに快感が炸裂した。
 「んっ……ああッ……」
 「そうだ。ここを覚えろ」
 だんだんと奥まで指が入っていく。
 「うアッ……!」
 そのとき、これまでとは違う、絞られるような激しい快感が全身を貫いた。
 また、同じ場所を佐波村の指がコリ、と押す。
 「ひ、……アアッ、あっ、あ……ッ」
 「凄いな、もうここが感じるとは。大した淫乱ですよ、あなたは」
 前を触られてもいないのに、射精していた。腰が動いて自分の中が勝手にうね
るのが判った。 <> 契約8/8<>sage<>2009/10/03(土) 21:17:23 ID:i0YC9oeV0<>  「出してしまったのか。お預けが効かないね」
 飛び散ったものが僕自身の頬も濡らしていた。それを佐波村が舌で舐め取る。
 「だが私もそろそろ限界だ」
 指が抜かれ、そこに、もっと太いものが押し当てられていた。あ、と思う間も
なくそれが入ってくる。指とはまったく違う圧迫感に身じろぐ。
 両腿を抱えあげられた。殆ど真上からというぐらいの角度で、中に何度も打ち
付けられる。
 「ああ、んあっ、アアアッ、……」
 凄い声が聞こえるとどこかで思ったが、それは自分のものだった。AVの中で
女優が上げるような声を自分が出している。でも止められない。身体の反応とし
て出てしまうのだった。
 さっき一回イったのに、もう前が張り詰めてきている。打ち込まれて奥を突か
れ、イイ部分を擦られて、僕の身体の全ては佐波村に良いようにされていた。
 「欲しい、だけ、与えてやる……っ」
 佐波村の声も興奮して、かすれていた。体勢を変えてまた違う角度から突か
れる。繋がったところが熱くて熱くてたまらない。溶ける。
 一際強く突かれる。
 「……ッ」
 もう喉が限界で、声も出なかった。
 中に濡れた感触がして、そのまま出されたのだと判った。
 「今日から、あなたの飼い主は私だ」
 その言葉を聞きながらもう一度僕はイった。


  <> 契約<>sage<>2009/10/03(土) 21:20:06 ID:i0YC9oeV0<> ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
もし行為に矛盾があってもスルーでお願いします…。
それにしても先生は泣き顔が似合う…。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 22:05:01 ID:GbuhAFKiO<> >>78
やばい!ありがとうーー
萌えまくりです!

先生見てると虐めて泣かせたくなるのは泣き顔がエロいからですねw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 22:23:50 ID:Cl/Zz/7MO<> >>78
佐和村×先生キタコレ!すごい読みたかったので嬉しいです〜。エロいすなぁ…
関係ないかもですが戌スレ637ですた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 22:36:49 ID:c6jUP3ooO<> >>78-87
萌えました。
淫乱先生最高!!

またお願いします!!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 23:04:13 ID:xhYxUYjv0<> >>78
萌えたっ!!
行為中泣いちゃってるんだろうなーとニヤニヤしましたよw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 23:16:06 ID:sIbxgdP/0<> >>78
素晴らしい主従ですね
佐和村×先生が1番好きだから嬉しい
萌えありがとう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/03(土) 23:36:39 ID:JlBY4xzB0<> >>78
萌え死んだ(*゚∀゚)=3ハァハァ
ありがとうありがとう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 00:58:34 ID:HQW3aXHg0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  マイナーですが、本スレの声に本気になってしまった馬鹿もんです。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  将/棋棋/士の山崎→羽生?っぽく。ヘタレ攻めと天然受けっぽいかもです。生なので御注意下さい。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 棋士の山崎→羽生?1/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:00:09 ID:HQW3aXHg0<>

これは…


その眼鏡の存在に誰よりも早く気付いたのは、山崎だった。
棋士しか立ち入ることの出来ない休憩室の中央を陣取る
テーブルの上にそれは置いてあった。
どうやら、誰か忘れ物の様だ。
だが、本日は、此処、東京将/棋会館は、タイトル戦の解説会場となっている為、
棋士の出入りが激しいのだ。
となると、益々、この眼鏡が誰のものかが分からない。
何せ、棋士の眼鏡率はかなり高い。
山崎自身も掛けているし、頭の中に浮かぶ先輩、後輩、同期の顔の多くにも
眼鏡はその存在の一部かの様に掛かっていた。

どうしたものかと、取り敢えず手に取って見る。
だが、特にブランドものという感じではない。
言ってしまえば、それは余りにも有り触れた形だった。
こうなれば最早、持ち主に全く見当が付かない。

誰彼と気兼ねなく話し掛けられるかと言われるとそうでもない。
仕方がなく、事務室の方へと届け出ることにした。 <> 棋士の山崎→羽生?2/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:01:02 ID:HQW3aXHg0<>

……でも、普通忘れるもの?


少なくとも、伊達眼鏡でもなければ、何処其処に眼鏡を忘れるということはないだろう。
視界が悪いことで直ぐに気付く筈なのでは。
そう思うと、届け出ている間に持ち主が慌てて帰ってくる可能性も捨てきれない。
再び、眼鏡を手に考え込む。
どうにも考え込むことは苦手だ。将棋以外で。


…って、此処で考え込んでること自体、おかしいぞ。


山崎は休憩室のドアを閉じた。
それと同時に、山崎の立っている休憩室のドアの
十数メートル先の辺りに誰かが立っていることに気付いた。


……あ…


直ぐに。本当に直ぐに分かった。
前人未到の七冠を達成し、それから十年以上経った今尚、トップを走り続けている男。
スーツ姿の羽生だった。 <> 棋士の山崎→羽生?3/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:01:41 ID:HQW3aXHg0<> しかも、眼鏡を掛けていない。持ち主は、あっさりと判明した。
今回のタイトル戦には絡んでいなかった羽生は解説会のゲストとして呼ばれていた。
山崎もそのことを知り、自身も絡んでいなかったにも関わらずやってきたのだ。

その羽生が、きょろきょろと辺りを見回していた。
眼鏡を探しているというよりは、視界の悪さに軽く立ち眩んでいるかの様に見えた。
届けないと、そう思い声を掛けようとしたが、ふと思い止まる。

ちょっとした好奇心が湧いたのだ。
いつも盤面で対峙している時には、あの様な羽生を見ることはない。
焦りさえも中々表情に出さず、鬼神と言われる程の強さにいつも圧倒されてしまう。
自分は自分で必死に対局を有利に進めようと必死で、
視線の先はいつも盤面ばかりで、滅多に羽生相手には向けられないのだ。 <> 棋士の山崎→羽生?4/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:02:18 ID:HQW3aXHg0<> その羽生が、軽く首を傾げ、ゆっくりと右腕を持ち上げた。
そして、人差指の横を軽く唇に挟み込んだ。


「……っ」


それは、良く見る仕草だった。羽生の癖なのだろう。
考え込む時の仕草だ。
だが、その良く見る仕草に、思わず息を飲んだ。
一瞬、色っぽさを感じてしまった自分に驚いたからだ。


…な、何を考えてっ…


今考えたこと全てを振り払うかの様に、慌てて頭を左右に振って、声を上げた。


「あのっ!眼鏡、此処です!」

「!」


その声にハッと顔を上げた羽生と目が合った。
それでも、その眉間には皴が刻まれていた。恐らく、ちゃんと見えていないのだろう。
だが、声から相手が山崎であることに気付いたらしい。
羽生が軽く会釈をしてきた。 <> 棋士の山崎→羽生?5/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:02:54 ID:HQW3aXHg0<> 相変わらず、先輩後輩関わらず礼儀正しい人だと心の中で思いながら、山崎は歩きだす。
すると、羽生も此方へと歩き始めた。

一歩一歩、不思議なことに誰もいない廊下に二人。
その歩を進めて互いに近付く。
頭の中で、歩がと金に成る光景が浮かんでしまうのは職業病だろうか。


「……休憩室にお忘れでしたよ」

「どうも、済みません。ちょっと仮眠していたら、すっかり寝入ってしまった様で、ですね。寝惚けた壗、トイレに行ったらそこで気付いた所でした、えぇ」

「そうだったんですか」


互いに握手が出来る程の距離で立ち止まった所で、山崎の方から声を掛けた。
羽生が少し照れ臭そうに頭を掻きながら謝ってくる。
眼鏡が無いことで、羽生の長い睫毛も良く分かる。
伏し目がちになれば尚更に、それは綺麗に生え揃っていることに気付く。
<> 棋士の山崎→羽生?6/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:03:30 ID:HQW3aXHg0<> 触れてみたい。と思ってしまう。
直ぐに、何を考えてるんだともう一人の自分が制止を掛ける為、
何とか手を出さずには済んでいたが。
そもそも、大先輩を相手に何を考えてるんだ。失礼にも程がある。
馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。山崎は再び頭を軽く横に振った。


「……どうかしました?」

「いえ、何でもないです。それで、これを」

「あぁ、はい。有り難う御座いま……っ!!」

「!」


目測を誤ったらしい。眼鏡を受け取ろうと伸ばした腕が、眼鏡の横に抜けた。
その壗身体ごと倒れかけたのを、山崎は咄嗟に抱き留めた。抱き留めてしまった。
身体が勝手に動いてしまったのだ。心臓は、驚きの余り動きを止めかけた。
<> 棋士の山崎→羽生?7/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:04:53 ID:HQW3aXHg0<> 決して、棋士の中では低い方ではないが、身体の線は細く、思っていた以上に軽かった。
抱き留めた腕も、思わず背中を支える様に回してしまった。


「ははは、本当に…何度も、済みません」

「いやっ、いえっ……はい」


丁度、肩の辺りにあった羽生の頭が小さく揺れ、ゆっくりと持ち上がった。
山崎は、慌てて腕を外し、一歩下がる。
羽生は然して気にしていないのか、穏やかに笑った壗だ。


「眼鏡がないと、本当に駄目ですね、えぇ。気を付けないと」

「そう、ですね」


眼鏡をかけ直した羽生は、最後にフレームの位置を微調整した後、顔を上げた。
山崎は何とか返事をするだけで精一杯だった。
心臓はバクバクと高鳴り、指先は僅かに震えていた。 <> 棋士の山崎→羽生?8/8<>sage<>2009/10/04(日) 01:06:02 ID:HQW3aXHg0<>
「山崎さんは、これからどちらへ?」

「あ、タイトル戦の…解説会の方へ…」

「そうですか。僕は少し取材が入っているものですから、そちらを終えてから向かいますので、また後程」

「……はい」


だが、羽生は本当にあっさりとしていた。
そんな山崎の心境に気付く筈もなく、淡々とそう告げ、山崎の横を擦り抜けていった。
山崎はゆっくりと振り返す。


「………」


段々と小さくなってゆく背中。
対局室へと入ってくる時の気迫を背負ったものとは違い、何処か頼りない。
その背中を、先程抱き締めた腕に目を落とし、
山崎は溜め息とも安堵の息ともとれない小さな息を吐き出したのだった。

…盤外でも…十分強いんだ、あの人は…

ある意味、敗北の気分を味わった山崎だった。

−…END…− <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 01:11:36 ID:23uqcL1BO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
規制が掛かってしまい携帯から済みません。
羽生さんの指先をくわえる仕草はエロいと思います。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 19:35:15 ID:oF853zht0<> 私は67ですが、酒がこんなことになってしまって
涙が止まりません。
絶対戻って来てほしかったのに…
>>20-23さん、ショックは大きいと思いますが
お互いに折れないように、頑張って生きましょう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 20:26:01 ID:Rn1aFHN10<> 私は>>30で、はっきり言ってイニシャルJの政党支持ではないが、
>>20-23はおもしろかったし、昨日の今日なのでショックを受けた。

ご冥福をお祈り致します。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 20:31:21 ID:7vkOW0wLO<> ・ドラマ「双頭犬」の神×悪魔
・半ナマ注意
・エロしかない

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 双頭犬の神×悪魔 1/3<>sage<>2009/10/04(日) 20:33:34 ID:7vkOW0wLO<> 「ぅ…くっ…」
喉が渇いて、息苦しい。
拘束された右手から背中にかけて、そして足元にまでその抵抗感はじんじんと痛みすら起こしている。
肌蹴たシャツは汗で肌に張り付き気持ちが悪い。
皮膚すら脱ぎ捨てたくなる異常な熱さに、どうにかなってしまいそうだった。
露にされた腰から太腿を手の平で撫でる男を振り返って睨む力もない。
これは悪夢だと思いたかった。
「先生、声出せよ。俺達以外誰もいないんだ」
人を苦しめておきながら、その声だけは甘く優しい。
惑わされそうになる心を抑え、深く息を吐き耐えようとするが、突如、それが最奥まで押し入ってきた。
「んっ―――…!!」
叫びを上げそうになるのを自ら口を塞いで押し止めた。
「あぁ…こいつがいたんだったな」
ほら、と強く髪を掴まれ、目の前の肉塊と化したそれに歪められた瞳が見開かれる。
「こんな奴に遠慮することないんだぜ?お前が殺したんだからな」
「…っあ…ぐ」
呼吸が詰まり、膝ががくがくと震えだす。
この男は何故自分をここまで貶めようとするのだろう。
葵の両目には早くも涙の膜が張っていた。
流咲の腕から逃れようともがくが、自分の中に居座る存在が、意地悪く自己主張する。
「あ、ぁ…っ!」
中の肉を押し上げるような刺激に喉が小さく喘いだ。
弱々しく首を振り、葵は正気と悦楽の狭間で乱れた。 <> 双頭犬の神×悪魔 2/3<>sage<>2009/10/04(日) 20:37:33 ID:7vkOW0wLO<> 流咲はひどく満足そうに目を細めると葵の背中に覆い被さった。
「先生のくせに馬鹿だなお前…そうやって簡単に人を信じるから、こんな目にあうんだ」
耳元で吐息と共に言い放った言葉にゾクゾクと背筋に甘い痺れが走る。
体の力が抜けそうになったが、慌てて力を入れ直す。
「お、まぇ…最低だっ…!」
ありったけの意地で毒づくと、流咲は予想していたように口端を上げ、前に手を伸ばした。
「はっ、こんなにしておいて言う台詞じゃないな」
指先が触れ、葵は熱の籠った息を吐く。
流咲の触れた場所がひどく熱く、異常な熱と快感に葵は戸惑い、恐怖した。
「やっ…あぅ…」
「男に抱かれて、死体に見られて喜んで…先生は最低の変態野郎ってわけだ」
嘲け笑い、耳朶を甘噛みする。
「っ…!!ぁ、も…やめて、くれ…!」
何の感情に起因して溢れたのか判らない涙がぼろぼろと頬を伝い、冷たい床に落ちていく。
追い詰められた悲痛な声が、肌を通して伝わる。
その姿は、子供の駄々のように幼く脆かった。
暴けば容易く壊れてしまいそうなそれが、流咲にはひどく愛しかった。
流咲は苦笑すると、髪や項に口付けを施した。
不意に落とされたそれに葵は小さく肩を震わせるが、温かい熱に一瞬、甘い疼きを覚えた。
幼子を愛しむような優しい動きに、胸の奥まで締め付けられる心地がした。
騙されるつもりは微塵もない。きっと体が正直なだけなのだ。
<> 双頭犬の神×悪魔 3/3<>sage<>2009/10/04(日) 20:41:30 ID:7vkOW0wLO<> 「あっ、流咲っ…嫌だ…あ、うぁ…」
泣き声を上げながら、自身を扱く彼の手を抑えるが、
もとより満足に抵抗できるだけの力は奪われており、逆に同調するように揺らぎだしていた。
浅ましさに吐き気がした。
「…嫌?嘘はいけないな…」
粘着質な音を立てながら、最奥へと攻め上がるその熱に、もはや理性は滅していた。
「…んんっ、はぁ、ぁっ…」
「ほら、本当は欲しいくせに…先生は素直じゃない…」
「ひ、ぅ…流、咲…っ」
前後を同時に攻められ、葵は床に頬を押し付けたまま、揺さぶられるたび嗚咽のように喘いだ。
息もつけぬような突き上げが、一際大きく、葵を揺さぶった。
「あ、あぁ……ッ!!」
背筋まで貫かれるような刺激に、葵は喉を仰け反らせて悲鳴を上げた。
吐精感と共に、自分の内部にも流咲の熱がじわりと流れ込むのを感じて、体が二度痙攣した。
自分の上げる声すら耳からは遠く、目蓋に閉ざされた視界は真っ白に染まり、そのまま意識を手放した。

「良介…」
力の抜けた葵の体を抱き締め、消え入りそうな掠れた声で呟きながら、
涙で濡れた目元に慈しむように何度も口付けを落とした。 <> 双頭犬の神×悪魔<>sage<>2009/10/04(日) 20:44:09 ID:7vkOW0wLO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

初投下なんでえらい緊張しました。
ヤッてるだけの糞SSですが、少しでも喜んでいただけると嬉しいです。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 21:23:25 ID:r/65/HQK0<> >>106

ももももも萌えたー!!! gj! gj!
鬼畜でもやっぱり弟を愛してる兄なのがいい。
弟を愛してるのに、でもやっぱりひどいことしちゃうのがまたいい。
「先生のくせに馬鹿だなお前」が良かった!
エロも堪能した〜!

ついでに、このスレ開けたとき、
まさに『光り一つ』をかけていた自分gj! <> その後の二人 リスペクトver<>sage<>2009/10/04(日) 22:11:04 ID:wpYw/+S70<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     | 630さんのその後の二人にリスペクト
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  設定そのままに後半のみ逆転
                          ほんとに801のみ・・・
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> その後の二人 リスペクトver 1/4<>sage<>2009/10/04(日) 22:17:03 ID:wpYw/+S70<> 「良輔…」
背後から抱き寄せられて一瞬体がこわばる。

何度肌を重ねても、もの慣れないその様子に
流咲は微かにほほ笑む。


首筋から顎に向かって唇を這わせながら
器用にシャツのボタンを外し始めた兄の手際の良さを
何処か冷静に感じつつ、それとは裏腹にジワジワと
湧き上がってくる己の欲望が良輔の中で葛藤する。

(耳元で囁かれるだけで体の芯が疼くなんて…)


・・・結局はいつも流咲の意のままに
流されて行ってしまうのだけれど。
<> その後の二人 リスペクトver 2/4<>sage<>2009/10/04(日) 22:18:25 ID:wpYw/+S70<> 流咲のしなやかな指が
良輔自身に優しく時にせわしなく纏わりつく。

反対側の指が良輔の唇をたどり
口の中に差し入れられると
ねぶるようにかき回す。

そして唾液まみれになった指を
そのまま良輔の秘所にズブズブと納めていく。

「…あ…ああ…ん…」

前後を責められ良輔は身も蓋もなくただ喘ぐ。


「良輔…感じているんだろう?
ほら、ここはもうこんなに…」

「…ッあ…ふ…」

「こんなにあられもない先生の姿を
生徒達が知ったら…どんな顔をするか…」

「…そんな…こと…ッ!」

「…バカだな、言いっこないだろ…?」
<> その後の二人 リスペクトver 3/4<>sage<>2009/10/04(日) 22:20:19 ID:wpYw/+S70<>
流咲の愛撫は優しい。

どんなに手荒に扱っているようでも
決して良輔を傷つけることは無い。

ただ言葉でも責めたてられ
良輔は涙を流しながら快楽の波に溺れそうになる・・・

「…あ…兄貴…もう…」

「もう…何? やめて欲しい?」

この期に及んでまだ焦らす兄に
良輔はうるんだ瞳で訴える。

「お願い…兄貴が…欲しいんだ…」

良輔をみつめる流咲の瞳が
微笑みを深める。

「おいで」

そう言うと仰向けになり良輔の腰を抱えると
自らを彼の秘所にあてがい腰を沈めさせた。

「…ッ…あッ!…ああッ…」 <> その後の二人 リスペクトver 4/4<>sage<>2009/10/04(日) 22:26:46 ID:wpYw/+S70<> 充分に馴らされたそこはなんなく流咲を根元まで咥えこんだ。

その段階で完全に理性を飛ばした良輔は欲望のままに腰を振りたてる。

「…良…輔…」
「…んッ!…んッ…う…ッ!」

良輔の動きにあわせ、自らも腰を穿つ。

快感にのけぞる良輔。
虚ろに開かれた瞳からはとめどなく涙がこぼれ落ちている。

「あ…ああ……もう…あ… あッ…!!」
「…うッ…!」

ひときわ大きな快楽の波に身をゆだね2人は同時に果てた・・・
ぐったりと流咲に倒れこむ良輔。

そんな良輔の両頬を包み込み引きよせそっと唇を重ねる。

「…愛してる…」

それはひっそりとした告白。
その時すっかり我を失っているように見えた良輔が
うっすらと瞳を開けた。

「…知ってる…。 でなきゃ、抱かれたりしない。」

そのまま気を失った良輔を抱きしめ流咲もまた瞳を閉じた。
ひとすじの涙とともに。 <> その後の二人 リスペクトver<>sage<>2009/10/04(日) 22:28:50 ID:wpYw/+S70<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
630さんの作品にあまりにも感動したのですが、これで逆なら・・・(TT)と思って
ついリスペクトw(パクリともいう) お気を悪くなさったらごめんなさい・・・
乙女な2人でお粗末さまでした〜〜 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 22:35:59 ID:HHuKCzXhO<> 里予9(ナマ)
同ポジの年下×年上
のはずが限りなくオリジナルに近くなりました…
携帯から失礼します

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 22:36:36 ID:HHuKCzXhO<>
ああ、腹立たしい。


「元気?」

呼んでもないのにどかどかと家に上がり込んだ彼は、当たり前のようにソファに座る。
どうせまた己の欲求の為に来たのだろう。分かっていて、どうしていつも追い返せないのか。こんなヤツに愛なんて抱いた自分が腹立たしい。
だいたいこいつは去年結婚したばかり。僕なんて要らない存在だろうに、早く捨ててほしい。
――拒む一方で、行為の最中に囁かれる甘いことばに酔ってしまいたいと、密かに思う自分も腹立たしい。

「何の用。」

「分かってるくせに。」

「………やだ。」

帰ってくれ、と腕を掴むとその手ごと引き寄せられ、ソファに押し倒された。

「ええやん。どうせお互い割り切った仲やろ?」

首筋を這う舌に、漏れそうになる声を堪える。
そう思うならいっそ捨ててくれ、叫びたいのを抑え、彼の舌から逃れようと身をよじる。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 22:38:19 ID:HHuKCzXhO<> 「じっとしといてよ。」

「やだ……っ帰れっ…」

「とか言うて、いっつも最後は悦んでんねんな?」

「……違…っ」

なにが違うの、と彼は話し続ける。
「嫌ちゃうやろ、気持ちよくなれんのに。」
冷たい瞳に僕が写った。

「さっき『割り切った仲』言うたけど。アンタは俺に本気になってるって、気づいてないわけないやろ?」

「…………!」

くくっ、と喉の奥でいかにもおかしいと言うように笑う。
「こういうときくらい、『好き』って言うたるやん。」

やから、今まで抱かれてたんやろ?
見透かされた心のその部分を、瞳と同じくらい冷たいことばがえぐる。
服の裾から侵入する大きな手に体が反応した。
ほら、と面白そうな彼の笑みをもう見たくなくて、ぎゅっと目を閉じる。

嫌いだと言ってしまえたらいいのに。殴りつけてしまえたらいいのに。今日もまた自分に嘘をついて彼にもてあそばれる。全部、全部腹立たしい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 22:39:42 ID:HHuKCzXhO<> お目汚しすみませんでしたm(_ _)m
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 23:04:46 ID:LntxPaBw0<> >>106>>112
GJ!GJ!
神×悪魔2連発ktkr!!
先生は多少強引に攻められてるとやっぱ萌えるな <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/04(日) 23:33:26 ID:V/9htRGkO<> >>106>>112鬼畜と甘甘、両方おいしく頂きました。ごちそうさま!
>>112の先生の「兄貴が欲しい」には一気に毛根が死滅しました。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/05(月) 03:13:12 ID:jqjsYxCa0<> >>106>>112
ありがとう、萌えをごちでした(−人−)
>>106のことがあっての「あんたの愛は深すぎる」だと思うと…_| ̄|○ノシ


<> 兄と弟とパンツ<>sage<>2009/10/05(月) 03:43:24 ID:J7w5eoKh0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  修羅パソツシリーズの弟×兄
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  生&素人&動画ネタ注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ココデイイノカ?
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

再視聴したら笑いより萌えが勝ってしまった。電子レソジ辺りまでの設定で。 <> 兄と弟とパンツ1/4<>sage<>2009/10/05(月) 03:43:56 ID:J7w5eoKh0<>  某月某日、俺がオンライソゲームのデータを消されてイカレちまって、
最終的にケツにリモコソまでぶっ挿したスティーブン=兄貴をY○uTubeにうpしてから、
俺達兄弟の関係は変わっちまったんだ。良いか悪いかはさておき。
件の動画の再生数は数日で300万を突破して未だにその記録を伸ばしてる。
兄貴のスケールはアメリカだけじゃ収まらなかったらしくて、
極東じゃ修羅って崇められているっていう話も聞いた。
仏教のことはあいにくさっぱりなんだけど偉い神様らしいよ。
兄貴のわりにクールなあだ名が付いたもんだよね。

その後も件の動画に拗ねて木に登る兄貴とか、
ゲーム内でパーティに裏切られて(裏切ってたの俺だけど)発狂する兄貴とか、
誕生日プレゼソトをバットで破壊する兄貴とか、
親父のギター弾いてたのを下手だって煽ったらジミヘソが乗り移って
ギター破壊する兄貴とか、壊れかけの電子レソジにブチ切れて
いらない電子レソジを家から投げ捨てろな兄貴とかを配信し続けた。
まあやりすぎたと思ったこともあるが反省はしてない。

ゲーム廃人で年がら年中無機物に当り散らす兄と、
中身は兄の数倍クソだが無機物にぶち切れたりはしない俺。
両親の中での俺達の扱いの差は明らかで兄貴は相手にもされてない。
そんな兄貴と俺が喧嘩したらどうなるかってことだ。
理由なんて覚えてるのも馬鹿らしい、兄弟ゲンカなんてそんなもんだ。
くだらない理由で熱くなって、一瞬だけど殺したいって思う時だってある。 <> 兄と弟とパンツ2/4<>sage<>2009/10/05(月) 03:44:37 ID:J7w5eoKh0<> 「ジャック、お前は本当にクソだよ!」
「じゃあどうにでもすればいいじゃないか」
「お前みたいなバカでどうしようもないクソ野郎をどうしろってんだよ」
「スティーブン、わかってるだろ」
「ジャック、黙ってろよ」
「俺を機能停止させればいいのさ」
「黙れ」
「スティーブンなら簡単だろ、俺を殴ってのせばそれで終りだ」

カチンと来た兄貴がベッドに俺の体を押し付けて力を掛けてくる。
力じゃちょっと分が悪いがここまできて引くのも男らしくない。

「パーティで兄貴裏切ってたの俺だぜ、殺してやるって言ってたよな?」
「言ってない!」
「ギターで頭ぶん殴ったっていいさ、レソジみたいに庭に放り出して叩きのめせよ」
「ジャック、そのクソみたいな口を今すぐ閉じろ!」
「……やれよ!腰抜け」

賭けのつもりだった。今までのところ兄は人に手を上げたりとかはしてないが
実際本気で怒らせたらどうなるかなんてわからないものだ。
握り拳が振り上げられた時は流石に構えたが兄貴は一向にその拳を下ろせなかったのだ。
これは形勢有利だなと見て兄貴の下からなるべく穏やかに抜け出して、
逆に兄貴を急所を握ることに成功した。兄が目玉をひん剥いてこっちを見た。
どうして急所を握ることになったのかは俺自身もわからないが、まあその場の勢いだ。 <> 兄と弟とパンツ3/4<>sage<>2009/10/05(月) 03:45:12 ID:J7w5eoKh0<> 馬鹿さ加減は世界中に知られている流石の兄貴でも急所を人に握られて暴れるほど馬鹿じゃないみたいだ。
お互い引くに引けないというか動くに動けない状態になってしまって
手持ち無沙汰で兄貴の急所いじってたら固くなりだした。
これまた予想外の展開だ。兄貴の行動が俺に予想出来た試しはないけど。

「弟に握られて何勃ててんの」
「勃ててない」
「腰動いてるよ」
「動いてないっ」
「学校でホモだって言われてるの否定できないよね」
「……っ、う、うっ」
「リモコンじゃなくて俺の挿してみようか」
「やだ……フッ、ウ、ッ」

あれこれやり取りして反論も出来なくなった兄貴が戦線離脱して
途中でブランケットをかぶっちまったもんだからもう腰の動きしかわからない。
ブランケットを通してAhとかOh...とかFuckとか呻き声が洩れてきてるから
中の兄貴の様子は想像に難くないけど。俺の手先走りでヌルヌルだし。

「来る、来る!ジャック、手ぇ離せ……」

余裕なく兄貴が叫んだ直後にびゅくびゅくと俺の手の中のモノが白い液体を吐き出したが、
兄貴は姿を現さない。ブランケットの中はどう考えても酸素が減ってて、
息を整えるのにも時間が掛かっている。余韻だけじゃ説明付かない声が引き続き洩れてる。 <> 兄と弟とパンツ4/4<>sage<>2009/10/05(月) 03:45:59 ID:J7w5eoKh0<> 「スティーブン、泣いてる?」
「泣いてない」
「顔見せろよ」
「いやだ」
ブランケットを無理やり引っぺがすと兄がびっくりした風に俺を見た。
案の定酸欠で顔真っ赤にして泣いてる兄貴がいて思わずにやけると
しばらく大人しくしていた兄貴がまた切れだす。

「今の撮ってないだろうな!」
「撮ってるよ」
流石に兄貴も学習してるのか、そっちの方まで頭が回るようになってきたらしい。

「どこだ、止めろよ!」
「無理、俺の頭ん中で撮ってる」
「消せよ……いますぐ」
「兄貴が俺を本気で殴ればすぐだよ?」

再び拳振り上げたっきり固まった兄貴にキスして覆いかぶさる。
何かあるとすぐ脱ぐから裸なんて見慣れてるけど意外とドキドキするもんだ。
キスして、キスして、キスして、キスして、キスした。
俺が着火して兄貴に再点火して、雪崩れ込むようにベッドに沈む。

父も母もまた兄貴が暴れてると思って多少の物音には目を瞑っていてくれるだろう。 <> 兄と弟とパンツ<>sage<>2009/10/05(月) 03:51:33 ID:J7w5eoKh0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
こんな時間にも関わらず弟兄妄想がノンストップ。
エロと言うかひたすら下コメディでしたが場所お借りしました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/05(月) 07:55:59 ID:D9iqkFUGO<> 94
姐さん待ってたよ
GJGJ!

王子、それ番外ちゃう…ただの天然や…!
しかもまんまと引っかかって、この後必死で挑戦までこぎ着けた訳ですね。分かります。

妖精さんも、あれだけ周りに危険が満ちているのに、この無頓着ぶりが流石すぎww
その癖エロすぎるから止めて、いや止めないでw

良い萌えをありがとう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/05(月) 09:10:04 ID:XXz9Xe3KO<> >>106>>112
ありがとう!
先生は虐められる姿が似合いすぎると思うんだ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/05(月) 09:33:23 ID:jvrGADefO<> >>103
ちょっと亀すまん
棋士ネタに遭えるとは。萌えました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/05(月) 15:08:30 ID:Zxos4zqK0<> >>112さん
あっちスレの630です。
気に入ってくださって嬉しいです。
しかも続編?まで!
自分はどうもあの後の部分が描けなかったので有り難うございます!
途中でリバ、あると思いますw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/05(月) 21:23:15 ID:ITVGxQDcO<> >>130
まさかこいつらに萌える日がくるとはwww
相変わらず弟の鬼畜さ半端ねぇ……
大変おいしゅうございました <> >>20-23<>sage<>2009/10/06(火) 00:32:38 ID:sFCs9ZqM0<> レスありがとうございます。
医療従事者から見て、「例の会見」は酒じゃなくて薬の副作用が原因だろ、と思ってたので
ナカガワ氏の再起を願って書いてみたのですが、今読むと冷や汗の出る内容でした。
もうこの件は封印します。失礼しました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/07(水) 00:00:09 ID:dG0z9MPYO<> >>112
美味しく禿げさせていただきました
流咲は精神的に受け受けしいけど、肉体的にはいつまでも先生の攻めでいてほしい願望がありますので大変萌えました
ありがとうございます <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/07(水) 03:57:47 ID:T5HQw5AsO<> >>129
弟兄とか大好物なんで大変萌えました
元ネタ知らなかったからぐぐったらこんな時間に25の大百科に爆笑した 明日ゆっくり見るわ
萌えと笑いをありがとう <> サニーサイド・アップ 0/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:04:35 ID:Y3NiJqCF0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  オリジナル、ややリアゲイ風味
                     |  ※「クソ」など罵倒語多め注意。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  エロぼかしまくりだけどハピーエンド
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> サニーサイド・アップ 1/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:06:03 ID:Y3NiJqCF0<> 特技は、一緒に寝た相手より朝早く目覚めること。
どんなに激しく疲れきったファックの翌日でも。
――これって結構大事だ、すくなくとも自分には。
今日も、それで無事起きられたわけだけど――
カーテン越しの日差しはもうそれほど弱くもなくて、おれの横にいる男の顔をやわらかく照らしている。
いい夢を見ているんだか、彼自身の目元や口元もやわらかく緩んでいて、
こっちまで伝染ってきてしまう。
その頬にそっと指を伸ばしかけ――途中でやめた。

――ダメだ。さっさと身支度したほうがいい。
ぬくぬくしたベッドから出て、そこいら中に散らばった服と靴を拾い集めて。
一晩だけのつもりの相手に
「まだいたのか?(もう用済みなのに面倒だ)」なんて顔されるのはまっぴらだ。
でも……そう、もう少しだけ。
だって彼はまだ目覚める気配がない。

昨日のファックは――思い出すだけで、体温が2・3度はね上がってしまいそうだ。
クソ、もういい加減がっついたティーンエイジャーって年齢じゃないってのに。
でも会ったばかりでお互いほとんど知ってもいないのに、
まるで恋に落ちた相手みたいに見つめあいながらの行為はかなりホットで、
正直いって自分でも過去最高の部類だった。
焦らしながら、なかなかくれないキスの駆け引きも、
それでいて身体じゅう惜しげなく与え合う愛撫も。 <> サニーサイド・アップ 2/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:07:19 ID:Y3NiJqCF0<> ストロベリー・ブロンドの髪に同系統の眉、濃い睫。
スイマータイプの、手足が長く引き締まった身体。
白い肌なのにソバカスは少ない。刺青もなし。
それがかえって、いまどき滅多にありえないくらいゴージャスだ。
耳のピアスすらひとつも無いなんて、もしかしたらアレルギーとかあるんだろうか?
――まあそうだとしても、この先彼について何か知る機会はないと思うけれど。
それってすごく、残念だけど。

そう思った途端、なんだか急に悲しくなった。
――だめだ、やばい。
ほんとにもう行かないと。
そっとベッドから抜け出し、そのまま服を着ようとしたが――
やはりシャワーを借りることにした。
いま自分を包んでいるはずの匂いは嫌じゃない。
でもこのまま外に出るのはマズすぎる。というかヤバいだろう。
自分の昨夜の発情っぷりが他人にもバレてしまいそうな気がする。

――ああ、クソ。
本当にどうかしてると思いながら、渋々自分のペニスに手を添える。
シャワーの中でなら、水音に紛れて没頭できる。
彼の目、声、息遣い、手の動き、唇、肌の感触、熱い量感、スプラッシュ――
何もかもが、まだ生々しい。
「――ん……」
あっけないほどたやすく、おれは昇りつめて射精した。
よりかかった壁の冷たさが心地よく、反面憂鬱なほどのけだるさが身体に残った。 <> サニーサイド・アップ 3/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:08:25 ID:Y3NiJqCF0<> 髪を乾かすのもそこそこに、おれは身支度を整えた。
部屋を出るまえに念のためと、ジーンズのポケットを探って――
自分の部屋の鍵がないのに気がついた。
落としたなら脱いだ場所――寝室か。
服を拾ったとき、寝ぼけていて見落とした?

しぶしぶ、おれは寝室へととって返した。
――戻りたくなんかなかったのに。さっさと出て行ってしまいたかったのに。
でも戻るだけの理由が出来て嬉しくもあった。
ああもう、ほんとうにどうかしてる。
はやいとこ鍵を探さなきゃ。彼が目を覚まさないうちに。
そう、彼が……。

おれはベッドの側に膝をつき、彼の寝顔をそっと見おろした。
生えかけた髭に触れてみると、思ったよりやわらかい。
体毛と同じように、生えていてもあまり目立たないほうなんだろう。
その頬、額、まぶた、そして唇に、おれは軽くキスをした。
大丈夫、彼はまだ眠ってる。

さてと、鍵だ。落とした鍵を見つけるんだ。
ベッドから背中を翻して、おれは寝室をはじめ居間、キッチン、玄関と、
床を隈なく眺めてまわった。
念のためバスルームもチェックしたが――それでも見つからない。
ソファにもなし。
――クソ、なんてこった。
時間が無駄に過ぎていくほどに、頭が痛んできそうだった。
あともう一度確かめておくべきなのは――ベッドか。
たしか昨夜そこでジーンズを脱いで放ったのだから、
ベッドのなかにある可能性はじゅうぶんだ。 <> サニーサイド・アップ 4/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:09:54 ID:Y3NiJqCF0<> ああ。
これでおれは彼が目覚めるのを待つ理由が出来たってわけ。
嬉しい――けど、嬉しくない。
恋人じゃない――友人ですらないのに鬱陶しいやつと彼に思われたら最悪だ。
ここを上手くやりすごせたら、まだこれから希望も持てるかもしれないのに。

いや、ちょっと待て。
これから? 希望って? 何のことだ。
おれは頭を抱えた。
ほんとうに頭痛がしてきそうだ。

――仕方ない。
おれは、鍵をいったん諦めることにした。
帰ったらすぐ管理人を捉まえて、スペアで開けてもらおう。
鍵の付け替えとか面倒なことになりそうだが、それもしょうがない。
ふうっと息をつき、おれは部屋を出ようと椅子から腰を上げようとした。

「おはよう」
背後からの声にすとんと力が抜けてしまい、おれは立ち上がることが出来なかった。
「――おはよう」
まだ眠たげにあくびしながら彼は近づいてきて、おれの頭にキスをした。
「ん……おれもシャワー浴びてくる」
いったん背を向けてから、
「悪いけどコーヒー淹れててくれる? 豆は戸棚に入ってるから適当に探して…」
と彼は付け足した。
おれがまだここにいることを意外に思っていないらしい。 <> サニーサイド・アップ 5/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:11:23 ID:Y3NiJqCF0<> ほっとしながら、おれは豆を探しあて、コーヒーメーカーにセットした。
そのブランドとかストックを見るに、彼はコーヒー好きらしい。
カップや食器はシンプルな白。
――以前の恋人とのことを思い出して、おれは少し懐かしくなった。
こんなふうに相手のことをちょっとずつ知っていくのは楽しい。
すぐ側にいなくても、ひとりじゃないって気分は久しぶりだ。

コーヒーメーカーがコポコポと音をたて、香ばしいにおいがキッチンを満たしはじめたころ、
彼がシャワーから戻ってきた。
「コーヒー、ありがとう」
服はトランクスを穿いただけ。髪はくしゃくしゃ、足元は裸足のまま。
でもさっぱりしたのか、生き生きした笑顔をまっすぐ向けてくるのがひどく眩しい。
「キスしていい?」
「…もちろん」
音をたてながら、唇に軽いキス。
石けんのそれに混じって、うっすらと柑橘系のアフターシェーブローションの香り。
――うん、悪くない。
まるではじまりたての恋人同士の朝みたいだ。
その考えにおれは顔を赤らめ、思わず彼から顔をそらした。
「どうかした?」
そう無邪気に訊く彼に
「なにも」とおれはごまかす。

「あのさ、ひとつ謝らなきゃならないことがあるんだけど、怒らないでいてくれる?」
と、おれの手をとりながら彼が言い出した。
急に何を?と思ったが――とくにシリアスな話しでもなさそうだ。
「訊いてみてから決めるよ」
すると、彼は悪戯っぽくおれの顔を見上げ、笑った。 <> サニーサイド・アップ 6/6<>sage<>2009/10/07(水) 08:13:08 ID:Y3NiJqCF0<> 「おれってすごく寝起きが悪いんだ。ほうっておくと丸一日眠っていられるくらい」
「そうみたいだね」
今朝の彼の様子を思いだし、おれは頷いた。
「うん。それで時々大事なチャンスを逃してしまうんだ」

「目覚まし時計を使えば?」
うーん、と彼は顔をしかめた。
「たとえば……昨夜みたいなセックスのときに目覚まし時計のことなんて考えていられると思う?」
ちょっとセクシーな笑いに口元を歪めながら、彼がおれの腰を引き寄せる。
素直にその膝に載り、おれは頭を左右に振った。
「ぜんぜん。あんな夜のあとでアラームで目覚めるなんて…好きじゃない」
「よかった――意見が合って」

キスを誘うようなまなざし――磁力で引き寄せられるみたいに、互いに顔を近づける。
もう、あとほんの数センチだけの距離。
音だけだった声が、息と響きに変わるあたり。
「だから、かわりに別の手を使うことにしたんだけど――」
チャリ…と、なにかがおれの掌に落とされた。
その馴染みの感触は、わざわざ見なくたって判る。
――鍵。
「これって上手くいったと思う?」


そのあとさらに時間がたって、冷めたコーヒーがすっかりまずくなったころ、
腹を空かせたおれとルークは冷蔵庫にあった卵を焼き、ベッドで食べた。
真夜中のサニーサイド・アップ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/07(水) 12:52:50 ID:AE0jjan20<> >>145
GJ!GJ!面白かったしほのぼのした。
この後も二人が幸せでいるといいな。
映画を見てるみたいだった。 <> エスコン5 チョブレ 0/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:34:48 ID:dDjyKRYT0<>  ____________
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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場所お借りします。
エスコン05 チョ×ブレ妄想です。
ブービーが想像以上に天然です。
内部事情は分からないので捏造ありですorz
ほのぼのエロなしです。
それで良ければ見てやって下さいませ。ドゾー <> エスコン5 チョブレ 1/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:36:14 ID:dDjyKRYT0<> ユーク軍の大規模な強襲揚陸部隊、そして何より最大級の脅威であったシンファクシを沈め、サンド島はユークの手に堕ちる事から免れた。
しかしそれでも、サンド島へのダメージはそれ相応のものが残ったのは言うまでも無い。皆が皆、復旧作業に追われていた。
そんな中、皆出払ってしまって人気の無い昼下がりの宿舎を、1人の青年がトレイを持って歩いて行く。
とあるドアの前で立ち止まり控えめにノックを鳴らせば、中から覇気の無い声が聞こえて来た。
「おーぅ、誰だぁ?入っていいぜ」
その返事にドアを開ければ、ベッドに酷くつまらなそうに寝転がる、1人の男の姿があった。
室内に入って来た青年を見て、微かに目を見開く。
「よぉ、ブービーじゃねぇか!どうしたんだよ」
「…見て分かるだろ?チョッパーのお見舞いさ」
そう言って青年…ブービー、もといブレイズは、手に持ったトレイを示してみせた。
<> エスコン5 チョブレ 2/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:38:18 ID:dDjyKRYT0<> チョッパーが体調不良で倒れたのは、サンド島防衛が終わってすぐの事だった。
戦いに継ぐ戦い、そして最大の猛威シンファクシを実質4機で倒さねばならなかった重圧と疲労が、ここに来てどうやら一気に噴出したらしい。
最も、祝勝パーティー終了までは元気だった所が、彼らしいと言えば彼らしい所でもあったが…。

「全く、情けないったらありゃしないぜ。あの位で俺がぶっ倒れちまうとはよぅ」
「仕方ないさ。誰にだって調子の悪い時はある。たまたま今回それが、俺達の中ではチョッパーだったってだけさ」
「ケッ、具合が悪いのも持ち回り制ですってか?カンベンして欲しいぜ」
「…あんまりいらつくと、また熱が上がるぞ」
「へいへい、隊長の言うとおり大人しくしてますよ」

モノの言い方こそ威勢は良いが、ベッドに収まるその姿は、ぐったりという擬音がまさにぴったり来る状態だった。
そしてそんな自分のコンディションにやきもきせずには居られないチョッパーの心情も、付き合いの長いブレイズには手に取るように分かる。
そして、分かっていたからこそ思う。

(やっぱり…アレは、精神的に相当きたみたいだな) <> エスコン5 チョブレ 3/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:41:01 ID:dDjyKRYT0<> 疲労よりももっと大きい度合いで、チョッパーを弱らせたのが…
彼自身の心である、という事を。
隊員の中でも人一倍人情や思いやりを持つ(そしてそれがたまに度が過ぎて、うざったがられる事もあるのだが)彼だからこそ、ハイエルラークのひよっ子達が目の前でシンファクシに喰われて行く姿を見て何も思わない訳が無い。
何も出来ずに見ている事しか出来なかった、酷く無力な自分達。
そして短い間ながらも、出会ったひよっ子達を可愛がっていたチョッパーの心情がどうであったかなど、想像するまでもない。
だから…せめて、こんな時位は少しの時間でも側にいてやりたいと思った。
それが例え、傷の舐めあいだと揶揄されようとも。
そんな事を考えながらも、ブレイズは持ってきたトレイから、一番大きな器を手に取る。

「昼飯、食べてないんだろ?作ってきてやったから」
ブレイズの言葉に、僅かに身体を起こす。
「おっ!?気が利くなぁ隊長」
言って、その手にある器を覗き込んだ。
「これ…なんだ?」
「あぁ、チョッパーには馴染みが薄いかもな。
『おかゆ』って言って…そうだな、こっちでいうオートミールみたいなものだよ」
「っていうと、具合の悪い奴に定番の、って事だな?」
「そう言う事。口に合うかどうかは分からないけど…とりあえず食べてみてくれるか?」 <> エスコン5 チョブレ 4/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:43:20 ID:dDjyKRYT0<> そう言いながら器を渡されると、初めは不思議そうに一匙分を口に含んだが、すぐに表情を変える。
「へぇ、なかなか上手いな!サムライ風オートミールってのも。
正直甘いのかと思って食ったから初めは驚いたが…うん、これはこれで美味い」
その言葉に、ブレイズの顔が綻ぶ。
味付けを、オーシア圏の人間にも馴染みのあるコンソメベースにしてみたのだが…当たりだった様だ。
「病人なんだから、無理して全部食べなくてもいいんだぞ?」
「何言ってんだブービー?
美味いと思ったもんを、わざわざ残す奴なんているのかよ?」
その言葉にブレイズは苦笑いを浮かべ、チョッパーの食事が終わるのを待つ。
「あ〜ぁ、これでカワイ子ちゃんが“あ〜ん”なんてしてくれたらサイコーなんだけどな」
ついでに口移しで薬なんか飲ませてくれたら昇天するぜ、という言葉を出しかけてすんでの所で飲み込む。
「…だったら、ナガセに頼むか?」
「ブービー、そんな事を頼んだら俺はあのお姉ちゃんにマジでぶん殴られるぞ」
「じゃあ、後は俺とグリム位しかいないな。
なんなら今、俺がやってやろうか?」
少しばかり悪戯な笑みを浮かべ、冗談で言ったつもりだったのだが。 <> エスコン5 チョブレ 5/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:45:21 ID:dDjyKRYT0<> 目の前の男が、一瞬固まった。
「ん…?どうしたチョッパー?」
「あ…ああいや、なんでもね」
もしかして冗談がスベったのか?とあさっての方向で考えるブレイズとは裏腹に、チョッパーは先程の自分のイメージが脳裏で鮮やかに自分とブレイズとで再現された事に酷くうろたえていた。
照れ隠し同然で、おかゆを大目に口に放り込みながら思った事は。
(やば…ちょっとだけ、シャレになんないかも)
そうこうして居る内にチョッパーの食事は終わり、気が付けば「食べられるなら」と控えに添えたデザートまで綺麗に平らげていた。

「この様子だと、すぐに元気になりそうだな」
「当ったり前よ。オイラがこんな所で何日もくすぶっていられるかい」
「そうか。それなら良いが…」

それは、突然の事だった。
ブレイズが椅子から立ち上がったと思ったら、自分の額に彼のそこをぴたりとくっつけたのだ。 <> エスコン5 チョブレ 6/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:47:50 ID:dDjyKRYT0<> あまりの事に唖然として、チョッパーはどうする事も出来なかった。
ブレイズの顔が数センチ、いや数ミリの距離で今、まさにそこにあった。
普段は気にも留めなかったが、こいつって睫毛長くて鼻筋も通っているんだな、とそんな事ばかりを考えてしまう。
(ちょ…何考えてんだ、俺!!)
1人心の中でドキマギするチョッパーの事など露ほども知らずに、しばらくしてブレイズは額を離す。
「まだ…熱があるみたいだな。一応熱さましも持ってきたから、飲んで置いた方がいい。ほら」
そう言って錠剤と水の入ったコップをチョッパーに手渡す。
「お、おぅ…ありがとよ」
「…?どうした?」
少し様子のおかしいチョッパーに気付いて、声をかける。
「アハ、アハハ…なんでもねぇんだ、うん!」
「…何かあるんだったら、遠慮せずに言ってくれて良いんだぞ?」
そう言って覗きこんでくるブレイズの顔のせいで、更にチョッパーの焦りが増した。
「いや、だから何でもねぇって!」 <> エスコン5 チョブレ 7/7<>sage<>2009/10/07(水) 22:50:30 ID:dDjyKRYT0<> その言葉に不思議そうな瞳を向けるが、無理に聞き出す事も出来ないだろうと判断するブレイズ。
「そうか?それなら別に良いんだ。
じゃぁ、俺もそろそろ復旧作業に戻るよ」
「あぁ、了解。昼飯と薬、ありがとな」
「いいって。とにかく…色々、無理しないでくれ。これは隊長命令、な」
「わかってるって」
「…それじゃ。下手にまたイライラして熱上げたりするなよ」
そう言って、空の器を載せたトレイを持ち、ドアを閉める際に、小さく笑ってチョッパーに釘を刺した。

また1人きりになった部屋で、乱暴にベッドに寝転がる。
さっきの事が思い出されて、顔に僅かに血が上ってきた。
(全く…次に熱が上がったら、ブービーのせいだからな)

そして…後日、今度はブレイズが倒れてしまったのは、また別の話。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 00:24:13 ID:ZxQJXE+b0<> >145
GJ! 禿萌えた。
寝る前に素敵な話を読ませてくれてありがとう。
いい夢見れそうだw <> コナソ・0<>sage<>2009/10/08(木) 01:44:58 ID:yRt4Id0V0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    | コナソの西×東+葉木原×待打が出てきたらしいよ
                    | (名前そのままです。すみません)
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  死にネタが入ります注意。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  ・・・
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )    
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

場所お借りします。
コナソ 西×東+葉木原×待打妄想です。
名前はありませんが、オリキャラが出ています。
死にネタが入っております。
直接的なエロはなしです。
それで良ければ見てやって下さいませ。 <> コナソ・1<>sage<>2009/10/08(木) 01:46:47 ID:yRt4Id0V0<> 「『ビル爆破! 犯人未だ逃走!!』?」
机の上に広げられたスクラップ帖に踊る文字が眼に留まり、何気なく平次は派手に装飾されたタイトルを読み上げた。
「ん? ああ、−−東都タワー爆弾犯の関連記事な」
なんやこれ? と問うまでもなく、読んでいた推理小説から顔を上げ、新一が答える。
「工藤んとこの高校が爆破されそうになったゆう、あれか」
「大分来ただろう?」
「そやね」
元の姿に戻ってから、新一は暇を見つけてはコナンの時に遭遇した事件の資料や新聞記事をまとめ、スクラップしていた。
曰く、事件を「江戸川コナン」の目線ではなく、「工藤新一」の目線から見てみたいから。
らしいといえばらしいような気もするが、巻き込まれた、並びに首を突っ込んだ事件の数が尋常では無いため、なかなかに終わりが見えて来てはいない。
「『爆弾解体作業に当たっていた爆弾処理班複数名が殉職。幸いにもマンション住民への被害は無し』」
幸い、という言葉の苦さに苦笑した。
勿論、この記事を書いた記者に悪意などはこれっぽちも無かったに違いない。
唯々住民へ被害が無かったことを幸運だと思っただけなのだ。
それはとても解り易い心境で。
そして、警察関連の職に就いた者は多かれ少なかれ、『死』というものを覚悟するものだけれども。
それでも、
−−殉職をした隊員達は決して生きたくなかったわけではないのだ。
<> コナソ・2<>sage<>2009/10/08(木) 01:48:40 ID:yRt4Id0V0<> 「次のページも」
新一の声にハッと平次の意識が引き戻された。
「なん?」
「次のページも同じ犯人の、4年後の事件なんだけどな」
言われて、ページを捲ると、大きな鉄屑と赤文字の見出し。
「『真昼の惨劇! 観覧車爆発! 悪夢の一瞬』見出し勝負やな」
えげつない。
なんて思えなくなったのは何時からか。
よリ鮮明に、よリ興味深く、より面白く。
加速する記者が悪いのか、そうしなければ食いついてこない読者のせいなのか。
「その事件で一人の刑事が死んだんだ」
いつの間にか本を伏せ、新一が平次の隣に滑り込んだ。
「−−知っとる人か?」
「佐藤刑事のな」
「佐藤刑事の?」
女性にしておくのがもったいない程の体術に優れ、そして女性ならではの細やかな優しさを併せ持つ捜査一課の高嶺の花。
平次も何度か対面したことが有る。
「この間会った時に、なんかの弾みで東都タワー爆破未遂事件を調べてるっていったらさ」
「知り合いやったって?」
「コンビ、組んでたって」
「そらあ…っ」
知り合いも知り合い、否、むしろ「知り合い」なんて浅い言葉以上の間柄ではないか。
「オレも驚いてさ−−謝っちまった」
けれど、それが何に対しての謝罪なのか新一自身にもわからなかったという。 <> コナソ・3<>sage<>2009/10/08(木) 01:51:02 ID:yRt4Id0V0<> 「思わずだよ」
そんな新一に佐藤刑事は笑って言った。
『悪いことをしてるわけじゃないんだから、謝らなくたって良いのよ』と。
そして、教えてくれたのだ。爆発物の有りかを伝える代わりに、命を散らした松田刑事について。
「元々は爆弾処理班に所属してて、色々あって捜査一課に来てからの日は浅かったんだ」
「色々?」
「−−−−−−−−−−仇討ち」
思いもよらない言葉に平次の目が丸くなる。
「マンション爆破で殉職した処理班の中に松田刑事の友人がいた」
『萩原』というその友人の敵を獲るために為に、彼は無茶をしたらしい。
周囲から危険だと思われてしまうぐらい。
捜査一課へ配属されたのは、そのあまりにも思いつめた行動を、頭を冷やさせる為の処置。
その処置が、果たして適切だったのか今となってはわからない。
『もしかしたら、一課じゃなくて、二課や三課への配属だったら、松田君はもう少し長く生きてたかも知れない』
哀しそうに言った佐藤刑事に、返す言葉は見つからなかった。
「それ以上、佐藤刑事には聞けなくて」
しかしその会話で、新一は『松田』というその刑事に興味が沸いた。
どんな人物だったのか、友人とはいえ四年という長い歳月薄れることなく敵を討とうとしたその心境は一体どんなものだったのか。
『工藤 新一』の名前を使えば調べるのは酷く簡単で。
江戸川コナンであったときには考えられないほどスムーズに当時の事件関係者達と連絡を取ることができた。 <> コナソ・4<>sage<>2009/10/08(木) 01:52:32 ID:yRt4Id0V0<> そして、話を聞くにつれ、松田、という人物を語る際に必ずと言って良いほど挙がった名前。
「それが…爆死した?」
「ああ、萩原研ニ処理隊員」
良く言えば誰に対しても人当たりの良い、ムードメーカー。
悪く言ってしまえば何事に対してもいまいち本気が見られない、ちゃらんぽらん。
爆弾処理能力は舌を巻くものがあるのに、その技巧をなかなか出さない掴み所の無い奴。
『ともかく松田とは正反対だったよ』 と話を聞いた全ての人物が口を揃えて言ったのが印象的だった。
どちらかというと生真面目な気質の松田を萩原が面白がって突っつき、その度に怒鳴りつけられる。
それでも萩原はちょっかいを掛けるのを止めないし、松田にしてもどうやら本気で怒っているわけではないのだろう、ということで、周囲からはそれなりに良いコンビだと思われていたらしい。
そう、それなり、だと皆思っていたのだ。
二人で居ることは多かったが、それでも松田とて他に友人が居なかったわけではない。
萩原にいたっては人当たりのよさがそのまま人脈に繋がっていた。
だから………。 <> コナソ・5<>sage<>2009/10/08(木) 01:54:34 ID:yRt4Id0V0<> 『最初は、誰も気づかなかったんだよなあ』
遠くを見つめ、同じ班に居たという隊員は呟いた。
萩原他、多くの班員の死に。
全員が憤り、全員が何が何でも犯人を捕まえると躍起になったその中で。
逆に松田は落ち着いて見えた。
否、勿論その身に怒りが宿っていたけれど、激昂する仲間の中で声を荒げることも無く淡々と日々の仕事をこなす。
そんな風に見えたから。
『あいつの胸倉掴んで、お前は悔しくないのかよっ、悲しくないのかよって…詰め寄った奴もいて』
それでも何も言わない松田に、多くの仲間が冷たい奴だと軽蔑の眼を向けた。
『俺も、その一人だったよ。嫌味を言って、反応が返って来ないことに腹を立ててた』
けれど、犯人が捕まらないまま時が過ぎ。
少しずつ、本当に少しずつ周囲が事件を過去の物と思い始めた頃。
初めて、気が付いた。
松田の机の傍らに、常に存在するファイル。
その中に、当時の事件資料が、当時の新聞記事が、そしてその時使われた爆弾の特徴、解体方法、その当時までで可能な材料入手経路が事細かく記載されたレポート用紙が、
今尚増え続けつつ詰まっているのだと。
『驚いたね。変な話だけど他の奴ならともかく、何で松田が、とも思った』
何故? と問いかけて、松田と口を聞くのが酷く久しぶりのことだった事に気が付いたという。
『一つ気が付くと芋づるでさ…ああ、そういやこいつ笑わなくなったな、とか、誰ともつるまなくなったな、とか』
何時からか、なんて直ぐに解る。
あの事件の後からだ。
背中がうっすらと寒くなった次の瞬間、松田の返答に今度こそ彼は凍りついた。 <> コナソ・6<>sage<>2009/10/08(木) 01:55:39 ID:yRt4Id0V0<> 『最初は、誰も気づかなかったんだよなあ』
遠くを見つめ、同じ班に居たという隊員は呟いた。
萩原他、多くの班員の死に。
全員が憤り、全員が何が何でも犯人を捕まえると躍起になったその中で。
逆に松田は落ち着いて見えた。
否、勿論その身に怒りが宿っていたけれど、激昂する仲間の中で声を荒げることも無く淡々と日々の仕事をこなす。
そんな風に見えたから。
『あいつの胸倉掴んで、お前は悔しくないのかよっ、悲しくないのかよって…詰め寄った奴もいて』
それでも何も言わない松田に、多くの仲間が冷たい奴だと軽蔑の眼を向けた。
『俺も、その一人だったよ。嫌味を言って、反応が返って来ないことに腹を立ててた』
けれど、犯人が捕まらないまま時が過ぎ。
少しずつ、本当に少しずつ周囲が事件を過去の物と思い始めた頃。
初めて、気が付いた。
松田の机の傍らに、常に存在するファイル。
その中に、当時の事件資料が、当時の新聞記事が、そしてその時使われた爆弾の特徴、解体方法、その当時までで可能な材料入手経路が事細かく記載されたレポート用紙が、
今尚増え続けつつ詰まっているのだと。
『驚いたね。変な話だけど他の奴ならともかく、何で松田が、とも思った』
何故? と問いかけて、松田と口を聞くのが酷く久しぶりのことだった事に気が付いたという。
『一つ気が付くと芋づるでさ…ああ、そういやこいつ笑わなくなったな、とか、誰ともつるまなくなったな、とか』
何時からか、なんて直ぐに解る。
あの事件の後からだ。
背中がうっすらと寒くなった次の瞬間、松田の返答に今度こそ彼は凍りついた。
<> コナソ・最終<>sage<>2009/10/08(木) 01:56:47 ID:yRt4Id0V0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
お目汚しすみません <> お別れ0<>sage<>2009/10/08(木) 05:52:02 ID:4XjeHmTo0<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )コッソリジサクジエーン

内容がタイムリーなうえ不謹慎なので注意
自分の気持ちの整理として書いたので自分勝手な内容になってしまいましたので注意
先日亡くなった方と前日本トップのお別れ <> お別れ1/5<>sage<>2009/10/08(木) 05:52:56 ID:4XjeHmTo0<> 雨風が強く打ち付ける丑三つ時、朝生はテーブルにちょっとしたつまみを用意させ、
今は亡き祖父が所有していたグラスを二つ手に持ち一つを自分の方へ、
…もう一つは誰もいないはずの向かいのソファーの前へ置いた。
こういう夜は、強くて酔える酒がいい、眠れぬ夜の友のお馴染みのブランデーに手にかけるも
それでは彼がすぐつぶれてしまうな、と亡くなったばかりの戦友を思い彼の愛していた地酒を手に取った。
手前の空のグラスになみなみ一杯、…向かいのには気持ち八分目。
カチン、と乾杯をし、すするように一杯。
「庄一、やっぱりうまいな…これ」
こくり、と一杯。
「こりゃ刺身と一緒にいただくといいんだよな」
こく、こくりと一杯。
「そういやお前の地元の魚仕入れる贔屓の店最近いってなかったな」
残りを一気に飲み干す。
「また行きたかったのになぁ…一緒に」
いつもは彼が先に飲み干すはずの酒を自ら注ぐ。
「…なんで死んじまったんだ」

ふと、窓の外から雨風の音が消えた気がして、懐かしい気配を感じる。

「…すみません、朝生さん」 <> お別れ2/5<>sage<>2009/10/08(木) 05:53:46 ID:4XjeHmTo0<> あぁ、亡霊が見えるなんて俺も気が狂い始めたのか、この前くたばっちまったやつが目の前に座ってやがる。
久し振りの深酒に酔っているのだろう、と自分を納得させながら彼に向き直る。

「お前、化けるならこんなおいぼれよりも家族が先だろうが」
「いや、もう家族と阿部ちゃんとか比良沼さんとかお世話になった人は廻ってきたんで」

朝生さんが最後です、と苦笑しながらグラスを手に取りクイッと一杯。

「なんだよ俺後回しかよ」
「だって朝生さんならこの時間まで起きてると思ったんです」

だから最後、と一気にグラスの中の残りを呷るとあっという間に空にしてしまった。
酒瓶に手を伸ばしゆっくりついでやる。どうも、といいつつまた呷る。
なんだかその一連の流れがとても懐かしく思えて、胸が締め付けられる。 <> お別れ3/5<>sage<>2009/10/08(木) 05:54:46 ID:4XjeHmTo0<> 「…最後ってことはこれで天国かどっかに行くのか」
「そういうことになりますね」
「やっぱ実際天国と地獄の概念ってあるのか?」
「朝生さんがそうなったときにでもわかりますよ」
「洒落にならねぇこと言うなお前は」

ククク…と二人して笑いあう。
さっきまで一度も手放さなかったグラスをそっと置く。

「…もう時間なんでそろそろ行かないと」
「待て、庄一最後に聞いていいか」
「なんですか、へそくりはありませんよ」
「馬鹿、真面目に聞け」

朝生は息をのんでから彼の眼を見つめた。

「なぜ死んだ?」

彼はしばらくテーブルを見つめながら俯き、また麻生の方に視線を戻した。
<> お別れ4/5<>sage<>2009/10/08(木) 05:55:20 ID:4XjeHmTo0<> 「…この世の親子の因果ってやっぱり続くみたいです。親父以上に、長生きさせてもらえなかった」

でもそのかわりこうして化けて出られたんでよかったです、とグラスの中の酒を一気に呷ると
彼の言うタイムリミットが近付いてきたのだろう、彼の体がだんだん薄く立体感を失っていった。

「昭一、俺は、お前を守り切れなかった。そのうえ政権交代までさせてしまった
次はお前が日本を背負って立つように、と考えていた、それなのに、それなのに」
「麻生さん、僕はあなたのような高貴の出なのに口の悪い、でもすごく有能な人と出会えてよかった」

彼の下半身はすでに消え、上半身が細かい粒子に覆われたようにキラキラと光っている。

「僕は、大事な父といろんな話ができないまま夢半ばで死なれたのが辛かった、悔しかった、でも」

麻生は気がつくと立ち上がって手を伸ばしていた。
麻生の両腕はむなしくも空気を切り裂くだけだった。 <> お別れ5/5<>sage<>2009/10/08(木) 06:09:30 ID:4XjeHmTo0<> 「…大事な朝生さんといっぱい話ができて、最後までお手伝いができて、本当に幸せでした」

幸せでしたとか、過去形に言うな、今度は俺がお前の手伝いをするはずだったんだ、
返り咲くんだろう?一緒に日本を守るんだろう?
逝くな、庄一

伝えたいことはたくさんあるのに、朝生の言葉は口から嗚咽となって零れてしまう。

「さよ……ら……」

‐‐‐‐‐‐

窓から差し込む陽ざしの眩しさに目を覚ますと、どうやらソファーの上で寝てしまったようだ。
慣れない体制で寝たせいか体の節々が痛むのを確認しながら昨日の夢のような出来事を思い出す。
ふとテーブルを見やると、手前のグラスには軽く一杯、もう一つの減るはずのないグラスは空になって横たわっていたのだった。
指を震わせながら朝生がそのグラスに手をやると、彼のぬくもりがのこっていて
朝生は朝日に照らされながら声を押し殺し、人知れず涙を流した。 <> お別れ 終わり<>sage<>2009/10/08(木) 06:11:26 ID:4XjeHmTo0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
突然のことだったので一目でも2人を会わせてあげたいという思いです。
伏せ忘れもありお目汚し申し訳ありません。
日本のために戦った彼のご冥福をお祈りします。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 08:15:10 ID:BkgV7lL+0<> 遅くなったが>147 ありがとう!
久々に満たされたよ〜
チョパ意外とヘタレだな、だがそこがイイ! <> 昼、二人、屋上にて。0<>sage<>2009/10/08(木) 09:35:32 ID:rnX4LcIwO<> ぶぅん系のモラ→ドク
ぶぅん系だけど顔文字は無しです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 昼、二人、屋上にて1/2<>sage<>2009/10/08(木) 09:38:39 ID:rnX4LcIwO<> 僕の脳内の諸君、突然だけど
僕、モララーはドクオが好きだ。
そりゃあもう、死ぬほど。
好きすぎて駄目なぐらい。

「お前、ホモかよ…」

そう言って微妙な表情で僕を見てくるドクオ。

「あれ?口に出てたかい?」

「大声であんな事言いやがって。気持ちわりぃ」

「なぁんて、ツンデレなのは分かってるよドクオ!」

「誰がツンデレだ!誰が!」

「ドクオが」

「ばーか」

なんだい、その悪態は。
僕を萌え殺す気かな? <> 昼、二人、屋上にて。2/2<>sage<>2009/10/08(木) 09:41:56 ID:rnX4LcIwO<> というかそれならもっと上目遣いで…こう…

「僕は変態か!?」

「!?」

僕の突然の大声にビクッとするドクオ。
可愛いから謝らないよ。

「ど、どうしたんだよ、いきなり…」

「いや、ドクオが可愛すぎて…」

「へ、変態だー!」

「ドクオが悪いんだよ」

「意味わかんねぇ」

そう言って寝転ぶドクオ。

このまま襲ってしまおうか。
そんな事を考える内に昼休みも終わりを向かえてしまう。

「じゃあね、ドクオ。今夜は夜這いにいくよ」

「来んな!」

はいはい、ツンデレツンデレ
、なんて屋上から出ていくドクオの背中に笑いかけた。 <> 昼、二人、屋上にて。 終わり<>sage<>2009/10/08(木) 09:43:04 ID:rnX4LcIwO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
何のへんてつも無い昼休みの様子
ドクオは何回も会う内にモララーに牽かれて行くといいです
お目汚しすみませんでした <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 10:10:58 ID:7eVM6n9A0<> >>136
>医療従事者から見て薬の副作用
やっぱりそうだったか。誤解しててごめんね、ショウイチさん。

>>164
この度は・・・・。謹んでGJ申し上げます。

辛口の、いやしょっぱめのメルヘンという感じ。特に、
>彼の下半身はすでに消え、上半身が細かい粒子に覆われたようにキラキラと光っている。
とか、
>窓から差し込む陽ざしの眩しさに目を覚ますと、
で始まる最後の数行、美しいです。ひたすら美しいです。

お悔やみネタとはいえ、まさかあの保守おやぢ達を題材にこれほどの詩(ろまんと読んでほしい)が書けるとは。
801の世界、奥が深し。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 11:18:01 ID:3chbrfI80<> >>145
遅くなりましたが、作風がすごい好み。
もっと145さんの作品が読みたい。また書いて下さい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 15:19:29 ID:Z3nbDnCM0<> >>164
あの懐剣の騒動の時、「あいつだけは降ろさせない(違うかも、守るとか‥)」って朝生が言ってたから
その時から気になってた、
ボンボンだから中々心を許せる相手が居ない中、庄一とは腹割って話せたみたいだね
TVで見た気が <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 15:24:41 ID:8Wjqw3h+0<> >>178
泣かせる奴らだぜ
次の選挙は自民に入れるお。゚(゚´Д`゚)゜。。・・

ていうかあの酩酊会見は本人がというより
あの状態で壇上に立たせた周りも悪いよな
それにあれはアルコールでというより風邪薬か何かでラリってた状態に見えた <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 18:04:48 ID:/17fkPWN0<> 自民には入れないがw 泣ける話だ

で、あの会見は自分もアルコールよりも鎮痛剤とかそういうのの強いのを
現地で調達して飲んだ、で、アルコールもちょっと、で、さらに時差ぼけ。
の結果かと思った。海外の薬、強いからな。
自民は好きになれないが、でも若くて将来のある人が志半ばで逝くのは切ない。
合掌。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 18:23:29 ID:xi8VNRV60<> >>179
そんな理由で支持政党変えるとはアフォですね…
なんか萌えに水差された <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 19:11:31 ID:jTHKw7xn0<> >>181
今日はショウイチさんのお通夜だ
けんかするんじゃないお <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 20:44:05 ID:wfM3Hb1YO<> もう、巣に帰れよ
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 21:41:12 ID:2uSsFuOg0<> マジでうざい
これだから嫌われるんだよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 21:49:52 ID:dkkGmM1Q0<> あとは絡みスレでやってね <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/08(木) 21:51:31 ID:nZw/iHMMO<> WWW
(`∀´)ねぇ〜ちょっとみんなぁ〜
たーのーしーもーうーよぉ〜 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/09(金) 01:15:25 ID:An0/bfZkO<> >>164
他ジャンル者ですが言わせて下さい
書いて下さって、本当にありがとうございます。
ラスト、号泣しました。

創作は現実の痛みを少しでも和らげる為に成されるもの、と個人的に思っています <> What can I do for you? 0/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:00:02 ID:TB7sZnUh0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  BLゲー 幸運犬 カポおたおめ記念
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  カプは偏らないようにしました。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> What can I do for you? 1/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:02:24 ID:TB7sZnUh0<> 俺は、あいつのために何ができる?

短い髪をわしゃわしゃと乱しながら、イヴァンは傍らに置かれた(というよりも、
投げ捨てられていたと言った方が的確だろうか)カレンダーに目をやった。
ご丁寧に赤鉛筆で丸のつけられているその日まで、あと3日。
「っ、だぁー! もう、どうすりゃいいんだよ!」
心の奥からわき上がる苛立ちを紛らわそうと、そのカレンダーを手に取り、
床へ投げつける……が、それもやはり空しいだけであった。自らに向けられた苛立ちは、
その程度でどうにかなるようなものではない。もっと深く苦しく、重いものなのだ。

イヴァンが苛立っていたのは、彼自身が何も知らないから、だった。
彼はジャンのことを”ダチ“だと思っているし、またジャンからも同じように
思われている、と思っている。とはいえ、彼はジャンのことについて何も
知らなかった――3日後に誕生日を迎える、ということさえも。
確かに、これまでそのようなことを話すようなきっかけもなかったし、
まさか『あと何日で誕生日なんです』なんてことを自分から言い出すような馬鹿はいない。
そうわかっている……わかっているはずではあっても、やはり自分が『何も知らない』という
現実を目の当たりにしてしまうのは、さすがにショックが大きかった。
その上ジャンの誕生日についてはベルナルドから聞かされたのだ。
それも「何だ、知らなかったのか?」という言葉のオプション付きで。
イヴァンはそのときのベルナルドの顔を思い出しては、腹の中で「今度会ったら
ありったけの前髪むしってやる」と呟くのだった。

……ともかく、イヴァンは焦っていた。
あと3日というタイムリミットが、彼の思考を更にかき乱していく。
何がいい、どうすればいい、俺には何ができる?――結局、行き着く答えはただ一つ。
「俺の戦乙女に、頼るっきゃないよなァ」
だとすれば、あいつにどんな景色を見せてやろうか。どうせ行くのなら思いっきり
華やかなところがいいだろう。安っぽい場所じゃ、つまらない。ならば――
イヴァンは、引き出しから地図を取り出し勢いよく広げ、場所の見当をつけ始めた。
その表情は最初のような厳しいそれではなく、プレゼントを待ち望む子供のような、無邪気なものに変わっていた。 <> What can I do for you? 2/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:04:08 ID:TB7sZnUh0<> 俺は、あなたのために……何が、できますか?

「そうだ、それでいい。……よろしく頼む」
いつも手にしている刃のように研ぎ澄まされた声でそう告げてから、ジュリオは静かに受話器を置いた。
ふうと一息ため息を落とし、肩の力を落とす。”仮にも”ボンドーネ家の子息として生まれた彼は、
それなりの部下のあしらい方を心得ている……つもりではあるのだが、それでもやはりこうして
命令を下すとなるとどうしても肩に力が入ってしまう。
――しかも、それが「人を殺めるための命令ではない」のであれば、尚更。

ジュリオが話していた相手は、とある店のオーナーだった。
話の内容は、「一日店を貸し切らせてほしい」ということ。指定された日付がほんの数日後だったと
いうこともあり、オーナーもはじめは渋っていたものの、ボンドーネ家の名と提示された金額を
聞くなり、手のひらを返したようにあれやこれやとパーティープランを出してきた。
……受話器の向こうで、ジュリオが苦笑していたことも知らずに。
そんなオーナーの態度はともかく、その店のシェフの腕の良さはかなりのものだ。
幼い頃から『ボンドーネ家の名を汚さない男になる』ためのあれこれを教え込まれてきた
ジュリオだからこそ、その店の名を聞いただけでわかる。
……まさか、こんなときにそれが役に立つとは、思わなかったのだが。
「ジャン、さんは……喜んでくれるだろうか」
ふと、記憶の底に眠るあの頃の表情を思い出す。今はあの頃よりも大人びてはいるものの、
輝きは色あせないままだ。
あの輝きを絶やさないためなら、自分は盾にでも剣にでもなる。
「裏切り者の子息」の名前だって――使えるのならば使ってやる。

だって俺には、それくらいしかできないから。
ジュリオは小さくそう呟いて、机の上に置かれたままになっていた手帳に目をやった。
指定された日まではあと数日ある。まだまだやるべきことは残っているはずだし、
またできることも見つかるかもしれない。それならば――
そう思ったとき、先ほどまでオーナーと連絡を取っていた電話が鳴った。
『いきなりすまない、ジュリオ。……仕事だ』
ベルナルドの冷静な声で、体の芯が張り詰める。頭の中は一気に切り替わり、次の指示を待っていた。 <> What can I do for you? 3/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:05:42 ID:TB7sZnUh0<> 俺は、お前に何をしてやれる?

目の前に並べられた紙に一枚ずつ目を通し、ルキーノは甘い香りのする紫煙を吐いた。
10着分ほど、と頼んでおいたデザイン画はどれもこれも彼の好みには合わず、
あぁやっぱりこれは自分が直々に出向くしかないんだな、とため息をついていたところだったのだ。
もうすぐジャンの誕生日なんだが、とベルナルドから聞かされたとき、真っ先に思い立ったのは
ジャンのスーツを新調してやること、だった。GDとの戦争が落ち着いたときにも何着か
仕立ててやったのだが、それでも新生CR:5を背負って立つためにはまだまだ足りない。
毎日全く違うスーツを着ていてもいいほどなのだから。

短くなった煙草を灰皿に押しつけ、ソファーに沈み考える。
ジャンに着せるのであれば――やはり、体の線の細さが映えるデザインがいい。
野暮ったい、それこそ顧問の方々が着るようなあんなものは彼には似合わない。
もっと洗練されたデザインのスーツを着せてやらなければ――

頭の中にデザインが浮かび上がる。同じようなスーツは見つかるだろうか……いや、ないなら
生地も指定して作らせればいい。金の問題は何とでもなる。ジャンのためだ、と言えば
ベルナルドも苦い顔をしないだろう。
……そしてそうだ、と思い立つ。スーツが入っている箱のうち、一つを違った趣向にしてやろう。
前の家におそらく残ったままになっているハイスクールの制服を、ジャン用に仕立て直して
入れておいてもいい。それか、いっそのことドレスを入れておくのもいいかもしれない。
スカートがふわりと翻るようなものもいいが、ここは大人しくマーメイドラインのシンプルな
デザインにしておくべきか……
そこまで考えて、ルキーノはようやく自分の思考があらぬ方向に逸れ始めていることと、
顔がだらしなく緩んでいることに気づいた。両手で頬をばちんと叩き、気を引き締め直す。

幸い、今日はこれから外回りの予定だ。仕事を早めに終わらせて、昔馴染みのあの店に寄ってみよう。
あそこなら自分のイメージにぴったり合う――ジャンによく似合うスーツを仕立ててくれるはずだ。
「そうと決まれば、早めに出発しなきゃ……な」
ルキーノは世の女性方を虜にした笑顔で、そう呟いた。 <> What can I do for you? 4/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:08:57 ID:TB7sZnUh0<> 俺は、お前のために何ができるだろうね。

今年も、この季節がやってきたか。
一旦帳簿から目を離し、すっかり温くなってしまったコーヒーを口にする。
去年はそれどころじゃなかったが、ジャンの誕生日を祝ってやるのもこれで何度目になるだろうか。
これまでジャンはただの構成員のひとりであったから、個人的にどこかの店に誘うか、もしくは
見かけたときにおめでとうと一言言ってやるくらいしかできなかったのだが――今年は、違う。
今のところは”見習い中”であるとはいえ、立派なCR:5のボス、なのだ。祝うのであれば、
それはもう盛大にやらなければならないだろう。
……独り占めできないのは、残念だけどね。
ベルナルドはその言葉を冷めたコーヒーで胃の中に流し込んだ。この言葉は口に出すべきではない。
腹の奥底に仕舞い込んで、墓まで持って行かなくてはならない――そのくらいのものなのだ。

ジャンとはもう相当長い付き合いになる。だからこそ彼のことならば何でも知っている――と
思っていたが実際はそうでもなかったらしい。彼の誕生日をどのように祝ってやるのかを
考え始めると、とたんに思考が止まってしまうのだ。
何をすれば彼は喜んでくれるのか、彼にどんなことをしてやればいいのか――考えても考えても
答えは出ず、ただいたずらに時間だけが過ぎ……タイムリミットが、ますます近づいてくる。

「さて、どうしたものか……」
そう呟いて、もう一杯コーヒーを淹れようとカップに手を伸ばしたとき――一つの案が、浮かんだ。
ジャンは誰よりも”仲間”を大事にする男だ。それならば、他の幹部も巻き込んで、より一層派手な
パーティーにしてやった方が喜ぶんじゃないか?
残された時間は残りわずかだが、他の4人と協力すれば……何とかなるかもしれない。
「俺がひとり抜け駆けしようとしているなんて他の奴らが知ったら――
どうなるかわかったもんじゃないしな」
ベルナルドは思わず笑みを零した。他の3人からの嫉妬するような目線を浴びるのも悪くないが、
それはまた――別の機会に。

そうと決まれば、まずは他の幹部を呼んでミーティングだ。
ベルナルドは並べられた電話のひとつに手を伸ばし、慣れた手つきでダイヤルを回した。
<> What can I do for you? 5/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:11:08 ID:TB7sZnUh0<> 次々に景色が流れていく。
もはや悪趣味と言いたくなるほど大きな車に乗せられ、ジャンはただひたすら文句を言っていた。
「だーかーら! どこに連れてくつもりだよ! 俺は忙しいんだって……!」
「だぁーもう黙ってろボケ! どのみち今日の仕事はもう終わりなんだからよ!」
荒々しい言葉を返してくる運転手はイヴァンだった。彼は急にやってくるなりジャンを車の後部座席に
押し込め、どこへ行くのかも言わないまま車を走らせている。ジャンがぶつくさと文句を言うのも
無理はなかった。次期カポである彼には、やらねばならないことがたくさんある。今日もこの後、
ジュリオとともにとある屋敷へ向かい、交渉を――
「って、ちょっと待て。『今日の仕事はもう終わり』って……どういうことだ?」
「どういう意味もねーよ。っつかこんな日なのに何で仕事なんか入ってんだ?」
「こんな日……?」
「はァ? お前、まさか……あぁいや、何でもねぇ」
ジャンの疑問符にイヴァンは顔を顰めたが、すぐに何かを思い出したかのように言葉を濁した。
その態度でジャンの疑問符はますます増殖したのだが、彼はすぐに考えるのをやめた。
どうせイヴァンの馬鹿が考えることだ、大したことじゃない……そう思ったからだった。

やがて車はやたら豪勢な屋敷の前で停車した。
ここで降りるのか、と辺りを見回していると、イヴァンがそっと後部座席のドアを開けた。
さすがは昔ロザーリアお嬢様の運転手をしていただけあって、対応はやたらとスマートだ。
「ほら、降りろよ」
……口調だけは、相変わらずだったのだが。 <> What can I do for you? 6/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:14:09 ID:TB7sZnUh0<> 促されるまま目の前の屋敷へ向かうと、そこには見慣れた大きな影があった。
「おぉ、いいタイミングだなイヴァン。俺も今到着したとこだ」
「あったりめーだろォ? 俺の戦乙女なめんな」
「ルキーノ……? お前も、なんでこんなとこに」
「まあ、それはあとでわかるさ」
そう言って、ルキーノはいつものようにウインクをしてみせる。そして手にしていた包みをジャンに
手渡してから、屋敷の中へ入るよう促した。
「えっと、これ、は……」
「奥の部屋でそれに着替えてこい。なるべく急ぎで、な」
「いやちょっと待てって……う、わっ」
まあまあ、と言いながら背中を押すルキーノの力に抵抗できるわけもなく、
ジャンはただ大人しく指示に従い、奥の部屋へと消えていった。

「……お前、本当に強引だよな……」
「ん? 何か言ったかー?」
「ナンデモナイデス」
ルキーノの目が一瞬妖しく光った気がして、イヴァンは口から出かかった言葉を腹の中に押し込んだ。

「何だ、ふたりとももう着いてたのか」
しばらくして、メイン会場へと続く廊下から姿を現したのはベルナルドとジュリオだった。
「おう、準備は終わったのか?」
「もうすぐで終わる、と。……ジャンさんは?」
「あいつなら今着替えてるところだ。ベストなタイミングになりそうだな」

そんなことを言い合っていると、奥の部屋からばたばたとジャンが戻ってきた。
「すまねえ、待たせたな……って、ベルナルドとジュリオも来てたのか?」
「あぁ。皆様お待ちかねだ」
「へ? 皆様??」
「すぐにわかるさ。……行こうか、ハニー?」
「あ、あぁ……」
いつものようにダーリン、と返すことすら忘れ、
ジャンはただ手を引かれるまま、メイン会場へと足を進めた。 <> What can I do for you? 7/7<>sage<>2009/10/10(土) 16:16:58 ID:TB7sZnUh0<> ――そしてメイン会場へと繋がる大きな扉が、開かれる。

「うお、まぶし……」
まばゆい光がジャンの目を刺す。思わず閉じてしまった目を恐る恐る開くと、そこには……

たくさんのテーブルいっぱいに並べられた料理と、シャンパングラス。
そして輪の中心には――大きなケーキが、あった。
「これ、は……」
「お前、今日誕生日だろう?」
「だから……一番ケーキがおいしい店を、探して……貸し切りました」
「たんじょうび……」

何だか、ひどく懐かしい響きだった。
この仕事をするようになってから、こんな風に祝ってもらえたことは……なかったと、思う。
せいぜいベルナルドや爺様方からおめでとうと言ってもらえるか、飲みに連れて行ってもらえるくらいで。
しかも去年はあんな騒ぎだったから……誕生日だなんて、すっかり忘れてしまっていた。
「みんな……本当にありがとうな。俺なんか何もしてないし、ここまでしてもらえるなんて、思わなかった」
後ろに控えていた幹部の方へと向き直り、ジャンは少し照れくさそうに言った。
その言葉を聞いて、イヴァンがすっと前へ出る。
「はぁ? 何もしてないとか言ってんじゃねーよ」
その勢いに乗って、ルキーノが続く。
「お前が、俺らのカポとして、そのままそこにいる。それが俺らにとって、一番嬉しいことなんだよ」
「……そういうことだ。誕生日おめでとう、ジャン」
「ありがとう、ございます…生まれてきて、生きていて、くれて」
そう口々に言われ、ジャンはほんの少し目を潤ませながら、小さく「ありがとな」と、呟いた。

「さーて! せっかく用意してくれたんだし、メシ食おうぜメシ! 冷めちまうぜ」
幹部をけしかけるように、ジャンが声をかける。
照明の中で、彼の髪が、顔が、心からの喜びを示すように、きらきらと輝いていた。 <> What can I do for you? おわり<>sage<>2009/10/10(土) 16:19:05 ID:TB7sZnUh0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オソマツサマデシタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
英語だと一人称でも二人称でも”you”なんですよね。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/10(土) 16:24:45 ID:1QneIsIq0<> >188
わわわありがとう!!今最萌えザンルを!
ちょうど本スレでボス祝ってきたところだったよw
萌えすぎて禿げました!!もーみんなかわいすぎる!!
ちょいだめ親父の前髪は無事だったんでしょうかww
最後の狂犬の台詞に感動しました。ありがとう!!
<> 衝撃 「今夜、ソフレを捜査します」 0/4<>sage<>2009/10/10(土) 17:06:25 ID:47R8RZIg0<>
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  前回某コソビで投下した者です。
 ____________     \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  生 鯨仁 衝撃ツッコミ×ボケ 
 | |                | |             \ 王ofコソト20092ndの設定でどうぞ
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ナマホウソウデアレハヒキョウダロ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

あのコソトその後を捏造してみた、みたいな出来です。
あとツッコミ視点です。 <> 衝撃 「今夜、ソフレを捜査します」 1/4<>sage<>2009/10/10(土) 17:07:56 ID:47R8RZIg0<> 「…あ。」
 スーパーで買い物をして、家に帰ってから気がついた。何処かに財布を落としたらしい。
ヤベェな、金とかカードなんかはあんまり入ってないけどあの財布気に入ってるんだよな…。
 …あの警察官に貰った財布なんだよな〜…。


 空き巣が入った数日後、あの警察官が家を訪ねて来た。
「空き巣の犯人逮捕に協力してくれたお礼です。近頃増えておりまして…。」
「い、いやいいですよ…。折角来てくれたんであれなんですけど。」
「いや、本官的にお礼がしたくてですね。貰って下さい。」
「はぁ…。」
 帰っていった後に、貰った箱を開けてみた。メンズ物の黒の財布。質感的には多分本物の革。
使い勝手もいいので使っていたんだが、まさか落とすなんて。(もしくはスーパーに置いてきたかもしんないけれど)
 冷静になって考えてみる。あきらめるか、交番に行くか。
低確率ながら、ひょっとすると交番に届いているかもしれない。
だがひょっとすると、またあの警察官に会うかもしれない。
 いや、会いたいけれどさ、そりゃ…。
…前言撤回。キモいな、俺。
 そりゃあ、あの時は普通にシャワーもせず、コンビニにも寄らず、ただ普通に捜査して帰って行ったけれど。
今回はどうなるかなんて分かんないし。(何も無い事が前提だけど) <> 衝撃 「今夜、ソフレを捜査します」 2/4<>sage<>2009/10/10(土) 17:09:07 ID:47R8RZIg0<> いい加減腹をくくろうじゃないか、俺。そう思い、目を瞑って考え直す。
部屋は無音になる。…完全にじゃないが。
 水槽についてるフィルター(だっけ?)の稼働音が聞こえる。
ちなみに、中に入っているのはネオンテトラ5、6匹。
ハムスターなんて飼っていない。俺にそんな金はネオンテトラを飼った時点で無いも同然だ。
 …やっぱ俺、キモいな。
だってあの時の言葉、忘れてねーもんな。

「ハムスター飼ってるからおいで、熱帯魚飼ってるからおいで、なんだっていいんだよ!」

…それで俺、熱帯魚飼ったからな。
 そもそもあの警官が来てからずっとこんな感じだ。
アイツ、きっと妖気みたいなのを纏ってて、それをこの部屋に置いていったんだよ、きっと。だからこう…、変なんだよ、俺。
「本当俺、どうにかしてるわ。」
 踏みとどまっても仕方が無いので、交番に行く事にした。

交番に着く。
「すいません…。」
「はいはい、どうかされました?」
 あ、人一緒だわ…。でもこの反応は覚えてないな。
「財布落としたんですけど届いてないですかね?色は黒で…。」
「本皮でメンズ物の本官が貴方にあげたサイフでしょ?」

「え、ちょ…、覚えてたんですか!?」
「ったりめーだろ!これだからソフレは…。」
 
覚えてたよこの警官…。 <> 衝撃 「今夜、ソフレを捜査します」 3/4<>sage<>2009/10/10(土) 17:10:39 ID:47R8RZIg0<> 3
「そもそもね、本官一度きりって決めていたんですよ!なのに何故よりを戻そうとするんですか…!」
「してねーよ!それに俺だってわざと落としたんじゃないですし。」
「大体、あの時ちゃんと捜査せずに終わったし…。期待外れにも程がある!!」
「いや何望んでたの!?」
 一つ分かった。俺この警官には敵わない。
「とにかく財布返して下さいよ!ついでに俺の部屋の妖気も取って下さい!」
「え、何それ…。俺んちに来てくれっていう、一種のお誘い?強引ですよ。」
「誘ってねーよ!そのっ…!」

「熱帯魚飼ってますから!」

 いった途端、警官の動きが止まった。
ついでに言うと目がキラキラしている。なんか子供みたい…。
「マジで?じゃあ仕事終わったら行く!ちょっとコンビニ寄ってシャンプー買ってもいい?」
「いいですけど…。」
「あとシャワー使っていい?」
「まあ…いいですけど。」
 なんなんだこの警官。

 とりあえず、財布を返して貰い、交番を出た。
警官は別れ際に『後で行くから!』と笑顔で言った。冷静を保ったけど思わずドキッとなってしまった。
なんだか、俺の家の妖気が逆に増えそうで、嬉しいやら悲しいやら、自分でも良く分からない。
何この感情…。


「…あ、署ですか?お疲れ様です。今日ちょっと早く上がります…、今夜ソフレを捜査するんで。」 <> 衝撃 「今夜、ソフレを捜査します」 4/4<>sage<>2009/10/10(土) 17:13:24 ID:47R8RZIg0<> | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 終始gdgdしてた
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

捜査はやっそんであると信じt(ry
勢いにまかせたら駄目なんですね分かります
ちなみに、最後の一行はボケさんの台詞ですのであしからず。

表現等で不可解な思いした方がいたら謝ります。すみませんでした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/11(日) 02:27:37 ID:rYjo9yhB0<> >>202
GJです!まさかあのネタで読めるとは思っていませんでしたw
捜査は・・・もちろん、やry
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/11(日) 12:17:45 ID:Um6vUQE5O<> 本官キター
あのコントの伊田の可愛さったらなかったので、読めて嬉しい <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/11(日) 17:48:49 ID:QRKom6M90<> あのコントを見た後ずっと何かが燻ってたので嬉しいw
>>202GJ超GJ <> 10月8日0/4<>sage<>2009/10/11(日) 20:08:24 ID:KwsbpH7GO<> ・田ロシ告正×ロ欠越満、相変わらずナマモノ注意
・前回反応くださった方ありがとうこざいます。
・タグチさんの誕生日に合わせて投下しようと思ってたのに、タイミング逃してとんまな感じに・Q係が終わっても私の熱は冷めません、ではどうぞー
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 10月8日1/4<>sage<>2009/10/11(日) 20:12:55 ID:KwsbpH7GO<> そのとき玄関のチャイムは、チャイムとしての役割を果たせなかった風だった。何故ならばそれがピンポーン、と高らかに鳴ったのとほぼ同時に、ガチャ、とドアの開く音がしたからだ。
家の主は頭を抱えた。あらかじめ鍵をかけておかなかった自分も悪いのだが、ひとの家に勝手に上がり込もうとする不届き者のことまでは想定していなかった。
明かりの灯った部屋をわざわざ狙う間抜けな泥棒はいないだろう。ともすれば、こんなことを平気でする奴は他に一人しか知らない。
どすどすどす、と無遠慮な足音が近づく。やがて現れた見慣れた顔は――そして予想通りの顔は、主の心境など顧みず満面の笑みを浮かべて「こんばんは!」と言ったのだ。
「…何なのオマエ」
「うっわー!つれないなァ、久々に会えたのに」
「いやいやつれないっつーか、こんな遅くに連絡も入れずに突然来てさ、非常識じゃん」
「まあそうですけど、どうせならこうサプライズがあったほうが楽しいじゃないですか」
「何なのお前」
「ねえ付記越さん、今日何の日か知ってます?」
質問の返事は更に突拍子もない質問。家主・付記越は戸惑った。
「え…知らない」
「ははは!やっぱり。」
「え、何?」
「今日僕、誕生日なんです」
「…」
あああ。
付記越は胸の中で呻いた。途端にばつが悪くなって、目線が落ちる。
「ごめん、…知らなかった」
元来、他人の誕生日だとかを気にかける性格ではないのだ。最愛の娘や別れた元妻のぐらいは流石に覚えているが。
「いいですよ別に。そうだろうと思いました」
付記越さんらしいですと客人は笑って言った。変に拗ねた言い方じゃなく本当に気にしていないようで、付記越は内心安堵する。
「それより」
ずい、と突き出された左手には白い箱。
「ケーキ、買ってきたんです。食べませんか?」
<> 10月8日2/4<>sage<>2009/10/11(日) 20:16:19 ID:KwsbpH7GO<> なるほど目的はこれか。
「…もう歯磨いちゃったんだけど」
「また磨けば良いじゃないですか!よし食べよう」
どうやら付記越に選択権はないらしい。
だがこの強引で呑気な客人・多口は、付記越が本音をしまい込みがちな気性であることぐらいとっくに分かった上でそう振る舞っていた。そして付記越もまた、多口のそうした寛大さに救われていることを痛いほど分かっていながら、そう振る舞っているのだ。
二人分の皿とフォーク、それにコーヒーを用意する。カチャカチャと陶器が触れ合う音に乗って、多口はとりとめのない話をはじめる。今やってる舞台がどうとか、ここ数日の天気がどうとか。
付記越さんは最近どうですか、と聞くから「しばらくお前と会わなかったから元気だよ」と返した。
「何ですかそれー」
多口はケタケタ笑う。打たれ強いのかはたまたただのドMか。きっと後者だろうな、と付記越は考える。素直になれない自分自身を呪いながら。
いつだってアプローチは多口のほうからだった。告白も逢瀬の取り付けもキスもその先も。付記越のほうから求めたことは一度もない。
与えてばかりで貰えないなんてあんまり不公平だろうに。どうして彼は俺といるんだろう?時折、ふと思うのだった。
インスタントコーヒーに熱湯を注げば、良い香りが部屋中に広がる。こんな時間にコーヒー飲んだら眠れなくなるかな、と付記越は今更になって気づくがもう遅かった。まあいいか。
自分のはそのまま、彼のはミルクと砂糖を入れてテーブルへ運ぶ。
白い箱を開けると綺麗なショートケーキが二切れ、整然と収まっていた。
「ハッピバースデー、とか、歌う?」
「いいですよそんな、なんか恥ずかしいし」
「、そっか」
<> 10月8日3/4<>sage<>2009/10/11(日) 20:20:07 ID:KwsbpH7GO<> 自分の誕生日に自分でケーキ買ってくる時点で十分恥ずかしいよ、と言おうとして止めた。その言葉は墓穴を掘る可能性大だと判断したからだ。おとなしく皿にケーキを盛りつけ、いただきますを言って一口。
「…あ、美味い」
自然に感想がこぼれた。
「でしょ?評判の店なんです」
多口は笑った。
「付記越さんと食べたいな、と思って」
どうして。
どうしてこいつは俺なんかのためにそんな表情ができるんだろう。そう思わずにはいられなかった。苦しい。俺は何にもしないのに、どうしてそんなに愛してくれるの。
「…お前はやさしいね」
「なんですか急に」
「…何が欲しい?誕生日プレゼント」
「えー。じゃあ付記越さんが欲しい」
「…バーカ」
「照れちゃって」
「うっせ」
素直になれたら。
今日こうして来てくれたのも、真っ直ぐに俺を求めてくれるのも、そして何十年前かの今日(彼がいくつになったのかすら、そういえば俺は知らない)、この世に生まれてきてくれたことも本当は嬉しいんだよと。伝えることができたら。
ケーキの最後のかけらを飲み込むと、付記越はひとつの覚悟を決めた。
「多口」
「はい?」

ほんの数秒。触れるだけの口づけをした。甘くてしょうがないのは生クリームのせいだ。
「…おめでとう」
ぽつりと呟いたのと同時にどうしようもない恥ずかしさが押し寄せて、付記越は背を向ける。
初めて体験する一連の流れに多口は呆然としていたが、たった今起こったことをやっと理解すると、じわじわ込み上げてくる幸せを感じて顔をにやつかせた。
更に付記越の耳が真っ赤に染まっているのを見つけてしまうと、いよいよにやつきは抑え切れなくなってそのまま後ろから彼を抱きしめた。
<> 10月8日4/4<>sage<>2009/10/11(日) 20:22:03 ID:KwsbpH7GO<> 「ありがとうこざいます」
「…」
「付記越さん」
耳元で、囁く。
「愛してます」
「…!」
俺もだよ、なんて口には出さないが。回された両腕をぎゅっと握り返した。それがせいいっぱいの気持ち。
「付記越さん、明日の予定は?」
「、午後から仕事」
「奇遇ですね、僕も午後からです」
だから。
「…してもいいですか」
「……好きにしろよ」
「そうします」
「…コーヒー」
「え?」
「飲んじゃったから。このまま寝れないだろ」
「…そうですね」
多口はくすりと笑った。貴方のそういう可愛くないところが可愛くて仕方ないんですよ、と、ベッドの中で伝えようと思いながら。
<> 10月8日おしまい<>sage<>2009/10/11(日) 20:24:26 ID:KwsbpH7GO<> 不備がこざいましたらすみません。
お付き合いありがとうこざいました!
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/11(日) 20:52:40 ID:sR+mHUyD0<> >>206
ふわああああ前の方ですか!!!
今回も萌えましたありがとうございます!
この二人はキャラも中の人もたまらんっ。Q係最高! <> 告白0/2<>sage<>2009/10/12(月) 01:19:08 ID:0NzeQCIu0<>

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  生
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  対談後にどーたらっていう
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 告白1/2<>sage<>2009/10/12(月) 01:21:29 ID:0NzeQCIu0<> お疲れさまでした、とはにかむように笑って帰っていく姿に、目は当然のごとく釘付
けだ。まったくおかしな話だ。真っ白な肌、整った顔立ち。本人はあんな風に言っ
ていたが、僕が彼だったら手当たり次第に遊ぶ。できる限りたくさんの女の子を、
毎晩好きにしてしまいたい。
最大限さりげなさを装って彼の隣につくと、思ったよりも警戒心のない目で見られ
た。僕のことを散々変わり者だというように言ったくせに。ああずるい。ストレートに
惚れてしまいそうだ。件の女の子の無駄な胸の脂肪(にも関わらず自分も含め若
い男の目を釘付けにしてやまないそれ)もついていないのに。
「今日はねえ、ほんとにびっくりしたよ。よく喋るね」
「そりゃ、気になる人が相手ですから」
ふうん、と大して興味もなさそうな反応が返ってくる。こうされるともう、この人は僕を
たぶらかしてるんじゃないかと思ってしまう。外国人のごついボディーガードを、
今こそ呼んだ方がいい。呼ばれても困るけど。
「今日は、彼女、きてるんですか」
「ん、今日はきてない」
照れたのか少し歯切れが悪くなった彼を見て、僕はついついにやけそうになった。
とはいえさっきからにやけていたような気もする。手遊びをしながら楽屋へと向か
う彼の横にぴったりついて歩く。その距離感に慣れているのか彼は僕と他愛ない
会話を続ける。やっぱり女の子には事欠かないんじゃないか。こういうのに慣れて
ているじゃないか。うらやましくてたまらない。
「じゃあ、楽屋でも一人ですね」
流石に怪しい奴だと思われたかと彼を覗き込んでみるが、彼は平然とうん、とだけ
答えた。しばらく会っていなかったとはいえ古い付き合いはお得だ。
楽屋の前までついたとき、彼は隣に立ったままの僕を見た。立ちどまって黙って
いる僕がペットの犬にでも見えたのか、彼はおかしそうに笑った。その見上げてい
るのに見下すような視線。今夜はこれで十分だと思ったのに、次の一言にまた打
ちのめされそうになった。入る? と言うのだ、この人は。 <> 告白2/2<>sage<>2009/10/12(月) 01:24:56 ID:0NzeQCIu0<> 衝撃で自分でも何を言ったかわからない返事をして、僕は彼の楽屋に侵入した。
正規の入り口から入ったに違いないが、確実にこれは侵入だ。
ハンガーにかけられたコートを手に取って彼は言う。
「もう僕帰るけど、駄目?」
「駄目です。僕、好きなんです」
彼は流石に首をかしげて、いぶかしげに僕を見た。化粧を取るとわりかし幼く見える。
キャリアウーマンや年上の女に恋をする男はこんな気持ちかもしれない。ともすると、
詞ももっと浮かんできそうだ。何だ、もう少し早く彼と連絡を取って、会っておけば
よかったじゃないか。
「どういう意「だからセックスしたいんです。とにかく」
食い気味に言うと、いよいよ彼はその目に、似合わない取ってつけたような警戒
心をにじませた。
「それは」
「はい?」
「好きって言わないかもしれない。どっちかっていうと、『やれそう』とか『やりたい』
て感じかな」
反論はできない僕を尻目に、彼はテーブルに置いたリップクリームを手に取った。
最早これ見よがしとしか思えない仕草でそれを使った後、鏡越しに僕を見て彼は
言った。
「まあ、恋愛なんて結局わからないからなんだけど…もし僕が好きなら」
微笑む彼の表情を見て、僕はぞっとした。もっと言えば、表情に含まれた彼特有と
も言える無邪気さに。彼の二の句は大体わかる。それは僕の期待している言葉じゃ
ない。僕の「好き」の定義は彼のそれより随分汚いのだから。
「事務所にCDおくってきてよ。新しいの、聴きたい」
これだから彼はずるいのだ。ずるくてひどくて悪気がなくて、やれそうで、
やれないのだ。やれそうでやれないといえば、彼の言うところの、コギャル?
可笑しい。 <> 告白終わり<>sage<>2009/10/12(月) 01:27:56 ID:0NzeQCIu0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 攻(?)の方実はよく知らないのに
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 変態にしてしまった
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/12(月) 01:32:52 ID:GeO3ryuz0<> >>206
ネ申キタ───!!
ああ、またこの二人の話を読めるとは!!
興奮して寝つけなくなりそうですw <> ar row s<>sage<>2009/10/14(水) 23:32:53 ID:nLuconNaO<> 保首と当主と補守
↑の順でチャプターごとに視点が変わってます。
オリジナルではないけれど、モデルがいるといえば現実を無視しすぎているので・・・。

好きに想像して頂けたら。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> ar row s 1/3<>sage<>2009/10/14(水) 23:35:18 ID:nLuconNaO<> chapter1「A→B」

誰もいないロッカールームで、一人ぱらぱらとノートをめくり、
今日の戦った相手のデータ記録を見返す。
目を閉じて、勝てる工程をイメ一ジする。
だが、上手くいかない。膨れ上がる黒い膜がその景色を侵食する。
やっとあの人の支えとなれるチャンスがきたのに。
その為の研究も、努力も尽くしてきたはずなのに。
堰を切るかのように突如沸き起こった、自分自身への憤り。
振り向き、力任せにノートを床に叩きつけた。

はっと気がついて、立ち竦む。
目の前には、ノートを拾う一人の影。
苦楽を共にした仲間、友人。そして大切な、  。
躍進に喜ぶ彼の姿をずっと夢見てた。その傍にいれることも信じていた。
じっとこちらを見つめる視線。心の底を見透かされる感覚。
戦いの場と同じように向き合っていることに気がついて、思わず口元が綻ぶ。
あの場所では、勝つことが全て。
ゆっくり息を吐き出す。強張っていた体から、力が抜けた。
「・・・無様な所見せちゃったな」
近付くと、彼の手からノートが差し出される。
手をのばして取ろうとすると、彼は腕を引いて避けた。
黒目がきらりと光った。
「今日、付き合えよ」 <> ar row s 2/3<>sage<>2009/10/14(水) 23:37:32 ID:nLuconNaO<>
chapter2「B→A」

大きな雨粒が窓を強く叩きつけていた。狭い車内に、雨音だけが絶えず響く。
「やまないな」
「やむよ」
「しばらくやまないだろ」
「いつかやむよ」
「そりゃそうだけど」
彼は言い返すのをやめて、困ったように微笑んだ。
「どうする?どこ行く?」
「ここでいい」
「・・・えーと」
わざと困らせることを言ってみる。彼もわざとだと知っている。
問題は、どう言葉を繋げるか、だ。
「こう雨がうるさいと、そんな気分にもなれないというか」
「するって一言も言ってないよ」
「あー・・・。そうですね・・・」
そのつもりだったけれど、先に拒否されたので否定する。
取り繕った励ましを、彼は望んでいない。全部、わかっている。わかってしまう。
手を伸ばしてシャツを引っ張った。
何、と近づいたその頭を引き寄せてぎゅっと抱え込む。
唇が耳たぶに触れた。
腕の中にいるのに、考えもわかるのに、どうしてこんなに遠いんだ。
ぽんぽん、と優しく背中に触れる彼の手のひら。
しまった。こちらの不安を感じ取られた。
「大丈夫だよ」
両肩を掴まれ、体が離れる。
腕を取って睨んでみたが、彼はいつものように微笑むだけだった。
「送るよ」
頷くことしかできなかった。それが正解だから。
わからなければ、間違えることができたのに。 <> ar row s 3/3<>sage<>2009/10/14(水) 23:42:40 ID:nLuconNaO<>
chapter3「C→B」

夜中に突然の来客。髪も服も雨で濡れていたので、有無を言わさず浴室に押し込んだ。

独り身だから気兼ねされないのは良いとしても、おもてなしできないのは悪い気がする。

用意した真新しいシャツを着た彼が浴室から出てくる。ソファに座り込み
「ウチには一度戻ったんですが、何か、ちょっと」と来訪の理由もぼかす。
理由はどうあれ、こうして若い子に頼りにしてもらうのは、嬉しい。
温かいお茶をテーブルの上に置くと、彼は「すみません」と小さく呟き
両手でカップを取って啜った。
「泊まっても良いからな」
肩を叩くと、彼は笑みを浮かべて「はい」と答えた。
シャワーを浴びて戻ると、彼はソファの上ですやすや吐息を立てていた。
変な体勢になってはいけないので、慎重に抱えてベッドに寝かせる。
毛布を被せる際に、ふと顔を覗き込む。
長い睫毛。整った顔立ち。無防備な若さ。
きれいだ。
頬に手を伸ばしそうになって、慌てて手を引っ込めた。
何をしているんだ。
思いもしなかった衝動に顔が熱くなって焦る。
冷たい水でも飲もうと背を向けると、ついっと背中を引っ張られる感覚。
振り向くと彼の手がシャツを掴んでいた。
寝ぼけた掠れ声で、彼はその名を呼んだ。
ここにはいない、彼の想うひと。
手が離れ、ぱたりと落ちた。

先ほどまでの浮かれた熱はすっかり引いている。
ひざまづいて、放り出されたその手をベッドの上に置き、
再度、その端正な顔を見下ろす。
愛おしくなって、彼の柔らかな髪をそっと撫でた。 <> ar row s (終)<>sage<>2009/10/14(水) 23:44:42 ID:nLuconNaO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 一方通行<>sage<>2009/10/15(木) 03:41:46 ID:5UvxeSUY0<>  ____________
 | __________  |  竜の1994→02だってさ
 | |                | |   当然ながらエロもないし恋愛色もナシ
 | | |> PLAY.. .      | |  
 | |                | |           ∧_∧ ぶっちゃけると…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 本命は0602なんだ…
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | 勢いにまかせた。
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | 変なトコあったらゴメン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 一方通行 1/5<>sage<>2009/10/15(木) 03:44:14 ID:5UvxeSUY0<> 青いコアラは微動だにしない。
その人をなめくさった表情のまま動かない。
青コアラのの視線の先には背番号2。

その背番号を持つ彼は人当たりがよさそうに見えて実はそっけなかった。
いや、青コアラに対してだけかも知れないけれども。

実際同じマスコットのはずなのにあのメタボなツバメとは仲良くしている。
あのおなかをぽっこんと叩いている所も見たことがある。
バッグを貰った 等と微笑ましい交流までしていたりもする。

注目を浴びることが好きな青コアラは
彼の注目が自分に向かない事に少しだけ不満を感じていた。

どうにかして彼にこちらを向かせたい。
さあ俺を見ろ!といわんばかりにアピールしても無表情でスルー。
背後で投球モーションを真似しても全くいじられない。
寧ろ視界に入っていないんじゃないかと思う程だ。

彼と仲のいい31番はまあしょっちゅう相手してくれるし(いじめ的な意味で)
彼とコンビを組む6番も稀ながらいじってくれるのに(いじめ的な意味で) <> 一方通行 2/5<>sage<>2009/10/15(木) 03:48:28 ID:5UvxeSUY0<> 優勝した年の特番でほぼ初めて面と向かって「弩荒」と名前を口にされた時
本を受け取って「有難う」と言われた時、青コアラは感動に震えた。
その後彼に解答フリップを投げつけられ、彼の相方には本を投げ捨てられたが。
あれはスベった自分へのフォローだったんだと後になって気付いた。


いつだったか自分に米俵を渡してくれたこともあった。
丁度そこに居たからとりあえず渡しておいた という選択肢は消しておく。
その時は獲ったどー!と心で雄たけびを上げ、米俵を高々と上げておいた。

よく考えれば番組で一緒になる機会はたくさんあったのに
居の上さんたちと一緒だったあの時も2、3度冷たい視線を頂いた位だ。
というか基本こっちを見てくれなかった。
思いっきり隣に居たはずだと青コアラは記憶している。

そんな事を考え初めて5分。
未だ青コアラは微動だにしない。
動かなくても誰も気にしないのだが、その姿はあまりにも不気味だった。
次の瞬間尻尾をぽるんと触られる。
きゅんっと内股になり肩をすくめるリアクションを取った後
慌てて振り返ると背番号6が歩いていくのが見えた。

居畑だ。 <> 一方通行 3/5<>sage<>2009/10/15(木) 03:50:58 ID:5UvxeSUY0<> すかさず腰をくねらせ文句を言うように指を指す。
その後自分の尻尾を追いかける犬のようにくるくると回ると
青コアラはやれやれと言った様に両手を挙げ
ドーム内を無意味に指差し確認し始めた。

照明、カメラ、スクリーン、打球の行く先、そして背番号2。

青コアラがよく見かけるのは後ろ姿。もしくは横顔。
前に回ればいいじゃないかと思うだろうがそれが出来たら苦労しない。
ジブンだって色々考えてるんですよね。とふんぞり返ってみるがすぐにため息に変わる。

下手に視界に入って近づいたらガチで嫌われる自信がある。
しかしエンターテイナーである青コアラにとっては仲良くなれない選手が居るなんて許せない。
他チームならともかく自チームだ。

そんな事を言いつつも
背番号3番のあの方には何故か恐れ多くて近寄れない青コアラだけれど。






やがて練習を終えて選手がぞろぞろと帰ってくる。
几帳面な粗木は自らボールを集めて籠に戻していた。

今がチャンスだ。 <> 一方通行 4/5<>sage<>2009/10/15(木) 03:52:44 ID:5UvxeSUY0<> さささと気色の悪い動きで彼に近づく青コアラ。
ボールを拾って軽くぽんと放り投げるその後姿を見つめる。
青コアラは足元に転がるボールを拾った。
いつものように、守乃に絡んでいく時みたいに気楽にすればいいんだと思えば思うほど緊張する。

中々動けないでいる内に、目の前の粗木が振り返った。
試合じゃない時は開いてるか開いてないかわからない、と
自分で言っていた彼のぼんやりとした瞳が少しだけ驚いたように見開く。

彼の目は不思議だと青コアラは思う。見るタイミングによって印象が変わるのだ。
二重でぱっちりとしている筈なのに鋭い印象を持つその瞳は
ある時は眠そうに閉じかけているが、試合中はギラリとした光をたたえ見開かれる。

青コアラはどの顔もしっかりと見たことはなかったが、その時確かに感じた。
試合中の目ともまた違う素の表情。

その事を認識したとたん青コアラのテンションは一気に上がった。
がここで調子に乗ってはいけない。
こんな至近距離でいつもの不審な挙動を見せてはいけないのだ。
微笑を浮かべたまま…まあ常に笑顔なのは当然だが、彼にボールを渡す。
それを見た粗木は目を見開いたまま軽く首をかしげた。
そしていつものように鼻の下をぐっと伸ばしてきゅっと唇を引き伸ばす。
これは彼の癖。 <> 一方通行 5/5<>sage<>2009/10/15(木) 03:55:05 ID:5UvxeSUY0<> 受け取ったボールを手で器用に回転をつけながら放り、キャッチすると
青コアラに向かって投げるような構えを見せた。
ぼんやり眺めていてリアクションが遅れたが、慌てて顔を手で覆う。

が、いつまでたっても硬球の衝撃は来ない。
そっと目を隠していた手を解くと、粗木はこちらを見て笑いながらボールを籠に放り
青コアラがしていたように指差し確認をしながらベンチに戻り、更に奥へと引っ込んで行った。

今、何が起こったんだろう。
笑いかけてくれたのは夢じゃない?
いじってくれたのは幻じゃない?
嫌われてるわけじゃない?
抑えていたテンションが再びじわじわと上がってくる。
足を蟹股に開き、手で球体を作りながら地面から何かを沸き立たせるように震わせると
渾身の力を込めて両手をドームの天井に突き出した。


嫌われてる訳じゃないーーー!!




波動でも出しているのかという様子の青コアラの頭に
31番をつけた悪魔が硬球を投げつけるのはその3秒後だったという。 <> 一方通行<>sage<>2009/10/15(木) 03:59:14 ID:5UvxeSUY0<>
 ____________
 | __________  |
 | |                | |       反省はしていない。
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 実際02は多分普通に興味ないんだと思うwww
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) そのほうが逆にハイタッチとかした時にぐっとくる。
 | |                | |       ◇⊂    ) __  二人が絡むの新鮮だよね。
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  | 
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | ありがとうございました。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 好き好き大好き<>sage<>2009/10/15(木) 14:02:30 ID:Badiubig0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  飛翔連載   イ呆イ建室の死ネ申
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  美←本  病み気味注意
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )   ドキドキ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |


<> 好き好き大好き1/2<>sage<>2009/10/15(木) 14:05:05 ID:Badiubig0<>
最近昼になると
本好がオレに、弁当を渡しに来るようになった
どう見ても手作り弁当なんだが
さすがに母親か何かが作ったんだろうな、うん
しかし、何で急に弁当…
直接、理由を聞きてー気もするが
本好はただオレの横に座って
弁当食ってる姿を、笑顔で眺めている

「美っちゃん、どう?美味しい?」
「…ん?お…おお、美味ーぞ」
「良かったぁ、明日も楽しみにしててね」

本好はそれだけで、腹一杯みてーに満足げ
まぁオレからしても
弁当食って感想述べるだけで喜ぶっつーなら、いくらでも食う
つーか実際、本好から貰う弁当はいつも
不思議なぐらい好物が揃ってるから、量が多めでもすぐ平らげちまう

「綺麗に食べてくれたね、ありがとう」

本好はそう言いまた笑う
あぁ、理由なんか必要ねーな
こうして、楽しく飯が食えるだけで

<> 好き好き大好き2/2<>sage<>2009/10/15(木) 14:09:29 ID:Badiubig0<>
最近、美っちゃんの為に弁当を手作りするようになった
いや、結局は自分の為かもしれない
美っちゃんは気づいていないみたいだけど(美っちゃんのそういう単純な所も好きだけどね)
出来るだけカロリー高めの物を詰めているんだ
そんな食事を毎日していれば、当然今以上にぶくぶく太るよね
そうすれば、今以上に悪い虫が寄りつかなくなる
俺は平気だよ、美っちゃんがどんな姿になったって
むしろ太ってる美っちゃんも大好きだよ、熊のぬいぐるみみたいに可愛くて部屋に閉じこめたくなっちゃうしね
そんな事も知らずに弁当にがっついてる美っちゃん、とても野性的で見てるだけでどうにかなっちゃいそうだよ

「美っちゃん、どう?美味しい?」
「…ん?お…おお、美味ーぞ」
「良かったぁ、明日も楽しみにしててね」

嘘じゃないよ
これからも、いつまでも飽きさせないからね
たとえ途中で罠に気づいても逃がさないよ、美っちゃんの好みは知り尽くしているんだから
麻薬なんか無くても家庭用の調味料だけで、美っちゃんを中毒にだって出来るんだよ

「綺麗に食べてくれたね、ありがとう」

ううん、まだあるよ
甘ぁいデザートだって用意しているんだから
いっぱい食べて、早く俺だけのモノになってね

大好きだよ、船長(キャプテン)
<> 好き好き大好き<>sage<>2009/10/15(木) 14:10:32 ID:Badiubig0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               初投稿です
 | |                | |           ∧_∧   ヤンデレ萌え
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )   
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 01:17:39 ID:PNPt06sI0<> >>223
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
竜に飢えていたここ数ヶ月
ありがとうございました!

自分はD31×怒荒ですが
こういう他の竜戦士も好きです

もしかして以前に書いてくれてたD31×怒荒神ですか?
自分はあれでこのカプにはまりました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 02:52:01 ID:0RtsopKNO<> >>223
青コアラがこんなに萌えるもんだとは知らなかった…
新しい世界が開けましたありがとうございました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 11:34:06 ID:DTAXX5xG0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ぬるぽ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ガッ
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )   ドキドキ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 1/2<>sage<>2009/10/16(金) 11:36:27 ID:DTAXX5xG0<> 1時間。
1時間逃げ切れば。
「ねえ、待ってよ」
ああ、あいつが来る。
また逃げられないんだろうか。
ひょこりと姿を見せたあいつは、俺を見つけて嬉しそうに笑った。
その無邪気な笑顔に鳥肌が立つ。
「してもいい? させてよ」
「……やだ」
震える声で拒否する。
今日こそ、今日こそはさせない。俺は自分の尊厳を保ってみせる。絶対だ。
「なんでよぅ。させてよぉ」
不満そうに頬を膨らませたあいつは、ゆっくりとこちらに歩を進めた。足がすくむ。
昔からあいつに慣らされた身体は、自分の意思に反して最初から抵抗を諦めているようだった。
「やだ、やだ、やだ……!」
「そんなこと言わないの。本当は嬉しいくせにぃ」
子供みたいに繰り返す。あいつが宥めるように、腰が抜けた俺の頭を撫でる。その感触はやはり慣れ親しんだもので、心のどこかで安心している自分が嫌になった。
今までどれだけされてきたと思ってるんだ。もう、あんな思いはしたくないのに。
<> 2/2<>sage<>2009/10/16(金) 11:37:21 ID:DTAXX5xG0<> 額に唇が押し当てられる。温かい、あいつの唇。
「ね。大丈夫、優しくするから」
「嘘だ、いつもそう言って、」
「今度は本当だよ。怖くないから安心して。ね、愛してる」
ずるい。
そんなこと言われたら、俺は。
「……嫌なのに」
「嘘つき」
あいつがふんわりと笑って、へたりこむ俺をぎゅっと抱き締めた。
ああ、そうなのかもしれない。
俺はいつもいつも、あいつに見つけて欲しいのかもしれない。こうされたいのかもしれない。
だから何度もこんなことを繰り返すんだろうか。何度も。
あいつが優しく、耳元で囁く。吐き気がするくらい嫌いで、愛しくて堪らない声で。







「ガッ」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 11:38:51 ID:DTAXX5xG0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               ガッ×ぬるぽ
 | |                | |           ∧_∧   「ぬるぽして1時間ガッされなかったら〜スレ」
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )    …系の
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 15:54:22 ID:6eSuIdH00<> >>239
何かに目覚めた!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 16:53:15 ID:If0cXy4pO<> >>239
目からウロコ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/16(金) 18:53:03 ID:3JgJrao10<> >>239
なんだ、ただのネ申か <> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩<>sage<>2009/10/16(金) 22:37:16 ID:ZtfFeS2V0<> オリジ ゲイニソでコソビ外カプ
全国区ブレイク後輩×ローカルゲイニソ先輩

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 1/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:38:37 ID:ZtfFeS2V0<>
アイツ――ただいま遠距離恋愛中の俺の恋人は、年齢も芸歴も俺よりずっと下ながら、今や日本中の人気者だ。
テレビは全国ネットを中心に昼夜出ずっぱり、人気お笑いコソビとして相方と共に姿が画面に映らない日は1日とてない。
人気といいオファー数といい、他所の事務所も含めた今の若手の中では、恐らくナンバー1,2を争う勢いだろう。
今日も今日とて東京の方で、レギュラー番組のスタジオ収録か特番のロケを忙しくやっているに違いなかった。

一方の俺は地元・大阪でいつも通り、1日2回の舞台公演。
いつもと同じ控室で、いつもの待ち時間をいつもの様につぶしている。
芸歴を重ねたおかげで仕事もようようもらっているが、その数がピークに到達してからここ数年は大体こんな感じ。
他には地方の営業がちょこちょこと入るくらいで、さして変わりばえのない日常。


そんな格差婚ならぬ格差恋愛にもすっかり慣れてしまった今日この頃――。 <> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 2/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:39:41 ID:ZtfFeS2V0<>
「兄さん兄さんー!これ見ましたー?」
息せき切って控室に入ってきたのは、この劇場ではそこそこ共演回数の多い某後輩。
早くにブレイクしてもうたアイツとは同期で、俺がこの年代まとめて可愛がってやってたこともあって、兄さん兄さんとよう懐いとる。
「あ?見たって何をやねん」
「あいつらのインタビュー載ってるんですー。ほら、一昨日発売のこれー」
奴が差し出したそれは、何やら横文字が目にチカチカする、およそ俺には無縁の女性向けファッション雑誌だった。
ちゅーか、俺はもちろんこいつも絶対読まんような類の本やと思うんやけど…。
入手経路を聞いたら、合コンで知り合った、めっちゃ自分好みの女の子やて。
「あいつらが載ってたから買ったー、って、嬉しそうに見せてくれたんですー」
ほんで自分も買うたと…あー、そーかい。
おまえ、その子完全にアイツらのファンやで。この時点でもう脈ないやろ、多分絶対。

とまあ、こいつの合コン惨敗記録更新フラグはともかく。
「アイツらも、こないな雑誌の取材受けるようになってんなあ」
昨今の売れっ子ゲイニソっちゅーたら、もうホンマにどこのアイドルやってぐらいの扱い受けるのも全然おかしない。
イケメン同士のコソビとかやったら、事務所が初めからそういう売り方でやってくのもあるくらいや。CD出したりとか、写真集出したりとか。
こいつらも全国区デビューで成功して、そういう待遇受けるようになってんやなあ…。

俺は煙草をふかしながら、厚手のページをパラパラとめくる。
目当てのグラビアページはすぐに見つかった。
9ページに渡る大特集。
今大人気のお笑いゲイニソ・――の素顔
ありがちな見出しの下には、笑いをカケラも感じさせない、モデル立ちに流し目でがっつり写っているアイツ(とその相方)。
それを見て『ちょお、なんやアイツ、カッコエエやん』と思ってしまう自分に、ちっとばかし腹が立つ。
<> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 3/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:40:48 ID:ZtfFeS2V0<>
「ほんで、何やねん。何ぞおもろいことでも書いとったんか?」
「ええ、もうめちゃめちゃおもろいこと、言うてましたよ〜」
どうやらインタビュー形式の取材やったらしい。
示されたページは、同じ質問に対してアイツと相方がそれぞれ答える、というオーソドックスなQ&Aのコーナーで。
俺はそいつが「ここです、ここ」と指差したところの文字を、つらつらと目で追ってみる。
「なになに、『尊敬するゲイニソさんは誰ですか?』…」

……よもやこんな雑誌の中に自分の名前が載る日が、そしてそれを見つける日がこようとは。
ちゅーか、アイツもまぁ、何の捻りもなく直球で勝負してきたもんやなあ。
いや、正直悪い気はせぇへんよ?…いろんな意味で。
けどな、今この場では、先輩のコケンっちゅーもんを守るのが最優先やねん。
アイツに(←実はここが最重要)尊敬するゲイニソとして名前を挙げられたからって、ここでゆる〜い顔見せるわけにはいかんのや。

「俺の名前出したかて、これ読んだほとんどの奴は、『誰やねんそれ』ってツッコむやろ。アイツもアホやなー。知名度考えた上で発言せんと、好感度上げるどころか逆効果やっちゅーねん」
とりあえず自虐的な感想で、別に嬉しくもなんともねーよ風にアピールをしてみる。
が、奴は俺の思惑に気づいてか気づかずにかはわからないが、相も変わらずニヤニヤ笑いを浮かべたまま、ずいっと雑誌を俺の方に押し戻してきた。
「それだけやないんですー。続きっ、その続き読んで下さいよ〜」
「あん?続き?」
えらい意味深な笑い方が気になるが、俺は言われた通り続きの文面に目を走らせた。
<> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 4/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:41:51 ID:ZtfFeS2V0<>
『あの人のツッコミは最強です。僕はツッコミであの人の右に出る人はいないと思っています。もし適うなら、あの人とコソビで漫才やってみたいですね』


「……どんだけ持ち上げてもおごるのは×××(←行きつけの激安飲み屋)だけやっちゅーねん」
独り言さえ何と言えばよかったんか、正直わからんかった。
くすぐったいような、なんだかムズムズする感触に体全体を支配されて、うまい言葉が出てけーへんで。

アイツはそこにさらに追い討ちをかける。


『あとゲイニソとして尊敬しているのはもちろんですけど、男としても最高にカッコイイ人なんです。僕が女の子やったら、多分絶対告白してたと思います(笑)』


「…………」
俺は初めて『言葉を失う』という言葉の意味を体現した。
後から考えたら、あー、ホンマに言葉ってなくなるんやなあ…みたいな。
下手したら、あのまま舞台もやれへんかったかもしれん。
実はかーなりヤバイ状態やったと思う。
<> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 5/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:42:54 ID:ZtfFeS2V0<>
「兄さん、めちゃめちゃ愛されてますやん〜」
ここでようよう、奴のニヤニヤの意味がわかった。
もちろんこいつは俺とアイツの関係なんか知らんわけやから、別に深い意味で言うてるんじゃないってはわかっとるんやけど。
「アホ。男に愛されて嬉しいわけあるか」
「ええですやん、今を時めく人気ゲイニソにベタ惚れされてるんですよ〜?アイツのファンの子ぉから闇討ちされんように、せいぜい気をつけてくださいね〜」
……こいつホンマに知らんのやろうな?
こういう返しされたら、なんか不安になってまうやん。
それとも人間後ろ暗いところがあると、そないに思ってしまうもんなんやろか?

「…ちょお電話してくるわ」
俺は短くなった煙草を灰皿に揉みつぶし、ガタンと大き目の音を立ててパイプ椅子から立ち上がる。
「お、アイツにラブコールですか?」
「んなわけあるかい!お前とアホな会話しとる間に、他の奴からワン切りがあってん!」
俺は右手のケータイをひらひらと振ってみせ、足早に控室を出る。

廊下の角を曲がって、さらに曲がって、階段を降りて――
非常階段近くの人気のない場所にたどり着いた
<> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 6/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:44:08 ID:ZtfFeS2V0<>
「くっ、はあ……」

これで人目につかないと思った途端、張り詰めていた糸がプツリと切れたかのように、へなへなとその場に座り込む。
頬が熱くなっとるのが自分でもわかった。
これで顔に赤みがさしとったらアウトやで?
怖くて鏡見れんけど、大丈夫…やろ?
なあ、誰か大丈夫て言うてくれよ。
洒落ならんて、ホンマにっ。

「ちょお、勘弁してくれや…」
何が(笑)、やねん。
よくもまあいけしゃあしゃあと、あんなん言うてくれたもんやなあ。
女の子やったら?
お前男でも普通に告ってきたやないかあああ!!!

「はぁ……」
せやけど、何でやろう。
これ以上はないってくらい恥ずかしい気持ちでいっぱいやのに。

『兄さん、めちゃめちゃ愛されてますやん〜』


――ああ、俺ホンマに、アイツにめちゃめちゃ愛されてんねやって
それを素直に嬉しいって思ってしまう自分がここにおって――


なんかもういろんな感情が入り混じって、それを一つの言葉に集約して、
「……かなんなぁ」
そう呟いた次の瞬間、
<> オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 7/7<>sage<>2009/10/16(金) 22:45:14 ID:ZtfFeS2V0<> ヴゥゥゥン ヴゥゥゥン

「!?」
『劇場に入った時から』マナーモードにしていたそれが『本当に』震えて、俺は思わずビクッとした
着信は――

「…何でこのタイミングやねん」
アイツ、今収録中やなかったんかい!
ていうかもう盗聴器かなんかしかけとるんとちゃうか、ああん!?

「…もしもし」
「もしもし、お疲れ様です。今ちょうど、休憩入ったんですよ。もうすぐ開演でしょ?ん?どないしたんですか?声、おかし――」


――アイツに俺の逆鱗が落ちるまで、あと0、コンマ5秒





□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

選ばれし者にだけ許される最強の愛情表現方法
そしてセンパイはもうツンデレキレキャラでいいじゃないか
<> 大鳥 和歌⇔粕1/5<>sage<>2009/10/17(土) 00:38:33 ID:d/KYUwMp0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  神舌の神シーンで禿げちらかしたヨ★
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  その勢いでやった。後悔はしていない。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
※ナチュラルな感じです。EROナシ。ホノボノ。 <> 大鳥 和歌⇔粕2/5<>sage<>2009/10/17(土) 00:39:53 ID:d/KYUwMp0<> 和歌林の目の前には、ピンク色のベストがひらひらと風に靡いていた。
それは珍しい事にフローラル石鹸の香りを纏い、風下にいる和歌林の鼻腔を擽った。
「お前これ、本当に着んのか」
「なにが」
粕我の返事が、狭い部屋の中に響いた。開け放たれた窓からは、初秋の風が入り込んでいる。
和歌林は呆けたように窓に向かって体を向けて座っていた。
ぽかぽかとした太陽の場所を探るように、身体を小さくさせて身を捩っている。
和歌林が無表情で口を開いた。
「ものすごい匂いがするぞ」
「香りと言ってくれ、香りと」
台所と言うには狭すぎる通路で、粕我はオリジナルジュースを飲み下す。今日の出来はまた一段と良い。
粕我は高らかに「プッハァ!」と声を出すと、オリジナルジュースを引っさげて部屋へ戻り、ベストポジションへどっかりと座った。
「飲むか、和歌林」
「いらねーよ」
「じゃあいいもんねー俺だけ飲んじゃうもんねー」
キヒヒ、と厭らしい笑みを浮かべて、コップに二杯目を注いでいる。
和歌林は、ちらりと粕我の姿に目をやると、すぐにまた窓の方へ居直った。
風が和歌林の頬を撫でる。ぴりりとした冬の冷たさを含んだそれが、粕我のベストも揺らす。
そしてフローラルな香りで部屋中を満たし、太陽光の届かない所にいる粕我を・・・・・・
「へぶしッ!!」
充分に冷やしていた。
「風邪ひくなよ、粕我」
「ウィ」
「・・・・・・こんなに太陽は暖かいのに、風はつめてーよなぁ」
ぼんやりと言う和歌林を見て、粕我は白けた様子で言う。
「詩人気取りですか」
「ばか詩人とかじゃねーよ本当の事言ってんだろばかが。心配してやって損したよほんとに」
「おーおーえらくつっかかってくれるじゃないの」 <> 大鳥 和歌⇔粕3/5<>sage<>2009/10/17(土) 00:40:41 ID:d/KYUwMp0<> 粕我の半笑の声が、和歌林の耳に入ってくる。粕我に似合わないフローラルな香りが、和歌林の鼻に充満する。
嫌だな、と和歌林は思った。すぅ、と息を吸うと、吐き出しながらゆっくりと口を開く。
「お前このベストちょっとあれじゃねぇ?匂いすぎだろ?」
「フローラルが?」
「うん」
「だめ?」
「うん」
「なんで?」
「俺が好きな匂いじゃないから」
「なんだよ、別にいいだろ、俺が着るんだから」
粕我に言われて初めて、和歌林は自分の気持ちと現実との違和感に気付いた。
粕我の言っている通り、自身が着るわけでもないピンクのベストの匂いなど、どうでもいいはずだ。
しかしどうでも良くない。
漫才の最中、隣にいる自分にこうまで馨しい香気が迫ってくると思うと、吐き気すら催しそうだ。
粕我の声色は、完全にきょとんとしている。和歌林はそんな粕我の鈍さを、怒りすら覚えながら痛感した。
和歌林はイラついた様子で粕我を振り返り、言った。
「お前、乾いたらすぐこれ着てさ、しばらくどっか行ってくたびれさせて来てよ」
「はぁ?」
「俺これ、本当に嫌なの」
「・・・・・・なんでそこまでフローラル嫌うかねー」
粕我の呆れたような口調に、和歌林は何も考えずに言い返した。
「いつものお前の感じじゃないからだろ」
「・・・・・・」
「いつもお前こんないい匂いしてねーだろが。若干おっさん臭してるくせによ」
「・・・・・・・・・・・・」
「なんだよ、キョトンじゃねーよ。ばか。前の日食ったもんとか結構バレてんだぞお前。体臭に出てるんだよ、気づけよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
粕我は素の顔で和歌林を見詰めている。一切声を発さず、ただ和歌林を見詰めている。 <> 大鳥 和歌⇔粕4/5<>sage<>2009/10/17(土) 00:41:26 ID:d/KYUwMp0<> 我に返り、ギョッとして和歌林は顔を引きつらせた。自分が言ったことが粕我にどういう影響を齎したのか、一切判断できなかった。
しばらく沈黙が続くと、粕我が「あーそぅ」と、態とらしい大きい口をあけた。
「和歌林はあれですか。粕我の香りをくんくんしてたわけですか」
「はぁ!?」
「そのくんくんした粕我の香りが消えちゃうのが寂しいわけですか」
「なんだよそれ、きもちわりーよお前」
「えーえー。気持ち悪くて結構!」
言い切って、コップを荒々しくテーブルに置くと、粕我は和歌林に30cm程にじり寄った。咄嗟に和歌林が後ずさり、身構える。
喧嘩になるとでも思っているのか、その目は隙を見せないように必死に粕我を捉えていた。
「安心しろ、和歌林」
「なに」
「ベストはすぐに粕我色に染めてやるから」
「なにそれキモ・・・・・・」
「それにお前もな!!」
「キモイっつってんだろお前」
ほぼ条件反射で飛び出す和歌林の平手を甘んじて受ける粕我の顔は、完全に緩んでいた。

<おわり>
<> 大鳥 和歌⇔粕5/5<>sage<>2009/10/17(土) 00:42:11 ID:d/KYUwMp0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |               オソマツサマデシタ
 | |                | |           ∧_∧ 神舌 D/V/D! D/V/D!!
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 1/4<>sage<>2009/10/17(土) 01:28:55 ID:p7cTGSci0<> ゴウ受のつもりだけどカプ未満でほのぼの寄り。大人二人と子ども一人な話。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


「何やってんだ、このバカ!!」

関係を変えるきっかけは、ある日突然訪れる。
いつものように軽く相手をしてもらおうとリョウマの道場にやってきたゴウの相手になったのは、そこそこ長くいる弟子の一人。
偶々リョウマが料理中で手が離せない時にきてしまったからだったが、中々の実力者だと知っていたのでゴウは相手をする事にした。
それが間違いだった。
手加減をするのにもそれなりの実力が必要で、した事のない人間にそうできるものではない。その上元々ゴウは手加減など知らない人間だった。
相手が弱くないという思い込みもあったせいで力一杯に相手をしてしまい、まずいと思った時にはもう目の前には怪我人が一人。
飛んできたリョウマの拳は、今までの中で一番痛かった。
その後ちゃんとゴウは謝り弟子の怪我もそう大した事はなかったのでリョウマの怒りはすぐに治まったが、ゴウの中にはもやもやが残った。
ゴウはリョウマは自分と似ていると感じていた。だから一緒にいても彼には遠慮しなくていい。ガーンとぶつかっていっても受け止めてくれるし、口喧嘩をして別れても次の時にはそんな事はすっかり忘れてケロリとしている。
大人と子どもなんて気にせずに隣で一緒に笑っていられる、そんな関係がゴウは好きだった。
でも、分かった。リョウマはちゃんと手加減ができる。どんなにひよっこ相手でも怒らずに相手できるし、こちらが相手なら基地に戻って怒られない程度の怪我で済ます。
今まで何度もこの道場にきておいて、ゴウはそんなよく考えれば当たり前の事に気付けなかった自分が嫌になった。
子どものように見える時はあっても、リョウマはやはりゴウよりずっと大人だった。
ここで素直に尊敬できればよかったのだがそれができないからこそゴウは子どもで、自覚したせいで妙に恥ずかしい気持ちで赤くなる顔を隠して、別れの挨拶もろくにせずにさっさと基地に逃げ帰ったのだった。
<> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 2/4<>sage<>2009/10/17(土) 01:29:38 ID:p7cTGSci0<> 基地に帰ってすぐ、鬱憤を晴らすかのようにゴウはハヤトの部屋で相手をしろと騒いだ。
まだ仕事があると怒られると、さっきの事もあってゴウは近くの椅子に座って急に大人しくなり、そんな様子が気になってしまいハヤトは結局仕事を中断。珍しく色々考えていたゴウの話を聞く事になったのだった。
リョウマに怒られたというところから俺って駄目だなあと言い出し始め、本当に珍しくゴウは完全に沈んでいた。
「あの最後の戦いに勝ったのだって三人でやった事だしさ……。何て言うか、俺が一人でやった事なんて何もないんじゃないじゃねーか?」
落ち込んでいる今の状態のせいとはいえ、自分一人の手柄ではないと認められるようになった事をハヤトは嬉しく思った。
メンバー選択は能力が最優先で人格は考えていなかったが、最初は噛み合わなかった三人の歯車も今では合いすぎる程に上手く機能している。チームは三人一組。一人だけでは駄目だが、その一人がいないと駄目だ。
ハヤトはかつての自分たちの姿を思い出した。
「お前は、真ゲッ夕ーを起動させただろう」
「あれは……ショウとガイがピンチだったから上手くいったんだよ。だから、俺一人の力じゃねーじゃん」
「きっかけはどうであれ、やったのはお前だ。お前が一人で動かしたんだ。……俺たちには、できなかった」
5年前のあの日、一人で足止めとして戦っていたムサシが俺たちの到着を待つのは無理と判断して敵を道連れに自爆して死んだ。
そんな事当然リョウマとハヤトは信じたくはなかったが、自爆の影響で跡形もなく崩壊してしまった街を前にそんな甘い事を言っていられる余裕はなかった。
チームは終わりだ。言葉にしなくても二人には分かった。俺たちは、三人揃ってゲッ夕ーチームなのだから。
「特にリョウマはあの時状況が普通とは違っていたせいもあってな。そうじゃなきゃ、真ゲッ夕ーを起こしてムサシを助けに行けたはずだってずっと悔やんでいた。俺もそうだ。あの時の事は、俺たちにとって消えない傷になったんだ」
あの後リョウマは研究所を去りそれから5年間一度も会う事はなく、ハヤトもハヤトできたる日の戦いに備えて新しいロボットの開発をする事を選び、忙しく仕事をする毎日。
過ぎ去った日々を思い返しているのか、ハヤトの表情は暗い。 <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 3/4<>sage<>2009/10/17(土) 01:30:41 ID:p7cTGSci0<> 辛いならもう話すなよ。
ハヤトの表情を見て、ゴウは自分からこんな話を振ってしまった事を後悔した。
思えば相手が仕事をしているのに突然乗り込んできて愚痴を聞かせるなんて子どもだと思われても仕方ない。
ますます自己嫌悪に陥りそうなゴウの心情に気付いてか、ハヤトは微笑んだ。
「ゴウ、お前には感謝しているんだ。お前は、ちゃんとショウとガイを助けに行けた。
俺の作ったチームが俺たちを超えた。あの時の喜びがどれ程のものか……言葉では表せんな。
俺たちができなかった事をお前がやってくれた事で、俺は救われたよ。きっとリョウマもそうだ。あいつは、そんな事お前に素直に言いそうにないけどな」
優しそうな笑顔。そんなハヤトを見たのは初めてだったが、何故かゴウにはそう感じなかった。

……そっか、見た事あるからだ。俺、前に一回こんな笑顔を見てる。

思い出したのはあの最後の戦い。戦いを終えて帰ってきた時、笑顔で待っていたリョウマにゴウは抱き締められた。
そんな事は初めての経験で何をするんだと怒るゴウとは反対に見下ろす笑顔はどこまでも優しく、今のハヤトと同じものだった。

あの時のリョウマも感謝してくれていたのだろうか。子どもの自分でも、力になれたのだろうか。自分にとって大切な二人の力に。

そう思うと、ゴウの胸は熱くなった。
「お前を選んで良かった、ゴウ。これからも、俺についてきてくれるか?」
「え、あ……お、おう。今更、出て行くなんてできねーだろ。俺だって、ここに来て良かったって思ってるよ……」
まるでプロポーズだ。
大切だと自覚した途端にこんな事を言われ、一旦思ってしまったが最後、急に恥ずかしくなってきてゴウは話を逸らした。
「こ、こんな話をしたかった訳じゃねーんだよ。相手……そう、相手しろって言いにきたんだからな!」
悩みは吹き飛んだのかいつもの調子に戻って騒ぐゴウを子どものようで可愛いものだと、ハヤトはまた笑う。
「これが終わったら、遊んでやるから」
子どものようだと思っていた事を引き摺ってしまったようでそんな事いつもはしないのに、困った子どもをあやすようにハヤトはゴウの頭を撫でた。
「っ!」

その瞬間、ゴウが茹で蛸のように真っ赤になったとハヤトは後にリョウマに語る。

<> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 4/4<>sage<>2009/10/17(土) 01:31:18 ID:p7cTGSci0<> また逃げてしまった事で、ゴウは自己嫌悪に陥っていた。
「何やってんだよ、俺……」
顔を赤くして走り去った自分をハヤトは絶対に変だと思っただろうと、考えてみてさらにへこむ。
リョウマは変と思っても聞いてきたりしないだろうが、ハヤトは違う。どうしたのだと聞かれたくはないが変だと思われたままなのも困る。
次に会った時にどう答えればいいのかと考えてみたが、結局答えはでない。
「今日って何でこう色々あんだよー……」
自分を日常から連れ出し、ゲッ夕ーを与えてくれた男。
お前に地獄を見せる男だなどと最初は言われて驚いたものだが、ゴウにとっては自分を選んでくれた事は恨むどころか感謝してもし足りない程で、リョウマに対してとは違ってハヤトの事は素直に尊敬していた。
でもあの撫でられた瞬間、目の前のハヤトではなくリョウマに怒られた後の事をゴウは思い出していた。
怪我した弟子の手当てをすると言って道具を取りに行く前。
『ちゃんと待ってたら、後で遊んでやっからよ』
ぽんぽんと頭に触れる大きな手。俺よりもずっと強い、大人の手。

子ども扱いされて嬉しいとか、俺どうかしてるんじゃねぇの!?

普段は子ども扱いするなと怒っているのに、それが嬉しい。あの二人が大人なのが嬉しい。
引かない顔の熱はくらくらと眩暈がしそうな程で、吹く風が当たるのが気持ち良い。
気付かない方が良かったのか、気付いて良かったのか。こんなに振り回されているのはきっと子どもの自分だけ。

あぁもう、大人ってずるい!!


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ネオは話終了後の妄想がしやすくていい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 01:40:45 ID:DhGRbyzf0<> >>259
うわあああ旧チームから可愛がられるゴウが可愛い!!
今まで正直師範とゴウは同レベルだと思ってましたごめんなさい師範
ネオゲは最後がまれに見るハッピーエンドだからこそ、って感じですね
GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 02:33:12 ID:NnnfoGsP0<> >>234
申し訳ない。別人です!
私は昔に0602系を投下してから久々の投稿でしたww
私も飢えすぎて自給自足状態ですwww

>>235
こちらこそ!有難うございました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 09:28:18 ID:G7nGLqgE0<> >>223
まさか 里予 王求 で萌えられる日が来るとは
よかったです
また書いて <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 09:29:03 ID:7S08sOSh0<> >>261
もしやあなたは第37巻「スイッチ」の作者様では…? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 09:40:43 ID:5g322xnF0<> 作者の誰何は禁止でいいだろ
なんのための匿名掲示板だよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 10:41:37 ID:gQc18K4s0<> >>250
げき‐りん【逆鱗】
《竜のあごの下にある逆さに生えたうろこに人が触れると、竜が怒ってその人を殺すという「韓非子」説難の故事から》天子の怒り。転じて、目上の人の怒り。[類語] 怒り

逆鱗は落ちません <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 11:03:11 ID:G7nGLqgE0<> >>264
まあまあ
過去の作品が印象に残っていて
また書いてもらいたいという人が多いってことだから

読む人も楽しみ待ってるんだよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 12:16:12 ID:+42ctwJa0<> >>255
かわいいー!
若と粕の関係がとても自然でよかったです <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 13:18:10 ID:c73Tq3AwO<>
・コーラおいしいです、のAAより手前×奥×手前
・正直きがくるっとる


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> わたしをはなさないで 1/2<>sage<>2009/10/17(土) 13:21:29 ID:c73Tq3AwO<> 「たからくじがあたったのです」

広い湖にぽつねんと浮かんだボートの上で、彼は言った
「えいぷりるふーるでもいわないようなうそですね」

うそではありません、と振り上げられた彼の左手に頭を吹き飛ばされながら、これであたりやの仕事はさよならですねとひとりごちた
「ちいさないえをかいましょう にわにほうせきをたくさんちりばめて ゆうたろうのとしょかんもつけましょう」

「としょかんではなくほんだなだといっているのに」
それに宝石ではなく、ただの石や砂利のたぐいだ
ぎち、と彼がオールを漕ぐたびに軋んだ音がしてボートが揺れる

「これからはずっといっしょですよ」
あまりにも嬉しそうに彼が言うので、なんとなくその顔を真っすぐ見ることができず
それは良かったですね、とだけ素っ気なく言うと、少し悲んだ声で、ほかにいいたいことはないんですか、と不満げに揺れた
「ゆうたろうは わたしといっしょなのがうれしくないんですか」
ぎちぎち、ぎちぎち
答えず黙ってオールを漕ぐ

彼も悲しい顔のまま真似をして、こいつめこいつめ、と親の仇であるかのようにオールを漕いだ

ボートが同じところをぐるぐると回る
彼が余りにもめちゃくちゃにするものだから、衝撃で水面が跳ね上がって雨になった

ざあ、と降り注ぐ
彼はというと頭から水を被ったのも余り気にしていないのか、頬に滴る雫を指で掬って味を確かめている
カミカミスゥ
「こーらおいしいです」

それはしょうゆです、と言い掛けたのを飲み込んで、何と言ってやればいいのか分からず、そっとハンカチで顔を拭ってやった

ぼんやりと彼が笑う <> わたしをはなさないで 2/2<>sage<>2009/10/17(土) 13:26:04 ID:c73Tq3AwO<> 「ゆうたろう しっていますか」

しにがみがたべるのはりんごですか、と思ったときには手首のあった辺りに彼の肘が融け込んでいる「なにを」
叫ぶ間もなく融けて合わさってしまう。肘が、ああ肩が頬が、もう胸の辺りまで、そして心臓が

「ゆうたろう これはどろのふねなのです」

頭の中から彼の声がした
とたんにボートが形を失う。ひたひたとまとわりついてくるのは湖の水の青だ
ふたり一つになったまま、冷たい湖に投げ出された

あっというまに彼の光を映さない瞳がもう目の前にあって、共有する感覚は頭の天辺まで湖でいっぱいになっている
ボートも溶けて、かれもわたしも形を失って。沈み込んでいく。ああ、魂とはいったいなんなのだろう


肺から出た空気が遥か頭上の明るいところに昇っていくのを、ただ一緒に見ていた
「ふたりっきりですね」
それともゆうごうちゅうなのでひとりぼっちですか、とほざく。唇から空気の泡が昇る

「さかなにつつかれてしまえ」
「ゆうたろう」
「たからくじも いちおくえんもうそです でもずっといっしょなのはほんとうです」
「そうですか」

わたしをはなさないでくださいね
ぽろりとこぼれ落ちた思考を彼が頭のなかで勝手に拾って、だらしなく微笑んだのが自分にも分かった
頭に来たので自分のモノだとも忘れて腹を殴ってやった。口から大きな泡が出て、弾けた
なんだかとてもすてきだった
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 13:27:11 ID:c73Tq3AwO<>
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

萌が襲ったので突発的に書いてしまいました。
まったくきがくるっとる <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 15:54:55 ID:TIvLYFHT0<> >>271
がっぬるぽと言い、この手の奴に弱いw
萌えながら笑ってしまう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 17:55:51 ID:8xYyIuFp0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  木目木奉のラムと缶モナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  未満かモナ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> イルミネイト 1/3<>sage<>2009/10/17(土) 17:57:09 ID:8xYyIuFp0<>
俺はずっと、彼は下戸なんだと思っていた。
なぜなら彼は、俺が同席しているとき、一度も酒を飲んだことがなかったからだ。



そこは暗い、まるで深海に沈められたような、とあるバーの一隅だった。まだ開店したばかりの新しい店だということだが、彼は何度か使ったことがあるらしく、ウェイトレスが彼に向ける微笑みにも心がこもっていた。
青と白の発光ダイオードが、俺の頼んだドリンクの表面に、さざ波の幻影を呼び起こす。

「ギムレットを」
彼がそう注文したので、俺はちょっと驚いた。
「小野.田さんって、お酒飲むんですか?!」
「悪いか?」
「いいえ。あなたは飲めない人だと思ってただけですよ。俺、初めてです。小野.田さんがお酒を注文するのを見るのは」
「・・・ああ、そうか。あの頃は」
そこでプツリと言葉を切って、彼は一瞬、呼吸を止めた。いかにも堅物らしい、黒縁眼鏡のレンズの奥で、遠い昔を懐かしむように、ひっそりと目を伏せた。
「あの頃は、・・・飲まなかったからな、人前では」
「その意味は?」
「意味なんかない。いいだろう、一杯くらい飲んでも」
「だから、なにも悪いとは言ってませんよ」
ちょうどそこへ彼の頼んだギムレットが運ばれてきた。俺は大げさに乾杯がしたかったのに、そんな隙を与えてくれるほど甘い彼ではなく、グラスの縁いっぱいまで注がれた酒にさっさと唇をつけてしまった。

◇ <> イルミネイト 2/3<>sage<>2009/10/17(土) 18:00:55 ID:8xYyIuFp0<>
ギムレットは、強く作ればそれなりに効くカクテルだ。
俺の与太話に黙って耳を傾けながら少しずつそれをすすっていた彼は、しかし一杯を干したくらいでは顔色ひとつ変える気配がなかった。
細いステムに添えられた、上品な指先のかたち。終電を過ぎたようなこんな時間になっても、きっちりとネクタイを締めた襟元にはいささかの乱れも見られない。
俺は、それがなんとなく悔しかった。

昔、同じ部署で働いていたときのこの人は、俺の前で一滴の酒も飲もうとしなかった。
それから10年経って、やっとカクテル一杯だけ飲むようになった。
もう10年待ったら、ワインの一本も空けるようになるんだろうか?
さらに10年待ったら、・・・そのころにはもう、この人は定年で、引退だ。
俺には焦る理由があると思う。
できるだけ多く、この人の名前を堂々と呼ぶ機会を捕まえる権利があると思う。

「小野.田さん、お帰りはタクシーですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「俺が送りますよ。車持ってきてるんです。小野.田さんは、いまはどちらにお住まいでしたっけ」
「・・・飲酒運転は許さん」
「俺は飲んでませんから。実はこれ、グレープジュースでしてね」

そう言われた瞬間の、彼の顔ときたら!
苦虫をかみつぶした、というのは、まさにこんな表情のことを言うんだろう。
俺は思わずにんまりと笑ってしまい、バナナが一瞬で凍りつきそうなくらい冷たい目でにらみつけられてしまった。

「そんなに気を悪くしないでください、小野.田さん。悪気はなかったんですよ。あなたは飲まない人だと思いこんでいたもので、
俺もそのつもりで車に乗ってきちゃっただけなんです」
「私はタクシーでいい」
「もったいないでしょう、そんなの。それに、俺、新しい車買ったんです。ぜひ小野.田さんにも見ていただきたいですね。
悪趣味な見せびらかしだと思われるかも知れませんけど、これが、ちょおっといい車なんですよ。GT−Rの特別仕様車なんです。
この時間だったら道もすいてますし・・・」
ずい、と身を乗り出すようにして熱心に言い募ると、彼は不審そうにぎゅっと唇を引き結んで、それでもなんとか首を縦に振ってくれた。

◇ <> イルミネイト 3/3<>sage<>2009/10/17(土) 18:03:06 ID:8xYyIuFp0<> 俺は、彼を家まで送る、と言った。でも道順までは確認しなかった。彼のほうでも聞かなかった。
それは俺を信用しているからか、それとも面倒だったからか。
どちらでもいい、ほかの答えがないならば。

わざわざ乗った深夜の首都高を、オパールブラックのGT/Rは風のように走った。
・・・ただし、法定速度を遵守して。
俺は大いに不満だったが、ゆっくり走ればそれだけ長く走っていられる。

空調をわざとゆるく設定しておいたので、ラフなシャツ一枚の俺と違って、スーツを着込んだままの彼には少々暑かったに違いない。横目で見ると、こめかみにうっすらと汗が滲んでいた。もちろん、そんなことで泣き言を言う彼ではない。
半秒おきに、光と影とがその横顔の上を通り過ぎる。温度のない純白のLEDに照らされた、端正な横顔。彼はまっすぐに前を向いていて、こんな時間なのに少しも眠そうな顔もしない。
どこまでも謹厳実直な、警察官僚の顔をして、まだ前を見ている。

「・・・暑くないですか、小野.田さん?」
「大丈夫だ」
「もう一杯、どこかで飲みます?」
「いや、もういい」
「さっきのこと、怒ってます? 俺だって小野.田さんがお酒飲む人だってわかってれば、飲んでましたよ。いっそこれから、やり直しません?」
「別に、私は気にしていない。おまえも気にするな」

とりつく島もないとは、このことだ。
俺は内心、打ちひしがれた思いで、ぐっとアクセルを踏み込んだ。

そのとき、不意に彼が俺の顔を見て、口を開いた。
俺はまたスピードのことを注意されるのかと思ってばかりいて、最初の一言をうっかり聞き逃してしまった。
驚いて車を路肩に寄せたのは、彼が微笑んでいることに気づいたからだ。

「・・・・・・よ、神.部。私ももう10年前の私ではないんだ」


その後、どんなに懇願しても、彼はそのときなんて言ったのか、絶対に教えてくれなかった。

◇ おしまい ◇ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 18:03:40 ID:8xYyIuFp0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お目汚しですた。間違いあったらすんません
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 18:11:07 ID:SskyrBDcO<> 一つだけ。名前を確認してほしかった。
贅沢言えば眼鏡も。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 18:53:53 ID:az7RXZX0O<> 小野/田は一/徳の役だw
ラムネ×缶かと思いきや小野/田×缶でも読めて缶スキーな自分にはある意味二重にお得に読めました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/17(土) 21:42:59 ID:1M9y/jy30<> 混乱したw
ラムネ変換しようとしてもどうしても一得の顔が浮かんでしまうww <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/18(日) 09:08:12 ID:qqmVs7y+0<> びっくりしたwラムネの人は大.河.内ですよ。
でも萌えましたありがとー! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/18(日) 12:23:38 ID:+z8s3Z9Q0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  PSPゲー、銃.声とダイヤ.モンド

 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  交渉人×プロファイラー
 | |                | |             \ エロなしキスのみ
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
クリア後、萌えて萌えてたまらなかった……。
いや途中でもにやにやしてました。
<> 銃ダイ 新しい関係 1/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:24:41 ID:+z8s3Z9Q0<>  暇だ。
 ゼロ課は事件が起きれば、家にも帰れず現場にはりついていなければならない。が、起きなければ、デスクで神.崎をからかうぐらいしかする事がない。
 モツケイは高.梨が散歩に連れ出していた。犬同士、気が合うらしい。約一名は前世がという条件付きだが、言葉も通じているらしい。
「いい加減にして」
 神.崎の目が据わっている。こういうところはマル暴あがりだから仕方がない。いやこいつの場合は絶対生まれつきだ。
 鬼.塚は腕を持ち上げ、時間を確認する。まあ、日々成長していると思って良い。昨日より10秒長く、我慢した。
 鬼.塚は立ち上がった。このあとのキレた彼女の攻撃までつきあうつもりはさらさらなかった。それに、今日は事件が起きなかったらしようと思ったことがある。
 怒り心頭の神.崎に聞こえないように息をゆっくり吸って吐いた。
 思っていたよりもずっと緊張していた。 <> 銃ダイ 新しい関係 2/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:26:07 ID:+z8s3Z9Q0<> いつも通りコンピューターの前に陣取っている中.村に鬼.塚は声をかける。
「何しているんですか?」
「鬼.塚より有意義なことさ」中.村は椅子を回し、鬼.塚の方に身体を向けた。
「また、神.崎をからかっていたんだろう?」
「鍛えていたんです。ゼロ課にいる限り、彼女にだって交渉するシーンはありますからね」
「ほどほどにしろよ」
「引き際は心得ていますよ」
 ちょうどその時、隣の部屋から課長の片桐に猛抗議している神.崎の声がコンクリートの壁
越しに聞こえた。
「へえ?」
「あいつには空気抜きが時々必要なんですよ。意外に真面目だから」
「良く知っているんだな」
「中.村さんだって、それぐらい分るでしょう」
 プロファイラーなんだからという言葉は続けなかったが中.村には通じたようだ。
「仕事以外にする気はないよ」
「俺たちには興味は湧かないですか?」
 中.村の眉が上がった。少し彼の気を引くことができた。
「そうだ。俺をプロファイルしてください」と言った。
 中.村は組んでいた腕をほどき、顎に手をやった。思案するように目を細めた。
「嫌だね、君のプロファイルは面倒だ」
「面倒?」
「難しいんだよ、君みたいなタイプは」中.村は薄く笑った。
「じゃあ、少し相談していいですか?」
「何か困ったことでも?」中.村の目が真剣なものに変わる。
「大弱りですよ」
 中.村はじっと鬼.塚を見た。鬼.塚も彼を見返した。
「いいだろう。そこまで鬼.塚を困らせていることには興味がある。話してくれ」
<> 銃ダイ 新しい関係 3/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:28:25 ID:+z8s3Z9Q0<> 「本当に良いんですか? 話しても」
「相談したいのはお前であって、俺じゃない。何のつもりか知らないが、交渉相手を
捜しているなら別の人間にしてくれ」
「ああ、言い方が悪かったですね。ただ確認したかったんです」
「何を?」
「相談内容がもしかしたら中.村さんを不快にさせてしまうかもしれないんです」
「俺は鬼.塚を困らせた覚えはないが」
「もちろんです。俺が勝手に困ってるんです」
「で、何だ。内容によっては譲歩してもいい」中.村は膝の上にゆるく組んだ手をのせた。
その口元が緩む。「どちらかというといつも無理を言われているのは俺のような気がするけどな」
「すみません」
 鬼.塚は謝罪の言葉を口にしながら中.村の椅子のアームに手を置いた。そして中.村の方に身を
屈める。中.村は狭いスペースで距離をとろうとのけぞった。「ちょっと……」
 間近で中.村の眼鏡のガラスを通して彼の目を見る。迷惑そうに寄せられる眉を見る。「良いですか?」
「話は聞くって言ったが……」
「まあ、端的に言うと──」
「言わなくていい」
「言わなくても分ってくれます?」
「……分る、のはちょっと問題があるな」
 このままもっと近づきたい衝動に従いたくなるが、それは止めた。初めて見る中.村の焦りが浮かぶ目
だけで我慢することにした。 <> 銃ダイ 新しい関係 4/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:29:53 ID:+z8s3Z9Q0<>
「これ、はずした顔が見てみたいんですが」
 中.村の眼鏡のフレームに指で触れた。「夜も眠れないぐらい気になるんです」
「鬼.塚」
 時間かせぎの呼びかけだ。だが、鬼.塚はそれを受けることにする。耳に心地よかった。
それだけで何もかも譲歩したくなる。これでは交渉人失格だ。
 でも、これは仕事じゃない。
「少し、離れろ」
 鬼.塚は言われた通りにした。他人の、言いなりになるのは気持ちよい。普段はあまり
できないことだった。もしかしたら、中.村相手だからかもしれないが。
 中.村は一呼吸を置いた。鬼.塚に問うような視線を向ける。
 鬼.塚は頷いた。
 中.村は肩をすくめ、眼鏡をとった。
「なにもメリットはないと思うけどな」困ったように中.村は笑った。
「少なくても今日は眠れる」鬼.塚は中.村の顔をしげしげと眺める。
 彼のまだ困ったままの目元を撫でる。
「鬼.塚」
 突然、中.村の手が伸び鬼.塚のネクタイを掴む。そのまま彼に引かれ、距離をゼロに
した。
<> 銃ダイ 新しい関係 5/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:31:59 ID:+z8s3Z9Q0<> 「訳がわからないな」
 軽いキスから深いキスに変わる直前で胸を押された。そして思案顔の中.村が呟いた言葉だった。
「簡単なこと、ですよ」
「それ以上は口にするな」
「言葉にしようとしまいと同じことです」
「俺じゃ、君の孤独を埋めることはできない」
「俺は孤独じゃあ、ありませんよ。モツケイがいる。ゼロ課がある」
「それって一人ってことだろ」
 ほとんど使っていない家を思い浮かべる。生活の場になっている狭いキャンピングカーに安心感
を見いだしていた自分に苦笑する。
「じゃあ、もう一度キスしてくれれば、今夜はキャンピングカーではなく、家で眠ることにします」
「キャンピングカー?」
 鬼.塚は中.村の問いを無視した。わざわざ自分が寂しかったことを宣言するつもりはない。そのこ
とを見抜いた相手だとしても。そこまで見抜いてくれた相手だからこそ。
「そうだ。中.村さん、ウチに来ませんか?」
 中.村から答えはなかった。
「俺のこと、好きでしょう?」
 早すぎる言葉かもしれないと思った。だが、訊かずにはいられなかった。
 沈黙が続く。中.村はまっすぐに鬼.塚を見ていた。
「いつから、分っていた?」
「本当は、全然分っていませんでした」
「ブラフか……」
「いえ、俺の願望です」
 中.村は俯いた。手の中の眼鏡をしばらく玩び、それをかけた。
 顔を上げた。
「じゃあ、今度は俺の願望を叶えてくれないか?」
「好きです、中.村さん」
 中.村の口元に笑みが浮かんだ。
「キスをしてくれ。そうしてくれたら、今夜、家に行ってもいい」
 鬼.塚はいつの間にか中.村の要求になったキスをした。
<> 銃ダイ 新しい関係 6/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:33:09 ID:+z8s3Z9Q0<>  だが、鬼.塚の要求は無理そうだった。
 隣の部屋が騒がしい。鬼.塚が中.村から離れた瞬間に神.崎が大きな音を立てて部屋に入って来た。
「鬼.塚さん、出勤要請が!」
「分った」
「中.村さんもお願いします」
「分った」
 中.村は立ち上がった。神.崎の跡を追い、足を踏み出した鬼.塚に「また、今度な」と小さな声で
言った。
「楽しみにしています」鬼.塚は普通の声で答える。
「え、何が?」聞きとがめた神.崎が振り返る。
「今度、中.村さんに遊んでもらうんだよ」
 散歩から帰ってきていたらしい高.梨が機材を抱えながら「ええ、いいなあ。私もまぜてください」
と言った。
「だめ」鬼.塚は彼女の足許にいるモツケイの頭を撫でた。部屋から出て来た中.村を振り返り「ね、
だめですよね」と言った。
 中.村は無言で鬼.塚を睨みつけ、神.崎なみに乱暴にドアを閉め、すたすたとゼロ課を出て行った。
「な、だめだろ」
「あれって私にですか?」
「俺に、だろうな」
「そうですよね」
「ねえ!事件だってば」神.崎が腰に手をあて声を張り上げ会話に割り込む。
「はい、はい」
「はいは1回」
「本当、井上さんと仲良いんだな」
「仲良くないってば!」
「さ、ぐずぐずるすなよ、神.崎」
「人のせいにしないでよ」もっともな彼女の怒りを鬼塚は聞き流した。
<> 銃ダイ 新しい関係 7/7<>sage<>2009/10/18(日) 12:34:17 ID:+z8s3Z9Q0<>  ぶつぶつ言う神.崎から事件の概要を聞き出し、指揮車に向かう。中.村は、
既に定位置に座りキーボードを指で叩いていた。
 彼の口から滑らかに現場の情報が伝えられる。
「従業員の方もお願いします」
「やっている」
 いつもより口調がきつい。いつもより──。
 この先は考えるのは止めた。
 救出しなければならない人質がいる。交渉しなければならない犯人がいる。
「一つでも多く手札が欲しい。お願いします、中.村さん」
「分った」
 中.村が一瞬だけモニターから目を離し、鬼.塚に視線をやった。「すまない」
「こちらこそ」
 肩から力みが消えた中.村の背を少しだけ残念に思った。しかし、鬼.塚は頭をすぐに
切り替えた。
「片.桐さん、狙撃手の準備は?」
「安心しろ。北.村たちが向かっているはずだ」
 誰かの命を賭けた交渉はいつも緊張する。いつも、怖かった。
 だが、今日は少しだけ、震えずにすむ気がした。 <> 銃ダイ 新しい関係 <>sage<>2009/10/18(日) 12:35:44 ID:+z8s3Z9Q0<> ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ゼロ課大好き。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
萌えの発散の場をありがとうございました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/19(月) 16:52:00 ID:9J6wDGzyO<> ※ナマ注意※ 里予王求 和紙21&31
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 蒼の絆 1/2<>sage<>2009/10/19(月) 16:56:12 ID:9J6wDGzyO<> この地に来る前から揃いの色の三ットを視界の中心に捉える。
互いの気持ちを伝える様に視線を合わせ、サイソを交わすとスッと構えてきた。
久々だからだろうか。赤に映える青が今日は一段と鮮やかに見えていた。

俺の全てを受け止めてくれるのは、やっぱり富士井さんだけ。
俺は富士井さんの三ットめがけて、最後まで思いっきり投げればいい。
<> 蒼の絆 2/2<>sage<>2009/10/19(月) 17:04:57 ID:9J6wDGzyO<> きっと、満面の笑みを浮かべながら、誰よりも一番に褒めてくれるだろう。
背伸びして、俺の頭を撫でながら抱きしめてくれるだろう。

――ようがんばったなぁ!お疲れさん

かつてない大歓声に包まれる歓喜の瞬間を想い描く。
あと少し、あともう少しだ。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/19(月) 17:06:23 ID:9J6wDGzyO<> STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
21が31を欲していたと聞いて真っ白に萌え尽きかけた
久々のベヌトバツテリ一はやっぱり燃える
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/20(火) 00:56:44 ID:TqkVsCnbO<> >>291-294
GJ!
私もあの「欲してる」にはびっくりしました。
どう欲しているように見えたのかと。
固い絆で結ばれた電池て良いですね。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/23(金) 02:33:23 ID:e1QRyExz0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  最近の連続爆撃で焼け野原モナ‥‥。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  特に神舌と下町DXで禿散らかったよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
エロ薄め。粕和歌お初話。和歌が別人風味。おkな方、ドゾー <> 鳳 粕和歌 夢か現か 1/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:35:31 ID:e1QRyExz0<> 今夜は久方ぶりに若林の部屋でネタ合わせだ。

このところ仕事が忙しくて
なかなかこんな時間は取れなかったので
素直に嬉しい。

熱心にネタを考えている横顔も
可愛いなぁ、と見惚れていると
急に若林が俯いて黙り込んだ。

「? どうしたね、若?」
覗き込めば、真剣な顔。

「ねぇ、春日さん」
ちょっと上目遣いで俺の方を見る。
黒縁メガネの奥の瞳は
笑っているようで怒っているようで。

「なんでしょうか」

あ。
なんかヤバい感じがする。
この人がこんな目をする時は
決まって何か企んでいるのだ。 <> 鳳 粕和歌 夢か現か 2/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:38:08 ID:e1QRyExz0<> (前レス、伏字にするの忘れてました。すいません。)

「俺と、しねぇ?」
「何をですかな?」
「セックス」

途端に心臓が跳ね上がった。

驚きすぎて返事ができない俺を
和歌林は楽しそうに眺めている。

「俺さぁ、気付いてたんだ」
和歌林が続ける。

 お前さ、俺の事、好きだろ?
 ヤリたいって思ってたろ?
 バレバレなんだよ。

 まぁ、俺だってお前とそうなってもいいかな、と
 悪くねぇな、と思うけど
 ヤルとなったら、どう考えても
 俺の方が下になるんだよな。
 
 そう考えるとちょっとビビってよ。
 んで、お前の気持ちに気付かないフリしてたんだ。

キシシっと悪戯っぽく笑う。 <> 鳳 粕和歌 夢か現か 3/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:40:25 ID:e1QRyExz0<> 「でも。粕賀さん、最近、変だから」
「変とは、心外な」
「いや、変というか、キャラが崩れてきてるでしょう?」
「それは・・・」
粕賀が変になったのではなく、
あんたが、最近、滅法可愛いすぎるからだよ!

「それにさ。他の奴らもなんか、やけに絡んでくるし」
あぁ、キス迫ったり、抱きたいなんて言われたりしましたね。

「お前、不安になってんじゃねえ?」

図星を指されて、ドキリとする。

「お前は俺に『粕賀は和歌林のものだ』って言ってくれたよな」
和歌林が俺の目を見つめる。耳が少し赤い。

「でも俺は、お前に何も確かな事を言ってねぇし」
そう言って、少し目を伏せた。

俺は、何やら混乱して、先刻から一言も口をきけない。

和歌林が俺の気持ちに気付いてた?
いつから?
っていうか、この流れだと
和歌林も粕賀の事を・・・? <> 鳳 粕和歌 夢か現か 4/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:42:15 ID:e1QRyExz0<> 一瞬の沈黙の後、和歌林はパッと顔を上げた。
「てか、今更言いたくもねぇしな」
そしてまた、可愛らしく笑う。

「ならもう、体で繋がった方が早いんじゃねぇかって思ってよ」
いや、その思考はどうよ。

「だからさ」
和歌林が俺にもたれ掛かってくる。
早鐘のような鼓動が耳の奥に聞こえる。

「・・・しよう?」

彼にしては低い声でそう言うと、
和歌林のほうから唇を合わせてきた。

俺はもう何も考えられず
ただ、長い間欲し続け、半ば諦めていたのに
今、思いもかけず与えられた
とろける様に甘い果実を貪るしかなかった。 <> 鳳 粕和歌 夢か現か 5/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:46:04 ID:e1QRyExz0<> 何度も深いキスを繰り返し
気が付けば、俺は和歌林に覆いかぶさるようにして
リビングの床にその体を押し倒していた。

和歌林の顔中に、キスの雨を降らせる。
首筋に舌を這わせると小さく息を呑むのがわかった。

「・・・は・・ぁ」
欲情に湿った吐息が俺の耳をくすぐる。
腰の辺りがズクンと疼いた。

夢では何度抱いただろう。
想像するだけだった和歌林の白い肢体が
今は、この腕の中にある。

現実の和歌林は、夢よりもずっと綺麗で卑猥だ。
俺の指が和歌林の肌を滑る度、微かに反応を返してくれる。
甘くなっていく吐息。
薄紅に染まる頬。

俺の可愛い可愛い和歌林。

ふと和歌林の顔へ目をやると
潤んだ瞳に引き寄せられた。
紅潮した頬に、少し開いた唇が
壮絶に色っぽい。

それだけでも腰にクルものがあって
慌てて視線を外した。
それからも、和歌林の顔をまともに見られずに
少しずつ手を進めていった。 <> 鳳 粕和歌 夢か現か 6/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:48:25 ID:e1QRyExz0<> 「・・・いいかげんにしろよ」

上気した顔からは不似合いな
怒気をはらんだ声が降ってきた。

「お前、先刻からドコ見てんだ?! あぁ?」

おとなしく俺に組み敷かれていた和歌林が
上半身を起こしてきた。

それでも俺は和歌林と目を合わせられない。

だって、仕方が無いじゃないか。
あんなに恋焦がれていた和歌林が、今、この腕の中にいることが
現実だと思うだけで、俺は・・・。

逸らした視線の先、和歌林のシャツが肌蹴て白い素肌が闇に浮かんでいる。
艶やかな姿を直視できなくて、思わず目を閉じる。

不意に和歌林の手が伸びてきて、俺の頬を包み込む。
斜めに伏せていた顔を、真正面から向き合うように引き上げられた。
そんなに強い力ではないのに
抗えないのは何故だろう。

俺と若林の視線が絡む。
目の前の黒い瞳は濡れていて。
情欲の奥に、強い意志を秘めて光る。

「ちゃんと俺を見て、俺を抱けよ」 <> 鳳 粕和歌 夢か現か 7/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:50:34 ID:e1QRyExz0<> 漆黒の瞳に吸い込まれそうになって、ふたりの顔が近づく。
そのまま深く唇を重ねた。

「・・・和歌林」
キスの合間、吐息が交じり合う中で名前を呼んだ。
「・・・っ、粕賀ぁ・・・」
濡れた声で、答えてくれる。

体中の血が沸騰してしまいそうで、クラクラする。

和歌林。和歌林。和歌林。

存在を確かめるかのように強く抱きとめる。

「夢じゃないよな?」
「現実だよ。バーカ」
和歌林のほうからも、抱き返してくれる。

幸せで幸せで、気が狂いそう。

「ちょっ・・・粕賀っ、苦しいってっ」
「あ、すまん」
つい力いっぱい抱きしめてしまった。
少し腕を緩めると、和歌林は細く息を吐いた。 <> 鳳 粕和歌 夢か現か 8/8<>sage<>2009/10/23(金) 02:53:02 ID:e1QRyExz0<> 「あの、さぁ・・・ベッド、行かね?」
コツンと俺の胸に額をつけて甘えるように囁いてくる。
「ここじゃ、ダメ?」
ベッドへ行く事さえ、もどかしい。

「ダメじゃねぇけど・・・あっちに、その、用意してあるし」
「用意?」
「その・・・。ローション・・・とか」
和歌林の赤い顔が益々赤くなる。
可愛くて、愛しくて、笑いながら抱きしめた。

「っ、笑うなよっ!バカ!バカカ/ス/ガ!!」
「あー、はいはい、ごめんなさいね」
可愛い文句を軽くいなして、両手で抱き上げた。
所謂、お姫様だっこ。

恥ずかしい、下ろせと騒ぐ口をキスで封じて
ベッドへと運ぶ。

ゆっくりと横たえると和歌林が小さな声でつぶやく。
「・・・優しくしろよ」
朱に染まった頬へ口付けて、耳元に囁き返す。
「うぃ。お任せあれ」

突然の和歌林からの誘いに戸惑ったけれど
落ち着けば、大丈夫。
なにせ、夢で何度もシュミレーション済みだ。


夢のような現実は、夢見たよりも甘く熱く
すべてを熔かしていった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/23(金) 02:55:21 ID:e1QRyExz0<>  ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オメヨゴシシツレイシマスタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 強気受林を目指して挫折。甘くてすいませんでした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/23(金) 02:56:45 ID:l/igOiOc0<> なんとゆうグッドタイミング
今夜の番組を見て萌えておったところよ

なんせ、女だったら抱きたい芸人No1に輝いた和歌林
もっとレロレロなセックスシーンも書いて下さいお待ちしとります <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/23(金) 08:29:42 ID:mqrk9AIPO<> 同じく昨夜の番組でのけ反った組です…。
キシシッって笑う表現が的確っす!
読めて良かったー! <> 296<>sage<>2009/10/24(土) 06:39:12 ID:cUWxFEJJ0<> >>306>>307
よもや感想が頂けるとは思わなかったのでものすごく嬉しいです!
姐さん方に心からのありがトゥースをw

金曜飯共前のジャンクションで又もや禿散らかって
勢いに任せて書き上げますた
一応前作の続きです
連投、申し訳ない

エロ薄め。>>297-304の続き。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 鳳 粕和歌 確かな言葉 1/8<>sage<>2009/10/24(土) 06:41:54 ID:cUWxFEJJ0<> 仰向けに寝かせた和歌林に、ひとつキスを落として
あまりスプリングの良くないベッドに腰掛け
自分のシャツを脱いだ。

和歌林も身を起こしてYシャツを脱ごうとするので
慌てて押しとどめた。
「こらこら、勝手に脱いじゃダメでしょ」
「なんでだよ」
少しムッとした声が返ってくる。

「粕賀に脱がさせてくださいよ」
そう低く囁いて、手をシャツと素肌の間に滑り込ませた。
「・・・この、変態っ」
真っ赤になって睨んでも、何にも怖くないですよ。

スルリとシャツから肩を抜いて
和歌林の腕に手を這わせながら
ゆっくりと脱がせていく。
露わになっていく肩や二の腕にも、啄ばむ様なキスを降らせる。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 2/8<>sage<>2009/10/24(土) 06:43:27 ID:cUWxFEJJ0<> 左腕が脱げたら、次は右。

スルスルとシャツを滑らせて
最後に袖口から引き抜いた右手にもキスをする。
掌のほうにも舌を這わせて、指をねっとりと舐めあげると
和歌林の吐息が段々色を帯びていく。

綺麗な指を味わい尽くして
また掌から手首、肘の裏、二の腕とキスを落としていくと
和歌林は腕を俺の肩と背中に回してきた。

ゆっくりと抱きしめられる。

俺は頬ずりをするように顔を近づけて
和歌林の首筋に口付けながら、両腕を彼の背中に回した。

ふたりで抱き合って、素肌に素肌が触れる。
お互いの体温が、やけに心地いい。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 3/8<>sage<>2009/10/24(土) 06:45:07 ID:cUWxFEJJ0<> 「・・・粕賀ぁ」
甘い声で名前を呼ばれて顔をあげれば
うっとりと快楽の波に揺れる和歌林の瞳。
「和歌林・・・」
自分でも驚くほど優しい声で呼び返す。

抱き合ったまま、唇を重ねていく。
柔らかい下唇を舌で擽って、少し強く吸う。
「あっ・・・」
吐息とともに開いた唇の間に舌を差し入れると
和歌林はもう少し口を開いて、迎え入れてくれる。

和歌林の舌を絡め取って、深く深く口付けた。
「・・・ん・・・んっ」
鼻から抜けるくぐもった声が、俺の欲に火をつける。

もっと。
もっと、欲しい。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 4/8<>sage<>2009/10/24(土) 06:47:16 ID:cUWxFEJJ0<> 夢中で口内を貪っていると
俺の背中に回された手がポカポカと俺を叩いてくる。
それでもキスを止めたくなくて、そのまま舌を弄んでいれば
叩く力が強まった。

仕方なく唇を離すと、和歌林は大きく息をついた。
「っ・・・はっ・・あっ・・・」
荒い息をして、涙目で俺を睨みつけてくる。

「て、めえっ、・・・しつっけぇ・・ん、だ、よ」
まったく色気の無い台詞でも、俺の頬は緩む。

俺も背中に回していた手を引き抜いて
和歌林の髪を撫で上げた。
少し汗ばんでいる額にキスをしてから
自分の額をくっつける。

まだお互いの吐息がかかる距離。
幸福感に包まれる。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 5/8<>sage<>2009/10/24(土) 07:01:19 ID:cUWxFEJJ0<> 「ねぇ。和歌・・・?」
少し離れて、和歌林の瞳を覗き込みながら問う。

「・・・ぁ?・・何?」
熱に浮かされたような瞳が揺れている。

「和歌は粕賀に『一生漫才して下さい』って言いましたよね?」

それは、俺が『粕賀は和歌林のものだ』と言った
きっかけになった言葉。

「まるでプロポーズみたいで
 粕賀は心の中で万歳三唱だったんですけど」

俺はもう一度和歌林の髪をかき上げると
輪郭に沿って指を滑らせ、柔らかな頬に触れた。
「あれは、お宅さんが言う『確かな事』じゃないんですか?」

和歌林は訝しげに眉を寄せる。
俺から視線を逸らして、何か考えているようだった。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 6/8<>sage<>2009/10/24(土) 07:06:46 ID:cUWxFEJJ0<> 暫らくして、
「あぁ。」
と呟くと、言いにくそうに続けた。

 それは・・・あれだ。
 漫才って結局仕事な訳だから
 パートナーとして一緒にいて欲しいって事で
 つまりその・・・

 ・・・つまり、恋愛感情とかは特に無かったわけよ。

 それなのにお前は『粕賀は和歌林のものだ』なんて
 まんま、プロポーズみたいな事を言いやがるし。
 いや、あん時はホント、恥ずかしかったぁ。

そう言って、照れた様に笑った。

俺は、何だか急に嬉しくなってきた。
「じゃあ、今は粕賀に恋愛感情を持ってくれているんですね」
つい口をついて出た言葉。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 7/8<>sage<>2009/10/24(土) 07:11:24 ID:cUWxFEJJ0<> 和歌林の目に力が戻る。

ひゅっと空気が鳴ったと思ったら

バシッ
こめかみに平手打ちを受けた。

「好きでもない奴と、こんな事するかよ!バカ/ス/ガ!!」
怒りに頬を紅潮させて、和歌林は捲くし立てる。

「でもっ!今更言えねぇっての!!
 好きだの、愛してるだの、恥ずかし過ぎ、る・・・っ」
和歌林の顔がみるみる赤くなっていく。

「・・・思いっきり言っちゃったねぇ」
笑いをこらえて突っ込んだら、また平手打ちが飛んできた。

「もう、絶っ対っ言わねぇ!」
プイとそっぽを向いた和歌林が、たまらなく可愛い。 <> 鳳 粕和歌 確かな言葉 8/8<>sage<>2009/10/24(土) 07:16:48 ID:cUWxFEJJ0<> 「・・・言わなくても、分かれ」
なんて、無茶を言う。

愛しさが胸に込み上げてきて
ふくれっ面の頬にもう何回目かも分からないキスを落とした。
そうして、今度は背中から、和歌林を抱きしめる。

あぁ、本当に、重ねた肌を通して
言葉が確かに伝わればいいのに。

――― 好きだとか、愛してるだとか
    お前は俺だけのものだとか ―――

後ろから、和歌林の耳に囁く。
「一生一緒に漫才しましょうね」
「ったりめぇだ、バカ」

和歌林から怒気が抜け、雰囲気が丸くなる。

さぁ、甘い夜の続きをしよう。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/24(土) 07:21:21 ID:cUWxFEJJ0<>
STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

駄文の連投、本当にすいません。
ごめんなさい。もうしませんから、アレだけは勘弁してくださいw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/24(土) 07:34:27 ID:gEgj1PLk0<> >>317
ああリアルタイムで読んでしまったうれしい!
こいつは朝から縁起がいいぜありがとう!
ニヤニヤしながら一日をスタートしますありがとう <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 1/6<>sage<>2009/10/25(日) 01:22:13 ID:+penwEK40<> >>256-259の続編。ゴウ受のつもりなカプ未満。子どもを取り合う大人二人な話。
今週の某ゲームが出たら頭が新ゲ一色になりそうなのでその前に書けてよかった。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


その日、これから遊びに行くというショウとメリーの二人とゴウは少しだけ話をしていた。
「大体、俺らあれだけ戦ったりしてるのにそんな所で遊んで楽しいか?」
「ソレはソレ、コレはコレ。バトルとはチガウノ!」
遊園地の魅力を元気一杯楽しそうに語るメリーに対して、ゴウの反応は薄い。
「戦闘は遊びじゃないんだ。ジェットコースターと一緒にするな」
「一緒にするなって言われてもよ、俺ジェットコースターなんて乗った事ねーし」
「そうなのか?」
「5年前に一人になっちまったからな。そんな余裕ねーよ」
前のゲッ夕ーチーム解散の原因にもなったあの戦いの裏で、ゴウの両親は死亡した。
それから一人、今となっては寂しいなどと弱気な事は考えなくなったが、色々損をしてきたのだろうとゴウは思う。
リョウマに言わせたら17なんてまだまだ青春できるらしいが。
二人を暗い雰囲気にしたいわけではないので、誤魔化すように笑ってゴウはすぐにその場を離れた。
「遊園地か。ちょっとは興味あるけど、一人じゃなあ……」
なんて、ちょっと前には暢気に考えていたのに。

「で、この前のあれはどういう事なんだ?」

何故こんな二人っきりでハヤトに問い詰められないといけないのか。
勘弁してくれよ!こっちはがんばって前の事なんて覚えてませんって振りして返事してるのに空気読めよ!とゴウは口に出せない怒りを内心で叫びまくった。
「あー、だから……うー」
「何だ、言えないような事なのか?」
言えない事だから逃げたんだろうが! 分かれよ!とばかりにゴウは睨むが言うまで許さないらしくハヤトの態度は変わらない。
そんな時。
「遊びにきたぜー!」
場違いな笑顔でリョウマがノックもなしに部屋に入ってきた。
おお、救いの神…… <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 2/6<>sage<>2009/10/25(日) 01:22:52 ID:+penwEK40<> 「お、ゴウ。昨日はどうしたんだよ、急に帰っちまってさ」
じゃなかったー!! この悪魔め、話蒸し返すなよ!! 一瞬でも喜んでしまった自分が憎い。
形勢絶対不利。ゴウはまた逃げ出したくなったが、それを分かっているのかいないのかリョウマはドアの前から動かない。
「昨日? お前の所でも何かあったのか?」
「ん、いや……ちょっとした事だぜ?」
「俺の方では昨日ゴウが茹で蛸のように真っ赤になった」
「え、お前のとこでもか!?」
細かく言わなかったリョウマにゴウが感謝をしたのは一瞬だけだった。
口に出さずとも意見が一致した事を理解したハヤトとリョウマの二人掛かりの尋問に、ゴウはすぐに屈した。
「えっと、だからその……は、恥ずかしかっただけだよ!! 何度も聞くなよな!!」
昨日の事もあってとにかく照れくさくて近付かれるだけでも正直辛い。
でも本当の事を言う訳にもいかず、結局子ども扱いが恥ずかしいという外れてもいない理由を言う事でゴウは漸く二人から解放された。
「何だよお前、かっわいーなあ!!」
うりゃうりゃとリョウマは調子に乗ってゴウの頭を撫でまくる。
「だから子ども扱いするなっての!!」
そうやってすぐにムキになるところが可愛くて、真っ赤になって怒っても意味がないのだと二人ともゴウには教えてやらない。
困った子どもを見守る親のような二人にゴウも怒っても仕方ないと暫くして理解し、いつものように会話を始めた。
今日の話題は娯楽。ショウたちが遊びに行く事を思い出して、ゴウから出した話題だった。
「俺もどっか遊びに行きたいけどショウは女だからさ、二人で一緒に遊びに行くってのは無理だろ?
ガイだと食べ歩きになるしさー。俺だって食うのは嫌いじゃねえけど、ガイ程食わねーし」
自分以外のゲッ夕ーチームの二人。二人で出かけると考えると相手が女と大食い男しかいないのでは選択肢はないに等しい。
「じゃあ俺と一緒にどっか行くか? 偶には遠出もいいよな」
「へ? や、別に遠くじゃなくても」
「今のところすぐに出撃って程の事態はないだろ。
近くぶらぶらするのなんて何時でもできるんだしよ。一泊でもいいし、少し遠くで遊ぼうぜ」 <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 3/6<>sage<>2009/10/25(日) 01:23:35 ID:+penwEK40<> 笑顔で誘ってくるリョウマに道場の弟子とかどうするんだと当たり前の事を聞こうとすると、心配するなとばかりにゴウの頭をぽんぽん撫でてくる。
調子に乗るなと怒りたくなるものの、そうされて悪い気はしないのだから始末に負えない。
「俺は仕事が溜まってる誰かさんと違って、ちゃんと計画的にやってるからな」
今は手が止まっているが机の上には書類の山。どういう状態なのかは一目で分かる。大きな戦いが終わったとはいえ、軍の大佐であるハヤトの仕事は減るものではない。
「……リョウマ、お前性格悪くなったな」
「そりゃ年取ったからな」
「俺と同い年だろうが」
同じ5年のはずなのにお前は元気そうだなあと言うハヤトの恨みがましい目をリョウマはさらりと無視した。
「んでどこ行きたいんだ? 俺も最近そんな遊んでねーから言っておいてなんだけど詳しくないんだよな」
「俺もそんな詳しくねーけど、色々あるだろ。ほら、ゆ……」
遊園地とか、と言おうとしたゴウだったがその瞬間普段では考えられない程の凄まじいスピードでその発言後の結果を考えて思い止まった。
まずいまずい。遊園地なんて思いっきり子どもの発想じゃないか。また子どもだとバカにされる。
大体、男二人で遊園地なんて考えなくても異常すぎる。遊園地はちょっと行ってみたいがここで選ぶのはまずい。
そんな事を考えて、でも言ってしまったゆの後に続く言葉をどうしようかとゴウは頭を捻って考えた。
「ゆ……雪、とか?」
「雪? スキーとかか? それだと……」
「ちょっと待て」
「お、ハヤトさんからのちょっと待ったコール!」
「リョウマ、ふざけるな。……今の時期、急に行っても泊まれる場所などそう簡単に見つからんぞ」
「俺、野宿とかでも全然平気だぜ?」
ゴウ、お前はそんな事だから山猿扱いされるんだとハヤトは心の中でツッコんだ。
「俺の部下になった以上、例え休暇中でもそのような行動は絶対に許さん。リョウマ、お前もだぞ!」
「分かってるって。俺もう大人だぜ!」
何を言う、俺も全然平気という顔をしていたくせに。言うと話が進まないのでハヤトはまた心の中でツッコんだ。 <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 4/6<>sage<>2009/10/25(日) 01:24:23 ID:+penwEK40<> 「ゴウ、お前がよかったらサオトメ博士たちと一緒に遊園地に行かないか?
みちるさんと元気を連れて遊びに行く予定を立てているので、一緒にどうかと誘われているんだが」
「え、マジ!? 行く行く!!」
ハヤトからの思わぬ吉報にゴウは当然目を輝かせて飛びついた。
反対にリョウマは訝しい点があったので眉を顰めたが、ゴウが喜んでいる事もあってこの時点では発言を控えた。
「リョウマ、俺だって今日聞いたばかりだなんだ。そんな顔するな。
大体、俺は無理と決めつけて何も聞かずにお前たちだけで話を勝手に進めるからだろう?」
「あ、でもよく考えたら俺そんなに博士たちと親しくないぜ? それなのに行ってもいいのか?」
思えば真ゲッ夕ー起動の時もろくに話せず、かといって帰った頃にはこちらも疲れていて結局それから手続きやら研究所の建て直しやらで全員忙しくなってしまってそれきり。ほとんど初対面と言ってもいい。
「別に気にする必要はないぞ。あれから色々あって研究所でゆっくりする機会もなかったから、
お前が博士と話せなかったのも無理はない。博士もお前と一度話してみたいって言っていたから、良い機会だろう」
くしゃりと頭を撫でてハヤトが優しく笑うので、ゴウはもう頷くしかない。
「それじゃ、予定が決まったら一番に教えろよな!」
照れ隠しに大きな声でそう言うと次にゴウはリョウマの方を向き、おっさんとはまた今度な!とだけ言ってさっさと部屋を出て行ってしまった。

「で、どういう事なんだ?」
「どういう事とは?」
リョウマは二人きりになってすぐにハヤトにさっきの話について問い質したが、ハヤトは涼しい顔をして流すだけ。
遊ぶ話を邪魔された事もあって、苛立ちを隠さずにリョウマはハヤトを睨みつける。
「ふざけるなよ。お前、俺が山奥の洞窟で熊と一緒に住んでいるとか思ってないか?」
「お前ならできそうだな」
「できるか! お前にも博士にもちゃんと連絡先教えただろうが!
お前に話した遊びの予定を博士が俺にも言わないはずはねえ。俺だってゆっくり話してないんだからな。
誰かさんが自分で計画したんだろ〜? あいつの行きたそうな場所までチェックしてさぁ」 <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 5/6<>sage<>2009/10/25(日) 01:25:14 ID:+penwEK40<> お前の行動なんて全てお見通しだとにやにや笑うリョウマ。
5年間離れていたとはいえ以前と変わりないリョウマにハヤトは少し複雑な気分になり、溜息をついた。
ゴウはリョウマに似ている事もありショウやガイと違って気軽に話したり格闘訓練を一緒にしたりするが、年齢や階級の差もあってこちらを大人として見ている。リョウマとはやはり違う。
この5年間自分と肩を並べられる者はいなかった為、対等なやり取りを懐かしく思う事はあった。
それだけに今回の再会を嬉しく気持ちは強いのだが、ゴウに関しては自分がこれまで面倒を見てきたのでハヤトとしては例え相手が誰であろうと掻っ攫われるのは気に入らない。
本当はリョウマの所にも遊びに行かせたくないのだ。ずっと手元に置いておきたい。
しかしゴウにとって頼れる大人である為に、ハヤトは彼の前では本心を隠す。
「……可愛い部下の情報を把握するのは上司として当然だと思うが?」
「開き直りやがって。おっまえ、性格悪いなー」
「年を取ったんでな」
「このやろ、俺と同じ事言いやがって」
リョウマとしてもこんなやり取りは久しぶりで、懐かしくて嬉しい。
ハヤトとの間に新しく入ってきた存在はいなくなったムサシとは全然似てもいないのに、あの頃と同じように俺たちは笑っている。それが不思議で、だからこそもっと近付きたいと思う。
イチモンジゴウという存在がナガレリョウマにとってどういうものになるのか、確かめたい。
「それにしても、ゴウの奴何で俺と一緒に行くって選択肢に気付かないんだか……。
当然、遊園地には俺も付いて行くからな。んで、ホテルじゃ俺があいつと同室な」
「何を言ってる。そんな事許可できるか」
いくら博士の救出という恩があってもそれとこれとは話が別だと、ハヤトの目付きが厳しくなる。 <> 真ゲッ夕ーロボ対ネオゲッ夕ーロボ 6/6<>sage<>2009/10/25(日) 01:27:24 ID:+penwEK40<> 「いいじゃねーかよ。お前は仕事で何時だって会えるけどよ、こっちは偶にしか会えないんだぜ?
そっちは素直に尊敬されてる上にジンさんとか呼ばれてさあ。
俺なんてお前と同い年なのにおっさんとか呼ばれてるんだぞ。そろそろ段階上げてもいいだろうが」
「リョウマ、同室で何する気だ?」
「な〜に想像してんだよ! リョウマさんとかで呼ぶようにしてやるってだけだろ」
「こいつ!」

そんな言い合いは博士からのゴウと同室希望の電話がくるまで続いた。
博士がゴウと話したがっていた事は知っていたハヤトはすぐに納得したが、リョウマはタイミングの良すぎる電話を少し妙だと思ったが博士の頼みを断るわけにもいかず渋々納得。
その少し前、二人の言い合いを耳にして呆れたガイが別室で博士に電話した事を知る者はいない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
前回のでゴウが可愛いって思ってくれる人がいたので嬉しかったです。
GCは何でWiiに移植してくれなかったのか。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 00:39:22 ID:bpjOHOKxO<> ・邦楽バソド卑下・四弦×唄。ナマモノ注意
・エロ皆無な上、恋人未満にも届かないヘタレSSです
・おんぶの話にあまりにも萌えたのでやっちまいました

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 00:41:21 ID:bpjOHOKxO<> 「素塔、わるい」

遠征先である長嵜の地で、その台詞はすでに十回目を数えていた。

三矢革は酔いが回ると、いつもこの「わるい」を小さく繰り返す。
素塔はその度に、何をそんなに謝ることがあるのかと思うのだけれど、まあその分面倒をみてやろうかなという気分にもなる。
役得だ。

それにしても、今日の三矢革の酔い方は酷い。
普段から白い顔がより蒼白だし、店をやっと出たものの、足が縺れて真っ直ぐに歩けないのだ。

気を抜くと倒れ込みそうになる三矢革の腕を、脇を歩いていた彩刀が自分の肩にかけた。
「三矢革くん、平気?」
「…彩刀さん」
同じ目線、同い年の先輩にもたれかかりながら、三矢革は情けない声を出す。
「わるい、」
「大丈夫、俺がついてるから」
「…うん」
素塔は後ろを歩きながらそれを見つめ、呆れたようにぼやいた。
「ほんとにさあ、何でそんなになるまで飲むかね。何なの?そんなに愉しくなっちゃったの?」
幼なじみのしょうもない後ろ姿に、ちょっとだけ刺々しい言葉を投げつける。
「素塔、わるい」
振り返ることもままならない三矢革は、自分の足元に向かって声を絞り出した。
「いや俺に謝られても。支えてるの彩刀くんだし」
「ね。」
彩刀はひょいと首を返して素塔をみやる。
彼はいつだってクールだ。


<> 卑下・2/5<>sage<>2009/10/26(月) 01:16:15 ID:bpjOHOKxO<> そんな状態で歩いていたものだから、居酒屋の三軒先のコンビニにたどり着くのに5分もかかった。
ドラムの2人はさっさと仲良く別の店に行ってしまったようだ。
「俺ちょっと水買ってくるわ」
素塔はコンビニに駆け込むと、幾多のミネラルウォーターが並ぶドリンクケースを開けた。
一緒どれにしようかと迷ったものの、すぐにどれでもいいかと思い直し、適当に一本選ぶ。
手早く会計を済ませ外に出ると、三矢革はすっかり地べたに座り込んでしまっていた。
彩刀が横で心配そうに屈み込んでいる。
「三矢革くんほら、水買ってきたよ」
素塔がペットボトルの蓋を開けて差し出すと、三矢革はそれを力無く受けとった。
「わるい」
「ほんとだよ、水まで買ってあげちゃってさ」
「はは」
彩刀が笑いながら立ち上がった。
「三矢革くんどうする?ホテルまで頑張る?タクシー呼ぶ?」
「いやタクシー乗る距離じゃないでしょ。だってほんとすぐそこだよ?」
素塔が指差すその先には、既にホテルの頭が見えている。
「いやでもこれは相当時間かかるよ」
三矢革はペットボトルの水をちびちびと飲みながら、気分が悪いんだか愉しいんだかよく分からない表情を浮かべている。
「じゃあ、アレ?俺がホテルまでおんぶする?」
素塔が屈んで三矢革に背中を差し出した。
意外に逞しい。その背中を三矢革は焦点の合わない目で見つめている。
「素塔、さすがにそれは無理があるんじゃないかな」
「…うん、俺もそう思うよ」
素塔はそう言って腰を上げようとしたのだが、一足遅かった。
三矢革が、ドサリと彼の背中にもたれ掛かったのだ。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 01:20:08 ID:bpjOHOKxO<> 「お、え?マジで?」
半ば冗談のつもりだった素塔は、その重みと体温に若干戸惑ったが、顔のすぐ横で漏れる三矢革の息があまりにも酒臭いので、思わず笑ってしまった。
「うわっ酒臭っ!」
「え、素塔ほんと大丈夫?」
彩刀が三矢革の手からペットボトルをとり、素塔から受けとったキャップを閉める。
「どうかな、ちょっと、頑張ってみるけど」
よっ、と腰に力を入れて立ち上がる。
なんとか立ち上がることは出来たが、如何せん三矢革は身長が高い。
もちろんその分、重い。
「重っ!」
「…素塔…わるい」
「ほんとだよ!」
「ははは」
今度は彩刀が一歩下がって、ゆっくりと歩き出した。
「つっかさぁ、三矢革くんでかいんだから俺がおんぶするの無理あると思うんだよね。だってほら、そのうち足とか引きずっちゃうよ。なんかもう、しょってるだけみたいな。引きずるだけみたいな。」
ベラベラと、口からとめどなく言葉が出てくる。
頬の真横に三矢革の顔があるせい、ではない、はずだ。
「多分これ彩刀くんがおんぶした方がいいよね、バランス的に。あでも無理か、彩刀くん細いしね。」
彩刀が後ろでうんうんと頷いている。
「ほんとに相変わらずのていたらくだよね三矢革くんは」
素塔の言葉の合間を縫うように、彩刀が真顔で口を開いた。
「素塔」
「ん?」
「嬉しそうだね」
「…ええ!?」
素塔が、心外だとでも言うように大きく振り返った。
その反動で、三矢革が素塔の背中から少しだけずり落ちた。
「ああああ」
けれど三矢革はしぶとくしがみついている。
結局そのまま、ほぼ地面に足が付いた状態で、三矢革はホテルまで引きずられていったのだった。
その間、彩刀が延々と素塔の愚痴を聞かされていたのは言うまでもない。
<> 卑下・4/5<>sage<>2009/10/26(月) 01:23:40 ID:bpjOHOKxO<> ホテルに戻り彩刀と別れると、素塔は三矢革の部屋まで彼を担ぎ込み、ベッドに投げ込んだ。

「ほら三矢革くん、着いたよ」
「素塔、わるい」

もう数えるのも諦めた口癖を発したと思ったら、彼は早々に寝息を立てはじめた。

「…ほんとだよ」

おかしいな、と素塔は考える。
彼との関係でイニシアチブをとってきたのは自分だったはずだ。
友達になり、音楽を教え、バンドを組み、ベースを弾かせ、自分が歌う。
素直で優しい彼のこと、自分がどんなに無茶苦茶なことを言っても、いつだって困ったような笑顔で応えてくれた。
実際困ってるのかもしれないけれど。
その笑顔が自分のイタズラ心をくすぐるものだから、ついつい振り回したくなってしまうのだ。


…けれど今、泥酔した彼を介抱しながら、素塔はまた思う。
結局のところ、踊らされているのは、俺だ。
今日のように、どうしようもない三矢革くんを、何度面倒みてきたことか。
いや、そんな小さな話ではない。
自分の歌を褒めてくれ、音楽の道へと手をひかれ、真面目に就職するはずだった俺は今、こうして彼と音楽を続けている。

三矢革くん。
ぼくの人生、君のおかげでなんだか凄いことになっちゃってるんだよ。

当の犯人は今ベッドに沈み、口をあけたままのマヌケ面で幸せそうに眠っている。
君が幸せそうだと、妙に嬉しい。

いつも無性に沸いて来るイタズラ心。
その捻くれが今はゆっくりとほだされ、ただただ純粋な感情として溢れ出ていた。 <> 卑下・5/5<>sage<>2009/10/26(月) 01:32:04 ID:bpjOHOKxO<>
ありがとね。
小さく、心の中で呟いた。

その時、三矢革の右手がゆっくりと上がった。
まるで自分の心の声に反応したかのようで、素塔の心臓が小さく跳びはねた。
瞬時に顔が熱くなる。
一瞬前のシリアスな感情が急に気恥ずかしくなって、掻き消すように髪をかき乱した。
三矢革は目を閉じたまま、まるで何かを探すように手をさ迷わせている。
「ああ、水?」
なんだ。ええと、買ったペットボトルはどうしたっけ。
そうだ彩刀くんに、と立ち上がろうとした素塔の腕を、三矢革の白い手が「見つけた」と言わんばかりに強く掴んだ。
またもや心臓が跳ねる。
けれど三矢革はやっぱり、なまっ白いマヌケ面のまま眠っている。
どうやら寝ぼけているらしい。
口元が微かに動いた。

「…素塔、」
寝言でもまだ言うか。
可笑しくて、もうわかったから、と素塔の口元が緩む。

「ありがとう」
「…へ?」
予想外の言葉は地元訛りのアクセントで、柔らかくて懐かしくて、暖かかった。じんわりと、胸の奥が心地好く痺れていく。
「うん」
素塔の返事が聞こえているのかいないのか、三矢革はいつもの困ったような笑顔を浮かべ、また寝息を立て出した。

まいったなあ。どうやら今後も、彼には勝てそうもない。
そんなことを考えながらも、さらに口元が緩んでいることに気付いた。
ついさっき彩刀に言われた言葉を思い出して、また少し、照れ臭くなった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 01:35:16 ID:bpjOHOKxO<> 寄生虫につき、携帯から失礼しました。
慣れない携帯投稿で不備が多々あり恐縮です…。

お付き合いいただきありがとうこざいました!

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 03:35:46 ID:zgKmjza6O<> >>331
可愛いかった…!
良かったです! <> 296=308<>sage<>2009/10/26(月) 06:29:40 ID:Gg+VoDW20<> >>318
こちらこそ、読んで頂いてありがとうございます!


で、日曜の飯共増缶豪で又又禿げ上がってしまい
まさかの3作目

なんだあの二人は!
けしからん!もっとやれ!!

注:ナマモノな上エロ濃い目。苦手な人はスルー推奨。>>309-316の続き。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 06:30:48 ID:hvGO/HuzO<> >>331
禿げたああああああ
<> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 1/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:32:26 ID:Gg+VoDW20<> 薄闇に浮かび上がる、和歌林の裸体。
男にしては白い肌に残るいくつもの紅い跡は
俺がつけた、快感の刻印。

「・・・あっ・・ん」
右足の脹脛から膝の裏へ舐めあげると小さく甘い声が漏れた。
「ここも感じるの?」
意地悪く囁いて、其処に強く吸い付く。
「っ・・あぁっ」
肩に抱えあげた和歌林の右足がピクリと震える。
膝を曲げて逃れようとしても、足首を捕まえる手に力を込めて離さない。

「・・・くちゅっ」
わざと音を立てて唇を離すと、綺麗な薄紅の印がまたひとつ咲いた。
つけたばかりのキスマークを舌先で擽れば、和歌林の全身が震える。
そこから太ももの内側へと舌を這わせていく。

邪魔な布はすべて剥ぎ取ったので
いきり立つ和歌林自身が目の前にある。

先走りの蜜が、閉め切ったカーテンから漏れる街灯に
妖しく光っている。 <> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 2/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:34:18 ID:Gg+VoDW20<> 時折ピクピクとふるえる其処は
眩暈がするほど艶かしい。

脇腹から腰のラインを撫でていた右手を
そっと和歌林の中心へと這わせる。

指先が軽く触れただけで、和歌林が嬌声をあげる。

「はっ・・・あぁあっっんっ」

あまりの艶っぽさに、思わず息をのんだ。
今までもさんざん甘い声で啼いていたけれど
一段と色を増すこの声は、俺の芯に直にクル。

ちょっと、これは・・・。

和歌林とのセックスを、何度夢に見た事か。
でも、こんなに艶やかで色っぽい声なんて
俺は知らない。

もう一度。
今度は掌でそろりと撫でる。
「あっ・・・あああぁぁっ」
身を捩じらせて、またあの声で啼く。 <> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 3/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:35:43 ID:Gg+VoDW20<> ダメだ。

「ちょっ・・・もう、そんな声出すんじゃないよ!」
つい声を荒げてしまう。
「・・・・・・はぁ?」
ヤバイと思っても、もう遅い。
和歌林を快楽の海から無理やり引きずり戻してしまった。

すうっと冷めていく和歌林の目。
「・・・声っ、て・・・お前が、出させてんじゃねぇかぁ」
まだ少し息が上がっているけれど、普段の声で言い返してくる。
「・・・つか、なに突然キレてんだよ!訳わかんねぇ!!」
肘をついて上半身を起こすと、まっすぐ俺を睨みつける。

「あんたの声、色気があり過ぎる!」
「知るか、ボケェ!!」
すっかりいつものテンションだ。
先刻まで、あんなに悩ましかったのに。

「初めてなんだから、手加減してくださいよ」
「そりゃ、こっちの台詞だ!!」 <> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 4/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:37:29 ID:Gg+VoDW20<> あぁ、もう!!
「もう、和歌の声だけでイキそうですよ」
「へっ、遅漏が、聞いて呆れらぁ」
「そんな事言って、和歌だって、もうこんなじゃないですか」
いきなり和歌林のモノを握りこんだ。
今し方まで、はちきれそうだった其処は、まだ熱と硬さを残していた。

「っ!・・・あんだけ、嬲られりゃ、しょうがねぇだろぉ!
 お前なんか、触ってもいねぇのに、すげぇコトになってんじゃねぇか!!」
「だからそれは、和歌が色っぽいからでしょうが!
 声も、顔も、体も何もかも!・・・このっ!」
握りこんでいた手を持ち替えて、上下に扱きあげる。
先にあった蜜がくちゅくちゅと卑猥な音をたてる。

「やぁっ・・・あっ」
やにわに悦楽の波にのまれた和歌林が、俺の首に腕を回して縋り付いてくる。
手の動きを早めると、掌の中の熱がどんどん大きさを増す。
「あっっ・・・あ、あぁっ!」
俺に抱きついたまま、和歌林が善がって声をあげる。

・・・っ、だから、声出すなっつーの!
<> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 5/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:40:12 ID:Gg+VoDW20<> 甘えているようで、泣いているようで、
でも明らかに愉悦の色を浮かべる和歌林の声が
俺をどうしようもなく興奮させる。まるで媚薬だ。

和歌林のほうに体重をかけて、もう一度ベッドに沈める。
扱きあげる手を左手に替えて、右手で枕元を探る。
和歌林が用意してくれていたローションを見つけると
歯を使って噛み切るように蓋をはずし
トロトロと和歌林の中心に落とし込んだ。

その間も、ずっと左手の動きは止めない。
緩急をつけて、和歌林を追い込んでいく。
たっぷり付けられた透明の液体は、ぬらぬらと一層妖しい光を放つ。
溢れ落ちるそれを右手で受けて、和歌林の後ろに塗り込める。

「ひゃっ!・・・っあ、ああぁっっ」
声が一段と艶を増す。

俺は、媚薬に溺れるかのように、いつの間にかこの声を愉しんでいた。
もっと責めて、虐めて、追い込んで啼かせたい。
俺の全身で組み敷いて、声が嗄れるまで啼かせて・・・

ダメだ!ダメだ!

僅かに残った理性が、自分の手を止める。
大きく息を吐いて、和歌林の肩口に凭れ掛かった。
和歌林の荒い息と早い鼓動が聞こえる。 <> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 6/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:47:09 ID:Gg+VoDW20<> 「和歌林とひとつになりたかったけど
 このままだと、無茶苦茶にしてしまいそう」
つぶやく声が、切なくなる。

体の奥底から湧き上がる激しく熱い欲望。
このまま和歌林と繋がったら、多分、自分を抑えられない。
きっと彼を壊してしまう。

そんな事は、したくない。
優しくすると約束した。
世界中の誰よりも何よりも大切なヒト。
傷つけたくなんかない。

「だから、今日は、ね。ふたりでイキましょうか」
「・・・・・・え?」
未だ状況が良く分かっていない和歌林を抱き起こすと
俺の腰を跨ぐようにして、向かい合わせに座らせる。

俺のモノと和歌林のモノを、二本合わせて握り扱き上げる。
「うぁっ・・・」
「あああぁっ!」
あまりの快感に自分も声が出た。和歌林の嬌声と重なり合う。 <> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 7/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:50:39 ID:Gg+VoDW20<> 腰を揺らして、円を描くように擦り合わせれば
津波のような快感に襲われる。

ほんの数回擦り付けただけなのに、もう限界に近い。
俺にしっかりと抱きついている和歌林の顔が見たくて
少し顎を引き、額で傍らの茶色い頭を小突く。
俺の意図が伝わったのか、和歌林も抱きつく腕を緩めた。

熱い吐息の向こう、悦楽に燻る表情を見て取ると
俺はもう、堪える事ができなかった。
「ごめんっ、もうっ、限界っ」
扱く手を強めると、快感に咽ぶ和歌林が応える。
「あっっ、はっ、俺っ、もっ、イクっ」
恍惚に震える唇に、強く深く口付けた。

瞬間、ふたり同時に達し、お互いの腹の上に
溜まりに溜まった熱をぶちまけた。

暫らくは、ふたりとも抱き合ったまま動けないでいた。
荒い息遣いだけが、夜を占めていた。

「あー、もう、ベトベト」
ティッシュで欲情の跡を拭って和歌林が独り言つ。
「・・・申し訳なし・・」
「なんで謝るんだよ。いーよ気持ち良かったし」 <> 鳳 粕和歌 その声は媚薬 8/8<>sage<>2009/10/26(月) 06:54:13 ID:Gg+VoDW20<> 「あの、でも、いずれは・・・ねぇ?」
「挿れてぇ?」
「そりゃ、もちろん」
「・・・痛そうだなぁ」
「優しくします!優しくするから!!」
「ンな、必死になんなよ。嫌とは言ってねぇだろ」
「え、じゃぁ・・・」
「イイとも言ってねぇけどな!」
ものっすっごい笑顔で言われた。
「和歌ぁぁぁ」
心底情けなさそうな俺を見て、和歌林は益々笑う。
つられて自分も笑ってしまった。

笑い疲れて、ふと目があって、どちらともなくキスをした。

体中に広がる多幸感。
これから先も、遠い未来も、まだ見ぬ日々も
ずっとふたり、一緒にいられる証を手に入れたから。
「粕賀は、さらに無敵ですよ」

「なに言ってんだ」
和歌林が笑う。俺が微笑み返す。
この笑顔を生涯かけて守っていこうと、俺は固く誓った。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 07:04:57 ID:Gg+VoDW20<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

長々とお付き合い下さり、ありがとうございました
とりあえず完結です

(規制に引っかかって、暫らく書き込めませんでした。
 締めが遅くなってスマソ) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 11:50:20 ID:kSSQZKHD0<> >>343
イイヨイイヨ〜
ありがとうございます
この二人は注目してなかったけど萌え目線で見るとイイね
エロお笑いに目覚めそうな自分がいる

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 21:14:16 ID:kr338nVO0<> >>324
山猿二匹が可愛すぎるww
そこに年取って余計になりふり構わなくなった大佐と博士まで…
でも3号機が見事に今まで通りの緩衝材というか癒しというか常識人で安心しました
ネオゲは本当明るくていいですね!

頭が新ゲ一色になったら新ゲも書けばいいじゃない!と、思います! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/26(月) 23:41:43 ID:LDGRGAlSO<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

激団親幹線ただ今公演中の「バソユウキ」から
喜怒哀楽が全部笑顔の殺し屋→天然復讐鬼のお話。明るく殺伐気味。

観劇した勢いのまま書いてしまいました…

<> 揺れる1/4<>sage<>2009/10/26(月) 23:46:02 ID:LDGRGAlSO<> 陸だ。揺れない地だ。
船から降り立ち、土に足をつけた時、佐治はそう思う。
大陸からこの小さな島国まで、一月ほどの船旅。
同行者達がその揺れに酔い苦しんでいた中でも、自分だけはその手の
事とは無縁だった。
あらゆる感覚など当の昔に狂い尽くしている。
しかしそう思った矢先にも、自分の考えは翻る。
あぁ、自分だけではないか。
あの男も。
ふっと振り返り、まだ船の甲板上にいる男の姿を目の中に捕える。
堂々とした体躯。
深く響く声。
全身から力の漲る、それでいて髪だけは白く老いた男。
伊達怒門。
仲間に騙され、裏切られ、10年もの長き間閉じ込められた絶海の孤島の牢獄で
彼は自分と出会った。
そして取引をした。
自分は彼に自由になる手助けを要求をし、その見返りに自分は彼の復讐の為に
この身の力を貸す事を約束した。
1000人の兵による護衛をかいくぐり、大国の王の首を掻き切る事も出来る
この人殺しの業を。
あれから一年、準備を整え、策を練り、ようやくに踏んだこの地は彼の故郷。
彼の復讐が始まる場所。
それを彼は今、喜んでいるのだろうか。
それとも……また揺れているのだろうか。
<> 揺れる2/4<>sage<>2009/10/26(月) 23:51:12 ID:LDGRGAlSO<> 身の内が揺れているから、船の揺れにも酔わないのだろうか。
つらつらと取り留めのない事を考える。
その腕にこの時絡み付いてくる感触があった。
クニャリと柔らかく生暖かい。
反射的に殺そうと手が上がらなかったのは、それに殺気が無かったからだ。
だからゆっくりと振り返る。
そこにいたのは女だった。
「お兄さん、長い船旅ごくろうさま。無事命があったお祝いに少し遊んでいかない?」
化粧も派手にしなを作る、それは港町で女日照りだった船旅の男達に手ぐすねをひく
浮かれ女の類のようだった。
こんな小さな島国でもこう言う者は必ずいるのだな。
おかしいでも呆れでもなくただそう思う。
そしてそんな自分の顔を見て、女は驚いたように口を開いた。
「わっ、お兄さんいい男ね。綺麗な顔してる。」
「そうなのか?」
「そうよぉ、男なんて大概船から降りてくる時は髭も伸び放題でもっさくなってるけど
お兄さん、肌つるつるだし。髪もさらっさら。」
言いながらただ下ろしているだけの長い黒髪に指を絡めてくる。
馴れ馴れしくも邪気のない女。
そして彼女は、いい相手捕まえたわと、明け透けに笑う。
いい相手。自分がか? <> 揺れる3/4<>sage<>2009/10/26(月) 23:54:39 ID:LDGRGAlSO<> 少し不思議な感じがする。
大抵の者は自分を見れば恐れ、慄き、忌み嫌い、憎悪する。
悪魔!と罵り、泣き叫び、死んでいく。
自分のこの手に赤い血だけを残して。
だから、この女とて少しでも自分の事を知れば、そんな輩と同じになるのだろう。
所詮皆同じだ。
男だろうと女だろうと、大人でも子供でも、その薄皮一枚の下に詰まっているのは
肉と脂と骨と血だ。
ベタベタと気持ちの悪い生温かさだけだ。
なんなら試してみるか。
ゆらりと空いている方の手首が上がりかける。
しかしそれをこの時、背後から押し留めてきた腕があった。

「何をしている。」
耳に届いた声が孕んでいたのは、殺意ではなく、怒気。
だから気づくのが遅れた、と振り返った先にいたのは、予想した通りの怒門だった。
「何をするつもりだった。」
女には聞き取れないだろう程の小声でもう一度問うてくる。
見透かされている。
そう思えば少しおかしくて、自分はいつもの笑みを更に深めてこの時答えた。
「別に。」
それに怒門は、グッと詰まったような表情を見せた。
<> 揺れる4/4<>sage<>2009/10/26(月) 23:57:58 ID:LDGRGAlSO<> 正直な男。
真っ直ぐで、純粋で、それ故に一気に負の方向に振れ、黒く染まった男。
しかしその心の奥底にいまだ疼く何かを抱え持っている事を、自分は知っている。
おそらくは彼自身も気づいてはいない、故に自分だけが知っている。
だから―――この手で握り潰してやる。
「とにかく早く来い。ペナソ達が待っている。」
この旅の自分たち以外の同行者の名を口にして、怒門が腕を引いてくる。
それにこの時、反対の腕を取っていた女が抗議の声を上げた。
「ちょっと何よ、あんた!人の客勝手に持ってかないでよ、このジジイ!」
「ジジ…」
浴びせられた罵声に絶句する、そんな怒門に思わず噴き出せば、彼はそんな自分に
笑うな!と怒鳴りつけ、更に強い力で女から引き離してきた。
背後に叫ばれ続ける罵倒にももう振り返らず、そのまま歩幅も大きく歩き出す。
捕えた自分の腕はそのままに。
そうして掴んでくる彼の手の平を自分は熱いと思った。
身の奥に燃やし続けている彼の憎しみと怒りの炎の熱は、肌を通して自分に心地よく
伝わってくる。
彼だけが違う、この温度。
気持のいい男。
目的はある。
誰にも告げず、この胸だけに秘めた謀略。
しかしそれを為すまでにはまだしばしの時が必要で、それまでの間どうせいるなら
居心地のいい場所がいい。
この男の側が、いい。 <> 揺れる5/4<>sage<>2009/10/27(火) 00:00:23 ID:LDGRGAlSO<> だから、
「始めよう。」
前を行く男に自分は唐突に告げる。
「おまえの復讐を。おまえから若さと言う名の時間を奪い、陥れた奴らに対価以上の
苦しみと絶望を。その為なら、俺はおまえの邪魔になる者を何人でも殺してやる。」
投げかけた言葉に振り返った男の表情に、浮かぶ僅かな動揺。
あぁ、また揺れている。
でもそれを自分は許さない。
「俺は、おまえの行く道を切り開く、佐治だ。」
固い土牢を何年も穿ち、自分の所に辿りつかせた一本の匙と同じ名を与えられた者。
忘れるな、あの光の無い闇の過去を。
そうすれば、俺はおまえに力を貸そう。
視界の中、男の口元がギッと引き締まる。
そして、
「頼んだぞ。」
吐き出された深く、低く、怨嗟に塗れた心地良い男の声の響き。
それに自分は軽やかに笑った。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/27(火) 00:02:36 ID:LDGRGAlSO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

携帯からの投稿で時間がかかり、ナンバリングも間違えてすみません。
話はマイナーすぎてわかる人がいないのは覚悟の上!
でも萌えを吐き出せて楽しかったです。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/27(火) 00:34:13 ID:54+kzHn20<> >>346
姐さんGJ!
先週観劇した時からこの二人に萌えすぎて
仕方ないとこだったからここで読めて嬉しい!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/27(火) 00:51:03 ID:bkJhWP610<> オリジナルです。20代前半とアラフォーで

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> アレックス 1/5<>sage<>2009/10/27(火) 00:52:00 ID:bkJhWP610<> アレックスが仕事に就けないというのはおかしい。
なかなかいい会社がない、面接に行っても、不採用。こんなことの繰り返しだ。
本人は自分が至らないせいです、と呑気に微笑んでいるが、そんなわけないだろう。
推薦状を書いてやろうというと、あなたに手間を取らせたくないと拒否する。
確かに、これから先一人でやっていこうとするならば、そういう気持ちも大切だ。
元からそういう性格なんだろう。

アレックスは彼が12歳の頃、養護施設から引き取った。
といっても養子にしたわけじゃなく、大学を卒業し、自立するまで経済援助をするかわりに、家の管理をさせている。
僕はニュース番組のキャスターをしていて、取材で現地を飛び回ったりしていることもあり、家にいることは少ない。
おまけに死んだ父親は著名な作家で、家は無駄にだだっ広く、父親の著作物や所持している書物が膨大で、一人では管理しきれない。
まあ、仕事なんてしなくても父親の印税で生活できるくらいのお金はあるのだから、と彼を家に住まわせた。
大学での彼はとても優秀で成績もよく、家でもそれは変わらない。
どこに何があるか把握しているし、父の書斎がカビ臭くなるなんてこともない、庭が荒れ放題になることもない。
家でちょっとしたパーティがあれば、極上のワインとチーズを探し出してくれる。
そつがなく、謙虚でいい子だ。僕が保証する。 <> アレックス 2/5<>sage<>2009/10/27(火) 00:52:35 ID:bkJhWP610<> 父親の頃から家で食事の世話をしてくれるマーサは、野菜をきざみながら、いいことだ、と僕に言う。
「だって、あの子が仕事を見つけて出て行ったら、ここはどうなっちゃうことやら。考えるだけで恐ろしい」
「また元に戻るだけさ」
「ネクタイがどこにあるかも分からないあなたが、言うセリフじゃありません。一番困るのはあなたでしょうに」
見つからなきゃ買い足せばいい、と言うと、マーサは持っていた包丁を振りかざして天を仰ぐ。
「これだからお坊ちゃんは困る。先に言っときますけど、私はもう歳だから、食事以外の仕事は絶対しませんからね」
僕のことはどうでもいい。
こんなばかでかい屋敷は売ってしまって、しかるべき出版社に父の著作物を管理してもらう手もあるんだし。
そして仕事場の近くに、3部屋くらいのマンションを買って住めばいい。
「あの子は頭がいいんだ。こんなとこで、いつまでも僕の世話をしてるのは勿体ない。他で発揮するべきだ」
「あなたの世話をするのが好きなんじゃないですか?」
ばかばかしい。

あまりに歯がゆくなり、知り合いの会社を紹介してしまった。
コネを使うということは、彼のプライドを傷つけたに違いない。話をした時、アレックスは珍しく眉間にしわを寄せていた。
これなら余程のヘマをしない限り、多分大丈夫だろう……と、思っていた。
ところが、である。その知り合いから連絡があった。
「昨日彼と会ったんだよね? いい子だろう。優秀な奴なんだ、実際」
「そのことなんだけど、遠慮させてもらうよ」
あり得ない。
「多分君の言うとおり、いい人材だと思う。しかし、肝心の本人のやる気がなきゃ無理だ」
あり得ない。
「彼からは消極的な返事しか返ってこなかった。仕事に対する意欲が感じられないんだよ。働きたくないんじゃないか、彼は?」
あり得ない! <> アレックス 3/5<>sage<>2009/10/27(火) 00:53:02 ID:bkJhWP610<> 「アレックス! アレックス!」
家のドアを開けたとたん、そう怒鳴らずにいられなかった。
遠くからぱたぱたと足音が聞こえ、僕の尋常じゃない声に、青ざめた表情のアレックスが走ってきた。
普段から大きい目が更に見開かれている。相手を真っ直ぐに見る大きな瞳。第一印象はいいはずなんだ。
「ちょっと、そこに座れ。マーサ! 水を……」
「マーサはとっくに帰りました。持ってきましょうか?」
いい! というか、とにかくソファに座らせた。
そして、向こうから断わられたことを告げると、彼は結果が分かっていたかのように落ち着いてうなづいた。
難しい時期なのかも知れませんね、でも希望は捨てずにまた頑張ります、と明るく話す。そうじゃない。
他の会社ならともかく、今回は僕の知り合いが経営している会社で、彼は人を見る目があると分かっているから薦めたのだ。
その彼がアレックスを断わったということは、
「お前は、仕事に就こうなんてはなから思ってないんだろう?」
「そんなことありません」
「心配してるんだよ、こっちは。おまけに、太鼓判を押してお前を薦めた僕の立場ってものも考えてくれ」
「そのことに関しては、本当に返す言葉もありません。申し訳ありませんでした」
カスタマーセンターのマニュアルのような返事に腹が立った。こんな子じゃなかったはずだ。一体どうしたというのか。
一発殴るか、と思い胸ぐらを掴んで立ち上がらせたものの、最早彼が十二歳の頃とは違う。背が高いと言われる僕と目線はほぼ同じ。
力でも二十代のアレックスと四十近い僕では、圧倒的に分が悪い。殴り返されたらお終いだ。手を離す。
「お前を引き取ったのは間違いだったかな」
すぐに言い過ぎだと気づいた。アレックスはこちらを見たまま黙り込む。
そして突然きびすを返すと奥の廊下をずんずん進み、突き当たりのバスルームに入ってしまった。トイレか、間が悪いなあ。
しかし、いっこうに出てこない。心配になってそばまで行ったが、物音一つしない。ノックをするが返事がない。
「おいどうした? 便秘か、便秘なのか?」
「違います!」
また黙り込む。更にノックをすると、うるさいと怒鳴られた。さっきの言葉に傷ついたのだろうか?  <> アレックス 4/5<>sage<>2009/10/27(火) 00:53:36 ID:bkJhWP610<> それにしても、バスルームに閉じこもるなんて子供じみていて、却って途方に暮れてしまった。
どうしていいか分からずマーサに電話をかけると、勤務時間外なんですが、と彼女にまで怒鳴られた。
「二階のバスルームを使えばいいでしょう?」
そういう問題じゃなくて、と事の次第を、長いと怒られながらも伝えた。
「思ってもいないことを言ってしまったのなら、ちゃんと謝りなさい。素直に話せばいいんです」
「しかし、向こうだっていい加減な返事でその場をしのごうとするから」
「あなたの方が私よりあの子のことを知っているはずです。あの子の気持ちをちゃんと聞いてあげなさい」
と言うと、もう遅いので、と一方的に切られた。どいつもこいつも何なんだ。

バスルームのそばの階段に座り込むとどっと疲れが押し寄せた。
引き取ったことに後悔などしていない。けれど、何でここにきて僕を困らせるのか? 
出会った頃のことを思い出す。僕が施設を取材している間、彼はずっと僕のそばについてきた。
テレビカメラや他の機材を興味深そうに眺めたり、施設の中を一々説明をしてくれたり、とにかく好奇心が旺盛な子だった。
「アレックス。さっきの言葉は本意じゃない。つまり、もっと実力を発揮できるような生き方をしていって欲しいんだ」
バスルームから反応はない。
「責任もって引き取ったからには、お前に幸せになって欲しいし」
突然シャワーの音。え、こっちがしみじみ話してるのに? だがすぐに止むと、ドアが開いた。頭がびしょ濡れだ。
頭に血が上ってしまったので、冷ましましたと言っているが、濡れた髪の隙間から、目と鼻が赤くなっているのが見えた。
泣いていたんだろうか。 <> アレックス 5/5<>sage<>2009/10/27(火) 00:54:15 ID:bkJhWP610<> タオルを持ってこようとしたが、どこにあるか分からない。取りあえずキッチンに……。
「タオルはその階段の下の棚です。キッチンにはないですよ」
考えていることが全てばれている。動揺する僕を無視して、彼は自分でタオルを棚から出すと頭を拭いた。
「ええっと、とにかく何かあるなら、自分の中にためこまないで、どんどん言ってくれ。僕のためにも」
するとアレックスは俯いて何か呟いた。タオルで口を覆っているので聞こえにくい。顔を近づけた。
「……あなたは、仕事ではあんなに鋭い人なのに、自分の周りには無頓着なんだ」
そうかな、と言い訳しようとしたが、急に抱きしめられてしまった。それもとてもきつく。
彼が抱きつくなんて久しぶりだ。子供の頃と違い、思わず倒れそうになったが、後ろの壁に助けられた。
しかしこれじゃまるで、壁に押しつけられたような状態だ。情けない。
「あなたのそばにいたいだけなんです。お願いです。追い出さないでください」
本当にマーサの言うとおりだった。彼は昔と同じで僕のそばにいたいということか。
「追い出したりしないよ。ここにいたいなら、好きなだけいればいい。お前の家じゃないか」
別に早く出て行って欲しいとか、そんなこと思ったこともない。
僕も無頓着かもしれないが、お前も周りがよく分かっていないんだよ、アレックス。

「で、どうなったんですか、結局?」
マーサが朝食後のコーヒーを出しながら尋ねる。どうもこうも、うやむやだよ、と僕は庭を指差す。
アレックスがいつものように水を撒いていた。
実際あの後、彼をなだめながら部屋へ返した。そしてふざけて明るく、エッグベネディクトでも作ってこようか? と聞いた。
てっきり、出来もしないことをと突っ込まれると思ったのに、全く予期しない言葉を呟かれた。
「あなたが好きなんです」

けれど、僕は聞かなかったことにする。
僕と彼はうやむやでいた方がいい。

今のところは。 <> アレックス 5/5<>sage<>2009/10/27(火) 00:54:47 ID:bkJhWP610<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/27(火) 01:09:16 ID:SIPanZzeO<> >>354GJ!
勝手につづき期待してます <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/27(火) 03:39:45 ID:x007jtZiO<> >>354
いつもありがとうございます
こちらも続きを…! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/27(火) 08:12:03 ID:XijeJgXH0<> >>354
一途なアレックス可愛杉。
ぜひ続きを!思いを実らせてやって下さい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/28(水) 01:18:39 ID:bfugVeVz0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 魔王VS勇者です。近親注意
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) .元ネタはありません
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 魔と勇の名無しさん 1/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:19:35 ID:bfugVeVz0<>  剣の魔法使いよ。轡を軋らせ、地獄を駆ける亡者の王よ。
復讐の刃はもはや汝の血。悪逆無道の力は、全て汝のもの。
全てを失い、全てを与えられ――何を望み、何を目指すのか。

「殺せ。思うようにはさせぬ!」
幼い勇者が叫ぶやいなや、魔王の足が勇者を踏みにじる。
「ぐうっ……!」
魔王の唇が勇者を捕らえ、じわりと甚振る。
「幼き王よ。たっぷりと、勇者の精、味あわせて貰うぞ」
声を殺すこともままならぬ、拘束された勇者。
「殺してやる。必ず殺して……うあっ!」
嗚咽を噛み殺す少年王。その瞳に溜まった涙を、魔王が舐め摂る。
「よい眼じゃ。敵に嬲られ、さぞ悔しかろう、のう?」
その陵辱は執拗に続いた。気を失った姿を見下す魔王。そこに。

「刺せ。私は丸腰だ」
目を覚ました勇者の声。観念したのか、魔王を艶かしくいざなう。
「もう決着は付いている、さあ……」
一瞬の油断を、勇者は見逃さなかった。魔王の剣が、勇者の手で閃く。
「一刀両断とは――おのれ!」
「蔑み貶める為の、目合いなぞ要らぬ!」
拘束を引き千切ったであろう、勇者の手首には、血が滲んでいた。
魔王の全身から溢れ出る瘴気。空間を満たす、怨念の塊のような、暗闇。
「王よ。お主の体に仕込んだ種。さて、どうなるであろうの?」
「詭弁を弄すな。世界に魔王は貴公一人だ」
闇に溶け込み、消えようとしている魔王。その指が、腕が。
裸身の勇者を抱擁し、そして哄笑する。
「……勇者よ。ワシは、長き時を……待ってい……た」 <> 魔と勇の名無しさん 2/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:21:01 ID:bfugVeVz0<>  城の医師が、かぶりを振った。
「まさか。王が出産なさる訳ではありません」
「魔王が降臨する、と?」
「これは、いとけなき魔王が、王の血筋に現れる呪いです」
魔術士は詠ずる。解けぬ呪いを解く為に。
堅牢な砦が、冷たい月に浮かび上がる。やがて訪れる悪夢に怯えながら。

 数年後。ゆるやかな風が、回廊の王と王子を包む。
可愛らしい王子が、亡くなった母の話を若き王にせがむ。
「妃は優しかった。もう一人の親は、とても強かったのだよ」
「あんな奴、知らない。僕はお父様とお母様がいればいい」
王に良く似た、純真無垢な面立ちが、頬を膨らませる。
「お前は強い。胸を張り、良き王になりなさい」
「はい!」
王は王子を撫で、とても華奢な剣を差し出す。
「だから。人を守る剣を、お前に授けよう」
優しい笑顔の王。目にも綾な、端整な剣。

「お父様、どこに?」
不安そうに王子は父を見上げる。王は真っ直ぐに前を見ていた。
王は。勇者は静かな目で、おそらくは魔王であろう我が子に答える。
「人の世の倣い。負け戦だ。お前が居る限り、この国は心配ない」
勇者のマントが風を孕み、騎士団と共に戦場へ赴く。
「お父……さま?」
王子は身の丈に合わぬ剣を抱え、狼狽し、涙ながらに王へ駆け寄る。
「待って、お父様! 僕を置いていかないで!」
父は息子を振り返り、ただただ優しく微笑む。 <> 魔と勇の名無しさん 3/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:22:03 ID:bfugVeVz0<>  それは、大国の罠。決して他国に攻め込まぬ、豊かな勇者の国。
城は難攻不落を誇り、王は常に領民を愛し続けた。
だから。大国の王は盟友を誑かし、虜にし、やがて盟友の国を占領した。
勇者は友の為に馬を駆る。もはや敵軍しかいない、その地へと。

 王がお前だけは逃げ延びよと伝えた、その将官が叫ぶ。
「王が崩御なさいました! 相打ちです! 立派な……最後でありました」
将官は男泣きに咽び、傷ついた体で報告する。
勇者は、最後まで勇者だった。真打の帝王を貫き、そして果てた。
友の国は蘇り、しかし、勇者の国は王を失ったのだ。

 その事態に、誠実な宰相は王弟を呼ぶ。
「私が戴冠?」
「はっ。継承順位、御年、実力、申し分ございません」
それが一番の良策だったのは間違いない。しかし、王弟公はしばし沈黙する。
「王子がいるだろう」
王宮はざわめき、賢臣達は口々に反対する。
「なりません。この国が魔王に乗っ取られます」
「これを機に、幽閉すべきです」
王弟は一言だけ伝える。黙れ、と。
「私が後見に就こう。幽閉はいつでも出来る」
「しかし……」
「おかしな真似をしたその時は、私が魔王の首を撥ねる」
そう王弟は誓い、魔王の元に向かった。 <> 魔と勇の名無しさん 4/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:23:02 ID:bfugVeVz0<>  幼い王子は、拙い言葉で泣きじゃくる。
「いやだよ、僕は静かに暮らしたんだ!」
まだ少年に過ぎない王弟が、優しく王子を抱く。
「兄はそなたを、守り刀だと言っていた」
「僕が、守り刀?」
それは、愚かしい程の愛だった。しかし、王弟は確信を持っていた。
「そなたは誰よりも強い。正しく使われる力に、悪いものはない」
王子の声が啜り泣きに変わる。
「ずっとお父様に甘えたかった……お父様の側に、いたかった」
「迷う時、悩む時は、私がいる」

 魔王は王弟公の庇護の下、静かに成長していった。
決して王冠を汚す事無く、勇猛果敢に敵を打ち倒し、平和を保ち続けた。

 その領土に訪れる、異形の者。王の居室が影に満たされる。
「お迎えに上がりました。我が君」
「魔界の者か」
迷わず、魔物の喉元に剣を突き付ける魔王。
実力者であろうその魔物は、眉一つ動かさず、魔王へ訴える。
「君主無き魔界は人の世を喰います。人を守るならばお戻り願いたいのです」
魔物はゆるりと消え、そして魔王が取り残される。
「父上、伯父上……僕はどうすればいいのですか」
もはや彼を庇う王弟は亡く、魔王の誠意だけが人の王と認めさせていた。 <> 魔と勇の名無しさん 5/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:24:36 ID:bfugVeVz0<>  城門で、小競り合いが起こった。騎士すら打ち倒した一団に、王が動く。
「やっと見つけたぞ魔王! 人の王を偽るなど、貴様は最低だ」
「僕が、魔王? 僕は王と王妃の息子だ」
真っ直ぐな瞳の剣士が、魔王の剣を指差す。
「それは魔王の剣だ! そんな造りのものは、人間には作れない!」
かつて、勇者が授けたその剣。勇者は、初めから王子が何者か知っていた。
魔王は一瞬身じろぎ、しかし落ち着いて答える。
「名を挙げたいだけの無頼が、勇者を名乗るな」
新しい勇者。しかし、領民にとってはただの闖入者に過ぎない。
「僕が何をしたと言うのか。他国を侵さず、民を養ったと言うのに」

 魔王が動く。剣士が構える。そこに。
「王、いけません! 剣をお納めください。勇者様、貴方もです!」
両者の剣を、一人の騎士が留めた。同時に兵卒達が魔王の盾となった。
ようやく魔王は気付いた。敵を打ち倒すその最中、魔王を援護する人々がいた事を。
「なぜだ。こいつは魔王だろう!」
「いいえ。この方は人の王。我が領地の主です」
騎士は、魔王を信じていた。幼き日から、誠実であったその王を。

 魔王が項垂れ、そして剣士に振り返る。
「勇者、お前に話がある」
幾分落ち着きを取り戻した一団が、王宮に集う。
「魔界に戻る?」
「そうだ。お前が将として、民を助けて欲しい。絶対に侵略はするな」
剣士は胸を叩き、そして笑った。
「任せろ!絶対に守ってやる」
「それでこそ勇者だ。騎士よ。王冠はお前に預けよう」
若き魔王に子はいなかった。騎士は目を見開き、そして嘆く。
「王よ、私は……離れたくありません」
「君はずっと、僕の親友だ。ありがとう」
騎士は、王弟の子であった。魔王は、人に国を返したのだ。 <> 魔と勇の名無しさん 6/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:25:44 ID:bfugVeVz0<>  魔界への道は、生まれたその時から知っていた。
けれど認めたくは無かった。勇者の国の、優しい人々が好きだった。
父の国よりも、遥かに巨大なその城。魔物達は平伏し、やがて門が開かれた。
「お待ちしておりました」
この世のものとも思えぬほど、豪奢な宮殿。そして、場を埋め尽くす軍団。
全てが敵であり、全てが猛者であった。魔王は迷わず詔書を読み上げる。

「呪われし者達、穢れた者達よ! 我は貴様達を支配する!
脆弱な猿共を、 一歩たりとも魔界に入れさせてはならぬ。しかし。
決して、人の世界に踏み込むな。従わぬ者は一族郎党滅す。
逆らう貴族共を滅し、蹂躙し、我が版図を魔界に広めよ!」

 巨大な歓声。魔物達の太鼓と喇叭の音。
「ああ、我が帝王、どれほどお会いしたかったか!」
「最早戻れぬ。しかし忘れるな。僕は勇者の子だ」
魔王はかつての冷酷さを取り戻し、悠然と玉座へ座った。

 すると、貴族の一人が魔王に声をかけた。
そこには。かつての勇者。魔王の父であった者が立っていた。
「……なぜ」
「私は血塗られていた。だから亡者としてここに来た」
幼い日に別れた、そのままの姿の勇者。
魔王は勇者に縋り付き、そして幾度も幾度も訴える。
「僕を倒してください。きっと勇者として蘇る」
勇者は魔王の涙を拭い、寂しく笑う。
「いいや。もう、斬れぬ。斬れぬのだ、息子よ」
魔王には、理由が分からなかった。何故。どうして。
「私は、良き父であったろうか」
勇者からの抱擁。魔王は頷き、熱に魘された様な声で伝えた。
「勿論です、お父様……」
「私は……永久にお前を愛そう」 <> 魔と勇の名無しさん 7/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:27:01 ID:bfugVeVz0<> 「――その言葉、待っておったぞ」
勇者の眼差しが、慈愛に満ちたものから鋭いものへと変わる。
「貴様!」
「ふっ……ふはははは! お主が言うたのだ。魔王はワシ一人、とな」
魔王は勇者を強く抱き留める。勇者は歯噛みし、怯む事なき眼で魔王に訴える。
「よくも、我が国を。よくも、我が妃を、王子を!」
「妃も王子も、ワシじゃ。本物の妃候補は、とうに裕福な貴族に嫁いでおる」
計略は。全て戦いの前に始まっていた。
「私は愚かな道化だ。貴公に欺かれたまま、討ち死にしたのか」
「ワシを連れて行けば良かったものを。犬死なぞ、させはしなかった」
その口惜しそうな表情に、勇者が首をひねった。

「何故だ。何故このような事を」
魔王の残忍な声が、はっきりと告げる。魔界の生態系は狂っていたのだ、と。
「狂った?」
「魔界の者は、魔界の肉を喰うが良い。この理が崩れ、餓えておった」
勇者の表情が変わった。かつての、父と子の間合いにあった表情に。
「ははは。誇り高き魔族に侵略を止ませるものは、魔界の畑か」
「くっくっ……必要な物は、人型の家畜よ。豚を改造すれば良い、が」
「必ずや人をさらい、豚と偽る者が出るであろうな」
窓の外で、雷鳴が瘴気と交じり合う。両者は目を合わせ、そして魔王が囁く。
「そちが倒せ。それが勇者の役割ぞ」
勇者には、魔王の目的がようやく掴めた。
「是非もない。その為に父を呼んだのか」 <> 魔と勇の名無しさん 8/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:28:19 ID:bfugVeVz0<>  魔王は勇者の腕を引き倒し、そのまま褥に乗せる。
「たった十七で戦死した若造が、父親面とは」
「ならぬ! はな……せ」
その言葉を塞ぐ、深い、深い口付け。
勇者の全身に、かつてよりも頑強な鎖が繋がれる。
まだ抗おうとするその肢体を捕らえ、ゆっくりと堪能する。
「ワシはな。お主の血で更に力を得た。そして、お主も」
「やっ、そん……うぐっ!」
厚い雲が切れ、なんか月が見ていた。玲瓏たる輝きを放ちながら。
「我々は、番いでは、ない。そんな事は……あってはならない!」
「無論。だからこそ。お主の心が欲しかった」
勇者の鼓動が高鳴る。感じてはならない。受け入れてはならない、その相手に。
心を喰らう魔王。真の狙いは、そこにあったのかもしれない。
勇者の手に、ぼくのエクスカリバーではない剣を握らせ、魔王は告げる。
「いつでも斬るが良い」
「そのような……我が子を斬る事は、出来ぬ!」

 ならば、と魔王の切っ先が勇者の鎖を解いた。
「なっ?!」
「如何した? 迷うな。敵は此処にいる!」
轟音と共に、火の粉を散らしながら。魔王の剣が勇者に弾かれる。
渾身の一撃が、魔王を狙う。凄まじい妖気が、勇者を床に叩き付けた。
「苦しいのであろう? さて、どうする。ワシを受け入れるか、それとも……」
勇者の眼は光輝を取り戻し、されど悄然と立ちすくむ。
最早、魔王の手すら払えずに。勇者は、一掬の涙を零す。
「そなたを許せぬのだ。決して――決して!」
「だから斬れと申した! ワシはお主に会いとうて……ずっと」
魔王の爪が、勇者の髪を梳く。愛おし気に眼を伏せ、そして艶麗に微笑む。
「ワシを憎め、勇者よ。もはや、手放せぬ」 <> 魔と勇の名無しさん 9/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:32:31 ID:N7lu6f6X0<>  人の世がざわめく。勇者の国に、溢れんばかりの重騎兵。
難攻不落の城砦を、途轍もない軍団が取り囲む。
「あの布陣――攻城戦です!」
王を継いだ騎士が、肩を落とす。
「申し訳ありません。私には領地を守れませんでした」
剣士が装備を整え、そして騎士の肩を叩く。
「俺が敵将に一騎打ちを挑む」
「それでは勇者様が、あまりにも危険です!」
剣士は顔を上げ、頼もしい笑顔を見せる。
「何の為の勇者だ? 俺が倒されない限り、何も心配ない」

「餓鬼が。いいだろう。勝負してやる」
傲岸不遜な面構えの敵将が、剣士と差し向かう。
「そうこなくっちゃな!」
言うが早いか、剣士の跳躍と同時に剣が大地を引き裂いた。
「ちっ、剛剣か!」
形勢不利と見た敵将は、腕を振り上げ、そして軍団に告げる。
「弓隊、前へ!」
「!」
幾千、幾万もの弓が、勇者に照準を据えた。
「形勢逆転、だなあ?」
「この卑怯者!」

 微かな鳴動が、大地を揺るがす。
「何の地鳴りだ?」
漆黒の軍団が、敵の重騎兵を突き破る。王が叫んだ。
「援軍?!」 <> 魔と勇の名無しさん 10/10<>sage<>2009/10/28(水) 01:33:28 ID:N7lu6f6X0<>  饐えた瘴気と、人ならぬ風貌と。死がそこにあった。
兜の下に髑髏が覗き、死した皮膚が乾いた音と共に蠢く。
誰よりも立派な体躯と、憤怒に満ちた形相。
それは、伝承の猛者達だった。今は亡き、愛馬達であった。
鎧と、武器の。無数の金属音が響き、惑うこと無き剣が打ち下ろされる。
「もっ、亡者と怪物の大軍です! この国はもう、お終いです!」
宰相はもはや涙目だった。翼竜は天空を舞い、魑魅魍魎が大地を這い回る。
その死霊の先頭に、二人の騎士が駆ける。かつての王と、王子が。

 魔王は敵将の頭を掴み、笑いながら剣を構える。
「貴様、僕の留守に何をしている」
「ひっ! ひぃいい!」
「貴様の国を、あまさず炎で焦土にしてやろうか?」
勇者は魔王に手を振り、そして止める。
「もう、良い。地獄の勇士達よ、我に続け! 共に無法者を駆逐せよ!」
魔物の雄叫びが、風を揺るがせる。剣士が慌てて馬に乗り、勇者に続く。
「俺も行きます!」
魔王は少しむくれて、ぎりぎりと敵将の首を絞めた。
「父上は甘過ぎます。さて敵将。存分に吐いて貰うぞ」
「あっ、がが、ぎゃあああ!」
敵将が魔王軍に引き渡される。今の王が、魔王の横でうろたえた。
「会いたかったよ。我が従兄弟。さあ、僕達も参戦しようか」
騎士は構え、馬を魔王にぴたりと付ける。響き渡る声で、魔王が咆哮する。
「存分に敵を屠れ! ――骨すらも噛み砕き、魂を我が軍団に迎えるのだ!」

 勇者は剣士に笑いかけ、そして敵軍をなぎ倒す。
「君が今の勇者か」
「はっ、はい!」
「これからも、よろしく頼む」

GAME OVER <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/10/28(水) 01:34:41 ID:N7lu6f6X0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> loved like the kitten 0/4<>sage<>2009/10/31(土) 05:05:00 ID:k37wzBZuO<>
※生注意※
オサーン盤で紫×赤

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> loved like the kitten 1/4<>sage<>2009/10/31(土) 05:07:52 ID:k37wzBZuO<> 叫ちゃんはほんまネコやなと、常々思う。

タチネコのネコやない。
にゃおーんのネコや。

いつかその小さな頭から、かわいらしいネコ耳が生えてくるんやなかろうか、とか。
小さなお尻のちょい上から、もうそろそろ尻尾が生えてきてもええんやなかろうか、とか。
ふとしたときに確かめたなって、ひよこみたいにふうわふうわした頭をかき回してみたり、あっさりと腕に収まる腰を撫でてみたりしたなんねん。

本人には言わへんけどな。
ものごっつ冷たい目で見られるのがオチや。
いや、かわいそうな子を見る目かもしれへん。

今だってそうや。
肉の薄い、でもごつごつした感触は感じられへん細い脚を両肩に抱え上げて、下っ腹を何度も何度も舌で往復すると、これまた薄い腹をひくひく震わせて、気持ちよさそうにのどを鳴らしよる。
大事なトコには触ってへんのに、淡い下生えぎりぎりを舌がたどると、腰を揺らめかせながら俺の頭をぎっと挟み込みよる。

力なく俺の肩に置かれとった手は、だんだん丸くなって、短く切られた爪がわずかにその切っ先を肉に立てたり。
かと思えば、柔らかな手のひらが少しだけ胸を押し返してきたり。

あんときのネコもそうやった。
まだ俺がガキで、ひいばあちゃんもおって、でも家におかんはおらんやった頃。
近所の神社に住みついとったネコはやたら人馴れしとって、味噌汁の出汁用やった煮干しを何の気なしにやったら、えらい懐いてきよった。

捨てネコやったんかもしれん。
もしくは、迷いネコか。
腹を見せて寝っ転がるし、その腹を撫でても逃げへん変わりモンやった。
撫でられると嬉しそうにのどを鳴らして目を細めて、離さんごと両脚でしっかりと俺の手を抱え込んで、ちょっと爪を立てたり押し返したりしよった。
そんで、気が済んだら指をガブー。
初めて噛まれたときは変わり身の早さにびっくりしたわ。
甘噛み程度の力でも、まさかいきなり噛まれるとは思っとらんしな。 <> loved like the kitten 2/4<>sage<>2009/10/31(土) 05:09:38 ID:k37wzBZuO<> いつ行ってもおる訳やなかったけど、気が向いたときに寄ってきては餌をねだる奔放さが当時飼っとった犬とは大違いで、台所からこっそり煮干しをくすねては、孤独で自由なそいつに会いに行くのは密かな楽しみやった。

叫ちゃんを見てると、あんときのネコをちょっとだけ思い出す。
自由で、気ままで、奔放で、だからこそ孤独で。
愛されることを知っとって、愛されてないとあかんくて、よう知らんヤツにも愛想いいくせに、ほんまに心を許したらわがまま放題。

俺かてわがまま放題やけど、叫ちゃんにはかなわんで。
と言うか、叫ちゃんのそれとはまた種類が違う。
叫ちゃんのわがままはごくごく限られた人間に対してだけ向けられる甘えで、甘えていい相手を本能で見極めとるっちゅうのがしたたかでやらしいんよな。

「い、ちろ、も…、いいっ、て」

指一本でいつまでも中を広げとったら、焦れた叫ちゃんから催促のお言葉をいただいた。
一緒に、細い脚をクロスして背中を抱え込まれる感触。
いやいや、まだまだでしょう。

「一本じゃ足りひん?」
「じゃなくてっ」

わかっとるよ。
ちょっと間が空いたもんな。
早く欲しくてたまらんって、ちっちゃなお口がきゅうきゅう吸いついてきよる。

「今挿れたらキツイの叫ちゃんやで?」

殊更優しい声音で囁いてあげるだけで、叫ちゃんは何も言えへんくなる。
その隙に、シーツに転がしていたローションを手に取って、健気に勃ち上がる隆起に垂らした。
冷たさに驚いて跳ねる身体を押さえつけ、更に垂らす。
とろりと粘性の高い液体がゆるゆると竿を伝って流れ落ち、薄暗い灯下でも淡いピンクをまとった雄芯はきらきらして見えよる。

<> loved like the kitten 3/4<>sage<>2009/10/31(土) 05:11:37 ID:k37wzBZuO<> 重力に従って孔の縁を濡らしたローションを指先ですくい、まとめて二本差し込んだ。
第一関節を過ぎた辺りで止めて、くるりと一転。
焦れては浮く腰はあえて無視して、流れる液体がシーツにたどり着く前に人差し指でひと拭い。
指の腹を押しつけながら会陰を撫で上げれば、もどかしさを呼ぶらしい浅い部分に奥へと直結した刺激がないまぜになって、せがむように腰が揺れた。

悩ましげに揺れるスレンダーな身体はそらもうかぶりつきたいくらい美味しそうやけど、俺かて勢いだけが取り柄のガキやあらへん。
指をしゃぶる入り口が立てる音はくちりくちりといささか恥ずかしげで、決して少なくはない経験がまだまだ足りてへんよって教えてくれた。
準備万端、いつでもウェルカム状態なら、もっと深くて、もっと重くて、身体にまとわりついて離れへん、底なし沼から響いてきたみたいな、やぁらしい音がすんねん。

何せ、誰もが認めるほど超ご多忙、ウチで一番生き急いどるフロントマンや。
身体が資本の商売にあって、万が一にでも負担のかかるようなことはさせられへん。
ま、セックス自体が負担かかるって言われたら、そこは目をつぶってもらわなしゃあないけどな。
お互い溜めっぱなしの方が、精神的にも肉体的にもよろしくないやろ。
おっさんいうても枯れるほどの歳やあらへんし。

きゅううと締めつけるだけやった入り口が誘い込むように柔らかくほぐれてきたところで、指を三本に増やしてゆっくりと奥まで押し込んだ。
擦り上げながら内側を侵しても、イイところはかすめるだけ。
序盤からトばしたらもったいない。
ようやく時間の取れた、久々の長い夜なんや。

頭の上でぱさぱさ乾いた音がしよるのは、叫ちゃんの痛んだ髪がシーツを叩いとるから。
少しずつピッチの上がる息づかいに混じる小さな衣擦れの音は、身体の内側を押し広げられたせいですがるものを求めた指先の訴え。
咥え込んだ指先を望む一点に押し当てようとしてくねる腰は、逃げを打つ段階などとうに過ぎとる。

ひゅうと息の詰まる音と同時に、指の根本がくんと引き絞られた。
その先は熟しきった桃みたいにぐずりと指を迎え入れ、粘っこく水気のある音を腹の内側から響かせよる。

<> loved like the kitten 4/4<>sage<>2009/10/31(土) 05:13:57 ID:k37wzBZuO<> ああ、この音や。
熟れ落ちる寸前の果物を握り潰したような、その果物に取り込まれるような。
重くて、深くて、粘ついとって、理性も本能もなんもかんもが一緒くたに引きずられる、底なし沼に誘われる音や。

叫ちゃんが望む一点をくんと押し上げてから指を引き抜き、手を伸ばして枕を掴む。
両脚を抱えながら枕を腰の下に差し入れて身体を引き寄せると、こちらをひたと見つめる叫ちゃんの視線とかちおうた。
薄く開いた唇。
朱の走る頬。
ちょっとだけ寄せられた眉間。
うっすらと水の膜が張ったふたつの目が、期待に揺れる欲の光で全てのいじらしさを裏切っとる。
おまけのように、赤い舌をちろりと出して、乾いた下唇を舐めた。

「…かなわんな」
「?…何、が?」

見とる人間がどんだけ煽られるかなんて百も承知のくせして、何が?なんてすっとぼけてみせる。
さすがは稀代のヴォーカリスト様や。
俺が惚れただけはあるで。

入り口に猛った息子を押し当て、肉付きの薄い脚を抱えなおす。

「ぎょうさん、ミルク飲ましたるで」

ほんの一瞬、目を見開いた腕の中のネコはすぐに顔をほころばせ、親父くさいと笑いながら両腕を俺に向かって伸ばした。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

京言葉わかりませんでしたすみません
あれこれ捏造もすみません
いたしてるだけですみません <> 漁師兄弟 1/5<>sage<>2009/11/01(日) 01:42:19 ID:Al7SJ0GpO<> 聖人漫画の漁師兄弟ネタ。単行本4巻の二人にやられた!

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

もう随分遊んで遊んで慣れきったゲームだったから、今更こんな新キャラクターが出るなんて
思ってもみなかった。オンラインゲーム恐るべし。
いや、チームの「珍しいキノコ集め」という活動を忘れたのがいけなかったのか。
初っ端のヴィラスーラ平原なのに、なのに。もうあらかたの敵キャラも見慣れて、笑って流せる
くらいのレベルなのに。
「んぎゃああああ兄さん!!目玉パネエ!!ゾンビ系マジで俺ダメ!!」
「って、ちょっwww俺もwww一人で逃げんな!!」
ぐっちゃんぐっちゃんの目玉とか、飛び出た内臓とか振りかざして襲ってこられたら、二人して
もうダメだ。
いやたぶん、師匠のイエス様もコレ系はダメなんだけど。スプラッタは無理。絶対無理。
いくら一撃で倒せる程度とはわかっていても、襲ってこられると反射的に逃げてしまう。
「ゆ、ユダっち呼ぶ!?呼んじゃう!?ww」
「バカ兄さん!それはヤベー!!」
ペトロとアンデレ、ハンドルネームぺとろん、あんでれはダッシュで画面はじから村へ逃げ込む。 <> 漁師兄弟 2/5<>sage<>2009/11/01(日) 01:43:41 ID:Al7SJ0GpO<> もともと十二使徒やる前は二人して漁師だったけれど、ゲームの中ではそれぞれ戦士と魔法使いに
なって遊んでいる。
「いや、アンドレ全部燃やせよ、アレとかww」
「兄さんこそ、斬っちゃってくれよ!!」
村に逃げ込んで一息ついたら、さあどうするかできーきー兄弟トークが始まる。
全くあんなのが平和(冒険の世界だけど)なヴィラスーラ平原を闊歩していたら、自分達だけで
なくイエスも遊べなくなる。
多分ユダはスプラッタ系平気なはずだけど、最近やっとネット依存から立ち直ったらしいし、
今は呼ばないほうがいい。
「だいたい兄さん、そのごつい鎧とかナニ?役立ってんの?」
「ちょwwお前だって何だよ、そのドクロとかwwねえしww」
ごんごんごん、兜の頭とマントの頭をぶつけ合いながらガンを飛ばして言い合いになった。
ペトロは仮面兜の下から異様な空気かもし出してくるし、アンデレは鬱陶しい長い前髪に
三白眼が透けている。
アンデレが兄の装備に突っ込めば、ペトロはペトロで弟のマントについているドクロマークが
気に入らないらしい。
「じゃ装備解くわwwマジで」
「はっ、俺も装備変える!えーとブッダ様がお布施でゲットしたボレロが、確か…」 <> 漁師兄弟 3/5<>sage<>2009/11/01(日) 01:45:43 ID:Al7SJ0GpO<> 「アンドレ!?お前だけ何ブッダ様から頂いてんの!?ww」
前回イエスがつれて来た相方こと、ゴータマ・シッダールタことブッダ様は、ゲームの世界でも
ブッダ様だった。
無意識なのかすれ違う他プレイヤーキャラを懐かせては、貴重なアイテムをゲットしまくり。
それを繰り返して、初回のログインであっという間に最強装備も手に入れてしまっていた。
いや、逆にああだとRPGの醍醐味もちょっと薄れやしないかなと、そう思わなくも無いレベル。
「俺も!俺も!」
「兄さんのはねえよ!ww魔法系職業しか装備できねーっつの!」
「じゃあ、俺装備脱ぎ損じゃん」
「だあああ!兄さん重い!!のしかかってくんな!!」
「ちょっとー!!二人とも何してんのー!!」
「あ」
「イエス様、また真っ昼間っスよwwww」
「だから真っ昼間から二人して何やってんのー!!??」
突然絶叫声で話しかけられてそちらを向くと、急遽ログインしてきたらしいイエスがはーはー
息を切らせている。
神の子イエスは、二人の師匠でチームネトゲ聖人のリーダーでもある。
ちなみにチームの活動、「珍しいキノコ集め」も彼の趣味だ。 <> 漁師兄弟 4/5<>sage<>2009/11/01(日) 01:48:08 ID:Al7SJ0GpO<> 「あれ、今日はブッダ様一緒じゃないんスかwww」
「イエス様!そうそう大事件なんスけどね、ゾンビが……」
「そんなことより、二人とも!そんなとこ父さんに見られたら…ソドられるかゴモられるよ!?」
「……!!」
ぴーん。
二人の脳裏にソドムとゴモラの悲劇がばっちり浮かんだ音がした。
「いや…兄弟でそれはないッスから…」
「はァ…」
「でも特にペトロは教祖代理みたいなもんだから!しっかりしとこう!?」
いつもぽやややんとしているけれど、一度がみがみ言い出すとイエス様は結構ちまちまうるさい
タイプだ。
しかし確かに一理あるはあるわけで。
ずりずり二人して後ずさるようにして、違いますよ〜神〜wと、とりあえず距離を置く。
バベられるみたいに、天の火でソドられたりゴモられたりしたらいくら聖人でもジエンドだ。
「ほら、早く早く着て」
イエスがまたキノコ集めに行くというので、二人の装備しなおしのケツを叩いてくる。
今日は何でもレアアイテム出現の日だそうで、そうなればきっとキノコも珍しいものが手に入る
はず、と言う。
また草原の端っこで、三人はあちこちをごそごそ探り出す。まあ確かに探ると、出るわ出るわ。 <> 漁師兄弟 5/5<>sage<>2009/11/01(日) 01:53:04 ID:Al7SJ0GpO<> 「…あ、でもイエス様」
しばし黙って、何やら考えていたらしいアンデレが、ぼそっと言う。
「いや、聖人筆頭が同性愛でゴモられたとか、結構…天界滑らない話じゃないスか?」
「…うぉっ!アンドレそれパネエ!ww天界百物語りに混ぜとくとドッカンドッカン……」
「……!!」
「イエス様、目キラキラっスよww」
「ってやっぱダメー!!」
しばし明らかに興味深々だったイエスが、そこで叫んだ。
せっかく掴んでいたキノコも投げてくる。いや、所詮キノコだし、痛くはないが。
「弟子なのに私より面白いネタ持っちゃダメ!体張っちゃダメ!!」
「イエス様、ちょっww」
「そこッスかww」
「……もしかして二人、来年のM-1狙ってるんじゃ…兄弟コンビで…」
「……」
「……イエス様、それよか、後ろ…そーっとっスよ、そーっと振り向いて…」
「?」
くるり。
んばあ。
「…!」
スプラッタな光景(新キャラゾンビ系モンスター登場)に、予想通りイエスがぶっ倒れた。
その後イエスをログアウトさせるのに、わざわざ二人がパソコンオンチのブッダまで呼び出す羽目に
なったのは、言うまでもない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/01(日) 03:12:47 ID:bTK13kxjO<> >>376

まさかここでちぱ狂とはーっ!!!!
ごちそうさまでした(・∀・)
まさにちぱ的な感じでポエティックでしたwww

今ツアーどこも行けなくて泣ける(ノ□`゚)
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/01(日) 07:34:37 ID:+OfWL4GJ0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  半生 ドラマ 「イニ」 量間×イニ 非エロ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|    時間軸は3〜4話の間あたり 
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ zZZ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(-Д- )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 鰻屋譚(量間×イニ) 1/9<>sage<>2009/11/01(日) 07:37:23 ID:+OfWL4GJ0<> なんでこうなってしまったんだろう・・・?
狭い座敷の低い天井をぼんやり眺めながらイニは混乱する頭をなんとか冷静に引き戻そうとした。

事の起こりは2時間ほど前、量間が立花家にイニを訪ねてきたところからだった・・・
「先生!」
先に通されて座敷に入ってきた量間は、いつもの調子で手を挙げる。
「量間さん・・今日はどうしました?」
「先生にな、礼を言いに来たんぜよ。」
そういいながら量間はガチャガチャと腰の業物を下ろすとイニの隣にどっかりと座り込んだ。
「礼・・?」
「この間のコロリの時には仲間が世話になったき。あー、あと今日太郎殿の口利きで軍艦奉行並・活殿にお目通り叶うた、ぜーんぶ先生のおかげぜよ。」
「私は何も・・・むしろお礼を言いたいのは私の方です。」
「いやいや、そんなこと言わんと・・・」
「私は医者ですから、当然の事をしたまでです。おまけに・・・一番大事な時に自分が倒れてしまって・・・ご迷惑をおかけしました。」
「ほんでも、なにかせんとわしの気がすまんきに。での先生、ゆうげをごちそうさせてくれんかの?」
「夕食ですか・・?」
「まぁ、わしも江戸ではしがない食客の身の上じゃき、大層なもんはないけんども」
量間はそう笑いながら先の入れて来た茶をすする。 <> 鰻屋譚(量間×イニ) 2/9<>sage<>2009/11/01(日) 07:39:02 ID:+OfWL4GJ0<> 「ときに先生、住まいは「谷底」やちゅうてたけんど、お里はどちらの方かいな?」
「・・お里?」
「生まれはどこかと聞いとるがよ」
「ああ・・出身はとう・・・っ、え・・江戸です。」
『東京』といいかけて慌てて口ごもった。
「ふぅん・・・」
一瞬、量間の眼光が鋭くなったが、すぐさまいつもの飄々とした様子で笑いながら
「ほんなら先生、今晩はうなぎを食いに行こうぜよ。」
と切り出した。
「うなぎ・・・ですか?」
イニの脳裏にあの香ばしい蒲焼きの匂いが過る、立花家の食事は美味しかったが、なにぶん毎日山盛りの白飯には辟易としていたところだ。
「どや、先生?」
「良いですよ。」
「そうと決まったらすぐに行くぜよ、ささ、先生!」
そう言うと量間はせわしなく立ち上がり、下ろした業物を帯刀するとイニを急かした。
「ちょ・・ちょっと待って下さい、さ・・先さんに夕食はいらないと言づててきますから。」
<> 鰻屋譚(量間×イニ) 3/9<>sage<>2009/11/01(日) 07:40:19 ID:+OfWL4GJ0<> 「先さん。」
炊事場で早々と夕食の支度をすすめていた先に声をかける。
「あら、先生。坂/本様はもうお引き取りに?」
「それが・・なりゆきで夕食をごちそうになることになりまして・・・出かけてきますので今晩の夕食はいりません。」
「そうでございますか。承知いたしました、して、どちらに?」
「はぁ・・・なんか・・・ウナギだとか。」
「?!」
さぁっっ、と先の頬に一瞬朱が走りこちらに向けていた顔を背ける。
「先さん??」
「なっ、何でもございませんわ!あのっ・・・ごゆっくりして来て下さいませ!!」
そう言うと先は俯いたまま木戸から外へと出てしまった。
「先生!!早う早う!!」
不自然な先の態度に心が引っかかったが、玄関先から響く量間の声に急かされてイニは立花家を後にした。
<> 鰻屋譚(量間×イニ) 4/9<>sage<>2009/11/01(日) 07:41:42 ID:+OfWL4GJ0<> コレラの流行も終息し、人の賑わいが戻った往来を量間に付いて歩くこと暫く、現代で言えばいかにも老舗風な造りの鰻屋につくと、二階の座敷に案内された。
六畳ほどの狭い座敷に小降りな座卓が一つ、少し開いた障子の向こうに神田川が見える。
酒とお通しを持って来た女中に量間がなにか耳打ちし、女中は「へぇ」と会釈をして襖戸を閉めた。
「先生!」
「あ、すみません・・」
恐縮しながら量間の杯を受ける、自分は今、『あの』坂本量間を酒を酌み交わしている。
不思議なような、嬉しいような・・未だに自分の存在、立場をどこに置けば良いのやらわからなくなってくる。
「あの・・・活先生に会って、どうでしたか?」
量間はイニの問いかけに手にした猪口の酒を一気にあおる。
「今日太郎殿にゃ申し訳ないが、わしは活先生を斬るつもりじゃった・・・」
「じゃが、『斬るのはいつでもできるからとりあえず話をきけ』というがや、わしもそう言われたら聞くしか無いがよ。」
なんだか聞き覚えがある話だ、昔時代劇で観た事がある。
「活先生は『幕府のため』とは一度も言わんかった・・すべて『国のため』『人がため』そんために今何を『為すべき』か・・・
まっこと、活先生の話には国と民への想いに溢れとうがよ・・」
「眼ぇが覚めたがよ・・わしの『為すべきこと』は活先生のもとに有る。そやけ、わしはその場で活先生の弟子になる事にしたきに。」
捲し立てるように一気に喋りきって笑う量間は、進むべき道を見つけた充足感に満ちていた。
「そうですか・・・ではこれから忙しくなりますね。」
「先生、活先生何をしようとしとるか知っとるがかや?」
「え?あ・・・いや、今日太郎さんから話を聞いて・・」
ははは、といつもの調子でごまかしながら障子越しに夕暮れの神田川を遠く見やる。
歴史は間違いなく史実通りに動いている、それは自分が今居る世界が夢中の虚構でなければパラレルワールドでも無いことを確信づける。
活が動き、量間が動き、いずれ日本も大きく動き出す。その激流の中に、自分も流されて行くのだろうか?
その時、自分はどこでこの夕日を眺めているのか・・・江戸なのか、現代の東京なのか・・・ <> 鰻屋譚(量間×イニ) 5/9<>sage<>2009/11/01(日) 08:01:13 ID:+OfWL4GJ0<> 「先生。」
突然量間に衿元を掴まれ、ぼんやりと外を眺めていたイニを現実に引き戻した。
「!?」
一瞬何が起こったのかわからなかった。
背中に感じた衝撃と量間の肩越しにみえる天井で、自分が床に押し倒された事を知った。
衿元を掴んだまま馬乗りになり無言でこちらを見下ろす量間の眼はそれが冗談では無い事を物語る。
__殺される・・のか?
量間は人は切らなかったはずだ・・・確か。
だが、続く量間の行為は混乱するイニの脳内をさらに掻き乱した。
開けた衿元から量間の手が差し込まれ、覆い被さる、首筋に熱い吐息を感じてイニは戦慄した。
__何故・・???
抵抗しなければ、と思いながらも手も足も動かない、いや・・動かせないのか?
パニックに陥ってどうしたら良いのか、どうすれば良いのかもわからない。
相手は北辰一刀流免許皆伝、腕っ節でかなうはずも無い、それに下手に抵抗して怪我を負わせるわけにも行かない。
なにより・・・自分はこんな量間は知らない。
手紙魔であけっぴろげでつかみどころのない性格・・・千葉/さ/な子、お/りょ/う・・・
女性の名前は出て来てもこんな事は・・・違うはずだ。
だが、袴の上から自身を弄る手つき、息づかいは量間が本気である事を物語る。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/01(日) 08:01:20 ID:KyMO0vKvO<> まさか規制ですか!? <> 鰻屋譚(量間×イニ) 6/10<>sage<>2009/11/01(日) 08:06:42 ID:+OfWL4GJ0<> 「先生。」
低く耳元で囁かれて身体が震える、それはこの先に更に深い行為があるという事だ。
___違う・・・はず。
___そもそも自分は『量間本人』を本当に知ってるのか?
「・・ッ!!」
口唇を吸われて我に返る、舌を差し込まれそうになってイニは反射的に両腕を突っぱねた。
突き飛ばしたつもりは無かったが、驚くほどあっさりと量間は身体を離した。
「なっ・・・何をするんですかっ」
自分でも情けなくなるくらいうわずった声での抗議に、量間は破顔すると大声で笑った。
「先生!なっかなか嫌がらんきに、本当に『その気』があるんかと思うて焦ったがよ!」
「そんな気ありませんよ!わ・・・私をからかったんですかッッ・・!」
やはりまだうわずった声でのイニの抗議に量間はずいっと顔を近づける、
「先生・・・鰻屋に誘われてホイホイ付いてくるちゅうことは、こういうコトぜよ。」
___?!
要するに『連れ込まれた』のだ・・・出かける前の先の不可解な態度の理由を瞬時に察した。
<> 鰻屋譚(量間×イニ) 7/10<>sage<>2009/11/01(日) 08:10:11 ID:+OfWL4GJ0<> 「どうして・・・」
「こんなこと、江戸のモンなら皆知っちゅう・・・土佐の田舎浪人のわしでも知っとるきに」
「先生は江戸の生まれじゃ言うた・・・」
「それは・・・あの・・・記憶が・・・」
いつもの調子で誤魔化そうとしたイニを量間が遮る。
「土佐での・・馬から落ちて頭を打って記憶が無うなったモンがおった・・・」
「そいつは己の名前を忘れ、家族を忘れ、飯を食うたことを忘れ、終いには厠に行くことも忘れて糞まみれになって死んだぜよ・・」
___急性硬膜下血腫か、硬膜外血腫か・・・?血腫が徐々に脳を冒し意識障害の末に死亡したのだろうか。
「眼ぇは虚ろで、命はあっても死人の眼じゃった・・・」
「じゃが・・先生の眼ぇは・・、本庄相生町の長屋で命がけでコロリと闘うちょった先生の眼ぇは、
わしに『為すべき事をせえ』と言うた先生の眼ぇは、何も見失うてなかったがよ!!」
もう一度衿元を強く掴まれてビクリと身構える。
「おんし、なんで嘘をつくがか!!」
「それは・・・」
量間の並外れた洞察眼はイニの虚実をいつから見抜いていたのか・・・
「夢でわしの声を聞いた、言うたがか・・おんしゃ、何者なが?!」
「・・すみません・・・」
衿元を掴む量間の手首に手を添えると、強い力が若干緩んだ。
「江戸・・・の出身だと言うのは本当です・・・信じてもらえないかもしれませんけど・・」
「ただ・・・違うんです。この江戸とは違うんです、違うんです!」
「私はっ・・・」
イニの量間の手首を掴む手に力がこもる。
___私はこの世界の人間ではないんです。
ここで全てを話せば量間は自分に協力してくれるだろう、なによりあの「標本」にいつか関わるはずなのだ、もしかしたら現代に戻る術も見つかるかもしれない。
だが・・・
海援隊、薩長同盟、船中八策・・・量間のなし得た偉業が過る。
___33才・京都・・・近江屋・・・。
<> 鰻屋譚(量間×イニ) 8/10<>sage<>2009/11/01(日) 08:14:08 ID:+OfWL4GJ0<> 「先生、わしは先生のこと信じちゅうがよ。己の命も顧みずコロリから江戸を救うた大先生じゃ・・・」
イニの葛藤を察して量間が口を開く。
「けんど先生はわしの思いもよらん何かを抱えちゅう・・、わしは先生の事を知りたいだけぜよ。」
「やき、どんな話でもわしは信じる。聞いた話は誰にも言わんき。」
___ああ、やっぱりこの人は自分の思った通りの男なんだ。
「ありがとう量間さん・・・でも・・すみません・・・今は・・・言えません。」
「あなたは・・・(歴史上)大切な、大事な人だから・・・私のような人間と関わってはいけないんです!」
俯き、掴んだ手が震える。
「・・・悪い気はしやせんけど・・・先生、関わるな言うても、もう嫌ちゅうほど関わっとるがよ。」
量間はイニの言葉に少し照れたように返す。
「え?いや・・・ええと・・・なんと言えばいいのか・・・」
「先生に会うまでのわしは、真っ暗闇のなかで前に行こうと足掻いとるだけじゃった・・・どこが正しい道かもわからんと。」
「そん暗闇の中で、わしの行くべき道を照らしてくれたんは先生じゃき。」
「わ・・私はそんな立派な人間じゃありませんよ・・ただの医者です。」
自分がはるか138年先の未来からやってきたと知れば、彼の若さは己と国の将来を知りたがるだろう。
___33才・京都・・・近江屋。
自分が知っている彼の未来は・・・運命は・・・あまりにも残酷だ。
「ただの・・・医者なんです。」
もう自分は歴史の深い部分まで入り込んでしまっているのかもしれない・・・
ここで暮らしていく決意はしたが、自分の存在が未来を大きく変えてしまう不安はつきまとう。 <> 鰻屋譚(量間×イニ) 9/10<>sage<>2009/11/01(日) 08:18:12 ID:+OfWL4GJ0<> 「よっしゃ、ほんなら待つわ。」
「はぁ?」
「いつか、先生が話そう思ぅ時が来るまで待っちゅうけ、こじゃんと時間がかかろうがわしは待っちゅうけの。」
掴んだイニの手をグッと握り直すといつもの笑顔で笑う。
「やき、先生。黙って『谷底』の家へ帰ったらいかんぜよ。」
「え?」
量間のどこまで分かっているのか掴みどころの無い言葉に驚いたところで、遠く晩鐘の音が聞こえてくる。
「暮れ六ツ・・・腹が減ってくるはずぜよ。先生!鰻じゃ、鰻。」
ほどなく女中が焼きたての鰻の乗った膳を運んできた。
久々に食べた鰻は、以前医局の職員達と食べた老舗の味に良く似ていた。
___あの店「江戸時代から注ぎ足した秘伝のタレ」とか言ってるの本当だったんだな。
味醂、砂糖の甘みと鰻の脂の旨味が口中に染み渡る、こちらに来てから暫く味わっていなかった味覚だ。
「先生、そんなに鰻が好きだったかや?」
相当幸せそうな顔をして食べていたのか、鰻を頬張るイニの顔をしみじみ眺めて言う。
「この手の動物性タンパク質は久々なので・・」
「どーぶつせい??た・・ん?」
イニは怪訝そうに反復する量間を誤魔化す事も忘れてただただ鰻との逢瀬を噛み締めた。
<> 鰻屋譚(量間×イニ) 10/10<>sage<>2009/11/01(日) 08:21:56 ID:+OfWL4GJ0<> 「ごちそうさまでした。」
深々と頭を下げるイニに、慌てて量間も崩した足を整えて応じる。
「先生が鰻が好物ながはようわかったが、喰いとうなったきゆうて誰にでも着いていったらあかんぜよ。」
「わっ、わかってますよ。」
「いつでもわしが付き合うきに」
___それはそれで問題あるんじゃ・・・
と思ったが悪戯っぽく笑ってみせる量間には何も言い返せなかった。

___そういえば・・・
「あのー、私、出かける前に先さんに『鰻屋に誘われて〜』て言ってきちゃったんですけど・・・」
「きっとあらぬ誤解を受けていんじゃないかと・・・」
これから帰ってなんと説明すれば良いのやら・・・頭が痛い。
「ああ?先さんは武家旗本のよう出来たお嬢さんじゃき、心配せんでもちゃんと理解してくれるちゃ。」
___理解って何だよーー!
からかうように笑う量間に何も言い返せないまま、上手い説明も思いつかず、帰宅しても立花家の門をくぐれないイニであった。

- 了 -
<> 投下時間かかり過ぎスマソ<>sage<>2009/11/01(日) 08:26:20 ID:+OfWL4GJ0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 土イ左弁はテキトー
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

イニスレの鰻屋連れ込みネタに滾って書いた、後悔はしていない。
いろいろ捏造が多々あるけども生暖かくヌルーして頂きたく・・・
ネタ提供してくださったスレの姐さん達ありがとう。

連投規制に引っかかってしまってご迷惑おかけしました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/01(日) 08:49:59 ID:KyMO0vKvO<> 萌えました!乙です <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/01(日) 14:37:15 ID:QoYlAswy0<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  Q係 (基本リバで)この日は青山羊×主任…な感じ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  今頃ですが>>24さんに触発されて捏造したしょーもない話。つーかほとんどギャグ。
 | |                | |             \ (設定等も一部勝手にお借りしました。ありがとうございました。…というよりスミマセン!)
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
※公式設定はなかった気がしますが(違ってたらスマソ)、ここでの主任は非喫煙者と仮定してます。
※エロなし、緊縛プレイ?あり。ノマネタが多少ありますので苦手な方はスルーで。
<> 禁煙と緊縛のススメ 1/6<>sage<>2009/11/01(日) 14:40:49 ID:QoYlAswy0<> 事のあと、ぼーっと余韻に浸りつつベッドで煙草を吸っていると、バスルームから戻ってきた主任さんが俺を見て言った。
「余計なお世話かもしれませんが、煙草、やめた方がいいんじゃないですか? 青山羊さん」
「え?」
もう帰るつもりなのか、いつのまにやら彼は身支度を整え終えている。
あれ? 確か今夜はまだ1ラウンドしか致してないよなあ。――などとぼんやり考えていると、更に追い討ちを掛けられた。
「身体に悪いですよ」
わざわざ人に言われなくても、俺だってそんなことは百も承知だ。
実を言うと、これまで幾度となく禁煙に挑戦してきたのだ。しかし、結局長続きしないのである。
そんな情けない己を思い出させられて苛々した俺は、彼に顔を背けて吐き捨てた。
「うるせぇよ」
俺が気分を害した様子を見ても、主任さんは上着を羽織りながら平然とした顔で続ける。
「副/流/煙って聞いた事あるでしょう? 吸ってる本人はもとより、周りにいる人間にまで悪影響がある。
寧ろ周りへの害の方が多いらしいですし、それに喉にも良くないんです。一緒に暮らしてる彼女って、歌手でしたよね?
なおさら喉は大事にしなければいけない人だ。彼女のためにもやめるべきだと思いますけどね」

ここだけの話、俺と主任さんは互いに恋人――勿論、異性の――がいる身でありながら、時々こうして逢瀬を繰り返している仲である。
といっても、こうなったきっかけすらろくに憶えていないという、早い話が酒を飲みすぎた末の“事故”のようなものだった。
飲酒運転はもってのほかだが、この手の“事故”も到底褒められたものではない。
そもそも、彼女がいながら極めて不道徳なことをしているという自覚や罪悪感は、こんな俺にでも勿論あるし、
それ以前に相手が男という時点で――それも、よりにもよって村背のヤローとだぜ――『俺、なにやってんの?!』どころの話ではないのだ。 <> 禁煙と緊縛のススメ 2/6<>sage<>2009/11/01(日) 14:42:44 ID:QoYlAswy0<> それなのに、どうせお互い本気じゃないし…とか、ただのセフレだし…とか、相手は女じゃないし…などという(最後のは俺だけか)、
世の浮気者たちがいかにも並べ立てそうな、とっても自分に都合のいい理屈で、この不適切な関係を己に誤魔化しつつ今に至る。
同じ穴の狢である主任さんにこの状況をどう捉えているかなぞ訊いたことはないが、おそらく俺と似たり寄ったりな考えでいるのだろうと思う。
なんだかもう姑息すぎて泣けてくる。男って、ほんとズルいわ――と改めて思う今日この頃なのである。

それはさておき、いきなり正論をぶちかまされて、俺は無性に腹が立ってきた。
「アンタってどうしてそんなに口うるせぇんだよ。そんなことわかってんだよ、俺だって」
「わかってるなら結構ですけど」
主任さんは腕時計を嵌めながら、俺が寛いでいるベッドに腰を下ろした。シャワー後の石鹸の匂いが、俺の鼻をくすぐる。
携帯をチェックするその横顔からは若干疲れた色が垣間見れるものの、最早すっかりいつもの憎ったらしい主任さん面に戻っていた。
さっきまであんなに乱れまくってたくせにムカつく野郎だぜ。ホントむかつく。もう一回襲ったろか?
などと心の中で毒づきながら主任さんの横顔を睨んでいると、携帯を閉じた彼が不意に振り向いた。
「青山羊さん、灰が落ちますよ」
そう言われて手元を見ると、長々と伸びた灰の柱が今にも倒れ落ちそうになっている。
俺は慌ててそれをサイドテーブル上の灰皿へ退避させた。
「言っときますけど、煙草の不始末は火災の三大要因の一つなんです。くれぐれも注意しないと……」
彼が小言を言い終える前に、俺はそれを遮る。
「はいはいはいはいっ! わかりましたよ、やめりゃーいーんだろ、やめりゃあ!」
売り言葉を買ったわけではないが、半ばやけくそになってそう言ってしまったのがマズかった。
村背のヤロー……もとい、主任さん、すかさず俺に向かって手の平を差し出してきたのだ。
「何だよ、この手は」
俺はすげなく主任さんの手を追い払ったが、奴は真面目な顔で言い募る。
「折角の禁煙宣言ですから、お預かりしておきますよ」
「何を?」
「煙草とライターと携帯灰皿」
「なにいっ?! おまっ……、ふざけんなよっ!」
「それとも嘘だったんですか? さっきの台詞」 <> 禁煙と緊縛のススメ 3/6<>sage<>2009/11/01(日) 14:44:34 ID:QoYlAswy0<> まがいなりにも自分の口からやめるようなことを言ってしまった上に、まるで取り調べのような彼の詰問。
哀しい哉、ぐうの音も出ない俺は、やり場のない怒りを抑えながら愚痴った。
「アンタって、ホンットにひでー奴だな。鬼だよ、鬼。俺の唯一の楽しみを奪う気かよ。マジで夕工子よりうるせーよ」
「その夕工子さんのためだと思えば、へでもないでしょう、禁煙くらい」
「禁煙くらい……って、簡単に言ってくれるよなあ」
正直、かなりヘコみかけているものの、やられっぱなしで引き下がる俺ではない。
「何かやけに夕工子にかこつけるけどさぁ、もしかして、彼女の男を寝取ってるとかいう罪悪感でもあるわけ?
だからそんなこと急に言い出したんだろ? 見え見えだっつーの」
俺は皮肉をたっぷり込めてニヤニヤしてやったが、奴は甚だ論外といった顔で言い返してきた。
「はぁ? 冗談は顔だけにしといてくださいよ、青山羊さん。まっ、貴方より遥かに良識は持ち合わせてるつもりですけど」
「何が良識だよ。男と浮気なんかしてるくせに、よくそんなこと言えるな」
そう俺がせせら笑うと、さすがに向こうも苦々しく口許を歪めた。
苦笑いしてごまかすんじゃねーよと思いながらも、俺は更に詰め寄る。
「じゃあ訊くけどさ、禁煙中に口寂しくなったら、いつでも俺の相手してくれんの?
朝起きて一服、休憩中の一服、食後の一服、三時の一服、寝る前の一服、その他もろもろの一服……、
そんとき良識派のアンタは俺に何してくれんだよ? こう言っちゃ何だが、禁煙てぇのはそれはそれは辛いんだからな!」
我ながら滅茶苦茶だが、そんな俺の言い草を聞いた主任さんは呆れたように笑った。
「何ですか、それ。小学生じゃないんですから。第一、朝や夜は彼女がいるでしょう?」
「まーな。……って、いや、笑い事じゃねーよ。俺にとっては切実な問題だ」
「どんなに辛くても喉元過ぎれば……って言うじゃないですか。辛いときが踏ん張りどころですよ。
まあ、俺もできる範囲でのご協力はしますけど」
それを聞いた俺は待ってましたとばかりにニヤリと笑い、締めたばかりの彼のネクタイに手を伸ばす。
「じゃあ、早速ご協力を要請しようかな」
「え……? 何を――」 <> 禁煙と緊縛のススメ 4/6<>sage<>2009/11/01(日) 14:46:23 ID:QoYlAswy0<> 俺は戸惑っている彼に覆いかぶさり、素早く外したネクタイで彼の両手首を腰の後ろで縛り上げた。
ものの数秒で緊縛主任さんの出来上がり。なんという早業。我ながら惚れ惚れするね。
抵抗する隙も与えないのが青ちゃん流。もっとも、相手が気を抜いていた分、余計楽勝だったわけだが。
「ちょっと……! 何するんですか、ほどいてくださいよ」
これには彼も想定外だったようで、少し驚きながら抗議してきた。が、俺は構うことなく彼を押さえ付けて馬乗りになる。
しかし、パンツ一丁男がスーツ男に圧し掛かってる図っていうのも、傍から見たらさぞかしシュールな光景に違いない。
それにしてもいい眺め。つーか、ざまー見ろ、村背め。
「たまにはいいだろ、こういう趣向も。……それとも、お気に召しませんかな?」
「そうじゃなくて、今日はもう帰らないと」
訳ありげなその口ぶりで大方想像はついたが、縛ったときの弾みでベッドに投げ出された彼の携帯を横目で見ながら、俺はあえて訊ねる。
「何だよ、デートかよ」
「この後、一緒に食事なんですよ。今日は予定になかったんですけど、ここに来る前に電話が入って」
相も変わらず、例の彼女には振りまわされっぱなしのようである。情けねー奴だな、まったく。
まあ、主任さんの場合は逆玉狙いだから、しゃーないか。
と思いつつも、そういう打算的な奴だからこそ、あえて意地悪なことを言いたくなるのが人情というもので。
「たまには、すっぽかしちゃえば?」
「そうはいきませんよ。最近お互いに忙しくて、ずっと会ってないんです。またすっぽかしたらなんて言われるか……。
本当は、こっちをすっぽかそうかとも考えたんですけど」
「ふーん、一応俺のこと尊重してくれたんだ。それはそれは」
「別に貴方を尊重したわけじゃないです。後で嫌味言われたらたまったもんじゃないと思いましてね」
「なんか、俺という人間を誤解してない? 主任さん」
「そんなことはありませんよ、青山羊さん」
顔ではお互いにニコニコし合いながらも、あからさまな嫌味の応酬。こうなったら押して押して押しまくってやる。
「よし、ここは俺が一肌脱ごう! 大丈夫、適当に口裏合わせて一緒に謝ってやるからさ。
俺が話を合わせれば、必然的に仕事の都合ってことになるし、そうなりゃ彼女も納得するだろ?」 <> 禁煙と緊縛のススメ 5/6<>sage<>2009/11/01(日) 14:48:02 ID:QoYlAswy0<> 俺が折角名案を提供したのに、素直さが大幅に欠ける誰かさんは二つ返事では賛同しない。
「何が一肌脱ぐ、ですか。そもそも貴方が我儘言わなければいいだけの話じゃないですか。大体、いつもそうやって――」
何やらいろいろと文句があるらしい彼のその口を、俺は唇で封じた。
こういうときこそ腰が砕けそうになるほど蕩けるヤツを、ここぞとばかりに。
熱く長いキスの後、睨むように俺を見上げた彼が根負けしたように溜息を吐いた。
「言い出したら聞かない人には敵いませんよ。……仕方ない、今回は譲りましょう。今回だけですよ!」
「話がわかるねー、主任さん。惚れそうだぜ」
「そのかわり、煙草臭いキスは今日で最後と考えていいですよね?」
「……」
「あれ? 返事がないな。嫌ならいいです、この話はなかったことに」
「わ、わかった……、ちゃんと努力する」
「よろしい」
俺が嫌々ながら折れると、主任さんは満足そうに微笑んだ。
いつもしかめっ面ばかりでなく、そうやって笑えば少しは可愛げがあるのになあ、などと柄にもなく思ったりなんかして。
それはそうと、最初は悪ふざけと嫌がらせを兼ねての拘束だったのに、彼を組み敷いているうちに益々下半身が疼いてきてしまった。
「で、ものは相談だけど、また俺が上でいい?」
「えっ?」
いささか心外な様子の彼に、俺はニッコリと頷く。そんな可愛い俺に絆されたのか、主任さんもぼやくように渋々承諾した。
「……ったくしょうがない人だな。まあ、本当に禁煙するなら、とりあえず良しとするか……」
「ホント?! どうせなら、今日から、ずーっと、何回でもいい?」
「……勝手にしてくださいっ」
「やった!」
苦い顔をしている主任さんとは対照的に俺が歓喜したのも束の間、彼は緊縛プレイに異を唱え出した。
「でも、縛るのは無しにしませんか、コレ」
「えー? 主任さんのそういう姿、とってもエロくて素敵なのにぃ」
調子に乗った俺の戯言の、どのへんが気に障ったのか、主任さんが急に怒り出した。 <> 禁煙と緊縛のススメ 6/6<>sage<>2009/11/01(日) 14:50:46 ID:QoYlAswy0<> 「何がエロくてだ、ふざけんなっ! 大体、こういうことして喜んでるあんたみたいなスケベ野郎がいるから、悪質なポルノが巷にはびこるんだ。
はっきり言って、胸糞悪くなるようなポルノは全部摘発してやればいいんです。
公序良俗に反するどころじゃない、中には暴力団の資金源になってるものもあるっていうのに、そもそも甘いんだよ日本の法律は!
そう思いませんか、青山羊さん! とにかくやめましょう、こういうことは」
いきなり持ち前のデカ魂が喚起されたのか、彼らしい潔癖さで力説するものの、今の彼の格好が格好だけにまるで説得力がない。
第一、冗談半分で軽く挑発しただけなのに反応が過剰というか、憤りの矛先がやたら明後日な方向へぶっ飛びすぎのような気もするが、
空より大きく、海よりも深く、仏様より寛大な心の持ち主である俺は、いちいちごもっともという風情で頷いてやる。
「主任さんのご意見はよーくわかりました。ところで、やめろと言われて素直にやめるような青ちゃんだと思う?」
「……」
「あ、勿論、禁煙は頑張りますよ? だから主任さんも少し我慢してくれると嬉しいなあ」
「我慢って、つまり……こういうことを、ですか?」
「ピンポーン! だってさぁ、まさか夕工ちゃんにこんなことさせられねぇだろ? 根が限りなく紳士なボクとしては」
「ハハッ、誰が紳士なんだか……って、ちょっと待て! 相手が俺なら何したっていいっていうのかよ!」
「うん」
あっさり俺が首を縦に振ると、主任さんの血圧の数値が更に上がったようなので、俺は悠然とフォローする。
「あんまりイライラするとストレス溜まるよ? ストレスは万病のもと――」
「あんたのせいだろっ!」
「そろそろ俺って男をわかってくれてもいい頃じゃん? いい加減あきらめなって」
「……青山羊さん、あんたって人は……」
怒りのあまりに絶句した主任さんを見下ろして、久々に彼を遣り込めることが出来た俺は最高に気分がいい。
「では、始めようか」
「冗談じゃ……、ふざけんな、こら! やめろっ……!」
この期に及んでも無駄な抵抗をする往生際の悪い主任さんに手を焼きながら、俺は嬉々として彼のシャツのボタンを外してゆく。
――が、このときの俺はまだ知る由もなかった。
それからほんの数分後、我々の携帯へ事件発生による召集連絡が入ってくることなど。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/01(日) 14:52:00 ID:QoYlAswy0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |                いつものケンカップルが、ただのバカップルになってしまった。
 | |                | |           ∧_∧     (キャラ崩壊気味でごめんなさい。特に青ちゃん…)
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )   
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/02(月) 01:24:28 ID:7YuHSEL50<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  木目木奉 缶×ラム→港
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  木目木奉スレの姐さんの言葉から妄想が止まらなくなった結果がこれだよ!
 | |                | |             \ ソツロン ソッチノケデ カイタ。
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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※かなりの勢いで捏造+缶に夢見すぎです。
※エロはありません。

<> 白日夢1/3<>sage<>2009/11/02(月) 01:24:52 ID:7YuHSEL50<> 初秋の強い光が目を焼いた。あの二人を遠くに見たような気がして、思わず目を凝らしたが、
そこにはいつも通り長閑な休日の公園の風景が広がっていた。噴水を通すと人の影は
ぼんやりとする。
きっとそれを見間違えたんだと、彼は考えてベンチに腰を下ろす。
二人の姿がここにあるわけがないことくらい、彼にはわかっていた。
二人の姿を幻視したのは、久しぶりに大湖家に逢ったせいに違いない。
缶辺は大きく息をつき、卑屈に集まってくる鳩の群を眺めた。

間接照明の部屋は薄暗い。缶辺はベッドに浅く腰掛け、後ろに横たわる大湖家に話しかけ
る。
「あれから六年もたつんですよ」
大湖家はうつむき何も答えない。あれが何をさすのか、大湖家が一番よくわかっている。
白蝋のような彼の死顔を思い出し、少し、眉根を寄せた。
「忘れろとは言いません。ただ、もう前を見てもいいころだと思います」
缶辺は続けた。大湖家は港を失って以来、恋人を作っていない。
缶辺もそれは仕方のないことだとは考えているが、大湖家が港という手錠につながれて身動きを失っているかのようにしか見えなかった。
それは、たまに缶辺をバーに誘うときに一番よく現れている。
缶辺がいくら話しかけても、大湖家は奥歯に物が挟まったような返答しかしない。
そしてやたらに酒を呑み、歩けなくなるくらいに泥酔して、缶辺がタクシーに押し込むのがいつもの例だった。
この日は呼ばれたのがホテルのバーであり、幸いチェックインも出来たので、足取りのおぼつかない大湖家を一晩ここで寝かせることにしたのである。
大湖家は缶辺の声を痛む頭で聞いていた。悲しいことに、大湖家はいくら酔っても精神は侵されない質であった。
むしろ、体が悲鳴を上げればあげるほど頭は明晰に動き、普段は思い出さないような港との何気ない会話までも思い出してしまう。
それを打ち消すためにまた酒を飲むので、悪循環である。 <> 白日夢2/3<>sage<>2009/11/02(月) 01:25:29 ID:7YuHSEL50<> 悲しい、寂しい、辛い、大湖家は六年間この言葉を口にしたことがない。
それは生来の強がりというよりも、その言葉を吐く資格がないと自戒しているようだった。
(港が死んだのは、私のせいだ。私を守るために港の首に剃刀が走ったんだ)
大湖家はそう思うときはいつも泣き叫びたくなる。
だが、彼は泣くことすらも自らには許していない。港を死なせた自分には、彼のために泣くことはできないとも考える。
そして、ほかの男に体を許すこともまた、港に対する裏切りとしか思えない。
港に関する何らかの感情をアウトプットすることも、感情を紛らわすこともできず、大湖家は内側から蝕まれ続けていく。
缶辺はそんな姿を見るたびにいたたまれない気持ちになる。
ベッドに横たわり、何も言うことができない大湖家の耳元に、缶辺はそっと口を近づける。
「僕を、使ってもいいですよ」
そしてそのまま大湖家の乾いた唇にキスをした。
ほんの触れるだけの軽い口付けだったが、大湖家の孤独が缶辺の中に流れ込んできて、缶辺は撃たれたように唇を離した。
六年間、孤独は大湖家の中で膨らんで大湖家自身と摩り替わってしまったようだった。缶辺は大湖家の目を見ることが出来ない。
涙が一筋、缶辺の頬を伝い大湖家のワイシャツに落ちた。
「なんで、お前が泣くんだ」
大湖家はかすれた声で言った。缶辺は苦い顔で一度だけ、強くシーツを握り締めると微かに笑んで、
「あなたが泣けないから、俺が代わりに泣くんです」
と言った。 <> 白日夢3/3<>sage<>2009/11/02(月) 01:25:54 ID:7YuHSEL50<> 結局この日はそれで終わってしまった。
若いうちなら、そのままなし崩し的に性交に持ち込んだかもしれないが、
ある程度人生を重ねると、ただ寄り添うことが一番いい場合もあるということもわかってくる。
幼児のように体を丸めて寝る大湖家の髪を撫でるたびに、缶辺の目からは涙がこぼれた。
これは、大湖家が流せなかった六年分の涙だったのだろう、と缶辺は思う。
そして、港が大湖家の傍らにいた六年前の日々が、目の中にちらちらと浮んでは消えていくのだった。

公園で缶辺はこの夜のことを思い出していた。
(もし、港が今も生きていて、俺が見た幻が幻ではなかったのなら、どんなにかいいことだろう)
これからも大湖家はたまに缶辺を呼び出しては、無言で体を痛めつけるように酒を飲むのだろう。
そして、そんな大湖家を缶辺は黙って受け入れるのだろう。
生きるだけで傷ついていってしまう大湖家に、缶辺ができることはそれだけなのだ。
「俺は誰のかわりにもなれやしないんだな」
缶辺が立ち上がり大きく一歩踏み出すと、驚いた鳩の群は太陽の方向に飛び去っていった。
<> 白日夢3/3<>sage<>2009/11/02(月) 01:28:06 ID:7YuHSEL50<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |                缶の一人称の揺れは仕様です。
 | |                | |           ∧_∧     
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )   
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
木目木奉スレの姐さんの、あのレスがなければこれは書けませんでした。
心より御礼申し上げます!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/02(月) 01:57:45 ID:mx2tfUKZ0<> >>24ですが、>>401さんGJ!!
二人のやり取りが目に浮かぶようで素敵でした。
いい年をした男二人のちょっとお馬鹿な感じが最高です。
自分の書いたSSから素敵なSSが触発されたことは、
SS書きの端くれとして嬉しかったです。
素敵なQ係SSありがとうございました!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/03(火) 02:17:47 ID:mmfh3FnzO<> 亀ですが>>271
GJ!
このシリーズ大好きだよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/03(火) 19:36:04 ID:xGu5G83YO<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

激団親幹線「バソユウキ」から殺し屋→復讐鬼の2作目。
感想をいただけて萌えが調子に乗りました。
<> 王と髪結い 1/5<>sage<>2009/11/03(火) 19:39:54 ID:xGu5G83YO<> 通りがかった部屋の前で悲鳴を聞いた。
「やめろ!ペナソ!」
「エンリョするな、ドモン。シンミョウにしろ。」
「その蓬莱語は間違ってる!」
ドタバタと慌ただしい。だからその部屋の扉を佐治が静かに開けると、
そこには椅子に座らされた怒門と、その怒門に向け剃刀を振り上げている
ペナソの姿があった。
「あれ?お邪魔だった?」
「バカ!変なこと言ってないで助けろ!」
「タスケロとはシツレイな、ドモン!」
大陸の今は亡きハマソ国の王女であるペナソは、目下この蓬莱国の言葉を
習得中の身で、それゆえ言葉がたどたどしくもカタコトである。
しかしその一方で、感情は直情。
一目で誰に想いを寄せているかがわかる。
おそらくそれが向けられている当の本人の、目の前の男以外には。
それが滑稽に面白くも、佐治は飄々と言葉を続ける。
「で、何をしてるのかな?」
「みてワカラナイアルカ。ヒゲソリよ。」
「あぁ、確かに怒門は長い船旅でちょっとモサくなってるねぇ。」
「そんな事は自分で出来るから!だからいいよ、ペナソ!」
不器用なお姫様のこの勢い込んだ様子を見れば、確かに髭を剃られるよりは
顔を切り刻まれる心配の方が先に立つのも無理はない。
それ故、本当に必死になって止めようとしている怒門の様子に佐治は
たまらずクスリと笑みを零す。
そして、
「こういう事は本人にやらせた方がいいと思うよ。下手に他人がやって顔に
傷でもつけたら一大事だ。なにせ、彼は僕らの大事な教主様になるんだからね。」
<> 王と髪結い 2/5<>sage<>2009/11/03(火) 19:42:51 ID:xGu5G83YO<> 海を渡り戻った彼の故郷で、その復讐の手始めとする番新教の布教。
彼はその旗頭となる。
理詰めで攻められれば、自分に敵う者はこの旅の一団にはいない。
それがわかっているのだろう、ペナソは一瞬ムッとした表情を見せると、
いきなり顔をクシャッとしかめ、ベーっと舌を出してきた。
「イチイチうるさいオトコね。」
「ごめんね、元々こういう性分なんだ。」
言いながら片手を彼女に向けて差し出す。
そして無言の笑みのまま手にしているものを渡すように促せば、それに
ペナソはもう一度ギッと眉根を寄せたが、それ以上の抵抗はもうしなかった。
「ドモンとサヅのアホウ!」
その代わり、直球の悪態をついて足音も荒く部屋を出ていく。
バタンと大きな音を立てて閉じられた扉。
それを見て、怒門がホッと息をつく。
「助かった。すまなかったな、佐治。」
こちらもひどく素直な、その礼の言葉に佐治の足が動く。
そして椅子に座る怒門の前、立ち止まるとスッとその手を伸ばす。
顎を取り、その顔を上に向かせれば、それに怒門は一瞬訝しげな表情を見せた。
だからそれに佐治は笑う。
笑いながらこう言った。
「ありがたく思っているのなら、少しの間大人しくしててくれるかい。」
<> 王と髪結い 3/5<>sage<>2009/11/03(火) 19:45:24 ID:xGu5G83YO<> 頬の上を鋭い刃が滑る。
無骨な男の肌を撫でるようにスルリと。
その触れるか触れないかの軽い感触に、つい気が緩んだように怒門の口が開かれた。
「自分でやらせた方がよかったんじゃないのか?」
先程自分が言った言葉を当てこする様に言ってくる。
だからそれに佐治は、この時笑みを深めてやった。
「君は思いのほか、不器用だから。」
「おまえが器用すぎるんだろう。」
「そうだね。生まれてこの方、この手が一番長く握ってきたのは刃だ。」
顎の髭を剃り落とし、それを脇の机の上に置いてあった水桶につけ、
手首を翻す。
そして見せつける剃刀の閃き。
しかしそれにも怒門はもう動じる事はなかった。だから、
「怖くないの?」
面白がるように問えば、怒門は静かに落ち着いた声を返してくる。
「今更、おまえの何を怖がれと言うんだ。」
「僕は君より強いけど。」
「ああ、知っている。だから殺すのならいつだって出来ただろう。
しかし俺は今こうして生きている。」
「あんまり悟りすまされるのも小憎らしいね。」
言葉に物騒な響きを含めながら、それでも手は止めること無く
滑らかに動かし続ける。
そしてやがて現れた顔立ち。
鼻の下にだけ貫録を演出させる為の髭を蓄え、他をさっぱりと整えた
その怒門の仕上がりぶりに、佐治は満足そうな頷きを一つ落とす。
そして少し思い出した。
<> 王と髪結い 4/5<>sage<>2009/11/03(火) 19:47:56 ID:xGu5G83YO<> 「それほど昔な訳ではないけれど、なんだか懐かしいね。」
「ん?」
「僕が君の髭を初めて剃ってあげた時の事。」
「……あぁ、あれは脱獄した後だったな。」
あの時、10年もの間孤島の牢獄に閉じ込められ、髪も髭も伸び放題に汚れていた
身を彼は清め、その身なりを整えようとしていた。
しかしようやくに得た自由の中でも、その身の内に長く培っていた獣性は
なかなか納まりがつかないようで、刃物を持つ手つきが荒い。
だからそれを見かねて、自分は手を伸ばした。
これからの計画に大事な顔だ。下手に傷つけられてはこちらが困る。
しかしそうして自分が手を掛け晒した彼の本来の顔立ちは、苦難の中
深くその怨嗟と怒気を肌の上に刻み込んでいたけれど、同時にその奥には
どうしても消せない理性を秘めているように感じさせた。
その相克を佐治は面白いと思った。
あの闇の中でも、どうしても狂いきれなかった彼の精神の強靭さ。
その理性と感情を更に乖離させてやれば、この男はどうなるのだろう。
先を読む事は得意だった。
謀を巡らせ、周囲の思惑を読み、人より先んじて動く事でこれまで繋いできた命だ。
しかしその自分をしてどうしても読みきれないこの男の変化。
それを佐治は楽しいと思う。
楽しいから……彼を王にしてやろうと思う。
この国の破滅の王に―――
手が伸びる。
頬にかぶる怒門の横髪に両手を差し入れ、グッと後ろに引き上げる。
「……佐治?」
その際、ひどく近くなった顔の距離に、怒門が一瞬驚いたように目を上げてきた。
その鼻先で佐治はクスリと笑う。
切れ長な目元を更に細め、顔を傾け、両手を回し固定して動けなくなったその
唇の吐息同士が触れ合うほどの距離で、からかう様に告げてやった。
<> 王と髪結い 5/5<>sage<>2009/11/03(火) 19:50:19 ID:xGu5G83YO<> 「こうして後ろで括ってやった方が顔がしっかりと見えていいよ。僕らの教主、
緋番頭様。」
そしてそのまま器用に指先を動かし、横の机の上に置いてあった組み紐で
その一房の髪を結いあげてやれば、それに怒門は瞬間なんとも言いようのない
複雑そうな顔をしてきた。
ただ、髪を結い終わりゆっくりと離れた自分が同じく横の机に置いてあった
手鏡を差し出してやれば、彼はそれを覗き、あぁと納得のいったような
表情を見せる。
そして、
「おまえは本当に器用だな。」
あらためて感心したように言われれば、つい可笑しさが倍増した。
「教主様のお褒めに預かり恐悦至極。」
「これなら立派な髪結いになれるな。」
「……はっ?」
怪訝な事を言われた気がした。
だから思わず視線を怒門の方へ向ければ、それに彼はン?とした表情を返しながら
こう続けてきた。
「だから髪結いだ。すべてが終わったらそれで身が立てられそうだよ、おまえは。」
サラリとすべての終わりを口にする。
それは自信があるからか、ただ単に楽観的な愚か者だからか。
それでもこの時佐治は無意識に己の手を見る。
血に塗れた刃ばかりを握ってきたこの手に、不意に指し示された未来と言う名の光。
それは儚くも煌めかしくて。
だからつい笑みの滲む声が零れる。
「あぁ……それもまた面白そうだね。」
すべてが終わり、何も残らぬ恨みの荒野に残された孤高の王の、ただ一人の髪結い。

それは存外―――悪くはない気がした。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/03(火) 19:51:35 ID:xGu5G83YO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

前回一人称を間違えると言う致命的ミスを犯しましたorz
今回こそは!

<> 奇跡”管理”庁<>sage<>2009/11/03(火) 23:53:47 ID:x9UklyvA0<>
                / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                | 半生 織吐露酢の戌 神×悪魔のアナザーエンド。
                | 戌スレ746姐さんのカキコに猛烈に萌えて書いた。 
 ____________   \        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 以前にも二度ほど投下。まだ萌え中…。
 | |          | |         \ ダークエンド? 完全捏造注意!
 | | |> PLAY.    |           ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |          | |          ∧_∧  ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |          | |     ピッ  (´∀`)(・∀・)(゚Д゚)
 | |          | |       ◇⊂    )(   )|  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |°°   ∞   ≡ ≡   |       ||(_(__)(_(__).    ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
AAがズレるのは仕様ってことでお許しあれ。 <> 奇跡”管理”庁1/18<>sage<>2009/11/03(火) 23:56:18 ID:x9UklyvA0<>  「――××さん」
 呼ばれて振り向いたが、立っていたのはちょっと所在無さげにデニムのポケ
ットに両手を突っ込んだ見知らぬ青年だった。
 二十代半ばだろうか、彫りの深い端正な顔立ちに、悟ったような無表情。少
し眇めた目でこちらを見つめている。ヘンリーネックのシャツにデニムという
平凡な服装で、特に変わったところは無いが、見覚えもない。
 次号掲載の記事の取材をしての帰り道。夕方近くだが、通りに人影は無く、
ということはやはり声をかけたのはこの青年で、声をかけられたのは自分なの
だ。
 「……どちら様でしょうか」
 「××さんに間違いないですよね?」
 重ねて確認してくる。その声のトーンは抑え目だが、迷いは無い。
 「ええ、まあ。どこかでお会いしたことがありましたか?」
 「……いえ」
 そう言いながら青年が自分の方に手を伸ばしてくる。何だろう、服にゴミ
でも?と思っていると、その右手が自分の腕を掴んでいた。
 「すみません」
 小さな呟きを聞いた――と思った後はもう、意識は無かった。
 青年――蒼井は、無表情なまま、眉一つ動かさずターゲットが地面に倒れ
るのを見た。その死を確認すると、何事も無かったように歩き出した。ふと、
携帯を取り出し、いつもの番号にかける。 <> 奇跡”管理”庁2/18<>sage<>2009/11/03(火) 23:59:19 ID:x9UklyvA0<>  つながった番号から聞こえるその声に、蒼井は破顔する。
 「兄貴? 俺。――うん、今終わった。――いや、今回はそんなに大変じゃ
なかったよ。場所も都内だったし。今から戻るから。……え? 晩メシ?……」
 死体をそこに残したまま、楽しげな声は遠ざかっていく。

 その壮麗な建物は以前ホテル・ラスタットと呼ばれていた。しかし今は違う。
巨額の政治資金を背景に昨年発足した坂木内閣によって新設された「奇跡管理
庁」の庁舎だ。その陳腐な庁名は、一説によれば坂木総理自ら名づけたものだ
と言われるが、とは言え誰もそんな名称は使わず、ストレートに「神の手庁」
と呼ばれることが殆どだった。
 当初、通称「神の手法」を背景に、超能力医療を管理する一団体として、厚
生労働省に所属する予定だったこの組織は、現在は国家公安委員会の管理下
にある。政府有数の財源であり、最も有効な外交カードの一つでもあるこの
庁の長官には、かつて警察庁警備企画課にいた佐波村なる人物が就任してい
たが、その建物の本当の主が誰なのかは世界中が知っていると言っても良かっ
た。最上階に暮らす青年・流崎新司である。
 坂木内閣成立の最大の功労者である流崎は、今や日本だけでなく、世界さ
え動かせるとさえ言われていた。
 もっと単純に言えば、今や彼は地上に降りた、神だった。
 そして同時に囁かれている、ある噂があった。アルカイックな微笑をたた
えて座る神の傍らには必ず、影のように寄り添う無表情な悪魔がおり、神に
仇なす者には容赦なく死を与えるのだ、という――。

 「……では流崎様、来月の政府割り当て分の名簿をここに置かせていただ
ますので、明日までにお目通しください」 <> 奇跡”管理”庁3/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:02:21 ID:x9UklyvA0<>  佐波村が慇懃無礼な態度で、ファイルを置いていく。かつては流崎を目の
敵にし、執拗に蒼井を追い詰めた彼だったが、今の立場には満足している。
詰まるところ今のポストはあの頃彼が求めた理想と、そう大きくはズレてい
ない、と佐波村は考えていた。
 「ああ」
 天井から床まで一面がガラスになった窓際に佇んで夜景を眺めたまま、佐
波村の方を見向きもせず、流崎は答えた。
 ちょうどそのタイミングで部屋のドアが空く。蒼井が帰ってきたのだった。
室内を一瞥して状況を把握すると、佐波村が置いたファイルを手にして中身
に目を走らせ、流崎に渡す。佐波村は流崎が受け取ったことを確認すると、
では、と言って出て行った。
 「……流崎」
 遠慮がちに声をかけた者がいた。もとは一介の所轄刑事であった馳辺凪差
である。今は、流崎の身辺警護の責任者として、ここ奇跡管理庁の課長級待
遇を受けていた。流崎に対して対等な口調を貫ける数少ない人物だ。
 「前にも言ったと思うけど、ここから移ることを検討して欲しいの。ここは
元々ホテルで、VIPを護るには色々不便で……。外壁も強化したし、ガラス
やドアも全部入れ替えたけど、構造の問題が解決できたわけじゃない。その
ファイルを見れば判ると思うけど、来月の政府割り宛名簿には某国の大統領が
いるわ。極秘の訪日になるだろうけど、それでも警備には相当の困難が予想さ
れるの」
 坂木総理との取り決めで、流崎は、月に3名の政府割り宛治療枠を設けてい
た。要は3人までなら、それが誰であろうが、政府が寄越した人間を治療する、
というものである。 <> 奇跡”管理”庁4/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:04:42 ID:x9UklyvA0<> その3人は、榊の支持政党の実力者であることもあれば、外交上の条件と
引き換えに、他国のVIPであることもある。或いは、国に対して「奇跡税」
という名の天文学的大金を支払って、その枠を買う者もいる。いずれにして
も、その3人については、内閣府と奇跡管理庁長官である佐波村が決め、流
崎はただ黙ってその「神の手」を使うだけだった。ただし、それ以外には、ど
んな理由で誰に対してその能力を使おうが国は関知しない――それが、この
奇跡管理庁が発足した際の取り決めであった。
 「……刑事さんの心配もわかるけど、俺はここが気に入ってるんだ。動く
気はない。……それに俺には、悪魔がついてるからな」
 その笑みに縁取られた視線の先には、無表情なままの蒼井がいた。
 「それはそうだけど、でも……」
 「さっき答えたとおり、俺の気持ちは変わらない。今日はもういいだろ、
下がってくれ」
 「……判ったわ。でも一つだけ覚えておいて。どんな国のVIPにも代わ
りは居るけど、あなたには居ない。あなたの存在は、世界の全てを左右する
の。――あなたは神なのよ」
 馳辺はそう言うと出て行った。
 「……神をやるのも面倒だな」
 「兄貴……」
 ようやく二人きりになったスイートルームの中で、蒼井はそっと窓際の流
崎に近寄る。
 長い間窓らしい窓の無い独房にいたからだろうか、「神」となった今では外
出もままならないからだろうか、兄は眺めの良い窓辺が好きだった。飽きも
せずに何時間でも、この最上階の窓辺で、外を眺めていた。 <> 奇跡”管理”庁5/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:07:12 ID:x9UklyvA0<>  「……俺も心配だ。来月のリストにある、×××大統領の治療は危険じゃな
いか。国内の政情も安定していないし、本人にも黒いうわさが絶えない。まっ
たく……どんな外交取引でこうなったんだ……」
 「だけど最後はお前が護ってくれるんだろ、両介。今日も邪魔な奴を片付け
てきてくれた」
 「ああ」
 今日蒼井が殺してきたのは、流崎に対し週刊誌を使って悪質なプロパガン
ダを繰り返していた人物だった。調べた結果、裏で坂木総理の敵対勢力とも
つながりがあることも判明し、少々の説得くらいでは言うことを聞くはずも
ないだろうと、蒼井の出番となったのだった。
 「神」として君臨する流崎のため、その障害になる者たちを、蒼井が「悪魔
の手」を使って殺すようになって、その数はそろそろ三桁に届こうとしてい
た。最初の頃は罪悪感もあったが、今は何も感じなくなった。力を使うこと
は日常の一部で、一日のうちに何軒かはしごすることさえあった。この能力
で行う殺人は驚くほど簡単だった。
 「……なあ両介、知ってるか。今から2000年以上前にも、神になった
男がいた。数々の奇跡を起こし、救い主と呼ばれて……」
 夜景を眺めたまま流崎がつぶやく。その足元に広がる世界で、彼が望んで
好きに出来ないものなどないだろう。
 「兄貴……」
 「でもそいつは、神になったせいで十字架に掛けられて死んだ。俺も、いつ
かそうなるのかな」
 流崎の表情はあくまで静かだった。 <> 奇跡”管理”庁6/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:10:16 ID:HOpM9F3I0<>  そんな兄を、蒼井はそっと背後から抱きしめる。
 あの流谷ダムの上で、二人で神として生きると決めた日から、事態は驚く
べきスピードで進んでいた。ダムから帰るやいなや、坂木や久万切、佐波村
と話し合い、状況をまとめていく流崎の姿は、ゲームマスターの名に相応し
かった。
 『俺が欲しいのは権力でも富でもない。ただお前と俺が無事に生きていけ
る場所だけだ。でももしそれが今の世界で叶えられないというのなら、この
力を使って世界を変えてしまえばいい』――流崎はそう言って、そしてそれ
を実行した。 
 蒼井は判っていた。兄に「神」などという滑稽な人生を歩ませてしまったの
は他ならぬ自分なのだと。自分と再会するまでの兄は自分の能力のことは極
力知られぬようにし、監獄という名の安全なシェルターで、能力はせいぜい
小遣い稼ぎ程度にしか使わず、多分、そのまま一生を終えるつもりだった。
だが、自分が己の力に目覚め、その力を持ってしまった意味など考え始めた
ばかりに、力を持った人間の辿る運命を自分に教えようと、兄は全世界に己
の力を公開したのだ。
 神と呼ばれながらも誰よりも人間らしいこの兄のために、蒼井は自分がで
きることなら何でもするつもりだった。
 「……大丈夫だ。兄貴の為なら世界の最後の一人でも殺す。そのために神
には、悪魔がついてるんだ」
 後ろから抱きしめたまま、鼻を兄の首筋に埋め、犬のようにそのにおいを
嗅ぐ。神と呼ばれる兄でも、ちゃんと人の体のにおいがするのだ。嗅いでも
嗅いでも、もっと嗅ぎたいと思う。
 流崎がクスリと微笑む気配がした。 <> 奇跡”管理”庁7/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:12:33 ID:HOpM9F3I0<>  「……何?」
 「普通、神の側にいてそれを護る存在は、天使と呼ばれるはずだろ」
 「兄貴の側にいられて役に立てるんなら、何と呼ばれてもいい。……二人で
なら生きていけるんだろ?」
 その蒼井の言葉に流崎は満足そうに笑って、蒼井の顔を引き寄せると、唇
を重ねた。次第に口付けが深くなって、二人の口から共に吐息が漏れる。
 長く濃いキスを終えると、流崎が後ろに回り、蒼井の胸元に手を忍び込ま
せてきた。敏感な乳首を直に指でいじられる。ただの飾りのはずのそれは今
ではすっかり性感帯の一つになっていた。蒼井の口から嬌声がこぼれた。
 「あ……、あッ」
 断続的に乳首からもたらされる電撃のような快感に頭がかすんでいる間に、
兄のもう一方の手が背中からシャツを捲り上げて、肩甲骨の間を兄の舌が這っ
ていた。そこから新たな快感が生まれ、足がガクガクしてくる。辛くなって
思わず窓ガラスに両手をつく。ガラスの中で顔を上げた兄の、してやったり、
という笑みと目が合った。
 「両介、お前、本当に感じやすくなったな」
 流崎が歯を見せて笑う。後ろから押し付けられた硬さに、兄も興奮してい
るのだと教えられる。普段、周囲に対しては淡々とシニカルな態度を崩さな
い兄だが、セックスの時だけは剥き出しだ。両介をむさぼり、いいように蹂
躙する。いつの間にか、兄の巧みな愛撫にすぐ反応するように両介の身体は
変えられていた。 <> 奇跡”管理”庁8/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:14:31 ID:HOpM9F3I0<>  兄貴はセックスが上手すぎる、といつも思うが、いつ?どこで?とは訊け
ないままだった。何しろ、ずっと監獄に入っていたはずの兄だ。経験があっ
たとして、決して良いものではないだろう。
 「このまま後ろからやらせろ」
 吐息で撫で上げるように口を耳に寄せ、少しハスキーな声で、脳へ直接流
し込むように命令される。カリ、と噛まれる耳殻の痛み。兄の声にも欲情が
滲んでいた。それだけで自分がより昂ぶるのが判った。
 兄の手は蒼井のベルトを外し始めている。カチャカチャ言う散文的な音が
妙に耳についた。だが一方で蒼井の性器はもう痛いほどで、誰かが自由にし
てくれるのを待っている。一瞬の後、下着ごとボトムを下げられた自分のみっ
ともない姿がガラスに映って、蒼井は泣きたくなった。まさか外からこの窓
をのぞいている者は居ないだろうけど――窓際でやるのはホント勘弁、と思う。
 だがそれも一瞬のことだった。
 何かを塗りつけた、兄の容赦のない指が後ろから滑り込んできて、蒼井の
中を犯す。しかもいきなり二本も突っ込まれた。痛みとともに快感が脳内で
スパークする。
 「うっ……や……ふ、」
 更に深く差し込まれ、しょっぱなから、蒼井の一番感じる場所を突いてき
た。同時に、性器にも指が絡みついてきて、前も追い上げられていく。息が
上がって呼吸が苦しい。
 「ふ……あ、あ……っ!」
 「お前ホント、ここが弱いよな。見てみろ、自分の顔」 <> 奇跡”管理”庁9/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:16:23 ID:HOpM9F3I0<>  自分の中で律動的に動いている指に蕩かされながら、蒼井は兄の笑みを含
んだ声に顔を上げると、夜景と重なるようにガラスに映った自分の顔が眼に
入り愕然とした。この、犬のように舌を出して泣いている、みっともない顔
の男が、俺か。兄は、こんな時でも非の打ち所なく美しい顔で、それでも汗
に濡れた前髪の間から眼を光らせ、見せつけるように舌なめずりをする。
 「や……み、見るな、って……」
 「なんでだ? 凄くいい顔してるぜ、両介……凄く、そそる顔だ」
 後ろの指が抜かれ、兄の性器が押し当てられるのを感じて一瞬、蒼井は身
体をすくませる。だが自分でも驚くほどにスムースに、兄のものは入ってきた。
 「ふ…あ、あ……」
 みっちりとした充実感に思わず喘ぐ。
 「ン……やっぱり、お前の中はいい――」
 兄の口からも吐息が漏れた。
 「……! ああ、うあっ――!」
 流崎は激しくグラインドを始めた。摩擦はヒートアップしていき、そこか
ら蒼井の意識が白く塗り替えられていく。
 「あ、あ、あ、…っ、や、んんっ、う……っ」
 兄はいつも、自分が思う以上のものを与えてくれる。快楽も、居場所も、
行動の目的も、そして運命さえも――。
 「イけよ……両介……」
 兄の命令どおりに、両介はイッた。

 「話があるの」と馳辺から、蒼井は呼び出された。
 人気の無い屋上の夕方。風が強くて、馳辺は風に乱れるロングヘアを押さ
えながら言う。 <> 奇跡”管理”庁10/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:18:43 ID:HOpM9F3I0<>  「単刀直入に言うわ。あなたたち二人の関係のことよ」
 「……」
 口を開きかけた蒼井を、馳辺が手で留める。
 「誤解しないでね。私はあなたたちが男同士だからとか、血がつながって
るとか、そんなことは別にどうでもいいの。気になるのは、あなたたち二人
の力関係と言ったらいいのか……」
 馳辺は言い淀んだ。自分が感じているものを、どう言葉にしていいか判ら
ないといった風情で、頭をめぐらす。
 兄との関係について言及されたことは、蒼井にとって特段ショックでもな
かった。自分達がどんな関係かは、奇跡管理庁の上層部ならば知っていて当
然だと思っていた。勿論、人前で行き過ぎた振る舞いはしていない――つも
りではある。
 だが、立場が立場だ。私室にも監視カメラがあっても不思議ではなかった
し(何しろ、佐波村には前科がある)、そもそもベッドメーキングやゴミ処
理担当の者ならば、その有様から気づいているはずだ。
 自分達の関係について、当局は今まで黙認の形を取ってきた。だから蒼井
も後ろめたさはあまり無く、どこかで、開き直ったような思いではいた。だ
から今、こんな風に馳辺が言って来ることに今更感は否めない。
 「あなたたちの関係そのものについてなら、むしろ私は歓迎してるわ。神
の手と悪魔の手は、対であってこその存在だもの。……でも、今のあなたた
ちの関係はなんだか、神の手である流崎に、あなたがいいように使われてい
るみたいで……」
 「何が言いたいんですか。僕が兄に対して反旗を翻すべきだとでも?」 <> 奇跡”管理”庁11/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:20:36 ID:HOpM9F3I0<>  いらつきが声に出ていたのかも知れない。馳辺にクスリと笑われて蒼井は
反省した。
 「私が心配しているのは、そんなことにならないように、どうしたらいいか、
ってことなの。僕たちはは二人で生きていくことを選んだ――と、そう言っ
ていたわね。むしろ選ぼうがそうでなかろうが、死ぬまでずっと、あなたた
ちは離れることはできないの。でも今のあなたたちは――」
 馳辺は言いよどんで少し目を伏せた。
 「――なんだかいびつな気がして。蒼井さんは何でも流崎の決めたとおり
に動くのよね。流崎が主であなたが従、っていうか……。私は、あなたたち
はもっと、前向きで対等な関係になると……なれると思っていたの。もちろ
ん、恋愛なんて、カップルの数だけ形があるわ。正解も理想も無い。でもだ
からこそ、あなたに、今の二人のあり方をどう思っているのか、聞きたかっ
たの」
 一際強い風が吹いて馳辺が髪を押さえる。しばし二人は無言で向き合って
いた。先ほどまで金色の光に包まれていた街はそろそろ、夕闇に沈もうとし
ている。
 「……馳辺さん。あなたにはわからないかも知れませんが……」
 「なに……?」
 「確かに僕は兄の犬です。でもそれが二人にとって、対等な関係である、
ということなんです」
 蒼井は馳辺をまっすぐ見つめながら淡々と、だが迷い無く告げる。
 馳辺はさすがに要領を得ない、という顔をした。
 「犬であることが対等……なんだか禅問答みたい」 <> 奇跡”管理”庁12/18<>sage<>2009/11/04(水) 00:22:18 ID:HOpM9F3I0<>  「すみません」
 こくりと頭を下げる。
 「ううん、こっちこそ。あなたたちが納得しているのなら私はいいの」
 ごめんなさいね、と馳辺は軽く頭を下げ、クスリと微笑んだ。
 「なんて言うか……末永くお幸せに、ね」

 振り上げられた拳。眼を見開いた兄。馳辺の鋭い叫び。
 蒼井にはまるで、その瞬間はスローモーションのように見えた。
 その月の政府割り当てリストの施療。事件がおきたのは心配されていた某
国の大統領ではなく、「奇跡税」適用の患者の施療時だった。
 施療対象者は、監視の中沐浴し、薄物一枚に着替えて流崎の前に出ること
になる。武器などの携帯を防ぐためである。施療室にはホテル内のチャペル
が割り当てられていた。室内には長官の佐波村、馳辺を始めとする数人の護
衛、そして元々祭壇が置かれていた場所には椅子が置かれ、そこに流崎が座り、
その後ろに蒼井が控えている。 
 某国大統領の施療はアッサリ終わり、ラテン系らしい天真爛漫な喜びよう
で流崎を抱きしめようとしたのを馳辺ら護衛が慌てて彼を引き剥がす、とい
うアクシデントの後で、全員が何となく気が抜けていた点は否めない。
 その奇跡税患者は、流崎に治された後、不意に、その拳を振り上げた。素
人ではない、磨きぬかれた拳法の型だった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/04(水) 00:39:23 ID:u79t1aBc0<> ん?支援が必要か? <> 奇跡”管理”庁13/18<>sage<>2009/11/04(水) 01:07:34 ID:HOpM9F3I0<> ※支援感謝!

 とっさに、蒼井が流崎を身を呈して庇った。馳辺ら護衛は間に合わなかった。
患者の、渾身の一撃は、素手なのに、蒼井の腹部に突き刺さっていた。血が
飛び散って天井にまで染みた。
 「!」
 すぐにその手が引き抜かれ、二発目の拳を振り上げ、流崎に対して振りか
ぶったところで、馳辺ら護衛がいっせいにその男を取り囲み取り押さえる。
後で判明したことだったが、男は、以前に治療した某国軍部関係者の政敵が
送り込んだ暗殺者だった。
 蒼井の体から、どんどん血が流れていく。相当な使い手なのだろう。かな
りの深傷だった。
 「両介!」
 流崎が叫び、目を閉じぐったりとした蒼井の体を半狂乱で揺する。その拍
子に、ごぷ、と患部から血がこぼれた。
 「両介! 両介……ッ!!」
 兄が自分の名を呼んでいるのは判っていて、大丈夫、と答えたいのに、体
の何もかもがまったく自由にならない。
 「流崎! 何やってるの! しっかりして!」
 パン、乾いた音がした。
 犯人を部下に引渡して駆け戻ってきた馳辺が、恐慌状態の流崎の頬を平手
で打ったのだった。
 「落ち着いて、流崎。いつものように、あなたの力を使えばいいのよ。何
のための“神の手”?」
 「あ……」
 流崎は呆然とした様子で自分の右手を、まるで初めて見るような目つきで
見た。そしてその手を蒼井の患部に当てる。
 蒼井の全身に暖かさが満ちてきた。意識がはっきりしてくる。
<> 奇跡”管理”庁14/18<>sage<>2009/11/04(水) 01:10:16 ID:HOpM9F3I0<>  ゆっくりと眼を開けると、兄が泣き笑いの表情で自分を見下ろしていた。
 「両介……」
 兄の口から安堵のため息が漏れた。強く抱きしめられる。
 自分も笑おうとしたが、どうしても笑えない。
 傷は癒えたはずなのに、体の中心に何か重いものを投げ込まれたようだっ
た。

 こういう時、もっと涙が出るのかと思っていたが、むしろ心の働きが壊れ
てしまったかのように、先ほどから何も感じない。ただ、手だけが事務的に
荷物を詰めつづけている。当座一週間ほどの生活用品……とはこんなものだ
ろうかと、蒼井は心の上っ面で考える。
 とにかく早く荷物をまとめてここを出て行こう。
 兄は今、施療後に必ず行われているメディカルチェック中だ。力の使用前
と使用後に体調に変化が無いか、モニターしているのである。今なら、兄に
知られず出て行ける。兄の側を離れたくない、という感情は、完璧なまでに
理性が押さえ込んだ。その原動力は恐怖だった。
 馳辺などには判らなくても、兄は自分を愛している――それを自分は判っ
ていたし、兄もまた自分の思いを判ってくれている。だからそれで良いはず
だった。
 でも、さっきの兄の姿――あれは。
 兄の愛は深すぎる。自分が、そして兄自身が思っているより、ずっと。
 それがいつか兄を滅ぼすかもしれない。このままでは、自分が、兄の弱点
になってしまう。無敵のはずの兄に、自分という堤防の穴が空いていた。 <> 奇跡”管理”庁15/18<>sage<>2009/11/04(水) 01:12:16 ID:HOpM9F3I0<>  結論はすぐに出た。取り返しのつかないことが起こる前に、兄の前から姿
を消してしまうしかない。
 ――と、そのとき背後に人の気配がした。と思った途端、物凄い力で殴ら
れた。
 「……うあっ」
 その勢いで体が床に叩きつけられた。余りの痛みに瞬間呼吸が止まる。
 目を開けると仁王立ちで立っている人物がいた。流崎だった。
 床から見上げるその美しい顔からは一切の表情が消え、まるで能面のよう
だった。そこには正気も狂気も無かった。
 ああ、神の顔だ――と、蒼井は状況も忘れて見入った。
 「その荷物はなんだ」
 言いながら流崎は、床にあお向けに倒れている蒼井に馬乗りになると、そ
の手で蒼井の襟元を、どこかゆったりとした様子で掴んだ。だがその力は強
く、抵抗してもビクともしない。以前にも、どこかで二人、こんな体勢で揉
みあったことがあった――と蒼井は頭のどこかで思う。あれは教会だったか
――。
 「……ここを出て行く。俺はあんたのそばにいちゃいけないんだ」
 蒼井は流崎から目をそらした。先ほどまで完璧だと思っていた結論が、流
崎の登場で簡単に揺らぐ。
 「一つ言っておく。いいか、お前がもし俺のもとを離れたら、俺はすぐに死
ぬ。お前が居ないなら俺は死ぬしかない。お前の居ない人生に意味なんてな
いからな」 <> 奇跡”管理”庁16/18<>sage<>2009/11/04(水) 01:14:03 ID:HOpM9F3I0<>  穏やかで荘重な、いっそ預言じみた口調だった。流崎の、もはや美しいと
いう形容を超えた何かが現れた顔を見ていると、その口から出た言葉は全て
叶うのだろうと言う気になる。
 だが、言われた内容には愕然とする。しかし更に残酷な言葉は続いた。
 「それでももし、お前がここを去りたいなら……俺から離れたいなら、今、
俺を殺していけ。その力で」
 言うと、流崎は、蒼井の右手を掴み自分の首に導く。
 「……出来ない」
 蒼井は子供のようにいやいやをした。
 「出て行きたいんだろ? なら、やれよ」
 「いやだ! ……でも、俺がこのままここにいたら、いつかあんたに迷惑
がかかる……。俺はあんたの弱点になんてなりたくない。だから、出ていく
しか……」
 最後はもう、涙で言葉にならなかった。流崎の指が涙をぬぐい、蒼井の目
を覗き込むようにして尋ねる。
 「俺のことは殺さない、でも出て行きたい――そう言うんだな?」
 蒼井は頷いた。
 「――だったら、お前を力ずくで閉じ込めるしかないな。逃げられないよう
に、足でも折って。それか、このビルの地下に檻でも作るか。おれが昔居た
牢をここに移してもいいな……」
 すぐには、兄が何を言っているのか蒼井には判らなかった。
 「……ああ、お前の家族を人質に取る、という手もある。お前の妹……志保
ちゃんだっけ」 <> 奇跡”管理”庁17/18<>sage<>2009/11/04(水) 01:16:04 ID:HOpM9F3I0<>  「やめろ!」
 蒼井は流崎の腕を掴んで揺すり、叫んだ。
 「俺があんたにそんなことを言わせてるのか」
 兄の目を覗き込む。そこには驚くほどの冷静さしか無い。
 「しょうがないだろ。俺はすっかりお前のことを手に入れたと思っていたの
に、結局体だけだったってことだ」
 言いざま、手際よく蒼井の両手を頭上に纏めるように掴み、もう一方の手
で、シャツのボタンを外していく。そのまま、はだけたシャツを手際よく蒼
井の頭上、纏めた両手に絡めて、手枷にする。
 「ちが……、止めてくれ兄貴……うあっ」
 乳首を熱い舌が這う感触に全身があわ立った。こんな時でも感じてしまう
自分が恨めしい。
 そんな蒼井の様子を冷静に見つめながら流崎は言った。
 「体だけなら体だけでもいいさ。心は潰す。その後で、お前の骨から血の
一滴まで俺の自由にするだけだ」
 そしてむさぼり尽くすようなキスをされた。舌の上、歯の裏、喉の方まで
兄の舌が入ってきて、むせそうになりながら、一方的に口内を蹂躙された。
 その後続いて行われた行為は、これまで二人の間にあったセックスとはまっ
たく違う、陵辱以外のなにものでもなかった。蒼井の心を折る為の、徹底的
な暴力だった。
 嵐のような行為からようやく解放され、放心状態で蒼井はただ横たわって
いた。何度も懇願し、叫び、喘いだ喉は干上がり、気管支までがきしんでい
た。涙を流し尽くした目元がゆっくり乾いていくひんやりした感覚が痒かっ
た。抵抗したせいで全身が痛く、べとべとした体は自分の物ではないように
重かった。 <> 奇跡”管理”庁18/18<>sage<>2009/11/04(水) 01:16:59 ID:HOpM9F3I0<>  どうしてこんなことになってしまったのかわからない。
 だけど、もう――。
 蒼井はゆっくりと瞼を閉じた。
 その顔にふと影が落ちる。そばに流崎が佇み蒼井を見下ろしていた。
 「両介、お前は判ってない。ダムの上で言っただろ、俺たちは二人なら生き
ていける、って――」
 そう、その言葉は流崎と蒼井にとって、福音であり――十字架でもあった。
 「だったら、俺もお前も」
 蒼井は驚いて目を開けた。沈みそうな意識が呼び戻される。頬に何か、ポ
ツリと感触があったのだ。
 見上げると、兄が静かに泣いていた。 
 「――一人でなんて、生きていける訳ないだろ」



<> 奇跡”管理”庁<>sage<>2009/11/04(水) 01:17:53 ID:HOpM9F3I0<>
 ____________
 | __________  |
 | |          | |             
 | | □ STOP.    | |             
 | |          | |         ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |          | |     ピッ (・∀・)
 | |          | |       ◇⊂   ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) || |
 |°°   ∞   ≡ ≡   |       ||(_(__) || |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
先生×神の手を書き、佐波村×先生を書き、
今度は神の手×先生…自分、往生際が悪いとしか言いようがない。
そして自分にエロのバリエーションが無いことがわかった。 <> 東京犬 0/3<>sage<>2009/11/04(水) 01:31:48 ID:hzZr8FMHO<> 月キュンドラマ

○目線のスーツとのお話。
雪姉がマンションに何日滞在したか分かりませんが、雪姉が現れてから帰るまでの出来事として下さい。


初作品なので至らない所はご容赦を。

それでは、どうぞ。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 東京犬 1/4<>sage<>2009/11/04(水) 01:37:08 ID:hzZr8FMHO<> 実の兄とも慕っていた人が人を殺した…
そして俺の手でその人に手錠を掛ける事になるなんて…
刑事として間違った事はしてないと頭では分かっていても、心がジクジクする…
何だかやりきれなくて、夜遅く一人で酒を飲みに行った。
そんなに飲んだ訳でもないのに、今日は何だか酔いがまわる…
二日酔いだなんて言ったら、あのアメリカの先生にウザイくらい嫌味を言われそうだなと思い帰る事にした。
玄関のドアを静かに開けるとリビングの電気は消えていた。
静かに自分の部屋へ入ると俺のベッドには、そのアメリカの先生が寝ていた。
雪の姉に自分の部屋を使ってもらってるから、しばらくお前と同室になると一方的に決められた。
だからって、何で俺が床で寝なきゃなんねぇーんだよ!!
コイツが当たり前の様に俺のベッドに入ってきたから、俺が床に寝るって言ったからだけどさ!!
俺のベッドでスースーと寝ている顔を見ていたら、何か頭にきて冷たい床にふて寝した。

「…随分、遅いお帰りだな…」

暗い部屋の中で突然声がして声のしたほうに振り向くと、寝ていたはずのベッドの占領者が起きていた。

「二日酔いで職務に差し支えたらどうするんだ」

……やっぱ、言われると思った……
予想通りの事を言われて、げんなりしている俺に構わず小言を続ける。
……何なんだよ、コイツは!!
無性にイライラして、嫌味を連発するその口を俺の口で塞いでやった。 <> 東京犬 2/4<>sage<>2009/11/04(水) 01:40:20 ID:hzZr8FMHO<> どうだ、アメリカ野郎!!と一発ぶちかましてやった気になっていた次の瞬間、そのアメリカ野郎は舌を入れてきやがった。

ん??????!!!!!!
突然の不意討ちに驚く俺に構わず、だんだん濃厚なものになっていく。
……何か…頭がボーっとしてきた…やっぱ…飲み過ぎたのか?……
なんて考えていたら、いつの間にかベッドに押し倒されて上着を脱がされていた。

これから行われるであろう事が頭によぎった。
えーーっ!!俺、ムリ!!抱かれるのは絶対ムリだって!!
抵抗しようとするも体が思うように動かない。
そんな俺の事はお構い無しに俺の乳首を舌先で転がし、もう片方は指先で摘んだり弾いたりし始めた。
体がビクッとして思わず、あっと声が出そうになるが雪達の存在を思いだし、自分の手の甲を噛んで声を押し殺した。
それを見計らったかの様に乳首を弄んでいた手が下部に移動して、デニムのジッパーを下げるとすでに熱を持った俺自身を引き出した。

今度はそれを口に含んだ。
クチュクチュといやらしい音をたてて、弱い所を的確に攻められる。
……普段はそーゆー事に疎いツラしてやがるくせに…何でその辺の女よりうめぇーんだよ!!
どこでこんな事覚えてきたんだ?と不思議に思っている間にも自身の限界が近付いてくる。
……っもうっ…俺……ギブだって……
思うように動かない体をよじって限界を伝える。
でも、あともう少しという所で俺のものから口が離された。
絶頂目前にしてイかせてもらえなかった事をもどかしく思っていると、カチャカチャとベルトを外す音が聞こえた。
どうやらスラックスを脱いでいるらしい。 <> 東京犬 3/4<>sage<>2009/11/04(水) 01:42:29 ID:hzZr8FMHO<> こんな時でもYシャツにネクタイをキチンと絞めたままのコイツがスラックスを脱ぎだしたという事は……いよいよもって、コイツに抱かれるんだ……あ〜あ…久しぶりのエッチが男が相手とか…しかも、俺が抱かれる側とか……もー最悪……。
……俺、男に入れられた事なんかねぇーし…やっぱ、いてぇーのかな?……

……おっしゃ!!俺も男だ!!総長張ってたこの俺がこれ位の事でビビってられっか!!おしっ!!どっからでも来やがれっ!!
これから来る得体の知れない痛みに耐えようとギュッと目を閉じた。
でも予想に反して、何か温もりを感じて恐る恐る目を開けてみる。

えっ!!えぇっ!!!そっち???

俺が驚いたのも無理はない。
俺が一人でグルグルと考えていた間に、俺のものがコイツの中にいつの間にか入れられていたからだ。
呆気に取られている俺に、不服か?と言わんばかりの顔をする。
や、別にいいけどさ……俺、超ー気合い入れたのに……
何だか気が抜けてしまった俺に構わず腰を動かし始めた。

そう言えば、キスからずっとお互いに言葉を発してないな……
グチュグチュという音と二人の吐息だけが薄暗い部屋の中で響いている。
無言で表情を崩さず淡々としている様子は、仕事の時と何ら変わらない。
スゲーんだか呆れるっつーか……

でも何か寒々としていた心が段々、暖かくなっている様な気がしてきた。 <> 東京犬 4/4<>sage<>2009/11/04(水) 01:46:04 ID:hzZr8FMHO<> その時、ずっと表情を変えなかった目の前の男の顔が一瞬だけ微笑んだ。
カーテンから差し込む月明かりのせいか、それはすごく美しいものの様に見えた。
……何か…マリア様みてぇーだな…と思っていると、自分の目尻から溢れているものに気が付いた。
……俺、泣いてんのか?……
いつから泣いていたのか分からないけど、泣いている事を自覚すると、もしかしてコイツは俺を慰めようとしてくれてる気がしてきた。
雪はコイツには緑色の血が流れてるなんて言ってたけど、案外カワイイ所あんじゃん。
言葉には出さないけど、コイツはコイツなりに考えてくれてるのかな?と思ったら何だか愛しくなってきた。

……でも、Yシャツにネクタイまでしてんのに下、丸出しとか…お前、何つーカッコしてんだよ!!
今更ながらこの状況に恥ずかしさを感じる。
次、目覚めた時にはいつものアメリカ野郎に戻ってるんだろうなと思うと複雑な気持ちになった。

でも、今夜だけはこのマリア様の温もりに最後まで身を委ねる事にした。





□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

一番最初のナンバリングを間違えてしまいました。
正しくは、0/4です。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/04(水) 01:55:15 ID:B5YWmIM/O<> >>448
萌えた!
逆でも良いんだけど、どっちかというとやっぱこっちのカプのが好きだから途中の逆転(?)でかなりテンション上がったよ!
良いもん読ませてもらった!
ありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/04(水) 07:20:45 ID:vHJdnAWyO<> >>423-443
今回も死ぬほど萌えました
ありがとうありがとう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/04(水) 12:59:30 ID:nw0B57Kx0<> >416
楽しかったけど教主さまの名前は非当番だ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/04(水) 14:38:39 ID:BkLXiWblO<> >>451
スマソ、自分も投稿した後に間違いに気付きました…
ついでに実はもう一つポカ発見orz 精進します!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/05(木) 00:00:10 ID:wmVeCCW70<> 大阪府大芸人、身売り編。
枕営業のお相手は、さて、どなたでしょう。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> Right Here,Right Now 1/5<><>2009/11/05(木) 00:01:21 ID:wmVeCCW70<>  「なあ、ぼく、マカダミアナッツが食べたいんやッ。コンビニやスーパーで売ってるよ
うなやつは嫌やで。めっちゃ上等のやつ」
 年若い愛人にねだられるままに、一粒で目玉が飛び出るような値段の最高級の食材を、
わざわざ海外から取り寄せてやった。
 愛人は、そのマカダミアナッツに勝るとも劣らない、白く滑らかな上半身を露に、下は
黒のレギンスだけを穿いて、カーペットの上に四つん這いになっている。鎖で繋がれ、首
には大きな金の鈴の付いた首輪を嵌めている。
 我ながら滑稽なほどの悪趣味だが、お互い、割り切ってやっているつもりだ。こんなの
はただのごっこ遊び、もっと身もフタもなく言えば、ネタに過ぎない。たまにはアホになっ
てもええやないか、と思う。
 王者は安楽椅子に掛け、無造作に掌に転がした白い木の実を少しずつ食べさせてやる。
愛人はその手に唇を寄せ、はあ美味しい、と呟きながら、嬉しそうに木の実を齧る。猫が
旨いものを食べる時、ニャフニャフと喜声を発することがあるが、その様子を彷彿とさせ
る。もし彼に尻尾があれば、きっと悩ましく媚を含んでくねらせているに違いない。
 「飴ちゃんやろっか?」
 食事が済むと、王者はチュッパチャップスの包み紙を剥いて、愛人のかわいらしい口に
有無を言わさず含ませた。一頻り、安物の飴で口腔を犯す。引き抜く。今度は自分が舐め
る。二人の唾液にてらてら光るチェリーピンクの飴で、全くの無防備だった愛人の乳首を
つんつん、と突いた。
 「あっ・・・・やん」
 不意打ちに、愛人の体がぴくりと反応する。ぴたり、と飴を押しつけ、輪を描くように
しながら乳輪をなぞる。中央にぷっくりと屹立した乳首をくりくりと捏ね回して辱めると、
首の鈴を鳴らして身悶えし、甲高い快楽の悲鳴を上げた。
 「ああんっ!いいっ、おっぱい、いいッ」
 王者は笑って、再び飴を咥えた。愛人は彼の膝に縋りついてきて、猫がゴロゴロと喉を
鳴らして擦り寄る時のように、甘え、懐く。王者は細い目を一層細め、愛人の柔らかな髪
に指を絡ませ、撫でてやる。
 「兄さん、好き。大好きや〜」
 「そうか、そうか。ほんまにかわいいやっちゃ」 <> Right Here,Right Now 2/5<>sage<>2009/11/05(木) 00:02:49 ID:wmVeCCW70<>  王者の膝を撫で回しながら、ふと、愛くるしい顔を憎々しげに歪めて、愛人が毒づく。
 「・・・・ほんまは宇治原なんか大っ嫌い。セックスは下手やしさ」
 王者は苦笑する。
 「そこまで俺の機嫌取ろうと無理せんでええ。嘘ついたら閻魔さんに、かわいいベロを
引っこ抜かれるぞ」
 「ほんまです。ぼくは頭のええ人が好きなんや。あんな勉強だけできる奴より、ほんま
は兄さんの方が頭がええんです」
 本気なのか芝居なのか、ちょっとむきになって、小鼻を膨らませてみせる。
 嘘でもそう言われると悪い気はしないが、そこは自分たるもの、容易く有頂天になった
りはしない。
 「俺も昔はそう思ってたこともあった。でも、この年になったら、やっぱり学校の勉強
は大事やな思うわ。何やかやいうて、そういう意味では俺はおまえらに一目も二目も置い
とるんや」
 「そんな、兄さん、勿体ない」
 王者の顔つきがすっと変わり、厳しいとすら言える表情になる。
 「やめとけ。閻魔さんはごまかせても、俺はごまかせへんぞ。おまえは心も体もあいつ
の虜や。それは一生変わらんやろうな」
 「へえ?」
 愛人は不敵に微笑んで、傲岸不遜にも言ってのける。
 「じゃあ、閻魔大王ならぬ師匠は、ぼくをどうしはります?」
 「パンツ脱がしたるわ」
 真顔で答えた王者に、愛人は平然と、小首を傾げてみせた。
 「どうぞ」

 首輪と鈴はそのままに、鎖を外した愛人をベッドに横たえた。自分はスーツを着たまま、
レギンスと下着を脱がせて素裸にする。
 既に頭をもたげつつあった部分に触れ、潤った先端を吸うと、むっちりとした白い肢体
がのたうち、美しい顔に息を呑むほど淫靡な色が滲む。 <> Right Here,Right Now 3/5<>sage<>2009/11/05(木) 00:03:53 ID:wmVeCCW70<>  愛人の胸を両手で掴み、揉みながら、王者が残念そうに言う。
 「おまえに、乳とオメコさえあったらなあ。ほんまに、どんだけええやろう」
 意外なほど、愛人は傷ついた顔をした。つんけんした口調で言う。
 「兄さん、ぼくは男です。無茶言わんといて下さい」
 「何や、怒ったんか」
 不貞腐れて答えない愛人を抱き寄せ、頬に口づける。
 「嘘や嘘や。冗談や。女なんかな、もう星の数ほどもヤリ尽くして飽き飽きや。おまえ
かてせやろ?」
 「さあ?」
 愛人は謎めいた笑みを見せて、王者の上に馬乗りになる。
 「ほんまのこと言いなさい。女なんかより、ぼくの方がずっとええでしょ?」
 ベルトを外し、一物だけを引き出すと、さして慣らしもせずに、自分から腰を沈めて行っ
た。馴染みの快楽、しかし、女によって与えられるものとはまた違ったそれに、王者は溜
め息をつき、愉悦の笑みを洩らす。
 「懐かしいな、ウエストサイドの頃が」
 自在に緩急をつけ、自分の上で前後左右に揺れる愛人の顔や姿態をじっくりと鑑賞しな
がら、王者が不意に言う。
 「おまえ、ほんまにきれいやったな。小鳥みたいに囀っとったな」
 「まーた、似合わんこと言うて。絶世の美少年やったぼくも、もうええ加減オッサンで
すわ。兄さんはまた、ぼくなんかよりずっと若くてきれいな男の子をプロデュースして、
大儲けしはったらええでしょ」
 「何やきもち妬いてんねん。言うとくけどな、あれはただの商売や。男はおまえだけや
し、これからも増やすつもりはないで」
 王者は腰を突き上げるようにしながら、愛人のそそり立った部分を掴み、擦り上げた。
愛人は熱い息を吐き、ふるふると腰を震わせ、石臼を碾くような動きで王者の愛撫に応え
る。続いて上下に、リズミカルに弾む。鈴がけたたましく鳴り響く。そのまま、二人して
絶頂に達するまで、寄せては返す荒々しく心地よい波のうねりに身を委ねる。 <> Right Here,Right Now 4/5<>sage<>2009/11/05(木) 00:04:47 ID:wmVeCCW70<>  一息つき、愛人に腕枕をしながら、王者が言う。
 「・・・・おまえが全裸でな、ガラスのプールで泳いでる所を、酒でも飲みながら見てたい」
 「また、ベタやなあ。まあ、花冠してる所が見たいとか言われるよりマシやけど」
 「あかんか?」
 「ぼく、泳げへんのですよ」
 「そらあかんな。じゃあ、ブルマ姿にして、器械運動さしたい」
 「変態ですやん」
 「そう言われる思たけど、俺がやれ言うたら、どんな恥ずかしいことでもするやろ?」
 愛人はきらりと瞳を光らせる。
 「ええ。それはもう」
 彼は今、冷静に状況を読もうと努めている所だ。自分と相方、二人、とりあえず現状は
安定しているものの、今、ここから、どうなるか、どこへ行けるかわからない。この浮き
沈みの激しい業界を、何としてでも漕ぎ渡らなくてはならない。それには、時代を支配す
る権力と影響力に近づくことがどうしても必要だ。
 相手が望めば、肌を重ねることもする。天から与えられたこの美貌と、子供の頃から血
の滲むような努力をして身に着けた愛嬌は、最大限、活用すべきものだ。
 相方は確かにとても賢いが、残念ながら、そういう意味での知恵はあまりない。ここは
自分が、二人分の知略策略を巡らせ、生き馬の目を抜く芸能界を巧く立ち回る方法を考え
続けなければならない。
 そして、やがては目の前の男のような富と名声を手に入れたい。
 それも、どちらかが置き去りにされるのではなく、いつまでも二人で――。
 王者は、何か思いつめたような眼差しで自分を見ている愛人に気づく。そのくりくりと
した愛らしい瞳の中に、傲慢で野心的な何かを見て取る。
 三十年前、京都のしがないチンピラだった頃の――、自動車整備工のような繋ぎを着て、
リーゼントヘアで舞台に立ち、観客を驚かせ、爆笑させたあの頃の――、自分と同じ、何
かだ。
 自分だけが栄光の階段を駆け上がって行く一方、曾ての相方は零落し、街のどん底を這
いずり、既に鬼籍の人となった。気の毒だとは思うが、結局、彼にはこの非情な世界を生
き抜くだけの力と運がなかったのだ。 <> Right Here,Right Now 5/5<>sage<>2009/11/05(木) 00:05:36 ID:wmVeCCW70<>  「俺に任しとけ。おまえの気持ちがある限り、おまえらを悪いようにはしいひん」
 しゃがれた声で、王者は呟くように言う。
 この世は彼の為にある。彼には神にも等しい力があるのだ。何もかもが、一点の欠けも
曇りもない満月のように、そう、完璧だ。
 「恩に着ます。師匠」
 娘っ子やオバサンの心を鷲掴みにして放さない、天使のような営業スマイルでそう言う
と、愛人は、そっと王者の唇に自分の唇を重ね合わせた。

ども、ありがとうございましたー。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/05(木) 00:07:18 ID:11cbH07U0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

二十九日のお誕生日に投下したかったのに、アクセス規制で残念無念。
あと、ageてしまってすみませんでした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/05(木) 01:19:09 ID:NQXPnzPFO<> 亀だけど>>410
ありがとう、泣いた。
この三人、本当にこんな関係だったらいいな <> 愛を乞うモノ 1/11<>sage<>2009/11/05(木) 04:59:27 ID:biJ6qNXS0<> うみねこのなく頃に ロノウェ×戦人。
ep4まで一気読みしたんだが、ep5がどこにも売ってない記念。ヘソ噛んで死のうかと思ったんですが、
妄想の魔法は使えることを思い出したんで、心のep5を書いてみたよウーウー。
というわけで全然まだ読んでないので設定に矛盾があっても笑い流していただきたいと切に希望。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 戦人が湯船に身を沈めると、僅かに動きを止めた。
「……いい匂いだな」
「お褒めに与りまして」
「お前が何かしたのか?」
「ティーローズの系統をベースに少々アレンジを。いわゆる香油でございます」
 薔薇の種類を言われても戦人にはピンとこなかったが、ロノウェの調合した香りは気に入ったようで、バスタブの
中で猫のように身を伸ばす。広いバスルームはバロックめいた装飾に彩られ、華美ではあるが頽廃的だ。その湿
度の高い密封された空間に、戦人に合わせた甘く爽やかな香りがゆるゆると広がってゆく。戦人は薫り高い湯気
と適温の湯に、深い息を吐くと共にすっかり弛緩し、湯を掬っては手の間からこぼれるそれをぼんやり見つめた。
浴室であってもいつものように完璧な身なりで、脇にひっそり控える執事に裸身をさらして気にした様子はない。
「ホントに何でも器用にこなすよな。お茶に菓子、メシも作るし、部屋の掃除、ベッドメイキング、……それに俺の
世話か。別に付きっきりじゃなくてもいいんだけどよ、って何回言っても、聞きゃしねーし」
 主のぼやきに悪魔の執事は忍び笑いを漏らす。 <> 愛を乞うモノ 2/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:02:02 ID:biJ6qNXS0<> 「お客様を持て成すのが家具の務め、そして主に尽くすのは家具の喜びですよ。かつての客人であり、現我が主
であらせられるバトラ・ベアトリーチェ」
 ロノウェは優美な動作で上着を脱ぎ、手袋を外すと、申し訳程度にシャツの袖をまくる。失礼いたしますと声をか
け、浅いバスタブに横たえていた戦人の体を起こした。スポンジを手に取るとたっぷりと泡を起こし、戦人の背中を
洗い始める。湯のしぶきはなぜか一滴もかからない。戦人は俯いて何も言わなかった。
「……それにしましてもお客人であった当初から比べられますと、戦人様もずいぶん扱いやすくなりましたねえ。
最初は入浴のお世話をするたびにそれはそれはひどく騒がれて」
 皮肉交じりの笑みに戦人も振り向いてニヤリと笑い返した。負けず嫌いはこうなっても健在だ。
「へえ、お前のアレはお世話のつもりだったのかよ。俺はてっきり新手の嫌がらせだとばかり思ってたぜ。イヤだっ
つっても、暴れてもお構いなしに無理やり服ひんむいて、頭から湯はぶっかけるわ、ゴシゴシ泡まみれにするわ、
あげく間違えましたとか爽やかに笑いながら水ぶっかけたこともあったよなあ?」
 ロノウェの皮肉交じりの笑みはますます深くなる。 <> 愛を乞うモノ 3/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:04:29 ID:biJ6qNXS0<> 「おやおや、私めの痛恨のミスを覚えておいでとは、赤面の至りでございます。しかしながら私も長年、お嬢様の
下で家具を務めさせていただいておりましたが、入浴中のお客様に力任せにバスタブの中に引き込まれ、頭から
靴の先まで泡まみれのずぶ濡れにさせられてしまう経験はなかなかに得難く、貴重なものでございました」
 戦人はその時のことを思い出したのだろう。いっひっひと肩を揺らして笑いだした。
「あん時のお前の顔ったらなかったぜ。呆然としてたよなあ? 水ぶっかけられても、塩味のクッキー食わせられて
も、あの顔思い出すとおかしくて笑いだしちまって。そんな俺とお前見てベアトがずいぶんしつこく聞いてきたけど
な。まあ、そんなことやってりゃ、しまいに素っ裸でいるのもどうでもよくなっちまったよ」
「さようでございますか。では大人しく引き続きお身体を預けていただきましょう」
 戦人の減らず口を黙らせるように、頭も泡立てて洗い、肩から腕をもみほぐすように軽くマッサージを施すと戦人
の体が完全に脱力した。とはいってもさすがに身体の前面はかたくなに自分自身で未だに洗っている。しかし、こ
の様子ではロノウェがそのうち戦人の全身を洗いたてるようになっても、もはやそれほど強い抵抗は示さないだろ
う。 <> 愛を乞うモノ 4/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:06:52 ID:biJ6qNXS0<> 「……ところで、戦人様」
「んー」
 濡れた紅い髪が首筋にまとわりつくさまを楽しみながらロノウェは目を細めた。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「何がだよ」
 首筋から背筋にかけてゆっくりと揉み解され、戦人は充足の吐息を漏らす。やがて眠くなってきたと呟きながらも
、首をわずかに振った。身体の動きに合わせて湯が揺れ、とぷりと僅かに音を立てる。
「契約の件でございます」
 その言葉を聞いた途端、弛緩しきっていた戦人の身体が強張った。横目でおそるおそるロノウェを見るが件の
悪魔は胡散臭いほど爽やかに笑っていた。
「……あー、あー、それな、うん、まあもうちょっとこう、検討をだな」
「検討も何も、契約を交わすか、交わさないかの2択でございますよ? それに考えるお時間は十分に差し上げた
かと」
 うっと戦人が詰まる。対して悪魔の家具頭は当りは柔らかいものの、今回は引くつもりはないらしく、優美に笑み
を浮かべながら返答を暗に促していた。
「魂をいただくと言っているわけでなし。はっきり申しますとお取引といたしましては破格でございますよ? 多少と
もお付き合いをさせていただいた戦人様に対する、これは私の好意だと受け取っていただきたいものです」
 さらに追い込まれた戦人はうう、と口ごもる。
「だからってよお……」 <> 愛を乞うモノ 5/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:09:00 ID:biJ6qNXS0<>  話は数日前に遡る。

「……無尽蔵の黄金を生み出すはずのベアトが、お前を高給で召し抱えたって言ってたよな。でも今俺はお前と
契約した覚えはないし、お前に支払う対価も持ってはいない」
「その件は御心配には及びません」
 自分を手伝うと申し出てくれたロノウェに感謝しつつも、彼の正体が正体であるために契約の件だけははっきり
確認しておこうと話を切り出したのである。
「お嬢様の名を、戦人様が受け継がれた経緯が経緯ですので、厳格であるべき契約が曖昧なまま宙に浮いてい
るのです。すなわち、お嬢様の名を受け継がれた戦人様に、私とお嬢様が取り交わした契約も受け継がれている
のか否か、という問題です。私は受け継がれた、と判断してここに居させていただいております。そして対価はお
嬢様から先払いで支払われております。ですから、戦人様におきましてはお気遣いは無用でございます。……ですが、」
 ほらきた、と戦人は胡散臭そうにロノウェを睨みつけた。悪魔がタダで手助けするわけがないのだ。
「私とお嬢様が交わした契約書には、お嬢様が仇なす者共に報復する際に助勢をいたしまして、お嬢様の興を
削ぐことは含まれておりませんでした」
 ロノウェの持って回った言い回しに戦人はポカンと口を開けたままだった。 <> 愛を乞うモノ 6/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:49:10 ID:biJ6qNXS0<> 「つまり、お嬢様が買ったケンカ、売ったケンカに手出しは厳禁されていたのでございますよ。ぷっくっく!」
 堪えきれずにロノウェが嘲笑してもまだ戦人には事態が呑み込めなかった。
「まだ分りませんか? こう言い直しましょう。これから先、戦人様があの魔女や探偵などと称する下賤のモノ共に
お嬢様に受けたような仕打ちを被ったとしても、私としては高みから見物している他はないということなのです」
 大きく戦人の目が見開かれた機を逃さず、ロノウェはすいと顔を近づける。勢いに呑まれ、鼻先にロノウェの顔
があっても戦人が身動き一つしなかった。
「悪魔は、厳密な存在なのです、戦人様もご承知のように、契約なしでは諍いの際、指先一つ戦人様のために動
かすことができません。このような話が出たついででございます。新しく契約を結ばれますか? 戦人様。無論魂
を差し出せなどとは申しません。今の貴方に提供できるもので結構でございます」
 笑みを含んだまま戦人の耳元に囁く。ごくりと戦人の喉が鳴った。ロノウェに指摘されて改めて気付いた。ロノウ
ェ以外に多少なりとも信頼できる味方など元からいなかったのだ。しかもこの先の展開もさらに過酷になることが予
想され、この目の前で微笑んでいる男の力なしでこの先を乗り越えられようはずもないことは明らかだ。
 ……しかし、悪魔と契約なんて。とびきり狡猾で、とびきり口の上手い、この悪魔と契約なんて。
 ロノウェは無言で戦人を見つめていた。修辞学を司る己の能力を駆使しなくても、戦人が思い通りの場所に転
がり落ちてくることは明白であったからだ。やがて――。
「……何が望みなんだ」
 俯いて声を震わせた戦人に、ロノウェがどのような顔をしたかは分らなかった。 <> 愛を乞うモノ 7/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:53:21 ID:biJ6qNXS0<>  そして現在の苦境に至る。
「だからって、キ、キキ、」
「キス、でございます。破格でございましょう? 悪魔をこ、れ、ほ、ど! こき使ってキス一つで済ませられるなん
て。いやあ戦人様は運がよろしゅうございます。お嬢様が私に支払った代価をお知りになったら、目を剥くこと間違い
なしでございますよ?」
 これほどを嫌みたっぷりに強調してロノウェがにっこりと笑うと戦人は俯いて顔を手で覆った。
「ムカつく! ムカつくが何も言い返せねえ自分が憎い!」
「1日にキスを3回。今の貴方様でも十分に提供いただけるものでございましょう?」
 戦人は覆った指の間からちらりとロノウェを盗み見る。
「おや、意味が分りませんでしたか? 詳しく言い直しますと今の孤立無援で万策尽きて五里霧中で途方に暮れ
た無力の戦人様でも十分に提供、」
「黙れえっ! このイヤミ悪魔ぁっ!」
「お褒めに与りまして」
「褒めてねえだろ! 明らかに罵ってるだろ!」
 ロノウェのペースに乗せられ湯船の中でぜえぜえと息を荒くしていた戦人はやがて深いため息をつき、打って
変わった弱々しい声で呟く。
「ヤ、ヤローにチューなんか気持ち悪くないのかよ」
「ええ。戦人様に口付けを頂けるなんて胸が躍ります」
 ぐぐ、だのぐお、だのと呻いていた戦人はやがてがっくりと肩を落とした。じたばたと足掻いているが、もとより選
択肢はなかったのだ。おそらくは、ロノウェもそれを承知で戦人の最後の我儘に付き合ってくれているのだろう。 <> 愛を乞うモノ 8/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:56:44 ID:biJ6qNXS0<> 「……分ったよ」
「と、申しますと?」
「このやろ……。だから! それでいいっつってんだ!」
「はっきりと言葉にしてくださいませ。契約は正確かつ厳密でなければなりません」
 思いのほか、冷徹に響くロノウェの声に気後れしながら、戦人は言葉を探した。
「う、だから……。俺は、お前と契約する」
「契約内容に異存はございませんね?」
「ああ」
「では、我が主。この言をもちまして、私、ソロモン72柱が序列27番ロノウェと
右代宮戦人様の契約締結とさせていただきます」
 厳かな声でロノウェが告げると戦人は緊張した面持ちで頷いた。
「で、でもよ、何も風呂場でこんなことしなくても」
「手っ取り早いですから」
「何が」
「このまま、ファーストキスを頂こうかと思いまして」
「な、何だとーっ!!」
 がばっと湯船から立ち上がりかけた戦人の肩をがっしりと掴みつつ、ロノウェはにこやかに笑いかける。
「初めての口付けまで頂戴できるとは役得でございますねえ。初日でございますから、挨拶代わりに」
「そんな挨拶ゴメンだ! つか何で俺が初めてだって知ってんだよ!」
「私、悪魔でございますから」
「理由になってねえ!」
 喚き立てた戦人の口元にロノウェは指を一本立てて黙らせた。
「契約、でございますよ?」 <> 愛を乞うモノ 9/11<>sage<>2009/11/05(木) 05:59:42 ID:biJ6qNXS0<>  顎を優しく持ち上げると、戦人の抵抗が弱々しくなった。ロノウェの腕を掴んではいるが、その力もロノウェを静止
するほどではない。追い詰められてゆく表情と羞恥と焦りが交差する眼差しをロノウェは目を細めて楽しんだ。
「戦人様、濡れた手で掴まれていては私のシャツが台無しになってしまいます。もっとも、今回は大目に見て差し
上げましょう。もっと濡れることをいたしますから」
 戦人が何か言おうとする前に、軽く口付けた。ちゅっと音を立てて離れると戦人は茫然としている。その子供っぽ
い仕草に笑みを浮かべながら、今度はねっとりと唇を奪った。戦人の身体が今度こそ強張る。濡れた裸身を湯船
越しに抱きしめながら、あくまで優しくキスを繰り返した。身を震わせていた戦人の身体から力が抜けるのはすぐ
だった。ん、ん、と鼻から息が抜ける甘ったるい喉の奥からの鼻声には戦人自身は気付いていないようだ。怯えさ
せないようにゆるゆると背骨に沿って指を這わせると、それにも敏感に戦人は反応して、びくんと身体を震わせる。
バシャン、と湯が跳ねた。
 優しく、蕩けるように、優しく。
 ロノウェは内心で密かに笑った。悪魔らしい邪悪な忍び笑いと、初心な戦人の反応に苦笑する二つの入り混じ
った思い。 <> 愛を乞うモノ 10/11<>sage<>2009/11/05(木) 06:02:57 ID:biJ6qNXS0<>  出会った当初は毛を逆立てた猫のように警戒していた。茶菓子を供しても、食事を運んでもあるいは雑用をこな
してやっても気配をうかがい、探るような目つきは長く続いた。それを時間をかけ、信用させ懐柔した。戦人は懐
に一度入ってしまえば危ういほどに懐いた。今では入浴の際に裸身を晒し、寝起きの際に服を脱がせ着替えさせ
ても寝ぼけまなこで身体に寄りかかってくる始末だ。戦人本人は自分の変化に気づいてはいないだろう。ああ、怠
惰のベルフェゴール、確かにこの快楽は御し難い。
 ロノウェは元の自分の主を嘲笑った。
 黄金の魔女、ベアトリーチェ。北風と太陽という作戦はなかなかに良策であったと思いますよ。しかし、日の光は
染み入るものではなくては。いつも輝いているものなくてはなりませんでした。そう、たとえば、このように。慎重に
、細心の注意を払って、時間をかけて穏やかに。だからほら、今、戦人様は頬を染めて悪魔の口付けを受けている。
付け焼刃の太陽ではこうはいかない。そう、本当に手に入れたいなら、手間を惜しんではなりません。魔女の
存在を認めさせる? ああお嬢様、貴女は日向の水溜りのように最後まで手温くていらっしゃった。いいえ、いい
えお嬢様。魔女の存在も悪魔の存在も不要でございますとも。戦人様はこの『ロノウェだけを認めればよい』ので
す。強欲は悪魔の美徳、嫉妬は甘き美酒。知っておりましたか、お嬢様。私は戦人様を一目見たときからそのお
身体も魂も、頂戴したくてたまらなかったのでございます。悪魔に魅入られてしまうとは。思えば戦人様もなんとお
気の毒な方でございましょう。 <> 愛を乞うモノ 11/11<>sage<>2009/11/05(木) 06:11:41 ID:biJ6qNXS0<>  不意に悪魔がくつくつと笑いだしたので戦人はトロンと溶けたままの眼差しをぼんやりとロノウェに向けた。
ロノウェは温和に笑みを浮かべ、戦人の濡れた紅い髪を何度も梳いてやる。戦人は髪を愛撫される未知の快楽に
うっとりと目を細めた。
「身体を洗った湯をまだ流してなくてようございましたね」
「……え?」
「身体が隠せてよかったではありませんか」
 戦人は一瞬目を見張り、やがて恥ずかしそうに目をそらした。自分でも下半身の変化には気付いていたのだろう。
 ロノウェは楽しそうに囁く。
「だから浴室でようございましたでしょう? すぐに処理ができます。ご安心を、契約外ですが、アフターサービス
させていただきます。他ならぬ、戦人様の為ですからね。ぷっくっく!」
 愛は一なる元素。身も心も魂でさえも。
 ロノウェは快楽に溶けきっている戦人を見てとると、ゆっくりとその前に跪いた。
「……我が君。貴方に全てを奪われたこの哀れな悪魔に、どうか慈悲と、憐れみを」
 戦人の手の甲にロノウェは敬虔な口付けをそっと落とした。ほんの一瞬、祈るような仕草さえ見せ、
ロノウェは目を閉じた。そして戦人の身体を再び抱きしめ、淫猥な遊戯で戦人を汚していったのである。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

何か待っててくれた方もいたようで、とりあえず出せてよかったです。
しかし、ep5が見つからない…。年末冬祭りまで待つしかないのかのう…。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/05(木) 20:39:53 ID:b/vwSV+jO<> ああああああロノバトマジでGJGJGJすぎる!!!!萌えすぎて死んだあぁあぁぁあ!!!
待ってた甲斐がありましたー!!!!!!!あぁあもう本当にありがとうございましたー!!! <> 想う、ふたり<>sage<>2009/11/05(木) 22:50:05 ID:sa4wOY5wO<> 当主と補守。
***を境に視点が変わります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 想う、ふたり 1/3<>sage<>2009/11/05(木) 22:53:21 ID:sa4wOY5wO<> Aと補守が練習場のベンチに座り、深刻な表情で話をしている。
補守と次の仕合のことで確認したいことがあったのだが、
割り込めるような雰囲気ではなかったので、踵をかえしてロッカーに向かった。
彼と組む当主が他に増えたということもあり、一時より会話が減った気がする。
(俺と上手くいったから、出番が増えたんだぞ)
さっと頬に熱が帯びる。
まるで嫉妬じゃないか。
先の思考を消したくて、頬を軽く叩いた。
「一人で何してんの」
ロッカーの入り口前で、同期の男がこちらを見て笑っている。
「やらしーこと考えてたんだろ」
「お前じゃないんだから」
「俺の仕事はそういうリ一ドを考えることですから」
彼は切れ長の瞼を更に細めて笑う。
「で、真相は?」
「しつこいなあ。何でもねえって」
「恋の悩みなら相談に乗るぞ」
「杯Qの相談に乗ってくれよ」
「まあそれも乗ってあげて良いんだけど。今は、俺より先に相談する相手がいるっしょ」
同期は笑いながら「じゃっ」と、肩に触れて去った。
怪訝に思うと、背後から足音と自分を呼ぶ声。
先程までAと話をしていた補守が息を切らせて近寄って来た。
「えっと、まだ時間ある?ちょい今度のことで確認したいことがあって」
「あ、俺も」
「じゃあ、ここじゃ何やし、どっか部屋空いとるかな」 <> 想う、ふたり 2/3<>sage<>2009/11/05(木) 22:55:49 ID:sa4wOY5wO<> 打合せ室に向かう彼の後ろに付いて行くと、突然「仲ええなあ」と、話を振られる。
先の同期の男を指しているのだろう。
やはり同じ位置として気になるのだろうか。
「まあ、ずっと一緒なんで」
「ええよな、同期て」
「はあ」
「出会うべくして出会ったんやろうなあ」
「えっと、そんな大層なもんでもないです。フツーです」
「そっか」
会話が途切れて、足音だけが廊下に響く。
今度はこちらから話をしなければならないだろうか、と迷う間に
彼は空いている部屋をひとつ見つけたようだ。
「閉まってるな。鍵もらってくるわ。ちょっと待ってて」
立ち去る彼の背中を見つめて、ふと昔読んだ彼の経歴を思い出す。
彼にはいたんだ。
出会うべくして出会ったひと。絶対的な存在が。
まだ、その人のことを忘れられないのか。
なげる自分を目の前に、その人を追い続けているのか。
(俺とのことだけ、考えていれば良いのに)
ドアに持たれかけたまま腰を下ろし、深くため息をついた。
左手の指先でこめかみを強く押す。
「何考えてるんだよ・・・」 <> 想う、ふたり 3/3<>sage<>2009/11/05(木) 22:59:06 ID:sa4wOY5wO<>
***

困らせることを言ってしまったな。
鍵を取りに向かいながら、先程の会話を悔やむ。
自分以外との強い繋がりを目の当たりにして、嫉妬してしまったのだろうか。
Aとの話を早々に終わらせて彼を追いかけてしまったのも、彼の姿が見えなくなったからで。
これから話すことも、別に今日でなくても良かったわけで。
焦っているのか。若い子に対して、大人げない。
事務室に入り、鍵を取って記録簿に名前と時間を記す。
「じゃ、借りてきます」
チャリと音を立てた鍵を右手で握りしめた。
事務室から出て、窓を眺める。
遥か彼方に想う、一人の影。
(お前は今もなげているのだろうな)
いつの間にか手放してしまっていた約束。
(俺はここで叶えるよ)
暮れてゆく空。季節はもうすぐ終わる。
足早に彼の待つ場所へ向かった。 <> 想う、ふたり(終)<>sage<>2009/11/05(木) 23:00:22 ID:sa4wOY5wO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・*)イジョウ、ジサクジエンノカタオモイデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/05(木) 23:33:00 ID:pi0dVeEPO<> >>416さん
最近ジワジワ殺し屋→復讐鬼がキてるんで萌えました!
もっと読みたいです〜気が向いたらゼヒ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/05(木) 23:53:30 ID:EiQn5Fc70<> >>471
Yes,Your Majesty!
なんか最近…目覚めた感じのアニメ組ですwGJ!

(でもバトベアも好きなんだw) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/06(金) 01:54:01 ID:OgC/LBbEO<> >>459
激GJでした。
毎度泣けてしょうがないです。
いつもありがとうございます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/06(金) 04:12:26 ID:+RBkz6jS0<> >>443
亀だけどいつもありがとう!
こういう結末での二人も読みたかったんで感動。
久々に萌えた!!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 03:05:19 ID:fBtGkS5wO<> >>423-443
新作が読めるとは…!
ありがとう <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 1/10<>sage<>2009/11/07(土) 04:00:55 ID:ui1A9M7T0<>           _________
       |┌───────┐|
       |│l> play.      │|
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         [::::::::::::::::MONY:::::::::::::::::]
   ∧∧ボークーサーツー テーンシー♪
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )ビーンカーンビーンカーン ビンカンビンカーン♪
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
  |            ┌‐^──────────────
  └──────│突然やってきた萌え。常に死と隣り合わせの桜のエロさは秀逸。
                └───────────────
【注意】流血(血みどろ?):若干の恐怖表現:家屋破壊:女キャラ登場
基本的にはどたばたギャグですが、元ネタを知らないとキツいと思います。
興味のある方、耐性のある方は宜しければご覧下さい。
<> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 1/10<>sage<>2009/11/07(土) 04:02:00 ID:ui1A9M7T0<> 「たすけてー!!」
桜は住宅街を必死に走っていた。秋の近づく冷たい風が、桜の涙と鼻水を攫ってゆく。
背後からは凄まじい破壊音が響いて、そこで起こっている惨事を簡単に想像することができた。
「さくらくぅぅーん!」
爆発音と共に、どくろちゃんの声が夕空に広がる。まるで餓えた野獣が獲物を狩るが如き赤い瞳の輝きが、土埃の奥に煌めいたのを桜は見た。
地響きが桜の足元を不安定にした。コンクリートが割れ、水道管が破裂する。
「ひぃぃぃ!!」
叫びすぎて喉が裂けそうだった。転がるように走り続け学校にたどり着いた桜は、閉まりかけの校門をすり抜けて校内に逃げ込んでいく。
沈みゆく夕焼けに校舎が赤く照らされ、浮かび上がっていた。校内は静まり返っており、桜の激しい息遣いが反響する。
「はぁ、はぁ・・・・・・」
桜はおもむろに顔を手で拭った。手のひらには、汗とは違う赤黒い液体が付着していた。
一度ズボンで拭うと、再度右頬に手を当ててみる。そこには鋭利な刃物で切られた傷が出来ていた。
血は止まっておらず、まだ生々しく流れ出ている。よく見れば肩の部分まで赤黒いのが確認できた。
『血・・・・・・血だ!なんだよ!なんでこんなことになってんだよ!』
なんでこんなことになったのか。理由はひとつ、桜が静希ちゃんに電話をしたからだ。
連絡網を回しただけだったのだが、激昂したどくろちゃんにはその説明すら聞き入れてもらえなかった。
どくろちゃんは興奮し、瞬時にエスカリボルグを構えて、顔面蒼白になっていた桜に振り下ろした。
珍しくそれは桜の右頬を掠め皮膚を切り裂き鮮血を飛び散らせ廊下の天井までその血痕が残るに至っただけで、あとは廊下の陥没のみに止まった。
しかし続けざまに振り上げられたそれを見て、桜は意識を取り戻し、逃げ出したのだ。 <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 3/10<>sage<>2009/11/07(土) 04:02:32 ID:ui1A9M7T0<> 『死にたくない!死にたくない!痛いのは嫌だぁぁぁ!!』
ぼろぼろと涙を零し、桜は静まりかえった校内を進んだ。
『19時・・・・・・まだ先生は職員室にいるはずだ。事情を話して、少し匿ってもらおう。ほとぼりが冷めて出ていけば、どくろちゃんも落ち着いているだろう』
確証のないそんな希望を持って、職員室を目指した。廊下には、職員室の窓から光が射していて、まるで天国に着いた心持ちになった。
その時だった。
「だからぁ、さくらくんがきたら、かならずボクに教えてね★もし、ヒミツにしてたら・・・・・・」
「わわわわわかった、わかった。わかったからもう帰ってー!」
おどけたどくろちゃんの声と、恐怖に震える山崎先生の声だった。
桜の全身の血が凍りついた。一瞬で足が止まり、一気に血が引いた。追っ手はこんなところまできている・・・・・・!!
桜はくるりと踵を返すと、凄まじい勢いで階段を駆け下りた。
『いやだーいやだよ死にたくないよなんであんなとこにどくろちゃんがいるのっていうか早すぎるだろ、僕の方が先に逃げてんのになんで先回り!どっかで絶対行き過ぎてるだろ』
足は空回りをしそうなくらいに動き続けていた。校舎を出てグラウンドに周ると、完全に陽が落ちた暗い空が広がっていた。
その空の下、白い服を着た人が一人で何かをしているのを桜は発見した。
『どくろちゃん・・・・・・!?・・・・・・にしては、体格がいいな』
少し近づいたところで、桜はそれが野球部のエースで、同じクラスの宮本だと気付いた。 <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 4/10<>sage<>2009/11/07(土) 04:03:12 ID:ui1A9M7T0<> 「宮本!」
「あれ?桜、どしたんだよ」
「宮本ッ、助けて!」
息を切らして宮本に走り寄った桜は、必死で呼吸を整えた。膝に手を当て、背を丸めて何度か咽る桜を、宮本が訝しげに見る。
「どっ、どくろちゃんが、追ってくるんだ」
「お前何やったんだよー」
「何もしてない!」
「自業自得ってんだよ、そういうのは」
「何もしてないって言ってるだろ!」
宮本は、桜を無視して2度投球のフォームを確認すると、困ったように笑った。
「仕方ねーなー。でも俺特にお前を助けたりとかはしないぜ」
「そういうの人でなしって言うんだよ」
冷めた目付きで見る桜をよそに、宮本はグローブを外すと、部活道具の入ったバッグを拾い上げ、そこに押し込んだ。そしてひょい、と右手を掲げた。
「こっち来いよ。一応、隠れられそうなところは教えてやるよ」
「あぁぁぁ宮本ぉぉ!ありがとう宮本くん、どうもありがとう宮本くん!流石だよ、素敵だよ宮本くん!」
宮本は、喜びに涙を流してアウアウ言う桜を体育室倉庫に連れていった。
ガラリとその戸を開けると、爽やかな笑顔で言う。
「ここだったらバレないだろ。最近、なんか変な道具が増えてんだけどさ」
「三角木馬って授業で使うモンだっけ・・・・・・?あとなにあの滑車とかロウソクとかあとあそこにあ」
桜が萎縮していると、先ほどまで歩いていた校舎の2階でガラスを振るわせる轟音が響いた。
「さぁーくぅーらぁーくぅーん!!!どこぉぉ――!?」
声が響き、それに呼応して犬の鳴き声(吉田の可能性が高い)が町の夜空に広がっていく。ガラスは共鳴して、ビリビリと甲高い音を立てた。
「ヤバイ!」
桜は宮本の胸倉を掴むと、体育倉庫に引き込んだ。宮本は慌てて抵抗する。
「なな、なんで俺もなんだよ!」
「バカ!お前、見つかったら殺されるぞ!しかもお前の場合、生き返らせてくれるかどうかもわからないんだぞ!」
「桜と一緒じゃなけりゃ殺されないだろ!」
「いや、僕を庇ったことがバレたら・・・・・・明日はないと思った方がいいよ」
目を光らせ、ふっふっふと不敵な笑みを浮かべる桜を見て、宮本は初めて後悔を感じた。
「畜生!関わるんじゃなかったぜ」
言って、後ろ手に体育倉庫の扉を閉めた。 <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 5/10<>sage<>2009/11/07(土) 04:04:30 ID:ui1A9M7T0<> 暗い体育倉庫の中には、一筋だけ月明かりが射していた。辛うじて見える程度のその明るさを頼りに、桜が倉庫の中を調べる。
「もっと、隠れる所・・・・・・ないかな」
「マットで巻いてやろうか?」
「やだよ、死んじゃうだろ」
「お、アレはどうだ?」
宮本が指差した先には13段の跳び箱があった。桜の瞳に輝きが戻る。
「あれはイケる!凄いよ宮本!」
「じゃ、俺が上開けるから、お前入れ」
「え?宮本は?」
「俺は外でいい」
「な、なに言ってるの?バカ!本当にバカ!宮本って書いてバカって読むの!?」
桜は声を荒げ、宮本を責める。その瞳は、真剣そのものだった。
「駄目だよ、生きなきゃだめなんだよ!みすみす殺されようとする友達を放っておけるわけないでしょ!」
「桜・・・・・・」
桜はじっと宮本を見詰めていた。宮本の白い野球ユニフォームを遠慮がちに掴んで、自身の訴えを貫こうとしている。
「一緒に、生きて明日を迎えようよ」
「・・・・・・そうだな」
宮本は桜の熱意に押され、苦笑すると跳び箱に近づいた。最上段をずらして、桜を手招く。
「入れるか?」
「うん」
跳び箱のふちに手を置き、桜は小さな体をするりと滑り込ませた。完全に入った状態で小さく手を振る桜を確認して、宮本がよいしょ、と跳び箱に乗り上げる。
「俺も入るぞ」
「うん」
「部活道具はどしたらいい?」
「外にあるとバレそうだから、持って入れる?」
「やってみよう」
宮本の体が跳び箱の内部に降りてくる。跳び箱の中はかなり狭かった。さらに宮本の巨大な部活バッグが押し込まれ、宮本は中腰で最上段をゴトゴトとずらし、閉め切った。
跳び箱の隙間から線状の光が辛うじて入ってきて、一定の間隔で互いの体を照らしている。
宮本は、居心地が悪そうに中腰のまま立っていた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 04:39:57 ID:gDZcQMY9O<> 続きマダァ? <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 6/10<>sage<>2009/11/07(土) 05:04:49 ID:ui1A9M7T0<>       (連投に引っかかっていました。ありがとうございます)

「宮本、座れば?」
「あ、あぁ」
戸惑ったような宮本の返事が返ってくる。桜は小さな体を更に小さく緊張させ、体育座りをしながら目を凝らし、耳を澄まして体育倉庫の中を見ていた。
宮本が部活バッグをクッション代わりにして、ゆっくりと腰を下ろす。
夢中になっている桜を邪魔しないように、そろそろと、最大限桜から離れる形で座り込んだ。
両足は隙間を縫った結果、桜の体を挟むように広げることになり、不本意にも、桜を後ろから包み込むかのような形になった。
「わっ・・・・・・あっ、と、あの、え・・・・・・み、宮本・・・・・?」
「仕方ないだろ、隙間を活用するにはこうするしかねーんだよ」
吐き捨てるように宮本が言う。桜は、必死に外に意識を集中させた。
『なんだろう、なんか、背中側に人がいるっていうだけで凄く暖かい感じがする』
桜の体の両脇には、宮本の膝があった。先には、スパイクを履いた足先がある。その足の大きさに、桜は初めて気付いた。
宮本の体と触れている部分が、みるみるうちに暖かくなった。
「宮本、あったかいね」
「はぁ!?」
「知らなかったよ、人ってあったかいんだね」
「お前何言ってんの?」
「あ、いや、あの、別にそういう感傷とか中2病とかそういうのでは・・・・・・」
「明らかに中2病だろ」
「・・・・・・」
桜は黙り込んだ。緊張した空気が張り詰める。その時、グゥゥ〜という暢気な音が鳴った。
一瞬の間を置いて、桜が照れ臭そうにへへへと笑う。
「桜、夕飯は?」
「食べる前に喧嘩になっちゃったからさ・・・・・・」
「何も食ってねーの?」
頷く桜を見て、宮本は笑いを堪え、しかし堪えきれずに吹き出した。
「お前、死にそうになりながらも腹が減るんだな!」
「そ、そりゃ減るよ!死にそうになろうが死のうが死んだあと生き返ろうが腹は減ります!」
宮本は苦笑しながら、部活バッグに手をつっこんでごそごそし始めた。そしてそこから何やら取り出し、背後から桜に差し出す。
自分の顔の横からにゅっと現れたものを見て、桜が若干面食らった顔をした。 <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 7/10<>sage<>2009/11/07(土) 05:05:25 ID:ui1A9M7T0<> 「なに?」
「食えよ。俺オヤツにしようと思って、家にあったから持ってきたんだけどさ。俺は、普通に家帰れば飯にありつけるし」
確かに、桜の今の生活状況では、タイミングも逃せば食事もままならない状態だ。
桜は受け取ると、振り向いて笑顔を見せた。
「ありがとう。宮本、本当ありがとう」
その手中にあるのは、魚肉ソーセージ。そろそろと剥くと、桜はかぶりついた。
「美味いか?」
「うん!」
「そうか。良かった。腹ごしらえしたら、またちゃんと緊張しとけよ」
「うん」
桜の瞳から涙が落ちた。人の優しさに触れ、そして食べ物の美味しさも感じることができる。
生きる事の素晴らしさを、今全身で

       びくん!!

「ぅんっ!?」

       びくびくびくっ!!

「んぁっ、は、ぁぁっ!」

全身で!!!

       びくっ・・・・・・びくびくん!!!

「あっ、ぃ、ぁ・・・・・・なに、これ」 <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 8/10<>sage<>2009/11/07(土) 05:05:51 ID:ui1A9M7T0<> 桜の手から魚肉ソーセージが落ちた。体は痙攣するように、びくびくと動いている。呼吸が荒くなり、はぁ、はぁ、と肩で息をしている。
その顔は赤味を帯び、だらしなく開いた唇からは唾液が糸を引いて落ちた。突如変調をきたした桜を見て、宮本は完全に引いていた。
「い・・・・・・っ、あ、み、みゃ・・・・・・ッもと!これ・・・・・・まさ・・・・・・かッ!」
「なんだよ」
「はぁゥッ!・・・・・・ッあぁん!」
びくん!
汗ばんだ手で、桜は跳び箱の内側に手をついた。ガタンと音がして、宮本は肝を冷やす。
跳び箱にツメを立て、桜が仰け反った。
「あぁッ・・・・・・いやァッ・・・・・・ば、バカッッ!おま・・・・・・ぇ!あぅッ!・・・・・これ・・・・・・びんッ・・・・・・かんサラリー・・・・・・マン・・・・・・ソーセー・・・・・・ジッ!」
「はぁ?何言ってんのか聞こえねーぞ」
「びん・・・・・・かァン!!」
「確かにお前はなんか今やたらにビンカンだよ」
桜の瞳から涙がぼろぼろと零れ落ちる。汗が、差し込む光に照らされてきらきらと光った。
明らかに尋常ではない。不安になり、宮本は桜の肩に手を置いた。
「おい。さく・・・・・・」
「あぁぁぁッッ!!・・・・・・んぁぁっ、だめぇッ!」
桜は体を捩り、自分を抱き抱えるようにして宮本の手を振りほどく。その脳内では、戦いに赴く自分自身がいた。
 『軍曹!!軍曹!!大変です!!こんな少数で、敏感双生児軍に勝てるはずがありません!撤退しましょう!』
 『馬鹿野郎!!諦めちゃ、何もかもが終いだ!!』
 『軍曹どの、違うんです!僕は、今勝ちたくないんです!』
 『何を!?戯言を言うな!』
 『今、勝ってしまったら・・・・・・勝ってしまったら、僕の下半身は・・・・・・』 <> 撲○天使と"くろちゃん 宮本×桜 9/10<>sage<>2009/11/07(土) 05:08:39 ID:ui1A9M7T0<> 「桜!静かに!」
宮本は桜の口を、後ろから右手で覆った。そしてまだビクビクと激しく動く体を、足で挟んで押さえた。暴れる手は左手で纏めて、押さえつけた。
今、まさに全身が「敏感」そのものになろうとしている桜は、言葉にならない声を発して宮本の腕の中に包み込まれた。
そうしてなお、びくんびくんと体を震わせ、貪欲に感度を増して、さらなる快感を欲している。
「んふぅぅッ!」
「黙れ、桜!」
宮本が桜を一喝すると、桜は辛うじて声を抑えて頷いた。神妙な面持ちで、宮本が続ける。
「聞こえるか!この音」
グラウンドの奥から僅かではあるが、砂を擦って歩く音がする。金属の何かを、地面に接地して引きずり歩く音がする。
「さぁくぅらぁくぅーん!もう怒ってなぁーいよぉー★出ておいでぇ〜」
桜の瞳から涙が零れ落ちた。吐息が宮本の指の間から漏れる。
汗が流れ落ち、頬の傷に染みていく。肌にこびりついた血は、潤いを取り戻して宮本のユニフォームを汚した。
「ぅ・・・・・・ァッぁん」
熱い吐息を漏らし、宮本のユニフォームを強く掴むその姿には、息を呑む艶があった。
どきりとして、宮本は目を逸らす。数度頭を左右に振ると、びくびくと体を震わせる桜を、冷静に押さえ続けた。
だが、必死に息を殺す二人に、時は迫っていた。
「ここかなぁッ?」
狂気に満ちた声が響き、体育室倉庫のドアが内部に向かって吹き飛んだ。
たちこめる埃の中で、巨大な金棒を持った影が佇んでいた。




[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
名前には9/10とありますが、連投しまくりなのでまたチャレンジさせていただきます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 05:46:24 ID:i3fh3jd+0<> C <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 10:32:03 ID:XSS4GZ1M0<> ご本尊のイチャイチャ具合触発されてまた書いてしまいますた
一応>>335-342(ナマモノエロ注意)の後日譚ですが
単発バカ話として生温く見ていただければ幸いでつ

ナマモノ注意。エロ無
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 鳳 粕和歌 願い事 1/3<>sage<>2009/11/07(土) 10:34:47 ID:XSS4GZ1M0<> テレビ局の季節感はオカシイ。

カレンダーはまだ11月。
世間では、ようやく紅葉の便りが届こうってときに
都内某所の某テレビ局のスタジオの中はもう新年の装いだ。

これから正月特番の撮影だってさ。あーそーですか。
そりゃまぁ、あけましておめでとうございますってもんだぁね。
なんて、捻くれた会話をしながら、相方とセットの中を歩き回る。

正面のひな壇の後ろには、大きな奴凧。
羽子板や独楽のオブジェまである。

隅のほうにはご丁寧に鳥居が何本も立てられた
小さな神社も作られていた。

「これって、ホンモノかなぁ?」
和歌林が小さな本殿の中を覗き込みながら言う。
「まさか。ハリボテでしょうよ」
こんな所に、本物の神様が宿っていたら大変だ。
「そっかー。そりゃそうだよな」
俺のほうを振り返って笑う。 <> 鳳 粕和歌 願い事 2/3<>sage<>2009/11/07(土) 10:36:26 ID:XSS4GZ1M0<> 「ま、でも、一応」
柏手を打ってなにやら拝みだす。

その姿が稚くて可愛くて。
本物じゃないですよ、と笑いをこらえて念をおしても
「気持ちだよ、気持ち」
と言って、動かない。

「じゃあ、粕賀もお付き合いしましょうかね」
和歌林の横に立って、俺も柏手を打つ。

とは言うものの、何も願う事なんか・・・と悩んだが
今、一番切実な願望が浮かんできた。

『どうか、和歌林とセックスできますように』

熱心に拝んでいたら、後頭部を叩かれた。
「ヘンな事、祈ってんじゃねぇよ!」
睨みつけてくる和歌林。でもその顔は少し紅い。

「えぇぇ?!粕賀の願い事が判ったんですか?」
「わからねーけど、わかるんだよ!!」
くるりと背を向けて歩き出す。 <> 鳳 粕和歌 願い事 3/3<>sage<>2009/11/07(土) 10:38:38 ID:XSS4GZ1M0<> 小走りで追いかけて、横に並ぶと小声で尋ねてみた。
「和歌林氏は、何をお願いしたのかね?」
「・・・。」
和歌林は答えない。

「和歌林?」
もう一度問うと
「・・・・・・・・・よ」
と、口の中で呟いた。
「え?」
聞き取れなかったので、和歌林のほうに顔を近づけて聞き返してみる。
和歌林の息が耳に触れる。

「・・・・・・・・・だよ。ってか、近ぇよ!!」
今度はこめかみを叩かれた。
でも、手が出る前に、小さく呟かれた言葉は
俺の耳にしっかりと残っていた。

『お前とずっと一緒にいられるように、だよ』

あぁ、神様、仏様。
こんなに愛しい人の傍に居させてくれる幸運を与えてくれたのに
贅沢なお願いをしてしまって、すいません。
でも、願わくば、先ほどのお願いが一刻も早く叶いますように。

ドコにいるかもわからない神様に、俺は心から祈っていた。 <> 鳳 粕和歌 願い事 3/3<>sage<>2009/11/07(土) 10:41:17 ID:XSS4GZ1M0<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ご本尊がこれからもずっとイチャイチャしてくれますように
お目汚し失礼しました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 19:07:24 ID:AMYjfmOMO<> >>471
超グッドです有効ですイエスユアマジェスティ!
ロノウェのいやらしさと戦人のかわいらしさが実に素晴らしい作品でした。
今夜はいい夢が見られそうです。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 22:12:41 ID:pxzAjonyO<> 携帯獣のジョウトチャンピオンとトキワのボス
捏造たっぷりの設定です


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 追憶と始まり1/2<>sage<>2009/11/07(土) 22:15:58 ID:pxzAjonyO<> 鬱蒼と生い茂る木々に囲まれ、葉と葉の間の僅かな隙間から洩れるだけの光に包まれた森。
緩やかな風が葉を揺らす音以外には何も響かない。
スーツを纏った男は気配を感じ取り足音を潜め慎重に辺りを見回すと、視界の端に赤髪の少年が映った。
少年は顔を膝に埋め隠すように腕で覆い、隣にはミニリュウが身を寄せていた。
男はペルシアンに目で合図を送り足を止めると、手にしていた写真と少年を何度か見比べてからポケットに丁寧に仕舞い込んだ。
「ワタル。帰ろう」
「……誰」
「君を探すようご両親から頼まれた者だ。君のお母さんとは面識があるから適任だと思われたのだろう。もう時間がないそうだ」
ワタルは握っていた拳を固く握りなおした。
「フスベにはもう帰らない。僕は此処で生きる」
「私はこの森の恐ろしさを誰よりも知っている。君とそのミニリュウだけでは森に居続けることは不可能だと断言できる」
「……」
男は辛抱強く沈黙が終わるのを待ったがワタルが折れる様子がないことが分かると口調を和らげた。
「よかったらそこまで嫌がる理由を教えてくれないか」
ワタルは漸く顔を上げちらりと横目で男を見、男の他に誰もいないのを素早く確認した。
それでも迷う素振りを見せ口を開きかけては閉じるのを繰り返したが、いつまでも男が離れようとしないのに耐えかね重い口を開いた。
「……今、フスベでは次のジムリーダーを決める為に騒動が起きているんだ。ジムリーダー様は候補として僕とイブキの名前を上げた」
「でも本当はイブキがなるはずだったんだ。村は二つに分かれた。僕達の気持ちなんかそっちのけで僕とイブキのどちらがジムリーダーに相応しいか、いつも喧嘩するんだ。僕もイブキも、そんなことしてほしくないのに」
吐き捨てると勢いが治まらないまま、顔を覗き込むミニリュウを睨んだ。 <> 追憶と始まり2/2<>sage<>2009/11/07(土) 22:18:01 ID:pxzAjonyO<> 「ポケモンなんか嫌いだ。僕達を苦しめるだけだもの。……大きらいだ」
「心にも思っていないことを言うものではない。ポケモンは主人の感情に敏感だ。ミニリュウを見れば君を信頼しきっていることが一目で分かる。」
ワタルは目を大きく見開いた。
「ミニリュウが、僕を……?」
擦り寄るミニリュウに暫く黙り込むと申し訳なさそうにおずおずと抱きしめ、小さな声でごめん、と呟いた。
ペルシアンは場を和ませるように一声鳴き、ワタルの足元に腰を下ろすと顔を寄せ頬を舐めた。
「ポケモンが君の心を傷つけることはあるかもしれない。だがこうして癒すこともある。意地を張っているだけで本当は分かっているのだろう?」
ワタルは黙ったまま男に真っ直ぐ視線を向けた。
「村の争いごとが嫌ならば頂点を目指したらどうだ。ジムリーダーさえも越した誇り高き場所。もちろん後継者の争いは丸く収まるし君の嫌う束縛はない。そこにあるのは光だけだ」
言い終えるなり背を向け森の入口へと歩き出した男にワタルは慌てて続く。
言わなければならないことが多くある気がするのに言葉にならない。
ワタルはもどかしく思いながら唇を噛んだ。
「おじさん、名前は」
気付いたら言葉にしようとしていた想いのどれでもないものを口にしていた。
男は静かに立ち止まると振り返らずに口端を僅かに上げて笑った。
「君がジムに挑戦してきた時、教えてあげよう」




「次のニュースです。連日の報道でロケット団のニュースは皆さんご存じだと思いますが、壊滅させた人物について知っている方は少ないのでは?写真をご用意致しました。マサラのレッドさんです。」
「こんなに若いトレーナーが立ち向かったとは驚きですね。しかしまさかロケット団のトップがトキワのジムリーダー、サカキとは困ったものです。このようなことが二度と起こらないようにしなくてはなりませんね」
「本当ですね。さて、次のニュースは……」



<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/07(土) 22:19:48 ID:pxzAjonyO<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


携帯からの為、見づらかったらごめんなさい… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/08(日) 16:51:06 ID:hXoVD+7o0<> 規制明けテストがらカキコ

>>346>>416
うわあ、こんなところで劇団のSSが読めようとは!
って言いながらまだたこ焼きの国初日迎えてないからスルーで未読だけどw
明日の初日観に行ったら存分に読ませてもらいます楽しみ!
いつも思うけど東西で時差のあるジャンルはきついぜ…orz <> 未知との遭遇 0/7<>sage<>2009/11/08(日) 16:53:13 ID:hXoVD+7o0<>
               ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 今更TV総合萌えスレ>>842です
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < ナマモノ注意エロ無し・イ非イ憂 上ノリ隆也氏×唐シ尺寿日月氏
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、< 忙しかったり規制喰らったりで旬を逃した感じ満々
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ"
<> 未知との遭遇 1/7<>sage<>2009/11/08(日) 16:54:22 ID:hXoVD+7o0<> 数年前、民放主体としては珍しく2クールに渡って放映されていた骨太且つ繊細な人間ドラマ。
数字も上々、過去の大作のリメイクということもあり、当時最も世間の注目を浴びていた作品だったと言えるだろう。
正直なところ、その作品に後半から参加した自分はそれまであまり「彼」のことをよく知らなかった。
いや、参加してからも、と言うべきか。
今回の作品を含め出演作を観たことは何度もあった。
つい先日、国営放送の大舞台の主役を見事に務め上げたことも当然のように知っていた。
しかしおそらく世間一般が彼に抱くイメージ以上の印象などは持っていなかったと思う。
自分のホームグラウンドと言える板の上でも、映像の仕事に関わるようになってからも、彼と一緒に仕事をしたことは無かったし、
自分の貰った役所はそれなりに物語の鍵になる位置ではあったものの、当の主演とは今まで役の上で絡むこともそれほど無かった。
それでも、ハードな撮影の合間合間に自ら冗談を飛ばし率先して共演者やスタッフを笑わせるその姿をよく見てはいた。
見ながら真似出来ない、と常々そう思っていた。
自分は昔から他人との関係において一定の距離をとってしまうところがある、という自覚がある。
もちろん大人として仕事に支障の出ないレベルでの人間関係を維持する努力はするしそれで揉めた経験もそうそう無いが、
ある一線から他人が自分の内側へ入ってくることにどことなく抵抗を感じてしまうのだ。
当然例外はある、しかし大抵は間合いを計って他人と付き合っている節がある。仕事上で知り合った人間なら尚更で。
その点、彼は自分と全く違った。
むしろ他人と積極的に仲良くなろうとする。初めて顔を合わせる人間にも躊躇い無く話しかける。芸能界に親しい友人も多いと聞く。
徹底して場を和ませようとするその姿勢を遠巻きに見ながら漠然と感じていた。
良く言えば気さくで壁が無い。悪く言えば馴れ馴れしい。何にせよ深く関わらないに越したことは、無い。 <> 未知との遭遇 2/7<>sage<>2009/11/08(日) 16:55:46 ID:hXoVD+7o0<> 「よう、上ノリ!」
食堂で突然声をかけられた。驚いてメニューを眺めていたその視線を移すと、間違えるはずも無い主演俳優の顔がそこにあった。
撮影用のガチガチに固めた髪のまま、眉間に皺が寄らない素の顔は間近で見るとどことなく新鮮だ。
「あ、」
咄嗟のことに言葉が出ず、挨拶代わりに軽く会釈をした。相手はそれを気にした風でもなくすぐ横に体を寄せて尋ねてくる。
「何食べんだ?」
何なんだろう、この人は。
撮影に入った時から感じていた印象そのままだった。
良く言えば気さくで壁が無い。悪く言えば…馴れ馴れしい。そして近い。物理的に近い。
気づかれないようにさりげなく体をすっと引いて答える。
「…今日はB定食にしようかと思ってます」
「ふーん」
訊くだけ訊いておいてあまり興味の無さそうな返事をする。そして先程の自分と同じくメニューを物色し始めた。
…何なんだろう、この人は。
今まで一対一で言葉を交わしたことなど無かったが、やはりどうにも馬が合わない気がして。
「お先に失礼します」
失礼の無いよう今度は先程よりも丁寧に会釈と挨拶をして、さっとレジに並んだ。
自分の順番を待ちながら午後の撮影に思いを巡らせる。 <> 未知との遭遇 3/7<>sage<>2009/11/08(日) 16:56:58 ID:hXoVD+7o0<> そういえば午後は法廷のシーンからだった。早めに現場に戻らなければ。
空いている席を選んで座る。あまり目立たない端の方の席だ。時間帯にもよるが、比較的静かで気に入っている。
いざ箸を口元に運ぼうとしたその時。
「此処いい?」
再び声をかけられる。見上げると目の前には先程と同じ顔。
どうしてわざわざ。今はそこそこ空いてるじゃないか。
「…はい」
内心戸惑いつつも相席を承諾すると彼は笑顔を浮かべて目の前の席に腰を下ろした。
「午後一、被告尋問のシーンだっけ」
「はい」
「そういえばちゃんと絡むの初めてだったよなあ」
「そう、ですね」
「よろしくな」
「……こちらこそ。よろしくお願いします」
不自然にならない程度の笑顔でもって応える。
ああ、それでわざわざ。
この人らしいといえばらしいような気がしなくもない。とはいえあまり知らないから何となく、だけれど。
けれどまだ苦手意識の方が勝っていた。 <> 未知との遭遇 4/7<>sage<>2009/11/08(日) 16:59:35 ID:hXoVD+7o0<> さっさと食事を済ませて現場に戻ろう。そうしよう。
笑顔のまま少し目を伏せがちにして、相手にも食事を促そうとした、その時。
「なー、上ノリ」
「はい」
軽いトーンで呼ばれて上げた視線の先、声とは真逆の真剣な眼差しに思わず息を飲んだ。
「今更だけどさあ…」
「え?」



「―――――いいものにしような」



それは本当に今更言うまでも無いようなことだったけれど。
それでも凛と軽やかに、それでいて重く胸に響いて。
真っ直ぐで、純粋で、裏表の無い。
黒目がちで大きなその瞳に有無を言わず吸い込まれてしまいそうだった。
いつも他人に感じる距離は不思議と少しも、感じなかった。 <> 未知との遭遇 5/7<>sage<>2009/11/08(日) 17:14:38 ID:hXoVD+7o0<>
「………はい」

いい芝居にしたい。もっともっと、いい作品にしたい。
素晴らしい共演者と一緒に。優秀なスタッフと一緒に。この作品を毎週楽しみに観てくれる視聴者と一緒に。
―――そしてこの人と一緒に。

そう、素直に、………感じた。





「よし、じゃあ食うか!」
そう叫んで――叫ぶという表現がしっくりくるくらいの音量で――、手を合わせるその顔はもう元の表情に戻っていた。
「いただきます」
「…いただきます」
そこでふと、相手の食卓にも同じメニューが鎮座していることに気づく。
「あれ、唐シ尺さんもB定食ですか?」 <> 未知との遭遇 6/7<>sage<>2009/11/08(日) 17:16:09 ID:hXoVD+7o0<> 覗き込むようにして問うと彼は間髪入れずに自信満々な顔で言い放った。
「ん?ああ違う違う、これはね、『ハイパーB定食』!!」
「………」


一瞬、思考が停止する。


「……………え…どう、違うんです、か?」
「………」
「………」
「ぶっ」
目の前の口角がにたあっと上がったかと思うと、次の瞬間盛大に噴き出した。
そのまま口元に手を遣り、文字通り腹を抱えて背を折り曲げる勢いで彼は笑い続ける。
予想外のその反応にただただ戸惑う。
「っ、え?」
「…お前、クソ真面目だなあ!」
まるで悪ガキが手の込んだ悪戯を見事成功させたかのような満面の笑みに少々の涙すら浮かべ、
楽しくて楽しくて仕方ないというようにこちらを見る目は雄弁にしてやったり、と語っていた。 <> 未知との遭遇 7/7<>sage<>2009/11/08(日) 17:17:39 ID:hXoVD+7o0<>
後で聞いたところによると、彼定番のボケを流さず真顔で訊き返したその台詞よりも
不意打ちで呆気に取られた表情の方がずっと面白かった―――のだそうで、
そこで思い出し笑いを始めた彼にまたひとしきり笑われる羽目になったのだが。


何はともあれ。
(…やっぱりこの人とはちょっと距離を置いた方がいいんじゃないだろうか…)
その場のそんな考えとは裏腹に。
プライベートでも「クソ真面目に」彼のくだらないボケを全て拾えてしまうような、
そんなお付き合いにまで発展していってしまうのは。

それはまた、別のお話。


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/08(日) 17:21:19 ID:hXoVD+7o0<>
             ,-、
                 //||
            //  .||               ∧∧
.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 全然カプっぽくないね
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < うんうん
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ〜
         | |      /  , |           (・∀・; )、< しょうがなかんべ
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
  /    ゙  /  /   /                    ||
 | ̄ ̄ ̄ ̄ |,,./   /                 /,!\
 |         |   /                   `ー-‐'´
 |         | ./
 |_____レ

   漢具宇単放送以降このお二方に萌え萌えしています
   ちょうど昨日、演劇板で上ノリさんの主演芝居楽近くに唐シ尺さんが観に来てらしたと聞いて禿げ萌えた
   主演ドラマで忙しいってのに、仲ええのう…と
   しかし具宇単の残りお一方も一緒に来ていたらしい罠w

   途中で予想通り規制喰らいました・お目汚しでした
   かのネ申ドラマ(萌え的な意味でも)をダシにしてスミマセン…各地での再放送萌え
   ありがとうございました!
<> 愛のカタマリ 1/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:13:31 ID:TJq5eu6v0<> 元気が爆発しているロボットアニメの赤×黄。
スパロボで見事に再々燃してしまったため、去年の四月馬鹿に書いたものに手直しして投下。
アニメから七年後設定。やっそんあるので一応注意。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


 桜色の空から、風に舞う花弁が降ってくる。
 けれど吹き抜ける風は穏やかで、さやかに鳴る梢も歌うように身を揺らしていた。
 視界が行き届く限りには幼児用遊具が並び、けれど本来なら駆け回っているはずの園児の姿は見当たらな

い。遊戯室のガラス戸は硬く閉じられて、一時の貴重な休息を破られまいと静まり返っていた。
 春休み、その穏やかな平日の昼下がり。そんな中、園内の隅に位置する桜木の下に座り込み、この幼稚園

の園長の息子であり
隣に隣接する忍者屋敷の跡継ぎである人間に膝枕を提供している自分の姿をふいに客観視し、力哉の口から思わず苦笑が漏れた。
「いい加減重いぞ、虎太郎」
 額に乗った花弁を払いのけてやりながら、目を閉じたまま気持ち良さげに笑みを作っている幼馴染に呼び

かける。
幼い頃は頭頂部で髷のように結われていた長い栗色の髪は今は項で一つに纏められ、撫でてやれば悪戯に指に絡みつき、言外に構えと誘いかけてきた。
多少硬くはあるもののしなやかな感触のそれを宥めるようにさらに撫で付ければ、閉じていたどんぐり眼が目を覚ます。
「誕生日くらいいいじゃん。オレ、今日でやっとお前らと同じ歳なんですけど」
「そうだな最年少」
 年度末最終日、世に言う嘘つきの日エイプリルフール。自分達の学年で間違いなく最年少として生まれた

虎太郎が、温かな陽光降り注ぐこの日を以って、ようやく十七歳の誕生日を迎えた。
「誕生日プレゼントもやっただろ」
「おう。いやぁー、アレ欲しかったんだよなー。感謝感謝」
「感謝してる態度じゃないだろこれ、どう見ても」
「してるって。相変わらず力哉は頭固ぇなー」 <> 愛のカタマリ 2/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:15:03 ID:TJq5eu6v0<>  未だ膝上に頭を乗せたまま、にししと笑って見せる顔に小さな溜息が口をつく。その眼前をまた花弁が通り過ぎ、力哉ははたと思いついたように虎太郎に積もった桜を見た。
 地面に着いていないその花弁は土や埃に汚れた様子も裂け目もなく、頭上で咲き誇っていた様子そのままで見ている間にもまた新たに降り積もる。
「……よし。んじゃあ虎太郎、俺からもう一個特別にプレゼントをやるから、それが終わったら退くんだぞ」
「マジで!? も一個くれんの!? 今日の力哉は太っ腹ぁー」
 思いがけない申し出にはしゃいだ声音で笑いながら、それでもやはりまだ起き上がる気はないのか膝に頭を乗せている位置を微妙に直す。
そして一体なにをくれるのかと期待で輝くどんぐり眼からのプレッシャーを感じつつも、それを跳ね除けるべく一度軽く咳払いし、
力哉は虎太郎の肩や胸に落ちていた花弁を数枚集めた。
「…………うまく出来るかな」
 呟き、一枚を唇に当てる。その仕草に虎太郎は察したように目を見開き、そして黙って瞼を閉じた。
 力哉が息を吸う気配の数瞬後、高く澄んだ音が辺りに響く。
 呼吸に強弱をつけることで音に高低差を出し奏でられる音の群れに、ただ吹き抜ける風だけが歌を添える。
奏でることで花弁が裂けるたびに集めていた他の花弁で音色を紡ぎ、その音は一曲終えるまで止むことはなかった。
「……昔、よく父ちゃんが吹いてた曲だ」
 花笛が止むと、懐かしそうな声がぽつりと呟く。その声に力哉もゆっくりと目を開け無事演奏し終えた安堵感に息を吐くと、眼下には嬉しそうな笑顔が咲いていた。
「大魔界をやっつけた後、おじさんに教わっただろ。お前は全然出来なくって、鷹介と俺だけちゃんと吹けたんだよな」
「そうそう。鷹介の奴に、バイオリンじゃなくてこっちの方がよかったんじゃねぇかーなんて言ったっけ。そうだそうだ、思い出した。
あん時の鷹介の顔、おっもしろかったなー! オレ、ちっせぇ頃から父ちゃんがこれ吹いてくれるの好きでさ。でも自分じゃ吹けねぇんだよな」
「クラシックなんかは苦手なくせに、こういうのは好きなんだよな」
「にっしっし。意外だろー」 <> 愛のカタマリ 3/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:17:03 ID:TJq5eu6v0<>  でもお前が未だに吹けたほうが意外だったと笑う顔に、力哉の顔が得意げに笑む。誰かさんと違って正常な記憶力だからなと鼻で笑うと、
虎太郎はおどけた悪餓鬼の表情で口笛を吹いた。
「ホントは、去年の春に思い出してたんだけどな。でもその時にはもうお前の誕生日も過ぎてたから」
「別にオレの誕生日じゃなくても、やってくれりゃよかったのに」
「バカ。どうせだったらそういう特別な日にびっくりさせてやりたいと思うだろ」
「ひゅーう。力哉くんってばオレのこと愛しちゃってるーう」
「殴るぞ。ていうか約束。退け」
「いやん、力哉ってばこわぁい」
 茶化すように笑って、勢いをつけて起き上がる。唇の端を吊り上げて子供のように笑う顔に、力哉がまたひとつ苦い表情を浮かべた。
「先に告白してきたのはお前のクセに」
「おうよ!なんせ小学校のときから好きだったからな!中学になって若さが爆発しちまったぜい」
「そういう馬鹿な言い回しがお前らしいよ、まったく」
 軽く頭を撫でてやると、猫のように身を縮めてくすぐったそうに笑って見せる。
 中学一年の冬、いつものように遊ぶ目的で虎太郎が自分の部屋に泊まった日。一つしかない狭いベッドの上で、思い詰めた顔で告白されてキスの洗礼を受けたのが最初の始まり。
 その告白に思考がパニックを起こしたものの、それでも随分とあっさりと返答を返した自分の過去も大概だと心の中で自嘲した。
「お前なんて、ただのめんどくさい悪餓鬼だったんだけどなぁ」
 手はかかる厄介ごとは起こす悪戯はする我が儘は言う後始末を押し付ける。思い起こせば起こすほどに酷い悪餓鬼だったはずなのに、なにがどう化学反応を起こしたものか。
今は勿論のことだがその告白を受けた過去でさえ、今思い返せばどうやらそれなりにしっかりと、それすらも愛しく思っている始末。
 人生なにがどう転がるか分からないよなと呟かれた言葉に首を傾ぐ姿に、独り言だと説明してまた頭を撫でた。
「力哉」
「なんだ虎太郎」
「えっちしてぇ」
 潜めるでもない音量で吐き出された言葉に、思わず垂直に拳が降りる。
 脳天に振り下ろされた拳の痛みに声を上げて転がり回る虎太郎を無言で捕まえて、とりあえず桜の木の下に詰め寄った。 <> 愛のカタマリ 4/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:19:01 ID:TJq5eu6v0<> 「馬鹿力が自慢のレッドガンバーが、全力でオレの頭をへこませる気だった! 今!!」
「うっさい、ちょっと黙れ! ここがどこだと思ってる虎太郎……!」
「え。……うちんちの幼稚園の隅の桜の木の下……かな」
「そうだな? お前のおばさんがやってる幼稚園で、ここは外だな? 分かってるな!?」
「どうせ休みじゃーん?」
「外だって言ってんのが伝わんないのかお前の頭には……!!」
「いやぁ、だって塀あるし」
「幼稚園の塀は低いだろ考えてみろ! 立てば大人の顔は見えるくらいの高さしかないんだぞここの塀は!」
「じゃあ座ってやったらいいじゃん」
「道を歩いてる人から見えるかもしれないっていう思考は浮かばないのか……!」
「お? 見えるか? あー、なるほど。そりゃ駄目か」
 見られて勃つ趣味はねぇなぁと頭を掻く姿に、力哉の体から力が抜ける。頭を抱え込んだその様子に虎太郎は可笑しそうに笑い、やめるやめると手を振った。
「そんな、人生間違ったー死にてー! って言ってるようなカッコすんなよー。ちゃんと分かったから今のナシナシ。後で部屋帰ってからにするって。
だからそんかし、ベロちゅーして。今はそれで満足すっから。そんだけだったら座ってても出来るし、覗き込まれたりしない限り見えねーだろ?」
 お願いと手を合わせて首を傾ぐ姿に、肺の奥から溜息が出る。相変わらずこうと決めたらタダでは軌道修正させない奴だと小さく愚痴り、
一回だけだからなと念を押して、桜に凭れている虎太郎にまずは軽く接吻けた。
「んっ」
 吸い付くだけの接吻けのはずが、自ら率先して侵入してきた舌によっておもむろに深いものへと切り替わる。
その問答無用な積極性に困ったように頭を撫でては舌先を玩び強く吸い上げ、肩が微かに震えるのを確認して、力哉も舌を差し出した。
「っふ、は……」
 力の抜けた体は桜の木ではなく自分に寄りかかり、歯列をなぞれば投げ出された足が震えるのが分かる。
何度か唇を離して軽く接吻けるたびに、喘ぐように反らされた細首が目に痛かった。
「……虎太郎?」
 呼ぶと、欲しがるように唇を寄せてくる。塞がれたそれに大人しく応じてやると、虎太郎は縋るように抱きついた。 <> 愛のカタマリ 5/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:20:59 ID:TJq5eu6v0<>  その仕草に、つい手が細身の胸を弄る。
「ひゃう……っ!」
 跳ねた体に、思わず力哉の目が見開く。上気した頬で潤んだ瞳が、恨めしげに自分を睨みつけて唸っていた。
「しねぇって言ったの、力哉じゃん……!」
「……いや、まさかこんなにする気全開だとは思わなかったから、つい……」
 目を泳がせてバツの悪い言い訳を呟くも、恨めしげな目線は逸らされることなく、低い唸り声は次第に言葉に変換された。
「……知らねぇぞ、もうオレ知らねぇからな。本格的にシたくなったからなチクショウ……。部屋までなんて待たねぇぞ」
「いやいや、こら、待て、虎太郎」
「母ちゃんには悪いけど!! 幼稚園の教室入るぞ力哉!!」
 反論の間もなく強引に手を牽かれて園庭を抜け、前のめりになりそうな勢いで教室に押し込められる。体勢を整えようと慌ててバランスを取るも、
体重をかけるように抱きついてきた虎太郎にそのまま押し倒され、力哉はしたたかに後頭部を打った。
「っつ……!!ちょ、おい、虎太……!」
「無理。待たね」
 言うが早いか、唇を塞がれる。舌を絡めながら擦り寄ってくる体躯が、普段微塵も見せない色香を孕んで誘いかけた。
 虎太郎の項から流れる長い髪が頬に触れ、冷たい感触で撫で上げる。息継ぎもままならない舌の動きに薄く目を開けると、苦しげに眉間を寄せながらも必死に求める表情が目に映った。
 眩暈のするような誘惑に抗えず、力哉の腕が虎太郎を抱き締める。
「……久し振りにこういうお前もいいんだけどさ、なんなんだよホント。いきなりすぎるだろ」
「昔のこと思い出してるお前の顔になんかトキメキました。そんだけ。分かったら、早く」
 頼むからと続いた言葉に、力哉の顔が紅潮する。昂って誇張したそれを力哉の太腿に押し当てて、細い腰が揺れていた。
「……お前のそういう声は、ホント、腰にクる……」
 子供の頃の声をそのまま低くした声色がまさかこんなに艶を魅せるとは思ってもいなかった。そう独り言のように呟いて、接吻けとともに下腹をまさぐってやる。
すると、離れた唇の隙間で嬉しそうな溜息が漏れた。
「力哉の手で触られるの、好き」
 目を細めて笑う表情と声音が、ぞくぞくと背中を駆け上がる誘惑に換えて理性を蝕んでいく。 <> 愛のカタマリ 6/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:22:54 ID:TJq5eu6v0<>  纏められた髪を解く仕草も、自ら衣服を脱ぎ捨てる姿も、見慣れているはずの光景が熱量に浮かされて淫靡に見えた。
「力哉、一回抜いて。マジ無理」
 そう言って、陸上部で鍛えられ引き締まった足を恥ずかしげもなく眼前で開く。羞恥の感情をどこかに置き忘れてきたかと思えるほど
あられもない誘い方と潤んだ瞳と荒い息で訴えかける言葉に、力哉はもはやここまでと腹を決め、今現在己が身を置く場所のことを意識から追いやり、
頬に接吻けて虎太郎の足の間に顔を埋めた。
「ふ……っ!」
 指先と舌先で玩び、音を立てて吸い上げる。既にじんわりと溢れていた透明な液体を指で絡め取り、時折痙攣したように震える太腿を抱え込んでその奥へと指を伸ばした。
「ぅあ!」
 入り口をやんわりと爪先でなぞられ、ぞくりと駆け上がる震えに虎太郎の体が跳ねる。口に含んだまま上目遣いに表情を窺うと、口元に手を宛がい声を抑えようと
小さく震えていた。
「声、聞かせろよ。こういうときのお前の声好きなんだから」
「なに、エロい、から?」
「…………身も蓋もないな」
 悔しいから正解は言わないと呟くと、嬉しそうに腹が揺れる。そこに愛しさを込めて軽く舌を這わせ、もう一度モノを口に含み強く吸い上げながら入り口を押し解すと、
高い声が漏れ落ちた。
「や……! 力哉、それ、ひきょ……!」
 所在無く彷徨っていた手が、足の間に埋もれる力哉の髪を力弱く掴んで僅かに震える。抱えた太腿が緊張で震え爪先が床を掻くのを確認すると、
口元だけの笑みを作り、力哉はそこに軽く歯を立てた。
「ひぁう……!!」
 背筋が撓り、びくびくと痙攣が細い体を襲う。断続に溢れる白濁を飲み干し、僅か溢れたものを舐めとって、力なく横たわった虎太郎に接吻けた。
 滲んだ汗が、肌に馴染む。
「少しはすっきりしたか?」
 額や髪に接吻けを繰り返しながら話しかけると、閉じていた目が薄く開く。一瞬力哉の姿を探して彷徨うも、すぐ傍らに見つけて嬉しそうに笑んだ。 <> 愛のカタマリ 7/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:24:58 ID:TJq5eu6v0<> 「ん。でも、やっぱ足りね」
 後ろで感じるとかもうこれ女みてぇと笑う言葉に、反応も出来ずただ苦笑いだけが浮かぶ。続けていいんだなと確認した言葉に、言葉ではなく笑った顔が肯定を告げた。
 抱き寄せた体に指を這わせ、双丘に手を伸ばす。頬を摺り寄せる虎太郎に笑いかけ、薄い胸を舐め上げた。
「ん……っ! り、きや、いっつも思うんだけど、オレ、女じゃないんだからさぁ」
「分かってるんだけど、なんか習性みたいなもんで気がついたらやってて……」
 嫌ならやめるように善処すると囁くと、そこまで嫌なわけじゃないと答えが返る。目を合わせて笑い合い舌を絡めると、力哉の指先が先程軽く弄っていた場所を僅かに侵した。
「ぅんっ! や、ちょ、きっつい……!」
 何度経験してもなかなか慣れることのない最初の違和感に、虎太郎の喉が反り返る。思わずそこに軽く歯を立てて舐め上げ、開いている腕で痩身を抱き締めた。
「もうちょっと解すから、足開いて」
「ん……」
 おとなしく開かれた足の間から、ゆっくりと指を押し進める。本来挿入口ではない場所から入れる必要のないものを毎回入れられるのだから、
体には酷い負担がかかっているのではないかと毎回思う。けれど押し寄せる暖かい壁を何度も押し返すたび、虎太郎の表情は苦痛から言いようのない表情に色を代えた。
「っ、あ、あ、力、哉ぁ……!も、慣、れて、き、ぅあう……!!」
 押し返し、推し進め、感覚で覚えた部分に指が当たる。途端、虎太郎の目が見開き涙が落ちた。
「ぅあ……!! そこ……!!」
「知ってる。もう一回イクか?」
「ヤ、だ、でも、そこシて……!!」
 相変わらずとんでもないセリフを臆面もなく言ってくれる。
 内心苦笑しながらもそこを繰り返し弄り、もはや声もなく快楽に震える虎太郎の体に唇を落とす。汗で濡れた肌がひたりと縋り付き、時折僅かに力哉の名前を繰り返し呼んだ。
「指抜くぞ」
 もどかしく頷く仕草を確認し、今度は引き抜くのを邪魔するように締め付ける壁から抜き去った。
「なぁ、力哉の」
「分かってるから」
 艶っぽい声と息遣いであれだけ煽られたらこっちだってもう限界だと小さく愚痴り、恥ずかしいほどに昂った自身を宛がい、一気に侵入する。 <> 愛のカタマリ 8/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:26:56 ID:TJq5eu6v0<>  さすがに指とは違う質量に、虎太郎の体が震えた。
「ひぁ……!! ふ、ぅあ、んっ……!! や、動いて……!!」
「お前な……!」
 聞いてるこっちが恥ずかしいんだよと内心で叫び、紅潮する頬に酷い熱を感じながらも抜き差しを繰り返す。細腰を捕まえた腕に縋る指が、力なく震えながらしがみついていた。
「あ、あ、あ、あ……!! だめ、そこ、も……!!」
「もうちょい、我慢しろ……!」
「ヤぁ、だ、力哉、も、無理ぃ……!」
 あぁ、ホントにこいつのこういう声は腰にクる。
 駆け上がる怖気にも似たモノに苦々しく舌打ちし、力の限り抱き締めて僅かに時をずらして互いに果てる。
虚脱感と言い様のない満足感、それに深く息を吐き虎太郎の額に額を合わせて体をかすかに動かすと、溢れて床を汚した白濁が、足を濡らした。

 ◇  ◇  ◇

「あー!きーもちよかったーぁ!!」
 休憩を挟んだ虎太郎は、やけに元気で且つ上機嫌だった。
 全裸の状態で床に胡坐を掻き、清々しいまでの笑顔で伸びをする。傍らにはオルガン脇に置かれていたウェットティッシュを備え、まるでタオルよろしく全身を軽く清めていた。
「…………おばさんに申し訳ない…………」
「だーいじょーぶだって。ちゃんと拭いて掃除すりゃあバレないバレない。なんなら消臭スプレーも撒き散らすから。心配性だなぁ力哉はー」
「いや、バレるとかバレないとかの話じゃなくて。場所とかそういうものに申し訳なさがだな」
 自分達も過去に通っていたこの場所は、名称そのままにいわゆる幼児と呼ばれる子供達が様々なものを学び取っていく場所であって、決してこんなことをしていい場所じゃない。
 雰囲気と気分に流されてしまった自己嫌悪を感じながら深い溜息を吐く。その姿を虎太郎が覗き込み、項垂れた頬に接吻けた。
「ホントに大丈夫だって。今うちの幼稚園も子供減っててさ、三年位前から、ここともう一個の教室は使ってねぇんだ。だから机とか椅子とか脇に退ける手間もなかったんじゃん?
それにさ、マジで嬉しかったし気持ちよかった。ありがとな、力哉」
「……どういたしまして」 <> 愛のカタマリ 9/9<>sage<>2009/11/08(日) 18:29:06 ID:TJq5eu6v0<>  昔からどんな我が儘を言われて怒っても、こんな顔で感謝されると許すしかない自分がいる。
 自己嫌悪は、胸の内に秘めておこうと決めた。
「力哉」
「んー?」
「今日も、明日も、明後日も、来年もそのまた次の年も、大好きだからな!」
「…………お前が覚えてたらな」
「ひっでぇ!」
 機嫌よく笑う声に笑みを返し、そういえばプレゼントと一緒に言うはずだった言葉をまだ言えていなかったと思い出す。虎太郎と小さく呼びかけ、首を傾げたところを抱き締めた。
「誕生日おめでとうな」
「……っ! おう!」
 満面で笑った虎太郎が、また全体重をかけて抱きついてくる。それをやれやれと受け止めて、恐らくは明日も変わらぬ日常を思い、ほんの小さく苦笑した。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


黄は思いっきり誘い受けがいいと思っている。
そしてみんなスパロボで再燃して、このカプ増えて欲しいなと祈っている。
最初、改行が変なことになってて申し訳ない。今後投下することがあれば気をつける。
お目汚しさんでした! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/08(日) 19:56:08 ID:IOTPDrie0<> >>505
GJです!!待っててよかったー
自分も上ノリ氏の舞台を空澤氏が見に行ったということで
(しかも具ー単メンバーw)まだ三角関係が続いてるのかwと
萌えてたところなので嬉しいです。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/09(月) 00:22:46 ID:oiwLVmOoO<> >>505
GJ!!
自分も待ってました!この二人可愛いなあ
それにしても、実際にあったことと言われたら信じそうなリアルさだw <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 0/7<>sage<>2009/11/09(月) 04:32:54 ID:8LOa9akfO<> ※生注意※
オサーン盤
紫×赤…?
去年の冬くらいを想定しております


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

<> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 1/7<>sage<>2009/11/09(月) 04:34:53 ID:8LOa9akfO<> 陽射しにわずかな温もりが感じられる冬晴れの正午。
壱朗は愛車を走らせ、叫の自宅へと向かっていた。
昨夜は飲みに出ると言っていた叫のこと、今頃は二度寝をむさぼっているかもしれない。
自宅を出る前にメールを一通送っておいたが、返信はなかった。

用事がなければ休日は外に出たがらない壱朗が、珍しく朝から起きだし、上機嫌でステアリングを握っている。
主の機嫌に呼応するように、愛車は渇いた排気音を澄んだ空に響かせながら、軽やかに国産セダンを追い越した。

数日前にさかのぼる。
自分では大分慣れてきたと思っているパソコンで暇つぶしに映画のタイトルを検索していたところ、たまたまリバイバルで上映している映画館を見つけた。
もう一度観たいと思っていたそれは古いイタリアの映画で、DVDにはなっていない。
いつもはレンタルしてきたDVDを家でまったりと観るタイプだが、たまには映画館で観るのもいいかと思い、叫に声をかけたのだ。
たった二週間しか上映されていないマイナーな映画だが、美しくも哀しい、愛の映画だった。
映画で展開される季節は冬。
寒々とした冬の北イタリアに想いを馳せるには、ちょうどいい季節だった。

ツアーの日程が決まる頃には、お互い忙しくなる。
アルバムを後回しにしてしまった以上ツアーに集中すべきだが、自宅に引きこもっていれば頭を占拠するのは構想すら出てこない曲もどきばかり。
まだいくらか余裕があるとはいえ、自らの作曲ペースを考えるとそうのんびりともしていられない。
どこに向かうべきなのかすら見えない現状で焦ってみてもろくなことにはならないが、ひとりきりの部屋にこもる静寂は重く息苦しい。

そこに降って湧いたようなタイミングで取れた休暇だ。
しかもそろって終日オフ。
気分転換にはもってこいに思えた。

叫の自宅前に着き、車を路肩に停める。
ハザードを点滅させて助手席に放り投げていた携帯電話を手にしたところで、叫から電話がかかってきた。
「おはよ、叫ちゃん。よお眠れた?」
電話越しに聞こえる叫の声はまだ眠さを残しているように間延びし、うんとかああとか唸ったあと、ばさりと衣擦れの音が聞こえた。
予想通り、二度寝にしけこんでいたらしい。
『……ごめん、ちょっと時間かかる。上がってきて』
「了解」 <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 2/7<>sage<>2009/11/09(月) 04:37:59 ID:8LOa9akfO<> 壱朗の返事を聞くか聞かずかくらいに電話は切れた。
すぐ近くのコインパーキングに車を入れて車外に出ると、ビル風が首筋を舐めていく。
冬晴れの日であっても、暖房の効いた車内との温度差は激しい。
コートの襟を立てて身をすくめ、壱朗はエントランスへと急いだ。

自動ドアをくぐれば風がない分刺すような寒さは緩和され、ふっと息をつく。
慣れた手つきで暗証番号を入力してロックを解除し、エレベーターに乗り込む。
傍から見たら住人のひとりとしか見えない自然さは、それだけ壱朗がこのマンションに通い慣れている証だった。

ちーんと甲高くもいささか間が抜けた音を立てて、エレベーターが叫の住むフロアに到着した。
ドアが開くと同時に舞い込む突風にまた身をすくめながら、キーケースから鍵をより分ける。
車や自宅の鍵に混じってぶら下がっているそれは、名目上では叫から預かっていることになっている、叫の自宅の鍵だった。
酔っ払ったときに自分で鍵を探すのが面倒だから。
それが鍵を預けた名目だが、使用頻度としては叫が泥酔している状態で使うよりも、素面かほろ酔い程度のときが圧倒的に多い。

インターフォンを一回だけ鳴らし、家主の返事は聞かずに開錠する。
氷のように冷えたドアノブを指先で回して中に入ると、暖かな室内と珈琲の香りが迎え入れてくれた。
客が来る気配に気づいていたのか、玄関にはちょこんとお座りしているロングコートチワワが一頭。
叫が飼っている三頭のうちでもこの一頭が一番人懐っこく、客人にも物怖じしない。
相手が壱朗であっても例外でなく、まるで自分の友達が来たかのように、尻尾を振って喜んでいる。
「おはようさん。お邪魔するで」
身をかがめて小さな頭を一撫でし、部屋に上がる。
勝手知ったる叫の家。
足元にまとわりつく小さな犬を踏まないように、リビングに向かった。
コートを脱いでソファーに腰を下ろすと、さっぱりした顔の叫が顔を出す。
「何時まで飲んどったん?」
濡れて滴が垂れる頭を無造作に拭きつつ、そのままキッチンに向かう背中に声をかけると、小さく首をかしげた顔が壱朗を振り返った。
「朝日が昇る前には帰ったよ?」
朝日が昇る前と言っても、冬場は六時でもまだ暗い。
答えをはぐらかしたところを見ると、覚えていないか、答えられないかのどちらかだ。 <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 3/7<>sage<>2009/11/09(月) 04:40:13 ID:8LOa9akfO<> 久しぶりに会う友人だと言っていたから、大方盛り上がってついずるずると飲んでいたのだろう。
「ええ歳して、どこにそんな体力あんねん。なあ?」
足元で大人しくお座りしている犬に小声で問いかける。
感心半分、呆れ半分のぼやきも、叫の耳はしっかりと拾っていたらしい。
何か言ったー?と声が飛んできた。
「何も言うてませーん」
振り返らずに返事を返すと、目の前のローテーブルにマグカップが置かれた。
小さく波を立てる琥珀の液体は、この部屋に上がったときから漂っていた香りの源、珈琲だ。
シャワーを浴びる前にサイフォンをセットしておいてくれたのだろう。
「おおきに」
「すぐ準備するから、ちょっと待ってて」
すぐに踵を返す華奢な背中を見送り、ほのかに湯気をたてるマグカップを手に取った。
冷えた指先にじわりと温もりが伝播し、誘われるままに両の手のひらでゆるく包み込む。
唇を寄せて吹き冷ましていれば、足元から小さな重みを感じた。
視線を下ろせば、大人しくお座りしていた犬が精一杯背伸びして乗りかかっている。
どうやらマグカップの中身が気になるらしい。
壱朗が自身の腿を軽く叩くと、犬は軽々と跳躍してソファーに上がり、マグカップに顔を寄せては匂いを嗅ごうと首を伸ばしている。
「お前の飲むもんちゃうで」
その必死さに笑みを漏らしながらもうっかりこぼして火傷させないようにマグカップを遠ざけ、片手に収まる頭をゆっくりと撫でた。

小動物は多頭飼いすると動物同士で群れると言うが、それは犬にも当てはまるらしく、叫が飼っている他の二頭も例外ではなかった。
ただ、三頭の中で一番長く飼っているこの犬だけは何故か人と群れている方が楽しいらしい。
人と同じ物を食べたがり、人と同じことをしたがる。
リビングでテレビを見ていればその足元で丸くなるし、寝室に行けば一緒に寝ようとしてベッドに潜り込む、らしい。
いつだったか、風呂やトイレにもついてこようとするから困る、と、叫が笑いながら話していたのを耳にした覚えが壱朗にあった。

つまるところこの犬は、人生の半分以上にもなる長い付き合いの壱朗ですら知らないような、ごく限られた叫のプライベートな顔を知っている訳だ。

大抵のことは壱朗だって知っている。
むしろ、知らない顔の方が少ないくらいだ。 <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 4/7<>sage<>2009/11/09(月) 04:41:37 ID:8LOa9akfO<> 唄っている顔。
歌詞を考えている顔。
ライブ前の集中している顔。
ステージで獰猛に挑発する顔。
機材トラブルに苛立っている顔。
眉間に皺を寄せて怒っている顔。
思うように歌えなくて悔しげな顔。
厄介事を持ち込まれて断れない困った顔。
酔って力の抜けた顔。
目尻を下げて笑っている顔。
後輩から慕われて照れながらも嬉しそうな顔。
酒の席での失態を翌日あちこちに謝っている顔。
スポットライトを浴びているときとはまた違う、ベッドの上でしか見せない妖艶な顔。
獲物を前にした獣のように舌なめずりしてみせる顔。
追い上げられているのに追い詰めている、限界が近い顔。
無防備な寝顔。

様々な顔が浮かんでくるが、思えば二十余年、哀切な泣き顔だけは見せられたことがない。
感動ものの映画などを観ているときは別として、何かが哀しいだとか、寂しいだとか、身の内から湧出する感情の発露としての涙を、誰かの前で見せたことがあるのだろうか。

若い時分にはあった気がする。
担当していたラジオ番組が降板となり、その最終回だったかに声を詰まらせていたと、後になって耳にした。

いつの頃からだろう。
人前で涙を見せなくなったのは。

決して感情の振れ幅が小さくなったとか、感受性の衰退などではない。
仮にそうならば、叫の性格からして唄を生み出す仕事などとっくに引退している。

酒で流し込むことを覚えたのだろうか。
あの薄い身体に、苦痛も悲哀も懐古も後悔も全て一緒くたにして胃の腑に流し込み、酒精で溶解することのない汚濁をふつふつと蓄積させているのだろうか。
不惑を過ぎ、同胞を幾人か見送り、齢を重ねて覚えた呑み方がそれだとしたら。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/09(月) 09:25:41 ID:ZU3AVIdJ0<> 支援 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2009/11/09(月) 09:41:33 ID:m+C3iDcjP<> 支援しておきますね <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 5/7<>sage<>2009/11/09(月) 12:41:58 ID:8LOa9akfO<> 「哀しすぎるやんなあ?」
健気にぱたりぱたりと尻尾を振りつつもまだマグカップに興味を奪われているらしい犬の顔を覗き込むと、何が?とでも言いたげに首をかしげる。
温くなった珈琲に口をつければ、香ばしくも淡い苦味が舌を刺した。

誰にでも優しくて情に厚くて、頼られると嫌と言えなくて、意地っ張りで強情で頑固で負けず嫌いで、そのくせ甘えんぼで寂しがりやで。
自身がそうであるように、叫にも独りになりたい夜くらいあるのは、壱朗とてわかっている。
誰かの温もりを求めながら人と関わる気分になれず、その胸に去来するのは言いようのない茫漠とした寂寥感。
一匹狼を気取って自己陶酔する趣味でもあればまだ救われるそんな夜、物言わぬ犬を相手に、叫は何を思うのか。
「お前には見せとんのかなあ、叫ちゃんも」
犬が届かないようローテーブルの真ん中にマグカップを押しやり、片手で掴めるほど軽い身体をそっと抱き上げた。
腿の上に座るよう促せば大人しく従い、きらきらと輝かせた目でひたと壱朗を見つめる。
その背中に手を滑らせれば長く美しい毛並みがさらりと指の間を流れた。
この犬が主人からどれだけ愛されているのか、手触りのよい毛並みだけでも優に窺える。
膝の上にある小さな生き物をうっかりと羨みそうになり、壱朗はかぶりを振った。
らしくない。
自嘲は胸の中で留め、惑う思惟を頭の片隅に追いやった。
自身しか見せられていない、自身しか知らない顔はきっといくらでもある。
それが二十余年の道程が培った絆というものだ。
そこに嘘も欺瞞もない。

「……ああ、でもさすがにトイレは見せてもろたことないなあ。お前はあるん?」
風呂にもトイレにもついてくると言っていた叫の言葉がまた頭を過ぎる。
ふわふわね毛束ごと両耳をつまみ軽く引っ張って目を覗き込んでも、物言わぬ犬はやはり物言わぬ存在だった。

今晩辺り、盛大に酒を飲ませてここへ戻り、トイレに向かったところで自分も無理やり入ってしまおうか。
そんな不埒な誘惑が頭をもたげる。
当然嫌がるだろうが、足がふらつくほど飲ませてしまえば、それは可能なことに思えた。
アルコールの利尿作用は大きい。 <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 6/7<>sage<>2009/11/09(月) 12:44:44 ID:8LOa9akfO<> ついでに言えば、羞恥心も薄れる上に、我慢がきかなくなる。
対する自分は車で来ている。
昨今の取り締まりの厳しさを考えると、飲める訳がない。
よし、完璧。
「何ニヤニヤしてんの?」
「うぉわっ」
横から顔を出した叫から顔を覗き込まれ、壱朗は驚いて身体をのけ反らせる。
急に動かれて安定を失った犬は慌ててソファーへと避難した。
見れば、すっかり身支度を整えた叫が不審げな顔を壱朗に向けている。
「に、ニヤニヤなんてしてへんで!」
「いや、してたじゃん」
多少上ずった声で反論したところで、叫の目に浮かんだ不審げな色合いは薄まることがない。
冷静な返しと共に、また変なことでも考えていたんだろうと、その目が語っている。
「ま、いいけど。お待たせ。行こうか」
ダウンジャケットに袖を通しながら、叫が壱朗を促す。
深く追及されなかったことに内心安堵を覚えながら、壱朗はマグカップを手に取り中身を干した。
コートを羽織って玄関へ向かう途中でシンクにマグカップを下げ、叫の背中を追う。
その足元にじゃれつくように、犬がふたりを追ってきた。
一緒に出かける気でいるのか、玄関で靴を履いている間も小さな尻尾を左右に大きく振って、精一杯自己主張している。
その身体を叫が視線の高さまで抱き上げた。
正面から向き合い、大きな目をひたと見つめる。
「行ってくる。お留守番、よろしくね」
そのまますっと顔を寄せ、鼻先に軽くキスをした。
されるがままにキスを受けていた犬は、お返しのように叫の唇をぺろりとひと舐めする。
一度肩に前脚を乗せてきゅうと抱きしめ、床に下ろそうとした叫の手をすいと遮ったのは壱朗だった。
無言のまま指先でちょいちょいと差し招く。
犬を寄越せというジェスチャーだと判断した叫は、広げられた手に小さな身体を預けた。
さて何をするのかと眺めていたら、壱朗は叫と同じように犬を抱え、その鼻先に軽くキスをひとつ。
嫌がる素振りも見せずに大人しくしていた犬を床に下ろしたところで、叫が口を開いた。
「何してんの?」
「…行ってきますのチュー」
苦しい言い訳にしか聞こえない一言を吐いてそっぽを向いた壱朗に、叫のため息がずしりと重くのしかかった。 <> 物言わぬ存在におしゃべりな犬 7/7<>sage<>2009/11/09(月) 12:49:08 ID:8LOa9akfO<> 意を解さない犬だけが足元でぱたぱたと尻尾を振っているのが痛々しさに拍車をかけている。
「壱朗」
小さな呼びかけに非難がましさもなければ呆れた音色音も混じっていないのを確かめて、壱朗はちろりと横目で叫を窺う。
叫は自分の方を向こうとしない壱朗の頭に手を回し、後ろ襟をぐいと掴んで引き寄せ、その鼻先をぺろりと舐め上げた。
何事もなかったようにすいと離れた叫に対し、驚いてちょっと目を見開いた壱朗は、すぐに唇を尖らせる。
「ここにはしてくれへんの?」
自身の唇を指してキスをせがむその口調がまるで子供のようで思わず吹き出してしまった叫は、引き寄せた際に乱れた後ろ襟を直してやりながら、口角を吊り上げる。
「夜までおあずけ」
人の悪い笑みを浮かべながらも言外に飴をちらつかせる叫に、壱朗は渋々諦めた。
ここで機嫌を損ねさせるのは得策ではない。
夜には楽しくもめくるめくあれこれが待っている。

キーケースを片手に玄関を開けた叫に続き、壱朗も外に出る。
高層階特有のビル風がふたりの間を駆けていくが、遠くに見える空は冬晴れの名に相応しい、突き抜けた青だった。
いい一日になる。
根拠もなくそんなことを思い、壱朗は浮かれた足取りで叫の隣に並んだ。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

規制に引っ掛かって投下に時間がかかりましたことをお詫び申し上げます
支援してくださった方、ありがとうございました

京言葉わかりませんでしたすみません
あれこれ捏造もすみません
教えて下さった情報も活かせずすみません
ついでに三頭目がギターを弾けるでっかくて真っ黒くてエロいわんこじゃなくてすみません
つーかこれ紫×赤じゃなくて赤×紫じゃね?表記に偽りありじゃね?な感じですみません
紫が開けてはいけない扉を開けてしまいそうなんで続きは自重します
次こそはヘタレてない紫をご覧にいれたい、そんな遠征数日前の正午
お前書きたかったのは最後のとこだけだろと思った姐さん、ご明察です <> おやすみバイバイ、さようなら 0/6<>sage<>2009/11/09(月) 16:23:00 ID:4Cs2X+Vl0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  オリジナルで擬人化。若干電波
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  あんまり801っぽくないかも
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ハツトウコウデドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> おやすみバイバイ、さようなら 1/6<>sage<>2009/11/09(月) 16:24:10 ID:4Cs2X+Vl0<> 久しぶりに夢を見た。
我が家のワンルームのベッドの上で、いつものように自分は体育座りをしていた。
「夢ならさあ、もうちょっとこう、破天荒な方が楽しいじゃないの」
独り言を言っても誰も聞いていない。
なぜなら今は夢の中だからだ。

「そうなの?」
目線の下には知らない男が居た。
その男も律儀に体育座りをしている。
実に奇妙だ。
まあ、たまにはこんな夢も悪くはない。

「だってさ、こういう光景って起きてても毎日見られるんだぜ?
 せめて可愛いオネーチャンとかがエプロン着てご飯だよーって言ってくれた方がまだ楽しいのに」
「そういうものなの?」
「そういうもんだよ」
知らない男はにこにこしている。 <> おやすみバイバイ、さようなら 2/6<>sage<>2009/11/09(月) 16:25:11 ID:4Cs2X+Vl0<> 「お前誰なの?」
「ん?」
「いや、一応聞いた方が楽しいかなって。なんかそんな気がして」
「目覚まし時計だよ」
「目覚まし時計?」
「うん」
「それ結構面白いな」
目覚まし時計が人間の男でしかも体育座り。なんて荒唐無稽な夢なんだ。
「で、その目覚まし時計さんはなんで体育座りなんだよ?」
「もう立てないんだ」
「へえ」
なんだか使命感に駆られたように自分は会話を続ける。
それ以外の選択肢なんか見つからないみたいに。

「どうして立てないの?」
「壊れちゃった」
「どこが?」
「中の小さな歯車が何個かと、足の方が」
「あー、この前落としちゃったからな」
「まったくひどいよね。普通にしてたらあと2年は動けたのに」
「そうだな。まったくひどい話だ」
「謝ってよ」
「ごめん」
奇妙な会話だ。
目が覚めているときの自分なら、間違いなくおかしい部類に入れる会話。
だけどこれは夢。あくまで夢なのだ。 <>