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62-335 の変更点


*オリジ ゲイニソ 後輩×先輩 [#j81d6944]
#title(オリジナル 芸人 後輩×先輩)
ひさしぶりに投下させていただきます 
オリジ ゲイニソでコソビ外カプ 
全国区ブレイク後輩×ローカルゲイニソ先輩 
クリスマスに投下間に合わなかった残念な結果 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

『なあ、オマエ、さ。今月24日、とか?その、なんか予定、あんのん?』 
『………』 
『何やねん、この沈黙』 
『すんません。ちょお驚いてました。意外とイベントとか気にしはる方なんやなあって』 
『ガラやなくて悪かったな。どうせ女みたいやなあとか思うとるんやろ』 
『えー、別にええんやないですか?ベッドの中では女役してはるんですし』 
『ちょ…!』 

東京におるアイツと携帯越しにこんなやりとりをしたのがちょうど2週間前。 




「おう、お疲れー」 
いつもの劇場で久々の夜公演を終えた俺は、帰り支度をしていた後輩の一人に声をかけた。 
「なあ、この後メシでも行けへん?」 
「あー、兄さんすんません。今日は彼女と約束あるんで~」 
「ああ…そらそうか」 
12月24日。こんな日に女の子差し置いて男と呑みに行くアホはそうおれへんわ。それがたとえ先輩の誘いとしても、な。 
「邪魔してすまんかったな。ほんなら、楽しいイブを~」 
「あ、はい。ホンマすんません。お疲れさんっしたー」 
誘って、断って、お互い申し訳ないという空気が漂う中、俺はひとり足早にその場を立ち去った。 

その後劇場出口であった別の後輩に声をかけてみたものの、返ってきた答えはほぼ同じものだった。 
「ちゅーか兄さん、今日予定あらへんのですか?」 
「ん…あ、ああ。ちょお向こうと予定が合わんで」 
適当に茶を濁して答えると、そいつも何となくアカン空気を読んでくれたのか、曖昧な相槌に留めてそれ以上追求はしてこなかった。ふう。 
「あの、アレやったら、俺知ってる子ぉ何人か当たってみましょうか?」 
「ああ、ええねんええねん、気ぃ使わんと。他当たってみるわ」 
何や『クリスマスイブに一緒に過ごす相手がいないかわいそうな先輩』っちゅーイメージ植え付けてしもうたか?それはプライドにかけても断固拒否させてもらうで! 
「ホンマすんません」 
そう言って頭を下げる後輩に、俺は余裕たっぷりの笑顔でひらひらと手を振って、そのまま劇場を後にするのだった。 





結局聖なる夜にカップルたちでごった返す店でひとり呑みする気も起こらず、俺はそのまま帰路につくことにした。 
「――すんません、か」 
聞かせる相手も誰一人いない部屋の中、ぼそっとひとりごちてみる。 
その言葉、2週間前にはとうに聞かされとったわ。 
『すんません。24日は正月特番の収録があって――』 
大体予想しとった答えやった。 
何度も言うとるけど、アイツは全国区の売れっ子ゲイニソで、俺はしがないローカルゲイニソなんやから。 
生放送も含めて特番ラッシュのこの時期に時間が空くことなんか、初めから期待しとらんかったし。 
いつもみたいに、向こうに俺が合わせる形で上京できればそれなりだったんだろうが、何故かこういう時に限って、翌日朝からローカル番組のロケが入るときたもんだ。 
普段暇を持て余す程予定空きまくっとるのに、どんだけタイミング悪いっちゅーねん。 

男の一人暮らしで散かったテーブルに、コンビニで買ってきた夜食と小さなケーキとシャンメリー。あかん、いよいよ寂しいクリスマスの様相を呈してきたで。 
背伸びせんといつもの発泡酒にしとけばよかったと、ちょっとだけ後悔する自分が悲しい。 
『――意外と、イベントとか気にしはるんやなあって』 
ふとあいつの言葉が蘇る。 
女やあるまいし、クリスマスだのバレンタインだの行事ごとにはこだわらんと自分では思っとったんやけどなあ。 
やっぱ俺、イブを楽しみにしとったんやろうか? 
それとも……。 





「ん?」 
ちょうどその時、ジーンズのポケットの中で、マナーモードにしっぱなしだった携帯が小刻みに震えた。 
通話を繋ぐと、受話口からはアイツの声がノイズ雑じりに聞こえてきた。 
「おお、お疲れさん。何、今外なん?」 
「はい。新大阪着いたんで、こっからタクシー拾いますー」 
……はいぃ? 
反射的に時計を見る。 
今日は1日特番の収録やって、もち東京で、ほんで明日も朝から収録って、え、え?ええ!? 
「東京駅でケーキ買うてきたんです。時期も時期やし、保冷バッグもつけてもらったんで多分大丈夫とは思いますけど。とにかく急ぎますわ!」 
何だか訳が分からないなりに俺がかろうじて理解したのは、アイツが今移動速度を新幹線から車のそれに落としながらも、急いで俺の元に駆けつけようとしているということだけだった。 

保冷バッグを片手に現れた男は開口一番、今日の特番の収録が予定よりずっと早く終わった事を俺に告げた。別にドタキャンしたわけやないですよ、というアピールのつもりなんか。 
「明日?ええ、朝から収録の予定変わってませんよ。けどあの局やったら始発に乗れば間に合うし、まあ大丈夫やろって」 
「お前なあ…」 
相変わらずのノリの軽さでこういう大胆なことを平気でやってのけるから、コイツはホンマにすごい奴やと感心する。 
俺が同じ立場やったら、いやまあコイツみたいに多忙とちゃうから絶対ありえへんシチュやけど、始発乗り遅れたらどうしようとか、何か事故で遅延が生じたらシャレならんわーとか考えて、絶対移動できへんぞ? 





「俺だって、アナタ絡みやなかったら、何もここまで思い切ったことやりませんよ」 
「えっ」 
冷蔵庫にケーキの箱をしまいながらサラッと言いやがった。 
アカン、不意打ちや。不意打ちはアカンて。 
「だってアナタが24日の予定気にしてはったから。恋人がイブは一緒に居りたいって望むんやったら、そら男やったら仕事があっても何とかしたいと思いますよ。そうでしょう?」 
「いや、男やったらって…」 
俺も男や!という言葉は喉まで上がりながら、口の端まで上ってくることはなかった。 
俺はいつもいつも、コイツがポンポン放り込んでくる豪速球に、為すすべもなくあっさりやられて飲み込まれてしまうねん。 
「それとも、アナタはこうやって俺が来たこと、迷惑やって思ってはるんですか?」 
「いや、誰もそんな言うてへんやん!」 
自分でも意識しなかった大声が出てもうた。うわっ、しかも即答とかっ! 
恥ずかしくて顔を背けようとした視界の隅に、アイツの笑顔がチラリと映る。 

「それに、疑われるのも嫌やったですしね」 
「は?」 
「明日も仕事やって言い訳して、大阪帰ってこんと向こうで他の女の子と遊んでるんやないかって」 
「なっ……!」 
それやったらまるっきり女の嫉妬やないか、そこまで女々しくないわ! 
と言いかけたところで、不意に強い力で抱き寄せられた。 
「んっ」 
そのまま口も塞がれて、言葉も封じ込められる。 
強引な遣り口、これはコイツのズルさやといつも思う。思うのに、俺はやっぱりコイツのペースに流されてしまう。 
「俺はアナタ一筋ですから。今までも、そしてこれからも」 
ああ、アカン。またそんな顔で、そんな殺し文句で。 
強張っていた体の力が抜けていく――。 





『俺は何もイブを楽しみにしとったわけやない。 
 俺はクリスマスイブっちゅーイベントに託けて、コイツと一緒に過ごすことを楽しみにしとったんや』 
ようやっとさっきの自問自答の答えにたどり着いた。けどその感触ときたら何ともこそばゆくてしゃーない。 
「どないしはったんですか。口元めっちゃ緩んでますよ?」 
「なっ、べ、別ににやけてへんわい!」 
「何ぞエロいこと考えとるんやったら、このサンタクロースがお望みどおりに」 
「何がエロイお望みやねん!っておいサンタ、てっ手ぇ!」 
シャツを捲くり上げ、イヤラシイ手つきでスルリと脇腹を撫で上げる。 
「ええやないですか。サンタさん、仕事の合間をぬって東京から2時間半もかけて来たんですよ?しかも自腹で」 
「移動の手間と距離と時間と交通費を免罪符みたいに言うなや」 
しかも俺が東京に行く方が圧倒的に多いっちゅーんじゃ。一回や二回でそんなに勝ち誇った顔すんなや、ドアホ。 
「ほんで朝イチで東京に戻らなあかんのですよ?ケーキ食べてシャンメリー飲んで終わりとか、それで俺が満足すると思うとるんですか?」 
「……………」 

ああ、ああ、わかっとるわい。 
オマエがすっかり臨戦態勢になっとって、健全で終わらせる気ぃがこれっぽっちもないことぐらいわかっとるわい。 
わかっとるから、わかっとるから言い返せんで、それが悔しいんじゃい! 





「はいはい、ええ子ですね~。サンタさんはええ子にだけプレゼントをあげますよ~」 
反論を諦めた俺の頭をよしよしと撫でてから、アイツは俺の体をゆっくりとベッドに押し倒していく。 
「……明日遅刻せんよう、プレゼントはほとほどにしとけよ、サンタさん?」 
「ああー、明日新大阪でドリンク剤買うて行くから、サンタさんの体の方はご心配なく」 
「俺も明日ロケがあるっちゅーねん!!!」 

コイツが来る前に携帯のアラームセットしとくべきやったと、俺はまだ頭の片隅に残っている理性を総動員して激しく後悔するのだった。 


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 
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