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#title(ドクオクエスト 疵) [#v5aa6900]
同人板の輝きスレの竜王とドクオの書き込みに、インスパイア...
初書き込みです。
ドクオクエスト、旅立ちまでのお話をさせてください。
※多少微グロありかもです。
____________
| __________ |
| | | |
| | |> PLAY | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
私の顔には、深く醜い傷がある。
その傷を受けたのは、私がようやく少年の域を抜け出ようとし...
村を、竜王の軍勢に襲われたのだ。
伝説の存在と思われていたはずの竜王は、数年前突如として復...
けれど王都より遠く離れたこの村に竜王の手が及ぶ事は無く、...
感じていなかったはずだ。
貧しいながらも慎ましやかに日々を送る小さな村は、突然、異...
何の戦略的価値も無い自分の村が襲われたのは、ただただ竜王...
火が放たれ、男達は皆殺され、女は犯され、むさぼり食われた...
もちろん、村人達はただ手をこまねいていた訳ではない。皆武...
ただの農民が魔物相手に勝てる訳が無く、あっけなく、あるい...
私も震えながら、武器をとった。家には私を女手ひとつで育て...
なんとしても彼女達を守りたかった。たとえ手にもった武器が...
私は彼女達を連れて、森へと逃げた。
けれど女子供の足では思うように進まず、すぐにモンスターの...
一縷の儚い望みをかけて突き出した木の棒は、あっけなく噛み...
そうしてその無謀で愚かな勇気は、最もおぞましい報復によっ...
ぎちり、ぎちり、と私の上でモンスターが動く度に、私の身体...
その触手に限界まで押し広げられた後孔を、母と妹を犯した魔...
「――っ」
叫びは、もう出ない。もうとうに咽喉は潰れていたから。
私を犯す魔物の回りでは、他の魔物たちがすでに肉塊と化した...
その様子は何処か他人事のように目に映った。どうせすぐに、...
じゅぅ、と触手の触れた肌から煙があがる。
どうやらこの魔物の体液には酸が含まれていて、それが身体に...
さらに身体の奥深く穿たれる性器からも滲み出るものが、身体...
そのまま体内に放たれていたならば、私は間違いなく死んでい...
私の身体は最後の一つ突きのために抱え上げた魔物の手に酸で...
背中を地面に叩きつけられる衝撃。
けれど、幸運はそこまでだった。
ずるりと後孔から抜け出た性器の凄まじい不快感にうめく間も...
…酸を含むその体液は、私から顔の半分を奪っていった。
「がぁぁぁ―っ!」
その瞬間にあげた私の悲鳴は、まるで獣のようだった。潰れた...
ぶすぶすと立ち昇る肉が焦げる臭気と溶け崩れていく頬の感覚...
そうして気を失う事すら出来ずに震える私の足を、別の魔物に...
今度こそ殺される、そう思った瞬間だった。突然、魔物の動き...
「――ぐっ」
唐突に私の身体を投げ出し、魔物達はそのまますばやい動きで...
…その場にひとり取り残され呻き続ける私の頬を、何かがポツリ...
「――っ」
雨だ。
数滴の雫は瞬く間に豪雨と化し、焼け爛れた身体を叩く。
逃れられないその激痛にのたうちまわりながら、急速に意識が...
私は安堵さえ覚えてそこに逃げ込んだのだった
あの撤退は、おそらく竜王の号令だったのだろう。すんでの所...
――それが必ずしも幸福に結び付くかは別として。
次に私が目覚めたのは納屋のなかだった。
魔物が引き上げた後に様子を見にきた隣村の人に、私は助けら...
助けられたとは言っても、布で顔と身体をおざなりに巻かれ、...
それでも私は、彼には感謝しなければならない。私は呪われた...
魔物に犯された者には呪いが宿る。
それが、この世界の言い伝えだ。
本当に呪いなのか、どんな呪いなのか、詳しくは判らない。判...
その人達を忌み嫌い、石もて追う。
私があの森で魔物にどのような扱いを受けたのかは、私の身体...
普通であれば、私はそのまま捨て置かれていたに違いない。そ...
おそらく私がまだ年若かったからなのかもしれない。
時折、食料と薬が差し入れられる。その際に私の村が全滅した...
この辺鄙な村が竜王に滅ぼされたとしても、それは国の大事に...
だから、村の人が必死で上げた狼煙にも、軍は来なかった。身...
けれど、そんな事を思っても今の私にはどうすることもできは...
ようやく立ち上がれるようになり、喜んだのも束の間、私はも...
歩けるようになり、納屋から一歩外に出た瞬間から、その違和...
村を歩く人たち。
その中の数人が身に付けているものに、何故か既視感を覚える...
皆汚れた者を見るような目つきで私の傍から離れていく。
何度かそれを繰り返し、ようやくそれが私の村の人達の持ち物...
馬を引く男性が付けているあのベルトは私の隣の家の物ではな...
川向こうの家の孫娘の物ではなかったか。
そうして。
向こうから歩いてくる女性が身に付けているドレスを目にして...
嬉しそうに女性が着ているあのドレスは、間違いない。
私の、母の物だった。
あれは私の母が、若くして亡くなった父との結婚式の時に着た...
少女のように頬を染めながら父とのなれそめを語ってくれた。
(幸せな思い出の証なの)
そう言って笑う母が、私はとても好きだった。
そのドレスを、私の村の物を、どうしてこの隣村の人達が身に...
おそらく廃墟となったあの村から、略奪してきたのだろう。私...
彼らは金目の物には興味を示さないから。焼け残った家々から...
確かに、もう死んでしまった者たちにあれらは必要無い物だろ...
野ざらしにしておきながら、金目の物は取ってくるのか。
「――っ」
目の前を、母のドレスが通り過ぎる。咄嗟に掴もうとした手か...
「気持ち悪いっ」と吐き捨てられた。
“ 気持ち悪い ”
咄嗟に布が巻かれた左頬を手で覆った。布越しに、醜く隆起し...
私の穢れの証。
さらに浴びせかけられる罵声に耐えられなくて、私は這いずる...
不幸は、何処まで私を追いかけてくるのだろう。ようやく戻っ...
扉を塞ぐように、私にその場所を提供してくれた人と、村長が...
私を見るなり村長は汚らわしい者を見る目つきで言った。「出...
よく見ればその彼の首にも見覚えのあるアクセサリー。じっと...
手にした杖を私へと振りかざした。
打ち据えられ、私は倒れた。まだ完全に癒えた訳ではない身体...
“魔物の呪いを受けた者をこの村に置くわけにはいかない”
何の騒ぎかと集まってきた村人達が、そう張り上げた村長の声...
途端に私に突き刺さる、侮蔑と嫌悪と好奇の視線。
皆が私を見た。男の身で魔物に犯され顔を焼かれた私の姿を。
“男の身でありながら魔物に情を受けひとり生き残った恥知らず...
村長の傍らに控えた男達が、身を竦ませた私の傍らに立つ。両...
皆の前に引き据えられるように膝立ちにされる。その手が、頭...
「――っ」
咽喉が潰れたままの私の口から悲鳴は出ない。その代わり、そ...
“見ろ、このおぞましい穢れた身体を”
頭の布を剥ぎ取られ、ぼろ布のような服が引き裂かれる。村人...
私は素っ裸にされて皆に晒されていた。
髪を掴み上げられ、半分が溶け崩れた顔を剥き出しにされる。...
酸の触手に締め上げられてついた傷がまるで邪悪な蛇のように...
さらに。
「ヴ…うヴーーっ」
私は潰れた咽喉から悲鳴を絞り出した。
その獣じみた声に怯むことなく、彼らは私の半ば浮いた膝裏に...
そうしてそのまま、周りに見せ付けるために、掴んだ足を大き...
ひときわ高い悲鳴が上がる。そうだろう。魔物に犯されたそこ...
その事が私が魔物に犯された男だという何よりの証なのだ。
あまりの屈辱に息が止まりそうになる。
私が何をしたというのだ。
私はただ、守りたかっただけだ。母を、妹を、ただ守りたかっ...
そんなにも悪なのか。こんな扱いを受けるほどの罪なのか。
ならば私を見つけたときにそのまま捨て置いてくれればよかっ...
視界が滲む。
あの惨劇の日以来に流す涙はけれど、無事だった右目からしか...
腕が放され、私の身体は地面へと投げ出された。身を包むもの...
石が、投げられたのだ。その一投が呼び水になり、次から次へ...
“石もて追え。呪われた存在を許すな”
まるで魔女狩りだ。
私に石を投げなければその矛先が自分に来るのではないか、そ...
そうして私の身に起こった不幸が自らの身に起きなかった事に...
頭を抱え小さく身を縮めて石の雨をやり過ごすうちに、ようや...
身体中から血を流す私の顔が、髪を掴まれて再び持ち上げられ...
“この男に呪われた者の証を付ける。何人もこの者に近づくこと...
いっそのこと、殺して欲しかった。こうまでして私を貶めるの...
頭を押さえつけられる。ゆっくりと近づく熱の塊に施されてい...
目を閉じる。
もういちど、あの魔物に犯されたと、思えば、いい。
額に押し付けられた、灼熱の痛み。
獣のごとき唸りを上げ、その瞬間から、私は人とは違う何かに...
“どこへなりと行くがいい”
呪われた証を額に記した姿で引き回された後、私は投げ捨てる...
何も身に着けていない、裸のままで。
その状態で何処へ行けというのか。
村長の言いたいことは判っている。私に死ねと言っているのだ...
呪われた私を殺してその呪いが自分に降りかかるのを恐れて、...
額が、熱い。
ずきずきと痛む額と身体を冷やしたくて、私は泉のある方向へ...
満月の光が、泉を鏡のように映している。
何度目かの深呼吸の後、思い切って水面に顔を映してみた。瞬...
想像以上の醜さだった。
溶けた箇所を補うように盛り上がり始めた肉。けれどぐちゃぐ...
まるで顔にも蛇がのたうっているような襞になっている。
そうして。
額に戴く、呪いの紋章。
ポツリ、と水面が揺れる。ポツリ、ポツリと醜い私の顔がさら...
「ふ…う…うぅ」
私は何故、生きているのだろう。母を殺され妹を殺され、身を...
生きていてもこの先に待つのはあの村のような迫害だけだ。そ...
気か付けば、私は湖に身を浸していた。
今はまだ腰程度の深さだけど、進んでいけばこの先は深くなっ...
水面を照らす満月の光がまるで別世界のように私を包んだ。
綺麗な、光。
きっと死ねば、この光になって母と妹そして父のところへいけ...
死ねばきっと、この身の穢れも全て消えて浄化される。
“…汚らわしい”
けれど、不意によみがえった村長の言葉に歩みが止まった。
“男の身で、どのように魔物に媚びて見せたのだ”
違う。私はそんな事はしていない。
“そうでなければあの惨事の中、お前一人が生き残る理由が無い”
ただの偶然。ほんの少しの偶然なのに。
“…案外、お前が魔物達を引き込んだのではないのか。その尻で...
違う
ちがう
チガウ!
村長はきっと、本当に私が魔物を引き込んだと思っているのだ...
魔物に媚びて命を永らえたと思っているに違いない。それはき...
―――このまま死ぬなんて、出来ない。
死ぬのは、あの村長の言葉を肯定したと同じ。ならば。
倒すしかない。
あの魔物を、そして竜王を。
その為に私は、生き延びたのかもしれないから。
あの後、生きる決意をして泉から上がった私を迎えたのはひと...
先ほどまでは確かに無かったそれを恐る恐る開けると、そこに...
誰が、こんな物を?と首を傾げる私の視界を、見知った姿が擦...
納屋を貸してくれた、あの人だった。
あんな雰囲気の村の中で私を匿うことは、どんなにか大変な事...
あの人だけが手を差し伸べてくれた。あの場所も薬も食料も、...
顔を上げる。けれどもうそこには誰もいない。
…これを届ける事もおそらくは危険な行為だったろう。なのに、...
見渡しても姿は見えず、その場で深く一礼する。
ありがとう。私を生かしてくれて。
ありがとう。貴方のその優しさのおかげで、私は全ての人を憎...
籠の中にはその他に皮の防具とナイフが一本入っていた。
それら全てを身につけて、バンダナを額に巻いて証を隠す。
全ての用意を終え立ち上がる頃には、夏の早い朝が明けようと...
村の人に見つからないよう、森の奥へと分け入る。
そうしてその日から、私の旅は、始まったのだ。
____________
| __________ |
| | | |
| | □ STOP. | |
| | | | ∧...
| | | | ピッ (...
| | | | ◇⊂ ...
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| ...
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) ...
一人称が私なのは単なる私の趣味です。
続き:[[穢れた勇者>11-486]]
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同人板の輝きスレの竜王とドクオの書き込みに、インスパイア...
初書き込みです。
ドクオクエスト、旅立ちまでのお話をさせてください。
※多少微グロありかもです。
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| | | | ∧...
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| | | | ◇⊂ ...
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私の顔には、深く醜い傷がある。
その傷を受けたのは、私がようやく少年の域を抜け出ようとし...
村を、竜王の軍勢に襲われたのだ。
伝説の存在と思われていたはずの竜王は、数年前突如として復...
けれど王都より遠く離れたこの村に竜王の手が及ぶ事は無く、...
感じていなかったはずだ。
貧しいながらも慎ましやかに日々を送る小さな村は、突然、異...
何の戦略的価値も無い自分の村が襲われたのは、ただただ竜王...
火が放たれ、男達は皆殺され、女は犯され、むさぼり食われた...
もちろん、村人達はただ手をこまねいていた訳ではない。皆武...
ただの農民が魔物相手に勝てる訳が無く、あっけなく、あるい...
私も震えながら、武器をとった。家には私を女手ひとつで育て...
なんとしても彼女達を守りたかった。たとえ手にもった武器が...
私は彼女達を連れて、森へと逃げた。
けれど女子供の足では思うように進まず、すぐにモンスターの...
一縷の儚い望みをかけて突き出した木の棒は、あっけなく噛み...
そうしてその無謀で愚かな勇気は、最もおぞましい報復によっ...
ぎちり、ぎちり、と私の上でモンスターが動く度に、私の身体...
その触手に限界まで押し広げられた後孔を、母と妹を犯した魔...
「――っ」
叫びは、もう出ない。もうとうに咽喉は潰れていたから。
私を犯す魔物の回りでは、他の魔物たちがすでに肉塊と化した...
その様子は何処か他人事のように目に映った。どうせすぐに、...
じゅぅ、と触手の触れた肌から煙があがる。
どうやらこの魔物の体液には酸が含まれていて、それが身体に...
さらに身体の奥深く穿たれる性器からも滲み出るものが、身体...
そのまま体内に放たれていたならば、私は間違いなく死んでい...
私の身体は最後の一つ突きのために抱え上げた魔物の手に酸で...
背中を地面に叩きつけられる衝撃。
けれど、幸運はそこまでだった。
ずるりと後孔から抜け出た性器の凄まじい不快感にうめく間も...
…酸を含むその体液は、私から顔の半分を奪っていった。
「がぁぁぁ―っ!」
その瞬間にあげた私の悲鳴は、まるで獣のようだった。潰れた...
ぶすぶすと立ち昇る肉が焦げる臭気と溶け崩れていく頬の感覚...
そうして気を失う事すら出来ずに震える私の足を、別の魔物に...
今度こそ殺される、そう思った瞬間だった。突然、魔物の動き...
「――ぐっ」
唐突に私の身体を投げ出し、魔物達はそのまますばやい動きで...
…その場にひとり取り残され呻き続ける私の頬を、何かがポツリ...
「――っ」
雨だ。
数滴の雫は瞬く間に豪雨と化し、焼け爛れた身体を叩く。
逃れられないその激痛にのたうちまわりながら、急速に意識が...
私は安堵さえ覚えてそこに逃げ込んだのだった
あの撤退は、おそらく竜王の号令だったのだろう。すんでの所...
――それが必ずしも幸福に結び付くかは別として。
次に私が目覚めたのは納屋のなかだった。
魔物が引き上げた後に様子を見にきた隣村の人に、私は助けら...
助けられたとは言っても、布で顔と身体をおざなりに巻かれ、...
それでも私は、彼には感謝しなければならない。私は呪われた...
魔物に犯された者には呪いが宿る。
それが、この世界の言い伝えだ。
本当に呪いなのか、どんな呪いなのか、詳しくは判らない。判...
その人達を忌み嫌い、石もて追う。
私があの森で魔物にどのような扱いを受けたのかは、私の身体...
普通であれば、私はそのまま捨て置かれていたに違いない。そ...
おそらく私がまだ年若かったからなのかもしれない。
時折、食料と薬が差し入れられる。その際に私の村が全滅した...
この辺鄙な村が竜王に滅ぼされたとしても、それは国の大事に...
だから、村の人が必死で上げた狼煙にも、軍は来なかった。身...
けれど、そんな事を思っても今の私にはどうすることもできは...
ようやく立ち上がれるようになり、喜んだのも束の間、私はも...
歩けるようになり、納屋から一歩外に出た瞬間から、その違和...
村を歩く人たち。
その中の数人が身に付けているものに、何故か既視感を覚える...
皆汚れた者を見るような目つきで私の傍から離れていく。
何度かそれを繰り返し、ようやくそれが私の村の人達の持ち物...
馬を引く男性が付けているあのベルトは私の隣の家の物ではな...
川向こうの家の孫娘の物ではなかったか。
そうして。
向こうから歩いてくる女性が身に付けているドレスを目にして...
嬉しそうに女性が着ているあのドレスは、間違いない。
私の、母の物だった。
あれは私の母が、若くして亡くなった父との結婚式の時に着た...
少女のように頬を染めながら父とのなれそめを語ってくれた。
(幸せな思い出の証なの)
そう言って笑う母が、私はとても好きだった。
そのドレスを、私の村の物を、どうしてこの隣村の人達が身に...
おそらく廃墟となったあの村から、略奪してきたのだろう。私...
彼らは金目の物には興味を示さないから。焼け残った家々から...
確かに、もう死んでしまった者たちにあれらは必要無い物だろ...
野ざらしにしておきながら、金目の物は取ってくるのか。
「――っ」
目の前を、母のドレスが通り過ぎる。咄嗟に掴もうとした手か...
「気持ち悪いっ」と吐き捨てられた。
“ 気持ち悪い ”
咄嗟に布が巻かれた左頬を手で覆った。布越しに、醜く隆起し...
私の穢れの証。
さらに浴びせかけられる罵声に耐えられなくて、私は這いずる...
不幸は、何処まで私を追いかけてくるのだろう。ようやく戻っ...
扉を塞ぐように、私にその場所を提供してくれた人と、村長が...
私を見るなり村長は汚らわしい者を見る目つきで言った。「出...
よく見ればその彼の首にも見覚えのあるアクセサリー。じっと...
手にした杖を私へと振りかざした。
打ち据えられ、私は倒れた。まだ完全に癒えた訳ではない身体...
“魔物の呪いを受けた者をこの村に置くわけにはいかない”
何の騒ぎかと集まってきた村人達が、そう張り上げた村長の声...
途端に私に突き刺さる、侮蔑と嫌悪と好奇の視線。
皆が私を見た。男の身で魔物に犯され顔を焼かれた私の姿を。
“男の身でありながら魔物に情を受けひとり生き残った恥知らず...
村長の傍らに控えた男達が、身を竦ませた私の傍らに立つ。両...
皆の前に引き据えられるように膝立ちにされる。その手が、頭...
「――っ」
咽喉が潰れたままの私の口から悲鳴は出ない。その代わり、そ...
“見ろ、このおぞましい穢れた身体を”
頭の布を剥ぎ取られ、ぼろ布のような服が引き裂かれる。村人...
私は素っ裸にされて皆に晒されていた。
髪を掴み上げられ、半分が溶け崩れた顔を剥き出しにされる。...
酸の触手に締め上げられてついた傷がまるで邪悪な蛇のように...
さらに。
「ヴ…うヴーーっ」
私は潰れた咽喉から悲鳴を絞り出した。
その獣じみた声に怯むことなく、彼らは私の半ば浮いた膝裏に...
そうしてそのまま、周りに見せ付けるために、掴んだ足を大き...
ひときわ高い悲鳴が上がる。そうだろう。魔物に犯されたそこ...
その事が私が魔物に犯された男だという何よりの証なのだ。
あまりの屈辱に息が止まりそうになる。
私が何をしたというのだ。
私はただ、守りたかっただけだ。母を、妹を、ただ守りたかっ...
そんなにも悪なのか。こんな扱いを受けるほどの罪なのか。
ならば私を見つけたときにそのまま捨て置いてくれればよかっ...
視界が滲む。
あの惨劇の日以来に流す涙はけれど、無事だった右目からしか...
腕が放され、私の身体は地面へと投げ出された。身を包むもの...
石が、投げられたのだ。その一投が呼び水になり、次から次へ...
“石もて追え。呪われた存在を許すな”
まるで魔女狩りだ。
私に石を投げなければその矛先が自分に来るのではないか、そ...
そうして私の身に起こった不幸が自らの身に起きなかった事に...
頭を抱え小さく身を縮めて石の雨をやり過ごすうちに、ようや...
身体中から血を流す私の顔が、髪を掴まれて再び持ち上げられ...
“この男に呪われた者の証を付ける。何人もこの者に近づくこと...
いっそのこと、殺して欲しかった。こうまでして私を貶めるの...
頭を押さえつけられる。ゆっくりと近づく熱の塊に施されてい...
目を閉じる。
もういちど、あの魔物に犯されたと、思えば、いい。
額に押し付けられた、灼熱の痛み。
獣のごとき唸りを上げ、その瞬間から、私は人とは違う何かに...
“どこへなりと行くがいい”
呪われた証を額に記した姿で引き回された後、私は投げ捨てる...
何も身に着けていない、裸のままで。
その状態で何処へ行けというのか。
村長の言いたいことは判っている。私に死ねと言っているのだ...
呪われた私を殺してその呪いが自分に降りかかるのを恐れて、...
額が、熱い。
ずきずきと痛む額と身体を冷やしたくて、私は泉のある方向へ...
満月の光が、泉を鏡のように映している。
何度目かの深呼吸の後、思い切って水面に顔を映してみた。瞬...
想像以上の醜さだった。
溶けた箇所を補うように盛り上がり始めた肉。けれどぐちゃぐ...
まるで顔にも蛇がのたうっているような襞になっている。
そうして。
額に戴く、呪いの紋章。
ポツリ、と水面が揺れる。ポツリ、ポツリと醜い私の顔がさら...
「ふ…う…うぅ」
私は何故、生きているのだろう。母を殺され妹を殺され、身を...
生きていてもこの先に待つのはあの村のような迫害だけだ。そ...
気か付けば、私は湖に身を浸していた。
今はまだ腰程度の深さだけど、進んでいけばこの先は深くなっ...
水面を照らす満月の光がまるで別世界のように私を包んだ。
綺麗な、光。
きっと死ねば、この光になって母と妹そして父のところへいけ...
死ねばきっと、この身の穢れも全て消えて浄化される。
“…汚らわしい”
けれど、不意によみがえった村長の言葉に歩みが止まった。
“男の身で、どのように魔物に媚びて見せたのだ”
違う。私はそんな事はしていない。
“そうでなければあの惨事の中、お前一人が生き残る理由が無い”
ただの偶然。ほんの少しの偶然なのに。
“…案外、お前が魔物達を引き込んだのではないのか。その尻で...
違う
ちがう
チガウ!
村長はきっと、本当に私が魔物を引き込んだと思っているのだ...
魔物に媚びて命を永らえたと思っているに違いない。それはき...
―――このまま死ぬなんて、出来ない。
死ぬのは、あの村長の言葉を肯定したと同じ。ならば。
倒すしかない。
あの魔物を、そして竜王を。
その為に私は、生き延びたのかもしれないから。
あの後、生きる決意をして泉から上がった私を迎えたのはひと...
先ほどまでは確かに無かったそれを恐る恐る開けると、そこに...
誰が、こんな物を?と首を傾げる私の視界を、見知った姿が擦...
納屋を貸してくれた、あの人だった。
あんな雰囲気の村の中で私を匿うことは、どんなにか大変な事...
あの人だけが手を差し伸べてくれた。あの場所も薬も食料も、...
顔を上げる。けれどもうそこには誰もいない。
…これを届ける事もおそらくは危険な行為だったろう。なのに、...
見渡しても姿は見えず、その場で深く一礼する。
ありがとう。私を生かしてくれて。
ありがとう。貴方のその優しさのおかげで、私は全ての人を憎...
籠の中にはその他に皮の防具とナイフが一本入っていた。
それら全てを身につけて、バンダナを額に巻いて証を隠す。
全ての用意を終え立ち上がる頃には、夏の早い朝が明けようと...
村の人に見つからないよう、森の奥へと分け入る。
そうしてその日から、私の旅は、始まったのだ。
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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