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#title(Ruina 廃都の物語 アベリオン×シーフォン)
何だか呼ばれたような気がしたので投下
R.u.i.n.a賢者編でしーぽんエンド後、ネタバレ満載
あと中盤の固有イベントを見てないと多分わけわかめです、よ...
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あれから二ヵ月後。
古代の帝王は倒れ、町には徐々に平穏が戻りつつあった。
チュナをはじめ石化の病にかかっていた子供たちも各地で続々...
中空の都に魅せられていた人々もまるで夢から覚めたように各...
周辺の畑では冬小麦の種まきも終わった。
来年はきっとイナゴにも荒らされずにきちんとした収穫が望め...
とはいえ、町への来訪者はまだまだ後を絶たなかった。
テレージャとヘデロン教授率いる調査隊の人足たち、
いまだ一攫千金を夢見る冒険者に商人、好奇心旺盛な観光客。
この半年間、多くの災厄に見舞われたこの町において
彼らがもたらす経済効果に期待する者は数多かった。
実際パリスなどは妹と共に小さな店を開いて
土産物を売ったり遺跡内のガイドをして稼いでいるようである。
遺跡の中ではまだ夜.種たちがうごめいてはいるが、
以前のように倒しても倒しても沸いて出てくるようなことはな...
夜の闇に乗じて町を襲うこともない。丸腰で遺跡の奥深くまで...
彼らはもう危険な存在ではないのである。
アベリオンは今、焼け跡に以前とさほど変わらないささやかな...
小さな畑も作ったし、遺跡内で採取できるコケや薬草を調合して
薬品として販売することで十分に暮らしていける。
最近では彼を医師として頼ってくる者もおり、
以前師匠と共にしていた事と何も変わらない穏やかな暮らしだ...
シーフォンは――アベリオンの引止めに応じて、まだこの町にい...
「お前とは関係ねーけど」、もう少し遺跡を調べてみるそうだ。
そして同時にパリスの主催する観光客向けの冒険ツアーにて「...
大廃墟の中心近く、様々なコケやキノコが薄い光を放つ小さな...
古代遺跡の秘術を狙う「邪悪な魔術師」が研究のための「事務...
ツアーに参加した客たちは「偶然」彼の怒りに触れて襲われて...
パリスが考えた陳腐な筋書きだったが
元より魔王になりたがり(そして実際になりかけた)シーフォ...
嬉々としてその役を演じているようだった。
客が来ない時間帯には、遺跡内の大図書館に収められていた文...
片っ端から解読して読み漁っている。それは構わない。
構わないのだが、熱中するあまり何日も遺跡から上がってこな...
そもそも、シーフォンにこの町に残るように引き止めたのが自...
なんとなく彼に対して責任を感じてしまっているアベリオンは、
結局、3日に一度ほどオハラに詰めてもらったバスケットを持っ...
食事を摂らせた上で彼を地上に引きずり出してくるという役を...
今日も今日とて、バスケットを片手に遺跡へ潜る。
守護者や亡霊たちが暗闇をうろついているのが目の端に止まる...
向こうから襲ってこない限りはこちらも手出しをしない事にし...
事務所の入り口にかかっているプレートが「在室中」となって...
アベリオンは軽くドアをノックする。
返事がないのは分かりきっているので、そのままドアノブへ手...
部屋の隅の石柱にもたれかかって読書にふけっていた赤毛の「...
不機嫌そうな視線だけをアベリオンに投げてよこした。
ちなみに、この事務所には粗末ながらテーブルと椅子も運び込...
しかしシーフォンはあまりそれらを使おうとはせず、
もっぱら床の上にだらしない格好で座ったり寝転んだりして本...
キノコの燐光と、かつては夜空の星だった玻.璃.瓶の光が辺り...
この玻.璃.瓶は「事務所」の開設祝いがてらアベリオンが彼に...
自分にはもう必要のない物だし、油も魔力も消費しないから便...
贈られた方は「まぁお前がどうしてもって言うんだったら僕様...
いつも通り可愛げの欠片もない態度で受け取ったが、それでも...
「大分進んだね」
「そりゃ、僕様って天才ですから」
床の上に積まれている未読の本の山と、既読の本の山の大きさが
数日前にアベリオンが来た時と比べて大きく入れ替わっていた。
それを横目に見ながら彼がテーブルの上にバスケットを置き、
同じく携えてきた瓶から飲み物の準備をしているうちに
シーフォンは本を閉じて大人しくテーブルに着いた。
初めて彼が差し入れを持ってここにやって来たとき、シーフォ...
相当鬱陶しがっていた様子だったのだが、
自分がいくら口撃してもアベリオンはめげずに何度も通って来...
そのうち考え方を変えたのか、単純に食事の手段として受け入...
そのアベリオンの方は、実はシーフォンの毒舌など今更屁とも...
最初こそ面食らったものの、数ヶ月間共に探索をするうちにす...
席に着くや否やバスケットに手を伸ばそうとした彼の眼前に、
アベリオンはずいと手拭いを突きつけた。
「先に手を拭いてから」
遺跡に埋もれていた古書や粘土板をいじくり回していたシーフ...
「いちいちうるせぇな。オカンかよお前は」
「アルソンには負けるけど」
「…………」
返す言葉が見つからなかったらしいシーフォンは、渋々といっ...
今度こそバスケットの中身に手を伸ばした。
真っ先に掴んだのは、この時期に採れる少し酸味と苦味のある...
しかし生クリームもたっぷり使われているので十分に甘い。
シーフォンはこういったフルーツサンドやパイの類は好んで食...
逆に刺激の強い香辛料を多く使った料理は
たとえどれだけ貴重で美味しい素材を使っていようとも決して...
態度は大人よりも大きいのに、こうした味覚などの細かい部分...
食べている間は雑談を交わした。
やっぱり遺跡の中にはもうロクな物が残ってないとか、
昨日来た客が人工精霊を見るなり腰を抜かして滑稽だったとか―...
外見があのままでは格好が付かないので少しいじってある――
柵の修繕をしている間に山羊が逃げ出して大変だったとか、そ...
しばらくそうしてバスケットの中身も空に近くなった頃、腹が...
シーフォンはテーブルを離れて、横倒しになった石柱の上へ気...
まくれたローブの裾から覗く薄い腹には、
生涯消えないだろうと思われる巨大な傷跡が残されていた。
彼が必死で力を得ようとし、そして結局その力に呑まれてしま...
その傷跡を残したのは今まで向かい合ってサンドイッチを食べ...
アベリオンが、その手で練った魔力の氷槍で彼の脇腹を貫いた。
あの時どうすれば良かったのか、アベリオンにはいまだ分から...
一歩間違えば彼を殺していたかもしれないし、逆に自分達が死...
しかしそれを言い訳にはしたくない。
ああなるまでに彼を止められなかったのは
自分のせいでもあるとアベリオンは思っていた。
「……お前、鍵.の.書をどこに隠した?」
ふいにそう問われて、彼はどきりとした。
この二ヶ月というもの、二人の間で鍵.の.書の話題が挙がるこ...
驚きつつもアベリオンがシーフォンに視線を向けると、
彼は寝転がって天井を見つめたままこちらを向いてもいなかっ...
表情も口調も淡々としていて、何を考えているのかアベリオン...
重苦しい沈黙が事務所を満たした。
鍵.の.書は、再び上下巻を別々にしてこれまでとは違う場所に...
アベリオンは、シーフォンにあの本を読む力量がないとは思わ...
また、あの本から得た力で彼が実際に世界征服なり何なりに乗...
ただひとつ思うのは、シーフォンがあの本の内包する「音楽」...
果たして彼はこの世に戻って来るのだろうかということだった。
「より強く、より高度に、より自由に!」――ただそれだけを今...
あの輪の一員に加わるという誘惑を断ち切って現世に戻って来...
もし戻って来なかったら……それは、シーフォンにとっては最上...
残された者にとっては彼の死と同じことである。
アベリオンは、そうなって欲しくはないと願っていた。
初めこそ、その憎らしい態度とあまりにも乱暴な魔力の使い方...
事あるごとに勝負を挑んでくるわ魔術書も奪おうとするわ、
百歩譲っても好感を持てる相手ではなかったのである。
それを放っておけないと思うようになったのはいつからだろう...
いつか星の明るかった晩に懺悔めいた決意を聞いたとき?
寒さと疲労にうなされてこぼれた涙を見たとき?
はっきりとはしない。
ただ、過去の亡霊に利用されたあげく血溜りに沈んだ彼を見て
絶対にこのまま死なせたくない、失いたくないと思ったのは確...
そしてシーフォンも、口でこそ死を望むような言葉を零しては...
どこかに生きたい気持ちは残っていたのではないかと思う。
実際あれは、命を落としていた方が不思議ではないくらいの傷...
また思考がエーテルの海へ飛びそうになって、アベリオンは慌...
鍵.の.書だ。
デネロスは、アベリオンを一人の魔術師として認めた上であの...
つまりアベリオンは個人的かつ主観的な理由でシーフォンに鍵....
いや、読ませていいかどうか分からないと言うべきか。
いくら絶大な力を持っているとはいえ彼もまた10代の少年なの...
経験や分別といった点では、師匠に及ぶべくもない。
「……なに黙ってんだよ」
寝転がったままのシーフォンがアベリオンをじとりと睨みつけ...
アベリオンは、彼に対し何か言ってあげたいとは思ったが、か...
結局困惑したような表情のまま黙りこくるだけになってしまっ...
「まあいいさ。お前があれをどこかに隠したのは分かってんだ。
そのうち必ずギタギタにのして場所を吐かせてやるからな」
「よっ」と、勢いをつけて上体を起こした彼は言う。
「そのためにも、いつまでもここに居る訳にはいかねー。
大体僕はこんなチンケな町におさまるような器じゃないんだ。
大図書館の調査もあと少しで終わる……そしたらおさらばだな」
それを聞いて、アベリオンがはっと顔を上げた。
しかしその驚いたような表情は、数瞬のうちに何らかの決意に...
赤い瞳は彼の意思をとても忠実に代弁するのだ。
その光にシーフォンの目が奪われた次の瞬間、彼の口から出た...
「シーフォン。僕と一緒に暮らそう」
かつての勇者が使ったという、凍れる時間の秘法かとも思われ...
「………………僕は前から思ってたんだ。
お前、相 当 な ア ホ だろう」
長い長い沈黙のあと、やたらと「アホ」の部分を強調してシー...
思わずといった感じで眉間に当てた指もわなわなと震えている...
そして、彼は勢い良く立ち上がった。
「何をどうしたらいきなりそんな話になるんだよ!?
なんで僕様がお前と一緒に住まなくちゃならねーんだ!
いいか、僕はお前をブッ倒して鍵の書を奪ってやるって言っ...
お前の耳はあれか、パンの耳か!?それとも脳味噌がプリン...
大体お前、そんな事して僕に寝首をかかれるとか思わねーの...
「思わないよ」
「………!!」
青筋を立てながらぎゃんぎゃんとまくし立てたシーフォンに対...
アベリオンは表情すら変えずにしれっと言ってのけた。
その返答が余りにも予想から外れていたらしいシーフォンは絶...
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしばらく口をぱくぱくさ...
やがて諦めたように額に掌を当てて天を仰いだ。
「ああ殺してぇ。今すぐコイツ殺してぇ」
アベリオンは一瞬「出来るんならどうぞ」と言ってしまいそう...
火に油を注ぐだけだと気づいて口には出さなかった。「賢き者...
「で、どう?一緒に住んでくれる?」
「んなわけねーだろバカ!僕様はこの町出て行くって言ってん...
「でも、僕はシーフォンと一緒にいたい」
「っな………!」
一月前にも聞いた台詞をもう一度聞かされ、シーフォンは驚き...
あの時は同じ台詞を聞いてただ呆然としていただけだったのが、
今は少し顔を赤くしているのが、進歩といえば進歩だろうか。
そして、二対の赤い瞳が互いにかち合う。
「僕なら大丈夫だよ。そう簡単に殺されたりしない」
――みなまで言わなかったが、その断片的な言葉だけで
シーフォンはアベリオンの言わんとする所を理解したようだっ...
「う、うるさいッ!お前に僕の何が分かるって言うんだ!!」
「分からないよ。ほんの少ししか分からない。でも、だからも...
いつの間にかアベリオンも立ち上がっていた。
妙な気迫に圧されるようにしてシーフォンが半歩後じさる。
その間にアベリオンは一歩の距離を詰めた。
「一緒にいよう」
ここで、論理的かつ合理的な正論を用いての説得は逆効果であ...
天邪鬼なシーフォンは、アベリオンの話が納得できるものであ...
それに反発してしまうだろう。
しかしこの機を逃してはならない、とアベリオンは思った。
ぎゅっとシーフォンの手を握る。
彼は少しひるみはしたが、もうそれ以上後ずさろうとはしなか...
アベリオンとそう大きさの変わらない手は、意外にも大人しく...
「……お、お前が」
ほとんどか弱いとも言える声でつぶやいたその顔は、完全に横...
視線を必死で外へとそらし、けしてアベリオンの顔を見ないよ...
シーフォンは努力しているらしい。
青白い玻.璃.瓶の光が彼の赤い顔を照らしていた。
鮮やかな赤毛にも青い色彩を持った光が当たり、
まるで古代の不思議な炎が燃えているようだとアベリオンは思...
「お前が僕様の下僕になるっていうんなら、か、考えてやって...
アベリオンは、口調ばかりは忌々しく吐き捨てるようにして言...
彼の手を握ったままにっこりと笑った。
「うん、わかった。じゃあ今日から僕はシーフォンの召使だ。
その代わり一緒に住んでくれるね?」
「かっ、かかか、勘違いすんじゃねーぞ!
お前の弱点をみ見破るために一緒に住むだけだからな!
いつか絶対殺してやるからかかか覚悟しとけ!!」
「はいはい、ご主人様」
「あああムカつく!なんかムカつくー!!」
シーフォンは、もうこの状況に耐えられなくなったとでも言う...
アベリオンの手を勢いよく振りほどき、いつも携えている杖だ...
事務所から飛び出していってしまった。
いくばくも経たないうちに爆音が聞こえてきたところを見ると、
哀れな遺跡の守護者たちが八つ当たりという名の雷の洗礼を受...
その音を聞きながら、アベリオンは苦笑してバスケットを片付...
そしてシーフォンが先ほど読んでいた数冊の本と、星のランプ...
彼もまた事務所のドアをくぐった。
ドアに取り付けてある簡素なプレートを「在室中」から「不在...
期間限定と思われた邪悪な魔術師の事務所は、
この遺跡を訪れる物好きたちがいる限りはずっとこのまま営業...
カラン、と、木のプレートが小気味よい音を響かせた。
____________
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| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
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何だか呼ばれたような気がしたので投下
R.u.i.n.a賢者編でしーぽんエンド後、ネタバレ満載
あと中盤の固有イベントを見てないと多分わけわかめです、よ...
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あれから二ヵ月後。
古代の帝王は倒れ、町には徐々に平穏が戻りつつあった。
チュナをはじめ石化の病にかかっていた子供たちも各地で続々...
中空の都に魅せられていた人々もまるで夢から覚めたように各...
周辺の畑では冬小麦の種まきも終わった。
来年はきっとイナゴにも荒らされずにきちんとした収穫が望め...
とはいえ、町への来訪者はまだまだ後を絶たなかった。
テレージャとヘデロン教授率いる調査隊の人足たち、
いまだ一攫千金を夢見る冒険者に商人、好奇心旺盛な観光客。
この半年間、多くの災厄に見舞われたこの町において
彼らがもたらす経済効果に期待する者は数多かった。
実際パリスなどは妹と共に小さな店を開いて
土産物を売ったり遺跡内のガイドをして稼いでいるようである。
遺跡の中ではまだ夜.種たちがうごめいてはいるが、
以前のように倒しても倒しても沸いて出てくるようなことはな...
夜の闇に乗じて町を襲うこともない。丸腰で遺跡の奥深くまで...
彼らはもう危険な存在ではないのである。
アベリオンは今、焼け跡に以前とさほど変わらないささやかな...
小さな畑も作ったし、遺跡内で採取できるコケや薬草を調合して
薬品として販売することで十分に暮らしていける。
最近では彼を医師として頼ってくる者もおり、
以前師匠と共にしていた事と何も変わらない穏やかな暮らしだ...
シーフォンは――アベリオンの引止めに応じて、まだこの町にい...
「お前とは関係ねーけど」、もう少し遺跡を調べてみるそうだ。
そして同時にパリスの主催する観光客向けの冒険ツアーにて「...
大廃墟の中心近く、様々なコケやキノコが薄い光を放つ小さな...
古代遺跡の秘術を狙う「邪悪な魔術師」が研究のための「事務...
ツアーに参加した客たちは「偶然」彼の怒りに触れて襲われて...
パリスが考えた陳腐な筋書きだったが
元より魔王になりたがり(そして実際になりかけた)シーフォ...
嬉々としてその役を演じているようだった。
客が来ない時間帯には、遺跡内の大図書館に収められていた文...
片っ端から解読して読み漁っている。それは構わない。
構わないのだが、熱中するあまり何日も遺跡から上がってこな...
そもそも、シーフォンにこの町に残るように引き止めたのが自...
なんとなく彼に対して責任を感じてしまっているアベリオンは、
結局、3日に一度ほどオハラに詰めてもらったバスケットを持っ...
食事を摂らせた上で彼を地上に引きずり出してくるという役を...
今日も今日とて、バスケットを片手に遺跡へ潜る。
守護者や亡霊たちが暗闇をうろついているのが目の端に止まる...
向こうから襲ってこない限りはこちらも手出しをしない事にし...
事務所の入り口にかかっているプレートが「在室中」となって...
アベリオンは軽くドアをノックする。
返事がないのは分かりきっているので、そのままドアノブへ手...
部屋の隅の石柱にもたれかかって読書にふけっていた赤毛の「...
不機嫌そうな視線だけをアベリオンに投げてよこした。
ちなみに、この事務所には粗末ながらテーブルと椅子も運び込...
しかしシーフォンはあまりそれらを使おうとはせず、
もっぱら床の上にだらしない格好で座ったり寝転んだりして本...
キノコの燐光と、かつては夜空の星だった玻.璃.瓶の光が辺り...
この玻.璃.瓶は「事務所」の開設祝いがてらアベリオンが彼に...
自分にはもう必要のない物だし、油も魔力も消費しないから便...
贈られた方は「まぁお前がどうしてもって言うんだったら僕様...
いつも通り可愛げの欠片もない態度で受け取ったが、それでも...
「大分進んだね」
「そりゃ、僕様って天才ですから」
床の上に積まれている未読の本の山と、既読の本の山の大きさが
数日前にアベリオンが来た時と比べて大きく入れ替わっていた。
それを横目に見ながら彼がテーブルの上にバスケットを置き、
同じく携えてきた瓶から飲み物の準備をしているうちに
シーフォンは本を閉じて大人しくテーブルに着いた。
初めて彼が差し入れを持ってここにやって来たとき、シーフォ...
相当鬱陶しがっていた様子だったのだが、
自分がいくら口撃してもアベリオンはめげずに何度も通って来...
そのうち考え方を変えたのか、単純に食事の手段として受け入...
そのアベリオンの方は、実はシーフォンの毒舌など今更屁とも...
最初こそ面食らったものの、数ヶ月間共に探索をするうちにす...
席に着くや否やバスケットに手を伸ばそうとした彼の眼前に、
アベリオンはずいと手拭いを突きつけた。
「先に手を拭いてから」
遺跡に埋もれていた古書や粘土板をいじくり回していたシーフ...
「いちいちうるせぇな。オカンかよお前は」
「アルソンには負けるけど」
「…………」
返す言葉が見つからなかったらしいシーフォンは、渋々といっ...
今度こそバスケットの中身に手を伸ばした。
真っ先に掴んだのは、この時期に採れる少し酸味と苦味のある...
しかし生クリームもたっぷり使われているので十分に甘い。
シーフォンはこういったフルーツサンドやパイの類は好んで食...
逆に刺激の強い香辛料を多く使った料理は
たとえどれだけ貴重で美味しい素材を使っていようとも決して...
態度は大人よりも大きいのに、こうした味覚などの細かい部分...
食べている間は雑談を交わした。
やっぱり遺跡の中にはもうロクな物が残ってないとか、
昨日来た客が人工精霊を見るなり腰を抜かして滑稽だったとか―...
外見があのままでは格好が付かないので少しいじってある――
柵の修繕をしている間に山羊が逃げ出して大変だったとか、そ...
しばらくそうしてバスケットの中身も空に近くなった頃、腹が...
シーフォンはテーブルを離れて、横倒しになった石柱の上へ気...
まくれたローブの裾から覗く薄い腹には、
生涯消えないだろうと思われる巨大な傷跡が残されていた。
彼が必死で力を得ようとし、そして結局その力に呑まれてしま...
その傷跡を残したのは今まで向かい合ってサンドイッチを食べ...
アベリオンが、その手で練った魔力の氷槍で彼の脇腹を貫いた。
あの時どうすれば良かったのか、アベリオンにはいまだ分から...
一歩間違えば彼を殺していたかもしれないし、逆に自分達が死...
しかしそれを言い訳にはしたくない。
ああなるまでに彼を止められなかったのは
自分のせいでもあるとアベリオンは思っていた。
「……お前、鍵.の.書をどこに隠した?」
ふいにそう問われて、彼はどきりとした。
この二ヶ月というもの、二人の間で鍵.の.書の話題が挙がるこ...
驚きつつもアベリオンがシーフォンに視線を向けると、
彼は寝転がって天井を見つめたままこちらを向いてもいなかっ...
表情も口調も淡々としていて、何を考えているのかアベリオン...
重苦しい沈黙が事務所を満たした。
鍵.の.書は、再び上下巻を別々にしてこれまでとは違う場所に...
アベリオンは、シーフォンにあの本を読む力量がないとは思わ...
また、あの本から得た力で彼が実際に世界征服なり何なりに乗...
ただひとつ思うのは、シーフォンがあの本の内包する「音楽」...
果たして彼はこの世に戻って来るのだろうかということだった。
「より強く、より高度に、より自由に!」――ただそれだけを今...
あの輪の一員に加わるという誘惑を断ち切って現世に戻って来...
もし戻って来なかったら……それは、シーフォンにとっては最上...
残された者にとっては彼の死と同じことである。
アベリオンは、そうなって欲しくはないと願っていた。
初めこそ、その憎らしい態度とあまりにも乱暴な魔力の使い方...
事あるごとに勝負を挑んでくるわ魔術書も奪おうとするわ、
百歩譲っても好感を持てる相手ではなかったのである。
それを放っておけないと思うようになったのはいつからだろう...
いつか星の明るかった晩に懺悔めいた決意を聞いたとき?
寒さと疲労にうなされてこぼれた涙を見たとき?
はっきりとはしない。
ただ、過去の亡霊に利用されたあげく血溜りに沈んだ彼を見て
絶対にこのまま死なせたくない、失いたくないと思ったのは確...
そしてシーフォンも、口でこそ死を望むような言葉を零しては...
どこかに生きたい気持ちは残っていたのではないかと思う。
実際あれは、命を落としていた方が不思議ではないくらいの傷...
また思考がエーテルの海へ飛びそうになって、アベリオンは慌...
鍵.の.書だ。
デネロスは、アベリオンを一人の魔術師として認めた上であの...
つまりアベリオンは個人的かつ主観的な理由でシーフォンに鍵....
いや、読ませていいかどうか分からないと言うべきか。
いくら絶大な力を持っているとはいえ彼もまた10代の少年なの...
経験や分別といった点では、師匠に及ぶべくもない。
「……なに黙ってんだよ」
寝転がったままのシーフォンがアベリオンをじとりと睨みつけ...
アベリオンは、彼に対し何か言ってあげたいとは思ったが、か...
結局困惑したような表情のまま黙りこくるだけになってしまっ...
「まあいいさ。お前があれをどこかに隠したのは分かってんだ。
そのうち必ずギタギタにのして場所を吐かせてやるからな」
「よっ」と、勢いをつけて上体を起こした彼は言う。
「そのためにも、いつまでもここに居る訳にはいかねー。
大体僕はこんなチンケな町におさまるような器じゃないんだ。
大図書館の調査もあと少しで終わる……そしたらおさらばだな」
それを聞いて、アベリオンがはっと顔を上げた。
しかしその驚いたような表情は、数瞬のうちに何らかの決意に...
赤い瞳は彼の意思をとても忠実に代弁するのだ。
その光にシーフォンの目が奪われた次の瞬間、彼の口から出た...
「シーフォン。僕と一緒に暮らそう」
かつての勇者が使ったという、凍れる時間の秘法かとも思われ...
「………………僕は前から思ってたんだ。
お前、相 当 な ア ホ だろう」
長い長い沈黙のあと、やたらと「アホ」の部分を強調してシー...
思わずといった感じで眉間に当てた指もわなわなと震えている...
そして、彼は勢い良く立ち上がった。
「何をどうしたらいきなりそんな話になるんだよ!?
なんで僕様がお前と一緒に住まなくちゃならねーんだ!
いいか、僕はお前をブッ倒して鍵の書を奪ってやるって言っ...
お前の耳はあれか、パンの耳か!?それとも脳味噌がプリン...
大体お前、そんな事して僕に寝首をかかれるとか思わねーの...
「思わないよ」
「………!!」
青筋を立てながらぎゃんぎゃんとまくし立てたシーフォンに対...
アベリオンは表情すら変えずにしれっと言ってのけた。
その返答が余りにも予想から外れていたらしいシーフォンは絶...
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしばらく口をぱくぱくさ...
やがて諦めたように額に掌を当てて天を仰いだ。
「ああ殺してぇ。今すぐコイツ殺してぇ」
アベリオンは一瞬「出来るんならどうぞ」と言ってしまいそう...
火に油を注ぐだけだと気づいて口には出さなかった。「賢き者...
「で、どう?一緒に住んでくれる?」
「んなわけねーだろバカ!僕様はこの町出て行くって言ってん...
「でも、僕はシーフォンと一緒にいたい」
「っな………!」
一月前にも聞いた台詞をもう一度聞かされ、シーフォンは驚き...
あの時は同じ台詞を聞いてただ呆然としていただけだったのが、
今は少し顔を赤くしているのが、進歩といえば進歩だろうか。
そして、二対の赤い瞳が互いにかち合う。
「僕なら大丈夫だよ。そう簡単に殺されたりしない」
――みなまで言わなかったが、その断片的な言葉だけで
シーフォンはアベリオンの言わんとする所を理解したようだっ...
「う、うるさいッ!お前に僕の何が分かるって言うんだ!!」
「分からないよ。ほんの少ししか分からない。でも、だからも...
いつの間にかアベリオンも立ち上がっていた。
妙な気迫に圧されるようにしてシーフォンが半歩後じさる。
その間にアベリオンは一歩の距離を詰めた。
「一緒にいよう」
ここで、論理的かつ合理的な正論を用いての説得は逆効果であ...
天邪鬼なシーフォンは、アベリオンの話が納得できるものであ...
それに反発してしまうだろう。
しかしこの機を逃してはならない、とアベリオンは思った。
ぎゅっとシーフォンの手を握る。
彼は少しひるみはしたが、もうそれ以上後ずさろうとはしなか...
アベリオンとそう大きさの変わらない手は、意外にも大人しく...
「……お、お前が」
ほとんどか弱いとも言える声でつぶやいたその顔は、完全に横...
視線を必死で外へとそらし、けしてアベリオンの顔を見ないよ...
シーフォンは努力しているらしい。
青白い玻.璃.瓶の光が彼の赤い顔を照らしていた。
鮮やかな赤毛にも青い色彩を持った光が当たり、
まるで古代の不思議な炎が燃えているようだとアベリオンは思...
「お前が僕様の下僕になるっていうんなら、か、考えてやって...
アベリオンは、口調ばかりは忌々しく吐き捨てるようにして言...
彼の手を握ったままにっこりと笑った。
「うん、わかった。じゃあ今日から僕はシーフォンの召使だ。
その代わり一緒に住んでくれるね?」
「かっ、かかか、勘違いすんじゃねーぞ!
お前の弱点をみ見破るために一緒に住むだけだからな!
いつか絶対殺してやるからかかか覚悟しとけ!!」
「はいはい、ご主人様」
「あああムカつく!なんかムカつくー!!」
シーフォンは、もうこの状況に耐えられなくなったとでも言う...
アベリオンの手を勢いよく振りほどき、いつも携えている杖だ...
事務所から飛び出していってしまった。
いくばくも経たないうちに爆音が聞こえてきたところを見ると、
哀れな遺跡の守護者たちが八つ当たりという名の雷の洗礼を受...
その音を聞きながら、アベリオンは苦笑してバスケットを片付...
そしてシーフォンが先ほど読んでいた数冊の本と、星のランプ...
彼もまた事務所のドアをくぐった。
ドアに取り付けてある簡素なプレートを「在室中」から「不在...
期間限定と思われた邪悪な魔術師の事務所は、
この遺跡を訪れる物好きたちがいる限りはずっとこのまま営業...
カラン、と、木のプレートが小気味よい音を響かせた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
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