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#title(エジプト神話 ホルス×セト6)
1さん乙です。早速ですが使わせていただきます。
前スレの続きで埃.及神話の甥×叔父。精神的には叔父の兄(甥の父)←叔父も。
獣面人身神の擬人化など自分設定多数注意。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
衣の長い裾がさらさらと擦れる音をたてながら、瀬斗は朝食の席へ向かう。
斗々が図ってくれたのだろう、肩につけられた歯形やあちこちに散った赤い痕はすっかり
消え、肌は元通り滑らかに張っていた。外から見れば何が起こったとも知れないのだろうが、
腰の奥が微かに痛むたび、瀬斗の脳裏にはあの絶え間ない蹂躙がよみがえる。甥の細
い指に触れられた肌を晒すのに何となく抵抗を感じ、普段に着ている腰巻ではなく裾の長
い長衣を選んで纏った。白い亜麻の生地は柔らかく身体を包み込み、少しは気分が落ち着
くような気がする。
忙しく働いていた召使い達が、瀬斗の姿を認めた途端、揃って恭しく頭を下げた。食卓に
ついた瀬斗の前に、次々と朝食の皿が運ばれてくる。あたたかい湯気を放つ豆のスープ。
香ばしく焼きあがった白身魚のソテーにはクミンの香り高いソースがかかっており、その隣
には赤や緑の具材と共にスープで炊きあげた米が形良く盛りつけてある。更にその横には、
純白の器にたっぷり盛られた――瑞々しいレタスの葉。
「――……ッ」
思わず俯いて口元を押さえた。瀬斗は顔をしかめ、オイルドレッシングをかけられて一層
青々と輝いているレタスを視界に入れないようにしながら召使いに声をかける。
「……おい、これを下げろ。私の食事に金輪際レタスを出すんじゃない」
「は、しかし……?」
召使いは怪訝な顔をする。それも当然だ、レタスは好物だから毎朝出すようにと命じてい
たのは瀬斗なのだから。
「……この私が、出すなと言っているんだ」
「か、かしこまりました」
レタスの皿が下げられ、代わりにドライフルーツが数種類盛りつけられた小皿が運ばれて
きた。干しイチジクをひとつつまんで口に入れ、ろくに噛みもせずに無理に飲み込む。特有
の強い甘味は好きだった筈なのに、今はその濃厚さが口に粘つくようでひどく不快だった。
絞りたての新鮮なミルクも、何かを思い出させるようでとても飲む気がしない。熱いスープを
一口、二口啜っただけで、瀬斗は食卓に手をついて立ち上がった。
「……下げていいぞ。今朝は食欲がない」
吐き捨てるように言いながら、瀬斗は胃の中でごぼ、と嫌な音がするのを感じた。
廊下の角を曲がって執務室の扉が見えたとき、瀬斗はふと違和感を覚えた。執務室の前
にはいつも番の者が二人立っている筈が、今日に限ってそこに人の姿がない。細かな文
様が彫り込まれた重厚な扉が、やけにはっきりと瀬斗の目に映る。
――まさか。
頭によぎった嫌な予感に息を飲む。瀬斗は神経を研ぎ澄ませながら扉の前に立ち、ゆっく
りと取っ手に手をかけた。ひんやりとした金属の感触。自分の手で執務室の扉を開けるな
ど、一体何年ぶりだろうか。意を決して手に力を加えると、微かに軋んだような音がして重
い扉が開いた。
まず目に入ったのは大きな執務机。その奥の椅子に座す男の人影があった。上下埃及
の王以外座すことのできない筈のそこに座っていたのは――ああ、やはりこの男か!
「あれ、いらしたんですか、叔父貴。意外ですね、今日ぐらいは休んでいても良かったのに」
彫栖は手にしていたパピルスの厚い束から顔を上げ、瀬斗に微笑みかけた。裸の胸元に
は金の薄い板が何枚も重ねて連ねられた豪奢な首飾りが輝いている。自信に満ちた笑み
は、まるで何十年も前からそこに座っているかのようだった。
「何故貴様がそこに……!」
声を荒らげる瀬斗を彫栖はふん、と鼻で笑い、書類の束を机の上に投げ捨てて、ひどく挑
戦的な目つきで瀬斗を見た。
「人の噂というのは簡単に広がるものですね、叔父貴」
問いの答えにはなっていなかったが、彫栖の言わんとするところは明白だった。昨日の法
廷で彫栖が語ったことは、既に臣下や兵士たちに広がりつつあるのだろう。つまり、「王は
甥の彫栖に屈してその身を捧げたのだ」と――。
彫栖はくすくすと笑いながら続けた。
「ここを守っていた番の者も、あっさり私を通してくれました。皆、あなたが王位を退くのも時
間の問題だと思っているようですね。まあ、“ちからつよき瀬斗王”がよりによって甥の夜伽
をしたとなれば、権威も糞もなくなるのは当たり前のことでしょうが」
あからさまな挑発だった。瀬斗は今にも震えそうになる拳に力を込めて必死で押しとどめ
る。瀬斗が大声で罵倒しようが殴りかかろうが、それは彫栖の高慢な笑みを更に深くするこ
とにしかならないのだ。強く唇を噛んで耐え、瀬斗はやっと低く押し殺した声を絞り出した。
「……そこをどけ。貴様が何と言おうが王は私だ」
彫栖は面白そうにちょっと片眉を上げ、
「確かに叔父貴の言うとおりだ。少なくとも、今はね」
意外にも素直に席を立った。そして、執務机の上にあった書類の束を無造作に瀬斗に手
渡す。書類を何枚か捲って、瀬斗は声を失った。
「……っ!」
見覚えのない数々の報告書や起案は、昨日か今朝早くこの部屋に届けられたものに相
違なかった。王に宛てた書類を他人が先に読むなど、許されていい筈がない。
「そう怒らないで下さい。私にも無理をさせた自覚はありますからね、叔父貴の手間が少し
でも減るようにと思って、ちょっと目を通しておいたんです」
彫栖は悠然と言ってから、金色の片眼をきらりと光らせてわざとらしく付け加えた。
「それに、どうせ私が引き継ぐ仕事ですから」
彫栖は瀬斗の横から書類を覗き込むようにして、手を伸ばして書類を捲ってみせる。肩に
彫栖の息がかかりそうな近さに、瀬斗は反射的に身体をずらして距離をとった。
「私が見た限りですが、上から重要度順に。こちらは例の大蛇に不穏な動きが見られると
いう報告です。こちらは尼羅の増水期の予測と暦の修正案。こちらは太陽神殿の整備につ
いて。急ぎのものはこの三件でしょうね。太陽神殿については午後に羅亜様とお話をなさる
ということですので、一応最後に必要そうな資料を揃えておきました」
瀬斗は書類を捲って素早く目を走らせ、そして再び絶句した。今日これから斗々に手伝わ
せて揃えようと思っていた資料が、過不足なく全てそこに揃えられている。執務に関わる膨
大な書類は斗々の手によってこの部屋の棚に丁寧に分類されてはいるが、多岐に渡る書
類の分類は非常に複雑で、何よりも量が量だ。どこにどのような書類があるかは一目見て
簡単に把握できるようなものではない。今日初めてこの部屋に入り、朝から今までに一人で
必要書類を揃えたとすれば、その能力は恐ろしいというより他ない。瀬斗は背筋がぞっと寒
くなるような感覚を覚えた。
「さあ、これで少し時間が空きましたね。せっかくですから一緒に遊びましょうか?追いかけ
っこなどいかがです?」
一言も発せない瀬斗を意にも介さず、彫栖はいかにも愉快そうに笑って口元を手で隠すよ
うな仕草をした。
「そうですね……叔父貴もこれを見たら、追いかけずにはいられなくなると思いますけど」
彫栖は冷たく微笑み、その唇をゆっくりと開いて紅い舌をのぞかせた。ぬめったように光る
舌の中央に、何かきらりと光るものがある。硬質に光る羽と六本の足、小さな頭。一瞬本物
の甲虫かと見えたそれは、金と水晶で造られたスカラベ型の印璽だった。
「貴様、それは……っ!」
咄嗟に手を出したが、彫栖はすぐに口を閉じて片手で口元を押さえた。伸ばしかけた瀬斗
の手が行き場を失って空を切る。
「いけませんね。あんまり大声を出したら驚いて飲み込んでしまうかもしれませんよ」
蜜菓子でも舐めているかのような舌っ足らずな発音が余計に瀬斗を苛立たせた。玉座に
座り、王に宛てた書類を勝手に読むのみならず、玉璽を奪って舌の上で弄ぶなど、ここまで
の不敬を働いた者がかつてこの埃及に存在しただろうか?
「安心して下さい、今夜にはきちんとお返ししますから。これがないと決裁が進みませんからね」
“今夜”と言った意味ありげな彫栖の目つきに、瀬斗の腰から項までを悪寒が駆け上がっ
た。薄い皮膚に歯を立てられる痛み、身体の奥を侵略される感覚、擦れ合う粘膜の熟れた
ような熱さ――。陵辱の記憶が、生々しく頭に蘇っては消える。瀬斗は吐き気を堪えて唾液
を飲み込んだ。
「ああ……なんだ。随分きれいになってしまいましたね。これは斗々が?」
ぴたり、と、彫栖の手のひらが瀬斗の二の腕に触れた。瀬斗は咄嗟に動くことができない。
彫栖の手はするすると腕を撫で上げ、肩の衣をずらす。歯形も爪痕も残っていない肌を見
て、彫栖は少し苛立たしげに小さく舌打ちをした。
「せっかく、痕を残すようにしたのに」
彫栖がすっと肩口に顔を伏せ、直後、唇の感触と鈍い痛みがそこに走る。唇を離したその部
分には、くっきりと赤い痕が咲いていた。
「っ、貴様……!」
「では、また今夜」
彫栖は餌を独り占めした動物のような満足げな表情で微笑むと、くるりと背を向けて執務
室を立ち去った。
音を立てて閉まった重い扉を見つめながら、瀬斗はじんと痛む肩の印を指先でなぞる。微
かに湿った感触が、指先に絡んだ気がした。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
中途半端なところですが、だんだん書きたいことが増えてきてしまってあと数回で終わりそうもなく、
いつ終わるともしれないものにこれ以上棚を使わせていただくのもご迷惑かと思うので、サイトを作ることにしました。
もし興味がある方がいらっしゃったら、捨てアド晒しますのでこちらまでご連絡下さい。
lettuce_batakeアットマークyahoo.co.jp
今まで読んで下さった方々に、また棚という場に大変感謝しています。ありがとうございました。
- あまりにも素敵過ぎてアドレス請求メールを送らせて頂きました…!お気付きになられましたら是非宜しくお願い致します><御馳走様でした! -- [[とめ子]] &new{2011-10-13 (木) 00:41:40};
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