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#title(numb3rs 昨夜の続き) [#a3403f63]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 昨夜投下したN...
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 当然の...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
そういうわけで兄弟でセクースとかありなので注意。兄×弟。
反応してくれる方がいて嬉しかったです
「チャ―リーがガレージにこもってる」
深夜に実家に帰ると、キッチンでゴルフ雑誌を読んでいた父...
にそう言った。ト゛ンはネクタイを緩め、冷蔵庫からバドワイザ...
の言葉に肩をすくめた。もう12時を過ぎている。そう込み入っ...
事件が続いており、彼は疲れていた。だからこそ一人暮らしを...
なく、より職場に近いこの実家に帰ってきたのだ。疲れている...
アパートに帰ると、妙に神経が冴えて眠れなくなる。だが、こ...
着き、ソファで一晩眠って、早朝にはオフィスに戻るだけの気...
もういないが、父親と彼女が作り上げた温かいこの空間には、...
あった。
「数学の問題を解くために?論文が佳境に入っているんじゃ...
からないけど」
キッチンの椅子に腰を下ろし、バドワイザーを一口飲んでト...
リーが大学でどんなふうに何をしているか、あまり知らなかっ...
た。アランは頭を振り、読んでいた雑誌を伏せてゆっくりと答...
ね。そんな話は聞いていない」
「……じゃあ、なんのために?」
「わかったら苦労しないさ。……もう5日経つ。まるで狂人だ...
ぐ帰ってガレージにこもって、朝になったらまたガレージを出...
も口を利かないし、下手すると食事もしない。ひげも伸びっぱ...
あ恋人がいないのも無理はない」
「何も食べない?」
ト゛ンの問いにアランは片眉を上げた。「昨日は無理やり食べ...
とかけら」
ト゛ンはバドワイザーの瓶を白熱灯の明かりで透かして見つめ...
リーン。ティールグリーン。言葉に不得手なチャ―リーは、この...
てられるだろうか?そう想像し、くすっと笑った。チャ―リーは...
の持ち主のくせに、ある分野については子供並の知識しか持っ...
ょっちゅう間違うし、歴史や政治にも疎い。一人だけ違う世界...
世の中の雑音に耳を傾けたことなどないといった風情で、ト゛ン...
長いこと理解できなかった。家族として接しようと思っても何...
からず、ただ遠巻きに眺めてきたこの弟のことが、少しずつわ...
つい最近のことだ。
くたくたに疲れていたし、正直に言うと寝たかった。けれど...
チャ―リーのことを話すのは、どうにかして解決してほしいから...
長いことチャ―リーと疎遠だったという負い目があるし、アラン...
はずっとト゛ンに認められることを望んできたと言った。そして...
力して、絆を深めるのを見ると自分も嬉しいと。母親もそれを...
アランはト゛ンがチャ―リーに対して兄弟らしく振舞うことを望...
はそれを感じて軽く頷いた。「話してみる」
「頼む」
そう言ってアランは立ち上がり、雑誌を持って寝室のある二...
ト゛ンはバドワイザーを空け、こめかみを軽く揉んでから腰を上...
いう自信はなかったが、チャ―リーが何故そうしているのかを、...
き、アランにも教えておけたらと思った。ト゛ンも彼なりにチャ...
と思っていた。今では。
チャ―リーがガレージにこもる。これは以前もあったことだっ...
リーはガレージの壁一面に黒板を掛け、数式や座標を一心不乱...
とを好む。ト゛ンには理解できなかったが、それが彼にとって一...
らしかった。
だから母親が余命三ヶ月になったときも、自分の方程式通り...
れどころか死者を出したときも、チャ―リーはガレージにこもっ...
数式を解こうとし、熱中することで逃避を図る。母親はチャ―リ...
なかった理由を知っていただろうとアランは言うが、ト゛ンはそ...
持てない。未だに許せないと思うこともある。あれだけチャ―リ...
き、最高の環境で彼の才能を保護し、そのためにアランやト゛ン...
たとすら言える母親が死ぬ間際に、ガレージにこもって数式に...
していなかったわけではない、それどころか愛していたから現...
かったのだということを、今ではト゛ンも理解していたが、それ...
っただろうか?彼女は死ぬ瞬間、寂しくなかっただろうか?
ト゛ンは寂しかった――両親がずっと、弟にばかり時間を費やし...
ストで良い成績を取り、野球の試合で活躍し、ディベートの大...
親は抱きしめてお前を誇りに思っていると言ってくれた。けれ...
特別」に生まれた彼の前に立つと、いつもト゛ンは主役ではなく...
―リーが才能に押しつぶされ、挫折しないようにと常に気を配っ...
ンが挫折しないように気を配る暇はないようだった。それでもト...
たし、足を引っ張らないようにと努力もした。早く自立して両...
もなりたいと思った。母親が重病に掛かっていると知れば出世...
帰り、彼女の手を握ってきっとすぐ治るよと明白な嘘も吐いた...
ーはその間、ずっとガレージにいたのだ。
今度もそういうことなのだろうか?ト゛ンは考えた。チャ―リ...
もう30歳になるのに、もっと幼く見える。数学に熱中するあま...
もする(尤も、これはお前が事件に熱中しているときだってそ...
でも悪い人間ではない。冷たくもない。むしろ人一倍繊細で、...
しさと寛容さがある。以前はただ数学に夢中の、無神経な子供...
のそういった人間らしさを知るにつれて、ト゛ンの中で凍り付い...
情も少しずつ溶け始めてきた。チャ―リーのことを理解したいと...
りたいとも思う。おかしな話だが、とっくに成人しているはず...
だに保護が必要なのではないかとト゛ンはたまに感じる。おそら...
ているから、もっと自立心を持ってほしいと文句を言いながら...
いるのだろう。
チャ―リーが何かの理由で打ちのめされ、ガレージにこもって...
―家族が手を差し伸べ、立ち上がらせてやらなければ。そう思い...
のドアをノックした。ドアの隙間から明かりが漏れているから...
ここにいるのだろう。もう一度ドアをノックし、それからト゛ン...
当に、彼は疲れていた。
「チャ―リー?いるんだろ?」
何か物音がして、しかし返事はなかったので、彼は迷わずに...
た。鍵は取り付けられていないから、開けることができるのは...
いて中を覗くと、蛍光灯の下で怯えたようにチョークを持って...
―リーが見えた。――予想通りだ。
壁や天井中の黒板に数式が埋め尽くされ、至る所に紙が散乱...
を竦めた。片付けに苦労しそうだ。
「ト゛ン?」
無精ひげをうっすらと生やしたチャ―リーが小声で名前を呼ぶ...
いような、子供っぽい呼び方で。濃いまつげを瞬かせ、上目遣...
けれどもそのくせト゛ンがガレージのドアを後ろ手で閉めると、...
ずさった。
「チャ―リー、今度はどうしたんだ?父さんが心配してる」
「……心配なんてする必要ないよ。ただ――熱中してるだけ、も...
うなんだ、もう少し…」
そうチャ―リーは呟き、黒板に向き直ったが、手が震えたのか...
れ、舌打ちしながら彼はそれを拾った。ト゛ンはズボンのポケッ...
がらそれを眺めていた。
「とにかく、一人にしてほしいんだ。ちょっと考えたいんだ」
ト゛ンは肩を竦め、一歩チャ―リーに近づいた。チャ―リーはそ...
せてみせた。
「いいさ。ただ、食事はしろ」
「してるよ」
「二日か三日に一度?普通は毎日三回食べる」
チャ―リーは横顔を向けたまませわしなく何度も頷いた。「わ...
から放っておいて」
「何かあったのか?」
チャ―リーは顔を上げ、眉を寄せて見せた。「何が?」
「何か……トラブルだよ。お前がそんなふうになる理由さ。話...
ろ?」
ト゛ンはそう言い、床に腰を下ろしてドアに背中を預けた。チ...
て、口を開きかけ、それからかぶりを振った。「僕らは普通の...
その言葉にト゛ンは軽く顎を上げて反応した。チャ―リーがそ...
は初めてだった。どちらかというとそれを言いかねないのは、...
ったのだ。彼は幾ばくかの衝撃を受けたが、平然を装って頷い...
りが?」
これはまずい質問だった。口にした途端、ト゛ンにもそれはわ...
なったパーカーとジーンズを着たチャ―リーは引きつった笑顔を...
で言った。「――わかってるくせに!僕はト゛ンの望んだとおりの...
ト゛ンはいつも僕を置いて野球に出かけたし、高校でだって声を...
キムと婚約してたことだって、言ってくれなかった。これって...
チャ―リーはため息を吐き、手のひらで短髪を掻き回した。「...
ついてはこの間話し合っただろう?あの頃は今とは違ったんだ...
ト゛ンは以前キムという女性と婚約したことがあったが、チャ...
したこともなかったし、婚約していたことも話したことがなか...
きっかけに、キムと再会し、チャ―リーも彼らの昔の関係を知る...
心驚くほどショックを受けて、これまでそれを話さなかったこ...
しそれはアルバカーキにいたころの話で、そのときはチャ―リー...
ト゛ンからしてみれば仕方がなかったのだ。そのまま結婚するこ...
紹介しただろうし、今そういう女性がまた現れれば、今度はき...
教えるだろう。今は昔とは違うとト゛ンが弁解したときは、チャ...
うな態度をとっていたので、今になって話を蒸し返されたこと...
チャ―リーはト゛ンの答えにまた引きつった笑いを浮かべた。...
自分より賢い人間なんていないとでも言いたげな笑い。世界の...
自分だけが答えを知っているかのような。そのくせ小さな頃か...
に妙に構い、あらゆることを詮索し、口を突っ込んできて、ト...
いのかよく理解できなかった。世界を動かすには自分だけでこ...
ような態度を取りながら、チャ―リーはいつもト゛ンに何かを求...
親にあれだけ構われながら、家の中で暮らすあと一人の人間が...
うだけで大げさに取り乱してみせる。子供の頃、ト゛ンは自分の...
たことなどなかった。ただ厄介で手間のかかるガキだと思って...
ト゛ンはもう一度ため息を吐き、質問を繰り返した。「話した...
ゃないだろ?何が原因なんだ?」
「何もない。何も話したいことなんかない」
チャ―リーは両手を広げ、大げさな身振りでそう断言した。ト...
立ち上がった。「わかった。俺はもう寝る。――なんだろうと、...
のためだ」
そう言ってドアノブに手を掛けると、震えた声が背後でした...
いつものパターンだ。やれやれ。半ば本気で腹を立てながら...
て首を傾げた。「何だ?」
チャ―リーはこぶしを握り締め、小声で聞いた。「僕みたいな...
かった?」
ト゛ンは呆れて顔をしかめてみせた。「おい、まさか本当にそ...
のか?」
「答えてよ。僕みたいな弟はいらなかった?」
ト゛ンはチャ―リーに早足で歩み寄り、彼の肩を揺さぶった...
なんなんだ?まともじゃないぞ」
チャ―リーは身をこわばらせ、じっと俯いていた。ト゛ンは...
いたが、しばらくして肩から手を離して答えた。「……いろいろ...
せよ、俺たちは兄弟だろ?お前は俺の弟だよ」
チャ―リーはまたあの神経質な笑いを響かせた。
「それは答えになってない。僕は仮定の話をしてる。ト゛ン、...
弟が選べるなら、ト゛ンは別の人間を選んだ?数学きちがいじゃ...
ッチボールをしたり……そういう弟。学年のスキップもしなくて...
も安心させられる、まともなやつだよ。ト゛ン?ずっとそうだっ...
ってた?もしもの話だよ」
ト゛ンは黙ってチャ―リーの横顔を見つめていた。ふさふさし...
きな目と濃い睫。高い鼻は少しだけ自分や父親に似ている。体...
ころは似ていない。数字を通して世界を見るところも似ていな...
テニスや野球をしたりもしない。大学と家をただ往復し、わけ...
き連ね、子供みたいに些細なことで苛立ったり笑ったり、自分...
い。チャ―リーのような友人すらいない。こんな人間は他に知ら...
ってから目を伏せて、正直に答えた。「……子供の頃なら、そう...
チャ―リーはちらりとト゛ンを見上げたが、すぐに視線を落と...
だよね」
「――だけどそれは昔の話だ。今は違う。違うだろ?俺とお前...
やっとまともに関りあうようになったし、俺はお前を誇りに思...
ないことを、お前はやりとげてみせる。立派だ」
「もちろん。僕は普通じゃないからね」
チャ―リーは奇妙に明るい声でそう言い、顔を上げてト゛ンを...
を引き結んで黒板に向き直り、また数式を書き始めた。チョー...
ながら、ト゛ンは答えに困った。チャ―リーはト゛ンを見ないまま...
「普通じゃない。普通じゃない。小さい頃からずっと僕はそ...
――変なんだ。天才なんて言われてるけど、おかしいだけだ。ま...
かったし、毎月毎月知能テストを受けて、専門家にチェックさ...
者と同じ扱いだよ。その証拠に母さんはいつも僕の行動にひど...
かしくならないように気を配ってた。――無駄だったけど。だっ...
なんだ。笑えるよね!僕はト゛ンみたいにまともじゃない。たま...
けど。たまに役に立つおかしいやつだって、それだけ」
「チャ―リー、母さんのことをそんなふうに言うもんじゃない...
低い声でト゛ンが言うと、チャ―リーは肩をすくめてみせた。...
ト゛ンは放っておかれることが多かったのに、こんなにまともに...
て僕は……ね?今もこんなふうにガレージにこもって、まともじ...
「何が言いたいんだ?」
子供の頃のことを持ち出されて、ト゛ンは腹の底が熱くなるの...
ーはいつだってこうなのだ。本人にもいろいろ苦労はあっただ...
に十分愛され、構われ続けてきたのにまだ不満を言う。確かに...
違うが、だとしても家族だ。彼を受け入れ、愛したいと思って...
はいつも不可解な言動でト゛ンを混乱させ、遠ざけ、そうかと思...
を踏みにじる。こんな弟をほしいと思えたはずがない。今もチ...
で捲くし立てている。
「僕が何が言いたいか?それは問題じゃない。論点がずれて...
だけ。ト゛ンにとって僕が理想的な弟じゃなくて、僕はト゛ンか...
ってことをね。はっきりしてよかったよ。今日はありがとう」
「おい、ふざけてるのか?」
肩を掴んできつく問い詰めると、チャ―リーは激しくかぶりを...
ゆがませた。「違う。違う、そうじゃない!」
「じゃあ何なんだ?」
手のひらの下のチャ―リーの身体はこわばっていた。ト゛ンは...
うと弟から視線を逸らし、答えを待った。「何をさせたいんだ...
「――何も、何もしてほしいことなんてない。問題は僕なんだ...
ない。ト゛ン、気が狂いそうなんだ。いや、僕はもうずっと前か...
さい頃から。ト゛ン、ごめん」
「何を謝ってるんだ?」
ト゛ンは驚いて手を離し、チャ―リーを見つめた。けれどもチ...
ないまま、ト゛ンの肩に額を押し付けて泣き始めた。「ごめんな...
温かい涙がシャツを濡らすのが感じられた。ト゛ンは戸惑い、...
リーの震える肩を抱いた。チャ―リーはその動作にびくりと身体...
ほどこうとはしなかった。
「何を悩んでる?お前は俺の弟だよ。今は一緒に仕事もして...
みたら確かにちょっと変わってるけど、それは職業も全然違う...
はまともだよ。思いやりもある。才能もあるし、素晴らしい弟...
チボールに誘わなかったのが悪かったなら、今からでもするか...
その言葉にチャ―リーが微かに笑う気配がし、ト゛ンは弟の両...
させた。チャ―リーの目は充血し、潤んでいた。ト゛ンは取り乱...
に肩を撫で擦りながら聞いた。「何をしてほしい?何を望んで...
「何もしなくていいよ」
「チャ―リー」
「何もしなくていいんだ。僕が変わりたい」
「チャ―リー……」
「もっとまともになって、ト゛ンに好かれたかった。小さい頃...
゛ンに……駄目だ、頭がおかしくなる。ト゛ン、息ができない。苦...
ト゛ン」
チャ―リーは掠れた声でそう呟くと、上半身を折り曲げて腹を...
ててそんな弟の身体を支え、彼を床に座らせようと肩に手を廻...
体を痙攣させ、呼吸を荒くし、震えた指先で自分のパーカーを...
汗が浮かび、顔は真っ青になっていた。ト゛ンは床にひざをつか...
―リーを支えながら、もう一方で背中を撫でた。確かに、明らか...
しかった。感情を揺らしやすい性質だといっても、こんなふう...
過ぎているように感じた。――もしかしたら、本当にどこか病ん...
い。研究に没頭するあまりに、神経が疲弊したのかもしれない...
ていたように。だとしたらアランにも相談しなければ。ぞっと...
―リーの巻き毛に指を絡め、自分の胸に彼の頭を押し付けるよう...
ち着いて。ゆっくり息をしろ。大丈夫だ。焦るな。ゆっくりで...
抱きしめながらそう繰り返すと、次第にチャ―リーの呼吸は穏...
秒すると今度は歯をがたがた鳴らして震え始めた。ト゛ンは眉を...
な弟を至近距離で観察していた。
「――ト゛ン、僕が気が狂ってるみたいに見える?答えてよ……」
チャ―リーが震えながら聞いてきた。ト゛ンはその答えにひど...
かぶりを振った。「お前はきっと疲れてるんだ。食事もしてな...
?何か食べて、よく眠ればよくなる。休暇をとるのもいい」
「眠れない。もう何日も寝てない」
チャ―リーはぽつりと呟き、震えを抑えるためなのか、自分を...
目を瞑った。憔悴した別人のような横顔に、ト゛ンは何か恐ろし...
―もう家族を失いたくなかった。
「チャ―リー、大丈夫だ。お前は疲れてる。何か簡単なことで...
ようにもなる。一緒に考えよう」
「眠れない。これを治さないと……」
かたかたと歯を鳴らしながらチャ―リーは言う。ト゛ンはそれ...
すますきつく弟を抱きしめながら聞いた。震えは少し収まった...
何のことだ?何か原因があるのか?」
チャ―リーは我に返ったように顔を上げ、口を僅かに開けたま...
つめた。
「チャ―リー?」
「――僕は頭がおかしい」
「チャ―リー!馬鹿なことを言うな!」
ト゛ンは苛立って叫んだ。けれどもチャ―リーはかぶりを振っ...
かしい。僕が今考えていることを知ったら、ト゛ンは僕を嫌うに...
「何を考えてるっていうんだ?おい、俺たちは兄弟だぞ、今...
「――兄弟だから、もっと好かれたいって思ってる」
チャ―リーが息を震わせながら呟いた。ト゛ンは驚いて、微か...
つめた。チャ―リーは苛立った子供そのものの表情で、半ば泣き...
「ト゛ンに好かれたい。そればっかりなんだ」
ト゛ンは唖然としながら、乾いた声で答えた。「……好いてるよ...
りにくいかもしれないけど、俺だってお前のことは……」
チャ―リーがその言葉を遮って続けた。
「でも兄弟だからってだけじゃ駄目だ。もっと好かれたい。...
……おかしいだろ?まともじゃない」
ト゛ンは何と言うべきか迷いながら、チャ―リーの身体に廻し...
チャ―リーは静かに泣き始めた。
好かれたい。そこまではまあいい。けれども、テリーやキム...
う考えてもおかしい。その関連性を考えようとすると、ひどく...
に手をやった。そんなト゛ンを見て、チャ―リーは微かに笑った...
と思ってる」
「……思ってない」
ト゛ンは呟き、それからチャ―リーを見つめた。子供みたいに...
濡れた睫ごしに、いつものようにト゛ンを見上げる弟。彼が言っ...
い。けれども、おかしいと言ったらチャ―リーはきっと死んでし...
は手のひらに汗が滲むのを感じ、太ももに手をこすりつけてそ...
Iの交渉術のクラスで習った通りに、ゆっくりと繰り返して強調...
は思ってない」
「嘘だ」
チャ―リーが絶望的な表情で呟く。また汗が浮かび、ト゛ンは...
手を伸ばし、チャ―リーの肩を擦って言った。「お前は大事な弟...
て思わない。チャ―リー、一緒に考えよう。俺たちが疎遠だった...
か心の傷ができたのかもしれない。俺の兄弟としての接し方が...
ない。悪かったよ。俺にも責任がある。だから、一緒に考えて…...
えて、眠って、食事をしよう。お前は正気だよ、大丈夫だ」
ト゛ンの言葉にチャ―リーがきつい口調で返した。
「正気な人間が兄と寝たいなんて考える?僕が言ってるのは...
一緒に解決なんてできるわけない。消えたいよ。生まれてこな...
らト゛ンももっと幸せになれた」
「チャ―リー……」
「気持ち悪い?」
チャ―リーが口の片端を上げて問う。ト゛ンは躊躇いながらも...
……ゲイの人間はいくらでもいる」
「兄弟相姦願望のあるゲイはそんなにいないと思うけどね」
尖った声で皮肉まじりにチャ―リーは反論し、ト゛ンはただ喉...
彼はひどく疲れていたし、混乱もしていた。おそらくチャ―リー...
リーの肩を擦っていた手を移動させ、背中を撫でた。チャ―リー...
らまた開けて囁くように言った。「触られると身体が熱くなる...
なるんだ。ト゛ン、気持ち悪い?」
「……気持ち悪くなんかない」
ト゛ンは呆然としながらそう答え、パーカー越しに指先でゆっ...
ぞった。ト゛ンにはどうすればいいのかわからなかった。お前は...
るというのが一番本音に近かったが、それを言ったらチャ―リー...
ていた。この年になってやっと近しくなり、ト゛ンにとって保護...
弟を。気難しく、ト゛ンから見れば不思議な才能があり、どこか...
傷つきやすくて、以前はト゛ンの前ではいつも身をこわばらせて...
な口を利くことはあっても、彼の手の届く場所にいる、30年か...
失うかそれを回避するかの瀬戸際が今だということくらいはわ...
ほどわかった。ト゛ンは疲れで頭をぼんやりとさせたまま、チャ...
下に指先を滑り込ませた。チャ―リーがびくっと肩を震わせて彼...
笑みたくなるようなかわいらしい表情だった。そう、チャ―リー...
誘うところがあり、だからこそト゛ンはずっとこの気に障る弟を...
はそんな弟を見ながら、服の下に滑り込ませた指をさらに奥へ...
腹の内側にまで指を這わせた。チャ―リーはその動きに身体をい...
唇を動かし、微かに吐息をこぼした。「……ト゛ン?」
「黙れ、チャ―リー。じっとしてろ」
「ト゛ン、何をするつもりなんだ?これじゃまるで……」
「眠れないんだろ?」
ト゛ンはチャ―リーを眠らせたかった。とにかく一晩眠らせ、...
もう一度考えようと言いたかった。今その問題について、深く...
かった。ト゛ンもチャ―リーも何日も寝ていなくて、疲れきって...
にたどり着けるはずがない。一晩眠ったあとなら、いい方法が...
た。そして眠るのに最適な方法も知っていた。
ト゛ンはチャ―リーのパーカーを脱がせ、彼の乳首――当たり前...
い胸についていた――を指で愛撫し、覆いかぶさるようにしてガ...
た。軽く唇をこすりつけるようなキスをすると、チャ―リーは腰...
ズを履いた脚を絡ませてきた。それに誘われるようにして、も...
く絡めたキスをしてみれば、チャ―リーが囁いた。「キムやテリ...
した?」
「黙れよ」
この弟はこんなときにもおしゃべりで知りたがり屋なのか。...
が、チャ―リーはかぶりを振った。「答えて。知りたいんだ」
ト゛ンは肩を竦めた。本当に、この弟は理解不能だと思った。
「ああ、したよ。でも、お前もしてほしかったら、黙ってろ」
簡潔にそう命じると、チャ―リーはそれを聞いて呟いた。「――...
ト゛ンは頷き、まだ何か言いたげなチャ―リーの口を手で覆い...
のベルトを外した。もう一度キスをし、ジーンズを脱がせると...
口を閉じた。ト゛ンはそのことに感謝して、ただ行為に集中した...
てだったが、別に難しくないような気もした。チャ―リーだけい...
たのに、彼がト゛ンにも服を脱ぐようにねだるので(「恥ずかし...
いよ、ト゛ン」)、抗う気力もなくワイシャツやスーツを脱いだ...
チャ―リーに覆いかぶさると、数学者はト゛ンの首筋に鼻を寄せ...
と言った。シェービングクリームとヘアトニックと、ト゛ンの肌...
た匂い。そんなものは意識したことがなかったので、ト゛ンは少...
っていると言いそうになった。
一度目は手で互いに擦り合い、あっけなく果てた。ところが...
リーだけでなくト゛ンも一度では満足しきれず、いつの間にかト...
の穴に指を滑らせていた。ほとんど潤滑剤もなく、男同士のセ...
で、彼らは初体験するティーンエイジャーみたいに焦りながら...
に舌を這わせて、手足を絡めあった。正常位では難しそうだっ...
―リーに四つ足の姿勢を取らせ、舌で入り口を愛撫してから、唾...
自分のペニスを慎重に挿入した。チャ―リーは呻きはしても痛い...
ト゛ンは不安だった。
腰を抱え、身体を揺さぶると、チャ―リーが聞いたこともない...
声でト゛ンの名前を呼んだ。それが馬鹿みたいに可愛くて、ト゛...
リーを守らなければいけないと思った。こんなふうに大事に思...
とに、耐えられるわけがない。彼はチャ―リーに対する責任を感...
が暗くなった。
チャ―リーを守りたい。ことが終わり、繋がりを解いた後で、...
がらト゛ンは切実にそう思った。けれどもそれは絶対に、こんな...
った。ト゛ンにはわかった。自分が間違ったことが。チャ―リー...
ばいけなかったのに、しくじって引き返させずに、あろうこと...
今夜チャ―リーは眠れるかもしれないが、自分は絶対に眠れない...
眠る資格もない。
「あのブロンドの女の子、あの子にもこうしたの?」
ぼんやりと考えていると、チャ―リーが腕の中で不意にそう言...
ぎょっとして聞き返した。「なんだって?」
「プロムに誘った子、いただろ?名前は忘れちゃったけど。...
無邪気さと嫉妬が奇妙に同居した瞳をしてチャ―リーは言う。...
ただ言葉を探した。チャ―リーは本当に頭がおかしいのではない...
「……寝たよ。あの子にもこうした。でも何故そんなことを?」
ト゛ンが答えると、チャ―リーは肩を竦めた。「ただ知りたい...
かった。小さい頃から僕はずっと、ト゛ンのことなら何でも知り...
そのころからおかしかったんだね。ト゛ンはそれを聞き、チャ...
ていた腕を解き、上半身を起こした。こめかみが痛み、疲労感...
していた。ト゛ンが無言でそこらに散らばった服を手に取ると、...
な声を上げた。「ト゛ン?」
「……ソファで寝るよ。明日も早くから仕事なんだ。……それか...
ト゛ンは裸のまま無防備に床に寝そべっている弟に視線を向け...
て服を着ながら言った。「お前は俺の弟だよ。俺に他に弟はい...
朝のことを、今でも覚えてる。クリスマスの朝が10年分いっぺ...
で、父さんに車でお前と母さんがいる病院まで連れて行っても...
っぽけで、俺が誰なのかなんてわからなくて、でもこれが俺の...
だ。代わりなんかいない。お前は俺の弟だ。誰も代わりにはな...
っと。……きちんと食事はしろよ」
ト゛ンはそう言って、振り向かずにガレージを出た。プロムの...
せて家を出た後、13歳のチャ―リーが窓からそれをずっと眺めて...
て、不意に胸が苦しくなった。呼吸ができなくなるほど。
チャ―リーは久しぶりに深く眠り、しかし夜明け前には目が覚...
と、自分の服が床に散乱しており、身体を動かすと痛みが走っ...
夢ではないのだと思った。ト゛ンの唇も指先も、あの言葉も。あ...
ういう意味だったのだろう?彼はぼんやりと思い巡らせた。相...
―リーには理解が難しい存在だった。昨夜はそれを考えようとす...
かで眠りに落ちたのだ。確かにト゛ンは眠るための最適な方法を...
けれど今、目覚めて、一人ガレージに取り残されてト゛ンの言...
に、チャ―リーは胃が軋むのを感じた。行為についての罪悪感で...
なのではないかという不安すら既になかった。何故ならト゛ンが...
ら。ト゛ンが認めてくれるのなら、社会的規範などどうでもよか...
はト゛ンを無理やり追い詰めたのだという自覚はあった。甘えや...
で脅しをかけ、自分の命で釣って誘った。自分が安心するため...
クリスマスの朝が10年分。それはずっとチャ―リーが言ってほ...
代わりがいないという言葉も。ほしいものすべてを手に入れた...
きずり込み、正しくない形で愛を示させた。完璧に近い形で円...
式を、チャ―リーは無理やり汚し、正しくないものにした。
しかもそれでもまだ足りない。キムやテリーやブロンドのあ...
じこと一度だけというだけでは、チャ―リーは満足できなかった...
た。ト゛ンが。
だからきっとこれは続くのだ。完成された答えを差し出さな...
「間違ってる。これが答えじゃない」
そう呟いてチャ―リーは身体を起こした。この方法では二人と...
正しいものにたどり着けない。けれどもこれしか答えが見つか...
世界の間にはまだ不調和があり、それでもやはりチャ―リーはト...
と思った。これから先、ト゛ンのせいで不調和がいっそうひどい...
も。もしかしたら、これまでの不調和はすべて彼がいたから感...
そうだとしてもやはり彼のことが必要だと思った。
終
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
とにかく原作の弟は兄ラブで兄は弟過保護気味なので
やおらずにはいられない、そんな熱い思いをぶつけてみました
続きを待ってくれた方々アリガトン!
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#title(numb3rs 昨夜の続き) [#a3403f63]
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| 昨夜投下したN...
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 当然の...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
そういうわけで兄弟でセクースとかありなので注意。兄×弟。
反応してくれる方がいて嬉しかったです
「チャ―リーがガレージにこもってる」
深夜に実家に帰ると、キッチンでゴルフ雑誌を読んでいた父...
にそう言った。ト゛ンはネクタイを緩め、冷蔵庫からバドワイザ...
の言葉に肩をすくめた。もう12時を過ぎている。そう込み入っ...
事件が続いており、彼は疲れていた。だからこそ一人暮らしを...
なく、より職場に近いこの実家に帰ってきたのだ。疲れている...
アパートに帰ると、妙に神経が冴えて眠れなくなる。だが、こ...
着き、ソファで一晩眠って、早朝にはオフィスに戻るだけの気...
もういないが、父親と彼女が作り上げた温かいこの空間には、...
あった。
「数学の問題を解くために?論文が佳境に入っているんじゃ...
からないけど」
キッチンの椅子に腰を下ろし、バドワイザーを一口飲んでト...
リーが大学でどんなふうに何をしているか、あまり知らなかっ...
た。アランは頭を振り、読んでいた雑誌を伏せてゆっくりと答...
ね。そんな話は聞いていない」
「……じゃあ、なんのために?」
「わかったら苦労しないさ。……もう5日経つ。まるで狂人だ...
ぐ帰ってガレージにこもって、朝になったらまたガレージを出...
も口を利かないし、下手すると食事もしない。ひげも伸びっぱ...
あ恋人がいないのも無理はない」
「何も食べない?」
ト゛ンの問いにアランは片眉を上げた。「昨日は無理やり食べ...
とかけら」
ト゛ンはバドワイザーの瓶を白熱灯の明かりで透かして見つめ...
リーン。ティールグリーン。言葉に不得手なチャ―リーは、この...
てられるだろうか?そう想像し、くすっと笑った。チャ―リーは...
の持ち主のくせに、ある分野については子供並の知識しか持っ...
ょっちゅう間違うし、歴史や政治にも疎い。一人だけ違う世界...
世の中の雑音に耳を傾けたことなどないといった風情で、ト゛ン...
長いこと理解できなかった。家族として接しようと思っても何...
からず、ただ遠巻きに眺めてきたこの弟のことが、少しずつわ...
つい最近のことだ。
くたくたに疲れていたし、正直に言うと寝たかった。けれど...
チャ―リーのことを話すのは、どうにかして解決してほしいから...
長いことチャ―リーと疎遠だったという負い目があるし、アラン...
はずっとト゛ンに認められることを望んできたと言った。そして...
力して、絆を深めるのを見ると自分も嬉しいと。母親もそれを...
アランはト゛ンがチャ―リーに対して兄弟らしく振舞うことを望...
はそれを感じて軽く頷いた。「話してみる」
「頼む」
そう言ってアランは立ち上がり、雑誌を持って寝室のある二...
ト゛ンはバドワイザーを空け、こめかみを軽く揉んでから腰を上...
いう自信はなかったが、チャ―リーが何故そうしているのかを、...
き、アランにも教えておけたらと思った。ト゛ンも彼なりにチャ...
と思っていた。今では。
チャ―リーがガレージにこもる。これは以前もあったことだっ...
リーはガレージの壁一面に黒板を掛け、数式や座標を一心不乱...
とを好む。ト゛ンには理解できなかったが、それが彼にとって一...
らしかった。
だから母親が余命三ヶ月になったときも、自分の方程式通り...
れどころか死者を出したときも、チャ―リーはガレージにこもっ...
数式を解こうとし、熱中することで逃避を図る。母親はチャ―リ...
なかった理由を知っていただろうとアランは言うが、ト゛ンはそ...
持てない。未だに許せないと思うこともある。あれだけチャ―リ...
き、最高の環境で彼の才能を保護し、そのためにアランやト゛ン...
たとすら言える母親が死ぬ間際に、ガレージにこもって数式に...
していなかったわけではない、それどころか愛していたから現...
かったのだということを、今ではト゛ンも理解していたが、それ...
っただろうか?彼女は死ぬ瞬間、寂しくなかっただろうか?
ト゛ンは寂しかった――両親がずっと、弟にばかり時間を費やし...
ストで良い成績を取り、野球の試合で活躍し、ディベートの大...
親は抱きしめてお前を誇りに思っていると言ってくれた。けれ...
特別」に生まれた彼の前に立つと、いつもト゛ンは主役ではなく...
―リーが才能に押しつぶされ、挫折しないようにと常に気を配っ...
ンが挫折しないように気を配る暇はないようだった。それでもト...
たし、足を引っ張らないようにと努力もした。早く自立して両...
もなりたいと思った。母親が重病に掛かっていると知れば出世...
帰り、彼女の手を握ってきっとすぐ治るよと明白な嘘も吐いた...
ーはその間、ずっとガレージにいたのだ。
今度もそういうことなのだろうか?ト゛ンは考えた。チャ―リ...
もう30歳になるのに、もっと幼く見える。数学に熱中するあま...
もする(尤も、これはお前が事件に熱中しているときだってそ...
でも悪い人間ではない。冷たくもない。むしろ人一倍繊細で、...
しさと寛容さがある。以前はただ数学に夢中の、無神経な子供...
のそういった人間らしさを知るにつれて、ト゛ンの中で凍り付い...
情も少しずつ溶け始めてきた。チャ―リーのことを理解したいと...
りたいとも思う。おかしな話だが、とっくに成人しているはず...
だに保護が必要なのではないかとト゛ンはたまに感じる。おそら...
ているから、もっと自立心を持ってほしいと文句を言いながら...
いるのだろう。
チャ―リーが何かの理由で打ちのめされ、ガレージにこもって...
―家族が手を差し伸べ、立ち上がらせてやらなければ。そう思い...
のドアをノックした。ドアの隙間から明かりが漏れているから...
ここにいるのだろう。もう一度ドアをノックし、それからト゛ン...
当に、彼は疲れていた。
「チャ―リー?いるんだろ?」
何か物音がして、しかし返事はなかったので、彼は迷わずに...
た。鍵は取り付けられていないから、開けることができるのは...
いて中を覗くと、蛍光灯の下で怯えたようにチョークを持って...
―リーが見えた。――予想通りだ。
壁や天井中の黒板に数式が埋め尽くされ、至る所に紙が散乱...
を竦めた。片付けに苦労しそうだ。
「ト゛ン?」
無精ひげをうっすらと生やしたチャ―リーが小声で名前を呼ぶ...
いような、子供っぽい呼び方で。濃いまつげを瞬かせ、上目遣...
けれどもそのくせト゛ンがガレージのドアを後ろ手で閉めると、...
ずさった。
「チャ―リー、今度はどうしたんだ?父さんが心配してる」
「……心配なんてする必要ないよ。ただ――熱中してるだけ、も...
うなんだ、もう少し…」
そうチャ―リーは呟き、黒板に向き直ったが、手が震えたのか...
れ、舌打ちしながら彼はそれを拾った。ト゛ンはズボンのポケッ...
がらそれを眺めていた。
「とにかく、一人にしてほしいんだ。ちょっと考えたいんだ」
ト゛ンは肩を竦め、一歩チャ―リーに近づいた。チャ―リーはそ...
せてみせた。
「いいさ。ただ、食事はしろ」
「してるよ」
「二日か三日に一度?普通は毎日三回食べる」
チャ―リーは横顔を向けたまませわしなく何度も頷いた。「わ...
から放っておいて」
「何かあったのか?」
チャ―リーは顔を上げ、眉を寄せて見せた。「何が?」
「何か……トラブルだよ。お前がそんなふうになる理由さ。話...
ろ?」
ト゛ンはそう言い、床に腰を下ろしてドアに背中を預けた。チ...
て、口を開きかけ、それからかぶりを振った。「僕らは普通の...
その言葉にト゛ンは軽く顎を上げて反応した。チャ―リーがそ...
は初めてだった。どちらかというとそれを言いかねないのは、...
ったのだ。彼は幾ばくかの衝撃を受けたが、平然を装って頷い...
りが?」
これはまずい質問だった。口にした途端、ト゛ンにもそれはわ...
なったパーカーとジーンズを着たチャ―リーは引きつった笑顔を...
で言った。「――わかってるくせに!僕はト゛ンの望んだとおりの...
ト゛ンはいつも僕を置いて野球に出かけたし、高校でだって声を...
キムと婚約してたことだって、言ってくれなかった。これって...
チャ―リーはため息を吐き、手のひらで短髪を掻き回した。「...
ついてはこの間話し合っただろう?あの頃は今とは違ったんだ...
ト゛ンは以前キムという女性と婚約したことがあったが、チャ...
したこともなかったし、婚約していたことも話したことがなか...
きっかけに、キムと再会し、チャ―リーも彼らの昔の関係を知る...
心驚くほどショックを受けて、これまでそれを話さなかったこ...
しそれはアルバカーキにいたころの話で、そのときはチャ―リー...
ト゛ンからしてみれば仕方がなかったのだ。そのまま結婚するこ...
紹介しただろうし、今そういう女性がまた現れれば、今度はき...
教えるだろう。今は昔とは違うとト゛ンが弁解したときは、チャ...
うな態度をとっていたので、今になって話を蒸し返されたこと...
チャ―リーはト゛ンの答えにまた引きつった笑いを浮かべた。...
自分より賢い人間なんていないとでも言いたげな笑い。世界の...
自分だけが答えを知っているかのような。そのくせ小さな頃か...
に妙に構い、あらゆることを詮索し、口を突っ込んできて、ト...
いのかよく理解できなかった。世界を動かすには自分だけでこ...
ような態度を取りながら、チャ―リーはいつもト゛ンに何かを求...
親にあれだけ構われながら、家の中で暮らすあと一人の人間が...
うだけで大げさに取り乱してみせる。子供の頃、ト゛ンは自分の...
たことなどなかった。ただ厄介で手間のかかるガキだと思って...
ト゛ンはもう一度ため息を吐き、質問を繰り返した。「話した...
ゃないだろ?何が原因なんだ?」
「何もない。何も話したいことなんかない」
チャ―リーは両手を広げ、大げさな身振りでそう断言した。ト...
立ち上がった。「わかった。俺はもう寝る。――なんだろうと、...
のためだ」
そう言ってドアノブに手を掛けると、震えた声が背後でした...
いつものパターンだ。やれやれ。半ば本気で腹を立てながら...
て首を傾げた。「何だ?」
チャ―リーはこぶしを握り締め、小声で聞いた。「僕みたいな...
かった?」
ト゛ンは呆れて顔をしかめてみせた。「おい、まさか本当にそ...
のか?」
「答えてよ。僕みたいな弟はいらなかった?」
ト゛ンはチャ―リーに早足で歩み寄り、彼の肩を揺さぶった...
なんなんだ?まともじゃないぞ」
チャ―リーは身をこわばらせ、じっと俯いていた。ト゛ンは...
いたが、しばらくして肩から手を離して答えた。「……いろいろ...
せよ、俺たちは兄弟だろ?お前は俺の弟だよ」
チャ―リーはまたあの神経質な笑いを響かせた。
「それは答えになってない。僕は仮定の話をしてる。ト゛ン、...
弟が選べるなら、ト゛ンは別の人間を選んだ?数学きちがいじゃ...
ッチボールをしたり……そういう弟。学年のスキップもしなくて...
も安心させられる、まともなやつだよ。ト゛ン?ずっとそうだっ...
ってた?もしもの話だよ」
ト゛ンは黙ってチャ―リーの横顔を見つめていた。ふさふさし...
きな目と濃い睫。高い鼻は少しだけ自分や父親に似ている。体...
ころは似ていない。数字を通して世界を見るところも似ていな...
テニスや野球をしたりもしない。大学と家をただ往復し、わけ...
き連ね、子供みたいに些細なことで苛立ったり笑ったり、自分...
い。チャ―リーのような友人すらいない。こんな人間は他に知ら...
ってから目を伏せて、正直に答えた。「……子供の頃なら、そう...
チャ―リーはちらりとト゛ンを見上げたが、すぐに視線を落と...
だよね」
「――だけどそれは昔の話だ。今は違う。違うだろ?俺とお前...
やっとまともに関りあうようになったし、俺はお前を誇りに思...
ないことを、お前はやりとげてみせる。立派だ」
「もちろん。僕は普通じゃないからね」
チャ―リーは奇妙に明るい声でそう言い、顔を上げてト゛ンを...
を引き結んで黒板に向き直り、また数式を書き始めた。チョー...
ながら、ト゛ンは答えに困った。チャ―リーはト゛ンを見ないまま...
「普通じゃない。普通じゃない。小さい頃からずっと僕はそ...
――変なんだ。天才なんて言われてるけど、おかしいだけだ。ま...
かったし、毎月毎月知能テストを受けて、専門家にチェックさ...
者と同じ扱いだよ。その証拠に母さんはいつも僕の行動にひど...
かしくならないように気を配ってた。――無駄だったけど。だっ...
なんだ。笑えるよね!僕はト゛ンみたいにまともじゃない。たま...
けど。たまに役に立つおかしいやつだって、それだけ」
「チャ―リー、母さんのことをそんなふうに言うもんじゃない...
低い声でト゛ンが言うと、チャ―リーは肩をすくめてみせた。...
ト゛ンは放っておかれることが多かったのに、こんなにまともに...
て僕は……ね?今もこんなふうにガレージにこもって、まともじ...
「何が言いたいんだ?」
子供の頃のことを持ち出されて、ト゛ンは腹の底が熱くなるの...
ーはいつだってこうなのだ。本人にもいろいろ苦労はあっただ...
に十分愛され、構われ続けてきたのにまだ不満を言う。確かに...
違うが、だとしても家族だ。彼を受け入れ、愛したいと思って...
はいつも不可解な言動でト゛ンを混乱させ、遠ざけ、そうかと思...
を踏みにじる。こんな弟をほしいと思えたはずがない。今もチ...
で捲くし立てている。
「僕が何が言いたいか?それは問題じゃない。論点がずれて...
だけ。ト゛ンにとって僕が理想的な弟じゃなくて、僕はト゛ンか...
ってことをね。はっきりしてよかったよ。今日はありがとう」
「おい、ふざけてるのか?」
肩を掴んできつく問い詰めると、チャ―リーは激しくかぶりを...
ゆがませた。「違う。違う、そうじゃない!」
「じゃあ何なんだ?」
手のひらの下のチャ―リーの身体はこわばっていた。ト゛ンは...
うと弟から視線を逸らし、答えを待った。「何をさせたいんだ...
「――何も、何もしてほしいことなんてない。問題は僕なんだ...
ない。ト゛ン、気が狂いそうなんだ。いや、僕はもうずっと前か...
さい頃から。ト゛ン、ごめん」
「何を謝ってるんだ?」
ト゛ンは驚いて手を離し、チャ―リーを見つめた。けれどもチ...
ないまま、ト゛ンの肩に額を押し付けて泣き始めた。「ごめんな...
温かい涙がシャツを濡らすのが感じられた。ト゛ンは戸惑い、...
リーの震える肩を抱いた。チャ―リーはその動作にびくりと身体...
ほどこうとはしなかった。
「何を悩んでる?お前は俺の弟だよ。今は一緒に仕事もして...
みたら確かにちょっと変わってるけど、それは職業も全然違う...
はまともだよ。思いやりもある。才能もあるし、素晴らしい弟...
チボールに誘わなかったのが悪かったなら、今からでもするか...
その言葉にチャ―リーが微かに笑う気配がし、ト゛ンは弟の両...
させた。チャ―リーの目は充血し、潤んでいた。ト゛ンは取り乱...
に肩を撫で擦りながら聞いた。「何をしてほしい?何を望んで...
「何もしなくていいよ」
「チャ―リー」
「何もしなくていいんだ。僕が変わりたい」
「チャ―リー……」
「もっとまともになって、ト゛ンに好かれたかった。小さい頃...
゛ンに……駄目だ、頭がおかしくなる。ト゛ン、息ができない。苦...
ト゛ン」
チャ―リーは掠れた声でそう呟くと、上半身を折り曲げて腹を...
ててそんな弟の身体を支え、彼を床に座らせようと肩に手を廻...
体を痙攣させ、呼吸を荒くし、震えた指先で自分のパーカーを...
汗が浮かび、顔は真っ青になっていた。ト゛ンは床にひざをつか...
―リーを支えながら、もう一方で背中を撫でた。確かに、明らか...
しかった。感情を揺らしやすい性質だといっても、こんなふう...
過ぎているように感じた。――もしかしたら、本当にどこか病ん...
い。研究に没頭するあまりに、神経が疲弊したのかもしれない...
ていたように。だとしたらアランにも相談しなければ。ぞっと...
―リーの巻き毛に指を絡め、自分の胸に彼の頭を押し付けるよう...
ち着いて。ゆっくり息をしろ。大丈夫だ。焦るな。ゆっくりで...
抱きしめながらそう繰り返すと、次第にチャ―リーの呼吸は穏...
秒すると今度は歯をがたがた鳴らして震え始めた。ト゛ンは眉を...
な弟を至近距離で観察していた。
「――ト゛ン、僕が気が狂ってるみたいに見える?答えてよ……」
チャ―リーが震えながら聞いてきた。ト゛ンはその答えにひど...
かぶりを振った。「お前はきっと疲れてるんだ。食事もしてな...
?何か食べて、よく眠ればよくなる。休暇をとるのもいい」
「眠れない。もう何日も寝てない」
チャ―リーはぽつりと呟き、震えを抑えるためなのか、自分を...
目を瞑った。憔悴した別人のような横顔に、ト゛ンは何か恐ろし...
―もう家族を失いたくなかった。
「チャ―リー、大丈夫だ。お前は疲れてる。何か簡単なことで...
ようにもなる。一緒に考えよう」
「眠れない。これを治さないと……」
かたかたと歯を鳴らしながらチャ―リーは言う。ト゛ンはそれ...
すますきつく弟を抱きしめながら聞いた。震えは少し収まった...
何のことだ?何か原因があるのか?」
チャ―リーは我に返ったように顔を上げ、口を僅かに開けたま...
つめた。
「チャ―リー?」
「――僕は頭がおかしい」
「チャ―リー!馬鹿なことを言うな!」
ト゛ンは苛立って叫んだ。けれどもチャ―リーはかぶりを振っ...
かしい。僕が今考えていることを知ったら、ト゛ンは僕を嫌うに...
「何を考えてるっていうんだ?おい、俺たちは兄弟だぞ、今...
「――兄弟だから、もっと好かれたいって思ってる」
チャ―リーが息を震わせながら呟いた。ト゛ンは驚いて、微か...
つめた。チャ―リーは苛立った子供そのものの表情で、半ば泣き...
「ト゛ンに好かれたい。そればっかりなんだ」
ト゛ンは唖然としながら、乾いた声で答えた。「……好いてるよ...
りにくいかもしれないけど、俺だってお前のことは……」
チャ―リーがその言葉を遮って続けた。
「でも兄弟だからってだけじゃ駄目だ。もっと好かれたい。...
……おかしいだろ?まともじゃない」
ト゛ンは何と言うべきか迷いながら、チャ―リーの身体に廻し...
チャ―リーは静かに泣き始めた。
好かれたい。そこまではまあいい。けれども、テリーやキム...
う考えてもおかしい。その関連性を考えようとすると、ひどく...
に手をやった。そんなト゛ンを見て、チャ―リーは微かに笑った...
と思ってる」
「……思ってない」
ト゛ンは呟き、それからチャ―リーを見つめた。子供みたいに...
濡れた睫ごしに、いつものようにト゛ンを見上げる弟。彼が言っ...
い。けれども、おかしいと言ったらチャ―リーはきっと死んでし...
は手のひらに汗が滲むのを感じ、太ももに手をこすりつけてそ...
Iの交渉術のクラスで習った通りに、ゆっくりと繰り返して強調...
は思ってない」
「嘘だ」
チャ―リーが絶望的な表情で呟く。また汗が浮かび、ト゛ンは...
手を伸ばし、チャ―リーの肩を擦って言った。「お前は大事な弟...
て思わない。チャ―リー、一緒に考えよう。俺たちが疎遠だった...
か心の傷ができたのかもしれない。俺の兄弟としての接し方が...
ない。悪かったよ。俺にも責任がある。だから、一緒に考えて…...
えて、眠って、食事をしよう。お前は正気だよ、大丈夫だ」
ト゛ンの言葉にチャ―リーがきつい口調で返した。
「正気な人間が兄と寝たいなんて考える?僕が言ってるのは...
一緒に解決なんてできるわけない。消えたいよ。生まれてこな...
らト゛ンももっと幸せになれた」
「チャ―リー……」
「気持ち悪い?」
チャ―リーが口の片端を上げて問う。ト゛ンは躊躇いながらも...
……ゲイの人間はいくらでもいる」
「兄弟相姦願望のあるゲイはそんなにいないと思うけどね」
尖った声で皮肉まじりにチャ―リーは反論し、ト゛ンはただ喉...
彼はひどく疲れていたし、混乱もしていた。おそらくチャ―リー...
リーの肩を擦っていた手を移動させ、背中を撫でた。チャ―リー...
らまた開けて囁くように言った。「触られると身体が熱くなる...
なるんだ。ト゛ン、気持ち悪い?」
「……気持ち悪くなんかない」
ト゛ンは呆然としながらそう答え、パーカー越しに指先でゆっ...
ぞった。ト゛ンにはどうすればいいのかわからなかった。お前は...
るというのが一番本音に近かったが、それを言ったらチャ―リー...
ていた。この年になってやっと近しくなり、ト゛ンにとって保護...
弟を。気難しく、ト゛ンから見れば不思議な才能があり、どこか...
傷つきやすくて、以前はト゛ンの前ではいつも身をこわばらせて...
な口を利くことはあっても、彼の手の届く場所にいる、30年か...
失うかそれを回避するかの瀬戸際が今だということくらいはわ...
ほどわかった。ト゛ンは疲れで頭をぼんやりとさせたまま、チャ...
下に指先を滑り込ませた。チャ―リーがびくっと肩を震わせて彼...
笑みたくなるようなかわいらしい表情だった。そう、チャ―リー...
誘うところがあり、だからこそト゛ンはずっとこの気に障る弟を...
はそんな弟を見ながら、服の下に滑り込ませた指をさらに奥へ...
腹の内側にまで指を這わせた。チャ―リーはその動きに身体をい...
唇を動かし、微かに吐息をこぼした。「……ト゛ン?」
「黙れ、チャ―リー。じっとしてろ」
「ト゛ン、何をするつもりなんだ?これじゃまるで……」
「眠れないんだろ?」
ト゛ンはチャ―リーを眠らせたかった。とにかく一晩眠らせ、...
もう一度考えようと言いたかった。今その問題について、深く...
かった。ト゛ンもチャ―リーも何日も寝ていなくて、疲れきって...
にたどり着けるはずがない。一晩眠ったあとなら、いい方法が...
た。そして眠るのに最適な方法も知っていた。
ト゛ンはチャ―リーのパーカーを脱がせ、彼の乳首――当たり前...
い胸についていた――を指で愛撫し、覆いかぶさるようにしてガ...
た。軽く唇をこすりつけるようなキスをすると、チャ―リーは腰...
ズを履いた脚を絡ませてきた。それに誘われるようにして、も...
く絡めたキスをしてみれば、チャ―リーが囁いた。「キムやテリ...
した?」
「黙れよ」
この弟はこんなときにもおしゃべりで知りたがり屋なのか。...
が、チャ―リーはかぶりを振った。「答えて。知りたいんだ」
ト゛ンは肩を竦めた。本当に、この弟は理解不能だと思った。
「ああ、したよ。でも、お前もしてほしかったら、黙ってろ」
簡潔にそう命じると、チャ―リーはそれを聞いて呟いた。「――...
ト゛ンは頷き、まだ何か言いたげなチャ―リーの口を手で覆い...
のベルトを外した。もう一度キスをし、ジーンズを脱がせると...
口を閉じた。ト゛ンはそのことに感謝して、ただ行為に集中した...
てだったが、別に難しくないような気もした。チャ―リーだけい...
たのに、彼がト゛ンにも服を脱ぐようにねだるので(「恥ずかし...
いよ、ト゛ン」)、抗う気力もなくワイシャツやスーツを脱いだ...
チャ―リーに覆いかぶさると、数学者はト゛ンの首筋に鼻を寄せ...
と言った。シェービングクリームとヘアトニックと、ト゛ンの肌...
た匂い。そんなものは意識したことがなかったので、ト゛ンは少...
っていると言いそうになった。
一度目は手で互いに擦り合い、あっけなく果てた。ところが...
リーだけでなくト゛ンも一度では満足しきれず、いつの間にかト...
の穴に指を滑らせていた。ほとんど潤滑剤もなく、男同士のセ...
で、彼らは初体験するティーンエイジャーみたいに焦りながら...
に舌を這わせて、手足を絡めあった。正常位では難しそうだっ...
―リーに四つ足の姿勢を取らせ、舌で入り口を愛撫してから、唾...
自分のペニスを慎重に挿入した。チャ―リーは呻きはしても痛い...
ト゛ンは不安だった。
腰を抱え、身体を揺さぶると、チャ―リーが聞いたこともない...
声でト゛ンの名前を呼んだ。それが馬鹿みたいに可愛くて、ト゛...
リーを守らなければいけないと思った。こんなふうに大事に思...
とに、耐えられるわけがない。彼はチャ―リーに対する責任を感...
が暗くなった。
チャ―リーを守りたい。ことが終わり、繋がりを解いた後で、...
がらト゛ンは切実にそう思った。けれどもそれは絶対に、こんな...
った。ト゛ンにはわかった。自分が間違ったことが。チャ―リー...
ばいけなかったのに、しくじって引き返させずに、あろうこと...
今夜チャ―リーは眠れるかもしれないが、自分は絶対に眠れない...
眠る資格もない。
「あのブロンドの女の子、あの子にもこうしたの?」
ぼんやりと考えていると、チャ―リーが腕の中で不意にそう言...
ぎょっとして聞き返した。「なんだって?」
「プロムに誘った子、いただろ?名前は忘れちゃったけど。...
無邪気さと嫉妬が奇妙に同居した瞳をしてチャ―リーは言う。...
ただ言葉を探した。チャ―リーは本当に頭がおかしいのではない...
「……寝たよ。あの子にもこうした。でも何故そんなことを?」
ト゛ンが答えると、チャ―リーは肩を竦めた。「ただ知りたい...
かった。小さい頃から僕はずっと、ト゛ンのことなら何でも知り...
そのころからおかしかったんだね。ト゛ンはそれを聞き、チャ...
ていた腕を解き、上半身を起こした。こめかみが痛み、疲労感...
していた。ト゛ンが無言でそこらに散らばった服を手に取ると、...
な声を上げた。「ト゛ン?」
「……ソファで寝るよ。明日も早くから仕事なんだ。……それか...
ト゛ンは裸のまま無防備に床に寝そべっている弟に視線を向け...
て服を着ながら言った。「お前は俺の弟だよ。俺に他に弟はい...
朝のことを、今でも覚えてる。クリスマスの朝が10年分いっぺ...
で、父さんに車でお前と母さんがいる病院まで連れて行っても...
っぽけで、俺が誰なのかなんてわからなくて、でもこれが俺の...
だ。代わりなんかいない。お前は俺の弟だ。誰も代わりにはな...
っと。……きちんと食事はしろよ」
ト゛ンはそう言って、振り向かずにガレージを出た。プロムの...
せて家を出た後、13歳のチャ―リーが窓からそれをずっと眺めて...
て、不意に胸が苦しくなった。呼吸ができなくなるほど。
チャ―リーは久しぶりに深く眠り、しかし夜明け前には目が覚...
と、自分の服が床に散乱しており、身体を動かすと痛みが走っ...
夢ではないのだと思った。ト゛ンの唇も指先も、あの言葉も。あ...
ういう意味だったのだろう?彼はぼんやりと思い巡らせた。相...
―リーには理解が難しい存在だった。昨夜はそれを考えようとす...
かで眠りに落ちたのだ。確かにト゛ンは眠るための最適な方法を...
けれど今、目覚めて、一人ガレージに取り残されてト゛ンの言...
に、チャ―リーは胃が軋むのを感じた。行為についての罪悪感で...
なのではないかという不安すら既になかった。何故ならト゛ンが...
ら。ト゛ンが認めてくれるのなら、社会的規範などどうでもよか...
はト゛ンを無理やり追い詰めたのだという自覚はあった。甘えや...
で脅しをかけ、自分の命で釣って誘った。自分が安心するため...
クリスマスの朝が10年分。それはずっとチャ―リーが言ってほ...
代わりがいないという言葉も。ほしいものすべてを手に入れた...
きずり込み、正しくない形で愛を示させた。完璧に近い形で円...
式を、チャ―リーは無理やり汚し、正しくないものにした。
しかもそれでもまだ足りない。キムやテリーやブロンドのあ...
じこと一度だけというだけでは、チャ―リーは満足できなかった...
た。ト゛ンが。
だからきっとこれは続くのだ。完成された答えを差し出さな...
「間違ってる。これが答えじゃない」
そう呟いてチャ―リーは身体を起こした。この方法では二人と...
正しいものにたどり着けない。けれどもこれしか答えが見つか...
世界の間にはまだ不調和があり、それでもやはりチャ―リーはト...
と思った。これから先、ト゛ンのせいで不調和がいっそうひどい...
も。もしかしたら、これまでの不調和はすべて彼がいたから感...
そうだとしてもやはり彼のことが必要だと思った。
終
| __________ |
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
とにかく原作の弟は兄ラブで兄は弟過保護気味なので
やおらずにはいられない、そんな熱い思いをぶつけてみました
続きを待ってくれた方々アリガトン!
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