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#title(秋は遠くて近く) 生注意。超次元定休漫画の王者校D壱声の人たち。弐→八な弐八 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 久し振りに会ったわけだしついでに今度肉食べに行こう、明日とか。 そんな唐突で相手のスケジュールを一切考慮しない誘い方をするのは昔から変わらないし、彼もいつものように笑って、いいよと返した。 「何歌えるのかなあ」 「気が早い」 「今回は投票だから多分、前回よりセットリストは遅くに発表な気がするからさ。どきどきする」 「何、練習でも行きたい?一緒にカラオケ?」 「そんな時間無いって知ってるだろ」 不安定な業界でお互い毎月仕事がある。幸せなことだが直接会う機会はめっきり減った。絶対口にするつもりはないが、寂しい。 俺だって行きたいけどさ、と彼は言いながらビールを一瞬傾ける。 「君はあれだ、ヒトカラ行ってこいよ。絶対ソロ曲あるから」 「それならそっちだって絶対あるから行けばいいじゃん」 「俺は毎日が練習みたいなもんだからいいの」 「何だよそれ」 睨みつつ呆れながらドヤ顔を見れば、目線が合ってすぐに相好を崩してふにゃりと笑う。 笑顔の多い男だが、特にこの柔らかい表情が個人的には一番好きで、未だに直視できず思わず視線を逸らした。 生来表情筋を抑える性質なことを幾度親に感謝したか知れない。そうでなければ彼の笑顔を見るたび常にニヤける怪しい男の出来上がりだ。 分厚いステーキを切る手がいつもより覚束ないのを視界の端で眺める。お互い出会った時は酒なんてほとんど飲めなかったのに今ではこうして食事と一緒に楽しめるようになった。 彼らの中では、特に彼女とは違って、未だに最弱の地位を漂う二人なことに変わりはないが。 最初はよく知らない、ただの年上の男だった。 それまで辿った人生も、外見も、性格も、私生活も、重なるところなんて見い出せそうもなくて、ただ接しやすければ助かるなぐらいにしか思わなかった。 因果なもので互いに重ならない面が不思議と噛み合い、話をすればするほど彼の存在が必要不可欠になった。 演じたキャラのお陰だね、と彼はよく言っていたが、それだけではない何かがきっと合ったんだと心の何処かで思っている。 親愛だとか友情だとかそんなありふれた言葉で関係を表現したくなかった。いや、そもそも的確な言葉は存在していない。 この世界に存在する人間二人を結びつける明るい言葉に含まれる要素を混ぜこんだ、そんな言葉が相応しい。 お前のそれは一般的には恋とか呼ばれるもんだと言われたことがあった。 まあ、単純化するなら一番近いのはそれかもしれない。別に彼と付き合いたいとも、手を繋いだりキスしたりしたいなんてわけでも全く無い。 無いけれど、いわゆる『付き合っている』状態でありたい、とは、思ってはいる。 友人という立ち位置では遠すぎるのだ。だが恋人では含まれる意味合いが変わる。そもそもそれでは不倫だ、特に彼にとって一番の禁句であるところの。 俺は彼とどうありたいのだろうかと考え続けてもう十年以上が過ぎた。結論も関係と同様あやふやのままだ。 デュエット出来るかなあと肉に飽きたと言わんばかりの顔をした彼が言う。だからもっと少ないのを頼めばよかったのに。 「ファンの子たちに投票してもらえたらだけど」 「されるって、何だかんだで俺ら人気っぽいんだし」 「俺らって、役者としての俺らは違うでしょ」 「いや?分かんないよ?」 それは君だけだって、と彼は溜息を吐く。 「みんなと、あと四人で歌うのも好きだけど、やっぱり二人でも歌いたいな俺は」 「じゃあやっぱり練習行かなきゃじゃん」 「やっぱそうなっちゃう?」 どちらともなくテーブルに置いていた携帯に手を伸ばす。 夏には稽古で一緒になるわけだからその辺りに照準を絞ることですぐに意見は一致した。 「髪は今回どうするの?」 会計を済ませて店を出ると彼が首を傾げた。 「ここからそんな伸びないだろうし前みたいな感じにする」 「敢えてまた金髪とかやっちゃう?」 「やんねーよ、被りそうな人いるし。面倒そうなお方が」 そう冗談めかすと、彼はまたあの笑顏になる。 頬が何故か熱いのはアルコールのせいだ確実に。 身体に軽い衝撃が走った。少し上背のある彼の肩が俺のにぶつかったのだ。 彼を見れば、やっぱりふにゃりとした顔をしていた。 「楽しみだね」 これじゃまるで、誰かが言ったようにやっぱり恋に落ちているみたいじゃないかと自分を嘲笑いたくなる。 「だねー」 俺の返事に喜んでいるのか、それから駅に至るまでの道中彼はずっと俺と腕が触れ合うほど近くを歩き続けたし、勿論俺もその距離で他愛もない会話をずっと続けた。 そしてその間に数度、人通りの無い瞬間。俺の手が彼の手に触れ、絡み、掴んでも彼が離れることがなかったのをどんな言葉で表現したら良いのか。 また新たな疑問は増え、更に恋人同士のそれを喜んでしまった自分と拒まなかった彼、という問題も俺には振りかかったのだった。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 彼ら目当てでチケット申し込んだので祈願も兼ねて #comment
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#title(秋は遠くて近く) 生注意。超次元定休漫画の王者校D壱声の人たち。弐→八な弐八 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 久し振りに会ったわけだしついでに今度肉食べに行こう、明日とか。 そんな唐突で相手のスケジュールを一切考慮しない誘い方をするのは昔から変わらないし、彼もいつものように笑って、いいよと返した。 「何歌えるのかなあ」 「気が早い」 「今回は投票だから多分、前回よりセットリストは遅くに発表な気がするからさ。どきどきする」 「何、練習でも行きたい?一緒にカラオケ?」 「そんな時間無いって知ってるだろ」 不安定な業界でお互い毎月仕事がある。幸せなことだが直接会う機会はめっきり減った。絶対口にするつもりはないが、寂しい。 俺だって行きたいけどさ、と彼は言いながらビールを一瞬傾ける。 「君はあれだ、ヒトカラ行ってこいよ。絶対ソロ曲あるから」 「それならそっちだって絶対あるから行けばいいじゃん」 「俺は毎日が練習みたいなもんだからいいの」 「何だよそれ」 睨みつつ呆れながらドヤ顔を見れば、目線が合ってすぐに相好を崩してふにゃりと笑う。 笑顔の多い男だが、特にこの柔らかい表情が個人的には一番好きで、未だに直視できず思わず視線を逸らした。 生来表情筋を抑える性質なことを幾度親に感謝したか知れない。そうでなければ彼の笑顔を見るたび常にニヤける怪しい男の出来上がりだ。 分厚いステーキを切る手がいつもより覚束ないのを視界の端で眺める。お互い出会った時は酒なんてほとんど飲めなかったのに今ではこうして食事と一緒に楽しめるようになった。 彼らの中では、特に彼女とは違って、未だに最弱の地位を漂う二人なことに変わりはないが。 最初はよく知らない、ただの年上の男だった。 それまで辿った人生も、外見も、性格も、私生活も、重なるところなんて見い出せそうもなくて、ただ接しやすければ助かるなぐらいにしか思わなかった。 因果なもので互いに重ならない面が不思議と噛み合い、話をすればするほど彼の存在が必要不可欠になった。 演じたキャラのお陰だね、と彼はよく言っていたが、それだけではない何かがきっと合ったんだと心の何処かで思っている。 親愛だとか友情だとかそんなありふれた言葉で関係を表現したくなかった。いや、そもそも的確な言葉は存在していない。 この世界に存在する人間二人を結びつける明るい言葉に含まれる要素を混ぜこんだ、そんな言葉が相応しい。 お前のそれは一般的には恋とか呼ばれるもんだと言われたことがあった。 まあ、単純化するなら一番近いのはそれかもしれない。別に彼と付き合いたいとも、手を繋いだりキスしたりしたいなんてわけでも全く無い。 無いけれど、いわゆる『付き合っている』状態でありたい、とは、思ってはいる。 友人という立ち位置では遠すぎるのだ。だが恋人では含まれる意味合いが変わる。そもそもそれでは不倫だ、特に彼にとって一番の禁句であるところの。 俺は彼とどうありたいのだろうかと考え続けてもう十年以上が過ぎた。結論も関係と同様あやふやのままだ。 デュエット出来るかなあと肉に飽きたと言わんばかりの顔をした彼が言う。だからもっと少ないのを頼めばよかったのに。 「ファンの子たちに投票してもらえたらだけど」 「されるって、何だかんだで俺ら人気っぽいんだし」 「俺らって、役者としての俺らは違うでしょ」 「いや?分かんないよ?」 それは君だけだって、と彼は溜息を吐く。 「みんなと、あと四人で歌うのも好きだけど、やっぱり二人でも歌いたいな俺は」 「じゃあやっぱり練習行かなきゃじゃん」 「やっぱそうなっちゃう?」 どちらともなくテーブルに置いていた携帯に手を伸ばす。 夏には稽古で一緒になるわけだからその辺りに照準を絞ることですぐに意見は一致した。 「髪は今回どうするの?」 会計を済ませて店を出ると彼が首を傾げた。 「ここからそんな伸びないだろうし前みたいな感じにする」 「敢えてまた金髪とかやっちゃう?」 「やんねーよ、被りそうな人いるし。面倒そうなお方が」 そう冗談めかすと、彼はまたあの笑顏になる。 頬が何故か熱いのはアルコールのせいだ確実に。 身体に軽い衝撃が走った。少し上背のある彼の肩が俺のにぶつかったのだ。 彼を見れば、やっぱりふにゃりとした顔をしていた。 「楽しみだね」 これじゃまるで、誰かが言ったようにやっぱり恋に落ちているみたいじゃないかと自分を嘲笑いたくなる。 「だねー」 俺の返事に喜んでいるのか、それから駅に至るまでの道中彼はずっと俺と腕が触れ合うほど近くを歩き続けたし、勿論俺もその距離で他愛もない会話をずっと続けた。 そしてその間に数度、人通りの無い瞬間。俺の手が彼の手に触れ、絡み、掴んでも彼が離れることがなかったのをどんな言葉で表現したら良いのか。 また新たな疑問は増え、更に恋人同士のそれを喜んでしまった自分と拒まなかった彼、という問題も俺には振りかかったのだった。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 彼ら目当てでチケット申し込んだので祈願も兼ねて #comment
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シリーズものインデックス
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第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
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第58巻
第57巻
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第43巻
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第39巻
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