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#title(他人の花)
※ナマモノ注意、枯れ専注意
昇天の紫緑です。
時系列は紫が馬さんの鞄持ちから前座見習いになったかならな...
冒頭の人はコエンユさんのつもりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「……師匠?」
諌めるつもりは微塵もなかった。ただ単純に驚きを隠せず、...
「……ああ、ああ、お前さんかい」
場数を踏んだ師匠方のこと、狼狽の色はさすがに隠しきれな...
と、思いきや。
「いやね、こいつ育ちが育ちだからいやにこう……いろっぺえ...
あまった襟首から覗く、うなじから首筋にかけての線を舐め...
「師匠は細いですよね」
「知ってるか?目方が50越えたことねえんだとよ」
それ自体は初耳だったが、その出自は有名だった。女郎屋を...
妻子持ちとなっても慣習が改められることはなく、夜一食と...
従って朝は弱く、仕事の時間が早い時は前もって楽屋で仮眠...
「女と化粧でしたか、あれは大変素晴らしかったですね」
「ぞっとするぜ、うちのかかあもあんなもんだからな」
先達はさておいて、同年代の噺家と廓話の巧拙を比べると、...
遊女の化粧を再現しただけという余芸ですら、寄席の時間調...
「そうそう、プロデューサーがお呼びです」
「なんだい、早く言えよ」
「すみません」
ふん、と鼻を鳴らして慌ただしく出て行った背中が見えなく...
並べた座布団の上で、あの芸の締めにっこりと笑った愛らし...
「師匠、師匠」
穏やかな寝息を立てる横顔に小声で呼びかけたが、起き上が...
(このどこに、あの人が)
この際、自分のことはとことん棚に上げようと、腹をくくっ...
襟下をそっとめくるとなだらかな傾斜があり、白さと細さに...
柔らかくもなければ肌も薄く、青白い弓のような骨に口付け...
錆びついた鉄の塊のように鈍い身体を無理やり開かせて、内...
この熱が伝たわって、この皮膚がとけてしまったらどう取り...
ああ、あの女の人はどこにもいない。俺は今、一心不乱に男...
どうか、どうか今だけは目覚めてくれるなと、耳鳴りがしそ...
くるぶしの丸みにたどり着き、足首を舌先の尖りでなぞった...
しかし、その柳のような体躯は仰向けから横に姿勢を変えた...
荒い呼吸を整えて、斜め読みした講義の参考文献を頭の中で...
最早ここまでといさぎよく諦めて、頼りない肩を揺さぶった。
「師匠、起きてください」
「んん……」
「プロデューサーがお呼びです」
「……よう、インテリ与太郎」
テレビで聴くのとはまた違う、スッと伸びた声は、朝方の水...
「ひどい言われようですね」
「いいとこの大学通ってる秀才が道踏み外したって評判だよ」
当たらずも遠からずといったところか。軽い気持ちで始めた...
いい加減な性格と反比例した小言の多さに気づいたのは入門...
「私はユートピアを見つけたんです」
「横文字じゃわかんねえよ」
「理想郷なんです。落語の……笑いの世界は」
およそ地に足をつけているとは言い難い生き方を呆れる者も...
「おお、いいこと言うねえ」
多くの聞き手が「小難しいことはわかんねえよ」と片手を振...
ちゃぶ台のピース缶を開け、くわえ煙草にマッチで火をつけ...
「あたしもね、一度でいいから江戸の暮らしってもんを味わ...
我が意を得たり、というにはほど遠いかもしれない。
冗談めかして話してはいるが、戦禍に巻き込まれた人々にと...
自分はきっと甘い。たった今この瞬間、この人とそんな淡い...
「その時にはお供しますよ」
「ははっ、いいねえ。長屋で一緒に暮らすかい?」
「私が家事全般やりますから、たくさん稼いできてください」
「うちの女房みたいなこといいやがって……。ああ、そろそろ...
名残惜しそうに火を消すと、立ち上がって共襟を整え始めた...
「よくできた弟子だね。お前の師匠がうらやましいよ」
「……ありがとうございます」
みすぼらしい肩と、浮き上がる骨の丸みに顔を埋めて眉間や...
いっそタバコのタールに生まれ変わって、この体の内側にす...
これ以上理性の箍を引きちぎられそうな思いに蝕まれるなら...
「早く上がってこいよ。待っててやるから」
「頑張ります」
くつくつと笑いながら流し目をよこしたその色香は、まぎれ...
閉じたドアの向こうで雪駄の摩擦音が消えるのを待って、座...
(敵わねえなあ……)
あなたのなかの女にも、噺家としてのあなたにも、男として...
(見てろよ、いつか必ず並んでやる)
他人の花に情けをかけた己が運命を呪うより、身を粉にして...
どうかその日、その時までは、その目その手を向けてくれ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
こちらや棚のまとめや専スレで感想書き込んでいただいた姐...
この場をかりて御礼申し上げます!
- 色々な時期のお話が読めて毎回ワクワクしております!そう...
- 久々に覗いてみたら、大好きな紫緑が沢山で感涙です。あり...
- 最後の更新ページには感想を書けない(?)ようなのでこち...
#comment
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#title(他人の花)
※ナマモノ注意、枯れ専注意
昇天の紫緑です。
時系列は紫が馬さんの鞄持ちから前座見習いになったかならな...
冒頭の人はコエンユさんのつもりです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「……師匠?」
諌めるつもりは微塵もなかった。ただ単純に驚きを隠せず、...
「……ああ、ああ、お前さんかい」
場数を踏んだ師匠方のこと、狼狽の色はさすがに隠しきれな...
と、思いきや。
「いやね、こいつ育ちが育ちだからいやにこう……いろっぺえ...
あまった襟首から覗く、うなじから首筋にかけての線を舐め...
「師匠は細いですよね」
「知ってるか?目方が50越えたことねえんだとよ」
それ自体は初耳だったが、その出自は有名だった。女郎屋を...
妻子持ちとなっても慣習が改められることはなく、夜一食と...
従って朝は弱く、仕事の時間が早い時は前もって楽屋で仮眠...
「女と化粧でしたか、あれは大変素晴らしかったですね」
「ぞっとするぜ、うちのかかあもあんなもんだからな」
先達はさておいて、同年代の噺家と廓話の巧拙を比べると、...
遊女の化粧を再現しただけという余芸ですら、寄席の時間調...
「そうそう、プロデューサーがお呼びです」
「なんだい、早く言えよ」
「すみません」
ふん、と鼻を鳴らして慌ただしく出て行った背中が見えなく...
並べた座布団の上で、あの芸の締めにっこりと笑った愛らし...
「師匠、師匠」
穏やかな寝息を立てる横顔に小声で呼びかけたが、起き上が...
(このどこに、あの人が)
この際、自分のことはとことん棚に上げようと、腹をくくっ...
襟下をそっとめくるとなだらかな傾斜があり、白さと細さに...
柔らかくもなければ肌も薄く、青白い弓のような骨に口付け...
錆びついた鉄の塊のように鈍い身体を無理やり開かせて、内...
この熱が伝たわって、この皮膚がとけてしまったらどう取り...
ああ、あの女の人はどこにもいない。俺は今、一心不乱に男...
どうか、どうか今だけは目覚めてくれるなと、耳鳴りがしそ...
くるぶしの丸みにたどり着き、足首を舌先の尖りでなぞった...
しかし、その柳のような体躯は仰向けから横に姿勢を変えた...
荒い呼吸を整えて、斜め読みした講義の参考文献を頭の中で...
最早ここまでといさぎよく諦めて、頼りない肩を揺さぶった。
「師匠、起きてください」
「んん……」
「プロデューサーがお呼びです」
「……よう、インテリ与太郎」
テレビで聴くのとはまた違う、スッと伸びた声は、朝方の水...
「ひどい言われようですね」
「いいとこの大学通ってる秀才が道踏み外したって評判だよ」
当たらずも遠からずといったところか。軽い気持ちで始めた...
いい加減な性格と反比例した小言の多さに気づいたのは入門...
「私はユートピアを見つけたんです」
「横文字じゃわかんねえよ」
「理想郷なんです。落語の……笑いの世界は」
およそ地に足をつけているとは言い難い生き方を呆れる者も...
「おお、いいこと言うねえ」
多くの聞き手が「小難しいことはわかんねえよ」と片手を振...
ちゃぶ台のピース缶を開け、くわえ煙草にマッチで火をつけ...
「あたしもね、一度でいいから江戸の暮らしってもんを味わ...
我が意を得たり、というにはほど遠いかもしれない。
冗談めかして話してはいるが、戦禍に巻き込まれた人々にと...
自分はきっと甘い。たった今この瞬間、この人とそんな淡い...
「その時にはお供しますよ」
「ははっ、いいねえ。長屋で一緒に暮らすかい?」
「私が家事全般やりますから、たくさん稼いできてください」
「うちの女房みたいなこといいやがって……。ああ、そろそろ...
名残惜しそうに火を消すと、立ち上がって共襟を整え始めた...
「よくできた弟子だね。お前の師匠がうらやましいよ」
「……ありがとうございます」
みすぼらしい肩と、浮き上がる骨の丸みに顔を埋めて眉間や...
いっそタバコのタールに生まれ変わって、この体の内側にす...
これ以上理性の箍を引きちぎられそうな思いに蝕まれるなら...
「早く上がってこいよ。待っててやるから」
「頑張ります」
くつくつと笑いながら流し目をよこしたその色香は、まぎれ...
閉じたドアの向こうで雪駄の摩擦音が消えるのを待って、座...
(敵わねえなあ……)
あなたのなかの女にも、噺家としてのあなたにも、男として...
(見てろよ、いつか必ず並んでやる)
他人の花に情けをかけた己が運命を呪うより、身を粉にして...
どうかその日、その時までは、その目その手を向けてくれ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
こちらや棚のまとめや専スレで感想書き込んでいただいた姐...
この場をかりて御礼申し上げます!
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