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#title(BASARA忍と主) [#bd74e589]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ゲーム戦国バサ...
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| スレの...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
「調子、悪いんじゃないの?」
昼の鍛錬を終えて、体を清めながら納得いかなそうに眉を顰め...
わざと、今までどおりのすっとぼけた口調で声をかけてやったら
旦那は面白いように予想通り、目を瞠ってうろたえた。
ああもう、オレ、旦那のそういう素直なトコ大好きだよ。
「さ…ッ、い、ぞう…」
とびっきりぎこちなくオレの名前を呼ぶ旦那を、
手招きして縁側に座らせて、団子と渋茶を差し出す。
旦那はまた、目を丸くしてオレを見返した。
「ハイハイ、オレ様は真田忍軍副頭目、
今じゃ元頭目の猿飛佐助の後を継いだ、霧隠才蔵ですよ」
まんまるな旦那の目を見据えてそう言ってやったら、
旦那の表情がみるみる子供のように拗ねた。
ホント、あんたは戦場で槍振るってる時以外は、まだまだコド...
「旦那の好みは、今は亡き猿飛佐助から言伝てられております...
慇懃無礼…のつもりだったのに、
気がつけば殊更丁寧な手つきで旦那に勧めてる自分に苦笑した。
オレは、口先ではわざと意地悪な言い方をしてるくせに、
せっかく用意したこの団子、旦那に食べて欲しくてしょうがな...
「…っ、う……、たしかに、これは、それがしの好物のみたらし団...
旦那が必要以上に武張って応えるのが、おかしくてたまんない。
「今は亡き猿飛佐助殿は、まったく旦那の好みを良くご存知で...
空を見上げて呟いてみるオレの声色は、この上なく白々しい。
その白々しさに、生来潔癖な旦那はとうとう腹を立てちまった...
「どっ、どの口でそのようなことを言うのだ貴様は!!この幸...
空を見上げてた顔を引き寄せられ、
あっという間に左右の頬っぺたをギリギリと抓り上げられてい...
…あー、忍びとしての今後の為に自己弁護しとくけど、抓られた...
真田の旦那が気を収められるように、わざと逃げないで犠牲に...
「痛ってぇ!ちょ、やめてよ旦那!
いつも佐助に言われてたでしょ!?感情任せに部下に乱暴し...
「貴様が悪いのだ貴様が!主たるこの幸村を良いように嬲りお...
言いながら抓る指先の力は益々強くなってきて、でも、
旦那の顔はいつの間にか、泣きそうに歪んできた。
もう、ほんと、しょうがないなぁあんたって人は…。
オレはどうにか自分の顔から旦那の手を外し、そのまま引き寄...
すぐに痛いくらいしがみ付いてくる旦那が、ホント、愛しくて...
武田軍天下統一の大願を成就したその日、
オレは旦那と大将の呆れるほど暑苦しい殴り愛を眺めながら
背後に忍び寄って来た気配に溜息をついていた。
やれやれ、やっぱり来たか、かすがちゃん。
ウチの大将が天下取ったってことは、
オレの後にいるこのくのいちが切ないくらい愛しちまってるあ...
天下をモノにできなかったってことだ。
けど、上杉の大将の力を認め、敵ながら天晴れって常日頃言っ...
上杉の大将を殺さなかった。もちろん、上杉の大将が可愛がっ...
「お前の情けなど…ッ!」とかなんとか、すんげぇ形相で悔しが...
当の上杉の大将が、ウチの大将に向かって神妙に頭下げたもん...
かすがもそれ以上は何も言えなくなって、風切ってどっかに飛...
それっきり姿見てなかったんだけど。
「…ま、やっと戦わなくて良い世の中になったんだし、これから...
鬼みたいな(いや、美人だけどさ)形相を覚悟して、わざとに...
あーらやだ、すんげぇ色っぽい微笑みなんか浮かべちゃってさ...
逆に怖ぇっての。冗談キツいぜ。…殺気、ぜんぜん隠せてねぇっ...
オレに向かって微笑みかけたまま、かすがは誘うような手つきで
その惚れ惚れするようなボン・キュ・ボンの体を撫で回して見...
あーあー、目の毒。
ていうか目の保養。
うん、判ってても油断しちゃうよねこれは、まさに女の武器だ...
だからそんなきわどいカッコで戦ってたのかあんた。
そしてかすがは徐に短銃を取り出し、オレに銃口を向けた。
その短銃どっから持って来たんだよ?慣れない獲物使うと手ぇ...
…ま、どうでもいいか、そんなこと。
もちろんオレ様、超優秀な忍びだからさ、逃げるのは簡単だっ...
でも、瞬間、目の前にいるのがもし、真田の旦那だったら…
なんて、余計なこと考えちまったんだよな。
お館様の為、あの方の為、って言いながら自分の命を粗末にし...
よく似てると思うことが戦場で何度もあった。
もしウチの大将が天下取り逃がして、でも大将も旦那も命は助...
その時旦那はどうするんだろう。
大将の天下の為に捧げてきたあの炎みたいな情熱を、どこにぶ...
目の前にいるこのくのいちも、そういう気持ちを持て余してオ...
ほら、オレってなんていうか、八つ当たりしやすいだろ?自分...
で、まあ、自分でもお人よしかなぁって呆れたけどさ、
オレ、撃たれたフリしてやったんだよね。
勿論、弾は避けたけど、撃たれたフリして
屋根の上からひゅーっと落っこちて見せた訳よ、かすがの目の...
かすがだって優秀な忍びだ、実際は当たってないことくらいち...
これが本物の戦場だったら、追って来てトドメ刺すなりしたん...
何しろただの八つ当たりだから、かすがもそこまではしなかっ...
白い鳥に掴まって飛び去って行くかすがの形の良い尻を見送り...
オレは忍びらしく音もなく着地した。
そして旦那に突き飛ばされてみっともなく転がった。
「さッ、佐助!何事だ今の音は!?銃声ではなかったか、何が...
突き飛ばしたオレの胸倉を掴んで更に揺さ振る旦那をどうにか...
「上杉のところの忍びが友達になった記念に新しい武器を自慢...
ものすごくいい加減な嘘で誤魔化したら、旦那はあっさり信じ...
でも、そこから話が妙な雲行きになってしまった。
顎に手を添えて、何やら思案顔でオレと旦那を見てた大将が、...
「うむ、佐助、そのまま死んでみせぃ!」
とか、言い出した。
いやー、オレ忍びですから、そりゃ主の主に死ねと言われりゃ...
「何を仰るのでござりまするかお館様!佐助はそれがしの大切...
此度の戦にても功労高く、褒めてやりこそすれ、死ねとは何...
お館様のお言葉とも思えませぬ!!」
あらら、嬉しいじゃないの、旦那、オレの為に大将に楯突いて...
「ふはははは!案ずるな幸村、これも戦の謀じゃ!」
大将はいつも通り豪快に笑いながら、旦那を殴り飛ばした。
「なっ、それはどういうことでござりまするかお館さまぁ!」
って、問い返しながら、旦那も大将を殴り返す。
大将の謀っていうのはつまり、こういうことだった。
武田が天下を統一したとはいえ、まだ各地に敵の残党は残って...
世の中から戦が完全になくなるのはもう少し先のことだ。
大将も旦那も、まだまだこれからも戦場へ出て戦わなければな...
旦那と一緒になって戦場を駆け巡る戦忍であるオレは、
忍でありながらそれなりに名も顔も知られてしまっていて
そういう意味では(オレが言うのは口幅ったいけど)武将みた...
そのオレが、大将が天下統一を果たした矢先に慢心して
敵の忍の残党に無様に殺されたという噂が広まれば、
武田軍は弱っていると踏んで戦を仕掛けてくる連中が必ず出て...
つまりは猿飛佐助の死という囮を使って、
武田に敵対する残党狩りをしようということなのだった。
以上のことを、大将は旦那を殴り殴り説明してくれた。
「さすがでござりまするお館さまぁ!
御無体などと申し、それがしこそが無礼千万、お許し下され...
と、旦那も大将を殴り返しながら感激していた。
なんでここで殴り合う必要があるのか、オレにはきっと永遠に...
オレはちょっと遠い目をして思った。
とにかく。
そんな訳で今オレは
『死んだ佐助に代わって真田忍軍の長を務めることになった霧...
として暮らしてる。
顔も声も姿も才蔵にしてるんだけど、
旦那の前でだけ、ちょっと佐助の声に戻ったりしてるのは、大...
本当は死んだフリしてる間は、実際、真田の邸から離れてるつ...
真田の旦那がどうしても首を縦に振ってくれなかった。
「佐助が死んだ、佐助が死んだと、皆口々に言うものだから、
嘘と判っていても恐ろしくなるのだそれがしは!
佐助は死んでおらぬ!生きてそれがしの傍におる!
それを信じさせろ、この身から離れること許さぬ、佐助ッ!...
なんて言って抱きつかれて、着物の襟ぐっしょりになるほど泣...
どこにも行ける訳がないよな。
鍛錬を終えたばかりの汗臭い、体温の高い旦那の体を抱き締め...
そんなことを思い出していたら、
「…今は亡き、などと、それがしの前で二度と口にするな」
オレの肩に顔を押し付けたまま、オレにしか聞こえない小さい...
「言葉なんかどうでもいいだろ、オレはちゃんとここにいるん...
オレも、旦那にしか聞こえない声で囁く。
「それでも言うな!人の言葉には、言霊というものがあるのだ。
繰り返して言えばいつか本当になってしまうかもしれぬ。…二...
オレの背中に回った旦那の腕に、また力が籠った。
オレは我慢できなくて、旦那の耳にそっとくちづけた。
旦那の耳が、顔も襟足も、肌の見えてる所全部がみるみる真っ...
それでも旦那はオレから離れなかった。いや、オレを放さなか...
オレだって放すつもりはない。
抱き寄せて、頬ずりして、こめかみにも口づけて、背中を撫で...
「…でもさ、オレ、忍だよ?旦那の為に死ねるんなら、これ以上...
「まだ言うか!」
オレにしがみついたまま旦那はガバっと顔を上げた。
ねぇ、鼻がぶつかるくらいの距離だよ、誘ってんの?
「それがしの為に死ぬなど許さぬ!それがしの為に生きると何...
誘われるままに唇奪っちゃおうかと思ったオレを、旦那の真剣...
「…ははは、忍に向かって、それ言っちゃう?」
辛うじて、オレは笑えた。でもなんて情けねぇ笑い方だろう。
「言うぞ、何度でも言うぞ、それがしの為に生きよ、さッ…」
すけ、って、語尾はまたオレだけにしか聞こえない小さい声に...
参ったねこりゃ。
すっげぇ殺し文句言われちゃったんだけど、この人自覚してね...
「旦那の為に生きる…か。今までは結果的に、そうして来たんだ...
「では、これからもそうすれば良いだけのことではないか」
「んー、でもさ、もうじき、忍の要らない世の中が来るだろ。...
大将は、その為に天下取ってくれた」
「うむ。お館様は、まこと大業を果たされた」
「…そしたらもう、オレ、旦那の傍にいる必要なくなっちゃわな...
声が震えそうになるのをどうにか押さえつけて、オレは旦那の...
そう、戦のない世の中はたしかに良い。素晴らしい。
でも、戦場でしか生きる術を知らない忍は、これからどうすれ...
だからいっそ、旦那の為に戦場で果てることができたら、俺は...
オレはかなり真剣に、そんな悲壮でカッコいいことを考えてた...
真田の旦那はあっさりと、オレのカッコつけを台無しにしてく...
「何を寝惚けたことを言うておるのだ。
それがしの手合わせの相手だの、それがしの遠駆けの共だの、
それがしの着替えの手伝いだの、それがしの髪結いだの、
それがしの弁当作りだの、それがしの好物の団子屋への使い...
戦場へ出ずとも、いくらでも仕事はあろうが」
「は………」
オレ様としたことが、真田の旦那の文字通り目の前で、
多分すっげぇ間抜け面を晒してしまった。
旦那はオレから目を反らそうともしないで、相変わらず鼻がく...
かなり長い間、そのまま見詰め合った後、オレは
「……なにそれ」
とだけ言うのがやっとだった。
「何、とはなんだ。いつもさす、…お前がしていることだろう」
「そりゃそうだけど…」
「太平の世になろうとも、この幸村は鍛錬も怠らぬし、団子も...
「あー…それってさぁ、『毎朝お前の作った味噌汁が飲みたい』...
「味噌汁を作ったことはあったか?朝餉作りはさすがにお前の...
しかし、そうだな。忍として働く必要がなくなるのなら、
お前の作る朝餉も食うてみたいな」
なんて言って、この真田の旦那に、目の前でにっこり笑われて...
もうなんにも言い返す気力なくなるって。
だからオレはもうなんにも言わず、もう一度旦那の体を思い切...
オレが笑ったんで、旦那も安心したみたいで、また痛いくらい...
「わかりましたよ…。戦があってもなくても、せいぜい旦那の好...
「コキ使うとは人聞きの悪い。頼りにしておるのではないか」
「はいはい、なんとでも言って」
背中に回した手であやすようにぽんぽん叩いてやったら、
子ども扱いするなって言いながら、益々オレの首に顔を摺り寄...
ああ、そう。これからもずっとこうやって、この人を甘えさせ...
すげぇな、これって最高の褒美じゃねぇか。
これじゃあ、どんなに働かされても文句言えねぇや。
「…それとな、さすけ」
ちょっとだけ体を起こし、オレの耳に口をくっ付けて、不意に...
うっわ、不意打ちやめてよ、オレだって旦那ほどじゃないけど...
「二人きりの時だけは、佐助と呼ばせろ」
「は?」
「才蔵、才蔵、と呼び慣れるよう修練しておるのだがな、どう...
日に幾度かは佐助と声に出さぬと体の調子がおかしい」
おいおい、何言い出すんだよこの人は。
「良いであろう?ほかに人のおらぬ時だけだ」
「いや、でもさ、万が一よその忍にでも聞かれたら、大将の策...
「忍が忍んでおるかおらぬかくらい、佐助が探れば良かろう。
いかぬ時には目で知らせろ。おらぬ時だけ良いと言え」
「ほんと忍使い荒いよね…」
「ええい!何が気に入らぬ!二人きりの時くらい良いではない...
痺れを切らした旦那が、思いっきり誤解を招きそうなことを大...
「良いではないかって、それ、大将の命に背くようなもんなん...
「だから!だから二人きりの時だけだ!!ほかの誰にも聞かれ...
戦バカに付き合うのは構わないけど、ただのバカとやり合うの...
オレはこの言い合いがいい加減虚しくなって、両手を上げて降...
「…はいはい。判りましたよまったく…」
苦笑するオレの胸倉を、旦那が素早く掴んできた。
譲歩してやったのに殴られるんじゃ割に合わないので、旦那の...
「離れるな。今は才蔵としか呼べぬのだから、せめて体を堪能...
子供がお気に入りの人形を抱くように抱き寄せられて、
また、ものすごいことを言ってくれた。
「…はいはい、思う存分堪能してやって頂戴よ」
オレは三度旦那の背中へ腕を回し、今度こそ全面降伏しちまっ...
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
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____________ \ / ̄ ̄ ̄...
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| | | | ...
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| | | | ◇⊂ ...
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
「調子、悪いんじゃないの?」
昼の鍛錬を終えて、体を清めながら納得いかなそうに眉を顰め...
わざと、今までどおりのすっとぼけた口調で声をかけてやったら
旦那は面白いように予想通り、目を瞠ってうろたえた。
ああもう、オレ、旦那のそういう素直なトコ大好きだよ。
「さ…ッ、い、ぞう…」
とびっきりぎこちなくオレの名前を呼ぶ旦那を、
手招きして縁側に座らせて、団子と渋茶を差し出す。
旦那はまた、目を丸くしてオレを見返した。
「ハイハイ、オレ様は真田忍軍副頭目、
今じゃ元頭目の猿飛佐助の後を継いだ、霧隠才蔵ですよ」
まんまるな旦那の目を見据えてそう言ってやったら、
旦那の表情がみるみる子供のように拗ねた。
ホント、あんたは戦場で槍振るってる時以外は、まだまだコド...
「旦那の好みは、今は亡き猿飛佐助から言伝てられております...
慇懃無礼…のつもりだったのに、
気がつけば殊更丁寧な手つきで旦那に勧めてる自分に苦笑した。
オレは、口先ではわざと意地悪な言い方をしてるくせに、
せっかく用意したこの団子、旦那に食べて欲しくてしょうがな...
「…っ、う……、たしかに、これは、それがしの好物のみたらし団...
旦那が必要以上に武張って応えるのが、おかしくてたまんない。
「今は亡き猿飛佐助殿は、まったく旦那の好みを良くご存知で...
空を見上げて呟いてみるオレの声色は、この上なく白々しい。
その白々しさに、生来潔癖な旦那はとうとう腹を立てちまった...
「どっ、どの口でそのようなことを言うのだ貴様は!!この幸...
空を見上げてた顔を引き寄せられ、
あっという間に左右の頬っぺたをギリギリと抓り上げられてい...
…あー、忍びとしての今後の為に自己弁護しとくけど、抓られた...
真田の旦那が気を収められるように、わざと逃げないで犠牲に...
「痛ってぇ!ちょ、やめてよ旦那!
いつも佐助に言われてたでしょ!?感情任せに部下に乱暴し...
「貴様が悪いのだ貴様が!主たるこの幸村を良いように嬲りお...
言いながら抓る指先の力は益々強くなってきて、でも、
旦那の顔はいつの間にか、泣きそうに歪んできた。
もう、ほんと、しょうがないなぁあんたって人は…。
オレはどうにか自分の顔から旦那の手を外し、そのまま引き寄...
すぐに痛いくらいしがみ付いてくる旦那が、ホント、愛しくて...
武田軍天下統一の大願を成就したその日、
オレは旦那と大将の呆れるほど暑苦しい殴り愛を眺めながら
背後に忍び寄って来た気配に溜息をついていた。
やれやれ、やっぱり来たか、かすがちゃん。
ウチの大将が天下取ったってことは、
オレの後にいるこのくのいちが切ないくらい愛しちまってるあ...
天下をモノにできなかったってことだ。
けど、上杉の大将の力を認め、敵ながら天晴れって常日頃言っ...
上杉の大将を殺さなかった。もちろん、上杉の大将が可愛がっ...
「お前の情けなど…ッ!」とかなんとか、すんげぇ形相で悔しが...
当の上杉の大将が、ウチの大将に向かって神妙に頭下げたもん...
かすがもそれ以上は何も言えなくなって、風切ってどっかに飛...
それっきり姿見てなかったんだけど。
「…ま、やっと戦わなくて良い世の中になったんだし、これから...
鬼みたいな(いや、美人だけどさ)形相を覚悟して、わざとに...
あーらやだ、すんげぇ色っぽい微笑みなんか浮かべちゃってさ...
逆に怖ぇっての。冗談キツいぜ。…殺気、ぜんぜん隠せてねぇっ...
オレに向かって微笑みかけたまま、かすがは誘うような手つきで
その惚れ惚れするようなボン・キュ・ボンの体を撫で回して見...
あーあー、目の毒。
ていうか目の保養。
うん、判ってても油断しちゃうよねこれは、まさに女の武器だ...
だからそんなきわどいカッコで戦ってたのかあんた。
そしてかすがは徐に短銃を取り出し、オレに銃口を向けた。
その短銃どっから持って来たんだよ?慣れない獲物使うと手ぇ...
…ま、どうでもいいか、そんなこと。
もちろんオレ様、超優秀な忍びだからさ、逃げるのは簡単だっ...
でも、瞬間、目の前にいるのがもし、真田の旦那だったら…
なんて、余計なこと考えちまったんだよな。
お館様の為、あの方の為、って言いながら自分の命を粗末にし...
よく似てると思うことが戦場で何度もあった。
もしウチの大将が天下取り逃がして、でも大将も旦那も命は助...
その時旦那はどうするんだろう。
大将の天下の為に捧げてきたあの炎みたいな情熱を、どこにぶ...
目の前にいるこのくのいちも、そういう気持ちを持て余してオ...
ほら、オレってなんていうか、八つ当たりしやすいだろ?自分...
で、まあ、自分でもお人よしかなぁって呆れたけどさ、
オレ、撃たれたフリしてやったんだよね。
勿論、弾は避けたけど、撃たれたフリして
屋根の上からひゅーっと落っこちて見せた訳よ、かすがの目の...
かすがだって優秀な忍びだ、実際は当たってないことくらいち...
これが本物の戦場だったら、追って来てトドメ刺すなりしたん...
何しろただの八つ当たりだから、かすがもそこまではしなかっ...
白い鳥に掴まって飛び去って行くかすがの形の良い尻を見送り...
オレは忍びらしく音もなく着地した。
そして旦那に突き飛ばされてみっともなく転がった。
「さッ、佐助!何事だ今の音は!?銃声ではなかったか、何が...
突き飛ばしたオレの胸倉を掴んで更に揺さ振る旦那をどうにか...
「上杉のところの忍びが友達になった記念に新しい武器を自慢...
ものすごくいい加減な嘘で誤魔化したら、旦那はあっさり信じ...
でも、そこから話が妙な雲行きになってしまった。
顎に手を添えて、何やら思案顔でオレと旦那を見てた大将が、...
「うむ、佐助、そのまま死んでみせぃ!」
とか、言い出した。
いやー、オレ忍びですから、そりゃ主の主に死ねと言われりゃ...
「何を仰るのでござりまするかお館様!佐助はそれがしの大切...
此度の戦にても功労高く、褒めてやりこそすれ、死ねとは何...
お館様のお言葉とも思えませぬ!!」
あらら、嬉しいじゃないの、旦那、オレの為に大将に楯突いて...
「ふはははは!案ずるな幸村、これも戦の謀じゃ!」
大将はいつも通り豪快に笑いながら、旦那を殴り飛ばした。
「なっ、それはどういうことでござりまするかお館さまぁ!」
って、問い返しながら、旦那も大将を殴り返す。
大将の謀っていうのはつまり、こういうことだった。
武田が天下を統一したとはいえ、まだ各地に敵の残党は残って...
世の中から戦が完全になくなるのはもう少し先のことだ。
大将も旦那も、まだまだこれからも戦場へ出て戦わなければな...
旦那と一緒になって戦場を駆け巡る戦忍であるオレは、
忍でありながらそれなりに名も顔も知られてしまっていて
そういう意味では(オレが言うのは口幅ったいけど)武将みた...
そのオレが、大将が天下統一を果たした矢先に慢心して
敵の忍の残党に無様に殺されたという噂が広まれば、
武田軍は弱っていると踏んで戦を仕掛けてくる連中が必ず出て...
つまりは猿飛佐助の死という囮を使って、
武田に敵対する残党狩りをしようということなのだった。
以上のことを、大将は旦那を殴り殴り説明してくれた。
「さすがでござりまするお館さまぁ!
御無体などと申し、それがしこそが無礼千万、お許し下され...
と、旦那も大将を殴り返しながら感激していた。
なんでここで殴り合う必要があるのか、オレにはきっと永遠に...
オレはちょっと遠い目をして思った。
とにかく。
そんな訳で今オレは
『死んだ佐助に代わって真田忍軍の長を務めることになった霧...
として暮らしてる。
顔も声も姿も才蔵にしてるんだけど、
旦那の前でだけ、ちょっと佐助の声に戻ったりしてるのは、大...
本当は死んだフリしてる間は、実際、真田の邸から離れてるつ...
真田の旦那がどうしても首を縦に振ってくれなかった。
「佐助が死んだ、佐助が死んだと、皆口々に言うものだから、
嘘と判っていても恐ろしくなるのだそれがしは!
佐助は死んでおらぬ!生きてそれがしの傍におる!
それを信じさせろ、この身から離れること許さぬ、佐助ッ!...
なんて言って抱きつかれて、着物の襟ぐっしょりになるほど泣...
どこにも行ける訳がないよな。
鍛錬を終えたばかりの汗臭い、体温の高い旦那の体を抱き締め...
そんなことを思い出していたら、
「…今は亡き、などと、それがしの前で二度と口にするな」
オレの肩に顔を押し付けたまま、オレにしか聞こえない小さい...
「言葉なんかどうでもいいだろ、オレはちゃんとここにいるん...
オレも、旦那にしか聞こえない声で囁く。
「それでも言うな!人の言葉には、言霊というものがあるのだ。
繰り返して言えばいつか本当になってしまうかもしれぬ。…二...
オレの背中に回った旦那の腕に、また力が籠った。
オレは我慢できなくて、旦那の耳にそっとくちづけた。
旦那の耳が、顔も襟足も、肌の見えてる所全部がみるみる真っ...
それでも旦那はオレから離れなかった。いや、オレを放さなか...
オレだって放すつもりはない。
抱き寄せて、頬ずりして、こめかみにも口づけて、背中を撫で...
「…でもさ、オレ、忍だよ?旦那の為に死ねるんなら、これ以上...
「まだ言うか!」
オレにしがみついたまま旦那はガバっと顔を上げた。
ねぇ、鼻がぶつかるくらいの距離だよ、誘ってんの?
「それがしの為に死ぬなど許さぬ!それがしの為に生きると何...
誘われるままに唇奪っちゃおうかと思ったオレを、旦那の真剣...
「…ははは、忍に向かって、それ言っちゃう?」
辛うじて、オレは笑えた。でもなんて情けねぇ笑い方だろう。
「言うぞ、何度でも言うぞ、それがしの為に生きよ、さッ…」
すけ、って、語尾はまたオレだけにしか聞こえない小さい声に...
参ったねこりゃ。
すっげぇ殺し文句言われちゃったんだけど、この人自覚してね...
「旦那の為に生きる…か。今までは結果的に、そうして来たんだ...
「では、これからもそうすれば良いだけのことではないか」
「んー、でもさ、もうじき、忍の要らない世の中が来るだろ。...
大将は、その為に天下取ってくれた」
「うむ。お館様は、まこと大業を果たされた」
「…そしたらもう、オレ、旦那の傍にいる必要なくなっちゃわな...
声が震えそうになるのをどうにか押さえつけて、オレは旦那の...
そう、戦のない世の中はたしかに良い。素晴らしい。
でも、戦場でしか生きる術を知らない忍は、これからどうすれ...
だからいっそ、旦那の為に戦場で果てることができたら、俺は...
オレはかなり真剣に、そんな悲壮でカッコいいことを考えてた...
真田の旦那はあっさりと、オレのカッコつけを台無しにしてく...
「何を寝惚けたことを言うておるのだ。
それがしの手合わせの相手だの、それがしの遠駆けの共だの、
それがしの着替えの手伝いだの、それがしの髪結いだの、
それがしの弁当作りだの、それがしの好物の団子屋への使い...
戦場へ出ずとも、いくらでも仕事はあろうが」
「は………」
オレ様としたことが、真田の旦那の文字通り目の前で、
多分すっげぇ間抜け面を晒してしまった。
旦那はオレから目を反らそうともしないで、相変わらず鼻がく...
かなり長い間、そのまま見詰め合った後、オレは
「……なにそれ」
とだけ言うのがやっとだった。
「何、とはなんだ。いつもさす、…お前がしていることだろう」
「そりゃそうだけど…」
「太平の世になろうとも、この幸村は鍛錬も怠らぬし、団子も...
「あー…それってさぁ、『毎朝お前の作った味噌汁が飲みたい』...
「味噌汁を作ったことはあったか?朝餉作りはさすがにお前の...
しかし、そうだな。忍として働く必要がなくなるのなら、
お前の作る朝餉も食うてみたいな」
なんて言って、この真田の旦那に、目の前でにっこり笑われて...
もうなんにも言い返す気力なくなるって。
だからオレはもうなんにも言わず、もう一度旦那の体を思い切...
オレが笑ったんで、旦那も安心したみたいで、また痛いくらい...
「わかりましたよ…。戦があってもなくても、せいぜい旦那の好...
「コキ使うとは人聞きの悪い。頼りにしておるのではないか」
「はいはい、なんとでも言って」
背中に回した手であやすようにぽんぽん叩いてやったら、
子ども扱いするなって言いながら、益々オレの首に顔を摺り寄...
ああ、そう。これからもずっとこうやって、この人を甘えさせ...
すげぇな、これって最高の褒美じゃねぇか。
これじゃあ、どんなに働かされても文句言えねぇや。
「…それとな、さすけ」
ちょっとだけ体を起こし、オレの耳に口をくっ付けて、不意に...
うっわ、不意打ちやめてよ、オレだって旦那ほどじゃないけど...
「二人きりの時だけは、佐助と呼ばせろ」
「は?」
「才蔵、才蔵、と呼び慣れるよう修練しておるのだがな、どう...
日に幾度かは佐助と声に出さぬと体の調子がおかしい」
おいおい、何言い出すんだよこの人は。
「良いであろう?ほかに人のおらぬ時だけだ」
「いや、でもさ、万が一よその忍にでも聞かれたら、大将の策...
「忍が忍んでおるかおらぬかくらい、佐助が探れば良かろう。
いかぬ時には目で知らせろ。おらぬ時だけ良いと言え」
「ほんと忍使い荒いよね…」
「ええい!何が気に入らぬ!二人きりの時くらい良いではない...
痺れを切らした旦那が、思いっきり誤解を招きそうなことを大...
「良いではないかって、それ、大将の命に背くようなもんなん...
「だから!だから二人きりの時だけだ!!ほかの誰にも聞かれ...
戦バカに付き合うのは構わないけど、ただのバカとやり合うの...
オレはこの言い合いがいい加減虚しくなって、両手を上げて降...
「…はいはい。判りましたよまったく…」
苦笑するオレの胸倉を、旦那が素早く掴んできた。
譲歩してやったのに殴られるんじゃ割に合わないので、旦那の...
「離れるな。今は才蔵としか呼べぬのだから、せめて体を堪能...
子供がお気に入りの人形を抱くように抱き寄せられて、
また、ものすごいことを言ってくれた。
「…はいはい、思う存分堪能してやって頂戴よ」
オレは三度旦那の背中へ腕を回し、今度こそ全面降伏しちまっ...
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
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