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#title(鋼鉄都市シリーズ ダニールとイライジャ) [#s2e83b50]
l 豚切り...
____________ l パート3は、足モフセン...
| __________ | l それでも(・∀・...
| | .| | \ …学...
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄...
| | .| | Λ...
| | .| | ピッ (...
| | .| | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ̄...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
二万年。
そんな月日をたった一人で生き続けるというのは、一体どんな...
歴史学者のペロ.ラットは、伝説のロボットのR・ダニ一ル・オ...
そんな答えの出ない疑問を、宇宙の果てについて考えるように...
ロボットは椅子に腰掛けて、静かな視線を投げかけてきている。
一分の隙も無く整った容貌の冷たい美しさと、それにもかかわ...
その全身から滲み出る哀しげな倦怠に心を押しつぶされそうに...
ペロ.ラットは懸命に口を開いた。
「あなたの話を聞かせてくれませんか」
目の前のロボットは黙りこくったまま動かない。
「私にはあなたの記憶を分かち合って、あなたと一緒に人類に...
そちらについては、先ほど理解しました。
だから、せめて、あなたをここまで突き動かしたものを知って...
「一人の学者として、ですか?」
「いえ、私の個人的な関心として。一人の人間として」
質問を発した後、なおもロボットは黙っている。
「あなたは、私に話をしたがっているのではないでしょうか」
ペロ.ラットが挑むように言うと、しばしの沈黙のあと、ロボッ...
頭ひとつ背の高い彼の、見下ろす青い目は優しい表情を浮かべ...
その姿は、宇宙全体を統べる存在というよりもむしろ、
中世の書物に出てくる絵のような、神に仕える高位の司祭を思...
真摯な、報われない忠誠を何かにささげている敬虔さを、
ペロ.ラットは彼に痛いほどひしひしと感じていた。
「わかりました。お話致しましょう」
そう言うと彼はゆっくりと立ち上がり、歩き始める。
その時、ロボットの左手首がきらめき、
そこに何か細い腕輪のようなものが巻かれているのが見えた。
古代の装飾品だろうか。それとも、何か大事なことに必要な道...
歴史を良く知るペロ.ラットにすら、それが何を意味するのかわ...
「私が語るのは歴史ではありません。ですから、あなたは少々...
あなた方の言葉で言えば、単なる『思い出話』に過ぎないので...
あなたはそれでもよろしいのでしょうか」
彼らは長い廊下を歩いていた。ペロ.ラットが承諾すると、その...
ロボットは少しずつ語り始めた。
彼を作った宇宙人のこと、旧友のロボットのこと、
そして、かの有名な文化英雄「イライ.ジャ・ベイリ」のこと。
「『イライ.ジャ・ベイリ』とは、いったいどのような人間だっ...
ある地の民間伝承によると、彼は七日七晩で自らの宇宙船を無...
他の星々に星間移民を説いて回ったなどという逸話が残ってい...
それを聞くと、ロボットは驚いた様子も見せずに答える。
「いいえ、そのようなことはなさいませんでした。
したくともできなかったでしょう。あの方は地球人でしたから」
「『地球人』?…ああ、彼はあの星で生まれたのですね。
イライ.ジャ・ベイリが地球人であったことに、何か関係がある...
ロボットは仰向き、今では放射能物質の塊でしかない、鈍色を...
「地球という星の特性について、少しお話させていただいてよ...
「ええ」
「かつて80億の地球人は、巨大な鋼鉄のドームの中で暮らし...
彼らは通常、生まれてから死ぬまで、その中から一歩も外に出...
その鋼鉄の洞窟から、最初の一歩を踏み出したのがあの方だっ...
あなたが仰る様な形ではなく、半ば強制的に連れ出されるよう...
このようなことをお話してしまったら、あの方はお怒りになる...
少し考えるように言葉を切り、ロボットは再び口を開く。
「あの方は『そと』に出るということに大変な恐怖を感じてい...
あなた方には想像ができないかもしれませんね。頑丈な壁の中...
四方に何も無い、むき出しの戸外に身をさらす時、
いかに大きな恐れを感じうるか、ということが。
私はそのような地球人の特性を知っていましたから、
『そと』の恐怖から守ろうと、できうる限りのことをしようと...
けれど、あの方はそれを拒まれました」
そこで言葉を少し切って、ロボットは黙り込む。
「あなたは、お疲れではないでしょうか?」
自分ばかり喋りすぎてしまったと感じているのか、そうペロ.ラ...
「いいえ、全く。そのまま続けてください」
彼はそう促すと、ロボットは、そうですか、と相槌を打ち、話...
「私の回路には戸外への恐怖は組み込まれていないので、
あなただけでなく、私にも、あの方の正確なご気分を想像する...
けれど、あの方にとって、昼間の白い太陽が夕方には赤く染ま...
地平線のかなたへ姿を隠すなどということは理不尽の極みでし...
天から水が滴り、轟音とともに空から電気が降って来るなどと...
到底理解できない現象でした。
けれど、そのような状況に直面しても、あの方はすべてを耐え...
決して、易々とではありません。
手ひどく苦しみ、恐怖に震えながらも、果敢に立ち向かって行...
「イライ.ジャ・ベイリの、苦しみに満ちた最初の一歩のおかげ...
現在の我々人類が現在の形で在るということですね」
「あなた方人間だけではありません。私もそうなのです」
ロボットの声が少し小さくなり、ペロ.ラットは思わずその顔を...
その端整な顔立ちには相変わらず、何の表情も浮かんでいなか...
「決して意図した訳ではありませんが、私があの方を苦しめて...
最期にお会いしに行った時、あの方は『もう疲れた、死にたい...
私が、あの方の死の時間を引き延ばしてしまったのです」
「…もしかするとあなたは、イライ.ジャ・ベイリに対する贖罪...
このようなことを続けているのですか?」
ペロ.ラットの胸に一抹の不安が過ぎり、彼はロボットに尋ねた...
「それは違います。あの方がいなくなってしまった世界で、私...
起こったことを実際に変えられるわけがないのですから。
私はただ、あの方が生きていらっしゃった時の苦しみや、
そうまでしてあの方が成し遂げられた事が全くの無に帰してし...
あまりにも忍びないことだと感じているだけです」
ロボットが溜息を一つついた。
無表情な顔に似合わずその仕草があまりにも人間的だったので...
「あの方の行為が、今も私を生かしています」
先ほどからずっと、ロボットの問わず語りを聞いていたペロ.ラ...
一つの考えが組み合わさる。自分でそれを訝しみながらも、彼...
「こんなぶしつけなことを言う私をお許しください」
ロボットの青い目が向けられる。
「あなたは彼に愛情を抱いていたのですね」
痛々しいような気持ちで、ペロ.ラットはそう聞いてみた。
ロボットは、二、三度瞬きをして、また視線を正面に戻し、
先ほどよりは、幾分自信のなさそうな声で呟いた。
「それも違うと思います。私にはそもそも感情というものがあ...
人類に平等に奉仕しなければならないという使命を負った存在...
けれど、あの方が私を気に懸けていてくださったから、
私はこうして両足で立っています。それは確かなことです」
彼らはしばし、黙りこくって歩みを進めた。
すると突然、ペロ.ラットの耳に聞きなれない言葉が飛び込んで...
彼は隣のロボットの顔を思わず見上げた。
小さな、しかし張りのある声で、ロボットは何かを呟いていた。
その声の温かさに竦んで、ペロ.ラットは思わず立ち止まり、耳...
発せられた言葉があまりに古すぎて、彼に理解できる単語はほ...
けれどもそんなことは問題ではなかった。
ひどく優しい声だった。
その響きは、祈りの言葉の響きに少し似ていた。
ペロ.ラットは、直感的に、この声はロボットの言う「あの方」...
伝説の中にしか存在しなかった「文化英雄イライ.ジャ・ベイリ...
肉体を持って語りかけてきたようだった。
ダニ一ルの肩をそっと抱いて、笑顔でゆっくりと手を振り、
ペロ.ラットが目をそらした隙に、知らないうちに去っていって...
ダニ一ルは黙りこみ、そのまぼろしの背中を追うように遠くを...
金属でできたロボットの体のいったいどこから、こんな声が出...
「その言葉は…」
あまりの驚きに声が上ずる。
「地球の言葉です。あの方の最期の言葉です」
「あなたは今…いや、彼の人はかつて、あなたに何とおっしゃっ...
「ご自分の死に動揺するな、と。そんな取るに足りないことよ...
この宇宙のすべてのものが織り成す、
美しく精緻なタピストリーのことをよく考えろ、と、私にそう...
あの方自らの意識が、もう二度と戻れない場所まで行ってしま...
まさにその直前であったというのに」
ロボットは、自らの左手首を右手で強く握り締めながら言葉を...
「あの方の言葉が無ければ――私はロボットですから――
私の頭脳は恐慌状態に陥ったのち、ほどなく機能停止に陥って...
あんなに弱りきった体で、あの方は私にこの言葉を伝えてくだ...
それは酷い苦しみだったに違いありません。
以来ずっと、あの方の苦しみを考えてきました。
けれどもそのうち、私には決して理解ができないだろうことが...
私には、そもそも死というものがありませんから」
ロボットは言葉をやめない。隣に人間がいるのも、とっくに忘...
「あの方にこの命を頂き、生きる目的も示していただきました。
獣のようにただ存在を続けるだけの、みじめな在り方から救っ...
あの方は最期に、死ぬことのない私に、人間としてごく当たり...
それでいてこの上なく気高い行動を示してくださいました。
死に一人で対面するという。誰も道連れにしてはいけない、と...
その絶対的な孤独に比べれば、今の私が一人でいることなど、...
そうは言うものの、口をつぐんだ彼は、
表情のない顔に、今までとは違った寂しげな雰囲気を纏わりつ...
「けれども…」
後に付いていたペロ.ラットには、そう呟いたロボットの表情は...
「けれども、時々考えるのです。矛盾しているとは思いながら。
あの方がかつてのように、命じてくださっていたら…
いや、そうでなくてもいい、根源的な存在の消滅に向かう恐怖...
たわいのないうわごとで良かった。
もし、あの方が、『一緒に来てくれ』と仰ったなら…
そう言って私に手を差し伸べて来られたならば…
命に代えて、尊厳に代えて、絶対にそのようなことはなさらな...
ロボットは立ち止まり、虚空を見上げながら、独り言のように...
「私はあの方のおそばを決して離れはしなかったでしょうに」
孤島の洞穴に吹きすさぶ風のように、彼の言葉は空気の中に流...
立ち止まったロボットが優雅な動作で手を動かすと、目の前に...
足を進めたその先に、は白く大きな円形状の部屋があった。
天井は高く、見上げていると眩暈がするような錯覚に襲われた。
ペロ.ラットの横を通り過ぎたロボットは、その空間の中心で立...
そのままゆっくりと両腕を大きく広げた。
すると、彼の指先から、白い部屋に限りなく青が広がっていく。
身が竦むような驚きに満たされ、しばし茫然自失としていたペ...
彼ら二人が、ただひたすらに青い空間の真ん中に立っているの...
目を上げると、見たことも無い程に澄み切った青空がある。
足元には、空の色より青い水が穏やかに波打っていた。
その水の行方を目でたどると、ずっと遠くのほうで、
上方の青と、下方の青が淡く交じり合い、優しい線が描かれて...
目に沁みるような青が、世界の果てまでも、どこまでも続いて...
「この映像は…」
「あなたの求めていたものです。
あなたは人類の発祥の地のことを知りたがっていらっしゃいま...
これが、最初に生命が生まれた場所です。
かつて地球の七割を占めていた塩水の中から、彼らは誕生した...
ロボットは、ペロ.ラットに背中を向けたままで言う。
「あなたにこの光景をお見せしたかった」
「…イライ.ジャ・ベイリの代わりにですか?」
答えは返ってこない。
自分でもなぜそのようなことを言ったのかよくわからないまま、
ペロ.ラットはロボットのそばへ近づいて行き、さらに言葉をつ...
「あなたを責めているというのではありません。
ただ、あなたは先ほど、かの人の苦しみについてばかり語られ...
それは違うと思うのです。死の床にあってさえも、あなたをそ...
そんなに強く苦しみだけを感じていたはずはありません。
かの人も幸せを感じていたはずなのです。本当です。
あなたが、かの人と共に居ることに喜びを感じていらしたよう...
それを聞いても、ロボットは身じろぎもせずに立ちつくしてい...
左手首の装飾品が、光を受けてきらめいた。
「そのようなことについては、私は昔からずっと、理解ができ...
私はロボットですから、感情などは持ち合わせてはいませんし、
それに、私の体は鉄でできています。
あなた方と違って、私はこの海から生まれたものではないので...
こんなに異なる私たちが、全く同じように『感じる』ことなど...
ペロ.ラットはロボットの横顔を見上げた。
彼の端整な顔立ちは、相変わらず無表情のままだった。
けれども、唯一、彼の青い両の瞳は、先程とは全く違う光を湛...
その目の中には、あまりにも人間的な、ひたむきで激しい感情...
今は遠く届かない存在への、決して尽きることの無い、深い愛...
こんな表情を浮かべているのに、どうして彼はこんなちぐはぐ...
そうペロ.ラットは一瞬考え、すぐに理由に思い当たり愕然とし...
…彼はロボットなのだ。
それでも、ペロ.ラットはどうしても黙っていられずに口を開く...
「あなたの仰るとおり、確かに、あなたは我々と同じではあり...
けれど、あなたの知性や心は、我々人間と何ら変わりないもの...
このような大きな共通点に比べれば、そのほかの相違点などは...
ロボットがペロ.ラットを見下ろしてくる。幾千もの思いの詰ま...
「ですから、もし古代の人々が信じていたように、
肉体を失った後にどこか休むための場所があるならば、
その門はあなたにもきっと開かれているのではないでしょうか。
あなたの心は、いずれその場所に行き着くことができるのでは...
いささか、非科学的なものいいですが、私には心からそう感じ...
「あなたは、そのように思われるのですね…」
「はい」
その場所はしんと静まり返っていた。水際にあるべきさざ波の...
青い空間がどこまでも広がり、動くものは何も無かった。
ペロ.ラットは時の止まったような静けさの中で考える。
人間でもロボットでもない、世界にたった一人きりの彼は、こ...
いつかこの場所に、あの懐かしい足音が聞こえて来る日をじっ...
「私は――」
ふいに何かを言いかけたロボットが口をつぐむ。
遠い答えを待ちわびるように、彼は澄んだ青い目を天にさまよ...
その瞳と同じ色の静寂の中にひとり立ち、じっと痛みを堪える...
「私は、あなたがたを、人類を、心から愛しています…」
ロボットはゆっくりと微笑んで、悲しい程の強さで、左の手首...
____________
| __________ | ナガナガト ゴメンナサイ
| | .| | ヨンデクレ...
| | □ STOP .| | >199タソ ウンメ...
| | .| | Λ...
| | .| | ピッ (...
| | .| | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ̄...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 夢中になって読んだ……!!!作者さんに心からお礼が言いた...
- このお話を読むことができて幸いです。作者様に感謝を。 --...
- 泣きました。作者様ほんとうにありがとうございます!ダニ...
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二万年。
そんな月日をたった一人で生き続けるというのは、一体どんな...
歴史学者のペロ.ラットは、伝説のロボットのR・ダニ一ル・オ...
そんな答えの出ない疑問を、宇宙の果てについて考えるように...
ロボットは椅子に腰掛けて、静かな視線を投げかけてきている。
一分の隙も無く整った容貌の冷たい美しさと、それにもかかわ...
その全身から滲み出る哀しげな倦怠に心を押しつぶされそうに...
ペロ.ラットは懸命に口を開いた。
「あなたの話を聞かせてくれませんか」
目の前のロボットは黙りこくったまま動かない。
「私にはあなたの記憶を分かち合って、あなたと一緒に人類に...
そちらについては、先ほど理解しました。
だから、せめて、あなたをここまで突き動かしたものを知って...
「一人の学者として、ですか?」
「いえ、私の個人的な関心として。一人の人間として」
質問を発した後、なおもロボットは黙っている。
「あなたは、私に話をしたがっているのではないでしょうか」
ペロ.ラットが挑むように言うと、しばしの沈黙のあと、ロボッ...
頭ひとつ背の高い彼の、見下ろす青い目は優しい表情を浮かべ...
その姿は、宇宙全体を統べる存在というよりもむしろ、
中世の書物に出てくる絵のような、神に仕える高位の司祭を思...
真摯な、報われない忠誠を何かにささげている敬虔さを、
ペロ.ラットは彼に痛いほどひしひしと感じていた。
「わかりました。お話致しましょう」
そう言うと彼はゆっくりと立ち上がり、歩き始める。
その時、ロボットの左手首がきらめき、
そこに何か細い腕輪のようなものが巻かれているのが見えた。
古代の装飾品だろうか。それとも、何か大事なことに必要な道...
歴史を良く知るペロ.ラットにすら、それが何を意味するのかわ...
「私が語るのは歴史ではありません。ですから、あなたは少々...
あなた方の言葉で言えば、単なる『思い出話』に過ぎないので...
あなたはそれでもよろしいのでしょうか」
彼らは長い廊下を歩いていた。ペロ.ラットが承諾すると、その...
ロボットは少しずつ語り始めた。
彼を作った宇宙人のこと、旧友のロボットのこと、
そして、かの有名な文化英雄「イライ.ジャ・ベイリ」のこと。
「『イライ.ジャ・ベイリ』とは、いったいどのような人間だっ...
ある地の民間伝承によると、彼は七日七晩で自らの宇宙船を無...
他の星々に星間移民を説いて回ったなどという逸話が残ってい...
それを聞くと、ロボットは驚いた様子も見せずに答える。
「いいえ、そのようなことはなさいませんでした。
したくともできなかったでしょう。あの方は地球人でしたから」
「『地球人』?…ああ、彼はあの星で生まれたのですね。
イライ.ジャ・ベイリが地球人であったことに、何か関係がある...
ロボットは仰向き、今では放射能物質の塊でしかない、鈍色を...
「地球という星の特性について、少しお話させていただいてよ...
「ええ」
「かつて80億の地球人は、巨大な鋼鉄のドームの中で暮らし...
彼らは通常、生まれてから死ぬまで、その中から一歩も外に出...
その鋼鉄の洞窟から、最初の一歩を踏み出したのがあの方だっ...
あなたが仰る様な形ではなく、半ば強制的に連れ出されるよう...
このようなことをお話してしまったら、あの方はお怒りになる...
少し考えるように言葉を切り、ロボットは再び口を開く。
「あの方は『そと』に出るということに大変な恐怖を感じてい...
あなた方には想像ができないかもしれませんね。頑丈な壁の中...
四方に何も無い、むき出しの戸外に身をさらす時、
いかに大きな恐れを感じうるか、ということが。
私はそのような地球人の特性を知っていましたから、
『そと』の恐怖から守ろうと、できうる限りのことをしようと...
けれど、あの方はそれを拒まれました」
そこで言葉を少し切って、ロボットは黙り込む。
「あなたは、お疲れではないでしょうか?」
自分ばかり喋りすぎてしまったと感じているのか、そうペロ.ラ...
「いいえ、全く。そのまま続けてください」
彼はそう促すと、ロボットは、そうですか、と相槌を打ち、話...
「私の回路には戸外への恐怖は組み込まれていないので、
あなただけでなく、私にも、あの方の正確なご気分を想像する...
けれど、あの方にとって、昼間の白い太陽が夕方には赤く染ま...
地平線のかなたへ姿を隠すなどということは理不尽の極みでし...
天から水が滴り、轟音とともに空から電気が降って来るなどと...
到底理解できない現象でした。
けれど、そのような状況に直面しても、あの方はすべてを耐え...
決して、易々とではありません。
手ひどく苦しみ、恐怖に震えながらも、果敢に立ち向かって行...
「イライ.ジャ・ベイリの、苦しみに満ちた最初の一歩のおかげ...
現在の我々人類が現在の形で在るということですね」
「あなた方人間だけではありません。私もそうなのです」
ロボットの声が少し小さくなり、ペロ.ラットは思わずその顔を...
その端整な顔立ちには相変わらず、何の表情も浮かんでいなか...
「決して意図した訳ではありませんが、私があの方を苦しめて...
最期にお会いしに行った時、あの方は『もう疲れた、死にたい...
私が、あの方の死の時間を引き延ばしてしまったのです」
「…もしかするとあなたは、イライ.ジャ・ベイリに対する贖罪...
このようなことを続けているのですか?」
ペロ.ラットの胸に一抹の不安が過ぎり、彼はロボットに尋ねた...
「それは違います。あの方がいなくなってしまった世界で、私...
起こったことを実際に変えられるわけがないのですから。
私はただ、あの方が生きていらっしゃった時の苦しみや、
そうまでしてあの方が成し遂げられた事が全くの無に帰してし...
あまりにも忍びないことだと感じているだけです」
ロボットが溜息を一つついた。
無表情な顔に似合わずその仕草があまりにも人間的だったので...
「あの方の行為が、今も私を生かしています」
先ほどからずっと、ロボットの問わず語りを聞いていたペロ.ラ...
一つの考えが組み合わさる。自分でそれを訝しみながらも、彼...
「こんなぶしつけなことを言う私をお許しください」
ロボットの青い目が向けられる。
「あなたは彼に愛情を抱いていたのですね」
痛々しいような気持ちで、ペロ.ラットはそう聞いてみた。
ロボットは、二、三度瞬きをして、また視線を正面に戻し、
先ほどよりは、幾分自信のなさそうな声で呟いた。
「それも違うと思います。私にはそもそも感情というものがあ...
人類に平等に奉仕しなければならないという使命を負った存在...
けれど、あの方が私を気に懸けていてくださったから、
私はこうして両足で立っています。それは確かなことです」
彼らはしばし、黙りこくって歩みを進めた。
すると突然、ペロ.ラットの耳に聞きなれない言葉が飛び込んで...
彼は隣のロボットの顔を思わず見上げた。
小さな、しかし張りのある声で、ロボットは何かを呟いていた。
その声の温かさに竦んで、ペロ.ラットは思わず立ち止まり、耳...
発せられた言葉があまりに古すぎて、彼に理解できる単語はほ...
けれどもそんなことは問題ではなかった。
ひどく優しい声だった。
その響きは、祈りの言葉の響きに少し似ていた。
ペロ.ラットは、直感的に、この声はロボットの言う「あの方」...
伝説の中にしか存在しなかった「文化英雄イライ.ジャ・ベイリ...
肉体を持って語りかけてきたようだった。
ダニ一ルの肩をそっと抱いて、笑顔でゆっくりと手を振り、
ペロ.ラットが目をそらした隙に、知らないうちに去っていって...
ダニ一ルは黙りこみ、そのまぼろしの背中を追うように遠くを...
金属でできたロボットの体のいったいどこから、こんな声が出...
「その言葉は…」
あまりの驚きに声が上ずる。
「地球の言葉です。あの方の最期の言葉です」
「あなたは今…いや、彼の人はかつて、あなたに何とおっしゃっ...
「ご自分の死に動揺するな、と。そんな取るに足りないことよ...
この宇宙のすべてのものが織り成す、
美しく精緻なタピストリーのことをよく考えろ、と、私にそう...
あの方自らの意識が、もう二度と戻れない場所まで行ってしま...
まさにその直前であったというのに」
ロボットは、自らの左手首を右手で強く握り締めながら言葉を...
「あの方の言葉が無ければ――私はロボットですから――
私の頭脳は恐慌状態に陥ったのち、ほどなく機能停止に陥って...
あんなに弱りきった体で、あの方は私にこの言葉を伝えてくだ...
それは酷い苦しみだったに違いありません。
以来ずっと、あの方の苦しみを考えてきました。
けれどもそのうち、私には決して理解ができないだろうことが...
私には、そもそも死というものがありませんから」
ロボットは言葉をやめない。隣に人間がいるのも、とっくに忘...
「あの方にこの命を頂き、生きる目的も示していただきました。
獣のようにただ存在を続けるだけの、みじめな在り方から救っ...
あの方は最期に、死ぬことのない私に、人間としてごく当たり...
それでいてこの上なく気高い行動を示してくださいました。
死に一人で対面するという。誰も道連れにしてはいけない、と...
その絶対的な孤独に比べれば、今の私が一人でいることなど、...
そうは言うものの、口をつぐんだ彼は、
表情のない顔に、今までとは違った寂しげな雰囲気を纏わりつ...
「けれども…」
後に付いていたペロ.ラットには、そう呟いたロボットの表情は...
「けれども、時々考えるのです。矛盾しているとは思いながら。
あの方がかつてのように、命じてくださっていたら…
いや、そうでなくてもいい、根源的な存在の消滅に向かう恐怖...
たわいのないうわごとで良かった。
もし、あの方が、『一緒に来てくれ』と仰ったなら…
そう言って私に手を差し伸べて来られたならば…
命に代えて、尊厳に代えて、絶対にそのようなことはなさらな...
ロボットは立ち止まり、虚空を見上げながら、独り言のように...
「私はあの方のおそばを決して離れはしなかったでしょうに」
孤島の洞穴に吹きすさぶ風のように、彼の言葉は空気の中に流...
立ち止まったロボットが優雅な動作で手を動かすと、目の前に...
足を進めたその先に、は白く大きな円形状の部屋があった。
天井は高く、見上げていると眩暈がするような錯覚に襲われた。
ペロ.ラットの横を通り過ぎたロボットは、その空間の中心で立...
そのままゆっくりと両腕を大きく広げた。
すると、彼の指先から、白い部屋に限りなく青が広がっていく。
身が竦むような驚きに満たされ、しばし茫然自失としていたペ...
彼ら二人が、ただひたすらに青い空間の真ん中に立っているの...
目を上げると、見たことも無い程に澄み切った青空がある。
足元には、空の色より青い水が穏やかに波打っていた。
その水の行方を目でたどると、ずっと遠くのほうで、
上方の青と、下方の青が淡く交じり合い、優しい線が描かれて...
目に沁みるような青が、世界の果てまでも、どこまでも続いて...
「この映像は…」
「あなたの求めていたものです。
あなたは人類の発祥の地のことを知りたがっていらっしゃいま...
これが、最初に生命が生まれた場所です。
かつて地球の七割を占めていた塩水の中から、彼らは誕生した...
ロボットは、ペロ.ラットに背中を向けたままで言う。
「あなたにこの光景をお見せしたかった」
「…イライ.ジャ・ベイリの代わりにですか?」
答えは返ってこない。
自分でもなぜそのようなことを言ったのかよくわからないまま、
ペロ.ラットはロボットのそばへ近づいて行き、さらに言葉をつ...
「あなたを責めているというのではありません。
ただ、あなたは先ほど、かの人の苦しみについてばかり語られ...
それは違うと思うのです。死の床にあってさえも、あなたをそ...
そんなに強く苦しみだけを感じていたはずはありません。
かの人も幸せを感じていたはずなのです。本当です。
あなたが、かの人と共に居ることに喜びを感じていらしたよう...
それを聞いても、ロボットは身じろぎもせずに立ちつくしてい...
左手首の装飾品が、光を受けてきらめいた。
「そのようなことについては、私は昔からずっと、理解ができ...
私はロボットですから、感情などは持ち合わせてはいませんし、
それに、私の体は鉄でできています。
あなた方と違って、私はこの海から生まれたものではないので...
こんなに異なる私たちが、全く同じように『感じる』ことなど...
ペロ.ラットはロボットの横顔を見上げた。
彼の端整な顔立ちは、相変わらず無表情のままだった。
けれども、唯一、彼の青い両の瞳は、先程とは全く違う光を湛...
その目の中には、あまりにも人間的な、ひたむきで激しい感情...
今は遠く届かない存在への、決して尽きることの無い、深い愛...
こんな表情を浮かべているのに、どうして彼はこんなちぐはぐ...
そうペロ.ラットは一瞬考え、すぐに理由に思い当たり愕然とし...
…彼はロボットなのだ。
それでも、ペロ.ラットはどうしても黙っていられずに口を開く...
「あなたの仰るとおり、確かに、あなたは我々と同じではあり...
けれど、あなたの知性や心は、我々人間と何ら変わりないもの...
このような大きな共通点に比べれば、そのほかの相違点などは...
ロボットがペロ.ラットを見下ろしてくる。幾千もの思いの詰ま...
「ですから、もし古代の人々が信じていたように、
肉体を失った後にどこか休むための場所があるならば、
その門はあなたにもきっと開かれているのではないでしょうか。
あなたの心は、いずれその場所に行き着くことができるのでは...
いささか、非科学的なものいいですが、私には心からそう感じ...
「あなたは、そのように思われるのですね…」
「はい」
その場所はしんと静まり返っていた。水際にあるべきさざ波の...
青い空間がどこまでも広がり、動くものは何も無かった。
ペロ.ラットは時の止まったような静けさの中で考える。
人間でもロボットでもない、世界にたった一人きりの彼は、こ...
いつかこの場所に、あの懐かしい足音が聞こえて来る日をじっ...
「私は――」
ふいに何かを言いかけたロボットが口をつぐむ。
遠い答えを待ちわびるように、彼は澄んだ青い目を天にさまよ...
その瞳と同じ色の静寂の中にひとり立ち、じっと痛みを堪える...
「私は、あなたがたを、人類を、心から愛しています…」
ロボットはゆっくりと微笑んで、悲しい程の強さで、左の手首...
____________
| __________ | ナガナガト ゴメンナサイ
| | .| | ヨンデクレ...
| | □ STOP .| | >199タソ ウンメ...
| | .| | Λ...
| | .| | ピッ (...
| | .| | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ̄...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 夢中になって読んだ……!!!作者さんに心からお礼が言いた...
- このお話を読むことができて幸いです。作者様に感謝を。 --...
- 泣きました。作者様ほんとうにありがとうございます!ダニ...
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