ページ内容へ
ナビゲーションへ
当サイトをご覧いただくにはブラウザの設定で
JavaScriptを有効に設定
する必要がございます。
ページの一覧
最終更新一覧
ヘルプ
ホーム
使い方
文字サイズ:小
文字サイズ:中
文字サイズ:大
1つ前のページに戻る
15-547
をテンプレートにして作成
開始行:
#title(なる似あ兄弟) [#d3f99760]
ナル荷亜国物語の兄弟に萌えたので投下。
弟×兄なのか兄×弟なのか自分でもよくわからない。
多分兄が受け。
ナル荷アで大人になった二人の話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )シ ヤマモオチモイミモナイヨ
みかげ石でできた階段を昇り、四つの王笏が象られた象牙の...
光がピ-夕ーの瞳を刺した。ケア・パラべルの城でも最上階に...
海から照り返す夕陽が満ちあふれ、そこここが淡く輝いている...
夕ーの弟であり、ここナル二アではピ-夕ーに次ぐ二の王でも...
を避けるように書棚の影に立ち、それに寄り掛かるような姿勢...
れを見てピ-夕ーは思わず微笑んだ。--予想通りだった。
「エドマソド、我が弟よ。世の終わりまでそなたがいる場所...
--この図書室だ」
ピ-夕ーが軽く両腕を開きながら歩み寄り、そう呼び掛けると...
線を上げて微笑み返した。
「兄上、あなたがここにいらっしゃるのは珍しい。何かあっ...
「そなたに判断を仰ぎたい裁判がある。正義の君よ」
ピ-夕ーがそう言いながら弟が持っている本の表紙を覗こう...
さりげなく本を閉じ、肩を竦めてみせた。
「私にできることでしたら何なりと。ピ-夕ー、ナル二ア一...
エドマソドはいつもこうだった。自分の感情をあらわにせず...
抱強く耳を傾け、冷静で確かな答えを返してくれる。年下なが...
-夕ーは今日も頼もしく感じながらも、心の内を明かしてくれ...
考えてみれば、この弟に年下らしく甘えられたことなど、もう...
は寡黙なほど思慮深く、めったに自分の意見を口にしてくれな...
「--何を読んでいたのだ?」 森で起きた裁判の話をする...
ーが聞くと、エドマソドは弓形の眉を片方だけ上げ、首を降っ...
「何も。まつりごととはほとんど関係のないことです」
「だが、書物の喜びとはそういうものだ。この兄にそれを分け...
ピ-夕ーが半ば強引に背表紙を押し上げ、題名を見せるよう...
は珍しく動揺したような表情の後で、背表紙に並ぶ文字列を見...
間と彼らの世界についての神話』。ピ-夕ーはそれを見て、少...
ドマソドは叱られる前の子供のように、目を伏せてじっとして...
「…これはまた、興味深いな。人間が人間についての神話の本...
暫くしてから、低く、絞り出すような、しかし無理矢理笑い...
エドマソドが持っている本の背表紙を指で弾いた。エドマソド...
げたかと思うと、またすぐに伏せて見せる。頬に長いまつげの...
がら、ピ-夕ーは次の言葉を考えていた。
ピ-夕ーや彼の兄妹が、このナル二アに来たのはもう随分前...
前のことなので、彼ら自身にもはっきりと思
い出せないほどだ。確かその頃には、末っ子のル-シィは、膝...
スを着ていたし、例えばエドマソドも半ズボンを履いていた。...
ない世界で暮らしていた頃。だがいつのまにか彼らは成長し、...
かいう呼び名を冠され、誰もが認める名君になっていたのだっ...
目の前にいる弟は鬚まで生やし、非の打ちどころのない騎士...
ではピ-夕ーに匹敵するほどの剣の名手であり、またそれと同...
知性の持ち主でもある。エドマソドは兄妹のうちでも最もピ-...
また彼の人柄から言ってそれは不思議なことではなかった。-...
が後ろめたそうに表紙の文字を隠す本を、ぼんやりと見つめな...
マソドは、初めからこうだったろうか?つまり、彼らがこの世...
「確かに、我々はまごうことなき人間です。しかし、我々は...
十分に知っているでしょうか?」
ぽつりと、沈黙のなかでエドマソドが呟く。ピ-夕ーが驚い...
つめると、エドマソドは耐えかねたように顔を背け、横顔を見...
もまた意外に思いながら、ピ-夕ーは言った。
「人間とはアダムの息子とイブの娘、つまり我々のことだ。...
「ええ、そうです。でも、それだけでは十分とは言えません...
エドマソドがはっきりとそう答え、心を決めたように彼自身...
ピ-夕ーに向けて見せた。挑発するように。
「我々がどこから来て、どこへ行くのか。ナル二アの他の生き...
知りたいと思いませぬか?」
真直ぐに見つめてくるエドマソドの瞳はどこまでも黒く、真...
帯びている。弟のこんな側面に気付いたのは初めてだったので...
誠実に答えた。
「我々はそもそもナル二アに生まれた者ではない」
「ええ、私達はナル二アの者ではありません!ピ-夕ー、覚...
別の世界から来ました。あなたはそれを覚えているのですか?...
悲痛と言ってもいい声でエドマソドは叫び、それからすぐに...
伏せてみせる。図書室に敷き詰められた冷たい石が夕陽を浴び...
ナル二アの特別な絹糸で織られた二人の装束も輝く。ピ-夕ー...
いことに気付き、それと同時に彼らが昔いた世界についてもぼ...
「もちろん覚えているとも…ずっと昔…あそこにも争いがあった…...
あの場所から…。あの国…あれはなんという国だっただろう…。…...
口にする内に、ピ-夕ーの胸にはさざなみのように過去の記...
以前いた世界の食べ物、嗅いだ花の香り。しかしその記憶は曖...
出すことはできない。確かに事実なのに、すべてが夢のように...
ていると、エドマソドは堪り兼ねたように言った。
「私にもその名は思い出せません!私達のいたあの国の名前...
た人たちの--あの愛おしい人たちの名前!何も思い出せない...
るのです。私達が人の子だということすら。だって、私達自身...
もう既にわからなくなっているのですから!ピ-夕ー、あなた...
いられるのです?自分達のいた世界を、思い出せなくなってい...
一息に言うと、エドマソドは唇を引き結び、それからふいと...
でたらめに書棚に押し込んだ。ピ-夕ーは唖然としてそんな弟...
ル二アの王座についてもう随分長いことになるが、エドマソド...
ことは、めったになかったのだ。 ピ-夕ーはしばらく弟の張...
それからため息を吐いて言った。
「…確かに、私達は過去にいた世界について、だいぶん忘れて...
も思い出せない。そう、私達は、以前ここではない世界にいた...
ただの、…ただの子供として。--だが今の私には、私達がどう...
すらも思い出せない」
そしてそのことを不思議にすら思わない。そこまで言おうと...
憚られて、ピ-夕ーは口を噤んだ。エドマソドはちらりと視線...
つめてきた。
「本当に思い出せませんか?」
「本当に思い出せない。…そしてそれでいいのだろうという気...
ピ-夕ーが威厳を持って答えると、エドマソドは失望と崇拝...
かべて見せた。
「…ええ、私もそんな気がするのです」
「ではそれでいいのだ。それがアスランの思し召しなのだろ...
ピ-夕ーが弟の肩を摩るようにして言い聞かせると、エドマ...
してから、少し笑った。「…そうでしょうか」
「元の世界に帰りたいのか?弟よ」 ピ-夕ーは優しく弟に...
いつもは正義の君として崇められ、ナル二ア一の知性と分別を...
頼り無い一人の少年のように見えた。こんな気持ちには確かに...
怯えたようなエドマソドの肩を抱いていると、間近にいる弟は...
ピ-夕ーの瞳を見つめてきた。それは恐ろしいほど真直ぐで、...
エドマソドは細い声で呟いた。
「私にはもうそれすらもわかりません。ただ、…何か、恐ろし...
するのです。特に、こんな夕暮れ時に。自分が消えていくよう...
そこまで言って、エドマソドは白い整った並びの歯で薄い唇...
をぼんやりと見つめていた。自分の弟は確かに美しいのだとも...
に妃をめとっていないことを今さらに口惜しくも感じた。尤も...
迎えていなかったが、彼の弟が素晴らしい女性をめとっていな...
ら理不尽なように感じた。
「大丈夫だ。どうなろうと、そなたは消えていかない。永遠...
宥めるように答えると、エドマソドはきつい瞳で見返して来...
「その証は?そうと実証できることはあるのですか?」
「そなたは理屈くさいな。…ただ信じればよいと言うに」
思わず笑ってピ-夕ーがエドマソドの鼻を摘むと、エドマソ...
「信じるのは苦手です。…おそらく、私は永遠にあなたやル-シ...
すいません、予定よ長くなりそうです
そう、確かに、理に聡いその性質のせいで、エドマソドは受...
がクリスマスの贈り物を持たないのも、ナル二アの王座に就く...
どことなく影を背負っているのも、彼のその性質のせいだ。ピ...
思いながらも、何と返せばいいのかわからず、言葉を探してい...
その時だった。エドマソドがあの黒い瞳を不意に上げて、薄...
の良い唇がピ-夕ーの金色の睫を掠め、白いまぶたに押し付け...
れ、それから柔らかい唇に擦り付けるように重ねられる。若草...
ソドの吐息を感じながら、ピ-夕ーは驚いていた。
暫くして、キスが終わると、ピ-夕ーは慎重に聞いた。
「驚いたな。今のは…どういうつもりなんだ?」 俯いていた...
「キスだよ、ピ-夕ー。やあ、お互い、昔のような口調に戻...
そう言われてピ-夕ーは、確かに自分と弟の口調が、さっき...
どこか懐かしい、気心が知れたものになっているのを感じた。
こんな口調で話した頃もあった。曖昧なそんな記憶を辿って...
がまたピ-夕ーのそれに舞い戻り、彼の細い指がエドマソドの...
げ、なぞるように項へと下りて、ついには胸元まで落ちていく...
感じ、しかし弟の指先に宿った火のような官能を、抵抗もなく...
「…あの人たち…そう、パパとママが、寝る前によくしてくれ...
し付けるみたいなキス。…ママからはいつもはいいにおいがした...
みあっていた。僕は年上のピ-夕ーが妬ましくて、うっとうし...
…覚えてる?ピ-夕ー?」
冷たい石の上で、服を脱ぎあいながら、エドマソドが囁くよ...
少しずつ弱まり、その代わりに夜が押し寄せ、エドマソドの白...
に染まる。ピ-夕ーは自分自身すら気付かなかった欲望を暴か...
「…覚えてる。どうして忘れていたんだろう?違う、忘れてい...
…違う。でも、忘れてしまうところだった。…すべて…」
元いた世界も。自分達のことも。ピ-夕ーには信じられなか...
二アにいることと同じように、自分達は昔、まったく異なる世...
はもの言うけものもいなかったし、自分達はなんの功しも成し...
自分達を保護してくれる存在がいて、それでいながら現実に怯...
ほとんど忘れていたことに驚きを覚えたし、エドマソドの指先...
記憶が蘇ることにも驚いた。
ピ-夕ーにはわかった。エドマソドは、ピ-夕ーに過去を思...
自分自身もそれを思い出したいのだ。だからこそこんなことを...
「僕は君を、君たちを裏切った。それがこの国に来て、最初...
行為の終わりに、エドマソドが薄墨のような瞳を閉じて、静...
聞いて、まじまじと彼の弟を見つめた。理性と法で自らを律し...
落ち着いて物事に相対するエドマソドが、急に幼く見えた。ピ...
い世界にいた頃、よくそうしたように、きつく抱き締め、年上...
のしいほどの声音、けれどかつてのような幼い口調で。
「それでも、エド。君は僕の弟だ。ナル二アでも。ナル二アで...
やル-シィにとっても、君はいつだって兄妹だよ。そうじゃな...
そう言ってエドマソドの黒髪を撫でると、彼の弟は恐る恐る...
して、それがばれた後に、怒られることに怯えたような少年の...
過去を久方ぶりに思い出し、喉元に込み上げてくる笑いを噛み...
ナル二アであろうとどこであろうと、エドマソドは彼のかわい...
なっても変わらないだろう。エドマソドが自分達兄弟を、アス...
そうだったのだから。
「ときどき、僕がここにいるということが不思議になる。ピ...
かもしれないけど」
拗ねたように言う弟の額にキスをし、ピ-夕ーは服を着なが...
窓の外のナル二アの夜は輝き、咲き乱れる花々の香りは城の中...
とぎ話のように美しい国。そう、ここは本当におとぎのなかの...
自分達は未だ、かつて異世界でそうであったような子供なのか...
だからといってナル二アの価値は損なわれないだろう。ここで...
間の意味も消えない。ピ-夕ーとエドマソドが、兄弟だという...
れでいいではないか? ピ-夕ーは身なりを整え、しゃんと...
までとは違う、ナル二ア一の王に相応しい威厳を持って答えた...
も着ないまま、そんな兄を見上げている。
「ここはナル二ア。気高きアスラソの統べる国。そなたは我が...
分別を備えた、正義の君。固き絆によって我らは四つの王座を...
どんな真実があろう?」
そう答え、弟に手を差し伸べると、エドマソドは戸惑ったよ...
握ってきた。ピ-夕ーは微笑み、エドマソドもはにかんで見せ...
いつまでも、いつまでも、この幸せな夢が続かんことを。私は...
終
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)改行ちょっとおかしいかも…
お目汚しすまんです
#comment
終了行:
#title(なる似あ兄弟) [#d3f99760]
ナル荷亜国物語の兄弟に萌えたので投下。
弟×兄なのか兄×弟なのか自分でもよくわからない。
多分兄が受け。
ナル荷アで大人になった二人の話です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )シ ヤマモオチモイミモナイヨ
みかげ石でできた階段を昇り、四つの王笏が象られた象牙の...
光がピ-夕ーの瞳を刺した。ケア・パラべルの城でも最上階に...
海から照り返す夕陽が満ちあふれ、そこここが淡く輝いている...
夕ーの弟であり、ここナル二アではピ-夕ーに次ぐ二の王でも...
を避けるように書棚の影に立ち、それに寄り掛かるような姿勢...
れを見てピ-夕ーは思わず微笑んだ。--予想通りだった。
「エドマソド、我が弟よ。世の終わりまでそなたがいる場所...
--この図書室だ」
ピ-夕ーが軽く両腕を開きながら歩み寄り、そう呼び掛けると...
線を上げて微笑み返した。
「兄上、あなたがここにいらっしゃるのは珍しい。何かあっ...
「そなたに判断を仰ぎたい裁判がある。正義の君よ」
ピ-夕ーがそう言いながら弟が持っている本の表紙を覗こう...
さりげなく本を閉じ、肩を竦めてみせた。
「私にできることでしたら何なりと。ピ-夕ー、ナル二ア一...
エドマソドはいつもこうだった。自分の感情をあらわにせず...
抱強く耳を傾け、冷静で確かな答えを返してくれる。年下なが...
-夕ーは今日も頼もしく感じながらも、心の内を明かしてくれ...
考えてみれば、この弟に年下らしく甘えられたことなど、もう...
は寡黙なほど思慮深く、めったに自分の意見を口にしてくれな...
「--何を読んでいたのだ?」 森で起きた裁判の話をする...
ーが聞くと、エドマソドは弓形の眉を片方だけ上げ、首を降っ...
「何も。まつりごととはほとんど関係のないことです」
「だが、書物の喜びとはそういうものだ。この兄にそれを分け...
ピ-夕ーが半ば強引に背表紙を押し上げ、題名を見せるよう...
は珍しく動揺したような表情の後で、背表紙に並ぶ文字列を見...
間と彼らの世界についての神話』。ピ-夕ーはそれを見て、少...
ドマソドは叱られる前の子供のように、目を伏せてじっとして...
「…これはまた、興味深いな。人間が人間についての神話の本...
暫くしてから、低く、絞り出すような、しかし無理矢理笑い...
エドマソドが持っている本の背表紙を指で弾いた。エドマソド...
げたかと思うと、またすぐに伏せて見せる。頬に長いまつげの...
がら、ピ-夕ーは次の言葉を考えていた。
ピ-夕ーや彼の兄妹が、このナル二アに来たのはもう随分前...
前のことなので、彼ら自身にもはっきりと思
い出せないほどだ。確かその頃には、末っ子のル-シィは、膝...
スを着ていたし、例えばエドマソドも半ズボンを履いていた。...
ない世界で暮らしていた頃。だがいつのまにか彼らは成長し、...
かいう呼び名を冠され、誰もが認める名君になっていたのだっ...
目の前にいる弟は鬚まで生やし、非の打ちどころのない騎士...
ではピ-夕ーに匹敵するほどの剣の名手であり、またそれと同...
知性の持ち主でもある。エドマソドは兄妹のうちでも最もピ-...
また彼の人柄から言ってそれは不思議なことではなかった。-...
が後ろめたそうに表紙の文字を隠す本を、ぼんやりと見つめな...
マソドは、初めからこうだったろうか?つまり、彼らがこの世...
「確かに、我々はまごうことなき人間です。しかし、我々は...
十分に知っているでしょうか?」
ぽつりと、沈黙のなかでエドマソドが呟く。ピ-夕ーが驚い...
つめると、エドマソドは耐えかねたように顔を背け、横顔を見...
もまた意外に思いながら、ピ-夕ーは言った。
「人間とはアダムの息子とイブの娘、つまり我々のことだ。...
「ええ、そうです。でも、それだけでは十分とは言えません...
エドマソドがはっきりとそう答え、心を決めたように彼自身...
ピ-夕ーに向けて見せた。挑発するように。
「我々がどこから来て、どこへ行くのか。ナル二アの他の生き...
知りたいと思いませぬか?」
真直ぐに見つめてくるエドマソドの瞳はどこまでも黒く、真...
帯びている。弟のこんな側面に気付いたのは初めてだったので...
誠実に答えた。
「我々はそもそもナル二アに生まれた者ではない」
「ええ、私達はナル二アの者ではありません!ピ-夕ー、覚...
別の世界から来ました。あなたはそれを覚えているのですか?...
悲痛と言ってもいい声でエドマソドは叫び、それからすぐに...
伏せてみせる。図書室に敷き詰められた冷たい石が夕陽を浴び...
ナル二アの特別な絹糸で織られた二人の装束も輝く。ピ-夕ー...
いことに気付き、それと同時に彼らが昔いた世界についてもぼ...
「もちろん覚えているとも…ずっと昔…あそこにも争いがあった…...
あの場所から…。あの国…あれはなんという国だっただろう…。…...
口にする内に、ピ-夕ーの胸にはさざなみのように過去の記...
以前いた世界の食べ物、嗅いだ花の香り。しかしその記憶は曖...
出すことはできない。確かに事実なのに、すべてが夢のように...
ていると、エドマソドは堪り兼ねたように言った。
「私にもその名は思い出せません!私達のいたあの国の名前...
た人たちの--あの愛おしい人たちの名前!何も思い出せない...
るのです。私達が人の子だということすら。だって、私達自身...
もう既にわからなくなっているのですから!ピ-夕ー、あなた...
いられるのです?自分達のいた世界を、思い出せなくなってい...
一息に言うと、エドマソドは唇を引き結び、それからふいと...
でたらめに書棚に押し込んだ。ピ-夕ーは唖然としてそんな弟...
ル二アの王座についてもう随分長いことになるが、エドマソド...
ことは、めったになかったのだ。 ピ-夕ーはしばらく弟の張...
それからため息を吐いて言った。
「…確かに、私達は過去にいた世界について、だいぶん忘れて...
も思い出せない。そう、私達は、以前ここではない世界にいた...
ただの、…ただの子供として。--だが今の私には、私達がどう...
すらも思い出せない」
そしてそのことを不思議にすら思わない。そこまで言おうと...
憚られて、ピ-夕ーは口を噤んだ。エドマソドはちらりと視線...
つめてきた。
「本当に思い出せませんか?」
「本当に思い出せない。…そしてそれでいいのだろうという気...
ピ-夕ーが威厳を持って答えると、エドマソドは失望と崇拝...
かべて見せた。
「…ええ、私もそんな気がするのです」
「ではそれでいいのだ。それがアスランの思し召しなのだろ...
ピ-夕ーが弟の肩を摩るようにして言い聞かせると、エドマ...
してから、少し笑った。「…そうでしょうか」
「元の世界に帰りたいのか?弟よ」 ピ-夕ーは優しく弟に...
いつもは正義の君として崇められ、ナル二ア一の知性と分別を...
頼り無い一人の少年のように見えた。こんな気持ちには確かに...
怯えたようなエドマソドの肩を抱いていると、間近にいる弟は...
ピ-夕ーの瞳を見つめてきた。それは恐ろしいほど真直ぐで、...
エドマソドは細い声で呟いた。
「私にはもうそれすらもわかりません。ただ、…何か、恐ろし...
するのです。特に、こんな夕暮れ時に。自分が消えていくよう...
そこまで言って、エドマソドは白い整った並びの歯で薄い唇...
をぼんやりと見つめていた。自分の弟は確かに美しいのだとも...
に妃をめとっていないことを今さらに口惜しくも感じた。尤も...
迎えていなかったが、彼の弟が素晴らしい女性をめとっていな...
ら理不尽なように感じた。
「大丈夫だ。どうなろうと、そなたは消えていかない。永遠...
宥めるように答えると、エドマソドはきつい瞳で見返して来...
「その証は?そうと実証できることはあるのですか?」
「そなたは理屈くさいな。…ただ信じればよいと言うに」
思わず笑ってピ-夕ーがエドマソドの鼻を摘むと、エドマソ...
「信じるのは苦手です。…おそらく、私は永遠にあなたやル-シ...
すいません、予定よ長くなりそうです
そう、確かに、理に聡いその性質のせいで、エドマソドは受...
がクリスマスの贈り物を持たないのも、ナル二アの王座に就く...
どことなく影を背負っているのも、彼のその性質のせいだ。ピ...
思いながらも、何と返せばいいのかわからず、言葉を探してい...
その時だった。エドマソドがあの黒い瞳を不意に上げて、薄...
の良い唇がピ-夕ーの金色の睫を掠め、白いまぶたに押し付け...
れ、それから柔らかい唇に擦り付けるように重ねられる。若草...
ソドの吐息を感じながら、ピ-夕ーは驚いていた。
暫くして、キスが終わると、ピ-夕ーは慎重に聞いた。
「驚いたな。今のは…どういうつもりなんだ?」 俯いていた...
「キスだよ、ピ-夕ー。やあ、お互い、昔のような口調に戻...
そう言われてピ-夕ーは、確かに自分と弟の口調が、さっき...
どこか懐かしい、気心が知れたものになっているのを感じた。
こんな口調で話した頃もあった。曖昧なそんな記憶を辿って...
がまたピ-夕ーのそれに舞い戻り、彼の細い指がエドマソドの...
げ、なぞるように項へと下りて、ついには胸元まで落ちていく...
感じ、しかし弟の指先に宿った火のような官能を、抵抗もなく...
「…あの人たち…そう、パパとママが、寝る前によくしてくれ...
し付けるみたいなキス。…ママからはいつもはいいにおいがした...
みあっていた。僕は年上のピ-夕ーが妬ましくて、うっとうし...
…覚えてる?ピ-夕ー?」
冷たい石の上で、服を脱ぎあいながら、エドマソドが囁くよ...
少しずつ弱まり、その代わりに夜が押し寄せ、エドマソドの白...
に染まる。ピ-夕ーは自分自身すら気付かなかった欲望を暴か...
「…覚えてる。どうして忘れていたんだろう?違う、忘れてい...
…違う。でも、忘れてしまうところだった。…すべて…」
元いた世界も。自分達のことも。ピ-夕ーには信じられなか...
二アにいることと同じように、自分達は昔、まったく異なる世...
はもの言うけものもいなかったし、自分達はなんの功しも成し...
自分達を保護してくれる存在がいて、それでいながら現実に怯...
ほとんど忘れていたことに驚きを覚えたし、エドマソドの指先...
記憶が蘇ることにも驚いた。
ピ-夕ーにはわかった。エドマソドは、ピ-夕ーに過去を思...
自分自身もそれを思い出したいのだ。だからこそこんなことを...
「僕は君を、君たちを裏切った。それがこの国に来て、最初...
行為の終わりに、エドマソドが薄墨のような瞳を閉じて、静...
聞いて、まじまじと彼の弟を見つめた。理性と法で自らを律し...
落ち着いて物事に相対するエドマソドが、急に幼く見えた。ピ...
い世界にいた頃、よくそうしたように、きつく抱き締め、年上...
のしいほどの声音、けれどかつてのような幼い口調で。
「それでも、エド。君は僕の弟だ。ナル二アでも。ナル二アで...
やル-シィにとっても、君はいつだって兄妹だよ。そうじゃな...
そう言ってエドマソドの黒髪を撫でると、彼の弟は恐る恐る...
して、それがばれた後に、怒られることに怯えたような少年の...
過去を久方ぶりに思い出し、喉元に込み上げてくる笑いを噛み...
ナル二アであろうとどこであろうと、エドマソドは彼のかわい...
なっても変わらないだろう。エドマソドが自分達兄弟を、アス...
そうだったのだから。
「ときどき、僕がここにいるということが不思議になる。ピ...
かもしれないけど」
拗ねたように言う弟の額にキスをし、ピ-夕ーは服を着なが...
窓の外のナル二アの夜は輝き、咲き乱れる花々の香りは城の中...
とぎ話のように美しい国。そう、ここは本当におとぎのなかの...
自分達は未だ、かつて異世界でそうであったような子供なのか...
だからといってナル二アの価値は損なわれないだろう。ここで...
間の意味も消えない。ピ-夕ーとエドマソドが、兄弟だという...
れでいいではないか? ピ-夕ーは身なりを整え、しゃんと...
までとは違う、ナル二ア一の王に相応しい威厳を持って答えた...
も着ないまま、そんな兄を見上げている。
「ここはナル二ア。気高きアスラソの統べる国。そなたは我が...
分別を備えた、正義の君。固き絆によって我らは四つの王座を...
どんな真実があろう?」
そう答え、弟に手を差し伸べると、エドマソドは戸惑ったよ...
握ってきた。ピ-夕ーは微笑み、エドマソドもはにかんで見せ...
いつまでも、いつまでも、この幸せな夢が続かんことを。私は...
終
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)改行ちょっとおかしいかも…
お目汚しすまんです
#comment
ページ名:
ページ新規作成
新しいページはこちらから投稿できます。
作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
ページ新規作成: