ページ内容へ
ナビゲーションへ
当サイトをご覧いただくにはブラウザの設定で
JavaScriptを有効に設定
する必要がございます。
ページの一覧
最終更新一覧
ヘルプ
ホーム
使い方
文字サイズ:小
文字サイズ:中
文字サイズ:大
リロード
編集
ツール
名前変更
凍結
差分
バックアップ
添付
複製
印刷
Top
/
71-19
71-19
の編集
-- 雛形とするページ --
(no template pages)
#title(引退セレモニー) しゃちほこの盛野→元ド荒の中の人(盛野の引退セレモニーより) |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 「お久しぶりです」 盛野にとって、挨拶に来た彼に会ったのは実に4年ぶりだった。 2013年まで彼は、ド荒を演じていた一人だった。 一人だった、というのは、ド荒を演じるにあたり数人のローテーションを組んでいたからだ。 その中でも彼とは一際仲が良く、飲みにも行ったし、プライベートで旅行に行ったりもした。 しかし、2013年。彼は、異動してド荒を演じることから離れた。 他のド荒担当から、今頃ヒーローショーをやってますよ、と教えてもらったりもしたが、大半は眉唾ものの噂だった。 家族の都合とも聞いたし、足の故障とも聞いたし、転職とも聞いた。 真実はわからず、結局マスコットを演じることも球界とは大差ないのだと盛野は理解した。 引退、FA、移籍、海外挑戦。様々な理由で球団から選手は去っていく。 次第に盛野は彼のことを考えるのをやめた。盛野自身が、自分自身の身体の制御をできなくなっていったからだ。 「最後の日にあなたに会えて良かった」 昔と変わらぬ人懐っこさで、森乃に握手を求める。求められるまま、握手をした。あの頃と何ら変わらない握手だ。 ド荒の本にコメントを書いたことがある。ド荒、は、ファンにとっては一人だが、盛野にとって彼がド荒だった。 盛野のコメントは、彼が演じるド荒に向けたものだった。 「バク転は、若い子がしますけど…。セレモニーでは一緒に歩きましょう」 足をさすりながら彼は言う。 「ありがとう、来てくれて」 勇気が必要だったろうに、来てくれたことに労いの言葉をかけた。 ド荒は、何人もの役者に脈々と受け継がれている。坊主好き、珍妙なダンス好き、バク転、その他諸々。 設定として引き継がれてはいるが、細かく見るとそれぞれ違うな、と盛野はわかる。 「コーチとしているんですってね」 「ああ」 「後進の指導は大事ですよね。わかります。この球団一筋のあなたらしい選択だ」 そこへ、一人の若者が入室してくる。盛野は、名前も顔も一致しないその若者を訝しげに見つめた。 「今日、バク転してくれる若い子です。僕の教え子」 「教え子?」 「今、何をやってるんだ、って顔ですね。足が悪いので激しい動きはできませんが、育成部の責任者です」 よろしくお願いします、と彼は、頭を下げる。 「盛野コーチ。これからもこのド荒くんをよろしくお願いしますね」 世代交代。 華の選手はいつしか引退し、指導に回る。 彼は野球選手ではないが、彼もまた、己の身体と戦い、力尽き、次の道を選んだのか。 球場全体に、応援歌が響く。昔の応援歌。 球場全体に、「ありがとう盛野!」コールが響く。 球場全体に、ジェット風船が飛ぶ。 盛野はその中で、彼の足音を聞いた。 振り向けば、彼は、左手には、サインボールを入れた箱を抱え、右手にはデジカメを持っている。 ド荒。 俺の大好きなド荒。 一番大好きなド荒。 ボールを投げ込む。一球一球に別れの悲しみと長年の感謝を込めて。 ド荒。 俺の大好きなド荒。 一番大好きなド荒。 カメラも憚らずに、ド荒の抱擁を受け止める。 自分は、今、すごい笑顔なんだろうなあ、と考える。 なあ、お前に会えて良かった。また、飲みに行こうな。また、遊びに行こうな。 盛野は、これからの人生を楽しんでいきたいとようやく感じることができた。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! #comment
タイムスタンプを変更しない
#title(引退セレモニー) しゃちほこの盛野→元ド荒の中の人(盛野の引退セレモニーより) |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 「お久しぶりです」 盛野にとって、挨拶に来た彼に会ったのは実に4年ぶりだった。 2013年まで彼は、ド荒を演じていた一人だった。 一人だった、というのは、ド荒を演じるにあたり数人のローテーションを組んでいたからだ。 その中でも彼とは一際仲が良く、飲みにも行ったし、プライベートで旅行に行ったりもした。 しかし、2013年。彼は、異動してド荒を演じることから離れた。 他のド荒担当から、今頃ヒーローショーをやってますよ、と教えてもらったりもしたが、大半は眉唾ものの噂だった。 家族の都合とも聞いたし、足の故障とも聞いたし、転職とも聞いた。 真実はわからず、結局マスコットを演じることも球界とは大差ないのだと盛野は理解した。 引退、FA、移籍、海外挑戦。様々な理由で球団から選手は去っていく。 次第に盛野は彼のことを考えるのをやめた。盛野自身が、自分自身の身体の制御をできなくなっていったからだ。 「最後の日にあなたに会えて良かった」 昔と変わらぬ人懐っこさで、森乃に握手を求める。求められるまま、握手をした。あの頃と何ら変わらない握手だ。 ド荒の本にコメントを書いたことがある。ド荒、は、ファンにとっては一人だが、盛野にとって彼がド荒だった。 盛野のコメントは、彼が演じるド荒に向けたものだった。 「バク転は、若い子がしますけど…。セレモニーでは一緒に歩きましょう」 足をさすりながら彼は言う。 「ありがとう、来てくれて」 勇気が必要だったろうに、来てくれたことに労いの言葉をかけた。 ド荒は、何人もの役者に脈々と受け継がれている。坊主好き、珍妙なダンス好き、バク転、その他諸々。 設定として引き継がれてはいるが、細かく見るとそれぞれ違うな、と盛野はわかる。 「コーチとしているんですってね」 「ああ」 「後進の指導は大事ですよね。わかります。この球団一筋のあなたらしい選択だ」 そこへ、一人の若者が入室してくる。盛野は、名前も顔も一致しないその若者を訝しげに見つめた。 「今日、バク転してくれる若い子です。僕の教え子」 「教え子?」 「今、何をやってるんだ、って顔ですね。足が悪いので激しい動きはできませんが、育成部の責任者です」 よろしくお願いします、と彼は、頭を下げる。 「盛野コーチ。これからもこのド荒くんをよろしくお願いしますね」 世代交代。 華の選手はいつしか引退し、指導に回る。 彼は野球選手ではないが、彼もまた、己の身体と戦い、力尽き、次の道を選んだのか。 球場全体に、応援歌が響く。昔の応援歌。 球場全体に、「ありがとう盛野!」コールが響く。 球場全体に、ジェット風船が飛ぶ。 盛野はその中で、彼の足音を聞いた。 振り向けば、彼は、左手には、サインボールを入れた箱を抱え、右手にはデジカメを持っている。 ド荒。 俺の大好きなド荒。 一番大好きなド荒。 ボールを投げ込む。一球一球に別れの悲しみと長年の感謝を込めて。 ド荒。 俺の大好きなド荒。 一番大好きなド荒。 カメラも憚らずに、ド荒の抱擁を受け止める。 自分は、今、すごい笑顔なんだろうなあ、と考える。 なあ、お前に会えて良かった。また、飲みに行こうな。また、遊びに行こうな。 盛野は、これからの人生を楽しんでいきたいとようやく感じることができた。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! #comment
テキスト整形のルールを表示する
ページ新規作成
新しいページはこちらから投稿できます。
作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
ページ新規作成: