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#title(グリーン・ホーネット ブリットとカトー 「俺達に明日はある・後編」) 緑蜂 社長×助手 連投すみません。 半生注意。>>31の続きで、映画「緑蜂」より社長と助手、+秘書。 ケンカップルと世話焼きオカン的関係。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 「……力ト-、待てよ!俺が悪かった」 「いいよもう、しょせん君にはわからないだろうから」 「違う、さっきのあれは、本気じゃなかったんだ。お前の友達の好みをサイテーなんて言っちまって……その、ホントすまなかった」 よっぽど腹に据えかねたのか、相棒は纏わり付く俺をほとんど無視してバイクに跨がり、ヘルメットを頭に乗せた。 焦りと後悔で動揺した俺は、つい声を荒げて怒鳴りつけた。 「だってお前が、俺が嫉妬してるなんて言うから!売り言葉に買い言葉ってやつだったんだよ」 「また、僕のせいか」 横目で冷笑されて俺はますますカッとなり、なりふり構わず叫んでしまった。 「そうだよ、お前のせいだ!お前が俺の知らない店で、俺の知らない奴らと飯なんか食ってるからだ。なんだよ、バカみたいに大笑いしやがって。あんな顔、俺の前じゃ滅多にしないくせに!」 一息にまくし立ててからはっと我に返ると、相棒は黒目勝ちな目を精一杯開いて俺を見つめ、呆気に取られているようだった。きっと今の俺はフラミンゴみたいに、全身が真っ赤になっているに違いない。 相棒はやがて、深いシワを眉間に刻んだ。この表情には見覚えがある。バカをやった俺を叱る前に、親父がよくこんな顔をしていた。 しかしこいつは、俺を叱り飛ばしたり、嘲笑ったりはしなかった。 「ブリシト、君……そんなことで怒ってたのか」 相棒はシートに横向きに座り直して、俺をまっすぐに見た。その声は穏やかで、意外な反応にちょっと驚いた後俺は、自嘲気味に呟いた。 「ああ、そうだ。小さい男だと笑ってくれよ」 「バカだな、君は。つくづくバカだ」 笑えとは言ったがバカにしろとは言ってないぞ、と小声で文句を付けた俺に構わず、奴はさらに言葉を続けた。 「僕が君の前で笑わないって?そりゃ、君のジョークはその、何て言うか……」 「イマイチ、か?」 「そう。でも全然笑ってないって訳じゃないだろ。それに今日は久しぶりに昔馴染みに会えて、いろんな話が出来て嬉しかったから、顔も自然と緩んだのさ」 「毎日会ってる俺が相手じゃ、簡単に顔は緩まないってか」 「そういう風に言うなよ。君だって、例えば女の子と会ってる時には、僕といる時とは違う顔や態度になるだろ」 「そりゃ、まあ……」 「悪い意味じゃなく、相手によって態度が変わるなんてよくあることさ。それに笑わないからって、楽しくないとは限らないよ」 バイクに腰掛け、下に伸ばした両手を組んで相棒は笑った。和やかなムードに流された俺は、思わずバカみたいな質問をしてしまった。 「力ト-、俺といてお前、楽しいか?」 「楽しくなけりゃパートナーにはならないし、ましてや『兄弟』なんて呼ばないよ。まあいろいろ問題はあるけど、僕は君と一緒にいるのが……好きだ」 茶化しもせず真剣に答えた自分に照れたのか、相棒は視線を地面に落とした。俺は急に俺の心臓の音が、ドラムロールのように激しく耳に轟くのを感じた。 相棒は照れ臭さを打ち消すようにパン、と手を叩いて鳴らすと、シートから立ち上がって俺を再び見つめた。 「ブリシト、そろそろ帰ろう。また危ない目に合わないうちに、君も早いとこ車に乗って……」 言い終える前に、体が動いた。感極まった俺は相棒の顔を両手で挟み、やや熱烈なキスをその両頬に一回ずつと、額にも一回、つまり合計三回もしてしまった。 さらに、驚く奴の肩と背中に腕を回して強く抱き寄せた。勢いよく抱きしめたせいで、相棒の頭からヘルメットが落ちた。 相棒はうろたえまくり、なおもハグをやめない俺の腕から逃げようともがいた。 「……○□×☆、△☆×!ブリシト、ブリシト!」 焦るあまり中国語で喚く相棒と、その体を捕まえたままの俺の側を、ほろ酔い気味の黒人の老夫婦が通りかかった。 「いよう、お熱いねえお二人さん!」 「あなた、若い子をからかっちゃ悪いわよ。かわいいカップルじゃないの」 ごめんなさいね、と言い残して亭主の背中を押す夫人を見送った後、俺達は拍子抜けした顔を見合わせた。 「お熱いね、だってさ」 「……!」 亭主のからかいを繰り返した俺を、顔を真っ赤に染めた相棒が睨んだ。 次の瞬間、左足に強烈な痛みを感じ、続いて左頬をすさまじい衝撃に襲われた。相棒の右足が俺の足を踏み付け、驚きのけ反った俺の顔面を、奴の平手が思いっきり張り飛ばしやがったんだ。 「いてえー!力ト-、お前本気で踏んで、殴ったな!」 「……君って奴は、どこまで人をからかったら気が済むんだ!真面目に取り合った僕がバカだった!」 「力ト-、何言ってる。からかってなんかいないぞ」 「嘘つけ、もう君の言うことなんか信じない!」 「待てよ、からかったって、キスしたことがか?」 「そうだよ!おかげで、通行人にバカにされた」 「あの夫婦はバカになんてしてないぞ。ただ、その、カップルと間違われただけで」 「よけい悪いよ!」 「まあ落ち着け。お前にキスしたのには自分でもびっくりしてるが、嬉しくてついしちゃったんだよ。でも別にいいだろ、この国じゃ普通に親愛の情の証だ」 物心ついてから男にキスしたのはお前が初めてだけどな、と痛む頬をさすりつつ付け加えると、相棒はちっとも嬉しくないと言いたげな仏頂面を作った。 「力ト-、怒るなよ。俺達パートナーで、ションディーだろ。それとも、照れてる?」 「……もういい!」 道に転がったヘルメットを拾い上げて被った相棒は、勢いよくバイクに跨がりエンジンをかけて、大きくアクセルをふかした。爆音の合間に、俺は声を張り上げて相棒に尋ねた。 「力ト-!お前一人で、先に帰っちまうつもりか?せっかく俺を助けたのに、また変な奴らに狙われたら、どうする気だ!」 俺の言葉を聞き取ったらしい相棒は空ぶかしをやめ、不機嫌な低い声で一言告げた。 「……車を出せ」 自宅に向かって走る俺の車の後ろに、少し距離を開けて一ツ目のライトがついて来ていた。 屋敷の門が見える場所に着いたところで、ライトはUターンした。俺は車を停め、段々と小さくなっていく赤い点をルームミラー越しに眺めた。 あいつ、朝はうちに迎えに来てくれるのかな。怒っててもきっと来るだろう。何しろ負けず嫌いで、律儀な奴だから。 視線を前に戻すと再びアクセルを踏み、相棒の怒りを解く懐柔策を思案しながら、俺は門の中に車を滑り込ませた。 翌朝相棒はやっぱり、きっちり屋敷にやって来た。まだ怒っているらしく、車の中や会社に着いてからもずっと無言だった。 無言なのは俺に対してだけで、秘書や他の社員とは普通に言葉を交わしていた。しかし聡い美人秘書は異変を感じ取ったらしく、社長室にいる俺に話しかけて来た。 「ブリシト、彼とどうかした?喧嘩でもしたの」 「彼って、あいつのこと?」 ガラス向こうの応接スペースのソファに陣取り、ボーッとテレビを眺めている相棒を指して訊くと、秘書は他に誰がいるのよという目をして頷いた。 「別にどうもしやしないさ」 「嘘ね。だってあなた達、今日はまともに口も聞いてないじゃない」 とぼける俺を、彼女は鋭く追及し続けた。もはや二人目の相棒とも言える有能な年上の秘書に根負けし、俺は夕べ起きた出来事を話してしまった。ただし、キスの件は伏せて。 「それで力ト-に殴られて、頬っぺたを腫らして、話もしてもらえないって訳ね」 「そうなんだ。俺、かわいそうだろ」 言い忘れたが左頬がまだヒリヒリ痛むので、俺は湿布を貼り付けて出社している。 「ブリシト、あなたってバカね」 「レ/ア……君もか。あの野郎も俺をバカと言ったぞ」 「そりゃ言うわよ。なんなのあなた、彼のことが好きなの?」 「違う!……いや、好きは好きだが、そっちの好きじゃない。と、思う」 微妙に語尾を濁した俺の言葉に、秘書は細くて綺麗な眉をしかめた。 「思う?まあいいわ。ともかく、友達と会ってたくらいで嫉妬されちゃたまらないわね。しかも悪口言うなんて、力ト-が怒るのは当然だし、気の毒よ」 相棒がブチキレたのは嫉妬や悪口のせいじゃなく、俺にキスされたからだとは知らない秘書は、やや的外れな諌言をした。 だが詳しく説明すると話がややこしくなるので、俺は神妙なフリで彼女の言葉に耳を傾けていた。 「ブリシト、そんな風じゃあなた、いつか彼に恋人が出来たら、その子を殺しかねないわね」 「まさか、そんな訳ないだろ!」 「さあどうかしら、あなただもの。力ト-はあなたに本命の恋人が出来たとしても、つまらない嫉妬なんかしないと思うわよ」 「どうかな。その恋人がもしレ/ア、君だったら……というか、君であって欲しいんだけど」 手を取ろうとして伸ばした俺の手の甲を彼女は軽くはたき、姿勢を正して業務用スマイルを浮かべた。 「社長、もうすぐ会議のお時間ですわ。お忘れなく」 「……了解」 ドアの方に歩いて行く揺れるヒップに目をやると、察知したかのようにこちらを振り返ったので、慌てて視線を逸らした。 「ねえブリシト、力ト-と仲直りするのよ。なるべく、早めにね」 「そっちも了解、ありがと」 どういたしまして、と返してドアを閉めた秘書は、テレビから目を離さない相棒をチラッと眺めて自分の席に戻った。 彼女に言われるまでもなく、俺は仲直りを持ち掛けるつもりだった。 完全無視されてもやもやした気分のままじゃ、とても会議になんか集中出来そうにない。 作戦はすでに練った。朝イチに電話で個室を予約した、超高級中華料理店のゴージャスなディナーだ。あいつの好物ばかりを出すよう、手回しもしてある。 金持ちらしい懐柔策だな、とか嫌味を言われるかもしれないが構うもんか、これが俺なりの誠意の表現だ。 お膳立ては出来た、後は相棒を口説くだけ。前にあいつは、『なんで僕を口説かないんだ』とか言ってたっけな。まさに、その日がやって来たって訳だ。 中華料理店のパンフレットを手にした俺は、社長室から出て相棒に近付いた。気付いてる筈なのに、奴は一向にテレビから目を逸らさないでいる。 敵は手ごわい、だが今が勝負の時だ。 「ようションディー、ちょっといいか?話があるんだ」 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! やっぱりギャグ入れられなかったorz デブイデが待ち遠しいです。 #comment
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#title(グリーン・ホーネット ブリットとカトー 「俺達に明日はある・後編」) 緑蜂 社長×助手 連投すみません。 半生注意。>>31の続きで、映画「緑蜂」より社長と助手、+秘書。 ケンカップルと世話焼きオカン的関係。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 「……力ト-、待てよ!俺が悪かった」 「いいよもう、しょせん君にはわからないだろうから」 「違う、さっきのあれは、本気じゃなかったんだ。お前の友達の好みをサイテーなんて言っちまって……その、ホントすまなかった」 よっぽど腹に据えかねたのか、相棒は纏わり付く俺をほとんど無視してバイクに跨がり、ヘルメットを頭に乗せた。 焦りと後悔で動揺した俺は、つい声を荒げて怒鳴りつけた。 「だってお前が、俺が嫉妬してるなんて言うから!売り言葉に買い言葉ってやつだったんだよ」 「また、僕のせいか」 横目で冷笑されて俺はますますカッとなり、なりふり構わず叫んでしまった。 「そうだよ、お前のせいだ!お前が俺の知らない店で、俺の知らない奴らと飯なんか食ってるからだ。なんだよ、バカみたいに大笑いしやがって。あんな顔、俺の前じゃ滅多にしないくせに!」 一息にまくし立ててからはっと我に返ると、相棒は黒目勝ちな目を精一杯開いて俺を見つめ、呆気に取られているようだった。きっと今の俺はフラミンゴみたいに、全身が真っ赤になっているに違いない。 相棒はやがて、深いシワを眉間に刻んだ。この表情には見覚えがある。バカをやった俺を叱る前に、親父がよくこんな顔をしていた。 しかしこいつは、俺を叱り飛ばしたり、嘲笑ったりはしなかった。 「ブリシト、君……そんなことで怒ってたのか」 相棒はシートに横向きに座り直して、俺をまっすぐに見た。その声は穏やかで、意外な反応にちょっと驚いた後俺は、自嘲気味に呟いた。 「ああ、そうだ。小さい男だと笑ってくれよ」 「バカだな、君は。つくづくバカだ」 笑えとは言ったがバカにしろとは言ってないぞ、と小声で文句を付けた俺に構わず、奴はさらに言葉を続けた。 「僕が君の前で笑わないって?そりゃ、君のジョークはその、何て言うか……」 「イマイチ、か?」 「そう。でも全然笑ってないって訳じゃないだろ。それに今日は久しぶりに昔馴染みに会えて、いろんな話が出来て嬉しかったから、顔も自然と緩んだのさ」 「毎日会ってる俺が相手じゃ、簡単に顔は緩まないってか」 「そういう風に言うなよ。君だって、例えば女の子と会ってる時には、僕といる時とは違う顔や態度になるだろ」 「そりゃ、まあ……」 「悪い意味じゃなく、相手によって態度が変わるなんてよくあることさ。それに笑わないからって、楽しくないとは限らないよ」 バイクに腰掛け、下に伸ばした両手を組んで相棒は笑った。和やかなムードに流された俺は、思わずバカみたいな質問をしてしまった。 「力ト-、俺といてお前、楽しいか?」 「楽しくなけりゃパートナーにはならないし、ましてや『兄弟』なんて呼ばないよ。まあいろいろ問題はあるけど、僕は君と一緒にいるのが……好きだ」 茶化しもせず真剣に答えた自分に照れたのか、相棒は視線を地面に落とした。俺は急に俺の心臓の音が、ドラムロールのように激しく耳に轟くのを感じた。 相棒は照れ臭さを打ち消すようにパン、と手を叩いて鳴らすと、シートから立ち上がって俺を再び見つめた。 「ブリシト、そろそろ帰ろう。また危ない目に合わないうちに、君も早いとこ車に乗って……」 言い終える前に、体が動いた。感極まった俺は相棒の顔を両手で挟み、やや熱烈なキスをその両頬に一回ずつと、額にも一回、つまり合計三回もしてしまった。 さらに、驚く奴の肩と背中に腕を回して強く抱き寄せた。勢いよく抱きしめたせいで、相棒の頭からヘルメットが落ちた。 相棒はうろたえまくり、なおもハグをやめない俺の腕から逃げようともがいた。 「……○□×☆、△☆×!ブリシト、ブリシト!」 焦るあまり中国語で喚く相棒と、その体を捕まえたままの俺の側を、ほろ酔い気味の黒人の老夫婦が通りかかった。 「いよう、お熱いねえお二人さん!」 「あなた、若い子をからかっちゃ悪いわよ。かわいいカップルじゃないの」 ごめんなさいね、と言い残して亭主の背中を押す夫人を見送った後、俺達は拍子抜けした顔を見合わせた。 「お熱いね、だってさ」 「……!」 亭主のからかいを繰り返した俺を、顔を真っ赤に染めた相棒が睨んだ。 次の瞬間、左足に強烈な痛みを感じ、続いて左頬をすさまじい衝撃に襲われた。相棒の右足が俺の足を踏み付け、驚きのけ反った俺の顔面を、奴の平手が思いっきり張り飛ばしやがったんだ。 「いてえー!力ト-、お前本気で踏んで、殴ったな!」 「……君って奴は、どこまで人をからかったら気が済むんだ!真面目に取り合った僕がバカだった!」 「力ト-、何言ってる。からかってなんかいないぞ」 「嘘つけ、もう君の言うことなんか信じない!」 「待てよ、からかったって、キスしたことがか?」 「そうだよ!おかげで、通行人にバカにされた」 「あの夫婦はバカになんてしてないぞ。ただ、その、カップルと間違われただけで」 「よけい悪いよ!」 「まあ落ち着け。お前にキスしたのには自分でもびっくりしてるが、嬉しくてついしちゃったんだよ。でも別にいいだろ、この国じゃ普通に親愛の情の証だ」 物心ついてから男にキスしたのはお前が初めてだけどな、と痛む頬をさすりつつ付け加えると、相棒はちっとも嬉しくないと言いたげな仏頂面を作った。 「力ト-、怒るなよ。俺達パートナーで、ションディーだろ。それとも、照れてる?」 「……もういい!」 道に転がったヘルメットを拾い上げて被った相棒は、勢いよくバイクに跨がりエンジンをかけて、大きくアクセルをふかした。爆音の合間に、俺は声を張り上げて相棒に尋ねた。 「力ト-!お前一人で、先に帰っちまうつもりか?せっかく俺を助けたのに、また変な奴らに狙われたら、どうする気だ!」 俺の言葉を聞き取ったらしい相棒は空ぶかしをやめ、不機嫌な低い声で一言告げた。 「……車を出せ」 自宅に向かって走る俺の車の後ろに、少し距離を開けて一ツ目のライトがついて来ていた。 屋敷の門が見える場所に着いたところで、ライトはUターンした。俺は車を停め、段々と小さくなっていく赤い点をルームミラー越しに眺めた。 あいつ、朝はうちに迎えに来てくれるのかな。怒っててもきっと来るだろう。何しろ負けず嫌いで、律儀な奴だから。 視線を前に戻すと再びアクセルを踏み、相棒の怒りを解く懐柔策を思案しながら、俺は門の中に車を滑り込ませた。 翌朝相棒はやっぱり、きっちり屋敷にやって来た。まだ怒っているらしく、車の中や会社に着いてからもずっと無言だった。 無言なのは俺に対してだけで、秘書や他の社員とは普通に言葉を交わしていた。しかし聡い美人秘書は異変を感じ取ったらしく、社長室にいる俺に話しかけて来た。 「ブリシト、彼とどうかした?喧嘩でもしたの」 「彼って、あいつのこと?」 ガラス向こうの応接スペースのソファに陣取り、ボーッとテレビを眺めている相棒を指して訊くと、秘書は他に誰がいるのよという目をして頷いた。 「別にどうもしやしないさ」 「嘘ね。だってあなた達、今日はまともに口も聞いてないじゃない」 とぼける俺を、彼女は鋭く追及し続けた。もはや二人目の相棒とも言える有能な年上の秘書に根負けし、俺は夕べ起きた出来事を話してしまった。ただし、キスの件は伏せて。 「それで力ト-に殴られて、頬っぺたを腫らして、話もしてもらえないって訳ね」 「そうなんだ。俺、かわいそうだろ」 言い忘れたが左頬がまだヒリヒリ痛むので、俺は湿布を貼り付けて出社している。 「ブリシト、あなたってバカね」 「レ/ア……君もか。あの野郎も俺をバカと言ったぞ」 「そりゃ言うわよ。なんなのあなた、彼のことが好きなの?」 「違う!……いや、好きは好きだが、そっちの好きじゃない。と、思う」 微妙に語尾を濁した俺の言葉に、秘書は細くて綺麗な眉をしかめた。 「思う?まあいいわ。ともかく、友達と会ってたくらいで嫉妬されちゃたまらないわね。しかも悪口言うなんて、力ト-が怒るのは当然だし、気の毒よ」 相棒がブチキレたのは嫉妬や悪口のせいじゃなく、俺にキスされたからだとは知らない秘書は、やや的外れな諌言をした。 だが詳しく説明すると話がややこしくなるので、俺は神妙なフリで彼女の言葉に耳を傾けていた。 「ブリシト、そんな風じゃあなた、いつか彼に恋人が出来たら、その子を殺しかねないわね」 「まさか、そんな訳ないだろ!」 「さあどうかしら、あなただもの。力ト-はあなたに本命の恋人が出来たとしても、つまらない嫉妬なんかしないと思うわよ」 「どうかな。その恋人がもしレ/ア、君だったら……というか、君であって欲しいんだけど」 手を取ろうとして伸ばした俺の手の甲を彼女は軽くはたき、姿勢を正して業務用スマイルを浮かべた。 「社長、もうすぐ会議のお時間ですわ。お忘れなく」 「……了解」 ドアの方に歩いて行く揺れるヒップに目をやると、察知したかのようにこちらを振り返ったので、慌てて視線を逸らした。 「ねえブリシト、力ト-と仲直りするのよ。なるべく、早めにね」 「そっちも了解、ありがと」 どういたしまして、と返してドアを閉めた秘書は、テレビから目を離さない相棒をチラッと眺めて自分の席に戻った。 彼女に言われるまでもなく、俺は仲直りを持ち掛けるつもりだった。 完全無視されてもやもやした気分のままじゃ、とても会議になんか集中出来そうにない。 作戦はすでに練った。朝イチに電話で個室を予約した、超高級中華料理店のゴージャスなディナーだ。あいつの好物ばかりを出すよう、手回しもしてある。 金持ちらしい懐柔策だな、とか嫌味を言われるかもしれないが構うもんか、これが俺なりの誠意の表現だ。 お膳立ては出来た、後は相棒を口説くだけ。前にあいつは、『なんで僕を口説かないんだ』とか言ってたっけな。まさに、その日がやって来たって訳だ。 中華料理店のパンフレットを手にした俺は、社長室から出て相棒に近付いた。気付いてる筈なのに、奴は一向にテレビから目を逸らさないでいる。 敵は手ごわい、だが今が勝負の時だ。 「ようションディー、ちょっといいか?話があるんだ」 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! やっぱりギャグ入れられなかったorz デブイデが待ち遠しいです。 #comment
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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