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#title(numb*3rs 工ップス兄×弟) [#ib2800a4] / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 例によってnumb*3rs兄弟ネタだってよ ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| これで終わりだから安心しろってさ | | | | \ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヨカッタ | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || | そんなわけでnumb*3r兄弟ネタです 立て続けに申し訳ないんですが、これで終わりなので見過ごしてやってください とりあえず前回までと続いてます 今更気づいたのですが、このドラマを観たことない方にとっては複数の 小ネタをばらされていることになりますね。今回もそうです。スマソ… 今回は前・中・後編にわけて投下しようと思います ちなみに平安兄弟のファンです。いつも笑いつつ萌えてます。トンクス! もうずいぶん昔のことだが、チャ―リーが生まれたとき、ト゛ンはこれで相棒ができたと思 った。賢くて強くて信頼がおける、一番の親友ができたのだと。その頃の彼のお気に入りの遊 びは「刑事ごっこ」だった。ト゛ンはじきにその遊びをするときには、この弟が常に傍らに控 え、悪人を(といっても本当は、極悪非道な犯罪者を演じる近所の友達に過ぎないのだが)自 分と一緒に捕まえるようになるだろうと考えた。母親の腕に抱かれてすやすや眠り、そうでな いときはミルクを飲んでいるちっぽけな赤ん坊を眺めながら、その日が早くこないかと5歳の ト゛ンはわくわくしながら待った。 ところが、現実はそうはいかなかった。チャ―リーは3歳になる頃までには既に、ト゛ンが 思い描いていたのとは違う弟になっていた。お絵かきのために与えられたクレヨンでそこらじ ゅうに数字の羅列を書き殴り、おもちゃの銃になど見向きもしない。もちろんト゛ンが大好き な野球のバットやボールには、触れることすらない。どうやら半永久的に頼りになる相棒を得 られないことを理解した少年のト゛ンは、その代わりに弟の世話で忙しい両親を助けるために、 誰にも頼らずに一人で何でもできる存在になろうと思った。いわばプランBだ。物語の中の、相 棒のいない英雄たちは大体、相棒がいない代わりに自分だけで何でもできる。そういうふうに なればいいのだと自分に言い聞かせて、そしてほぼその通りになった。少年時代を一貫して、 彼は自立心の強い子供だった。 自立を心がけたト゛ンが、FBIに入るまで、一番愛したものは野球だった。野球で大学の 奨学金をもらい、マイナーリーグでとは言えプロとして金を稼いでいたこともあるほど、彼は 野球に打ち込んだ。けれどもト゛ンは23歳のときに、それまでで一番愛した野球を捨てるこ とを決めた。自分のこの才能ではメジャーには行けない。野球を続けたいのなら、マイナーリ ーグで不安定な生活することになると悟ったときだ。これまでで一番愛した「野球」と、一番 重んじてきた「自立」を量りにかけると、否応なしに「自立」の方に天秤が傾いた。野球は職 業にするにはリスクが高すぎる。若い、ほんの一時しかそれで金は稼げないだろうし、そうす ることが許されるのは、自分がその一時で一生分の金が稼げる才能の持ち主の場合だけだ。そ してト゛ンにはそこまでの才能はない。そこで彼はFBIの試験に志願し、難関を見事にパス した。 FBIに就職が決まったよと言うと、両親はまず驚き、それから手放しで祝福した。ト゛ンもも ちろん満足していた。知性体力ともに抜きん出た(と目の高いFBIの試験官に判定された) 人間しかこの仕事にはつけない。やりがいはありそうだし、サラリーもいい。少なくとも表面 的には、欠けたところが見えない存在になれたのではないだろうか?小さな頃、心に決めた通 りに。 ところがそんなト゛ンに、水を注す人間がいた。もちろんチャ―リーだ。チャ―リーはその とき17歳で、一年前にプリンストン大の数学科を卒業し、スタンフォードの院に進んだとこ ろだった。卒業論文として発表した研究が、学会で大変に評価されたらしいということはト゛ ンも両親から聞いていた。だがト゛ンは正直に言うとチャ―リーの業績にそんなに興味もなか ったし、普段離れて暮らしていたせいもあって、弟自身とさほど親しいわけでもなかった。そ んな弟が、ト゛ンの就職を祝うために久しぶりに家族が集まったディナーの席でこう言ったの だ。「野球はどうしたの?」 何気ない一言だったが、ト゛ンの心にそれは妙に鋭く響いた。弟に悪気はないということは わかっていた。両親が気遣わしげな視線を交わすのを目でやり過ごしながら、ト゛ンはさらり と答えた。「野球はやめた。FBIで働くんだ」 チャ―リーはそれを聞いて瞬きし、それから何か口ごもった。この弟は普段は早口で捲くし 立てるくせに、何か大事なことを言おうとすると上手く話せなくなるらしい。しかもそれは自 分が同席しているときによく起きる現象だと知っていたト゛ンは、見ないふりをして母親が焼 いたリブをほおばった。 「あんなに、あんなに才能があったのに?もったいないよ、ト゛ン」 囁くような声でチャ―リーが言う。母親が窘めようとしたのか身を乗り出したが、チャ―リ ーは巻き毛を揺らしながらそれを手で制した。 「野球が好きだったんじゃないの?――僕は、僕は力になれるよ。ト゛ンが野球を続けるな ら……」 「力になれるって?」 ト゛ンは苛立ちながら聞き返した。そもそもこの弟に助けなど求めたことは、これまでで一 度もない。ましてや人生の一大事を、任せられるわけがない。一体弟が野球の何を知っている だろう?ト゛ンがどれだけ野球を愛し、それに打ち込み、どんな思いでそれを捨てたかなど、 この弟は知らない。チャ―リーは小さな頃から数字と戯れ、しかもどうやらそれが職業として ものになりそうなのだ。彼は諦めるということが、どんなことなのか知らない。ト゛ンの声に チャ―リーはびくりと肩を揺らしたが、一瞬俯いた後で意を決したようにまた顔を上げた。 「僕なら有効な打線を読める。数学で試合の展開を読めるよ。確率論を使うんだ。そうした ら――」 「そんなことは誰にもできない。チャ―リー、野球はもうやめた。捜査官になるんだ。俺は 満足してる。お前の助けも必要ない」 そう言い放ってト゛ンは立ち上がり、キッチンの冷蔵庫にビールを取りに行った。テーブル に戻ってくる頃には、両親が無理やり挿入した別の話題が始まっていた。チャ―リーはまだ何 言いたげだったが、母親に釘を刺されたのかその後はずっと黙っていた。 自分と似通ったものを人はよく愛する。同じ趣味を持つ友人、同じ価値観の恋人。自分を生 み、育てた両親。そして同一の血が流れる兄弟。そう、兄弟はその象徴だ、とチャ―リーは階 段を駆け上がりながら思った。その証拠に、相手がまったくの他人だったとしても、親しみが 生じたときにはよく「兄弟」と呼びかけるではないか。この世界に兄弟ほど自分に近い存在は いない。そういうことになっているはずだ。 ところが同じであることが前提であるがゆえに、違いが際立って見えるという逆の特色もま たここには見える。カインとアベルのように。自分とト゛ンもその実例だ。ト゛ンと自分はま るで違う。そんなことを考えながら乱れた呼吸を整え、チャ―リーはアパートのベルを鳴らし た。腕時計を見ると、12時を過ぎている。今日の午後、仕事を終えて帰宅したら連絡する、 とト゛ンはチャ―リーに電話で約束した。絶対だよ、待ってるから、とチャ―リーは言い、そ して忠実にそれからほぼ12時間経つ今まで、ト゛ンからの電話を心待ちにしていたのだ。最 後の数時間は待ちきれなくなって、呼ばれたらすぐに駆けつけられるように、ト゛ンのアパー トの近くのレストランで時間を潰していた。この部屋の鍵を渡してくれればいいのに、とチャ ―リーは思った。不安な気持ちで外で電話を待つのではなく、ト゛ンのアパートで彼が帰って くるのを待てたらどんなにいいだろう。 でもト゛ンが渡すことはないだろう、と客観的に考えながら、チャ―リーはもう一度ベルを 鳴らした。「ト゛ン?僕だよ、開けてよ」 わかったわかった。そんな物憂げな声と共にゆっくりとドアが開く。巻き毛を揺らしながら チャ―リーはドアの狭間から顔を出した。「自分の誕生日に真夜中過ぎまで働くなんて正気じ ゃないよ、工ップス捜査官」 冗談と本気を混ぜ合わせた口調でチャーリは言い、アパートの中に入った。そう、今日―― いや実際は既に昨日なのだが――はト゛ンの誕生日なのだ。ト゛ンはこの歳になれば誕生日な んてめでたくもなんともない、と言ったが、チャーリはどうしても祝いたかった。ト゛ンの誕 生日に二人きりで祝うなど、今までには絶対に考えられなかったことだ。特に祝わなくていい なんてぼやきながらも、ト゛ンがチャ―リーの願いを聞き入れて会う約束をしてくれたことが、 彼には嬉しかった。 「こんなに遅くなるなんて、ややこしい事件なんだね?ト゛ン。力になるよ」 チャ―リーが振り向きながら、ドアにチェーンを掛けているト゛ンに言った。ト゛ンは肩を 竦めた――そして顔を顰めた。痛みを感じたかのように。ト゛ンは本当に今帰ってきたばかり なのだろう、まだスーツ姿で、けれどもジャケットは脱いでいた。ト゛ンの白いシャツは右袖 ごと破り捨てられ、その代わりに肩に包帯が巻かれている。ト゛ンは右腕を擦りながら疲れの 滲んだ口調で言った。 「ややこしい事件“だった”んだ。もう解決した。つい数時間前にな」 振り向いたチャ―リーはもうト゛ンの言葉など聞いてなかった。彼はプレゼントの入った箱 を小脇に抱えたまま、包帯が巻かれたト゛ンの肩に手を伸ばした。「どうしたの?これ」 「チャ―リー、大したことない」 「怪我?深いの?」 シャツを落ち着きなく見ながら、チャ―リーは問うた。ト゛ンはかぶりを振り、自由な方の 腕を動かしてチャ―リーの肩に触れた。「落ち着け。大したことない。掠り傷だ」 「――撃たれたの?」 身体中の血の気が失せていくのがわかった。ト゛ンは構うな、というように手を振って繰り 返した。「弾が掠っただけだ。すぐに治る。チャ―リー、落ち着け」 「弾って、銃弾?ト゛ン、撃たれたんだね?」 チャ―リーはそう言って、視線を泳がせた。シャツの襟に微かに血痕が飛び散っている。ト ゛ンの血。ト゛ンは返答に困ったのか、瞬きを繰り返した。「……撃たれそうになったんだ。 撃たれたわけじゃない」 「でも怪我してるじゃないか!ト゛ン、撃たれたんだね」 悲鳴まじりの声を手で制し、ト゛ンはゆっくりと言った。「チャ―リー、犯人はもう捕まっ た。……死んだんだ。終わったんだよ。落ち着け」 そう言ってト゛ンはため息をついてみせた。だがチャ―リーはそんな兄の様子に構うことは なく、うろうろと彼の周囲を歩き回ってから言った。落ち着いていられるわけがなかった。「 どうして僕を呼ばなかった?解決まで何日かかったの?包囲網の人数は?FBIが投入した人 数が少なかったの?だからト゛ンが……」 「チャ―リー、終わったんだ」 子供相手にするように繰り返され、チャ―リーは思わず声を荒げた。「怪我してるんだよ! ト゛ン、あともう少しで死ぬところだったんだ!わかってるの?」 ト゛ンはうんざりしたように眉間を指で擦った。そして言った。「こんなことはよくあるこ とだ。チャ―リー、知ってるだろ?」 それが嫌なのだ、とチャ―リーは思った。こういうことがト゛ンの生活に織り込まれている ことが。ト゛ンがやっている仕事は素晴らしいとは思う。人々を助け、彼らの生活を守ってい る。そのことは誇りに思う。だが撃たれたり切り付けられたりすることが日常であってもらっ ては困るのだ。だからこそチャ―リーはもっと確実に、迅速に事件を解決されるために、方程 式を使う。ト゛ンを助けるために。よりスマートで安全な方法を採るのだ。 「僕が捜査に参加してたら、こんな――怪我なんてしなかったかもしれない!ト゛ン、何故 僕を呼ばなかった?事件は何?何だったの?」 震える声で言うと、ト゛ンは目を眇めてみせた。チャ―リーは苛立ちながらそれを見返した。 「……幼児誘拐事件だよ。チャ―リー、今回は犯罪社会学者と幼児性愛専門の心理分析官が 協力して、迅速に……」 「僕の方が役に立てたよ!絶対だ!どうして僕を呼ばなかった?」 繰り返される問いに、ト゛ンはしばし沈黙してから答えた。「今回はお前より彼らの方が必 要だと思った。居場所の分析パターンも確立しつつある。それにお前も忙しそうだったじゃな いか」 数日前までチャ―リーは学会での発表を控えていて、そのためにずいぶん時間を割いていた。 そのこともあって、ト゛ンは今回チャ―リーを捜査に呼ばなかった、とト゛ンはあっさりと言 ってみせた。 チャ―リーはそれを聞いて思わず引きつった笑みを浮かべた。「――学会?僕はポイントカ ードにスタンプ押してもらえるくらい学会に出てるんだよ!10代のときから何度も出てるし、 発表してる。そんなの問題ない。ト゛ンに協力できた。彼らって――彼らってその何とか学者 ?社会学?馬鹿にしてる!僕は犯人像を予想したりはできないけど、犯人を効率的に探す方法 は知ってるんだよ!僕の方が役に立つ。ト゛ンを助けられる。居場所の分析パターンなんて、 僕の思考の劣化コピーじゃないか。笑わせないでよ」 わざと険のある言い方をしてやるとト゛ンは眉を顰め、感情のない声で返した。 「お前は役に立つが、お前以外にも役に立つ人材はいる。数字以外のアプローチの方が有効 なこともある。現に今回は州警察から事件を引き継いですぐに、それ以上犠牲者を出さずに解 決した。……最後に誘拐された女の子は助かったんだ」 チャ―リーはそれを聞いて唇を動かし、それから手を口のあたりに押し当てて俯いた。最近 はほとんどそんなことはなかったのに、久々に自分がコントロールできなくなりそうな気がし た。上手く話せず、無理に話そうとすると舌が震える。子供の頃よくそうなったように。ト゛ ンはやはり子供の頃よくそうしたように、そんなチャ―リーに対して何も言わず、落ち着いた 態度のままでいる。呼吸を鎮めて平常心を取り戻そうとし、話せる程度には落ち着くと、チャ ーリはそれでも震える声で言った。「僕の方がト゛ンを助けられた」 「チャ―リー」 「どうして言わなかったの?手伝えって、どうして――」 唇が戦慄き、チャ―リーは必死で考えた。ト゛ンが自分に助けを求めなかった理由を。ト゛ ンがさっきまでよりは少し苛立ちを含んだ声で言った。 「もうやめろ、チャ―リー」 これがプレゼントか?怪我をしていない手でチャ―リーが大事そうに抱えている箱を取り上 げると、ト゛ンは軽く眉を上げてみせる。チャ―リーはそれに答えずに主張した。「僕の方が 役に立てたんだよ。ト゛ンを守れた。どうしてわからないの?」 「事件が解決したのにお前はどうしてそうこだわるんだ?」 答えの代わりに鋭い問いが返され、チャ―リーは不意に不安に襲われた。ト゛ンの苛立ちが 強まってきているのがわかる。こうなると口論するのが怖くなるのはいつもチャ―リーの方だ った。言いたいことが言えなくなり、口を閉ざして頷いてしまう。何故かト゛ンに本気で歯向 かったり立ち向かったりすることができないのだ。もう子供ではないというのに。今夜はそう なってはいけない、とチャ―リーは自分に言い聞かせた。これはとても大きな問題だからだ。 「……もっといい方法があるのに、黙って見過ごすことなんてできない。一般の人が、子供 が、――ト゛ンが危険に晒されているなら、ベストの方法を……」 完全に正しい方程式を使わないといけない。危険と労力を最小限に留めるようなやり方をし ないと、ト゛ンは守れない。そうしたときでさえト゛ンはたびたび銃を持ち、犯人を対峙する のだから、推論だけで動いたときにはどれほどの危険が待っているのか。チャ―リーはそう説 明しようとしたが、例によって上手く言えなかった。 「彼らのやり方も知らないのに、何故自分の方が優れているとわかる?」 ト゛ンの尋問するような言葉にチャ―リーは口ごもった。「……ただ、ただ、わかるからだ よ。僕は……」 「違うな。お前は個人的な感情から言ってる。チャ―リー、これは仕事なんだ。いつもお前 と組めるわけじゃないし、それを優先するつもりもない」 開けてもいいのか?ラッピングされた箱を軽く振ってみせるト゛ンに、チャ―リーは違う、 と呟いた。チャ―リーは真っ青になって、違う、と繰り返した。ト゛ンの傷を見ながら。 ト゛ンの言っていることにはどこか嘘がある、と思った。漠然と彼はそう感じ、過去の記憶 を探った。彼の言うことは確かに筋が通っている。ほころびはほとんどない。だが、彼の態度 はどうだろう。ト゛ンはいつも自分が窮地に陥っても、チャ―リーに関らせない。FBIの捜 査で協力を要請するときも、お前はお前がやれることだけをやればいいと言って、ト゛ンが何 をしているのかは教えようともしない。今度もきっとそうなのだ。ト゛ンは怪我をしており、 そしてそれをチャ―リーとの話題にしたくないのだ。 「違うよ。個人的な感情なんかじゃない。それだけじゃない。単に僕は、事実を……」 「いいや、お前は個人的な感情から意見してる。――この話はもう終わりだ」 ト゛ンの宣言にチャ―リーはまた口ごもった。そして何秒かのちにやっと口を開き、感情的 になっているのは僕だけじゃない、と言い返そうとした。 けれどもそれはできなかった。何故ならト゛ンがキスをしてきたからだ。宥めるように。 「開けていいんだろ?」 耳元で囁き、プレゼントの入った箱を軽く掲げるト゛ンに、チャ―リーはただ頷いた。こん なのはおかしい、という気持ちはまだ燻っていた。だが、ト゛ンはそれを見透かしたようにも う一度キスをし、チャ―リーを簡単に篭絡した。ト゛ンはチャ―リーをソファに座らせ、自分 も隣に腰を掛けてプレゼントをありがとうと言った。チャ―リーは何も言えずにまた頷いた。 「いいネクタイだな」 器用に箱を片手で開けたト゛ンが目を細めて言う。チャ―リーのとても好きな表情で。だが チャ―リーはその顔を見ても、いつものように幸福にはなれなかった。誤魔化されたことが彼 にはわかっていたし、自分がそれに対抗できないのが空しかった。黙り込んでいるとまたキス が振ってきて、ベッドへ誘われた。 その夜、望んだ通りにト゛ンのベッドで彼と一緒に眠り、誕生日の夜――実際はそれはもう 過ぎているのだが――に彼を独り占めしたというのに、チャーリは不安だった。いつまで経っ ても傷を負ったト゛ンの肩を直視できなかった。そしてト゛ンに対等に扱われていないという ことにも気づいて、彼は孤独を感じた。チャ―リーは自分では、事件を通してト゛ンの相棒に なれたつもりだったのだ。 ____________ | __________ | | | | | | | [][] PAUSE | | | | | | ∧_∧ 前編オワリ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | そんなわけでまた後日。いつも長々と占領して申し訳ないー #comment
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#title(numb*3rs 工ップス兄×弟) [#ib2800a4] / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 例によってnumb*3rs兄弟ネタだってよ ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| これで終わりだから安心しろってさ | | | | \ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ヨカッタ | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || | そんなわけでnumb*3r兄弟ネタです 立て続けに申し訳ないんですが、これで終わりなので見過ごしてやってください とりあえず前回までと続いてます 今更気づいたのですが、このドラマを観たことない方にとっては複数の 小ネタをばらされていることになりますね。今回もそうです。スマソ… 今回は前・中・後編にわけて投下しようと思います ちなみに平安兄弟のファンです。いつも笑いつつ萌えてます。トンクス! もうずいぶん昔のことだが、チャ―リーが生まれたとき、ト゛ンはこれで相棒ができたと思 った。賢くて強くて信頼がおける、一番の親友ができたのだと。その頃の彼のお気に入りの遊 びは「刑事ごっこ」だった。ト゛ンはじきにその遊びをするときには、この弟が常に傍らに控 え、悪人を(といっても本当は、極悪非道な犯罪者を演じる近所の友達に過ぎないのだが)自 分と一緒に捕まえるようになるだろうと考えた。母親の腕に抱かれてすやすや眠り、そうでな いときはミルクを飲んでいるちっぽけな赤ん坊を眺めながら、その日が早くこないかと5歳の ト゛ンはわくわくしながら待った。 ところが、現実はそうはいかなかった。チャ―リーは3歳になる頃までには既に、ト゛ンが 思い描いていたのとは違う弟になっていた。お絵かきのために与えられたクレヨンでそこらじ ゅうに数字の羅列を書き殴り、おもちゃの銃になど見向きもしない。もちろんト゛ンが大好き な野球のバットやボールには、触れることすらない。どうやら半永久的に頼りになる相棒を得 られないことを理解した少年のト゛ンは、その代わりに弟の世話で忙しい両親を助けるために、 誰にも頼らずに一人で何でもできる存在になろうと思った。いわばプランBだ。物語の中の、相 棒のいない英雄たちは大体、相棒がいない代わりに自分だけで何でもできる。そういうふうに なればいいのだと自分に言い聞かせて、そしてほぼその通りになった。少年時代を一貫して、 彼は自立心の強い子供だった。 自立を心がけたト゛ンが、FBIに入るまで、一番愛したものは野球だった。野球で大学の 奨学金をもらい、マイナーリーグでとは言えプロとして金を稼いでいたこともあるほど、彼は 野球に打ち込んだ。けれどもト゛ンは23歳のときに、それまでで一番愛した野球を捨てるこ とを決めた。自分のこの才能ではメジャーには行けない。野球を続けたいのなら、マイナーリ ーグで不安定な生活することになると悟ったときだ。これまでで一番愛した「野球」と、一番 重んじてきた「自立」を量りにかけると、否応なしに「自立」の方に天秤が傾いた。野球は職 業にするにはリスクが高すぎる。若い、ほんの一時しかそれで金は稼げないだろうし、そうす ることが許されるのは、自分がその一時で一生分の金が稼げる才能の持ち主の場合だけだ。そ してト゛ンにはそこまでの才能はない。そこで彼はFBIの試験に志願し、難関を見事にパス した。 FBIに就職が決まったよと言うと、両親はまず驚き、それから手放しで祝福した。ト゛ンもも ちろん満足していた。知性体力ともに抜きん出た(と目の高いFBIの試験官に判定された) 人間しかこの仕事にはつけない。やりがいはありそうだし、サラリーもいい。少なくとも表面 的には、欠けたところが見えない存在になれたのではないだろうか?小さな頃、心に決めた通 りに。 ところがそんなト゛ンに、水を注す人間がいた。もちろんチャ―リーだ。チャ―リーはその とき17歳で、一年前にプリンストン大の数学科を卒業し、スタンフォードの院に進んだとこ ろだった。卒業論文として発表した研究が、学会で大変に評価されたらしいということはト゛ ンも両親から聞いていた。だがト゛ンは正直に言うとチャ―リーの業績にそんなに興味もなか ったし、普段離れて暮らしていたせいもあって、弟自身とさほど親しいわけでもなかった。そ んな弟が、ト゛ンの就職を祝うために久しぶりに家族が集まったディナーの席でこう言ったの だ。「野球はどうしたの?」 何気ない一言だったが、ト゛ンの心にそれは妙に鋭く響いた。弟に悪気はないということは わかっていた。両親が気遣わしげな視線を交わすのを目でやり過ごしながら、ト゛ンはさらり と答えた。「野球はやめた。FBIで働くんだ」 チャ―リーはそれを聞いて瞬きし、それから何か口ごもった。この弟は普段は早口で捲くし 立てるくせに、何か大事なことを言おうとすると上手く話せなくなるらしい。しかもそれは自 分が同席しているときによく起きる現象だと知っていたト゛ンは、見ないふりをして母親が焼 いたリブをほおばった。 「あんなに、あんなに才能があったのに?もったいないよ、ト゛ン」 囁くような声でチャ―リーが言う。母親が窘めようとしたのか身を乗り出したが、チャ―リ ーは巻き毛を揺らしながらそれを手で制した。 「野球が好きだったんじゃないの?――僕は、僕は力になれるよ。ト゛ンが野球を続けるな ら……」 「力になれるって?」 ト゛ンは苛立ちながら聞き返した。そもそもこの弟に助けなど求めたことは、これまでで一 度もない。ましてや人生の一大事を、任せられるわけがない。一体弟が野球の何を知っている だろう?ト゛ンがどれだけ野球を愛し、それに打ち込み、どんな思いでそれを捨てたかなど、 この弟は知らない。チャ―リーは小さな頃から数字と戯れ、しかもどうやらそれが職業として ものになりそうなのだ。彼は諦めるということが、どんなことなのか知らない。ト゛ンの声に チャ―リーはびくりと肩を揺らしたが、一瞬俯いた後で意を決したようにまた顔を上げた。 「僕なら有効な打線を読める。数学で試合の展開を読めるよ。確率論を使うんだ。そうした ら――」 「そんなことは誰にもできない。チャ―リー、野球はもうやめた。捜査官になるんだ。俺は 満足してる。お前の助けも必要ない」 そう言い放ってト゛ンは立ち上がり、キッチンの冷蔵庫にビールを取りに行った。テーブル に戻ってくる頃には、両親が無理やり挿入した別の話題が始まっていた。チャ―リーはまだ何 言いたげだったが、母親に釘を刺されたのかその後はずっと黙っていた。 自分と似通ったものを人はよく愛する。同じ趣味を持つ友人、同じ価値観の恋人。自分を生 み、育てた両親。そして同一の血が流れる兄弟。そう、兄弟はその象徴だ、とチャ―リーは階 段を駆け上がりながら思った。その証拠に、相手がまったくの他人だったとしても、親しみが 生じたときにはよく「兄弟」と呼びかけるではないか。この世界に兄弟ほど自分に近い存在は いない。そういうことになっているはずだ。 ところが同じであることが前提であるがゆえに、違いが際立って見えるという逆の特色もま たここには見える。カインとアベルのように。自分とト゛ンもその実例だ。ト゛ンと自分はま るで違う。そんなことを考えながら乱れた呼吸を整え、チャ―リーはアパートのベルを鳴らし た。腕時計を見ると、12時を過ぎている。今日の午後、仕事を終えて帰宅したら連絡する、 とト゛ンはチャ―リーに電話で約束した。絶対だよ、待ってるから、とチャ―リーは言い、そ して忠実にそれからほぼ12時間経つ今まで、ト゛ンからの電話を心待ちにしていたのだ。最 後の数時間は待ちきれなくなって、呼ばれたらすぐに駆けつけられるように、ト゛ンのアパー トの近くのレストランで時間を潰していた。この部屋の鍵を渡してくれればいいのに、とチャ ―リーは思った。不安な気持ちで外で電話を待つのではなく、ト゛ンのアパートで彼が帰って くるのを待てたらどんなにいいだろう。 でもト゛ンが渡すことはないだろう、と客観的に考えながら、チャ―リーはもう一度ベルを 鳴らした。「ト゛ン?僕だよ、開けてよ」 わかったわかった。そんな物憂げな声と共にゆっくりとドアが開く。巻き毛を揺らしながら チャ―リーはドアの狭間から顔を出した。「自分の誕生日に真夜中過ぎまで働くなんて正気じ ゃないよ、工ップス捜査官」 冗談と本気を混ぜ合わせた口調でチャーリは言い、アパートの中に入った。そう、今日―― いや実際は既に昨日なのだが――はト゛ンの誕生日なのだ。ト゛ンはこの歳になれば誕生日な んてめでたくもなんともない、と言ったが、チャーリはどうしても祝いたかった。ト゛ンの誕 生日に二人きりで祝うなど、今までには絶対に考えられなかったことだ。特に祝わなくていい なんてぼやきながらも、ト゛ンがチャ―リーの願いを聞き入れて会う約束をしてくれたことが、 彼には嬉しかった。 「こんなに遅くなるなんて、ややこしい事件なんだね?ト゛ン。力になるよ」 チャ―リーが振り向きながら、ドアにチェーンを掛けているト゛ンに言った。ト゛ンは肩を 竦めた――そして顔を顰めた。痛みを感じたかのように。ト゛ンは本当に今帰ってきたばかり なのだろう、まだスーツ姿で、けれどもジャケットは脱いでいた。ト゛ンの白いシャツは右袖 ごと破り捨てられ、その代わりに肩に包帯が巻かれている。ト゛ンは右腕を擦りながら疲れの 滲んだ口調で言った。 「ややこしい事件“だった”んだ。もう解決した。つい数時間前にな」 振り向いたチャ―リーはもうト゛ンの言葉など聞いてなかった。彼はプレゼントの入った箱 を小脇に抱えたまま、包帯が巻かれたト゛ンの肩に手を伸ばした。「どうしたの?これ」 「チャ―リー、大したことない」 「怪我?深いの?」 シャツを落ち着きなく見ながら、チャ―リーは問うた。ト゛ンはかぶりを振り、自由な方の 腕を動かしてチャ―リーの肩に触れた。「落ち着け。大したことない。掠り傷だ」 「――撃たれたの?」 身体中の血の気が失せていくのがわかった。ト゛ンは構うな、というように手を振って繰り 返した。「弾が掠っただけだ。すぐに治る。チャ―リー、落ち着け」 「弾って、銃弾?ト゛ン、撃たれたんだね?」 チャ―リーはそう言って、視線を泳がせた。シャツの襟に微かに血痕が飛び散っている。ト ゛ンの血。ト゛ンは返答に困ったのか、瞬きを繰り返した。「……撃たれそうになったんだ。 撃たれたわけじゃない」 「でも怪我してるじゃないか!ト゛ン、撃たれたんだね」 悲鳴まじりの声を手で制し、ト゛ンはゆっくりと言った。「チャ―リー、犯人はもう捕まっ た。……死んだんだ。終わったんだよ。落ち着け」 そう言ってト゛ンはため息をついてみせた。だがチャ―リーはそんな兄の様子に構うことは なく、うろうろと彼の周囲を歩き回ってから言った。落ち着いていられるわけがなかった。「 どうして僕を呼ばなかった?解決まで何日かかったの?包囲網の人数は?FBIが投入した人 数が少なかったの?だからト゛ンが……」 「チャ―リー、終わったんだ」 子供相手にするように繰り返され、チャ―リーは思わず声を荒げた。「怪我してるんだよ! ト゛ン、あともう少しで死ぬところだったんだ!わかってるの?」 ト゛ンはうんざりしたように眉間を指で擦った。そして言った。「こんなことはよくあるこ とだ。チャ―リー、知ってるだろ?」 それが嫌なのだ、とチャ―リーは思った。こういうことがト゛ンの生活に織り込まれている ことが。ト゛ンがやっている仕事は素晴らしいとは思う。人々を助け、彼らの生活を守ってい る。そのことは誇りに思う。だが撃たれたり切り付けられたりすることが日常であってもらっ ては困るのだ。だからこそチャ―リーはもっと確実に、迅速に事件を解決されるために、方程 式を使う。ト゛ンを助けるために。よりスマートで安全な方法を採るのだ。 「僕が捜査に参加してたら、こんな――怪我なんてしなかったかもしれない!ト゛ン、何故 僕を呼ばなかった?事件は何?何だったの?」 震える声で言うと、ト゛ンは目を眇めてみせた。チャ―リーは苛立ちながらそれを見返した。 「……幼児誘拐事件だよ。チャ―リー、今回は犯罪社会学者と幼児性愛専門の心理分析官が 協力して、迅速に……」 「僕の方が役に立てたよ!絶対だ!どうして僕を呼ばなかった?」 繰り返される問いに、ト゛ンはしばし沈黙してから答えた。「今回はお前より彼らの方が必 要だと思った。居場所の分析パターンも確立しつつある。それにお前も忙しそうだったじゃな いか」 数日前までチャ―リーは学会での発表を控えていて、そのためにずいぶん時間を割いていた。 そのこともあって、ト゛ンは今回チャ―リーを捜査に呼ばなかった、とト゛ンはあっさりと言 ってみせた。 チャ―リーはそれを聞いて思わず引きつった笑みを浮かべた。「――学会?僕はポイントカ ードにスタンプ押してもらえるくらい学会に出てるんだよ!10代のときから何度も出てるし、 発表してる。そんなの問題ない。ト゛ンに協力できた。彼らって――彼らってその何とか学者 ?社会学?馬鹿にしてる!僕は犯人像を予想したりはできないけど、犯人を効率的に探す方法 は知ってるんだよ!僕の方が役に立つ。ト゛ンを助けられる。居場所の分析パターンなんて、 僕の思考の劣化コピーじゃないか。笑わせないでよ」 わざと険のある言い方をしてやるとト゛ンは眉を顰め、感情のない声で返した。 「お前は役に立つが、お前以外にも役に立つ人材はいる。数字以外のアプローチの方が有効 なこともある。現に今回は州警察から事件を引き継いですぐに、それ以上犠牲者を出さずに解 決した。……最後に誘拐された女の子は助かったんだ」 チャ―リーはそれを聞いて唇を動かし、それから手を口のあたりに押し当てて俯いた。最近 はほとんどそんなことはなかったのに、久々に自分がコントロールできなくなりそうな気がし た。上手く話せず、無理に話そうとすると舌が震える。子供の頃よくそうなったように。ト゛ ンはやはり子供の頃よくそうしたように、そんなチャ―リーに対して何も言わず、落ち着いた 態度のままでいる。呼吸を鎮めて平常心を取り戻そうとし、話せる程度には落ち着くと、チャ ーリはそれでも震える声で言った。「僕の方がト゛ンを助けられた」 「チャ―リー」 「どうして言わなかったの?手伝えって、どうして――」 唇が戦慄き、チャ―リーは必死で考えた。ト゛ンが自分に助けを求めなかった理由を。ト゛ ンがさっきまでよりは少し苛立ちを含んだ声で言った。 「もうやめろ、チャ―リー」 これがプレゼントか?怪我をしていない手でチャ―リーが大事そうに抱えている箱を取り上 げると、ト゛ンは軽く眉を上げてみせる。チャ―リーはそれに答えずに主張した。「僕の方が 役に立てたんだよ。ト゛ンを守れた。どうしてわからないの?」 「事件が解決したのにお前はどうしてそうこだわるんだ?」 答えの代わりに鋭い問いが返され、チャ―リーは不意に不安に襲われた。ト゛ンの苛立ちが 強まってきているのがわかる。こうなると口論するのが怖くなるのはいつもチャ―リーの方だ った。言いたいことが言えなくなり、口を閉ざして頷いてしまう。何故かト゛ンに本気で歯向 かったり立ち向かったりすることができないのだ。もう子供ではないというのに。今夜はそう なってはいけない、とチャ―リーは自分に言い聞かせた。これはとても大きな問題だからだ。 「……もっといい方法があるのに、黙って見過ごすことなんてできない。一般の人が、子供 が、――ト゛ンが危険に晒されているなら、ベストの方法を……」 完全に正しい方程式を使わないといけない。危険と労力を最小限に留めるようなやり方をし ないと、ト゛ンは守れない。そうしたときでさえト゛ンはたびたび銃を持ち、犯人を対峙する のだから、推論だけで動いたときにはどれほどの危険が待っているのか。チャ―リーはそう説 明しようとしたが、例によって上手く言えなかった。 「彼らのやり方も知らないのに、何故自分の方が優れているとわかる?」 ト゛ンの尋問するような言葉にチャ―リーは口ごもった。「……ただ、ただ、わかるからだ よ。僕は……」 「違うな。お前は個人的な感情から言ってる。チャ―リー、これは仕事なんだ。いつもお前 と組めるわけじゃないし、それを優先するつもりもない」 開けてもいいのか?ラッピングされた箱を軽く振ってみせるト゛ンに、チャ―リーは違う、 と呟いた。チャ―リーは真っ青になって、違う、と繰り返した。ト゛ンの傷を見ながら。 ト゛ンの言っていることにはどこか嘘がある、と思った。漠然と彼はそう感じ、過去の記憶 を探った。彼の言うことは確かに筋が通っている。ほころびはほとんどない。だが、彼の態度 はどうだろう。ト゛ンはいつも自分が窮地に陥っても、チャ―リーに関らせない。FBIの捜 査で協力を要請するときも、お前はお前がやれることだけをやればいいと言って、ト゛ンが何 をしているのかは教えようともしない。今度もきっとそうなのだ。ト゛ンは怪我をしており、 そしてそれをチャ―リーとの話題にしたくないのだ。 「違うよ。個人的な感情なんかじゃない。それだけじゃない。単に僕は、事実を……」 「いいや、お前は個人的な感情から意見してる。――この話はもう終わりだ」 ト゛ンの宣言にチャ―リーはまた口ごもった。そして何秒かのちにやっと口を開き、感情的 になっているのは僕だけじゃない、と言い返そうとした。 けれどもそれはできなかった。何故ならト゛ンがキスをしてきたからだ。宥めるように。 「開けていいんだろ?」 耳元で囁き、プレゼントの入った箱を軽く掲げるト゛ンに、チャ―リーはただ頷いた。こん なのはおかしい、という気持ちはまだ燻っていた。だが、ト゛ンはそれを見透かしたようにも う一度キスをし、チャ―リーを簡単に篭絡した。ト゛ンはチャ―リーをソファに座らせ、自分 も隣に腰を掛けてプレゼントをありがとうと言った。チャ―リーは何も言えずにまた頷いた。 「いいネクタイだな」 器用に箱を片手で開けたト゛ンが目を細めて言う。チャ―リーのとても好きな表情で。だが チャ―リーはその顔を見ても、いつものように幸福にはなれなかった。誤魔化されたことが彼 にはわかっていたし、自分がそれに対抗できないのが空しかった。黙り込んでいるとまたキス が振ってきて、ベッドへ誘われた。 その夜、望んだ通りにト゛ンのベッドで彼と一緒に眠り、誕生日の夜――実際はそれはもう 過ぎているのだが――に彼を独り占めしたというのに、チャーリは不安だった。いつまで経っ ても傷を負ったト゛ンの肩を直視できなかった。そしてト゛ンに対等に扱われていないという ことにも気づいて、彼は孤独を感じた。チャ―リーは自分では、事件を通してト゛ンの相棒に なれたつもりだったのだ。 ____________ | __________ | | | | | | | [][] PAUSE | | | | | | ∧_∧ 前編オワリ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | そんなわけでまた後日。いつも長々と占領して申し訳ないー #comment
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