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61-78
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#title(三匹が斬る! 殿様×千石 「続続・じゃじゃ馬ならし ...
[[>>75>61-67]]の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素...
連投になりすみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
にやにやと浪人は笑って歩み寄り、腰を落として刀を振りかぶ...
真之介はその隙を見逃さず、傾いてなお繰り出された刃を必死...
ぐっさりと腹を刺し貫かれ、浪人は目を見開いた。真之介が顔...
「ふふ、や、やられたな……いいさ、お前を待っているぞ……じ、地...
耳元に囁くと血を吐き、絶命した。
「……ふん、地獄で会ってもまた、ぶった斬ってやるぜ」
真之介はしかめっ面で吐き捨てると、倒れた浪人の身体から刀...
目の前の床には、一枚の懐紙が落ちていた。拾い上げて刀の血...
「殿様、手は出すなと言ったじゃねえか」
「ん?俺は知らんぞ。懐から勝手に懐紙が落ちて、そいつがそれ...
うそぶく兵四郎に苦笑すると、ふいに真之介は懐紙と刀を取り...
「仙石!しっかりせんか」
慌てて抱き起こした身体は、高熱を帯びていた。張り詰めてい...
ふと下肢を見やると、着物の裾から覗く内股にこびりついた、...
手首の縄と赤い縄目の痕も痛々しく、彼に異様な執着を見せた...
「そ、そんなに見るなよ、殿様……照れるじゃ、ねえか」
「真之介……」
息を荒げつつも冗談を飛ばしにやりと笑うと、真之介は意識を...
兵四郎は転がっていた刀を鞘に納め、部屋の片隅に放られてい...
庭に下りると、心配したお恵が声をかけた。
「殿様!仙石さん、大丈夫?」
「とりあえず医者に連れて行く。お恵は手代さんと、お小夜ちゃ...
兵四郎は陣内に向き直り、さらに告げた。
「陣内、お前は近江屋さんと佐平次を連れて、代官所に駆け込め...
「わかったよ、任しといて殿様!仙石を頼んだよ」
陣内は縛った佐平次を立たせ、真剣な顔で頷いた。
「ねえっ、おじさん!仙石のおじちゃん、死なないわよね?大丈...
不安そうに背中の真之介を見つめるお小夜に、兵四郎は笑った。
「死なないとも。死なせるものか」
頷くとしっかりと真之介を支えて、力強い足取りで走り出した。
山を駆け降りた兵四郎は、医者の家の戸を激しく叩いた。
そこは兵四郎が倒れていたおたみを担ぎ込んだ所で、出迎えた...
夜中の急患を医者は快く引き受け、兵四郎と共に真之介を治療...
肩の傷は少し深いが命に別状はなく、他の傷も大したことはな...
この御仁の身体は馬のように頑健だ、心配はいらないと付け加...
下肢の容態について兵四郎が尋ねると、わずかな裂傷があり腫...
兵四郎は安堵し、布団に横たわり熱にうなされる真之介を見つ...
近江屋の一室に身体を移された真之介は、実に二日の間眠り続...
医者は通って容態を確かめ、兵四郎は指示通りに薬湯を与え薬...
主人の厚意でお恵が手伝いに寄越されたが、身体を拭いたりな...
真之介が眠っている間に陣内が代官所から戻り、代官は近江屋...
全てが明白になり、かどわかしを指図したとして、佐平次には...
重追放は追放刑の中で最も重く、家屋敷を没収され、罪を犯し...
自業自得とはいえ娘を亡くし、一家を解散に追いやられた上に...
お小夜は父親やおたみなどと共に、時にはひとりで、何度も真...
「真之介さん。おじちゃんの名前って、仙石じゃなくって、九慈...
「そうだよ、仙石はあだ名だ。なかなか、いい名前だろ」
「ええ、とっても素敵。ねえ真之介さん、早くよくなってね」
「ああ。お小夜ちゃんはもう、その……大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫よ。ふたり目のおっかさんまであんなことになっ...
だから大丈夫よ、と笑うお小夜の髪には、あの簪が光っていた...
布団の横に座る兵四郎は娘の気丈さに感心し、その光景に穏や...
お恵に連れられてお小夜が去ると、部屋にはふたりきりになっ...
「殿様ぁ……腹減った」
「そうだろうな。お恵も、お前が目覚めたら腹が減ったと言う筈...
「おかゆかあ……白い握り飯が食いてえなあ。ここの米はえらく美...
「うん、俺も食った。確かに美味いが、急に食っては身体に障る...
わかったよ、と呟くと、真之介は目を逸らし、天井を見つめた。
「殿様、俺、あいつらに……」
「いいんだ、仙石。言う必要はない」
ぽつりと漏らした言葉を兵四郎は優しく止めた。
「でも言っとかなきゃ、なんかこう、もやもやするだろ?俺も、...
幸い子供も出来ねえしな、と自嘲気味に笑う真之介に、兵四郎...
「だが、さすがになかなかきつかったなあ。あいつら、笑いなが...
「仙石……」
「まあもともと娘を品物扱いするような連中だ、ひどくて当然か...
兵四郎が言葉を返さないのに気付き、真之介は再び彼の顔に目...
「どした、殿様。しぶい顔して」
「仙石、俺はお前になんと言っていいかわからん。いや、何も言...
「あ?どういうことだ」
「俺も、あいつらと大して変わらんからだ。嫌がるお前を、無理...
「……違う!あれ、いや、違わないか?いやいや、違う……ような、...
「仙石、どっちなんだ」
首を傾げる真之介に、兵四郎は思わず苦笑した。
「うー……だから、あいつらと殿様は、とにかく違うんだ」
「そうか?どこがだ」
「どこって……殿様は、殿様だからさ」
「すまん、仙石。よくわからんのだが」
「わからんなら、仕方ないさ。正直、俺にだってわからん。考え...
なぜか偉そうに語る真之介を見ているうち、兵四郎は胸に暖か...
兵四郎は違う、兵四郎だから違うという真之介の言葉を、頭の...
「仙石、俺もだ」
「俺もって、何がだ」
「俺はお前だから、抱いたのだ。お前でなくては、抱く気になど...
「殿様?どうしたんだ、急に」
少し思い詰めたような兵四郎の様子に、真之介は眉を寄せた。
「お前は俺が背中を預けられ、背中を支えてやりたいと思う数少...
「殿様……」
「だがそれだけではない、お前に対するまた別の想いが、俺の中...
目をまっすぐに見つめて話す兵四郎から、真之介は逃れられず...
「真之介。俺は、お前を……」
「言うな、殿様。その先は、言わんでくれ」
真之介は添えられた手に手を重ね、静かに遮った。兵四郎は訝...
「真之介、なぜだ。なぜ、言わせてくれない」
「それを言われたら俺は、おぬしに寄っかかっちまうような気が...
「真之介……」
「だが、だからこそ、甘ったるい関わりにはなりたくはないんだ...
「うん。わからんような、わかるような気はする」
どっちなんだ、と今度は真之介が苦笑した。
「仙石、お前がそう言うなら、俺はもう言わん。ただ、俺がそう...
「そりゃあまあ、構わんが……俺のどこが、そんなにいいんだ」
「そりゃあお前、いつも腹を減らして、でっかい夢を見て、いつ...
「おい、褒めたって何も出んぞ」
「ふふ、弱ってるお前から、何も取ろうとは思わんよ……ただ」
「ただ……なんだ?」
見上げる真之介に顔を近付けると、そっと唇を塞いだ。真之介...
触れるだけの口づけを解くと、真之介はやや顔を赤らめた。
「……やっぱりこういうことをするんだな、おぬしは」
「すまんな、俺はやっぱりお前が欲しい。それも俺の、正直な気...
静かに笑う兵四郎に、思わず真之介も笑い返した。
「ふん、俺は素直にやるなどとは、絶対に言わんぞ。そんなこと...
「それは確かだ。ただし言われなくても、調子には乗るがな」
この野郎、と真之介は軽く殴る真似をした。拳を受け止め、兵...
「……なあ殿様。ああは言ったが、ちょっとな、頼みがある」
「うん?なんだ、仙石」
「こんなこたぁ、金輪際頼まん。一度っきりだ、ほんとだぞ」
「ふふ、なんだもったいぶって。いいから、言ってみろ」
「あのな……」
真之介が小声で告げた頼みに兵四郎は目を丸くしたが、すぐに...
おかゆを盆に乗せたお恵は、陣内を伴って真之介のいる座敷を...
布団の上に座った兵四郎の胡座に頭を乗せ、真之介は穏やかに...
ふたりは頷いて静かに障子を閉め、部屋に入り布団の横に座っ...
「やぁだ、仙石さんったら、子供みたい。捕まって、心細かった...
「みたいじゃなくて、子供だよ。世話が焼ける、でっかいガキ大...
お恵がくすくすと笑って布団をかけ直し、陣内は悪態をつきな...
「陣内、いささか脚が疲れた。代わってくれんか、お恵ちゃんで...
「えーっ、やだよ。仙石、寝相悪いもん。扱えるの、殿様くらい...
「あたしもいやー。着物をよだれだらけにされそうなんだもん。...
からかわれて兵四郎はため息をついたが、口元には自然と笑み...
大事を取って一月ほど養生し、真之介はすっかり回復した。出...
旅立ちの日、一同は宿場外れの地蔵堂に立ち寄り、揃ってお参...
近江屋主人とお小夜、田丸屋夫妻とおたみが、兵四郎達を見送...
手を合わせたお小夜は立ち上がると、陣内を見上げて笑った。
「あたしね、捕まってる時にずっと、お地蔵様に助けてって祈っ...
「あら、そうなの?陣ちゃん、そんなにありがたい顔してるかし...
確かにお堂の中の小さな地蔵は、陣内によく似た顔立ちをして...
少女から憧憬の目で見られ、陣内はまんざらでもない顔をした。
「おいおいお小夜ちゃん、ずっと一緒にいたおじさんより、この...
冗談混じりに真之介が拗ねてみせると、お小夜は真顔になった。
「ううん。もちろん、おじ……真之介さんがいっとう好きよ。真之...
「こ、これ、お小夜!お武家様になんということを」
焦った父親にたしなめられ、お小夜は顔を赤くして俯いた。真...
「お小夜ちゃん、気持ちは嬉しいが、俺は行かなきゃならん。な...
覗き込んでにっかり笑うと、お小夜は顔を上げて笑い返した。...
一行の姿が見えなくなるまで、お小夜は手を降り続けていた。...
「仙石ぅ、米屋の婿も、悪くなかったんじゃないの」
「そうだなあ。とりあえず、食いっぱぐれる心配はなくなるだろ...
「かもね。扱う米が千石でも、それもまた千石だしね」
「ああっ、そうか!……たこ、お前頭いいな」
「なに、今頃わかったの?しょうがないねえ、馬鹿だもんね、お...
なんだとこのたこ、うるさいよ馬鹿の馬面、などと喚き合うふ...
やがて道が三つに分かれる辻に出た。
「殿様、どっち行く」
「うん、こっちかな」
「じゃあ、陣ちゃんはあっちに行くよ」
「あたしも、あっちに行こうっと」
「となると、俺はそっちか……」
「仙石、一緒に来ても構わんのだぞ」
兵四郎が誘うと、真之介は笑って首を振った。
「いや、そっちに行く。殿様、また会おう」
「ああ。またな、仙石」
視線を交わした後、懐手の真之介が肩を揺らして歩き出すと、...
兵四郎は笑顔で見送ると、抜けるような青空を眺めながら、軽...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
じゃじゃ馬がほぼ馴らされてしまった(´∀`)
なので次作があれば、別タイトルになると思います。
長々とお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
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#title(三匹が斬る! 殿様×千石 「続続・じゃじゃ馬ならし ...
[[>>75>61-67]]の続きで、時代劇「参匹がKILL!」より、素...
連投になりすみません。
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にやにやと浪人は笑って歩み寄り、腰を落として刀を振りかぶ...
真之介はその隙を見逃さず、傾いてなお繰り出された刃を必死...
ぐっさりと腹を刺し貫かれ、浪人は目を見開いた。真之介が顔...
「ふふ、や、やられたな……いいさ、お前を待っているぞ……じ、地...
耳元に囁くと血を吐き、絶命した。
「……ふん、地獄で会ってもまた、ぶった斬ってやるぜ」
真之介はしかめっ面で吐き捨てると、倒れた浪人の身体から刀...
目の前の床には、一枚の懐紙が落ちていた。拾い上げて刀の血...
「殿様、手は出すなと言ったじゃねえか」
「ん?俺は知らんぞ。懐から勝手に懐紙が落ちて、そいつがそれ...
うそぶく兵四郎に苦笑すると、ふいに真之介は懐紙と刀を取り...
「仙石!しっかりせんか」
慌てて抱き起こした身体は、高熱を帯びていた。張り詰めてい...
ふと下肢を見やると、着物の裾から覗く内股にこびりついた、...
手首の縄と赤い縄目の痕も痛々しく、彼に異様な執着を見せた...
「そ、そんなに見るなよ、殿様……照れるじゃ、ねえか」
「真之介……」
息を荒げつつも冗談を飛ばしにやりと笑うと、真之介は意識を...
兵四郎は転がっていた刀を鞘に納め、部屋の片隅に放られてい...
庭に下りると、心配したお恵が声をかけた。
「殿様!仙石さん、大丈夫?」
「とりあえず医者に連れて行く。お恵は手代さんと、お小夜ちゃ...
兵四郎は陣内に向き直り、さらに告げた。
「陣内、お前は近江屋さんと佐平次を連れて、代官所に駆け込め...
「わかったよ、任しといて殿様!仙石を頼んだよ」
陣内は縛った佐平次を立たせ、真剣な顔で頷いた。
「ねえっ、おじさん!仙石のおじちゃん、死なないわよね?大丈...
不安そうに背中の真之介を見つめるお小夜に、兵四郎は笑った。
「死なないとも。死なせるものか」
頷くとしっかりと真之介を支えて、力強い足取りで走り出した。
山を駆け降りた兵四郎は、医者の家の戸を激しく叩いた。
そこは兵四郎が倒れていたおたみを担ぎ込んだ所で、出迎えた...
夜中の急患を医者は快く引き受け、兵四郎と共に真之介を治療...
肩の傷は少し深いが命に別状はなく、他の傷も大したことはな...
この御仁の身体は馬のように頑健だ、心配はいらないと付け加...
下肢の容態について兵四郎が尋ねると、わずかな裂傷があり腫...
兵四郎は安堵し、布団に横たわり熱にうなされる真之介を見つ...
近江屋の一室に身体を移された真之介は、実に二日の間眠り続...
医者は通って容態を確かめ、兵四郎は指示通りに薬湯を与え薬...
主人の厚意でお恵が手伝いに寄越されたが、身体を拭いたりな...
真之介が眠っている間に陣内が代官所から戻り、代官は近江屋...
全てが明白になり、かどわかしを指図したとして、佐平次には...
重追放は追放刑の中で最も重く、家屋敷を没収され、罪を犯し...
自業自得とはいえ娘を亡くし、一家を解散に追いやられた上に...
お小夜は父親やおたみなどと共に、時にはひとりで、何度も真...
「真之介さん。おじちゃんの名前って、仙石じゃなくって、九慈...
「そうだよ、仙石はあだ名だ。なかなか、いい名前だろ」
「ええ、とっても素敵。ねえ真之介さん、早くよくなってね」
「ああ。お小夜ちゃんはもう、その……大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫よ。ふたり目のおっかさんまであんなことになっ...
だから大丈夫よ、と笑うお小夜の髪には、あの簪が光っていた...
布団の横に座る兵四郎は娘の気丈さに感心し、その光景に穏や...
お恵に連れられてお小夜が去ると、部屋にはふたりきりになっ...
「殿様ぁ……腹減った」
「そうだろうな。お恵も、お前が目覚めたら腹が減ったと言う筈...
「おかゆかあ……白い握り飯が食いてえなあ。ここの米はえらく美...
「うん、俺も食った。確かに美味いが、急に食っては身体に障る...
わかったよ、と呟くと、真之介は目を逸らし、天井を見つめた。
「殿様、俺、あいつらに……」
「いいんだ、仙石。言う必要はない」
ぽつりと漏らした言葉を兵四郎は優しく止めた。
「でも言っとかなきゃ、なんかこう、もやもやするだろ?俺も、...
幸い子供も出来ねえしな、と自嘲気味に笑う真之介に、兵四郎...
「だが、さすがになかなかきつかったなあ。あいつら、笑いなが...
「仙石……」
「まあもともと娘を品物扱いするような連中だ、ひどくて当然か...
兵四郎が言葉を返さないのに気付き、真之介は再び彼の顔に目...
「どした、殿様。しぶい顔して」
「仙石、俺はお前になんと言っていいかわからん。いや、何も言...
「あ?どういうことだ」
「俺も、あいつらと大して変わらんからだ。嫌がるお前を、無理...
「……違う!あれ、いや、違わないか?いやいや、違う……ような、...
「仙石、どっちなんだ」
首を傾げる真之介に、兵四郎は思わず苦笑した。
「うー……だから、あいつらと殿様は、とにかく違うんだ」
「そうか?どこがだ」
「どこって……殿様は、殿様だからさ」
「すまん、仙石。よくわからんのだが」
「わからんなら、仕方ないさ。正直、俺にだってわからん。考え...
なぜか偉そうに語る真之介を見ているうち、兵四郎は胸に暖か...
兵四郎は違う、兵四郎だから違うという真之介の言葉を、頭の...
「仙石、俺もだ」
「俺もって、何がだ」
「俺はお前だから、抱いたのだ。お前でなくては、抱く気になど...
「殿様?どうしたんだ、急に」
少し思い詰めたような兵四郎の様子に、真之介は眉を寄せた。
「お前は俺が背中を預けられ、背中を支えてやりたいと思う数少...
「殿様……」
「だがそれだけではない、お前に対するまた別の想いが、俺の中...
目をまっすぐに見つめて話す兵四郎から、真之介は逃れられず...
「真之介。俺は、お前を……」
「言うな、殿様。その先は、言わんでくれ」
真之介は添えられた手に手を重ね、静かに遮った。兵四郎は訝...
「真之介、なぜだ。なぜ、言わせてくれない」
「それを言われたら俺は、おぬしに寄っかかっちまうような気が...
「真之介……」
「だが、だからこそ、甘ったるい関わりにはなりたくはないんだ...
「うん。わからんような、わかるような気はする」
どっちなんだ、と今度は真之介が苦笑した。
「仙石、お前がそう言うなら、俺はもう言わん。ただ、俺がそう...
「そりゃあまあ、構わんが……俺のどこが、そんなにいいんだ」
「そりゃあお前、いつも腹を減らして、でっかい夢を見て、いつ...
「おい、褒めたって何も出んぞ」
「ふふ、弱ってるお前から、何も取ろうとは思わんよ……ただ」
「ただ……なんだ?」
見上げる真之介に顔を近付けると、そっと唇を塞いだ。真之介...
触れるだけの口づけを解くと、真之介はやや顔を赤らめた。
「……やっぱりこういうことをするんだな、おぬしは」
「すまんな、俺はやっぱりお前が欲しい。それも俺の、正直な気...
静かに笑う兵四郎に、思わず真之介も笑い返した。
「ふん、俺は素直にやるなどとは、絶対に言わんぞ。そんなこと...
「それは確かだ。ただし言われなくても、調子には乗るがな」
この野郎、と真之介は軽く殴る真似をした。拳を受け止め、兵...
「……なあ殿様。ああは言ったが、ちょっとな、頼みがある」
「うん?なんだ、仙石」
「こんなこたぁ、金輪際頼まん。一度っきりだ、ほんとだぞ」
「ふふ、なんだもったいぶって。いいから、言ってみろ」
「あのな……」
真之介が小声で告げた頼みに兵四郎は目を丸くしたが、すぐに...
おかゆを盆に乗せたお恵は、陣内を伴って真之介のいる座敷を...
布団の上に座った兵四郎の胡座に頭を乗せ、真之介は穏やかに...
ふたりは頷いて静かに障子を閉め、部屋に入り布団の横に座っ...
「やぁだ、仙石さんったら、子供みたい。捕まって、心細かった...
「みたいじゃなくて、子供だよ。世話が焼ける、でっかいガキ大...
お恵がくすくすと笑って布団をかけ直し、陣内は悪態をつきな...
「陣内、いささか脚が疲れた。代わってくれんか、お恵ちゃんで...
「えーっ、やだよ。仙石、寝相悪いもん。扱えるの、殿様くらい...
「あたしもいやー。着物をよだれだらけにされそうなんだもん。...
からかわれて兵四郎はため息をついたが、口元には自然と笑み...
大事を取って一月ほど養生し、真之介はすっかり回復した。出...
旅立ちの日、一同は宿場外れの地蔵堂に立ち寄り、揃ってお参...
近江屋主人とお小夜、田丸屋夫妻とおたみが、兵四郎達を見送...
手を合わせたお小夜は立ち上がると、陣内を見上げて笑った。
「あたしね、捕まってる時にずっと、お地蔵様に助けてって祈っ...
「あら、そうなの?陣ちゃん、そんなにありがたい顔してるかし...
確かにお堂の中の小さな地蔵は、陣内によく似た顔立ちをして...
少女から憧憬の目で見られ、陣内はまんざらでもない顔をした。
「おいおいお小夜ちゃん、ずっと一緒にいたおじさんより、この...
冗談混じりに真之介が拗ねてみせると、お小夜は真顔になった。
「ううん。もちろん、おじ……真之介さんがいっとう好きよ。真之...
「こ、これ、お小夜!お武家様になんということを」
焦った父親にたしなめられ、お小夜は顔を赤くして俯いた。真...
「お小夜ちゃん、気持ちは嬉しいが、俺は行かなきゃならん。な...
覗き込んでにっかり笑うと、お小夜は顔を上げて笑い返した。...
一行の姿が見えなくなるまで、お小夜は手を降り続けていた。...
「仙石ぅ、米屋の婿も、悪くなかったんじゃないの」
「そうだなあ。とりあえず、食いっぱぐれる心配はなくなるだろ...
「かもね。扱う米が千石でも、それもまた千石だしね」
「ああっ、そうか!……たこ、お前頭いいな」
「なに、今頃わかったの?しょうがないねえ、馬鹿だもんね、お...
なんだとこのたこ、うるさいよ馬鹿の馬面、などと喚き合うふ...
やがて道が三つに分かれる辻に出た。
「殿様、どっち行く」
「うん、こっちかな」
「じゃあ、陣ちゃんはあっちに行くよ」
「あたしも、あっちに行こうっと」
「となると、俺はそっちか……」
「仙石、一緒に来ても構わんのだぞ」
兵四郎が誘うと、真之介は笑って首を振った。
「いや、そっちに行く。殿様、また会おう」
「ああ。またな、仙石」
視線を交わした後、懐手の真之介が肩を揺らして歩き出すと、...
兵四郎は笑顔で見送ると、抜けるような青空を眺めながら、軽...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
じゃじゃ馬がほぼ馴らされてしまった(´∀`)
なので次作があれば、別タイトルになると思います。
長々とお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
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シリーズものインデックス2
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第1巻
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