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62-315 の変更点


*未だ [#m5658b49]
#title(スキマスイッチ 「未だ」)
生。☆と元アフロネタ。ホノボノ路線というか肩すかし路線で。 

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

だからお前と、色々したいんだけど、ってストレートに言ったら、こいつは俺の肩に頭を乗せたまま黙っていた。 
「…あのさ」 
返事はない。動きもしない。 
「ねえ…」 
ちょっとずつその頭と腕の重みが、俺の中に現実感とは違ううねりを生み出していた。 
ゆっくり息をしているな、とか。指が肩に食い込んでるな、とか。 
耳に当たる髪が少し冷えてて、それが何だか気持ちいいな、とか。 
まるで現実じゃないみたいだった。 
ガラス窓越しに、いつもお前が歌うボーカルブースのマイクが見えていた。ヘッドフォン越しに俺らはよく話した。 
そんなことを思い出していた、目の前にその姿は無くて、今はガラスに俺とお前が映っている。 
「…あのさあ」 
やっと言った声は、呆れたように聞こえた。 
「シンタ君、デリカシー無いとか言われねえ?」 
「……は?」 
イテ、痛て、ちょっと。あのさ、頭ぐりぐりするのやめてくれないかな。頭突きみたいになってんだけど。 
「タクヤ、痛いってば」 
「ホントにさー、ちょっとさー、モノには言いようってのが…時と場合とかさあ!?」 
「…った、あ、ちょっと待って、て、おいって!」 
首、首くびクビ、締まってる!関節技になってる!墜ちるぞ、おい。 
「……いいけど」 
意識とぶかと思った。あー、考えたら流石に、殴り合いのケンカはしたことないかな、って、あれ。 
「……え?」 
ばたばた手を、タクヤの腕を掴むようにして俺はもがいていたけれど、お互いそこでぴたり動きが止まった。 
俺は俺で、またガラスの中の自分と目が合う。バカみたいな顔をしてる。 
後輩に細い目だとか言われてるけど、今はそれを目いっぱい見開いて、まるでバカみたいな。 
ゆっくり一度、息を吐いた。 



あの、俺の言ってたのは多分、おそらく、お前の思ってることと違うんだけど、って。でも言わなかった。 
俺はお前と人生のことを考えてて、そうずっとお前の相棒でいたいなとか、そんな意味だったんだけど、もう。 
もうこうなったら、どれでも同じことだと思う。 
もう一度、ゆっくり深呼吸。 
なあ今さら、慌てても。 
十七年ですよ、何せ。 
最初はとげとげしてて、お互い第一印象よくなかった。お互いガキでしたね。 
俺が組もうって押しきったときも、結構お前渋ってたよね。 
ソロから帰ってきた時、どうにも俺に我慢がならないこともいっぱい言ってくれたな。 
そんなこと全部含めた何かが、俺の中で皮膚をつきあげる様になった。熱いなあ、とそう思った。 
ソファにひっくり返って俺の全体重を受け止めながら、タクヤは俺の息が熱すぎる、と言った。そうだな。 
でもお前のもそうだよ。キスしたらわかるよ。 
さっきの関節技が、今はまるで切ないってでもいうみたいに、背中を締めてきた。 
耳を噛む。首を噛む。 
喰われてるみたい、ってかすれた声。 
息を押しつけるみたいに肌にあてる。 
俺の舌が熱い、って、今度はため息と一緒に。 
「…あ、あ、ちょ、でもちょっ…、ちょと、待った!!」 
ふっと、また別の意味で意識が飛びそうになったその瞬間だった。 
「痛っ!!」 
痛い、また! 
「なっ…な、何、タクヤ!?」 
今度は髪!! 
マジ鷲掴みだ。さっきまで背中にあった指が、俺の髪をめちゃくちゃ引っ張って引きはがす。 
いっ、ちょっ、ハゲる!ヤメロ!アフロじゃなくてもハゲるから!! 
意識がくっきり現実に戻った。 
そういつもみたいに。いつもと違ったのは、お前の方。 
そっくり返った俺は冗談でも何でもなく痛くて、ちょっと視界は涙で滲んでた。そのせいかな。 
いや、それだけのせいじゃないとは思ったけど。 
お前の目も蛍光灯の光を受けて、ゆるく柔らかく、潤んでいた。 



俺は少し茫然として、それを見下ろしていた。髪の色が好きだ。その冷たさも。 
ジャケットの襟で跳ねてる、それがたまらなく好きだ。 
とか。思ったりしながら。 
「……何、タク、ヤ」 
「……ここはダメでしょ、ね」 
「……。」 
ぼそり。現実。 
くっきり戻った意識は、理性は、俺の頭の中で騒ぎだした。確かに、確かに俺は、こんなとこで何を。 
ここは俺のプライベートスタジオじゃないんだ、った。事務所も会社も近いんだった、だから。 
ここで問題を起したら即ばれる、ああもう一気に色んな人に。 
血の気が引いてしまって黙りこんでしまった俺にタクヤは、まだ俺の腕の中にいるくせに、逃げようともしないくせに、 
なのに常識的なことをぼそぼそと喋り続ける。 
まだ誰かいるかもしれないとか。鍵かけてないとか。事務所も会社も近いんだとか、うん、うん。 
「それに」 
「……。」 
「……。」 
「…それに?」 
「か…」 
「…か?」 
「か!!」 
今度は耳がやられる!近い、近いんだから叫ぶなっての!! 
いくら惚れてる声でも、怒鳴られて鼓膜が刺激されないわけじゃない。一瞬きいんとなった。 
思わずそれを押さえ込んで逃げ腰になってしまう。 
「……考えたんだけどっ!」 
「何を!」 
「俺、絶対声出るし!」 
「……。」 
で、ナニこっちを恨めしそうに見るんかいね。知らんよ、そんなお前のアレコレとか、流石に。 
「はぁ……で」 
「つか、……出したいし」 
「……!」 
ぐ。 



「……だから、ココはさあ、マズいんかも、って……流石にさ」 
それには、ちょっと俺も、来ましたよ。何かが。何て言うのか。 
上目使うなって、そんなキャラかい。いや、計算でそういうキャラやることはある、のは知ってるけども。 
だからって俺に通用すると思うなよ。何年それを傍で見てきて、犠牲者に心の中で手を合わせて来たか。 
通用しねえ。しないんですよ、タクヤ、しないよそんな手は。 
「……。」 
だー。なっさけねえ。 
心の中で呟いてても、結局一番俺が、これに弱い。 
お前を目の前にすると焦る。何て答えようか混乱する。何だって、何時だって、一番俺が、お前を裏切りたくない。 
体は熱くて、心も汗だく。もう直ぐ冬で良かったのかも。 
「ろり、あえず」 
「あ?」 
か、噛んだ。ええいままだ。 
「……とりあえず、ちょっと考えようか」 
多分お前は呆れる。退くのかよって言って、結局最後そこを飛び越えるのは俺なんだって、なあ。 
お前の期待を裏切りたくは無いんだけど、でも本当に、本当の意味で、お前を裏切るのは嫌だなあって。 
確かにタクヤは、半開きの口では、と呆れたようにため息をついて、何秒か黙っていたけど、最後には笑いだした。 
ヤバい、ってくすくすからげらげらと、俺にしがみついて結構大笑いだ。つられて俺も、いつの間にか笑ってしまった。 
らしい。ホントに。 
とことん真っ直ぐ進めないのが、たまらなく俺ららしいと思った。 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 

そう簡単には…! 
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