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#title(連鎖)[#qf6f2d16]
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの三條×武智→飛来×武智。エロ少々だが有。起承転結の...
噛み締める唇を解かせようと指を差し入れれば、それは笛を扱...
情事の最中ですらそんな理性の働く武智を、三條は可哀想にと...
明かりを抑えた寝所に二人きり。膝の上に抱え上げ貫く体はす...
もう止められずにいると言うのに、その表情にはいつまでも苦...
眉間に深く刻まれた皺。
何故だろう。彼はいつも罰を受けるかのように、この行為に身...
確かに初め方は間違えた。それでもそれ以来無理を強いている...
乖離の溝は一向に埋まる気配を見せない。
それは淋しくも憐れな事だと三條は思う。だから、
含ませた指で口腔内を探り食い縛る歯列を割って、三條はその...
「…あっ…やぁ…っ」
下肢をじわりとした緩やかさで突き上げながら、零れ落ちるそ...
やがて含みきれなかった唾液が口の端を伝うようになる頃、三...
引き抜くと、それを武智の指と絡ませた。そして、
「自分のええようにしなさい。」
告げた言葉に、それまで力を失くしていた武智の瞳がわずかに...
傷ついた光をちらりと覗かせ、しかしそれはすぐに閉じられる...
彼は自らその身を蠢かせだした。
「あぁ…っ…ん…ぁっ…」
快楽を追う。それはけして悪い事ではないだろうと思う。
人を欲しくなり、肌を合わせたくなり、共の快楽に溺れる事を...
それを武智の身体は知っているようになのに、心だけは頑なに...
「…ひ…ぁっ…もう…」
そして望むのはいつも終わり。
許してくれ。もう早く終わってくれ。その為ならば、と自分の...
何もかもが裏腹な、そんな彼に沸き上がる感情は憎らしさと愛...
あぁ、自分までもが引き摺られる。
その自覚に微かな苦笑を浮かべながら、三條はこの時武智の手...
その体を自分の下に組み敷いていた。
「大丈夫ですか?武智。」
事が終わり、名を呼び、言葉なく茫洋と目を開けている武智の...
それに彼は瞬間ハッと意識を戻したようだった。
「申し訳ありません…すぐに…」
上げすぎたせいか、すっかり掠れてしまっている声でそう言い...
しかしこの時、三條はそれを許さなかった。
「まだ無理でしょう。もう少しここにおりなさい。」
言いながら膝の上、横向きに座らせた武智の身体を抱え直す。
それに武智は逆らわなかった。いや、逆らう力も無いようだっ...
ぐったりと手足を投げ出し腕の中に収まる、その身がひどく重...
手に取るようにわかる。
相反する心と体に必要以上の気力と体力を削り取られている。
それでいてそんな行為から逃げようとしないのは、やはりこれ...
「武智は、私が嫌いですか?」
それ故、思わず口をついた言葉。それに腕の中で武智の瞳が持...
「……三條…さま…?」
「おまえはいつも私とこうする時つらそうだ。それは私が嫌い...
「…そんな事は…っ」
「ならば好きですか?」
「…………」
「好いた相手にも、このような抱かれ方をするのですか?」
「…この…ような……」
言われた言葉に、戸惑うような武智の呟きが零される。
反応する所はそこなのか、そう思えば少しだけ可笑しくて、三...
強く抱き寄せるとその言葉を続けた。
「別に責めているつもりはないのです。ただもしそうなら、た...
それは憐れな事に思えてね。」
「……あわれ…」
「望む相手と肌を合わせて気持ちようなる事は、けして悪い事...
「………っ…」
「恥じる事でも、苦痛に感じる事でもない。それどころか自分...
それはひどく……愛おしい。」
伸びた指が武智のほつれた髪を撫でる。
それにこの時武智はひどく驚いたような目を向けてきた。
黒い瞳が行灯の淡い光を受けてゆらゆらと揺らめいている。
その動揺が、三條にはひどく不憫だった。それは、
「今まで、おまえにそう教えてくれる者は誰もいなかったので...
彼の、おそらくは自分が知りえる事の無い、過去に対して。
「ならば、それはやはり可哀想な事です。相手も、おまえも。」
告げた言葉に返される声は無かった。
それは図らずしも己の推測の正しさを意味しているようだった...
「変な事を言っていますね、我ながら。でもそう言わずにはお...
少しだけ笑みを含ませた声でそう囁き、三條はこの時もう一度...
それに武智は抗わなかった。
しばしそのまま身を添わせ、その果て、
ありがとうございます―――
ひそりと耳に届いた小さな呟き。
それは好いた相手は自分ではない、別の者なのだと言う事を素...
けれどそれを三條は刹那、これでいいのやもしれぬと思う。
あれは、そんな自分だからこそ言ってやれた言葉だった。
これがもし、この愚直なまでに己に厳しく、それでいて誰より...
可能性のまだある身であったなら、おそらく自分はこんなふう...
抱き寄せて、触れるぬくもりの柔さに知る恋情の深淵。
見える。
この魂が手に入るとなれば彼に想いを寄せる者はきっと、それ...
気が……狂うのだ――――
三條邸を辞し、その日予定していた他藩士との会合を済ませ、...
まっすぐに自室へと向かい障子戸を閉めると、武智はそのまま...
頭がひどく重かった。原因はわかっている。昨夜、三條に言わ...
『望む相手と肌を合わせて気持ちようなる事は、けして悪い事...
今日一日脳裏に巡っていたその言葉を、武智はそんな事……と胸...
そんな事、これまで考えた事も無かった。
物心ついた頃から奪われ、汚されるだけの行為は、慣れてゆく...
だからこの身体も道具でいい。
けれどそんな嫌悪をあの人は罪ではないと言う。
好いた相手とならば違うのだと。
それどころか、それを知らなかった自分は可哀想だとまで……
うつむき、落とす視線を動かせぬまま、武智はそんな事はない...
しかしそうする矢先にも、しかし…と揺れる想いが脳裏を埋ずめ...
昨夜から何度この繰り返しに苛まれているのだろう。
その度に目の奥に浮かんでくる一つの面影に、武智はこの時そ...
浮かぶ顔はいつも自分を痛ましげに見下ろしていた。
心配そうに、そして時折つらそうに。
それを自分はずっと同情なのだと思っていた。
優しい者だったから、憐れに思い相手をしてくれているのだと...
でなければ何故、わざわざこんな汚れていると知っている身を…...
しかしそれでいて自分が彼に与えてやれるのも、またこの身体...
心など伴わなくても男が快楽を追える事は嫌と言うほど知って...
だから使ってくれればいいと思っていた。思っていたのに……
それすらあの人は互いが憐れだと言った。
ならば自分はどうすればいい。
思考の堂々巡りに知らず、深い息が口をつく。と、その時、
「失礼します。先生、お戻りですろうか?」
障子一枚を隔て、不意に聞こえた声に武智はびくりと肩を震わ...
咄嗟に背後を振り返り、それでもなんとか返事を返す。
するとそれを合図とするように横に引かれた戸の向こう、姿を...
「お疲れ様です……と、どうされたがですか?」
着替えもせぬまま座り込み、動けずにいた自分を見て、収次郎...
しかしその眼差しはあらためてこちらをしかと認めると途端、...
「なんや顔色が悪いようですが。気分でも悪いがですか?」
少しばかり慌てたように部屋の中に入ってきたその身が、立て...
付いてこようとする。
しかし武智はそれを遮ろうとした。
「なんちゃあない。ちっくと疲れただけじゃ。」
言いながら逆に立ち上がろうとする。しかしそれはこの時、為...
不意に目の前を襲った暗闇。
それが目眩だと気付く前に、傾いだ肩に手が掛けられた。
「先生っ」
名を呼んでくる収次郎の声と、支える為にこめられた手の力。
それに武智は懸命に体勢を立て直そうとするが、この時目眩は...
しばし収次郎に支えられたまま目を閉じる。それでも、
「……すまん…」
やがて平衡感覚がようやくに戻り、もう大丈夫だと武智はなん...
しかしそれをこの時、収次郎は許してはくれなかった。
肩を掴む手に力を込められたまま、それを不意に強く引かれる。
えっと思う耳元に唇が寄せられ、落とされた言葉。それは刹那...
「昨夜は三條様のお屋敷でしたか。」
「――――」
「ええ匂いがします。」
それは、おそらくは移り香だった。
昨夜一晩、その腕の中に包んでくれていた人の……
思い至った瞬間、武智は反射的に目の前にある収次郎の胸を強...
寄せていた身が離れる。
するとそんな自分の反応に収次郎は瞬間、困ったような、それ...
が、彼はそれをすぐに表情から掻き消す。そしてその代わり、
「やはり顔色が悪いがです。布団を敷きますきに、今日は休ん...
無理に作っただろう笑みをその口元に浮かべ、自分からその手...
座り込んだまま動けない自分を置いて、立ち上がろうとする。
行ってしまう……
それに武智の胸はまた痛む。
傷つく?ならばそれは身勝手だ。支離滅裂ですらある。
しかし思い返せば、自分は彼に対していつもこうだった。
いつも……それはいったいいつから?
幼い頃からずっと側にいた。それが誰より近い存在だと思うよ...
前だけを向こうとしながら、それでいてどうしようにもなく揺...
常に後ろにいてくれると知らず安堵するようになったのは……
しかしそんな彼に自分は与えられるばかりだった。
時折求められる、この身体ですらまともにやれてはいなかった...
どうすればいいのだろう?
震える指先が宙に伸びた。背を向けようとする収次郎を止める...
それに気付いた収次郎が少しだけ眉根を寄せる。
どういたがですか?先生?
こちらの身を案じるような声。
しかしそれを武智はいらないと思う。欲しいのは…わかって欲し...
自ら触れれば伝わるだろうか。
心配げに戻ってきた収次郎の頬に触れる指先。
反らさず、目を見れば伝わるだろうか。
声が出ず、視線を絡ませる事しか出来ない。
けれどそれではきっといけない。だから懸命にせめて、
「……収次郎……」
名を呼べれば……伝わってくれるのだろうか―――
わからない。わからない事だらけだ。
自分は気持ちの伝え方などまるで知らない。
そんな事は……今まで誰も、教えてはくれなかった。
障子戸越しに禍々しいまでに赤い西日が部屋の中に射していた。
夕闇はもうすぐ近く。藩邸内では夕餉の時刻に合わせて人が騒...
ここにも誰かがまた声をかけに来るかもしれない。
そうわかってはいても今、武智を抱く欲を収次郎は止められな...
「……ぁ…あぁ…っ…」
布団どころか羽織一枚を脱がす手間さえ惜しんで、抱き込み畳...
互いに袴だけを解き落とすような性急さでも、繋がる快楽に甘...
そんな武智の汗ばんだ首筋に収次郎は顔を埋める。
そして吸い込む、その匂いが堪らなかった。
それは武智自身のものでは無かった。土イ左のものでも、この藩...
自分のような者では気後れするような感覚を覚える、冷たくも...
出所は一つしか思い浮かばなかった。
京の三條家。主家耶麻内家と縁戚関係にもあるその家の主と武...
不思議と息が合うようだった。
それは思想だけでは無い。
剣術や学問、武に繋がるもの以外にも、絵や書などの趣に武智...
世の流れが流れでなければ、むしろそう言った方面に重きを置...
だから、仕方がないと思っていた。
この人はずっと苦衷の中にいた。
厳然とした国元の身分差の中、上に抑えつけられ溜まり続ける...
一身に受け止め、よもや暴走しようとする集団を懸命に理の方...
けれどそれは一人で背負うにはあまりに大きな負荷だった。
だから誰かに縋りたくなる、その心中は理解できた。
その誰かが自分ではない事は、悔しくも寂しい事ではあったが…
仕方がない、仕方がない。それでもこの人がそれで少しは楽に...
けれどそんな自分の想いとこの人の弱さは裏切られた。
武智が心の支えとしていた者はある日突然、自分達の目の前か...
事情はわからなかった。けれどそれ以来、武智はその瞳から光...
言葉数は減った。笑う事も少なくなった。ただ悲愴なまでも厳...
それはまるで後ろを振り返り、そこにあったものを認める事を...
強くて、不安定な背中だった。
何か一つのきっかけで瓦解してしまいそうな、強固ゆえの脆さ...
だから支えたいと思った。それがどんな形であれ。
昼の間の権謀術数。それに疲れたように時折壊れるその精神。
そんな人を身近で見つめ、手を差し伸べられたのは気付けば自...
彼がいなくなり、自分だけになっていた。
それを自分は心のどこかで喜んでいた。
不在に付け込み、弱さに付け込み、それでも手に出来たその存...
おそらくそれを天に見透かされたのだろう。
武智の前に現れた、自分にしてみれば雲の上のような存在。
その人の元に通うようになって、武智の雰囲気は明らかに和ら...
いつも張りつめていたような空気が解け、土イ左を出て以来、よ...
見せるようになった。
それに自分が何を言えただろう。なんて事は無い。また元に戻...
それであの人が楽になれるのなら……
武智不在の一人寝の夜に何度呟いたかわからない、しかしそれ...
それが証拠に、
「…先生……武智…さん…」
今こうして腕に出来れば、後先を考えずその身を飢えたように...
鼻腔を埋め脳裏をかき乱す、汗と見知らぬ男の匂いに対する情...
昨夜の居場所と行為を何も隠せぬその身体が愛しくて、憎らし...
そんな愚かな自分に、武智はこの日少しおかしかった。
一度は突き離し、それでもすぐに手を伸ばしてきた。
頬に触れる。目を上げる。視線を絡め、そして、
彼はいつも抱かれる時、目を閉じていた。反らしていた。開い...
それなのに今は……
「……しゅう…じろ…う…」
瞳がまっすぐに自分を見つめている。唇が動く。甘く掠れた声...
自分に抱かれてくれていた。
それに収次郎はこの時、人の欲の果ての無さをまざまざと思い...
仕方がない。そんな事は嘘だ。この人が楽になるのなら。でも...
「武智さん…わしは……」
ずっと想っていた。それはもう気が遠くなるほどの長い時間、...
「えぇ……しゅうじろう…えぇ…よ……」
訥々と不器用な響きで、それでも懸命に言葉を紡ごうとしてく...
抑え込む事は出来なかった。
自分のものにしたかった。他の誰にも渡さない、自分だけのも...
背に武智の腕が回される。
縋るように、より深くに引き寄せるように着物越しに立てられ...
それが収次郎の焦燥感を更に煽り立てる。
どうしたらいいのだろう。
焦がれる想いが、身の内で醜く昏い狂気に変わる。
過去の影を忘れさせる為に、包む優しい匂いを消す為に……
膝を取り、開かせた足の間の溶けるほどに熱い粘膜に乱暴なま...
上がる武智の悲鳴まじりの嬌声にも止められない自分が望むも...
欲しかった。
それはどんなものでも構わない。
西日が射す。赤い光が畳の上に落ちる。その中に二人溺れなが...
今、この手にあらん限りの力を、収次郎はただ欲しいと願った―...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
三條クリニックが書けたのは楽しかったです。
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#title(連鎖)[#qf6f2d16]
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タイガードラマの三條×武智→飛来×武智。エロ少々だが有。起承転結の...
噛み締める唇を解かせようと指を差し入れれば、それは笛を扱...
情事の最中ですらそんな理性の働く武智を、三條は可哀想にと...
明かりを抑えた寝所に二人きり。膝の上に抱え上げ貫く体はす...
もう止められずにいると言うのに、その表情にはいつまでも苦...
眉間に深く刻まれた皺。
何故だろう。彼はいつも罰を受けるかのように、この行為に身...
確かに初め方は間違えた。それでもそれ以来無理を強いている...
乖離の溝は一向に埋まる気配を見せない。
それは淋しくも憐れな事だと三條は思う。だから、
含ませた指で口腔内を探り食い縛る歯列を割って、三條はその...
「…あっ…やぁ…っ」
下肢をじわりとした緩やかさで突き上げながら、零れ落ちるそ...
やがて含みきれなかった唾液が口の端を伝うようになる頃、三...
引き抜くと、それを武智の指と絡ませた。そして、
「自分のええようにしなさい。」
告げた言葉に、それまで力を失くしていた武智の瞳がわずかに...
傷ついた光をちらりと覗かせ、しかしそれはすぐに閉じられる...
彼は自らその身を蠢かせだした。
「あぁ…っ…ん…ぁっ…」
快楽を追う。それはけして悪い事ではないだろうと思う。
人を欲しくなり、肌を合わせたくなり、共の快楽に溺れる事を...
それを武智の身体は知っているようになのに、心だけは頑なに...
「…ひ…ぁっ…もう…」
そして望むのはいつも終わり。
許してくれ。もう早く終わってくれ。その為ならば、と自分の...
何もかもが裏腹な、そんな彼に沸き上がる感情は憎らしさと愛...
あぁ、自分までもが引き摺られる。
その自覚に微かな苦笑を浮かべながら、三條はこの時武智の手...
その体を自分の下に組み敷いていた。
「大丈夫ですか?武智。」
事が終わり、名を呼び、言葉なく茫洋と目を開けている武智の...
それに彼は瞬間ハッと意識を戻したようだった。
「申し訳ありません…すぐに…」
上げすぎたせいか、すっかり掠れてしまっている声でそう言い...
しかしこの時、三條はそれを許さなかった。
「まだ無理でしょう。もう少しここにおりなさい。」
言いながら膝の上、横向きに座らせた武智の身体を抱え直す。
それに武智は逆らわなかった。いや、逆らう力も無いようだっ...
ぐったりと手足を投げ出し腕の中に収まる、その身がひどく重...
手に取るようにわかる。
相反する心と体に必要以上の気力と体力を削り取られている。
それでいてそんな行為から逃げようとしないのは、やはりこれ...
「武智は、私が嫌いですか?」
それ故、思わず口をついた言葉。それに腕の中で武智の瞳が持...
「……三條…さま…?」
「おまえはいつも私とこうする時つらそうだ。それは私が嫌い...
「…そんな事は…っ」
「ならば好きですか?」
「…………」
「好いた相手にも、このような抱かれ方をするのですか?」
「…この…ような……」
言われた言葉に、戸惑うような武智の呟きが零される。
反応する所はそこなのか、そう思えば少しだけ可笑しくて、三...
強く抱き寄せるとその言葉を続けた。
「別に責めているつもりはないのです。ただもしそうなら、た...
それは憐れな事に思えてね。」
「……あわれ…」
「望む相手と肌を合わせて気持ちようなる事は、けして悪い事...
「………っ…」
「恥じる事でも、苦痛に感じる事でもない。それどころか自分...
それはひどく……愛おしい。」
伸びた指が武智のほつれた髪を撫でる。
それにこの時武智はひどく驚いたような目を向けてきた。
黒い瞳が行灯の淡い光を受けてゆらゆらと揺らめいている。
その動揺が、三條にはひどく不憫だった。それは、
「今まで、おまえにそう教えてくれる者は誰もいなかったので...
彼の、おそらくは自分が知りえる事の無い、過去に対して。
「ならば、それはやはり可哀想な事です。相手も、おまえも。」
告げた言葉に返される声は無かった。
それは図らずしも己の推測の正しさを意味しているようだった...
「変な事を言っていますね、我ながら。でもそう言わずにはお...
少しだけ笑みを含ませた声でそう囁き、三條はこの時もう一度...
それに武智は抗わなかった。
しばしそのまま身を添わせ、その果て、
ありがとうございます―――
ひそりと耳に届いた小さな呟き。
それは好いた相手は自分ではない、別の者なのだと言う事を素...
けれどそれを三條は刹那、これでいいのやもしれぬと思う。
あれは、そんな自分だからこそ言ってやれた言葉だった。
これがもし、この愚直なまでに己に厳しく、それでいて誰より...
可能性のまだある身であったなら、おそらく自分はこんなふう...
抱き寄せて、触れるぬくもりの柔さに知る恋情の深淵。
見える。
この魂が手に入るとなれば彼に想いを寄せる者はきっと、それ...
気が……狂うのだ――――
三條邸を辞し、その日予定していた他藩士との会合を済ませ、...
まっすぐに自室へと向かい障子戸を閉めると、武智はそのまま...
頭がひどく重かった。原因はわかっている。昨夜、三條に言わ...
『望む相手と肌を合わせて気持ちようなる事は、けして悪い事...
今日一日脳裏に巡っていたその言葉を、武智はそんな事……と胸...
そんな事、これまで考えた事も無かった。
物心ついた頃から奪われ、汚されるだけの行為は、慣れてゆく...
だからこの身体も道具でいい。
けれどそんな嫌悪をあの人は罪ではないと言う。
好いた相手とならば違うのだと。
それどころか、それを知らなかった自分は可哀想だとまで……
うつむき、落とす視線を動かせぬまま、武智はそんな事はない...
しかしそうする矢先にも、しかし…と揺れる想いが脳裏を埋ずめ...
昨夜から何度この繰り返しに苛まれているのだろう。
その度に目の奥に浮かんでくる一つの面影に、武智はこの時そ...
浮かぶ顔はいつも自分を痛ましげに見下ろしていた。
心配そうに、そして時折つらそうに。
それを自分はずっと同情なのだと思っていた。
優しい者だったから、憐れに思い相手をしてくれているのだと...
でなければ何故、わざわざこんな汚れていると知っている身を…...
しかしそれでいて自分が彼に与えてやれるのも、またこの身体...
心など伴わなくても男が快楽を追える事は嫌と言うほど知って...
だから使ってくれればいいと思っていた。思っていたのに……
それすらあの人は互いが憐れだと言った。
ならば自分はどうすればいい。
思考の堂々巡りに知らず、深い息が口をつく。と、その時、
「失礼します。先生、お戻りですろうか?」
障子一枚を隔て、不意に聞こえた声に武智はびくりと肩を震わ...
咄嗟に背後を振り返り、それでもなんとか返事を返す。
するとそれを合図とするように横に引かれた戸の向こう、姿を...
「お疲れ様です……と、どうされたがですか?」
着替えもせぬまま座り込み、動けずにいた自分を見て、収次郎...
しかしその眼差しはあらためてこちらをしかと認めると途端、...
「なんや顔色が悪いようですが。気分でも悪いがですか?」
少しばかり慌てたように部屋の中に入ってきたその身が、立て...
付いてこようとする。
しかし武智はそれを遮ろうとした。
「なんちゃあない。ちっくと疲れただけじゃ。」
言いながら逆に立ち上がろうとする。しかしそれはこの時、為...
不意に目の前を襲った暗闇。
それが目眩だと気付く前に、傾いだ肩に手が掛けられた。
「先生っ」
名を呼んでくる収次郎の声と、支える為にこめられた手の力。
それに武智は懸命に体勢を立て直そうとするが、この時目眩は...
しばし収次郎に支えられたまま目を閉じる。それでも、
「……すまん…」
やがて平衡感覚がようやくに戻り、もう大丈夫だと武智はなん...
しかしそれをこの時、収次郎は許してはくれなかった。
肩を掴む手に力を込められたまま、それを不意に強く引かれる。
えっと思う耳元に唇が寄せられ、落とされた言葉。それは刹那...
「昨夜は三條様のお屋敷でしたか。」
「――――」
「ええ匂いがします。」
それは、おそらくは移り香だった。
昨夜一晩、その腕の中に包んでくれていた人の……
思い至った瞬間、武智は反射的に目の前にある収次郎の胸を強...
寄せていた身が離れる。
するとそんな自分の反応に収次郎は瞬間、困ったような、それ...
が、彼はそれをすぐに表情から掻き消す。そしてその代わり、
「やはり顔色が悪いがです。布団を敷きますきに、今日は休ん...
無理に作っただろう笑みをその口元に浮かべ、自分からその手...
座り込んだまま動けない自分を置いて、立ち上がろうとする。
行ってしまう……
それに武智の胸はまた痛む。
傷つく?ならばそれは身勝手だ。支離滅裂ですらある。
しかし思い返せば、自分は彼に対していつもこうだった。
いつも……それはいったいいつから?
幼い頃からずっと側にいた。それが誰より近い存在だと思うよ...
前だけを向こうとしながら、それでいてどうしようにもなく揺...
常に後ろにいてくれると知らず安堵するようになったのは……
しかしそんな彼に自分は与えられるばかりだった。
時折求められる、この身体ですらまともにやれてはいなかった...
どうすればいいのだろう?
震える指先が宙に伸びた。背を向けようとする収次郎を止める...
それに気付いた収次郎が少しだけ眉根を寄せる。
どういたがですか?先生?
こちらの身を案じるような声。
しかしそれを武智はいらないと思う。欲しいのは…わかって欲し...
自ら触れれば伝わるだろうか。
心配げに戻ってきた収次郎の頬に触れる指先。
反らさず、目を見れば伝わるだろうか。
声が出ず、視線を絡ませる事しか出来ない。
けれどそれではきっといけない。だから懸命にせめて、
「……収次郎……」
名を呼べれば……伝わってくれるのだろうか―――
わからない。わからない事だらけだ。
自分は気持ちの伝え方などまるで知らない。
そんな事は……今まで誰も、教えてはくれなかった。
障子戸越しに禍々しいまでに赤い西日が部屋の中に射していた。
夕闇はもうすぐ近く。藩邸内では夕餉の時刻に合わせて人が騒...
ここにも誰かがまた声をかけに来るかもしれない。
そうわかってはいても今、武智を抱く欲を収次郎は止められな...
「……ぁ…あぁ…っ…」
布団どころか羽織一枚を脱がす手間さえ惜しんで、抱き込み畳...
互いに袴だけを解き落とすような性急さでも、繋がる快楽に甘...
そんな武智の汗ばんだ首筋に収次郎は顔を埋める。
そして吸い込む、その匂いが堪らなかった。
それは武智自身のものでは無かった。土イ左のものでも、この藩...
自分のような者では気後れするような感覚を覚える、冷たくも...
出所は一つしか思い浮かばなかった。
京の三條家。主家耶麻内家と縁戚関係にもあるその家の主と武...
不思議と息が合うようだった。
それは思想だけでは無い。
剣術や学問、武に繋がるもの以外にも、絵や書などの趣に武智...
世の流れが流れでなければ、むしろそう言った方面に重きを置...
だから、仕方がないと思っていた。
この人はずっと苦衷の中にいた。
厳然とした国元の身分差の中、上に抑えつけられ溜まり続ける...
一身に受け止め、よもや暴走しようとする集団を懸命に理の方...
けれどそれは一人で背負うにはあまりに大きな負荷だった。
だから誰かに縋りたくなる、その心中は理解できた。
その誰かが自分ではない事は、悔しくも寂しい事ではあったが…
仕方がない、仕方がない。それでもこの人がそれで少しは楽に...
けれどそんな自分の想いとこの人の弱さは裏切られた。
武智が心の支えとしていた者はある日突然、自分達の目の前か...
事情はわからなかった。けれどそれ以来、武智はその瞳から光...
言葉数は減った。笑う事も少なくなった。ただ悲愴なまでも厳...
それはまるで後ろを振り返り、そこにあったものを認める事を...
強くて、不安定な背中だった。
何か一つのきっかけで瓦解してしまいそうな、強固ゆえの脆さ...
だから支えたいと思った。それがどんな形であれ。
昼の間の権謀術数。それに疲れたように時折壊れるその精神。
そんな人を身近で見つめ、手を差し伸べられたのは気付けば自...
彼がいなくなり、自分だけになっていた。
それを自分は心のどこかで喜んでいた。
不在に付け込み、弱さに付け込み、それでも手に出来たその存...
おそらくそれを天に見透かされたのだろう。
武智の前に現れた、自分にしてみれば雲の上のような存在。
その人の元に通うようになって、武智の雰囲気は明らかに和ら...
いつも張りつめていたような空気が解け、土イ左を出て以来、よ...
見せるようになった。
それに自分が何を言えただろう。なんて事は無い。また元に戻...
それであの人が楽になれるのなら……
武智不在の一人寝の夜に何度呟いたかわからない、しかしそれ...
それが証拠に、
「…先生……武智…さん…」
今こうして腕に出来れば、後先を考えずその身を飢えたように...
鼻腔を埋め脳裏をかき乱す、汗と見知らぬ男の匂いに対する情...
昨夜の居場所と行為を何も隠せぬその身体が愛しくて、憎らし...
そんな愚かな自分に、武智はこの日少しおかしかった。
一度は突き離し、それでもすぐに手を伸ばしてきた。
頬に触れる。目を上げる。視線を絡め、そして、
彼はいつも抱かれる時、目を閉じていた。反らしていた。開い...
それなのに今は……
「……しゅう…じろ…う…」
瞳がまっすぐに自分を見つめている。唇が動く。甘く掠れた声...
自分に抱かれてくれていた。
それに収次郎はこの時、人の欲の果ての無さをまざまざと思い...
仕方がない。そんな事は嘘だ。この人が楽になるのなら。でも...
「武智さん…わしは……」
ずっと想っていた。それはもう気が遠くなるほどの長い時間、...
「えぇ……しゅうじろう…えぇ…よ……」
訥々と不器用な響きで、それでも懸命に言葉を紡ごうとしてく...
抑え込む事は出来なかった。
自分のものにしたかった。他の誰にも渡さない、自分だけのも...
背に武智の腕が回される。
縋るように、より深くに引き寄せるように着物越しに立てられ...
それが収次郎の焦燥感を更に煽り立てる。
どうしたらいいのだろう。
焦がれる想いが、身の内で醜く昏い狂気に変わる。
過去の影を忘れさせる為に、包む優しい匂いを消す為に……
膝を取り、開かせた足の間の溶けるほどに熱い粘膜に乱暴なま...
上がる武智の悲鳴まじりの嬌声にも止められない自分が望むも...
欲しかった。
それはどんなものでも構わない。
西日が射す。赤い光が畳の上に落ちる。その中に二人溺れなが...
今、この手にあらん限りの力を、収次郎はただ欲しいと願った―...
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
三條クリニックが書けたのは楽しかったです。
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