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#title(ラルアル) [#e575a728]
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
| 悪魔城ラルフ×アルカ...
____________ \ / ̄ ̄ ̄...
| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| >>403-...
| | | | ...
| | |> PLAY. | | ...
| | | | ∧...
| | | | ピッ (´...
| | | | ◇⊂ ...
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| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(...
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄...
◆
「──おい」
茂みの奥で、何かがかすかに身じろぎする気配がした。
「いいか。選択肢は三つある」
と、ラルフは言葉を続けた。
「一つ。自分の足で立って、俺といっしょに歩いて火のそばに...
こと。粉袋みたいにな。三つ。俺に襟首つかまれて引きずられ...
ん。十数えるだけ待ってやるから、その間に好きなのを選べ、...
「……放っておいてくれ」
細い声がした。
「例外は認めんと言ったぞ。ついでに言えば拒否もなしだ。今...
十、と数えてラルフが茂みの向こうに手を伸ばしたとたん、がさ...
木々の間から漏れる月光がきらきらと銀髪の上に踊る。
「よし。立ったな。あとは歩くだけだ。こっちへ来い。ほら」
立っただけで、あとは動こうとしないアルカードを、腕をつかん...
ろめいて、倒れそうになりながら出てきた。
そのまま腕をつかんで引っぱっていく。アルカードはまるで人形...
すべての力を使い果たしたとでも言うように、されるがままに...
まさにその通りなんだろうな、とラルフは苦く思った。
普段通りのアルカードなら、夜の森でラルフを撒くことくらい児戯に...
ら、ラルフがむなしくあちらの木陰こちらの窪みと探しまわってい...
いただろう。
おそらく自分でも、どうして、どこへ、どうやって行くのか...
れた茂みと折れた小枝、乱暴にかき分けられた灌木のあとは、...
夢中で逃げるだけ逃げて、跡が残るどうかなどと思いすら及ば...
兎のように。茂みの奥に息をひそめて。
アルカードが遠くへ行っていなかったことを、ラルフは、まだ望みが...
ラルフから、人間から逃げるつもりにはなっていない。
たとえ混乱してとりあえず近くの物影に隠れただけだとして...
しに来てくれることを、心のどこかで期待していてほしかった...
呼び声がしっかり耳に届いていたことを、ラルフは信じていたかっ...
焚き火が見えてきた。馬が鼻を鳴らす音がする。
「座れ」
アルカードは座った。まるで糸を切られた人形のように、すとん...
ラルフは馬の荷を探り、毛布を出してアルカードの上に放った。
「それを身体に巻け。冷え切ってるだろうが。熱でも出たら厄...
動かない。
焦れて、ラルフは自分で毛布を取ってアルカードを頭からぐるぐる巻...
かぶせる。
されるがままに、アルカードは黙ってうなだれていた。
焚き火に枝を放りこみ、火をかき立てる。小さくなっていた...
はじめた。荷を探ってワインの革袋を取りだし、半分ほど残っ...
「飲め。本当はもう少し強い奴が欲しいが、今はとにかくこれ...
やはり、アルカードは動かなかった。
ため息をついて、ラルフは手を下ろした。革袋を脇へ置く。
「──あの、街で」
低い声で言った。
「街で、広場に記念碑が建てられているのを見た」
アルカードの肩が、それとわかるほど大きくびくりと跳ねた。
「なんで言わなかった。あそこが……その、場所だと」
母親が人間の手で焼き殺された場所だと、なぜ言ってくれな...
やり場のない怒りと苦い思いを噛みしめながら、ラルフは続けた...
「俺が、信用できなかったか」
「違う!」
とつぜん、アルカードは声をあげた。
ラルフが驚くほどの激しい声だった。もう一度「違う」と小さく...
額を覆った。何重にも巻かれた毛布の下で、その身体はしだい...
「どう……していいのか、わからなかった」
言葉の使い方を忘れてしまったかのように、アルカードの声はか...
唇が細かく震え、一つ言葉を形づくるにも苦労している。白...
らせる闇を追いはらう役にはたっていないようだった。
「ただ──恐ろしかった。だから、逃げた。どこへ行くつもりだ...
ていなかった、のだと思う」
ラルフは黙ってアルカードが先を続けるのを待った。
「──この数日、おまえの顔を見ることすら怖かった」
長い間をおいてから、ぽつりとアルカードは言った。
「眠れば、夢を見た。あの日の夢を。おまえと目を合わせたら...
しくて、顔すら上げられなかった」
むきになってラルフは言った。
「なぜ、そんなことが怖いんだ。あれはおまえが悪いんじゃな...
人間がまずことを起こしたのだと、ラルフはほぼ確信していた。...
などであったはずがない。
店の亭主も、『魔女は薬だと称して毒を』と言っていた。お...
配って歩いていたのだろう。それを嫉んだ者か誰かが、当局に...
の賢女が、高い金をとる医者から妬まれて魔女扱いされるのは...
「……夢を、見る」
アルカードは小さくかぶりを振った。
「普段ならば、遠ざけておける。だが、あの場所に近づくにつ...
の揺れを感じて、小魔たちが集まってくる……森から……私のとこ...
「だから、それはおまえのせいじゃないと言っているだろう」
苛々とラルフは口をはさんだ。
「だいたい、あんな雑魚を振り払えないくらい弱っていたんだ...
だ。あんな奴ら、おまえなら剣を抜くまでもなく消しとばして」
「あの者たちを責めないでやってくれ」
はじめてアルカードは目をあげてラルフを見た。必死の顔色だった。
「あれらはただ、私を慰めようとして集まってきていただけだ...
解力しか持っていない。母を殺した者たちが罰せられるところ...
ラルフは言葉を失った。
ではあれは、アルカードを襲っていたのではなく、慕ってそばに...
だが、それも当然のことかもしれない。アルカードは魔王の息子...
は主も同然だろう。主が苦しんでいると知れば、忠実なしもべ...
なんてこった、と胸の中でラルフは毒づいた。
結局、アルカードを心配してくれたのは妖魔たちのほうだったと...
り顔に記念碑まで建てている間に、闇に置き捨てられた本当に...
のような魔だったとは。
「一匹一匹はごく弱い、害のない者たちだ。人に夢を見せるの...
ょせん妖魔なのだ、血を好む。
──少しでも眠れば、彼らが夢に忍び入ってくる」
額に手をあてて、アルカードは低く呻いた。
「手に手に、人間の首や、血まみれの手足や、眼球や内臓を捧...
『公子サマヨロコブ? ヨロコブ?』と口々にさえずりながら...
母を灼いた炎のまわりにいた人間たちを、一人ずつ。じっくり...
唇が震え、白くなるほど噛みしめられた。
何か言ってやりたい、言わなければと痛切にラルフは感じた。
だが、いくら頭を探っても、言うべき言葉は見つからなかっ...
た。かたく膝を抱え、小さく丸くなったアルカードは、そのままそ...
「たまら、ないのは」
と、アルカードはようやく言った。
「私の中にも、確実に彼らと同じものが流れていることだ。血...
私は、父の子でもある。
見ただろう。先刻の、私の顔を」
「あれは──」
「あれが、私だ」
消え入りそうな声で、だが、はっきりとアルカードは言った。
「父から受け継いだ、私の闇の顔だ。
彼らが夜ごと差し出すものに嫌悪を感じながら、確実にそれ...
ば、彼らに混じって血をすすり、肉を引き裂く行為に酔いしれ...
それでも、感触は残る。あの感触と──匂いと──血の、味」
ひろげた手のひらにアルカードは目を落とした。夢の中の血が、...
るように。
「本当は、あれこそが真の私なのかもしれない」
もれたのは、もはやラルフに向けられた返答ではなかった。アルカー...
向かって告げていた。
「いつも怖かった。人が私の顔を見るたびに、あの顔が、闇の...
つも、恐ろしくてならなかった。
ドラキュラ城が崩壊したとき、私は、自分も死ぬものだと思って...
がれていて、城が消えれば、私の命も消えるのだと。
だが、そうではなかった。理由もわからないまま、私は生き...
白い指が固く握りしめられた。細い爪が手のひらに、棘のよ...
「呪われた血と父殺しの罪を負って、私にはもう成すべき事も...
私は、生きているべきではなかった。おまえの目を傷つけた...
れればよかったのだ。そうすれば今ごろは、きっと──」
その言葉をさえぎるように、ラルフが動いた。
アルカードの頭からかぶせていた毛布を有無を言わさずはぎとる...
と寝転がった。
二人分の身体をくるみこむように、毛布を巻きつける。アルカート...
「なんだ。何をする」
「やかましい」
歯をむいてラルフは唸った。
「寝ていないからそんなつまらんことをうだうだ考えるように...
もう黙っておとなしく寝ろ。見ろ、ちっとも暖まってないだろ...
冷たさについても細さについても、とラルフはこっそり思った。
重ね着したマントや上着であまり気づかなかったが、腕の中...
な方だが、それでも、華奢な肩が両腕の輪にすっぽり収まって...
きりなしにこまかく震えている。
「……革の匂いがする」
胸の中からアルカードがくぐもった声を出した。
「悪かったな。鞭を扱うんで染みついてるんだ。臭けりゃ我慢...
「いや。臭くはない。気が落ちつく」
長い睫毛がふと降りた。
「──温かい」
ラルフは黙って細い背にまわした腕に力をこめた。
言うべき言葉が見つからないなら、態度で示してやればいい...
この世には、妖魔以外にもおまえを心配しているものがいる...
そばにいて、気にかけているものがいるということ、ただ、...
いることを、示してやれればそれでいい。
「ベルモンド」
またベルモンドか、とラルフは思った。「なんだ」
「私は、人か」
アルカードは言った。
「それとも、魔か」
息がかかるほどの間近から、蒼い瞳が見つめていた。
焚き火の光を映しているのか、虹彩がわずかに金の輝きを帯...
「そんなもの、どっちだっていい」
言って、ラルフは銀髪の小さな頭を強く胸に押しつけた。
「人でも魔でも、そんなことは俺には関係ない。おまえは、お...
おまえがおまえでさえあれば、どっちだろうと俺はかまわな...
くて良かったと思うし、今、ここにいてくれて嬉しいと、心底...
いは安いものだ。それも、目はなくさずに傷あと一つですんだ...
「……戯れ言を」
アルカードは少し笑ったようだった。
小さく身じろいで、ラルフの腕にもぐり込む。降ったばかりの雪...
腕枕をしてやって、ラルフは、焚き火の向こうの闇に目をやった...
ちかちかといくつかの赤い光が、まばたきするように光って...
来てみろ、来られるものなら、と挑戦的にラルフは呟いた。
その夢とやらを俺にも見せてみろ。俺はその中へまっすぐ入...
ぱり出してやる。
さっきのように、肩にかついでも、襟首をつかんでも、悪夢...
それでも、俺のそばからアルカードを連れ去ることができるとい...
赤い光は徐々に数を減らし、やがて見えなくなった。
アルカードはラルフの胸に頭をもたせかけて、いつの間にか、静かな...
◆
翌朝は晴れた空が広がった。
「ここから、西へ迂回しよう」
手際よく馬に荷物をくくりつけながら、ラルフは言った。
「少し遠回りになるが、道はそれほど悪くないし、人里もある...
商人から食料と酒を買おう、それから馬の塩もまた少し要るな...
栗毛の首をなでてやると、馬は鼻を鳴らして頭をはね上げ、...
「……私は、ここで待っていてもかまわないのだが」
昨夜ひと晩よく眠ったおかげか、アルカードはかなり顔色が良く...
手持ちぶさたそうにしている。
「なに? 馬鹿げたことを言うな」
振り向いて、ラルフはぎろりと目を剥いた。
「今からまた俺にあそこへ行って、またここまで戻れっていう...
無駄だ。いざとなれば食料くらい、森に入って何日か狩りをす...
ろうが」
「しかし、ベルモンド──」
「待て。それだ」
ラルフはぴたりとアルカードに指をつきつけた。
「俺の名はラルフだと、何度言ったら呑みこめるんだ? 次にベルモ...
ラルフだ。ラ-ル-フだ。言えないわけがないだろう、言ってみろ、...
「……ラ、ルフ」
「もう一度」
「ラル、フ」
「もう一度だ」
「──ラルフ……」
「よし。見ろ、やればできるだろうが」
ラルフはさっさと馬を牽いて街道に上がっていった。
「もう一ぺんでも俺をベルモンド呼ばわりしてみろ、本当にぶん殴...
やらん。これからはずっとラルフと呼べ、わかったか」
「わかった」
「ラルフだ」
「ラルフ」
「よし」
満足して、ラルフは美しい連れに手を差しのべた。
「さ、行くぞ、アルカード。なにをぐずぐずしてる? ベルモンドの領...
アルカードは差し出された手に、ふと、まぶしげに目を細めた。
肩越しにちらりと振りかえる。焚き火のあとが残った草地の...
と静まりかえっている。
暖かな陽光がさんさんと降りそそいでいた。
「ああ、行こう。──ラルフ」
青空の色をほほえむ瞳に宿して、アルカードはラルフの手を取った。
どこかで羽ばたく音がした。
馬を並べて街道を去っていくふたりの旅人の背中を、森のも...
りとまたたいて見送っていた。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
…またはみ出したorz
- すてきやな -- &new{2014-01-03 (金) 22:36:24};
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| 悪魔城ラルフ×アルカ...
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◆
「──おい」
茂みの奥で、何かがかすかに身じろぎする気配がした。
「いいか。選択肢は三つある」
と、ラルフは言葉を続けた。
「一つ。自分の足で立って、俺といっしょに歩いて火のそばに...
こと。粉袋みたいにな。三つ。俺に襟首つかまれて引きずられ...
ん。十数えるだけ待ってやるから、その間に好きなのを選べ、...
「……放っておいてくれ」
細い声がした。
「例外は認めんと言ったぞ。ついでに言えば拒否もなしだ。今...
十、と数えてラルフが茂みの向こうに手を伸ばしたとたん、がさ...
木々の間から漏れる月光がきらきらと銀髪の上に踊る。
「よし。立ったな。あとは歩くだけだ。こっちへ来い。ほら」
立っただけで、あとは動こうとしないアルカードを、腕をつかん...
ろめいて、倒れそうになりながら出てきた。
そのまま腕をつかんで引っぱっていく。アルカードはまるで人形...
すべての力を使い果たしたとでも言うように、されるがままに...
まさにその通りなんだろうな、とラルフは苦く思った。
普段通りのアルカードなら、夜の森でラルフを撒くことくらい児戯に...
ら、ラルフがむなしくあちらの木陰こちらの窪みと探しまわってい...
いただろう。
おそらく自分でも、どうして、どこへ、どうやって行くのか...
れた茂みと折れた小枝、乱暴にかき分けられた灌木のあとは、...
夢中で逃げるだけ逃げて、跡が残るどうかなどと思いすら及ば...
兎のように。茂みの奥に息をひそめて。
アルカードが遠くへ行っていなかったことを、ラルフは、まだ望みが...
ラルフから、人間から逃げるつもりにはなっていない。
たとえ混乱してとりあえず近くの物影に隠れただけだとして...
しに来てくれることを、心のどこかで期待していてほしかった...
呼び声がしっかり耳に届いていたことを、ラルフは信じていたかっ...
焚き火が見えてきた。馬が鼻を鳴らす音がする。
「座れ」
アルカードは座った。まるで糸を切られた人形のように、すとん...
ラルフは馬の荷を探り、毛布を出してアルカードの上に放った。
「それを身体に巻け。冷え切ってるだろうが。熱でも出たら厄...
動かない。
焦れて、ラルフは自分で毛布を取ってアルカードを頭からぐるぐる巻...
かぶせる。
されるがままに、アルカードは黙ってうなだれていた。
焚き火に枝を放りこみ、火をかき立てる。小さくなっていた...
はじめた。荷を探ってワインの革袋を取りだし、半分ほど残っ...
「飲め。本当はもう少し強い奴が欲しいが、今はとにかくこれ...
やはり、アルカードは動かなかった。
ため息をついて、ラルフは手を下ろした。革袋を脇へ置く。
「──あの、街で」
低い声で言った。
「街で、広場に記念碑が建てられているのを見た」
アルカードの肩が、それとわかるほど大きくびくりと跳ねた。
「なんで言わなかった。あそこが……その、場所だと」
母親が人間の手で焼き殺された場所だと、なぜ言ってくれな...
やり場のない怒りと苦い思いを噛みしめながら、ラルフは続けた...
「俺が、信用できなかったか」
「違う!」
とつぜん、アルカードは声をあげた。
ラルフが驚くほどの激しい声だった。もう一度「違う」と小さく...
額を覆った。何重にも巻かれた毛布の下で、その身体はしだい...
「どう……していいのか、わからなかった」
言葉の使い方を忘れてしまったかのように、アルカードの声はか...
唇が細かく震え、一つ言葉を形づくるにも苦労している。白...
らせる闇を追いはらう役にはたっていないようだった。
「ただ──恐ろしかった。だから、逃げた。どこへ行くつもりだ...
ていなかった、のだと思う」
ラルフは黙ってアルカードが先を続けるのを待った。
「──この数日、おまえの顔を見ることすら怖かった」
長い間をおいてから、ぽつりとアルカードは言った。
「眠れば、夢を見た。あの日の夢を。おまえと目を合わせたら...
しくて、顔すら上げられなかった」
むきになってラルフは言った。
「なぜ、そんなことが怖いんだ。あれはおまえが悪いんじゃな...
人間がまずことを起こしたのだと、ラルフはほぼ確信していた。...
などであったはずがない。
店の亭主も、『魔女は薬だと称して毒を』と言っていた。お...
配って歩いていたのだろう。それを嫉んだ者か誰かが、当局に...
の賢女が、高い金をとる医者から妬まれて魔女扱いされるのは...
「……夢を、見る」
アルカードは小さくかぶりを振った。
「普段ならば、遠ざけておける。だが、あの場所に近づくにつ...
の揺れを感じて、小魔たちが集まってくる……森から……私のとこ...
「だから、それはおまえのせいじゃないと言っているだろう」
苛々とラルフは口をはさんだ。
「だいたい、あんな雑魚を振り払えないくらい弱っていたんだ...
だ。あんな奴ら、おまえなら剣を抜くまでもなく消しとばして」
「あの者たちを責めないでやってくれ」
はじめてアルカードは目をあげてラルフを見た。必死の顔色だった。
「あれらはただ、私を慰めようとして集まってきていただけだ...
解力しか持っていない。母を殺した者たちが罰せられるところ...
ラルフは言葉を失った。
ではあれは、アルカードを襲っていたのではなく、慕ってそばに...
だが、それも当然のことかもしれない。アルカードは魔王の息子...
は主も同然だろう。主が苦しんでいると知れば、忠実なしもべ...
なんてこった、と胸の中でラルフは毒づいた。
結局、アルカードを心配してくれたのは妖魔たちのほうだったと...
り顔に記念碑まで建てている間に、闇に置き捨てられた本当に...
のような魔だったとは。
「一匹一匹はごく弱い、害のない者たちだ。人に夢を見せるの...
ょせん妖魔なのだ、血を好む。
──少しでも眠れば、彼らが夢に忍び入ってくる」
額に手をあてて、アルカードは低く呻いた。
「手に手に、人間の首や、血まみれの手足や、眼球や内臓を捧...
『公子サマヨロコブ? ヨロコブ?』と口々にさえずりながら...
母を灼いた炎のまわりにいた人間たちを、一人ずつ。じっくり...
唇が震え、白くなるほど噛みしめられた。
何か言ってやりたい、言わなければと痛切にラルフは感じた。
だが、いくら頭を探っても、言うべき言葉は見つからなかっ...
た。かたく膝を抱え、小さく丸くなったアルカードは、そのままそ...
「たまら、ないのは」
と、アルカードはようやく言った。
「私の中にも、確実に彼らと同じものが流れていることだ。血...
私は、父の子でもある。
見ただろう。先刻の、私の顔を」
「あれは──」
「あれが、私だ」
消え入りそうな声で、だが、はっきりとアルカードは言った。
「父から受け継いだ、私の闇の顔だ。
彼らが夜ごと差し出すものに嫌悪を感じながら、確実にそれ...
ば、彼らに混じって血をすすり、肉を引き裂く行為に酔いしれ...
それでも、感触は残る。あの感触と──匂いと──血の、味」
ひろげた手のひらにアルカードは目を落とした。夢の中の血が、...
るように。
「本当は、あれこそが真の私なのかもしれない」
もれたのは、もはやラルフに向けられた返答ではなかった。アルカー...
向かって告げていた。
「いつも怖かった。人が私の顔を見るたびに、あの顔が、闇の...
つも、恐ろしくてならなかった。
ドラキュラ城が崩壊したとき、私は、自分も死ぬものだと思って...
がれていて、城が消えれば、私の命も消えるのだと。
だが、そうではなかった。理由もわからないまま、私は生き...
白い指が固く握りしめられた。細い爪が手のひらに、棘のよ...
「呪われた血と父殺しの罪を負って、私にはもう成すべき事も...
私は、生きているべきではなかった。おまえの目を傷つけた...
れればよかったのだ。そうすれば今ごろは、きっと──」
その言葉をさえぎるように、ラルフが動いた。
アルカードの頭からかぶせていた毛布を有無を言わさずはぎとる...
と寝転がった。
二人分の身体をくるみこむように、毛布を巻きつける。アルカート...
「なんだ。何をする」
「やかましい」
歯をむいてラルフは唸った。
「寝ていないからそんなつまらんことをうだうだ考えるように...
もう黙っておとなしく寝ろ。見ろ、ちっとも暖まってないだろ...
冷たさについても細さについても、とラルフはこっそり思った。
重ね着したマントや上着であまり気づかなかったが、腕の中...
な方だが、それでも、華奢な肩が両腕の輪にすっぽり収まって...
きりなしにこまかく震えている。
「……革の匂いがする」
胸の中からアルカードがくぐもった声を出した。
「悪かったな。鞭を扱うんで染みついてるんだ。臭けりゃ我慢...
「いや。臭くはない。気が落ちつく」
長い睫毛がふと降りた。
「──温かい」
ラルフは黙って細い背にまわした腕に力をこめた。
言うべき言葉が見つからないなら、態度で示してやればいい...
この世には、妖魔以外にもおまえを心配しているものがいる...
そばにいて、気にかけているものがいるということ、ただ、...
いることを、示してやれればそれでいい。
「ベルモンド」
またベルモンドか、とラルフは思った。「なんだ」
「私は、人か」
アルカードは言った。
「それとも、魔か」
息がかかるほどの間近から、蒼い瞳が見つめていた。
焚き火の光を映しているのか、虹彩がわずかに金の輝きを帯...
「そんなもの、どっちだっていい」
言って、ラルフは銀髪の小さな頭を強く胸に押しつけた。
「人でも魔でも、そんなことは俺には関係ない。おまえは、お...
おまえがおまえでさえあれば、どっちだろうと俺はかまわな...
くて良かったと思うし、今、ここにいてくれて嬉しいと、心底...
いは安いものだ。それも、目はなくさずに傷あと一つですんだ...
「……戯れ言を」
アルカードは少し笑ったようだった。
小さく身じろいで、ラルフの腕にもぐり込む。降ったばかりの雪...
腕枕をしてやって、ラルフは、焚き火の向こうの闇に目をやった...
ちかちかといくつかの赤い光が、まばたきするように光って...
来てみろ、来られるものなら、と挑戦的にラルフは呟いた。
その夢とやらを俺にも見せてみろ。俺はその中へまっすぐ入...
ぱり出してやる。
さっきのように、肩にかついでも、襟首をつかんでも、悪夢...
それでも、俺のそばからアルカードを連れ去ることができるとい...
赤い光は徐々に数を減らし、やがて見えなくなった。
アルカードはラルフの胸に頭をもたせかけて、いつの間にか、静かな...
◆
翌朝は晴れた空が広がった。
「ここから、西へ迂回しよう」
手際よく馬に荷物をくくりつけながら、ラルフは言った。
「少し遠回りになるが、道はそれほど悪くないし、人里もある...
商人から食料と酒を買おう、それから馬の塩もまた少し要るな...
栗毛の首をなでてやると、馬は鼻を鳴らして頭をはね上げ、...
「……私は、ここで待っていてもかまわないのだが」
昨夜ひと晩よく眠ったおかげか、アルカードはかなり顔色が良く...
手持ちぶさたそうにしている。
「なに? 馬鹿げたことを言うな」
振り向いて、ラルフはぎろりと目を剥いた。
「今からまた俺にあそこへ行って、またここまで戻れっていう...
無駄だ。いざとなれば食料くらい、森に入って何日か狩りをす...
ろうが」
「しかし、ベルモンド──」
「待て。それだ」
ラルフはぴたりとアルカードに指をつきつけた。
「俺の名はラルフだと、何度言ったら呑みこめるんだ? 次にベルモ...
ラルフだ。ラ-ル-フだ。言えないわけがないだろう、言ってみろ、...
「……ラ、ルフ」
「もう一度」
「ラル、フ」
「もう一度だ」
「──ラルフ……」
「よし。見ろ、やればできるだろうが」
ラルフはさっさと馬を牽いて街道に上がっていった。
「もう一ぺんでも俺をベルモンド呼ばわりしてみろ、本当にぶん殴...
やらん。これからはずっとラルフと呼べ、わかったか」
「わかった」
「ラルフだ」
「ラルフ」
「よし」
満足して、ラルフは美しい連れに手を差しのべた。
「さ、行くぞ、アルカード。なにをぐずぐずしてる? ベルモンドの領...
アルカードは差し出された手に、ふと、まぶしげに目を細めた。
肩越しにちらりと振りかえる。焚き火のあとが残った草地の...
と静まりかえっている。
暖かな陽光がさんさんと降りそそいでいた。
「ああ、行こう。──ラルフ」
青空の色をほほえむ瞳に宿して、アルカードはラルフの手を取った。
どこかで羽ばたく音がした。
馬を並べて街道を去っていくふたりの旅人の背中を、森のも...
りとまたたいて見送っていた。
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…またはみ出したorz
- すてきやな -- &new{2014-01-03 (金) 22:36:24};
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
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