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#title(num*b3rs 工ップス兄弟) [#y3f64614] / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 狐犯罪CHで放送中のNUMB*3RSスラです ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| カプは工ップス兄×弟だよ | | | | \ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ドラマ自体知っている人はあんまりいない気もしますが 自分のなかでは超ブームなので投下。 近親相姦やおいなので注意! 小さな頃から、チャ―リー・工ップスにとってト゛ン・工ップスは「まともな人間」 の代表格だった。ト゛ンはチャ―リーの血の繋がった兄であり、同じ家で暮らし、同 じものを食べて育ったにも関らず、チャ―リーにとって彼は常に理解しがたい存在、 孤独を感じさせ、自分が人とは違うのだということを思い知らせてくる人間であり続 けた。 もちろん、チャ―リーは優れた存在だった。3歳のときには4桁同士の掛け算を暗算 し、次の年には天才児教育を受け始め、IQテストでも高い結果を出し、13で高校を卒 業してプリンストンの数学科に入り、16の時には論文を完成させた。一方、ト゛ンは 飛び級もせず、18のときに13歳のチャ―リーと一緒に高校を卒業し、4桁の数字を掛 け合わせた暗算もいくつになってもしてみせなかった(チャ―リーは今でもたまに疑 うことがある。ト゛ンは本当はそれくらいの暗算はできて、人前ではできないふりを しているだけではないのかと。「まともな人間」を装うために)。 そんな兄と自分なら、どちらが優れているだろう?答えは明白だ。自分の方が優れ ており、世間は彼を天才と呼ぶ。ト゛ンは優秀なFBI捜査官かもしれないが、天才とは 呼ばれない。30歳の若さで数学教授の座に着いているのはチャ―リーであり、彼のそ の能力、数字に関する飛びぬけた才能は現在の数学会でも一、二を争うと言われてい るほど。結局、自分は「特別」で、ト゛ンは月並みな存在なのだ。チャ―リーはそう 思ってきた。――にも関らず、小さな頃からト゛ンといるといつも、より「まとも」 で「完璧」に近いのは自分でなく兄の方だという劣等感を覚えるのだった。 確かに、専門的な教育を必要とし、その才能を潰してしまわないようにと厳密な注 意を払って育てられてきたチャ―リーと違って、ト゛ンは手の掛からない、よくでき た子供だった。或いは、両親がチャ―リーの教育に時間を割き過ぎるあまりに、ト゛ ンの自立心も成長を促されたのかもしれない。子供の頃からト゛ンは何でも自分でやっ てきた。母親がチャ―リーを遠くのセミナーに連れて行くので忙しいときには、自分 で朝食のシリアルを用意し、野球の新しいグローブを買いに行くときも、両親の車に 乗ってではなく、父親から小遣いをもらって友達とバスに乗って出かけた。14、5才 になるとブロンドの可愛い女の子をガールフレンドにし、野球の試合に連れていった り、図書館で一緒に試験勉強をしたりするだけでなく、ティーンエイジャーらしい悪 ふざけに興じたりもしたが、家族に深刻に心配を掛けるようなことはほとんどなかっ た。スキップはしなかったものの学校での成績は良かったし、クラスでのリーダーシ ップも秀でていた。SAT(大学進学適正試験)では良い点数を収め、しかも野球での 活躍によって奨学金までもらうというおまけつきだ。そんなト゛ンは18になると意気 揚々と大学進学のために家を出、一人で暮らし始めた(チャ―リーは30歳になった 今でも、父親のアランと、生まれ育った家で暮らしている)。彼には友達も大勢いて、 女の子にも人気があった。 チャ―リーはト゛ンが高校のプロムのパートナーに誘った女の子のことを、今でも 覚えている。ブロンドで背が高く、ほっそりとしていて、勉強もできたし礼儀正しい、 魅力的な子だった。一方、チャ―リーの高校での立場は「ト゛ンの天才の弟」でしか なかったから、友人もほとんどいず、プロムにも興味がなかった。ただ、ブロンドの 子をパーティの前に家に連れてきて、両親とお茶を飲むト゛ン、その日のために父親 に借りた車に乗せて、会場へ行くト゛ンの後姿を見ながら、彼女でなく自分を誘って くれればよかったのにとは思った。この考えは馬鹿馬鹿しいし、「まとも」ではない ということくらいはチャ―リーにもわかったので、口には出さなかったが。 子供の頃からチャ―リーは知りたがり屋で落ち着きのない、情緒不安定な性質だっ た。自分が何となく人と違う、ということは感じられたが、それが何故なのかはよく わからなかった。チャ―リーはすべてを数学と関連させて話すことを好んだ。ト゛ン が野球の試合で勝つ確率も、そこに自分がいて、相手の癖や何かから展開を予想し、 ト゛ンの打線について指示を出せば、より勝率を高めることができるということも、 すべて。しかし、そういう話し方はト゛ンの好みには合わなかった。ト゛ンはいつも結 論を急ぎ(「チャ―リー、お前は俺の試合を観に行くって言いたいのか?」)、そし てチャ―リーの数式に沿った理論的答えを退けた(「試合には来るな。打ち方くらい 自分で決めたいし、お前は興奮すると特にうるさいから」)。チャ―リーにはそれが 歯がゆくてたまらなかった。自分は絶対にト゛ンの役に立てるのに、ト゛ンにとっては チャ―リーはわけのわからないことを捲くし立てる、頭でっかちの弟に過ぎないのだ。 チャ―リーは月並みな筈のト゛ンから感じられる、完成された何か、チャ―リーを惹 きつける何かの秘密を知りたかった。フィボナッチ数列から掬い出す黄金比が、世界 と調和した美しさを見せるのとおなじように、ト゛ンという存在にはほとんど乱れが なく、ありふれてはいたがそれだからこそ完璧に近いように思えた。チャ―リー自身 が突出して優れていながら、世界と不調和であるのと対照的だった。 チャ―リーはいつもト゛ンのことを知りたかったから、小さい頃から彼の部屋に忍 び込んでは、ベッドの下の宝物を勝手に探り出したり、ト゛ンがガールフレンドと出 かけて何をしているのかをしつこく詮索したりした。ト゛ンのベッドの下から見つけ 出した、女の子から贈られたカードや、ウイニングボール、『プレイボーイ』などは、 大人の教育関係者に囲まれて育ったチャ―リーにとって衝撃的なものだったので、子 供だった彼はたびたび両親にその驚きを語った。ト゛ンはそれについて怒り、チャ― リーがぶしつけでおしゃべりだと非難した(このイメージは今でもト゛ンの中にある らしく、チャ―リーは不本意に感じている)。チャ―リーはそれについて自分なりに 反論し、どうして自分が彼の部屋に忍び込んだのかも説明しようとした。けれども、 弟の回りくどい話にト゛ンは苛立ち、話の途中でいつもため息を吐き、弁解するチャ ―リーを押しのけて、友達と野球をしに外に出て行ってしまうのだった。 もちろん、ト゛ンは横暴な兄ではなかった。チャ―リーを殴ったりしたことはなか ったし、チャ―リーの詮索癖を責めたことはあっても、最後には許すという態度を取 った(ただし、ため息を吐きながら)。チャ―リーが彼より5歳も年下で、力も弱く、 取っ組み合いの喧嘩をするのはフェアではないこと、「人とは少し違う」才能と性質 があり、それは生まれついてのものだから、彼を叱責しても仕方がないのだというこ とをちゃんと理解していた。けれどもト゛ンはたびたび、チャ―リーの話を最後まで 聞こうとしなかったし、チャ―リーがト゛ンの高校に入った頃からは、彼のことをま ともに見つめることもしなくなった。 ト゛ンは親愛の情をこめて弟の名前を呼ぶような兄ではなかった。チャ―リーを近 所の友達との草野球に誘ってくれたこともなかった。だが、チャ―リーはどうしても ト゛ンに見つめられたかったし、自分のことを理解してほしかった。だから彼はト゛ン の前に立ち、彼と会話を交わすときはとても緊張した。緊張し、頭脳をフル回転させ、 いつもの早口をさらに早め、理論的な筋道を立てて自分が持っている答えをわかりや すく提示しようとした。だがそうすればするほど、ト゛ンは困惑した表情を見せ、そ れに気づくとチャ―リーの舌も震え、最後には気まずい思いで唇を噛んだ。二十歳そ こそこの頃から、大学で講義を持ってきた彼が、たった一人、兄の前に立つと上手く 喋れなくなるのだった。――数学的なことを除いては。 一度だけ、ト゛ンがまともにチャ―リーを見つめ、彼の襟首を掴んで怒鳴ったこと があった。彼らの母親が癌で亡くなったときだ。ト゛ンは大学を卒業した後FBIに就職 し、アルバカーキに赴任して一人暮らしをしていたが、彼らの母親が癌のために入院 したと聞き、キャリアを犠牲にして、故郷のカリフォルニアに戻ってきた。母親が余 命三ヶ月だと知って、ト゛ンは忙しい仕事の合間を縫って病院に通い、妻を看護する 父親を助け、家のことにも気を配った。一方、実家で暮らしていたチャ―リーは、母 親に会いに病院へ行くことはなかった。彼は家のガレージにこもり、決して解けない P≠NP問題を解こうと躍起になって、外界との接触を断っていた。父親のアランとト ゛ンが代わる代わるにガレージを訪れ、病院へ見舞いに行こうと彼を説得しようとし たが、チャ―リーは計算に一心不乱になり、それを聞かずにいた。 結局病院でチャ―リーに会わないまま母親が死んだとき、ト゛ンは目を真っ赤にし て弟の襟首を掴み、自分より背が低いチャ―リーの身体を乱暴に揺さぶって怒鳴った。 それは初めてのことだった。お前は頭がおかしいとト゛ンは言い、チャ―リーはぎゅ っと目を瞑って殴られるのに耐えようとしていた。だが、ト゛ンは結局チャ―リーを 殴りはせず、彼を解放するとため息を吐き、そのまま背を向けて、葬儀の準備をする 父親を手伝いに行った。それからはますます二人の関係は距離のあるものになった。 チャ―リーはそのとき、母親の存在と同時に、それだけでない何かを失ったことを感 じた。 それでも転機は不意にやってきた。チャ―リーが自分の方程式を使って、FBIでト゛ ンのチームが担当している事件の捜査を手伝うようになってからだ。自分の考えた 数式が、現実のものと関っているのだということ、自分が語る言葉、数字の世界が、 単なる夢想ではないのだということを、ト゛ンにもほんの少しだが理解してもらえた ことが、チャ―リーには嬉しかった。ト゛ンに理解してもらうということは、チャ― リーにとって、自分の中の欠けた何かを拾う作業に似ていた。自分の中に他の人と変 わらない部分もあるのだということ、それらを確認し、さらにト゛ンと自分の中に類 似性や共通項を見出すことで、自分と世界の調和が生まれるような気がした。 鍵はいつもト゛ンが握っていた。世界の中で完璧な円を描くその秘訣を解き明かす ためには、ト゛ンが必要だった。ト゛ンは以前よりはチャ―リーの話に耳を傾けてくれ るようになり、チャ―リーも以前よりはト゛ンの前で緊張しなくなった。ト゛ンはたま にチャ―リーを小突いてからかい、同僚や友人たちに対するのと同じように、軽口を 叩いたりもし始めた。もちろん、衝突することはあったし、そのたびにチャ―リーは ひどく傷ついたが、それでも前のように存在を無視されることよりはずっとよかった。 衝突の後には理解と和解があり、そのたびに二人の距離が縮まった気がしたから。 チャ―リーはト゛ンといるとき、いつも真剣に考えた――どうやったらト゛ンが微笑 んでくれ、どうやったらト゛ンが自分の言葉を聞き、数字を通して世界を見る自分を 理解してくれるのか。ト゛ンがどうやったら自分を好いてくれ、気さくに肩を叩き、 仲間のように扱ってくれるのか。数字ではなかなか表せないト゛ンという存在を解こ うとし、彼の表情やしぐさを一つ一つ注意深く観察した。仏頂面や諦めの混じった困 惑の表情だけでなく、もっと柔らかな何かを、ト゛ンから向けてほしかったから、そ のためのアルゴリズムを探した。 けれどもト゛ンに関することはいつも、計算通りにはいかない。ふとした瞬間、チ ャ―リーは誤算に気づいた。事件の捜査のためにFBIのオフィスにチャ―リーが呼ば れたとき、ト゛ンがある表情を見せたのだ。チャ―リーではなく、同僚のテリ―に。 ブロンドで華奢、けれども勇敢な女性捜査官の肩をト゛ンが軽く叩いたのだったか、 コーヒーを渡したのだったか。徹夜続きで二人ともかなり疲れていたようで、ト゛ン が見せた一瞬の表情は、そのせいだったのかもしれない。けれどもその一瞬の間に走 った何か、ト゛ンの瞳にこめられた柔らかいもの、温かな何かが、チャ―リーをひど く戸惑わせた。テリ―とト゛ンは10年以上も前、学生時代にデートした仲だったと聞 いたことはあったし、二人の間に未だに残る親密さも理解していたつもりだった。だ が、とにかくト゛ンがテリーに――チャ―リーではない誰かに――愛情と労わりを見 せ、それはチャ―リーの見たことのない種類の表情だったということが、彼を落ち着 かなくさせた。 彼は自分のこの戸惑いにひどく戸惑い、その理由を考えた。今ここで問題なのは、 ト゛ンではなかった。テリ―でもなかった。チャ―リー自身であり、けれどもそこに 深く関っているのは、やはりト゛ンだった。そのときの事件はチャ―リーの協力で解 決したが、チャ―リー自身の問題は依然として残っていた。事件の解決を祝う席で、 よくやったじゃないか、チャ―リー、そう言ってト゛ンが肩を叩いた。とても気さく で、親しいしぐさで、チャ―リーが望んでいたはずのものだった。だが、それがテリ ーにあの晩向けられた表情とは違うというだけで、チャ―リーは息苦しいものを感じ た。 答えはもう見えていた。チャ―リーは彼なりにいろいろな事実をいろいろな方向か ら検討し、式を立て直し、必死でその答えを否定しようとした。けれどもどうやって も否定しようがない(なぜなら彼は真実を愛する数学者だから)、そのことに気づい たとき、チャ―リーは数年前、母親を亡くしたときと同じように、ガレージにこもり 始めた。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ 長イノデココデ一休ミ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 今晩はここまでにしときます この兄弟はほんともうホモにしか見えません #comment
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ており、世間は彼を天才と呼ぶ。ト゛ンは優秀なFBI捜査官かもしれないが、天才とは 呼ばれない。30歳の若さで数学教授の座に着いているのはチャ―リーであり、彼のそ の能力、数字に関する飛びぬけた才能は現在の数学会でも一、二を争うと言われてい るほど。結局、自分は「特別」で、ト゛ンは月並みな存在なのだ。チャ―リーはそう 思ってきた。――にも関らず、小さな頃からト゛ンといるといつも、より「まとも」 で「完璧」に近いのは自分でなく兄の方だという劣等感を覚えるのだった。 確かに、専門的な教育を必要とし、その才能を潰してしまわないようにと厳密な注 意を払って育てられてきたチャ―リーと違って、ト゛ンは手の掛からない、よくでき た子供だった。或いは、両親がチャ―リーの教育に時間を割き過ぎるあまりに、ト゛ ンの自立心も成長を促されたのかもしれない。子供の頃からト゛ンは何でも自分でやっ てきた。母親がチャ―リーを遠くのセミナーに連れて行くので忙しいときには、自分 で朝食のシリアルを用意し、野球の新しいグローブを買いに行くときも、両親の車に 乗ってではなく、父親から小遣いをもらって友達とバスに乗って出かけた。14、5才 になるとブロンドの可愛い女の子をガールフレンドにし、野球の試合に連れていった り、図書館で一緒に試験勉強をしたりするだけでなく、ティーンエイジャーらしい悪 ふざけに興じたりもしたが、家族に深刻に心配を掛けるようなことはほとんどなかっ た。スキップはしなかったものの学校での成績は良かったし、クラスでのリーダーシ ップも秀でていた。SAT(大学進学適正試験)では良い点数を収め、しかも野球での 活躍によって奨学金までもらうというおまけつきだ。そんなト゛ンは18になると意気 揚々と大学進学のために家を出、一人で暮らし始めた(チャ―リーは30歳になった 今でも、父親のアランと、生まれ育った家で暮らしている)。彼には友達も大勢いて、 女の子にも人気があった。 チャ―リーはト゛ンが高校のプロムのパートナーに誘った女の子のことを、今でも 覚えている。ブロンドで背が高く、ほっそりとしていて、勉強もできたし礼儀正しい、 魅力的な子だった。一方、チャ―リーの高校での立場は「ト゛ンの天才の弟」でしか なかったから、友人もほとんどいず、プロムにも興味がなかった。ただ、ブロンドの 子をパーティの前に家に連れてきて、両親とお茶を飲むト゛ン、その日のために父親 に借りた車に乗せて、会場へ行くト゛ンの後姿を見ながら、彼女でなく自分を誘って くれればよかったのにとは思った。この考えは馬鹿馬鹿しいし、「まとも」ではない ということくらいはチャ―リーにもわかったので、口には出さなかったが。 子供の頃からチャ―リーは知りたがり屋で落ち着きのない、情緒不安定な性質だっ た。自分が何となく人と違う、ということは感じられたが、それが何故なのかはよく わからなかった。チャ―リーはすべてを数学と関連させて話すことを好んだ。ト゛ン が野球の試合で勝つ確率も、そこに自分がいて、相手の癖や何かから展開を予想し、 ト゛ンの打線について指示を出せば、より勝率を高めることができるということも、 すべて。しかし、そういう話し方はト゛ンの好みには合わなかった。ト゛ンはいつも結 論を急ぎ(「チャ―リー、お前は俺の試合を観に行くって言いたいのか?」)、そし てチャ―リーの数式に沿った理論的答えを退けた(「試合には来るな。打ち方くらい 自分で決めたいし、お前は興奮すると特にうるさいから」)。チャ―リーにはそれが 歯がゆくてたまらなかった。自分は絶対にト゛ンの役に立てるのに、ト゛ンにとっては チャ―リーはわけのわからないことを捲くし立てる、頭でっかちの弟に過ぎないのだ。 チャ―リーは月並みな筈のト゛ンから感じられる、完成された何か、チャ―リーを惹 きつける何かの秘密を知りたかった。フィボナッチ数列から掬い出す黄金比が、世界 と調和した美しさを見せるのとおなじように、ト゛ンという存在にはほとんど乱れが なく、ありふれてはいたがそれだからこそ完璧に近いように思えた。チャ―リー自身 が突出して優れていながら、世界と不調和であるのと対照的だった。 チャ―リーはいつもト゛ンのことを知りたかったから、小さい頃から彼の部屋に忍 び込んでは、ベッドの下の宝物を勝手に探り出したり、ト゛ンがガールフレンドと出 かけて何をしているのかをしつこく詮索したりした。ト゛ンのベッドの下から見つけ 出した、女の子から贈られたカードや、ウイニングボール、『プレイボーイ』などは、 大人の教育関係者に囲まれて育ったチャ―リーにとって衝撃的なものだったので、子 供だった彼はたびたび両親にその驚きを語った。ト゛ンはそれについて怒り、チャ― リーがぶしつけでおしゃべりだと非難した(このイメージは今でもト゛ンの中にある らしく、チャ―リーは不本意に感じている)。チャ―リーはそれについて自分なりに 反論し、どうして自分が彼の部屋に忍び込んだのかも説明しようとした。けれども、 弟の回りくどい話にト゛ンは苛立ち、話の途中でいつもため息を吐き、弁解するチャ ―リーを押しのけて、友達と野球をしに外に出て行ってしまうのだった。 もちろん、ト゛ンは横暴な兄ではなかった。チャ―リーを殴ったりしたことはなか ったし、チャ―リーの詮索癖を責めたことはあっても、最後には許すという態度を取 った(ただし、ため息を吐きながら)。チャ―リーが彼より5歳も年下で、力も弱く、 取っ組み合いの喧嘩をするのはフェアではないこと、「人とは少し違う」才能と性質 があり、それは生まれついてのものだから、彼を叱責しても仕方がないのだというこ とをちゃんと理解していた。けれどもト゛ンはたびたび、チャ―リーの話を最後まで 聞こうとしなかったし、チャ―リーがト゛ンの高校に入った頃からは、彼のことをま ともに見つめることもしなくなった。 ト゛ンは親愛の情をこめて弟の名前を呼ぶような兄ではなかった。チャ―リーを近 所の友達との草野球に誘ってくれたこともなかった。だが、チャ―リーはどうしても ト゛ンに見つめられたかったし、自分のことを理解してほしかった。だから彼はト゛ン の前に立ち、彼と会話を交わすときはとても緊張した。緊張し、頭脳をフル回転させ、 いつもの早口をさらに早め、理論的な筋道を立てて自分が持っている答えをわかりや すく提示しようとした。だがそうすればするほど、ト゛ンは困惑した表情を見せ、そ れに気づくとチャ―リーの舌も震え、最後には気まずい思いで唇を噛んだ。二十歳そ こそこの頃から、大学で講義を持ってきた彼が、たった一人、兄の前に立つと上手く 喋れなくなるのだった。――数学的なことを除いては。 一度だけ、ト゛ンがまともにチャ―リーを見つめ、彼の襟首を掴んで怒鳴ったこと があった。彼らの母親が癌で亡くなったときだ。ト゛ンは大学を卒業した後FBIに就職 し、アルバカーキに赴任して一人暮らしをしていたが、彼らの母親が癌のために入院 したと聞き、キャリアを犠牲にして、故郷のカリフォルニアに戻ってきた。母親が余 命三ヶ月だと知って、ト゛ンは忙しい仕事の合間を縫って病院に通い、妻を看護する 父親を助け、家のことにも気を配った。一方、実家で暮らしていたチャ―リーは、母 親に会いに病院へ行くことはなかった。彼は家のガレージにこもり、決して解けない P≠NP問題を解こうと躍起になって、外界との接触を断っていた。父親のアランとト ゛ンが代わる代わるにガレージを訪れ、病院へ見舞いに行こうと彼を説得しようとし たが、チャ―リーは計算に一心不乱になり、それを聞かずにいた。 結局病院でチャ―リーに会わないまま母親が死んだとき、ト゛ンは目を真っ赤にし て弟の襟首を掴み、自分より背が低いチャ―リーの身体を乱暴に揺さぶって怒鳴った。 それは初めてのことだった。お前は頭がおかしいとト゛ンは言い、チャ―リーはぎゅ っと目を瞑って殴られるのに耐えようとしていた。だが、ト゛ンは結局チャ―リーを 殴りはせず、彼を解放するとため息を吐き、そのまま背を向けて、葬儀の準備をする 父親を手伝いに行った。それからはますます二人の関係は距離のあるものになった。 チャ―リーはそのとき、母親の存在と同時に、それだけでない何かを失ったことを感 じた。 それでも転機は不意にやってきた。チャ―リーが自分の方程式を使って、FBIでト゛ ンのチームが担当している事件の捜査を手伝うようになってからだ。自分の考えた 数式が、現実のものと関っているのだということ、自分が語る言葉、数字の世界が、 単なる夢想ではないのだということを、ト゛ンにもほんの少しだが理解してもらえた ことが、チャ―リーには嬉しかった。ト゛ンに理解してもらうということは、チャ― リーにとって、自分の中の欠けた何かを拾う作業に似ていた。自分の中に他の人と変 わらない部分もあるのだということ、それらを確認し、さらにト゛ンと自分の中に類 似性や共通項を見出すことで、自分と世界の調和が生まれるような気がした。 鍵はいつもト゛ンが握っていた。世界の中で完璧な円を描くその秘訣を解き明かす ためには、ト゛ンが必要だった。ト゛ンは以前よりはチャ―リーの話に耳を傾けてくれ るようになり、チャ―リーも以前よりはト゛ンの前で緊張しなくなった。ト゛ンはたま にチャ―リーを小突いてからかい、同僚や友人たちに対するのと同じように、軽口を 叩いたりもし始めた。もちろん、衝突することはあったし、そのたびにチャ―リーは ひどく傷ついたが、それでも前のように存在を無視されることよりはずっとよかった。 衝突の後には理解と和解があり、そのたびに二人の距離が縮まった気がしたから。 チャ―リーはト゛ンといるとき、いつも真剣に考えた――どうやったらト゛ンが微笑 んでくれ、どうやったらト゛ンが自分の言葉を聞き、数字を通して世界を見る自分を 理解してくれるのか。ト゛ンがどうやったら自分を好いてくれ、気さくに肩を叩き、 仲間のように扱ってくれるのか。数字ではなかなか表せないト゛ンという存在を解こ うとし、彼の表情やしぐさを一つ一つ注意深く観察した。仏頂面や諦めの混じった困 惑の表情だけでなく、もっと柔らかな何かを、ト゛ンから向けてほしかったから、そ のためのアルゴリズムを探した。 けれどもト゛ンに関することはいつも、計算通りにはいかない。ふとした瞬間、チ ャ―リーは誤算に気づいた。事件の捜査のためにFBIのオフィスにチャ―リーが呼ば れたとき、ト゛ンがある表情を見せたのだ。チャ―リーではなく、同僚のテリ―に。 ブロンドで華奢、けれども勇敢な女性捜査官の肩をト゛ンが軽く叩いたのだったか、 コーヒーを渡したのだったか。徹夜続きで二人ともかなり疲れていたようで、ト゛ン が見せた一瞬の表情は、そのせいだったのかもしれない。けれどもその一瞬の間に走 った何か、ト゛ンの瞳にこめられた柔らかいもの、温かな何かが、チャ―リーをひど く戸惑わせた。テリ―とト゛ンは10年以上も前、学生時代にデートした仲だったと聞 いたことはあったし、二人の間に未だに残る親密さも理解していたつもりだった。だ が、とにかくト゛ンがテリーに――チャ―リーではない誰かに――愛情と労わりを見 せ、それはチャ―リーの見たことのない種類の表情だったということが、彼を落ち着 かなくさせた。 彼は自分のこの戸惑いにひどく戸惑い、その理由を考えた。今ここで問題なのは、 ト゛ンではなかった。テリ―でもなかった。チャ―リー自身であり、けれどもそこに 深く関っているのは、やはりト゛ンだった。そのときの事件はチャ―リーの協力で解 決したが、チャ―リー自身の問題は依然として残っていた。事件の解決を祝う席で、 よくやったじゃないか、チャ―リー、そう言ってト゛ンが肩を叩いた。とても気さく で、親しいしぐさで、チャ―リーが望んでいたはずのものだった。だが、それがテリ ーにあの晩向けられた表情とは違うというだけで、チャ―リーは息苦しいものを感じ た。 答えはもう見えていた。チャ―リーは彼なりにいろいろな事実をいろいろな方向か ら検討し、式を立て直し、必死でその答えを否定しようとした。けれどもどうやって も否定しようがない(なぜなら彼は真実を愛する数学者だから)、そのことに気づい たとき、チャ―リーは数年前、母親を亡くしたときと同じように、ガレージにこもり 始めた。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ 長イノデココデ一休ミ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 今晩はここまでにしときます この兄弟はほんともうホモにしか見えません #comment
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作品一覧
シリーズものインデックス3
シリーズものインデックス2
シリーズものインデックス
第71巻
第70巻
第69巻
第68巻
第67巻
第66巻
第65巻
第64巻
第63巻
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第6巻
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