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#title(グリーン・ホーネット ブリットとカトー 「わがままヒーロー&悩める相棒」) 半ナマ注意。 映画「緑蜂」より、友達以上恋人未満wな社長と助手。助手視点で、台詞は字幕の口調風。 映画スレからネタをちょこちょこお借りしてます。姐さん達ありがとう。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! ラボで新しい武器の構想を練りつつスケッチをしていると、したたかに酔った相棒がやって来た。よう、またエロい絵描いてんのかと陽気に笑って近付き、机の上にどっかりと尻を乗せた。 「なあ力ト-、この家で一緒に暮らさないか」 「嫌だね」 即座に断ると相棒は見る間に落胆し、この世の終わりのような表情を浮かべた。 「前にも同じように断ったよな。なんでだ!俺と暮らすのがそんなに嫌かよ」 「君こそなんで僕と暮らしたがるんだ。昼は会社で一緒だし、夜も二人で仲良くパトロールだ。この上一緒に暮らしたりしたら、四六時中同じ顔を見てることになるぞ」 不服そうに喚き立てる相棒に困惑して尋ねると、彼はしかめた顔をごしごしと乱暴に掌でこすってから、大きなあくびをした。 「眠いんなら、部屋に行ってさっさと寝ろよ」 「いいや、眠くない。それより答えろ、力ト-。四六時中一緒にいて何が悪いんだ。俺達はとっくに、公私ともに立派な『パートナー』だろ、今更何を気がねしてる」 「気がねなんかしてない。違う意味の『パートナー』に思われるのはごめんだから、嫌だって言ってる」 初っ端の紹介の仕方に問題があったせいか、社員の中には二人の関係を不思議に思う者があるらしく、社内で微妙な視線を感じることが少なくない。 これで同居なんかしようものなら、ほらやっぱりだ!とたちまち噂になるに決まっている。 「大丈夫だよ、俺が女の子ダーイ好きなのは周知の事実だし。お前が住んでもうちに女の子は呼ぶし」 「あ、そう」 「そう。だからいいだろ、ここに住めよ。そうすりゃ通う手間が省けるだろ?ガソリン代も浮くぞ」 「金持ちの癖に、みみっちいこと言うなよ」 「親切で言ってんだぞ。部屋はいっぱい空いてる、好きなとこを使え。引越し楽チンだぞ、家具備え付けだし。カーテンは好きな柄に変えてやる。花柄がいいか?お前、花柄好きだろ」 「あれは前の住人が置いてったんだ。僕の趣味じゃない」 一度夜中に忍び込んだだけなのに、そこまで見ていたのかと驚き呆れた。 そして同居を迫る相棒の熱心さに不審を覚え、あらためて尋ねた。 「カーテンの柄なんかどうでもいい。ブリシト、なんで僕をここに住ませたがる。ガソリン代のことは本音じゃないだろう?正直に言えよ」 「だってさ、俺達ションディーだろ?兄弟なら、一緒に住むのが当然だ」 「ブリシト」 名前を呼んでじっと見つめると、相棒は机から降りて冷蔵庫の方に歩いた。 扉を開けると、ビールを一本取り出した。 「お前もやるか?」 「いや、いい。そんなに酔っててまだ飲むのか」 「飲むとも!こういうの、日本語じゃ『フカザケ』って言うんだってさ。中国語だと何て言うんだ?」 酒喝得太多、と答えようとして、瓶を抱えて妙な動きをしている相棒に気付いた。 「栓抜きなら、その横にあるよ」 「力ト-、あれやってくれ。こう、シュパッて手で開けるやつ」 側に戻ってきた相棒の手から瓶を受け取り、手刀を振るって蓋を開けた。 空中に滑らかな曲線を描いて飛び去った蓋を見つめ、相棒はオーッと声を上げた。 「さっすが力ト-。俺、なかなか出来ないんだよなあ」 「鍛錬とコツが必要なんだ。そんなことより、ブリシト……」 「わかってる、理由だろ」 右手を上げて言葉を制すると、瓶を傾けてビールをあおった。それから顔をこちらに向け直し、瓶を玩びながら口を開いた。 「じゃあ正直に言うけど……怒るな」 「いいから言えよ」 「怒るなよ力ト-、約束だからな。俺はな、お前に、そのう……」 ちらちらと顔色を窺ってなかなか先を言わない相棒に、顎をしゃくって促した。 「だからさ、お前にコーヒーを、入れて欲しいからだよ!俺の好きな時に……ちょっと待て力ト-、ダメだ、怒らないって約束だろ!?」 ぴくりと眉根を寄せたのに敏感に反応し、相棒は顔の前に腕を上げてガードした。 「殴るなよ、いきなり殴るのは反則だ!」 「殴らないよ。でも言ったよな、僕にコーヒー入れろと命令したら……」 人差し指を突き付けて静かに抗議すると、彼は瓶を持ったまま手を振った。 「命令じゃない。頼んでるんだ、ションディーとして。何しろお前の入れるコーヒーは、美味すぎる」 「あの機械を使えば誰にでも出来る。使用人に頼めよ。前に何人かにやり方は教えたぞ」 「ダメだ。お前がいない時にやらせてみたが、お前のとは違ってクソみたいだった」 「じゃあ自分でやってみろ、教えてやるから」 「もっとダメ!俺の不器用さを知ってるだろ?瓶も開けられないんだぞ。それに漢字が読めない」 「漢字くらい覚えろよ。読めなくても、流れを掴めば出来るさ」 「いいやダメだ。やっぱりお前の入れてくれるあの味が、メッチャ最高なんだ」 全く譲る気のない我が儘ぶりに呆れたが、コーヒーの味を手放しで褒められて悪い気はしなかった。 だがそのために同居なんて、やっぱり馬鹿げてる。平行線を辿るコーヒーの件は置いておいて、別の方向から攻めようと考えを巡らせた。相棒はまるで構わずに、言葉を続けた。 「もちろん、ただコーヒー入れろとは言わない。見返りはあるぞ」 「見返り?」 「そうさ、例えば……そうだ、お前に泳ぎを教えてやるよ。ここにいればいつだって教えられる。万能ナイフの唯一の弱点を克服出来るぞ、どうだ?」 目を輝かせて条件を持ちかける相棒とは裏腹に、以前この家のプールで不様に溺れたことを思い出して、顔に血が上った。 「力ト-、恥ずかしがるな。誰にでも弱点はある。それを乗り越えてこそ、人は成長するんだ」 「……知った風な口をきくじゃないか。せっかくだけど断るよ、僕はそんな見返りはいらない」 自分は欠点だらけの癖によく言うな、という言葉を飲み込んで忌ま忌ましげに告げると、理解出来ないという風に相棒は目を瞬いた。 「マジか?あと泳げさえすれば、お前は本当のスーパーマンになれるんだぞ」 「そうだな、君はいい気分かもしれない。スーパーマンに好きな時に、美味いコーヒーを入れてもらえるんだからな」 「そうだ、お互いに損はないだろ?俺が手取り足取り、泳ぎを教えてやるからさ。なあ力ト-、一緒に住むって言えよ。」 皮肉を素直に受け取って笑うお坊ちゃんにイライラしながら、決定的に断れる言葉を頭の中で探した。 「力ト-?で、どうなんだ」 「……やっぱりダメだ。ここには住めない」 「なんでだよ!何が気に入らないってんだ」 「プールだ。君の話で気付いた。プールがある家になんか、僕は住みたくない」 「なんだ、溺れたのがそんなにショックだったのか」 「ああ、ショックだった。思い出しても体が震えるよ。もうあんな思いはしたくない」 沈んだ表情を作って首を振ると、相棒はなおも懲りずに口説いた。 「だから教えてやるって!スーパーマンにしてやるって、言ってるじゃないか」 「いや、泳げたところで、どうせ空は飛べないだろ?ならスーパーマンにはなれないよ。僕には無理だ」 「おいおい、屁理屈を言うなよ」 「うるさいな。とにかくプールがある限り、僕はここには住まない。どうしても住んで欲しいって言うなら、プールを埋め立ててくれよ!そしたら、考えてもいい」 「な、なんだって?本気で言ってんのか!」 唾を飛ばし叫ぶ顔を見つめて、真顔で頷いた。 美女達を侍らせてプールで遊ぶのが大のお気に入りのこの男が、そんな条件を飲む訳がない。 そんなこと出来るか!じゃあもう同居なんか無しだ、とキレて、誘いを取り消すに決まっている。 あまりの無理難題に相当驚いたのか、相棒はしばし固まっていた。 ざまあ見ろ、と内心ほくそ笑んでいると、目をぎゅっと閉じてまた開いてから、静かに言葉を発した。 「力ト-……どうしても、プールを埋め立てろって言うんだな」 「ああ、どうしてもだ」 「そうか。よしわかった」 「え?ブリシト、わかったって……」 「力ト-、ちょっと電話かけていいか」 「……いいけど」 相棒は机に瓶を置いて、携帯電話を取り出し操作した。 深夜のことで眠っているのだろう、なかなか相手が出ないらしく、相棒はせわしなく床を足で踏み鳴らしている。 「……俺だ!電話かけたらすぐ起きろ。今から仕事だ。すぐに来て、プールを埋め立てろ!」 「おい、ブリシト!?」 「正気かって?当たり前だろう!いいからやれ、今夜中にだ!」 「ブリシト!誰にかけてる?」 「うちのプール係だ。心配すんな、すぐに片付くから」 傍若無人なお坊ちゃんは携帯電話を耳に当てたまま、ぱちんとウインクをして来た。 思いがけない展開に頭が真っ白になりかけたが、気を取り直して立ち上がり、相棒に近付いて手から電話を奪い取った。 「おい力ト-、何す……」 「ああ、もしもし?夜中に悪かったね……うん、うんそう、彼は酔ってるんだ。気にしないで、ゆっくり寝てくれ」 寝ぼけ声で動揺するプール係を宥めて通話を終えると、不愉快さを丸出しにした相棒が携帯電話を奪い返し、肩を掴んできた。 「力ト-、なんで止める?埋め立てろって言ったのは、お前じゃないか」 「黙れよ、酔っ払い。勢いでそんなことしたって、朝になったら絶対後悔する癖に。そして文句の矛先はどうせ僕なんだ、そうに決まってる!」 肩から手を打ち払って睨んでも、彼はちっとも怯まず更に絡み続けた。 「俺を見くびるな力ト-、酔った勢いなんかじゃないぞ!プールが大嫌いなお前のために、俺の大好きなプールを埋め立ててやるんだ俺は!だから一緒に、住め!」 「……なんでそこまで」 呆れてため息をつくと、間近に寄せた赤い顔から、酒臭い息を吹きかけられた。 「住むって言えよ力ト-。さもないと、プールを埋め立てるぞ!」 「ブリシト、話が逆になってる。頭を冷やせよ、君は飲み過ぎでやけになってるんだ」 「ふん、飲み過ぎなもんか。まだ全っ然、飲み足り、ない……」 急に呂律が怪しくなり、ふらつきもたれかかって来た相棒の体を咄嗟に受け止めた。 立ったまま抱き抱える形になり、このまま意識を失われたら面倒だと焦り声を張り上げた。 「ブリシト!こんな状態で寝るなよ。しっかりしろ、部屋まで連れてってやるから」 「うーん、力ト-……なあ、一緒に住むか?」 「今ダメ、それどころじゃない」 倒れないように腕に力を入れて支えると、相棒もこちらの体に回した腕を腰の辺りで交差させた。 「じゃあ、今夜はとりあえず泊まってけ。朝にまた話をしようぜ」 「嫌だよ。酔っ払いの世話をした上に、朝から不毛な議論なんかしたくない。君を部屋に送ったら、僕は帰る」 「そうかあ?ところがそうは……させないもんねっ!」 耳元で囁いていた相棒の口調は不意にはっきりとしたものになり、くっついていた体を離して軽くステップを踏み、二人の間に距離を取った。 「ブリシト?」 「力ト-、これなーんだ?」 ひらひらと揺れる右手に摘まれている物は、見覚えのある革製のストラップだった。 思わず尻部分のポケットを叩くと、確かにそこに入っていた筈のバイクの鍵がない。 「ブリシト、返せ!」 「嫌だね!これで今夜は帰れないぞ力ト-、観念しろ。そして朝になったら俺に、とびきり美味いコーヒーを入れてくれよな」 「……いいか、返さないと、力ずくで取るぞ」 拳を握って凄みを効かせると、相棒はビビるどころかニヤリと笑った。嫌な予感がして、ドア近くに立つ彼の方に一歩を踏み出した。 「動くな、力ト-!いいかあ、力ずくだなんて俺を脅すと……こうなる!」 相棒は片手でベルトを緩めてズボンの縁を引っ張り、あろうことかバイクの鍵をその中へと落とした。 「……ブリシト!做什麼!停止……!」 思わず出た母国語で制したがその甲斐もなく、相棒は引っ張ったズボンを元に戻した。 「ダメだぞ、悪い子だ力ト-。俺を殴って取り返そうなんてしたら……ここでオシッコしちゃうぞ」 こいつならやりかねない、落ち着くんだと、怒りのままに襲いかかりたがっている自分を抑え、強く気にかかることを問い質した。 「……なあブリシト。訊くけど、鍵はただズボンに入れただけか?」 「安心しろ、お前の大事なお宝は、俺のお宝と仲良くしてるぞ。ちょっとひんやりしてるけどな」 自分の股間を指差す姿に、やっぱり下着の中か!とショックを受けて呆然としていると、相棒は愉快そうに大笑いしてドアを開けた。 「こいつは朝まで預かる。ゲストルームは開いてるから、好きなとこで寝てくれ。じゃあなションディー!おやすみ、いい夢を!」 高らかに叫び投げキッスを飛ばすと、悪ガキは勢いよくドアを閉めて、壁の向こうに姿を消した。 「イ尓……混蛋!惡小鬼!!任性小子!!……この、×××!×××××!!……信じられない!全くもう、なんて野郎だ!」 はっと我に帰り、母国語と英語を織り交ぜて悪口雑言をまくし立てたが、もう後の祭りだった。 悄然として机に戻り、椅子に脱力した体を預けてぼうっとしていた。しばらくすると急に、子供っぽいあの男の行動がおかしくてたまらなくなった。 バイクが使えなくても、隣のガレージに停めてある車のどれかに乗れば帰れるってことを、彼は思いもしなかったのか。 きっと今頃はパジャマに着替えながら、頑固な相棒をまんまとやり込めたと鼻歌混じりの上機嫌で、やがてそのまま心地よい眠りにつくのだろう。 「馬鹿だなあ、あいつ……本っ当、馬鹿だ」 苦笑しながら、開いたままだったスケッチブックを閉じた。それから立ち上がり、冷蔵庫からビールを取り出した。 相棒が出来ない離れ業で栓を開けると、一口あおって室内の様々な電源を落とした。 お望み通り、お目覚めの朝には熱いカプチーノを入れてやろう。ただしいつもとは一味変えて。 どうしよう、タバスコでも仕込んでやろうか……いや、匂いでバレるな。 バレないように細工して、唐辛子を底に沈めておこうか。日本食が好きな奴だから、ワサビでもいいな。 飲んだらあいつ、どんな顔するかな。 ささやかな復讐を思い巡らせてドアを開けると、悲惨な目に合ってしまった大事な物のことを思い出した。 「はあ……取り返したら、念入りに消毒しなくっちゃな……」 ドアを閉めて、悪ガキの眠る離れの屋敷へと、ビールを傾けつつ歩いた。 一工夫した特製コーヒーを入れて、我が儘なお坊ちゃん社長を説得し、それから鍵の消毒。なんだか明日は、妙な用事ばかりで忙しくなりそうだ。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! もっとギャグとか入れたかったけど、センス不足でスマソ。 助手の母国語は某興奮サイトの翻訳機能を使いましたが、知識ゼロなもんで本当に正しいかどうかは不明です。 なんちゃって中国語ということでお許し下さい。 「緑蜂」難しいけど楽しかったー。 - 映画の距離感まんまでめちゃくちゃ萌えました!ありがとうございます! -- &new{2014-02-11 (火) 03:02:18}; #comment
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#title(グリーン・ホーネット ブリットとカトー 「わがままヒーロー&悩める相棒」) 半ナマ注意。 映画「緑蜂」より、友達以上恋人未満wな社長と助手。助手視点で、台詞は字幕の口調風。 映画スレからネタをちょこちょこお借りしてます。姐さん達ありがとう。 |>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! ラボで新しい武器の構想を練りつつスケッチをしていると、したたかに酔った相棒がやって来た。よう、またエロい絵描いてんのかと陽気に笑って近付き、机の上にどっかりと尻を乗せた。 「なあ力ト-、この家で一緒に暮らさないか」 「嫌だね」 即座に断ると相棒は見る間に落胆し、この世の終わりのような表情を浮かべた。 「前にも同じように断ったよな。なんでだ!俺と暮らすのがそんなに嫌かよ」 「君こそなんで僕と暮らしたがるんだ。昼は会社で一緒だし、夜も二人で仲良くパトロールだ。この上一緒に暮らしたりしたら、四六時中同じ顔を見てることになるぞ」 不服そうに喚き立てる相棒に困惑して尋ねると、彼はしかめた顔をごしごしと乱暴に掌でこすってから、大きなあくびをした。 「眠いんなら、部屋に行ってさっさと寝ろよ」 「いいや、眠くない。それより答えろ、力ト-。四六時中一緒にいて何が悪いんだ。俺達はとっくに、公私ともに立派な『パートナー』だろ、今更何を気がねしてる」 「気がねなんかしてない。違う意味の『パートナー』に思われるのはごめんだから、嫌だって言ってる」 初っ端の紹介の仕方に問題があったせいか、社員の中には二人の関係を不思議に思う者があるらしく、社内で微妙な視線を感じることが少なくない。 これで同居なんかしようものなら、ほらやっぱりだ!とたちまち噂になるに決まっている。 「大丈夫だよ、俺が女の子ダーイ好きなのは周知の事実だし。お前が住んでもうちに女の子は呼ぶし」 「あ、そう」 「そう。だからいいだろ、ここに住めよ。そうすりゃ通う手間が省けるだろ?ガソリン代も浮くぞ」 「金持ちの癖に、みみっちいこと言うなよ」 「親切で言ってんだぞ。部屋はいっぱい空いてる、好きなとこを使え。引越し楽チンだぞ、家具備え付けだし。カーテンは好きな柄に変えてやる。花柄がいいか?お前、花柄好きだろ」 「あれは前の住人が置いてったんだ。僕の趣味じゃない」 一度夜中に忍び込んだだけなのに、そこまで見ていたのかと驚き呆れた。 そして同居を迫る相棒の熱心さに不審を覚え、あらためて尋ねた。 「カーテンの柄なんかどうでもいい。ブリシト、なんで僕をここに住ませたがる。ガソリン代のことは本音じゃないだろう?正直に言えよ」 「だってさ、俺達ションディーだろ?兄弟なら、一緒に住むのが当然だ」 「ブリシト」 名前を呼んでじっと見つめると、相棒は机から降りて冷蔵庫の方に歩いた。 扉を開けると、ビールを一本取り出した。 「お前もやるか?」 「いや、いい。そんなに酔っててまだ飲むのか」 「飲むとも!こういうの、日本語じゃ『フカザケ』って言うんだってさ。中国語だと何て言うんだ?」 酒喝得太多、と答えようとして、瓶を抱えて妙な動きをしている相棒に気付いた。 「栓抜きなら、その横にあるよ」 「力ト-、あれやってくれ。こう、シュパッて手で開けるやつ」 側に戻ってきた相棒の手から瓶を受け取り、手刀を振るって蓋を開けた。 空中に滑らかな曲線を描いて飛び去った蓋を見つめ、相棒はオーッと声を上げた。 「さっすが力ト-。俺、なかなか出来ないんだよなあ」 「鍛錬とコツが必要なんだ。そんなことより、ブリシト……」 「わかってる、理由だろ」 右手を上げて言葉を制すると、瓶を傾けてビールをあおった。それから顔をこちらに向け直し、瓶を玩びながら口を開いた。 「じゃあ正直に言うけど……怒るな」 「いいから言えよ」 「怒るなよ力ト-、約束だからな。俺はな、お前に、そのう……」 ちらちらと顔色を窺ってなかなか先を言わない相棒に、顎をしゃくって促した。 「だからさ、お前にコーヒーを、入れて欲しいからだよ!俺の好きな時に……ちょっと待て力ト-、ダメだ、怒らないって約束だろ!?」 ぴくりと眉根を寄せたのに敏感に反応し、相棒は顔の前に腕を上げてガードした。 「殴るなよ、いきなり殴るのは反則だ!」 「殴らないよ。でも言ったよな、僕にコーヒー入れろと命令したら……」 人差し指を突き付けて静かに抗議すると、彼は瓶を持ったまま手を振った。 「命令じゃない。頼んでるんだ、ションディーとして。何しろお前の入れるコーヒーは、美味すぎる」 「あの機械を使えば誰にでも出来る。使用人に頼めよ。前に何人かにやり方は教えたぞ」 「ダメだ。お前がいない時にやらせてみたが、お前のとは違ってクソみたいだった」 「じゃあ自分でやってみろ、教えてやるから」 「もっとダメ!俺の不器用さを知ってるだろ?瓶も開けられないんだぞ。それに漢字が読めない」 「漢字くらい覚えろよ。読めなくても、流れを掴めば出来るさ」 「いいやダメだ。やっぱりお前の入れてくれるあの味が、メッチャ最高なんだ」 全く譲る気のない我が儘ぶりに呆れたが、コーヒーの味を手放しで褒められて悪い気はしなかった。 だがそのために同居なんて、やっぱり馬鹿げてる。平行線を辿るコーヒーの件は置いておいて、別の方向から攻めようと考えを巡らせた。相棒はまるで構わずに、言葉を続けた。 「もちろん、ただコーヒー入れろとは言わない。見返りはあるぞ」 「見返り?」 「そうさ、例えば……そうだ、お前に泳ぎを教えてやるよ。ここにいればいつだって教えられる。万能ナイフの唯一の弱点を克服出来るぞ、どうだ?」 目を輝かせて条件を持ちかける相棒とは裏腹に、以前この家のプールで不様に溺れたことを思い出して、顔に血が上った。 「力ト-、恥ずかしがるな。誰にでも弱点はある。それを乗り越えてこそ、人は成長するんだ」 「……知った風な口をきくじゃないか。せっかくだけど断るよ、僕はそんな見返りはいらない」 自分は欠点だらけの癖によく言うな、という言葉を飲み込んで忌ま忌ましげに告げると、理解出来ないという風に相棒は目を瞬いた。 「マジか?あと泳げさえすれば、お前は本当のスーパーマンになれるんだぞ」 「そうだな、君はいい気分かもしれない。スーパーマンに好きな時に、美味いコーヒーを入れてもらえるんだからな」 「そうだ、お互いに損はないだろ?俺が手取り足取り、泳ぎを教えてやるからさ。なあ力ト-、一緒に住むって言えよ。」 皮肉を素直に受け取って笑うお坊ちゃんにイライラしながら、決定的に断れる言葉を頭の中で探した。 「力ト-?で、どうなんだ」 「……やっぱりダメだ。ここには住めない」 「なんでだよ!何が気に入らないってんだ」 「プールだ。君の話で気付いた。プールがある家になんか、僕は住みたくない」 「なんだ、溺れたのがそんなにショックだったのか」 「ああ、ショックだった。思い出しても体が震えるよ。もうあんな思いはしたくない」 沈んだ表情を作って首を振ると、相棒はなおも懲りずに口説いた。 「だから教えてやるって!スーパーマンにしてやるって、言ってるじゃないか」 「いや、泳げたところで、どうせ空は飛べないだろ?ならスーパーマンにはなれないよ。僕には無理だ」 「おいおい、屁理屈を言うなよ」 「うるさいな。とにかくプールがある限り、僕はここには住まない。どうしても住んで欲しいって言うなら、プールを埋め立ててくれよ!そしたら、考えてもいい」 「な、なんだって?本気で言ってんのか!」 唾を飛ばし叫ぶ顔を見つめて、真顔で頷いた。 美女達を侍らせてプールで遊ぶのが大のお気に入りのこの男が、そんな条件を飲む訳がない。 そんなこと出来るか!じゃあもう同居なんか無しだ、とキレて、誘いを取り消すに決まっている。 あまりの無理難題に相当驚いたのか、相棒はしばし固まっていた。 ざまあ見ろ、と内心ほくそ笑んでいると、目をぎゅっと閉じてまた開いてから、静かに言葉を発した。 「力ト-……どうしても、プールを埋め立てろって言うんだな」 「ああ、どうしてもだ」 「そうか。よしわかった」 「え?ブリシト、わかったって……」 「力ト-、ちょっと電話かけていいか」 「……いいけど」 相棒は机に瓶を置いて、携帯電話を取り出し操作した。 深夜のことで眠っているのだろう、なかなか相手が出ないらしく、相棒はせわしなく床を足で踏み鳴らしている。 「……俺だ!電話かけたらすぐ起きろ。今から仕事だ。すぐに来て、プールを埋め立てろ!」 「おい、ブリシト!?」 「正気かって?当たり前だろう!いいからやれ、今夜中にだ!」 「ブリシト!誰にかけてる?」 「うちのプール係だ。心配すんな、すぐに片付くから」 傍若無人なお坊ちゃんは携帯電話を耳に当てたまま、ぱちんとウインクをして来た。 思いがけない展開に頭が真っ白になりかけたが、気を取り直して立ち上がり、相棒に近付いて手から電話を奪い取った。 「おい力ト-、何す……」 「ああ、もしもし?夜中に悪かったね……うん、うんそう、彼は酔ってるんだ。気にしないで、ゆっくり寝てくれ」 寝ぼけ声で動揺するプール係を宥めて通話を終えると、不愉快さを丸出しにした相棒が携帯電話を奪い返し、肩を掴んできた。 「力ト-、なんで止める?埋め立てろって言ったのは、お前じゃないか」 「黙れよ、酔っ払い。勢いでそんなことしたって、朝になったら絶対後悔する癖に。そして文句の矛先はどうせ僕なんだ、そうに決まってる!」 肩から手を打ち払って睨んでも、彼はちっとも怯まず更に絡み続けた。 「俺を見くびるな力ト-、酔った勢いなんかじゃないぞ!プールが大嫌いなお前のために、俺の大好きなプールを埋め立ててやるんだ俺は!だから一緒に、住め!」 「……なんでそこまで」 呆れてため息をつくと、間近に寄せた赤い顔から、酒臭い息を吹きかけられた。 「住むって言えよ力ト-。さもないと、プールを埋め立てるぞ!」 「ブリシト、話が逆になってる。頭を冷やせよ、君は飲み過ぎでやけになってるんだ」 「ふん、飲み過ぎなもんか。まだ全っ然、飲み足り、ない……」 急に呂律が怪しくなり、ふらつきもたれかかって来た相棒の体を咄嗟に受け止めた。 立ったまま抱き抱える形になり、このまま意識を失われたら面倒だと焦り声を張り上げた。 「ブリシト!こんな状態で寝るなよ。しっかりしろ、部屋まで連れてってやるから」 「うーん、力ト-……なあ、一緒に住むか?」 「今ダメ、それどころじゃない」 倒れないように腕に力を入れて支えると、相棒もこちらの体に回した腕を腰の辺りで交差させた。 「じゃあ、今夜はとりあえず泊まってけ。朝にまた話をしようぜ」 「嫌だよ。酔っ払いの世話をした上に、朝から不毛な議論なんかしたくない。君を部屋に送ったら、僕は帰る」 「そうかあ?ところがそうは……させないもんねっ!」 耳元で囁いていた相棒の口調は不意にはっきりとしたものになり、くっついていた体を離して軽くステップを踏み、二人の間に距離を取った。 「ブリシト?」 「力ト-、これなーんだ?」 ひらひらと揺れる右手に摘まれている物は、見覚えのある革製のストラップだった。 思わず尻部分のポケットを叩くと、確かにそこに入っていた筈のバイクの鍵がない。 「ブリシト、返せ!」 「嫌だね!これで今夜は帰れないぞ力ト-、観念しろ。そして朝になったら俺に、とびきり美味いコーヒーを入れてくれよな」 「……いいか、返さないと、力ずくで取るぞ」 拳を握って凄みを効かせると、相棒はビビるどころかニヤリと笑った。嫌な予感がして、ドア近くに立つ彼の方に一歩を踏み出した。 「動くな、力ト-!いいかあ、力ずくだなんて俺を脅すと……こうなる!」 相棒は片手でベルトを緩めてズボンの縁を引っ張り、あろうことかバイクの鍵をその中へと落とした。 「……ブリシト!做什麼!停止……!」 思わず出た母国語で制したがその甲斐もなく、相棒は引っ張ったズボンを元に戻した。 「ダメだぞ、悪い子だ力ト-。俺を殴って取り返そうなんてしたら……ここでオシッコしちゃうぞ」 こいつならやりかねない、落ち着くんだと、怒りのままに襲いかかりたがっている自分を抑え、強く気にかかることを問い質した。 「……なあブリシト。訊くけど、鍵はただズボンに入れただけか?」 「安心しろ、お前の大事なお宝は、俺のお宝と仲良くしてるぞ。ちょっとひんやりしてるけどな」 自分の股間を指差す姿に、やっぱり下着の中か!とショックを受けて呆然としていると、相棒は愉快そうに大笑いしてドアを開けた。 「こいつは朝まで預かる。ゲストルームは開いてるから、好きなとこで寝てくれ。じゃあなションディー!おやすみ、いい夢を!」 高らかに叫び投げキッスを飛ばすと、悪ガキは勢いよくドアを閉めて、壁の向こうに姿を消した。 「イ尓……混蛋!惡小鬼!!任性小子!!……この、×××!×××××!!……信じられない!全くもう、なんて野郎だ!」 はっと我に帰り、母国語と英語を織り交ぜて悪口雑言をまくし立てたが、もう後の祭りだった。 悄然として机に戻り、椅子に脱力した体を預けてぼうっとしていた。しばらくすると急に、子供っぽいあの男の行動がおかしくてたまらなくなった。 バイクが使えなくても、隣のガレージに停めてある車のどれかに乗れば帰れるってことを、彼は思いもしなかったのか。 きっと今頃はパジャマに着替えながら、頑固な相棒をまんまとやり込めたと鼻歌混じりの上機嫌で、やがてそのまま心地よい眠りにつくのだろう。 「馬鹿だなあ、あいつ……本っ当、馬鹿だ」 苦笑しながら、開いたままだったスケッチブックを閉じた。それから立ち上がり、冷蔵庫からビールを取り出した。 相棒が出来ない離れ業で栓を開けると、一口あおって室内の様々な電源を落とした。 お望み通り、お目覚めの朝には熱いカプチーノを入れてやろう。ただしいつもとは一味変えて。 どうしよう、タバスコでも仕込んでやろうか……いや、匂いでバレるな。 バレないように細工して、唐辛子を底に沈めておこうか。日本食が好きな奴だから、ワサビでもいいな。 飲んだらあいつ、どんな顔するかな。 ささやかな復讐を思い巡らせてドアを開けると、悲惨な目に合ってしまった大事な物のことを思い出した。 「はあ……取り返したら、念入りに消毒しなくっちゃな……」 ドアを閉めて、悪ガキの眠る離れの屋敷へと、ビールを傾けつつ歩いた。 一工夫した特製コーヒーを入れて、我が儘なお坊ちゃん社長を説得し、それから鍵の消毒。なんだか明日は、妙な用事ばかりで忙しくなりそうだ。 □ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! もっとギャグとか入れたかったけど、センス不足でスマソ。 助手の母国語は某興奮サイトの翻訳機能を使いましたが、知識ゼロなもんで本当に正しいかどうかは不明です。 なんちゃって中国語ということでお許し下さい。 「緑蜂」難しいけど楽しかったー。 - 映画の距離感まんまでめちゃくちゃ萌えました!ありがとうございます! -- &new{2014-02-11 (火) 03:02:18}; #comment
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
第62巻
第61巻
第60巻
第59巻
第58巻
第57巻
第56巻
第55巻
第54巻
第53巻
第52巻
第51巻
第50巻
第49巻
第48巻
第47巻
第46巻
第45巻
第44巻
第43巻
第42巻
第41巻
第40巻
第39巻
第38巻
第37巻
第36巻
第35巻
第34巻
第33巻
第32巻
第31巻
第30巻
第29巻
第28巻
第27巻
第26巻
第25巻
第24巻
第23巻
第22巻
第21巻
第20巻
第19巻
第18巻
第17巻
第16巻
第15巻
第14巻
第13巻
第12巻
第11巻
第10巻
第9巻
第8巻
第7巻
第6巻
第5巻
第4巻
第3.1巻
第3巻
第2巻
第1巻
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