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#title(12doors) [#k9cd3e24]
ヤツはなにも知らない。世間知らずのひよっこだ。
突然口付けそのまま抱きしめ離れずにいる俺に、ヤツは目を...
「どどどうしたんだ、ジャック?!」
しゃべる言葉までどもるほどの慌てぶり。だがそれを笑う余...
がしっと抱きつき力いっぱい抱きしめている俺の背中をわた...
「く、くる…くる…」と言っているのは鳩の真似でもなんでもな...
「苦しい」とでも言いたいんだろうな。
頭の隅っこでそんな呑気なことを考えて、ヤツの肩口に顔を...
合わさった胸からいやに早い鼓動がダイレクトに伝わってきた。
なんだか安心する。そして少し、苦しい。
そのうちにヤツは漂う血臭に我に返ったようで、
俺の肩を両手でつかみ無理やり引き剥がすと、
「と、とにかくうちに帰って手当てをしよう!」
と真っ赤な顔で強く言い切った。
それから引っ張られるようにして家に帰り、
ヤツが必死に手当てを施している間も俺は一度も口を開かなか...
ヤツが心配しているのは分かる。ひでぇ顔をしているのも分か...
時折伺うように俺の顔を覗き込むヤツの顔をぼんやりと視界に...
俺は胸の中で暴れる感情を持て余していた。
もうすぐ終わるかもしれない俺の人生。残していくこいつの...
離れなければならないと分かっているのに、なぜか今目の前に...
離れなければならない。だが、離れられない。
相反する矛盾した感情が、しんと冷えた胸の奥でお互いを排...
「…仕事でなにかあったのか?」
へたれた俺が発する無言の重苦しい雰囲気に耐え切れなくな...
腕に包帯を巻きながらヤツが尋ねてくる。
うんともすんとも答えない俺にヤツはちらりと俺の顔を見て、...
「…怪我をするようなへまを犯したから、落ち込んでいるとか…?
でも、これくらいなら大丈夫だよ、ジャック。見かけほどにひ...
今度は励ましにかかったようだ。「な?」と笑顔を向けてく...
そんな理由で落ち込んでいるわけではないからだ。
いつもならここで笑顔を返す。見当違いのことでもヤツが俺...
それは純粋に嬉しいことだ。しかし今は、笑うことなんか出来...
ただ、今笑ってしまうのは、今顔の筋肉を動かすのは、非常に...
「ジャック…」
反応しない俺にヤツの笑顔は困惑の表情に変わり、少しの逡...
「…なにか、怖いことでもあったのか?」
「…怖いこと?」
思わぬ言葉を口にされて、俺は思わず鸚鵡返しに聞き返して...
ヤツは言葉にせずに頷くだけにとどめ、「恐怖に震えている...
俺の頭を優しく腕の中にくるみ、耳元で囁いてくる声音は心配...
怖い。恐怖。ああ、そうか、これは恐怖なのか。俺は怖いの...
ぼんやりとそう思うと、途端に喉の奥からなにかせりあがっ...
そうだ、俺は怖い。怖くて怖くてたまらない。
もうすぐ死ぬことも、ヤツを置いていくことも、ヤツから離...
今よりももっと差し迫った状況で命の危機に面したあの時よ...
あの時と違うのは、考える時間が出来てしまっていること。大...
真綿で首を絞められているようだ。じわじわと迫り来る終わり...
情けない。情けない。情けない。
それでも…怖い。
息が苦しくなって、闇に飲まれてしまったような錯覚に陥る...
今までなんとなくあると信じてきた未来がすっぽり闇に飲み込...
ただの一歩すら前に出せない。
そして、居ても立ってもいられなくなるほどの――恐怖。
「っ!」
しがみ付くように、すがりつくように、ヤツの体をきつく強...
「ジャック?」という驚きを含んだヤツの声を聞いても力を緩...
ヤツは少しの間を置いたあと、俺がいつもそうするように宥...
いつもと立場が逆転していた。今まで保護者気取りしてきたっ...
これじゃ日ごろの面目がたたねぇな、と思うと泣けてきた。
せりあがってくる涙に泣くもんかと息を飲み込むと、喉の奥が...
一瞬硬くなった俺の体にヤツはそっと距離をとり、俺の顔を...
「…ジャック、無理はするな。息を吐け」
そうして俺の顎に手をかけ指で無理やり口をこじ開けようと...
それを振り払おうと顔を背けると、強引に前を向かされ触れる...
驚きに思わず唇が開いた。ふっと息が漏れる。間近から俺の...
安心したように目尻を下げた。
「…やっと息を吐いたな。このままじゃ窒息するところだったぞ...
無邪気に笑ってそう言うヤツに、てんぱっていた俺は自分の...
俺はバカだ。考えるのは苦手だ。中華料理みたいな名前の博...
そんな名前の博士が言っていた話も半分も理解できなかった。
ちゃんと会話を成り立たせていたヤツとは違う。頭のメモリは...
それでも色々考えた。それでも必死に考えた。特効薬なんか...
逃れる道はない。突破口なんかどこにも…見当たりすりゃしない...
俺は死ぬんだ。ヤツとは別れるんだ。離れなきゃならないん...
分かっているけど……感情を理性で押さえられりゃ、そもそも...
恐怖に混乱が重なり沸きあがった衝動を堪える抑止力すら働...
無垢な笑顔で発破をかけてくれたヤツに、俺は強引に口付け...
さっきヤツがやったような触れるだけなんて甘っちょろいも...
不意をつかれて驚き開きかけたヤツの唇の間に無理やり舌をね...
「ちょ…ジャッ…!」
なにか言おうとしているヤツの言葉ごと唇でふさぎ、そのま...
驚き慌てているだけのヤツを押し倒すのは簡単だった。
「…お前、これがなんだか知っていてやったのか…?」
ヤツの腹を跨ぐようにして足を置き、呆然と見上げてくる目...
低い声で問いかけると、ヤツは目を見開いたまま「き、キスだ...
「ふぅん…知ってるんだ。…だったらどんな関係のヤツらがやる...
「知っている。親子とか、恋人とか…」
知ってんのか。なら話は早い。
息が吐きかかるほど近くまでぐっと顔を寄せ、くすりと息だ...
「ジャック…どうしたんだ、なんか雰囲気が怖いぞ…」
一瞬怯んだように声を掠れさせたヤツに、
俺は床についていた右手を滑らせるようにしてヤツの左胸に置...
「…なら訊くが、お前一体どういうつもりでこんなことした?」
声を低めて囁くように問うと、右手の下の心臓がトンと跳ね...
今までも早かったけど、更に早くなった。
「まさか親子のつもりとかは言わねぇよな?」
無言。だけど心臓の動きは正直だ。血の巡りが早くなって、...
なんだかひどく残酷な気分になる。無邪気なお前。子供のよ...
子供なんだ。まだ生まれたばかりの人間。
汚したくなると思う一方で、こんなことは今すぐやめるべき...
これから別れるのに、もう離れなければならないのに、余計な...
俺が死んだあともおそらくまっとうにまっすぐ生きていくだ...
……これから死ぬ人間と、これ以上余計な関わりを持たせるな...
分かっているさ。こいつは希望の星。この世のどこにもいな...
これから子孫を残さなけりゃならないんだろ?分かっている。
だけど、この衝動はもう止められそうにない。
だから。
俺は瞠目したままのヤツの目尻に唇を落とし、そのまま耳元...
「…なら、セックスってのは知ってるか…?」
ヤツの目が一瞬きょとんと丸くなり、すぐにぱっと赤くなっ...
「だ、男女の、せ、性交のこと…だろう…」
目をそらしてぽつりと言う。その声は上ずり、心臓は今まで...
俺はにやりと性格が悪そうな笑みを浮かべ、体を起こす。そ...
ヤツが慌てて身を起こしかけた。
その動きを止めて、ヤツのジーンズの止め具に指をかける。
「…なにも、男と女だけが出来るってもんでもないんだぜ」
唇には笑みを浮かべたまま、目だけをヤツに向けて意味あり...
ことさらゆっくりジッパーを下ろし、左手を前について身を...
固まっているヤツの耳元に顔を寄せる。
「…教えてやるよ。お前がまだ知らない、世の中の楽しみ方を」
勢いよく振り向いた顔。瞠目したままの目。なにかを言わん...
するりと中に入り込んだ俺の右手にぎょっと肩を跳ね上げて、...
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ヤツはなにも知らない。世間知らずのひよっこだ。
突然口付けそのまま抱きしめ離れずにいる俺に、ヤツは目を...
「どどどうしたんだ、ジャック?!」
しゃべる言葉までどもるほどの慌てぶり。だがそれを笑う余...
がしっと抱きつき力いっぱい抱きしめている俺の背中をわた...
「く、くる…くる…」と言っているのは鳩の真似でもなんでもな...
「苦しい」とでも言いたいんだろうな。
頭の隅っこでそんな呑気なことを考えて、ヤツの肩口に顔を...
合わさった胸からいやに早い鼓動がダイレクトに伝わってきた。
なんだか安心する。そして少し、苦しい。
そのうちにヤツは漂う血臭に我に返ったようで、
俺の肩を両手でつかみ無理やり引き剥がすと、
「と、とにかくうちに帰って手当てをしよう!」
と真っ赤な顔で強く言い切った。
それから引っ張られるようにして家に帰り、
ヤツが必死に手当てを施している間も俺は一度も口を開かなか...
ヤツが心配しているのは分かる。ひでぇ顔をしているのも分か...
時折伺うように俺の顔を覗き込むヤツの顔をぼんやりと視界に...
俺は胸の中で暴れる感情を持て余していた。
もうすぐ終わるかもしれない俺の人生。残していくこいつの...
離れなければならないと分かっているのに、なぜか今目の前に...
離れなければならない。だが、離れられない。
相反する矛盾した感情が、しんと冷えた胸の奥でお互いを排...
「…仕事でなにかあったのか?」
へたれた俺が発する無言の重苦しい雰囲気に耐え切れなくな...
腕に包帯を巻きながらヤツが尋ねてくる。
うんともすんとも答えない俺にヤツはちらりと俺の顔を見て、...
「…怪我をするようなへまを犯したから、落ち込んでいるとか…?
でも、これくらいなら大丈夫だよ、ジャック。見かけほどにひ...
今度は励ましにかかったようだ。「な?」と笑顔を向けてく...
そんな理由で落ち込んでいるわけではないからだ。
いつもならここで笑顔を返す。見当違いのことでもヤツが俺...
それは純粋に嬉しいことだ。しかし今は、笑うことなんか出来...
ただ、今笑ってしまうのは、今顔の筋肉を動かすのは、非常に...
「ジャック…」
反応しない俺にヤツの笑顔は困惑の表情に変わり、少しの逡...
「…なにか、怖いことでもあったのか?」
「…怖いこと?」
思わぬ言葉を口にされて、俺は思わず鸚鵡返しに聞き返して...
ヤツは言葉にせずに頷くだけにとどめ、「恐怖に震えている...
俺の頭を優しく腕の中にくるみ、耳元で囁いてくる声音は心配...
怖い。恐怖。ああ、そうか、これは恐怖なのか。俺は怖いの...
ぼんやりとそう思うと、途端に喉の奥からなにかせりあがっ...
そうだ、俺は怖い。怖くて怖くてたまらない。
もうすぐ死ぬことも、ヤツを置いていくことも、ヤツから離...
今よりももっと差し迫った状況で命の危機に面したあの時よ...
あの時と違うのは、考える時間が出来てしまっていること。大...
真綿で首を絞められているようだ。じわじわと迫り来る終わり...
情けない。情けない。情けない。
それでも…怖い。
息が苦しくなって、闇に飲まれてしまったような錯覚に陥る...
今までなんとなくあると信じてきた未来がすっぽり闇に飲み込...
ただの一歩すら前に出せない。
そして、居ても立ってもいられなくなるほどの――恐怖。
「っ!」
しがみ付くように、すがりつくように、ヤツの体をきつく強...
「ジャック?」という驚きを含んだヤツの声を聞いても力を緩...
ヤツは少しの間を置いたあと、俺がいつもそうするように宥...
いつもと立場が逆転していた。今まで保護者気取りしてきたっ...
これじゃ日ごろの面目がたたねぇな、と思うと泣けてきた。
せりあがってくる涙に泣くもんかと息を飲み込むと、喉の奥が...
一瞬硬くなった俺の体にヤツはそっと距離をとり、俺の顔を...
「…ジャック、無理はするな。息を吐け」
そうして俺の顎に手をかけ指で無理やり口をこじ開けようと...
それを振り払おうと顔を背けると、強引に前を向かされ触れる...
驚きに思わず唇が開いた。ふっと息が漏れる。間近から俺の...
安心したように目尻を下げた。
「…やっと息を吐いたな。このままじゃ窒息するところだったぞ...
無邪気に笑ってそう言うヤツに、てんぱっていた俺は自分の...
俺はバカだ。考えるのは苦手だ。中華料理みたいな名前の博...
そんな名前の博士が言っていた話も半分も理解できなかった。
ちゃんと会話を成り立たせていたヤツとは違う。頭のメモリは...
それでも色々考えた。それでも必死に考えた。特効薬なんか...
逃れる道はない。突破口なんかどこにも…見当たりすりゃしない...
俺は死ぬんだ。ヤツとは別れるんだ。離れなきゃならないん...
分かっているけど……感情を理性で押さえられりゃ、そもそも...
恐怖に混乱が重なり沸きあがった衝動を堪える抑止力すら働...
無垢な笑顔で発破をかけてくれたヤツに、俺は強引に口付け...
さっきヤツがやったような触れるだけなんて甘っちょろいも...
不意をつかれて驚き開きかけたヤツの唇の間に無理やり舌をね...
「ちょ…ジャッ…!」
なにか言おうとしているヤツの言葉ごと唇でふさぎ、そのま...
驚き慌てているだけのヤツを押し倒すのは簡単だった。
「…お前、これがなんだか知っていてやったのか…?」
ヤツの腹を跨ぐようにして足を置き、呆然と見上げてくる目...
低い声で問いかけると、ヤツは目を見開いたまま「き、キスだ...
「ふぅん…知ってるんだ。…だったらどんな関係のヤツらがやる...
「知っている。親子とか、恋人とか…」
知ってんのか。なら話は早い。
息が吐きかかるほど近くまでぐっと顔を寄せ、くすりと息だ...
「ジャック…どうしたんだ、なんか雰囲気が怖いぞ…」
一瞬怯んだように声を掠れさせたヤツに、
俺は床についていた右手を滑らせるようにしてヤツの左胸に置...
「…なら訊くが、お前一体どういうつもりでこんなことした?」
声を低めて囁くように問うと、右手の下の心臓がトンと跳ね...
今までも早かったけど、更に早くなった。
「まさか親子のつもりとかは言わねぇよな?」
無言。だけど心臓の動きは正直だ。血の巡りが早くなって、...
なんだかひどく残酷な気分になる。無邪気なお前。子供のよ...
子供なんだ。まだ生まれたばかりの人間。
汚したくなると思う一方で、こんなことは今すぐやめるべき...
これから別れるのに、もう離れなければならないのに、余計な...
俺が死んだあともおそらくまっとうにまっすぐ生きていくだ...
……これから死ぬ人間と、これ以上余計な関わりを持たせるな...
分かっているさ。こいつは希望の星。この世のどこにもいな...
これから子孫を残さなけりゃならないんだろ?分かっている。
だけど、この衝動はもう止められそうにない。
だから。
俺は瞠目したままのヤツの目尻に唇を落とし、そのまま耳元...
「…なら、セックスってのは知ってるか…?」
ヤツの目が一瞬きょとんと丸くなり、すぐにぱっと赤くなっ...
「だ、男女の、せ、性交のこと…だろう…」
目をそらしてぽつりと言う。その声は上ずり、心臓は今まで...
俺はにやりと性格が悪そうな笑みを浮かべ、体を起こす。そ...
ヤツが慌てて身を起こしかけた。
その動きを止めて、ヤツのジーンズの止め具に指をかける。
「…なにも、男と女だけが出来るってもんでもないんだぜ」
唇には笑みを浮かべたまま、目だけをヤツに向けて意味あり...
ことさらゆっくりジッパーを下ろし、左手を前について身を...
固まっているヤツの耳元に顔を寄せる。
「…教えてやるよ。お前がまだ知らない、世の中の楽しみ方を」
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