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66-424 の変更点


#title(セカイノハテ)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 
「難局大陸」蔵×日 キス止め。5、6話を見て思わず。 

夜中に上から抑え込まれ、頬を舐められた。 
ザラリと生温かい感触にさすがに目が覚め、驚き、しかし自分の上に乗っているものの正体がわかると一気に脱力する。そして、 
「一体何をやらせてるんだ。」 
そう非難の声を上げれば、おもむろに部屋の明かりをつけながら蔵持が「なんだ、もうわかったのか」と部屋の隅から明るい笑い声を立ててきた。 


南極の地で遭難した。 
磁場が狂った地では方位磁針も使えず、気力と体力を奪うブリザードの中で食料も尽きかけ死を覚悟した。 
そんな自分達を救ってくれたのは助けを求める為に鎖から放たれた三匹の犬達だった。 
そしてその中でもリーダー格であった力が、今、日室の上に乗っている。 
「何しに来た。」 
遭難中に負った足の凍傷の為、基地について速攻医務室の世話になり、そのまま一晩を過ごす事になった自分の顔を舐め続ける力の頭を撫でながら 
声だけは冷たく言い放つ。 
しかしそれにも蔵持はいつもの通り堪える様子も無く、ゆっくりとベッドの上に横たわる自分に近づいてくる。 
「いや、医務室で一晩ってする事無くて暇かと思ってな。力が見舞いに行きたいって言うのに付き合わせてもらった。」 
犬をダシにする言い草でベッドの足に腰を下ろし、こちらに視線を向けてくる。 
柔らかく黒目がちな、そんな瞳がしかし何故か直視できなくて日室はこの時あからさまに顔を横に背けた。 
「馬鹿な事を。」 
「足、大丈夫か?」 
「大丈夫じゃ無い。痛い。しばらくは動かせないし、完全に元に戻るかもわからない。」 
「そうか…」 
「でも……生きている。」 
そう生きている。また生き残った。だから、 
「もう謝るな。」 
なにか言いたげな蔵持に先んじて日室は告げる。 
それに蔵持がハッとした表情を向けてくるのが気配でわかったが、それもけして見ない。 
ただ大学の頃からもう十数年、自分の中に溜まり続けていた言葉だけを自分勝手に吐き出した。 
「俺は以前も今回も自分が原因で死にかけた。以前に至ってはそのせいで他人が死んだ。しかしその罪を背負わされたのはお前だけだった。 
俺は怪我のせいで加害者ではなく被害者の扱いを受けた。誰も俺を責めなかった。その分、俺の罪の意識はどこにも行き場が無くなった。」 
「…………」 
「おまえにぶつけるしかやり場が無くなったんだ。」 
「…別にいいよ。」 
「お前は良くても俺はもうごめんだ。あんな八つ当たりで後味の悪い思いを何年も引きずるのは御免をこうむる。だから、」 
少しだけ息を吸い、一気に言い放つ。 
「今度の事の責任は自分自身で負う。おまえなんかに渡してたまるか。だから……もう謝らなくていい。」 
言い切った、それに対する蔵持の反応はしばらく無かった。それでも、 
「おまえ……どんだけ上からよ。」 
やがて、噴き出すような笑いと共に告げられた言葉に、瞬間カッとなる感情がある。だから、 
「うるさい!」 
わずかに大きくなった声で鋭くそう叫べば、それに腹の上に乗っていた力が驚いた様にクウーンと鳴いて、再び頬を舐めてきた。 
その様子を見ながら蔵持が尚も笑い続ける。 
「ああ、大丈夫だ、力。こいつは別に怒ってる訳じゃなくてテレてるだけだから。」 
「誰が照れてっ!」 
「おまえだよ。ったく、そんな事言われたらこっちも生きてる幸せもっと実感したくなるじゃねーか。」 
「なに?」 
思わず口から出た問いにしかし蔵持は答えず、ただ自分の上に乗っていた力を「ちょっと変わってくれ」と言いながら下に下ろすと、 
代わりに彼自身が自分の上にのしかかってきた。 
「…っ、何の真似だ?!」 
「ん?あぁ、ちょっとキスしたいなと思って。」 
「キスゥ?!」 
驚きと呆れで思わず声が裏返る。
しかし続けて罵倒する間を与えずに、蔵持はこの時かすめるような軽さで自分の唇に己のそれを重ねてきた。 
すぐに離れる。その瞬間にフフッと鼻にかかった笑みが洩らされた。 
「まぁ…いいじゃん。ちょっとだけだから怒るな。」 
悪気などまるで無いような、そんな態度にたまらず眉間に皺が寄る。 
でもこの余裕の相手に怒っては、そこですでに負けな気がして。 
「…キスなんて大した事じゃない。」 
負け惜しみにならないよう何でもない事のように言ってやれば、それに蔵持はオッと面白げな興味の色をその表情に浮かべてきた。そして、 
「そうだよな。キスなんて欧米じゃ普通の事だし。」 
「挨拶みたいなものだ。」 
「だな。だから…もう一回いいか。」 
返事はしなかった。それが返事になった。 
再度重ねられる唇。今度は深く長く。 
ただ欲望よりは体温を互いに教え合うような柔らかな触れ方は、自分が知っているキスとは何もかもが違う気がした。 
そしてその不思議さをまるで読みとったかのように、蔵持が唇の隙間に囁いてくる。 
「ここは欧米でも無いから……」 
あぁ、そうか。それもそうだ。 
だから奇妙な納得と共に、自分の唇もキスの合間に小さな呟きを零す。 
「ここは…世界の果てだ…」 
告げた言葉に自分の上で蔵持が笑った。 
久しぶりに見る、この男のこんなに近くの笑顔。 
それが自分達がひどく遠くまで来た証しのように、この時日室には思えた。 


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
力は賢い子。 
力は賢い子。
- krhmすきだ…ご馳走様です --  &new{2012-03-08 (木) 22:53:01};

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