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#title(煙草とブルーノート) |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガオオクリシマース! 急曲調陣R 田和場×登坂 何がきっかけだったのか、今となってはよく思い出せない。 田和場さんが卒業して独り暮らしを始めたので、私はしょっちゅう彼の家に入り浸っていた。 田和場さんもぶつぶついいながらも、決して嫌がってはいなかった、と思う。 卒業しても部活への参加率が高いことを鑑みるに、意外と淋しがり屋なのかもしれない。 もちろん、特別何かもてなしてくれるわけではない。 コンビニで買った弁当を食べながら写真の話をしたり、次の合宿の計画を立てたり、座布団を投げ合って隣人に壁を殴られたりするくらいのもので、 その後は大抵どちらかが眠くなってごろ寝をして朝を迎え喉を傷める程度の、つまりは非常に若者らしい交流だったのである。 それがどうして、体の関係を持つにいたったのだろうか。いくら考えても明確な答えは出ない。成り行きで、とでも言おうか。 青少年の性欲のせいとでも言おうか。私にわからないのだから、きっと田和場さんにもわからない、そう信じたい。 するときは、いつも私が受け入れる側だった。「後輩なんだから先輩に従え」という理不尽極まりない理由で。さらに、 「大体、女で経験すらしてないような奴に身を任すなんてできるか」 とも言っていた。その時、ああこの人はもう経験済みなのかと思い、胸中がふと曇った。 初めての時、ほとんど痛みしか感じないような行為が終わってからも、憎まれ口ぐらいしか叩くことはできなかった。 「結構早いんですね」 「だまれ童貞」 田和場さんは使い終わったゴムを外しながら毒づいた。こういうセックスは経験済みには入らないんだろうと考えながら、手慣れたその作業をぼんやりと眺める。 眼鏡を外しているので、どのみちぼんやりとしか見えないが。 そういう形での関わりを持ったものの、別に甘い空気になったり胸が高鳴る思いをするわけではない。 大体どうしてこの先輩にそんな感情を持たねばならないのだ。 「清らかな体とでも言ってくださいよ」 「気色の悪いことを言うな」 田和場さんはそう言いながら私の脇腹に蹴りを入れる。 「いたたたた!不許可です!まだ痛いんですから勘弁してくださいって!!」 腰をかばいながら懇願すると、攻撃の手(足?)は止んだ。少しは気を使ってくれっているらしい。 田和場さんは煎餅布団の上の私をよそに、煙草を吸い出した。煙を吐く音が聞こえる。 私の定まらない視界に、黄色く日に焼けた畳が、そしてヤニが奇妙な模様をつくる壁が写る。 やがてまどろみかけた私の耳に、田和場さんの鼻歌が聞こえてくる。あれは古いジャズだったろうか。そんなことを考えながら、私は眠った。 その日から、泊りに行くたびにそういうことになった。私のほうから泊まりにいくことはもちろん、田和場さんの方から誘われることも多かった。 田和場さんから誘われるときは、大抵家に着くなりすることになる。捌け口にしやがって、と多少苦々しく思いながらも私は拒まなかった。 セックスの前に、メガネは必ず外された。あのメガネは萎えるから、らしい。それに、誰と寝ているのか深く意識せずにすむ方がお互いに何かといいという。 確かに特別な感情がない以上、相手が誰であるかを意識する必要性は薄い。日常的に会う相手ならば、むしろはっきりと線引きができるかもしれない。 そう言うわけで、セックスの際の私の視界はいつもひずんでいた。 お互いの性欲が満たされると、田和場さんは鼻唄を歌いながらタバコを呑む。そう言えば、相手だけ満足して放置されるということは一度もなかった。 輪郭の歪みきった世界、タバコの煙とブルーノートのコード。重い体が薄い布団に沈んでゆく。 落ちていく意識のなか、頭を優しく撫でられたのは夢だったのだろうか。 ある日使用済みのコンドームを捨て、タバコを吸いながら田和場さんは言った。 「あんまり痛がらなくなったな」 上がっていた息をなんとか押さえながら答える。 「そりゃあ、少しは慣れますよ」 田和場さんは小さく笑って、 「確かに、そりゃあそうだよなぁ…」 と言って煙を吐いた。そしてまた笑いながら、 「でも、痛がって泣いてるお前は」 そこまで言って、止まった。もう、笑ってもいないらしい。タバコの煙を吐く音だけが、耳に入る。何と言おうとしていたのか、聞く勇気は出なかった。 田和場さんがどんな目でこちらを見ていたのか、捻れた視覚ではわからない。 田和場さんと寝たのはその日が最後だった。 その日からいくつかの季節が過ぎたある秋の日。 町を歩いていた私の耳に、聞き覚えのあるメロディが流れこんだ。 それはどこかの店が流しているBGMで、当然鼻唄ではない。 それでもとたんに、胸が錐で刺されたように痛くなる。 どうしようもなく胸が騒いで、急いで自室に帰るとすぐに床に仰向けになって眼鏡をはずした。 歪んだ視界では、自分の部屋がまるであの部屋のように感じられる。 しかし、ここにはタバコの煙も鼻唄のジャズもない。 本当は、あんたのこと―― そこまで考えたとき、乱視ではない原因で世界が滲んだが、気のせいだと思い込むために眼を閉じる。 ブルーノートの旋律はいつまでも耳の中に残っている。当分、眠れそうにはない。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! - ひゃっっほぉぉぉぉい!! -- &new{2012-11-26 (月) 08:12:29}; - いいもん見させてもらいました!!! -- &new{2012-11-29 (木) 23:53:00}; - おおう…新世界が開けた。センパイえろいな! -- &new{2012-12-13 (木) 00:48:04}; - 萌え! -- &new{2013-01-20 (日) 17:05:06}; - 雰囲気がたまらん この二人に感じていたモヤモヤはこれだったのか! -- &new{2013-02-03 (日) 23:28:48}; - ありがとうありがとう -- &new{2013-12-14 (土) 16:15:00}; #comment
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#title(煙草とブルーノート) |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガオオクリシマース! 急曲調陣R 田和場×登坂 何がきっかけだったのか、今となってはよく思い出せない。 田和場さんが卒業して独り暮らしを始めたので、私はしょっちゅう彼の家に入り浸っていた。 田和場さんもぶつぶついいながらも、決して嫌がってはいなかった、と思う。 卒業しても部活への参加率が高いことを鑑みるに、意外と淋しがり屋なのかもしれない。 もちろん、特別何かもてなしてくれるわけではない。 コンビニで買った弁当を食べながら写真の話をしたり、次の合宿の計画を立てたり、座布団を投げ合って隣人に壁を殴られたりするくらいのもので、 その後は大抵どちらかが眠くなってごろ寝をして朝を迎え喉を傷める程度の、つまりは非常に若者らしい交流だったのである。 それがどうして、体の関係を持つにいたったのだろうか。いくら考えても明確な答えは出ない。成り行きで、とでも言おうか。 青少年の性欲のせいとでも言おうか。私にわからないのだから、きっと田和場さんにもわからない、そう信じたい。 するときは、いつも私が受け入れる側だった。「後輩なんだから先輩に従え」という理不尽極まりない理由で。さらに、 「大体、女で経験すらしてないような奴に身を任すなんてできるか」 とも言っていた。その時、ああこの人はもう経験済みなのかと思い、胸中がふと曇った。 初めての時、ほとんど痛みしか感じないような行為が終わってからも、憎まれ口ぐらいしか叩くことはできなかった。 「結構早いんですね」 「だまれ童貞」 田和場さんは使い終わったゴムを外しながら毒づいた。こういうセックスは経験済みには入らないんだろうと考えながら、手慣れたその作業をぼんやりと眺める。 眼鏡を外しているので、どのみちぼんやりとしか見えないが。 そういう形での関わりを持ったものの、別に甘い空気になったり胸が高鳴る思いをするわけではない。 大体どうしてこの先輩にそんな感情を持たねばならないのだ。 「清らかな体とでも言ってくださいよ」 「気色の悪いことを言うな」 田和場さんはそう言いながら私の脇腹に蹴りを入れる。 「いたたたた!不許可です!まだ痛いんですから勘弁してくださいって!!」 腰をかばいながら懇願すると、攻撃の手(足?)は止んだ。少しは気を使ってくれっているらしい。 田和場さんは煎餅布団の上の私をよそに、煙草を吸い出した。煙を吐く音が聞こえる。 私の定まらない視界に、黄色く日に焼けた畳が、そしてヤニが奇妙な模様をつくる壁が写る。 やがてまどろみかけた私の耳に、田和場さんの鼻歌が聞こえてくる。あれは古いジャズだったろうか。そんなことを考えながら、私は眠った。 その日から、泊りに行くたびにそういうことになった。私のほうから泊まりにいくことはもちろん、田和場さんの方から誘われることも多かった。 田和場さんから誘われるときは、大抵家に着くなりすることになる。捌け口にしやがって、と多少苦々しく思いながらも私は拒まなかった。 セックスの前に、メガネは必ず外された。あのメガネは萎えるから、らしい。それに、誰と寝ているのか深く意識せずにすむ方がお互いに何かといいという。 確かに特別な感情がない以上、相手が誰であるかを意識する必要性は薄い。日常的に会う相手ならば、むしろはっきりと線引きができるかもしれない。 そう言うわけで、セックスの際の私の視界はいつもひずんでいた。 お互いの性欲が満たされると、田和場さんは鼻唄を歌いながらタバコを呑む。そう言えば、相手だけ満足して放置されるということは一度もなかった。 輪郭の歪みきった世界、タバコの煙とブルーノートのコード。重い体が薄い布団に沈んでゆく。 落ちていく意識のなか、頭を優しく撫でられたのは夢だったのだろうか。 ある日使用済みのコンドームを捨て、タバコを吸いながら田和場さんは言った。 「あんまり痛がらなくなったな」 上がっていた息をなんとか押さえながら答える。 「そりゃあ、少しは慣れますよ」 田和場さんは小さく笑って、 「確かに、そりゃあそうだよなぁ…」 と言って煙を吐いた。そしてまた笑いながら、 「でも、痛がって泣いてるお前は」 そこまで言って、止まった。もう、笑ってもいないらしい。タバコの煙を吐く音だけが、耳に入る。何と言おうとしていたのか、聞く勇気は出なかった。 田和場さんがどんな目でこちらを見ていたのか、捻れた視覚ではわからない。 田和場さんと寝たのはその日が最後だった。 その日からいくつかの季節が過ぎたある秋の日。 町を歩いていた私の耳に、聞き覚えのあるメロディが流れこんだ。 それはどこかの店が流しているBGMで、当然鼻唄ではない。 それでもとたんに、胸が錐で刺されたように痛くなる。 どうしようもなく胸が騒いで、急いで自室に帰るとすぐに床に仰向けになって眼鏡をはずした。 歪んだ視界では、自分の部屋がまるであの部屋のように感じられる。 しかし、ここにはタバコの煙も鼻唄のジャズもない。 本当は、あんたのこと―― そこまで考えたとき、乱視ではない原因で世界が滲んだが、気のせいだと思い込むために眼を閉じる。 ブルーノートの旋律はいつまでも耳の中に残っている。当分、眠れそうにはない。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! - ひゃっっほぉぉぉぉい!! -- &new{2012-11-26 (月) 08:12:29}; - いいもん見させてもらいました!!! -- &new{2012-11-29 (木) 23:53:00}; - おおう…新世界が開けた。センパイえろいな! -- &new{2012-12-13 (木) 00:48:04}; - 萌え! -- &new{2013-01-20 (日) 17:05:06}; - 雰囲気がたまらん この二人に感じていたモヤモヤはこれだったのか! -- &new{2013-02-03 (日) 23:28:48}; - ありがとうありがとう -- &new{2013-12-14 (土) 16:15:00}; #comment
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