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#title(ドクオクエスト 輝ける世界) [#mf878cc8] [[決戦>19-140]] お待たせしました。 ドクオクエスト最終話です。 ____________ | __________ | | | | | | | |> PLAY. | | | | | | ∧_∧ ゲツヨウカラ ザンギョウ トハ | | | | ピッ (・∀・ ) マサニ ゲドウ! | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 国王が派遣した竜王討伐隊は全滅した。 彼の城から生きて戻った者は、誰一人としていなかった。その報は王都へともたらされ、 王は恐怖のあまりにその場で卒倒したという。 この世を統べる存在に弓を引いたのだ。誰もが竜王の怒りを恐れ、門戸を閉ざし。 そうして今。 世界は恐怖に包まれている。 吹き抜ける風が、生い茂った草を揺らしている。 目の前に広がるのは草の波。10年の歳月は、私の村を跡形もなく消し去ってしまっていた。 「……」 私は、墓を作った。滅びてしまった村の墓だ。 素手で土を掘り返し、そうして積み上げた土の上に木切れで作った十字を立てる。あまりにも粗末な その墓の周りを出来る限りの花で埋めて、私は死者の魂の安寧を祈った。 そうして取り出した、一本のナイフ。古びてあちこちに錆が浮き刃の欠けこぼれたそれは、 私が辿った旅の証だった。 このナイフを握りしめ、私の旅は始まった。私とともに幾多の試練を乗り越えて、時に私の涙を吸い、 これは最後まで私の傍にあったもの。それを村の墓に供えることで、私の旅はようやく終わりを迎えることが出来る。 汚れた手を払い、立ち上がる。 祈りのために下ろしていたフードを再び被り直して、そうして私は村に別れをつげた。 「もういいのか」 墓から踵を返した私に、美しい声がかかる。 私が行う別れの儀式を、ただ黙って見守ってくれていた彼のその言葉は優しさに溢れていて、 それに満たされていく自分を感じながら、私は静かに頷いた。 「うん。もう…いいんだ」 うまく笑えずにうつむく私を、彼の手が優しく包む。温かな抱擁に、私の右目からはぽろりと一粒だけ、涙が零れた。 「ありがとう、竜王」 そんな私の頭を、フードの上から彼の手が撫でてくれる。かつては世界を握っていた、その手で。 あの日、私達は誰にも見つからないようひっそりと、城を離れていた。 残された玉座には竜王の魔力を込めた泥人形を置いて。 込めた魔力が続く限り彼はそこにいて、この世界に君臨し続ける。 でもそれはきっと、あまり永い刻ではないだろう。 いずれそんなに遠くない未来に、身代わりの人形は泥へと還っていく。そうして竜王の魔力が解けた この世界に居場所を無くした魔物達も、闇の世界へと戻っていく。 そうしてやがて、世界は人の手へと還っていく。 竜王の指が、私のフードへと伸びた。 彼は私がこの顔を隠すことをあまり好まない。私の顔が見えないのは嫌だと言う。 その言葉は嬉しかったけれど、私のこの顔はあまりにも特徴がありすぎて、あの戦で死んだはずの私が 生きている事を誰にも知られる訳にはいかないから、私はいつもフードを目深に被っていた。 …それに、彼に素顔を晒す事は、やはりほんの少し、恥ずかしいから。 そんな私の気持ちが判るのか、そのことに関して竜王はあまり無理強いをしなかった。今も彼は私のフードを 取るのでは無く、私の顔を覆う布の端の乱れを、優しい手つきで整えてくれている。 今まで人に構われる事の無かった私は、そんな何気ない優しさに慣れていなかった。竜王の手が私の髪や手や 頬に触れる度に、どうしていいか判らずに私は身体を強張らせてしまう。 竜王の優しさが嬉しくて私も何かを返したいと思うのに、人に触れられるという感触はそのまま自分の身に 降りかかったあらゆる暴力を私に思い出させてしまうからからだ。 10年の間に私に染み込んだ悲しい条件反射をけれど竜王は咎めることはない。今も私の身体の強張りを溶かす ように何度も優しくその手は動き、私の身体が彼の存在に慣れるまで、辛抱強く待ってくれている。 「…」 震えながらもようやく指を伸ばし竜王の服の端に縋れば、彼は嬉しそうに微笑んでくれる。 そうしてそのまま布越しに施されようとする口付けを、私は受け入れた。恐怖ではなく恥ずかしさに、目を閉じて。 私の顔には深く醜い疵がある。 左半分は焼け崩れ、額には呪いの証を頂くその姿は、とても、とても、醜いのだろう。 けれど。 水面に顔を映すたびに嘆いてきたこの疵を。硝子に姿が映りこむたびに悲しんできたこの疵を。私はもう恨んだりはしない。 この疵も私の一部なのだから。 「行くぞ」 差し出される竜王の手。いつだって迷い無く伸ばされるその手を、私は眩しい思いで見つめる。 力強いそのてのひらは、かつては全てを握っていた。それらを全て捨て去った今でも、その手の中には確かに世界が握られている。 私という世界が。 「うん」 そうして私も手を伸ばす。温かな竜王のてのひらに。 「行こう」 その手の中に、世界を掴んで。 手を繋いで、私達は歩き出す。 二人でたずねて行く世界は私の目に、どのように映るのだろう。 そう、きっと。 見るもの全てが、光り輝いて見えるに、違いない。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 完結までの長い間、お付き合いいただき、ありがとうございました。 - うわあああ感動したありがとう 二人がずっと幸せでありますように -- &new{2012-03-17 (土) 23:19:04}; - ぐっときた…!よかったなぁ…! -- &new{2012-07-10 (火) 14:40:30}; #comment
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#title(ドクオクエスト 輝ける世界) [#mf878cc8] [[決戦>19-140]] お待たせしました。 ドクオクエスト最終話です。 ____________ | __________ | | | | | | | |> PLAY. | | | | | | ∧_∧ ゲツヨウカラ ザンギョウ トハ | | | | ピッ (・∀・ ) マサニ ゲドウ! | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 国王が派遣した竜王討伐隊は全滅した。 彼の城から生きて戻った者は、誰一人としていなかった。その報は王都へともたらされ、 王は恐怖のあまりにその場で卒倒したという。 この世を統べる存在に弓を引いたのだ。誰もが竜王の怒りを恐れ、門戸を閉ざし。 そうして今。 世界は恐怖に包まれている。 吹き抜ける風が、生い茂った草を揺らしている。 目の前に広がるのは草の波。10年の歳月は、私の村を跡形もなく消し去ってしまっていた。 「……」 私は、墓を作った。滅びてしまった村の墓だ。 素手で土を掘り返し、そうして積み上げた土の上に木切れで作った十字を立てる。あまりにも粗末な その墓の周りを出来る限りの花で埋めて、私は死者の魂の安寧を祈った。 そうして取り出した、一本のナイフ。古びてあちこちに錆が浮き刃の欠けこぼれたそれは、 私が辿った旅の証だった。 このナイフを握りしめ、私の旅は始まった。私とともに幾多の試練を乗り越えて、時に私の涙を吸い、 これは最後まで私の傍にあったもの。それを村の墓に供えることで、私の旅はようやく終わりを迎えることが出来る。 汚れた手を払い、立ち上がる。 祈りのために下ろしていたフードを再び被り直して、そうして私は村に別れをつげた。 「もういいのか」 墓から踵を返した私に、美しい声がかかる。 私が行う別れの儀式を、ただ黙って見守ってくれていた彼のその言葉は優しさに溢れていて、 それに満たされていく自分を感じながら、私は静かに頷いた。 「うん。もう…いいんだ」 うまく笑えずにうつむく私を、彼の手が優しく包む。温かな抱擁に、私の右目からはぽろりと一粒だけ、涙が零れた。 「ありがとう、竜王」 そんな私の頭を、フードの上から彼の手が撫でてくれる。かつては世界を握っていた、その手で。 あの日、私達は誰にも見つからないようひっそりと、城を離れていた。 残された玉座には竜王の魔力を込めた泥人形を置いて。 込めた魔力が続く限り彼はそこにいて、この世界に君臨し続ける。 でもそれはきっと、あまり永い刻ではないだろう。 いずれそんなに遠くない未来に、身代わりの人形は泥へと還っていく。そうして竜王の魔力が解けた この世界に居場所を無くした魔物達も、闇の世界へと戻っていく。 そうしてやがて、世界は人の手へと還っていく。 竜王の指が、私のフードへと伸びた。 彼は私がこの顔を隠すことをあまり好まない。私の顔が見えないのは嫌だと言う。 その言葉は嬉しかったけれど、私のこの顔はあまりにも特徴がありすぎて、あの戦で死んだはずの私が 生きている事を誰にも知られる訳にはいかないから、私はいつもフードを目深に被っていた。 …それに、彼に素顔を晒す事は、やはりほんの少し、恥ずかしいから。 そんな私の気持ちが判るのか、そのことに関して竜王はあまり無理強いをしなかった。今も彼は私のフードを 取るのでは無く、私の顔を覆う布の端の乱れを、優しい手つきで整えてくれている。 今まで人に構われる事の無かった私は、そんな何気ない優しさに慣れていなかった。竜王の手が私の髪や手や 頬に触れる度に、どうしていいか判らずに私は身体を強張らせてしまう。 竜王の優しさが嬉しくて私も何かを返したいと思うのに、人に触れられるという感触はそのまま自分の身に 降りかかったあらゆる暴力を私に思い出させてしまうからからだ。 10年の間に私に染み込んだ悲しい条件反射をけれど竜王は咎めることはない。今も私の身体の強張りを溶かす ように何度も優しくその手は動き、私の身体が彼の存在に慣れるまで、辛抱強く待ってくれている。 「…」 震えながらもようやく指を伸ばし竜王の服の端に縋れば、彼は嬉しそうに微笑んでくれる。 そうしてそのまま布越しに施されようとする口付けを、私は受け入れた。恐怖ではなく恥ずかしさに、目を閉じて。 私の顔には深く醜い疵がある。 左半分は焼け崩れ、額には呪いの証を頂くその姿は、とても、とても、醜いのだろう。 けれど。 水面に顔を映すたびに嘆いてきたこの疵を。硝子に姿が映りこむたびに悲しんできたこの疵を。私はもう恨んだりはしない。 この疵も私の一部なのだから。 「行くぞ」 差し出される竜王の手。いつだって迷い無く伸ばされるその手を、私は眩しい思いで見つめる。 力強いそのてのひらは、かつては全てを握っていた。それらを全て捨て去った今でも、その手の中には確かに世界が握られている。 私という世界が。 「うん」 そうして私も手を伸ばす。温かな竜王のてのひらに。 「行こう」 その手の中に、世界を掴んで。 手を繋いで、私達は歩き出す。 二人でたずねて行く世界は私の目に、どのように映るのだろう。 そう、きっと。 見るもの全てが、光り輝いて見えるに、違いない。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 完結までの長い間、お付き合いいただき、ありがとうございました。 - うわあああ感動したありがとう 二人がずっと幸せでありますように -- &new{2012-03-17 (土) 23:19:04}; - ぐっときた…!よかったなぁ…! -- &new{2012-07-10 (火) 14:40:30}; #comment
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