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*R.S.3_LxM 21 [#u28a6cdd] #title(R.S.3_LxM 21) [#u28a6cdd] ユリアンをプリンセスガードに任命した直後、カタリナが暇を願い出た。 聖王遺物マスカレイドを奪われたことの、責任を取りたいという。 彼女ほどの剣士より奪い取ることから、相手の力量を測ることができる。 並みの腕前ではあるまい。 (困ったことになった・・・。) 護衛の兵士を、モニカの部屋に入れる訳にもいかない。 改めてカタリナの抜けた穴を大きく思う。 そして、彼女がいなくなったことによって安堵を覚える自分がいた。 教養があり、腕も立つ彼女は立派な貴族の娘である。 父フランツや大臣、そして彼女の父は、いずれ侯爵夫人にするつもりで城へ入れたに違いない。 彼女自身も、その意図に気づいていたはずだ。 もし彼女の期待に応えることができたなら、どれほど楽だったことだろう。 教養、技能、家柄、容姿。 どれも申し分ない。 彼女が「自分」でなく、「領主」に愛情を持っていてくれたのなら、まだ良かった。 だがミカエルは気付いてしまった。 カタリナが、自分という人間を愛してくれていることに。 だから、気付かない振りをした。 彼女は、侯爵夫人の立場に相応しいだろう。 しかし、彼女の愛に応えることが自分にはできない。 その決意を表すかのように、短く切ったカタリナの髪。 思いつめたように、引き締めた口元。 理由を尋ねたときの、伏せた眼差し。 悲壮なまでに、その姿は美しかった。 彼を愛してしまったことを、嫌でも思い知らされる。 彼に出会わなければ、自分はカタリナを愛したのだろうか。 彼女の後ろ姿を思い出しながら、ミカエルはグラスを傾けた。 冷たい風が、木々を揺らしていた。 #comment