Top/S-26

S-26 の変更点


*R.S.3_LxM 21 [#u28a6cdd]
#title(R.S.3_LxM 21) [#u28a6cdd]
ユリアンをプリンセスガードに任命した直後、カタリナが暇を願い出た。 
聖王遺物マスカレイドを奪われたことの、責任を取りたいという。 
彼女ほどの剣士より奪い取ることから、相手の力量を測ることができる。 
並みの腕前ではあるまい。 
(困ったことになった・・・。) 
護衛の兵士を、モニカの部屋に入れる訳にもいかない。 
改めてカタリナの抜けた穴を大きく思う。 

そして、彼女がいなくなったことによって安堵を覚える自分がいた。 
教養があり、腕も立つ彼女は立派な貴族の娘である。 
父フランツや大臣、そして彼女の父は、いずれ侯爵夫人にするつもりで城へ入れたに違いない。 
彼女自身も、その意図に気づいていたはずだ。 
もし彼女の期待に応えることができたなら、どれほど楽だったことだろう。 
教養、技能、家柄、容姿。 
どれも申し分ない。 
彼女が「自分」でなく、「領主」に愛情を持っていてくれたのなら、まだ良かった。 
だがミカエルは気付いてしまった。 
カタリナが、自分という人間を愛してくれていることに。 
だから、気付かない振りをした。 
彼女は、侯爵夫人の立場に相応しいだろう。 
しかし、彼女の愛に応えることが自分にはできない。 

その決意を表すかのように、短く切ったカタリナの髪。 
思いつめたように、引き締めた口元。 
理由を尋ねたときの、伏せた眼差し。 
悲壮なまでに、その姿は美しかった。 

彼を愛してしまったことを、嫌でも思い知らされる。 
彼に出会わなければ、自分はカタリナを愛したのだろうか。 
彼女の後ろ姿を思い出しながら、ミカエルはグラスを傾けた。 
冷たい風が、木々を揺らしていた。 
#comment

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP