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#title(カーズ ヒッピー×軍人) [#t7fe566e] / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 『車達』でヒッピー×軍人 ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| この二人はスルメカポーだとだと思います。 | | | | \ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ノベライズヲカッタハイイケド…… | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 二人の急接近話☆の癖に医者がいます(まだ医者がいなかった高速完成の時点 で既に熟年夫婦の薫り漂っていると暫定)そして街はもう寂れています。 一体いつの話だよと言う話ですが、パラレルワールドと言うことでお願いします。 後簡単自設定。 ・ヒッピーは放浪の末RSに越して来た。 ・軍人は生粋のRSっ子。 ・ヒッピーが引っ越して来た時、軍人はまだ軍役中で家を空けていた。 ・保安官は昔都会から赴任してきた。 ・ヒッピー一人称→ボク ・軍人一人称→俺 ノベライズの描写に準じる気でしたが、自己流で通すことにしました。 サージの朝は早い。 午前六時に眼を覚まし、すぐに簡単な身支度。リッター辺りでそこらの へなちょこ車の何十倍もの馬力が出るガソリンを一杯流し込んで外へ出る。 軍人時代の習いを一切捨てる事なく、芝生しかないそっけない庭に唯一堂々と そびえ立つポールに備え付けられたスイッチと、レトロなラジカセとを同時にスイッチオン。 勇ましい軍式起床ラッパの暴力的とも言えるリズムと共に、星条旗が静かに 上がっていく。朝の日課を終えたサージは満足げに、朝の爽やかな風に波打ち出す 祖国の旗を見上げる。 まだ店を開けるには早すぎて、街の皆はまだ夢の中にいる時刻。 至福の一時。 ただ、サージは毎朝失念してしまう事がある。 「…………む!」 耳に入ってくるのは実にのったりとしたリズム。ジャカジャカ煩いだけのギター。更に気力をどこに置いてきたと叱責したくなる歌声。 「貴様ぁっ!!そのふ抜けた音楽を今すぐ止めろッ!!」 返事は、のんびり屋の相手にしては珍しくほぼ間髪入れず。 「ふ抜けてないよ、ジミヘンだよ~」 サージの家のすぐ隣、前衛的なテントと怪しいドラム缶転がる家の主。 フィルモアの朝も、早いのだ。 「まっっったく!あいつのあの根性は何とかならンのか! 日がな一日だらだら だらだら情けないにも程があるッ!!」 街の憩い場、V8カフェはサージの愚痴大会会場になっていた。 ちなみに話題のフィルモアはと言えば、自宅でのんびり日光浴の最中である。 「サージ、それはあんたの主観だ」 息巻いているサージの愚痴を聞いてやるのは、いつもシェリフだった。都会と 違ってあまりにも平和すぎるこのラジエーター・スプリングスに赴任してきて、 近頃はついに標識の裏で昼寝をする事まで覚えてしまった保安官にとって サージは久々の世話焼き対象なのだった。 「主観!? 十分だッ、俺が上官ならヤツの顔を見た時点で除隊処分にしてやる!!」 「ここは軍隊でもないし、フィルモアはあんたの部下でもないんだよ。 ちょっとぐらいは歩み寄ってもバチは当たらんと思うがね」 シェリフの手慣れた説得にサージは沈黙する。いつもの事だ。 せめて自分の退役とフィルモアが越して来るのとが逆であれば何とかなったかも 知れないが、サージが懐かしの故郷に帰ってきたのはフィルモアがすっかり 街に馴染んだ後だった。リジーなどは特にフィルモアを気に入っていて、 最近サージに少し冷たい気がしないでもない。 そう、フィルモアは確かに変人でヒッピーで健康オタクだ。彼の勧める 自作のオーガニックオイルとやらは世にも微妙な味がする。 だが、決して嫌われるような要素は持ち合わせていないのだ。 サージ自身もそれは分かっている。単にウマが合わないだけで規律を乱すのは ただの我が儘でしかない。 だからせめて、毎朝の日課に乱入してくるジミヘンだかハデヘンだか知らないが とにかく気の抜けた音楽だけは止めさせようと、毎朝声を張り上げるのだった。 『サージのサープラス・ハット』の閉店時間はいつも変わらず午後九時だった。 客がいないとかそういう事は気にしてはいけない。ルート66の真横に伸びる 高速道路が完成して以来、この街には閑古鳥が大挙して居ついた上に卵を 産んでついでに雛まで孵ったらしい。 店を閉めた後サージがする事と言えば寝る事だけである。店のシャッターを 降ろしたサージは、さっさと眠るべく自分のガレージへと向かいかけた。 が。 ガンガンガン、と硬質の音が今まさに閉めたばかりのシャッターの向こうから飛んで来た。 「何だ、カスタムデリバリーなんぞ始めたのか」 「いくら俺でもそりゃキツいぜサージ」 シャッターを半分ほど開けたサージが眼にしたのはちゃちな電灯の下にも 鮮やかなショッキングピンクに塗り上げられたラモーンだった。 昼間見た時は確かにオレンジとスカイブルーのツートンカラーだったはずなのだが、 またもリペイントしたらしい。街一番の改造狂の一段階低くなった車高と 視線を合わせるのなら、サージは必然的にラモーンを見下ろす格好になる。 「で、何の用だ? お前のピンクにミリタリーカラーは合わん」 「だから違うってサージ、頼みがあるんだよ」 ラモーンは苦笑いすると、小さく溜め息をついた。 「フ口ーがなあ、どうも身体壊したみたいで」 流石にこれにはサ一ジも驚いた。今日も今日とて愚痴る自分となだめる ツェリフに、いつものようにオイルを供給してくれていたフ口ーが? 「大丈夫なのか」 「ん、先生が言うには薬飲んで寝てりゃ治るとさ。で、本題はこっからなんだが ……オレぁフ口ーを静かに寝かせといてやりたいんだ」 ラモーソの声音が、何故か下がる。 妻を看病する夫からすればそれは当然だろう。サ一ジは頷いた。 それに励まされたか、ラモーソは徐に切り出した。 「物は頼みなんだがサ一ジ、あんたの朝のアレ……明日だけ止めちゃもらえないか」 朝のアレ。 …………。 「――起床ラッパの事か?」 「ああ」 「……わかった、明日はヘッドフォンでもつける」 「助かった! 恩に着るぜサ一ジ!」 たちまち笑顔になるラモーソにサ一ジは不覚にも思わず照れて、『フ口ーには いつも世話になっているから』と言うような内容をもそもそ呟いた。反対に ラモーソは視線を泳がせ、何やら考えている。 「礼しなきゃな……そうだサ一ジ、今時の迷彩は蛍光色を乗せてバリバリ目立たせるのが」 「オイル一杯だけでいい。養生しろと言っておいてくれ」 「――伝えとく」 ペイントモデルをあっさり断られてもラモーソは涼しい顔で、自宅へと帰って行った。 その派手なリアフロントが見えなくなるまで眺めた後、サ一ジはガレージを閉めた。 次の朝は快晴で、雲一つ無い空はさんさんと大地に陽光を注ぎ入れていて 返って暑いくらいだった。 いつものように起床したサ一ジは、星条旗を掛けたポールのスイッチを押した。 いつもと違うのはそのままサ一ジが戻っていく事だ。 昨夜ヘッドフォン発掘の際に何回かテストを行ってみた結果、ラジカセの 電池が切れかけている事が判明したのだ。朝に発覚するよりかは幾分マシだと コンセントを使って電源供給させる事にしたはいいが、ラジカセのコードも ヘッドフォンのコードもサ一ジが庭に出るには長さが足りない。なので、 サ一ジは家の窓からヘッドフォンをしつつ、するする上がっていく旗を眺める事になった。 彼からすれば耳良いリズムに意識を傾けながら、『これも悪くない』とサ一ジは考えた。 近所迷惑にもならないし自分の理想の音量で聴ける。延長コードと電池さえ 買えば外でも問題無い。そして何より 「あの不謹慎な音楽が聞こえん」 サ一ジはせいせいした、といった調子で呟いた。ヘッドフォンの恩恵は予想以上である。 ――――シャアアン…… 「?」 ラッパの狭間に何やら不穏な音を聞き取った気がしてサ一ジはラジカセを止めた。 既に旗は上がりきっていて、特に問題らしい問題は外には見受けられない。 …………そう、外には。 「何だ?」 ヘッドフォンを外してみても、朝の静寂は変わる事はない。暴走族でも 紛れ込んだのならもっとうるさい筈だし、だとしたらツェリフが黙ってはいないはずだ。 がしゃん! 「!」 サ一ジは現役時代の名残で、素早く壁に身をぴったり付けた。しかし物音は それきり止んで、どこかで鳥の鳴き声がするのみになった。 「…………」 何となく気恥ずかしさを覚えて、サ一ジは店の方へと視線を遣った。日頃 きっちり整頓されているので、商品の落下は有り得ない。泥棒ならば話は 別だが、このひなびた街に泥棒が来たとしてもサリー辺りが両手を上げて歓迎するだろう。 「おい! 誰だ!?」 結局そんな月並みな台詞で店へと踏み込んだサ一ジの見たものは、軍用タイヤと カモフラージュスプレーに埋もれたフィノレモアの姿だった。 「――――……?」 あんまりの事にサ一ジは怒鳴るのも忘れて沈黙した。何故フィノレモアが自分の 店先で品物に埋もれているのか? 疑問はあれど発する機会が見当たらず、サ一ジは珍しくぼんやりと褪せた エメラルドグリーンのリアフロントを眺め続けた。 「……うーん――――むー……」 ぴくりとフィノレモアが跳ねた事で、絶妙なバランスを保っていたタイヤが転がっていく。 それではたと我に返ったサ一ジは、何とはなしにそろそろとタイヤとスプレーの 小山へと近寄って行った。 「……おい、フィノレモア」 「サ一ジ!!」 叫ぶなりフィノレモアが器用にその場で一回転してサ一ジに向き直った。 「ああ良かった……!元気なんだね?風邪とか、怪我とかはしてないんだね!?」 矢継ぎ早に尋ねながら、右へ左へタイヤやスプレー缶を転がしつつフィノレモアは 忙しくサ一ジの側面やらリアバンパーやらを確認した。果ては何とかして サ一ジの真下部分まで覗き込もうとするので流石に押し退ける。抗議の呻きを 上げるフィノレモアは無視して、サ一ジはうっすら頭痛などを覚えながら問い掛けた。 「――話がさっぱり見えんのだが」 「見えるも何も、簡単な事じゃあないか!朝起きて支度して、いつものように 君の家を見ても君がいない!いつも庭に出て、旗を見上げてるのに!! 絶対何かあったと思って駆けつけて来たんだよ!」 平素のスロー過ぎる様子からは想像もつかないテンションの高さでそうまくし立てると、 フィノレモアは一旦言葉を切って呼吸を整えるのに集中した。 そんな様子をサ一ジは何とも言えない顔つきで見ていたが、やがて長々と溜息を吐いた。 「フィノレモア、旗は見なかったのか」 「へ?」 指摘されるとフィノレモアはきょとんとし、その表情のままでするするとバック していく。そして旗が見えただろう位置で止まると、またするすると元の位置に戻ってきた。 「……旗はあったけど。あれ?じゃあ何で今日は見てなかったのさ?」 首を傾げるフィノレモアに、サ一ジはフ口ーの風邪とラモーソの頼みを手短に説明した。 それを聞き終わると、今度はフィノレモアが溜息をつく番だった――ただし、こちらは安堵の。 「……じゃ、サ一ジ。君本人には何も無いんだね?」 「さっきからそう言って――!?」 サ一ジの言葉は途中で中断された。突然身体を摺り寄せてきたフィノレモアに サ一ジは眼を丸く見開いて、されるがまま唖然としていた(後日、サ一ジはこの事を 真っ赤になって思い出しながら、『何故もっとしっかりした対応が出来なかったのか』と悶えてる事となる) 「……良かった。本当によかった。君に何かあったら、ボクの世界は真っ暗だよ」 「な、に……何を、寝惚けた事を言っている?」 「寝ぼけてなんかないさ。だって、僕は確かにジミヘンをこよなく愛してるけど ……ああ、愛してた、なのかなあ。彼の演奏は今でも大好きなんだけど、 サ一ジ、最近はジミヘンを君んところの起床ラッパに被せて、君がこっちを 向いてくれるのを待ってる方が好きなんだよ」 いよいよサ一ジは返す言葉を失った。 今までのやりとりは、フィノレモアが意図的に仕掛けたものだというのか。 何たる事か、素人のトラップすら見破れずにまんまと引っ掛かっていたわけか。 それも毎朝。情けない。 「……ちょっと待てフィノレモア、それをやる意義は何だ」 「――察しが悪いねえ、サ一ジ。ボクは君とね、もっともっと仲良くなりたいのさ。 だから、君が気にしてくれるように頑張って早起きして、ジミヘンを聞きながら 朝ごはんと朝の日光浴を楽しんでる。君はいつも朝が早いから最初はきつかったんだけど、 今となっちゃ日課になっちゃった。健康にいいしね」 のんびりと語り終えると、フィノレモアはふっと表情を暗くした。車体に施された ペイントが華やかなので、その暗さは思いの他際立つ。 「それもこれも、君に何かあっちゃあ意味がなくなるんだ……。本当に、よかった」 すぐにふわっと微笑むフィノレモアを至近距離で見つめるうち、サ一ジは店の商品を 吹っ飛ばされた怒りや、毎朝毎朝繰り返される起床ラッパ対ジミヘンの攻防も 全てがゆっくり溶解して流れ出すのを感じた。 何がしか表現手段を間違えている気はするが、このヒッピーは自分に好印象を持っているらしい。 さて、サ一ジはフィノレモアの顔をじっくり眺めながら次の行動を模索した。 ほとんどが向こうの勘違いで、しかも結構派手に店に突っ込んできたのは 微妙に許しがたいが、全ては自分を心配してくれた上の事だ。それを全て 無下に否定出来るほどサ一ジは冷徹なつもりはなかったし、冷徹になる予定もなかった。 「…………」 黙り込んだサ一ジに違和感をようやく覚え、フィノレモアはきょとんと瞬きをした。 そんな事はお構いなしで、サ一ジは凄まじい形相で黙りこくっている。 奇怪な沈黙が、どのくらい流れていったのか。 「…………――まあ、何だ。――心配させたな。……すまん」 ぽつりと呟いた一言に、フィノレモアは最高の笑顔を向け、サ一ジはボンネットから 煙が出てくる感覚を錯覚しながら俯いた。 数日後、無事全快したフ口ーのカフェにて、フィノレモアによるジミヘンについての講釈を受けるサ一ジという世にも珍しい光景が見られた。 皮切りは『国歌を舐め腐った曲だが、お前がそこまで言うなら聴いてやらんでもない』というサ一ジの遠回しな注文だったのだがが、ジミヘンの破天荒すぎる経歴の中の『音楽のために軍を除隊』の一文に再び烈火のごとく怒ったのは言うまでもない。 というわけで、朝のやり取りはずーっとそのままなのだった。 [][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・ )本当はここで終わるんですが |> |> FAST ピピッ ◇⊂(・∀・;)思いついたネタあったので早送り!一気に本編後です。ネタバレ注意。 「フィノレモア!」 カフェの女主人の呼び止めに、フィノレモアはのんびりと停止した。 それから思い出したように道の脇に寄って行くのは街を行く観光客や、 街の各店の客のため。住人以外は人っ子一人通らなかったあの頃が嘘のようで、 今でもフィノレモアは復活した信号をちょいちょい無視してしまってはツェリフに 説教を食らっている。 「何だい、フ口ー?」 「フィノレモア、もし今から家に帰るんなら――これをサ一ジ達に差し入れて あげてくれない?この陽気だもの、生徒さんが干乾びちゃうわ」 店の奥からキンキンに冷えて水滴がびっしり張り付いたオイルタンクを 引っ張ってきながら、フ口ーが問い掛けた。 街は再び以前の活気を取り戻したが、どうにも売り上げが伸びないのが唯一 サ一ジの店だった。軍用品払い下げで、格安かつ物珍しくはあるが、やはり とっつきが良くないのは事実である。 それでサ一ジが最近始めたのが、4WDの癖に舗装道路以外は走った事がないと 言うもやしっ子なSUV達の性根を立派に叩き直す訓練所である。 どこから聞きつけてくるのか、そこそこに需要はあるらしく店の売り上げを 追い越す勢いだそうだ。教習が一つ片付くたびにご機嫌なサ一ジの隣で、 フィノレモアは嬉しい反面ほんのり寂しさを感じていたりもする。 「うん、分かったよフ口ー。ボクが持って行ってあげる」 「ありがとう!助かったわ!!」 笑顔のフ口ーにタイヤをちょいちょい振り返し、フィノレモアはタンクを持って サ一ジのいる荒地へと向かった。 「こらぁっ!そこ、たるんどるぞ!? 泥除けの汚れなど気にするな! 何のための 泥除けだと思ってる!!」 午前中からぶっ続けのスパルタ教習に、生徒である4WD達は全員満遍ない回数 天国を目撃した。埃まみれ泥まみれになりながら、鬼軍曹サ一ジの『休憩!』 の一言を待ちわびてはいる。……が、今のところ休憩はただの一回、昼休憩のみで おまけに僅か三十分だった。 そんな岩とサボテンと埃と枯れ草舞い散る荒地の向こうに、エメラルド グリーンの車体が見えてくる。だんだん近寄るにつれて両脇に大きく描かれた 色とりどりの花と『LOVE&PEACE』のロゴも確認できるようになる。 フィノレモアはのんびりと進みながら、遠目にサ一ジの姿を確認して微笑んだ。 そこで一度止まると、すうっと息を吸い込み 「サ一ジ! サーーーーージーーーーー!!!!」 声を限りに呼ぶと、サ一ジの動きが一瞬止まった。その隙にボロいエンジンを 頑張って吹かして走り寄れば、憮然とした顔のサ一ジがそれでも律儀にフィノレモアの 到着を待っていた。 「何の用だフィノレモア、見ての通り今は教習中だ」 「それはわかってるんだけどねえ。フ口ーから差し入れだよ。お茶にしない?」 「茶だァ?バカを言え、お前のティータイムに付き合ってる暇は―― そこ止まるなァ!誰が止まっていいと言った!?」 フィノレモアと会話する合間でも、生徒への眼はしっかり行き届いているらしい。 怒鳴られた生徒は車体を縮み上がらせて再び走り出す。 「よくやるねぇ……。サ一ジ、最後にボクと君がお茶したのって一体いつだと思う?」 「……いつだ」 ちょっと考える素振りをした後、あっさり尋ねるサ一ジにフィノレモアは 大袈裟に溜息を吐いた。 「三日前だよ? 前はフ口ーのカフェで毎日お茶してたのに!そりゃあ街が栄えて お互いに忙しくなるのはいい事だって分かってるけどね? 忙しくなりすぎるのも 考え物って思わないかい?」 恨みがましげなフィノレモアの視線に、サ一ジは少したじろいだ。 確かにフィノレモアの言う事は正論で、街が賑わう反面あの侘しさが時々 無性に懐かしくなるのはサ一ジも一緒だ。何とも因果な話で、あれだけ切望 していたものが手に入ると今度は正反対の物が欲しくなるものだ。 「あと、これはボク一人のわがままじゃあないからね?フ口ーが差し入れにって くれたんだ。フ口ーの気持ちを無視する気かい?」 持ってきた冷えたオイルタンクを示すと、フィノレモアはそのままサ一ジの 隣に陣取った。タンクの一つを生徒に渡すと、生徒は眼を輝かせて飲もうとする。 ……が、サ一ジの眼が気になるのか、何とも悲痛な表情で教官の顔を伺い始めている。 「……これより休憩! 一時間後に再会!!」 明らかに納得いっていなさそうなサ一ジの号令に、今度こそ生徒達は狂喜乱舞して タンクに群がりだした。 「――いや、一時間半後にしようよ」 「何ー!?」 フィノレモアのおっとりしていて無茶苦茶な追加にサ一ジは眼を剥いた。 「貴様! 何を勝手に……」 「一時間でお喋りできることなんて数が知れてるさ!いい、サ一ジ。世の中には 癒しと語らいが必要なんだよ。ボクと君との間には、特にね」 そういってウインクまでする自分と同じフォルクスワーゲン製のバスに、 サ一ジはうんざりしたようにそっぽを向く。 それでも、教習再開は一時間三十分後になった。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ 冗長ですな | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 伏せ字忘れやら改行忘れやらお見苦しくてスマソorz - 萌えました! -- &new{2013-03-13 (水) 03:32:21}; - すばらしい -- &new{2014-03-16 (日) 12:56:31}; - 萌えた….凄く萌えた… -- &new{2014-06-14 (土) 22:38:02}; - こんなに素晴らしいものに出会えてよかったです;; -- &new{2017-07-25 (火) 23:46:14}; #comment
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十分だッ、俺が上官ならヤツの顔を見た時点で除隊処分にしてやる!!」 「ここは軍隊でもないし、フィルモアはあんたの部下でもないんだよ。 ちょっとぐらいは歩み寄ってもバチは当たらんと思うがね」 シェリフの手慣れた説得にサージは沈黙する。いつもの事だ。 せめて自分の退役とフィルモアが越して来るのとが逆であれば何とかなったかも 知れないが、サージが懐かしの故郷に帰ってきたのはフィルモアがすっかり 街に馴染んだ後だった。リジーなどは特にフィルモアを気に入っていて、 最近サージに少し冷たい気がしないでもない。 そう、フィルモアは確かに変人でヒッピーで健康オタクだ。彼の勧める 自作のオーガニックオイルとやらは世にも微妙な味がする。 だが、決して嫌われるような要素は持ち合わせていないのだ。 サージ自身もそれは分かっている。単にウマが合わないだけで規律を乱すのは ただの我が儘でしかない。 だからせめて、毎朝の日課に乱入してくるジミヘンだかハデヘンだか知らないが とにかく気の抜けた音楽だけは止めさせようと、毎朝声を張り上げるのだった。 『サージのサープラス・ハット』の閉店時間はいつも変わらず午後九時だった。 客がいないとかそういう事は気にしてはいけない。ルート66の真横に伸びる 高速道路が完成して以来、この街には閑古鳥が大挙して居ついた上に卵を 産んでついでに雛まで孵ったらしい。 店を閉めた後サージがする事と言えば寝る事だけである。店のシャッターを 降ろしたサージは、さっさと眠るべく自分のガレージへと向かいかけた。 が。 ガンガンガン、と硬質の音が今まさに閉めたばかりのシャッターの向こうから飛んで来た。 「何だ、カスタムデリバリーなんぞ始めたのか」 「いくら俺でもそりゃキツいぜサージ」 シャッターを半分ほど開けたサージが眼にしたのはちゃちな電灯の下にも 鮮やかなショッキングピンクに塗り上げられたラモーンだった。 昼間見た時は確かにオレンジとスカイブルーのツートンカラーだったはずなのだが、 またもリペイントしたらしい。街一番の改造狂の一段階低くなった車高と 視線を合わせるのなら、サージは必然的にラモーンを見下ろす格好になる。 「で、何の用だ? お前のピンクにミリタリーカラーは合わん」 「だから違うってサージ、頼みがあるんだよ」 ラモーンは苦笑いすると、小さく溜め息をついた。 「フ口ーがなあ、どうも身体壊したみたいで」 流石にこれにはサ一ジも驚いた。今日も今日とて愚痴る自分となだめる ツェリフに、いつものようにオイルを供給してくれていたフ口ーが? 「大丈夫なのか」 「ん、先生が言うには薬飲んで寝てりゃ治るとさ。で、本題はこっからなんだが ……オレぁフ口ーを静かに寝かせといてやりたいんだ」 ラモーソの声音が、何故か下がる。 妻を看病する夫からすればそれは当然だろう。サ一ジは頷いた。 それに励まされたか、ラモーソは徐に切り出した。 「物は頼みなんだがサ一ジ、あんたの朝のアレ……明日だけ止めちゃもらえないか」 朝のアレ。 …………。 「――起床ラッパの事か?」 「ああ」 「……わかった、明日はヘッドフォンでもつける」 「助かった! 恩に着るぜサ一ジ!」 たちまち笑顔になるラモーソにサ一ジは不覚にも思わず照れて、『フ口ーには いつも世話になっているから』と言うような内容をもそもそ呟いた。反対に ラモーソは視線を泳がせ、何やら考えている。 「礼しなきゃな……そうだサ一ジ、今時の迷彩は蛍光色を乗せてバリバリ目立たせるのが」 「オイル一杯だけでいい。養生しろと言っておいてくれ」 「――伝えとく」 ペイントモデルをあっさり断られてもラモーソは涼しい顔で、自宅へと帰って行った。 その派手なリアフロントが見えなくなるまで眺めた後、サ一ジはガレージを閉めた。 次の朝は快晴で、雲一つ無い空はさんさんと大地に陽光を注ぎ入れていて 返って暑いくらいだった。 いつものように起床したサ一ジは、星条旗を掛けたポールのスイッチを押した。 いつもと違うのはそのままサ一ジが戻っていく事だ。 昨夜ヘッドフォン発掘の際に何回かテストを行ってみた結果、ラジカセの 電池が切れかけている事が判明したのだ。朝に発覚するよりかは幾分マシだと コンセントを使って電源供給させる事にしたはいいが、ラジカセのコードも ヘッドフォンのコードもサ一ジが庭に出るには長さが足りない。なので、 サ一ジは家の窓からヘッドフォンをしつつ、するする上がっていく旗を眺める事になった。 彼からすれば耳良いリズムに意識を傾けながら、『これも悪くない』とサ一ジは考えた。 近所迷惑にもならないし自分の理想の音量で聴ける。延長コードと電池さえ 買えば外でも問題無い。そして何より 「あの不謹慎な音楽が聞こえん」 サ一ジはせいせいした、といった調子で呟いた。ヘッドフォンの恩恵は予想以上である。 ――――シャアアン…… 「?」 ラッパの狭間に何やら不穏な音を聞き取った気がしてサ一ジはラジカセを止めた。 既に旗は上がりきっていて、特に問題らしい問題は外には見受けられない。 …………そう、外には。 「何だ?」 ヘッドフォンを外してみても、朝の静寂は変わる事はない。暴走族でも 紛れ込んだのならもっとうるさい筈だし、だとしたらツェリフが黙ってはいないはずだ。 がしゃん! 「!」 サ一ジは現役時代の名残で、素早く壁に身をぴったり付けた。しかし物音は それきり止んで、どこかで鳥の鳴き声がするのみになった。 「…………」 何となく気恥ずかしさを覚えて、サ一ジは店の方へと視線を遣った。日頃 きっちり整頓されているので、商品の落下は有り得ない。泥棒ならば話は 別だが、このひなびた街に泥棒が来たとしてもサリー辺りが両手を上げて歓迎するだろう。 「おい! 誰だ!?」 結局そんな月並みな台詞で店へと踏み込んだサ一ジの見たものは、軍用タイヤと カモフラージュスプレーに埋もれたフィノレモアの姿だった。 「――――……?」 あんまりの事にサ一ジは怒鳴るのも忘れて沈黙した。何故フィノレモアが自分の 店先で品物に埋もれているのか? 疑問はあれど発する機会が見当たらず、サ一ジは珍しくぼんやりと褪せた エメラルドグリーンのリアフロントを眺め続けた。 「……うーん――――むー……」 ぴくりとフィノレモアが跳ねた事で、絶妙なバランスを保っていたタイヤが転がっていく。 それではたと我に返ったサ一ジは、何とはなしにそろそろとタイヤとスプレーの 小山へと近寄って行った。 「……おい、フィノレモア」 「サ一ジ!!」 叫ぶなりフィノレモアが器用にその場で一回転してサ一ジに向き直った。 「ああ良かった……!元気なんだね?風邪とか、怪我とかはしてないんだね!?」 矢継ぎ早に尋ねながら、右へ左へタイヤやスプレー缶を転がしつつフィノレモアは 忙しくサ一ジの側面やらリアバンパーやらを確認した。果ては何とかして サ一ジの真下部分まで覗き込もうとするので流石に押し退ける。抗議の呻きを 上げるフィノレモアは無視して、サ一ジはうっすら頭痛などを覚えながら問い掛けた。 「――話がさっぱり見えんのだが」 「見えるも何も、簡単な事じゃあないか!朝起きて支度して、いつものように 君の家を見ても君がいない!いつも庭に出て、旗を見上げてるのに!! 絶対何かあったと思って駆けつけて来たんだよ!」 平素のスロー過ぎる様子からは想像もつかないテンションの高さでそうまくし立てると、 フィノレモアは一旦言葉を切って呼吸を整えるのに集中した。 そんな様子をサ一ジは何とも言えない顔つきで見ていたが、やがて長々と溜息を吐いた。 「フィノレモア、旗は見なかったのか」 「へ?」 指摘されるとフィノレモアはきょとんとし、その表情のままでするするとバック していく。そして旗が見えただろう位置で止まると、またするすると元の位置に戻ってきた。 「……旗はあったけど。あれ?じゃあ何で今日は見てなかったのさ?」 首を傾げるフィノレモアに、サ一ジはフ口ーの風邪とラモーソの頼みを手短に説明した。 それを聞き終わると、今度はフィノレモアが溜息をつく番だった――ただし、こちらは安堵の。 「……じゃ、サ一ジ。君本人には何も無いんだね?」 「さっきからそう言って――!?」 サ一ジの言葉は途中で中断された。突然身体を摺り寄せてきたフィノレモアに サ一ジは眼を丸く見開いて、されるがまま唖然としていた(後日、サ一ジはこの事を 真っ赤になって思い出しながら、『何故もっとしっかりした対応が出来なかったのか』と悶えてる事となる) 「……良かった。本当によかった。君に何かあったら、ボクの世界は真っ暗だよ」 「な、に……何を、寝惚けた事を言っている?」 「寝ぼけてなんかないさ。だって、僕は確かにジミヘンをこよなく愛してるけど ……ああ、愛してた、なのかなあ。彼の演奏は今でも大好きなんだけど、 サ一ジ、最近はジミヘンを君んところの起床ラッパに被せて、君がこっちを 向いてくれるのを待ってる方が好きなんだよ」 いよいよサ一ジは返す言葉を失った。 今までのやりとりは、フィノレモアが意図的に仕掛けたものだというのか。 何たる事か、素人のトラップすら見破れずにまんまと引っ掛かっていたわけか。 それも毎朝。情けない。 「……ちょっと待てフィノレモア、それをやる意義は何だ」 「――察しが悪いねえ、サ一ジ。ボクは君とね、もっともっと仲良くなりたいのさ。 だから、君が気にしてくれるように頑張って早起きして、ジミヘンを聞きながら 朝ごはんと朝の日光浴を楽しんでる。君はいつも朝が早いから最初はきつかったんだけど、 今となっちゃ日課になっちゃった。健康にいいしね」 のんびりと語り終えると、フィノレモアはふっと表情を暗くした。車体に施された ペイントが華やかなので、その暗さは思いの他際立つ。 「それもこれも、君に何かあっちゃあ意味がなくなるんだ……。本当に、よかった」 すぐにふわっと微笑むフィノレモアを至近距離で見つめるうち、サ一ジは店の商品を 吹っ飛ばされた怒りや、毎朝毎朝繰り返される起床ラッパ対ジミヘンの攻防も 全てがゆっくり溶解して流れ出すのを感じた。 何がしか表現手段を間違えている気はするが、このヒッピーは自分に好印象を持っているらしい。 さて、サ一ジはフィノレモアの顔をじっくり眺めながら次の行動を模索した。 ほとんどが向こうの勘違いで、しかも結構派手に店に突っ込んできたのは 微妙に許しがたいが、全ては自分を心配してくれた上の事だ。それを全て 無下に否定出来るほどサ一ジは冷徹なつもりはなかったし、冷徹になる予定もなかった。 「…………」 黙り込んだサ一ジに違和感をようやく覚え、フィノレモアはきょとんと瞬きをした。 そんな事はお構いなしで、サ一ジは凄まじい形相で黙りこくっている。 奇怪な沈黙が、どのくらい流れていったのか。 「…………――まあ、何だ。――心配させたな。……すまん」 ぽつりと呟いた一言に、フィノレモアは最高の笑顔を向け、サ一ジはボンネットから 煙が出てくる感覚を錯覚しながら俯いた。 数日後、無事全快したフ口ーのカフェにて、フィノレモアによるジミヘンについての講釈を受けるサ一ジという世にも珍しい光景が見られた。 皮切りは『国歌を舐め腐った曲だが、お前がそこまで言うなら聴いてやらんでもない』というサ一ジの遠回しな注文だったのだがが、ジミヘンの破天荒すぎる経歴の中の『音楽のために軍を除隊』の一文に再び烈火のごとく怒ったのは言うまでもない。 というわけで、朝のやり取りはずーっとそのままなのだった。 [][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・ )本当はここで終わるんですが |> |> FAST ピピッ ◇⊂(・∀・;)思いついたネタあったので早送り!一気に本編後です。ネタバレ注意。 「フィノレモア!」 カフェの女主人の呼び止めに、フィノレモアはのんびりと停止した。 それから思い出したように道の脇に寄って行くのは街を行く観光客や、 街の各店の客のため。住人以外は人っ子一人通らなかったあの頃が嘘のようで、 今でもフィノレモアは復活した信号をちょいちょい無視してしまってはツェリフに 説教を食らっている。 「何だい、フ口ー?」 「フィノレモア、もし今から家に帰るんなら――これをサ一ジ達に差し入れて あげてくれない?この陽気だもの、生徒さんが干乾びちゃうわ」 店の奥からキンキンに冷えて水滴がびっしり張り付いたオイルタンクを 引っ張ってきながら、フ口ーが問い掛けた。 街は再び以前の活気を取り戻したが、どうにも売り上げが伸びないのが唯一 サ一ジの店だった。軍用品払い下げで、格安かつ物珍しくはあるが、やはり とっつきが良くないのは事実である。 それでサ一ジが最近始めたのが、4WDの癖に舗装道路以外は走った事がないと 言うもやしっ子なSUV達の性根を立派に叩き直す訓練所である。 どこから聞きつけてくるのか、そこそこに需要はあるらしく店の売り上げを 追い越す勢いだそうだ。教習が一つ片付くたびにご機嫌なサ一ジの隣で、 フィノレモアは嬉しい反面ほんのり寂しさを感じていたりもする。 「うん、分かったよフ口ー。ボクが持って行ってあげる」 「ありがとう!助かったわ!!」 笑顔のフ口ーにタイヤをちょいちょい振り返し、フィノレモアはタンクを持って サ一ジのいる荒地へと向かった。 「こらぁっ!そこ、たるんどるぞ!? 泥除けの汚れなど気にするな! 何のための 泥除けだと思ってる!!」 午前中からぶっ続けのスパルタ教習に、生徒である4WD達は全員満遍ない回数 天国を目撃した。埃まみれ泥まみれになりながら、鬼軍曹サ一ジの『休憩!』 の一言を待ちわびてはいる。……が、今のところ休憩はただの一回、昼休憩のみで おまけに僅か三十分だった。 そんな岩とサボテンと埃と枯れ草舞い散る荒地の向こうに、エメラルド グリーンの車体が見えてくる。だんだん近寄るにつれて両脇に大きく描かれた 色とりどりの花と『LOVE&PEACE』のロゴも確認できるようになる。 フィノレモアはのんびりと進みながら、遠目にサ一ジの姿を確認して微笑んだ。 そこで一度止まると、すうっと息を吸い込み 「サ一ジ! サーーーーージーーーーー!!!!」 声を限りに呼ぶと、サ一ジの動きが一瞬止まった。その隙にボロいエンジンを 頑張って吹かして走り寄れば、憮然とした顔のサ一ジがそれでも律儀にフィノレモアの 到着を待っていた。 「何の用だフィノレモア、見ての通り今は教習中だ」 「それはわかってるんだけどねえ。フ口ーから差し入れだよ。お茶にしない?」 「茶だァ?バカを言え、お前のティータイムに付き合ってる暇は―― そこ止まるなァ!誰が止まっていいと言った!?」 フィノレモアと会話する合間でも、生徒への眼はしっかり行き届いているらしい。 怒鳴られた生徒は車体を縮み上がらせて再び走り出す。 「よくやるねぇ……。サ一ジ、最後にボクと君がお茶したのって一体いつだと思う?」 「……いつだ」 ちょっと考える素振りをした後、あっさり尋ねるサ一ジにフィノレモアは 大袈裟に溜息を吐いた。 「三日前だよ? 前はフ口ーのカフェで毎日お茶してたのに!そりゃあ街が栄えて お互いに忙しくなるのはいい事だって分かってるけどね? 忙しくなりすぎるのも 考え物って思わないかい?」 恨みがましげなフィノレモアの視線に、サ一ジは少したじろいだ。 確かにフィノレモアの言う事は正論で、街が賑わう反面あの侘しさが時々 無性に懐かしくなるのはサ一ジも一緒だ。何とも因果な話で、あれだけ切望 していたものが手に入ると今度は正反対の物が欲しくなるものだ。 「あと、これはボク一人のわがままじゃあないからね?フ口ーが差し入れにって くれたんだ。フ口ーの気持ちを無視する気かい?」 持ってきた冷えたオイルタンクを示すと、フィノレモアはそのままサ一ジの 隣に陣取った。タンクの一つを生徒に渡すと、生徒は眼を輝かせて飲もうとする。 ……が、サ一ジの眼が気になるのか、何とも悲痛な表情で教官の顔を伺い始めている。 「……これより休憩! 一時間後に再会!!」 明らかに納得いっていなさそうなサ一ジの号令に、今度こそ生徒達は狂喜乱舞して タンクに群がりだした。 「――いや、一時間半後にしようよ」 「何ー!?」 フィノレモアのおっとりしていて無茶苦茶な追加にサ一ジは眼を剥いた。 「貴様! 何を勝手に……」 「一時間でお喋りできることなんて数が知れてるさ!いい、サ一ジ。世の中には 癒しと語らいが必要なんだよ。ボクと君との間には、特にね」 そういってウインクまでする自分と同じフォルクスワーゲン製のバスに、 サ一ジはうんざりしたようにそっぽを向く。 それでも、教習再開は一時間三十分後になった。 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ 冗長ですな | | | | ピッ (・∀・ ) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 伏せ字忘れやら改行忘れやらお見苦しくてスマソorz - 萌えました! -- &new{2013-03-13 (水) 03:32:21}; - すばらしい -- &new{2014-03-16 (日) 12:56:31}; - 萌えた….凄く萌えた… -- &new{2014-06-14 (土) 22:38:02}; - こんなに素晴らしいものに出会えてよかったです;; -- &new{2017-07-25 (火) 23:46:14}; #comment
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