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#title(闇金ウシジマくん 高田×丑嶋 「ヘタレくんとツンデレくん」) 闇金ウシジマくんで高田×社長。エロなし。取り立てくんをベースに社長の座敷犬状態のヘタレイケメン×ツンデレ女王様な話です。社長がらしくない程優しいですが、 甘く穏やかな話しが書きたいと思いまして・・・。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 高田は大手レコードーショップで買い物を終え、自分が借りているアパートに戻ってきた。外から自分の部屋を見ると、部屋には灯りがついている。一人暮らしの高田 だが、美麗な見かけの為に相手には苦労したためしがないので、誰かが部屋で高田を待っている状況は別に珍しくはない。 けれど、今日部屋に居るのはそんじょそこらの女ではない。早くあそこに帰りたいと急く反面、嬉しくてここで眺めていたいと思う。 「好いもんだな」 部屋の灯りを見ながら呟くと、冬の冷たい風が急に気紛れをおこして強く吹き始めた。 「寒いっ」 買ったばかりのインナーを見せつける為に恰好をつけてコートの前を開けていたが、堪らず両手で前を合わせながらアパートの中に飛び込んで行った。 ー--------------------------------------------------------------------------- 「ただいま」 部屋の出入り口のドアを開け、靴を脱ぐ。 「ん?美味しそうな匂い」 ふわりといい匂いがした。唾液が一気に湧き、胃が空腹で切なくなる。小さな玄関に靴を置き、部屋の一番奥にある台所の方に歩いて行く。近づけば近づくほど匂いも 近くなる。1DKの小さな我が家だが、何だかいつもより居心地がよく感じるのは匂いのお陰だろうか。 数歩歩くだけで台所との間のドアの前に行きつき、ノブに手をかけて開けた。 「社長、戻りました」 「おう」 台所には丑嶋が立っていて、鍋を掻き混ぜながら返事をした。高田は丑嶋の大きな背中にそれとなく手を這わし、鍋の中を覗いた。中には茶色のスープと大きく切られ た肉と野菜の塊がグツグツと煮込まれている。 「カレーですか?」 「あ?ビーフシチューだ。匂いで分かるだろうが。もう少しで出来るから」 言われてみれば匂いがカレーとビーフシチューでは全く違うのだが、料理が出来ない高田にとっては、見かけにおいてはカレーとビーフシチューの見分けはつかない。 会社の前で別れ、レコードショップに向かった高田と、高田の部屋に向かった丑嶋。高田が留守にした時間は2時間近くだが、料理をしないので2時間足らずでビーフ シチューを作れるのが手早いのかも分からない。 美味しそうな匂いがした時点で何かが台所で行われているのは分かっていたが、まさか鍋まで持ち出して本格的に料理してくれているとは思わなかった。 何しろ、高田としては我が家の台所なのに、丑嶋が今使っている鍋などの調理器具があったことさえも知らなかったのだ。恐らく調理器具自体は以前に部屋に来た何人 かの女性達が買いそろえてくれて、丑嶋が来る前からあったのだろう。それでも知らなかったのは、来てくれた女性達が料理する姿なんて一切興味がなく、出来る料理に も興味が左程なくて、今のように台所に乗り込んで来たのは初めてとも言えるからだ。 焦げないように鍋を掻き混ぜる丑嶋を見ていると、後ろから腰に腕を回して広い背中に顔を埋めてしまいたくなってしまう。そんなことしたら丑嶋はどういう反応をす るだろうか。いつも通り冷静さを崩さずいるだろうか。それとも、照れ隠しに怒りだすだろうか。 けれど、怒られても少し、いや、かなり困ってしまう。何しろここには刃物があるので、人の頭を金属バットで砕いてしまうような男相手では虎穴に虎の子を取りに行 くようなものだ。 高田は腰に近づきはじめていた腕を急遽進路変更し、鍋を掻き回すお玉を握る手に向けて行く。 そっと近づけ、後少し、後少しと近づけ、指先があと少しで触れる、とまでなった時、丑嶋の手が動いた。 「ほら」 「は?!」 丑嶋の手は握っていたお玉を鍋の上にあげ、高田の手に握らせた。お玉に入っていたビーフシチューはお鍋の中に落ち、少しだけ跳ねて鍋の表面に付いた。 「は?!これをどうしたら・・・」 持たされたお玉に戸惑う高田に目も合わせず、丑嶋は忙しげにコンロから離れ、机の上に乗せてあったボールの方に向かった。 「いいって言うまで掻き混ぜてろ。俺はその間にこっちをやるから」 戸惑ったままで手を動かさない高田と違い、丑嶋はボールの中に入っている野菜に調味料を掛け、手早くサラダを作っていく。 「混ぜるって、えー・・・」 やれと言われたものの、ただ単純に混ぜるだけの作業でも、やったことがない高田にはそれさえも上手に出来ない。 モジモジと手を蠢かしていると、丑嶋が大股で歩いてコンロの方に来た。 「こうだ、こう」 言うが早いか、丑嶋はお玉を握る高田の手の上に手を重ね、ゆっくりと鍋の底から掻き混ぜさせた。 「焦げないように、こうやってやるんだ」 自分から触れようとしていたのに、先に触れられてしまった。かえって高田の方が緊張して赤くなってしまう始末だった。 高田がぎこちなく手を動かし始めると、丑嶋の手が離れた。 「サラダもすぐ出来るから、そうしたらもう掻き混ぜなくていいぞ。終わったら、そこに置いてある皿に盛れ」 丑嶋は高田の顔の赤さには全く気付かず、再び机の方に戻って行く。 高田は丑嶋の方を振り返るが、手は言われたままにお玉を動かしている。折角の共同作業だったというのに、触れられたのは本当に一瞬だ。相手が女だったら自分はこ んなにヘタレではないのに、と気落ちしてしまう。 もし高田に犬の尻尾がついていたら、さぞかし情けなさげに下に向かって垂れさがってしまっていることだろう。本当ならご主人さまに飛びついて喜びを態度に表して 興奮していまいたいのに、こう、あまりにつれないご主人さまだと、高田の方のテンションだって下降してしまう。 丑嶋は、高田のテンションを知らず内に上げ、次の瞬間に急降下させたことなど知らないし、考えもしない。味を調えたサラダの味見をするべくボールの中にスプーン を入れ、それをペロリと舐め上げる。赤に近い桃色の舌、銀のスプーン、薄クリームのドレッシングがそこに絡む。舌の先がスプーンにめり込んだかと思うと、こそぐ様 に付着していたドレッシングを舐めとる。赤に近い桃色の舌に移動した薄クリーム色のドレッシングは舌ごと口内に招き入れられ、ほんの少しの間を置いて嚥下によって 丑嶋の体内に入って行った。ボコリと上下運動した喉仏は綺麗な肌色で、ドレッシングが進んでいく体内は舌と同様に赤に近い桃色なのだろうか。 ただ単なる味見をしている光景なのに、何故か妖しさを漂わせる。高田は少し鼓動が五月蠅くなったのを感じ、慌てて視線を鍋に移して一心不乱に手を動かす。 本当に情けない。中学生ではあるまいし、興奮する沸点が我ながら丑嶋相手では引きすぎると思う。 「うん。これぐらいだな。高田、もう出来たぞ」 高田は、本来なら卑猥でも何でもない光景に僅かばかり興奮していたが、我に帰ってコンロの火を止め、用意されていた二つの皿にシチューを盛りつけてる。まずは液 状部分のシチューを入れ、続いて大きな具材を見栄え良く入れる。皿の淵についたシチューは綺麗な手拭いで拭きとる。 机に置いて見ると、素人ながら綺麗に盛りつけられたのではないかと思う。 丑嶋もシチューの皿より小さい皿を出し、サラダを盛りつけていく。数種類の野菜の彩りよく、高田の盛ったシチューよりもだいぶ綺麗だ。感心していると、丑嶋の視 線がビーフシチューを盛った皿に注がれた。 「綺麗に出来たじゃねェか」 丑嶋はニヤリ、と笑いながら高田を褒めてくれる。テンションの下がっていた高田だが、一気に嬉しくなってしまった。もし高田に犬の尻尾がついていたら、空へ舞い 上がれる速度で尻尾を振っていただろう。 「それじゃ、食うか」 それぞれ各自、出来た料理の皿を持ち、台所から部屋に移る。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 広い部屋ではないが、綺麗に片づけてはある。いつも使っている机を拭き、食卓へと変化させる。皿を置き、丑嶋が座る。高田は腕に掛けていたレコードショップの袋 から買ってきたばかりのDVDを出し、デッキにセットした。 再生が始まると、食事も始める。 「うまいっ」 ビーフシチューを一口食べて、食事中だと言うのに思わず大きな声を出してしまった。丑嶋は何も言わない。だが、テレビに映るのは面白くない他の映画の予告篇なの に、口角が僅かばかりに上がり、高田には笑顔のように見えた。 「社長、うまいです」 わざわざ二回も言う必要ではないのに、高田はわざわざ丑嶋の顔を見ながら言った。 「いいから、DVD見てろよ」 「はい・・・」 失敗したかなぁ、と思った高田だが、それとなくだが、丑嶋の横顔は先程よりも嬉しそうに見えた。めったに見せてくれない笑顔に、高田も嬉しくなった。 嬉しいやら、美味しいやらで思わず含み笑いを堪えていると、DVDは本編に突入した。 今日買ってきたのは、大手会社制作のCGアニメーションだ。ついこの前、丑嶋とマサルと加納と小百合、それに高田の4人で映画館に観に行った作品のシリーズの一 番最初の作品だ。 この前観にいったのは3作目だった。丑嶋はこの作品のシリーズを見るのは初めてらしかった。だが、映画館の帰りに珍しく沢山喋っていたので、おそらく気に入った のだろうと感じ、高田がわざわざこうしてDVDを買って来たのだ。 最初はただ単に丑嶋との共通の話題となればいいと思い、1作目と2作目のDVDをプレゼントするつもりだった。 だから、今朝、高田がプレゼントすると申し入れたところ、丑嶋は高田にそんなことをされる覚えはないと断ってきた。 別に下心があったわけではないので、せっかく気に入ったなら、1作目から見た方が先日観た3作目の面白さが分かると言い、半ば自分勝手に高田が会社帰りに買って しまうと宣言したのだった。 そしたら何と、丑嶋が一人で見るより二人で見る方が楽しいから、と一緒に観ようと申し出て来たのだ。しかも、高田がオーディオショップに買いに行っている間、高 田の家で食事を作って待っていてくれると言ってくれたのだ。 正直、高田は飛び上りそうなほど驚いた。驚くと格好悪いのではないのだろうか、と思ったので、表面上はいつも通りの長い髪を指で弄りながら笑顔で応じたのだが。 まさか、丑嶋がそんなことを言ってくれるとは想像も出来なかった。そんなこと言われては、下心なんてなかったのに、下心が生まれてきても仕方がないではないか。 何故丑嶋は、今の状態のような素敵な提案をしてくれたのだろうか。もしかしたら、下心をもっても良いということなのだろうか。 こういうことをグルグル考えること自体が下心の始まりと言えなくもない。テレビの画面には沢山の動くおもちゃ達が出てきて楽しげのようだが、高田は映画どころで はなかった。ただ、冷めてしまう前に食事を美味しいそうに平らげることで精一杯だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 食事を終え、DVD一本を見終わった後、丑嶋はきっちり片付けをしてくれていた。高田も微力ながら手伝っているが、ほとんど何も出来ないも同じだったと自覚して いる。ありがたいことに、丑嶋が洗って拭いた皿を、自宅だと言うのに収納場所さえもおぼつかなく、言われるがままにしまっただけで「うん」、と機嫌のよさげな声を 頂いた。 ろくに台所に入ったことがないし、片付けなんてしたことがなかった高田だが、何となく、何となくだが、こういうのもいいと感じてしまうのだった。 丑嶋が残った食材を入れようと冷蔵庫を開けると、先ほどの機嫌のよさげな声とはかなり響きの異なる声を上げた。 「おい、何で水と調味料ぐらいしか入ってねェんだよ」 「あー・・・、いや・・・」 別にとやかく言われても構わないのだが、丑嶋の低い声には適度な緊張感を自然と生む作用があるようだ。高田は恐縮しながら丑嶋の後ろから冷蔵庫を覗きこんだ。 「あ、でも、確か他にも入ってたような気がします」 言い訳をするように冷蔵庫の中を探すと、申し訳程度の食材があった。ただ、入っているのは豚肉のスライスパックやら、もとは数枚入りだったはずなのに、半分干か らびかけた物が一枚のみ残っている油揚げの袋やら、高田には最早何なのか思い出す気にもなれない茶色のキノコらしき真空パックが入っている位だ。これでは、「ほら、 水と調味料だけではないでしょ」、と偉そうに言えないだろうと言う事は、料理をしない高田でも分かった。 「この、キノコ・・・?何でしょうか?」 「ナメコ。汁物にすると美味いんだ。お前なぁ、名前も知らないで買ってくるんじゃねェぞ」 「あー、そうそうナメコですね」 適当に相槌を打ってみる。心許ない食材はでさえ、数日前に使いやすいという理由で手を出している女の奴隷くんが泊まって行った時に、料理を作ってくれたので残っ ていた物だ。せっかく二人でそれなりにいい雰囲気になっている時に、そんなことを言うべきではないので言葉を濁す。 高田が髪の毛を弄りながら苦笑いをすると、丑嶋は冷蔵庫を閉めながら上目づかいで何かを考えて始めたようだ。 「豚肉に、油揚げ、ナメコに、今日の残りの物と・・・。うん、味噌と生姜とくらいあれば、味噌汁と、煮物と、豚の生姜焼きは作れるか」 今ある物と、足りない食材をすぐ掛け合わせ、すぐにバランスのよさそうな献立を思いつく。高田には出来ない芸当なので、素直に感心してしまう。 しかし、そんな献立を思いつかれても、高田には作る事は出来ない。 「よし、明日にでも作りに来てやるか。外食ばかりじゃ栄養偏るしな」 「はい?!作りに来るって、社長がですか?!明日もですか?!」 「何だ、嫌なのか?」 「いえいえいえ、凄く嬉しいですけど」 突然ありがたい申し出を受け、高田は驚く。嫌な訳ないではないか。むしろ、今日のような美味しい料理だったら飽きることなく食べたいし、及ばずながらでも、丑嶋 の手伝いだったら料理も片付けも苦にならないし、楽しいくらいだ。だが、別に強請ったのではないのに、何故丑嶋がそんな気を使ってくれる必要があるのか。ただ単に 社員である高田の食生活を気遣っているにしても、それでは通い妻のごとく丑嶋が連日来てくれる理由としては弱すぎる。 「何でそんな・・・」 食欲が満たされ、すっかり忘れていた性欲というには小さい下心が再び芽生え始めてしまいそうだ。もしかして、と高田が身を乗り出し、丑嶋の頬に手を伸ばす。丑嶋 は明後日の方向を見つめ、小さく呟く。 「さっきのアニメ、まだ2作目があるんだろ?明日観ようぜ」 「ア?!アニメ、ですか。そうですね・・・」 よっぽどあのカウボーイと宇宙レンジャーの出るアニメ映画が気に入ったのか、と悲しくも納得するしかない理由に頷く。だが、果たしてその理由は丑嶋の本心なのだ ろうか、とも思う。高田がプレゼントすると言っているのだから、わざわざ高田の家に来て料理をしなくても、ただ今日、持って帰れば済むことではないか。 高田は躊躇したが、丑嶋の頬に伸ばした手を前に少しずつ突き出していく。 もう少し、となった時、丑嶋が後ろに一歩下がって笑った。 「明日、な。今日はもう帰る」 そう言うと、丑嶋は高田の脇をすり抜けて玄関の方に歩いて行き、すぐさま外に出て行ってしまった。 高田は声をかける事も、追いかける事もしなかった。 それよりも、先ほどの丑嶋の「明日」という言葉が、果たして何を示しているのかが気になって仕方が無かった。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!お目汚し失礼致しました。高田×社長、竹本×社長等、社長受大好き派ですので、やっぱり高田×社長です。 - なんて良い奥さんなんですか社長・・・・・!!!!! -- [[れな]] &new{2011-03-20 (日) 17:50:43}; - 完結してるみたいですけど社長の言う「明日」の部分が読みたくて仕方がないっす。へタレわんこに抱かれちゃう女王様うさぎにモンモンです。 -- &new{2011-03-20 (日) 23:10:33}; - 明日が気になりすぎて生殺し状態です… -- &new{2011-03-20 (日) 23:53:41}; #comment
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#title(闇金ウシジマくん 高田×丑嶋 「ヘタレくんとツンデレくん」) 闇金ウシジマくんで高田×社長。エロなし。取り立てくんをベースに社長の座敷犬状態のヘタレイケメン×ツンデレ女王様な話です。社長がらしくない程優しいですが、 甘く穏やかな話しが書きたいと思いまして・・・。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 高田は大手レコードーショップで買い物を終え、自分が借りているアパートに戻ってきた。外から自分の部屋を見ると、部屋には灯りがついている。一人暮らしの高田 だが、美麗な見かけの為に相手には苦労したためしがないので、誰かが部屋で高田を待っている状況は別に珍しくはない。 けれど、今日部屋に居るのはそんじょそこらの女ではない。早くあそこに帰りたいと急く反面、嬉しくてここで眺めていたいと思う。 「好いもんだな」 部屋の灯りを見ながら呟くと、冬の冷たい風が急に気紛れをおこして強く吹き始めた。 「寒いっ」 買ったばかりのインナーを見せつける為に恰好をつけてコートの前を開けていたが、堪らず両手で前を合わせながらアパートの中に飛び込んで行った。 ー--------------------------------------------------------------------------- 「ただいま」 部屋の出入り口のドアを開け、靴を脱ぐ。 「ん?美味しそうな匂い」 ふわりといい匂いがした。唾液が一気に湧き、胃が空腹で切なくなる。小さな玄関に靴を置き、部屋の一番奥にある台所の方に歩いて行く。近づけば近づくほど匂いも 近くなる。1DKの小さな我が家だが、何だかいつもより居心地がよく感じるのは匂いのお陰だろうか。 数歩歩くだけで台所との間のドアの前に行きつき、ノブに手をかけて開けた。 「社長、戻りました」 「おう」 台所には丑嶋が立っていて、鍋を掻き混ぜながら返事をした。高田は丑嶋の大きな背中にそれとなく手を這わし、鍋の中を覗いた。中には茶色のスープと大きく切られ た肉と野菜の塊がグツグツと煮込まれている。 「カレーですか?」 「あ?ビーフシチューだ。匂いで分かるだろうが。もう少しで出来るから」 言われてみれば匂いがカレーとビーフシチューでは全く違うのだが、料理が出来ない高田にとっては、見かけにおいてはカレーとビーフシチューの見分けはつかない。 会社の前で別れ、レコードショップに向かった高田と、高田の部屋に向かった丑嶋。高田が留守にした時間は2時間近くだが、料理をしないので2時間足らずでビーフ シチューを作れるのが手早いのかも分からない。 美味しそうな匂いがした時点で何かが台所で行われているのは分かっていたが、まさか鍋まで持ち出して本格的に料理してくれているとは思わなかった。 何しろ、高田としては我が家の台所なのに、丑嶋が今使っている鍋などの調理器具があったことさえも知らなかったのだ。恐らく調理器具自体は以前に部屋に来た何人 かの女性達が買いそろえてくれて、丑嶋が来る前からあったのだろう。それでも知らなかったのは、来てくれた女性達が料理する姿なんて一切興味がなく、出来る料理に も興味が左程なくて、今のように台所に乗り込んで来たのは初めてとも言えるからだ。 焦げないように鍋を掻き混ぜる丑嶋を見ていると、後ろから腰に腕を回して広い背中に顔を埋めてしまいたくなってしまう。そんなことしたら丑嶋はどういう反応をす るだろうか。いつも通り冷静さを崩さずいるだろうか。それとも、照れ隠しに怒りだすだろうか。 けれど、怒られても少し、いや、かなり困ってしまう。何しろここには刃物があるので、人の頭を金属バットで砕いてしまうような男相手では虎穴に虎の子を取りに行 くようなものだ。 高田は腰に近づきはじめていた腕を急遽進路変更し、鍋を掻き回すお玉を握る手に向けて行く。 そっと近づけ、後少し、後少しと近づけ、指先があと少しで触れる、とまでなった時、丑嶋の手が動いた。 「ほら」 「は?!」 丑嶋の手は握っていたお玉を鍋の上にあげ、高田の手に握らせた。お玉に入っていたビーフシチューはお鍋の中に落ち、少しだけ跳ねて鍋の表面に付いた。 「は?!これをどうしたら・・・」 持たされたお玉に戸惑う高田に目も合わせず、丑嶋は忙しげにコンロから離れ、机の上に乗せてあったボールの方に向かった。 「いいって言うまで掻き混ぜてろ。俺はその間にこっちをやるから」 戸惑ったままで手を動かさない高田と違い、丑嶋はボールの中に入っている野菜に調味料を掛け、手早くサラダを作っていく。 「混ぜるって、えー・・・」 やれと言われたものの、ただ単純に混ぜるだけの作業でも、やったことがない高田にはそれさえも上手に出来ない。 モジモジと手を蠢かしていると、丑嶋が大股で歩いてコンロの方に来た。 「こうだ、こう」 言うが早いか、丑嶋はお玉を握る高田の手の上に手を重ね、ゆっくりと鍋の底から掻き混ぜさせた。 「焦げないように、こうやってやるんだ」 自分から触れようとしていたのに、先に触れられてしまった。かえって高田の方が緊張して赤くなってしまう始末だった。 高田がぎこちなく手を動かし始めると、丑嶋の手が離れた。 「サラダもすぐ出来るから、そうしたらもう掻き混ぜなくていいぞ。終わったら、そこに置いてある皿に盛れ」 丑嶋は高田の顔の赤さには全く気付かず、再び机の方に戻って行く。 高田は丑嶋の方を振り返るが、手は言われたままにお玉を動かしている。折角の共同作業だったというのに、触れられたのは本当に一瞬だ。相手が女だったら自分はこ んなにヘタレではないのに、と気落ちしてしまう。 もし高田に犬の尻尾がついていたら、さぞかし情けなさげに下に向かって垂れさがってしまっていることだろう。本当ならご主人さまに飛びついて喜びを態度に表して 興奮していまいたいのに、こう、あまりにつれないご主人さまだと、高田の方のテンションだって下降してしまう。 丑嶋は、高田のテンションを知らず内に上げ、次の瞬間に急降下させたことなど知らないし、考えもしない。味を調えたサラダの味見をするべくボールの中にスプーン を入れ、それをペロリと舐め上げる。赤に近い桃色の舌、銀のスプーン、薄クリームのドレッシングがそこに絡む。舌の先がスプーンにめり込んだかと思うと、こそぐ様 に付着していたドレッシングを舐めとる。赤に近い桃色の舌に移動した薄クリーム色のドレッシングは舌ごと口内に招き入れられ、ほんの少しの間を置いて嚥下によって 丑嶋の体内に入って行った。ボコリと上下運動した喉仏は綺麗な肌色で、ドレッシングが進んでいく体内は舌と同様に赤に近い桃色なのだろうか。 ただ単なる味見をしている光景なのに、何故か妖しさを漂わせる。高田は少し鼓動が五月蠅くなったのを感じ、慌てて視線を鍋に移して一心不乱に手を動かす。 本当に情けない。中学生ではあるまいし、興奮する沸点が我ながら丑嶋相手では引きすぎると思う。 「うん。これぐらいだな。高田、もう出来たぞ」 高田は、本来なら卑猥でも何でもない光景に僅かばかり興奮していたが、我に帰ってコンロの火を止め、用意されていた二つの皿にシチューを盛りつけてる。まずは液 状部分のシチューを入れ、続いて大きな具材を見栄え良く入れる。皿の淵についたシチューは綺麗な手拭いで拭きとる。 机に置いて見ると、素人ながら綺麗に盛りつけられたのではないかと思う。 丑嶋もシチューの皿より小さい皿を出し、サラダを盛りつけていく。数種類の野菜の彩りよく、高田の盛ったシチューよりもだいぶ綺麗だ。感心していると、丑嶋の視 線がビーフシチューを盛った皿に注がれた。 「綺麗に出来たじゃねェか」 丑嶋はニヤリ、と笑いながら高田を褒めてくれる。テンションの下がっていた高田だが、一気に嬉しくなってしまった。もし高田に犬の尻尾がついていたら、空へ舞い 上がれる速度で尻尾を振っていただろう。 「それじゃ、食うか」 それぞれ各自、出来た料理の皿を持ち、台所から部屋に移る。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 広い部屋ではないが、綺麗に片づけてはある。いつも使っている机を拭き、食卓へと変化させる。皿を置き、丑嶋が座る。高田は腕に掛けていたレコードショップの袋 から買ってきたばかりのDVDを出し、デッキにセットした。 再生が始まると、食事も始める。 「うまいっ」 ビーフシチューを一口食べて、食事中だと言うのに思わず大きな声を出してしまった。丑嶋は何も言わない。だが、テレビに映るのは面白くない他の映画の予告篇なの に、口角が僅かばかりに上がり、高田には笑顔のように見えた。 「社長、うまいです」 わざわざ二回も言う必要ではないのに、高田はわざわざ丑嶋の顔を見ながら言った。 「いいから、DVD見てろよ」 「はい・・・」 失敗したかなぁ、と思った高田だが、それとなくだが、丑嶋の横顔は先程よりも嬉しそうに見えた。めったに見せてくれない笑顔に、高田も嬉しくなった。 嬉しいやら、美味しいやらで思わず含み笑いを堪えていると、DVDは本編に突入した。 今日買ってきたのは、大手会社制作のCGアニメーションだ。ついこの前、丑嶋とマサルと加納と小百合、それに高田の4人で映画館に観に行った作品のシリーズの一 番最初の作品だ。 この前観にいったのは3作目だった。丑嶋はこの作品のシリーズを見るのは初めてらしかった。だが、映画館の帰りに珍しく沢山喋っていたので、おそらく気に入った のだろうと感じ、高田がわざわざこうしてDVDを買って来たのだ。 最初はただ単に丑嶋との共通の話題となればいいと思い、1作目と2作目のDVDをプレゼントするつもりだった。 だから、今朝、高田がプレゼントすると申し入れたところ、丑嶋は高田にそんなことをされる覚えはないと断ってきた。 別に下心があったわけではないので、せっかく気に入ったなら、1作目から見た方が先日観た3作目の面白さが分かると言い、半ば自分勝手に高田が会社帰りに買って しまうと宣言したのだった。 そしたら何と、丑嶋が一人で見るより二人で見る方が楽しいから、と一緒に観ようと申し出て来たのだ。しかも、高田がオーディオショップに買いに行っている間、高 田の家で食事を作って待っていてくれると言ってくれたのだ。 正直、高田は飛び上りそうなほど驚いた。驚くと格好悪いのではないのだろうか、と思ったので、表面上はいつも通りの長い髪を指で弄りながら笑顔で応じたのだが。 まさか、丑嶋がそんなことを言ってくれるとは想像も出来なかった。そんなこと言われては、下心なんてなかったのに、下心が生まれてきても仕方がないではないか。 何故丑嶋は、今の状態のような素敵な提案をしてくれたのだろうか。もしかしたら、下心をもっても良いということなのだろうか。 こういうことをグルグル考えること自体が下心の始まりと言えなくもない。テレビの画面には沢山の動くおもちゃ達が出てきて楽しげのようだが、高田は映画どころで はなかった。ただ、冷めてしまう前に食事を美味しいそうに平らげることで精一杯だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 食事を終え、DVD一本を見終わった後、丑嶋はきっちり片付けをしてくれていた。高田も微力ながら手伝っているが、ほとんど何も出来ないも同じだったと自覚して いる。ありがたいことに、丑嶋が洗って拭いた皿を、自宅だと言うのに収納場所さえもおぼつかなく、言われるがままにしまっただけで「うん」、と機嫌のよさげな声を 頂いた。 ろくに台所に入ったことがないし、片付けなんてしたことがなかった高田だが、何となく、何となくだが、こういうのもいいと感じてしまうのだった。 丑嶋が残った食材を入れようと冷蔵庫を開けると、先ほどの機嫌のよさげな声とはかなり響きの異なる声を上げた。 「おい、何で水と調味料ぐらいしか入ってねェんだよ」 「あー・・・、いや・・・」 別にとやかく言われても構わないのだが、丑嶋の低い声には適度な緊張感を自然と生む作用があるようだ。高田は恐縮しながら丑嶋の後ろから冷蔵庫を覗きこんだ。 「あ、でも、確か他にも入ってたような気がします」 言い訳をするように冷蔵庫の中を探すと、申し訳程度の食材があった。ただ、入っているのは豚肉のスライスパックやら、もとは数枚入りだったはずなのに、半分干か らびかけた物が一枚のみ残っている油揚げの袋やら、高田には最早何なのか思い出す気にもなれない茶色のキノコらしき真空パックが入っている位だ。これでは、「ほら、 水と調味料だけではないでしょ」、と偉そうに言えないだろうと言う事は、料理をしない高田でも分かった。 「この、キノコ・・・?何でしょうか?」 「ナメコ。汁物にすると美味いんだ。お前なぁ、名前も知らないで買ってくるんじゃねェぞ」 「あー、そうそうナメコですね」 適当に相槌を打ってみる。心許ない食材はでさえ、数日前に使いやすいという理由で手を出している女の奴隷くんが泊まって行った時に、料理を作ってくれたので残っ ていた物だ。せっかく二人でそれなりにいい雰囲気になっている時に、そんなことを言うべきではないので言葉を濁す。 高田が髪の毛を弄りながら苦笑いをすると、丑嶋は冷蔵庫を閉めながら上目づかいで何かを考えて始めたようだ。 「豚肉に、油揚げ、ナメコに、今日の残りの物と・・・。うん、味噌と生姜とくらいあれば、味噌汁と、煮物と、豚の生姜焼きは作れるか」 今ある物と、足りない食材をすぐ掛け合わせ、すぐにバランスのよさそうな献立を思いつく。高田には出来ない芸当なので、素直に感心してしまう。 しかし、そんな献立を思いつかれても、高田には作る事は出来ない。 「よし、明日にでも作りに来てやるか。外食ばかりじゃ栄養偏るしな」 「はい?!作りに来るって、社長がですか?!明日もですか?!」 「何だ、嫌なのか?」 「いえいえいえ、凄く嬉しいですけど」 突然ありがたい申し出を受け、高田は驚く。嫌な訳ないではないか。むしろ、今日のような美味しい料理だったら飽きることなく食べたいし、及ばずながらでも、丑嶋 の手伝いだったら料理も片付けも苦にならないし、楽しいくらいだ。だが、別に強請ったのではないのに、何故丑嶋がそんな気を使ってくれる必要があるのか。ただ単に 社員である高田の食生活を気遣っているにしても、それでは通い妻のごとく丑嶋が連日来てくれる理由としては弱すぎる。 「何でそんな・・・」 食欲が満たされ、すっかり忘れていた性欲というには小さい下心が再び芽生え始めてしまいそうだ。もしかして、と高田が身を乗り出し、丑嶋の頬に手を伸ばす。丑嶋 は明後日の方向を見つめ、小さく呟く。 「さっきのアニメ、まだ2作目があるんだろ?明日観ようぜ」 「ア?!アニメ、ですか。そうですね・・・」 よっぽどあのカウボーイと宇宙レンジャーの出るアニメ映画が気に入ったのか、と悲しくも納得するしかない理由に頷く。だが、果たしてその理由は丑嶋の本心なのだ ろうか、とも思う。高田がプレゼントすると言っているのだから、わざわざ高田の家に来て料理をしなくても、ただ今日、持って帰れば済むことではないか。 高田は躊躇したが、丑嶋の頬に伸ばした手を前に少しずつ突き出していく。 もう少し、となった時、丑嶋が後ろに一歩下がって笑った。 「明日、な。今日はもう帰る」 そう言うと、丑嶋は高田の脇をすり抜けて玄関の方に歩いて行き、すぐさま外に出て行ってしまった。 高田は声をかける事も、追いかける事もしなかった。 それよりも、先ほどの丑嶋の「明日」という言葉が、果たして何を示しているのかが気になって仕方が無かった。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!お目汚し失礼致しました。高田×社長、竹本×社長等、社長受大好き派ですので、やっぱり高田×社長です。 - なんて良い奥さんなんですか社長・・・・・!!!!! -- [[れな]] &new{2011-03-20 (日) 17:50:43}; - 完結してるみたいですけど社長の言う「明日」の部分が読みたくて仕方がないっす。へタレわんこに抱かれちゃう女王様うさぎにモンモンです。 -- &new{2011-03-20 (日) 23:10:33}; - 明日が気になりすぎて生殺し状態です… -- &new{2011-03-20 (日) 23:53:41}; #comment
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
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