風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:52:02 ID:zeCRUW5c<> モララーの秘蔵している映像を鑑賞する場です。
なにしろモララーのコレクションなので何でもありに決まっています。


   |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   すごいのが入ったんだけど‥‥みる?
   |[][][]__\______  ___________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  |      |/
    |[][][][][][][]//||  |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||  | ( ・∀・ ) _
   |[][][][][][][][]_|| / (    つ| |
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    | | |  ̄
                    (__)_)


モララーのビデオ棚in801板13
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1137146223/
 ローカルルールの説明、およびテンプレは>>2-6のあたり

保管サイト(お絵描き掲示板・うpろだ有)
http://moravideo.s57.xrea.com/

<>モララーのビデオ棚in801板14 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:52:38 ID:zeCRUW5c<> 1.ノンジャンルのネタ発表の場です
書き込むネタはノンジャンル。
スレ違い/板違い/鯖違い/メディア違い問わず、ネタであれば何でもあり。
たとえばこんなときにどうぞ。

  どこに投稿すればいいのかわからない‥‥
   ・ネタを作ってはみたが投稿すべき既存のスレが無い。
   ・投稿すべきスレがあるのかもしれないけど、よくわかんない。
   ・クロスオーバーのつもりなのだが各スレ住人にウザがられた。
   ・みんなの反応を見たうえでスレ立てるべきかどうか判断したい。

  投稿すべきスレはあるが‥‥
   ・キャラの設定を間違えて作ったので本スレに貼れない。
   ・種々の理由で、投稿すると本スレが荒れそう。
   ・本スレに貼る前にあらかじめ他人の反応を知って推敲したい。
   ・本スレは終了した。でも続編を自分で立てる気がない。

  ヘタレなので‥‥
   ・我ながらつまらないネタなので貼るのが躊躇われる。
   ・作り出してはみたものの途中で挫折した。誰か続きおながい!

迷ったときはこのスレに投稿してね。
ただ、本来投稿すべきと思うスレがある場合は
それがどのスレで(ヒントで充分)、しかしなぜこのスレに貼ったのか、
という簡単なコメントがあるとよい。無いとカオスすぎるからね。

ナマモノは伏せ字か当て字を推奨。
それ以外は該当スレのローカルルールに沿うか、自己判断で。

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:53:18 ID:zeCRUW5c<> 2.ネタ以外の書き込みは厳禁!
つまりこのスレの書き込みは全てがネタ。
ストーリーAAであろうが一発ネタであろうが
一見退屈な感想レスに見えようが
コピペの練習・煽り・議論レスに見えようが、
それらは全てネタ。
ネタにマジレスはカコワルイぞ。
そしてネタ提供者にはできるだけ感謝しよう。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ネタの体裁をとっていないラッシュフィルムは
  | いずれ僕が編集して1本のネタにするかもね!
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                               | | [][] PAUSE
                ∧_∧         | |
          ┌┬―( ・∀・ )┐ ピッ      | |
          | |,,  (    つ◇       | |
          | ||―(_ ┐┐―||        |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:54:30 ID:zeCRUW5c<> 3.ネタはネタ用テンプレで囲うのがベター。
別に義務ではないけどね。
とりあえず用意したテンプレ。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  きっと楽しんでもらえるよ。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヒトリデコソーリミルヨ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:55:06 ID:zeCRUW5c<>  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 僕のコレクションに含まれてるのは、ざっと挙げただけでも
 |
 | ・映画、Vシネマ、OVA、エロビデオとかの一般向けビデオ
 | ・僕が録画した(またはリアルタイムな)TV放送
 | ・裏モノ、盗撮などのおおっぴらに公開できない映像
 | ・個人が撮影した退屈な記録映像、単なるメモ
 | ・紙メディアからスキャニングによって電子化された画像
 | ・煽りや荒らしコピペのサンプル映像
 | ・意味不明、出所不明な映像の切れ端
 \___  _____________________
       |/
     ∧_∧
 _ ( ・∀・ )
 |l8|と     つ◎
  ̄ | | |
    (__)_)
       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | 媒体も
 | 8mmフィルム、VCR、LD、ビデオCD、DVD、‥‥などなど
 | 古今東西のあらゆるメディアを網羅してるよ。
 \_________________________

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:55:40 ID:zeCRUW5c<> 携帯用区切りAA

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

中略

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

中略

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 09:57:20 ID:zeCRUW5c<>  |__[][][][]/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | ̄ ̄ ̄|   じゃ、そろそろ楽しもうか。
   |[][][]__\______  _________
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || |       |/
    |[][][][][][][]//|| |  ∧_∧
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ || | ( ・∀・ )
   |[][][][][][][][]_||/ (     )
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   | | |
              (__)_)

<> 1/3<>sage<>2006/02/13(月) 10:25:00 ID:whNC22Ar<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )またアカキ"とナンコ"ウだよ
前スレ>28-31の続きっぽいよ


 アカキ"は足を伸ばし、親指でナンコ"ウの喉もとを軽く押さえつけた。そのまま、
ゆっくりとした動きで胸をたどり腹をたどる。鳩尾のあたりに来たところで、急に押さ
える力を強めた。ナンコ"ウは息を詰まらせた。
 そんな、ナンコ"ウの苦しげな表情には注意を向けず、アカキ"はくわえていた煙草を口
から離し、煙を吐いた。
 体を大の字に横たえたナンコ"ウは、ぼんやりとした目でその煙を見つめた。アカキ"の
目が自分に向いているのを知っているから、そちらを見ることはできない。
 かわりに、力なく投げ出していた腕を持ち上げて、アカキ"の右腕を掴む。太い骨格
で作られた腕だということが分かる。しかし6年前に掴んだのは、子供の細い腕
だったはずだ。
 ナンコ"ウの手は、煙草を挟んでいるアカキ"の指を撫で、そっと包んだ。そして煙草を
抜き取ると、自分の口に運ぶ。
 アカキ"は、ナンコ"ウが自分の煙草を吸う様子をじっと見ている。煙草から灰が落ちると
ころも、全て見ている。
 「灰が落ちたぜ、ナンコ"ウさん。時間切れだ」
 「ああ・・・・・・」 <> 2/3<>sage<>2006/02/13(月) 10:26:22 ID:whNC22Ar<>  答えるナンコ"ウの声はかすれていた。そのうえ無様にも、少し震えていた。
 アカキ"の右足がシャツの裾から入ってきた。足の指がナンコ"ウの肌をこすりあげ、撫
でさする。
 更に奥まで足を突っ込ませると、やがて胸の頂に触れた。微細な感触に、さすが
にナンコ"ウは眉根を寄せた。アカキ"の指は、しつこくシャツの中を動きまわっている。
 「アカキ"、待て。待ってくれ」
 たまらずナンコ"ウは声を上げた。
 「どうしたの」
 「だから、こういうことは。その・・・」
 「したくない?」
 「・・・はっきり言えば、そういうことに、なる」
 「ふーん?」
 するするとアカキ"の足が後退していく。ナンコ"ウの肌が、一気に冷えていった。
 アカキ"はナンコ"ウの持っていた煙草を取り返すと、今度は自分がくわえた。ナンコ"ウは、
アカキ"のズボンの裾を握り締め、搾り出すように言った。
 「お前が、俺なんかとこんなことしていいわけないだろう」
 さっきと同じように、アカキ"は何も言わず、ナンコ"ウの顔を見つめている。
 (俺はアカキ"の目にどう映っているんだ)
 視線の重さに押し潰されそうになりながら、ナンコ"ウはなおも言った。
 「怖いんだ、俺は怖いんだよ、アカキ"。このうえお前とどうにかなっちまったら、 <> 2/3<>sage<>2006/02/13(月) 10:28:00 ID:whNC22Ar<> 俺はこれから先いったいどうすればいいんだ・・・!」
 ナンコ"ウは、ようやくアカキ"の目を見た。失望も怒りもない、静かな目だ。
 「・・・仕方ねえ人だな・・・」
 アカキ"は煙草を口から離し、ナンコ"ウにくわえさせた。自由になった手を畳につくと、
姿勢を変えた。ナンコ"ウに覆い被さるように乗り上げ、首筋に顔をうずめる。腕を回し、
ナンコ"ウの体を力をこめて抱いた。
 「ナンコ"ウさんがただ怖いなら、連れて行ってあげるさ」
 「ああ。でも違うんだ」
 「そうだね」
 ナンコ"ウは煙草を持った手を慎重に横へやり、残った片腕をアカキ"の背に回した。そ
れに応えるようにして、アカキ"は顔を上げてナンコ"ウの口をふさいだ。アカキ"の赤い舌が
口の中を這い回る。
 「これが俺の煙草の味さ・・・覚えておくといい」
 「お、お前なあ!」
 「今日はこのくらいにしておいてあげるよ」
 額を付けて、至近距離で笑うアカキ"の表情はよく見えない。もう一度アカキ"はナンコ"ウ
に口づけた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )本スレの赤攻姐さん方応援のつもりみたいだよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 11:18:26 ID:hHa3XIB+<> >>1
乙 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/13(月) 22:34:30 ID:zQ1dEIQ6<> >>8-10
どうみても萌えです本当にありがとうございました...! <> 風と木の名無しさん<><>2006/02/14(火) 01:39:50 ID:ZxR+V0bo<> <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 14:27:53 ID:OcSu/4RA<> ナンゴウかわいいよナンゴウ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 14:52:28 ID:5o5ohRW7<> アカ≠゙男前だよアカ≠゙ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 22:30:51 ID:/z2Ifym0<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 二人のニートの話。

面接を受けに行こうと思い玄関を出たが、いたたまれない気がして面接会場にたどり着く前に引き返してしまった。
久しぶりの外出に目眩がして、部屋に戻ったときにはもの凄く疲れていた。
部屋の中には、Tシャツにスウェット姿の同居人があぐらをかいてぼんやりしている。
「…おかえりー。」
どこかこざっぱりとした姿の同居人は、おかしそうに笑った。

部屋に戻った安心感に慣れると、今度は自己嫌悪が襲ってきて、スーツを乱暴に脱ぎ捨ててベットに座り込んだ。
「…あかん。俺みたいなモン、どこも雇ってくれんわ。」
伸ばしっぱなしの髪を掻きむしった。
同居人はそれに肯定も否定もしない。

俺は、俗に言うニートである。
そんな状況から脱出しようと試みたが、やはりダメだった。
俺の部屋に転がり込んできた同居人も、同じくニートである。
俺達は貧乏の極致にいながらも働くことができずにいる。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 22:33:03 ID:/z2Ifym0<>
同居人には、面接を受けていないことがバレているのかもしれない。
しかし彼はそのことには触れず、「今日の食費で銭湯行って来ちゃった。」と言った。

「お前、銭湯の料金って言うたら二日分やんけ。飯食わんでええの?」
自分で言っていて悲しくなるセリフではある。
「飯より風呂やわ。おれは飢えを我慢すんのには慣れてんねん。」
「自慢できることやないわ。」
ひょろりと細長い現代っ子を絵に描いたような彼は、食料よりも身だしなみに費やしたらしい。
お前は何が一番大切なんだと小一時間問いつめたい衝動に駆られる。
誰かに奢ってもらえる見込みでもあるのだろうか。
彼ならばヒモとして立派にやっていける要素はある。
そんな風に考えたら、なんとなく、彼の清潔なにおいに欲情した。

「なぁ、やろーや。」

仕事もなく学校にも行かず、職を探すでもなく。
暇な俺達ふたりだけの、狭い部屋の中。

同居人は笑って「腹が減るから嫌や」と言った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 22:54:11 ID:CaooUXb0<> >>16-17
これはもしやもしや、とあるD.VDのニート・・・!!!!
怠惰感のある馴れ合いが二人っぽいよ!
乙!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 23:17:42 ID:u6wIYzv3<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  悪魔土成ドラキュラ ラルフ×アルカード6回目だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  旅から帰ってきた二人ダヨ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 前スレ>>518->>530ノツヅキダフォルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> ラルアル1/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:18:48 ID:u6wIYzv3<> 「ほら、ここだ」
 ラルフ・C・ベルモンドは重い扉を押し開けて客人を導き入れた。
「二、三代前の当主の未亡人が、息子に家督を譲るとき隠棲用に造らせた部屋だそうだ。狭いが、母屋からは離
れているし、あまり人と顔を合わせなくてすむ。寝具や調度はすぐ新しくさせるから、少し待っていてくれ」
「いや、かまわない。綺麗なところだ」
 アルカードは大きく開け放たれた窓に歩み寄った。
 外にはゆるやかに起伏する青々とした丘陵と、そのむこうの木立、牧草や麦の揺れる田園地帯が一目で見渡せ
る。半身を乗り出すようにして目を細めると、そよ風に銀髪がきらきらとなびいた。
 ラルフは破顔した。
「今まで使うものもない部屋だったんだが、とにかく、眺めだけは一番だからな。気に入ってくれたなら、それ
でいい」
 二間続きの部屋は女性のものらしく繊細な意匠に飾られ、東洋の敷物と優雅な椅子と卓がいくつか、寝室には
天蓋と彫刻に飾られた大きなベッドが据えられている。
 場所としてはベルモンド家の屋敷の西側に位置する小塔のてっぺんにあり、多少出入りは不自由だったが、
むしろアルカードにはそのほうがいいだろうとラルフは思っていた。まさか、屋敷内でまでアルカードにフードを着せて
いるわけにはいかない。旅から戻ってきたここでは、ラルフ以外にも彼を目にするだろう使用人や小作人たちの目
は多々あり、それに関して毎日気にかけていてはきりがないというものだ。
 冬がしぶしぶながら春に場所をゆずろうとするころ、ラルフとアルカードはようやく、目的地のベルモンド家の領地に
帰りついた。
 屋敷にたどりつくはるか以前から、ベルモンドの代々家小作をつとめている集落の人々が、馬に乗ってやって
くる若当主の姿を見つけて、大声で叫びはじめた。 <> ラルアル2/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:19:46 ID:u6wIYzv3<> 「みんな、御当主が帰ってきたぞ! 若当主がお帰りになった!」
 たちまち、いくつもの小屋からどっと人があふれ出てきた。畑で働いていた者たちも、鍬や鋤を放りだして我
も我もと集まってきた。あっという間に人垣が周囲を取り囲む。ラルフは仕方なく馬をとどめ、片手を上げて
小作人たちの騒ぎを押しとどめた。
「皆、静かにしてくれ。馬が驚くだろう」
「すんません。で、あの、御当主」
 小作人の一人が、轡にすがるようにして必死に声をあげた。
「あの、本当に、魔王はもういなくなったんで……?」
 一瞬ラルフは口ごもった。後ろで黙然と立っているアルカードに自然に目がいく。
 アルカードはフードの下で目を伏せたまま、石のように動かなかった。
「──ああ、魔王はもういない」
 無理にアルカードから視線をそらして、ラルフはきっぱりと答えた。
「だからもう、皆なにも怯えることはない。魔物がやってくることも、これからはずっと減るはずだ。安心し
て、作業を続けてくれ。俺はいったん屋敷に戻る」
「若様、ばんざい!」
 人垣の後ろでだれかが叫んだ。たちまちそれは全員に伝染し、何人もの男や女が帽子を放り上げたり、てんで
に抱き合ったりして歓声をあげた。
「御当主、ばんざい! ばんざい!」
「ベルモンドの名に、栄光あれ!」
 それ以上我慢していられず、ラルフはもう一度片手を上げただけで、馬の腹を蹴って前へ進めた。アルカードは
黙ってついてくる。 <> ラルアル3/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:20:46 ID:u6wIYzv3<>  陽気に騒ぎながら、興奮した様子で話し合っている村人たちは、アルカードのことはラルフが旅の途中で雇った従者
か何かだと思ったらしく、ほとんど注意を払わなかった。
「すまなかった」
 声の届かない位置まで進んでから、ラルフはアルカードに詫びた。
「ただ、あそこでは、ああ言ってやるしかなかった。ドラキュラの脅威に怯えていたのはここでも同じだ。当主の
俺が魔王の討伐に出たと聞いて、不安もひとしおだったろう。きちんと保証してやらなければ、安心させて
やれなかったんだ。すまない」
「おまえが何も謝ることはない、ラルフ」
 フードの下から、思ったよりもはっきりした声が帰ってきた。
「彼らが喜ぶのは当然だ。おまえは確かに魔王を倒し、人々の上から恐怖を取りのぞいた。だから、私に謝った
りするな。おまえは自分の成すべきことを、見事に成し遂げたのだから」
 ラルフは唇をかんで前を向いた。カルンスタインで感じたあの持っていきどころのない苛立ちが、もやもやとまた胸にわ
だかまっていた。
 すでに先に連絡が行っていたらしく、屋敷の門を入ると、使用人を従えた老齢の家令が、表で整列して主人の
到着を待っていた。
「よくぞご無事でお戻りくださいました、御当主」
「ああ。ご苦労だったな、エルンスト」
 鞍から下りて、駆けてきた馬番に馬を渡しながらラルフは言った。
 エルンストはラルフの父の代から仕えているベルモンド家の家令で、これもまた、代々ベルモンド家の家令をつとめている
家系の人間である。 <> ラルアル4/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:21:44 ID:u6wIYzv3<>  ベルモンド家がまだ爵位と騎士の称号を得ていたころから従士を勤めていた血筋らしく、ことあるごとにラルフに
「誇りあるベルモンド家の者としてふさわしい態度」を要求する。幼いころのラルフには、愛着はあるが父の次に
うっとうしい人物であり、一昨年、父が病死して自分が当主になった今は、やはり愛着はあって信頼はして
いても、少々けむたい相手に変わりはない。
 いかつい身体に、白髪をぴたりと撫でつけた頑健そのものの老人で、使用人と家小作の村人たちすべての上
に、常にするどい目を光らせている。どうかするとその目はラルフの上にもそそがれ、今もまた、当主の様子に
異常がないかをさりげなく確かめている。
「俺のいない間に、何も変わったことはなかったか?」
「いえ、これといって悪いことは何も。村で何人か赤ん坊が生まれたことと、あとは、樫の木のそばの小屋の
グリューネ婆さんが老衰で死にました。洗礼と葬儀も滞りなく終わっております。荘園のことに関しては、
あとでまた記録を持ってお伺いいたします」
「わかった、わかった」
 早くも日常の雑事が身近に迫ってくるのを感じて、ラルフはうんざりした。
「それより早く、湯と着替えを用意させてくれないか。それと食事を。さすがに少し疲れた。しばらくは骨休め
がしたい」
「その前に、若」
 反射的に、ラルフはぎくりとした。エルンストが自分を若と呼ぶのはちょっとした小言か、それとも聞きたくもない
諫言とやらの前兆に決まっているからだ。
 しかし、エルンストは首をのばしてラルフの後ろを礼儀正しく示しただけだった。
「あちらの、黒い馬に乗られた方はどなたですかな」
「あ……、ああ」 <> ラルアル5/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:22:36 ID:u6wIYzv3<>  少しほっとして、ラルフはアルカードを手招きした。
「こっちへ来て馬を下りろ、アルカード。皆にも紹介しておく、こいつはアルカードと言って、ドラキュラの討伐に協力して
くれた、俺の友人だ。
 しばらくはこの屋敷で滞在してもらうことになる。俺の客人として、もてなしてやってくれ。フードを取れ
よ、アルカード」
 アルカードは馬を下りてラルフの横に並ぶと、ゆっくりと、フードをすべり落とした。
 誰からともなく、嘆声があがった。
 エルンストでさえ、ものに動じない顔をわずかに動かして驚きを示した。内心、ラルフは大得意だった。
「──アルカード、だ」
 言葉少なにアルカードは言った。
「ラルフの言葉に甘えさせてもらった。ここの人々には世話になる。よろしく頼む」
 下女や女中のほとんどが、頬を赤らめて何事か囁きあっている。男の使用人の中にまで、ぽかんと口を開いて
見惚れている者が多かった。輝く銀髪と白い肌、蒼い瞳、女にもしたいような美貌に、豪奢と言うほかない
身なりの優雅な貴公子ぶりなのだ。初めて見た者が、一瞬魂を奪われるのは当然だろう。
「さあ、もういいだろう」
 大勢の凝視を受けて、アルカードが落ちつかなくなりはじめているのを感じとって、すばやくラルフはまたアルカードの
フードを引き下ろしてやった。
「馬を連れていって、水と飼い葉をやってくれ。それから、俺たちにもパンと葡萄酒だ。アルカードの部屋の用意も
頼む。確か、使っていない部屋がいくつかあったはずだな」 <> ラルアル6/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:23:39 ID:u6wIYzv3<>


 しかしそれから一週間以上、ラルフはアルカードと顔を合わせなかった。
 正確に言えば、合わせる暇もなかった。半年以上も留守にしていたあいだにたまった雑事の処理に連日追われ
たのに加えて、近在の村や街から早くも噂を聞きつけた商人や小領主たちが、祝宴と称して我も我もとラルフを
宴会に招きたがったのだ。
 おかげで、ほとんど自分の家で食事をする機会すらなかったほどだ。一日部屋にこもって、エルンストが次々に
手渡す書類に仏頂面で目を通し、サインし、印を押したり仕分けたりと単調な仕事をこなしたあとは、腰を
落ちつける暇もなく家作の畑地や果樹園、森林や家畜の放牧地の見回りに出て、夜になっても休む間もなく、
宴会の招待に応えて相手の屋敷まで出かけなくてはならない。
 宴会は盛大なもので、これまで名前を聞いたこともないような相手や、はっきりとベルモンド家に対して陰口を
たたいていたはずの相手まで顔を出して、見えすいたお追従顔でもみ手をしながら近づいてきた。ドラキュラを倒し
た英雄と近づきになっておけば教会の、ひいては、さらに上の方にも心覚えがよくなるとの下心が丸見えだ。
 適当にあしらってやったが、内心、帰りたくてたまらなかった。
 誰もがドラキュラ征伐と、それに関する冒険談を聞きたがった。中でも、ことに女たちが知りたがったのは、今、
ベルモンド家の屋敷に滞在中だという、謎めいた美貌の貴公子のことだった。
 アルカードのことについては、ただ、旅先で知り合った遠国の大貴族の末子で、目的を聞いて力を貸してくれる気
になったのだと言うにとどめた。女たちは不満そうだったが、謎は謎でまた彼女たちの気持ちを刺激することに
なったらしい。それ以上ラルフから聞き出すことは不可能そうだと悟ると、仲間同士片隅により集まって、熱心に
こそこそ話し出してくれたのでラルフはほっとした。
 男たちのほうは、もっとずっと厄介だった。彼らはラルフが耐え忍んできた苦痛と恐怖と悲しみの体験を、
まるで吟遊詩人が歌ってみせるバラッドのような、勇壮な物語に仕立てさせようとしたのだ。
 ラルフが言葉少なに仲間たちのこと、ドラキュラとの邂逅と戦闘、そして勝利を語ると、彼らは興奮したように
うなずきあい、雇った芸人たちにコインを投げ与えて、おい、今のお話をさっそく叙事詩に仕立ててさしあげろ
と怒鳴った。
<> ラルアル7/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:24:47 ID:u6wIYzv3<>  要求に応えて、さっそく芸人は古びた弦楽器を取り直し、即興で魔王を倒した英雄についての歌を歌い始め
た。その中ではラルフはまったく恐れを知らない鋼鉄の男で、ドラキュラの前に立っても臆しもせず、最後には、怪物
は神と英雄の前に許しを請いながら、惨めな死にざまをとげて地獄へと堕ちていく。
 馬鹿げているとしかいいようがなかった。ラルフとしては、苛立つ段階をすでに通り越して、むかつきを押さえる
のに精いっぱいだった。
 ここでもまた、とラルフは思った。
 ここでもまた、カルンスタインと同じことがくり返されているのだ。アルカードの母親を殺しておいてそれを記念碑に
したあの街の人間と同じように、ここでも彼らは、「魔王を殺した英雄」というその一点だけ、自分たちに
とって正しいと思える物語だけを受け入れて、他のことはなにひとつ聞こうとしない。
 当人であるラルフ自身でさえ、そのための話のタネにすぎないのだ。怒る以前に、情けなかった。俺は、こんな
奴らのために命をかけてドラキュラを倒しにいったのではない、と腹立ちまぎれに思った。
 何の脈絡もなく、アルカードの顔がまぶたに浮かんだ。
 私は人か、それとも魔か、と問うたときの彼の目の色が、傷痕をたどった冷たい指の感触とともに、とつぜん
痛いほどに蘇ってきた。抱きしめて眠った夜の、折れそうなほどに細かった身体が、たった今そばにあったらと
痛切に感じた。
「おや、もうお帰りで」
 黙って杯を置き、席を立ったラルフに、当夜のもてなし役だった羊毛商の主人がちょこちょこと走ってきた。
「ああ。申し訳ないが、まだ旅の疲れが残っている。せっかくのもてなしを中座するのは失礼だとは思うが、
少し休みたい。他の方々には、これで楽しんで貰ってくれ」
 ひとつかみほどの銀貨を詰めた袋を手渡す。重みをはかって、商人はにんまりした。
「これはどうも。さすが剛胆なお殿様は、太っ腹でいらっしゃる。皆も喜びますことでしょう。ところで、
ベルモンド様」 <> ラルアル8/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:25:40 ID:u6wIYzv3<> 「何か」
「うちには実は、年頃の娘がひとりございましてな」
 片手で銀貨の袋をじゃらつかせながら、上目遣いで商人はラルフを見た。
「この度のあなた様の偉業を耳にいたしまして、たいそうあなた様に思い焦がれておりますのですよ。親の
わたくしが申しあげるのもなんでございますが、これが実に器量のいい、素直な娘でして、よろしければ今度、
お屋敷のほうに伺わせても……」
 黙れ! と怒鳴りつけそうになるのを、ラルフはあやうくこらえた。
「すまないが、今、そういうことを考えているほどの余裕はない」
 ぶっきらぼうにラルフは答えた。「失礼する」
 あとは誰が話しかけてこようと無視して、ラルフは夜道を馬をとばして屋敷に帰った。
 ほとんど素面で、しかもずいぶんと早く帰ってきた主人を迎えるのに、使用人たちは右往左往している。ラルフ
は廊下を歩きながら、宴会に出るために着替えた窮屈な服を腹立ちまぎれに右へ左へと投げ散らしていった。
追いかける女中があわてて拾って回る。
 階段を上がりきったところで、エルンストが待っていた。
「お早いお帰りでございますな、御当主」
「エルンスト」
 厳しい声でラルフは言った。「あの、ぶくぶく太った気持ちの悪い商人は何者だ」
「ヒルシュ様はこのあたりの羊毛と布地交易を一手に引き受けておられるお方です」
 冷静にエルンストは返した。
「ベルモンドの荘園から出る羊毛やフェルト地も、ほとんどはあの方とのお取引です」
「取引だろうがなんだろうが、今後、あいつからの宴会の誘いなど二度と持ってくるな。気分が悪い」 <> ラルアル9/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:26:33 ID:u6wIYzv3<>  怒鳴りつけるように言って、ラルフは最後のシャツを放り捨て、廊下に立って謹厳な顔を崩さずに見ているエルンスト
の前を大股に通りすぎた。
「それから、明日以降の宴会の誘いはすべて断れ。俺が旅の疲れのために熱を出して倒れたとでも言ってな。
なんなら、ドラキュラの魔法のおかげでトカゲに変わって、そのままどこかへ行ってしまったと言ってもいいぞ。
とにかく、あんな奴らの酒の肴にされるのは、二度と御免こうむる」
 エルンストは眉一つ動かさなかった。「おたわむれを」
「やかましい。なにがなんでも断れ、わかったか」
 自分の寝室から首だけ出して、ラルフはまた大声を出した。
「たとえおまえにその鉄のブーツで戸口から蹴り出されたとしても、俺は絶対にもう、あんな場所には顔を出さ
んからな。いいか。絶対に、だ」
 力任せにドアを閉めて、ラルフはやっと一人になった。
 長いため息をついて、ベッドに身を投げ出す。
 無性にアルカードの顔が見たかった。書類仕事に忙殺されている間はなんとか忘れていられたが、ドラキュラ城から
戻る旅の間、カルンスタインの一件を除けば、ほぼ半刻として顔を見なかったことはないのだ。一人で身の置き場の
ない思いをしていないか、黙って閉じこもって、またおかしな方向に誤解を成長させていないかと思うと、いて
もたってもいられない気分になる。
 起き上がって、窓を開けた。月が出ている。ラルフの寝室は本館の中庭に面した二階の一室だが、この窓からだ
と、アルカードのいる西の小塔はやっと尖った屋根の先が屋敷の翼のむこうに見えるだけだ。
 部屋を訪ねようかと思ったが、この酒と、女の脂粉の臭いの染みついた身体で、あの蒼氷の瞳の前に出るのは
耐えられない気がした。
 とにかく眠ろう、と窓を閉めてベッドに戻り、枕に頭を乗せた。 <> ラルアル10/10<>sage<>2006/02/14(火) 23:27:43 ID:u6wIYzv3<>  疲れているはずなのに、目は冴えていた。思えば、旅の間は、ほとんどずっとアルカードを腕に抱いて眠って
いたのだ。
 カルンスタイン以来、もう夢は見ないから大丈夫だ、というアルカードを、俺が寒いんだからいいから来い、と強引に
毛布に入れて眠った。
 アルカードも強くは拒まなかった。華奢な身体の感触と頬にふれる銀髪、漏れてくる静かな寝息を聞いていると、
これまで感じたこともないほどあたたかいものが胸にあふれた。
 明日は一番にアルカードに会いに行こう、と決めた。
 エルンストがなんと言おうが構うものか。どちらにしろ、自分のいない半年の間は、彼が代理になって荘園を運営
していたのだ。一日もう一度同じことをやるくらい、あの頑固爺ならなんでもないだろう。
 からっぽの腕が疼いた。寝返りをうって、誰もいない自分の隣を見つめる。糊のきいた新しいシーツが、
ひどく冷たいような気がした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 23:29:20 ID:ToMStvkb<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ナガク ナリスギタカラ ツヅキハマタアシタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 23:30:51 ID:2vux79x4<> >>30
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
道中抱き枕してたんですかそうですか。
続きが楽しみですよねえさん!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 23:35:55 ID:KeF8TXhv<> >>30
同じくキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
なにげなくリロドしたらびっくり、まさか平日に来るとは思ってなかったんで
ラッパ飲みしてたワインが鼻に逆流したよ!
ラノレアノレ(*´Д`)添い寝癖(*´Д`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/14(火) 23:54:14 ID:hs+e7Lus<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  マヅレンジャーのアフロ×バイザー最終回補完。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  アフロスルーが悲しすぎたんで妄想したってさー。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ モウソウシタッテサー
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> アフロ×バイザー 1/7<>sage<>2006/02/14(火) 23:55:25 ID:hs+e7Lus<> Yバ一ンはただ成す術もなく座り込みながら、自分の周囲を見回した。
辺り一面、真っ白な世界だった。そこはインフェノレシアの広大な暗闇を知る彼の目にも、なお広く見えた。
あまりに何もなくだだっ広いので、Yバ一ンにはこの世界がどこまで続いているのか見当もつかない。
自慢の翼で飛び回ろうにも、そこの空気はあまりに重く、翼を動かすにも苦労するほどだったので、
Yバ一ンはその場に座っていることしか出来なかった。
そして、もう一つ彼には動けない理由があった。
ちらりと視線を自分の右手に落とす。 
そこには別の者の手が、まるで拘束でもしてるかのようにしっかりとYバ一ンの手を握り締めている。
ぐい、と不快そうにYバ一ンはその手を引っ張ってみたが、相手の手は緩みもしない。
もう一度、更に強くぐいぐい、と引っ張ってみるが結果は同じだった。
バカ力め。
忌々しげにYバ一ンは相手を見やり、もう片方の手を所在なげに額の部分へと当てる。
その相手、ティ夕一ンはといえば、昔と変わらぬ何を考えてるか判らぬ風情で静かに腰を落ち着けていた。
だが、一つ昔と変わったことがある。
それは、以前は彼らが共に過ごす時はYバ一ンが喋り、ティ夕一ンが聞き役だったが、
今はティ夕一ンがYバ一ンに向けて話し掛け、Yバ一ンがそれを聞く役目に回っているということだった。
話の内容はといえば、ティ夕一ンが知り合い、行動を共にし、そして彼ら冥/府/神を裏切ることになった
魔/法/使/いたちの話で、Yバ一ンにとっては知りたくもないことだったし、耳に入れても理解するつもりもなかった。
大体、何で僕とこいつだけなんだ。
周囲を見回しても、そこには彼ら以外の者の姿は見えない。
もしも肉体を失った魂の辿り着く場所だというのなら、以前に倒された他の冥/府/神がいても
良さそうなものだが、冥/府/神どころか冥/獣一匹さえ見当たらない。
ティ夕一ンはといえばYバ一ンが聞いていないのも構わず、話を続けている。それは支え合うことがどうとかいう、
Yバ一ンには全く興味のない話だったので、ついに痺れを切らして、その話を遮った。
「あのさ、そんな話より、もっと面白い話が出来るんじゃないの?」
いきなり話を中断させられたティ夕一ンは、ただ押し黙ってしまう。
「ン・魔の肉体を、目を通して、見えてるんだろう、向うの様子が」 <> アフロ×バイザー 2/7<>sage<>2006/02/14(火) 23:56:19 ID:hs+e7Lus<> ティ夕一ンは口を開かない。だが、彼のそんな様子にはYバ一ンは慣れっこだった。
「教えなよ、ティ夕一ン。何があったかをこの僕に」
Yバ一ンはティ夕一ンの口から地/上/界と天/上/界、そして彼が肩入れした魔/法/使/いたちが
滅びる姿を聞けると思っていたが、返ってきた言葉は意外なものだった。
「スレイプニノレが魔/法/使/いたちに倒された」
「……スレイプニノレが?」
耳を疑う話だった。インフェノレシアの矛たる二/極/神の一柱である彼が魔/法/使/いごときになど。
彼はもう一柱の二/極/神卜゙レイクとは違い、冷静でしくじりのない頼れる神だったはずだ。
だが、その次の言葉は更に信じられなかった。
「夕゙ゴンもだ」
「バカな……夕゙ゴンは無敵のはずだ!」
少なくともYバ一ンはそう信じていた。厳格で冷酷な、冥/府/神の実質的なリーダーである彼は、
Yバ一ンが憧れを抱く唯一の相手だった。
「嘘をつくな、ティ夕一ン。魔/法/使/いごときに夕゙ゴンが倒されるわけないだろう!」
「夕゙ゴンを倒したのは魔/法/使/いじゃない」
「じゃあ誰なんだ」
「スフィン楠だ」
その名に、Yバ一ンの頭の中が混乱する。
スフィン楠? 何故彼女が、最も闇の戒/律に厳格だった彼女が。
「嘘だ!」
「嘘じゃない。賢明な彼女は勇気を、支え合うことの大切さを知ったんだ」
「仮にスフィン楠が裏切ったとしても夕゙ゴンが負けるわけないだろう、この嘘つき!」
ティ夕一ンの手をもぎ離そうとYバ一ンは半ば身体ごとそれを引くが、
ティ夕一ンはその手をしっかりと押さえ込んでしまう。
「夕゙ゴンは確かに強かった。だが誰をも信じず、自分とン・魔だけの闇の世界に生きていた」
「それの何が悪いんだ! ン・魔は絶/対/神だ! 僕らは彼のために存在してたんだろ!」
だがティ夕一ンは、Yバ一ンの言葉を断ち切るように短く、だが決然とした口調で言った。
「ン・魔は滅びた」 <> アフロ×バイザー 3/7<>sage<>2006/02/14(火) 23:57:04 ID:hs+e7Lus<> 周囲の空気が重さを増し、絡み付いてくるようにさえ感じ、Yバ一ンは呆然とへたり込んだ。
「嘘だ……」
ぽつりとそう呟くが、Yバ一ンはティ夕一ンが嘘をつける性格ではないことを知っていた。
だから、彼の言葉はすべて真実なのだろう、とは理解していたが、どれも到底受け入れがたいものだった。
「支え合う力は、何よりも強い。ン・魔は満たされて消えていった。俺は自分の体を通じて、それを知った」
自分の手を握るティ夕一ンの手の力が少し強くなったのを感じ、Yバ一ンは小さく溜め息をついた。
「満足かい」
「何がだ」
「お前のくだらない自己犠牲がちょっとは報われたことがだよ」
皮肉のつもりだったが、ティ夕一ンは正面からじっとYバ一ンを見つめて、真剣な声を出す。
「俺は犠牲になったつもりはない。最後までやり遂げることは出来なかったが、
それでもやるべきことをやろうとしただけだ」
「はいはい」
言いながら、軽く手を引いた。当然、外れることはない。
「戻らないのか?」
Yバ一ンにそう問いかけられて、ティ夕一ンはやや戸惑った様子だった。
「戻るってどこにだ」
「お前が守ろうとした地上の連中、魔/法/使/いどものところにさ」
「どうやって戻るんだ。俺の肉体はン・魔と共に消えたんだ」
「それはそうなんだけどさ、何と言うかセオリー的にね」
そもそも、自分たち神が死ぬものなのかYバ一ンにはわからない。
今だって、肉体を失いながらもこうして会話をしている。
少なくともティ夕一ンには行きたい場所や会いたい相手がいる。
ならば、意志一つで戻ることも出来るのではないだろうか。
「支え合う力は無限なんだろ。だったらお前一人戻すくらい簡単なんじゃないのか」
それはからかい混じりの本音だった。今にも地上の彼らがティ夕一ンを呼び戻し、
この手が消えるのではないかとYバ一ンは思った。 <> アフロ×バイザー 4/7<>sage<>2006/02/14(火) 23:58:01 ID:hs+e7Lus<> だが、ティ夕一ンは否定の意を込めて頭を横に振る。
「仮に戻れたとしても俺は戻らない」
「何でさ、君……いやお前はあいつらのために僕ら冥/府/神を裏切ったんだろ。
それだけ奴らが……好きなんだろ」
「ああ、彼らのことは大好きだ。友達だからな」
ちくり、とどこかが刺されたような痛みをYバ一ンは感じたが、それを振り払うように言い放つ。
「そう、だったらさっさと戻れよ。そしてこの手を放せ!」
狂ったように腕を振り回し、Yバ一ンはティ夕一ンの手を引き剥がそうとした。
だがティ夕一ンが逆にYバ一ンの手を引っ張り、そのままYバ一ンはティ夕一ンの腕の中に収まる格好になってしまった。
そうなれば体格差もあり、どれだけもがいてもYバ一ンは成す術なくティ夕一ンの腕の中にいるしかない。
「このバカ力! バカ力! バカ! バカ! バカ! 大嫌いだ! 裏切り者!」
空いているほうの手でYバーンは何度もティ夕一ンの胸から肩にかけて殴る。
生前の感覚が残っていれば痛くないわけがないのだが、ティ夕一ンはされるがままだった。
「俺がしたことで、お前を傷つけたのなら、それはすまないと思ってる」
Yバ一ンは顔を上げ、ティ夕一ンをじっと睨んだ。怒りでバイザーの奥の目が爛々と光っている。
「僕がお前に傷つけられたって? ふざけるな! 僕は冥/府/神としての誇りを捨てたお前が許せないだけだ!」
「誇りを捨てたわけじゃない」
その静かで落ち着いた物言いに、Yバーンの怒りが多少なりとも静まったのか、罵る言葉が止まる。
「ずっと昔から、心の奥底にわだかまっていた。何かを滅ぼすということに対し、俺が感じる違和感や苦痛、
それは冥/府/神の使命の前には押し隠さねばならないものだと思っていた」
Yバ一ンはかつてのティ夕一ンの姿を思い返す。何を考えているのか、さっぱりわからなかった彼。
その彼がそんなことを考えていたなんて、Yバ一ンは全く知らなかった。
「けれど、ホウ力やオ二イチャンたちに出会って、俺は気付いたんだ。
俺も、お前も地上の者たちも皆、生きているということに」
「生きてる……?」
「そうだ、生きているっていうことは温かい。そして、俺は誰も死んで欲しくないと願うようになった」 <> アフロ×バイザー 5/7<>sage<>2006/02/14(火) 23:58:34 ID:hs+e7Lus<> その言葉は、完全にYバ一ンの理解の範囲外だった。無意識に、再び額に手をやった。
死んで欲しくない? どういうことだ。
「ン・魔のの依代に選ばれ、俺は思った。俺がン・魔と共に眠りに付けばすべてが終わると。
ン・魔の復活が成らないとなれば闇の戒/律を守る必要もなくなる。地上に神罰を執行しなくてもいいし、
魔/法/使/いたちと争う必要もない。誰も、死ななくなるんだ」
「そんなことのために裏切ったのか、そんなことのために永遠の眠りにつこうとしたのか、お前は!」
「他の誰かが死ぬのを見るよりはいい」
Yバ一ンは苛々と、小さく足を踏み鳴らす。
何が死んで欲しくないだ、訳がわからない。
大体、僕が死んだのはある意味お前のせいだぞ。
そこに考えが至ると、Yバーンの胸内に屈辱感が湧き起こる。
それから逃れるためにティターンから離れたい、と心底思った。
「これ以上、お前の寝言に付き合ってられないよ。さっさと地上にでもどこにでも消えてくれ」
だがティ夕一ンは、そこから立ち去ることも、Yバ一ンの手を放すこともしなかった。
「それじゃ、誰がお前を支えるんだ」
「僕を支える? 思い上がるな!」
力任せにティ夕一ンの手を振り払い、身体も離そうとするが、それは彼の意思を表すかのようにびくともしなかった。
「思い上がりじゃない、ただ支えたいだけだ。お前が俺を支えてくれてるように、支え合いたいだけだ」
「僕がお前を支えてる……?」
「そうだ、俺がそのことに気付く前から、お前は俺を支えていた」
 ティ夕一ンの腕の力が緩み、Yバ一ンはそっと身体を離した。だが、相変わらず手は握り締められたままだった。
「俺は確かに地上の者たちを支えるために一度お前を裏切った。そうすることですべてを救えると思っていた。
だが、彼らは俺の支えなどなくとも、自分たちで支え合うことでン・魔を倒した」
ふとYバ一ンは、自分を包むティ夕一ンの手が温かいように感じ、ばかな、とそれを否定する。
「だから俺は戻らない。ここでお前といたいし、お前を支えたい。Yバ一ン、俺のことを信じてくれ」
「信じるって何だ、僕のことを信じてなんていないくせに」 <> アフロ×バイザー 6/7<>sage<>2006/02/14(火) 23:59:10 ID:hs+e7Lus<> 夕゙ゴンがそうだった、とYバ一ンは苦渋と共に思い返す。
信じて欲しかったのに、僕のことを一度たりとも信じようとはしなかった。
「信じてる。お前が俺の友達だってことを」
「友達……?」
「ああ。友達だ」
 聞きなれない単語にYバ一ンの表情に戸惑いが混ざる。
「何、それ」
「実は、俺も教わったばかりで詳しくは知らない」
 ふん、とYバ一ンが鼻で笑う。
「いい加減だね、全く」
「だが、とても良いものだ。それは確かだ」
 そして、握り合わされた手を視線が重なる場所まで上げた。
「知っているか、握手すると友達になれるんだ」
「知るわけないだろ、バッカじゃないの」
 ぷい、とそっぽを向きながらも、Yバ一ンの視線はいつの間にかティ夕一ンに戻り、そして二人の手へと移る。
「そういえば、君がこんなに喋ってるの、初めて聞いたよ」
「まだまだ、話したいことがある」
Yバ一ンは、目の前にいるティ夕一ンを初めて会った相手であるかのように見つめた。。
自分の目的そのものであったン・魔、そして、そこへの導き手であり、憧憬の対象であった夕゙ゴンを失い、
自分自身の肉体も失ったのに、不思議と気分が良かった。気のせいか、周囲の空気さえ、軽くなったように感じる。
 今なら、飛べるかもしれない、とYバ一ンは考えたが、そうすることはなく、
その代わりに、目の前の相手に声を掛けた。
「いいさ、話しなよ」 <> アフロ×バイザー 7/7<>sage<>2006/02/15(水) 00:00:14 ID:hs+e7Lus<> 「スフィン楠様〜ティ夕一ン様は〜」
「ティ夕一ン様は〜」
 そう尋ねてくる名イと目アに、真/実/の/影/澱/み/し/沼から戻ったスフィン楠は眼鏡を押し上げながら、
いつもの落ち着き払った口調で答えた。
「彼にはまだ、戻る意志がないようですね」
 えー、と二人が残念そうな声を出す。
「ティ夕一ン様、優しかったのに〜」
「優しかったのに〜」
 だがすぐに、思い直したように弾んだ声で問い直す。
「じゃあYバ一ン様は〜」
「Yバ一ン様は〜」
「彼はもう少し、精神的な熟成が必要のようです。しかし貴女方は彼が冷静さを失ってからは特に、
随分ぞんざいな扱いを受けていたと記憶していますが」
にこにこと幸せそうに笑いながら、名イと目アは同時に顔を赤らめた。
「だってYバ一ン様カッコいいんですもん〜」
「カッコいいんですもん〜」
きゃあきゃあと騒ぐ二人で一人のクイーンヴァンパイ亜を横目に、スフィン楠はこれからのことを思った。
考えてみれば、これまで十ネ申全員でやっていた(中には邪魔しかしない者もいたが)インフェノレシアの統治を、
これからは自分だけでこなさなければならないのだ。しかも、新たな秩序を作り、
地/上/界や天/上/界と共存していかなくてはいけない。それは、生半可な苦労ではないはずだった。
目先の幸せに溺れまくって、あのアフ口野郎。少しはこっちの苦労も省みろ、戻れるならさっさと戻って来い。
お前ら、見てて恥ずかしいんだよ。
そんな悪態を知性と理性でどうにか押し隠し、いっそン・魔を探して漂っているはずの夕゙ゴンの魂を捕まえて、
今度こそ力ずくで言うこと聞かせたほうが早いかもしれない、とそんなことを考えながらスフィン楠は
自分以外のネ申々が全員欠席になっている、愛用の出席簿をバタン、と音を立てて閉じた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 00:01:01 ID:hs+e7Lus<>  ____________
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 00:38:26 ID:QoXTkemh<> >>33
(*゚Д`;)ア…ア…アッハァァァァァァァァ
脳内最終回補完されました。アフロ君の現代に戻らなかった意志になるほどと思った!
最後のスフィン楠&名イメアも萌え「アフロ野郎」「恥ずかしいんだよぅ」にテラワロス


ネ申小説の後にアレだけど1時間遅れのバレンタイン版マヅレンジャー 
桃×アフロ×バイザー
ttp://venus.aez.jp/uploda/data/dat5/upload322454.png

この後TY2人でティンコ型(本当はアフロ型)のチョコをイチャイチャしながら食べるといいよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 01:04:58 ID:8Xffxbn3<> >>16
萌えた。奴らの雰囲気そのままだ
GJGJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 04:20:26 ID:sRhREfqF<> >>16-17
「生きるヒヒ〜ン!ト」ご馳走様っす♥
白馬と玄米め、ラブラブだな(`・ω´・ ;) <> 寅と鈍太<>sage<>2006/02/15(水) 13:32:21 ID:uKC/+Ua9<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい寅と鈍いアフロのお話だモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  保存庫のネ申に触発されたんだって。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 一気にモエモエだフォルア
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 寅と鈍太1<>sage<>2006/02/15(水) 13:35:44 ID:uKC/+Ua9<> 小寅よ。何故だ。なにゆえと書いて何故なんだ。
そりゃあ気に入らない事もあったろう。全く思い浮かばないけれども。けどね、アタシは兄弟子だよ、お前さん。
ああもうそんなに怖い顔してホッペをなでなでしないでおくれ。頼むから。

鈍太は泣きそうになりながら硬直していた。
と、いうよりも先程から小寅にされるがままになっている。
小寅に付いて来いと言われて付いて行き、乗れと言われて車に乗り、
何処をどう通ったか何時の間にやら小奇麗なホテルに到着してしまった。
分からない。経緯が分からない。ネオンがキラキラしてるホテルだよ。
どう見たってラブの付くホテルですよ。
しかもコイツ脱いじゃってるよ。小寅ちゃんってば体制万全に整えちゃってるよ。
ヤる気満々だよ。舌噛んで死んで良いですか。舌噛んだら痛いか。痛いな。じゃあ止めとこう。
通路側には小寅が居て、ってえ事はドアは小寅の向こう側で、ってえ事は突破口が塞がれちゃってるよ。完璧だよ。
唯一の救いはコイツがヤり方を知らないってえ事だけだよ。
そんな思いがぐるぐると渦を巻いて、思考回路の何処か隅っこが「おーい、アンタ今パニクってますよー」と叫んでいる。
泣けてきた。否、むしろ笑えてきた?どうしよう。助けて俺の中の冷静な脳細胞達。
鈍太の吹き出しそうな口元を見詰めて、小寅は不思議そうな表情をした。 <> 寅と鈍太2<>sage<>2006/02/15(水) 13:36:49 ID:uKC/+Ua9<> 「……何笑ってんだよ」
「笑ってません御免なさい」
首を傾げながら凄む小寅に、思わず竦み上がる鈍太。
頬が引き攣り、動かなくなってしまったので手で真顔に戻す。
「理由を聞いてんだよ。いいから答えろ」
小寅は追求しながら迫って来る。
じりじりと後退しつつ顔面を小刻みに震わせながら、鈍太は意味不明な謝罪を続けた。
「御免なさい分かりません。理由が思い浮かびません」
やがてこれ以上行ったら落ちますと腰が伝える場所まで行き着いてしまった。
広いベッドだから此処まで逃げられたと感謝して良いのか此処まで来たら何処迄でも続けよベッドと恨めば良いのか。
それでも小寅はのすのすとやって来る。やって来るものだから無理を承知で後退する。
と、一瞬の浮遊感が体を襲った。
目を見開いた小寅が見えた。
思わず腕が伸びる。
伸びた腕を掴まれる。
反射的にその腕にしがみ付く。
いやいやいや。逃げるでしょう、普通は。すっころんでも這って逃げるでしょう。
馬鹿か俺は。俺は馬鹿か。
小寅の腕に抱かれ、落ちずに済んだと安堵する暇も無く――
――やっぱり二人は仲良く、ずるべしゃあと転げ落ちた。 <> 寅と鈍太3<>sage<>2006/02/15(水) 13:37:54 ID:uKC/+Ua9<> 落ちる時に情けない声を出したなあと思っていると、小寅はピクリとも動かない。
もがいてみる。動かない。
少しだけ暴れてみる。動かない。
小寅が上に乗っかっていて、けれどもコイツの腕は俺の下敷きになっていて……っておおい!
逃げられねえよ!!脱出不可能かよ!?
「怪我してねえか」
低い低い、地獄の底から声が聞こえた。
「ねえよ。どんな段差だよ。ああごめんなさいごめんなさい痛いです悪いのは私ですごめんなさい」
鈍太はぎゅうと抱き竦められて、自分でも呆れてしまうほど謝り倒した。
それでも小寅は力を緩めない。
ぎゅう。ぎゅうぎゅう。
「……いっ…ってぇえよ!寧ろ死ぬ。お前で死ぬ。俺はお前に殺される。」
キレちゃったよ情けない。情けないったらありゃしない。
三下みたいにきゃんきゃん吠えているのは自分だけ。そうですか。ああそうですか。
「アンタ、落ちるから」
「何ですか急に」
「……消えるかと、思った」
消えねえよ、という言葉が喉で引っ掛かる。 <> 寅と鈍太4<>sage<>2006/02/15(水) 13:38:47 ID:uKC/+Ua9<> 引っ掛けたのは小寅の肩だ。
後頭部を手の平で押され、小寅に押し付けられている肩だ。
顎に細かな振動が伝わる。多分、震えているのだろう。
より一層、強く押し付けられる。
ぐえぇ。何だコレ。本当に窒息死しますやめて下さい勘弁して下さい。
「…て、手、手!痛くありませんか?」
むせ返りそうになりながら苦し紛れに言う。
確か頭を打ったんだよな、俺。そうそう。コイツの手の平越しに。
ハ ズ カ シ ー 。
何だよそれ何なんですかそれ。思いっきり助けられてるじゃないですか。
「痛えけど痛くねえ。」
あ、答えですね。訳が分かりません。
鈍太は、混乱しきってどこかのお花畑へと飛んで行っていた自分の思考を棚に上げる事にした。
「痛いけど痛くないって事は痛いんですか痛くないんですかどっちなんですか」
「うるせえ」
一蹴。
折角アフロなしでも取り戻しつつあった自信が、くしゃりと丸められてゴミ箱に放り込まれる。
っていうか何してんですかアンタ。
うるせえって言うのは黙れって事で、で、何でそこでチューですか。女房とだって最近してませんよ。
黙って欲しかったんですか。言えば分かります。 <> 寅と鈍太<>sage2時間スペシャルしかまともに見ていない!<>2006/02/15(水) 13:42:26 ID:uKC/+Ua9<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ PAUSE.      | |
 | |                | |           ∧_∧ ちょいと中断。
 | |                | |     ピッ   (・∀・;;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


次はエロくなりそう。つうか書けるのか…!?ああギャグがorz
初投稿でした。自分の中の萌えで一気に書いた。反省はしない。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 13:43:38 ID:Sw03Q3pN<> >>50
リアルタイムで遭遇して禿げ萌えた!!
続き、お待ちしてますねー! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 14:29:06 ID:6WImpzj+<> 佐田を声が聞こえてくるヨー
ナイス。連続TV版もおすすめ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 21:06:26 ID:nKRDfKF8<> >>33
グッジョブです!!
まだ最終回見てないけど神様達好きだったのでなんとなく大丈夫そうで安心
そしてそれ以上に萌えさせていただきましたハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 21:52:06 ID:QcUcb2Tv<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )あるあるネタ?で801

2時間前に止んだ雨が空気中の塵を洗い流したような気がする。それとも夜明けが近いせいか。
国道を走るタクシーからみる景色は、ひどく美しく、郷愁を感じさせた。

走り初めてから一度も信号で止まること無く、俺達を乗せたタクシーは走り続けている。

(俺達を止められるものなんて何もない気がしないか)

そんな言葉が浮かんでは消えた。
それは目まぐるしく流動する感情の、刹那の一瞬に過ぎなくて、でも、この気持ちからはぐれたくはない。

こんな小さな奇跡は、次の信号が変わってしまえばあっけなく壊れてしまうものではあるけれど。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 21:53:53 ID:QcUcb2Tv<>
泥のように眠っていると思っていた隣の席の男の方を何気なく見ると、意外なことに起きていて、俺の視線に気が付くと歯を見せて笑った。
彼は視線だけで、「気が付いてる?」と問うた。

俺もつられて笑みが深くなる。
タクシーの中で声をあげて笑うことができないのがひどく苦しい。
ニヤニヤしながら笑いを堪える。
こんな小さな、奇跡を、見逃さず笑いあえる幸せ。
お前が、今、隣にいることが、一番の奇跡だよ。

そんなことを考えながら、進行方向に視線を戻すと、信号が、青に変わった。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )あるあるトイウカ アリガチネタ。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 23:07:40 ID:Y0DFbPWe<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  悪魔土成ドラキュラ ラルフ×アルカード7回目だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ちょっぴり仕返ししてみるアノレたんだよ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ >>19->>30の後半ですよゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> ラルアル1/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:08:33 ID:Y0DFbPWe<>              ◆


 翌朝、予定通りに、ラルフは朝食を呑みこむように片づけるが早いか、エルンストがやってくる前に席を蹴り、急ぎ足
で西の小塔に向かった。
 ところが、案に相違して部屋の主はそこにいなかった。
 一瞬ひやりとしたが、剣とマントはきちんと壁にかけられているので、屋敷からいなくなったわけではないら
しい。仕方なく本館に戻り、最初につかまえた女中にアルカードを見なかったか、と訊いてみると、ちょっと頬を染
めて、それでしたら、と答えた。
「あの方でしたらこのごろ、毎日のように東翼の蔵書室に出入りなさっているようです。何度かあそこにお飲み
物をお運びしました。あそこにあるなにか昔の記録や、ご本なんかを研究なさっていらっしゃるみたいで」
「蔵書室?」
 反射的に、首の後ろがざわざわする。
 蔵書室というのは、初代の鞭の遣い手だったレオン・ベルモンド以来、闇の狩人として生きてきた代々のベルモンド
たちの手による古記録や書物、日記、闇の住人に対する心覚えなどが大量にしまわれている場所だ。
 幼いころのラルフは、父によって鞭術を叩きこまれるのと同時に、正確な知識を身につけるためにも蔵書室の
書物の一冊でも目を通せと毎日やいやい言われつづけた。
 そんなもの読まなくても、自分が十二分に強くさえあれば負けることなどあり得ないというのがラルフの、今も
変わらぬ本音だった。父が死んでからは、エルンストが入れかわって、他のことと同じく口では言わないまでも、
無言の圧力で押しつけてくる。ラルフにとっては、できれば近づきたくない場所だった。 <> ラルアル2/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:09:22 ID:Y0DFbPWe<>  しかし、アルカードがいるというのなら行かないわけにもいかない。長いあいだ足をむけたこともない場所に
しぶしぶ足を運び、ドアを開ける。
「アルカード? そこにいるのか?」
 黴と埃、そしてインクと古くなった羊皮紙の匂いがどっと流れ出してきた。
 思わず鼻と口をおおって目をこらしたが、暗い書庫の中は床から天井まで本や紙束、丸めた文書で埋めつく
されていて、人っ子ひとりいない。
 蔵書室の隣は書字と読書のための続き部屋になっていて、古い樫の大テーブルと椅子が並び、窓のそばには
大きな書見台が据えられている。
 書見台の一つの前に、きらりと銀色の光がきらめくのが見えた。
「アルカード……?」
 歩くたびに舞う埃に閉口しながら、ラルフは書庫を抜けて書字室に足を踏みいれた。
 アルカードは書見台によりかるようにして、分厚い革装の書物にかがみこんでいた。
 書見台のふちに肘をかけ、少し身をひねって真剣な顔をしている。くっきりとした横顔が、白い光に縁取られ
て見えた。開け放たれた窓から射しこむ陽光が、肩に流れる銀髪の上で楽しげに踊っている。
 手にしたペンを口もとに当てて少し考え、頁の余白にいくつかさらさらと書き込みをしてから、初めて気づい
たように顔をあげて、ラルフを見た。
「ラルフ? どうかしたか」
「どうかしたか、じゃない」
 ラルフは相当むっとしていた。
 こちらがあれほど心配して朝食を丸のみにしてまで来てみれば、当の相手はしごく平穏なようすで、かび臭い
紙束を相手に一心になっている。足音荒くラルフは書字室に入っていった。 <> ラルアル3/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:10:14 ID:Y0DFbPWe<> 「こんなところで何をしてるんだ。そんなもの広げて」
「ベルモンド家の過去の記録に目を通していた」
 さっきまで書き込みをしていた書物の頁にいつくしむように指を走らせる。
「すばらしい家系だな、おまえの家は。ここまで詳細に魔物やそれに関する知識を、偏見なく集めているとは驚
いた。しかもそれをほぼ四百年近く続けているとは、なまなかなことではない」
「世辞はいい。何をやってたかと聞いてるんだ、何を」
 ラルフの機嫌は少しもよくはならなかった。
 ほとんど身ひとつでやってきたアルカードのために、今ラルフは近在の仕立屋に、彼の身体にあわせた服を急いで
仕立てさせているところである。
 だが、出来上がるまでのつなぎにと出したラルフの昔の服は、急いで裾と着丈は詰めさせたものの、肩幅と腰
まわりの差は詰めるくらいではどうにもならなかった。
 結果、現在のアルカードは華奢な身体にラルフの大きすぎるシャツをまとわりつかせ、余ったところを折り返した
袖口から細い手首を覗かせている。同じく子供の頃のラルフのものだった短靴を履き、インクのしみのついたペン
を手にしたところは、まるで十二、三の少年のようだ。
 それでいて、ふだんとあまりかわらない老成した口をきくのがいまいましい。怒っていいのか笑うべきなの
か、ラルフには見当がつかなかった。
「よく調べられた記録ではあるが、やはり残念ながら抜けや、勘違いがところどころ目につく」
 アルカードはまたペンをインクにつけ、先ほどの続きにまた一言二言書き足した。
「私にわかる範囲でそのあたりの修正や、注釈を入れさせてもらっている。おそらく誰かが翻訳しかけたまま中
断したと思われる魔術書も見つけたから、それもひと月そこらあれば完成させられると思う。もはや古くなって
いる知識も多いから、そちらは私が新しく書き直しておく」 <> ラルアル4/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:11:05 ID:Y0DFbPWe<> 「書き直しておくって、おまえ、読み書きができるのか?」
「ラルフはできないのか?」
 意外そうに問い返されて、ラルフは返答につまった。
 むろん、できないことはない。荘園主として処理しなければならない書類や監督すべきことがらを考えれば、
ある程度の読み書きはできなければやっていけないし、キリスト教徒として育てられた人間として、聖書もそれ
なりに拾い読み程度はできる。
 しかし、だからといって分厚い本を自由に読みこなしたり、それについて注釈を書いたり、外国語の本を翻訳
したりすることはまったく別次元の問題である。荘園関係の書類はある程度の定型があるから限られた単語さえ
覚えていればなんとかなるが、自分の考えを自由に文章で述べるというのは、ラルフにとってはまったく理解の外
の話だった。ましてや、見る気もしないようなぎっしり字の詰まった書物をらくらくと読み、さらにその翻訳
や、間違いまで指摘するに至っては。
「それは、まあ、一応できるが。翻訳って、おまえドイツ語以外にも何かできるのか」
「ラテン語とギリシャ語に関しては、とりあえず不自由ない」
 あっさりと言って、アルカードは頁をめくった。
「あとは英語と、フランス語とイタリア語か。イタリアに関しては方言が多いので、全部というのは無理がある
が。ルーン文字を習ったときに、ゲール語とオック語も少し教わった。トルコ語も一応理解はできる。東洋の言
語は独特で興味深いが、文字が難しいのでなかなか覚えきれない。研究の余地があるな」
 ラルフはあいた口がふさがらなかった。
「それだけ、全部、か……?」
「人間の言葉なら、だいたいこれだけだと思うが」 <> ラルアル5/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:12:01 ID:Y0DFbPWe<>  ということは、人間でないものの言語もあるのか、と訊こうかと一瞬思ったが、訊いたらもっと恐ろしい答え
が返ってきそうでやめた。
「本は、好きだ」
 古びた羊皮紙の頁をたどりながら、アルカードは懐かしむように目を細めた。
「幼いころはたいてい、城の図書館が遊び場だった。手当たり次第に本を選んでは、図書館の主に読み方を教え
てもらった。『書物とは、すなわち知識。正しき知識とは、まさにこの世の何にも勝る宝でございますぞ、
若君』というのが爺の口癖だった」
「俺は理解できんな」
 アルカードが昔のことを口にするのは珍しかったが、ラルフはやはり不機嫌だった。
 あまりの世間知らずぶりに忘れていたが、アルカードは魔王の一人息子なのである。
 魔王たるドラキュラ公は、人を攻撃しはじめる以前は魔道の研究者としても名を馳せ、噂ではあるが人間の学徒を
城に入れて禁断の知識を分け与えていたという。そういう父の息子が、それなりの教育を受けていないはずはな
いのだった。人間で言えば、皇帝の息子なのだ。皇帝の息子が皇子らしい学問を身につけているのは当然だろう。
 しかし、ここまでずらずらと教養の差を、それもあたりまえのように並べられるといささらむかっとくる。
写本の、ずらりと並んだ文字に混じったアルカードの瀟洒な筆跡を横目で見て、ラルフは鼻を鳴らした。
「こんなもの黴くさいもの読まなくたって、毎日きちんと鍛錬をして技を磨いていればどんな相手にも負けは
しない。だいいちこんな埃だらけの場所、いるだけで息がつまるし肩が凝るだけだ。こんな蟻の行列みたいな
もの頭に仕込むより、外で型の一つも身体に覚えさせたほうがずっといい」
 アルカードは目をあげてラルフを見た。
「な、なんだ」 <> ラルアル6/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:12:50 ID:Y0DFbPWe<>  蒼い瞳に凝視されて、心ならずもラルフはあわてた。
「なんなんだ一体。言いたいことがあるならさっさと言え」
 長い沈黙のあと、アルカードは黙って横を向くと、使い古した羊皮紙の切れ端と、ペンをとってぐいとラルフに差しだした。
「な、なんだ? なんのつもりだ」
「座って、今から私が読む文章をそこへ書け」
 有無を言わさぬ口調でアルカードは言った。
「『アルラウネは人間の女の上半身と植物の下半身を持つ魔物である』だ。さあ、座って、書いてみろ」
「ちょっと待て。なんで俺がそんなことを」
 アルカードはふたたびじっとラルフを見つめた。
 ラルフは身を引き、唸り声をあげ、何度も視線をそらそうと努力してから、罵りの言葉とともに紙とペンを受け
取って、樫の大テーブルに腰をおろした。
「どうした。手が動いていないが」
「……文章を忘れた。くそっ、もう一度言え、もう一度」
 結局アルカードは同じ文章を三度くり返して読み、さらにもう一度、一語ずつ区切ってゆっくりと読み上げること
となった。
 罵りと唸り声と呪いの言葉だらけでやっと完成した書き取りを手に取ってみて、アルカードはまたもやしばらく
沈黙していた。
「これは……なんというか、その」
 ようやく、ぽつりと言った。
「非常に──個性的な、字だな」 <> ラルアル7/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:13:29 ID:Y0DFbPWe<> 「下手なら下手とはっきり言ったらどうなんだ、畜生め」
 今やラルフは完全にかんかんだった。開き直って椅子にもたれかかり、腕組みしてふてくされたようにそっくり
かえる。
「下手で悪いか。どうせ字を書く機会なんざ、書類にサインする時くらいしかないんだ。意味さえわかりゃたく
さんだ。違うか、ええ」
「綴りと文法もきわめて独創的だ」
 ラルフの開き直りは無視してアルカードはペンをとり、『独創的な』綴りと文法のあたりに印をつけて修正した。ラルフ
の断末魔の毛虫がのたくったような筆跡の下に、さらさらと正しい文章を書きつける。
「しかし、これでは書いた人間以外の者が読めない。それでは文字を書く意味がないだろう。次は、これを写し
てみろ」
 と、別の紙を滑らせてよこした。
 反射的に拾いあげてみて、ラルフは後悔した。アルカードが本から書き抜いたらしい文章が、何行かに渡って書き
つけられている。
「おい、なんだこれは一体。何のつもりだ」
「せっかくこれだけの宝があるのに、利用しないのはもったいないだろう」
 かたわらに積みあげた分厚い本と、隣の蔵書庫を目で示してアルカードは言った。
「その調子では、どうやら一冊も読み通したことがないようだ。当主がそんなことでは、私も注釈を書く
はりあいがない」
「それで俺に今さら読み書きの練習をしろっていうのか? 餓鬼か俺は。エルンストみたいなこと言いやがって、
あのなアルカード──」 <> ラルアル8/8<>sage<>2006/02/15(水) 23:14:29 ID:Y0DFbPWe<>  そこでまた、アルカードの視線にぶつかった。
 とたんに抗議が喉につまる。さんざんぶつぶつ言い、目をそらそうとし、席を立つむなしい努力をつづけた
あと、ついにラルフは降参した。
「えい、くそっ」
 ペンを折れんばかりに握りしめ、仇を見るような顔で羊皮紙を睨みつけて、ラルフは背中を丸めて課題に襲いかかった。
「畜生。見てろ、こんな蟻の行列、歩く鎧の集団に比べたら楽勝だ。俺がこんなものに臆すると思ったら大間違
いだ、後悔するな、くそっ、畜生」
「その意気だ」
 平然とアルカードは言って、書見台に向きなおった。
「それから、できれば綴りと文法に関する独創性は控えめにしてくれると助かる。誰でもおまえと同じ発想が
できるわけではないからな」
「……おまえ。実は楽しんでるだろう」
 歯を剥いてラルフは唸った。
「別に。ただ面白いとは思っているが」
「同じことだ、こん畜生」
 ──形のいい唇の端が、わずかに上がっていたかもしれない。
 そのままアルカードは注釈の作業に没頭し、その涼しい横顔に恨みの視線を投げながら、ラルフは、鞭の一撃では
打ち倒せない生まれてはじめての敵に、必死の戦いをしかけていった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 23:16:07 ID:Y0DFbPWe<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧攻めのでかい服着る細っこい受モエモエッテコトデ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 23:18:24 ID:mn7yVDIl<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ガソバの冒険、原作版で如何様×学者風味
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  花のイタリー新婚旅行編のつもり。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 不良×インテリ萌え〜
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |


<> 如何様×学者 1<>sage<>2006/02/15(水) 23:21:19 ID:mn7yVDIl<> 花の絨毯。
そう言ったのは、誰だったか。
「まさしく、だな」
むせ返るほどの香り、色の洪水。
自分を取り巻くその景色に、如何様は思い出したように呟いた。
今や皆が認めるリーダーとなったガン場の冒険者一周年記念と、紆余曲折を経て結ばれた
詩人と渚の新婚旅行を兼ねた旅。その目的地、イタリーのベトララは、今、一面見事な花畑だった。
ひときわ鮮やかに花の咲き乱れる一角で、どっと笑い声が起こる。
見れば、詩人と渚が引っ張り出され、皆から冷やかしの言葉を浴びせられている。
新婚旅行、とは言うものの、騒ぎ好きの連中が一緒では、結局は披露宴の馬鹿騒ぎの続きとなるのだ。
困ったように瞳を見交わしながらも嬉しそうな二人に、如何様もまた一声野次を飛ばすと、
もう一人の主役へと目を転じた。
ガン場を取り囲む一団もまた、大いに盛り上がっていた。一年前の再戦とばかりに、
ガン場と酔書が相撲を取っている。あの時は確か引き分けだった。今回も膠着状態に
陥っている二人にそれぞれ声援が飛ぶ。引き分け、の声が上がろうとした瞬間、ガン場の体が宙に浮いた。
「まだまだ負けるつもりはねえぜ」
酔書は笑って豪快に酒をあおった。投げ飛ばされたガン場は、ちくしょう、と叫ぶと、
負けじと酒瓶を手に取った。どうやら今度は飲み比べらしい。
しかしこれはさすがにガン場に分が悪いだろう、と如何様は心中で苦笑する。
他に何か面白い肴はないものかと軽く巡らせた視界の端に、宴の輪から一人離れる影を認め、
如何様もその場を離れ、影を追った。 <> 如何様×学者 2<>sage<>2006/02/15(水) 23:23:43 ID:mn7yVDIl<> 「よう、学者。何こんなとこで一人寂しく飲んでんだ」
かけられた声に学者は振り向き、
「なに、静かに花を愛でるのもなかなか良いものでな」
酒のせいか、あるいは花の香りに酔ったのか、いつも厳めしい顔を綻ばせて応えた。
それを意外に思うと同時に、そういえば、あれはこいつの台詞だったと得心する。
その如何様の口元にかすかに浮かんだ笑みを揶揄ととったか、学者は片眉を上げ、
ことさら皮肉めいた口調で訊き返した。
「君こそ戻らないのかね。わざわざわたしに付き合ってくれなくとも構わないのだが」
「おれは、」
如何様は学者の隣に腰を下ろし、そのままごろりと横になった。片腕で頭を支え、
顔を学者へ向ける。
「そうだな、…ま、おれはおれの花を愛でるさ」
――この、花の絨毯の中。
ふ、と視線が絡んで、離れた。先に逸らしたのは、学者だった。
前方に向き直って杯を傾けるその横顔を眺めながら、如何様は思う。
 
――この男との間には、どんな目が出るのだろう。

どうやら、面白い賭けになりそうだ。
頭の隅で、今はもう、砕けてないはずのサイコロの転がる音が聞こえた。  <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 23:25:58 ID:mn7yVDIl<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ドンナニカッコヨクテモネズミダケドナー
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/15(水) 23:48:44 ID:3SWCZBWK<> >>69
ギャー!ねずみモエス… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 00:15:07 ID:xwNy1t8I<> >>65
禿げしく和んだ(*´∀`*)
子供みたいだな二人共、可愛いなぁもう!(*´∀`*) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 00:39:00 ID:cayeBj7U<> >>69
萌えさせていただきました。GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 00:39:00 ID:47qFyrcW<> >>65
テラポワワ・・・・*
二人ともかわいいなぁ。
扉の影でエルンストが坊ちゃまがついに・・とか感涙に咽んでそうだ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 01:11:01 ID:d9ukEPz3<> >33

( ;д;)………GJ!!!


TもYもいいが、何より委員長に萌えた…。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 02:04:00 ID:FLjO7s6L<> >>69
お れ の 花 ・・・!!!

今まで他のねずみ2匹に萌えていましたが
姐さんのおかげで開眼しました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 04:41:08 ID:Jrg6Ztzi<> >>57-64
GJ! 元ネタをクリア出来なかった惨敗の記憶があるんで
未チェックだったんだけど...保管庫逝ってくるわ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 04:53:50 ID:ZA9PWtmu<> >>50
GJGJGJ!!!!(;´Д`)ハァハァ
続きをワクテカしながら待ちます!とにかくGJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 10:13:13 ID:hjJrRdO1<> >>65
前半のヒキから重いシリアスが来るのかと思って身構えてたら、意表を突かれたw
和んだお(´∀`) <> 寅と鈍太続き<>sageDVDを買う金が無い!<>2006/02/16(木) 15:04:12 ID:tNQpJEbU<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい寅と鈍いアフロのお話の続きだモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ヤれるのかな?結局ヤれないのかな?
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  鈍太視点ダゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  <> 寅と鈍太続き1<>sage<>2006/02/16(木) 15:05:07 ID:tNQpJEbU<> 小寅の唇は、思った通りに少し硬かった。
「……ン」
角度を変えて、深く入り込もうとする舌に幾分か背中がぞわぞわと粟立つ。
そういえばこういう所には監視カメラが付き物じゃないか?
まずい。物凄くまずい。
男同士でキスしてる場面を受付のおばちゃん辺りが目撃しているんじゃあなかろうか。
綺麗なお姉ちゃんがきゃあ恥ずかしいと頬を赤く染めて指の隙間から眺めているのなら良いのに。
って何そのシチュエーション。セクシーな美女がチラ見お姉ちゃん!?エロイよ。エロ過ぎるよ。
あ、やべえ。
妄想力が強過ぎて俺の倅がお早うございますしていますどうしよう。
寝なさい。寝直して下さい。お願いしますから。上に乗っかっていらっしゃる、豪速球のハンサムバカが気付く前に。
「…っあ……」
不意に唇が離れる。
ぼんやりと上を見遣ると、小寅の目が見えた。
小寅の目は赤くなっていて、いつものギラギラが消えている。
可愛いなあ。
鈍太は胸の辺りに湧いてきた柔らかな暖かさを自覚した。
ああ気持ち悪い。もういいわとか思っちまってる俺が気持ち悪い。 <> 寅と鈍太続き2<>sage<>2006/02/16(木) 15:05:52 ID:tNQpJEbU<> でもそのキモい奴をコイツは抱きたがってるんだよなあ。
抱きたいってえ事は俺はもしかしてキモく無いんじゃあなかろうか。ああなかろうか。
それともキモい奴を抱こうとしているコイツは俺よりもっとキモいのか。
いや違う。小寅はモテる。ハンサムだ。ハンサム様だ。ハンサム万歳。
取り敢えず一旦落ち着こう。深呼吸は無理だから頭の中を整理しよう。
小寅はモテる→モテる小寅が俺の事を抱きたがっている→俺って最高→これからは俺の時代?
いや〜ん鈍太様よ。麗しの貴公子☆鈍太様が来たわ〜。抱いて抱いて〜。きゃーきゃー。
鈍太に群がる美女。振り向けば美女。町中が美女。到る所で美女。美女が鈍太にキスをする。鈍太で揉めて喧嘩する。
広告塔に鈍太。電気屋のショウウインドウに並んだテレビに映る鈍太の笑顔。
鈍太のCDがメガヒット。瞬く間に売れていく鈍太の自叙伝。空に浮かぶ雲も鈍太。
可能姉妹も椙本アヤも伊川晴香も若ちゃんも、みんなみんな鈍太に夢中。
ならねえー!!!絶対ェならねえ!なって欲しいが有り得ねえ。
つうか整理したいの!脳みその中をnmの狂いも無く綺麗さっぱり整理整頓したいのよ!
そして服を脱がすなー!小寅が俺を襲つてゐるー!!!
ぎゃあと叫びたいが声が出ない。鈍太の喉はひぃひぃと空気を押し出してばかりいる。
混乱し過ぎて声帯もイかれてしまったのか。役立たず。
寧ろ小寅は先刻の妄想でにやけた俺の、それはそれは気持ちの悪うい顔を見ていないのか。見てなかったのね。
だってコイツ俺の首筋噛み噛みですもの。俺はおいしくありませんってば。 <> 寅と鈍太続き3<>sage<>2006/02/16(木) 15:06:39 ID:tNQpJEbU<> 噛み付くようなキスの嵐が唇は勿論、首やら胸元やらに降り注ぐ。
痛い痛い痛いですよ痛いですってば痛えっつってんだろうがごめんなさい何でもありません。
あ、泣きたくなってきた。泣いても良いかな。泣いちゃおうかなあ。
最後の抵抗とばかりに鈍太は小寅を殴った。
うまく力が入らないそれを防ぐでも避けるでもなく、小寅は鈍太をしげしげと眺めている。
……睨んでるよ。思いっきり睨まれてるよ俺。そんなに気に入らないのかよ。
気に入らないなら見るんじゃねえよ。つうか抱いてんじゃねえよ。
鈍太の目から涙が零れる。零れた涙を小寅が指先で掬い取る。
と、消えそうな声で小寅は一言、呟いた。
「……嫌か」
      今   更   !   ?
「嫌に決まってんだろうが〜〜〜!」
その後、鈍太の放った拳が小寅の顎に華麗に決まった!――
――訳もなく、文字通り幻のストレートアッパーとなり、避けるついでに流れるような身のこなしでベッドに押し倒されて、
いやあああ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!と絹を裂くような鈍太の悲鳴が夜空に響き渡った。 <> 寅と鈍太続き4<>sage<>2006/02/16(木) 15:07:50 ID:tNQpJEbU<> 結局。
ヤれたのかヤれなかったのかどうかは定かではないが、
強制的に仲良く指を絡ませ手を繋いで高そうなラブホテルから出て来る二人の姿があった。


そしてそれを誰がどう見てもバレバレの挙動不審さでもって
電信柱の影から目撃していた隆二の姿も、ついでにあったのだった。 <> 寅と鈍太続き<>sageつうかDVD買っても見る暇が無い!<>2006/02/16(木) 15:09:40 ID:tNQpJEbU<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ぬるぽ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

ヤれる所まで書きたかったが最後まで残っていたちっぽけな羞恥心が欲望を食い殺しました。
次があったら、今度はきちんと整った形で投下したいと思います。
終わりにGJとエールを下さった姐様方に御礼を述べて、私の挨拶と代えさせていただきます。
ご清聴、有り難うございました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 15:10:51 ID:tNQpJEbU<> そしてネズミに禿げ萌えました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 15:30:34 ID:whLl3GDB<> >>84 自分もネズミに萌えたけれど84にも萌えたよアリガトウ。
アフロカワユス。ごちそうさま。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 15:40:37 ID:HZXt8n49<> >>84
ガッ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 17:33:46 ID:Id7t14jO<> >84
ちくしょう… モ エ タ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 18:06:32 ID:2H5ljuwt<> >84
萌えました。アリガタイガー!

>空に浮かぶ雲も鈍太。
が妙にツボですた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 19:10:06 ID:q3HK4xj4<> 新スレになってから、良作大杉!萌え疲れて幸せじゃ〜(*´∀`)ポルァ

アフロ×バイザーGJ!!委員長素敵だ!
寅鈍GJ!!ギャグセンスも最高だ!

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 19:23:04 ID:ZA9PWtmu<> >>84わー!もうキテター!!ε=(*゚∀゚*)=з
姐さん…もしや姐さんは訓区かい…?訓区が書いた801小説みたいだった…(*´д`*)描写が上手いよ、姐さん!GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/16(木) 19:52:43 ID:z+pMxEQK<> >84
乙。
軽妙な文章オモシロス&両思いなのか何なのかわからん二人に萌えマスタw <> 誰でしょう<>sage<>2006/02/17(金) 21:21:05 ID:F5njIyoi<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  「ナマモノデス」だと。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 誰でしょう1/3<>sage<>2006/02/17(金) 21:22:11 ID:F5njIyoi<> 月が少し高くなる。
風が冷たい。
男は2・3歩前を歩く彼の小さな背中を見ている。
街灯に照らされる背中は、子供の頃と変わらないように見える。
「なあ」
不意に彼が話しかける。
小走りに彼の隣へ並ぶ。
「なに?」
二人とも前を向いたまま、並んで歩く。
「明日、六甲行こうや」
「なんで?」
「遊びに」
「やからなんで?」
「うっさいなあ、俺が行く言うたら行くんじゃ!」
急に語気が荒くなるのは彼の癖だとわかっていても、つい驚くのはどうしてなのか。
「ええけどやー、明日雪降んで」
「マジで?」
「今、俺がそう決めた」
そう言ったとたん、彼は男の頭を叩いた。
「ったー」
「今決めた。雪、降っても行く。ぜった、行く」
怒ったように言い放ってから、隣にいる男を振り仰いで、
「な?」
同意を求めて笑う。 <> 誰でしょう1/3<>sage<>2006/02/17(金) 21:22:57 ID:F5njIyoi<> (こいつ、ずっるいなあ)
いつもいつも、この幼げな笑顔に何もかも許してしまう。
さっき怒ったばかりだというのに、もう上機嫌になっている。
両手をポケットに突っ込んで俯き加減で歩く男の前に、彼の右手が突き出された。
「なんやねん」
「モク」
仕方なく内ポケットを探って、セロハンに包まれた箱を取り出す。
「…一本しか残ってへんわ」
「せやったら頂戴」
「お前ってなんでそうやねん」
と言いながらも彼の前に煙草を振り出し、火を点けてやる。
深く吸い込む息の音が聞こえるような気がする。
吐き出した煙の行方を目で追う。
白いのは煙草の煙なのか彼の息なのかわからない。
彼が火の点いた煙草を持った指を男の顔の前に出す。
男はそのまま煙草を銜えて、煙を吐く。
彼の息と男の息と煙が混じり合って白く流れていく。
交互に煙草を吸いながら、しばらく黙って歩いている。 <> 誰でしょう3/3<>sage<>2006/02/17(金) 21:24:05 ID:F5njIyoi<> 彼がまた煙草を口から離して男の前に差し出した時、男が彼の手首を掴んだ。
怪訝に男にむかって仰いだ顔を覗き込む。

唇が重なる。

離れる。

男は照れ隠しに煙草を大きく吸い込む。
「ジブン、何すんねんな」
「ええやん」
「アホや」
(また怒ったやろか)
「アホや」
彼はもう一度繰り返すと、何がおかしいのか
「ははっ」と笑い出した。
その顔を見つめて彼は思う。
俺、こいつが隣で笑っとったら、それでもうええわ。
多分一生、俺の隣におるのこいつだけやから。
伝染したように男も笑い出す。
夜の風に吹かれて訳も無く笑いあいながら、どこへ向かうともなく歩く。
月がまた少し高くなる。
夜は始まったばかり。
「明日、行くで」
「おう」
少し照れくさい気持ちで風に吹かれて歩く。
多分一生、こんな風に二人で。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/17(金) 21:26:08 ID:F5njIyoi<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ぬるくてすまぬ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

番号振り間違えてるし。
<> 風と木の名無しさん<>中途? sage<>2006/02/17(金) 21:28:52 ID:1AU1jiw+<> >>93
GJ!誰だかわからんが自分の萌CPに当てはめて萌えさせて
もらったよ。ありがトン。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/18(土) 21:13:42 ID:QU1jYiLa<> >>93
関西芸人ならほとんど当てはめる事ができるw
マイカプに当てはめてハァハァ。
ありがとうございました。 <> 96<>sage<>2006/02/18(土) 23:11:28 ID:FxTAbrQX<> ×その顔を見つめて彼は思う。
○その顔を見つめて男は思う。

サビで間違えてどうするよorz
>>98-99ありがとう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/18(土) 23:52:15 ID:K0wAEd6q<> >>93
萌えカプを当てはめたら見事にピッタリだった
GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/19(日) 01:04:51 ID:eSONAZKv<> 誰だか知らないけど、創作の自分のキャラに当てはめたら萌えたよ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/19(日) 21:13:10 ID:NmTpdzGS<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ナマダヨ。ジサクジエンガ オオクリシマース!
ビバ!!ヤマナシオチナシイミナシ

『見んでええからな!』と怒ったように云われた時には、はぁ、と笑っただけやったけど、それでも俺らの番組ねろたように流してくるCMをどうやって避けろというのか。
CMが始まった瞬間、その弾けるような音楽につられて顔を上げると、彼のダンス。
これの初見が家で、それも一人で良かった。一瞬アホ丸出しでぽかんとしてもぅたやないか。
「…うっわ〜、おっさん何してますのw」
そらまぁ、そういうCMやるゆうんは聞いてたけどもや。年も感じさせずに弾むように踊りまくる彼から目が離せない。気付けば、30秒Ver.だったであろうそのCMは終わっていて。
「オモロイやん」
ええ年したおっさんがしゃにむに踊ってるんは、かなりオモロイ絵やし、一般的には「かっこいい」と十分言うてもらえるもんになってる。
「なんで俺、見んでええ言われてん?」
ゲイニソである彼がマジ顔を見せるのが、俺は割りと好きなわけやけど。
「…メールしたろ」
見ましたよ、だけ書いて送信。
他のチャンネルに替えたりして、どっかでさっきのCMやってへんかな、とか思う。
意外と早く返信は来て、たった一言。
『見んな!』
「いやせやからもう見ました、て」
と俺が笑たんは言うまでもない。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/19(日) 21:21:05 ID:TaAzRN5B<> >>103
あのCM見たときはびっくりしました
萌えすぎ!GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/20(月) 00:14:55 ID:q3Qp24Z8<> >>103
短い文章でありえんほど萌えた。GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/20(月) 03:16:15 ID:88empJIl<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  へたれオリジナルらしい‥‥。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  吐き出したかったんダネ。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

<> 1/3<>sage<>2006/02/20(月) 03:17:00 ID:88empJIl<>
地方都市で、しかも駅から離れた通りではタクシーを捕まえることも困難だった。
あきらめて歩く覚悟を決めたときに、運良くタクシーが通りかかった。
「駅前の○○ホテルまで。」
そう短く告げて、シートに沈み込み、真っ赤になってしまった手を擦り合わる。
外を見ると、その寒さに反するようにオレンジの街燈が暖かく雪道を照らしている。
そんな風景も、すぐに白く曇って見えなくなった。
タクシーは静かに動き出す。
今日も一日が終わった。明日まで何時間眠れるだろう。
そんなことを考えながら、いつの間にかうとうとしていた。
不意に、タクシーが止まった。
「すみません。降りてもらえますか。」
閑静な住宅街を抜けたところで、運転手は静かにそういった。

「…は?」
俺はあまりのことに呆然とした。
「ちょっと安全運転できそうにないんです。すみませんけど、降りてください。」
運転手は前を向いたままで言った。
その声の静かさに狂気を感じて、俺は背筋が冷たくなった。

<> 2/3<>sage<>2006/02/20(月) 03:17:56 ID:88empJIl<>
「…何を言っているんですか。困りますよ、そんなん。」
本当は怒鳴りつけたいところだったが、外の寒さを痛感している身としては降ろされることは絶対に避けたかった。それでなるべく平静を装ってそういった。
「外、寒いし。駅まで遠いし。ゆっくりの運転でいいから、頼んますよ。」
下手に出ながら交渉を持ちかけながら、絶対にクレームをつけてやろうと思い、運転手の顔と名前が書いてあるカードをさりげなく見た。

「ボク今切ないんです。運転に集中できないんです。」
運転手は、地元であったら車から引き摺り下ろされてボコボコにされてもおかしくないようなことを言った。
呆れてものも言えないが、どこか別のところでは、いい話のネタになりそうなこの事態に喜んでいる自分がいる。ある種の職業病だろうか。

(一体どんな運転手やねん…)

運転手は意外に整った顔の青年だった。名前は、鈴木太郎というらしい。
その顔と名前に覚えがあった。
「……あれぇ、鈴木?」

バックミラー越しに運転手と目が合った。
「…佐藤さん?」

鈴木のほうでも俺には気づいていなかったらしい。
それは五年ぶりの、奇妙な再会だった。

<> 3/3<>sage<>2006/02/20(月) 03:19:00 ID:88empJIl<>
俺と鈴木の出会いは、お笑いの養成学校だった。同期だったが一つ年下の鈴木とコンビを組んでいた。コンビ仲は円満で、学校内での評価も高かった。しかし、困ったことに、鈴木は俺のことを愛していた。たった二年間の間に、それを嫌と言うほど思い知らされた。
俺はだから、鈴木から逃げた。
学校を卒業すると同時にコンビを解散し、俺はピンで舞台に立ち、今では何とか顔を知られるようになった。卒業後、鈴木がどうなったかを、俺は知らなかった。

「…ひさしぶりやな。でもアカンよ、いきなり客に降りて下さいとか言うの」
五年ぶりの再会で小言を言いたくはなかったな、と思う。
「…はい。でもダメなんです。胸が苦しくて、たまにこんなんなるんです。」
弁解するような、言い訳するような言葉に、俺は悲しくなった。
「どっか悪いんちゃうか。医者に診てもらいーや。」
突き放すような俺の言葉に少し傷ついた表情をしたのがバックミラー越しに見えた。
「…もう、平気みたいです。すいませんでした。」
鈴木はそういうと、静かに車を発進させた。

それからはお互いに何も言うこともなく、ただの運転手と乗客として別れた。
しかしホテルに付き、ベットに横になっても、ずっと鈴木のことが頭から離れなかった。
アイツはあんなに駄目な奴じゃなかった…。
そう考えると、悔しさのようなやるせない気持ちが込み上げてきた。
「俺が、逃げたから、か…?」
答えなんて出ないのが解っているのに、そう口に出さずにはいられなかった。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/20(月) 03:21:26 ID:88empJIl<>  ____________
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<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/20(月) 13:09:24 ID:pTSgwpYm<> 続き見てえ〜 <> 小寅→鈍太<>sage<>2006/02/20(月) 16:48:56 ID:I2Suz2G6<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい寅と鈍いアフロのお話の続きだモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  需要〜を無〜視し〜て書いてみ〜た〜♪
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<> 小寅→鈍太1<>sage<>2006/02/20(月) 16:50:54 ID:I2Suz2G6<> 小寅と鈍太はあれから顔を合わせていない。
鈍太が避けている様に、小寅には見えた。
今日も自分が(物理的に)木木谷邸に居る間は、一切帰宅しないつもりなのだろう。
小寅は思う。
彼をどうしたいのか。
「分からねえ」
最初は、笑っている姿が妙に目に付いた。
自分の感情を表現できずに、ただ鈍太を眺めているだけだった。
謝られて、どうして良いか分からずに睨み付けたらまた謝られてしまう。
鈍太は帰らない。帰ってはこない。俺が居る場所へは。
「……青春だねえ〜」
背後から声が届いた。
振り返ると、部屋の入り口に隆二が立っている。
面倒事が大好きなこの男は、気が付くといつも小寅の傍に居る。
「あのさ」
「お前の兄貴が好きだ」
「知ってたよ?」
喉からするりと出てきた、胸に居座るもやもやの答え。だが然し、それはさらりと返されてしまった。
隆二の乾いた笑い声は、部屋の中で驚くほど良く響いた。 <> 小寅→鈍太2<>sage<>2006/02/20(月) 16:54:22 ID:I2Suz2G6<> マジか。
っていうか何で知ってんだコイツは。
目を見開いて顎を前に突き出した小寅に、
「だってさ。見ちゃったもん」
アンタが兄貴と、手ェ繋いで歩いてるトコ――と、隆二は自分の頭をぽりぽり掻きながら続けた。
そうか。見られていたか。小寅の頭が僅かに揺れる。
微かに聞こえる唸り声は「ふうん」と言っている様にも、聞こえなくも無い。
どういう気分なのだろう。隆二は純粋に、気になった。
表情は読めない。隆二が見ているのは、自分が座っている肘掛け椅子の背凭れだからだ。
小寅は怒っているだろうか。可能性としては高い。
それともただ、驚いているのだろうか。
バラしてしまった事を悔いてはいない。
鈍太が築き上げてきた幸せが解れて行く様を、自分だけが知っている。
そんな歪んだ満足感を覚えた。
初めてこの感情が芽生えたのは確かガキの頃で、兄ちゃんよりも筋が良いと親父にこっそり褒められた時だ。
二度目は、兄貴が自慰をしている場面を、計らずも目撃してしまった時だ。
兄貴がオレに与えてくれる、ねじくれた愉悦。
そのまま笑い出してしまいそうで、隆二は静かに口内を噛んだ。
バレてまずいのはこっちの方だ。 <> 小寅→鈍太3<>sage<>2006/02/20(月) 16:58:11 ID:I2Suz2G6<> ふと、小寅の顔が上がる。小寅の視界に、隆二の項が入った。
白い。でも硬そうだ。
似てねえな。小寅は独りごちた。
鈍太は柔らかい。ふにゃふにゃしている。すぐに根を上げるし二言は有り過ぎるし、打たれ弱い。
けれども、我武者羅だ。家族を守る為に、養う為に。
「行くわ」
何処に、とは言わなかった。小寅は隆二の脇をすり抜け、玄関へと向かった。
部屋に残された隆二は、無声音で独白する。
「応援するよ。アンタが、オレから兄貴を奪わないなら」
――奪うなら、潰すけど。そう呟いて暝く光る目を、小寅が居た空間へと移した。

小寅は、のすのすと廊下を歩く。
誰かしら居るはずの慌しい木木谷邸が、薄ぼんやりと静まり返って見える。
何故こんなにも詰まらなく感じるのかが小寅には判断できないでいる。
好きだ、と、言いたい相手が何処にも見つからない。自分はこの感情に気付いたのに。
苛々した頭のまま力任せに玄関の戸を開く。
がらりと聊か威勢良過ぎる勢いで鳴った扉から顔を出した小寅は、
我が家なのに入ろうか入るまいかと憔悴しきるほど困り果てて首をウロウロさせる鈍太と鉢合わせた。
「ひゃあああっ!?」
素っ頓狂とはこのことか。
わあぎゃあ喧しく叫び散らして諸手を上げ、脱兎の如く走り去ろうとしてすっ転び、
立ち上がって逃げようとして自分の右足に左足を引っ掛けてまた転ぶ醜態を繰り返す鈍太には、
「好きだ」と吐き捨てる様にして告げた小寅の声は届いていなかった。 <> 小寅→鈍太<>sageAmazonと脳内格闘中!<>2006/02/20(月) 16:59:48 ID:I2Suz2G6<>  ____________
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もうね、みんな鈍太でラヴコメっちゃえば良いと思うよ。
そしてまだまだ続く。ジレッタイガー!!! <> 風と木の名無しさん<>you! 思い切って買っちゃいなよ! sage<>2006/02/20(月) 18:03:20 ID:OKHhsoiT<> >116
ビバ!ラブコメ!!w w w <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/20(月) 19:38:58 ID:q+yfsRlz<> >>116
グッジョブ!!鈍太…アホの子程かわええ。
次回も楽しみにお待ちしてます。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/20(月) 19:41:00 ID:ZeAmDH/T<> 何コレ萌えるwwww無謀にも映像化希望だよぉー
それでも訓区なら…訓区ならきっと何とかしてくれる… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/21(火) 13:50:43 ID:rITBvEHi<> 訓区って誰? <> 風と木の名無しさん<><>2006/02/21(火) 20:24:53 ID:Oy19B5IJ<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  創聖の悪襟恩のシリ薄×トマ様モナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  悪襟スレ115のネタで書いてみた〜
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/21(火) 20:26:14 ID:Oy19B5IJ<> ひいっ!
上げた…!よりにもよって自分のヘヴォンを晒しage…
不幸だわ…orzでももう引くに引けない。不幸最低拳並に不幸だわ…。ああ… <> 1<>sage<>2006/02/21(火) 20:27:18 ID:Oy19B5IJ<> 「トーマ様…」
囁く様な声と共に、唇が寄せられた。
息遣いと微かな唇の動きだけで笑みを形作り、トーマは目を閉じてそれを受け止める。
物慣れぬ風な、ぎこちなさの残る口付けに応えながら、トーマはそっと手を伸ばして艶や
かな金糸を優しく撫でてやった。

哀れな子供―…。
羽無しと天翅、双方の血を継ぐ故に、羽無しの世界に馴染む事も出来ず、また天翅の世界
においてもトーマの庇護無しには存在を許されない。
想いを寄せた少女は天翅の血故にその手を離し、唯一血と魂を分け合った妹すら、彼の手
を離れて行った。この世の何処にも寄る辺の無い、淋しい子供。
その孤独故に、唯一人手を差し延べたトーマを切ないまでに求めているのだ。
―憎まれているとも、知らずに。

トーマは彼を憎んでいた。誰よりも愛した男の、裏切りの証である彼を―。

次第に熱を帯びる口付けに、時折焦らす様に舌を絡めて応えながら、
トーマはゆったりと体を後ろへと倒し、絹の褥にその身を横たえた。
組み敷く形になったトーマに体重をかけぬ様手足で体を支えながら、
まるで母に縋りつく淋しい子供の様に唇を求めるシリウスの背を、トーマは白い手で愛しげに撫でてやる。
それに勇気付けられた様に口付けは深くなり、静まりかえる室内に、濡れた音だけが響いた。
<> 2<>sage<>2006/02/21(火) 20:29:23 ID:Oy19B5IJ<> やがてゆっくりと唇は離れ、互いに名残惜し気な溜息を漏らしながら、
額や鼻先、頬に小さな口付けを落としあう。
『上手になったね…翼…』
最初はあんなにぎこちなかったのにねと、笑みを含んだ翅音で囁きながら
その頬を掌でそっと慰撫すると、シリウスは恥じらう様に目を伏せる。
トーマは小さく笑い、首を伸ばして触れるだけの口付けを与えると、
ぱたりと手を落として寝台に投げ出した。
『今日は…何もしてあげないよ。導いても、あげない』
「トーマ様…?」
怪訝な顔で見下ろすシリウスの、寝台に突かれた腕に自らの翅と額を寄せながら、
トーマは目を細めて誘う様に笑った。
『…もう充分に、教えてあげたろう…?これからどうすれば良いのか…』
だからその成果を見せておくれ…
そう告げて再び手を伸ばし、形の良い耳の後ろに指先を這わせる。
『分かち合おう…聖なる快楽(けらく)を。君と、私で…。愛しい翼よ…』
囁きに合わせる様に耳の後ろに添えた指先をゆっくりと滑らせ、
首筋から腹まで波を描く様に辿らせると、シリウスの喉がごくりと鳴った。
その目の奥にちらつく情欲の炎が、一層強く燃え上がるのを確かめ、トーマは胸の内で昏く笑う。
『さあ…おいで…詩翅…』
「トーマ様…!」
狂おしげな声音で囁いて、シリウスはトーマの細い躯をかき抱き、貧る様に口付けた。
愛しています、と切なげに囁く声を目を伏せて聞きながら、そっとその背を撫で、愛しているよ、と翅音を返す。 <> 3<>sage<>2006/02/21(火) 20:29:57 ID:Oy19B5IJ<> 嘘ではない。実際愛しいと思うのだ。裏切られてなお恋しい男の遺伝子で形作られたこの体も、
その身に流れる彼の血も。
この淋しい子供を哀れだと思うし、真摯に自分を求める姿を愛しくも思う。
たどたどしい仕草でトーマの衣を脱がせる指先も、若さ故の性急さで合わされるその肌も。
太陽の翼の命を継いでいるそれが触れると思うだけで、魂の奥底から愛しさと幸福がこみ上げてくる。

しかしシリウスの体に流れるもう一つの血が、トーマに底知れぬ嫌悪と憎しみを与えるのだ。
自分からアポロニアスを奪った女の血。その女の遺伝子によって作られた体。
婚約者の裏切りは、シリウスの手首の翅と、女に良く似た金の髪によって体現され、
それを目の当たりにするだけでトーマを苦しめる。

もしも…もしも彼が双方の血を引くだけならば、愛せたのかもしれない。
あの女の魂の半分を、彼が持ってさえいなければ。
その魂が違う誰かの物でさえあれば、きっと自分はこの哀れな子供を慈しみ、抱きしめて、
もう何処にも行かなくていいのだと、此処に居ればいいのだと、偽り無く告げる事が出来たのかもしれない。
他の天翅が何を言おうと守り抜き、シリウスが望むのならば、自分と、太陽の翼の血を引く子供を…
新しい天翅の子を得る事すら、出来たのかもしれない。

しかしそれは虚しい夢に過ぎない。
如何にこの子供を哀れもうと、その内に潜む魂への憎しみを消すことなど到底出来はしないのだ。
自分はこの子供を利用し、使い捨てて復讐を遂げる。その果てに彼は命を失うだろう。
それが変わることなど、最早有り得ない。

自ら教え込んだ手管に身を任せ、切れ切れな喘ぎを洩らしながら、
何処かから最愛の男がそれを見詰めている様な錯覚を感じて、トーマは虚空を見上げ、胸の内で呟いた。

『君が愛した女の魂を持ち、君とあの女の血を引く者が、私によって
快楽におぼれていく様子を見るのはどうだい、翼……』

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/21(火) 20:31:08 ID:Oy19B5IJ<>  ____________
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/21(火) 21:23:56 ID:Z8YDUVU9<> ネタはわからんが>>121-122のうっかりさんぶりに萌えた <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/21(火) 21:52:17 ID:dI501V6w<> エロくてでも切なくて萌えた(*´Д`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/21(火) 23:18:59 ID:EQUmfrli<> >116
ただ ひたすら ありがとう。
隆二がいい味出してて萌え倍増です。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/22(水) 01:25:50 ID:D2wZQ5Jo<> >>121
ドジッ子かわいいよドジッ子 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/22(水) 02:53:08 ID:T7Jg4MxI<> >116
禿萌えた。貞大好きなんだよう!
震えが止まらないよ、ありがとう。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/22(水) 14:23:43 ID:fJrAM+ir<> >121
冷夏乙www
そして萌えました。 <> 寅の子×鈍アフロ<>sageそして今日も懲りずに投下する訳だが。<>2006/02/22(水) 15:51:37 ID:gjhI11Wb<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい虎と鈍アフロの続きだモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  そういえば虎穴に入らずんば虎子を得ずって諺あったよね。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  >>121ノドジッコギガモエス
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 寅の子×鈍アフロ1<>sageそして今日も懲りずに投下する訳だが。<>2006/02/22(水) 15:52:42 ID:gjhI11Wb<> 俺、何でこんな狼狽えてんだ?
此処は俺の家で、家に帰るのは当たり前で、だったらこんなにパニクらなくてもいいんじゃないの??
そう心に決めて後ろを振り向くと、何やらドス黒い空気を発散している小寅が居る。
あーれー。お助けー。
金魚の様に開いた口を開閉させる。声が出ない。本当に使えない声帯だこと。
ひょいと小寅の厳つい肩に担がれて、哀れ鈍太は荷物の様に運び去られてしまった。
「放せええ!降ろして下さーいッ!」
近所迷惑を考えてか、小声で金切り声を上げる鈍太。
けれどもそれは、小寅の背中にしか届かない。
一歩一歩を踏み締める様にして歩く小寅の、少し左右に揺れる振動が鈍太の腹部に伝わってくる。
「何処へ連れて行かれるんでしょうか?」
「怖いんですけどー」
「小寅さーん?貴方の思考が読めないのですがー」
「黙るなよ余計に怖いだろッ!」
足をバタつかせてみる。バタバタバt……簡単に押さえ込まれてしまった。
暴れだそうとする鈍太の脚を片手で抱え込んだまま、小寅は何も答えない。ただ黙って歩いているだけで。
そんな彼の背中で、鈍太は時折チラリと過ぎる嫌ァな展開を努めて無視する事にした。

何されるのかなあ→多分何もしないと思う→そんな訳無えだろ!?
って事はもしかして強姦?→いや、俺、男だし→でも小寅は俺を抱きたい→超が付く程に大いなる危機。

そんな訳でその嫌ァな展開を無視する作戦は全て失敗に終わっている上、更に嫌ァな思考に行き着く。 <> 寅の子×鈍アフロ2<>sageメル欄に同じの二つも…ああ恥ずかしい。<>2006/02/22(水) 15:55:15 ID:gjhI11Wb<> 鈍太が脳内引き篭もりを起こしている内に、小寅はのすのすと歩を進めて止まった。
「……?」
移動しなくなった小寅に何か違和感を感じたのか、鈍太は小寅の背中に大きな疑問符を投げ付ける。
「着きましたかーっつうか何処ですか此処は」
鈍太からは道路と車と建物と自分達から目を逸らして早足で歩き去る人と電柱しか見えない。
と言うよりも、見え過ぎてはいるが肝心の小寅の目的地が見えていない。
「……家」
小寅は端的に答える。
近ッ!!! 世界が非常に狭く感じる!? 俺の家から徒歩何分よ。マジで。本気と書いてマジで。
突っ込みたい所が色々と有り過ぎて逆に突っ込めない鈍太を無視して、小寅は自分の目の前にある建物のドアを開けてのすのす中に入って行く。
無論、鈍太を担いだまま。
「いやいやいやちょっと待とう冷静になろう股下の長ァ〜いお姉ちゃんはどうした?」
「帰った」
「ノォ―――――!!!!!」
「黙れ」
「はい分かりました御免なさいもう一ッ言も喋りません」
「……」
「……喋っちゃってるよ! 俺スッゲー喋ってるよ! そこ突っ込めよ!! 今! 正に!!」
ほぼ一方通行な言葉のキャッチボールの間にも、小寅の足はのすのす動く。
階段を上り踊り場に出てまた階段を上り、幾つかあるドアの一つの前に立った。 <> 寅の子×鈍アフロ3<>sage<>2006/02/22(水) 15:56:13 ID:gjhI11Wb<> がちゃり。小寅は玄関の鍵を外してドアを開ける。
中に入り、無造作に鈍太を降ろす。
ぎい……ばたん。ドアが閉まる。ドアから見えていた、外界の美しい輝きが細くなって消える。
鈍太には、それがまるで最後の希望が潰えた瞬間である様に思えた。
小寅に命ぜられるがままに、焦って靴を脱ぐ。何とか脱げた。右腕を引っ張られて立たされる。
あああああ〜〜、と情け無い声を絞り出す鈍太の肩を乱暴とも言える手付きで押しやる小寅。
小寅に一押しされてよろけて後退した所で、また肩に手が飛んでくる。
ひいひい喘ぐ鈍太の目には恐怖からか、薄らと涙が滲んでいる。
両手で顔を庇い、体を竦めて落ち着か無げに小寅を見遣る様は、もう完全に典型的な苛められっ子だ。
一際近付いて来る小寅に怯えて、鈍太は力の限り目を瞑った。
「……?……??」
鈍太が細心の注意を払いながら目を開くと、そこは殺風景なダイニングだった。
きょろきょろと辺りを見回すが、小寅の姿が見えない。それはそれで不安になってくる。
「こ、小寅さ〜ん?」
「何?」
突然、背後から小寅の唸り声が聞こえた。
「ぉぅうわッ!!!!」
心臓が飛び出しそうな程に吃驚した鈍太が文字通り飛び退りながら振り向くと、目の前に円筒状のモノが差し出される。
鈍太は其れを、もう心臓がバックバク言っている状態で受け取る。冷たい。見ると、烏龍茶の缶だった。
小寅は鈍太が缶を手に取るのを確認して、自分の缶をガシュっと開けた。
<> 寅の子×鈍アフロ4<>sage<>2006/02/22(水) 15:57:09 ID:gjhI11Wb<> 缶を開ける時の唇を尖らせた小寅を、鈍太は自らに渡された缶を両手で縋る様にして握り締めて、眺めた。
コイツ意外と可愛い所もあるんだよなあ、という思いが胸の奥で湧き上がる。
普段は怖いけど。大体が怖いけど。恐ろしいけれども。時々、小っちゃい所で可愛いんだよなあ。
やめて俺の単純で間抜けでとってもお馬鹿な脳細胞。コイツの何処が可愛いんですか。
小寅はというと、ソファに腰掛けて鈍太を睨んでいる。左手でソファの空いた場所を叩いている。座れ、と催促しているらしい。
……やっぱり怖いじゃないですかァ―――ッ!!!
しかしそう言える筈も無く、大人しくソファの端っこに浅く座る。
乗り物酔いに似た眩暈が鈍太を包んでいる。うん、まあ乗ってたしね。運ばれてたしね。小寅に。
「飲め」
「はいぃ!」
鈍太はプルタブを引っ張り缶を開ける。そのまま一気に中身を呷ると、幾分か気管に入ったらしく咽た。
空になった其れを小寅が持ち去る。少ししてガコン、と音が鳴り、小寅が帰って来る。
小寅がゴミ捨てに!?うわ有り得ねえ衝撃映像。
どさり。ソファが揺れる。小寅が座ったからだ。
ソファの真ん中に深く座し、背凭れの上に腕を寛げた小寅は、先程よりも明らかに鈍太の近くに居る。
ピーンチ。俺ピーンチ。黒髭よりも一触即発危機一髪。もう自分で意味がワカラナイ。
しかし小寅は何をするでもなく、重い重ーい沈黙が部屋中に広がった。
「……あのー」
先に根を上げたのは鈍太だった。 <> 寅の子×鈍アフロ<>sage飽きられても書く!!アタシ勝手に決めた!!<>2006/02/22(水) 15:59:10 ID:gjhI11Wb<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |             ↑の諺の意味を二択で答えよ。
 | | □ STOP.       | |                  1:っていうか入っても入らなくても虎の子に襲われちゃう。
 | |                | |           ∧_∧ 2:アフロは虎穴に入らずに、これ幸いと逃げ出す。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

正解は『2の行動を取ろうとしたが、何か分からない内に1になる』です。 <> 拙者スレ1<>sage<>2006/02/22(水) 17:01:36 ID:AT7CduP8<> >PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


――時は、戦国。

闇の中に、刃の打ち合う音が閃く。
ここはとある国の山奥。
余り手入れされていない木々が覆う陰鬱とした場所を、薄く雪が覆う。
薄く白い敷物の上を、幾つもの足跡が踏み荒らし赤が穢していく。
汚い毛皮を纏った男が振りかざした山刀を刀の鍔で受け止め下方に流すと、
空いた腹部に蹴りを入れてから、少年は周囲を見渡した。
すぐ近くに、兄とその従者たる年配の男を認めて、少しだけ息を付くが、
すぐに意識を対峙する男へと引き戻す。
体勢を崩した男が山刀を引き戻して、こちらに突きを入れるのを半身になって躱し、
切迫して斬撃を送る。 <> 拙者スレ2<>sage<>2006/02/22(水) 17:03:36 ID:AT7CduP8<> 少年は、兄と年配の従者との三人で旅をしている。
兄は武道に優れており、故に様々な道場から師範として招かれる事が多かった。
少年も彼の指導により、まだ元服前ながらもかなりの腕前にまで成長していたが、
修行のために兄の旅に付きそう事が多かった。
とある冬の事、兄は少年と従者を伴い、山を1つ越えた所にある村にまで指南の旅に出た。
その帰り、滅多に風邪を引かない兄が熱を出してしまい、とりあえず山の所々に設置されている、
旅人が身体を休める為の小屋にて休息する事にした。
山小屋の周囲を人が取り囲んでいると認識したのは、誰が最初だったか。
押し殺した息と緊迫した空気に気づいた三人は、なるべく気づいたことを悟られないように、
物音を立てないように気を付けながら周囲を片付けると、刀を何時でも抜ける状態にしてそこを出た。
程なく、彼らを山賊らしい数人の男達が取り囲む。
彼らは通行料として、少年の兄を要求した。兄は端麗な容貌をしており、
それが欲しいと下劣な欲望をぶつけて来る。
当然ながら兄がそれを拒否するや否や、山賊達は刀を抜き斬り合いになった。
兄は体調不良により普段の力が出せず、少年も兄と戦闘に不慣れな従者とを補佐しながらの戦闘故、
なかなか相手を倒す事が出来ない。
足場も雪と泥でぬかるみ、木が視界の邪魔をするなどと決して良い状態ではなく、
戦闘は長引いていた。

山賊達の頭領らしき髭面の男と切り結んでいた兄が、突如屈み込んで大きく咳き込んだ。
「兄上っ!」
すぐ近くにて別の山賊に立ち向かっていた少年が、突風のようにそちらへと突撃し、
兄に向けて薙がれた槍先を弾き飛ばす。
「すま、――…ん…」
兄の表情には、疲労の色が濃く浮かんでいる。常よりも朱い皮膚と
肩が早く上下する様に少年は唇を噛むと、兄を護りつつ体勢を取り直してから、
髭面の男に声を投げ掛けた。 <> 拙者スレ3<>sage<>2006/02/22(水) 17:05:18 ID:AT7CduP8<> 「話があるッ! 一旦、戦を取り止められよッ!!」
少年の高い声に、髭面の男は半眼になり嘲笑の笑みを刹那零す。
が、周囲を見渡すと、他の山賊達も傷を負い疲労が強くなっている様子であり、
髭面の男は舌打ちすると手を掲げて、攻撃の一旦中止を周囲に伝えた。
やがて、幾つもの殺気が、少年と兄、そして従者を取り囲み直す。
それに臆する事なく、少年は髭面の男に語り掛けた。
「貴方達の目的は兄上との事ですね。確かに兄は、武道に優れる上、
身内から見ても麗しい容貌をしていると思います。
欲しくなるのも道理でございましょう」
当然だろう、と云わんばかりに頭領らしき男が鼻を鳴らす。
「ですがこちらにとっても、兄上は大事な者。
それに、今は病の身の上故、無理をさせる事など出来ませぬ」
突然話を始めた少年の意図が掴めず、兄は苛立ちに眉根を寄せた。
構えた刀の柄を強く握るが、そこに従者の手が肩に伸びて、かろうじて押しとどまる。
「そして、貴方達もこれ以上血を流す事は望んでいない筈」 <> 拙者スレ4<>sage<>2006/02/22(水) 17:07:26 ID:AT7CduP8<> 静かな声がその次に紡いだ台詞に、台詞に、思わず兄は全てを忘れて
叫びそうになった。が、従者が肩を強く掴む力に、
それをかろうじて自分の内だけに押し止める。

「故に…今回は、拙者が参りましょう。ですから、兄上は逃してくだされ。
…確かに拙者は、兄に比べれば劣る所ばかり目立ちまする。
されど、同じ血を受け継ぐ身なれば、暫しの間の慰みに位なら、なるのではありませぬか?」
荒れ狂う兄の心など素知らぬ振りで、少年は言葉を続けた。
「この条件を飲むのならば、そして兄の安全を確保してくれるのならば」
自分の手に握った、血に塗れた刀。それを地面に放り投げる仕草をする。
「抵抗を止めましょう」
やや低めた声が、何処か甘く誘う台詞を紡ぐ。
まだ幼さの影は残るものの整った顔の輪郭を、その真意を、
男達の視線がまさぐるように巡った。
血走った瞳、欲望の滾る瞳、幾つもの眼差しが少年に注がれる。
それに気圧される事なく、少年は云う。
「この条件が飲めないのならば」
唇の片方が、ほんの少しだけ上がる。顔の半面に塗された血飛沫が
唇の端を赤く染め、唇に紅を差す。
「屍になるまで抵抗致しましょう。
もとより武士の子でありますれば、死ぬ覚悟など幾らでも持ち合わせております故。
その代わり、あなた方も生きて戻れるとは思いますな」
どうしますか? と醒めた眼差しで、己の血まみれの刀と、
男達の顔を交互に眺める。
誘惑するように、刀の切っ先がゆらりと揺れた。
少年から漂い来る気に押され、男達が息を呑む。 <> 拙者スレ5<>sage<>2006/02/22(水) 17:13:39 ID:AT7CduP8<> 「……!」
兄が少年の名前を呼ぶ。
が、早い息と掠れた声は、不明瞭に空気を揺らすだけで音を成さない。
しかし少年は、そちらを振り返ると、小さく頷いてみせた
「兄上、拙者、妊娠するでござる」
一年前に比べて背は大分伸びたとはいえ、まだまだ子供じみた響きの声が紡ぐ台詞。
それは少年が今よりも幼い頃に、兄が投げた戯れ言のひとつだった。
男女のみならず、男でも交わりを重ねれば子供を身ごもる事があるかも知れないと
笑いながら教えた、その時は冗談だった言葉が、今は重みを持って兄の胸を圧迫する。
「だから、今は兄上は逃げてくだされ。拙者の思い違いでなれば、
目的故に拙者を彼らがすぐに殺す事はありますまい」
「そんな…お前を犠牲にさせるなどと」
「助けに来て、下さるでしょう? すぐに」
焦燥感を滲ませる兄の声とは対照的に、山賊達と対峙する時とは異なる、
信頼しきった穏やかな声が兄に向けられる。
刹那のみ、表情が柔らかなものへと変化した。
それに悲痛な表情を浮かべて、兄が頭を何度も振るように、視線を揺るがせる。
が、少年の固い決意が満ちる表情を、その決意を止めさせる事は出来なかった。 <> 拙者スレ6<>sage<>2006/02/22(水) 17:16:01 ID:AT7CduP8<> 熱と今の話の内容とに冒され茫然とする兄を横に、少年と髭面の男とが言葉を交す。
程なく話がまとまったようで、髭面の男が指図すると、
彼の側近らしき男二人をのぞいて、男達はその場から立ち去り始めた。
彼らの姿が木々のむこうがわに消えるのを確認してから、
少年は血糊を懐紙で拭い刀を鞘に収め、それを従者に渡す。
そして、二人の顔を見ないようにしつつ、唇を噤んだまま
髭面の男の方へと歩いて行こうとした。

「絶対助けに、行く…」
むくつけき男達に囲まれた小さな背中に、兄が呼び掛ける。
が、すぐに咳き込んでしまい従者に横から支えられた。
「拙者は大丈夫でござる。だから…」
少年は振り返り、ゆっくりと言葉を口にする。
が、胸の奥から別れたくない、という感情が沸き上って口に上りかけ、慌てて口を噤む。
それから少年は、従者に向けて頭を下げた。
「兄上を、頼みます」

少年が傍に寄ると、側近の男二人がその両腕をそれぞれ抱える。
髭面の男が歩き始めると、側近もすぐにその後を追い、
彼らに引きずられるようにして少年も歩き始めた。
その背を、まっすぐに伸ばされた背中と後ろに括られた髪の揺らぎが、
雪と鬱屈とした緑の中に融け込み消え入るまで、
兄と従者はその姿を見送っていた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/22(水) 17:18:24 ID:eHxbhhIi<> >>139-144
拙者ぁぁぁぁ。・゚・(ノД`)・゚・。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/22(水) 18:23:30 ID:6GsS/AGL<> >>133
禿ニヤワロタ。
鈍の独白が秀逸ですな。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/22(水) 18:37:33 ID:daeLIvk3<> 拙者続きも頼むよMajide! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/23(木) 19:09:27 ID:JBfhh2yZ<> >>138
姐さんのお陰で毎日ここを見るのが楽しくて楽しくて生きる糧にしとります(*´∀`)ポワン

首を長くして待ってるよ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 01:33:21 ID:CFYC4X5+<> >>138
可愛い不器用な2人…展開気になります。
続き楽しみです!いきいきとしたやり取りが楽しいッス。 <> 小寅×鈍太<>sageA止まりですが許して下さい。<>2006/02/24(金) 17:35:34 ID:UbZLYJk2<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい虎と鈍アフロの続きだモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  どちらかと言えば小寅視点だって。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  虎の子ホイホイ!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> 小寅×鈍太1<>sageノ/ッ/ポさんの歌が聞こえて来た…<>2006/02/24(金) 17:37:16 ID:UbZLYJk2<> 口の中で消えてしまうほど小さなその声を、小寅は聞き逃さなかった。
「何だ」
途端、鈍太の体がビクリと震えた。
「かかかか、帰って良いですか?」
遠慮がちに伏せられた目から、小寅に視線が注がれる。声まで震えていた。
「何で」
「な、何でってその……俺は妻子ある身でありますし」
それにほら、俺なんて美味いもんじゃあないですよ、そう言って鈍太は腰を浮かせる。
腕を掴んで座らせる。痛かったのだろうか。鈍太は悲痛な表情を浮かべた。
何でだよ、小寅は思った。従ったと思えば拒絶する。お前は俺に、どうして欲しいんだ?
苛立ち紛れに唇を奪う。固く閉ざされた唇を。
体を強張らせたまま、鈍太は動かない。それが余計に口惜しくて、口内を犯そうと侵入を試みる。
鈍太の体中が閉まっている様だ。きつく目を瞑り、手を握り締め、歯を噛み合せて。
仕方が無いとばかりに小寅は鈍太の喉仏を押した。
堪え切れずに、ぐえ、と息を吐く為に開かれた隙間に忍び込む。
目を見開いた鈍太と視線がかち合った。
緩く開けた目を更に細め、どうした、と声に出さずに聞いた。
嫌々をする様に瞳を泳がせる鈍太が堪らなく欲しくなって、小寅は鈍太を抱き締める。
おずおずと小寅の胸に手を伸ばす鈍太。息が続かなくなったのか、顔を真っ赤に染めている。
――ここじゃ、狭過ぎるな。
ベッドまでの道程が、急に遠く感じられた。 <> 小寅×鈍太2<>sage<>2006/02/24(金) 17:37:54 ID:UbZLYJk2<> 押し戻される前に唇を放す。
鈍太が咳き込み夢中で息を吸う様を、面白そうな顔で暫く眺める。
コイツ真っ赤だな。何かに似てる。何だっけ。そうだ、茹蛸だ。思い至ると、頬の端が引き攣った。
と、少しだけ呼吸が整った鈍太に睨まれる。
血走った目は怒りを露にしていて、小寅にはそれすら心地良い。
「何、笑ってんだよ」
「……?」
「笑うなよ!」
「誰が?」
眉を顰めて首を傾げる。俺とお前しかいないこの部屋で、一体誰が笑うんだ?
小寅の台詞に一瞬、言葉を詰まらせた鈍太はそれでも怯まずに続ける。
「おっ……お前がに決まってんだろ!?」
俺が?
冗談だろうか。然し、鈍太の口調から偽りの響きは聞こえない。
鈍太の喚き声が、何処か遠くで鳴っている。まるでフィルターを通しているかの様に。
耳鳴りが聞こえる。

俺が、笑った?

頭の中が、キイィンという甲高い音で一杯になった。 <> 小寅×鈍太3<>sage<>2006/02/24(金) 17:39:14 ID:UbZLYJk2<> 急に視界が暗くなり、不審に思い我に返ると、鈍太が小寅の目の前で手をヒラヒラさせていた。
聴覚も機能を果たしていなかった様だ。
ゆっくりと鈍太の声が世界に広がる。
「――ぃ……小寅〜? 聞こえてますか〜? つうか生きてますか〜?」
「何だよ」
急の返答に物凄く驚いたらしく、鈍太はうひゃあと悲鳴を上げて後退った。
「っあー吃驚した! ああ驚いた!」
「……煩ぇなあ」
そんなに驚くんだったら呼ばなきゃ良いだろうが。
「だってお前、マジ脅かすなよもーあーまた笑うし! 笑うなっつーの!!」
何が面白いのか、吹き出して笑いながら尚も言い続ける鈍太の口を塞ぐ様に、
或いはカラカラになった心の何処かを癒す様に、小寅は又もや唐突に鈍太にキスをした。
鈍太は少し体を硬くするが、やがてやれやれという風にそれを受け入れた。
「……ッう、…ふ…・・・」
先刻までの性急さを詫びるかの如く、小寅はゆっくりと鈍太の口内を愛撫する。
項を掴んでいるが、其処に然程の力を込めずに済んでいるのは、鈍太が抵抗していないからだろうか。それとも単に諦めたからだろうか。
腰に手を回して引き寄せると、ソファに座っている筈の鈍太はそれでも小寅にしがみ付いてきた。
そうしなければ自らが奈落の底へでも落ちて行ってしまうかの様に。
要望に応えて抱いた腕に力を込める。
鈍太の息が荒くなり、白い肌が上気していく。
その目を見ると、蕩けた様に濡れた視線に絡まれた。
コイツは抱かれてくれるだろう。そうしたらもう歯止めが利かなくなる。
そうしたらもう二度と、俺に笑いかけてくれないかも知れない。 <> 小寅×鈍太4<>sage<>2006/02/24(金) 17:40:08 ID:UbZLYJk2<> 「良いや」
小寅は最後の理性を振り絞って、突き放した。
唇を離した途端の、自棄にあっさりとした一言に、鈍太は目をパチクリさせる。
「……へ?」
欲情の色は、鈍太の瞳の中にはもう見えなかった。ただ、充血した目を小寅に向けるだけ。
「帰れ」
鈍太は困惑した表情で息を詰まらせている。状況が掴めていないらしい。
「え……あの」
理性が勝っている内に、何とか行動を起こさなければ。つうか動け、お前。
仕方無い。はあ、と息を吐いて、小寅は声を荒げた。
「良いから帰れッつってんだろうが!」
「はい分かりました喜んでっ!!」
そう叫ぶが早いか、鈍太はどたばたと走り去って行く。今回は、足は縺れ無かった様だ。
カンカンカン、と階段を早足で駆け下りる音が、最後の一段まで響いて届いた。
窓の外、道路を見遣る。程無くして、鈍太がドアを押し開けて出て行くのが見えた。
下で右に行こうか左に行こうか迷っている鈍太を眺める。
どうやら右に行く事にした様だ。そちらは木木谷邸とは反対方向だというのに。

――ああ、しまった。

鈍太が居ない部屋で、小寅は顔を顰め、存分に頬の端を引き攣らせた。

――俺は今、とてつもなく恋をしている。

もう感情は止まらない。きっと世界が終わっても。
だから、逃げろ。いつか俺がお前を喰らい尽くすその瞬間まで。 <> 小寅×鈍太<>sage鈍太、蛇の生殺し。<>2006/02/24(金) 17:42:39 ID:UbZLYJk2<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |             
 | | □ また来週.     | |              阿呆や。
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・;)
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

小寅が小寅じゃないヨーΣ(゚Д゚;)≡(;゚Д゚)そ
つうか小寅視点の方が多少なりとも進展があるなんて…orzモウダメポ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 19:35:10 ID:VlR6Kg6M<> >>151
うわあ、切ねえ。
続きがあるんですよね?待ちますっ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 20:42:01 ID:PXjnuKMs<> >>150
元ネタ分からんのですが、毎回死にそうになりながら読んでます。萌えすぎて氏にそうです。
続き楽しみにしてます! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 23:11:21 ID:ONKe4VUy<> >>151
チウキタ!描写にうっとり。毎回楽しんでいますです。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 23:15:32 ID:vVuW57d+<> >>150
萌 え た !
これがきっかけでこのカプに嵌まりますた…。
続き待ってます! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 23:31:23 ID:VlR6Kg6M<> 投下しようと思ったんだが、やたら長い上に微妙に>>150氏と被る…。
しかもナマモノでヘタレorz
投げてもいいですか? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 23:40:04 ID:34i1AZfu<> >>160
じゃあ投下するなって言ったら投下しないのか君は。
そんなのテンプレと空気を読んで自分で判断しろ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/24(金) 23:49:13 ID:TnUm7bGQ<> >150
良い仕事されますなぁww
続き待ってます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 00:08:42 ID:CjYf9NSO<> >>150 GJ!!!!

>>160
ID変わったのを見計らって、別人のふりして投下しる!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 00:18:33 ID:NwaEdHk0<> >160
何しても投げるのはやめて下さい。ましてヘタレなど。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 00:31:23 ID:2oVn8/xM<> 自信満々で投下しろとは言わないけど、
自分でヘタレと思うものなら投下しないほうがいいよ。

謙遜と自虐は別物だよ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 00:46:06 ID:A5Jf1CVy<> へタレと思っていようがいまいが、ここの住人に遠慮というものは無い。

>164
ID変わったのを見計らって、別人のふりして投下しる!
だな。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 00:57:55 ID:KvuWEEYV<> >>161,>>163-166
すいませんでした。
アドバイスありがとう。
色々よく考え直します。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 01:17:15 ID:AOpEXqcp<> >>150
萌えた!!GJ!!!
また読みたいです。 <> 拙者スレ続き1<>sage<>2006/02/25(土) 02:21:50 ID:cD7VfccZ<> 拙者スレ、>139-144の続きです。
こちらに投下する訳は、
※戦闘・残酷描写が含まれる事がある
※無駄に長い
※三人称を「拙者」「兄上」などと表現することに抵抗を感じた。
以上です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トイウワケデ ミテミヨウ。イツモノジサクジエンガ オオクリシマース! <> 拙者スレ続き2<>sage<>2006/02/25(土) 02:22:41 ID:cD7VfccZ<> 少年の家は、山のふもとにある街の外れにあり、農地に囲まれている。
一見すると他の農家とさして変化がないように見えるが、
よく見れば門や周囲の柵の造りが頑健であり、また玄関に立つ明らかに農民ではない
もののふの姿に、武人の家だと分かる。
少年の二人目の兄は、この家の次男に当たる。彼はこの付近一帯を収める領主に仕えている
武官だった。
荒れる世、いずこの領地でも強盗殺人などの犯罪が激増しており、
治安維持の一端を担う彼の身が休まる日々はなかった。
今日は仕事を家に持ち込み、自室にて書き物をしていた次兄の元に、
下男が駆け込んでくる。従者に支えられて予定よりも二日ほど早く兄が帰ってきた事と、
少年の姿がない事を報告され、不審に感じながら、次男は羽織りを身に纏い部屋を出た。
「お帰りなさい」
玄関にて二人の男に声を掛けながら、次兄の視線が二人の傍を彷徨う。
「あの子はどうしたのです」
二人の姿を交互に細い瞳で見遣ってから、見上げる。
「済まない…、攫われた」
熱に浮かされ儚げにも感じられる兄の顔を、苦みと痛みが過ぎる。
朦朧とする意識の中、何とかそれだけを次兄に告げると、
兄はそのまま崩れ落ちるように気を失った。
従者がすぐに肩を深く抱えてから、下男に床を準備するように伝える。
苦悶が滲む兄の表情を見遣ると、次兄は従者に目線を移した。
「どういう事か、聞かせて貰って宜しいですか?」
突然告げられた事態に、自然と彼の声は固くなる。
従者は頷くと、感情を押し殺した声で経緯を説明し始めた。
<> 拙者スレ続き3<>sage<>2006/02/25(土) 02:27:41 ID:cD7VfccZ<>

兄の額に冷たく柔らかなものが押し当てられる。
それが顔を拭ってくれているのだ、と思いながら眼を開くと、
手ぬぐいを持った次兄の姿があった。
「有り難う…、ッ!」
行為に礼を述べた所で、連れ去られる少年の後ろ姿が浮かび、兄が息を詰める。
そんな様子を肩を竦め見遣ると、次兄は手ぬぐいを近くに置いた桶に漬けて絞った。
「取りあえず今は寝て下さい。折角解熱したんですから、またぶり返されては
こちらも堪らない」
薬だって只ではない、そう続けてから、次兄は手ぬぐいで顔を丁寧に拭う。
ゆったりとしたその動きには、こちらを責める色がない。
それに眉根を寄せると、兄は苦しそうに口端を噛んで俯いた。
「……済まない」
次兄が首を振る様子に、兄は思わず起こし掛けた身体を、
自分が横たえられていた布団に再び戻す。
瞳に馴染んだ部屋の天井を見上げる視線に、次男は淡々と語り掛ける。
「気にするな、とは云いません。
が、今回の事は予想外でしたし、第一貴方を責めても意味がありませんから。
……それより、もうすぐ準備が整います故、貴方はおとなしく休養していてください」
桶に手ぬぐいを戻し、兄の身体に掛け布団をかけ直しながら、
次男が表情を柔らかくして云うと、兄の目の瞬きが数秒早くなった。
「…準備?」
転換された話題の事を察知するまで数秒掛った。
<> 拙者スレ続き4<>sage<>2006/02/25(土) 02:32:34 ID:cD7VfccZ<> 「俺が家に戻ってから、どれ位経過した?」
「一日半、ですね。解熱まで時間が掛りましたから。
…野盗討伐の準備、ですよ。私も治安維持の一端を担う職に就く以上、
そんな者を放置させる訳にはいきませんしね。
主に申請して、少しではありますが兵士を少しと、腕利きの者を数名借りる
手配を整えました。あと貴方達を襲った野盗について、少しですが情報を得ています」
「…早いな」
呟く兄に、仕事ですしね、と次兄が口端を引いた。
「彼らは数年前滅んだ、近隣の小国に仕える武官の成れの果てらしいですね。
今はあの山の奥にある、とある洞窟を根拠にしているらしいです。
彼らは様々な場所を流れた末に、数ヶ月前にその場所に住み着いたようです。
様々な土地に出向いては強盗を働いていたらしく、その所為で
今まで存在を知られていなかったようですね」
でも、職務怠慢ですよねと自嘲の笑みと共に付け加えながら、次兄は頭を軽く振った。
「本当はもっと人を借りられると良かったのですがね。
ですが、従者の話を聞く限り事足りそうな様子です」
呼気に笑みを含むと、次兄が窓の方をちらと見遣る。
「明朝早くに旅立ちます故、兄上は何もせず横になっていて下さい」
付け加えた言葉と共に次兄が瞳を細めると、糸のようになる。
唇に浮かぶ笑みには冷たいものが含まれており、それを見て兄は背に力が入るのを感じた。
「あ、付いてこないでくださいね」
「しかし」
思い出したように付け加える次兄に、兄が言い募ろうとする。
「幾ら凄腕の剣客でも、今の貴方は病み上がり。邪魔になるじゃないですか」
それを追い払うように手を動かしてから。次兄は困惑するように瞳を伏せる兄の顔を見遣った。 <> 拙者スレ続き5<>sage<>2006/02/25(土) 02:34:56 ID:cD7VfccZ<> 「任せて下さい。あの子は必ず、連れ帰りますから。
あの子の帰る場所は、ここだけなんですから」
自信に満ちた発言に、渋々ながら兄が頷く。瞳に宿る憂いを覗き込むように、
次兄は顔を見遣ると困ったように笑った。
「しかし、…そんなに綺麗な顔で色々云われると困るんですよね。。
それで金持ちの娘を捕まえて下克上とかしてくれるなら、私たちの暮らしも
安泰になるからともかく、女の噂一つ聞かない。
資源の無駄遣いだと思えばそんな表情をしてくる。全く、貴方は困った人だ」
茶化したような軽い響きの言葉に、兄の眉根に皺が寄る。
「外見の判断基準は個人次第。第一そう評されることが多いのは、
我らの母親が美人で、彼女に一番似ているのが俺だったというだけの話」
「生憎と、世間はそう見ないんですよ…と、無駄な話は止めましょう」
頭を振ると、次兄は身を引き、桶を持って立ち上がった。
「そろそろ準備があります故、これにて失礼致します。
……くれぐれも、付いて来ないように」
念を押すように言葉を重ねてから、次兄は兄に会釈し、部屋を出て行った。
一人になると、兄は知らない内に肩へと入っていた力を抜く。
天井を見上げると、別離の際の少年の様子が思い浮かぶ。
少年の名前を声に出さずに呼んでから、兄は静かに眼を閉ざした。 <> 拙者スレ続き6<>sage<>2006/02/25(土) 02:37:13 ID:cD7VfccZ<>

少年は、洞窟のとある部屋にて床に座っていた。
壁には小さな灯が灯されており、少年の、打撲傷や擦過傷、細かな切創だらけの身体と、
手と足を繋ぐ鎖とに影を落とす。
少年が予想していた通り当日彼らは少年を嬲りその様を嘲った。
が、彼らの遣り方は暴力と欲望に任せたものであり、
少年は兄からそういった拷問に対する精神の保ち方を学んでいた為、
余り反応を返す事をしなかった。
それに苛立った彼らは、少年を気絶するまで拷問すると、
この部屋に鎖にて繋ぎ置き去りにしていった。
怪我をした箇所にには布が巻かれており、手当は最低限すませてある様子で、
傷口の化膿は心配なさそうだったが、傷は絶えず脈と共に、存在を示す。
来ていた旅衣は破壊されてしまった。代わりに与えられたのは、
所々に穴が空いた寝衣のみだったが、そこそこ清潔であるのが救いだった。
ふと気を緩めると瞼の裏に、兄と従者の姿が浮かんだ。
思わず瞳を和ませて自分の手を見下ろす。

そこに、この場所に続く通路の一つから、足音が響いた。
その音を聞いた途端、少年の顔から表情が消失する。
心の平穏を深めようと、何度も少年が深呼吸を何度も繰り返す内に、
足音の主が姿を現した。
汚い毛皮に身を纏った男は、山賊達と最初に会った際に刀を合わせた者だった。
いい様だな?、と掛けられた声に、少年は瞳のみを動かして、緩慢に相手を見上げた。
心が抜けたような少年の反応に、その静謐な瞳の色に、舌打ちをすると、
男はいきなり少年の前髪を引き掴み、腹部を蹴り上げる。
咄嗟の事で何の防衛も出来ず、衝撃を直接受けて少年が咳き込む。
何度も蹴りを入れ少年がぐったりとした様を見下ろし男は口端を歪める。
そして、どれ位持つかな? と嘲りの台詞と薄笑いを向けると部屋を出て行った。 <> 拙者スレ7<>sage<>2006/02/25(土) 02:39:43 ID:cD7VfccZ<>
人の気配がしなくなり腹部の痛みが激痛から疼くものへと変わった頃、
少年はゆっくりと身体を起こす。
周囲を見渡し、改めて無人であるのを確認すると、手首の鎖がうるさく鳴らないように
気を付けながら、己の胸に手を押し当てる。
今でもこうすれば、家族の温もりが感じられる。そんな気がして、自然と口元に笑みが浮かぶ。
別れ際にこちらを見つめていた兄達の姿を思い起こし、
少年は緩慢に目を閉ざして語り掛けた。
(私は、まだ大丈夫ですから…どうか、無理なされませんように)。
内部から外部から痛めつけられた身体は酷く休養を欲しており、
それに引きずられるように少年は間緩く睡眠の淵へと落ちていった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> ↑<>sage<>2006/02/25(土) 02:46:03 ID:cD7VfccZ<> 最後、名前欄をミスしました。
ゴメンなさい。
<> 1/3<>sage<>2006/02/25(土) 03:17:21 ID:tY38C5ac<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )懲りずにアカキ"とナンコ"ウだよ
ナンコ"ウさんスレ読んでたら、辛抱たまらなくなったらしいよ


 「ナンコ"ウさんってごついんだね」
 背後で、アカキ"が感心したように言ったのが聞こえた。うんざりした表情を
浮かべ、ナンコ"ウは振り返る。
 「アカキ"。さっさとお前も服を脱げ」
 しかしアカキ"は、ベルトにも手をかけず、泥だらけの服のままじっとナンコ"ウ
の体を見つめている。そして「いいなあ」と呟いた。
 「何が、いいなあ、だ。大人をからかうんじゃない」
 じろじろ見られていることに、やたらと恥ずかしさを感じる。ナンコ"ウはそ
れを隠そうと背を向けた。
 「先に入ってるからな」
 引き戸を開けると、もわっとした湯気が出てくる。早朝という時間のせい
だろうか。脱衣所にも浴場にも、人はちらほらとしかいない。
 体を洗っていると、後からやってきたアカキ"が近づいてくる気配がした。だ
がアカキ"は隣に座っても、相変わらずナンコ"ウの方をじっと見ている。とうとう
ナンコ"ウは我慢できなくなった。
 「さっきから、何をじろじろ見ているんだ?」 <> 2/3<>sage<>2006/02/25(土) 03:18:11 ID:tY38C5ac<>  「いい体だと思ってね。触ってもいいかな」
 「え?」
 アカキ"の答えは予想外の方向からやってきた。思わずナンコ"ウは口をぽかんと
開ける。
 驚いていると、アカキ"はナンコ"ウの答えを待たずに、勝手にぺたぺた触りだし
た。ナンコ"ウの頬に朱が差す。
 「こ、こら!やめないか!」
 「なぜだいナンコ"ウさん。自慢したっていいような体じゃない」
 「・・・そんな立派なものじゃない。オレは気が小さいから、体がこんな
でも喧嘩だって弱いんだ」
 「その割にはほら、胸だって大きいし・・・」
 アカキ"は胸をぺたぺたと触る。確かに、ナンコ"ウは鍛えられ、たくましい体を
している。だが恥ずかしいものは恥ずかしい。ナンコ"ウは話をそらそうと、
「お前はまだまだ細いな」と言った。
 「オレももう少しすれば、筋肉がつくのかな」
 「安心しろ。色々食ってれば、そのうちでかくなる。・・・だからアカキ"、
いいかげんに触ってくれるなっ・・・!」
 話している間も、ずっとアカキ"はナンコ"ウの胸やら腹やら足やらを、無遠慮に
触ったりつまんだりしていた。ナンコ"ウは、くすぐったいのと恥ずかしいのと
で腹の底から弱りきっている。それに何だか、尻の穴がむずむずしてきた。 <> 3/3<>sage<>2006/02/25(土) 03:19:21 ID:tY38C5ac<>  「やめてほしい?」
 それに気づいたのだろうか。アカキ"は、まるでいいおもちゃを見つけた、というような顔をした。今度は触るのではなく、指でつつきはじめる。
 「うっ、うわっ・・・!」
 身をよじって避けようとしたナンコ"ウだったが、ちょうどアカキ"の指に体を向
ける形になる。アカキ"の指は、がら空きになった胸へまっすぐ伸びた。そこに
は、ちょうど――南郷の乳首があった。
 「うひゃぁっ?」
 浴場に裏返った声が響いた。声の主のナンコ"ウは、椅子からずり落ちて尻餅
をついている。一瞬後、顔を真っ赤にして立ち上がると湯船に飛び込んだ。
 少し遅れて、悠々とした態度のアカキ"が、湯につかりに来た。
 「ナンコ"ウさん、怒ったの」
 「怒っちゃいないさ・・・。だがな・・・だがアカキ"・・・」
 「何?」
 「ああいうことはやめろ。その・・・人だっているし・・・」
 「ふーん。じゃ、他に人がいないときにやるよ」
 「だっ、だからそういうことじゃなくてだな・・・!」
 アカキ"はククク・・・と笑い、またナンコ"ウの胸をつついた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ナニヤッテンダ
ナンコ"ウさんは13歳アカキ"にセクハラされてればいいよね! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 03:50:53 ID:HjcCUAJz<> >>179
ほんとナニヤッテンダw
萌えたよナンコ"ウさん可愛いよナンコ"ウさん <> 175<>sage<>2006/02/25(土) 05:24:16 ID:cD7VfccZ<> 更にやってしまった。しかも肝心なものを。
恥ずかしい。

私→拙者です。
介錯されてきます。グハァ! ○....| ̄|_


>150
GJ!
続きをテカテカしつつ待ってます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/25(土) 13:56:28 ID:4kSq4Tfn<> >>177
GJ!GJ!!
ナンコ"ウさんはアカキ"にいろんなところを
いじくりまわされるといいと思うよ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:14:38 ID:UXRSDoMo<> >>179
GJ!!
セクハライイヨイイヨー <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:25:34 ID:6CyUzexS<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  オリジナル学園モノ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  最近見た夢を再構築したものらしいよ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ビジュアルは猫顔×犬顔
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:26:34 ID:6CyUzexS<> 道端にネズミ色に染まった猫が蹲っていた。


バイトを終え帰ろうとして大輔は来たときに差してきた筈の傘が無いことに気がついた。
高校に入学したときに従兄弟から貰ったちょっとしたブランド物の傘。だから一ヶ月強も経っていない。
普通より少し大きくて濡れ難さ満点だったそれが無い。
暫らくの間、何も刺さっていない傘立てを恨めしそうに見つめていたが、
そうしている内にも雨量が増してきたような気がして店に引き返す。

「すいません。置き傘ってないですか?」
「無いよ。持ってこなかったの?」
「やー、持っていかれたみたいで」

頭をかきながら言う大輔に、休憩に入ったバイトの先輩は申し訳なさそうに言う。
「俺のを貸してやりたいところだけど、俺カサ持ってきてないんだよ。店のビニール傘買うしかないんじゃない?」
「ですね。すんません。休憩中に。お疲れ様でした」
大輔が頭を下げると先輩は気の毒そうに大輔を見ていたが、店長に呼ばれると店内に戻っていってしまう。
大輔は溜め息をつくと財布を取り出した。

バイト代が入ってくるまで後三日もあるというのに、ここに来て525円の出費は痛かった。
だが、買ったからには活用せな損やとばかりにビニール傘を頭上でくるくるまわしながら大輔は歩く。
目の前を落ちていく水滴と傘に当たる雨粒の衝撃に合わせて少し流行から遅れた曲をハミングする。
時間のせいか天気のせいか、はたまたその両方か人通りは極端に少なかった。
電灯の少ない通りに差し掛かると大輔はきゅっと傘を握りなおす。
近頃この通りでは幽霊が出るという噂が囁かれていた。
大輔はそういうオカルトじみた話が苦手なので聞かないようにしていたのだが、それでもいくつかは耳に入ってくる。

――雨が降って視界の悪い日に白い服を着た少年と擦れ違う。少年は何故か傘も差さずに平然としている。
ピリッとした空気が流れて振り返ると少年が無表情で真後ろに立っている。
それから―― <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:28:15 ID:6CyUzexS<> 「見つからないんだ」

背後からかけられた声が現実であることに気付いて文字通り飛び上がる。ついでに持っていた傘を手放してしまう。
ばしゃっと水溜まりにはまった傘。飛沫が足にかかる。
「ぎゃっ」
「わっ! バカ動くな!」
大輔はどこかで聞いたことのある低い声に恐々と振り返る。
そこには噂どおりの真っ白な服……ではなく、グレーのブレザー姿の少年が右目を押さえて立っていた。

「コンタクト落としたんだ」
「それは大変やなぁ」
噂に踊らされて悲鳴を上げてしまった自分の小心ぶりに凹みつつ、目の前の少年をまじまじと見詰める。
いつからいたのか肩先がぐっしょり濡れ、制服の色味が重暗く変わっている。そして困ったように呟く少年は声と同様どこかで見覚えがあった。
いや、間違いなく知っている。なぜなら大輔の通う高校のブレザーかつ同じ学年色のネクタイを締めていたからだ。
大輔は脳内の人名録を必死にめくり、該当データを抽出する。
「……美術部の岩居くん?」
「んぁ? そうだけど……って動くなって言ってるだろ!」
大輔が傘を拾おうと一歩踏み出そうとすると少年――岩居圭太は鋭い声で制止する。
大輔は反射的に身体を強張らせる。と、圭太のブレザーの校章が妙な光り方をしていることに気が付いた。
「岩居くん、あったで。ここんとこについとる」
大輔が校章のある辺りをトントンと叩いてみせると圭太は右目を瞑ったまま左目をじっと凝らして自分の胸を見る。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:28:51 ID:6CyUzexS<> 「あった。あー良かった。ありがとな」
手馴れた様子でコンタクトを装着すると、圭太はそれまでの険しく冷たい表情から一転して人懐こそうな笑顔を浮かべる。
「お前五組の浦上だよな。こんなところで何してんの?」
九時過ぎてるじゃんといいながら腕時計を指し示す。ようやく大輔は傘を拾うとドロドロになった傘を情けない顔で見る。
「バイトの帰りやけど」
「何、お前バイトしてんの? えらいな」
感心したように言う圭太に大輔はそんなことないでぇと謙遜してみせる。
ついでに何故か圭太が嬉しそうに笑っているので大輔は首を傾げる。
「なん?」
「俺ね、お前と喋ってみたかったんだー。予想通り超イイヤツなんだもん。さすが俺!」
「はぁ」
「と、言うわけで今からうちに来ない?」
いきなりすぎるその言葉に大輔は硬直する。自他共に認めるアドリブに弱い人間なのだから仕方がない。
しかも間が悪いことに目の前の男に関するよくない噂を思い出してしまったのだ。

――六組の「イワイケイタ」は素行が良くない。朝帰りはザラだし、この前も他校の生徒と喧嘩して相手をぼこった――
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:29:25 ID:6CyUzexS<> 「けけけ結構です。俺カネ持ってないし」
思わずどもって余計なことまで言った大輔に圭太はきょとんとした顔をする。それから顔をくしゃくしゃにして笑う。
「わー、もしかして五組にも噂が流れてる?」
まいったなー。全く参ってない顔で圭太は頭をかく。
あまりに呑気なその様子に大輔は噂がガセであることを直感する。
「お前濡れてんじゃん。ごめんな。俺が驚かしたせいだろ」
俺の家そこなんだよ。
そういいながら圭太が指し示した先には岩居の表札のかかった一軒家が建っている。
家の前でコンタクトを落としたのか。圭太のあまりのとぼけっぷりに大輔は力なく笑う。

それがきっかけで圭太と大輔は良く喋るようになった。
おかげで噂が全くのガセであったことや、圭太が夜遅くまで家に帰らないわけがダンス教室でみっちりレッスンしているせいであること、
中学では陸上部のエースだったことなど圭太に関する様々な逸話を大輔は知った。
逆に圭太は以前から大輔のことを知っていたと言う。
何故なのか聞くと圭太は笑いながら応えた。
「だって横山がしょっちゅう話に出すんだもん」
渡辺山とはクラスメイトでよくつるんでいるのだと圭太は言う。
大輔の幼馴染かつ部活仲間の名前に大輔は疑問を解消する。
ついでに何の脈略もなく圭太の目は猫の目に似ていると、思ったことをそのまま口にした大輔に圭太は困ったように「俺、猫苦手なんだ」と大げさに顔を隠した。


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:29:58 ID:6CyUzexS<>
猫は夕日を浴びてオレンジ色に染まる。


圭太が放課後まで学校にいるときには特に約束など定めずとも一緒に帰るようになって半年経った。
そのときによって相手を迎えに行ったり、迎えに来させたり駆け引きめいたやりとりを、口に出さずともお互いに楽しんでいた。

大輔が片づけを終え体育館の扉を開けると、圭太が入り口の段差の部分に腰をかけて本を読んでいた。
日に透けるくらい色を薄く抜いた金髪が今は夕日色に染まっている。
時間のせいか寒さのせいか生徒の姿は殆ど無く、扉を閉めてしまうとまだ中で練習しているバレー部の声も急速に遠くなっていった。
大輔は世界で自分と圭太しかここには居ないのではないかという奇妙な錯覚を覚えるほど静かだった。
十一月と言う季節もあって空気がひんやりしている。大輔のほてった身体には心地良く感じられて伸びをする。
圭太は頁を捲りながら、ときおり日陰側においてあるペットボトルを蹴っ飛ばさないように位置をずらす。
傍から見れば物思いに沈んだと表しても良いような物憂げな表情に、クラスの一部の女子が騒いでいたことを思い出す。
曰く、派手ではないけど、よく見ると綺麗な顔をしているし、スポーツでも勉強でも美術や音楽でもそこそここなすし、
何よりたまに見せる憂い顔がドキドキしちゃう、らしい。
そんなもんかな? なんてことを思いながらその場では聞き流していたが、今カノジョ達の気持ちが分かったような気がした。
夕日を浴びて佇む圭太は大輔の目から見てもキレイだと思った。
知らず内に見惚れていると圭太が顔を上げる。
しっかり視線が合ってしまい慌てる大輔を気にする様子もなく、圭太は頁を閉じつつ荷物を担ぎ、ひょいと立ち上がる。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:30:31 ID:6CyUzexS<> 「お疲れ。部活長引いたんだな」
「待っててくれたん?」
「今日は時間あったから」
圭太は持っていたペットボトルを大輔に手渡す。
「温くなっちゃったけど、ウーロン茶飲む?」
「飲む」
素直にそれを受け取り飲む。圭太が言うほどぬるくもなく、渇いたノドにはちょうど良かった。
一口飲むごとに無意識に張っていた緊張の糸が緩んでいく。
口の端から伝う雫の冷たさに拭おうとするその手を圭太が掴む。
「なん?」
「零れてる」
言うなりぺろりと唇付近を舐める。
何とも言えない温いようなざらりとした感触が(頭がふわふわする)口では言い表せないぞわぞわした頭が真っ白になるような感覚が(浮遊感を覚える)
羞恥心がわけのわからない気持ちがゴッチャになっていっぺんに襲ってきて大輔は混乱する。
何とか体勢を立て直したときには圭太は前を歩き始めていた。その後姿も夕陽色に染まっていて大輔は何故か泣きそうになる。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:31:02 ID:6CyUzexS<> 「浦上」
振り返った圭太は見たことないくらい真面目なオトコマエな表情をしている。
「俺、お前のこと好きだ」
ぎゅっと胸の奥が痛んだ。だけどそれは決して不快なものではなく甘苦いような痺れにも似た痛みで。
自分よりほんの少し高い位置にある目線を何も言わずに見つめる大輔の手首を、圭太は掴んで自分に引き寄せる。
抵抗らしい抵抗も無く自分の腕の中に収まった大輔の耳元でもう一度、囁く。
大輔はゆっくり瞬きをすると圭太の掴んでいる手を解き、そっと握りなおす。
互いの指と指が絡まりあい、そこからお互いの熱が伝わる。その熱に誘われるようにキスをする。
男同士だとか学校であるとか倫理観であるとか難しい理屈は抜きに、それは至極自然なことのように思えた。



唇に微かな柔らかい感触を覚えて大輔が目を開けると圭太の猫のような目が悪戯っぽく覗き込んでいた。
大輔は夢の続きを見ているのかと思ったが、それにしてはリアルかつ鮮明なので現実だと気がつく。
それにしてもいつのまに寝てしまったのだろう。そしていつ圭太は隣に来たのだろう。
「浦上さん、図書室で眠るのはやめましょう」
「岩居さんこそ寝とったでしょ? 顔にあとついとるもん」
大輔が圭太の頬に手を伸ばし撫でると圭太は気持ち良さそうに目を閉じ、グーとわざとらしく寝息を立ててみせる。
「岩居は今寝てます」
「ぅおいっ。まぁ、ええか。おやすみ」
大輔は小さく笑うと圭太の手をとり、枕代わりにすると、再び夢の世界へと入っていった。


今日も猫は陽だまりに抱かれてまどろむ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:31:40 ID:6CyUzexS<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 全編セピア色でお送りしました
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 00:35:48 ID:6CyUzexS<> >188訂正
×横山 ×渡辺山
→○渡辺

名前考えながら打っていたら消し忘れたorz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/26(日) 06:31:37 ID:4GawSkLh<> >>184
…ッGJGJGJ!!!!
姐さん、好きだ!!!
と、思わず叫んでしまう程ツルッパゲました。
ほんわか猫犬、ぬくくてカワエエー。
最後の図書室での会話のやり取りとか、かわいくて仕方ない。

いやぁ…上手いなー。
文や作品全体の空気がとにかくツボだ。
ほんと、姐さんの他の作品も見たい位に好きだよ。
ステキな萌えとお話をありがと〜。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/27(月) 00:51:20 ID:Ff5oNIWQ<> 超性感帯正座×の兜鷲兜。
本人は兜鷲のつもりなのに逆っぽくなったorz
 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 朧月夜<>sage<>2006/02/27(月) 00:56:07 ID:Ff5oNIWQ<> “なのはなばたけに いりひうすれ みわたすやまのは かすみふかし”
 
微かに耳に届いた歌は、どうやら一人縁側に座る彼のものらしい。
その年には少し不相応な甘い歌声。
俺の気配に気付いたのか、それがソッと途切れて宵闇に消えた。
「なんだ、それは」
さして興味もないが問いかけると、来てたんだ。やら、やだなぁ聞いてたの?等といった“全く関係のない”答えが返ってきた。
眉を寄せる俺の顔に気付いたらしく、慌てて取り繕うように大きく手を振った。
「日本の唱歌だよ。聴いたことない?」
「……地球の歌か」
なんとは無しに空を見上げれば、月が薄くなびく雲越しに淡い光を放っている。
「…あのね」
さっきとは打って変わった小さく呟くような声に振り向けば、まるですねた子供のように膝を抱えていた。
「この歌歌うとさ、なんでか僕の星を思い出すんだ」
「ラ〒”ィ星を?」
「違う星なのにさ、おかしいでしょ?」
「ケイソ……」
そこで初めて気付いた。
いつも明るい彼は、辛いことを内に秘める性質だと、一番よく知っているのは自分のはずなのに。
あの歌声には望郷の想いが込められていたのだ。 <> 朧月夜<>sage<>2006/02/27(月) 00:57:59 ID:Ff5oNIWQ<> “はるかぜそよふく そらをみれば ゆうづきかかりて においふかし”
 
再び、先の歌声が澄んだ空気にこだまする。の心の内を知った上で聴くその歌に、どうにも胸が締め付けられる思いがして、俺は固く目をつむった。
「ねぇア├”。もうすぐ春が来るね」
「そうだな」
「そしたらさ、もうこの戦いも終わるかな」
震える声に瞼を開くと、月明かりに反射する一粒の光を彼の頬に見た。
「ケイソ、お前…」
「泣いてなんかないよ」
「……」
「ほんとに、ないてなんかない、よ」
「あぁ」
「星が無事で、嬉しいんだからね」
「あぁ」
「かあさん…元気でよかった」
「あぁ…!」
胸を鷲掴まれたような衝動に駆られ、いつもより小さく見える彼を思い切り抱き締めた。「ちょっと、どうしたの」
「……わからない。だがこうしてやりたい気持ちになった」
「ふ…ふふ。変だよ、君」
「お前には言われたくないな」
 
 
震える彼の肩越しに、硝子に映った朧月が美しかった。 <> 朧月夜<>sage<>2006/02/27(月) 00:59:59 ID:Ff5oNIWQ<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、短いジサクジエンデシタ! <> 195<>sage<>2006/02/27(月) 01:06:40 ID:Ff5oNIWQ<> うわあ…改行ミスとタイプミスが…
 
× の心の内を知った上で聴くその歌に…
○ 彼の心の内を知った上で聴くその歌に…
 
の間違いです。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/27(月) 01:28:14 ID:VpbQFnI8<> >>195-198
いい物読ませて頂きました。キュンキュン来た。
ふんわりした情緒のある雰囲気が素敵です。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/27(月) 01:49:24 ID:QF88j+wM<> 乗り遅れ感があるけど>>179
GJGJ!!姐さん善い萌えを有難うっ‥! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/27(月) 19:21:52 ID:osiVoaZY<> 中途をイメージしてましたが似て非なる感じに。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 1/2<>sage<>2006/02/27(月) 19:22:32 ID:osiVoaZY<>
後輩がビリヤードにはまっているとかで、俺も嫌いじゃないから一緒に行くことにした。
うまいこといくと気分がいい。
ビリヤードの球が、狙ったとおりに動いて、落ちていく。
それは決められたルートを間違いなく運行していく星の動きにも似ているかもしれない。
すべてが、なにかに決められた通りに動いているだけなのかも知れない。
……そんな、未来を見通せる悪魔の話があった気がする。

ぼんやりとそんなことを思っていたら、数日前のやりとりを思いだした。
もしかしたら奴は、俺に言わせたかっただけなんじゃないか?
だとしたら俺は、あの悪魔の思い通りに動かされた哀れな男で、俺にとっての悪魔はやはり奴なのだ。

<> 2/2<>sage<>2006/02/27(月) 19:23:03 ID:osiVoaZY<>
相方には何も期待しないこと。
これがコンビを長続きさせる秘訣だそうだ。
彼は俺に何の期待もしていない。その意味で俺らは長続きしそうだった。
そもそも個人主義は京都人の性質らしいし。

「解散するか?そんなら。」

愛すべき我が相方は、お互いに絶対無いことが解りきっていることを言った。
とりあえず反論するといういつもの悪癖で、「ええよ。しましょうか。」と言ったら、
「……アホぉ」
テンションの低い声でそう言われた。
その表情は言外に、「そこはお前が宥めるところだろう」と言っている。
「解散なんて言わないでください。コンビでいさせて下さい。」
この一言を言わせたくて、彼は俺を挑発しているのだろうか。
そんなことを言って、俺を揺さぶって、何を確かめたがっているのかと思う。
コンビ間の力関係だろうか?俺は初めから全面降伏しているというのに。

「何か不安なん?心配せんでも、ちゃんとスキですよ。」

何気なく言ったと思った言葉だったが、不自然な力が入っていたかもしれない。
なんでだろうと思って、気が付いた。
「そういえば好きとか言うの久しぶりやな。」

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/27(月) 19:24:34 ID:osiVoaZY<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

とりあえず中途に萌えていた。
その痕跡を残したかった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/27(月) 23:36:14 ID:lCkiFY1A<> >>202
ももも萌え!!GJ!!
ありがとう!!好きだ!! <> 1/2<>sage<>2006/02/28(火) 08:56:28 ID:km6oAo/z<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )
フィギュア見てたらなんかすごい萌えてきたんです。
ちなみにド腐れ眼鏡で男体化しています。

*************

Aには十年越しのライバルがいる。競技会ごとに順位が入れ替わるほど
互角な実力をもつそのライバルは、ひとつ年上のS。
彼はほっそりとした華奢な体躯を持つ、無口で内向的な男だ。
いつも同じリンクにいながら、AとSは決して目を合わせることはない。
ふたりが少年だった頃から、それは変わらない。
物心がつく前から同じリンクで滑っているのに、
もしかしたらこれまでに彼らが言葉を交わしたことはないかもしれない。

社交的で華やかなAは練習後も仲間と連れ立って出かけるのが常だが、
Sはいつもひとりで、ひっそりとリンクを去っていく。
その姿はがどこか陰鬱に見え、Aは時にひとり苛立つ。
しかしAは、Sが競技会のライトを浴びる時、
普段の姿からは考えられないほど輝くことも知っている。
自分がその輝きに負けたことも、これまで何度もあるのだ。
AはそんなSの実力を無意識に尊敬しているが、
自分ではまだそれに気付いていない。
ただSがAにとって誰よりも気になる存在であることは
間違いないのだが。 <> 2/2<>sage<>2006/02/28(火) 09:04:55 ID:km6oAo/z<> 一方Sは、その伏せがちな自分の視線が
無意識に追っているものが華やかなAの姿であることに、
ごく最近になって気付くようになった。
今朝もリンクに来てみると、氷上には先に練習を始めていたAがいた。
Sは靴のひもを結ぶ手を止め、ついその姿に見入る。
Aはほどよく筋肉のついた上体を折れるかと思うほどうしろに反らせつつ、
しなやかな両手を広げて悠々とSの視界を横切っていく。

あの腕はどれほどの力を持っているんだろう?
自分の薄い筋肉とは異なる、しっかりとした厚み。
あの腕に、あの手に捕まれたら、どんな感じがするんだろうか。

ふとそう考えて、Sは思わずひとり赤面した。
幸い、あたりに人はいない。Sの頬が染まっていることには
きっと誰も気づかなかったはずだ。

……えーと、後略。

ちなみにAにまとわりつくやんちゃ系の少年Mの登場で
Sの心がグラグラ揺れるところから話は急展開、とか考えてたりします。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ハンパデゴメン! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 09:45:43 ID:cmbypXnV<> >>208
Mタンは攻めか襲い受けと見た。GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 09:54:33 ID:tZpckJNR<> >>207
男体化しなくても萌えるw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 12:21:17 ID:ObXEuN/u<> >>207-208
GJ!!超GJ!!
男体化してもしなくてもS萌えです。
MがAの舎弟と知って、それまであんまり好きじゃなかったMに
ちょっと萌え始めたこととか思い出した。
そういやあと4年後には確実にでてくるだろう
あの子のイニシャルもMだったりAだったりするね。
あの子はマイペース天然攻な予感… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 12:36:22 ID:UvTxtovQ<> >207
スンマセン、男体化せずに萌えまくってしまいますたw
つか、稲葉ってる!稲葉ってるよAタン!!w w w <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 15:53:53 ID:eBH7zjf8<> >>207
GJ!!萌えた。
S可愛いよS。 <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。<>sage何だろう。此処のSSは<>2006/02/28(火) 17:30:25 ID:h+PSEGgx<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい虎と鈍アフロの続きだモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  でも今回は小さい虎が出てこないんだよね。しかも長いし。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  イヤソナカタハヌルーデ4649!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 17:31:44 ID:r5V/Zhrl<>

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  アニマルのドクターさん、ハムニ高校時代SSです
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  本スレにて誘導があったので>573-579の続き投下。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ナガクナルノデ オチダケデゴメン
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。1<>sage萌え過ぎてとても良く禿る。<>2006/02/28(火) 17:31:55 ID:h+PSEGgx<> 無理矢理に連れ込まれた小寅の家からいきなり追い出された鈍太は、訳が分からねえとぼやきながら家路に着く。
然し何処をどう走ったか、いつまで経っても家が見えてこない。
鈍太の足取りはずるずると重くなる一方だ。
此処へ来て己の帰巣本能が使えない事実にぶち当たった。今この瞬間に何故に?
「ここ何処だよ」
ポツリと放ったそれに答える者も無く、辺りはすっかり薄暗い。
どうにも薄ら寒いのは、其処が古く寂れた住宅街である所為か。
濃灰色の空に浮かび上がる黒々とした鉄筋。
日の有るうちはレトロな華やかさを醸し出しているのであろうそれらは、今の鈍太に幼い頃の恐怖を思い出させた。
『――帰れない』
声がした気がして、振り返る。誰も居ない。
「……あーもー分からねえ。分からねえから戻ろうっと」
暫くしゃがみ込んだかと思うと殊更に調子良く言って、鈍太は来た道を引き返した。
小寅に泣き付きゃ何とかなるだろう。だってアイツ、俺の事好きだし?
自分の考えに一人で頷き賛成しながら、ある意味で最も危険な地帯へ逃げ込もうと歩き出そうとするのへ、
「あっれえ? どしたの兄貴ィ」
底抜けに明るい弟の、良く響く声が届いた。
「へ?」
呆気無く差し出された救いの手に、逆にどうしたら良いか微妙にパニくる鈍太。
「もしかして迷子?」
「悪いか! 良い年した大人が迷子で泣きそうで悪いですかそうですか!?」
「否、そこまでは言ってねえよ!」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 17:32:39 ID:h+PSEGgx<> あ!被った!!!!
お先にドウゾ…orz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 17:33:55 ID:r5V/Zhrl<> いえいえ、そちらが先ですし、そのままドゾー。
私、h+PSEGgxさんのファンなんで、続きが楽しみですw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 17:35:36 ID:h+PSEGgx<> r5V/Zhrlさんがヤサシイヨー!優しくされたので泣きますよ!
ではお言葉に甘えて続けさせて頂きます。 <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。2<>sage<>2006/02/28(火) 17:36:38 ID:h+PSEGgx<> 楽しそうに笑いながら、隆二は鈍太が飛び付く様な提案をした。
「あのさ、送ろっか?」
感謝したいのは山々なのだが余りにもけらけらと笑われて、鈍太は自分なりの怖い顔を作ってブンむくれた。
それがまた可笑しかったのか、更に笑われる。
「何だよ、家まで送らねえのかよ」
ゴメンゴメン、と謝って決まり悪そうに苦笑を浮かべる弟を見て、何故かムカついた。
小寅isハンサム。コイツもハンサム。何故に俺は三枚目だ。
鈍太の思考が『ハンサムと鈍太』というタイトルで暴走しそうになる。其れを見計らう様に、
じゃあ行こうか――そう言って、隆二は軽い足取りで歩き出した。
二つの影が動き出す。
「……久し振りだな〜」
「何が」
「兄貴と歩くの」
「…………」
横を見る。隆二が空を仰いでいる。空を仰いで、もう本当に爽やかな笑顔を浮かべている。
その危なっかしい歩き方のまま、
「なあ兄貴ィ」
「ん〜?」
「アイツの事、どう思う?」
隆二の何でも無い風な問い掛けの言葉に。するっと、小寅の顔が浮かんだ。違うよな? <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。3<>sage<>2006/02/28(火) 17:37:57 ID:h+PSEGgx<> 「好き?」
好き?ってアンタ、それどういう事よってああもう完璧だ。完璧に小寅の事だ。気付いてるよ気付かれちゃってますよ。
全身から力が抜けていくのかそれとも力み過ぎているのか分からなくなる。鈍太は自分が見る間に赤く染まっていくのを自覚した。
「何だよ、泣く事無いじゃん」
「泣いてねーよ」
緊張し過ぎると涙が浮かぶのは、小さい頃からの鈍太の悪い癖だ。
その所為で、口座で緊張して泣いてしまい、今やすっかり口座恐怖症になってしまった。
「でさあ、好きなの?やっぱり」
知るか、と吐き捨てて、鈍太はさっさと小走りに進んだ――が、
「そっち違うって。こっち」
と、隆二に腕を掴まれてしまった。奇しくもつい先程、小寅に掴まれたのと同じ場所を。
蘇る。
熱を帯びた硬い目が、やたらと握力の強い手が、……耳に残るざらついた低い声が。
鈍太にフラッシュバックが襲い掛かる。思考が小寅で埋め尽くされる。
小寅が触れた場所から伝染して、体中が熱い。
嫌悪感は無かった。けれど、安心感も無かった。
其処にあるのはただ、ともすれば堕ちて行く綱渡りの様な、危うく魅惑的な……ってなんじゃコレ!何だこの初心でネンネな恋心!?
俺に真剣は似合わねえ。あのハンサム馬鹿に言い寄られて物凄いグラついちゃってるなんてマジで有り得無え!
「沙耶ちゃん?だっけ?兄貴の娘」
唐突に子供の話題を振られ、鈍太は自分の三枚目っぷりを自分に力説するのを中断した。 <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。4<>sageぎゃあ伏せられてない箇所発見!ウツダ…<>2006/02/28(火) 17:39:57 ID:h+PSEGgx<> 「はい?」
「だーかーらーさあ、好きなの?って聞いてるじゃん、さっきから」
「え……あッ!ひ、人の大事で大切な可愛らし〜い愛娘をアイツ呼ばわりすんじゃねええ!!!」
からかわれた、そう思ったが、釣られておく事にする。
「好きだよ!好きに決まってんだろ!俺にとっては愛娘で、親父にとっては初孫だ!!」
お前にとっては初姪だあと更に喚く鈍太に、誰の事だと思った?とネタを発見した時のキラキラとした顔で隆二が聞いた。
何だとこの野郎と鈍太が腕を振り回して追い掛けるとげらげら笑って逃げられる。
ふと、隆二の動きが止まった。
いきなり停止した隆二に、鈍太は反応しきれずにぶつかった。
ぶつかって潰れた鼻を痛そうに摩る鈍太に、隆二はさらりと告げた。
「あのさ、オレ、兄貴の事好きだよ」
「何だよ藪から棒に」
振り向いた隆二は、顔を顰めて如何にも二枚目らしい笑顔をして見せた。
そうして笑うその顔は小寅にそっくりだった。ぼんやりと立ち尽くしてしまった鈍太に、
「どうかした?」
と隆二の声が飛んだ。
「へ?あ、否、何でも無い」
脳内でポンと出た言葉が何か漏れてしまったらしい。
ふ〜ん……まあいいや、と何か納得した様子でまた歩き出しながら、隆二は続ける。
「兄貴がスッゲー頑張ってんのとか、兄貴なりに家族支えてたりすんのとか、スッゲー尊敬するよ」
「何だよ気持ち悪りいなあ」
普段の相性最悪な弟からの台詞に、何だか腹の辺りがもぞもぞとした。
けどまあ、気分は悪く無えな。相手から認められた気がして、鈍太の顔が綻ぶ。 <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。5<>sage<>2006/02/28(火) 17:40:39 ID:h+PSEGgx<> 然しそれも次の言葉を聞くまでの事。
隆二は突然くるりと鈍太の方へ体を回転させたかと思うと、両手を前に突き出して小首を傾げ、
「だからさ、金貸して?」
と宣った。もう完全にふざけているのかこの男は。本当いい加減にして下さい。
「うんうん、お兄ちゃん幾らでもー……っておいコラー!先刻の感動を返せー!」
にひっと悪戯が成功した子供の様な笑顔を浮かべる隆二に、鈍太は何か良いリアクションを返す。
「やっぱ無理か〜」
「決まってんだろ!つうか返せよ早く!」
「金無いから借りるんじゃん」
「あ、そっか。って馬鹿ー!」
「じゃあアレだ、迷子の兄貴を家まで連れて来たって事で送り届けのお駄賃を……」
「それを言われちゃあ何も言い返せませんよ隆二さん」
「え?じゃあくれんの?」
「それとこれとじゃ話が別だッ!」
「ケチー!」
「ケチで結構ああ結構。我が家の家計は火の車」
並んで歩いては追いかけっこ、追いかけっこをしては並んで歩くという事を何度か繰り返すうちに、二人は木木谷邸に辿り着いた。
家を出た筈の隆二は当然とばかりに木木谷邸へ上がり込む。
帰らないのか、と聞くと、悪びれもせずにつうか金無いし〜と返され、鈍太は苦笑した。
この調子だと多分、いつもの様に母か嫁が小遣いを渡す事になるのだろう。 <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。6<>sage<>2006/02/28(火) 17:41:56 ID:h+PSEGgx<> 仕方無しに連れ立って家に入る。
入った途端に内弟子の三人がどやどやと迎えに来た。
「お帰りなさい。って、あれ?隆二さんも一緒でしたか」
「ご飯の支度出来てますよ」
「ちゃんとうがいして下さいね〜」
三人は計った様なタイミングでテンポ良く喋る。
それを適当にあしらって、勝手で口を濯ぐついでに顔も洗う。手を洗い、タオルで拭う。
後ろで隆二が順番待ちをしているのを確認して、鈍太はひょいっと跳んで退く。
何だよそれ、と、隆二が笑った。
廊下を歩きながら、昼飯も碌に食ってなかったなあと思った途端に腹の虫がぐうぎゅるると鳴った。
嫁の声が聞こえる。鈍太はそっと、父の顔になった。とはいえ親馬鹿のでれ〜っとしたそれになるだけだが。
胸に少し、痛みが走る。
何で俺なんか好きになったんだよ小寅。俺には家族ってモンが居るのに。
でも、アイツには家族が居ないんだよなあ。
俺がなれれば良いのに。頼りにならないヘタレ兄貴なんだろうけど。
兄弟かあ、良いかもなあ。怖いけど。毎日小寅に小突かれて暮らすんだろうけど。
思わず、含み笑いが洩れる。隣に居る嫁に、何があったの?と楽しそうに尋ねられた。
明日になればまた、小寅はやって来るだろう。
隆二の問いには答えられなかったが、それはきっと明日、小寅に会えば口から自然に出てくるだろう。
「お前との交際なんてお断りだ〜〜!」と高らかに。

……無理か。 <> 小寅×鈍太、今回は隆二と鈍太でお送りします。<>sage<>2006/02/28(火) 17:44:22 ID:h+PSEGgx<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ DVD特典は『ハンサムと鈍太』をノーカットで。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
口座まで伏せる意味があるのかどうか分からないがとりあえず反省はしない。
それと前スレの698様、有難う。本当に有難う。永久脱毛させて頂きました萌え。

r5V/Zhrlさ〜ん、終わりましたー。有難う御座いましたー!
投下を今からwktkして待ちます! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 17:53:20 ID:r5V/Zhrl<> 可愛いなぁ、鈍太!萌え萌えで面白かったですよぅ。
続いて落とすのも恥ずかしいけど、投下。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )キスネタダケド ヌルクテゴメン!
--------------------------------------------------------------
暗がりの中、片肘をついて頭を支え、ハムはニカイドーの寝姿を眺めている。
もう片方の手はもちろんニカイドーの手をしっかりと握り締めていた。
見つめ続けられることに恥ずかしくなったニカイドーがハムの気を逸らそうと呟いた。
「今の音、なんだろう?」
「何が?」
ハムの目はニカイドーに注がれたままだ。その様子を上目遣いで見て取ったニカイドーは、さらに
「いやだから今の…」
と言いつのろうとしたが、ハムの行動に遮られた。
目の前に顔が近づいたと思うと、柔らかなものに口を塞がれてしまったのだ。
あまりの事に言葉が出ず、目を白黒させているうちに、ハムがそっと体を引いた。
「おやすみ」
ニカイドーの耳元に囁き繋ぐ手を変えると、すやすやと寝息を立てる。
「え、今の…なんだったんだ?」
ニカイドーの頭の中がぐるぐる渦を巻き始めた。

台風一過の朝、ニカイドーの目は腫れていた。
いくら考えてもハムの行動が分からない。
ずっと前夜のハムと同じ片肘ついたポーズで悩みながら一夜を明かしたのだ。
「おはよう」
目を覚ましたハムがニカイドーに微笑んだ。
「お、おはよう。あのさ、夕べの…」
「ああ、あれ。鼠のこと、気にならなくなるかと思って」
ぽかん。目が点。茫然自失。固まるニカイドー。
「それに、少しずつ慣らしていかないとね」
あっけにとられるニカイドーを眺めつつ、心の呟きを表に出さないハムであった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 17:54:09 ID:r5V/Zhrl<>
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ やおい初書きですた。エロシーン、ムズイ…。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 21:18:53 ID:+G0Tx3i9<> >>227
キテター!!
GJ!です。
願わくば、初読みの方のために向こうに投下された分も
まとめて投下された方がより良かったかなと言う気はしますが…
でも内容は文句なしに萌え萌えでした。
気の長いハムカコイイ!
また気が向いたら何か投下して下され。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 21:42:03 ID:XJ74PCaw<> gj!スレで出たお題?な作品棚投下(*´Д`)ハァハァまたおながいします。>>226 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/02/28(火) 22:16:18 ID:h4sC6CCG<> とってもとっても萌えさせてもらいました!!!>>227
本スレではあれやらこれやらですが是非二人の今後の妄想も私どもに分け与えていただけるとうれしいです。
文字に出来る人うらやましいなぁ────────
ニ会童とハム輝の雰囲気がうまく出てるwハッと我に返って恥ずかしくなるのカワイス <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 00:51:17 ID:rLKv6cFo<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) テスト ジョウエイデス

ネコで801ってみる。
擬人化というか人の名前がネコというか。 <> 1/6<>sage<>2006/03/01(水) 00:51:48 ID:rLKv6cFo<> 猫が居なくなった。

済し崩し的に同居生活が始まって、それでもなんか気があって、うまくやっていると思っていた。
なのに突然。

「…手紙くらい残せよ…っ!」

猫の居ない部屋、というのは、思ってた以上のインパクトでオレの胸に迫ってきた。
(離れたく…なかった…っ!)
一度、そう思ってしまったら、もう駄目だった。
みっともなくてもいい。追いかけて、あいつを取り戻そう。

外に出たら、息が白かった。寒さに身をすくめる。
(…う〜…さみぃ…。)
雪でも降るかもしれない、と、空を見上げた。

そのときだった。

「……ね、猫?」

近所で一番高い、うちのマンションの屋上に、必死で手を振る猫の姿があった。
<> 2/6<>sage<>2006/03/01(水) 00:53:10 ID:rLKv6cFo<> 「…な、何やってんだ…」

とりあえず、屋上の鍵は持っている。エレベーターに飛び乗って、最上階から屋上までの非常階段を必死で駆け上がった。

「猫!」

屋上にでたら、猫が飛びついてきた。身体が氷のように冷たい。
こんな、浴衣みたいな薄い着物で、雪が降りそうなこの時期にずっと屋上なんかに居たら当たり前だ。
冷たい。

「猫……。」

頬を合わせたら、吸い付くようないつもの感覚で、俺はすぐにしっとりとした猫の唇が欲しくなった。
でも、それよりも体を温める方が先だ。
猫を抱き上げて、屋上を後にした。
<> 3/6<>sage<>2006/03/01(水) 00:54:14 ID:rLKv6cFo<>
(…軽いな…。)

言葉も言えずふるえている猫は、寒さのためか、身体を小さくしている。そのせいか、いつもよりも猫が軽く感じた。

「…なぁ。なんで屋上なんかにいたんだ?」

こんなに冷たくなって。

「……高いとこ…だ…たら、あんたが見える…。」

猫は、青白い顔をしながら、それでも挑むような顔でいった。
――――――俺の帰りをまってたのか?
最初は、俺をおいて旅に出たのかと思った。
でもちがったんだ……。

「猫…。ねこ、猫、猫…。」

すげぇ、信じられないくらいに、この腕の中にいる存在が愛しかった。
だから、名前を呼びながら、猫の顔にキスの雨を降らせた。
<> 4/6<>sage<>2006/03/01(水) 00:55:00 ID:rLKv6cFo<>
音をさせながら、そんなことを続けていると、だんだんとまらなくなって。
「ここで…しよ?」
すごいイヤラシイけど、お前好きそうだし。

非常階段に猫を座らせて。
キスしながら段々唇を下に移動させた。着物をはだけさせながら、ピンク色の乳首を親指でいじったら、猫が足をもじもじと動かした。それが可愛くて、舌で執拗に嘗めた。

「…ぁっ……、やっ……んっ…。」

猫がぴくぴく動くたびに、つめたい非常階段に皮膚が触れて、そのたびに可愛い声をあげた。
猫は、階段に座っている。俺はその数段下から猫を見上げるようにして座っている。
伸び上がってキスをしたら、猫が俺の頭を掻き抱いた。

「…ねぇ、…人が…きちゃぅョ…。」

舌に唾液を絡ませながら、舌たらずに猫がいった。

「…こんな冬に、来る奴なんかいねぇよ…。」

この屋上の扉は、一度閉まってしまうと開けるのにコツが居る。もし俺が気付かなかったら……。
その可能性に、びどくぞっとした。
<> 5/6<>sage<>2006/03/01(水) 00:55:39 ID:rLKv6cFo<>
「…ぁっっ…、ゃん…」

猫の着物の帯をほどいて、猫のぴったり合わせてしまった膝を、正面からゆっくりと押し開いた。
猫の、白い下帯の上からもくっきりとわかるほど、それは欲望を示していて。
歯で、その帯をほどいてやったら、時々犬歯が肌にこすれるたびに猫はびくびくと反応した。
階段に座って、帯も下帯も全部取ってしまった状態の猫が、ようやく赤みが差してきた顔を近づけてキスをした。

「…ぁっ!や…やぁ!!」

猫の内股にキスをして、中心にも舌を這わせた。その瞬間に猫は爆発した。
その白濁を手で受け止めて、そのまま猫の後ろに指を滑らせた。

「…っあぁ…!!」

猫の湿った声が無機質に反響する。その響きにすら興奮した。
<> 6/6<>sage<>2006/03/01(水) 00:56:17 ID:rLKv6cFo<>
「…っは……、あっ…あっ…!」

猫の奥に行きたい。もっと、もっと。
何度も挿入を繰り返して、腰を進めるたびにベルトのバックルが階段に当たってカンカンと音がした。
抱え上げる猫の足が引きつったようにこわばった。そろそろ限界が近い。
(…も…ちょい…。)
もう少しつき合って欲しかったから、猫の付け根をきゅ、と握った。

「ひっ……!!」

猫がぼろぼろと泣き出した。
俺は、困ったことに、この顔が大好きだ。

だから、もうちょっと。

な?そんな困った顔。


もっと良く見せて?

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 00:58:15 ID:rLKv6cFo<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

携帯用の区切りテンプレが好きです。 <> 159<>sage<>2006/03/01(水) 03:07:10 ID:i+C6y3Ti<> >>207
遅レスすまん
だが言わせてくれ、GJ…!! <> 239<>sage<>2006/03/01(水) 03:12:54 ID:i+C6y3Ti<> ぎゃっ、遅い上にクッキー食い残してた…orz
このスレの239さんとは関係ありません。スレ汚しスマソ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 13:36:15 ID:C8ksBv73<> モチツケw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 14:49:31 ID:o6nqh1ao<> 自分が自分とは関係ないって何て矛盾w
ヤヴァイ今世紀最大の萌え。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 20:37:21 ID:Q8VKSRfq<> 遅レスですがm(_ _m ")GJです>>227
これからも萌させえておくんなまし。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 22:32:13 ID:xtUL6Hh7<> >>240

>>159とは関係ないんだろ。
>>239はお前やんけ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 22:35:35 ID:MciECdeH<> >>240
もちつけw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/01(水) 22:59:35 ID:KEdCfptV<> >>240の人気に嫉妬 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 02:07:01 ID:Mw/ZwPnB<> >226
モ エ タ !
まさか今このカプを読めるとは <> 沈黙する言葉<>sage<>2006/03/02(木) 12:52:36 ID:kzEipaL8<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

某K事ドラマ。
イタミン&カメ ウキョさんも一応出てます。
放送見逃して悔しかったので、しまい込んでた妄想ネタ引っ張り出してみました。
死にネタなので、嫌いな方はスルーしてください。 <> 沈黙する言葉1/5<>sage<>2006/03/02(木) 12:53:52 ID:kzEipaL8<>  名前を呼ばれ、つつかれた肩を揺すって手から逃れて、起きる気が無い事を
表明しても、呼ぶ声は止まなかった。管内で起きた連続殺人事件。場所も被害者同士に
関係も関連性もないのに、3日置きに起きているそれは、紛れもない同一犯か、
同一グループによる連続殺人としか思えないものだった。
 早急に犯人を挙げるなり、犯人の目星をつけるなりしなければならず、家族を持たない
伊民のような独身の若いK事は、ろくに家という名のねぐらにも帰らず、休憩室で
僅かな睡眠を取り、持ち込んだ着替えで凌ぎ、捜査に時間注ぎ込んでいた。
 一段落などついていないが、眠らなければ倒れるだけ。時間を惜しみながらも脱いだ
ジャケットを布団に、ベンチに体を横たえたのは、何分前か。邪魔される事に半ば
眠っているまま憤りつつも、体を丸め直した耳に届く声は、飄々と名前を呼び続けていて。
「ったく、俺は眠いんだ!起こすなっつってるだろーが!この瓶吉が!!お前らと違って
俺らは暇じゃねーんだよ!!」
 我慢の限界に達し、跳ね起きて怒鳴りつけると、全然伊民の怒りを理解してない様子で、
ベンチの前で身を屈めていた男は、いつもの笑みを見せる。
 飄々とした、明るい笑顔を。
「伊民、伊民。ちょっと来てみろって」
 ちょいちょい、と片手で招くと、背を向けて、休憩室から出て行こうとする。
「なぁにが来いだ!忙しいっつってるだろが」
 怒鳴ったせいで体が睡眠を求めているというのに、すっかり目が覚めてしまい、文句を
言いながらずり落ちたジャケットを取り上げて羽織りながら、伊民は立ち上がる。 <> 沈黙する言葉2/5<>sage<>2006/03/02(木) 12:54:23 ID:kzEipaL8<>  こういった時、たいてい事件に勝手に首を突っ込んで、なんらかの情報を掴んで
いるのだ、あの男は。
 日本K札だというのにも関わらず、どこで買ってくるものやら、※空軍のレプリカ
ジャンパーをいつも着込んだ男は、K事らしからぬ、いたずら坊主のようないつもの笑顔で
振り返って伊民がついてきている事を確認しては、ポケットに両手を突っ込んだまま
軽い足取りで歩いていく。
「おい。どこまで行く気なんだよ!」
 庁舎を出ても歩き続け、あまり見慣れない道にまで進んで、伊民は焦れて前を歩く背中に
走り寄ろうとすると、まるでそのタイミングを知っていたかのように、振り向いて、
人差し指を顔の前に立ててみせる。思わず伊民が足を止めると、その指で、通りの向こうと示す。
「んあ?」
 そこに何があるのかと、伊民が目を眇めると。


 誰かが名前を呼んだ。
「おい、伊民!伊丹!」
 緊迫したその声に伊民は顔を上げる。強面の年近い、確か嫁に逃げられて、その憂さを
捜査にぶつけているともっぱらの噂の同僚が、焦った様子で伊民の顔を覗き込んでいた。
 ずるっと体の上を滑り落ちたものを手で押さえると、それは先程脱いだ、自分のジャケット。
 そうだ。仮眠を取るために休憩室に来ていたのだった。事件が連続して起きて、それで
帰れなくて……。 <> 沈黙する言葉3/5<>sage<>2006/03/02(木) 12:55:35 ID:kzEipaL8<> 「早く起きろ!瓶山が……!」
 よく話がわからないままに覆面車に乗せられ、連れて行かれる。いや、行き先は同僚が
話したのかもしれない。だがそれは、伊民の耳を通り抜けていたのだろう。
 車が止まり、伊民も降りたそこ……封鎖された通りには、既にパトカーや、K札車両、
乾式が群れを成していた。
 すり抜けるようにして進んだその先、彼らが群れを成す中心には、覆いを掛けられた
死体を乗せた、担架がひとつ。
 傍らに佇むK部は、いつもの冷静な顔立ちを上気させ、しかも髪を乱しているのを見るのは
初めてではないだろうか。いつもなら、綺麗に撫で付けてあるはずなのに。
 しかも、この通りは。
「まさか僕がいない時にこんなことになるとは思いませんでした。瓶山君には、もっと
よく言って聞かせるべきでした」
 誰かに話しているらしい、その声が聞こえてくる。前を歩いていた同僚が、めくった
覆いの下から現れる青白い顔は、先程まで伊民に笑いかけていたはずの顔で。


 どうやら瓶山は、相棒でもある上司がインフルエンザで休んでいる間に犯人の手がかりを
掴み、単独行動を起こしたらしかった。
 瓶山の死がきっかけで、犯人の捜索範囲が狭まりすぐに事件は解決し、ワイドショーでは
話題が「連続事件を防げない不甲斐ないK札」から「連続殺人犯の異常な半生」に移った。 <> 沈黙する言葉4/4<>sage<>2006/03/02(木) 12:56:36 ID:kzEipaL8<> すぐには来れない家族を霊安室で待つ、冷たい体を置き去りにして。
「僕は、貴方が泣いてるかと思いました」
 不意に背後から掛けられた声は、いつの間に表れたのかK部のもの。薄暗く線香臭い
小部屋で、台に横たえられた瓶山の遺体、整えられたその顔を見つめていた伊民は、ドアが
開く音にも気づかずにいたことに驚く。
「こういう時は、泣いてもいいと思いますよ」
 あの時とは違う、何を考えているのかわからない、いつもの冷静な表情と、淡々とした
口調が、再び伊民に掛けられる。
「だぁれが瓶吉のためなんかに泣いてやるかよ」
 K部から顔を逸らし、応えのあるはずの無い横顔に視線を戻すと、
「そうですか」
静かな声と共に、ドアが閉まる。
 一人残されて、伊民は気づく。
 ああ、泣きたかったのは、あの人もだったのだと。 <> 沈黙する言葉<>sage<>2006/03/02(木) 12:58:00 ID:kzEipaL8<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
 全部で5じゃなくて、4でした…。
 色んな意味ですみませんでした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 13:26:40 ID:3FrWC/om<> ぎゃああああああああ!
もももももももも萌え萌え!
木目!何か最近凹んでたんですけどもうどうでも良くなった。
もう一回叫ばせて下さい。萌え!!有難うございます! <> 男と彼<>sage<>2006/03/02(木) 21:24:37 ID:M3wfr6VP<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ナマ、イッポンハイリマース <> 男と彼1<>sage<>2006/03/02(木) 21:25:13 ID:M3wfr6VP<> その日、彼の体調が悪いのに気づいたのは男だけだった。
いつものように大きな声で笑っている彼が少し疲れているように見えたが、
(また偏頭痛やろか)と思い、黙っていた。
彼は自分の体調の悪さを周りに気取られるのを嫌がるから。
その日は段取りも良くたいしたトラブルも無かったが、全て片付いたのは深夜だった。
「お疲れ様でした」とスタッフに声をかけられ、「おぅ」と手をあげてスタジオを出る。
閉まりかけたエレベーターを止め中に滑り込むと、彼が一人でぐったりと壁に凭れ掛かっていた。
長い間二人きりになることはほとんど無く、たまにこんなことがあると少し気まずい。
体のことを聞いた方がいいだろうか、ほっておくか?
俯いて考える男の視線の片隅に、ずるずると壁沿いに倒れるように座りこむ彼の姿が飛び込む。
「…おい」肩に手をかける。熱い。顔に玉のような汗をかいている。
「おい、熱あるんちゃうんか?マネどうした?」彼は答えない。
普段なら、スタジオにマネージャーが待っていて、そのまま車で彼の家まで送っていくはずだ。
エレベーターを降りたところで、ちょうど通りかかったディレクターが声をかけてきた。
「あ、お疲れさんです。あれ、どうしたの?」
「こいつのマネ知らん?」
「ああ、今日は事務所に呼び出されて帰りましたよ。タクシー使ってくれって話してたけど」
(…あのボケ、こいつの体調も見分けられんのか)と思ったがそれを言っても仕方ない。
「これ、一人で帰せんやろ。誰かおらんの?」
「ついさっき皆出ちゃったところだね、困ったな」
「あー、もうええわ、うち連れてく」煮え切らない答えにいらだって、男が半切れで言った。
「家知ってるの?」
「知らん。やからうちに運んどくし、…嫁さんにはそう連絡したってぇや」
ぶっきらぼうにそう言うと、彼の体を支えながら駐車場に向かった。

彼の体は驚くほど軽い。
車のドアを開け助手席に座らせようとしても、男に寄りかかって動けない。
仕方なく半ば抱えるようにして座らせ、楽になれるようにギリギリまでシートを倒す。
エンジンをかけながら男は考えた、『どこ』へ連れ帰ろうかと。 <> 男と彼2<>sage<>2006/03/02(木) 21:27:10 ID:M3wfr6VP<> マンションの駐車場に車を止めると、立たせるのは諦めて彼の体を抱きかかえた。
しんとした廊下に、男の靴音が響く。
久しぶりに帰ってきた部屋の鍵がなかなか合わず苛立つ。
長く締め切っていた部屋は少し湿気くさい。窓を開けようとしてやめる。
彼の体をベッドに横たえると、背中まで汗で濡れているのに気づいた。
(こんままにしとけないわなあ)
風呂場からタオルとTシャツを取ってきて、彼の濡れたシャツとジーンズを脱がせる。
体を拭いてやり自分のTシャツを着せるが、彼の小さな体はTシャツの中で泳いでいる。
「俺ので大きいかぁ?痩せ過ぎやんなあ…」そう言いつつ、彼の額に手をあて噴出す汗をぬぐう。
男はもう一度風呂場に行くと、新しいタオルを濡らして彼の額にあてた。
彼は眉根を寄せて苦しそうな呼吸をしている。何度もタオルを濡らして額に乗せる。
それを繰り返している時に、彼が薄目を開いた。
「…ん…」頭が痛い。体中が熱い。思考はぼんやりとしているし目は翳んでいる。
「無理に起きんと寝とき」聞き慣れた声。
「…ジブン……、なんでおるの…?」
「お前鎮痛剤持ち歩いとるやろ?どこや」
「…尻のポケット…」答えるが声が出ているのか自分でもわからない。
男はジーンズのポケットを探ると、拉げた煙草と割れかけた白い錠剤を取り出した。
冷蔵庫にかろうじて1本残っていたミネラルウォーターのキャップを開け、宮棚に置いたコップに注ぐ。
彼は男が「それ飲んどけ」と言ったのを聞いたが、そのまままた伏せてしまった。 <> 男と彼3<>sage<>2006/03/02(木) 21:28:15 ID:M3wfr6VP<> 濡らしなおしたタオルを持って戻った男は、そのままになっている錠剤と水を見て眉を顰める。
「ぅい、飲めて」彼の背中を支えて抱き起こして飲ませようとするが、水は唇を滑って零れ落ちる。
男は彼の口を抉じ開け、錠剤を舌に乗せた。
水を口に含んで、薄く開いた唇から流し込む。
喉が動くのを確かめてもう一度水を口移しで流しこませ、横たわらせた。
残った水を一気に飲み干し、コップを片付けようと背を向けた時、彼がかすかにつぶやいた。
「…めん」
聞き取れず彼の口元に耳を寄せる。
「……ごめん…」かすれた弱い声。
「何がごめんて?」
「………ひとりにして…ごめん」
男はその言葉に縛られたように動けなくなる。
彼は時々こういうことをする。…心の一番奥に埋めた物を掘り起こすようなことを。
『それ』が未だに自分を傷つけるということが、余計に男を傷つけた。
「なんで、今それを言うねん…」 <> 男と彼4<>sage<>2006/03/02(木) 21:29:38 ID:M3wfr6VP<> 「なんで、今それを言うねん!」
自分で思っていたより大きい声が、男自身を驚かせた。
「せやかて、…今言わな、いつ言うねん。来週にはもう」
言いかけた彼の言葉を遮り、声を荒げる。
「そうや、来週には新しい仕事や!今色々考えなあかん時や!…そんな話、もっと前にできんかったんか!?」
「前にしたかて、今したかて、変わらんやないか!」男の態度に、彼にも怒りが伝染ったようだった。
来週。二人は住み慣れた土地を離れ、新しい場所での生活を始めるところだった。
今まで培ってきた経験が通じるのかもわからず、仕事も人の伝も何もかも霧の中にいるようで不安を募らせていく。
それでも二人ならば、なんとでもなる。道は切り開いてゆける。それだけは口に出さずともお互いに信じていたはずだ。
そんな時に、彼は突然男に告げた。
「向こう着いて、仕事落ち着いたら、結婚すんねん」
そうぶっきらぼうに言い放って、なぜか不貞腐れている。
彼が寂しがりなのはよく知っていた。子供の頃から一人でいることができない。
人懐こいのも、乱暴な口の聞き方も、すべてそこからきているのだと。
男もまた寂しがりだった。極端な人見知りでもあった。
ただ、男はそれを誰にも…特に彼には知られたくなかった。
周りに「あいつは一人でも平気な変わり者」と言われても、男にはなんとも無かった。
むしろそうやって人を引き離すことで安心感を得ていた。誰も失うことがない『安心』。
互いにそれなりに女遊びはしていたし、彼はいずれは結婚するだろうことはわかっていた。
わかっていたつもりだった。
なぜこれほど怒っているのか自身でも考えあぐねていた。
男は、彼が自分を置いてゆくのだと感じた。なぜそう思うのかは考えたくなかった。
「もうええ、わかった。…仕事に影響さすな、それだけや」もうこれ以上の話は聞きたくない、と手を振り、
「怒鳴ってすまん」と切り上げて部屋を出る男の背中に向かって彼が言った。
「ひとりにして、ごめん」一番聞きたくない言葉に、男は答えることもできず出て行った。
傷ついたのは、自分の孤独に彼が気づいていたことを知ってしまったからだった。
<> 男と彼5<>sage<>2006/03/02(木) 21:30:39 ID:M3wfr6VP<> 残されて彼は考えていた。こんなに急いで結婚を決めた意味を。
(今言うても前に言うても、どないもならんやん。同しや)
男がおそらく自分よりもずっと寂しがりで怖がりなのを知っている。
男の隣にいるのはいつでも彼で、それは当たり前のことだった。
けれどそれはいつ誰にかわってもおかしくはない。もう二人とも子供ではないのだから。
男が自分以外の相手を求めた時に耐え切れるだろうか?
好きな女ができれば結婚したいと思っていたし、早く父親になりたいと思っている。
その一方で、男と二人だけで生きていきたいという想いにも惹かれているのはごまかせなかった。
感情のバランスが取れなくなっていた彼は、家庭に逃げることにした。
間違いなくそこは暖かい場所のはずだから。
(俺、狡猾いわ)
彼は、ドアの向こうに消えた男の後ろ姿を見つめ続けていた。
二人は、一番大切な気持ちに蓋をした。
忙しい日々は互いをすれ違わせ、『何か』を置き去りにしたまま時は過ぎた。

<> 男と彼6<>sage<>2006/03/02(木) 21:31:43 ID:M3wfr6VP<> 男は彼の額のタオルを取り、顔の汗を拭いてやる。
手をあてると、少しは熱が引いているように感じる。
男の右手は彼の額から頬をすべり、柔らかい髪に触れた。
その手を彼の右手が押さえた。
「寝惚けとんのか?」払おうとするが、彼の小さな手は男の指を捕らえて離さない。
赤子が母親の手を握り締めるように。
男は振り払うのを諦めて手をつないだままベッドに寄りかかり、長い足を放り出して座り込んだ。
「煙草くらいしかすることあらへんな」
宮棚から煙草のカートンを取り、器用に左手で封を切る。
「禁煙、するつもりやってんけどなあ」
誰に言うとも無くつぶやき、眠る彼の顔を見上げる。
煙と一緒にため息を吐き出す。ゆらゆらと上っていく煙を眺める。
熱を持った右手が時々きゅっと男の手を握る。
男は吸殻をひねると開いた手で毛布を掛けなおし、新しい煙草を銜えた。
(今更考えることちゃうよなあ)
彼が小さく男の名をつぶやく。
銀色のライターが強い音をたてて炎を吹き出す。
「なあ」眠っているのを承知で彼に話しかける。
「なんでそんなこと覚えてんねんな」答えは無い。
彼もまた記憶の底にあのことを眠らせていたのだろうか。
「…あほらし」強く吸い込む煙草の赤い火は夜の中でじりじりと音を立てた。 <> 男と彼7<>sage<>2006/03/02(木) 21:32:37 ID:M3wfr6VP<> 「……煙っ」
目覚めた彼は最初に薄く広がる煙を見た。
まだ頭がはっきりとしない。見覚えの無い部屋。
「どこや…ここ」ぼそっと呟く。右腕が重く痺れている。
「起きたんか」掛けられた声の主が誰かすぐにはわからなかった。
男は彼の額に手をあて、熱をはかる。
「だいぶ熱退いたな、風邪ひいとったんか?」
「ここ、ジブンち…?」
「半分そうや」
「半分て、なん?」
「隠れ家」男はニヤリとわらって呟いた。
「隠れ家?」
「秘密基地や」
「…秘密基地」その言葉に彼もニヤっとする。「中学生かい」
「裏山のな」と男が笑って言い、またまじめな顔に戻って続けた。
「ここは俺が本当に一人になりたい時にくるとこや」
彼は男が煙草を捻りつぶすのを見ていた。
男はもう一言付け加えた。
「…人連れてきたん、ジブンが初めてや」
その言葉は彼にわずかな優越感を与えた。
男は立ち上がりながら、ぼんやりとする彼に言った。
「ちょー、離し。便所行ってくる」
それで彼は初めて、自分の右手が彼の手を握っているのに気づいた。
凝りを解すように右手首を回しながら歩いていく男に、彼は問いかけた。
「ずっと、おってくれたん?」
男はドアの前で立ち止まり、「ぉん」とだけ答えると個室の中に消えた。
彼はベッドの下、男が座っていた場所に転がる幾つもの煙草の空き箱と、積み上げた吸殻を見た。
男の背中にさっき見た夢の後ろ姿を思い出して胸が痛んだ。 <> 男と彼8<>sage<>2006/03/02(木) 21:35:07 ID:M3wfr6VP<> 「ちょー詰め。俺も寝る」彼の体を押しやるように、男はベッドに滑り込む。
「…狭」
「しゃーないやろ、ジブンがおるからやないか」と文句を言いながらも、彼の寝場所を確保するために両腕をあげて頭の後ろで組む。
彼は腕の隙間から、男の端正な横顔を見ていた。
この忙しい男が、自分のために一晩を費やしてくれたのだろうか?
誰も入れたことが無いという殺風景な部屋。彼は半身を起こし部屋を見渡した。
自分たちの寝ているベッド、小さなコンポと数枚のCD、几帳面に床に並べた本。申し訳程度の作り付けの冷蔵庫。
およそ生活感の無い部屋が、いかにも男に似つかわしく見える。
(こんなんで平気で住んでそうやもんなあ)
男は身動きせず、彼もまた動けずに思い出していた。
遠い昔こんな風にひとつのベッドで寝た。くだらない話で笑い転げて、笑い疲れて眠る。子供の記憶。
「なあ、」沈黙に耐えられず彼が呼びかけた。
(俺、何を言おうとしてんやろ)
答えがないまま、ぼんやりと白い壁を眺める。二人きりの部屋。
突然、ぼうっとしている彼の背中に男が話しかけた。
「…言いたいことあるんやったら、言い。今なら聞いたる」
彼は、仰向けで目を閉じたままの男の方を振り返った。
(言いたいこと)それはひとつしかない。あの時置いてきたもの。ずっと眠っていた『何か』。
彼は男の真意を測りかねていた。 <> 男と彼9<>sage<>2006/03/02(木) 21:37:34 ID:M3wfr6VP<> 「…なあ。」
「うん」
言葉が続かない。時計の音がやけに響いている。
「…聞いとるよ。…ちゃんと聞いとるから、ゆっくり喋り」
そう言って、男は動かない。
「なあ、…俺な」声がかすれる。答えがない。眠っているんだろうか?
彼は息苦しくなった。それは伝えるべきことなのかわからない。
(なんで、今それを言うねん?)
けれど、今は留めておくことがどうしようもなく苦しい。
「俺、……ジブンのこと、好きや」
男は答えない。そのことに少し安心する。
「ずっと、今でも。…好きやってん」
窓の外では生活の始まった音がする。時計の針を刻む音がとても遅く感じる。
何よりも、自分の鼓動が部屋中に鳴り響くように思えて、彼は身を硬くする。
答えは無い。
(やっぱ眠ってもうてんやろ)
それならその方がいい。今まで無かった物なのだから。
(これからも無い、それでええやん)
彼は左手をついて男の寝顔を覗き込もうとした。 <> 男と彼10<>sage<>2006/03/02(木) 21:38:20 ID:M3wfr6VP<> 不意に、男の右手が彼の左頬に触れた。
「ちゃんと聞いとる、て言うたやろ」
驚きに何も言えない彼に、男は身を起こし両手で彼の顔を包んだ。
「ちゃんと聞いとった」男はまっすぐに彼の目を見つめている。
「俺、」ようやく彼がつぶやく。
言葉を封じるように唇を重ねる。
「伝染すなや」と言う目が笑っている。
喘いで薄く開いた唇に舌を滑り込ませ絡める。彼は男の背に腕を回した。
「もう一度言え」唇を重ねたまま、静かな声で男が囁く。
「…好き」
「もう一度」
「好きや」
「うん」
彼はうわ言のように繰り返す。好き。堰を切った言葉は止めることができない。
男は彼の唇を噛み、耳に口づけをして、小さく言った。
「俺も」唇が重なる。
目を見開いた彼は、至近距離で自分を見つめる黒い目に、男の真摯な想いを見た。
「俺も、好きや」男は繰り返した。
泣きたくなるような気持ちで、男の唇に噛み付く。
「好きや。聞いとるか?」
「うん、…うん」
何度も激しく口づけあい、彼は男の肩に頭を擦り付けてきつくしがみついた。 <> 男と彼11<>sage<>2006/03/02(木) 21:39:00 ID:M3wfr6VP<> 男は長い指で彼の髪をゆっくりと撫でる。
巻き戻る時間、取り去られた蓋。
ふたり。今、本当に二人でいる。
もう一度唇を求めようとした時、男は自分の背中に回されている腕の力が弱まるのを感じた。
「……おぇ…?」
うなじを支えて、彼の顔を上向かせる。
「……まじかいや…」
彼は穏やかな顔で目を閉じている。男はため息を吐いた。
「何でこのタイミングで寝んねや…、俺辛いやんけ」
彼の頭が後ろに反り返りそうになり、抱き締めなおした。
男はもう一度深くため息を吐き、起こさないよう片腕で抱きしめたままベッドに横たわる。
毛布をかけ、彼の小さな体を胸に抱えた。
片手で子供を寝かしつけるように背中をぽんぽんと叩き、空いた手で彼の髪を優しく撫で続ける。
「お前なあ、俺、女にかてこんなんしたことないねんぞ」
男の胸に凭れて、安心しきって眠る彼の顔を見る。
「あーあ」
しょうもな、と呟いて目を閉じる。
彼がかすかに男の名を呼ぶ。
(秘密基地)
なぜかおかしくなって、小さく笑う。
「…ぬくいな」
自分の鼓動と彼の鼓動が同調するのを感じる。
ゆっくりとその音しか聞こえなくなる。
何よりも暖かいものを抱えて、やがて男も深く眠りに落ちていった。 <> 男と彼<>sage<>2006/03/02(木) 21:40:02 ID:M3wfr6VP<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )寸止め。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 22:08:30 ID:nIOiL3+o<> >>267
もももももももえー!!!(゜∀゜*) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 22:30:01 ID:IhD0NCjL<> >>267 何この萌え!!! (*´Д`)/ヽァ/ヽァ
誰のことかはわかんないけど勝手に脳内補填させていただきました。
萌えと感動をありがとう!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 22:46:28 ID:ArY9uShK<> >>267
うぉぉ萌ええーーー!!
間違い覚悟ですがもしかしてもしかすると下町ですか姐さん!? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 23:21:01 ID:mEVl1/lM<> 自分も下町だと思った…どうかな? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/02(木) 23:23:23 ID:M3wfr6VP<> >>270-271
怖くて「そうです」なんて言えないわ〜 <> 1/1<>sage<>2006/03/03(金) 02:07:07 ID:P/4np9P2<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ほんのり801の英/語/漬け
ほぼ例文をつなげただけの文章なので、
持っている人は「2−3」の男ボイスを中心的に見て符合したらニヤリとしてください。

「大きい街は苦手なんだ。人がいっぱいいるし、物はいっぱいあるし、目まぐるしいね」
 薄暗い部屋の中で目線もくれずに言う彼は、広いキャンバスににぎやかな街の風景を描いていく。
 着ているものから、冬の街だろう。色とりどりのコートを着た人々がウィンドウショッピングを楽しんでいる絵。
一人ひとり違った表情はしているものの、どこか一様に寒さをこらえている様なほのぼのとした印象を受ける。
「コーヒー、まだある?」
「飲む?」
「うん。…で、なんの話だっけ」
 僕は彼の助手権モデルをひきうけたのだが、助手なんてのは何てこと無いただの給仕。
モデルってのは…ただヒトの骨格をしてりゃ何でもよかったらしい。
 それでもこの1年と少し経つこの共同生活を楽しんでいた。
 彼も、少なくとも嫌ってはいないと思う。
「君は…ああ、ありがとう」「どういたしまして。"君は"?」
 絵を描いていてもひっきりなしに動く口は、こうやって時々続けてやらないと何を言いたかったか忘れてしまうときがある。
 病気ではないらしい。ただ、極端に忘れっぽい上に人と話すのは年単位ぶりというのだ。
 だから、僕なんかとの会話を楽しんでくれていると思えば、別段苦にはならなかった。
「ええと、そう。君は、自分の将来のビジョンが見えている?」
「どういう?」
「それを僕に聞かせるのが今の君の仕事だ」

 さて、困った。
 得にはっきりしたビジョンは僕には無い――あればこんなところでこんな事はしていないだろう――。
しかし、答えねば給料が出ない可能性が出てきた。

 「そうだね…」僕はとりあえず考えている風な単語を呟く。そして空になったポットに、いくらかのコーヒーを淹れに行くのだ。
 そうすりゃ3分後には話題はかわる。
「少し時間をくれ。僕はさっきまできみが今朝資料にしたいといっていたローマに関する文献を探してたんだ。
 それを続行したいんだけど今の仕事と平行するにはちょっときついな <> 2/2<>sage<>2006/03/03(金) 02:10:48 ID:P/4np9P2<>  彼はしばし眉根を寄せて考えたが、僕の将来よりもローマの過去についての方が興味深かったらしい。
一つうなずいてハエを追い払うように手を振った。
「あ…でもお喋りは続けて。この仕事をするのはとっても簡単な事だと思うけどね」
「確かにさっきより幾分かは」

 そして僕は部屋の隅に積み上げられたバカみたいな量の本を漁り始めたが、その作業はすぐに中断される羽目になった。

「ちょっと来てくれ。背筋がどこまで自然に反るのか見たい」
 「助手」の仕事が終わり、今度は「モデル」の仕事、という訳だ。
 逆らわず、はいはい。と僕は答えて言われたとおり背筋を反らせる。
そこまで行くと変だのなんだの言われて、彼の納得がいく角度で止められた。

「その茶色いコートの女の人は? その人だけなんで地べたに座ってるの?」
「これ…この人…こいつは、ここに居る犬が怖いんだ。君にたまねぎを食えと叱られた日に生まれた」
「じゃあ、その黄色いネクタイに灰色のスーツの男は? 急いでるのか? この人ごみを疾走してる」
「会議に間に合わないんだ。こいつは会議の日程を間違えてた。
 君の誕生日を聞いて、それならば祝ってやろうと思っていたのに忘れて居た事に気づいた日に書いた」
「ややこしいな…じゃあ…今書いている大空を仰いでいる20代前半かな。の男は?」

「君だ」

「…くっ…あはははははは!」
 僕はのけぞったまま笑い、更にのけぞったために倒れてしまった。
 それでも笑いはおさまらない。自分でも何がそんなにおかしいのかと思うことなのに。
「ああ、ねえ、僕の将来のビジョン、たった今見えたよ」
「ぜひ」

「あなたと一緒に、その街に生きたい」


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )お粗末summer <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 02:13:10 ID:8hvcEIyI<> >>267
どうやら全く違う二人に当てはめて読んでしまったようだが
非常に美味しくいただきました。 <> フィギャー銀×銅1<>sage<>2006/03/03(金) 02:48:59 ID:f6B181kK<> 鳥ノMEN'Sフィギャー銀×銅(銀視点)
萌えに任せて初投下。しかしニワカもいいとこなので色々見逃してクダサレ

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )801デモナンデモナクテ ゴメンナサイ!


了スリ−トにとって、身体を休めるのも大切な仕事のうちだ。

とはいえ、頭では理解していてもそうはいかない時だってある。例えば早めにベッドに潜り込んで

みたもののなかなか寝付けない夜、まさに今夜がそれだ。
ベッドサイドに置いた腕時計でまだそんなに遅い時間ではない事を確認して、気分転換に散歩でも

するか、と部屋を出た。

荷物はポケットの携帯の音楽プレイヤーのみ。シンと静まり返った夜の空気の中で聞こえるのは耳

元から流れ込んでくるメロディだけ。
今宵の恋人はお気に入りのラブソングってとこかな。
気分良く口笛なんかを吹いてみたりしながら、特にあてもなく、思う侭に歩く。
ただし、部屋へ戻る道筋だけはしっかりと憶えておかないとまずい。
迷子になんてなったらシャレにならないし、ちょっとそれは勘弁して欲しいし。
ヘッドフォンを外して辺りを見る。他に人影は全くないわけじゃないけれどぽつぽつといる程度。
その中でふと視界の隅に入ってきた人影が、やけにリズミカルな歩き方をするなぁ、と思いながら

視線をそちらへ向けた。 <> フィギャー銀×銅2<>sage<>2006/03/03(金) 02:50:22 ID:f6B181kK<> 「「あ」」

眼が合った、と思った瞬間お互いの動きが止まり、見覚えのある顔がぽかん、と口を開けてこちら

を見つめる。
けれど、その表情はすぐにいつもの笑顔に変わった。こちらへ駆け寄ってくる足音に、彼の手にす

る小さな包みのたてるカサカサと乾いた音が重なる。

「えーと、こんばんは?ス〒フ」

白い息を吐きながらちょっと首を傾げるようにして言われた挨拶に、思わず口元が緩む。
ただでさえ童顔な彼は笑うと更に少年のようで、とても自分より3つも年上には見えない。
「どーも。こんばんは、字ェフ」
「偶然だねー。どうしたの」
「ん。気分転換にね、散歩してた。そっちは?」
「あー、同じだ」
アハハ、と声をあげて笑いながら少し揺れた身体に、カサリ、とまた包みが音を立てる。

「それ、何?」
彼が大事そうに抱えているその中味が何だか無償に気になってしまって、聞いた。
「あ、これね。そこの店で買ったんだ」
そういって小さな包みを開けると、中からチョコレートバーやカラフルなパッケージの小さなお菓

子達が覗いた。 <> フィギャー銀×銅3<>sage<>2006/03/03(金) 02:51:44 ID:f6B181kK<> 「それが気分転換?」
「そう、気分転換の、お菓子!」
ニコニコと楽しそうに包みの中を見せる彼のお菓子好きは有名だったから、ああなるほど、と納得する。
「美味しそうだ」
「ス〒フ、チョコバー好き?」
「もちろん!」
即座に返した答えに、彼は嬉しそうにチョコレートバーをひとつ取り出してこちらへ差し出した。
「ハイ。気分転換の、お裾分け」
「もしくは証拠隠滅ってヤツ?」
伸ばされた手から言われるがままにそれを受け取りそう返すと、口元に人差し指をあてた彼がこちらを見上る。

「・・・お互いコーチには内緒ね?」

その眼は悪戯っぽい色を帯びて、キラキラと街灯の柔らかな光を反射していた。
彼のよくする、もう何度も見ている筈の表情を何故だか今初めて見たような気がして、少しだけドキリとする。
その瞬間、自分の中の何かが知らない処で勝手に動きだしてしまったようで、どうもそわそわと落ち着かない。何だろう。こんな処でこんな風に、偶然会ったせいなんだろうか。

それでも彼に動揺を気づかれない様に小さく息を吸い込んで、軽くウインクをしてみせる。

「オッケー、交渉成立。素直に買収されましょう」

そうしてお互いちょっとした共犯者の気分で笑い合って、冬の夜空の下、チョコレートバーの乾杯を交わした。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )デモ フタリトモ カワイクテ受ナンダ゙ヨナ・・・ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 03:12:44 ID:ZYBnLtUm<> >>273
自分はまだ1-2なので今後を楽しみにします。
アリガト! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 11:41:00 ID:iF7h8M6a<> >>276
フィギャキタコレ!!(*´Д`)
がっつり萌えさせていただきました! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 16:53:13 ID:oIwpP6Tw<> >>279
ああああああ萌えーーーーー!!
神!!二人ともカワユス(*´Д`)
銅の口調に禿萌えたよ!!!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 16:55:10 ID:oIwpP6Tw<> >>276でした…orz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 21:02:18 ID:kesAzTmT<> 前スレ722
GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 22:54:30 ID:d6kZmqGQ<> 前スレのスレたん(*´Д`)ハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/03(金) 22:58:18 ID:qg5wxsb6<> >>267
とてつもなく萌えました。ありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/04(土) 00:58:40 ID:qnNlcTrE<> >>267下町…(*´Д`)=з
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/04(土) 01:57:17 ID:ZOESl0NR<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  某おっさんたちの青春映画より
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ナマモノ注意
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 1<>sage<>2006/03/04(土) 01:58:25 ID:ZOESl0NR<> どっから道を間違えたんだ……。

そう思いながら、長く暗い廊下を歩いていく。

……高校の頃が一番楽しかった。

人の話し声も聞こえないその空間は、夏も近いのになぜか肌寒い気がした。コツコツと響く看守と自分の足音。その音が、さらに静けさを引き立てる。

そういや、あいつと横須賀に行ったのもそのときだったな。

あの頃を思い出すと、ふと笑いがこみ上げてくる。
毎日のように喫茶店に行っては、店のオーナーとの賭けごとばかりして、煙草をふかせば大人だと勘違いしていた。金もなければやることもない、そんな退屈な日々。
でも、そんな日々が一番充実していたような気がする。
それに比べて今は……。 <> 2<>sage<>2006/03/04(土) 01:58:59 ID:ZOESl0NR<> 「おい」
ふいに呼びかけられる。どうやら目的の場所に着いたようだ。
「…うっす」
こみ上げていた笑いが途切れる。

経費節約のため電気もつけられていない廊下。そんな廊下の突き当たりに位置するこの部屋は、面会室と呼ばれている。


看守に促され部屋の中に入ると、そこには、中学から俺があの店を潰すまで、ずっと見慣れていた顔があった。

「……元気か?」
「…………」
声も出せずに小さく首を縦に振る。 <> 3<>sage<>2006/03/04(土) 01:59:32 ID:ZOESl0NR<> 気まずい。こいつといて、こんな空気になったのは久しぶりだ。
そんな空気を察知したのかしていないのか、あいつは喋りまくった。
あいつの娘や店、商店街のこと。空き良しさんやP夏のこと。賭け試合のこと。

俺はその間もずっと俯いたまま、目を合わせられないでいた。

俺は何をやってるんだ……。

野球がやりたい。その思いだけで強盗に入った。ただグローブを返して欲しくて……。

そしてその結果がコレ。


「……お前バカだろ」

唐突に言われた。
でも、その通りだった。

昔からこうだ。後先考えずに行動しては、後悔ばかり。昔はそれも楽しかったのに、年を重ねるにつれて後悔しか残らなくなっていった。
<> 4<>sage<>2006/03/04(土) 02:00:10 ID:ZOESl0NR<> 自分は店を潰して、でも他のやつらは頑張っていて。
そんな自分が嫌で、そんな姿を見られたくなくて、みんなの前から姿を消した。そのつもりだったのに。

結局、醜態しかさらしていない。

もう、野球も、みんなの前に姿を現すこともできない。


「……最初から家にグローブ借りに来ればよかっただろ」

予想していなかった言葉。驚きすぎて、思わず顔を上げてしまった。

「強盗なんてしなくたって、俺とか……他にもグローブぐらい貸してくれるやついるだろ? 逸哲とか……」

差柄……?

「幹さんだって、きちんと説明すればグローブぐらい探してくれたんだぞ……ほら、コレ」

ごそごそと袋から何かを取り出している。その瞬間、差柄の目が潤んでいるような気がした。


袋から取り出されたもの。それは。

……背番号3のユニホーム。 <> 5<>sage<>2006/03/04(土) 02:00:45 ID:ZOESl0NR<> 「幹さんに頼んで探してもらったんだ。お前は、ほんっと言葉が足んねーよ」

目を擦りながらながら、あいつは笑っていた。
その笑顔につられるように、俺も笑った。

俺には足りなかった……。
勇気が。
たったそれだけのこと。


「……踏乃。試合来るよな……」

「脱獄してでも試合に出る」

今度はきちんとアイツの目を見て言うことができた。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/04(土) 02:03:15 ID:ZOESl0NR<>
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ いろいろ間違ってスマソ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 呆(ボケ ×突(ツッコミ 1/1<>sage<>2006/03/04(土) 02:48:23 ID:ZxCUHfcW<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ゲ仁ンという設定のオリジです。 呆(ボケ ×突(ツッコミ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  こんなヒトらいたら素敵だなと。オ/リ/ラ/ヅじゃないよ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 雑誌の対談風だゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 呆(ボケ ×突(ツッコミ 1/1<>sage<>2006/03/04(土) 02:49:39 ID:ZxCUHfcW<>  ──お二人は、中学校の頃からのお知り合いなんですよね?
呆「そうなんですよ、その時からもうコンビ組んでて。」
突「文化祭やらイベントの度にネタやったしな。」
呆「そうそう!あぁ、そや。ボク、こいつの初めての男なんですよ!」
突「語弊のある言い方すなよ(笑)。」
 ──何があったんですか?
呆「コンビ組むぐらいですから、めちゃ仲良かったんですよ。」
突「ずっと一緒におったな。またクラスも一緒やったんで。」
呆「ほんで、周りからもよぉ言われとったんですよ、"お前ら仲良すぎやぞ”って(笑)。
  でボクが、"俺ら愛し合っとるもんなー"ちゅうて、"何言うとんねん!""何やねん、照れんなや!"とか言うてたら。」
突「周りからキスコールがな。手ぇ叩きながら"キース!キース!"って。」
呆「"あぁ、もうここはやっとかなアカンな"と妙な使命感に駆られて、キスしたったんですよ。そしたらめっちゃウケて。
  で、まぁ捨て身やけど笑い取れたんでボク的には良かったんですけどね。」
突「俺がそのあとかなりテンション下がっててんな。口数少ななって。」
呆「そう(笑)なんかめっちゃ凹んでたんですよ。おっかしいなぁ、思て。んで帰り道、"どしたんや、何でそんな暗いねん。"て聞いたら」
呆・突「「"ファーストキスやったのに…!"」」
呆「てな(爆笑)」
突「だってそりゃ凹むやないですか。夢見る男子中学生のファーストキス、ネタですよ!」
 ──それで"初めての男"なんですね(笑)。
呆「そうなんです。あ、でも俺もファーストキス、こいつですからね(笑)。」
突「なんやねんな、俺ら。」
呆「ホンマな。人生ネタやね。」
 ──(笑)。とっても仲の良さげなお二人、本当にありがとうございました。 <> 呆(ボケ ×突(ツッコミ オマケ<>sage<>2006/03/04(土) 02:50:41 ID:ZxCUHfcW<> *対談後、楽屋にて

突は、自分の首にゆるく巻かれた、独特の光沢を放つネクタイを解きながら言う。
「さっきの、”人生ネタ"てお前。…まぁ言われても困るんやけど。あん時、俺が言うた後、またキスして来たくせに…。」
「したくなってんもん、しゃあないやん。ちゅうか…、」
呆は悪びれずそう言いながら突の顔に手で触れた。突はその手に手を重ね、続きを言う。
「”今、したい"?」
「流石。よぉ分かってらっしゃる。」
口の端を吊り上げて悪戯っぽく笑った。
突「…誉めてもうてんのか、これは」
呆「勿論。」
そして俺達はあの時と同じように触れるだけのキスをして、微笑みあった。
<> 呆(ボケ ×突(ツッコミ 1/1<>sage<>2006/03/04(土) 02:51:34 ID:ZxCUHfcW<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ おまけがおまけなのか本編なのか分からないね。お目汚しスマソ。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/04(土) 14:06:42 ID:cJFG8B1U<> >>297
モエ―(゚∀゚)―!!
好きカプにぴったりなコンビいたよ。
GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/04(土) 15:47:13 ID:uYTO9YE/<> >>293
萌えました…!!
格好悪くて味がある、イメージそのままでした <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/04(土) 16:54:51 ID:iyQ8HeAa<>

週刊少年VIP、週刊ヤングVIP、月刊コミックニート 文芸新都
お絵かき
http://neetsha.com/

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 00:08:04 ID:ljuXOxo3<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  某CMの先輩後輩モナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  「罵/倒」から数日後らしいよ。。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 1/4<>sage<>2006/03/05(日) 00:08:35 ID:ljuXOxo3<> 「君さ、免許持ってないの?」
「持ってますよ。それが何か?」
「………」

じゃあ、たまには「僕が運転しましょうか」とか言えないのか君は!?
喉元まで出かかった言葉を無理矢理飲み込む。
こいつには何を言ってもムダなんだってことは、充分わかったはずだった。
「なんか俺腹減っちゃったな。どっか寄って行きません?」
相変わらず携帯をいじりながら、カワイイ後輩は助手席でくつろぎまくっている。
気がつけばもう外も暗い。夕飯の時間か…でも、こいつはまた俺に払わせる気だ。
そういうのを悪いと思ってないのが手に負えない。
先日、キレた俺はここらで一発説教かまして、先輩の威厳ってものを見せ付けてやろうと目論んだのだが。
こいつの嘘泣きに騙され、結局また疲労の日々。
「はあー……」
車は信号待ちしている。俺はハンドルに伏せって、思わず溜息を漏らした。
「どうしたんすか、先輩?あ、わかった!腹減りすぎたんでしょ。今日忙しかったですもんね」
忙しかったのは誰のせいだ、誰の!?
君がやらかしたヘマの尻拭いに奔走し、君の業績も上げなきゃならんから君の分まで契約を取り、
携帯料金払わなきゃなんない〜とか言って携帯ショップまで連れて行き、…挙げていったらキリがない。
「……じゃ、どっか寄ってくか。この辺で…」
「俺、今日中華って気分なんですよねー。ほら、最近美味い中華屋できたらしいじゃないですか。
あそこがいいな」
相変わらず携帯を弄りながら道を指示してくる。俺はもう一度深い溜息をついて、ハンドルを回した。
ここまでこれみよがしな溜息なのに、後輩は気付く気配もない。ゆとり教育のバカ野郎!
<> 2/4<>sage<>2006/03/05(日) 00:09:09 ID:ljuXOxo3<> 「あ、先輩の美味そうっすね。ちょっともーらいっ」
俺が後での楽しみに、ととっておいた唐揚げは、あっという間に後輩の胃袋に攫われた。
「君さあ、せめて『いいですか?』くらい訊けないの?俺もあんまり言いたくはないけどさ、」
「あ、じゃあこれあげますよ」
じゃあ、じゃない!と思いながらも、皿の端に乗せられた春巻きを頬張る。…美味い。
「美味いでしょ?先輩顔にすぐ出ますねー」
あはははっ、と屈託無く笑う。無邪気だよなあ。俺はとうになくしてしまった若さを、こいつは溢れるほど持ってる。
パシャリ、と小さい機械音が聴こえた。まさかまた写メじゃないだろうな?
「春巻きと先輩…っと。メモリ足りなくなってきたなぁ」
「俺なんか撮って楽しい?ていうかちょっとは許可取って欲しいなー…」
「面白いっすよ!先輩表情豊かですよね。写真映りもいいしー」
小言は見事にスルーし、春巻きを咥えた俺のマヌケな写メを見せてくる。思えば、結構こいつには撮られたな。
俺も撮り返してやったらどうすんだろ?携帯構えるセンパーイ!とか言って、携帯を向け合うんだろうか。
俺は想像して肩を竦めた。それじゃおかしなカップルだ。
「そろそろデザート行きますかー。杏仁豆腐と、マンゴープリンと、あとはー」
メニューと格闘している後輩を、可愛いと思い始めているのは…この状況に慣れてしまったからだろうか?
<> 3/4<>sage<>2006/03/05(日) 00:09:44 ID:ljuXOxo3<> 「…で、結局俺が払うわけね」
後輩は、会計時になってふわっといなくなった。「会計はこっちね」なんて露骨に言っていたときより、幾分か学習したらしい。さり気なく奢ってもらう方法を。
本日何十回目かの溜息の後自動ドアを抜けると、後輩は壁にもたれて虚空を見ていた。珍しく、携帯は閉じている。
「何見てんの?」
「あ、別に何も。どうもご馳走様でした」
…あ?今、何て言った?ごちそうさま!?
固まってしまった俺の顔を、後輩は覗き込む。
「どうしたんですか先輩?大丈夫ですか?」
今までさんっざん奢ってきたけど、礼を言われるのは初めてで、俺は言葉をうまく出せなかった。どういう風の吹き回しだ?
「だ、うん。大丈夫大丈夫。いや、こ、この店美味かったね」
「でしょ?また来ましょうね」
後輩は軽い足取りで歩き出した。俺はその後を付いていく。まったく、こいつには調子が狂いっぱなしだ。
ふと、足を止めて後輩が振り返った。
<> 4/4<>sage<>2006/03/05(日) 00:10:20 ID:ljuXOxo3<> 「今日のお礼です」
なんだか上ずったような声がして、ふわりといい香りが近づいてきた。俺、この匂い好きだな…
と思う間もなく。
唇を塞がれていた。
「×○▲☆&■※―!!」
「そんな変な声出さないで下さいよ。びっくりしたぁ」
後輩は何もなかったように笑う。え、え、なに?なにが起こっちゃったの!?この数秒で?
唇に指を当てる。感触が―…間違いない。
あまりにも突然の出来事に動けないでいる俺を、パシャリ。また写メに収められた。
俺は後ろを向き、無意識のうちに背広の内ポケットに手を突っ込んだ。いつもならここで選択肢が―
え?
な、なんで?
出てきたカードは、一枚だけだった。しかも、書かれているのは…。

ちらっと、後輩を振り返る。にこっと笑いかけてくるその笑顔は、可愛い。可愛いけれど。
カードを見る。そこに書かれている、有り得ない4文字。
俺は天を仰いだ。

どうすんの俺!?どうすんのよ!!

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 00:11:16 ID:ljuXOxo3<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ どうすんの俺!?が書きたかっただけです。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )   温くて御免なさい。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 00:23:34 ID:Lg4DbJEi<> GJです・・・!!!
非常に萌えましたww
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 01:10:48 ID:NfZK2L3x<> 萌えた〜
コマーシャル見返してくるよ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 01:31:19 ID:uZgfyBc0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  何か萌えたから書いてしまった。後悔はしていない。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  
 | |                | |            \食物探偵助手の独白だってさ
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ エロクナイヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 01:31:57 ID:uZgfyBc0<> つい十分前まではバカ話をしていたのに。
つい五分前には笑っていたのに。

神様っていうのが実在してるんなら、迷わずぶん殴ってやる。
テメーなんか信じてやらねえ。絶対信じてやるものか。



『良助君』

正直言って鬱陶しかった。
いきなりやってきてリーダー気取って俺をこき使ってなれなれしい態度取ってきて。
でも、いつからだろう。
それが当たり前のように感じて、側にいるのが当然のことだと思うようになったのは。

『初めて名前で呼んでくれましたね』

たった一言。
それだけで何よりも嬉しそうに笑った。
どんな食べ物を前にしたときでも、そんな顔は見た覚えがなかった。
俺が一方的に作っていた壁が壊されていくような感覚。
だけどそれに対しての嫌悪感は全くない。嫌だなんてちっとも思わない。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 01:33:08 ID:uZgfyBc0<> 『良助君』

俺の中で何かが確実に変わり始めていた。
それを自覚し始めて、もう少しだけ素直になろうと思った矢先に――


あの、今にして思えば幸せだった日々はもう戻ってこない。
あんな風に名前を呼ばれて、食い歩きに付き合わされて、事件を解決する日々。
平和すぎて当たり前すぎていて崩れることなんかあるはずがないと思っていた。

そそのかされて、疑っちゃいけない人を疑って、挙句あんな目にあわせて。
本当に、俺はバカだ。今なら素直に認めてやる。



神様なんているわけない。
わかっているのにひとつだけ、確認したい――願いたいことがある。
「生きてるに決まってるよな……鷹野さん」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 01:33:54 ID:uZgfyBc0<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 勢いだけで書いてしまった
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )お目汚しスマソ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 01:56:08 ID:sUqcxdku<> キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
萌えました、ごちそうさまです!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 02:10:57 ID:z6hDv7on<> >>301-306
あばばばばばば(ry
どーすんのよ!?ってくらい萌えますた、ご馳走様です(;´Д`)ハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 03:00:08 ID:Ox0Gc9R/<> >>312
萌えた。俄然来週楽しみになってきた。 <> 野/豚。明習1<>sage<>2006/03/05(日) 04:56:43 ID:ttpZQ7J5<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )野/豚をプ口デュースネタガフッテキタノデ


「いのち短かし 恋せよ乙女」

古い歌だ。
この間何気なく見たモノクロ映画の中、年老いた一人の男がブランコを漕ぎながらこの歌を口ずさんでいた。
白黒画面の中、少し丸まった男の背中が印象に残っている。
さて、俺が何故唐突にこんなことを思い出したかといえば、ここが公園で、おまけに年甲斐もなくブランコに座っているからだ。
そしてブランコから少し離れたところで、明が色褪せた鉄柵に腰掛けてシャボン玉を吹いている。
夕日のせいでシャボン玉が鈍い飴色に輝いて見える。その中心で虹色をした光がぐるぐると渦を巻いていた。
急に公園に行きたいなんて言い出すから何かと思えば、ただそれが吹きたかっただけなわけね。
少し離れた所にある砂場には、さっきまで子どもが遊んでいたのだろう、砂で作った大きな山の両端に穴が開いていた。
懐かしいなあ、そんなことを思い爪先で地面を蹴るとブランコを揺り動かす。 <> 野/豚。明習2<>sage<>2006/03/05(日) 04:59:10 ID:ttpZQ7J5<> 「習字」

不意に名前を呼ばれ顔を上げると、茜色に染まった空気に漂う大小様々のシャボン玉に囲まれて、明が微笑んでいた。
まるで冗談みたいな構図だ。しかもそれが似合っているもんだからどうしようもない。

「好きだよ」

ああ、胸が潰れてしまいそうだ。

好き過ぎて死んでしまいそうだなんて、今時少女漫画ですら言わない台詞だろう。
何をどう転んでも俺は乙女にはなれないが、今なら彼女達の気持ちが分からないでもない。
一瞬一瞬が永遠で、それでいて刹那のように感じるのは、きっと恋をしているからだ。

「…お前って、ほんと馬鹿だな」

俺の言葉を聞いているのかいないのか、明は構わず上機嫌でシャボン玉を吹き続ける。
飴色をしたそれはふよふよと風に乗って、俺の目の前で音もなく弾けた。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )ハヤクDVDデナイカナ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 23:03:37 ID:nXJghFPr<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  某RPGのアイテムネタ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  飲料だった事実に触発されたらしいぞ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> ポ/ー/ショ/ン1<>sage<>2006/03/05(日) 23:05:18 ID:nXJghFPr<> ◆ある日の戦闘風景1
戦士は180のダメージを受けた!!
黒魔導師
 ▽つかう
 →ポ/ー/ショ/ン
 →戦士
黒「ほら、受けとれ〜」
黒魔導師は戦士にポ/ー/ショ/ンを投げた
戦「ちょッ!待ッ!!…うわっ───」
   ッゴン!
戦士は取り損ねた!!
戦士は50のダメージを受けた!!
戦士は戦闘不能になった…

◆ある日の戦闘風景2
黒魔導師に300のクリティカルダメージ!!
戦士
 ▽つかう
 →ポーション
 →黒魔導師
黒「ごめ…、起き上がれ………」
戦士は黒魔導師の口にポ/ー/ショ/ンを注ぎ込んだ
黒「───ゴホッ、ッ…アンタ殺す気か!?勢い良すぎ!」
戦「一応回復したから良いじゃねーか」 <> ポ/ー/ショ/ン1<>sage<>2006/03/05(日) 23:05:51 ID:nXJghFPr<> ◆ある日の戦闘風景3
戦士は50のダメージを受けた!!
戦「………………」
黒「おーい?…HP1!?早めに各自で回復って何回言えば…」
黒魔導師
 ▽逃げる
   『逃げられない!!』
黒「ええー、このモンスター魔法効かないのに…ああもうっ」
黒魔導師
 ▽つかう
 →ポ/ー/ショ/ン
 →戦士
黒魔導師は戦士にポ/ー/ショ/ンを口移しした
戦「────ぷはっ…ウォータか!?ウォータか今の!」
黒「うん、ウォータだったら濡れてるから、それ以前に戦闘不能だから」
戦「は?…あれ回復してる俺?」
黒「うん、回復したんだからささっと倒してね、モンスター」
黒(次の街着いたら絶対白魔導師探してやる…) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/05(日) 23:08:19 ID:nXJghFPr<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ド/ラ/ク/エと混ざってるかも
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )文章じゃない上にナンバー間違えたゴメンナサイ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 01:46:13 ID:9RLHI7+o<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ナマモノネタを投下しますが構いませんねッ!
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  飴プロ(VVVVE)のメダルと今日中でひとつ。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 注ネタバレ!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

先日現地でやってた「のーうぇいあうと」の結果ネタバレを含みます。
殆ど独白でアレですが、心の広い方ドゾー。 <> 1/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:51:16 ID:9RLHI7+o<> 「おめでと」
太い声に似合わない朗らかな調子の声に、現実に戻された。
「……お前か」
意識的に訝しげな目を作って声の方向を見る。レスリングギア姿のカ一卜が、にこにこしながら世界王
座のベルトを肩に抱えて歩み寄ってきた。
「……ラソディとのプロモは撮り終えたのか」
「終わったよ。とっくの前にね」
舌を出して、残念でした。と見事に俺の気持ちを汲んだ答えが返ってくる。
もう少しだけ一人でいたいという俺の望みは、一番望まない相手によって、あえなく潰された。もとも
と近づきがたい印象を与えるであろう顔を更に顰めて、このふざけた男に判りやすく不快感を伝える。
「…だったら最初からここに来るな」
「共用のロッカールームにいつ来ても僕の勝手でしょ」
さも不思議そうな顔を作って、堂々と横に腰掛けてくる。…何か言えば必ず嫌味ったらしい答えが返っ
てくる。だからこいつと話すのは嫌なんだ。深く溜め息をつき、前屈みになってベルトに視線を移す。
カ一卜は……同じように前屈み気味に腰掛け、多分こっちを見ている。ハゲ頭の向きが正面と違うのが、
なんとなく視界の隅で見える。 <> 2/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:51:53 ID:9RLHI7+o<> 俺は視線を端から無視して、ベルトを見ていた。
俺はベルトに注視して、意識的にこいつの顔を見ないようにしていた。早く飽きて立ち去ってくれれば
いい。
「2度目でしょ、そのベルト」
「…ああ」
…視線がベルトに逸れてくれた気がする。
「…しばらくは、俺の物だ」
1番手のベルトでないとはいえ、これが強さの称号であることに変わりはない。
会社がそれを俺の目の前にぶら下げることで、俺というレスラーに価値を置いているのなら、俺は会社
が望んでいるものを見せる。俺はこのベルトに対して責任がある。易々と他の人間に譲る気はない。
……本当に欲しいのは、今隣の男が持っているものだ。そこまで考えて、やめた。
ん〜…と軽く唸り、カ一卜は不満げに言葉を漏らす。
「僕、復帰してからU/S獲ったことないんだよねえ」
親に何か強請るガキの台詞か、それは。
時々、無邪気な子供を彷彿とさせるようなこいつの口調は、気分をザワザワさせる。だからなるべく聞
きたくない。もともと、一人で居て、物思いに耽っている時間のほうが好きだ。…少なくとも、試合を
終えたばかりの今は、一人で居たかった。 <> 3/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:52:51 ID:9RLHI7+o<> 放っておいたらずっと喋り続けるだろうその口を、閉じさせたい。
「欲しいなら俺を倒せ」
呟き、俺は横目でカ一卜を睨んだ。確かに会話は止まった。
しかし、目が合った瞬間に、まずい、と思った。
青い双眸。
少しの表情もなく、カ一卜は真剣な眼差しで、微動だにせず、こちらをじっと見据えている。じっと俺
の目を見ている。
……この青い眼が、いやだった。
胸のうちの動揺は見ない振りをする。目を逸らすのは悔しいから、俺は睨み続ける。口の中に唾が溜ま
る。
覗き込むように首が傾げられ、奴の分厚い唇の片方が歪む。
「いいの?ヘツワ」
意味もなく、内緒話でもしてるかのように低められた声が、恨めしい。
「当たり前だ」…畜生、声が少し掠れてしまっている。
「素敵だね、二冠の王者も悪くない。メダルもあるから三冠かな?」
「ほざくな」
カ一卜の唇のもう片方が歪んだ。しかし視線は鉄のように緩まない。
こういうときに限って、時間が経つのがやけに長い。一秒一秒がやけに間延びしたものに変わってしま
う。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 01:52:57 ID:1GtOaQKB<> 信田また読めるなんてしわわせw <> 4/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:54:43 ID:9RLHI7+o<> ふ、とカ一卜の表情が緩み、時間の流れを正常なものに戻した。
「じゃ、ピンスとクリエイティブチームが乗り気になったら、今度ね」
さっきと同じガキのような悪戯っぽさで、口に出して言わなくても良い事まであっさり言って、カ一卜
は前を向きなおした。そのあまりのあっけらかんとした切り返しに、そしてこいつが目を逸らしたあと、
自分の目線が前を向きなおしたカ一卜の顔を追っていることに気付き…一気に脱力した。
溜め息は押し殺し、気付かれないように少しずつ吐き出して、後ろの壁によしかかった。
駄目だ、こいつといると調子が狂う。俺じゃなくなりそうになる。
焦るままに、俺はとにかくカ一卜をこの部屋から追い出すための台詞を思いつくままに口走っていた。
舌が回らなくてもいいからとにかく喋った。
「こ、こんな所で油を売ってていいのか、試合の準備は…」
「……それもそうだね」
今度こそ伝わってくれたか。緩慢な動作でカ一卜はベルトを肩に掛けなおし、立ち上がった。右肩の鷲
のタトゥーがちらりと覗く。
……このタトゥーはこいつそのものだ、と思った。鷲のように傲慢な男。鷲のように、揺るがない瞳の
―― <> 5/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:56:20 ID:9RLHI7+o<> 「……というかね、ヘツワ」
そのまま去っていってくれるかと思ったら立ち止まり、ダンスでターンするかのように軽い動作で、こ
ちらを振り向きぴたっと止まる。今度は何だ、クソガキ。
「U/Sぐらい君なら当たり前だろ」
そう言ってカ一卜は、肩にかけていたベルトを分厚い掌でバン、と一回叩いた。
「これ。君に獲りに来てもらわないと困るんだけど」
遠まわしに忘れ物を指摘するような、ふざけた台詞――しかし、声色と表情は少しもふざけた色を含ん
でいない。
ともすれば真摯さを含んだこいつの嫌味に、一瞬、全ての疲れと煩わしさを忘れた。
顔を上げ、真正面から睨み付ける。本当は立ち上がり詰め寄りたい衝動を、その憎たらしい眼にぶつけ
る。
声は自然と、押し殺した感情の波によって低くさざめいた。
「…大した自信だな」
「僕を誰だと思ってるんだい?」
「テイ力一に勝ってからそういう台詞を言ったらどうだ」
「大丈夫だよ。僕は負けないさ、絶対にね」 <> 6/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:57:13 ID:9RLHI7+o<> 「誰が勝とうが関係ない、それは俺が必ず奪い返す」
「心配しなくても、しばらくは僕の物だよ」
「……俺が奪う」
カ一卜は口元に静かな笑みを作ったが、その青い目は少しも焦点をずらさない。頭の奥までずっと突き
通すような、その眼差し。

――不意に試合の空気を思い出した。
こいつと試合したときの…こいつとリングで対峙しているときの、あの純粋な感覚。自分の居る空間が
じりじりとした緊張で埋まり、ただ戦うことだけが意識を、体中の血を占領する、あの静かな高揚。
そういえばリングの上で気付いたんだ、こいつの眼は誰より貪欲で鋭く、蒼く澄み切っている。そして
こいつは、彼に尻尾を振る者も、嘲り罵る者も全て、試合で黙らせる。


「君こういうときはちゃんと僕の目を見てくれるよね」
小首をかしげ、少し困ったような笑顔で、カ一卜は肩をしかめる。
「……は?」
今こいつ何ていった?言葉の意味を取れず目を丸くしていたら。
大股一歩で突然俺に近づいたカ一卜が、一瞬身を屈めたと思ったら、眼前いっぱいにハゲ面が広がり。
ハゲ面が上側に少し傾き、額に一瞬何か触れたと思ったら、カ一卜は間髪入れず立ち上がって「じゃあ
ね、久リス」とにこやかに手を振り、スッと背を向けて振り向かず去っていった。 <> 7/9<>sage<>2006/03/06(月) 01:58:07 ID:9RLHI7+o<> パタン、と乾いた音を立ててドアが閉まる。
頭が…頭が事態に追いついてくれない。俺は一度息を吸って吐き、たっぷり3秒数え、動かない思考を
どうにか元に戻そうとした。
しかし思考がリピートしたのは、さっきのカ一卜の台詞だった。君こういうときはちゃんと僕の目を見
てくれるよね。
そしてその直後に額を掠めた、奴の……


「――――……!!」
カッと、一気に耳まで赤くなるのを認めたくなくて、俺はベンチを両の拳で叩き付けそうになったが、
他の誰かがドアの近くにいたらという不安が頭を掠め、結局両手を中途半端に宙で握り締めていること
しかできなかった。
これは怒りだ。怒りだと言ったら怒りだ。からかわれた事に対する純粋に怒りなんだ。本当だ。
そう言い聞かせば聞かせるほど、胸の片隅に違和感のような気持ち悪さを感じる。
………だからあいつは、嫌なんだ。
<> 8/9<>sage<>2006/03/06(月) 02:01:38 ID:9RLHI7+o<>
『君に獲りにきてもらわないと困るんだけど』
心の底から、思っている訳でもないくせに。
いつまでベルトを保持するのが許されているか、知れたものじゃない。ましてやベルトを賭けて試合す
るかどうかなんて判らない。全ては会社の利益のためにストーリーは進むし、役者が決まる。ここはそ
ういう造りをした世界なんだ。そういう造りをした世界の中で、俺は全力を尽くす。
しかしカ一卜は、時々そういう世界のルールをまるで無視した事を平気で言う。そして、それが稀に真
実味を帯びて聞こえることがある。こいつはそれをしれっとした顔でやってのけそうな怖さがある。
だから一瞬、そのふざけた言葉を真に受けてしまいそうになる。
もしかしたら心底、俺と戦うのを心待ちにしているのではないかと……


目を落とした先にある、世界王座のそれより少し小振りなベルト。
鮮やかな赤と青が、一瞬カ一卜の姿を思い起こさせた。
…いまだ混乱気味の自分の思考に呆れ、俺は顔を逸らした。 <> 9/9<>sage<>2006/03/06(月) 02:05:27 ID:9RLHI7+o<> *****

僕はベストでありたいんだ。
ブレッ卜・ハ一卜じゃないけど、過去・現在・未来において、最高の存在としてみんなの記憶に留まりた
い。そうじゃないと気が済まない。
そのためにはレジェンド扱いされている存在、スターダムにのしあがってきたルーキー、そんな連中全
てと手を合わせる必要がある。そのチャンスが巡ってきたら、決して逃す訳にはいかない。
だから、一度手を合わせた相手と何度もやるのは、得られるペイが少ない気がして、余り気が進まない。
でもね、ヘツワ。
時々、初めて君と一対一で試合したときの、全てがブッ飛ぶような圧倒的な感覚を、思い出す。

そして、もう一度君と戦えればいいな、どうせベルト落とすなら君相手がいいなって、この業界で見る
にはちょっぴり愚かな夢を、ごくたまに考えたりもするんだよ。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 02:11:23 ID:9RLHI7+o<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ もう今のベルト保持状況だけで萌えてね
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


昔メダルタンはハウスで「今日中相手ならベルト落としても構わない!」って
実際に言い放っちゃってるからね(ノ∀`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 16:44:59 ID:1ClRhl6y<> すげぇ!
元ネタ知らないケド萌えた! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 17:48:55 ID:ESQ2c5vG<> >>322
萌えた
ヘツさんかわいいよヘツさん
最近の勇作タンの男前っぷりに惚れ込んでる身にはストライクだ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 19:10:21 ID:3YiiINP3<> >322
勇作カコイイ!!
最近見てないけど見たくなったよ
面白い事になってんのか <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 23:00:35 ID:+OlIYops<> >>322
フォォォ!
萌えた・・・もえたよ姐さん! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 23:32:32 ID:Q0aV4NPD<> 携帯から失礼。
船体の今週の小ネタ。赤黒。
ぱっと思いついて、衝動のままに書いてみた。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 23:33:25 ID:Q0aV4NPD<> なんで俺達だけウェイターなんだよ、と不機嫌丸出しでこぼす黒に、赤はからかいを含んだ笑みを向ける。
多分、黄にもドレスアップさせてやりたいという気持ちがあるのかもしれない。
「でも、本当にそれ似合ってるし」
「嬉しくねぇよ」
睨みつける黒の耳元に顔を寄せ、低く囁く。
「脱がしたいくらい似合ってる」
それは似合っているという表現にはあまりふさわしくないですチーフ、と表向きは聞いていないふりを徹底させながら、桃は胸の内だけで突っ込んだ。
かなしばり状態の黒の肩を、冗談だよと赤は軽く叩く。
「そ…そりゃそう、だよな」
あははとぎこちなく向けられた黒の乾いた笑いに、はははと無駄に爽やかで嫌になるくらい隙のない笑顔で赤は応えた。
「本当はな」
黒の本能が警鐘を鳴らした。
「服着たままっていうのも悪くないよな、と開眼したくらい似合ってる」
本気で助けを求めている黒の視線をスルーしながら、青はあの忍者娘、来るかなあとのんびり考えていた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/06(月) 23:36:15 ID:Q0aV4NPD<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

書き逃げ!!
ちょっとすっきり。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 00:00:02 ID:jZg1do9s<> >338
…萌えた! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 02:03:07 ID:UWz1QAq+<> >>338
萌えをありがとう!黒可愛いよ黒! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 03:41:11 ID:mYOrpujX<>

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  オリジナルというかなんというか、ネタです
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  かなりへぼんなので要注意
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 1<>sage<>2006/03/07(火) 03:42:28 ID:mYOrpujX<> <ケース1>

ここに、二人の男がいます。
二人とも20代半ば、職業は会社員です。二人は、高校時代からの友人同士です。
今日二人は休日を利用して、片方の男―彼は比較的外見にはこだわらない企画部で、
髪の色はこげ茶色に染めています―の家で、新作のゲームをしたりして楽しんでいました。
が、つい熱中してしまい、そのまま泊まることになったようです。
遊びにきているほうの男―こちらは第一印象が重要となる営業部のため、
清潔そうな黒い短めの髪をしています―が、今シャワーを終えてバスルームから出てきました。


今回はこの二人を例に
『友人との関係を良好に保つための効果的な会話法』
を紹介していきたいと思います。


「あったまった〜?」
「うん」
この場合、相手はさして真剣な返答を期待していません。軽く流してしまってもよいでしょう。

「なあ、あのシャンプー女モンじゃねえ?匂いが普通より甘い感じがしたけど」
「ん、あー、俺髪染めてて痛んでるからさ、男用じゃあギシギシでやばいんだよね」
可能なら、このようにさらにこちらから話題を振るとよいでしょう。
内容はなんでもいいですが、あまり深刻な話題は雰囲気が重くなるので避けたほうがよいでしょう。
<> 風と木の名無しさん<>sage すみません↑の名前欄は間違いです<>2006/03/07(火) 03:44:14 ID:mYOrpujX<>

「…あ……やべ」
「ん、どした?なんかあった?」
友人の様子がおかしいと思ったときは、迷わず容態をたずねましょう。
たいしたことではなかったとしても、たずねられることで相手は安心して、さらにあなたに心を開いてくれます。

「…あのさ、…すっげ〜言いにくいんだけど…」
「なに?教えろよ」
友人がなにかを言いたそうにしているなら、必ずそれに興味を持ってあげましょう。
言いにくそうにしているならなおさらです。
相手が傷つくこともあるので、けして軽く受け流してはいけません。

「なんかさ…勃っちゃったんだよね」
「――は?」
友人がたとえわけのわからないことを言っても、こんな風に返すのはあまりお勧めできません。
最悪の場合、ここからケンカに発展することもあります。
常に相手のことを考えるのが、友情を長続きさせるコツです。

「いやだから、お前の湯上がり姿見てたら、わけわかんねーけど勃っちゃったの。見る?」
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 03:44:54 ID:mYOrpujX<> 「…マジだ」
「な?だから言ったじゃん」
「えーと。じゃあホラ、トイレにでも行ってこいよ。…な?」
衝撃的な内容でも、あまりオーバーに驚くと、相手は傷つく可能性があります。
柔らかく寛容に受けとめ、もし解決策などがある場合は、それをすみやかに促してあげるとよいでしょう。

「…」
「ほら、」
「…お前、シてくんない?」
「――えーと、何が言いたいのかよくわかんないんだけど?」
理解に苦しむ内容は、わかったふりをしたり流したりをせず根気よく聞き返しましょう。
しかし先ほども述べたように、あまり冷たく聞き返すとかえって逆効果になることもあります。

「できたら口で――あ、でもまあ嫌なら手でも――でもやっぱ口がいいなあ」
「いやいやいやいや、そんなまさか、むりむりむりむり」
できないことはきちんと断りましょう。
安請合は、できなかったときに友情関係を崩すきっかけになりかねません。
しかし断るときは、後々のことも考えてもう少し相手に配慮した柔らかな応対をすることをお勧めします。
「ひどいなーお前」
「いやこれ当たり前の反応だって」
「俺、こんな余裕ぶってるけど、本当はムラムラしてかなり切実なのね。このままじゃ俺、無理矢理お前押し倒して口ん中突っ込んじゃ」
「あーあーあーやめろバカやめろ!」
そうでないと取り返しのつかないことになる可能性もあります。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 03:46:11 ID:mYOrpujX<> 「シてくれたっていーじゃねーかよ、友達だろ〜?」
「俺、そんなエロスにまみれた友情ヤダよ…第一俺ホモじゃねーし」
「俺だってホモじゃねーよ。けど勃っちゃったのはしょうがねーじゃん。シてよ」
「だからなんでそこで俺がするって考えに至るんだ、一人で出してこいよ」
「…シてよ〜シてくんなきゃ俺本気でお前襲う」

「……え、本気?」
「本気だよ」
「…」
「ね?一回でいいから」
絶対にやりたくないものを迫られて、断ると友情関係に支障がでそうなとき、もはや判断はあなた次第です。
ただし両方をたてることが絶対にできない場合、必ずどちらかひとつを捨てなければならなくなります。
よく考えてから行動しましょう。

「……じゃあ…手…なら…」
「やった!」

友人との健やかな友情を保つには、時にあなた自身の自己犠牲が必要になるときもあります。
また、関係を続けることが辛かったり嫌になったりすることもあるかもしれません。
しかし、楽しいときがあるのなら、ぐっとこらえて我慢するというのも大切なことです。
これらのことをよく踏まえて、楽しくすこやかなフレンドリーライフを過ごしてくださいね。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 03:47:17 ID:mYOrpujX<>
 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ こんな時間に何やってんだろうね
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 07:30:09 ID:hfc1cn7T<> 何このヤオイレクチャー。最高。次回は挿入編ですかwktk <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 12:26:01 ID:oBfIwFwB<> >>338
ありがとう!萌えた! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 13:04:44 ID:1OF/XDzl<> >343
このネタで本1冊作れるわ。
解説のたんたんとした口調がまたいい。

>338 GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 16:01:50 ID:eWNp41x/<> >343
おまいさんマジ天才 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 16:36:44 ID:w+g6xA/S<> >>343
解説調なのが斬新でイイ(・∀・)!!
勝手スレとか雑談スレで、「なんとなく勃っちゃいました」話は
よく見かけるけれど、味付けひとつでこんなに萌えるとは!
GJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 19:35:56 ID:V9HBHEH7<> アヒャヒャヒャ <> 354<>sage<>2006/03/07(火) 19:37:20 ID:V9HBHEH7<> ごめんなさい、萌えるあまり変な書き込みしてしまった(;´Д`)

>>343
GJ!!萌えまくりました。ありがとう。
恋人同士じゃないのにもツボりました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/07(火) 23:27:52 ID:I12C5ldw<> >322
亀だがキター!GJ!
ヘツさんかわいいよヘツさん <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 00:53:58 ID:FevcDyzn<> たびたびすいません。また衝動的に某県赤黒。濡れ場で小ネタ。


|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ケイタイカラッテムズカシイ…


濃厚な前戯に感じきっているのに、それでもまだ睨みつける眼差しからは反抗的な光が失せていない。
こうでなくちゃ面白くない、と赤は口元だけで笑って見せる。
もし、彼が自分に屈したら…完全に征服され、従順になったなら、自分はどうするのだろう。
飽きるのだろうか。この熱病にも似た感情が失せて。
それとも逆に、更に彼に溺れるのだろうか。征服欲が、同じ強さの独占欲へと変わることを想像することは容易だった。
けれど、彼が自分に屈服している姿は、その瞳から生意気な表情が失せることは、とても魅力的だとは思うが想像がつかない。
漏れそうになる声を抑えるためにきつく噛み締められた黒の唇を、ほどくような優しさで赤はくちづけた。

<> 2<>sage<>2006/03/08(水) 00:56:04 ID:FevcDyzn<> 執拗すぎる愛撫に嫌になるくらい翻弄されながら、それでも何も反応してやるもんかよと思っていたのに、そのキスにうっかり応えてしまったのは意外なほどに赤の唇が優しかったからだ。
フェイントにひっかかっただけ、受け入れたわけじゃない。
あっさりと堕ちてしまえば、楽になるのかもしれない。そんな考えも浮かんだが、一瞬で消えた。そんな自分は有り得ない。
赤の右の手のひらが、するりと黒の膝裏から太股を滑り、後に指先をしのばせた。
思わずこぼしかけた悲鳴を抑えるために口元に当てようとした黒の腕を、赤は左手だけで捉えて強い力でシーツの上へ押し付ける。
微笑んでいるのに鋭い光を宿した赤の眼差しに射抜かれ、黒の背筋を恐怖とも快感ともつかない戦慄が走った。
「ところで」
ゆっくりと指の入ってくる感触に、心持ち苦しそうに眉根を寄せる黒に、いたずらっぽく赤は囁いた。
「選ばせてやる。前から俺に恥ずかしい顔見られながらと、後ろから動物っぽい屈辱的なの。どっちがいい?」
「…っ!!あんた最悪だ!!」



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) パソカイカエナキャ…

両方やったに1000プレシャス。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 01:07:35 ID:Cxoe5LpS<> >357
…また萌えた。
赤攻めいいな! 黒も可愛い。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 01:22:17 ID:MNnDyD8j<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  たまたまだけどジャンル続いてごめん。冒険青黒
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  本スレ>546-548姐さんに捧ぐ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> 1/4<>sage<>2006/03/08(水) 01:23:32 ID:MNnDyD8j<> しまった。しまったどころじゃない、と黒は思った。
それはもう数時間前(もしかしたらもう1日くらいたっているのかもしれない)こと。
今の彼にはそんなことを考える余裕すら無かった。
不意をつかれて殴られて、拘束され、その後を思い出すのは、はばかられた。
もう、体力も気力も限界だ。特にダメージを受けているのは後者のほうだった。
疲れと緊張に耐えかね意識がうつろになると、遮られた視界もあいまり、
あの下衆野郎の不快極まりない顔や手つきを、嫌が応にでも思い出す。
拘束をとこうとしたけど、手首がすれて痛み、どうにも我慢できなくなったので諦めた。
「くそっ・・・!」
喉の奥の方でそう言って、その声が揺らいでいるのに気づいて、唇を噛む。
目の端が濡れている気がするのは、気がするのであって気のせいだ。
こんなことで泣くなんて、ばかげてるし悔しいし、女々しすぎる。 <> 2/4<>sage<>2006/03/08(水) 01:24:23 ID:MNnDyD8j<> 物音がしたのはそのときだった。誰かが部屋にはいってくる。
目隠しは相変わらずそのままで見ることは出来ないが、誰かなんて決まっていた。
「・・・来るな!!」
あいつだ、と思った瞬間ぞくりとした。掌が汗ばむ。
足音はずいぶん近くまで来て、止まった。
抵抗を試みるが、がたがたと椅子が揺れただけで終わった。
「これ以上近づいてみろ、ぶっ潰してやるからな!!」
精一杯虚勢をはってみたが、かろうじて意識を保たせていた怒りは、
乱暴に胸倉を掴まれた瞬間、恐怖に変わった。息も出来ない。
それを知ってか知らずか、その腕はジャケットにかかった。 <> 3/4<>sage<>2006/03/08(水) 01:25:20 ID:MNnDyD8j<> ジッパーをおろす音が響く。わき腹に触れられて、こらえていた声が喉をついた。
「・・・いやだ・・・っ!止めろ!」
なにも考えられなかった。声が勝手に外に出る。
不意に腕の動きが止まった。緊張と困惑で動揺していると
突然その手は移動して顎を持ち上げた。
びくりと身を震わせる。そのあと金縛りにあったように動けずにいたら、
突然、視界に色が戻った。

「俺だよ。」

白い部屋に青いジャケットが眩しかった。 <> 4/4<>sage<>2006/03/08(水) 01:26:17 ID:MNnDyD8j<> 「そ・・・た・・・。」
喉が掠れた。
「あいつ・・・は・・・」
「多分今頃チーフが絞めてる。俺もめっためたにぶちのめしてきたけど。」
飄々とそういいながら、縛られていた縄をといてくれた。
呆然とその顔を見つめると、彼はふっと笑って、そして抱えあげられた。
「ちょっ・・・!」
いわゆる姫抱っこというやつではないか。これではあまりにも恥ずかしすぎる。
「無理するなって。」
その声が優しすぎて、抵抗する気は完全にそがれた。
なんでもないように降りてきた唇が目元と頬をぬぐった。
「俺が忘れさせてやるよ。」
囁かれた声は身体の奥に響いて、うつむいた黒は抱き寄せた首元に顔をうずめた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 01:28:05 ID:MNnDyD8j<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ドクダンデアオニシテスマン
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 15:13:57 ID:U2YwN/TT<> GJ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 17:07:27 ID:LNUwhvgN<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

童話調オリジナル。エチーまで書けなくて挫折したものですが、
よかったら読んで笑ってやって下さい。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 17:08:51 ID:LNUwhvgN<>  ひとり森を行く、旅をする若者がおりました。
 歩いているうちに夜になり、暗くなった森の中、旅人は、少し開けた場所を選び、そこで野宿することにしました。
 獣や災いを寄せつけないために旅人が灯した焚き火は、生き物のように揺らめき、傍に座り込んだ旅人を赤く照らし、その影を長く黒く、踊っているかのように辺りに映していました。
 その火を眺めている旅人の背後で、かさり、と音がしました。
 首だけを曲げて旅人がそちらを見ると、木々の間から、草を掻き分けてやって来た影がありました。
 人というにはあまりにも小さく、低いその影は、獣のものに違いありませんでした。
 旅人は身を固くし、手を伸ばして、焚き火の中から、火のついた木の枝をひとつ、取りました。
 のっそりと火を気にしたふうでも無く、獣は旅人へと近寄ってきました。
 焚き火の光に赤く照らされたその姿は、若い狼のものでした。
「夜になると森の中は冷えます。火にあたらせてもらえませんか?」
 狼は旅人に、丁寧な口調で言いました。
「いいえ。近くに来たら、貴方は私をその鋭い爪で切り裂くでしょう?」
 旅人は慎重に尋ねました。
「いいえ、そんな事はしません、旅の方。近くに行ってもいいですか?」
 ゆったりとした足取りで、旅人の言葉を気にした風でも無く、やっぱり狼は進んでくるのでした。
「近くに来たら、貴方はその立派な牙で私を食いちぎるでしょう?」
 旅人は、火のついた枝を握ったまま、そっと逃げ出せるように腰を浮かせながら、狼に再び問いました。
「いいえ、そんな事はしません、旅の方。火にあたりたいので、傍に行ってもいいですか?」 <> 狼と旅人2<>sage<>2006/03/08(水) 17:10:16 ID:LNUwhvgN<>  言っているうちに、狼は旅人からあまり離れていないところまで来ていました。
 旅人が言葉を失ったのをいいことに、数歩、さらに歩みを進め、狼は旅人と焚き火から少しだけ離れた場所に腰を下ろしました。
 近くで見てみると、狼の体は大きく、足も頑丈で、毛並みも良く、尾も立派なものでした。
 旅人は、視線を離すことが出来ないまま、狼に問いました。
「貴方の尻尾で私を叩いたりしませんか?」
 まるでその目に火を移そうとするかのように、じっと火を見ていた狼は、旅人のほうへ顔を向けると、静かに答えました。
「いいえ、そんなことはしません、旅の方。」
 言い終わると、狼はまた、揺らめく火のほうへと顔を戻しました。
 旅人は狼の様子にほっとして、火のついた枝から手を離し、自分も火へと目を移しました。
 ゆらゆらと、赤い光りと、黒い影を辺りに投げかける焚き火は、その温かさに気分が落ち着くのと同時に、自分ひとりなのに、影に紛れて何かがいるような錯覚に、不安になるものです。
 本当なら警戒し、追い払うか倒すなりしなければならない相手だというのに、旅人は横目に見える、おとなしく言葉通り火にあたっている狼の姿になんだかほっとしていました。
 長い道のりをずっと一人で歩いてきたせいかもしれません。
 少し迷ってから、旅人は口を開きました。
「もう少し近くへ来てはどうですか?」
 旅人の言葉に、狼はただ、顔を向けました。 <> 狼と旅人3<>sage<>2006/03/08(水) 17:11:51 ID:LNUwhvgN<> 「そのほうが温かいでしょう?」
 言い訳するように、旅人は少し早口で言いました。
「近いほうが風も防げます。もう少し近くにおいでなさい」
 旅人がどぎまぎしながら言い終わると、頷くようにのっそりと狼は立ち上がり、
焚き火に近づき、座り直しました。
 旅人から四、五歩、狼が跳躍すれば一歩もないほどの、隣りと言ってもいいぐらいに
距離が縮まりましたが、狼の言葉に嘘は無いと旅人は思い、静かに火を見つめる、
丸められた背を眺めました。
 旅人の視線に振り向くこと無く、狼はただ、火をその目に映し、双眸は金色に燃えて
いるように見えました。
 ひゅう、と吹き抜ける風に、旅人は首をすくめ、少し迷ってから、尻を浮かせ、横へと
位置をずらしました。
 狼との距離を縮めるほうの、隣りへ。
 狼が目を向けてきたのでどきりとしましたが、それだけでした。ちらり、と見られた
だけだったので、旅人はほっとして、またその姿を眺めました。
 風が互いの体で遮られ、先ほどより温かくなったことに満足したものの、そうして、
狼のしっかりとした毛並みを見ると、体をくっつけたらもっと温かいだろう、と思うのでした。
 不意に。視界が影で覆われました。
 火が、回りの木々が、狼の姿が、見えなくなったことで仰天し、後ろへと下がろうと
するように仰け反ると、肩を押され、さらに背に鈍い衝撃がありました。 <> 狼と旅人4<>sage<>2006/03/08(水) 17:13:22 ID:LNUwhvgN<>  そのまま倒れてしまったのだと、肩を押さえているのが狼の前足だと気づいたのは、
目の前にある狼の顔のせいでした。
「貴方は何もしないと言ったでしょう?!」
 なおも静かな表情を見せる狼に、旅人は裏切られた気持ちで叫びました。
「残念ながらそんな事を言った覚えはありません、旅の方。」
 肩に載せられた狼の足は、その体に見合った、ずっしりと重いものでした。
 そのせいなのか、驚いたせいなのか、身動きも取れずに、旅人は狼の顔を見上げることしか
出来ませんでした。
「貴方に襲いかからない、と約束した覚えは、ありません。」
 火のはぜる音が、旅人の耳に、やけに大きく聞こえました。
 そして、ゆっくりと狼の顔が旅人の顔に近づいてきて、大きく開いた口からこぼれるように出た
大きな薄っぺらい舌が、若い旅人の頬を撫でるように舐めあげたのでした。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 17:15:02 ID:LNUwhvgN<> □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ジュウカンチュウイホウ イルホドノ ナイヨウジャ ナイヨネ・・・? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 18:21:04 ID:x8mK7OcS<> >>357姐さんも>>360姐さんもGJ!萌えたー <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 18:24:08 ID:Vj5+g30y<> >>372
め ち ゃ く ち ゃ 萌 え た

つ…続きを…!もし宜しければ続きを! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 22:18:32 ID:jgupfqdq<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  忘れた頃にやってきますな…
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 下町1<>sage<>2006/03/08(水) 22:19:27 ID:jgupfqdq<> 「ホンマに困りましたわ、ここの臭い」
そういうと耶麻崎は耳の裏をかいた。
「娘に言われてもうて、ホンマ、ショックやってん…」
「そやねん、俺もやねん」
耶麻崎の呟きに、椅子にだらりと体を預けるようにしていた松元は小さく体を起こしながら億劫そうに口を開いた。
「朝とかな、自分の枕にビックリすんねん」
「…そんなですか」
スタッフのあきれたような声に、松元は目元をクシャとさせて息を漏らすように笑った。
本番前の楽屋は、普段よりも幾分ゆったりとした雰囲気だ。
大道具の準備に手間取っているようで、この分だと撮影にかかれるまでまだ大分時間は必要なようだ。
そんななか、雑誌の記事をみてふいに呟いた耶麻崎の言葉に、机を囲む男達は身を乗り出した。
「加齢臭…か〜…」
「そやねん」
煙草の煙がふわりと空を舞った。その煙越しに松元は難しいような顔をして、耳を触った。
ずいぶん前に吸わなくなった彼は少し手持ち無沙汰のようだ。
ガチャとドアの開く音がして数人がその方を向くと、丁度濱田が楽屋に戻ってきたところだった。
眉間に大きな皺を刻んだまま、ドッカとパイプ椅子に腰を下ろし、傍らの机に乱暴に飲みかけの缶ジュースを置いた。
先ほど鳴りだした携帯に連れ出されるように廊下に出て行った彼だったが、話の内容がいいニュースではなかったらしく,
戻ってきた頃には少しまとう空気が重たかった。
雰囲気を察してか、耶麻崎はよいしょ…と席を立った。
松元はそんな様子をチラリと目の端で確認すると、手を伸ばして先ほど濱田が置いた缶を手にとった。何事もなかったように口に持っていくと飲み干した。ほんの一口しか残っていなかった甘い液体は生温く、不快だった。
プロデューサーの声がドアのほうからとんだ。ガヤガヤとスタッフ達は席を立っていく。
松元も流れにのって席を立とうかとも思ったが、一旦浮かした腰をまた元に戻した。
<> 下町2<>sage<>2006/03/08(水) 22:21:11 ID:jgupfqdq<> 結局、楽屋に残ったのは数人のみになった。とくに会話もなく、どこかで雑誌をめくる音だけが空しく響いた。
しかし、やがてその音も消えてしまう。ドアが閉じる音がきこえ、いつのまにか部屋には松元と濱田だけが残っていた。
松元はぼんやりと天井をみつめた。濱田はまだ機嫌がなおらないらしい。表面上は普段と全くかわらないように見えるが、この男が内心怒っていることは面白くもないほど松元にはわかってしまう。
シンと静まり返った部屋に奥のスタジオで起こった笑い声が小さく響いてくる。
濱田は眉間に皺を寄せたまま、机の上の雑誌を引き寄せパラパラとめくり始めた。
いつもだったら飽きたように楽屋から出ていく濱田は、何故か席を立たなかった。松元も意地になったように座り直した。
ふいに視線の先で濱田の指が自身の耳の裏を触った。
それを見て松元は小さく笑った。
同じ記事読んどんねん。
その視線に気づいたのか、パッと濱田は顔を上げると「なんやねん」と呟いた。
「別に」
「……」
松元の返事に一瞬何か返す素振りを見せたが、すぐに面倒くさそうに濱田はまた雑誌に目を落とした。
思いついたように松元は席を立ち、座っている濱田の背後に佇むと、ゆっくりと屈んだ。
濱田はそんな松元を無視するように、雑誌を読み続けている。
松元も構わず濱田の後頭部に鼻を寄せると、耳の裏で息を吸ってみた。
何の匂いもせえへん。
「…加齢臭」
「…なんや」
「おまえ、無臭やんな」
松元はボソリと呟いた。
「そんなわけないやろ。42のオッサン捕まえて」
「せえへん」
「あんた、鼻風邪治ってないやろ」
あ。そうか。だからわからへんねんな。
<> 下町3<>sage<>2006/03/08(水) 22:21:41 ID:jgupfqdq<> そう小さく呟くと、松元はチロと舌をだし、濱田の耳の裏を舐めてみた。
濱田は小さく肩を竦ませたが、振り返りもせず雑誌の文字を追っている。
そんな態度に苛ついてもう一度舐めてみる。耳たぶをしゃぶってやった。
「……味やないやろ。こそばいからやめえや」
ようやく発した濱田の低い声に、松元は体を起こした。
そして濱田の顔をそっと覗き込むと、松元は少しの沈黙の後、怒ったように咳払いした。
…何を顔、赤くしてんねん。シャレやんか。
「抵抗せえや」
「アホか」
松元の声に、濱田は顔を上げずに不機嫌そうな返事をよこす。
「……誘っとんのかと思った」
「しばくぞ」
濱田の耳とうなじがみるみる赤く染まる。こちらを見ようともしない、まるい背中を眺めていたら、何故だか身体が火照って困る。
松元は小さく舌打ちすると、仕切り直すかのように音を鳴らして首をまわし歩き出した。
あかん、洒落にならん。
松元はぎこちなく出口へ急いだ。股間のあたりがジンジンと熱かった。
「おい……」
濱田は呆れたように、早足の松元に向かって呟いた。その声が届くよりも先に、ドアが閉じる音が聞こえた。
また無音になった部屋に、濱田の弱々しいため息が響いた。
「何を、前屈みになっとんねん、あのオッサン……」
独り言のように呟くと、濱田はもはや火を噴きそうなほど熱い顔と頭を抱えたのだった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/08(水) 22:24:30 ID:jgupfqdq<>  ____________
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ フンイキツタワルトイイナ…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
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<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 02:04:33 ID:+Oc5xk2D<> >>379
超萌えです。
(さっき、縛りつけられた濱田が松元に紙を口に突っ込まれて
「口はいやや」と半泣きの餓鬼の使いを見たばっかりなので、一層キましたよ!)
末元と同じく、こっちも心のチンコが痛くて前屈みになりそうですわ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 15:52:32 ID:2NgLPaz/<>  ____________
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 | | |> PLAY.       | |
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暗い話。最後はハッピーエンド。多分。 <> 1<>sage<>2006/03/09(木) 15:53:46 ID:2NgLPaz/<> 雪を見ると思い出す。
幸せな気分になって、それから現実の自分を省みて少し憂鬱になる。
自分は今年で29になる。この歳までずっと一人で生きてしまった。

…机の上に置かれた二通の封筒をジッと見つめる。
実家から転送されてきた二通の封筒。消印はそれぞれ、七年前と四年前だった。


「帰ってこなかったら、どうしようかと思った。」
ワンルームの部屋、体を毛布一枚で包んだだけの姿で彼が出迎える。
俺は少し笑ってマフラーを解き、コートを脱いた。
コートの肩に乗った雪の結晶をまじまじと見つめ、彼は微笑んだ。
「雪が降ってんだな。…外に出たい。」
「出る?」
「…出たいけど、出たくない。」
矛盾した言葉を口にして、彼はグイと俺の腕を掴む。
ベッドに行こう、とせがむ姿はまだ中学生そのものだ。
特に逆らう必要もない。俺は玄関に夕食の材料を置いたままなされるがまま後に続く。
歳相応よりほんの少しだけ幼く見える笑顔を目にしながら、
俺が考えていたのは、三日前の喫茶店での出来事だった。 <> 2<>sage<>2006/03/09(木) 15:54:44 ID:2NgLPaz/<> 「茶番劇だ。」
目の前の男が言った。髪に白いものが見え始めている40周辺の男。
俺を息子の家庭教師として雇った男だった。
…何のことない、ありふれた話だ。
俺は受験生の家庭教師として雇われた。そしてその生徒と恋に落ちてしまった。
少し変わった事といえば、教え子はまだ中学生だったという事、それから自分と同じ性別で、男だという事。
彼の最後の受験が終わってそのままその日のうちに、何も連絡をせずに、俺たちはその場から逃げ出した。
「………」
何も言えなかった。俺は、この時間が永遠に続く事を望んでいた。
それでも、こんな生活が続くとは到底思っていなかった。早くに見つかって、通報されて、終わりだろう。
そして今、現実としてその通りになっている。
…しかし、次の瞬間に目の前の男が告げた言葉は予想外のことだった。
「三日間だけだ。三日経ったら第一志望の合格発表がある。
 その時まで、夢を見させてやる。」
目を見張る。この人は、いったい何を考えているのだろう。
息子を、しかもまだ成人どころか高校生にもなっていない子供に手を出されたのに。
目の前に自分の息子に危害を与えた犯罪者がいる。なのに何を言っているのだろう。
「三日間で俺が彼を帰す保障はないでしょう。」
「二人で逃げるか?それもいいだろう。…君に、できるのならば。」
静かに付け足したはずの言葉が俺の心に響く。
「血の繋がらないご両親に心配をかけたくはあるまい?」

「先生、先生…」
彼は何度も繰り返し俺を呼んだ。それこそ、今わの際であるかのように。
同じように俺も彼の体の下で彼の名前を呼んだ。
愛の言葉と、彼の名前と、交互に、何度も、何度も呼び続ける。
これが最後だと分かっているのは俺だけだった。
彼はただ無邪気に、永遠に続くはずだった俺との生活を夢見ていてくれていた。 <> 3<>sage<>2006/03/09(木) 15:55:19 ID:2NgLPaz/<> …それから俺は、彼が規則ただしく漏らす軽い寝息を聞きながらその部屋を後にした。
彼や義父母のために、なんて殊勝な事じゃない。
自分のために、なんて打算はない。
ただ、怖かっただけだった。すべての責任をもって生きる度胸がないだけだった。

俺は、泣いた。走りながら泣いた。
全身の水が枯れ果てるかと思うほど泣いた。
数時間前まで暖かった。でも今は一人だった。
体の芯が冷たく凍り付いているのが分かる。
指先が冷たい。コートとマフラーはしたままでも手袋を忘れていた。
雪が降り続く。すべてを真っ白に消していく。
俺も消えなければ。彼を想う俺のすべてを消して、新しい人間にならなくては。
真っ白に、すべてを真っ白に戻さなければ。


「…卒業、おめでとう。」
机の上の二通の封筒を見つめながら、俺は静かに呟いた。
七年前の封筒には高校の合格通知、四年前の封筒には大学の合格通知が入っていた。
彼は誰しも聞いた事があるであろう有名校に進学していた。
もともと、頭が良かったのだ。

溜息して、あの時と同じようにコートとマフラーをし、外へ出る。
ドアを開けると、ビュウと強く風が吹いた。目を瞑る。
…再度目を開いた時、涙を流している自分に気が付いた。 <> 4<>sage<>2006/03/09(木) 15:56:29 ID:2NgLPaz/<> 「…馬鹿野郎…」
自分は、全然変わっていない。自分は何もできないでいた。
今まで何人も女性と『恋愛』した。なのに、結局その誰とも落ち着くことはなかった。
血も繋がらない俺を育ててくれた両親に孫を抱かせてやりたかった。なのに、できない。
…心の奥底で彼の笑顔が鮮やかに息づいている。
何度も忘れようと思った。なのに、忘れられない。
「…馬鹿野郎…」
あの時と同じだ。いい歳した男が往来で泣き崩れる姿は、さぞかし滑稽だろう。
それでも、それこそが俺だった。
馬鹿だ。ここまで後悔するならば、何故あの時に彼を置いて去っていった?
何故今まで彼のもとを訪れようとしなかった?
「…馬鹿野郎…」
それは、三度目の言葉を口にした、すぐ後の事だった。
「馬鹿でごめん。」
知らない声がした。それでも、どこか懐かしい。
涙を押さえていた腕から顔を離す。
もしや、と思いながらも、顔を上げる事はできなかった。
「迎えに来たよ。」
明るい声でそう言った彼の笑顔は、変わっていない、七年前のものだった。
声が出なかった。ぱくぱくと口を開閉させる俺に構わず、彼は俺を抱き寄せた。
抱き寄せて、顔を近づける。間近で彼の顔を見た。本物だ。
七年前と変わってないと思ったけれど、やはり彼はちゃんと成長していた。
そうだ、今現在の彼はあの時の俺と同じ歳をしているのだ。
…そこまで思って俺は顔を逸らした。 <> 5<>sage<>2006/03/09(木) 16:02:52 ID:2NgLPaz/<> 「…老けただろ?」
「や、んな事ぜんぜんないし。むしろ…」
少し面白そうに目を細め、それから彼はもう一度顔を近づけ、囁く。
「ちょっと、かわいくなったと思う。」
思わず彼の顔を見上げてしまい、そして気づいた。彼の上背は俺のそれをゆうに越えていた。
おかしくはない。元々年齢にそぐわないほどは背は高かった。
「…そんな訳ねぇよ。」
そうとしか返せなかった。俺より背丈の高くなった彼は微笑みを浮かべる。
屈んでいた彼の顔が更に接近する。俺は目を瞑った。
唇が重なる。七年越しのキスだった。
「一緒に暮らそう。」
次に彼が口に出した言葉に、俺は目を見開いた。
彼が俺を見る。俺も彼の目を見る。
「…やめとけ、こんなおっさん。」
そう言った。
七年前とは違う。俺はもう、あの時みたいに若くなかった。
「ヤダ。やめない。」
彼はキッパリとそう告げる。
「一人立ちするまで会わないって決めてたんだ。
 それでも先生、ずっと俺のこと待っててくれただろ。
 俺、先生のこと、忘れなくてよかった。もう一生忘れられないような気がする。
 二人とも、ずっと、七年間も、お互いの事忘れられなかったんだよ。
 だから丁度いいだろ。一緒に暮らそう。俺とずっと一緒にいよう、先生。」

…俺は、卑怯だった。
彼を忘れる事ができなかった。それでも、彼が俺を迎えにくるまで、何もしなかった。
自分で責任を取る事はできずに、彼に責任を背負わせようとしていた。
俺たちが元に戻れるかどうかの選択は、彼におしつけられていたのだ。 <> 6<>sage<>2006/03/09(木) 16:03:41 ID:2NgLPaz/<>
「…ん。別にそれでいいんだけどね。」
それを告げた時、彼は軽くそう言った。
「俺、先生のすべてを守る事ために来たんだから。」
「うわ…」
顔が真っ赤になった。
「嫌な男に成長したなぁ。そんな言葉、サラリと言うもんじゃねぇだろ。」
そう告げた言葉を彼はものともせずに、再度、満面の笑みをうかべ、彼は口を開いた。
「好きだよ、先生。」


あの時と同じように、雪が静かに降り続く。
違うのは、雪の中を歩くのが自分ひとりではないこと、
手袋無しで冷たくなっていたはずの手が重なっている彼の手でとても温かいこと。
それから、零れ落ちた涙に、ひどく温かさを感じたことだった。

おしまい <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 16:04:18 ID:2NgLPaz/<>  ____________
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 22:02:31 ID:CXegCBFm<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  悪魔土成ドラキュラ ラルフ×アルカード8回目だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ラルフ自覚編・前編ですyo
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ >>56->>65ノツヅキデスゴルァ
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> ラルアル1/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:03:29 ID:CXegCBFm<>
 ──誰かを抱く夢を、見ていた。

 闇に浮かぶ肢体は光を放つまでにあくまで白く、触れる肌は絹よりもまだなめらかだった。いつもは冷たい
その肌が自分の手の下で熱をおび、しっとりと濡れてとろけていくのをじっくりと味わった。
 両手に余るほどのたっぷりとした銀髪をわしづかみにして床に這わせると、涙まじりの甘い喘ぎが、もう
許してほしいと哀願する。だがそれも、燃えあがった欲望をなだめる役にはたたず、むしろ、いっそう嗜虐心
と独占欲をあおる。
 反らせた背中とうなじに口づけの雨をふらせて、そのたびにひくりと震える背筋と、あとに残した赤い刻印
に、満足する。
 あげさせた細い腰をつかんで一息に貫きとおすと、かすれた悲鳴が響く。撃たれた鹿のように身をよじる彼を
ねじ伏せながら、その声が徐々に快楽の喘ぎに変わっていくのを勝利感と共に聞く。そしてまた口づけ、しなや
かな体を口づけと愛撫とで覆っていく。
 充たされた征服欲と独占欲、尽きることのない、欲望。白い腕は救いを求めるようにいつのまにか自分の胸に
すがり、甘い息をもらしている。香り高い銀髪に頬を埋め、幾度も指を通し、閉じた瞼にたまった涙を唇で吸っ
てやる。
 そうだ、これは俺のものだ、ほかの誰にも、何にも、けっして触れさせはしない──


 異様な気配に、ラルフ・C・ベルモンドははっと目を見開いた。
 深夜、自分の寝室。暗闇に沈んだ室内に、爛々と燃える赤い目がひとつ、あった。 <> ラルアル2/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:04:09 ID:CXegCBFm<> 「妖魔!」
 ラルフが枕もとに置いた鞭に手を伸ばすより早く、赤いひとつ目を持つ小魔は笑い声のような鳴き声を残して、
闇に溶けた。
 鞭に手を伸ばしかけたまま、ラルフは凍りついていた。たった今見ていた夢の内容が、まだ生々しく脳裏に
残っていた。
 夢の中の相手は、──アルカードの顔を、していた。


               ◆


 翌朝の目覚めは気が重かった。
 身体もなんとなくだるく、二日酔いの朝のような吐き気と倦怠感がいつまでもつきまとった。朝食もあまり
進まず、あの御当主がと厨房の者を不思議がらせたほどだった。
 いつものようにエルンストに見張られつつ書類仕事や見回りをすませたあと、ラルフは最近日課となっている、東翼
の読書室に足をむけた。
 最初はさんざん文句を言った読み書きの時間だったが、よく考えてみれば、これはこれでアルカードと毎日、午後
の数時間を堂々と過ごせる口実になるのだ。エルンストが、理由は常ながら口にはしないが、どことなくアルカードを
遠ざけたがるような態度を取るとなれば、なおさらこの時間は貴重だった。
 なのに、今日はその日課すらもラルフを楽しませなかった。読書室へ向かう足取りも、どことなく重い。 <> ラルアル3/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:04:39 ID:CXegCBFm<>  昨夜の夢は魔物のしわざだ、あの森で邪魔をされたやつらの一匹が意趣返しに来ただけだ、気にすることは
ない。そういくら自分に言い聞かせても、闇の中で光るようだった白い肌、しなやかにからみついてきた腕の
感触はいまだにひどく現実的だった。これから実際その相手に会うとなると、どんな顔をしていいのか正直
わからない。いくら相手が、ラルフの夢まで知っているわけはなかろうとも。
 東翼へ続く廊下にはいると、かすかに弦をつま弾くような音が聞こえてきた。ぽつりぽつりと音程を追いなが
ら、間をおいてまた何度か同じ弦をはじいている。
「アルカード?」
「ああ。ラルフ」
 読書室に入ると、アルカードはいつもの定位置である書見台の前ではなく、大きな窓のそばに長椅子と小卓を
運んでそこに座っていた。膝に首の長い古風なリュートをのせ、前に聖歌集らしい埃だらけのネウマ譜の束
を置いている。
「今日は本じゃないのか。そんなもの、どこで見つけてきたんだ」
「書庫の隅で弦が切れたまま埃をかぶっていたので、修理してみた」
 こともなげに答えて、つぃん、とまた一音鳴らして耳をすましている。
「すまないが、もう少しそこで待っていてくれ。調弦を済ましてしまいたい。同じ時に全部の音を合わせて
しまわないと、また音程が狂ったりするからな」
「あ、ああ」
 窓辺のアルカードの姿から目を離せないまま、ラルフはそろそろと椅子に腰をおろした。
 すでにアルカード用の服はひとそろいできあがってきていて、西の塔のアルカードの部屋の衣装櫃いっぱいに詰められ
ているのだが、アルカードはいまだにラルフの古いシャツを脱ごうとしない。 <> ラルアル4/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:05:18 ID:CXegCBFm<>  埃だらけの蔵書室で新しい服を汚すのは忍びない、というのがアルカードの言い分だったが、ラルフは、自分の以前
身につけていたものがアルカードの身を包んでいるということに、内心満足感をおぼえていた。アルカードがそれを
脱ぎたがらないことも、ひそかな喜びと満足の種だった。
 だが、今朝はそれが逆に働いていた。午後の明るい光に縁取られながらリュートの長いネックに指を走らせる
アルカードは、どうしても昨夜の夢の姿を思い出させた。
 大きすぎる袖から出た細い手首や、襟もとの白い首筋に細い鎖骨の影が落ちるのを見ていると、わけもわから
ず叫びだしたい気分になってくる。
 白い指先が弦をはじき、繊細な音の違いを聞きとろうと目を伏せている顔に、涙をためて目を閉じていた、
あの夢のなかの横顔がかさなった。
 はっと気がつくと、痛いほど固く両拳を握りしめていた。ラルフは意識して全身の力を抜こうとして、大きく息
をついた。
 だが、しばらくすると、また同じように全身をこわばらせていた。
 腹の底に溶岩がたぎっているようだった。目を離そう、離さなければ、と思うのだが、視線はまるでのり付け
されたようにアルカードから離れなかった。
 アルカードは調弦の作業に没頭してほとんどこちらを見ていない。朱い小さな唇がなにごとかを呟き、指先がいつ
くしむように細いネックをたどる。
 つぃん、つぃん、と弦が澄んだ音をたてるたびに、かぼそいあの喘ぎ声が耳によみがえってきた。楽器にから
む腕と指先が、いやおうなしに、夢ですがりついてきたあの腕のなやましい動きを思い起こさせる。
 たまらなくなって、ラルフは立ちあがった。
「ラルフ?」驚いたようにアルカードが顔をあげる。
「どうしたんだ? あと少しで終わるから、もうしばらく待っていてくれれば」 <> ラルアル5/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:06:01 ID:CXegCBFm<> 「ちょっと用事を思い出した」
 絞り出すようにラルフは言った。喉を絞められているような声だ、と自分でも思った。
「すまんが、授業はまた明日、ということにしておいてくれ。悪いな」
「ラルフ、どうしたんだ」
 様子がおかしいことは気がついたらしい。楽器をわきに置いて、あわてたようにアルカードは席を立ってきた。
「何かあったのか? 本当に、もうすぐ終わるから、あと少しだけ待っていてくれ。いや、途中でやめても、
別にまた、明日やりなおせばいいことだし──」
「さわるな!」
 引き止めようと伸びてきた手を、ラルフは思わず振り払っていた。
 一瞬後には後悔していたが、もう遅かった。振り払われた手を胸にかかえて、アルカードはまるで殴られたような
顔をしていた。唇をかすかに開き、血の気の引いた顔に、蒼氷色の瞳だけが大きく見開かれていた。
 いたたまれなくなって、ラルフはそのまま逃げるように踵を返した。
 理性は今すぐもどって、アルカードに謝るよう、きちんと理由を説明するようにわめきたてていたが、今、こんな
気持ちで、あの夢をかかえたままあの瞳に見つめられたら、自分がいったいどうなるのか、ラルフにはわからなか
った。


「若」
 しばらく外に出て頭を冷やすつもりで厩へ行き、馬に鞍を置いていると、エルンストが姿を見せた。また気分が
重くなった。 <> ラルアル6/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:06:42 ID:CXegCBFm<> 「なんだ」
 苦々しい口調でラルフは言った。
「小言なら、聞かんぞ。今日の分の書類なら、全部朝から片づけたはずだ」
「荘園のことではございません。少々、お訊きしたいことがございます」
 いいかとも聞かずにエルンストは厩に入ってきて、ラルフのそばに立った。
「訊きたいこと? いったい何だ」
「あの、西の塔においでの若君のことでございます」
 一気に背筋が冷たくなった。
 エルンストは鷲のような瞳でこちらを見つめている。ラルフはなんとか平静を装った。
「アルカードがどうかしたのか。あいつは別に迷惑はかけていないはずだが」
「迷惑ということはございません。むしろ、お美しい上にたいへん丁寧でおやさしい方だと、使用人どもにも
評判でございます。しかし」
 エルンストはぎらりと目を光らせた。
「あのお方の、ご家名をお聞かせ願えますか、若」
「それを聞いて、どうする」
「あるいは、遠国とおっしゃいましたが、どこの国のご出身でいらっしゃいますか」
 ラルフの返事は無視して、エルンストはつづけた。
「たといどのような遠国といえども、ご子弟にあれだけの気品と教養を授けられるだけの名家となると数が限
られてまいりましょう。スペインのハプスブルク、ヴェニスのグリマーニ、あるいはコンタリーニ、フィレンツェのボルジア、ピエモンテのサヴォイ
ア、その他思いあたるようなどんな大貴族の中にすら、あのように目覚ましい若君がおられるとは聞いたことも
ございません。 <> ラルアル7/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:07:23 ID:CXegCBFm<>  しかも、そのような大貴族のお血筋の方ならば、なぜたった一人で、連れの者もなく旅をなさっておいでだ
ったのです。旅先で出会われたと若はおっしゃいましたが、それはどこで、どういういきさつで出会われたの
か、お話しください」
「エルンスト」
 しだいに怒りがこみあげてくるのを押さえて、語気荒くラルフは言った。
「言いたいことがあるならさっさと言え。アルカードがどこの出身かとか、家名はなにかとか、そんなことに何か
意味でもあるのか。あいつは俺の友人で、ドラキュラを討伐した仲間だ、それだけでは納得できないか」
「“Alucard”という名前は、“Dracula”の逆綴りでございますな」
 ラルフがもっとも怖れていた言葉を、エルンストはとうとう口にした。
「風のうわさに、ドラキュラには人間の妻がいて、その妻との間に息子を一人もうけていたと聞き及びます。アルカード
様は、見たところあれほどお若いにもかかわらず、剣の腕といい、魔道や魔物に関する深い知識といい、魂を奪
われるばかりの美しさといい、どれをとっても人間の域をかけはなれておられる。もしや、あの方こそ、魔王
ドラキュラの」
「エルンスト!」
 押し殺した声でラルフはさえぎった。
 怒鳴らなかったのは最後の瞬間に理性が働いて、この会話がほかの人間の耳に入ったらという危惧が頭を
かすめたためだった。鈎型にまがった指は、今にもエルンストの襟首を締めあげんばかりにこわばっていた。
「おまえ、その事をほかの者に喋ったか。あいつの、素性を」
「では、お認めになるのですな。あの方が魔王ドラキュラの子、闇の血を継いだ、実の息子だということを」
「ああ、認めるとも」
 吐き捨てて、ラルフは乱暴に背を向けた。 <> ラルアル8/8<>sage<>2006/03/09(木) 22:08:11 ID:CXegCBFm<> 「だが、それが何だというんだ。あいつは俺といっしょに、血のつながった自分の父親と戦って斃した、それは
あいつが魔王と同じような闇の眷属ではない証だ。アルカードは絶対に、ドラキュラのようにはならない。それは、この
一か月ほどでおまえも見ていれば納得できるだろう」
「わたくしがどう思うかではございません。世間と、教会がどう思うかと申しあげているのです」
 エルンストは馬の轡をつかんで鋭く言った。
「今、ベルモンド家がどのような立場に置かれているかは若もご存じでございましょう。
 狼に変身する魔の一族とさえ呼ばれたベルモンドが、ドラキュラ討伐の名のために、ようやく栄光を取りもどしかけ
ているところなのです。今、ドラキュラの血を継ぐ者を邸内に置いていると知れたら、世人の評判はともかく、教会
はあっという間にベルモンドを、異端者として排斥いたしますぞ」
「そんなことはわかっている。その手を放せ、エルンスト」
「あなた様のみならず、荘園で平穏に暮らしている家小作の者どもはどうなさいます」
 身をもぎはなして馬に乗ろうとするラルフに、執拗にエルンストはすがりついた。
「あなた様はベルモンドの御当主なのですぞ、若。ご自分の意志のみで行動できる時期はもはや過ぎ去りました。
あなた様にはベルモンド家全体と、それによって生活しているすべての生命がかかっていることを、どうぞお忘れ
くださいますな。ベルモンド家が異端とされれば、村の者どもは土地も家もすべて教会に取りあげられ、飢え死に
するか、異端者の烙印を押されて火刑に処せられるしかないのです」
「うるさい、どけ!」
 衝動的にラルフは乗馬鞭をふるった。
 手の甲をかすめられて、エルンストはあっと小さな声をあげて手を引いた。
 ラルフは馬に飛び乗り、厩の柵をひと飛びで乗りこえさせて門に向かった。口の中がひどく苦かったが、振り返
らなかった。後ろでエルンストが、打たれた手を押さえながら、黙って見送っているのはわかっていたからだった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 22:08:57 ID:CXegCBFm<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ キョウハココマデ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) コウハンハ マタアシタ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 22:23:24 ID:Jus82M9K<> >>398
キキキキキタ━━━━(*゚∀゚*)━━━━!!!!!
続きッ…続き楽しみにしてますッ!!
妖魔の夢…クオリティ高ぇ!www <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 22:50:50 ID:uehhll2t<> >>398
待ってました!(*´∀`*)
いつも楽しみにしてます。GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/09(木) 23:58:32 ID:dvEfbhdA<> >398
若ー!!
あぁぁ、後編が楽しみです。ワクテカです。
二人とも幸せになってくれようー・・・・ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 00:23:18 ID:s6wablNV<> >>381
すごい好きだよー萌えたよ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 00:34:36 ID:Q6yzh1/+<> >398
あぁ、ついにこの時が来てしまったか。
結ばれないが故に燃え上がる若が切ない。
マスター、ヴァンパイアズ・キッスを…(´・ω・`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 00:49:07 ID:k+QjYED3<> >398
毎回乙。
ゲーム未プレイだけどワクテカしながら読んでまつ。

>388
GJ!
>「迎えに来たよ。」
でちょっと泣いた。
ええ話やないか… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 04:22:18 ID:qNVVqwbs<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  大正RPGの十四代目×お目付け役だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  書生さん×黒ぬこらしいね
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ソレ 801?
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> ライドウ×ゴウト 1/5 <>sage<>2006/03/10(金) 04:24:04 ID:qNVVqwbs<> 「ゴウト」
 呼ばれて振り向いた、そのときにはもう遅かった。
 ひょいと目の前に突き付けられた緑の物体に驚いて、それが何かも知らぬまま、反射的に後ろへ下がる。
 しかしそれから離れたせいでそれが何なのか判ってしまい、罠に嵌ったことに気付いて、その場でかちりと固まった。
「……っ!」
 かつて人の身だった頃には、単なる草であったもの。
 だが、今の、猫の体には、阿片のようなタチの悪い魅力をもって見えるもの。
「ほら」
 学生服の十四代目が操る猫じゃらしの先は、まるで同族の尻尾のように、滑らかな動きで振れていた。
「く……!」
 見てしまうと、もう手遅れだ。 ふにゃふにゃと動く緑の穂先を、目が勝手に追ってしまう。
 最悪だと言いたい思いで十四代目を睨みつけるが、視界を過る猫じゃらしに、すぐに視線を外された。 <> ライドウ×ゴウト 2/4←訂正<>sage<>2006/03/10(金) 04:25:27 ID:qNVVqwbs<> 「お、お前という奴は、飽きもせず……!」
「ほかに娯楽もないからな」
 涼しい顔で言う青年の細い指先に操られ、猫じゃらしが妖しく揺れる。
 つられてこちらの理性も揺られ、ついでに鼻先まで揺れた。
「ひ、人をからかって、楽しいか!?」
「からかっているつもりはないさ。たまの休息、お前と二人で楽しもうとしているだけだ」
「その誤解を招きかねん物言いはわざとか!?」
「? 何のことだか」
 柳眉の間に皺を寄せ、十四代目は首を傾げる。良い意味でも悪い意味でも能面のような顔立ちだけに、冗談なのやら本気なのやら、さっぱり真意が掴めない。
 そんなこんなの間にも猫じゃらしは揺らされ続け、こちらの理性とプライドを確実に削り取ってゆく。
 糞、そう低く唸るつもりが、うっかり喉を鳴らしかけ、慌てて息を飲み込んだ。しかし耐えれば耐えるほど、じりじりと募る欲望を感じる。
 もはや視線は猫じゃらしの穂に縫い付けられたようだった。
 そこに視点を合わせているため、ぼやけて見える十四代目が、微笑している気配がする。この馬鹿、いい加減にしろ!と怒鳴る気力は既にない。 <> ライドウ×ゴウト 3/4<>sage<>2006/03/10(金) 04:26:09 ID:qNVVqwbs<> 「ゴウト」
 まずい。非常にまずい。
 かけられた声が、甘く聞こえる。
「強情を張るな」
 その声で、十四代目が誘う。
「おいで」

 そして限界が訪れた。

 んにゃーと情けない声を上げ、猫じゃらしの穂に飛びつく。しかし前足で捕らえたそれは、するりと逃れ、他所へと行った。
「こっちだ」
 楽しげな声にも今は激怒している余裕がない。
 右へ左へ振られる草に、右へ左へ走らされ、床を這うのに襲いかかれば、今度は高く持ち上げられ。
 たかだか十七の若造に遣りたい放題もてあそばれて、ようやく解放された頃には、小一時間が経っていた。 <> ライドウ×ゴウト 4/4<>sage<>2006/03/10(金) 04:26:54 ID:qNVVqwbs<>  ぼろぼろになった猫じゃらしを折り、屑籠に放る十四代目は、やはり能面のような顔で、平然と、否、悠然としている。
 対するこちらは疲労困憊、尻尾を垂らして息切れ中だ。肉体的な疲れはもとより、精神的な疲れが酷い。
「穂が飛び散ってしまったな。あとで掃除をしておかないと」
 鹿爪らしく床を見つめる彼の仕種に疲れが増した。
「なあ、ゴウト?」
「……満足か?」
「お前は?」
「訊くな!」
「解った解った」
 牙を剥き出し、毛を逆立てると、十四代目は苦笑した。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 04:29:49 ID:qNVVqwbs<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ これでも801と言い張る
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 11:16:34 ID:hyU89lCW<> >>405
ゴウトかわいいよゴウトハァハァ
十四代目の口調にもモエス
いいもの見せてもらいました <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 12:04:09 ID:q8/IN/r0<> )408
情事のようですなハァハァ <> 小寅×鈍太<>sage<>2006/03/10(金) 12:06:38 ID:hZ+Cqped<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  小さい虎と鈍アフロの続きだモナ。今第何話だモナ?。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  第七話らしいよ。ようやくエロス。つうか長い。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  …ブッフォ!!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> 小寅×鈍太1<>sage<>2006/03/10(金) 12:07:11 ID:hZ+Cqped<> 「悪かった、……です?」
「お断りだぁ!」
二つの声が同時に鳴った。
お断りって何だよお断りって!謝罪も許さない心算ですか俺。幾ら何でも悪質過ぎやしませんか俺。
一方の小寅は、『悪かった』の丁寧語を考えているらしく、頻りに首を捻っている。
「悪いでした? 悪くて済みません? ……悪うござんした?」
考え込む度どんどん怪しくなっていく小寅の日本語。
お前は本当に日本人ですか小寅さん。
そう突っ込みたいが怖くて出来ないでいる鈍太。
思いは交錯する。というよりも全く噛み合わない。一緒に悩んではいるが悩む内容が違っている。
そんな二人が居るのは木木谷邸の一室。というかぶっちゃけ鈍太の部屋。ネタを捻り出すプライヴェート・ルーム。
狭く無いにも係わらず膝と膝とがぶつかり合う程の至近距離で両者共に正座していた。
家には小寅と鈍太しか居ない。何故だ。パートに幼稚園に口座、皆さん忙しく用事があるからだ。
因みに鈍太は休日。ああ居心地が悪い。
鈍太が所在無げにモジモジしていると突然、小寅に声を掛けられた。
「……えーと……昨日は悪かった……?」
「疑問系!? 否、それで良いんですけどちょっと本当に怖いんで取り敢えず睨まないで下さい」
「睨んでねえよ」
「ほら睨んでるじゃあ…ないですね御免なさい本当に御免なさい」
ぎろりと鈍太を睨みつけ、小寅は鈍太の胸倉を掴み引き寄せる。
鈍太は恐ろしくて眼を伏せ、つうか貴方が謝りに来てるのに何でこっちが謝らなきゃならないんですかと脳内突っ込みをした。 <> 小寅×鈍太2<>sage<>2006/03/10(金) 12:07:51 ID:hZ+Cqped<> ぬっと、小寅の頭が近くなり、必死で伏せた鈍太の眼を睨み上げる。
小寅の体温が空気を揺らす。それが鈍太の皮膚にちりちりと痛んだ。
暑っ苦しい。
長い睫の奥にある、その真っ直ぐな瞳に見据えられて、鈍太は思わず視線を絡ませてしまった。
妙に気恥ずかしくて仕方が無いのでお願いをする。
「謝罪を受け入れさせて頂きますので放して下さいお願いします」
嫌だ、と小寅の目が告げる。
嫌だじゃ有りませんよ。子供ですか。
呆れる程にポカポカ陽気の外の日差しが窓越しに降り注ぐ中、暫し無言の攻防戦が繰り広げられる。
蛇と蛙ならぬ虎とヘタレの睨み合い。
ふと、鈍太は頭に壮絶な違和感を覚えた。小寅から目を逸らし上を見る。無い。
いつもなら視界の上端に在る筈のアフロが無い。無い無い無い。Where is Afro?
首を回らせて見れば、遥か後方に佇むアフロ。
空いた口が塞がらない。然りとて小寅が居る手前、声には出せずに喉の奥でぎゃあと叫ぶ。
強引に引っ張られた衝撃で外れてしまった鬘を、さも恨めしそうに眺める鈍太。
と、後ろを向いている鈍太の首筋に、熱くて痛いものが押し付けられた。
圧迫感の辺りを手で探ると、わさわさした何かに触れる。見てみれば、黒い塊。
それには腕が生えていて、腕は握り拳を作って鈍太の胸倉を掴んでいる。手を下ろすと、それの背中に行き当たった。
えっ? えっ?? 何コレどういう事? 
状況を整理しよう。此処に居るのは俺と小寅。二人きり。ハズカシー。は、措いといて、誰かが俺を噛んでいる。
誰かって誰? 俺を除いたら残っているのは小寅しか居ねえわなあ。
……食われてる? もしかして俺、食われてる? 幾ら名前に寅の字があるからってカニバリズムは犯罪ですよ。
って関係無えかコイツは元々ヤーさんでした。タマの取り合いやってる種類の輩でしたね。助けてー。 <> 小寅×鈍太3<>sage<>2006/03/10(金) 12:08:54 ID:hZ+Cqped<> 小寅は、鈍太の体がびくりと痙攣するのを感じた。
噛み付いてみると、鈍太の首は想像に反して冷たい。
口に含む感触が面白い。滑らかで弾力のあるそれを舌で転がして弄ぶ。
うっそりと上を睨めると怯えて強張った顎が見え、不意に鈍太を喰い千切りたい衝動に駆られる。
少しずつ、少しずつ力を込める。その度に、ひっ、と鈍太の泣きそうな小さい悲鳴が届く。
これで跡が付く。そう思うと嬉しくなった。
気が付くと小寅の噛んでいる部分が随分と温くなっていた。
下顎の柔らかい部分に移動してみる。鈍太の、汗の味がする。
両手で肩を押されるが、その抵抗も余り強くは無い。恐怖で竦んで力が出ない様だ。
「こ、ここ殺すなら痛くない様にやって下さいぃ」
思い切り頭を後ろに反らせた鈍太が、意を決して小寅に弱弱しい慈悲を乞うた。
本当に食い殺されてしまうのだと勘違いをしているらしい。
思わず鈍太から口を離す。
「可愛いな、アンタ」
まあ、強ち間違いではない。小寅は今から、鈍太を『喰らおう』としているのだから。
小寅からの真逆の可愛い発言に目を丸くしている鈍太の隙を付いて、唇を奪う。
自分が卑怯だと小寅は思う。けれど、正攻法では鈍太は迷いに迷って年老いて禿ても尚、悩んでいそうで。
鈍太は相変わらずの突然のキスに、むーむー鼻から声を上げて、小寅の背中を叩いたり引っ張ったり抓ったりと抵抗する。
余りにも必死なその暴れ具合に、小寅は諦めて一度口を離す事にした。 <> 小寅×鈍太4<>sage<>2006/03/10(金) 12:09:47 ID:hZ+Cqped<> 「あああ謝ったじゃん! 謝りましたよねえ!?
 謝ったらもうしないのが礼儀ってえモンじゃあ有りますまいか!?」
ぷはあと盛大に息を吐き、呂律の回らない調子で捲くし立てる鈍太。
その様子を眺め、小寅は煩そうに眉を顰める。
暴れている内に背中に回された鈍太の腕には、気付かなかった事にしてやろう。
「あー……気が変わった」
言って、小寅が自らの首を回す。ごきり。
「やっぱり、無しにする。反省しねえ」
我ながら男らしく無い台詞を口にする、と、小寅はひっそり思った。
信じられないを前面に押し出した鈍太の目を真っ直ぐに見つめると、その目はびくりと逸らされた。
もう一度、キスをする。
ゆるゆると口内を犯しながら、鈍太が纏っている服を少しずつ剥がす。
シャツを捲り上げようとした小寅の手に、鈍太の指が引っ掛かった。
一旦手を離し、鈍太のやわっこい体を腕で抱えて押し倒す。
すると鈍太は衝撃を恐れてか、小寅の首に腕を回してしがみ付いた。
無論、唇に唇を重ねたまま。
求められているのではないかという錯覚に陥る。
……何でこんなにコイツとヤりてえんだろ。
答えは出ない。ドキドキが終わって、恋が恋ではなくなっても。
多分、理由なんか無えんだろうな。
ヤりてえんだ、単に。どうしてか分からねえけど愛しいと思ったコイツと。 <> 小寅×鈍太5<>sage連稿規制に引っ掛かっちまったorz<>2006/03/10(金) 12:14:50 ID:hZ+Cqped<> 小寅はがっちりと鈍太を抱え込んでいる。
顎をしゃくる様にして、どうする?と無言で尋ねられて、鈍太はそりゃあもう泣いてしまいたくなった。
どうする? じゃあ有りませんよ。嫌ですよマジで。
断ったら簀巻き→東京湾orコンクリ→東京湾ですか。
怖えー。どうしようホント真面目に怖えー。
「ヤりかた知らないんじゃ」
焦って吐いた鈍太の言葉に被せて、小寅が絶望的な事を言った。
「否、兄さんに……ヤクザの方の。聞いたんで」
「!?!?!?」
何処まで守備範囲が広いんだ、小寅のお兄様。物知り博士にも程が有りますって本当に。
「イヤー! 痛いのヤダー!! 止めてぇ――ッ!!!!」
拒絶したいが股を閉じる事が出来ない。何故なら脚の間に小寅の脚が挟まっているからだ。
隙間無くぴったりと抱き締められてしまっている所為で、小寅を押し剥がそうにも腕が入らない。
股間の辺りに硬いブツが当たっているのですが俺の思い込みでしょうか。
思い込みの訳が無いでしょう。だってゴリゴリ言ってますもん。
ヤバい。朝ご飯がリバースしそう。
そんな鈍太の心中など察せずに、中途半端に脱がされた鈍太を見て、小寅は更に精力を弥増した様だ。
日に焼けていない生白い肌が、小寅の触れた部分だけ仄かに赤く染まっている。
胸の辺りで、小寅は鈍太を睨んでいる。駄目か? と聞いている様な熱っぽい顔を見てしまい、鈍太は負けを自覚する。
二人の視線が絡み合った。 <> 小寅×鈍太6<>sage<>2006/03/10(金) 12:15:27 ID:hZ+Cqped<> 下を見る時の、二重顎すら愛しく思えてくるのだから可笑しな話だ。
鈍太の首にはしっかりと赤い跡が付いていて、小寅は妙に擽ったくなった。
支配欲に任せて、動く。
唇を貪り、陰部を弄り、そそり勃った鈍太の其れを扱く。
鈍太は先程から、気持ちが良いのか悪いのか信じられないのか色々と入り混じった挙句の呆けた表情を見せる。
時折ビクリと痙攣して、強く目を閉ざす鈍太を、小寅はまじまじと見つめた。
「トラ、も、見ンな……」
「? アンタの顔、面白れェから」
まるで見当違いな返事をして、小寅は鈍太の後孔に指を挿入れようと奮闘している。
入り口は解れてきているのに、其処から先へ勧めないのだ。
鈍太の(小寅にとっては)可愛い顔が、紅色に染まって切なそうに眉を顰める。
濡らせば何とかなるかと思い至り、自らの指を唾液で湿らせようとすると此方が吃驚する程、強く手首を掴まれた。
「……何?」
「え? あ、否……何ってその、それ、き、汚くねえか?」
「……? ……! ああ…」
どうやら“それ”は小寅の指であるらしい。
「だって、お尻はウンチを出す所ですよ? 排泄物ですよ? ありとあらゆる黴菌さんが揃いも揃ってこんにちはですよ??」
「……ああ」 <> 小寅×鈍太7<>sage<>2006/03/10(金) 12:16:26 ID:hZ+Cqped<> 何が『ああ』なのか分からないが、取り敢えず小寅は行動を一時停止した。
良し。一先ず時間稼ぎに成功した。さて、これからどうやってヤらない方向へ持って行こうか。
鈍太は脳味噌をフル稼働させて考える。
と、小寅が何やらゴソゴソやっている。訝しげに眺めると、コンドームの袋が幾つか繋がって出現した。
ぎゃー。ぎゃー。ギャ――――――――――――――――――――――。
もう本番ですか。突入ですか。考え直して下さい。それだけはもうホント勘弁して下さい。
つうか何処から出したんですか其れ。ポッケですか。ポッケにゴムって変態過ぎます。
そんな事を考えて頭の中がオーバーヒートしている鈍太に構わず、小寅はコンドームの袋を歯で開け、難儀そうに其れを指に嵌めた。
「な、な、なななな何を――」
返事は来ない。
その代わり、電流が流れた様な鋭い痛みが走った。
「痛ッ、ひ……と、トラぁ!?」
後孔に、小寅の指が突っ込まれている。
今までに体験した事の無い激痛に顔を歪ませて、鈍太は情けない悲鳴を上げた。
痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛たたたたたたたt
猛烈な抗議をしたいが小寅が怖い上もう痛過ぎて声を張り上げる事が出来ない。
只管痛みに耐える事数分。鈍太にとっては永遠に思えるほどの時間が経ち、鈍太の後孔はゆっくりと、然し確実に緩く痛みも鈍くなってきた。
痛みが和らいできたからといって其れが快感に変わる筈も無い。
鈍太は嗚咽を漏らして耐えている。
気持ちが悪い。 <> 小寅×鈍太8<>sage<>2006/03/10(金) 12:18:21 ID:hZ+Cqped<> 「や、う、嫌だ、トラ、嫌だ」
嫌だ嫌だと繰り返す鈍太の口を口で塞ぎ、小寅は萎えてしまった鈍太の其れを再び上下に荒っぽく扱く。
其れが熱を持ち始めたのを確認して、焦らす様に動かす。
指は既に三本、丸ごと鈍太に飲み込まれていた。
「寅治って呼べよ」
「ひ、ぃッあ、ン……ん?」
拒絶し続ける鈍太に、他の言葉を言わせたくなった小寅は、自分の名前を呼ぶよう催促した。
「寅治」
「と、……寅、治?」
「良いか?」
手早く、という風にも行かないが不器用なりに早く、自分の其れにコンドームを被せ、鈍太の後孔に宛がう。
耳元で好きだ、と囁く。聞こえるか聞こえないかの小さな声で。
一瞬、鈍太の目が見開かれた。
みぢり。入り口は小寅を拒むかの様に締め付ける。或いは放すまいとする様に。
ああ、ああと弱弱しい声を上げて、鈍太は己の身を捩じらせる。
鈍太は世界が崩れてしまう音を聞いた気がした。
受け入れる、という行為も、侵入する、という行動も、裏を返せば全て拒絶になる。
自分を埋め込んだ小寅は、動きを止めて鈍太に口付けをする。
妄想の悪魔に取り付かれそうになった鈍太は其れに応え、小寅の行為を許す為に彼の名を呼んだ。
満足そうな唸り声が小寅の喉元から響く。
小寅がゆるゆると動き出した。 <> 小寅×鈍太9<>sage<>2006/03/10(金) 12:20:25 ID:hZ+Cqped<> 好きだ、と小寅の言葉が頭の中で反響する。
その声に縋る様に、鈍太は遮二無二小寅の首に抱き付いた。
もう一度、告げられる。背中と腰の下に敷かれた腕に力が籠る。告げられた言葉に返す言葉を口にする前に、熱い唇に覆われた。
泣いてしまいたくなる。
拒みきれない自分に、小寅の強引な優しさに、溺れてしまいそうで。
緩慢な動きに反応して、鈍太は口付けられたままくぐもった喘ぎ声を漏らす。
時折ぢくりとした痛みが走り、鈍太の顔が小さく歪む。
然し其れ以外は下腹部に妙な圧迫感が波打つばかりで、思ったよりも気持ちの悪いものではなかった(かといって全く気持ちが悪いものでない訳は無いが)。
つうかよ。ヤバいよね。ヤバいんじゃないの? 誰か帰ってきたらそれで即アウトでしょう。
鈍太の頭の中ではアラームが鳴りっ放しになっている。
否、それよりも何でフツーにヤられちゃってるんですか、俺。
キモキャラを充分過ぎるほど身に沁みて理解してる俺でも流石に俺自身がキモい。キモ過ぎる。
古今東西全国津々浦々の女性に俺はスッゲー勢いでドン引きされちまいますよ!?
寧ろ俺はコイツの兄貴になってやりたかったんじゃないんですか。
これじゃあ兄貴って兄貴の意味が違いますってうわ、あ、あ、あ、あああああ。
「い、ッひぐ、うあ、ア!?」
突然、鈍太の脳天に電流が流れた。回想と妄想が真っ白に上塗りされて行く。
小寅はというと、何故かしたり顔になっている。
何だコレ! 何なんだ今の!? <> 小寅×鈍太10<>sage<>2006/03/10(金) 12:21:44 ID:hZ+Cqped<> 「……好きだ」
止めて、其処、嫌だ。止めて。マジで。
「や、はッ、トラ……も、止め」
小寅が突く度に、鈍太の体がびくりと跳ね上がった。
ある一点が、突かれる度に鈍太に鋭い電撃を与えている。
落ちる、落ちる、――堕ちる。
鈍太は必死で小寅にしがみ付く。
自らの腕に爪を立てて、壊れそうになるギリギリの所で耐えた。
口内に舌が侵入する。
体が言う事を聞かない。鈍痛と快感が同時に襲い掛かる。
歯を食い縛りたいが、小寅の舌が有る為に不可能だ。
小寅は鈍太の敏感な部分を執拗に攻める。肉の爆ぜる音が響く。
ふと、小寅の舌が離れた。追い縋る様に、鈍太の舌が後を追って唇を舐める。
ぐちゃぐちゃになっているであろう顔を見られたくなくて、鈍太は小寅に一層力強く抱き付いた。
小寅の肩に顎を預ける。女よりもだらしなく嬌声を上げる。
脱がされ損ねた衣服が邪魔をして、満足に肌を合わせる事が出来ない。
もっと。もっと。深く欲しい。
それでも冷静な自分が居て、其れは煩いほど文句を言ってくる。
俺は男でソッチの気は無くて好かれた程度で絆されちゃあお終えだ。
違う。こんな感情知らねえ。こんな、こんな、トラお前は俺の、俺はお前の、ああ、あ、あああッ <> 小寅×鈍太11<>sage<>2006/03/10(金) 12:22:29 ID:hZ+Cqped<>
目が覚める。小寅が上に覆い被さっていた。
後孔に異物感が在る。まだ、抱き締められている。
その内に小寅がゆるゆると動き出し、中から退去して鈍太の体を自分の服で拭いだした。ついでにそので自分の体も拭いている。
うん、そうね。ちゃんと体は拭かないと風邪引きますからねって馬鹿かお前は。お前は馬鹿か。
あーあー。その服、たっかそうなのになあ。
つうか拭いてどうするのか小寅よ。帰る時の服が無くなりゃあしませんか。
すっぽんぽんで路上に立ったら素敵なモノ見て婦女子はバッタバッタと次々に失神、慌てて機動隊が出動しちまいますよ。
「好きだ……好きだ。アンタが」
不意に、小寅が言葉を発した。
真っ直ぐに見つめるその瞳から、何故か目を逸らす事が出来ない自分が居る。
鈍太は何も答えられずにいる。無言のまま見つめ返していると、小寅に変化が表れた。
小寅の顔が、見る間に赤く染まって来たのだ。真っ赤になるハンサム馬鹿。中々に壮観だ。
ぶふう。思わず吹き出した鈍太に、
「……笑うな」
と凄む声が降ってきた。……説得力が無い。
「わッ、笑ってねーよ」
凄むその相手を抱き締めて、剰え照れて真っ赤になっている小寅が余りにも面白くて更に吹き出す。
笑いながら鈍太は、この豪速球に不器用な二枚目に、絆されてやろうという気になった。 <> 小寅×鈍太<>sage<>2006/03/10(金) 12:24:04 ID:hZ+Cqped<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ もうね。うん。恥かしさが限界超えて目も当てられない事に。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) ひいいいいいああああああああqwせdrftgyふじこlp;@:
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
ただ今、萌えが拡散しまくっています。
架空のゲ仁ン(ROM専)やら某音痴でスカジャン着たままスキューバダイビングな先輩のCMやら今日極やら古火田やら愛某やらetc…
コレは我が人生最大級の青春か!?ボスケテー <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 13:58:13 ID:8XR7pgCb<> >>405
当代×ぬこキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
今度こそMAX集めて戯れてやろうと決めましたハァハァ

>>413
こんな昼からイイモノ見せていただきましたGJ!
アフロかわいいよアフロハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 17:39:45 ID:K6iqddk0<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  庭球王子らしいよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  マイナーカプだな
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> 1/2<>sage<>2006/03/10(金) 17:40:54 ID:K6iqddk0<> 小中高の2年差は大きいとは思うけど。
普通の成人男性よりも高い身長と、表情が読めない眼鏡で落ち着き払っている先輩。
ちょっと背が高いからってオニイサンぶってるんじゃねーよ。
俺だって2年したらあと30cmぐらい簡単に伸びるんだよ。
いつもいつも33cm上から見下ろして、人の事をガキ扱いしてちょっとムカつくんだよね。
年上だからって大人ぶってるけど、アンタだってまだ15才だろ。
あの眼鏡取ってやって、慌てさせるような事してやったらどうなる?
泣いちゃうような事してやったら、あの落ち着いた仮面はがれる?

クラブ後わざと1番最後まで部室に残ってやった。
先輩はデータをまとめるからっていつも最後。
集中してる先輩は俺の事なんか気がつきもしていない。
こういう所がムカつくんだよね。ナチュラルに人の事を無視しやがって。
1年上の海/堂先輩にだったら自主練にまで付き合うのに。俺なんか眼中にないってコト?
ムカつくからロッカーのドアを思いっきりピシャン!と閉めた。
「…!!わっ!越/前か。気がつかなかった。今日は遅いな、居残り練習でもしてたのか?」
「…まあね。」
「ほう。珍しいな。」
「先輩、俺にもトレーニングメニュー作ってくださいよ。」
「へえ?越/前が人に頼るなんて珍しいな。いいだろう。」
先輩は俺のデータを探してノートをめくっている。
ノートを覗くふりして先輩に近づき、机の端に座って足をぶらぶらさせる。
「…だが越/前は成長前だからあまりハードなトレーニングはしない方が良いんだ。
 クラブ活動中の運動と栄養バランスが取れた食事で今の所は充分みたいだな…」
先輩は俺を見上げてうっすらと微笑む。
俺も微笑み返す。先輩を見下ろす角度が新鮮だな。
だが成長前ってのが気に入らないね。 <> 2/2<>sage<>2006/03/10(金) 17:41:57 ID:K6iqddk0<> 「俺だって成長してるッスよ?」
「へえ?今何センチ?データを更新しないといけないッツ…」
先輩の顎を掴み上を向かせて唇を塞いだ。いきなりだから驚いたのか先輩は固まっている。
口も軽く開いているから舌も滑り込ませる。先輩の舌を絡め取りながら眼鏡も素早く外した。
フリーズしてた先輩がようやく身動きしはじめた。首を振って口を自由にしようとする。
眼鏡を机の向こう側に放り投げて、あいた手で思いっきり髪の毛を掴む。痛いようにね。
それから両足を先輩の肩の上に回して先輩の頭にしがみつき、全身の体重を掛ける。
折りたたみのパイプ椅子はバランスを崩して後ろに簡単に倒れた。
かなりの衝撃。
先輩の頭は地面に打ちつけないように俺の腕でカバーしてたけど、背中は椅子の背もたれがくい込んでかなり痛かっただろうな。
でも、こうしないと普段の状態では体格差に負けて簡単に弾き飛ばされちゃうから。
「……!!」
先輩は倒れた衝撃で声も出ないみたいだ。眉間に皺が寄っている。目尻からはかすかに涙が滲んでいる。
待っててね。その涙、すぐに屈辱と快楽の涙に変えてあげる。
俺は先輩のジャージの紐に手を伸ばした。

「先輩、俺成長してるでショ?ねえ。」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 17:43:06 ID:K6iqddk0<>  ____________
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 | | □ STOP.       | |
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) おそまつさまでした。身長差劣等感萌え。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 17:48:20 ID:S0ZamAqG<> >413
モモモモエキター! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 21:43:28 ID:XXtZkPOO<> >>413
すばらしい〜 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 22:11:00 ID:kNGf9qY1<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  悪魔土成ドラキュラ ラルフ×アルカード9回目だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ラルフ自覚編・後編ですyo
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ >>389->>398ノツヅキデスゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> ラルアル1/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:11:37 ID:kNGf9qY1<>               ◆


 その晩、ラルフは荒れた。
 普段はほとんど足をむけない遠い街まで行き、最初に目についた酒場に入って、エールとワインを浴びるほど
に呑んだ。あまりの勢いに、店の者が「そろそろやめたほうが」と口出ししてくると、怒鳴りつけて店を出て、
別の店に入ってまた呑み続けた。
 呑めば呑むほど、酔いの霧がかかってくる頭の中に、アルカードの顔だけがはっきりと思い出されてきた。夢の中
でしなやかに弧を描いた白い肢体、涙を浮かべて哀願する瞳、そして昼間の、まるで殴られたように手を胸に当
てて凍りついていた顔。
 ──魔王ドラキュラの子、闇の血を継いだ、実の息子。
 ──ご自分の意志のみで行動できる時期はもはや過ぎ去りました。
 ──ベルモンド家全体と、それによって生活しているすべての生命がかかっている……
「くそっ」
 酒臭い息とともに吐き出して、もう一杯、と手をあげようとしたとき、派手なドレスを着た女がするりと向か
いの席に腰をおろしてきた。
「どうしたの、旦那。ずいぶんご機嫌ななめみたいじゃない。どう、あたしがご機嫌よくしてあげましょう
か?」
 あっちへ行け、と怒鳴りかけて、ふと目がとまった。 <> ラルアル2/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:12:16 ID:kNGf9qY1<>  女の髪は、おそらく脱色したものなのだろうが、うす暗い酒場の灯りでごく淡い金色に照り映えていた。アルカー
ドの、月光のような銀の髪にはとてもかなわなかったが、波打つ淡い髪の色は酒精に酔いしれたラルフの、どこか
深いところを刺激した。
「決まりみたいね」
 客の微妙な変化をすばやく読んで、女は意気揚々と言った。
「それじゃ、とりあえず半銀貨。泊まりなら、銀一枚ってことになるけど」
 ラルフは黙ってコインを滑らせた。女は慣れた手つきで金をドレスの開いた胸もとにしまいこむと、立ちあが
って、来て、と手招きした。
「二階に部屋があるの。今夜はあんたが最初だから、ゆっくりしてってちょうだい」


 女を抱くことは、これまでラルフの日常ではあまり優先順位の高くないことだった。
 今より若いころはそれよりも鞭術の腕を磨くほうに忙しかったし、父のあとをついでからはエルンストの鉄の踵の
もとで荘園主としての仕事に精を出さざるを得なかったので、自然、男女のどうこうからは遠ざからざるを
得なかった。
 べつだん女が嫌いなわけでもなく、寝ればそれなりに楽しいしすっきりするが、それはそれだけのことだっ
た。あとから文を送ってきたり、使いを寄こしてまた来てくれと催促する女もままあったが、そんなことに気を
使うのは、正直いって面倒だった。それよりも一人で鍛錬し、強くなってゆく自分を確かめているだけで満足で
きる、自分はそういう人間だし、それ以外に本当の興味を持つことはない、とずっと思っていた。
「誰か、ほかの人のことを考えてたでしょ。あんた」
 終わった後、髪を直しながら女がそう言ったときはいきなり頭を殴られたようだった。 <> ラルアル3/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:13:01 ID:kNGf9qY1<> 「なぜ判る」
「そりゃ、わかるわよ。あんた、ずっと上の空だったもん、やってる最中」
 女はあっけらかんと言って、けらけら笑った。
「別に気にしなくていいのよ。そういう人、わりと多いから。あんたはその中でもま、ましなほうだわ。まっ最
中に、別の女の名前呼んだりしなかったもんね。仕事とはいえ、あれって、けっこう女としてはむかっとくるも
んよ」
「……すまん」
「だから、謝ることないってば。それよりねえ、その人、きれいなの? 優しいの? あんたのその、想い人っ
て人」
 興味深そうに身を乗りだしてくる。汗にぬれた乳房の谷間に、薄くそばかすがあった。
「ああ」
 寝乱れた脱色の金髪を眺めながら、ラルフは呟いた。「とても、綺麗だ」
「そう、それじゃ、こんなところにいないで早くその人のところに戻ってあげなさいよ。それとも何? 喧嘩、
しちゃったとか? それとも、お家の事情でその人とはいっしょになれないとか? 見たとこ、あんたそれなり
の家の人みたいだし」
「両方、だろうな」
 アルカードの傷ついた顔を思いうかべる。あれはどう考えても、自分が悪い。
 それに、『お家の事情』などという言葉ではとても言い表せない溝が彼との間にあることも、エルネストによ
って否応なく思い出させられてしまった。
 そして何より決定的なのは、あの淫夢によって呼びさまされてしまった、自分の奥にある醜いものだ。
 これまで見ないように、気づかないようにと蓋をし続けてきたものを、あの小魔は一気に解きはなって笑いな
がら消えていった。意趣返しとしては最高だろう。 <> ラルアル4/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:13:35 ID:kNGf9qY1<>  俺は、──アルカードが欲しいと思っている。
 それもただ友人としてそばに置くのではなく、この腕に抱きしめ、なめらかな肌と朱い唇を思うさまむさぼっ
て、そのすべてを自分のものにしたいと願っている。
 むろん、許されないことだ。キリスト教の道徳律においては、同性愛は重罪である。軽くて破門、重ければ異
端者扱いで火に投げ込まれてもおかしくない。ラルフにしても、相手がアルカードでなければ、ただ嫌悪と反発を
感じるだけだったろう。
 だが、ひとたびあの美しい月のような姿を思い描いただけで、全身が熱く燃えあがるのをもうどうすることも
できない。
 アルカードはどう思うだろう、とラルフは思った。これまで、そんなことを考えたことなど一度もなかった。
 女との行為は楽しくはあったがただそれだけで、そこに欲望はあっても真剣な気持ちのやりとりはなかった。
だが、アルカードをシーツの上の女に置き換えてみただけで、また下腹に熱がこもってくる。
 そういう自分をアルカードが知ったら、彼はどうするだろう。軽蔑するだろうか。怖れるだろうか。あの澄んだ
蒼氷の瞳が、嫌悪をもってそらされるところを思い描くと、果てしなく心が沈んだ。
「ずいぶん悩んでるみたいね」
 ベッドに腰かけて脚をぶらぶらさせながら、女は言った。
「でも、あんたはとにかく好きなんでしょ、その人のこと? で、その人も、あんたのこと好きなんでしょ?」
「ああ。好きだ」
 と即答して、いささか気弱くなり、
「……少なくとも、俺は、だが。相手のほうは、今ひとつわからん」
「じゃあ、とにかく確かめてみるしかないんじゃない?」
 しごく当然だという顔で女は指を振ってみせた。 <> ラルアル5/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:14:58 ID:kNGf9qY1<> 「それで、両思いだってわかったら、とりあえず攫っちゃえばいいのよ、男なんだから。誰も手のとどかないく
らい、うーんと遠くへね。だいたいロミオとジュリエットなんて今どき流行んないわよ、どう、あたしだって少しは学が
あるでしょ」
 下の酒場で飲んだくれてる詩人崩れから聞いただけなんだけどね、と言って、また楽しそうに笑った。
「でもまあ、あんたもロミオって柄じゃないわよね、その面構えだと」
「放っとけ」
 むくれた顔のラルフにくすくす笑いで返して、で、と女は言った。
「どうする? 泊まってくの? 戻ってあげなさいなんて言った口であれだけど、これも商売なのよね。お金は
さっきもらった分だけでいけるけど」
「いや、いい。帰る」
 ラルフは立ちあがって、服を着た。
「金はそのまま取っておいてくれ。話を聞いてもらった代金だ。おかげで気が晴れた」
「そ。ありがと」
 女は自分もドレスを着込むと、ラルフのそばに立って、そっと頬に唇をあてた。
「はい、これはおまけ。あんた、いい人みたいだから。その人とうまくいくように祈っといてあげるわ。あたし
のお祈りじゃ、ご利益ないかもしれないけど」
「そんなことはないだろう。感謝する」
 扉を閉めるとき、女はベッドの上で小さく手を振った。まがいものの金髪が、弱い灯りの下で明るい色に
輝いてみえた。 <> ラルアル6/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:15:33 ID:kNGf9qY1<>


 屋敷に帰りついたときにはもう深夜になっていた。
 門番をたたき起こして鍵を開けさせ、厩へ馬を連れていく。繋いでいる間もまだ酒が少し残っていて、頭が
ふらふらした。
 明日は二日酔いだろうな、と思いながらぶらぶらと中庭を横切っていく。二日酔いなら、明日アルカードに会わ
ないですむ口実になるかもしれない。意気地がないと自分でも思うが、今日のことがあったすぐ次の日に、
アルカードと会って平静でいられる自信がまだラルフにはなかった。
(好きなんでしょ。その人のこと)
(ああ。好きだ)
 何のためらいもなく、そう答えた。
 迷いもなければ嘘もない。自分はアルカードが好きだ。
 おそらくは、ドラキュラ城で初めて出会ったときから、彼の虜になっていた。
 俺はアルカードが好きだ、愛している、これまでその言葉の意味を深く考えたことなど一度もなかった、だがいま
は判る。彼の目を見るたび、唇がほほえむたび、胸を充たした喜びの正体がそこにある。彼のことを考えるた
び、疼くようにわき上がってくる熱も。
 アルカードに触れたい、と痛切に思った。
 抱きしめ、その月光のような髪に指を通して、俺はおまえが好きだと伝えたい。そして昼間の仕打ちを謝りた
い。だが、その勇気が出ない。なにしろ彼が、その言葉をどう受けとめるかまったく予測がつかないのだ。 <> ラルアル7/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:16:03 ID:kNGf9qY1<>  しかし、同じ屋敷にいるかぎり、いつまでもアルカードと会わずにすますわけにはいかないのも確かだ。何より、
会わずにいれば、数日保たずに自分のほうが我慢できなくなるのはわかりきっている。
 とはいえ、今の気分のままで何日も何週間も過ごせというのは、拷問だ。
(……やれやれ)
 熱を持った頭を冷やすために、庭の一隅にある井戸に立ち寄った。庭園の水やりや、馬の世話に使う井戸だ。
水をくみ上げて、ざっと頭から被る。
 初夏とはいえ、水は冷たい。大型犬のようにぶるっと身震いして水を払ったラルフは、もう一杯汲み上げてまた
被り、さらにもう一杯汲んで、熱い額を水に浸した。ひやりと耳を撫でる水の感触が、冷たい細い指先を思い出
させてぞくりとする。
「──ラルフ……?」
 幻聴かと思った。
 ラルフはざっと水から頭をあげてあたりを見回した。
 夜闇に沈む屋敷のほうから、幻のように白い姿が走ってくる。あわてて立ちあがると同時に、氷のように冷え
切った細いからだが、ぶつかるような勢いで胸に飛びこんできた。
「アルカード」
 しゃにむにしがみついてくるアルカードに、昼間のことは一瞬忘れてラルフは困惑した声を出した。
「いったいどうしたんだ、こんなところで。遅いのに、まだ寝ていなかったのか? おい、そんなにしたらおま
えまで濡れるぞ、聞いてるか、アルカード」
「私は、何かしたか、ラルフ」
 ようやく顔をあげたアルカードの顔には必死の色があった。 <> ラルアル8/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:16:40 ID:kNGf9qY1<>  ラルフは言葉を失った。
「私が何か怒らせるようなことをしたなら、謝る。謝るから、怒らないでくれ、ラルフ」
 自分まで濡れるのを気にする様子もなく、アルカードは懸命に両手でラルフの腕をつかんでゆさぶった。
 ラルフはそこに、暗い森で迷いつづける子供の顔がふたたび覗いているのを見た。たった一筋見つけた光をまた
見失ってしまうのかと、絶望しかけている幼い子供。
「私には世間並みのことは何もわからない。私が悪かったなら叱ってくれていい、どが、どうか怒らないでくれ、謝るから、どうか、ラルフ」
 言葉をとぎらせて、肩を震わせながらアルカードはうなだれた。
 とぎれがちなかぼそい声が、かすかに、ラルフの耳朶に届いた。
「……どうか、私から、顔を背けないでくれ……」
 ラルフはふいに、ありったけの力をこめてアルカードを抱きしめた。
「ラ、ラルフ?」
 いきなり抱きしめられたアルカードが驚いた声を出す。
「おまえは何も悪くない、アルカード」
 絞り出すような声でラルフは言った。
「悪いのは、俺だ。昼間は、悪かった。謝らなければならないのは、俺のほうだ。すまなかった、アルカード。酷い
ことをしたな」
「──ラルフ……」
「悪いのは、俺だよ」
 もう一度言って、ラルフはじっとやわらかな銀髪に頬をあてて目を閉じた。 <> ラルアル9/8<>sage<>2006/03/10(金) 22:17:11 ID:kNGf9qY1<>  欠けていたものが、静かに充たされていくようだった。たった半日ほど離れていただけで、どれだけ自分が
餓えていたかをラルフはあらためて思い知った。
 彼が欲しい、と痛切に感じた。アルカードが欲しい。腕の中で震えているこの華奢な身体、その身体も、心も、
アルカードのものであるすべてを手に入れたい。
 その代償になら、あらゆるものを投げだしてもいいと思った。ベルモンドの名も、鞭の遣い手という称号も、身
も、心も、魂の最後のひとかけらまで、全部。
「明日かあさってあたり、しばらく二人で遠乗りに行かないか、アルカード」
 ようやく腕をゆるめて、ラルフは胸の中のアルカードに笑いかけた。
「遠乗り?」
 やっと震えのおさまったアルカードは、眩しげな顔でラルフを見あげた。
「そうだ。おまえだって、たまには外の空気が吸いたいだろう。仕事はまとめて片づけるか、エルンストにやらせて
おくから、四、五日、いっしょに遠出しよう。いい場所を知っているから、そこでしばらく、二人でゆっくり
羽根を伸ばそう、いいか?」
 大きく目を見開いて聞いていたアルカードの唇に、やがて安堵したような微笑みが朝日のようにさしてきた。
「いい考えだと思う」
 そっとアルカードは答えた。
「ぜひ行きたい、ラルフ。楽しみにしている」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 22:18:50 ID:PrYa5lIE<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
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 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


…はみだしてばっかりorz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 22:24:14 ID:d/9RWCFc<> >>433
もうどうしたらいいかわからんです。GJ!GJ!GJ!
新婚旅行!新婚旅行!楽しみにしてます <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 22:43:42 ID:V7uuDtYO<> >>442
ハネムーン!フゥゥゥーーーー!!(*゚∀゚)=3
激しくGJ!
サブキャラも毎回いい味出してていいなぁ… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 23:00:14 ID:vL+8Y2Zv<> >>413
ややややや、やっちまいましたか!?
やっちまいましたね!?
すげえ萌え…。姐さん、
「好きだ」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 23:06:18 ID:5FatFrWO<> >>381
禿しく乗り遅れてスマソ…
GJだよ!やべーよストライクゾーンにミラクルフィットしたよ!
淡々とした文章だけど情緒あふれてていい!
上手いなぁ。続きあったらぜひ読ませてください。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 23:28:00 ID:GwyN2vLX<> >>413
ブッフォ!! やっちまったねぇ〜どうも(*゚∀゚*)
姐さんのお陰で、今改めて最終回の三年後シーン見直すと
出所して来た寅が鈍の子供達に優しく「大きくなったな…」って言って立ち去るとことか
部屋中に貼られた子供が描いた鈍の似顔絵(良いパパして幸せな家庭築いてんだねぇ…)
とかがなんかもう異常に尚更切ねぇのなんのって、イタタでスマソorz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/10(金) 23:49:27 ID:YYYKoY0/<> >>433
萌えすぎて顔の筋肉を押さえきれません
アルカードが愛しい <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/11(土) 00:39:28 ID:y5VKBQ+I<> >>405-410
やばいやばいぬこモエス
十四代目エロス
このゲーム*9*0スレで見かけて気になってたけど、更に興味が湧いてきたよ
良い物拝ませてもらいました、ありがとう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/11(土) 01:44:40 ID:eoPh88Is<> >>413ブヒャア〜!!モモモ…モウ…シネル…!GJ!!(*´д`*) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/11(土) 07:17:12 ID:TFy+3EDM<> >>433
ああ神が舞い降りているよ。これは祝福に違いないよ。
電波気味なのは萌えのせいです。一日千秋の思いで待ってます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/11(土) 14:00:22 ID:VfzrnwE4<> >428
ぬごい盲点カプキター!!
ふじょしは あたらしい もえに めざめた <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/11(土) 22:45:32 ID:ddJLugNb<> >>405
迷ってた背中を押されて今尼で注文してきた。
姐さんGJ!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/11(土) 23:49:48 ID:fkERKvCB<> >>413テラモエス
元ネタが15日から再放送あるみたいだから今度こそ見る…! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 00:33:28 ID:PeCyLLym<> >>433
新婚旅行ハァハァ、いつもながら素晴らしい萌えです。
挿絵ってほどじゃないですが>>441のシーンを描かせていただきました
続き楽しみにまってます(*´∀`*)

ttp://moravideo.s57.xrea.com/cgi-bin/upload/img/017.jpg <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 01:03:41 ID:cuzSfYau<> >>456
も、もしやマルキューで*0ゲトしてくれた姐さんですか?(*゚∀゚)=3
保存した!超保存した!!
棚さんのSSのテキストファイルと同じフォルダに!!(*゚∀゚)=3
<> 特等席<>sage<>2006/03/12(日) 01:28:12 ID:q6Y4JrHN<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  >294の呆(ボケ ×突(ツッコミ の第2弾
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  呆が保宇(ホウ 、突が十都(トツ だよ。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 十都視点だゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 特等席1<>sage<>2006/03/12(日) 01:32:13 ID:q6Y4JrHN<> 現場のロケへの移動中、大抵、俺と保宇は並んで座っとる。
保宇は移動中のたとえちょっとした時間であっても、まるで幼い子供みたいにじっとしとられへんらしく、すぐ俺にちょっかいをかける。
例えば、寝とる俺のほっぺた、そーっと人差し指で突っついてみたり、
俺がもう読むのは何度目かで適当にぺらぺら捲ってるだけの雑誌をわざとらしくほうほう、とか言いながら覗き込んできたり。
大人しいくケータイを弄り出したかと思えば、俺のケータイにメールが届く。開けば”暇やー”。勿論送信者はあいつ。
後は”しりとりしょー”とか”今日はええ天気やな”とか来た事もあるな。
「何やねん!」とか「ウザいわ!」とか何かツッコんだれば、へらっと笑て、機嫌良ぉなる。
うん、まぁホンマに俺が疲れとるなって時はあいつも暇やろうが何やろうが何もしてこんからええんやけどな。
あっちも別に俺が本気で「ウザい!」ってツッコんでるんちゃうの、分かっとるし。
<> 特等席2<>sage<>2006/03/12(日) 01:37:10 ID:q6Y4JrHN<> そして、今日のちょっかいはコレや。俺が先輩や後輩から来てて、返せんと溜めてたメールを一気に返信しとった時。
「…十都の太股柔らこうないーちゅーか硬いー。」
俺の膝をぺしぺし叩きながら、なんや勝手に膝枕されとるあいつが不満げに言う。
「ソレは女の子やから気持ちええねん。居心地悪いんやったらやめぇや。」
俺は痩せとるから、余計にあんなん再現できません。
「イヤーここ俺の特等席。」
「何じゃそりゃ。」
会話しながらも手は止めん俺をじぃっと見上げて、言うた。
「なぁー聞いてくれ。」
「ん、何?」
とりあえず打ちかけのメールを送信し終わったのを確認して、まだ残っているがケータイを閉じる。
「ちょ、耳貸して」
言いながらひょいっと起き上がる。今度は何を言い出すんやと俺は耳をそっちに近づけた。
「何ィな」
次の瞬間。
「ぅわ!」
<> 特等席3<>sage<>2006/03/12(日) 01:39:43 ID:q6Y4JrHN<> 思わず声上げた俺に伝わったんは、鼓膜を震わせる刺激やなく、生温くて湿った感触。
「おまっ!耳舐めんな!!」
本人はいかにもしてやったりという、やり遂げた笑顔で、
「耳弱いのは前から知っとったからいつかやったろうと思てたんや!」
「…ちょっ…、それはアカンやろお前っ」
俺が耳弱いって知ったんはどんな時やねん!どっちかっちゅーとそっちの方が問題や…!
2・3日前のその「どんな時」を思い出して微かに赤くなる俺を見て、もう一度俺の固い膝枕に寝ながら、微笑んだ。
「やっぱな!ココとお前の隣は誰にも譲れんわ。」
「心配せんでも譲らんよ。」
寝転んでるあいつの顔を上向かせて、唇を重ねた。
<> 特等席<>sage<>2006/03/12(日) 01:43:45 ID:q6Y4JrHN<>
 ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 前と終わり方同じ。需要は無視。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ;) …正直スマンカッタorz
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 02:18:20 ID:JWVKt3jD<> 前回に引き続き萌えさせて頂きました(;゚∀゚)=3ムッハー <> 図書館の発掘品(始)<>sage<>2006/03/12(日) 02:33:09 ID:wUhALJJ1<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  またお邪魔してしまいますモナ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|60年代洋楽飴ナマモノ2人組(シ"ェリー×卜厶)。
 | |                | |            \ 妄想舞台は'58年8月、17歳直前から。
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) ダカラナンデソウムイミニコマカイ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

 また萌吐きの場所を借りに参りました。
12スレの325-336と繋がっていますが、話は多分一応独立しています。
また多レス長文消費させて頂きます。
基本的にシ"ェリー視点です。

<注意>
・中盤はほぼエロのみです。 <> 図書館の発掘品(1/9)<>sage<>2006/03/12(日) 02:38:12 ID:wUhALJJ1<> 「卜厶はシャイで無口な性質だけど、いつだって物事の全体像を把握している。
 そして即座に人の本質を見抜く能力があるんだよ。
 自分から声高に言い立てはしないけどね。
 彼に何か質問してみてご覧よ。本当に鋭くて的確な意見が返ってくるから。
 ……彼は最高の友人だよ」
「シ"ェリーはね、僕の知っている中で一番頭の回転の速い人間なんだ。
 彼が読んだものや体験したことは全て、彼の素晴らしい作品に反映されている。
 ……僕はシ"ェリーに前に立ってもらって、自分は後ろにいる方が好きだな。
 元々そういう性格なんだ。これまでそれでうまくやってきた。
 彼の強い性格に感謝しているよ」
             (1966年5月/24歳当時のインタビュー:相互紹介より)
                ***************
 ショービジネス界での夢が潰え、高校を卒業し、進学を控えている2人の生活は
すっかり静かなものに戻っていた。
 シ"ェリーが購入した車、自分達がロックスターだった証の車はある晩、卜厶の
住んでいるブロックで突然炎上してしまった。間一髪、車からは逃げ出せた。
音を聞いて家を飛び出してきた卜厶に肩を抱きかかえられて、シ"ェリーは車が
燃え尽きるのを見つめていた。怪我をせずに車から脱出できた安堵感、自分が
達成したものの証拠がなくなる悲しみ。なにより圧倒的な喪失感。それら全てを
同時に味わいながら。膝に力が入らない。
 卜厶はシ"ェリーの頭を抱き寄せ、野次馬が騒ぐのに紛れて頬に軽く唇をつける。
そして「大丈夫。君が無事で良かった。本当に良かった」と耳元で連祷のように
唱え続ける。その言葉を、彼の声を聞いて、シ"ェリーの心は落着く。
彼らはあっという間にお互いを慰めることができる。
―そして後年知ることになるが、一瞬にして相手を激怒させる力も持っている。 <> 図書館の発掘品(2/9)<>sage<>2006/03/12(日) 02:42:35 ID:wUhALJJ1<>  両名とも本に影響を受けて進学先を決めた。
 思春期を迎え、文学、特に詩を読む喜びに目覚めたシ"ェリーは英文学部。
 女流作家ラン卜"が建築家ライ卜をモデルに書いた『シ原泉』を読んで感動した
卜厶は建築学部。彼らはお互いの選択を面白がる。
「草野球の賭け試合で小遣い稼ぎしていた君が文学だって?……成長したねぇ」
 卜厶が片眉を上げて、皮肉めいた口調で言う。
「クソッ、知ってたのかよ。あの頃お前とはつるんでなかったのに」
「君は有名だったからね」卜厶が笑う。
「お前こそ、建築なんて。今までそんなことに関心なかったろ? 本で読んだ
 からって…お前こそ文学か数学か、とにかく役に立たないものをやると思ってたよ」
シ"ェリーが肩をすくめる。
「入ってから専攻変えるかもしれないけどね。でもやってみるよ。
 アーキテクトって響きも素敵だし」それを聞いたシ"ェリーは今度はぐるっと目を回す。

 今彼らが身を寄せ合わせているのは、卜厶の新居、狭苦しいアパートメントの
ベッドの上だ。大学は同じニューヨーク、自宅から通えなくはない場所だが、彼は
1人暮らしを始める。今は準備期間として週末をここで過ごしている。
 この部屋を得てから、彼らは日常的に身体を重ねるようになった。
 卜厶にとって、ベッドは最大限に利他的なシ"ェリーを見られる場所だ。シ"ェリーは
そこで、相手の苦痛を最小限に抑えて、快楽を引き出すことに集中する。いつもの
彼の強烈な自我は影を潜め、多少不安そうに、ひたすら相手の反応を見極めようと
している。もっともその行動の源となっているのは、自分の望むものを獲得したい
という彼の元来の性質、決意だが。
 逆にシ"ェリーは卜厶が欲望に正直に反応するのを見ることができる。彼は刺激を
求める場所に触れられた時と、それ以外の時の反応が如実に異なり、それを隠そうと
しない。
 的確な場所をゆっくり刺激すると、彼の瞳孔が広がって目の色が濃くなり、
その肌は汗ばみ、震えだす。 <> 図書館の発掘品(3/8)<>sage<>2006/03/12(日) 02:50:34 ID:wUhALJJ1<> 「気持ちいい?」
卜厶の両脚を開き、内腿を撫でながら呟く。もうそろそろ入れても大丈夫だろう。
既に準備の整っている自分の器官は痛いほど張りつめている。
「あぁ。…きっと君は…本当に最高の恋人になるだろうね」
「……実際そうじゃないか」
 卜厶が喘ぎ混じりの軽い笑いをもらし、その手が持ち上げられてシ"ェリーの頬を擦る。
「僕とのことを言ってるの? …違うよ。僕たちは友達だろ」
 背筋がすっと冷えるのを感じ、卜厶を見下ろす。
「お前は友達とこんなことするのか?」もう一度彼の胸に触れる。その手首が
引き寄せられ、卜厶が指先を軽く舐める。
「さあね」
 彼が身を起こす。腕を伸ばしてシ"ェリーの両肩をつかみ、右肩を押して身体を
入れ替え、シ"ェリーの身体をベッドに押し付ける。その上にのしかかり、シ"ェリーの目を
覗き込む。不安そうなシ"ェリーの表情に気づいたのか軽く笑う。
「大丈夫だよ、シ"ェリー。君が僕にしていることを君にしようとは思っていないって。
 身体一度起こせよ」
 促されてシ"ェリーは身体を持ち上げ、枕とベッドの頭板に身を凭せる。
 卜厶が彼の身体を跨いだまま膝立ちになる。シ"ェリーの性器に手を添えて腰を
少し下げ、その先端を適切な場所に押し当て、受け入れる。その感覚は何度
味わっても鮮烈で、シ"ェリーの全身が反り返る。
 卜厶がシ"ェリーの顎をつかみ、持ち上げる。 <> 図書館の発掘品(4/8)<>sage<>2006/03/12(日) 02:53:13 ID:wUhALJJ1<> 「目を閉じて」
唇が合わされる。
 卜厶の腰が徐々に下ろされていく。ゆっくりと器官が飲み込まれ、
合わせた口には舌が差し込まれる。卜厶は全く逆の行為を完璧に合致した
タイミングで行う。見えない分触覚が鋭敏になっているのか、いつもよりも
刺激が強く、堪えられずに呻き声が漏れる。それを受けとめる卜厶の唇が
大きな笑みを形作るのを感じる。性器全体が卜厶に収まるのと同時に、
彼の舌が口の中を探り始める。その身体も揺れて、締め付ける。このままでは
すぐに達してしまいそうだ。
「横になったほうが楽じゃないか?」
息を継ぐために口が離れた隙に、目を開いて卜厶に問いかける。彼は微笑んだ
まま首を振り、今度はシ"ェリーの頭を胸に引き寄せる。シ"ェリーの耳に入るのは彼の
速まった呼吸と心音のみになる。
 なんとか少し身体をずらして、手を滑り込ませ、彼の性器を握りこむ。
彼の呼吸がまた変わる。胸板が跳ねるように動き、一瞬後にその動きが喘ぎ声と
なって漏れる。
「…僕は後でいいって」
口の中で呟く卜厶の顔に手を伸ばし、頬を軽くつねる。下では愛撫を続けながら言う。
「この状態でお前が先にいったら、俺も気持ちいいんだ。でも逆だと痛いんだよ。
 わかるか?」
 笑えばいいのか喘げばいいのか判断がつきかねたように、卜厶が胸の奥から
奇妙な呻き声をあげる。頬に当てていた手を下に滑らせていって腰を支え、
入り込んだ部分で体内の敏感な部分を探る。卜厶が眉を顰めて背を反らせる。
そこを刺激されることを彼はあまり好まない。
 姿勢を保つのが難しくなってきたのか、先刻までシ"ェリーを抱き締めていた
卜厶の腕が解ける。頭板に両手を突いて身体を支える。 <> 図書館の発掘品(5/8)<>sage<>2006/03/12(日) 02:56:21 ID:wUhALJJ1<> 「横になってたら今頃楽だったろうにね」と囁きかける。彼は目を閉じ、歯を
食いしばって首を振る。
「我慢しないで」と続ける。彼が頷く。
 握って扱いている手の力を少し強める。彼が腰を沈め、一度自分で中を擦りつける。
そして達する。シ"ェリーの胸から腹に飛沫が散る。その瞬間卜厶の目に浮かぶのは
不安と不信。この状態を自分が肉体的に楽しむことに彼はまだ慣れない。
呆然として、それでも半開きになった口からは喘ぎ声が漏れる。
 その表情と声を目と耳で、そして力が入って締め付けられる状態を身体全体で
味わいながら、シ"ェリーも射精する。力が抜けて寄りかかってきた卜厶を抱き寄せる。

 ベッドに並んで横たわっていると、卜厶がふと口を開く。
「わからないんだ」怪訝な顔のシ"ェリーに笑いかけて、言い直す。
「さっきの話。君との関係…
 …僕には君しか友達がいないから」
 そう、ヒット曲を出しても、彼を取り巻く環境はあまり変化しなかった。
彼はずっと無口で孤立した少年であり続けた。
「ああ、お前みたいな変人に我慢できるのは俺くらいだからな」
「あのさ……大学で…君以外の友達作ってもいい?」
「何言ってるんだ? いつだって他の奴ともつきあえって言ってただろ?」
「言ってるけど、本当はそう思ってないだろ。
 僕には君の考えていることがだいたいわかるんだよ」冗談めかした口調だが、
その目は笑っていない。
 彼が再び言葉を発する。
「僕は君の『親友』だよね?」シ"ェリーが頷く。
「でも僕にとって君は『唯一の友人』なんだ」
 シ"ェリーは肩をすくめる。内心こう思う―それでいいじゃないか。俺だけで十分だろう? <> 図書館の発掘品(6/8)<>sage ttp://i49.photobucket.com/albums/f274/morara/3boys.jpg<>2006/03/12(日) 02:59:42 ID:wUhALJJ1<> しかし口を開いてはこう言う。
「ああ、お前はもう少し他の奴とも打ち解けるべきだよ」
それを耳にした卜厶が、「嘘つけ」と言いたそうに、少し心細げに微笑む。

 その夜、帰宅したシ"ェリーは自室で1枚の写真を手にベッドに横たわる。11歳頃の写真。
男の子が3人写っている。自分が中心だ。自分は別の少年―彼の名前は思い出せなかった
―と肩を組んでいる。そして自分の左上腕を、後ろに立った少年がぎゅっと握っている。
卜厶だ。彼と親しくなり始めた頃の写真。彼の手の感触を思い出す。自分に対する
期待と不安を伝える、ひんやりとして、少し汗ばんだ指。
 彼はこれまでずっと自分だけを見つめていた。それはほんの少し鬱陶しく、
同時に誇らしかった。自分はその状態を今まで長引かせた。彼が自分に寄せる
感情が、一人ぼっちの彼に自分が最初に声をかけたことによる単なる刷り込み
だった場合に備えて。そう、彼を庇い、他の人間と話さないで済むようにして
きたのだ。しかしこれからもこの状態を保つのは不可能だ。
―大丈夫。あいつはきっと戻ってくる。口元を引き締めて一度頷き、シ"ェリーは
写真を戻して眠りにつく。

 それからしばらく、彼らは一切の連絡を断つ。住んでいる地域は近いので、
時々顔を見かけることもある。そのときは道を挟んで手を振りあい、笑顔を
投げ合うけれど、近寄ることはない。
 徐々に、2人は立ち止まって道端で言葉を交わすようになる。
 時間があれば近くの店に立ち寄り、コーヒーの一杯くらいを共にする。
その間中、シ"ェリーは絶え間なしに湧き上がる欲求を自覚する。それを言葉にすれば
卜厶は自分を部屋に招きいれ、特にためらうこともなく身体を開くだろう。だが
それでは意味がない。彼に自分を求めさせなければ。 <> 図書館の発掘品(7/8)<>sage<>2006/03/12(日) 03:02:00 ID:wUhALJJ1<>  卜厶は大学でアカペラグループに入部したらしい。それを聞いた夜、シ"ェリーは
また写真を取り出し微笑む。彼と声が最も合う人間は自分だ。彼はこれからそれを
再確認していくことになるだろう。

 数ヶ月がたったある日、コーヒーショップに立ち寄ると、卜厶が座っている。
3人の見知らぬ男性と一緒に。彼がくつろいでいるのが見て取れる。高校までのように、
他人といるときに自分の存在を消し去っている表情ではない。自分を見つけた彼が
目を輝かせて手を振り、招き寄せる。
「ちょうど良かった。君に用があったんだ。
 紹介するよ、一緒に歌っている仲間なんだ」彼が誇らしげに彼らを紹介する。
そして自分を彼らに紹介する。そしてこう言い添える。
「僕の親友なんだ。子供の頃から僕たちは一緒に歌っていたんだよ」
他の3人がにこやかに頷き、卜厶の声や性格について小声で賛辞を述べる。
「ごめん、彼に用があるから、今日はここで」彼は自分の支払分の硬貨をテーブルに
残し、シ"ェリーを引っ張って別のテーブルに移る。
「いいのか?」
「友達だから、大丈夫だよ」彼がくすくす笑う。
「それでね。用はこれなんだけど…図書館で見つけたんだ」鞄から大学図書館の
蔵書印の押された、古びた本を取り出す。楽譜だ。しおりを挟んだページを開く。
「この曲なんだけど、これをギター向けにアレンジして…君が弾いて、2人で歌ったら
 映えると思うんだ。
 16世紀の二声のラテン語ミサ曲…べネディク卜ゥス。見つけてすぐ、君と歌いたくて
 たまらなくなって…」
 楽譜を2人の指がたどる。久しぶりに2つの身体が指先だけで触れ合う。 <> 図書館の発掘品(8/8)<>sage<>2006/03/12(日) 03:05:33 ID:wUhALJJ1<> 「キリスト教の聖歌か…今のお前をラビに見せてやりたいよ。どんな顔するだろう」
「別にいいじゃないか、美しい曲なんだし」
「ああ、お前、本当に聖歌好きだよな」シ"ェリーは頬が緩むのを押さえられない。
こんなにも簡単なことだったのだ。かつての自分は何を心配していたのだろう。
彼はこれから、他にも友人を作るだろう…女の子ともつきあうだろう。でも必ず
自分の元に戻ってくる。彼にとって自分は特別な人間なのだ。
「だからさ、もし今日これから用がないなら、このまま泊りにおいでよ。
 今夜、ギター用にコード起こしてよ。僕は声の方を考えるからさ」彼が低い、
笑みを含んだ声で囁く。
「着替え持ってないんだよな」自分でも笑いながら囁き返す。
「洗って干しとけよ。一晩で乾くって。Tシャツくらいなら貸すし。
 それに……どうせ寝るときは裸だろ?」彼の微かな声は直接背筋に響くようだ。
 答える自分の声に興奮と欲望が滲み出るのを感じる。
「…ああ、そうだな」
 
 その16世紀のミサ曲は、数年後、彼らのデビューアルバムに収録された。
クレジットには2人の名前がアレンジ担当として記されている。
                ***************

「僕が卜厶を知ったのは11歳の頃だ。そしてそれからずっと彼とは親友なんだ。
 ―17、8歳頃の1年を除いてね。
 当時、“自己を掘り下げる”競争が僕たちの間で起きてしまったんだ。
 でもそれを乗り越えて、僕たちは元の関係に戻ったんだよ」
                       (同インタビューより) <> 図書館の発掘品(終)<>sage<>2006/03/12(日) 03:09:11 ID:wUhALJJ1<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  イツモアリガトウゴザイマス
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
120秒規制に引っかかり、長時間占有してしまいました。申し訳ありません。

インタビュー(妄想元1)は抜粋ですが内容はほぼそのままです。
蛇足ですが、6/8のメル欄に、写真(妄想元2)をupさせて頂いています。
誘い受けウザなのですが、我慢できませんでした。本当にすいません。
元ネタ知っている方以外には、単に普通の少年の写った白黒写真だと思います。
元ネタをご存知の方にとっても、特に萌写真ではありません。
月曜日(3月13日)には削除いたします。気が向いた方に閲覧頂ければと思います。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 03:44:04 ID:U07qYFLB<> >464
元ネタは知らないけどすごく萌えました。GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 04:06:26 ID:u+KI4kPD<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  十四代目×黒ぬこ再び
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  どんだけ萌えてんのかと
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ジブンデモ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )   ウロタエテルラシイ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

※第七話「呪われた探偵」の軽いネタバレを含みます。
 背景を使用しているだけで、ボスの名前とか話の主軸などには触れていないため、
 未プレイの方にも問題なく読んで頂けるとは思いますが、
 まったく知らない状態でゲームしたい!という方はご注意下さい。 <> ライドウ×ゴウト 1/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:09:35 ID:u+KI4kPD<>  ところは異界、深川町、三叉路にあるポストの前。
 歌う骸骨の兄弟を難なく退けた十四代目は、愛刀・月桂葛葉を一振りすると、鞘に収めた。
 行く手を阻んでいた結界は、術を破られ、既にない。あとはひたすら奥へと進み、そこで待ち受けているだろう悪魔を斬り伏せてやるだけだ。いつものように絶え間ない、戦いに次ぐ戦いだったが、それに親しんだ十四代目には何ら問題ないものだった。
 ただ、現在は、十四代目の体そのものに問題があった。

 戦闘装備を整える十四代目を眺めつつ、長い尻尾を垂れさせながら、ゴウトは胸中で毒づいた。
 銃に弾丸を込める手に、いつもの速さが見られない。両目を凝らして見つめれば、その指は血の色を失い、微かに震えてさえもいた。
「大丈夫か?」
 と尋ねれば即座に「応」と答えるが、その顔色は蒼白で、額には汗が浮いている。
 聞こえるほどに呼吸を荒げ、手の甲で汗を拭うなど、十四代目の姿としては終ぞ見たことがないものだった。

 斑馬(ふちこま)。
 他人にかけられた呪いを肩代わりする術だ。
 今、十四代目は斑馬として、某氏が受けた呪いを貰い、その根源を倒すべく、侵された身で駆け回っている。

「待たせた。行こう」
 やがて準備を済ませた十四代目は言うが、その顔色は最悪なままで、再び毒づくことになる。
 ヤタガラスの命令とはいえ、斑馬をせよと指示されるなり頷いた彼が腹立たしい。呪いに体を巡られながらも弱音を吐かない気概は買うが、斑馬の役を引き受けたのは、安請け合いではなかったか。
「ゴウト」
 苛苛としていると、諌めるように呼びかけられた。両目を細めた十四代目が、蒼白な顔で微笑する。
「とにかく先へ進もう」
「……解った」
 とにかく先へ。そうするしかない。一刻も早く術者を倒す、それが最善の策だろう。
 腹を括って体を捻り、奥へと繋がる道を向く。そうして歩き始めた途端、背後から、ガン、と音がした。 <> ライドウ×ゴウト 2/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:11:59 ID:u+KI4kPD<>  何事だと振り返り、その場で思わず目を見開く。
 がくりと項垂れた十四代目が、地面に膝を突いていた。
「……! おい!」
 踵を返して走り寄り、下から顔を覗き込む。呼吸を乱す十四代目は、こちらの視線に気が付くと、帽子を深く被り直して、顰めた顔を隠そうとした。
「やってる場合か、馬鹿者が!」
 その太腿を前足で打ち、意地を張るのを叱りつける。先程の音は刀の鞘が砂地に落ちた音だったのだ。
(糞!)
 苦境だ。無理が祟った。やはり断るべきだったのだ。
 本来、斑馬を務める者は、斑馬として修練してきた一派の者に限られる。更に、呪いを引き受けたあとは、結界内で体力の保持に集中するものなのだ。
 だが目の前の十四代目は、その一派にある者でなければ、その修練もしていない。あまつさえ自分の体内にある呪いの出所を気で探り、自力で術者を倒すべく、異界に潜って戦っている。
 充満している瘴気を吸い、のさばる悪魔を打ち倒しながら、床から離れられなくなるほどの強い呪いに蝕まれる。如何に稀なる降魔器量でも、苦しくならない筈がない。
 く、と呻いて辺りを見、ナキサワメの姿を探す。
 とにかく今は十四代目の回復が最優先だ。うろたえている間にも呪いは彼の体を巡り、その命を削り取る。
 運好く、彼女は近くに居、早くこちらにおいでなさいと言わんばかりの顔をしていた。釈然としない思いはあるが、愚痴を言っている場合ではない。
「おい。聞こえるか?」
 跪く十四代目の裾を引き、蒼褪めた顔を覗き込む。猫の体で人の体を背負う訳にはいかないから、何とかナキサワメのところまで歩いてもらわなくてはならない。
「そこにナキサワメがいる、見えるな? 立って、あそこまで歩くんだ」
「……だ」
「何?」
 喘いだ声を聞き逃し、顔を近付けて、問い直す。
「大丈夫だ、と……そう言った」
「何!?」
 今度は驚愕の思いを込めて、同じ台詞を繰り返した。
 呆気に取られて見ていると、十四代目は立ち上がり、ゆっくりとながら移動した。そうして着いた先にある赤いポストに凭れると、その場にずるりと座り込み、帽子を目深に被って、唸る。
「彼女の世話になるまでもない。少し休めば、回復する……」
「冗談を言うな!」
「無論。本気だ」
 やけにきっぱりと言い切られ、思わず叱咤を飲み込んだ。 <> ライドウ×ゴウト 3/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:14:01 ID:u+KI4kPD<> 「まあ、そう急くな。猶予をくれ。……ちゃんと回復してみせるから」
 次いで、子供が言うような、おどけた口調でねだられる。
 呆れた奴だと思いつつ、その目をじっと見つめるが、十四代目は微笑したまま、まったく視線を逸らさなかった。
「………」
 こうなったら、もう無駄だ。何を言っても聞きはしない。十七にして不惑の男の頑固さを持つのが十四代目。彼が視線を動かさないのは、意思を動かさぬという証だ。
 ならば、もう言うことはない。好きにしろ、と嘆息する。ちゃんと回復してみせる、そう言うからには、するのだろう。
「で、俺は何をしていればいい」
「暇なら抱かれてくれないか」
 吸ったばかりの空気を噴いた。
「何ぃ!?」
「そこまで驚かなくとも」
 大袈裟だと言いたげに十四代目は微苦笑したが、いきなり抱かれろと言われれば、跳び上がるくらいのことはする。
 そんなこちらの思いを汲んでか、十四代目は付け足した。
「お前、斑馬の経験は?」
「ある訳がない」
「まあ、そうだろうな。僕も初めての役目だし、うまく表現できないが……熱病に罹ったような感じがして、少しばかり寒気がするんだ」
 少しばかりという表現は嘘だろうなと思ったが、確かに、十四代目の汗は、熱病患者のそれに似ていた。
「それゆえ、暖を取らせろ、と?」
「ああ」
「仲魔を抱けばいいだろう」
「ほう?」
 半眼になった十四代目が右手の指で傍を指す。
 そこでは赤黒いレギオンが唸りつつ宙に浮いていた。
「お前が先例を見せてくれるなら」
「済まん、俺が悪かった」
 あれを抱けと言われるのは辛い。たった今、この身で痛感した。
「……致し方ない」
 承諾すると、十四代目が礼を言い、差し伸べるように手を出した。その掌から胸に登って、腕に収まり、丸くなる。
 苦しくならない程度の力でこちらの体を抱き込むと、十四代目は瞼を下ろし、安堵したように吐息した。 <> ライドウ×ゴウト 4/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:16:32 ID:u+KI4kPD<>  しばらく、そのまま沈黙する。
 幸い、そこらに蔓延る悪魔は、近付いてこないようだった。先刻、骸骨兄弟を一蹴したのを見ていたのだろう。迂闊に寄れば命はないと理解しているという訳だ。
 することもなく耳を立てると、十四代目の息が掠った。音なく吐き出されるそれは、落ち着いているが、ひどく熱い。
「……大丈夫か?」
「さっきも訊いたな」
 問えば、ゆるりと目を開けて、十四代目が微笑した。
「少し休めば回復すると言ったろう。心配ないよ、ゴウト」
 斑馬の身に言われても安心できる訳がない。
 確かに休めば体力は回復するかもしれないが、そうして休んでいる間にも、呪いは絶えず働いている。奪われていく体力を取り戻していく体力が上回るという保証はない。
 次第に回復しているつもりで、実は緩慢に死へ向かっている、そんな可能性だってある。……否、常人ならば、そうなる。
 不服を感じて俯くと、すうっと背中を撫でられた。次いで、顎下に指を入れられ、上向かされて、目を合わされる。
 見上げた十四代目の顔は、やはり微笑で彩られていた。
「僕の度量を信用しろ。伊達に葛葉ライドウを襲名している訳じゃない」
「……解りきったことを」
「ならば、何故?」
「?」
「髭が前向きになっている」
 からかうように喉を擽られ、ぺちりとその手の甲を叩いた。
 苛立ちが髭に出ていたらしい。これだから畜生の体は嫌だ。
「過保護になっているんじゃないか?」
 甘く笑まれて目を逸らす。呪いに体を侵されて弱っているのは向こうだというのに、気遣うように言われてしまい、釈然としないものを感じた。
「……お前が頼りにならないからだ」
「それは悪かった。精進しよう」
「ああ、そうしてくれ」
「肝に銘じる」
 くくっと抑えた声で笑い、十四代目は、また目を瞑る。
 未だに蒼いその顔を見て、しばらくは声をかけない方が良かろうと思い、口を噤んだ。 <> ライドウ×ゴウト 5/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:20:47 ID:u+KI4kPD<>  頼りにならない。
 ……訳がない。
 十四代目襲名の試練を難なく乗り越えた、稀代の葛葉ライドウは、雷光の速さで成長している。
 いずれ『初代』を超えるだろうと想像するのは難くなかった。むしろ、何処まで伸びるのか、その限界が想像できない。業を負う人の目で見ると、十四代目は憧れと恐れを同時に抱かせるような、人でありながら人でないような、そんな矛盾した気さえした。
 だが、猫の目で見てみれば、十四代目の手足は細く、整った顔は幼くて、瞳の色には濁りがない。甘い味付けを好んで食べる口はしばしば冗談を言う。帝都を護る者として仲魔に厳しく命じる声は、仲魔が見せる失態を「些細なことだ」と一笑に付す。
 あらゆる意味で賢く、強く、そして良い意味で、少し甘い。それが十四代目だと、ずっと前から理解している。敢えて言ってはやらないだけだ(調子に乗るのが目に見えてるから)。
 彼は歴代最高のサマナー、最高の葛葉ライドウだ。
 死んでも口にはしてやらないが(調子に乗るのが目に見えてるから)。

 ふん、と小さく鼻を鳴らし、学ランの胸に擦り寄った。どうせ休まねばならないのなら、自分一猫が毛を逆立てて緊張している理由はない。十四代目が回復するまで、自分も休息するとしよう。
 吹っ切れた気分で体を丸め、瞼を下ろして眠ろうとした、
 そこで異常に気が付いた。
「………」
 学ランの胸に寄せた耳まで、心臓の音が聞こえない。
「……おい」
 丸いボタンに前足をかけ、体を捻って、上を見る。
 瞑目している十四代目は、呼吸と顔色とをなくし、微動だにしなくなっていた。
「おい。お前、何を、つまらん、……おい!」
 ぞっとし、続いて困惑しながら、学生服の胸を打つ。必死に叩けば叩くだけ十四代目の体は揺れたが、自ら動きはしなかった。
「………」
 自分の存在している世界の天地が引っくり返った気がした。
 目眩を感じ、首を振る。喉が絞られるようだった。
 そんな馬鹿なという声が頭の中を巡ったが、一足先に落ち着いた心が結論を告げていた。 <> ライドウ×ゴウト 6/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:23:23 ID:u+KI4kPD<>  十四代目の尖った顎に鼻を摺り寄せ、名を呼んだ。葛葉ライドウとではなく、彼が親から授かった、彼自身の本名を。
 悲しみ、寂しさ、怒りといった、根本的な感情よりも、ただ、残念でならなかった。惜しくて、惜しくて、堪らなかった。
 こんなところで死んでいい青年ではなかった筈だ。もっと、それこそ何十年でも、生き続けるべき奴だった。
 この青年がいるだけで帝都の無事が確約される、それほどの男だったのに。こんな、くだらない呪いで。今。
 後悔と自責の思いが溜まり、腹の奥底に固まった頃、今更のように悲しみや怒りの情が湧いてきた。
 この十四代目の仇だけは、この業斗の手で討ってやろう。人間、悪魔、魑魅、魍魎、何の体を奪ってでもいい。ヤタガラスへの背信になったところで構わない。
 殺してやる、と呟いた。
「見ていろ……国津神どもが!」
 そうして牙を剥いた瞬間、

「うるさい」
 耳を引っ張られ、ふぎゃあと屁垂れた悲鳴を上げた。

「な、な、な、な、何だ、お前は!」
「何だと言われても。名乗ればいいのか?」
 名乗られなくとも知っている。十四代目の葛葉ライドウ。そんなことくらい見ずとも判る。
 問題点は、そこではない。
「さて」
 颯爽と立ち上がる十四代目に放られて、すとんと地面に降り立った。
 戦闘態勢を整えている手の滑らかさに唖然としながら、困惑する気を必死に静め、声を荒げて問い質す。
「な、何……。お前、今、心臓が!」
「動いていなかったと言うんだろう?」
「そうだ! 一体、」
「問題ない」
「問題ない訳ないだろう!」
「問題ない訳ない訳ない。解脱(げだつ)に入っていたからな」
 土埃を払いつつ、十四代目はさらりと言った。

 解脱。
 生死を隔てる線の真上に存在する境地のことだ。
 死んだと思った十四代目は、自ら魂を切り離し、そこに到達していたらしい。 <> ライドウ×ゴウト 7/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:25:27 ID:u+KI4kPD<> 「や、ややこしい真似をするな!」
「短い時間で回復するには、ああするほかないだろう」
 確かに、生死に囚われなければ、忍び寄る死に体力を奪われることはないだろう。
 しかし、生死に囚われなければ、自らの気で体力を回復することもできない筈だ。
「だが、お前、解脱に入ったのでは、」
 思った疑問を口にしかけて、不意に、視界の隅にいる仲魔の姿に気が付いた。
 触手蠢く丸い体に幾つもの顔を浮かび上がらす、人の想念の塊、レギオン。
 ……その赤黒い表皮から、生気が立ち昇っている。

 験気(けんき)。
 仲魔を傍に置くことで、その生命力の余波を受け取る……

「ん、随分と楽になった。礼を言わせてくれ、レギオン」
「気にするなぁぁぁぁ!」
「先に言えぇぇぇぇ!」
「どうした、お前まで狂人口調で」
 レギオンを管に戻しつつ、十四代目が首を傾げた。
(こ、この餓鬼は……!)
 いけしゃあしゃあと微笑む彼を睨みつけ、頭の中に思いつく限りの罵言を並べ立てる。
 どう考えてもわざと言わずにいたのだとしか思えない。しかし詰問してみたところで「お前なら気付くだろうと思った」とか吐かすに決まっているので、問えない。
 ううう、と猫の体をもって犬の如くに唸っていると、完全に準備を整えた十四代目がこちらを見た。その薄い笑みに対抗し、二本の牙を剥き出して、幾分血色の良くなった顔を厳しく睨む。が、
「仕切り直しだ。行くぞ、ゴウト」
 そう言うなり駆け出した、足の速さに目を剥いた。 <> ライドウ×ゴウト 8/7<>sage<>2006/03/12(日) 04:28:33 ID:u+KI4kPD<> 「ま、待て!」
 自分も身を翻し、全速力で駆けながら、マントをはためかせて走る十四代目の背中を追う。
(信じられん。何て野郎だ)
 解脱に入って験気を用い、体力回復に努めたとはいえ、その時間は僅かなものだ。五分にも満たなかったろう。失った生気の一割を取り戻せたかも疑わしいのに、十四代目の走る速さは呪いを受け取る前と変わらない。
 いやはや、流石は十四代目。
 感嘆を口にしそうになって、すんでのところで飲み込んだ。
(糞)
 自分自身の親馬鹿ぶりに、妙な可笑しさが込み上げる。死んでも褒めてはやるまいと誓ったばかりだというのに、ちょっと狼狽しただけで、早くもそれを忘れるとは。
 しかし、それは、そうなるほどに「子」の出来がいいということだ。と、思う自分は、やはり親馬鹿だ。それも重度の。認めるしかない。
 苦笑しながら足を速めて、十四代目の隣に追いつく。ちらりとこちらを見る彼に、大した奴だと言う代わり、別の言葉を投げたた。
「化け物め」
 隣を行く十四代目が、如何にもと言わんばかりに笑った。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 04:31:32 ID:u+KI4kPD<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  前よりラヴくなった筈だと言い張る
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

 文章長杉と怒られた末、8/7とか出来てしまったorz
 体裁悪くて正直スマンカッタ。
 お付き合い有り難うございました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 04:48:39 ID:K42Uug8F<> >475
ヒー!この時間まで起きててよかった!
姐さん最高ですハァハァ!ゴウトかわいいよゴウト(*´д`)
三度があるのを期待してます! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 04:50:52 ID:W3ITZiV0<> >484
死ぬほど萌えた。ライ同買うの見送ってたけどばいなうしてきた。
GJ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 05:11:30 ID:WY/evHiP<> >475
再び当代×ぬこキタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
寝ようと思ってPS2切ったばっかりなのに眠気がすっ飛んだよ!
レアレギオンもカワイスw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 09:41:44 ID:fV0n9mq/<> >>464
毎回思うけど、キャラの個性が際立ってて
エロシーンでさえそれぞれの性格がはっきり出てるのがすごい!
元ネタ知らないけどオリキャラの話として楽しませてもらってます。 <> 風と木の名無しさん<><>2006/03/12(日) 09:47:04 ID:n4s3J3dN<> >>454
>>486

>>475姐さん、この2日間で2本売り上げたよ! すげえよ!
もっと書いて下さいハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 10:14:41 ID:Hu4SBCXF<> >>475
レギオンwてっきり樹氷系がくると思ったらそっちですか
さりげなく稀なる降魔器量とか使われててウマス <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 10:51:44 ID:DcOSzQoF<> >475
最高です、姐さん。次回作を激しく期待しています <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 11:36:14 ID:5v5ykv7I<> >>457
その通りですorzやっぱりわかるもんですか?一番特徴が出る手はむこうで描いてないのに・・・
そして十四代目萌えなので>>475姐さんのも描かせていただきました。
ウザかったらすいません、でも小説書けねえよぉぉぉぉ

ttp://moravideo.s57.xrea.com/cgi-bin/upload/img/018.jpg <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 12:42:51 ID:Q4EcafGT<>
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

小ネタ。アカキ"とナンコ"ウさん。


23時を回った。目的の家の明かりは消えている。
アカキ"は構わずに玄関の戸を開ける。このあたりは治安が良いので夜中に鍵をかける家は滅多にな
い。持参してきた酒の瓶と缶ビール、つまみの入ったビニル袋がガサガサと音を立てる。
靴を脱いで上がりこむ。電気は点けない。家の中は墨を流したように真っ暗だが、何度も訪れた勝
手知ったるというやつで、足の運びに迷いはない。
ひとつの部屋に入り、紐を引いて明かりを灯す。
足元にナンコ"ウが寝ている。突然明るくなっても、深い寝息が乱れることはない。熟睡しているのだ。
着ている浴衣の寝乱れ具合から、すでに何度も寝返りを打っているのがうかがえる。浴衣の前が大
きくはだけている。隠れてみえないが、布団の下ではたくましい胸が露わになっているだろう。
「ナンコ"ウさん…」
しゃがみこんで声をかけてみるが、やはり起きる気配はない。
当たり前か、とアカキ"は息をつく。普通の人間は夜は眠るものだ。
比べて、アカキ"にとっては宵の口。むしろ活動時間だ。まるで反対だった。 <> 昼の男夜の男<>sage タイトル入れ忘れた<>2006/03/12(日) 12:50:49 ID:Q4EcafGT<> 会いたかったナンコ"ウは眠っている。アカキ"は眠くもないので、ナンコ"ウの枕元にあった灰皿を引き寄せて
煙草に火を点けた。深く吸い込んで紫煙を吐き出す。
何とはなしに、初めてこの家を訪れたときのことをアカキ"は思い出す。
ナンコ"ウはアカキ"が13の歳に出会ったときのアパートから引っ越して、この家を建てた。アカキ"は知
り合いの川田組の石河に尋ねて、ナンコ"ウの家を知ったのだった。そっちのほうが手っ取り早いと思った
からだった。訪ねてきたアカキ"を快く迎え入れたナンコ"ウは、その経緯を聞かされて大げさに呆れた。
ナンコ"ウは引っ越す際に、アパートの大家はじめ、近所の住人に白髪の若者が自分を訪ねてきたら、引
越し先の住所を教えてやってくれと重ね重ね頼んでいたらしい。
「普通そうやって聞くだろ…! わざわざヤクザの手を借りなくたって…!」 
アカキ"にしてみれば、あのころのナンコ"ウは命をとられるほどの借金を負って無一文で、いまにも崩れ
そうなボロアパートに住んでいたので、金を得たのだから引っ越しているだろうと推測し、もっと
も早くて確実な方法を選んだだけだった。わざわざ元のボロアパートを訪れるのは面倒だった。
ナンコ"ウは心配すると身体をぺたぺた触ってくる。懐かしい気がした。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
チュウトハンパスマソ。ワラッテユルシテ。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 13:15:21 ID:8UTklPmI<> >>457姐さん

自分も迷ってたけどライ同買ったよ!
思う存分サマナってくるよ!ハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 16:06:23 ID:pRrVPR/g<> 棒剣者の青赤。
 
今日は自分的には赤黒と赤青に萌え展開だったはずなのに、なぜか無償にチ一フ受けが書きたくなってしまった衝動的な一品w
 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 1/2<>sage<>2006/03/12(日) 16:10:08 ID:pRrVPR/g<> 「は、はぁっ…はぁ…!」
反射的に上半身が跳ね起きた。
こめかみからつぅ、と一筋の汗が流れる。
全身を震わすような激しい動悸が、なかなか落ち着いてくれない。
「はっ、は…。クソッ…!」
震える腕を押さえ付け、己れの弱さを罵しるように、抵抗することのない柔らかなベッドを拳で殴りつけた。
「…あの夢ですか」
「!」
耳元に聞こえる声。
隣で寝ていたと思っていた彼は、ゆっくりと起き上がり、茶色く染めた柔らかな髪を掻き上げていた。
「蒼汰…。いつから…」
「間先サンを呼んだ辺りですかね」
ドクン、と。
心臓が一層大きな音を立てるのが分かった。
 
また、あの夢だった。
 
爆発と共に炎に包まれる2人の体。
何もできなかった自分。
約束したはずだった。
俺が、見殺しにした──。
 
「忘れて、くれ」
どうにか絞りだした己れの声があまりに弱々しくて、我ながら情けない“チ一フ”だと胸の内で毒づいた。
「間先サンと俺を重ねてるんですか」
「…違う」
「怖いんですか。失うことが」
「……そうだ」
吐き出すように返すと、後ろからそっと彼の長い腕が絡みついてきた。
「俺はあなたを置いて逝きませんよ」
「……」 <> 1/2<>sage<>2006/03/12(日) 16:14:09 ID:pRrVPR/g<> 「気休めだと思っているんでしょう」
「…っ」
首元に柔らかく吸い付かれ、声にならないうめき声がでた。
「俺はあなたを信じているんです。だから、あなたも──」
「……」
「俺の顔、まっすぐ見てください」
「そ…っ」
「愛してます」
言葉腰からは想像し難い荒々しい仕草で俺を引き倒し、熱い視線を向けたまま深く口づけてくる。
「ん…っ…」
 
この陳腐な愛が囁かれるのも夜の間だけ。
 
今だけはと。
彼を失うことがないよう、銀の鎖が揺れる首にしっかりと腕を回した。
 
 
 
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ビックリスルホドミジカイジサクジエンデシタ!
 
4話以前の話ということで。
とにかくチ一フは漢受けな感じに萌えます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 16:29:10 ID:kj95sL0z<> >464
遅レスですが
卜ム&シ"工リーキタキタキター!
いつも楽しく萌えさせていただいとります!
これからも頑張ってください! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 17:54:41 ID:mmkB05Ia<> >>493
イイヨイイヨー
二人とも可愛いわあ(*’∀’) <> 雨宿り1<>sage<>2006/03/12(日) 21:52:52 ID:c5xJtlXQ<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )トアルガクセイノハナシ モノロークナノニ ナガイデス 

この学校には他の学校同様、色々な噂がある。
それは体育館倉庫に出る幽霊の話であったり、誰も居ないのに絶えず
人の気配のある部室の話であったり、夜に学校を徘徊する変質者の話
だったり、正面玄関前に置かれた学校の創立者の像が夜になると
動き出すという話であったり、あの先生と保険医は仲が良い、とか
そんな程度のたわいもない話なのだけれども。
それに混じって、今の数学の先生は実は生徒を食い散らかして
生きている妖怪だ、という噂がある。それも普通に学生生活を
送っている奴なら笑って流してしまうような、ひっそりとした噂
なのだけれども。


妖怪かどうかは置いておくが、その噂は残念ながら事実だ。
件の先生は年齢28歳、数年前、この学校に赴任した頃から、気に
入った生徒を誘っては学校やラブホテルなどでセックスを繰り返
しているらしい。僕が知る限り男、女問わず性癖も余り問わないよ
うだった。
その先生の幾度目か分からない投げ網に引っかかってしまったのが
僕だった。未だ何故先生のセンサーに引っかかったのかは良く
分からない。僕は今年で高校3年生。特にクラブもせず、成績も
とりわけ良いわけではないし、容貌だって背がちょっと高い以外は
大したものではないのだが。ま、人の好みは千差万別だと、この
場合は逃げておく事にしよう。
この先生の餌食、というか体を重ねた生徒はそれなりに居るよう
だった。が、口止めをされているのだろうか、それが噂以上に広まる
という事はなかった。確かに相手は先生だし、ある意味学校に喧嘩を
売るようなものだからな、そういう事を触れ回るのは。 <> 雨宿り2<>sage<>2006/03/12(日) 21:55:06 ID:c5xJtlXQ<>
日が暮れてから、教室の一つにて先生と濃密な時間を過ごす。
それを終えて周りを片付け、身繕いを整えてしまうと、先程までの
淫猥な印象を醸し出す男の姿は薄れ、そこに教育者の姿が現れるのは
さすがだと思う。
こういう時に変にからかっても、面白い対応をしてくれないので
つまらない。関係をネタに脅しても、立場が強いのは向こうだから
こちらが最終的に譲歩するしかない。
「先生。明日は何時に学校に来るのですか?」
「明日は用事があるから、6時半には職員室にいる」
それが何か? と云いたげな冷たい視線が浴びせられる。大げさに
僕は肩を竦めてみせると、そちらを見つつ首を傾けてみせた。
「別に…ただ、明日は朝から雨だそうですよ。だから、傘とかを
忘れないようにして下さいね」
掛けた声に小さく頷くと、先生は有り難うと頭を下げてから
教室を出て行った。

僕は先生を抱くのが嫌いではない。ま、これは僕に元々好きな人と
呼べる存在がいないというのが大きいのだろうが。あえて云うなら、
先生が他の人にも媚態を見せまくっているというのがちょっと気に
くわない位だろうか。
感じ易すぎてちょっとした事にも過敏に反応するのにも、喘いでいる
様もある意味可愛らしいと思う。苛めたときの涙目も、ねだるときの
甘い声も好ましいと思う。
思い出した先生の声と共に、先程までの甘い記憶が体の奥で疼く。
それを払うように、僕は縁なしの眼鏡をかけ直すと、パンツの後ろ
ポケットに入っていた携帯を取り出し画面を開く。最新のメール受信は、
先生の「抱いて欲しい」メールなのでそれを消去し、ついでに着信履歴も消す。

<> 雨宿り3<>sage<>2006/03/12(日) 21:57:24 ID:c5xJtlXQ<> しかし、肉体関係がある以外は只の先生と生徒、というのは何処か
つまらない。確かにこちらも盛りたい年頃なのだれども、それでも余り
にもドライだというか。こちらが例えどう思おうとも、彼にとっての
僕は肉体のある玩具でしかない。
こういう関係はあまりに不毛すぎて、雑草や木々が生えても即座に
朽ちてゆきそうだ。いい加減止めるべきなのだろうが、止める直接的な
きっかけがない事と、何処か名残惜しく感じてしまう僕自身の気持ちが
あって、ずるずると続いていた。


僕はバイトの時以外は結構学校に居残りするのが好きで、用が
無くても長い時間教室に居る事が多い。友人も学校にあまり居ないので、
特に訝しがられる事もなく毎日遅くまで残っている。
夕暮が過ぎる頃になると、先生が校庭の隅や出入り口の門近くで、
時々携帯の画面を見ているのに遭遇する事がある。最も、そのまま
声を掛けるとすぐに携帯を仕舞われてしまうので、そういう様を
隠れ見るだけだが。
携帯電話を見ているときの先生は、常にない表情をしている。とても
辛そうな、それでいて嬉しそうな、一言では表現できない顔付き。
多分そういう表情を向けるのは、携帯電話の相手だけなのだろう。
一度、好きな人が居るんですかと聞いてみた事がある。勿論、
ちゃんと答えてくれる事など期待していなかった。だが先生は、
数秒沈黙した後
「遠くに、大事な人が居るんだ」
と答えてくれた。
それ以上の事は誤魔化されてしまって上手く聞き出せなかった
<> 雨宿り4<>sage<>2006/03/12(日) 21:59:25 ID:c5xJtlXQ<> けれども、その時の先生の穏やかな表情は、僕の胸に焼き付いて
しまった。その時までは先生のことを、単なるセフレとしか
見ていなかったのだけれども、それからは、先生のことを考えると
心の奥がちくちくと痛むようになった。

そういえば、肉体を重ねる行為の際、彼は時たま人の名前を呟く
事がある。無意識のせいだろう、発音が不明瞭すぎるのと、単音の
ような音しか発さない所為で、殆ど意味のある音の繋がりをなさない。
多分身代わりにされていると云うことなのだが、それにも腹が
立たない辺り、自分はよほどこの人に対して関心がないか、それとも
受容してしまっているのだろうかと思う。
そして、お誘いのメールが来たら断らずに体を重ねてしまう。
僕もどれだけ馬鹿なのだろう。正直、笑ってしまう。

翌日、教室にて鬱陶しい雨模様の空を見上げていたら、日が暮れたら
保健室で会おう、というメールが来た。
それを、いつものように素早く消去すると、僕は一つ溜息を付いた。
……そして。


保健室で先生と逢瀬を交している間も、別れた後も、雨は止む様子を
見せない。
天気予報では今日一日雨が降り続くと云う事だっだ。
僕は昨日も今日もニュースを見たから、傘を持ってきている。今日の
雨は結構勢いが強い。太い針のような雨が、コンクリートを打ち付け
水滴を弾かせる。
雨を少しでも回避しようと、僕は少しだけ遠回りである商店街を通る
道を歩いた。この商店街は寂れていて、夜になると殆どの店が閉まって
しまう。薄暗くて見るからに胡散臭い半面、人と逢わず今のように雨に
濡れず歩くには最適な所だった。 <> 雨宿り5<>sage<>2006/03/12(日) 22:03:27 ID:c5xJtlXQ<>
畳んだ傘を杖のようにつきながら、一見廃墟のような商店街を抜けて
少し歩いた所には、コンビニがある。元々入り組んだ住宅街の中に
位置するという、立地条件の悪さ故余り客が入っていなかったのだが、
今見てみるとシャッターが閉まっている。
コンビニが閉っている、といえば理由は一つしかない。
とうとう潰れたかと感慨深げに思った所で、その前に立ちすくんで
いる姿に気が付いた。人が居るとは思わなかった僕は、咄嗟に身を
隠してしまう。

物陰から、そっと覗き込むとそれは先生だった。
携帯電話を握りしめて、先生が泣いている。
唇を噛みしめて下方に視線を落とす先生の目を、髪が隠す。何故か傘を
持っている様子はなく、軒下にいるのに体はほぼずぶ濡れになっている。
多分、傘は何処かに置いてきたか捨てたかしたのだろう。先生、学校に
行くときはさすがに傘くらい差していただろうし。
折りたたみ式の携帯電話は開かれて、雫のしたたる手に握られている。
ああいう事をすると壊れやすいという事は先生も知っているだろうに。
もしかして、そんな事にかまう余裕がないのだろうか。
耳を澄ませていると、何か低い音が生じた。
「私は…信じていました。貴方が、戻ってきくれると…」
途方に暮れたような調子で、先生が言葉を発している。何もかも無くして
しまった時のように、雨に打たれた姿は弱々しかった。
「……結局は、私は……」
貴方の飾り、でしかなかったのですね。
音では聞えなかった。だが、雨の中、その台詞は僕に不思議と
はっきり感じられた。
ずぶ濡れの先生は、教壇に立っている姿とも抱かれているときとも、
そのどれもと同一人物だとは思えなかった。掴むものがあれば
何にでも縋り付くだろう、迷い子のような顔をして、先生は
雨を茫然と見つめていた。
<> 雨宿り6<>sage<>2006/03/12(日) 22:09:35 ID:c5xJtlXQ<> その光景を見た瞬間、僕は彼への怒りに駆られた。
全く。携帯電話握りしめて涙を堪えるなんて愁傷、貴方には似合い
ませんよ。
誰かの同情なんか欲しくないから、それでも寂しくて耐えきれない
から、貴方は人の体を心の代わりに求めているんでしょう?
学校での評判なんかよりも、自分の心の穴を満たす方が大事だから
生徒を誘いまくって遣りまくっているんでしょう、貴方。
自分自身の為に生徒を平然と喰っている貴方が、何て顔しているん
ですか。
相手の衣服を改めて見る。それなりに高いスーツだろうに、雨でじっとり
と濡れてしまい、色が変わっている。はっきり言って酷い様子だ。
前に家は学校から遠くないと聞いた覚えがあるが、あのまま
家に帰ると、帰宅した頃には体が冷え切ってしまうだろう。


決めた。僕の家はここからだったらそう遠くはないから、
濡れても、今の先生以上には絶対濡れないから。
この傘とハンカチを差し出して、ああ、ちょっとだけ戻って暖かい
コーヒーも買ってこよう。で、それを握らせたら逃げる。
そうしよう。僕と先生、どちらにとってもこの行為に、変に考える
時間なんか遣らなければ良いだけの事だ。
元々、考えるような関係なんか、先生は僕に望んではいないし。
僕だって、望んでは、いけないのだろうから。
そう思い定めると、僕は雨の様子を伺ってから、傘を開き直して
歩き始めた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/12(日) 22:19:04 ID:D/rXtP2G<> >>506
リアルで遭遇・・・あまりに萌えすぎてうろたえた(´д`*) <> 昼の男夜の男<>sage<>2006/03/12(日) 23:26:48 ID:mNa6Otbo<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

小ネタ。アカキ"とナンコ"ウさん。>>493-494続き。


アカキ"は横に置いたビニル袋を引き寄せてがさがさと缶ビールを取り出し栓を開けた。音を忍ばせ
ようとはしないが、わざと大きな音を立てることもなかった。
眠りが浅くなったときに電灯の眩しさを感じてナンコ"ウが目を覚ますかと期待していたのだが。
ナンコ"ウはあいかわらず気持ちよさそうに寝ている。一日の仕事の疲れを洗い落とした石鹸の香りがす
る。
…入り込めねぇなぁ、とアカキ"はひとりごちる。

<> 昼の男夜の男<>sage<>2006/03/12(日) 23:28:57 ID:mNa6Otbo<> 沼田玩具で工員として働いていて、ナンコ"ウが訪ねてきたあのとき。
道の先に待っていた黒服に、ああ、やっぱりねと思った。だが、落胆はしなかった。
愛想良く近づいてくる人間は、必ず腹に一物を抱えているものばかりだった。
自分の博才を目当てに利用しようとするやつらばかりで、いまさらそんなことはなんとも思わなか
った。
安岡の連れてきた偽者の才能に本気で感心したり、4シャンテンとなる牌を引く勝負で真剣に心配
したり、とそんなところは昔と変わらない、あいかわらず人が好いなナンコ"ウさんは、とアカキ"は感じ
た。
後から、ナンコ"ウが金儲け、自分を利用した企みに一枚かんでるわけじゃないと知った。湧いてきた嬉
しさは意外なほど大きくて、アカキ"は自分の感情に驚いた。些細なことだった。大きな喜びではな
い。だが、6年間の過酷な生は、確実に自分の中のある感情を殺していたらしい。
いい気分で月を眺めた。料亭の廊下の端に腰掛け、冴えた月が美しかった。
美味いものを喰った後のように何度も反芻した。
それから、ふと思った。
(俺はナンコ"ウさん以外の人が来たら会おうとしたかな。)
つらつらと考えてみたが、やはりナンコ"ウしか思い当たらなかった。ヤクザだったらつっぱねる。それ
以外の人間とは、わざわざ仕事場に訪ねてくるほどのつきあいなど持たなかった。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
チュウトハ(ry <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 00:45:05 ID:UrDUa2xI<> >>496
ありがとうっありがとうっ!!
青赤イイヨ青赤

素敵なプレシャヌありがとう!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 01:12:11 ID:jfqGjU+B<> >>509
続き楽しみにしてます(*´Д`
二人とも可愛いよー!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 02:34:24 ID:0IzcLI+O<> >>509
my神の続きキテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!
懐きぶりがイイー、hagemoe!楽しみにしてます! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 06:33:50 ID:inaFL1nB<> >>506
朝から萌えた!ありがとう。
続き、楽しみにしてます! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 10:25:18 ID:vuZnWQ1Z<> >>496
ヤバい、萌えた、禿萌えた
青赤ハマりそうな予感 <> 橋掛かり 1<>sage<>2006/03/13(月) 17:49:57 ID:mJr5g3/b<> 「では世阿弥よ。来月の薪能は、新作をかけるように。しかと申し付けたぞ」

「ハハッ」

上機嫌で申し渡す室町幕府の将軍足利義満に平伏しながら、世阿弥は目の隅で、同席の侍達を窺った。
いつも上様の傍らに控えている長年の友人は、ついぞ姿を見せない。

そして世阿弥は、金閣寺で彼に会うことはなかった。


◇◇◇


<> 橋掛かり 2<>sage<>2006/03/13(月) 17:52:20 ID:mJr5g3/b<> 出会いは、翠色した風の中だった。

清々しい皐月の風は、少年の心を騒がせる。
爽やかだが、何かをせずにはいられない冒険を唆す誘惑的な風。

風が心地よかったから、というのもあっただろう。
初めて訪れた館だから、というのも。

だが、一番おおきな理由は、大人ばかりで退屈していたということだっただろう。

昼間から宴で盛り上がっている大人達の目を盗んで、藤若はこっそり宴席を抜け出した。


申楽の名人、観阿弥・鬼夜叉丸の親子が、将軍足利義満の目に留まり寵を得たのは、鬼夜叉丸が十二の時だった。

名を藤若と改め、以来、有力武将や公達が、将軍の歓心を買うかのごとく、争うように彼らを屋敷に招き、舞を舞わせる。

その日は、義満の養父、伊勢貞継の屋敷に招かれていた。
今夕には、伊勢家の庭にしつらえた舞台の上で舞うのである。

屋内をうろつくには気が咎め、藤若は庭に出た。
<> 橋掛かり 3<>sage<>2006/03/13(月) 17:57:32 ID:mJr5g3/b<> ふらりふらり歩いていると、遠くで子供のはしゃぐ声を聞いたような気がした。
つられて邸の裏山に回る。

不意に、視界の端に黒い影が過ぎった。

思わず足を止め、山の樹々を透かし見る。
が、これと言って変わったことはないようだ。
首を捻って、木々の間につけられた道を歩き出す。

やはり、遠くに子供達がいるようだ。
なにやら歓声が聞こえる。

「危ない!!」

不意に声がしたかと思うや、黒い影が藤若の目の前に降ってきて、水干の袖を引っ掴む。

「何奴じゃ!」

声を荒げて睨付ければ、藤若と大して変わらぬ年の頃の少年がいた。

お世辞にも美童とは言い難いが、それなりに整った顔立ちに勝ち気な瞳が印象的だ。
からげた袖から伸びる日焼けした腕は、擦傷痕やら青痣、瘡蓋などが花盛りで、かなりの腕白小僧と窺えた。

<> 橋掛かり 4<>sage<>2006/03/13(月) 18:00:16 ID:mJr5g3/b<> 彼は手に提げた木刀をつっと上げ、道の先を指した。

「この先に、落とし穴が掘ってある。フラフラしてると、落っこちるぞ」

藤若を返り見て、ニッと笑う。

「こっちだ! こっちに、いたぞーっ!!」

出し抜けに背後から、声が掛かった。

驚いて振り向けば、眼前の少年と似たような年格好らしき子供達が三、四人、駆け寄って来るのが見えた。

「稚児殿、帰られよ。巻添え食ってケガ召さるぞ」

藤若に言い掛けると、大きく息を吸い、

「俺はこっちだァ!! とっとと来られよ!!」

大音声で呼ばわった。

挑発に乗って、子供たちが突進してくる。

先頭きって走って来る少年との頃合を見計らい、彼は木刀を手にしたまま、くるりと背を向け、落とし穴があると言った方へ走り出した。

(何じゃ、落とし穴があると言うは、偽りか…)
<> 橋掛かり 5<>sage<>2006/03/13(月) 18:02:32 ID:mJr5g3/b<> 藤若は騙られたかとムッとしながらも、なんだか目が離せず、道の脇に避け、事の成り行きを眺めていた。

追う少年の木刀の先が触れそうになるや、彼は木刀を口にくわえ、手近な枝に飛び付く。
追いかける方は、すぐには止まれず、たたらを踏みかけて……。

「ウギャーーァッ!!」

続く子供達も止まりきれず、次々と穴にはまる。

枝にぶら下がった彼の少年は、片手を離して木刀を腰に挟み、もう一度両手で枝を掴み直すと、くるりと逆上がりして枝の上に腰掛けた。
呆然と見ている藤若に気付いたらしく、ニッと笑って片手を上げる。

(天狗だ…)

いや、まだ小天狗か。

立ち尽くす藤若の袖を吹き返し、一陣の疾風が、緑の中を駆け抜けて行った。

<> 橋掛かり 6<><>2006/03/13(月) 18:06:35 ID:mJr5g3/b<> あれほどうるさかった蝉の声も熊蝉から法師蝉へと移り、埃っぽい巷を照りつけるだけだった陽射しも、どこか澄んできた。

久々の上洛だが、この町の賑わいは変わることがないようだ。
人馬が行き交う表通り。騒々しいほどの物売り声や呼び込み声。
与太者達の喧嘩さえも、賑わいに花を添えている。

人波を軽やかに躱しながら、薄縹色の狩衣を纏った小柄な男が足早に歩く。
年の頃は二十代半ばか、もう少し上か。少なくとも、三十路には入っておるまい。
「白き顔容は花の如く」とは、かような風情を云うのだろう。
道行く者達が、一見男とも女ともつかぬ、この狩衣姿に振り返る。

彼こそが、当代一と謳われた申楽師、世阿弥元清であった。

世阿弥は喧噪を逃れ、人影見えぬ細い路地に入った。
少し歩んで、つと立ち止まり、狩衣の袖をかざして道の先を見遣る。

白い築地の続く先を塞ぐかのように、やはり白い築地がのぞいていた。
さやさやと見越しの群竹が鳴る。
梢を渡り葉末を抜けて、些かの涼を含んだ風が、薄縹の袖を揺らす。

世阿弥の臈長けた面に、柔らかな微笑が浮かんだ。

築地の向こうは、寺社奉行所だった。

<> 橋掛かり 7<>sage<>2006/03/13(月) 18:11:05 ID:mJr5g3/b<> 申楽田楽など芸能は、寺社の境内での興業が常であった。
昨今、公家や武将達の庇護を得て、その館で演ずることも増えたが、やはり寺社での興業が主である。
それゆえ芸人たちは興業の際、興業主たる寺社の目付役でもある寺社奉行所に、興業主を通じて、もしくは座頭(ざがしら)自身が、興業許可を願い出る。

将軍足利義満の庇護を受ける世阿弥もそれは変わらない。
違うところがあるとすれば、待遇の良さだろう。

奉行所を訪れた世阿弥は、奉行の応接室「松の間」に通された。
明るい庭とは裏腹に仄かに暗い室内の窓は開け放たれて、幾重もの細波つくる法師蝉の声に満ちている。

「やあ、これは世阿弥どの、よう参られた。久しゅうござるな。
息災のようで、何よりでござる」

襖が開き、健康そうな快活な声とともに、見るからに筋骨逞しい若い奉行が颯爽と入って来た。

<> 橋掛かり 8<>sage<>2006/03/13(月) 18:13:23 ID:mJr5g3/b<> 次に小天狗を見たのは、それから一年近く経ってからのことであった。

満開の花の下で行われた将軍主催の観能会終了後、上様が、花の御所に設けた一席でのことである。

当日の演目の一つ『鞍馬天狗』に因み、招かれたのは近習達の、元服前の子弟ばかり数十人ほどだった。

義満は帝王然とした笑みを浮かべ、傍らに控える藤若にこう宣うた。

「今は見てのとおりの小姓たちだが、ゆくゆくは父兄同様、余に仕え幕府を守りゆく、頼みある者たちよ。
そなた達、くれぐれも頼んだぞ」

上様の一声に、少年たちは一斉に平伏した。

幕府を支える底力は、この一糸乱れぬ結束にあるのかと、藤若は己とさほど違わぬ年格好の少年たちに驚きの目を向けたのを覚えている。

そして彼の小天狗は、その近習予備軍の一人だった。
はるか後ろの隅に控えているところからして、最前列に並ぶ四職や管領の子弟ではない、その他大勢の一人にすぎないことを示していた。

「こうして見ておると、余が鞍馬の大天狗になったようじゃ。花見に興ずる稚児たちの座に乱入する不届きな山伏にして、兵法指南の鞍馬の大天狗」

相好を崩して「どうだ」と問われ、藤若は素直に頷いた。似たようなことを考えていたのだ。

<> 橋掛かり 9<>sage<>2006/03/13(月) 18:16:37 ID:mJr5g3/b<> さすれば牛若は―――」

「それがしが、なりとう存じます」
甲高い声で上様を遮ったのは、管領の子息だった。

「上様が大天狗さまならば、それがしが牛若丸になりとう存じます。お慕い申し上げる方に、兵法までお教えいただけるとは望外の喜びです」

一人が言えば、我も我もと身を乗り出して、少年達は大真面目な顔で牛若丸を志願する。

その様子に義満は上機嫌になっていたが、最後列の隅で独り退屈そうな小天狗に目を止めるや、急に意地悪げな微笑を湛えて彼の名を呼んだ。

まさか自分が呼ばれようとは、夢だに思わなかったらしく、鳩のようにキョトンとしてパチパチと目瞬きする。

「そちは、何になりたい? そちも牛若か?」

軽口を叩くような上様のくだけた物言いは、彼らが旧知の間柄であることを示唆していた。

<> 橋掛かり 10<>sage<>2006/03/13(月) 18:24:23 ID:mJr5g3/b<> 「え…? あ…と、も…もしも上様が大天狗様でありますなら…。それがしは、大天狗に率いられます小天狗の一人になりとう存じます」

「ほう…。牛若に散々にやられる木っ端天狗か…。つまらない奴よのう」
あからさまな義満のいけずに、小姓衆の間からも失笑が洩れる。

小天狗少年の双眸が、キラリと光った。

「しかし、それがしが小天狗なれば、牛若どのであろうと、一太刀も二太刀も、いえ、返り討ちにさへ、してみせます」

大人びた勝ち気な笑みを浮かべて、少年は義満をじっと見詰める。しばしの睨み合いの後、

ナーッハッハッハッ…。

不意に義満が豪快に笑い出した。
「よくぞ申した。末頼もしいのう。期待しておるぞ」

もう一度平伏した少年は、小天狗と称するに相応しいほど、誇らしげな笑顔だった。
<> 橋掛かり 11<>sage<>2006/03/13(月) 18:27:41 ID:mJr5g3/b<> 「蜷川様も、お元気そうで安心いたしました」

世阿弥は下げた頭を起こすと、目を細め、心底嬉し楽しそうに微笑んだ。

今を時めく申楽師、世阿弥元清と、小柄な世阿弥から見れば一回りも大きな体躯に、美貌ではないが凛々しさと愛嬌に溢れた彫りの深い顔立ちで、風雅とは縁遠そうな武骨者の寺社奉行、蜷川新右ヱ門。

外見から立場まで、全てが正反対の二人だが、付き合いは長い。

茶菓を運ぶ若侍が下がると、新右ヱ門は心持ち体を屈め、辺りを憚るようにぼそぼそと尋ねた。

「…もう金閣寺へは…?」

「ええ。先ほど、こちらに参ります前に」

茶碗を手にしたまま世阿弥は軽い口調で答えたが、ふと思い出したように付け加えた。

「上様はお変わりなくお元気で、お顔の色艶もよろしゅうございました」

「…そう…、それは尚のこと上々ですな…」

先刻までの明朗さはどこへやら、伏し目がちに、それでも唇に微笑を乗せて呟くと、窓の外へ目をやった。
遠い眼差しをする横顔を、黙って眺めていた世阿弥だが、言いようのない切なさに、つと、干した茶碗を床に置く。

その小さな音に新右ヱ門はハッと我に返り、慌てて視線を戻した。
<> 橋掛かり 12<>sage<>2006/03/13(月) 18:29:46 ID:mJr5g3/b<> 「しかし、驚きました。蜷川様がお出入り禁止になられていたとは」

世阿弥が金閣寺に赴いたのは、もちろん上様に上洛の挨拶のためであったが、この実直な旧友との再会も期待していたのである。
なにしろ傍迷惑な上様の呼び出しで、寺社奉行でありながら、当の奉行所よりも金閣寺にいる時間の方が長い御仁だ。

ところがその日は、彼の姿が見えない。長い拝謁が済み、お暇する段になってもである。

職務が忙しいのかもしれないと軽く考え、見送りに出た奉行に訊いてみれば、何と上様を怒らせて出入り禁止を言い渡されたというではないか。

なんでも、頓知小坊主で名高い一休との頓知問答に、過ぎるほど熱を上げる上様を諌め、問答中は、一休の肩ばかり持った為だという。

要するに新右ヱ門の行動が、上様には反抗的と思われたらしい。

そして奉行たちは説明した後、世阿弥に仲立ちになってくれるよう、泣きつく始末であった。

「致し方ありませんな。手討ちにならなかっただけでもマシというものでござろう」

茶碗を片手に寺社奉行の蜷川新右ヱ門は明るく笑う。
空元気なのかもしれないが、その屈託のない笑顔に、世阿弥は溜息をついた。

「それに、大きな声では申せませんが、お陰で執務ははかどるし、暇ができれば安国寺へ遊びにも参れるしと、良いことづくめでござるよ」
プククと、新右ヱ門は悪戯っぽく笑う。
<> 橋掛かり 13<>sage<>2006/03/13(月) 18:32:41 ID:mJr5g3/b<> 世阿弥はほとほと呆れ果て、冷めた視線を送った。

「だから上様に恨まれるのですよ」

何のことはない、三角関係の縺れによる痴話喧嘩ではないか。しかも始末の悪いことに、頂点の当事者に自覚がない。
今も眼前で不思議そうに首を傾げている。

(上様も気の毒に…)

「そういえば、当代の寺社奉行様は、安国寺の小坊主さんに、えらく御執心だとか。
奉行衆が噂しておいででしたなぁ。
お寺でのお遊びは、専らお稚児遊びですか?」

あからさまな世阿弥の皮肉に、新右ヱ門はムッと口をへの字に曲げた。

「ご冗談を。私は、一休さんの弟子志望なんですよ。師匠に対してそんなこと…。
第一、私には稚児趣味などはござらん。
それに相手は、十やそこらの子供ですぞ。そんな年端もいかぬ子供相手に…」

言うなり、腹立たしげに茶碗を干す。

「ですが、私が初めて上様の伽を勤めたのは、十二の時でございましたよ」

思い切り咳き込む新右ヱ門に、世阿弥は婉然と哂う。

「蜷川様も、確か元服前だったと記憶しておりますが」

一瞬にして、新右ヱ門は耳まで真っ赤になった。

<> 橋掛かり 14<>sage<>2006/03/13(月) 18:34:42 ID:mJr5g3/b<> 「わ、忘れましたよ、そんな昔のことなんて。
いいですか、一休さんは御仏に仕えている身なんです。
そんな方に俗界の生臭事など…」

狼狽えながらも、なんとか反論を試みる新右ヱ門の汗まみれの顔を、世阿弥は身を乗り出してまじまじと見た。
気圧されて新右ヱ門は、かすかに上体を引く。

「蜷川様…。本当に、寺社奉行でおいでですか?」
「ななな何を…!」
「斯様な習いは、お寺の方が盛んなのでございますよ。
そういえば蜷川様は、行儀見習いはお寺でなさらなかったとか。御存知ないのも無理からぬかもしれませんね」

くすくす笑う世阿弥の様子に、新右ヱ門はようやく、揶揄(からか)われていることに気が付く。

「世阿弥どのも、お人が悪うござるなぁ」
「蜷川様が、鈍うておいでだからですよ」

怪訝な顔をする新右ヱ門に、世阿弥は微苦笑を浮かべて見せるだけにした。
<> 橋掛かり 15<>sage<>2006/03/13(月) 18:36:44 ID:mJr5g3/b<> 「それより蜷川様、一つお訊きしても良ろしゅうございますか?」
「何でござる?」
すっかり拗ねて素っ気ない返事に、世阿弥は再び微苦笑を浮かべた。

「もし、幕府がどこぞと戦になりましたら、蜷川様は、いかがなさいますか?」

新右ヱ門の顔色が一変した。固く張り詰めた顔で、声を落とす。

「巡ったどこぞの国で、変事がありそうだとか?」

「いえいえ。そうではござりませぬ。ふと、気にのうたに過ぎませぬ」

生真面目な新右ヱ門の反応に、世阿弥は慌てて否定したが、新右ヱ門には承知できぬらしく、何度もくどいほどに問い詰める。
根負けしたように、世阿弥は口を開いた。

「本当に、例えばの話にござります。蜷川様は一休殿のお弟子になられたいとか。
ですが、上様にお仕えしておいでの身でもござります。もし、今、戦が起こりましたならば、どうなさいます?
上様に従って兵を挙げ戦に出られるか、一休殿と共に寺で読経三昧の日を暮らされるか」

途端に新右ヱ門は鼻先で笑った。そして、穏やかな眼差しで諭すように話す。

<> 橋掛かり 16<>sage<>2006/03/13(月) 18:38:54 ID:mJr5g3/b<> 「知れたことでござる。
もしも私が頭を丸め、仏門に入っていたならば読経三昧もござろうが、未だ俗人の身。
仕え申す方は上様にござる。一休さんとて、小坊主の身で弟子など取れますまいし」

「上様に疎んぜられておいででも?」

はっと目を瞠る新右ヱ門の赤銅色した顔に、サッと影が落ちる。

それから舒ろに面を伏せた。
「親子の縁は、一世の縁。妹背の縁は、二世の縁。師弟の縁は、三世の縁と聞きます。
この世ならぬ者たちを多く演ぜられる世阿弥どの故、お尋ねしたい。主従の縁は、何世の縁にござろうか?」
「……」
「蜷川は、上様に重代の御恩がありますれば」
「恩のみゆえと仰有るか」
「疎まれし身に、何がござろう」
皮肉っぽく唇を歪める。

「疎みし人を、恨めしとは思いませぬか? 憎しとは思いませぬか?」
急き込む世阿弥とは反対に、新右ヱ門は頬笑んですらいた。

「恨めしきは人ではござらん。
人を憎んで、いかがします。恨むべきは、心でござる。
己の思いを裏切り騒がし波立てる、己の心にござらぬか?」

世阿弥は押し黙った。

新右ヱ門もまた何も言わない。

沈黙の中、部屋を満たす蝉の声は、いつしか蜩の声に替わっていた。 <> 橋掛かり 17<>sage<>2006/03/13(月) 18:42:48 ID:mJr5g3/b<> 『鞍馬天狗』に因んだ宴から、半年も経たぬうちでのことであった。


人皆眠る真夜中、上様の寝所で突然上がった絹を裂くような甲高い悲鳴。

声は、翌日の御前興業に備え、観阿弥・藤若親子が泊まり込んだ「花の御所」の離れ間にも聞こえた。

すわ一大事かと、親子も押取り刀で駆け付ければ、既に出入口の襖の前は、近習達で溢れかえっていた。

藤若は小さな体を活かして人垣の隙間をくぐり抜け、最前を覗く。
管領が襖の取っ手に手を掛けて、何やら中の上様と問答しているのが見えた。

「上様、何があったのです? 開けますぞ」
「だから、何もないと言うておろうが。開けるでない」
「では、先刻の悲鳴は何です? どうされたのです?」
「何でもない。ちょっ、ちょっと夢見が悪うての…」
「しかし、あれは上様のお声ではありませなんだが。よもや、賊が忍び込んだのではありますな?」

「ち、違う違う!!」

<> 橋掛かり 18<>sage<>2006/03/13(月) 18:46:45 ID:mJr5g3/b<> 切羽詰まった上様の返答に、管領と近習たちの顔が引き締まった。
堅い面持ちで刀を抜き、銘々構える。

互いに顔を見合わせ頷き合うと、
「上様、御免!!」
叫びざま管領が襖を開けた。

と、あまりの光景に、刀を構えた最前列の面々は、呆っ気にとられ、あんぐりと輪っぱ口を開ける。
刀を取り落とした者さえいた。

すぐさま管領は慌てて襖を閉めたが、一瞬とはいえ、はっきりと見えてしまったものは消しようがない。

床の中で膝立ちになって寝間着の前を掻き合わせる青年将軍の下に、一糸も纏わぬ少年が力なく俯伏せに横たわっていた。
この騒ぎにもピクリとも動かないところを見ると、失神しているのかもしれない。
こちらに向けた、目を閉じた上気した顔には覚えがあった。いつぞやの小天狗ではないか。

「この大馬鹿者ーっ!!」

襖の向こうから、上様が怒鳴った。

事情の分からぬ後方の人達を促して、ぞろぞろと大人たちが引き上げて行く。

藤若も続こうとしたとき、
「藤若丸」
上様が襖越しに呼び止めた。
<> 橋掛かり 18<>sage<>2006/03/13(月) 18:49:46 ID:mJr5g3/b<> 藤若が立ち止まると、管領も思うところがあるのか立ち止まり、二人で襖の前に近寄った。

来よと命ぜられ、藤若は管領に一礼して、そっと襖を開けて中に入る。

少年は相変わらず意識がないようだったが、寝間着に袖を通して仰向けに寝かされていた。
どうやら上様お一人で、悪戦苦闘して着せたらしい。

「おぉ藤若丸、よう来てくれた。この者の世話を頼む」
上様は明らかにホッとして言った。

少年の傍らに端座した藤若は懐紙を取り出すと、慣れた手付きで体を拭い、前を合わせ、帯を付ける。

「見事な手際よのう」
てきぱきとこなしてゆく藤若に、義満が感嘆の声を上げる。
「それに引き換え、此奴のだらしのないことよ。嘆かわしい」

義満の罵りに藤若は、少年の額の汗を拭く手を止め、将軍を仰ぎ見た。

「上様。この方、夜伽は初めてではござりませぬか?」

「そうじゃ」
それがどうしたとでも言いたげに、義満は不機嫌な顔をしている。

藤若は、わざとらしく大きな溜息をついた。
「お可哀相に。睦事のいかなることも知らず、いきなりコトに及ばれては、声の一つも上げましょうぞ」

「何を言う。余はどの小姓とも、同様にしておるぞ。だが、斯様な恥さらしな真似をしたは、此奴だけぞ」

<> 橋掛かり 19<>sage<>2006/03/13(月) 18:53:50 ID:mJr5g3/b<> 憤然とする義満に、藤若はにっこり微笑んだ。
まだ元服前だというのに大人びて、息を呑むほど艶っぽい。目の端で見上げる目射しが挑発的だ。

「上様。大抵のお小姓さま達は、御所に上がられる前に、お寺で行儀作法を身に付けられるものでございますよ。
斯様な作法も含めて」

「なるほど。そうであったか。
確かに此奴は、寺には上がっておらなんだが…。するとなにか、此奴は……」

義満は絶句する。

少年の額や頬に張り付く髪の毛を掻き上げながら、藤若はコクリと頷いた。

「女子で申せば、殿御を知らぬ生(き)未通女(むすめ)というところ。優しゅう致しませねば、怯えるのは必定」
「そうか。余が、此奴の初めてということか」

ゴクリと喉を鳴らし、感慨深げに義満は呟く。その口許が、心なしか緩んでいる。
仏頂面で、再び花若は頷いた。

「ゆるゆる馴らして差し上げねば、できるものではございませぬ」

<> 橋掛かり 20<>sage<>2006/03/13(月) 18:56:10 ID:mJr5g3/b<> 藤若は本気で腹を立てていた。出会いの印象が鮮烈だったがだけに、湯に浸けた青菜の如くくたりと伏す姿が痛々しい。
やはり彼の小天狗どのは、勝ち気な瞳で陽気に笑っていなければ―――!

だが義満に、そんな思いはとんと通じない。

「そうかそうか。ゆるゆる馴らさねばならぬか、ゆるゆると、優しゅうのう…」
にやけ声で上機嫌に呟く。
藤若はギョッとした。自分の諌言が、小天狗どのに、とんだ災難を招いたらしい。

(小天狗どの、申し訳ありませぬ)

唇を噛み締め、藤若は胸の内で詫びていた。


それ以降、御所の中で何度となく見かけた小天狗の姿だが、口を聞く機会には、ついぞ恵まれなかった。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:00:00 ID:nyX4pTOE<> >>533
力作なんだろうとは思うんだけど、>>1-7読んでほしかった。
それと、改行減らして欲しかった…

スレ立て嵐対策に、801板にもBEと、連投規制120秒が導入されたので、
ネタ投稿したい姐さんは、自治スレ72や、スレ立て質問スレ278,298を
読んで、BEのID取ることをおすすめ。
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1140242784/72
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1139497404/278
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1139497404/298
<> 橋掛かり 21<>sage<>2006/03/13(月) 19:00:40 ID:mJr5g3/b<> 数年後、藤若は元服を済ませ、名を世阿弥元清と改めた。
父観阿弥が亡くなると、跡を継いで観世大夫を称し、一座を率いるようになったが、義満との交渉は変わらなかった。

ある年、睦月の真夜中のことであった。

ふと目を覚ました世阿弥は、そのまま寝付かれず、そっと臥所から起き上がった。

隣を見れば、上様は、腕枕を伸べたまま白河夜船。腕が軽くなったことにも気付かぬのだろう。

起こしては悪かろうと、世阿弥は音も立てず臥所から抜け出す。
夜の冷え込みは思ったより厳しく、着込んだ寝間着の上に綿入りの小袖を羽織った。
上様の体を冷さぬよう布団を掛け直し、足音を忍ばせて部屋を出る。

今が盛りの梅の香が、立ち込めていた。

寝所は北向きなため月影は射さないが、回廊を曲がれば、青白く透き通った澄んだ月の光が、廊下にも庭にも溢れている。
見慣れたはずの廊下であり庭なのに、見知らぬ異界に足を踏み入れたような奇妙な戸惑い。

幽玄―――

世阿弥は足を止め、息を飲んだ。

(そうだ。この廊下は、橋ガカリに似ている―――)

それからまた、そろりと歩き出した。

<> 橋掛かり 21<>sage<>2006/03/13(月) 19:03:57 ID:mJr5g3/b<> 能舞台と、客席から見えない鏡の間を結ぶ橋ガカリ。
能の幽霊たちは、橋ガカリを渡って能舞台に現れ、能舞台から去って行く。
橋ガカリは、単に二つの場だけでなく、演目上のあの世とこの世、異界と現世をも結んでいる。

(いや、橋ガカリそのものかもしれない)

そして、こんな夜更けに長い橋ガカリを渡る自分は、異界へ帰って行く異形の者なのか……。

冴えかえった月が支配する、静寂で冷たい夜気の中、役者にして脚本家の感性が、普段と違う光景に、妄想の脚を広げていく。

庭の梅の香に誘われて、そろりそろりと廊下を渡り行く足が、ギョッと止まった。

皎々たる月の光に照らされて、夜目にも白く浮かび上がる梅の花を纏うように、一つの影が佇んでいる。
異界の者かと思った一瞬後、後ろ姿ではあったが、直感的に『彼』だと分かった。

「小天狗どの……」

気が付けば、呼んでいた。
呼んでから、気が付いた。
小天狗とは、世阿弥が勝手に、胸の内で呼んでいた名に過ぎない。

<> 橋掛かり 22<>sage<>2006/03/13(月) 19:06:56 ID:mJr5g3/b<> 呼ばれた方は、怪訝な面持ちで振り返り首を傾げる。
「世阿弥どの……? いかがしました? 上様はまだ、お休みでは……」
男らしい落ち着いた声が、世阿弥の耳を零れていく。 

廊下の手摺に手を掛けたまま、無言で立ち尽くす世阿弥の様子に不審を抱いたか、彼は訝りながら近寄って来た。

「世阿弥どの、いかがしました?」

気遣うように優しく声を掛けられ、世阿弥は小さく笑って首を振った。

「いえ……。その……、月が見とうて参りました」

世阿弥の返答に、彼は笑顔になって頷いた。

「こ……、御武家様こそ、どうしてこちらに?」

途端に彼は、悪戯坊主の顔になってニッと笑った。誇らしげに片手を上げた少年の面影が、世阿弥の脳裏を過ぎる。
あのまま大人になっただけのような笑みに、場違いにも吹き出しそうになった。

「ハハハ…。
拙者も、月を見に参ったでござる。
いや、梅と言ってきたかな。
宿直の間は、窮屈で敵いませんからなぁ」

どうやら小天狗どのは、口実を設けて宿直の間から抜け出して来たらしい。

<> 橋掛かり 23<>sage<>2006/03/13(月) 19:08:59 ID:mJr5g3/b<> どちらともなく、庭へ降りる階段へと歩き出し、階の中程に腰を下ろした。
やはり辺りは静寂に包まれている。

果てしないしじまの中、彼はぽつりと言った。

「この間の『葵の上』、拝見したでござる」

はっと世阿弥は顔を上げ彼を見たが、彼は前を向いたままだった。

「切ない能にござるな……」

「能は、どれも切のうござります。
掛かっている間は、人も幽霊も精霊も、舞台の上で生きております。
生きるというは、切ないもの。
生きるを演ずれば、切ないものになりまする」

能の話となれば、俄然、世阿弥も力が入る。まして話す相手が、彼ともなれば。

「ほう。左様なものでござるか。拙者、無風流者にて、とんと知らなんだでござる」

しきりと感心されて、言いようもなく照れ臭く恥ずかしい。それから、ふと気が付いて訊いてみた。

「ところで御武家様、どうしてあの能が切のう思われたのです?」
「戦を、見ているような気がしたでござる」

世阿弥は絶句した。
己の舞い姿や舞を、賛辞したりこき下ろした者なら星の数ほどいたが、能について話した者は、皆無に等しい。
あの上様とて同様である。
唯一といっても過言でない評が、戦のようだとは……。

<> 橋掛かり 24<>sage<>2006/03/13(月) 19:12:55 ID:mJr5g3/b<> 「気に障ったら、許されよ」

黙ってしまった世阿弥に、彼は失言を悟り、素直に詫びる。
世阿弥も黙ったまま頷いた。

「御武家様は、戦においでたことが、おありですか?」
「ああ」
「でしたら、何故……」
能と戦がつながるというのだろう。

「人には人の情がござる。鬼には鬼の道理がござろう。
どちらも譲らぬが故に、いきおい力で解決せんとする。
六條御息所は生き霊の霊力で、葵の上は小聖の法力で。
現世の戦もまた然りでござるよ。
幕府には幕府の言い分が、南朝には南朝の言い分がござる。
どちらも筋が通っている故、どちらも譲らぬ。お互い調伏せんと、鎬を削る……」

世阿弥は息を飲んだ。

芸人として物心つく前から、諸国を巡り歩いて来た。
幼いころから、様々な惨状惨劇を目の当りにしてきた。
その殆どが戦によるものだ。
息子のように可愛がってくれた南朝方の坊様は北朝方の兵に斬られ、初恋の少女は住んでいた村ごと戦火に焼かれ―――
「……どうして…。どうして、分かっておいでならば、お止めにならないのござりますか!! 
どうして放っておかれるのござります!! 
あなた方御武家は、戦で死ぬるを本望と思われるかもしれませぬが、戦の犠牲の多くは、武士でもない罪もない人達なのですよ」

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:13:32 ID:k7+stdcB<> 何これ。いつまで続くの。 <> 橋掛かり 24<>sage<>2006/03/13(月) 19:17:54 ID:mJr5g3/b<> 「申した筈でござる」

彼の声は、世阿弥の激情に水を差すほど、もしくは油を注ぐほど、淡々と穏やかだった。

「幕府には幕府の言い分があると。
頭に血が上った者同士で、話し合いなどできますまい。
それに今更、どちらも引くに引けますまい。
和解させるには、仲介者が必要なのでござる。
幕府にも南朝にも与(くみ)しない、中立の。
幕府方の拙者に何ができよう。
せいぜい仲介者を探すぐらいでござろう」

いまどき坊主から天皇まで、どちらにも与せぬ中立な者など居はしない。
それこそ、民百姓でもない限り。だが、天皇や将軍が、民百姓の仲介を受け入れようか。

そんな現状で、仲介者になれる者などいるだろうか。

「幕府と南朝、どちらかがなくなるまで、民の苦難は続くのですね」

禁忌に近いことを、世阿弥はしみじみ呟いた。

「そうなりますか……」

彼もまた呟くと、自嘲めいた笑みを横顔に浮かべる。

「たしかに、彼ら民百姓は気の毒にござろう。我らと違い、来世の保証もござらんし」

「来世の保証?」

「我ら武士は、死ねば修羅道に墜ちるが相場でござるが、彼ら罪もない善男善女と言おうと、全て極楽浄土へ行けるとは限りますまい」

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:19:10 ID:wVZKse22<> リロードしてないのかもしれないよ。
大作乙だけど、LRは読んで欲しかったなぁ…。 <> 橋掛かり 25<>sage<>2006/03/13(月) 19:26:54 ID:mJr5g3/b<> 世阿弥は思い知った。
自分は井の中の蛙であったと。

戦火を逃げ惑う人々の苦は、よく知っている。
散々、目にしてきたし、巻き込まれたこともあった。
世俗を離れ煩悩と対峙しながら修行を続ける坊主の苦悩も、男と女の愛欲の修羅もまた、同様であった。

が、思いもよらぬものがあった。
武士の懊悩である。
武士もまた、胸の内に苦悩を抱くことがあったとは。

「御武家様も、人を斬られたことが、ござりますか?」
「戦乱の世の武士にござれば。はじめて人を斬った時の感触は、未だこの手の中に残っておるでござる」

苦笑というより、もっと苦いものを滲ませて、彼は唇の端を歪めた。

「御武家様も、来世が恐いと思われますか?」
「武士が信心深いのは、その現れではござらんか? 
極楽などと高望みはせぬが、せめて修羅道に堕ちても慌てぬように……」

このときはじめて世阿弥は、武士もまた人であることを実感したのである。

既に月は庭から姿を消していたが、夜空は明るく、庭一面に澄んだ光の名残が溢れている。
だが最早、顔などの判別はつきにくい。

ふと、影にも似た彼がぽつりと訊いた。

「世阿弥どの。何ゆえ御息所は、調伏されねばならんかったのでござろうか……。
拙者には、あの御息所が、哀れで哀れで、愛(いと)惜(お)しゅうござった」

冬の夜の冷気は益々募るが、不思議なほど寒さを感じない。
<> 橋掛かり 26<>sage<>2006/03/13(月) 19:30:01 ID:mJr5g3/b<> 「御武家様。御息所は鬼なのでござります。
嫉妬の鬼、妄執の鬼…、何の鬼であれ、能の鬼は調伏されねばなりませぬ。
舞台の上は、夢幻の現世(うつしよ)にして、浮世(うきよ)の夢幻。
憂きこと多き浮世なれば、せめて夢の中だけでも、安らぎを得たい、与えたいとは思われませぬか」

「なるほど、そうでござったか。とんと、思い付きもしなかったでござる。
…ですが世阿弥どの、やはり拙者、あの御息所が哀れでござる。
『成仏得脱の身となり行くぞ有難き』などと謡ってござるが、あの去って行く後ろ姿は、夢潰えて落ちていく者の背にしか見えなんだでござる」

世阿弥は今、はじめて味わう充足の中にいた。

知己に会うとは、斯様なことをいうのだろうか。
眺める庭の梅が、滲んでくる。

不意に、廊下を速足で近付いてくるのが聞こえた。
世阿弥も顔を上げたが、死角になって見えない。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:30:40 ID:FN8wxJNf<> 新手の釣り?


ぜってぇー読まねえ! <> 橋掛かり 27<>sage<>2006/03/13(月) 19:35:18 ID:mJr5g3/b<> 「蜷川殿」

来客が声を掛けると、隣で腰を下ろしていた彼は、
「深見殿、こちらでござる」
すっと立ち上がった。

「交替の刻限でござる。疾く戻られよ」

手燭を渡されたらしく、ふっと近間が明るくなった。彼の笑顔が照らし出される。

「承知いたした。では、世阿弥どの。今宵は忝(かたじけ)のうござった。
やはり月も梅も、見るには連れのあるほうが愉しゅうござるな」

去りかけた彼の袖を、世阿弥は慌てて掴んだ。

「あ…あの、蜷川様…とは……?」
「ああ、これは申し遅れた。拙者、蜷川新右ヱ門と申す。では、御免」

勝ち気ながらも匂い立つような笑顔を残し、風のように去って行く後ろ姿を、世阿弥は茫然と見送っていた。

蜷川新右ヱ門の名は、世阿弥だって知っている。
何年か前から御所の中で、よく耳にする名である。武芸の達人で、上様自慢の秘蔵っ子だとか……。

(でも、まさか、あの小天狗どのだったとは……)

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:38:38 ID:I5jYPOm3<> な が い yo <> 橋掛かり 28<>sage<>2006/03/13(月) 19:38:56 ID:mJr5g3/b<> 時折、薪のはぜる音がして、火の粉が舞う。

夜の庭を皎々と照らす満月の下、世阿弥は中年女の面を付け、舞台の上で砧を扇で打つ。
新作能『砧』は、世阿弥渾身の作だった。

訴訟のため便りもせぬまま三年在京の夫から、暮れには帰るとの言伝と侍女が、九州の妻の元に遣わされた。
空閨をかこつ妻は、愛と恨みをこめて砧を打つ。
この音が、秋風にのって夫に届けと願いながら。
結局その年の暮れも夫は帰れず、妻は絶望のあまり病を患い世を去ってしまう。
帰郷した夫は後悔し、もう一度亡き妻と話がしたいと梓弓の呪法を行い、妻の霊を呼び寄せた。
恋の妄執を抱えたまま死んだ妻は、地獄の責苦にあって痩せ衰えた姿で現れ、夫に不実の恨みと愛しさを訴えるが、突如、救いの道が開かれる。

そんな筋立ての能であった。

この『砧』は、原典忠実主義の世阿弥にしては珍しく、原典なしの完全な作りものの能であった。

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:40:00 ID:4XO1xQ8T<> イエーイ(σ・∀・)σ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:41:56 ID:gFdMoezS<> 終わったか? テンプレも読んでない人間の長文、長時間投下なんざ迷惑以外の何物でもないんだが。 <> 橋掛かり 29<>sage<>2006/03/13(月) 19:41:58 ID:mJr5g3/b<> 「おお世阿弥よ、よう参られた」

新作薪能を演じた翌日、いつものように上演の礼を述べに金閣寺を訪れた世阿弥を、義満は上機嫌で迎えた。

いつもの間には、世阿弥と義満と太刀持ちの小姓がいるだけで、今日も新右ヱ門の姿はなく、他の奉行の姿もなかった。

「昨夜の一番は見事じゃったのう。
大内どのなどは、目に光るものなぞ浮かべておったぞ。
いやいや、余も鼻が高い。誉めてとらすぞ」

「勿体のうございます」
平伏した世阿弥が顔を上げると目の前に、何やら企んでいる風の顔付きで、義満が顎を突き出していた。

「だが世阿弥、余は騙されんぞ。あれは、余に対するあてこすりであろう」
「な、何を…、何をあてこすると言うのでござりましょう」
ことさら仰々しく否定する世阿弥を、義満は面白くもなさそうな横目で見遣り、手を打って襖の向こうに声を掛けた。

「誰かある」
「何事でこざいますか?」

サッと襖が開き、三人の男が現れた。
一人は初めて見る小姓だが、あとの二人は知っている。
いつぞや、世阿弥に泣きついた奉行たちだ。

義満は暫し、何やら思案していたようだが、すぐに小姓を呼んだ。
「そなた、新右ヱ門を呼んでまいれ」

途端に二人の奉行の顔が輝く。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:47:08 ID:ZNDTfNpS<> どこかのサイトの作品を無断転載してるコピペ嵐じゃないのか。
キモス <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:47:44 ID:wVZKse22<> これコピペとか?
元ネタがあるのかオリジナルなのか解らない… <> 橋掛かり 30<>sage<>2006/03/13(月) 19:48:00 ID:mJr5g3/b<> が、
「は…。あの、新右ヱ門どのとは?」
どうやら新参者らしく、小姓は狼狽え気味に訊ねる。

たちまち義満の目が据わった。

「寺社奉行の蜷川新右ヱ門だ! 
奉行所にいなければ安国寺だ! 
首に縄つけてでも引っ張ってこい!!」

早口に、しかも怒鳴り声でまくし立てられ、小姓は顔を引き攣らせて飛び出した。

「ところで世阿弥よ」
義満は三分ほど開かせた扇子を口許に当て、そっとささやいた。

「あの詞章には、少しばかり問題があるぞ。
あれでは砧を打つというより、男がやけ酒の空徳利を叩いてるとしか思えん」
思わず世阿弥は息を呑む。

その様子を目の端で確かめてから、義満はニッコリして付け加えた。
「それに、あやつは酒が弱い。徳利を空にする前に眠っておろう」

絶句する世阿弥を尻目に、義満は豪快に笑う。

「……尚一層、精進いたします……」
消え入りそうなほど小さな声で呟く。
「おお、そうせい、そうせい。もっと齢を加えてから書き改めよ。ナーハハハハハッ」

義満の華やかな笑い声が、いつまでも金閣寺に響いていた。

<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:48:34 ID:bV4UZ/RW<> >>554
同じ事思った。 <> 橋掛かり 31<>sage<>2006/03/13(月) 19:50:23 ID:mJr5g3/b<> 『砧』について、世阿弥は「この能の味はひ、
後の世に知る人あるまじ」と、自著『申楽談儀』
に残している。
それが、このとき上演された『砧』か否か、
定かではない。



終わりです。
長くて、改行多くて、テンプレに沿ってなかったようで、しかも途中であげちゃって
申し訳ありませんでした!リロードしてませんでした。
今後はこんなことないように、猛省して逝ってきます…。すみませんでした。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:51:39 ID:4XO1xQ8T<> ナーハハ(・∀・)ハハハッ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:52:17 ID:k7+stdcB<> 361 名前: 風と木の名無しさん [sage] 投稿日: 2006/03/13(月) 19:51:50 ID:jNie5AnR
待った、冒頭でぐぐったらそのままのが見つかった。
コピペ決定。


だそうだ。
チネ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:52:54 ID:ZNDTfNpS<> 猛省はいいから

二 度 と 来 ん な <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:54:31 ID:sp3O2bBu<> むかつくので全部あぼんした <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:54:49 ID:mP2dPk3V<> 逝ったまま戻ってこないように <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:57:00 ID:ZNDTfNpS<> >>560
ウヘァ

まとめ人さん、当然ながら華麗にスルーでお願いします。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:58:00 ID:K0lx8v+f<> 最近だらだらな長編ばかりだと思ってたらコピペ防まで涌いたのか
ご愁傷さまだな <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 19:58:46 ID:nyX4pTOE<> >>564に一票
腐女子の恥晒しなので、まとめ人さん、お手数ですがよろしくお願いします。

次スレはテンプレ1に「オリジナル、パロディ問わず自作限定」と
入れませんか?
「秘蔵コレクション」と書いてあるので、自分が萌えたものを
余所から転載してもOKと勘違いしている人がいるのでは。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 20:00:56 ID:zO5x8TJl<> いやいや、確信犯だろこれは <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 20:10:51 ID:zO5x8TJl<> ほら、投下止んだしさ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 21:04:45 ID:ZvkU7vdw<> 色んな意味でテラスゴスw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 21:25:40 ID:MIcLJ4tb<> 新着数がすごいからどんな神が降臨してるのかと思ったら
………荒らしかよ!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 21:27:38 ID:wVZKse22<> >>570
ゲンキダシテ(´・ω・`)ノ('A`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 21:32:27 ID:ieAdcDJm<> さあ仕切直して新たな職人さんカモーン <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 23:45:35 ID:HrtXdF05<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  空気変えれるか解らないけど、ピソ510受け
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  独白文?元ア/イ/カ/タx510氏
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 元ア/イ/カ/タx510氏<>sage<>2006/03/13(月) 23:52:54 ID:HrtXdF05<> 一人椅子に座って目を瞑る
今日するネタを脳内リピート
小声でブツブツ言ってみたり
たまに「ふふっ」って笑ってみたり

−−−不気味やなぁ

あ、あそこ壁に向かって練習してる…
えぇなぁ、ああいうなんも…

お互いの肩を感じ
お互いの息遣いを気にしたり
お互いの間合いを合わせる

ナ ツ カ シ イ

とうの昔に吹っ切れた筈やのに
たまーに、たまにやで?

少し淋しくなる

ピンマイクの前に立っても
両隣から風が吹く
心地良いようで
胸が苦しくもなる <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/13(月) 23:53:55 ID:cRHMMMNM<> ポエム? <> 元ア/イ/カ/タx510氏<>sage<>2006/03/13(月) 23:57:29 ID:HrtXdF05<> ふとアイツに目をやる

おー、難しそうな顔してペン走らせて
悩め悩めこのボケ

あ、こっち見た

何で笑顔やねん
しんどいくせに笑うなよ
無理してんねんなー
俺って愛されてる?なんて自惚れてみたり

さっと携帯を出して短文打って送信
それみた元ア/イ/カ/タ照れてる
単純(笑)

また紙と睨めっこをし始めた
そーや、はよ終わらせろよ?
お楽しみがなくなるぞ

そして俺は再び集中

今日はどうやろうな
ウケるかな
ドキドキしながら出番を待つ

今日も一人
明日も一人
この先ずっと…?

510ヒ/デ/キ今日も一人でやってます <> 元ア/イ/カ/タx510氏<>sage<>2006/03/14(火) 00:00:45 ID:HrtXdF05<> ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 需要なさ杉下手杉、ゴメン
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 00:12:41 ID:3rrrHZsP<> >>577
そんなことないですよ(*´∀`)スゴクモエタ!!!!
職人さん大歓迎! 荒らしはイラネです。
また待ってます
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 00:22:41 ID:cOwA3EH/<> ピンマイクって服に付けるものじゃなかったか?
それとも「ピンでマイクの前に」の間違い? <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 00:24:26 ID:pll8IBe8<> そんなこと言うなよー(*´∀`) <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:26:47 ID:8vc0HQyY<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ナマモノ 踊り子×マジシャン
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  元ネタは本人達の雑誌の対談から
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 数年前の出来事
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 00:29:49 ID:2lNm4WTu<> >>579
うわっ、間違えた!
38マイクと混じった

>>581
横切り失礼 <> 全面幸福<>規制ヒッカカッタ sage<>2006/03/14(火) 00:34:05 ID:8vc0HQyY<> 久し振りの瀧田の部屋。
お互い好き勝手なことやって、腹減ったら適当にパスタ茹でて食べて、
テレビも付けずに駄弁るなんて究極に贅沢なぐうたらをした一日の終わり。
日付も変わって二時間経って、シャワー浴びて、寝るための支度も終えて、
コンタクト外してベッドに潜り込んだというのに、相方さんは目をパッチリ開けて言い放った。

「つばきぃ、マラソンしよ」

はぁ? 瀧田ちゃんは何を寝惚けてるのかな。っていうか一人で行ってらっしゃい。
寝たふりを決め込んでそう切り捨てようとしたのに、瀧田は俺の体を揺さぶってきた。
「走ろうよー」
何、その甘えた喋り方は。お兄さん理性がぐらぐらきちゃう。
瀧田の手首をがっちり掴んで自分のほうへと引き込むと、ビックリしたように硬直する。
……椿くん、その反応にはちょっとショックかな。
何度抱きしめても初めてみたいな反応はときめく時とがっかりする時と半々だからなー。
今日はちょっとがっかり。
「瀧田、今何時だと思ってんの? 明日は早いんだろ?」
「いいの。走ろ」
ねぇ、と甘えてくる瀧田の髪を梳いてやると気持ち良さそうに目を閉じる。
よし、このまま寝てしま「走ろうよ」
……目を開けちゃうんだね、瀧田。 <> 全面幸福<>正直スマンカッタ sage<>2006/03/14(火) 00:36:19 ID:8vc0HQyY<> 結局、俺が瀧田に勝てるはずもなく、しかも『わがまま言う瀧田』なんて貴重だったから、
いわゆる丑三つ時にこんな場所にいるわけなんだけどね。
満月の夜ってこんなに明るいんだねって瀧田に言ったら、瀧田は知らなかったの?って笑う。
意味のないやり取りがくすぐったくて気持ちいい。
瀧田に渡されたジャージ着て、眼鏡かけて、だらだら雑談しながらスピードだけは落とさないで走って、
気がついたらどっかの学校の前まで来ていた。
「中に入れないかな?」
「や、多分無理だろ。だってセキュリティとかあるだろうし」
「グラウンドでもいいんだけどな」
「何で中はいりたいの?」
瀧田のこだわりが俺には時々理解できない。
無理だってわかっているだろうに何で中に入りたがってるんだろ。
「瀧田?」
「……た」
「え?」
「共演したドラマ思い出したのっ」
気のせいか瀧田の頬に赤みが射している。かわいいなぁ。
瀧田の言いたいことは分かった。
昔、初めて共演にしたドラマの舞台と目の前の学校はなんとなく似ていた。
瀧田もそう思ったんだろう。だから入りたいなんて言ってるんだ。
「入っちゃおっか」
俺がそう言うと瀧田は嬉しそうに笑った。 <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:38:21 ID:8vc0HQyY<> フェンス越えて、着地を決めた俺の隣で、瀧田はシュタッと自分で効果音を入れている。相変わらず変な子だ。
でも根っからの表現者なんだよな。
自分の動きが一枚の絵になるよう無意識の領域で考えて実行してるみたい。
ラッキーなことにセキュリティのベルがなることもなく、無事進入に成功してまずは一安心。
「つばきぃ、あっちにジャングルジムとか滑り台とかあるよ」
ってことは小学校か、ここ。俺には遊具とか見えないんだけど、俺よりも瀧田のほうが視力いいからな。
それにしても瀧田ってば元気が有り余ってる?
何で今まで走ってたというのにダッシュできるんだよ。
「はやくはやく!」
とろとろ歩いていたら瀧田が振り返って手招きしてくる。
うーん、やっぱりかわい(ry
「つばき!」
はいはい。 <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:40:23 ID:8vc0HQyY<>
ジャングルジムに登って懐かしいドラマの話をしていたはずなのに、気がつくと思い出話になっていった。
初めてのドラマで、長時間瀧田と一緒だった。
あの頃の俺たちは本当にガキで、恋とか愛とか、ごちゃごちゃした感情が鬱陶しくて、
泣きそうになったり嬉しくなったりムカついたり、ころころ変わっていく気持ちの変化についていけなかった。
だから、ドラマが終わった頃、自然に瀧田と距離を置くようになっていった。
瀧田から逃げ出した俺と、追いかけたくても動けなかった瀧田と。
俺たちの距離はどんどん広がって、お互いの隣には別の人が寄り添っていた。
そのくせ、瀧田の背中を見ることをやめられない自分が情けなかった。畜生。
思い出したらへこんできたから瀧田をからかってあげよう。(なんでやねん! って、雛形がいたら突っ込まれそうだ)
「あの頃の瀧田、子犬みたいだったなー。マシュマロみたいに美味しそうだったしぃ」
「おいしそうって何だよ! あの頃は俺のほうが大きかったのに」
「今は俺のほうが大きいもんね」
意地悪く言ってみると、瀧田はむぅっとした表情を浮かべて黙り込む。
想像通りの反応に面白くなって言葉を続けると瀧田が一段登る。 <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:42:25 ID:8vc0HQyY<> 「椿は意地が悪くなった」
「俺、性格悪いもーん」
「ガキ!」
「ガキだから思ったことをすぐ口に出しちゃうんだよ。瀧田かわいいなーとか瀧田が好きだなーとか」
「なっ」
ぼんやりした闇の中でかぁっと赤く染まっていく頬。色白だから分かりやすい。
ガード甘いんじゃない? それともこんな風になっちゃうのって俺にだけ?
そうだとしたら俺ってば贅沢者じゃん?
「ワタクシ岩井は、瀧田ちゃんを好き過ぎて愛し過ぎちゃってキスしたりエッチしたりしたいと」
「わーわーわ−っ」
赤い顔のまま両耳を塞いで騒ぐ瀧田。危ねっ。
「手ぇ離すなバカ!」
バランス崩しそうになってる瀧田を下から押し上げて支えると、瀧田ははっと我に返ってバランスを取り直す。やれやれ。

すっかり黙り込んだ瀧田は、さっさとジャングルジムから降りて、すたすたと歩き始める。
瀧田の後を追って、背後から覆いかぶさると微かに身じろぎをする。
嫌なら振り払うよな。調子に乗って肩を抱くようにして隣に移動する。 <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:44:27 ID:8vc0HQyY<> 瀧田の息遣いと、俺の鼓動と。
今更ながらに夜の学校の静けさに気がつく。
普段は音に囲まれて暮らしているから不思議な感じがする。
「瀧田」
「……」
「たーきーだっ」
「……」
「もしかして照れてる?」
「照れて、ない」
「うそつき」
素直になりなさいって。
何年お前と一緒にいると思ってんの?
傍にいないときでもずっと見てたんだよ。瀧田の行動パターンなんて全部お見通し。
本当に素直じゃないんだから。(まぁ、そこも好きなんだけどね)。
「つ、椿はいつも、簡単に好きだって言い過ぎるのっ」
「嬉しいくせに」
「悪い? そうだよ。嬉しすぎてワケ分かんなくなっちゃうくらいなんだから」 <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:46:29 ID:8vc0HQyY<> あぁ、畜生。
大好きだ、このやろう。

「つばき?」
「早く帰ろう。風邪ひく前に」
「?」
わけわかりませんって顔で見上げてくる瀧田に触れるだけのキスをして、そのままダッシュする。
「家まで競争! 負けたほうが明日はパシリ!」
「えっ、椿ズルイ!」
あわあわしてる瀧田の後を付いてくる足音を聞きながら、今夜は良く眠れそうな気がした。 <> 全面幸福<>sage<>2006/03/14(火) 00:48:32 ID:8vc0HQyY<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ コイツラフダンカラアマイタイダンカマシテマス
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |  規制にひっかかったスマソ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 01:44:15 ID:WutckjbM<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  飛翔の再生のホームコメディだってさ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  数字板本スレの大所帯に見守られてる獄寺話からの妄想らしいよ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  ギャグだとよゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚;) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  | <> beログインしたのになぜか出来てない… 1/6<>sage<>2006/03/14(火) 01:53:40 ID:WutckjbM<> 俺の名前は隼人。今日は俺の家族を紹介するぜ。
まずはママ。名前は綱吉。俺はツナって呼んでる。男だけどママだ!医学の進歩は凄いぜ。
ツナは、まずとっても可愛い。例えるなら野に咲く白い薔薇、いや薔薇ってイメージじゃねぇな。
もっとこう、ひ、ひなげし?カスミソウ?カスミソウは地味すぎるな、ドクダミ…?いや違うな…
あ、そうだチューリップがいいな。白いチューリップ。桜とかでもいいな。とにかく清楚可憐な感じだぜ。
動物ならうさぎだな。うさぎは寂しいと死ぬんだ…。俺は寂しい思いなど絶対にさせない。今ここで神に誓う。
人は皆、俺をマザコンと呼ぶ。だが、そんな悪意のある差別には負けねぇぜ。この愛は、運命だからだ。
ちょっと天然でドジで、たまに何も無い所でこけてたりするのがまた可愛いんだな。守ってやりたくなるぜ!
それに野球バカな兄の武、スケベでどうしようもない父シャマル。この二人の説明は一行で充分だな。
まあ一人のキュートで優しい聖母マリアのような母を除いたら皆どうしようもねぇ奴等だけど
それでも結構平和にやってきていたんだな。ところが… <> 2/6<>sage<>2006/03/14(火) 01:56:07 ID:WutckjbM<> ある日のシャマル一家。

台所で食器を洗っているツナに、隼人はそろそろと背後から近づく。
そしてゆっくり手を伸ばし、後ろから小さな身体を抱きしめた。
「うわっ!な、なんだ獄寺君…。じゃ、なくて隼人。びっくりした」
「ん…」
ギュッと力を込めて小さく華奢なツナの身体を抱くと、首筋に顔を強く押し付ける。
「もう、隼人…くすぐったいよ。俺、今これ洗ってるんだからね?甘えるのは後で…」
「ツナ……大好き」
「隼人、うん、わかってる……あっ?」
隼人はツナの身体を軽々持ち上げ、お姫様抱っこの体勢に持ち込むと、そのまま部屋を移動する。
「ちょ、ちょっと隼人…洗い物が」
手に泡をつけままあたふたと慌てるツナを無言で制し、その身体をふんわりとソファーに下ろす。
そして、上から覆いかぶさると、顔の横に手をつき、ツナの顔をじっと覗き込んだ。
「……愛してる…」
「うん、だから隼人、わかってるから…んっ」
耳元にキスをされ、ツナはピクンッと震える。
「今日は、親父も野球バカもいねーから…チャンスだと思ってたんだ…」
「チャンスって…あ、隼人、だめっ」
薄べったく細い身体を強く抱きながら、隼人はツナの顔中にキスを降らせる。
音を立てて頬に吸い付き、首筋を舐め、下肢を強く密着させていく。
「ツナ…俺、もう押さえ切れない、かも」
「あっ……隼人、駄目、だめだから!」 <> 3/6<>sage<>2006/03/14(火) 01:58:12 ID:WutckjbM<> 「なーにやってんだ?おめぇは…」
目の端に鋭く光るメスを見つけて、隼人は咄嗟に後ろに飛びのく。
「お、親父!」
「てめーはまーたやってんのか…こないだの仕置きのウィルス注射でも、やっぱ懲りてなかったようだな…
大体、ママを名前で呼ぶのは止めろって言ってるだろーが!何がツナだ!エロガキが」
「な、なんだよてめー、今日は医者の集まりがあるんじゃなかったのか!」
「嫌な予感がしてな…ムシの知らせってやつだ。そしたら案の定…」
シャマルは内ポケットから注射器を取り出す。
「ちょ、まて、落ち着け、話せば分かる」
「パパ、やめてっ!」
「ツナ…」
ツナの声に一気に顔をデレデレに崩壊させたシャマルは、その場でイチャつき始める。
眉間と口を歪めて不細工な顔をした隼人は、呪い殺すような目つきでシャマルを睨んだ。
「まあいい。隼人、仕置きは後でだ。…それより、今日はお前に大事な話がある。武も呼んで来い」
「えっ?」
「ぱ、パパ!まだ話さなくたって…」
ツナは焦ったようにシャマルに縋り付く。その手をゆっくりと離すと、シャマルは隼人をじっと見据える。
「な、なんだよ…親父…似合わねぇ真面目な面しやがって」 <> 4/6<>sage<>2006/03/14(火) 02:00:22 ID:WutckjbM<> シャマル家の居間。緊張した面持ちでソファーに座り、隼人と武は両親を見つめる。
「お前らも、もう大人だ。まあ中学生といえば、俺はもうプリプリ乙女とあんなことやこんなこと…」
「パパー!」
真っ赤になったツナに怒鳴られ、咳払いをしてシャマルは座りなおす。
「――俺が、一人の赤ん坊を取り上げたのが、今から14年前だ」
隼人は首をかしげる。
「…母親は、子供を産んだ後、そのまま病院から失踪した。事情は知らねぇが
置手紙が置いてあった、この子を頼みます、とな」
「ひっでぇ親だなあ。そんなんされたら病院も困るっつぅの」
「………へぇ」
「俺は警察に連絡し施設に預けようと思っていた。だが当時看護士として働いていたママに、その子が懐いてな。
情が移ったのかも知れない、だが、ほうっておけない気がしたんだ。自分が取り上げた子供だったからかも知れん」
「…親父?」
「そして、養子にした。それが、武、お前だ」
「!」
隼人の肩がビクンと上がる。武は黙って、そんな隼人をじっと見つめていた。
「…そして、それから約半年後。また、子供が捨てられた。その子の母親は、俺と同じイタリア人で――」
「親父っ!」
隼人は震えながら立ち上がる。
「…隼人、聞くんだ。武とお前は、俺達の、本当の子供じゃ…ないんだ」
「…っ!な、なんだよっ!なんでっ…」
「隼人…」
ツナは瞳に涙を溜めて隼人を見つめた。武は指を組んで、うつむいて床を凝視している。
「ちっ…くそったれぇ!」
隼人はソファーに足をぶつけてよろけながら駆け出すと、玄関から飛び出していった。
「は、隼人!」
「ツナ、いい。大丈夫だ…あいつの行きそうな所なら、分かってるさ。
昔っから、嫌なことがあるとすぐあそこに行きやがるからな…」 <> 5/6<>sage<>2006/03/14(火) 02:02:37 ID:WutckjbM<> 夕方の公園。
ブランコに乗りながら、一人煙草を燻らせる隼人。
うつろな瞳で、夕暮れの空を見上げる。
突然、かすかに揺れているブランコの速度が上がって隼人は前のめりに飛び出しそうになった。
「うわっ!な、なんだ!?あってめぇ!」
「ハハハ」
兄の武だった。隼人を追いかけて、公園までやってきたのだ。
「てめー何すんだ!果たすぞ!」
「まぁまぁ…座れよ。ほらこれ」
手にした缶コーヒーを隼人に手渡す。武のコーヒーはあったかく、冷えた手にジンとぬくもりを与えた。
隼人はなんとなく語尾を濁し、コーヒーを渋々とした顔で受け取ると、再びブランコに腰掛けた。

「なんかさ…びっくりするぜ。あんな事言われたら」
「そーだなー」
「でも、薄々どっかおかしいなとは思ってたんだ」
「そーだなー」
「兄弟なのに、お前と俺の誕生日が5ヶ月しか離れてないし…」
「そーだよなー」
「俺だけやけに美しくて、親父にも兄貴にも似てねーなと思ってたし…」
「そーなのな…うんうん。……あん?」
「別に、どうでもいいんだよ。血の繋がりなんてよ。俺は、ツナの事が好きだし…」
「……うん」
「それに、親父だってスケベでどうしようもねぇけど、悪い奴じゃないしな」
「……うん。そーだな」
「まあ兄貴は野球バカでノー天気で、一緒に居るとうんざりするけどな…」
「……うん。そーだな……っておい!」 <> 手間取って本当ごめんね…6/6<>sage<>2006/03/14(火) 02:04:52 ID:WutckjbM<> ひとしきり例のごとくケンカを行った後、再び腰を下ろし、隼人は大きく溜め息をついた。
「だけど武、てめーはとっくに知ってたんだな?さっきだってやけに落ち着いてたし」
「ホームラン級のバカだなお前は。いくら医学が進歩したからって、男が出産できるわけねぇ。考えりゃ分かるだろ」
「バカとは何だバカ!ツナは可愛いから、子供くらい産んでもおかしくはねーと思ってたぜ…。
 とにかく知ってたなら、何で俺に教えなかったんだよ」
「……隼人、俺は、いつもケンカばっかしてるけどよ。お前のマジで傷つく顔とか…あんまり見たくねぇんだな」
「!………武…」
やけに明るく笑う兄を見て、自分より早く事実に気付いたこいつは、もっと幼い頃に傷を受け止めたのか。
そう思いながら隼人は、大分冷めてしまった缶コーヒーを両手で包み、啜った。

キィ、と音がしてブランコが揺れる。
「あ、親父…」
「なぁ。武、隼人。俺は確かにお前達と血が繋がってない。だが病院で孤児になったお前らを引き取った時
絶対にお前らに辛い思いはさせねぇ、4人であったかい家族を作ろう。そう誓ったんだ。ツナと二人でな。
俺を、父と思わなくても構わん。だが、あんまり無茶したり怪我したりして、ツナに心配かけるんじゃないぜ。
特に隼人。お前は無鉄砲で、ツナを泣かせてばっかだからな」
「……ははは、親父、もーいいよ。そんな暗い顔すんなって!」
「…親父」
「武、隼人、帰ろうぜ。ツナが待ってる」
「………ああ」
二人は、シャマルを見上げて小さく頷いた。
勢い良くブランコから飛び降りると、隼人はシャマルを振り返り二ヤリと笑う。
「それに血が繋がってないって事は、ツナが離婚したら俺と結婚もセックスも堂々と出来るって事だからな!」
「はぁ!?てめー、何言ってやがる!また変な事したらただじゃおかねぇぞ!
ったく、まさか息子がこんな真性ホモに育つとは思わなかったぜ」
「てめーが言うな!」
「ははは、隼人も親父もおもしれーのな、見てて飽きねーぜ」
そんな喧々囂々な三人を、ツナはそっと木の陰から心配そうな顔で見守っていた。
「隼人、本当は髪型真似するくらいパパの事が好きなのに、またケンカして…まったく、素直じゃないんだからなあ…」 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 02:06:57 ID:WutckjbM<>


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 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 02:27:33 ID:AMFzAmQA<> >>598
ワラタ、乙
やはりホームラン級のばかだなごっきゅんは…だがそれがいい <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 02:28:08 ID:eRFeHAzm<> >581
最近ソロ活動が忙しすぎて2人での活動が減ってて飢えてたんだけど、
これでしばらく乗り切れそうだ。
かなり萌えました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 02:40:21 ID:GV821Lz3<> >>581
こんな所でこのカポーを見れるとは思わなかった。
マジシャンの呼び名もナツカシスw
GJ!楽しめました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 02:45:41 ID:Tkbdxklv<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  一応、三たび十四代目
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ただし趣きはまるで違うよ
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )   
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※ネタです。 <> 鳴海探偵社にて 1/5<>sage<>2006/03/14(火) 02:47:54 ID:Tkbdxklv<>  学校から帰ってきたら、何故かラスプーチンがいた。

「お帰り、葛葉ライドウ!」
「帰れ」
 いきなり抱きついてこようとしたのを手近な酒瓶でブン殴り、召喚したスサノオに逆鱗撃を打ち込ませ、縄で括って転がして、スサノオに担ぎ上げさせた。
「業魔殿まで連れて行け」
「仕事速いよライドウ。まあ待て」
 背後から制止をかけられて、億劫気味に振り返る。
 そこでは麻雀牌を握った鳴海が卓に就いていた。
「居たんですか、鳴海さん」
「うん、所長だしね。居るよね、普通」
「居ても居なくても存在価値的に大した違いはありませんがね」
「大人だから泣かないよ、俺は。とにかくそいつ下ろしてやって」
 何ゆえ鳴海がラスプーチンに肩入れするのかは知らなかったが、泣かないよと言う割に泣きそうな顔をしていたので、哀れみのつもりで下ろさせる。
 ごろりと床に転がったラスプーチンは不服げに「椅子かベッドに運びなサーイ」とかほざいていたが、踏みつけた。
「それで、こいつを庇われるのは、どういう了見なんですか」
「説明するよ。まあ、座ってくれ」
「いえ、立ったまま伺います」
「まあそう言わずに座れよ、ライドウ」
「それではせめて雀卓以外の席を薦めて下さい」
「ない」
「二度ほど死ぬか糞ニート」
「ハイカラな言葉で褒めてくれても、おっちゃん解んないから、ごめんね。それはともかく状況を説明するから座れ。さあ座れ」
「上座にドーゾ」
「お前も妙な仕来たりだけ覚えるな」
 とにかく重い外套を脱ぎ、空けられていた席へと座る。ついでに何となくラスプーチンの頭に銃弾を撃ち込んだ。 <> 鳴海探偵社にて 2/5<>sage<>2006/03/14(火) 02:49:58 ID:Tkbdxklv<> 「で?」
 腕組みをして半眼になり、正面に座る鳴海を睨む。
 床に転がっているラスプーチンが何を勘違いしているのやら「私のために争わないで!」という顔をしているのが非常にムカつく。
「お前が学校へ行ったあと、暇になっちゃったもんだから」
「仕事とか仕事とか仕事とか仕事とかあるんですがね」
「気付かなかった」
「二度と気付けない状態になってみますか、鳴海さん」
「遠慮するー。遠慮するから、銃でゴリゴリやらないでー」
「まあユーちょっと落ち着いちゃいなよ」
「誰かを思わせる口調をやめろ」
「ミーにまでゴリゴリやらないでー。若いからかネー、節操ないネー」
「お前にだけは言われたくない」
「とにかく最後まで説明させろ」
 額に出来た円形の跡をさすりつつ、鳴海が懇願の目をして言う。
 仕方ないので銃を仕舞い、溜め息を吐いて、促した。
「……暇になっちゃったもんだから?」
「うん、竜宮で遊ばせてもらおうかなと、ちょっくら外出してみたんだけど」
「女将と二人で天命滅門かましたい気分ですが、続きをどうぞ」
「そこにタヱちゃんが現れてさあ。妙な男に付き纏われて困ってるって言うんだよね」
「これですか」
「それだ」
「イッツ・ミー」
「性懲りもなくタヱさんに迷惑かけてる訳か貴様は」
 靴の踵で顔の真ん中、即ち鼻を踏みにじってやると、然して痛くもなさそうに「イタタ」とラスプーチンは言った。 <> 鳴海探偵社にて 3/5<>sage<>2006/03/14(火) 02:51:59 ID:Tkbdxklv<> 「で、それを聞いて思った訳よ。今こそ俺の出番だ、と!」
「それでニートはどうしたんです」
「ナチュラルに言わないでほしかった。……奮戦、そいつを引っぺがし、タヱちゃんを家に帰したね」
「まともな対応じゃないですか」
 意外な言に毒気を抜かれる。
 気分を良くしたらしい鳴海は、ふふん、と胸を反らして笑った。
「で、麻雀卓に座らせて」
 抜かれた毒気が瞬時に湧いた。
「……は? 何ですって?」
「卓に座らせた」
「これを?」
「それを」
「イッツ・ミー」
 もう殆ど無意識のうちにラスプーチンを踏みつつ、訊く。
「それは……どういう了見で」
「了見も何も。決まってるでしょ」
 先ほどよりも更に大仰に胸を反らして、鳴海は言った。
「そこに生命が存在するなら、麻雀に誘うのが常だろう!」

 一瞬でも期待を持とうと思った自分が腹立たしい。

「ちなみにタヱちゃんも誘ってみたけど断られました」
「賢明ですね」 <> 鳴海探偵社にて 4/5<>sage<>2006/03/14(火) 02:54:01 ID:Tkbdxklv<>  椅子をずらして立ち上がり、つかつかと鳴海に歩み寄る。
 そして「何?」と言いたげな鳴海を見つめ、微笑むと、
「煉獄撃」
 鞘に収めたままの愛刀を打ち込んだ。
「うほっ」
 まともな悲鳴さえ上げないニートの首根っこを引っ掴み、雀卓の上に放り投げ、その上にラスプーチンを乗せる。縄で縛られて動けないラスプーチンはもぞもぞと、芋虫のように抵抗したが、銃弾を撃ち込んで静かにさせた。
 マントを羽織り、踵を返して、自身は出口の方へと歩く。
「……う?」
 しばらくして背後で意識の戻った鳴海が呻く声がした。
 そこで振り向き、微笑みかけて、傍らの仲魔に呼びかける。
「スサノオ」
 そうして雀卓を指し、短く、さっくりと命令した。
「逆鱗撃」
「あいよ」
「待ったーーーーー!」

 背後で悲鳴と壮絶な破壊音とが聞こえたが、構わず廊下を突っ切って、階段から下へと降りた。 <> 鳴海探偵社にて 5/5<>sage<>2006/03/14(火) 02:56:03 ID:Tkbdxklv<>  銀楼閣の外へと出ると、夕陽が沈みかけていた。
 鳥の羽ばたく音が聞こえて、そちらの方に視線を遣る。
 やがて鴉が降りてきて、左の肩へ、ふわりと留まった。
「………」
 こちらを見つめる緑の瞳をじっと見返し、嘆息する。
 やがて気分を変えることにし、肩に乗っている鴉に言った。
「……銀座にでも行くか」
「付き合おう」
「何があったかは訊くな」
「訊かんよ」
 聡い鴉に癒されつつ、駅の方へと歩みを進めた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 02:58:08 ID:Tkbdxklv<>  ____________
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 | |                | |           ∧_∧  ニートに国土無双やられて二時間で書き上げた。
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )  今はスッキリしている。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 03:28:54 ID:burwqd53<> >608
姐さんGJGJGJ!!
私も姐さんの作品読んで猛烈に雷同買いたくなって買っちゃったよw
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 03:38:03 ID:Gz6NsmNT<> >608
GJ! 十四代目鬼畜だよ十四代目(*´Д`) <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 06:38:42 ID:CN41Oj2D<> >>608
姐さん二人も購入決定させてる。スゲェ。
しかしGJ!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 06:56:19 ID:BOuWZ78X<> >>602-608
姐さん、ギャグもいけるのか! 超GJ!
邪兄さんなプーチンコワロスw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 07:24:37 ID:ztdqwLGl<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    | オリジナルでオヤジ同士の恋だってさ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  緊張しすぎて色々失敗していないといいが
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧  一行が長くてゴメンナサイ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚;) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |

<> 多分1/5<>sage<>2006/03/14(火) 07:28:54 ID:ztdqwLGl<>
「・・・らっしゃい」
ガラ、と少々立て付けの悪い戸が開く音に気付き、半分ほど終わったアイロンがけを止めて、自宅と繋がっている店へ出る。
3月のまだ冷たい外気と共に入ってきた人物をみとめて、落ち着け、とドキドキし始める心臓に言い聞かせる。彼だ。

今日も彼は六時を過ぎた頃にやって来た。
見るからに高級そうなロングコートに革の手袋、一日を終えても崩れる事なく美しく保たれたオールバックのその男は、
雑然とした小さな酒店の雰囲気にはおよそ似つかわしくない。
彼がこの店へ来るようになったのは半年ぐらい前だっただろうか、その時も、同じような事を思った気がする。
店に出たものの、手持ち無沙汰になりタバコに火をつける。
店を営むものとして酷い態度である事は百も承知だ。しかし、この沈黙には耐えられそうにない。
この店員1、客1という状態の居心地の悪さは苦手だ。双方が相手の存在を気にしつつ動く、妙な緊張感。しかも今の「相手」は彼だ。
話しかけてみればその緊張も解けるだろうか、とも考えたが、元々人と話すのは得意ではないし、
情けないことに酒店の店主として客に振舞えるような知識もない。
こうして酒店をやっているのも、死んだ両親の後を継いだだけであって、酒の味は良くわからないし飲める方でもないのだ。
よく売れる商品を仕入れて売る、自分が生活できる程度にやっていければいい、などという考えでグダグダと続けてきてしまった。

彼が奥のビールコーナーに行き、姿が見えなくなった所でようやくふ、と一息つく自分が馬鹿馬鹿しい。
ぐるぐると巻き込まれそうになる考えの渦を振り払うように、大げさな音を立てながら新聞を開き目をおとす。 <> 2/5<>sage<>2006/03/14(火) 07:33:02 ID:ztdqwLGl<> 俺は、あの男に恋している。
40過ぎの無精ひげ生やしたオヤジが今さら「恋」なんて、我ながら気持ち悪い話だ。しかしこの一方的なドロドロした思いを愛などと呼ぶ気にはなれない。
彼が毎日のように店に訪れるようになって、その存在が気になりだしてからも、
胸に引っ掛るようなモヤモヤした思いは、自分にないものを持っている者への少し嫉妬を含んだ憧れ、そんなものだと思っていた。
いや、半ばそうなのだと自分に言い聞かせていたのかもしれない。
あのスッと伸びた背筋と首の気持ちのいいラインをついつい目で追ってしまうのも、
意外に大きくしっかりした掌は温かいのだろうかなどと考えてしまうのも、全ては憧れの少し行き過ぎた形だと。
この気持ちがいわゆる「恋」だと認めざるを得なくなったのは、彼が20代前後の女性と肩を並べて来店した時だった。
あーだこーだと酒を選ぶ二人の姿に、胸がざわついた。明らかな嫉妬。若い女性を連れた彼に、ではない。彼の隣にいる女性に、だ。
彼にそれくらいの娘がいたとしてもおかしくはないし、彼ほどのいい男だ、若い女を恋人に持てていたって頷ける。
どちらにしたって、俺の気持ちが叶うはずがない事は、皮肉にもその気持ちを実感した瞬間に決定的なものとなってしまった。
まぁもとより、俺のようなしがない酒屋のオヤジにはこれっぽっちの希望もなかったのだろう。
相手は見るからにエリートで、俺とは真逆に上品で、そして男なのだから。

「これ、お願いします。」
結局考えの渦にはまってしまったらしい。突然上から降ってきた声にハッとして顔を上げる。近い、彼の顔。
ガタッ、と大きな音を立てて飛びのいた自分の顔は、今きっと赤い。
なんとか平静を装いつつ会計をしようとするのだが、言葉は上手く出てこないわレジ打ちには手間取るわで、きっと変に思われたことだろう。
すみませんと呻くように謝る俺に、いいですよ、こちらこそ突然声をかけてしまって。と優しげに微笑む彼は憎いほどに紳士的だ。 <> 3/6(変更スマソ<>sage<>2006/03/14(火) 07:35:08 ID:ztdqwLGl<>
来た時と同じように、立て付けの悪い戸から彼が出て行き、中断していたアイロンがけを再開してからしばらくした頃になって、ようやく冷静な思考が戻ってくる。
まったくなんて情けない。恋愛経験皆無な訳でもないくせに、何をいまさら少し顔が近づいたぐらいで赤くなったり慌てふためいたりしているんだ俺は。

次こそはもっと冷静に、決して気持ちを悟られる事のないように振舞わなければ。
そう考えつつも、店を出て行く後姿を見つめる俺の視線に、いつか彼が振り返ることを願ってしまうのだ。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
<> 4/6<>sage<>2006/03/14(火) 07:37:10 ID:ztdqwLGl<> 「・・・らっしゃい」
ガラ、と少し力を入れてドアを開くと、いつものように彼が店の奥から出てきた。
少し時間がかかった所をみると、何か作業中だったのだろうかと少し申し訳ないような気持ちになった。
この酒店を恐らく一人で営んでいる男の、低く掠れた声を聞くと、今日も一日が終わるのだなという安堵感に包まれる。

この酒店に足を運ぶようになって六ヶ月と20日経った。それは私がこの町に住むようになってから経った日数と同じである。
新しい勤務先である大学とマンションの途中にあるこの店は、子供の頃家の近所にあった駄菓子屋に似ている。
もちろん売っている商品は全く違うのだが。
すこしゴチャゴチャして冒険心をくすぐる所や、店主が気難しげな所など、どこか懐かしく気付けば毎日のように通っていた。
ムッとした表情のままタバコに火をつける彼は、今どんな事を考えているのだろうか。
この店員1、客1という状態が、私は好きだ。
客と店主という関係に過ぎない状況が、2人きりという要因によって壊れ、
いつかただの人間として話が出来るのではないかという期待と緊張が入り混じった空気。
話しかけるきっかけに、お勧めの酒なんかを聞いてみようか、そんな事を考えたこともあった。
だが自分は殆どビールしか飲まないし、ワインや強い酒の類が自分に合わない事は経験済みだ。
彼と話してみたいがために、買ったとしてもきっと飲むことはない酒について色々と説明してもらうのも失礼な話だろう。
そう思い直し、酒の話題で話しかけるのはやめた。
そうして機会をうかがっている間に、半年を過ぎてしまった。私はこんなに内向的な男だっただろうか。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 07:39:18 ID:ztdqwLGl<> やれやれ、今日も話しかけられそうにはないな、と自分を情けなく思いながらいつものビールコーナーへ向かい、
贔屓にしている銘柄を今日飲む分だけ手に取る。
買い溜めする事をしないのは、毎日この店に通う名目を作っておくため。

私は、あの男が好きなのだ。
気難しい顔をした彼が、どのような顔で笑うのか、怒るのか、なくのか。
日々の仕事の中で自然と作り上げられた、腕の、腹の、胸の、脚の、筋肉は一体どういったラインを描くのか。
それらを知りたいと思う気持ちが恋でなくて何なのだろう。
40を過ぎた男が、同じく40過ぎであるだろう男に恋愛感情を抱くなど、不自然極まりない事であるのは十分理解している。
しかしそれは頭で理解しているにすぎず、留め金にはなり得ないのだ。
一度だけ、人をこの店につれてきたことがあった。
前期終わりの飲み会で足りなくなった酒を買出しに行ってくれる人はいないか、との呼びかけに、この店に行こうと思い手を挙げた。
教授一人に行かせるわけには、いや一人で十分だよ、という数分の面倒なやりとりを経て、結局助手の一人がついてくることになった。
わたしはこの事に気乗りしていなかった。馬鹿な話だが、私だけの店であってほしかったのだ。それ以来、私は買出しに手を挙げる事はなくなった。
我ながら子供じみた独占欲である。
そんなことをぼんやりと考えながら、彼の座っているレジの方へ向かう。
<> 6/6<>sage<>2006/03/14(火) 07:41:59 ID:ztdqwLGl<> 「これ、お願いします。」
新聞をじっと読んでいる彼に声をかけるのは忍びなかったが、次の瞬間そんな考えはすっかり消え去ってしまった。ハッとした表情の彼の顔が、目の前に。
普段(といっても私は黙って座っている彼かレジを打つ彼しか知らないのだが)見たこともないような盛大な動きで後ろに飛びのく彼にこちらも驚いてしまった。
そんなに驚かせてしまっただろうか。
よほど彼の動揺は大きかったようで、その後もいつものムッとした気難しげな顔が戻る事はなかった。
こんな事を言っては失礼だろうが、慌てるあまりレジ打ちを間違ったり、赤い顔で謝る彼を見て、私は非常に喜びを感じていた。
謝らなくてもいいですよ、むしろあなたのそんな表情を見ることができて嬉しいのです。と。

幸せな気持ちで店を出る。マンションに向かって歩きながらも、今日発見した彼の新しい表情を思い出し、ふ、と笑う。
まったくなんてくだらない。ちょっと彼の表情が変わったぐらいでこんなに心が躍るなんて。私もそろそろ年かな。

明日も突然声をかけてみよう。驚かせてみよう。彼には悪いが。
そうしていつか、客と店主という関係を壊してやろうじゃないか。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 07:44:38 ID:ztdqwLGl<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 規制引っ掛ったり番号忘れたり誤字あったり
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) やっぱりスムーズにはいきませんでしたがスッキリ。
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 07:51:16 ID:vOcwtvUv<> >>613
GJGJ!
オヤジ(*´Д`)ハァハァ
萌えに風邪もふっとびました。
続き待ってます。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 08:15:18 ID:GoV3mze0<> >>613
萌 え た
オヤジスキーにはたまらんです
「なくのか」がひらがなってだけで妄想膨らませちゃったよ
GJ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 09:57:39 ID:+B7zpI3l<> >613
萌えた!
オヤジら可愛いよ(*´Д`)
気難しげな店主が顔を赤らめる所を想像したらもう・・・ゴチになりました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 11:39:17 ID:7A7DDd1C<> >>591
ワロタ!久々に棚じっくり読んだよw
続きもしあれば期待してますよ! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 11:50:02 ID:qoTICvOW<> )602
ジャ○ー口調に死ぬほどワロタ
もう…プーチン見るたびに思い出しそうwww <> 呆×突<>sage<>2006/03/14(火) 13:59:16 ID:2dw2foPN<>
                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ゲ仁ンという設定のオリジ。保宇(ボケ ×十都(ツッコミ 第3弾。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  需要なくてもネタだけはいっぱいあるんだってさ。
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ >463thx!十都視点だゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 14:00:09 ID:2dw2foPN<> ざわつきの中で、ボタンを打つ。ちょっとのことで煩い、ボタンの効果音は切ってる。
同期や後輩からメールが何件か来てるのを、空き時間に返すのが習慣や。
先輩はできるだけソッコー返すようにしとるけど。怖いし。

今日は、若手芸人多めのトーク番組の収録。今はその前の待ち時間。
俺は中学の時から、保宇っちゅうやつ漫才コンビを組んどる。
最近になって、やっと関西ではちょっと知られてる位にはなれたと思うけど、全国ではまだまだ全然知られてへん。
そんな思いっくそ若手の俺らに個人の楽屋なんかあるわけもなく、会議室みたいな部屋に皆放り込まれてる。
最後の新着メール…後輩からやな。それを開封すると、
”この前は御馳走様でした!スンマセン、奢って頂いて。
 またゴハン一緒させて下さいね〜。” <> 呆×突2<>sage 番号と題忘れてた…orz<>2006/03/14(火) 14:02:21 ID:2dw2foPN<> 「その子だれ?」
「うわっ!…なんやねん」
いきなり背後から声がしてびくっと身体が跳ね、鼓動が速なった。
声の主は相方。暇するとちょっかいばっかりかけてくるアホ。
俺のケータイを覗き込みながら言う。
「なぁー誰ー?…は、ゴハン!?いつ行ってんそんなんー!!」
「覗くなボケ!しかもいちいち言わなあかんのかい!」
プライバシーもくそもない。別に仕事終わってから何しようと勝手やろ…。
「当り前やろー!お前オレを誰やと思てんねん!」
「大事な相方や!」
「せやったら言え!」
「なんでやねん!それとこれとは別や!」
ノッたったら調子乗りよって。いや、大事な相方っちゅうのはホンマのことやけど。
「別やないぃ、俺も連れてかんかいー」
「おまえ我侭な束縛彼女みたいなこと言うなや!」
「あぁおったなぁ前、お前の彼女に!えぇやんお前Mやろ!」
「ちゃうわボケしばかれんぞおまえ。」
とか言うてると、机の上に置いたケータイが震えて机とぶつかって唸る。
またメールが届いてた。二人して画面を覗き込む。 <> 呆×突3<>sage<>2006/03/14(火) 14:05:16 ID:2dw2foPN<>
送り主は同期の共演者で、俺らの向かいの壁際におった。
にやつきながらひらひら手を振ってくるそいつに、俺からケータイを奪った保宇が余計なお世話じゃと送り返した。
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 14:07:51 ID:2dw2foPN<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ まだまだネタが尽きないよ。ドウシヨウ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) スレ汚しスマソ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 17:59:09 ID:/DnthLGt<> >>630
イイヨーイイヨーこの二人好き!
姐さん、需要はここに・・・! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 20:31:15 ID:Sx5Uxfh1<> >>630
需要はここにも!ノシ
ゲイニソってなんでこんなに萌えるのやら…。
姐さんいいもの読ませてくれてありがとう! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 20:33:56 ID:sjW90iLT<> >>613
GJ!
すれ違ってるオヤジ同士モエス <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 20:57:49 ID:IgffFbdq<> >>613
ブハーオヤジモエス
自分、オヤジ属性はなかったはずなのに・・・・・・
新たな萌えが開花しちゃったジャマイカハァハァ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 21:11:32 ID:wO5Va2Xt<> >613
ナイスオヤジー!!
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 22:19:38 ID:xR2lLzH2<> >>613
GJ!!
無精髭オヤジ萌えとしてはたまらん! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/14(火) 23:15:49 ID:ysKtabs1<> >>613
なにこの淡々とした文章から溢れる萌えの嵐
読ませてくれてありがとう <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 08:16:29 ID:551UF5cH<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  飛翔の某双子(弟×兄)だよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  双子に対する偏見が激しいので注意
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ <> 1/5<>sage<>2006/03/15(水) 08:18:16 ID:551UF5cH<> 夜。
眠れないほど煩くもなく、時計の針より静かで却って気になることもない
丁度いい具合の雨が先刻から降り続いていた。
よって運水が未だに就寝できないでいる理由はそれではない。
むしろ目を閉じてその音に聴きいれば、部活の疲労で強張った筋肉が
少しずつほぐれていき、思考に靄がかかってどこかへ、
自分がばらばらになって別の何かへ
溶け込んでしまう感覚…要するに彼は安心していたのだ。
訪問者。
運水は身を起こしベッドの縁に腰かけた。背後で笛を持った体育教師が
彼にだけ見えてでもいるのか、わざとらしいまでに規則的な動きで
顎を引き両足を広げる。
そうして姿勢を整えてから、足の間で熱を持った「理由」を見る。
すぐ済むことだ。
彼は同年代のチームメイトに比べると淡白なところがあったが、
高校生の男子なら当たり前の行為だ。
ただ動作がマシーンのように事務的で行為の意味からすると
不自然に感じられたが、
他人の行為を見たことがなく、もちろん他人に指摘されることもなかった
彼が自分の慇懃な滑稽さに気付くはずもなかった。 <> 2/5<>sage<>2006/03/15(水) 08:19:27 ID:551UF5cH<> ドン、ドン。
ノックの音にはっと息を止める。相手の都合など知ったことかと言いたげ
な無遠慮で慎みのない音だった。
そんな音と結びつく人間を、運水は一人しか知らない。
まだ行為に移っていなかったことにタイミングの良さを感じて
運水は顔の半分の幅ほどにドアを開けた。
「何だ?」言い終わる前に男は肩でドアを押し強引に滑り込む。
タイミングは果たして良かったのかこれ以上なく最悪だったのか、きっと
誰にも分からない。

運水が一度飲み込んだ「何だ?」を反芻する暇もなく、
男は左手で彼の股間を掴んだ。
突然の来訪ごときで驚いている場合ではない。
「やっぱりな」
何でもないという表情で男、運水の弟、亜言は言う。
いつも凶悪な笑顔とワンセットの亜言の顔は、そうしていると、
周囲から正反対だと評されてきたコンゴウ兄弟が
紛れもない双子であるという事実を浮かび上げる。
運水がやや掠れた声ではなせ、と言うと亜言は素直に手を放した。
説明を求めて無言で亜言を注視すると、それに応えて彼の弟は話し出す。 <> 3/5<>sage<>2006/03/15(水) 08:20:30 ID:551UF5cH<> つまりこういうことだ。ふとムラムラして寝る前にイッパツ抜いとくか、
と思った弟は、もしかすると双子の対である兄も
このコーフンをキョーユー?しているのか知りたい、と考えた。
弟が考えたということは、即ち実行するということだ。

「そんなことをしに来たのか…」
呆れた。弟の発想にも呆れたが、その通りの結果を出してイチランセー
でもないのにスゲエ、と言わしめた自分にも。
ただの偶然だと思ったが、反論はしない。
なぜなら運水は亜言を怒ってはいなかったからだ。
一つ。
自慰行為を目撃されそうになった時の気まずさや罪悪感を
亜言の言う通り共有して、馬鹿だと呆れることで気分が楽になったし
(罪悪感は彼が一連の反応と行為を後ろめたく思う証拠であり、それが少し気に入らなかったが)
もう一つ。
何より弟の全く意図が読めない不穏な行動にも一応の答えが出た。
弟の突拍子もない行動そのものより、弟の目的が分からないことに強く
動揺する運水もまた、亜言ほどあけすけなやり方ではないにしろ
双子の絆を無意識で感じているのかも知れない。
そして運水は元通り冷静な運水になり、安心した。 <> 4/5<>sage<>2006/03/15(水) 08:21:45 ID:551UF5cH<> 冷静な兄は凶暴な弟が彼の顎に手をかけてきても、殴られるとは
思わなかった。スキンシップならよくあることだ。
やはり双子の勘は正しい。
亜言はゆっくりと運水に口付けた。かさついた唇の不快な皮膚感覚のため
よけいに時間が長く感じられるようだと運水は思う。
一見、弟の緩慢な動作は優しさや手加減を連想させるが
亜言の冷たい瞳を見る限り、支配者の絶対的自信とでも言った方が
よさそうだ。
もちろん運水の側に服従しているなどという実感はない。
今夜はもう、驚くのに疲れていただけだ。 <> 5/5<>sage<>2006/03/15(水) 08:32:56 ID:551UF5cH<> 無反応の運水に亜言が挑発するように笑う。長年見慣れたあの笑みだ。
「なにボケてんだよ。キスくらいしたことあんだろ?お前でも」
なかった。そこに特別な拘りはなく、
ただ自分の優先順位からは圏外だったというだけだ。
今は今すべきことを最大限やるだけ。それが運水の行動原理だった。
「…何なんだ?」
三度目でやっと出てきた言葉。何のつもりなんだ何故したんだ何考えてる
んだ、いくらでも口をついて出てきそうな抗議の言葉だったが、
兄として余裕のポーズをとったつもりだった。
「だから、俺らは一つなんだよ」
そう言ってまた笑う。奇妙な笑いだった。
あの弟の口からテレビドラマのような台詞が出てきたことを、
運水は心の中で苦笑した。似合わない。その笑いだって変だ。何か変だ。
何が「だから」なのか。…まだ弟の真意は分からない。
笑えない夜の始まりだった。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 08:34:54 ID:551UF5cH<>  ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 規制で笑えなかった
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 15:21:35 ID:RPL4/zGk<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  ペノレ曽名2、今更とはいえかなりストーリーバレだよ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  うはwww主人公×マルチタレントてお前wwww
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ プレイヤー=主人公にも
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )   程があるだろゴルァ
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<> 1/3<>sage<>2006/03/15(水) 15:23:37 ID:RPL4/zGk<> 巣王達也はクールだ。クールといえば格好いいがそれは主に理佐を初めとする
彼の崇拝者達の言によるもので、永吉などに言わせてみれば、どうしようもない朴念仁ということになる。
勿論テレビで華やかにスポットを浴びるスターやアイドル、いわゆる芸能人に興味を持った事は一度もなかった。
テレビと言えば彼の関心はむしろ本体内部にあり、中学生の頃もそれで何かバイクの改造に使える部品はないかと
ネジのひとつひとつまで分解し、兄にしこたまこっぴどく叱られたものだ。
理佐がデビューする事になった時も達哉は、拍子抜けする程に無反応だった。が。
鼻先一メートル足らずのところで、人気上昇中のマルチタレント、植杉英彦に笑顔で挨拶されたときは
達也の鋼鉄の心臓もさすがに舞い上がった。植杉は達也よりひとつ年上で雪乃の昔の仲間だ。
ペノレソナ使いの先輩ということになる。
そして何より、とてもきれいでかわいい。そこが重要だ。達也にとって人気だとか、マルチだとか、
そう言った事はどうでもよかった。クラスの連中のお喋りや、電車の車内吊りで、ウヱスギヒデヒコとか
ブラウソとかいう名前を聞いた事が無いでもない。しかしそれだけだ。今の今まで、どんな顔かもろくに知らなかった。
雪乃さんに紹介された、目の前の整った顔立ちの人が「あんたが巣王?」と言って人懐っこい顔でニッと笑った。
それがあんまりかわいい笑顔で、達也はくらっと来てしまった。やはりまったくテレビにも芸能人にも興味はないが、
この事件が片付いて家に帰れたら植杉さんの出ているというバラエティーはチェックしようなどと
考えたりもするから現金なものだ。 <> 2/3<>sage<>2006/03/15(水) 15:26:06 ID:RPL4/zGk<> それからも達也は騒動の合間にちょくちょく巣丸TVを訪れた。理佐達がそれどころじゃないと呆れるたびに、
ペノレソナ使いである以上いつ何時刺客の手が及ぶかもしれない、心配だ、と強引に言い訳を通したが、
植杉さんのレベルは悠に自分達の倍以上もあり、ずっと強くて速いヂャスティスのペノレソナに護られている事は
皆も十分承知していた。
理佐を救出し炎上した青場公園を脱出したその足ですぐテレビ局へ走る。スマイル比良坂の爆破を食い止め、
次の託宣の夢先区に急ぐ途中でわざわざまた青場区に立ち寄る。空の価額館を爆破したテロリストなる疑いで、
いつ捕まるか分からぬ折にさえ我慢できずに会いに行った。植杉さんも達也達が正義のヒーローだという噂を聞いたと
言って笑ってくれた時、本当にそれどころではないのに達也はこのまま時が止まればいいのにと思って
かなり長い間ぼおっと突っ立ってしまい、理佐にすごい剣幕で怒鳴られた程だ。
植杉さんはよく喋る。そしてよく笑う。くるくると目まぐるしく変わる表情は黄色いサングラスの上からでも
十二分に魅力的だが、横からサングラスの縁越しにちらちらとしか窺い得ない鳶色の瞳を
正面からも見る事が出来れば、もっと達也の胸をときめかせるだろう。息を呑むほど白い首筋にさらさらと流れる、
やや赤めの猫っ毛がどんなかわいらしいラインを形作っているかを知るには帽子が邪魔だ。 <> 3/3<>sage<>2006/03/15(水) 15:28:08 ID:RPL4/zGk<> そして達也はこうと決めたら行動に移す時には一切ためらわない。雪乃さんと話している植杉さんに
いきなりつかつかと歩み寄った。威勢のいい喋りっぷりとは逆に実は案外臆病らしい植杉さんの目に、
少し怯えの色が走るのが見える。
「たっ…達也クン何? 何? おれ様何か、気に障る事言った?」
達也は黙ったまますっと手を伸ばした。びくっと肩をすくめる植杉さんが猫みたいでかわいい、と思いながら
やおらその頭から帽子をむしり取った。ふわっとこぼれる柔らかそうな前髪からシャンプーの香りがした。
傍らで目をぱちくりさせている雪乃さんに帽子を手渡すと、今度は両手でそっと植杉さんのサングラスを外した。
困ったように八の字に寄せられたかたちのいい眉の下で、鳶色のきれいな瞳がおどおどと達也を見つめていた。
「……こんなものは無い方がきれいだ」
それが寡黙な達也が植杉さんに初めて言った言葉だった。植杉さんはかなりびっくりしたように目を真ん丸に見開くと、
ちょっと頬を染めてうつむき、植杉さんらしくもないちいさな声で「ありがとう」と言った。それから顔を上げ、
照れくさそうにくしゃっと笑って、「初めて聞いたけど、けっこうセクシーで甘い声してんじゃん」と付け加えた。
空にはナチスの軍用機が飛び交い、街にはラスト・バタリオソとイ反面党の闘う喧騒があふれ、
全くもって事態はそれどころではないが、達也はその瞬間確かに幸せな目眩を感じた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 15:30:11 ID:RPL4/zGk<>  ____________
 | __________  |
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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ごめんストーリーバレっていうか調子こきすぎて
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 途中完全に自分のゲームレビューなってる
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   | ・・・伏せ忘れがあったウワアアアアorz
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 16:31:30 ID:ss9AWv6q<> 488KBか…
新スレもう立てておいたほうがいいよね?
立ててきますノシ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 16:40:59 ID:ss9AWv6q<> http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1142408011/
新スレ立ちました。
変なのが張り付いてるけどスルー・あぼんの方向で。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 17:04:48 ID:Y0EXxxrO<> >651 乙!
どうでもいいけど張り付いてる変なヤシ、素でワロテしまった。なんか字面で笑えるw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 21:18:08 ID:Qx7/zBAq<> むしろ一瞬ウイルスを心配しました。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 22:01:21 ID:Ilqpt+6Z<> >>649
GJGJ!!! <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/15(水) 22:35:27 ID:Yr4+muq5<> >13-16はコピペ厨の自演なのか素で釣られてるのか? <> 1/3<>ナマモノ sage<>2006/03/15(水) 22:51:29 ID:L/+flKzK<> |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) 京×兵で京→阪?

「そんなに縦山くんが気になるんやったらそっちに行けばエエやろ」
綺麗な目ぇに涙いっぱい溜めながら俯く翔太に、何故か罪悪感とか湧いてこなくて、
あぁ、ばれてもうたって他人事みたいに思う自分が居った。

縦山へ対する気持ちは尊敬で憧れで綺麗過ぎる感情。
そう、あくまで敬愛や。
だけど翔太へ対する気持ちは熱くてドロドロしていて、それでいて綺麗で優しい全てが入り組んだ感情。
触ったら怪我するのは間違いなく翔太への気持ち。
「この気持ちが恋やと思う」
そう言うたら翔太は鼻で笑う。
「ほんまや。愛しとるんは翔太だけや」
「俺やのうて縦山くんに言うたればエエねん」
伝えたい言葉が形にならずに上滑りしていく。
苦しそうに悔しそうに顔を隠しながら翔太は強がる。
翔太のこんな顔、見とうないんやけどな。いつでも笑っていて欲しいのに。
こんな顔にさせとる張本人が言うても説得力なんてどこにも無いけど。 <> 1/3<>sage<>2006/03/15(水) 22:53:30 ID:L/+flKzK<> 「あぁ、無理か。龍平はヘタレやもんな」
「ヘタレて……」
「そうやろ?恋人持ちの人に告白する勇気なんてないよな。あ、でもバレとったりして。俺が気付くくらいやもんな」
このガキッ!
顔をあげて挑発してくる恋人に、自分のしたことを棚に上げて拳を握り締めると、翔太は更に挑発するように嘲笑う。
「殴れや? 俺は別にかまわへんよ」
「翔太!」
拳を振り上げると翔太は瞬きもせず龍平のことを凝視する。
言いたいこと全部その目にこめたみたいな強い視線に射竦められて立ち尽くすと翔太が噛み付くようなキスをしてきた。
ちりっとした痛みがはしって血の味が口の中に広がる。
下ろした拳をゆっくり翔太の背中に回すと勢いよく振り払われる。
「触んな」
「言うてることとやっとることが矛盾しとる」
「それはお前じゃ」
翔太の目からついに零れ落ちた涙を拭うと龍平は衝動的に抱きしめる。
腕の中で暴れる恋人の抵抗にも龍平はめげず、何より圧倒的な体格差が効いてしばらくすると翔太は諦めたように大人しくなった。 <> 3/3<>↑は2/3の間違い sage<>2006/03/15(水) 22:55:38 ID:L/+flKzK<> 「あのな、縦山くんとは何もしてへんよ。ただな、相談に乗ってもらっただけやで?」
「……嘘や。やって、なんか恋しとるみたいな目ぇして縦山くんのこと見とるもん」
翔太の涙声に龍平は困ったような情けない顔をする。
「第一、縦山くんには恋人が居るやんか」
「居らんかったらいくんやな」
ああ言えばこう言う翔太に龍平が口で勝てたのは三年位前までで、
しっかり者でボキャブラリィーも自分より多い年下の恋人に龍平は言葉を失い黙り込む。
そんな龍平に翔太はやっぱり、といった表情で溜め息をつくと緩んだ腕の中を抜け出す。
「もうええわ。あほらし。龍平は俺と別れて、そうやってかなわん恋でも何でもしとき。トモダチとしてなら応援したるから」
明らかに傷ついているのを隠して綺麗に笑う翔太に龍平は初めて罪悪感を抱く。
「……ごめん」
「謝るくらいやったら俺のことだけ見とればええねん」
真っ直ぐに目を見て話す翔太が眩しくて龍平はそっと目を閉じた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )最近の仲良しっぷりに反してみた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/16(木) 00:53:54 ID:oANSPX5e<> >656
萌えました。2人ともかわいいよ。
ちょうど彼らの番組を見てたところだったので、もうどうしようかとw

個人的には、縦山くんの恋人が誰なのか気になるがw <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/16(木) 00:57:17 ID:R5lv29Wq<> >656-658
ごちそうさま(ノ∀`*)
<> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/16(木) 20:02:13 ID:FvG0wgOi<> 途中まで書いて放り出してあったやつみつけた
けどどの方向に持っていこうとしてたのか忘れちゃった
誰か続き書いてくれんかのぉって事で投下しまーす。
某村板前×棟梁。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! <> 2/1<>sage<>2006/03/16(木) 20:11:33 ID:uvvKk7VH<> 最近兄ィが俺を避けてる気がする。
嫌われた、とかそんなんじゃないってのは分かるんだけど。
だって俺が見てない時に俺の事を目で追ってる。(気がする)
なんだろう?どうしたんだろう?
俺、なんかやったっけか?
普段と変わりない様子で帰り支度して、駐車場に向かった兄ィの後をこっそり追って、
誰も居ない事を確認してから俺は兄ィに声を掛けた。
「兄ィ!」
肩が揺れる。けどびっくりしたってカンジじゃない。
俺が付いてきてるのに気が付いてた?
「……なんだ?」
やっぱり気が付いてたんだな…そう思ったけど、捲かれなかったって事は逃げる気は無いみたい。
「今日、兄ィんチ行くから」
返事を待たずに助手席に潜り込む。
兄ィは口を開きかけて、でも言葉を飲み込んだ。
<> 2/2<>sage<>2006/03/16(木) 20:13:39 ID:uvvKk7VH<> 見なれた通りが目の前を過ぎていく。
何時もだったらくだらない事喋っていて兄ィの顔を見てるから外を眺める、なんて事しなかったけど。
今日はちょっとくっちゃべる雰囲気じゃあない。
だから仕方なく外を眺めてる。兄ィも話し掛けてこないし。
カーステレオの音さえない車内は、エンジンの音とタイヤがアスファルトに擦れる音のみ。
そんな風にしばらく外の景色を眺めていたけれど、重い空気に耐え切れなくなった俺は、
部屋に帰ってから聞こうと思っていた事を兄ィにぶつけた。
「……ねぇ」
「…あん?」
「……兄ィ、最近、俺の事避けてない?」
「……別に」
そう言うと思ったけど。
ステアリングを握る手にほんの少し力が加わったのを俺は見逃さなかった。
「けど、いつもと違うよね?いつもだったら車ん中だって音楽ガンガン掛けてるのにさ…今日は全然じゃん」
「たまには静かに走るのも悪かねぇだろ……お前だっていつもだったらお構いなしに話し掛けてくんじゃんよ」
「でも変だよ。俺と全然目ぇ合わさないし、ココんとこアンタ俺が寄ってくと寝るフリしたりしてるっしょ……俺なんかした?」
「…………別に」
やっぱ、変だ。
こんなに歯切れの悪い兄ィなんてぜってぇ変!
でもやっぱココじゃ問い詰めるには向かない。
部屋に帰ってちゃんと、話そう。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/16(木) 20:15:48 ID:uvvKk7VH<> お粗末。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

強制終了食らって手間取ってしまった……orz <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/17(金) 11:09:22 ID:IhTkKa0k<> >>661
ごごごごご、御免なさい
ジャンル知らないもんだから脳内で鳥ックの兄ィに……
萌えますた。 <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/17(金) 11:12:16 ID:IEU47lcE<> >>661
大好きだ!
最近絡みが少なくて寂しかったんだよ <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/18(土) 00:07:21 ID:KLtccMgw<> >>661
うあ〜萌えた。一番好きなカプなので嬉しいよ!
まさかここでお目にかかれるとは… <> 風と木の名無しさん<>sage<>2006/03/18(土) 00:27:12 ID:vKK+oZ2V<>                     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  とあるスレからモナ
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  萌えたスレで萌えたなんて・・・
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ マジスマン
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
<> 1<>sage<>2006/03/18(土) 00:28:02 ID:vKK+oZ2V<>
探偵って仕事は、名前を聞く分にはミステリアスで薄っすら憧れも抱きそうなものだが、
実際のところ、そんなものは幻想に過ぎない。
それを俺は身をもって痛感している。
浮気調査や素行調査が大半で、そんな影のある闇の仕事なんて早々ない。
今だって、クソ寒い深夜に心も寒く、1人で孤独に対象者を張ってるわけだ。
怪しまれない為にもエンジンはかけられない。
暖房のきいてない真冬の車内にがたがた震えが止まらないのに、
見守るアパートの窓からは所在を知らせるように電気が消えない。
さむい。さむい。さむい………
――――――そうして俺の張り込みは空が白むまで、寒気のおさまらないままに終了した。
<> 2<>sage<>2006/03/18(土) 00:28:43 ID:vKK+oZ2V<> ゆらゆら揺れているのは電車だろうか、それとも俺の視界だろうか。
暖房もきいているし、前からも後ろからも密着されているというのにまだ体ががたがた言ってしょうがない。
胃からせり上がってくる、締め付けられるような吐気が喉まで顔を覗かせては飲み込む。
その繰り返し。
なんだ。メシ食えって?そういえば食ってなかった。
空腹がボーダーを越えて、ついにはキモチワルイ、に変換されてしまった。
ぐらぐらする。
あと2駅、あと2駅我慢したら、そしたら………。
目を瞑って、想像を膨らませることで時間が過ぎてくれるのをひたすら待った。
駅を下りて、途中のコンビニで何か買って、食いながら帰ったら、ストーブつけて寝よう。
寝よう寝よう寝よう。呪文のように唱えながら、最寄の駅までを耐えた。
人の波に飲まれ、流される勢いに逆らうことも出来ず電車から放り出された頃には俺の体調の悪さはピークに達していた。 <> 3<>sage<>2006/03/18(土) 00:30:25 ID:vKK+oZ2V<> 「………きも……」
万が一口から吐瀉物が飛び出してきてしまっては元も子もないと、
辛うじて手で押さえ込みながらふらふらと駅を後にする。
と言っても空きっ腹の俺の胃から出てくるのは胃液ぐらいなものだ。
足の下からぐにゃりと柔らかくなって、シャッター切った後の閃光で周囲ぎらぎら埋め尽くされていく。
眩しいのに視界は暗くなるばかりで、立つほどの力も足から次第に奪われていった。
しゃがみこむと鈍かった眩暈が、ぐらぐらとゆっくりでありながら、大きな流れで襲い掛かってくるようだった。
かちかちと歯の噛み合わせが鳴る。
普段は耳を劈くように轟く電車の通過音は、すぐ背後なのにどこか遠くの、彼方に聞こえる。
寒い寒い、気持ちが悪い。
じわりと瞼を薄い水の膜が覆っていく。
「………う……うーっ……」
なんだ、俺ちょっと惨めだ。体が弱ると心も弱るってほんとなんだね。うん、風邪ひいてるっぽいな俺。
やっぱ家ついたら寝よう。つけたらだけど。 <> 4<>sage<>2006/03/18(土) 00:31:39 ID:vKK+oZ2V<> 「……………大丈夫ですか?」
背中をさする動きがあったかくて、顔を上げたらちょっと逆光で表情までは見えなかった。
でも声が優しくて、きっと、優しい顔をしてるんだろうと思った。
青い制服。目を細めたら、思ったよりもずっと若い顔つきをした警官だった。
俺よりも年下かもしれない。多分そうだ。道の向こうの交番から来たのか。
差し出された掌を掴んだのはもう無意識だった。
その時俺には彼が、いや、俺にとってはその時の彼が、正義の味方に見えたんだ。
いや世間的には警官は正義の味方なんだけど。
「どうかしましたか?」
「………なんか風邪で具合悪いっぽくて。…立てなくて休んでた」
彼に腕を引き上げられながら、ここじゃ冷えますから、と交番まで案内してくれる優しい腕に縋っていた。 <> 5<>sage<>2006/03/18(土) 00:33:11 ID:vKK+oZ2V<> あんまり広くない交番のソファで寝かせてもらったものの、いつまでもお世話になるのも気が引けて、
歩けるぐらいまでに回復すると俺はそそくさと交番を出るべく腰を上げた。
「ああ、いいですから。落ち着くまで休んでってください」
そう言って半端に立ち上がった俺の尻はまたソファに逆戻りし、代わりにお茶と冷えぴたを手に握らされた。
ついでに解熱剤もあったが、それは空の胃袋には大変悪そうなのでつき返すと彼に怪訝の色が浮かぶ。
「え?気にしないで下さい」
「……いや、俺、飯食ってないから」
ああ、と納得した顔で彼が奥に入っていく。
パタン、と冷蔵庫の開く音がして、何やらがさがさしたかと思うとすぐに戻ってきた。
「どうぞ」
右手に弁当、左手には皿、そして上には半分に切られたバナナ。
「…………ありがとうございます」 <> 6<>sage<>2006/03/18(土) 00:34:18 ID:vKK+oZ2V<> 弁当の中身も隅々まで綺麗にし、バナナもきちんと皮をむいて、最後に解熱剤で締めた。
落ち着いてきたのか薬が効いてきたのか、うつらうつらと穏やかにまどろんで、
彼が机に向かって雑務をこなしたかと思えば慌しかったりする様子を半分意識の外で見る。
あの弁当は多分、彼のだ。
じゃあこの後、何をエネルギーに動くんだろ。動いてるんだろ。
空腹も吐気もおさまると、余計なことばかりを考える。
ずうっと、彼を見ていた。
パトロール回りをしていたらしい、もう1人の警官が帰ってきて、俺が休んで1時間も経ったことを知るまで。


「……あの、じゃ、俺もう帰れますんで。…その、お世話かけました」
ありがとうございました、って言ったつもりが呂律はあんまり回ってなかった気がする。
一礼して踵を返した足がまだゆらりと不安定だったが、来る前よりかはだいぶんマシだった。
「あ、ちょ、ちょっと!」
慌てて出てきたのは彼だ。もう1人に何やら話してから、隣に並んで俺の腕を肩にまわした。
思いのほか近いところに彼がいる。 <>