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#title(歪み) [#k8f80168]
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの飛来×武智(白)。本編にグルグルしすぎてムショーにエロ...
すいません、ドン暗いです。
夜半も過ぎた頃となると、藩邸内は深い眠りの淵に沈み込んで...
すべてが寝静まり、物音一つしない廊下を月明かりだけを頼り...
目指す先は武智の部屋だった。
事の発端は昼の内にあった。
皆が集まった所で出た世間話。それは昨今、京の町で続く天誅...
根底には根深い政治情勢が絡んでいながらも、かまびすしい京...
そんな事はどうでもよいのだろう。ただやんやと囃し立てる。
そしてそれに乗じる仲間達の中でも、しかしあの時自分は共に...
それは数日前に見ていたから。
花街で設けた酒席の中、武智がひそりと口にした名前と、それ...
伊蔵の背中。
その前にも予兆はあった。
武智が怪訝を口にした、その翌日に消された浪人者。
まさかとは思った。けれど打ち消しようも無かった。
だからもはや居ても立ってもおられず、武智の後を追いかけた...
問おうとしてしかし問いきれず、口ごもる。
そんな自分にあの時武智は言った。
『そろそろひずみが出てきちゅう』
ぽつりと零された、それは意味のわからない言葉だった。しか...
武智は尚も言葉を続ける。
『おまんで、ええか』
こちらを見、微笑む武智の目には光がなかった。
無いままに彼は自分に最後、今夜部屋に来るようにと告げた。
廊下の角を曲がり、顔を上げる。
そして見やった先の部屋には、もはや明かりは付いていなかっ...
今宵と言われつつも踏ん切りがつかず、手元の仕事を片づけて...
寝てしまったのなら今日は戻った方がいいのかと、思いつつも...
部屋の前、膝をついて声をかける。
「先生。収次郎ですが、もうお休みになられちょりますか?」
障子戸越し、返事は無かった。
ならば仕方がないと立ち去ろうとする、しかしその瞬間何やら...
「すみません、先生。失礼します!」
言うと同時に戸に手を掛け、引く。
はたして部屋の中にこの時、武智の姿は無かった。
代わり、あったのは上掛けのめくられた一組の布団だけ。
思わず部屋の中に足を踏み入れ、その布団の上に手を置く。
触れた布は秋の夜気に冷え、長く人のいた気配を感じさせなか...
胸の不安が一気に増大した。だから、
「先生っ」
もう一度短く叫ぶと同時に、収次郎は消えた武智の姿を求め部...
大きな声を上げる事は出来なかった。
それどころか足音さえ忍ばせて、収次郎は藩邸内を巡る。
人を呼ぼうと言う考えは無かった。そうしてはいけないと何か...
御用部屋、応接の間、果ては風呂場までのぞき、しかしそのど...
まさか外に出たのかと、昨今の京の町の物騒さを思い血の気が...
努めて思考を働かせる。
この異様さ、正面から外に出るとは到底思えない。ならば裏口...
踵が返される。向かったのは勝手口だった。
下働きの者や商人達が出入りするそこは屋敷内の端に位置して...
幾つもの角を曲がり、戸板を引く。
格子越しに月の光だけが差し込む蒼い闇に沈んだ台所。
土間へと降りる階段状の板の間にその人は、いた。
白い夜着姿だった。羽織一枚羽織らぬその寒々しい背が、冷た...
「先生?!」
思わず叫ぶような声が出る。しかしそれにもその背が動く気配...
ただひたすらに闇の一点を見据え、こちらを振り返ろうともし...
その異様な雰囲気には、驚きより先に恐ろしさが立った。けれ...
「……先生…何しちゅうがですか、先生っ…」
懸命に声を振り絞る。足を踏み出し、立つその背後。
それでも武智がこちらを見ようとしないのがわかればその膝は...
目の前の体を後ろから強く抱き締めていた。
引き寄せた、その肩は冷たかった。
いったいどれくらいの長い間、一人ここにいたのか。
思えば腕の力が更にこもる。それはいっそ痛い程に。
だからだろうか。
「……苦しい…」
ようやくに聞こえた声。それにはっと視線を上げれば、そこに...
振り返ってくる武智の目があった。
「どういたがじゃ?」
密やかに呟かれる、その言葉は自分のものだと思う。だから、
「先生こそ、どういて……」
責める言葉が、しかし最後まで続かない。するとそれに武智は...
言葉を落としてきた。
「来ぬなと…思うて…」
「えっ?」
意味がわからず思わず聞き直してしまう。しかしそんな収次郎...
流れ続けてゆく。
「仕方がないの。切ったのはわしの方じゃき。あれとわしでは...
あれはあの笑顔でいつもわしを拒絶する。それにわしはもう……...
しもうたがじゃ。」
「…先生……」
「言葉では何も通じん。目ももう合わん。なら…もう終わりにし...
忘れられたと思うた頃にひょっこりと現れる。酷い奴じゃ。せ...
視線が上がるのがわかった。その瞳が闇を見続けているのがわ...
そして言葉が繰り返される。
「来ぬな……」
どこか遠く寂しげに響く、その言葉の意味はほとんどわからな...
もしかしたらわかるかもしれない部分はあったのかもしれない...
わかりたくないと思った。
ただ、今のままでは駄目だという警鐘だけは頭の中で鳴り響く。
脳裏によぎる昼間の記憶。
傲然と笑み、こちらを見つめてきた光のない黒い瞳。
それと瞳の闇はまったく同じなのに、今目の前にいる人はまる...
夜着越しでさえわかる肌の冷たさが、自分の心を追いつめる。...
「戻りましょう。」
ここにいてはいけないと、収次郎はこの時抱き留めていた腕を...
それに武智は無言の視線を向けてくる。
是とも非とも言わない。それが焦りに拍車をかける。
なんとしてもこの場から離れねば。だから迫る言葉が口を突い...
「わしが負うてゆきますきに。」
「……負う?」
「ええ。」
反応があった事を幸いのきっかけとして、収次郎はこの時素早...
しばし、声は無かった。
拒絶されるか、無視されるか。賭けのような時をそれでも収次...
長くも短い、気の遠くなるような……そんな時間の代償は、首筋...
ふわりと袖ごと巻きつけられる二の腕。そして背中に重なって...
こうなっても武智からの声は無い。
それでもこの時収次郎は構わないと思った。
ただ預けられた身の重さが泣きたいほどに切なかった。
二人無言で廊下を渡り、辿りついた部屋の布団の上に武智を下...
その足元に寄せた。
そして手を取る。
「冷えちょりますね。湯を持ってきますきに、それまでは布団...
近くにあった羽織も引き寄せ、その肩に覆わせると、立ち上が...
しかしそれは不意に引かれた袖のせいでままならなくなった。
「先生?」
視線をやれば、そこには引くだけでない、袖ごと自分の腕に絡...
伏せがちの黒い瞳がゆらゆらと揺れている。そして、
「……も…いくがか…」
小さく呟かれた声。聞き取れずえっ?とその身を下ろし、収次...
視線の先、くっと眉根をしかめもう一度言った。
「おまんも……行くがか…」
声が、腕が、震えていた。
ギリギリに張りつめながら、それでいてほんの些細な事で一気...
そんな不安定な心の内が触れる肌の感触から伝わってくる。
それに収次郎は痛ましさと共にこの時、どうしようにもない憤...
別人のような。ひずみ。
いったい何がこの人をここまで追い詰め、誰が……この人をここ...
自分の預かり知らぬ所で起きただろう事に悔いと嫉妬を感じな...
その怒りを胸の内だけに必死に収める。そして、
「どこにも行きません。」
絡みついてくる武智の体を抱き寄せながら、その耳元静かな囁...
「せやきに、わしが温めてもええですろうか。」
顔が上がる。視線が絡む。
そこにやはり声は無かったが、もう答えは待てなかった。
着物を脱ぎ、引き寄せた行灯用の油を指に絡ませ、もつれ込ん...
下肢を探れば、それに武智はその時、反射的に背を反らしなが...
どころか、抱き締められる肩先で押し殺される息と縋ってくる...
胸元、喉、そして頬に這い上がったそれがなぞるように唇に触...
収次郎はその一つを口に含んだ。熱を与えるように舌を絡める。
爪から関節、そして付け根までを舌先でくすぐる。と、瞬間そ...
それは今まで収次郎が見た事のない武智の表情だった。
これまでも肌を合わせた事は幾度かある。
無理矢理でも合意でも、その体はどこか慣れている事が察せら...
厭うような強張りをいつも初めに見せていた。
しかしその戸惑いが今は……ない。
あるのは、慣らす指を受け入れ、立てる水音と交わす吐息に聴...
見上げてくるどろりと重く甘い闇を秘めた瞳。
不意に口元からそっと指が引き抜かれた。自分の唾液を絡めた...
「…先生っ」
思わず呼ぶ声が口をついた。それは武智の指が自分の下肢の熱...
それまでの抱擁ですでに昂ぶっていた男の欲を、武智はこの時...
「…ええから…」
落とされた呟き。
「優しゅうしてくれんで…ええから…」
「……せん…せ…い…」
「お願いやき…もう全部…壊いてくれ……」
願うそれは体なのか、それともまた違う何かなのか。
力無く茫洋と、それでも切実に何かの終わりを乞う武智の声に...
大事に、大切にしたいのに、それを許してくれないこの人が憎...
それでもそんな事を求めなければならない程、何かに追い詰め...
愛しかった。だから、
「力、抜いておいてつかぁさい。」
告げると同時に収次郎は絡めていた腕を解くと、武智の体をう...
武智の顔を見る事が出来なかった。
そして何より、愛憎に塗れた自分の醜い顔を武智に見られたく...
重い闇が堕ちている。遠く聞こえるのは虫の音か。
濁流に押し流されるような情事の果てに訪れた静寂の中、身を...
あったのは、こと切れたように眠る武智の青白い横顔だった。
優しさを拒まれたあれから、自分は武智を手酷く抱いた。
体を伏せさせ、腰だけを高く抱え持ち、なんの技巧も無く後ろ...
強張りを帯びて震えた。
上げられる悲鳴からは耳を塞いだ。
ただ望まれたまま、その身を苛もうとする。
それでも、そんな武智の体が腕の中で溶け始めるのにかかる時...
短かかった。
押さえつける肌が徐々に淡い朱に染まりだす。
切れ切れに零される悲鳴にはいつしか縋るような艶が交じり、...
本人の意識の外で熱くうねり、男を奥へと誘った。
明らかに男に弄ばれた痕跡を匂わせる媚態。
そしてそれがけして自分の手によるものではない事がわかる分...
自分の砂を噛むような嫉妬はそのまま荒い愛撫となった。
胸元に滑り込ませた手で両の尖りを捏ね、深く身を折り、さら...
途端、きつくなる下肢の締め付けをも突き崩すように腰の穿ち...
揺さぶられながら啼いた。
淫らがましくも憐れな肢体が、己の為すがままに追い詰められ...
悶え、狂いながら……果て堕ちる。
途端、崩れるように力の抜けた武智の体を、しかしあの時自分...
前のめりに倒れかけるその腹に腕を回し、身を起こした自分の...
解かれぬままだった繋がりが自重でまたも深くなり、武智は刹...
自分はそれを聞いてはやれなかった。ただ、
「まだです……」
小さく、それでも強く囁きをその耳元近くに落としてやる。
すると武智はあの時、それ以上の抗いは見せなかった。
その後は、律動、嬌声、どこまでが自分かわからなくなるほど...
永久にも思える甘くも苦い共の責苦は、長く武智が気を失うま...
伸びた指先が、武智のこめかみに落ちるほつれ毛をはらう。
消耗しきる事でようやく訪れた眠り。
それを妨げるつもりはなかったが、その微かな感触にこの時、...
うっすらと開く、その奥に黒い瞳がのぞく。
そこに光は無かった。
だからそれに収次郎は瞬間、冷たい緊張を背筋に走らせる。
目の覚めたこの人は、また別の人になってしまっているのでは...
そんな自分の恐れはこの時、微かに動いた唇から零された小さ...
「………ん…」
それは渇き、掠れた声だった。
「…すま…ん……しゅう…じろう…」
それきり―――だった。
薄く開いていた瞳が再び力尽きたように落ち、辺りに静寂が戻...
またしても一人、闇の中に取り残される。
けれど収次郎はこの時、そんな武智を眼下に見つめたまま、し...
脳裏に反響する声がある。
それは確かに自分の名を呼んだ。
この夜初めて、自分の名を呼んでいた。
だからそれに、わかっていたのかと……ちゃんと、わかっていた...
思い出す、虚空を見つめ、何も映していなかった瞳。
言葉を交わしても肌に触れても、どこか遠かったその人は、縋...
していないようで。そんな鈍い痛みに苛まれ続けていた心が今...
選ばれていたのだと熱を持つ。
『おまんで、ええか』
たとえそれが、どれほど都合のいいものであったとしてもだ。...
「側におります。先生の…望まれるままに。」
無意識に溢れ出た、その言葉は決意だった。
それはどんな形でも。支える為でも、温もりを与える為でも……...
ただ……
「だから……少しだけ、許してつかぁさい。」
腕が伸びた。
眠る武智の背を包み込むように抱き寄せながら、収次郎はこの...
夜は深く、闇は暗く、夜明けはまだ遠い。
だからそれまでの間しばし、と願う。それは、
優しく抱かせてつかぁさい―――
ただ……それだけの事だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナガーイ鬱話。読んでいただいてありがとうございました。
しかし凄い肝心なところミスったorz
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|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの飛来×武智(白)。本編にグルグルしすぎてムショーにエロ...
すいません、ドン暗いです。
夜半も過ぎた頃となると、藩邸内は深い眠りの淵に沈み込んで...
すべてが寝静まり、物音一つしない廊下を月明かりだけを頼り...
目指す先は武智の部屋だった。
事の発端は昼の内にあった。
皆が集まった所で出た世間話。それは昨今、京の町で続く天誅...
根底には根深い政治情勢が絡んでいながらも、かまびすしい京...
そんな事はどうでもよいのだろう。ただやんやと囃し立てる。
そしてそれに乗じる仲間達の中でも、しかしあの時自分は共に...
それは数日前に見ていたから。
花街で設けた酒席の中、武智がひそりと口にした名前と、それ...
伊蔵の背中。
その前にも予兆はあった。
武智が怪訝を口にした、その翌日に消された浪人者。
まさかとは思った。けれど打ち消しようも無かった。
だからもはや居ても立ってもおられず、武智の後を追いかけた...
問おうとしてしかし問いきれず、口ごもる。
そんな自分にあの時武智は言った。
『そろそろひずみが出てきちゅう』
ぽつりと零された、それは意味のわからない言葉だった。しか...
武智は尚も言葉を続ける。
『おまんで、ええか』
こちらを見、微笑む武智の目には光がなかった。
無いままに彼は自分に最後、今夜部屋に来るようにと告げた。
廊下の角を曲がり、顔を上げる。
そして見やった先の部屋には、もはや明かりは付いていなかっ...
今宵と言われつつも踏ん切りがつかず、手元の仕事を片づけて...
寝てしまったのなら今日は戻った方がいいのかと、思いつつも...
部屋の前、膝をついて声をかける。
「先生。収次郎ですが、もうお休みになられちょりますか?」
障子戸越し、返事は無かった。
ならば仕方がないと立ち去ろうとする、しかしその瞬間何やら...
「すみません、先生。失礼します!」
言うと同時に戸に手を掛け、引く。
はたして部屋の中にこの時、武智の姿は無かった。
代わり、あったのは上掛けのめくられた一組の布団だけ。
思わず部屋の中に足を踏み入れ、その布団の上に手を置く。
触れた布は秋の夜気に冷え、長く人のいた気配を感じさせなか...
胸の不安が一気に増大した。だから、
「先生っ」
もう一度短く叫ぶと同時に、収次郎は消えた武智の姿を求め部...
大きな声を上げる事は出来なかった。
それどころか足音さえ忍ばせて、収次郎は藩邸内を巡る。
人を呼ぼうと言う考えは無かった。そうしてはいけないと何か...
御用部屋、応接の間、果ては風呂場までのぞき、しかしそのど...
まさか外に出たのかと、昨今の京の町の物騒さを思い血の気が...
努めて思考を働かせる。
この異様さ、正面から外に出るとは到底思えない。ならば裏口...
踵が返される。向かったのは勝手口だった。
下働きの者や商人達が出入りするそこは屋敷内の端に位置して...
幾つもの角を曲がり、戸板を引く。
格子越しに月の光だけが差し込む蒼い闇に沈んだ台所。
土間へと降りる階段状の板の間にその人は、いた。
白い夜着姿だった。羽織一枚羽織らぬその寒々しい背が、冷た...
「先生?!」
思わず叫ぶような声が出る。しかしそれにもその背が動く気配...
ただひたすらに闇の一点を見据え、こちらを振り返ろうともし...
その異様な雰囲気には、驚きより先に恐ろしさが立った。けれ...
「……先生…何しちゅうがですか、先生っ…」
懸命に声を振り絞る。足を踏み出し、立つその背後。
それでも武智がこちらを見ようとしないのがわかればその膝は...
目の前の体を後ろから強く抱き締めていた。
引き寄せた、その肩は冷たかった。
いったいどれくらいの長い間、一人ここにいたのか。
思えば腕の力が更にこもる。それはいっそ痛い程に。
だからだろうか。
「……苦しい…」
ようやくに聞こえた声。それにはっと視線を上げれば、そこに...
振り返ってくる武智の目があった。
「どういたがじゃ?」
密やかに呟かれる、その言葉は自分のものだと思う。だから、
「先生こそ、どういて……」
責める言葉が、しかし最後まで続かない。するとそれに武智は...
言葉を落としてきた。
「来ぬなと…思うて…」
「えっ?」
意味がわからず思わず聞き直してしまう。しかしそんな収次郎...
流れ続けてゆく。
「仕方がないの。切ったのはわしの方じゃき。あれとわしでは...
あれはあの笑顔でいつもわしを拒絶する。それにわしはもう……...
しもうたがじゃ。」
「…先生……」
「言葉では何も通じん。目ももう合わん。なら…もう終わりにし...
忘れられたと思うた頃にひょっこりと現れる。酷い奴じゃ。せ...
視線が上がるのがわかった。その瞳が闇を見続けているのがわ...
そして言葉が繰り返される。
「来ぬな……」
どこか遠く寂しげに響く、その言葉の意味はほとんどわからな...
もしかしたらわかるかもしれない部分はあったのかもしれない...
わかりたくないと思った。
ただ、今のままでは駄目だという警鐘だけは頭の中で鳴り響く。
脳裏によぎる昼間の記憶。
傲然と笑み、こちらを見つめてきた光のない黒い瞳。
それと瞳の闇はまったく同じなのに、今目の前にいる人はまる...
夜着越しでさえわかる肌の冷たさが、自分の心を追いつめる。...
「戻りましょう。」
ここにいてはいけないと、収次郎はこの時抱き留めていた腕を...
それに武智は無言の視線を向けてくる。
是とも非とも言わない。それが焦りに拍車をかける。
なんとしてもこの場から離れねば。だから迫る言葉が口を突い...
「わしが負うてゆきますきに。」
「……負う?」
「ええ。」
反応があった事を幸いのきっかけとして、収次郎はこの時素早...
しばし、声は無かった。
拒絶されるか、無視されるか。賭けのような時をそれでも収次...
長くも短い、気の遠くなるような……そんな時間の代償は、首筋...
ふわりと袖ごと巻きつけられる二の腕。そして背中に重なって...
こうなっても武智からの声は無い。
それでもこの時収次郎は構わないと思った。
ただ預けられた身の重さが泣きたいほどに切なかった。
二人無言で廊下を渡り、辿りついた部屋の布団の上に武智を下...
その足元に寄せた。
そして手を取る。
「冷えちょりますね。湯を持ってきますきに、それまでは布団...
近くにあった羽織も引き寄せ、その肩に覆わせると、立ち上が...
しかしそれは不意に引かれた袖のせいでままならなくなった。
「先生?」
視線をやれば、そこには引くだけでない、袖ごと自分の腕に絡...
伏せがちの黒い瞳がゆらゆらと揺れている。そして、
「……も…いくがか…」
小さく呟かれた声。聞き取れずえっ?とその身を下ろし、収次...
視線の先、くっと眉根をしかめもう一度言った。
「おまんも……行くがか…」
声が、腕が、震えていた。
ギリギリに張りつめながら、それでいてほんの些細な事で一気...
そんな不安定な心の内が触れる肌の感触から伝わってくる。
それに収次郎は痛ましさと共にこの時、どうしようにもない憤...
別人のような。ひずみ。
いったい何がこの人をここまで追い詰め、誰が……この人をここ...
自分の預かり知らぬ所で起きただろう事に悔いと嫉妬を感じな...
その怒りを胸の内だけに必死に収める。そして、
「どこにも行きません。」
絡みついてくる武智の体を抱き寄せながら、その耳元静かな囁...
「せやきに、わしが温めてもええですろうか。」
顔が上がる。視線が絡む。
そこにやはり声は無かったが、もう答えは待てなかった。
着物を脱ぎ、引き寄せた行灯用の油を指に絡ませ、もつれ込ん...
下肢を探れば、それに武智はその時、反射的に背を反らしなが...
どころか、抱き締められる肩先で押し殺される息と縋ってくる...
胸元、喉、そして頬に這い上がったそれがなぞるように唇に触...
収次郎はその一つを口に含んだ。熱を与えるように舌を絡める。
爪から関節、そして付け根までを舌先でくすぐる。と、瞬間そ...
それは今まで収次郎が見た事のない武智の表情だった。
これまでも肌を合わせた事は幾度かある。
無理矢理でも合意でも、その体はどこか慣れている事が察せら...
厭うような強張りをいつも初めに見せていた。
しかしその戸惑いが今は……ない。
あるのは、慣らす指を受け入れ、立てる水音と交わす吐息に聴...
見上げてくるどろりと重く甘い闇を秘めた瞳。
不意に口元からそっと指が引き抜かれた。自分の唾液を絡めた...
「…先生っ」
思わず呼ぶ声が口をついた。それは武智の指が自分の下肢の熱...
それまでの抱擁ですでに昂ぶっていた男の欲を、武智はこの時...
「…ええから…」
落とされた呟き。
「優しゅうしてくれんで…ええから…」
「……せん…せ…い…」
「お願いやき…もう全部…壊いてくれ……」
願うそれは体なのか、それともまた違う何かなのか。
力無く茫洋と、それでも切実に何かの終わりを乞う武智の声に...
大事に、大切にしたいのに、それを許してくれないこの人が憎...
それでもそんな事を求めなければならない程、何かに追い詰め...
愛しかった。だから、
「力、抜いておいてつかぁさい。」
告げると同時に収次郎は絡めていた腕を解くと、武智の体をう...
武智の顔を見る事が出来なかった。
そして何より、愛憎に塗れた自分の醜い顔を武智に見られたく...
重い闇が堕ちている。遠く聞こえるのは虫の音か。
濁流に押し流されるような情事の果てに訪れた静寂の中、身を...
あったのは、こと切れたように眠る武智の青白い横顔だった。
優しさを拒まれたあれから、自分は武智を手酷く抱いた。
体を伏せさせ、腰だけを高く抱え持ち、なんの技巧も無く後ろ...
強張りを帯びて震えた。
上げられる悲鳴からは耳を塞いだ。
ただ望まれたまま、その身を苛もうとする。
それでも、そんな武智の体が腕の中で溶け始めるのにかかる時...
短かかった。
押さえつける肌が徐々に淡い朱に染まりだす。
切れ切れに零される悲鳴にはいつしか縋るような艶が交じり、...
本人の意識の外で熱くうねり、男を奥へと誘った。
明らかに男に弄ばれた痕跡を匂わせる媚態。
そしてそれがけして自分の手によるものではない事がわかる分...
自分の砂を噛むような嫉妬はそのまま荒い愛撫となった。
胸元に滑り込ませた手で両の尖りを捏ね、深く身を折り、さら...
途端、きつくなる下肢の締め付けをも突き崩すように腰の穿ち...
揺さぶられながら啼いた。
淫らがましくも憐れな肢体が、己の為すがままに追い詰められ...
悶え、狂いながら……果て堕ちる。
途端、崩れるように力の抜けた武智の体を、しかしあの時自分...
前のめりに倒れかけるその腹に腕を回し、身を起こした自分の...
解かれぬままだった繋がりが自重でまたも深くなり、武智は刹...
自分はそれを聞いてはやれなかった。ただ、
「まだです……」
小さく、それでも強く囁きをその耳元近くに落としてやる。
すると武智はあの時、それ以上の抗いは見せなかった。
その後は、律動、嬌声、どこまでが自分かわからなくなるほど...
永久にも思える甘くも苦い共の責苦は、長く武智が気を失うま...
伸びた指先が、武智のこめかみに落ちるほつれ毛をはらう。
消耗しきる事でようやく訪れた眠り。
それを妨げるつもりはなかったが、その微かな感触にこの時、...
うっすらと開く、その奥に黒い瞳がのぞく。
そこに光は無かった。
だからそれに収次郎は瞬間、冷たい緊張を背筋に走らせる。
目の覚めたこの人は、また別の人になってしまっているのでは...
そんな自分の恐れはこの時、微かに動いた唇から零された小さ...
「………ん…」
それは渇き、掠れた声だった。
「…すま…ん……しゅう…じろう…」
それきり―――だった。
薄く開いていた瞳が再び力尽きたように落ち、辺りに静寂が戻...
またしても一人、闇の中に取り残される。
けれど収次郎はこの時、そんな武智を眼下に見つめたまま、し...
脳裏に反響する声がある。
それは確かに自分の名を呼んだ。
この夜初めて、自分の名を呼んでいた。
だからそれに、わかっていたのかと……ちゃんと、わかっていた...
思い出す、虚空を見つめ、何も映していなかった瞳。
言葉を交わしても肌に触れても、どこか遠かったその人は、縋...
していないようで。そんな鈍い痛みに苛まれ続けていた心が今...
選ばれていたのだと熱を持つ。
『おまんで、ええか』
たとえそれが、どれほど都合のいいものであったとしてもだ。...
「側におります。先生の…望まれるままに。」
無意識に溢れ出た、その言葉は決意だった。
それはどんな形でも。支える為でも、温もりを与える為でも……...
ただ……
「だから……少しだけ、許してつかぁさい。」
腕が伸びた。
眠る武智の背を包み込むように抱き寄せながら、収次郎はこの...
夜は深く、闇は暗く、夜明けはまだ遠い。
だからそれまでの間しばし、と願う。それは、
優しく抱かせてつかぁさい―――
ただ……それだけの事だった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナガーイ鬱話。読んでいただいてありがとうございました。
しかし凄い肝心なところミスったorz
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シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
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第28巻
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第26巻
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第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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