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66-196 の変更点


#title(TAKE ME OUT TO THE BALLGAME)
お祈り写真が可愛すぎたので。 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

ぽこり、と青いしっぽに、いつもの感触。 
(痛っ) 
振り返ると、案の定、盛野さんがニヤニヤ笑っていた。 
「何でお前いるの?」 
予定のなかった試合に、急ぎ馳せ参じた僕に対してこの暴言。 
(…エラー&連敗でヘコんでると思ったのに) 

心の広いホッシーだからこそ許してくれたこの緊急出動。 
医師黒さんがベイさんにお願いして許可を貰い、急遽僕を呼んでくれたのだ。 
感得問題で未だゴタゴタは絶えず、広報としての仕事も忙しいはずなのに…と返事を躊躇う僕に、 
「気合いだよ気合い!そうだ!チアのみんなも呼ぼう!コアラさん失敗してもいいようにチーフもね!」 
電話の向こうの変わらぬ暖かい声(一部引っ掛かる箇所もあるが)に、僕は甘える事にした。 
名護屋でやきもきしてるより、少しでもみんなの近くにいたいし。 

…バク転の事を考えると、ちょっぴりお腹が痛むけど。 



しかし僕らはビジターだし、ベイさんも地元最終戦。引退選手のセレモニーもある。 
邪魔にならぬよう、迷惑をかけぬよう、控え目に大人しくしている僕に対してこの仕打ち。 

(今日は特別なんだから、怒っちゃいけない) 
(そう、僕は大人だからね) 

気持ちを落ち着けるため、深く深呼吸してから、三塁から外野レフト席をすっと示し、最後に自分の顔を指す。 
(みんなが僕を見たいって言うから) 
ジェスチャーで答えると、再度ボールを当てられた。 
…さっきよりもだいぶ痛いですよ。しかも股間狙いとは卑怯な。 
内股を擦り合わせながら相手を睨みつけると、 

「ばーか」 

実に端的な捨て台詞を残し、盛野さんはキャッチボール相手の方へと歩いて行ってしまった。 



青いユニに贔屓選手のタオルや応援ボードを手にしたお客さんが客席の最前列に陣取って練習中の選手たちを見守る。 
もちろん僕にも可愛い女性から黄色い声援が飛ぶ。 
そちらに向き直り、ポーズを決めると、一斉に上がるカメラのシャッター音と「キモイ」の声。 
(キモいとは何事か!) 
憤慨のアクションを取ると、フェンスにしがみついていた度荒耳のヘアバンドを付けた少年が、声を上げて笑った。 
───見慣れた、いつもの風景。 

特徴的な逆三角形の照明塔の明りが点り、試合開始に向けての高揚感を煽る。 
ビールの売り子さんの元気な声、太鼓とラッパの奏でる力強い応援歌。 
スタメンの名前が並ぶスコアボード。 
鮮やかな人工芝の緑、綺麗に均された赤褐色の土とのコントラスト。 
空はゆっくりと藍を滲ませ、美しいグラデーションのカーテンを下ろす。 



渾身のストレート、空を切らせるフォーク。 
一つでも先の塁へ、風のように走るんだ。 
ホームランは快音響かせ、夜空に白い軌跡を描くんだ。 

球場は徐々に下がる気温と反比例するように、熱気が高まって行くのが分かる。 
豪快なホームランを幻視する気持ちで、ふと、空を見上げると、白銀に輝く灯りの向こうに、小さな明かりが瞬いていた。 

…もしかしたら上空を通過する飛行機かもしれない。 
それでもここから先の時間、試合になってしまえば、僕は何もできないから。 
いつも胸に下げているネックレスに指先をやり、バク転前でもないのに、手を合わせた。 



(神様なんて信じてないけど) 
(もし、野球の神様がいたら、お願いします) 

四方から差す光線が僕の影を、幾つも緑の芝の上に描き出す。 
影の分身たちは僕の動きに倣って、祈りの姿を取った。 
外野の人たちに何と言われようと、今は関係ない。 
だって僕らはただ、ここが、野球が好きなんだ。 

(もうちょっとだけ、一緒にいさせて下さい) 

ファンの作った、「66」の染め抜かれた大きな旗が浜風に翻る。 
ささやかな祈りと共に、大きな感謝を、この球場にいる全員に。 

(ここまで連れてきてくれてありがとう) 


───プレイボールまではあと少し。 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
- あああああ… --  &new{2012-05-29 (火) 00:08:40};

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