ページ内容へ
ナビゲーションへ
当サイトをご覧いただくにはブラウザの設定で
JavaScriptを有効に設定
する必要がございます。
ページの一覧
最終更新一覧
ヘルプ
ホーム
使い方
文字サイズ:小
文字サイズ:中
文字サイズ:大
1つ前のページに戻る
70-181
をテンプレートにして作成
開始行:
#title(月明りに照らされて)
焦点、紫×緑です
151、155の後のいつかです
74とも被っている部分があります
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「よくもまああんな恥ずかしいことを淀みなく喋れたもんだね...
「全部本音ですからねえ、そりゃあすらすら出てきますよ」
「気味が悪いね、明日は雪でも降るんじゃないの」
そんないつも通りの軽口から始まり、二人会の打ち合わせに入...
ああしようこうしよう、いやいやこっちの方がと議論するこの...
今日はお互い弟子の立ち会いもない、本当のふたりきりだ。
今更何を期待している訳でもなしと自分を諫めつつも、心が躍...
ふいに、唄丸が話すのを止めた。
何だろうと顔をあげると、穏やかな笑顔をたたえてこちらを見...
「どうか、いたしましたか」
ずっとその表情を見ていたいと思ったが、思わず静寂を破って...
「いやね、幸せだなあ、良い心持ちだなあと思って」
ゆっくりとかぶりを振りながらそう答える。
「師匠や同輩や兄弟子弟弟子には先にあっちに行ったり続ける...
寄席という舞台が、焦点という番組が、そして落語があたしを...
目があっている筈の唄丸の輪郭がぼやけていく。
「樂さんがジジイジジイと貶しながら、師匠師匠と慕いながら...
勿論、あんただけのおかげじゃないけどねと釘を刺しながら静...
「嫌がるかもしれないけどね、息子がいたらこんな風かなと思...
樂さんと出会えて、噺家として共に人生を歩んでこられて、本...
てめえこの野郎と思うこともそりゃあ沢山あったけど、それも...
仕事仲間として、一門は違えどひとりの弟子として、良い好敵...
そう言うと、唄丸は深く深く頭を下げた。
「やだな師匠、そんな」
何か言わなければいけないのに、堰が切れたかのように後から...
そんな、今生の別れのような言葉。
唇が震えて震えて、うまく声を発することが出来ない。
「私だって、いや、私の方が」
あの番組を通して側に居られて、一緒に落語というものに真剣...
それは、叶わない恋慕の情を抱く前も、抱いた後も変わらない。
伝えたいことの何もかもが、涙と嗚咽となって零れ落ちていく...
「ああ、折角の男前が台無しじゃないか」
ほらほらこれで涙をお拭きよと手拭いを手渡そうとするその細...
ぱたりとテーブルの上に手拭いが落ちる音を聞いて正気に戻る...
「師匠」
やめろ、
「あなたの落語が、あなたの声が、あなたと過ごす時間が、あ...
やめてくれ、
「もう、ずっと、いつからかも覚えていません。迷惑なのはわ...
やめてくれ、早く冗談だと、いつものように笑い飛ばせ…
「あなたのことが、好きです」
ああ、もう、お仕舞いだ。
唄丸が目を見開いてこちらをじっと見ている。
そりゃあそうだよな、驚くよな。
仲間だ弟子だ息子だ友人だと長年慕っていた男から愛の告白な...
なんと詰られても、気持ち悪がられても仕方がない。
それでも、その手中にある細い腕を離すことがどうしても出来...
「折角私なんかを大切な友人だと思ってくださっているのにこ...
もう何年も何年も裏切るようなことをしてしまった。言い訳も...
でも師匠、私よりも先にあっちの花見にいっちまうんでしょう...
これからも友人でいてくれだなんて言いません、軽蔑されたっ...
震えて震えてつっかえて、なんて酷い声だろう。
噺家失格だと頭のどこかで思いつつ、何十年にも亘って育った...
「それでも、あなたのことを想い続けることを許してください...
言い切った後で、耐えようのない後悔が圓樂を襲った。
傷付けてしまった、裏切ってしまった、もう今までのように笑...
「樂さん」
もうすっかりぼやけていない鮮明な視界の中、それまで閉ざさ...
ああ、やっぱりこの人の声が、この人のことが本当に好きだな...
「何言ってるんだい、あんた。そんなこと、ずうっと前から知...
泣き笑いの表情で、腕を掴んでいる手に、もう一方の掌を重ね...
「待ちくたびれて、すっかり爺になっちまったじゃないか」
「しかし樂さん涙もろくなったねえ」
「そっちだって泣いてたくせに。名人の名が泣きますよ。まあ...
「勿論、墓まで持っていきますよ。大泣きしただなんて知れた...
そう言うやにいっと笑って、小指を立てて圓樂の前に出してみ...
一瞬ぽかんとした表情をしたが、すぐに合点が行き、破顔しな...
「私と師匠だけの秘密ですよ」
「破ったら承知しないよ」
「あと、来年も一緒に花見に行きましょう」
「念を押されなくたって指切りしなくたって、あたしは元から...
場所取りは任せてくださいと笑いながら、最後に歌ったのがい...
指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。
「これからもよろしく頼むよ、樂さん」
「勿論です」
お互い泣き笑いの顔を見合わせ、秘密を共有する子供のように...
報われたのかと言えば、全肯定はできないのだろう。
しかし、それでもよかった。それでよかった。もう、十分すぎ...
桜の樹と同じようにこの感情のほんの一部が花とあらわれ、少...
この先も隣にいることが許されるのならば、抱き締めたいとい...
あのとき掌から、小指から伝わってきたほんのささやかな体温...
きっとあなたは先に花見に行ってしまうんでしょう。
そのときは名残惜しいけれど、しっかり手を振ってお送りいた...
しばらくうんと落ち込むでしょうが、なあに私は大丈夫ですよ。
あなたがくれた数々の教えが己の芸に生き、一緒に過ごした時...
だから師匠、 来年も再来年も、一緒に花見に行きましょう。
約束、忘れないでくださいね。
歌丸を見送ってからふと顔をあげると、雲ひとつない夜空の中...
ああ、綺麗だ。
今夜はうんと滲んでいるけれど、これはこれでいいじゃあない...
追い出し太鼓が叩かれるのは、まだまだ先でいい。
たとえ出てけ出てけと鳴り響こうと、みっともなく高座にしが...
いつかふたりで見たときと変わらず美しい月を見上げながら、...
舞台袖で何度も聞いた、何度聞いても心を震わせてやまないあ...
また一番太鼓が鳴る。
【了】
師匠の益々のご活躍、番組、落語の益々のご発展を心から祈っ...
お付き合いいただき、本当にありがとうございました
- 続きをお待ちしていました! -- [[もえ。]] &new{2016-05-2...
- 二重にすみません。二人の関係性はもちろんですが、作者様...
- もっともっとたくさん小説を書いて頂きたいです(^^) -- &n...
- 泣けます…!!!切なくて好きです -- &new{2016-08-30 (火...
- 泣きました… -- &new{2016-09-02 (金) 17:24:46};
- 泣きました…素敵な小説をありがとうございます!また書いて...
- ここが2でなかったらお友達になりたかったです…… -- &new{...
#comment
終了行:
#title(月明りに照らされて)
焦点、紫×緑です
151、155の後のいつかです
74とも被っている部分があります
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「よくもまああんな恥ずかしいことを淀みなく喋れたもんだね...
「全部本音ですからねえ、そりゃあすらすら出てきますよ」
「気味が悪いね、明日は雪でも降るんじゃないの」
そんないつも通りの軽口から始まり、二人会の打ち合わせに入...
ああしようこうしよう、いやいやこっちの方がと議論するこの...
今日はお互い弟子の立ち会いもない、本当のふたりきりだ。
今更何を期待している訳でもなしと自分を諫めつつも、心が躍...
ふいに、唄丸が話すのを止めた。
何だろうと顔をあげると、穏やかな笑顔をたたえてこちらを見...
「どうか、いたしましたか」
ずっとその表情を見ていたいと思ったが、思わず静寂を破って...
「いやね、幸せだなあ、良い心持ちだなあと思って」
ゆっくりとかぶりを振りながらそう答える。
「師匠や同輩や兄弟子弟弟子には先にあっちに行ったり続ける...
寄席という舞台が、焦点という番組が、そして落語があたしを...
目があっている筈の唄丸の輪郭がぼやけていく。
「樂さんがジジイジジイと貶しながら、師匠師匠と慕いながら...
勿論、あんただけのおかげじゃないけどねと釘を刺しながら静...
「嫌がるかもしれないけどね、息子がいたらこんな風かなと思...
樂さんと出会えて、噺家として共に人生を歩んでこられて、本...
てめえこの野郎と思うこともそりゃあ沢山あったけど、それも...
仕事仲間として、一門は違えどひとりの弟子として、良い好敵...
そう言うと、唄丸は深く深く頭を下げた。
「やだな師匠、そんな」
何か言わなければいけないのに、堰が切れたかのように後から...
そんな、今生の別れのような言葉。
唇が震えて震えて、うまく声を発することが出来ない。
「私だって、いや、私の方が」
あの番組を通して側に居られて、一緒に落語というものに真剣...
それは、叶わない恋慕の情を抱く前も、抱いた後も変わらない。
伝えたいことの何もかもが、涙と嗚咽となって零れ落ちていく...
「ああ、折角の男前が台無しじゃないか」
ほらほらこれで涙をお拭きよと手拭いを手渡そうとするその細...
ぱたりとテーブルの上に手拭いが落ちる音を聞いて正気に戻る...
「師匠」
やめろ、
「あなたの落語が、あなたの声が、あなたと過ごす時間が、あ...
やめてくれ、
「もう、ずっと、いつからかも覚えていません。迷惑なのはわ...
やめてくれ、早く冗談だと、いつものように笑い飛ばせ…
「あなたのことが、好きです」
ああ、もう、お仕舞いだ。
唄丸が目を見開いてこちらをじっと見ている。
そりゃあそうだよな、驚くよな。
仲間だ弟子だ息子だ友人だと長年慕っていた男から愛の告白な...
なんと詰られても、気持ち悪がられても仕方がない。
それでも、その手中にある細い腕を離すことがどうしても出来...
「折角私なんかを大切な友人だと思ってくださっているのにこ...
もう何年も何年も裏切るようなことをしてしまった。言い訳も...
でも師匠、私よりも先にあっちの花見にいっちまうんでしょう...
これからも友人でいてくれだなんて言いません、軽蔑されたっ...
震えて震えてつっかえて、なんて酷い声だろう。
噺家失格だと頭のどこかで思いつつ、何十年にも亘って育った...
「それでも、あなたのことを想い続けることを許してください...
言い切った後で、耐えようのない後悔が圓樂を襲った。
傷付けてしまった、裏切ってしまった、もう今までのように笑...
「樂さん」
もうすっかりぼやけていない鮮明な視界の中、それまで閉ざさ...
ああ、やっぱりこの人の声が、この人のことが本当に好きだな...
「何言ってるんだい、あんた。そんなこと、ずうっと前から知...
泣き笑いの表情で、腕を掴んでいる手に、もう一方の掌を重ね...
「待ちくたびれて、すっかり爺になっちまったじゃないか」
「しかし樂さん涙もろくなったねえ」
「そっちだって泣いてたくせに。名人の名が泣きますよ。まあ...
「勿論、墓まで持っていきますよ。大泣きしただなんて知れた...
そう言うやにいっと笑って、小指を立てて圓樂の前に出してみ...
一瞬ぽかんとした表情をしたが、すぐに合点が行き、破顔しな...
「私と師匠だけの秘密ですよ」
「破ったら承知しないよ」
「あと、来年も一緒に花見に行きましょう」
「念を押されなくたって指切りしなくたって、あたしは元から...
場所取りは任せてくださいと笑いながら、最後に歌ったのがい...
指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ます。
「これからもよろしく頼むよ、樂さん」
「勿論です」
お互い泣き笑いの顔を見合わせ、秘密を共有する子供のように...
報われたのかと言えば、全肯定はできないのだろう。
しかし、それでもよかった。それでよかった。もう、十分すぎ...
桜の樹と同じようにこの感情のほんの一部が花とあらわれ、少...
この先も隣にいることが許されるのならば、抱き締めたいとい...
あのとき掌から、小指から伝わってきたほんのささやかな体温...
きっとあなたは先に花見に行ってしまうんでしょう。
そのときは名残惜しいけれど、しっかり手を振ってお送りいた...
しばらくうんと落ち込むでしょうが、なあに私は大丈夫ですよ。
あなたがくれた数々の教えが己の芸に生き、一緒に過ごした時...
だから師匠、 来年も再来年も、一緒に花見に行きましょう。
約束、忘れないでくださいね。
歌丸を見送ってからふと顔をあげると、雲ひとつない夜空の中...
ああ、綺麗だ。
今夜はうんと滲んでいるけれど、これはこれでいいじゃあない...
追い出し太鼓が叩かれるのは、まだまだ先でいい。
たとえ出てけ出てけと鳴り響こうと、みっともなく高座にしが...
いつかふたりで見たときと変わらず美しい月を見上げながら、...
舞台袖で何度も聞いた、何度聞いても心を震わせてやまないあ...
また一番太鼓が鳴る。
【了】
師匠の益々のご活躍、番組、落語の益々のご発展を心から祈っ...
お付き合いいただき、本当にありがとうございました
- 続きをお待ちしていました! -- [[もえ。]] &new{2016-05-2...
- 二重にすみません。二人の関係性はもちろんですが、作者様...
- もっともっとたくさん小説を書いて頂きたいです(^^) -- &n...
- 泣けます…!!!切なくて好きです -- &new{2016-08-30 (火...
- 泣きました… -- &new{2016-09-02 (金) 17:24:46};
- 泣きました…素敵な小説をありがとうございます!また書いて...
- ここが2でなかったらお友達になりたかったです…… -- &new{...
#comment
ページ名:
ページ新規作成
新しいページはこちらから投稿できます。
作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
ページ新規作成: