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69-454
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#title(What Her Name Is)
∞高炉、艦長×黒服弟
青年編Chapter7終盤の例のイベント後
作中の設定にきちんと従うならこういう現象は起こらないので...
※地雷注意※
・本編のストーリー終盤における重大なネタバレ複数
・艦長と女性キャラの関係(公式準拠)を示唆する描写あり
・いろんな意味で痛めのエロあり。流血注意
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
遙か昔、爆発する人口を支えきれなくなった辺境の惑星から...
ある船は不慮の事故により失われ、ある船は未知の疫病によ...
自然界の淘汰システムにも似た厳しい生存条件をかいくぐり...
人類のマゼラン銀河進出の起点となった、始まりの地。
彼らはそこにアッドゥーラと呼ばれることになる国を建国し...
そしてさらに時は流れた。人類が大小マゼラン全域に生息圏...
艦隊の進路の先——アッドゥーラレーンの外れには、そのファ...
ブラフシェラ教皇とエルダータ枢機卿に伴われて〈始祖移民...
「ちっと帰りが遅すぎる。どっかで道草食ってんのか、宙域の...
面倒くさそうな口調の中に心配を滲ませたロエンローグ卿の...
アッドゥーラ側が許可した者以外のファウンダーグラウンド...
速度と探索能力に特化して三部隊を編成した分艦隊の指揮官...
「ゲートアウト反応確認、ユーリ艦隊です!」
どうやら私の仕事は徒労に終わったらしい。 モニターの向こ...
だが、ゲート付近に先行させていた無人哨戒機からの映像が...
ボイドゲートからこぼれ落ちるように吐き出されてきた五隻...
僚艦を守って最前線でビームとミサイルの雨を受け止め続け...
幽霊船の群れと見まごうばかりのこの惨状を目にして、アッ...
だがその直後、同じようにひどく被弾し優美な外装が見る影...
だが、あんな辺境で彼らは何と戦ったのか。
ユーリ艦長の状況判断の速さと撤退戦指揮の巧みさは、私自...
追撃があった場合、足の遅い艦を置いてきたため火力に乏し...
航路図と味方制宙圏までの距離を脳裏に描きつつ全艦に第一...
通信に出たのは艦長ではなく、オペレーター長として旗艦の...
緊張を隠せない声で状況報告を求めたこちらに、惑星パルメ...
ユーリ艦長の姿が見えないことへの不安を察したのか、ティ...
「ユーリならさっきどやしつけて部屋に帰らせたところよ。半...
「……ご苦労様です」
負傷したわけではない、ということを言外に伝えてくれたテ...
周囲の状況に細かく気を配り、必要なら艦長にも厳しい意見...
安心したのはわかりますが何か忘れていませんか、という顔...
手早く双方の情報を交換しあったあと、ティータはチャンネ...
〈始祖移民船〉から戻ってきて以来、ユーリ艦長の様子がお...
「おかしい、とは?」
「ん、仕事はいつも通りきっちりやるんだけどね。時々ぼんや...
彼のクルーの中でも最古参の部類に入るティータは、弟を心...
合流後に艦長を訪ねる旨を伝えて通信を切った後、私はかす...
ユーリ艦隊のメインオペレーターは、以前からあの女性だっ...
惑星ザクロウでの会話は何についての話題だった?
何かがかみ合わない感覚を拭い去れないまま、私は副官にシ...
「いらっしゃい。艦長ンとこに夜這いっスか?」
似合わない敬礼と下品な軽口で出迎えてくれた顔なじみの保...
まっとうな軍人ならまず激怒するであろうこの手の冗談を咎...
彼らの思考は「人類は宇宙に出るには未熟すぎる存在である...
確かに宇宙は人間の生存には適さない世界だ。
だがその過酷な環境を切り開いてきたのは自分たち0Gドッグ...
隔壁の一枚向こうに死があるからこそ笑って立ち向かうのだ...
彼らのこうした愛すべき気質を隠蔽に利用することにはかす...
夜を共にすることがなくなった後、ユーリ艦長と私の関係は...
私情を引きずることのない彼の態度に私は寂しさよりも好ま...
そう、これでいい。
私はまだ、彼と共に戦うことはできるのだ。
眠っているようなら伝言だけ残してそのまま帰ろうと思って...
濡れ髪を拭きながら出てきたユーリ艦長の姿に一瞬心臓が跳...
結局のところ、私はいまだに演じるべき役割を全うすること...
「『むさくるしい格好でうろうろされると迷惑だから、シャワ...
私のささやかな動揺を気にする様子もなくそう笑った艦長は...
「大方の状況はティータから。ご無事で何よりです。各艦の損...
「ああ、まさかあんな辺境まで皇子さま自ら追いかけてくると...
寝不足による高揚状態なのか、艦長は饒舌に答えた。だがそ...
部屋の奥に目をやると、今回の探索で入手したものなのか、...
私は軽く息を吸い込むと、艦長の目を見据えて本題の質問を...
「〈始祖移民船〉で何があったんです」
艦長の表情がわずかにこわばる。数秒の沈黙に明確な拒否を...
「まだ公表するわけにいかない内容でしたらかまいません。忘...
数え切れない死線を潜り抜けてきたユーリ艦長がこれほどま...
だがそこでどんな衝撃的な出来事があろうと、今の彼には強...
胸の奥の鈍い痛みを、表情に出ないよう抑え込むのにはもう...
何故かその女性の顔を思い出せないことを不思議に思いなが...
「チェルシーを、覚えているか?」
「は……?」
聞き覚えのない名前に私が記憶を手繰ろうとした瞬間、艦長...
一瞬詰まった息と背中に走った痛みに、床に叩きつけられた...
私にのしかかった艦長が、喉の奥から乾いた笑いを漏らした。
先程までの過剰なまでに揺れていた表情から一変して何の感...
ティータの懸念は正しかった。今のユーリ艦長はまともな精...
彼はあの場所で、決して失ってはならない大切な何かを失っ...
怒りと悲しみと自責と諦めと。凄まじい内圧で膨れ上がった...
肩が外れるのではないかと思うほどの力で押さえつけられ、...
抵抗する気はすでになかった。ここで私が彼を拒めば、たぶ...
ろくな慣らしもないままそこに怒張したものがねじこまれる...
粘膜が裂ける感覚とともに熱を伴った痛みが背骨を駆け上が...
許容量を超えた知覚の濁流に混乱する頭に浮かんだのは、彼...
背後から私を貫いている艦長が、うわごとのように何度もそ...
それは彼の大切な誰かの名前なのだろう。だが私はその人を...
どういうわけか悔しさや妬ましさはなかった。
そして、彼がその人を喪ったのであろうことがわかって、何...
血なのかそれとも他の体液なのか、抉られている部分ではな...
そんな状況でも、抱かれることに慣れた身体は内壁を擦り上...
雄と雄である以上、この人と私が完全に溶け合い、次代に命...
彼の瞳に私は映らない。今の彼にとって私はただ衝動を爆発...
これは強姦ですらない。彼の自傷行為だ。
それでも、脈動する熱を身体の奥に感じながら、私はどこか...
美しい女性が見えた。
淡い緑の髪。
湖水の透明さを湛えた、悲しげな瞳。
おそらくはただの幻なのだろう。この女性を私は知らない。
だが、彼女が何を言おうとしているのかはわかったし、その...
——ユーリを——。
それはきっと、いつかどこかで交わされていた約束。
どのくらいかわからないが、失神していたらしい。
目を開くと、ユーリ艦長が今にも泣きだしそうな顔で私を見...
迷子になった子供のような表情の、その頬に手を伸ばす。
「何があろうと——」
ゆっくりと身体を起こし、冷えきった唇にくちづける。
「あなたの背中は私が守りますよ、『ユーリ』」
ユーリ艦長が目を見開いた。
私が彼を役職なしの名前で呼んだのはこれが最初だ。そして...
決壊しそうな感情を必死で抑え込んでいるようなその顔を見...
彼は泣きたいのだろうか。泣きたいときは、泣いてもいいの...
だが私はそうしなかった。
泣くことは、想いに区切りをつける行為だ。今の彼にそれを...
何故かそう思ったのだ。
「俺を、殺してはくれないのか?」
どうにか服装を整え、まだ少しふらつく足で部屋を出ようと...
どれだけ無様な真似をさらそうと生き続ける、そう宣言して...
あのやりとりは、遠い昔の出来事のように思えた。
「わかっているはずです。あなたはもう、私が殺せる存在では...
あなたを殺せる人がいるとすれば、と言葉を続けようとした...
***
魚の群れのようにゲートの向こうに消えていく艦列を見送り...
ユーリ艦長たちに道を開いたあのエピタフは、一体誰の墓碑...
そもそも何故あれは「墓碑銘」と呼ばれているのか。
——彼を名前で呼ぶのには最後まで慣れなかったな。
緊迫した事態にそぐわない思考の流れに私は苦笑した。これ...
軽く頭を振って迷いを切り捨てる。
「ファラゴ少将を呼び出してくれ。封印していた例の二番艦が...
戦慄の表情を見せた副官に復唱を促す。
「急げ。併せて八時間後の自動発信で、恒星ユルグスから五十...
ほどなく少将が個人通信画面に現れた。向こうも断続的に戦...
「お前があれをユルグス極点面に配置しろと言ってきた時も驚...
「閣下は私に脅されてキーを渡したのです。後に悪名を残すの...
十年前の出来事を知る者の間では禁句となっている兄の話を...
「お前の艦隊はどうする」
「危険宙域を迂回してそちらに合流する余裕はありません。ゲ...
言葉にしなかった「それが可能ならば」という前提を読み取...
解凍した承認キーで、姉妹艦が失われたあと名を与えられる...
これを使えば、この宙域は拡大するスターバーストに呑み込...
だが大量殺人者と罵られようと、故郷を失った人々の怨嗟を...
悲壮感も罪の意識も何故かなく、奇妙に安らいだ気分の自分...
私はすでに正気と狂気の境界を踏み越えてしまったのだろう...
もしかするとあの時の兄も、こんな気持ちであの決断を下し...
もしも十年前、兄がマゼラニックストリームで戦死しなかっ...
兄は私の愛に——妄執に応えてしまったからだ。
だから私は、愛されはしないが必要とされているユーリ艦長...
だが「彼女」とは一体誰だ?
パズルのピースがひとつ足りない。
いや、そうではない。
断片的に浮き上がってくる記憶が、ひとつの事象として認識...
「敵先鋒、約二十分で交戦距離に入ります!」
索敵士官の緊張した声が、再び場違いな考えに沈みかけた私...
ひとつ深呼吸してメインモニターを睨む。
今は目の前の戦闘に集中しろ。発射までの時間を稼げずに、...
「総員対艦戦用意! 何があろうとここは通すな!!」
負けいくさにつきあわせる羽目になってしまったクルーたち...
それが達成不可能なものであることは、最初からわかってい...
不規則に舷側を掠めはじめたビームがシールドの干渉波と接...
生まれては消えるその光に目をすがめつつ、私はあのときの...
——人が光の速さを超えるようになって、それは本当にいいこ...
共にそれを見ることは叶いそうにないが、いつか彼は、星の...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
作戦会議で他の面子が発言しまくる中ひとりだけ「……」な弟さ...
機動力皆無な感じのあの艦は事前にしかるべき場所に置いてお...
なんかもう色々とやらかしてしまった連作におつきあいくださ...
終了行:
#title(What Her Name Is)
∞高炉、艦長×黒服弟
青年編Chapter7終盤の例のイベント後
作中の設定にきちんと従うならこういう現象は起こらないので...
※地雷注意※
・本編のストーリー終盤における重大なネタバレ複数
・艦長と女性キャラの関係(公式準拠)を示唆する描写あり
・いろんな意味で痛めのエロあり。流血注意
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
遙か昔、爆発する人口を支えきれなくなった辺境の惑星から...
ある船は不慮の事故により失われ、ある船は未知の疫病によ...
自然界の淘汰システムにも似た厳しい生存条件をかいくぐり...
人類のマゼラン銀河進出の起点となった、始まりの地。
彼らはそこにアッドゥーラと呼ばれることになる国を建国し...
そしてさらに時は流れた。人類が大小マゼラン全域に生息圏...
艦隊の進路の先——アッドゥーラレーンの外れには、そのファ...
ブラフシェラ教皇とエルダータ枢機卿に伴われて〈始祖移民...
「ちっと帰りが遅すぎる。どっかで道草食ってんのか、宙域の...
面倒くさそうな口調の中に心配を滲ませたロエンローグ卿の...
アッドゥーラ側が許可した者以外のファウンダーグラウンド...
速度と探索能力に特化して三部隊を編成した分艦隊の指揮官...
「ゲートアウト反応確認、ユーリ艦隊です!」
どうやら私の仕事は徒労に終わったらしい。 モニターの向こ...
だが、ゲート付近に先行させていた無人哨戒機からの映像が...
ボイドゲートからこぼれ落ちるように吐き出されてきた五隻...
僚艦を守って最前線でビームとミサイルの雨を受け止め続け...
幽霊船の群れと見まごうばかりのこの惨状を目にして、アッ...
だがその直後、同じようにひどく被弾し優美な外装が見る影...
だが、あんな辺境で彼らは何と戦ったのか。
ユーリ艦長の状況判断の速さと撤退戦指揮の巧みさは、私自...
追撃があった場合、足の遅い艦を置いてきたため火力に乏し...
航路図と味方制宙圏までの距離を脳裏に描きつつ全艦に第一...
通信に出たのは艦長ではなく、オペレーター長として旗艦の...
緊張を隠せない声で状況報告を求めたこちらに、惑星パルメ...
ユーリ艦長の姿が見えないことへの不安を察したのか、ティ...
「ユーリならさっきどやしつけて部屋に帰らせたところよ。半...
「……ご苦労様です」
負傷したわけではない、ということを言外に伝えてくれたテ...
周囲の状況に細かく気を配り、必要なら艦長にも厳しい意見...
安心したのはわかりますが何か忘れていませんか、という顔...
手早く双方の情報を交換しあったあと、ティータはチャンネ...
〈始祖移民船〉から戻ってきて以来、ユーリ艦長の様子がお...
「おかしい、とは?」
「ん、仕事はいつも通りきっちりやるんだけどね。時々ぼんや...
彼のクルーの中でも最古参の部類に入るティータは、弟を心...
合流後に艦長を訪ねる旨を伝えて通信を切った後、私はかす...
ユーリ艦隊のメインオペレーターは、以前からあの女性だっ...
惑星ザクロウでの会話は何についての話題だった?
何かがかみ合わない感覚を拭い去れないまま、私は副官にシ...
「いらっしゃい。艦長ンとこに夜這いっスか?」
似合わない敬礼と下品な軽口で出迎えてくれた顔なじみの保...
まっとうな軍人ならまず激怒するであろうこの手の冗談を咎...
彼らの思考は「人類は宇宙に出るには未熟すぎる存在である...
確かに宇宙は人間の生存には適さない世界だ。
だがその過酷な環境を切り開いてきたのは自分たち0Gドッグ...
隔壁の一枚向こうに死があるからこそ笑って立ち向かうのだ...
彼らのこうした愛すべき気質を隠蔽に利用することにはかす...
夜を共にすることがなくなった後、ユーリ艦長と私の関係は...
私情を引きずることのない彼の態度に私は寂しさよりも好ま...
そう、これでいい。
私はまだ、彼と共に戦うことはできるのだ。
眠っているようなら伝言だけ残してそのまま帰ろうと思って...
濡れ髪を拭きながら出てきたユーリ艦長の姿に一瞬心臓が跳...
結局のところ、私はいまだに演じるべき役割を全うすること...
「『むさくるしい格好でうろうろされると迷惑だから、シャワ...
私のささやかな動揺を気にする様子もなくそう笑った艦長は...
「大方の状況はティータから。ご無事で何よりです。各艦の損...
「ああ、まさかあんな辺境まで皇子さま自ら追いかけてくると...
寝不足による高揚状態なのか、艦長は饒舌に答えた。だがそ...
部屋の奥に目をやると、今回の探索で入手したものなのか、...
私は軽く息を吸い込むと、艦長の目を見据えて本題の質問を...
「〈始祖移民船〉で何があったんです」
艦長の表情がわずかにこわばる。数秒の沈黙に明確な拒否を...
「まだ公表するわけにいかない内容でしたらかまいません。忘...
数え切れない死線を潜り抜けてきたユーリ艦長がこれほどま...
だがそこでどんな衝撃的な出来事があろうと、今の彼には強...
胸の奥の鈍い痛みを、表情に出ないよう抑え込むのにはもう...
何故かその女性の顔を思い出せないことを不思議に思いなが...
「チェルシーを、覚えているか?」
「は……?」
聞き覚えのない名前に私が記憶を手繰ろうとした瞬間、艦長...
一瞬詰まった息と背中に走った痛みに、床に叩きつけられた...
私にのしかかった艦長が、喉の奥から乾いた笑いを漏らした。
先程までの過剰なまでに揺れていた表情から一変して何の感...
ティータの懸念は正しかった。今のユーリ艦長はまともな精...
彼はあの場所で、決して失ってはならない大切な何かを失っ...
怒りと悲しみと自責と諦めと。凄まじい内圧で膨れ上がった...
肩が外れるのではないかと思うほどの力で押さえつけられ、...
抵抗する気はすでになかった。ここで私が彼を拒めば、たぶ...
ろくな慣らしもないままそこに怒張したものがねじこまれる...
粘膜が裂ける感覚とともに熱を伴った痛みが背骨を駆け上が...
許容量を超えた知覚の濁流に混乱する頭に浮かんだのは、彼...
背後から私を貫いている艦長が、うわごとのように何度もそ...
それは彼の大切な誰かの名前なのだろう。だが私はその人を...
どういうわけか悔しさや妬ましさはなかった。
そして、彼がその人を喪ったのであろうことがわかって、何...
血なのかそれとも他の体液なのか、抉られている部分ではな...
そんな状況でも、抱かれることに慣れた身体は内壁を擦り上...
雄と雄である以上、この人と私が完全に溶け合い、次代に命...
彼の瞳に私は映らない。今の彼にとって私はただ衝動を爆発...
これは強姦ですらない。彼の自傷行為だ。
それでも、脈動する熱を身体の奥に感じながら、私はどこか...
美しい女性が見えた。
淡い緑の髪。
湖水の透明さを湛えた、悲しげな瞳。
おそらくはただの幻なのだろう。この女性を私は知らない。
だが、彼女が何を言おうとしているのかはわかったし、その...
——ユーリを——。
それはきっと、いつかどこかで交わされていた約束。
どのくらいかわからないが、失神していたらしい。
目を開くと、ユーリ艦長が今にも泣きだしそうな顔で私を見...
迷子になった子供のような表情の、その頬に手を伸ばす。
「何があろうと——」
ゆっくりと身体を起こし、冷えきった唇にくちづける。
「あなたの背中は私が守りますよ、『ユーリ』」
ユーリ艦長が目を見開いた。
私が彼を役職なしの名前で呼んだのはこれが最初だ。そして...
決壊しそうな感情を必死で抑え込んでいるようなその顔を見...
彼は泣きたいのだろうか。泣きたいときは、泣いてもいいの...
だが私はそうしなかった。
泣くことは、想いに区切りをつける行為だ。今の彼にそれを...
何故かそう思ったのだ。
「俺を、殺してはくれないのか?」
どうにか服装を整え、まだ少しふらつく足で部屋を出ようと...
どれだけ無様な真似をさらそうと生き続ける、そう宣言して...
あのやりとりは、遠い昔の出来事のように思えた。
「わかっているはずです。あなたはもう、私が殺せる存在では...
あなたを殺せる人がいるとすれば、と言葉を続けようとした...
***
魚の群れのようにゲートの向こうに消えていく艦列を見送り...
ユーリ艦長たちに道を開いたあのエピタフは、一体誰の墓碑...
そもそも何故あれは「墓碑銘」と呼ばれているのか。
——彼を名前で呼ぶのには最後まで慣れなかったな。
緊迫した事態にそぐわない思考の流れに私は苦笑した。これ...
軽く頭を振って迷いを切り捨てる。
「ファラゴ少将を呼び出してくれ。封印していた例の二番艦が...
戦慄の表情を見せた副官に復唱を促す。
「急げ。併せて八時間後の自動発信で、恒星ユルグスから五十...
ほどなく少将が個人通信画面に現れた。向こうも断続的に戦...
「お前があれをユルグス極点面に配置しろと言ってきた時も驚...
「閣下は私に脅されてキーを渡したのです。後に悪名を残すの...
十年前の出来事を知る者の間では禁句となっている兄の話を...
「お前の艦隊はどうする」
「危険宙域を迂回してそちらに合流する余裕はありません。ゲ...
言葉にしなかった「それが可能ならば」という前提を読み取...
解凍した承認キーで、姉妹艦が失われたあと名を与えられる...
これを使えば、この宙域は拡大するスターバーストに呑み込...
だが大量殺人者と罵られようと、故郷を失った人々の怨嗟を...
悲壮感も罪の意識も何故かなく、奇妙に安らいだ気分の自分...
私はすでに正気と狂気の境界を踏み越えてしまったのだろう...
もしかするとあの時の兄も、こんな気持ちであの決断を下し...
もしも十年前、兄がマゼラニックストリームで戦死しなかっ...
兄は私の愛に——妄執に応えてしまったからだ。
だから私は、愛されはしないが必要とされているユーリ艦長...
だが「彼女」とは一体誰だ?
パズルのピースがひとつ足りない。
いや、そうではない。
断片的に浮き上がってくる記憶が、ひとつの事象として認識...
「敵先鋒、約二十分で交戦距離に入ります!」
索敵士官の緊張した声が、再び場違いな考えに沈みかけた私...
ひとつ深呼吸してメインモニターを睨む。
今は目の前の戦闘に集中しろ。発射までの時間を稼げずに、...
「総員対艦戦用意! 何があろうとここは通すな!!」
負けいくさにつきあわせる羽目になってしまったクルーたち...
それが達成不可能なものであることは、最初からわかってい...
不規則に舷側を掠めはじめたビームがシールドの干渉波と接...
生まれては消えるその光に目をすがめつつ、私はあのときの...
——人が光の速さを超えるようになって、それは本当にいいこ...
共にそれを見ることは叶いそうにないが、いつか彼は、星の...
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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