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*numb*3rs 工ップス兄×弟 [#n1508338] #title(numb*3rs 工ップス兄×弟) [#n1508338] / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | 昨夜のnumb*3rsスラの続きだよ ____________ \ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 相変わらず兄弟やおいだってよ | | | | \ | | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ | | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) | | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || | そんなわけで後編です。相変わらず痛いです ここをきっかけに狐に加入してくれた人までいるとは…嬉しい! 原作そのものがホモホモ兄弟エピソードで構成されているので こんなフィクなんかよりずっと萌えるはず。楽しんでください。 まずはト゛ンのように携帯の電源を切り、チャ―リーはひたすら海辺の通りを歩き続けた。 たまにト゛ンが追いかけてきているかと思って振り向いてみたり、似た外見の人間を見かけ ると足を止めてみたりしたが、ト゛ンはいなかった。帰りたい、とチャ―リーは思った。カ リフォルニアのあの家に帰り、ガレージにこもって数式を解き、すべてを忘れたかった。 この関係を続けることをト゛ンは望んでいないのは、もちろんわかっていた。数ヶ月前、 ガレージでト゛ンと寝た直後から、ずっとそれは理解していた。でも続けることが自分にと って必要なのも事実で、だからこそチャ―リーはこの数ヶ月一番苦手な種類の努力を重ねて きた。ト゛ンにキスやセックスを強請り、みっともない脅しを掛け、懇願までした。そのた びにプライドも傷ついたし(相手が自分を必要としていないとわかっていて、自分から身体 を差し出すことの苦痛をト゛ンは理解していないだろうといつも思う)、何より嫌なのはト ゛ンが困惑した表情を毎回向けることだった。 だが、その苦痛を差し引いても、ト゛ンと身体を重ねる時間は素晴らしかった。ト゛ンの 手のひらや唇が肌をさ迷い、名前を耳元で呼ばれると、あまりに幸せですべてを忘れた。た まにト゛ンが見せる微笑、そのときに目尻に浮かぶ皺、誠実で愛情に満ちたあのまなざしが、 チャ―リーにとってはすべてで、ほかのものなど必要なかった。それなのにト゛ンはアミー 夕や、あまつさえト゛ン以外の男との――ト゛ンはチャ―リーが男性への欲望に耐えかねて、 一番身近な若い男としてト゛ンを選んだとでも思っているのだろうか?――との関係を勧め、 チャ―リーをひどく傷つけた。 自分が無神経だということをわかっていない、と今またチャ―リーは、街灯に照らされた 砂浜を歩きながら思った。ト゛ンは確かにいつだって「まとも」だ。しかしそうではない人 間について、理解できているとは思えない。チャ―リーにだってト゛ンが望むような存在に なりたいという思いはある。小さな頃からずっとある。でもなれないのだ――ト゛ンが望む ような弟には未だになれない。だがト゛ンはそれでもチャ―リーは唯一無二の弟で、代わり はいないと言ったではないか?それなら何故ありのままのチャ―リーを受け入れようとしな いのだろう?せめてその在り方を認めるくらいはするべきではないか? チャ―リーは苛々しながらにぎわっている通りを見た。この街にはビーチの他にカジノが ある。そしてチャ―リーは賭け事が得意だった。当たり前だ。彼は賭けるのではない。計算 するだけだ。馬鹿げている、とチャ―リーはいつものように大勢の人間が夢中になる賭け事 について思った。ギャンブルにあるのはスリルではない。単なる統計だ。 財布に入っている金額を確かめてから、小さなカジノに入ると、チャ―リーはまっすぐル ーレットのテーブルに向かった。ポーカーやクラップスでは簡単すぎる気がした。彼はテー ブルの側で、まずはディーラーがルーレットを回すのを何度か観察し、そのディーラーの癖 や戦略を見抜いた。そしてテーブルに参加し、注意深く賭け始めた。 一時間経つ頃にはト゛ンと二人で地球の裏側に旅行できるほどの金額が手元にあった。チ ャ―リーはその成果にではなく、自分の理論が正しいことに満足をしながら、ふと顔を上げ た。テーブルから少し離れた席で、チャ―リーより少し年齢が上に見える男がじっと彼を見 つめている。ト゛ンのようなダークヘアではないが、ト゛ンのように短髪で、筋肉質の身体 をしており、ト゛ンみたいに清潔で誠実そうに見える。FBIでよく見かける、ト゛ンやト゛ン の同僚のような、学者とは違う種類の知的な面立ち。チャ―リーは数秒彼を見返してから、 すぐに目を伏せてテーブルのコインを換金するために寄せ集めた。 換金を終えてカジノを出るとき、チャ―リーはもう一度さっきの男がいる場所を振り返っ た。彼はまだギャンブルに参加せず、チャ―リーの方を見つめていた。チャ―リーは躊躇っ てから足を止めた。すると彼はゆっくりと歩み寄ってきた。 フィラデルフィアのホテルに戻るころには、夜明けも近くなっていた。ドアの前でベルを 鳴らすと、すぐに扉が開き、やりきれない表情のト゛ンに迎えられた。「携帯電話の電源を 切ったな」 「ト゛ンだって切ってるんじゃないの?」 そう言ってチャ―リーは兄の側を通り抜けて部屋の中へ入った。ひどく疲れていたし、ト ゛ンに会うのが怖かった。だが一方でト゛ンがちゃんとホテルにいてくれてよかったと思っ た。もし自分を見限って先に帰られたりしたら、本当に傷ついていただろう。 話さなければいけない、とチャ―リーは思った。ト゛ンはTシャツにボクサーという姿で、 寝るための準備はしていたようだが、寝ていないことは顔をみればわかった。まぶたの辺り が落ち窪んで、疲れが伺える。 ベッドに腰を掛けて、ト゛ンを見上げると、彼はため息を吐きこめかみを揉んでから、少 し離れたところにある椅子に座った。そして弱弱しい声で言った。「一体一晩中どこへ?― ―もう四時だぞ」 「カジノに行ってたんだ……」 チャ―リーは小さな声で言ってから、ちらっとト゛ンの表情を伺った。ト゛ンは頷き、そ れからまた息を吐いた。「心配する」 「ごめん」 「もういい。寝ろ。ひどい顔してるぞ」 ト゛ンはそう言って手を振り、立ち上がってミニバーにある酒を手に取った。そして小さ なウォッカの瓶を一気に開けると、ごみ箱に投げ捨てて繰り返した。「寝ろ」 「ト゛ン、ごめん」 不安になってチャ―リーは腰を上げかけた。するとト゛ンは顔を顰めてそれを遮った。「 ――どうしろっていうんだ?!俺はお前の兄なんだぞ!お前のことを放っておけない。チャ ―リー、お前にはわからないかもしれないが、俺はお前に対して義務がある。幸せになって ほしいんだ。間違った人生を歩ませたくない」 「――他の恋人を見つけろっていうから、僕だって努力してる」 チャ―リーは震えた息を吐きながら言った。ト゛ンが驚いた顔でチャ―リーを見た。それ を見返しながらチャ―リーは続けた。「ちゃんと、言われたとおりに努力してる。アミー夕 ともいい感じなんだ。前は彼女のこと、なんとも思ってなかったけど、そういうのも悪くな いって感じてきた。昔は恋人なんてもう必要ないって思ってたんだ。これからの人生は研究 に捧げたいって。でも、ト゛ンとFBIの仕事に関るようになってから、少しそういうことの価 値がわかってきた。友達も増えた。――僕の側にいるのは、前は学者や研究者ばっかりだっ たんだよ。例えばデイヴィッドみたいなFBIにいるようなタイプなんて、全然周りにいなかっ た。ああいういかにもタフガイっていうか、実際的なタイプはね。でもああいう友達もいい なって思うようになった。数学的な話をできない友達も。ちょっとずつ世界は広がってるん だ。全部ト゛ンのおかげだよ」 チャ―リーが一気に言うのを、ト゛ンはぽかんと口を開けて見ていた。そして暫くしてか ら頷いた。「……それはよかった」 ト゛ンはよかったと繰り返し、またミニバーに手を伸ばして酒を取った。そしてウィスキー を舐めながら、まぶたを手の甲で乱暴に擦った。 チャ―リーはじっとそれを見つめた。小さな頃から何度も繰り返したように、兄を注意深 く観察し、疲労しきった表情の中から感情のかけらを探し出そうとした。ト゛ンはこめかみ を揉みながら言った。 「……お前はいい人間だよ。賢いだけじゃなく柔軟性があって、思いやりもある。友達だ ってもっとできるし、恋愛だってまだまだこれからできる。わかるか?俺を最終点にするべ きじゃない。もっと広い世界があるんだ」 それを聞いてチャ―リーは喉元が熱くなるのを感じた。きっと一生自分たちはわかりあえ ない、と思った。でもやはり、目の前で疲れと困惑を持て余しているト゛ンが好きだとも。 小さな頃と同じように、いやむしろ一層強く、ト゛ンのことを愛していると思った。チャ― リーは泣くまいとしながら、視線を下げて言った。 「――もしそうなれたら、それは全部ト゛ンのおかげだよ。わかる?ト゛ンがいるからな んだ。ねえ、僕はこの先、ト゛ンが望むとおりに恋に落ちるかもしれない。ト゛ン以外の誰 かと恋愛して、研究と家族のほかの人生もあるって知るかもしれない。友達もたくさんでき て、いろんなことを理解して。でもねト゛ン、それはト゛ンがいるからだ。ト゛ンを基点に しているから存在する可能性なんだ。もしト゛ンを失ったら、僕はもうきっと……何もでき ない。一番最初にあるのはト゛ンで、最後もト゛ンなんだ。わかってよ……」 嗚咽が零れ、チャ―リーはそれを押さえようと手のひらで口を覆った。変われない、と思 った。この先何があっても、ト゛ンより大きな存在は自分の中には現れないだろう。ト゛ン がどんなにそれを望んでも、永遠に。 「……子供じみてるかもしれないけど、それが僕なんだ。ごめん」 「チャールズ」 ト゛ンがウィスキーの瓶をテーブルに置き、ベッドに歩み寄ってきた。傍らに腰を下ろし、 硬い、鍛えられた手で肩を擦る。チャ―リーはその手のひらの温かさに促されるようにして、 何度もト゛ンの名前を読んだ。 「チャ―リー、もういい。泣くな」 「――僕は変われない。変わることを望むなら、振ってくれたほうがいいんだ。応えられ ないのは仕方ない。……傷つくけど、それはト゛ンの意思だろ?でも、受け入れるふりをし て変わることを望むのはやめて」 そう言ってから、チャ―リーはふっと息を吐き、間近にある兄の顔を見上げた。「我侭言 ってるかな?」 ト゛ンがその言葉に微かに目を細め、苦笑した。「そうかもな。――いや、お前が言って ることは筋が通ってる。正しいよ」 「ト゛ン、僕を振る?」 小さく問うと、ト゛ンが視線を泳がせるのがわかった。「……いいや」 「弟だから?」 チャ―リーの言葉にト゛ンはまた苦笑した。そして彼の巻き毛を撫でてから、肩を竦めた。 「そうかもしれない」 「……一生振られないなんて、弟に生まれて得だよね」 冗談めかして言うと、ト゛ンは目を伏せた。「俺が悪い。お前を傷つけたくない。何でも してやりたい。でもそれがお前の人生に傷を与えてる。わかってるのに、お前が大事だから 手放せない」 「――傷じゃないよ、ト゛ン」 呟くようにチャ―リーは言った。ト゛ンはそんな弟を見つめてから頷いた。「わかった」。 チャ―リーは頷き返してから、ホテルの広い窓を見つめた。高層ビルの群れの向こうに、日 の出を迎える水平線がかろうじて見える。チャ―リーは掠れた声で言った。 「……ピタゴラスがね、無理数を隠したんだ。知ってる?古代ギリシアにいた人だよ。彼 は偉大な定理をいくつも発見し、数字によって世界は支配されていると考えていた。そして 世界の理を読み解くためには数字が鍵となるとも思った。そんな彼にとって、無理数の存在 はあってはならないものだったんだ」 「……無理数?」 訝しげにト゛ンが問う。チャ―リーは頷き、微笑んでから説明した。「πみたいな……ほ ら、円周率だよ。ああいう、分数でも表せない数字。同じパターンが繰り返されることもな く、永遠に少数の羅列が続く数字のこと。それをピタゴラスの弟子があるとき発見したんだ けど、ピタゴラスはそれに動揺して、その弟子を殺してしまったんだ。無理数は彼の世界観 を覆すものだったから」 ト゛ンは肩を竦め、そして黙った。チャ―リーはそれを見てまた微かに笑った。こうやっ ていつまで経っても数学者との会話に慣れないト゛ンが好きだと思った。彼は会話を続けた。 「僕はね、無理数が好きなんだ。無理数って、すごくたくさんあるんだよ。有理数――分数 で表せるような数字のことだよ――より多いんだ。この世界にはたくさんそういう数字があ って、例えば黄金比だってそうだし、とにかく謎めいていて素敵だと思うんだ。だって無限 に続くんだよ!まるで数字が生きているみたいじゃない?世の中が有理数だけで成り立って いたら、つまらないよ」 「――読み解けないものが好きだなんて意外だな」 ト゛ンの呟きにチャ―リーは首を傾げた。「そうかな?」 「もっと明確に答えが出るものが好きだと思ってた」 「――逆に言えば、もしかしたら僕が一番最初に謎を解けるかもしれない。それって素敵 だろ?……それに間違いという現象はないって考えが、僕は好きなんだ。人の解釈に誤りが あっても、現象自体には常になんらかの意味があると思いたいんだ。しかも終わりがないん だよ。……理解しがたくても、永遠に続くんだ」 「……なるほどな」 言わんとしていることが伝わったのが、ト゛ンが静かに頷いた。チャ―リーはほっとして ト゛ンの肩に頭を預け、数時間ぶりの彼の匂いを感じた。温かい肌や呼吸を感じていると、 髪をまた撫でられ、続いて指先が頬を掠めていく。視線を上げると、ト゛ンは穏やかな目を していた。チャ―リーはそれを見て、躊躇ってから言った。「――今日のことだけど――こ こに帰ってくるまで、知らない男といたんだ」 「……何?」 頬を撫でていた指先が止まり、ト゛ンの身体が強張ったのがわかった。チャ―リーは冷や 汗が浮かぶのを感じながら繰り返した。「知らない男と過ごしてたんだ。カジノで会ったん だよ。声を掛けてきて……」 ト゛ンが勢いよく立ち上がり、こぶしでテーブルを叩いた。「どういう意味なんだ?」 チャ―リーは乱暴な仕草に肩を一瞬揺らしたが、落ち着くように自分に言い聞かせた。「 わかるだろ?……ト゛ンが、ト゛ンが言ったとおりに努力しただけだよ。他の男とデートし ろって言った。だから……」 「四時までデートしてたっていうのか?知らない男と?チャ―リー、正気なのか?」 もう一度ト゛ンがテーブルを叩き、チャ―リーもまた肩を揺らした。ト゛ンはファックと 呟き、それから天井を見上げ、すぐに視線を戻した。「寝たんだな?」 チャ―リーは躊躇ってから目を逸らした。「どうして怒るんだ?ト゛ンが望んだことじゃ ないか」 「――くそっ!」 ト゛ンは怒鳴り、それからうろうろと歩き回り、テーブルにあったウィスキーを飲み干し た。そして繰り返した。「くそっ」 「……怒るのはおかしいよ」 小さな声で指摘すると、ト゛ンは大げさに頷いた。「ああ、そうかもな。だけど、なんだ ってお前は――自分がやったことをわかってるのか?チャ―リー、俺の目を見ろ。お前は本 当に……」 ト゛ンに肩を掴まれ、無理やり視線を重ねられた。チャ―リーが怖くなってすぐに目を逸 らすと、ト゛ンはもう一度目を見ろと言った。チャ―リーはそれに従わずに、ト゛ンの腕を 宥めるように擦った。「ト゛ン、怒らないで」 ト゛ンはその手を振り払いながら言った。「怒ってなんかいないさ。だけど答えてみろよ。 昨日俺たちがしたようなことをしたって言うのか?知らない男と?」 チャ―リーは俯いた。ト゛ンの手のひらは熱く、吐息に酒の香りが混じっている。答えが ないことに苛立ったのか、ト゛ンはチャ―リーの肩をもう一度掴み、ベッドに押し倒した。 チャ―リーの脚の間にト゛ンの身体が滑り込み、それに驚く間もなく耳をきつく噛まれたの で、思わず声を上げると、ト゛ンが名前を読んできた。「チャ―リー」 ト゛ンの目には怒りとそんな自分への戸惑いが滲んでいて、それを見たチャ―リーの胸に は罪悪感が浮かんだ。彼は手を伸ばし、ト゛ンの短髪を撫でてから言った。 「……怒ってる?」 「怒ってるわけじゃない。ただ……ただ……」 ト゛ンの手が震えている。チャ―リーは唇を引き結んでから、すぐに開いて言った。「好 きだよ。怒らないで。……嫌わないで」 そういってチャ―リーはト゛ンを抱き寄せた。ト゛ンの唇がじれったげに頬や首筋を掠め、 それからチャ―リーのそれに重ねられる。舌が咥内をかき回し、チャ―リーは場違いにもト ゛ンはやはりキスが上手いと思った。乱暴に服を脱がされ、いつもよりずっと恥ずかしい姿 勢を取らされ、貫かれたときにはチャ―リーも極度の興奮でわけがわからなくなっていた。 ト゛ンの太く、引き締まった腕に羽交い絞めされるような姿勢で揺さぶられ、そのくせト゛ ンは手でチャ―リーが達するのを妨げて焦らした。チャ―リーは何度もプリーズと言い、声 が掠れる頃にやっと許された。しかもその後も身体の隅々まで観察され、他の人間の痕跡が ないかを探られた。まるで捜査されてるみたいだ、とチャ―リーは思ったが、事件の捜査な どよりずっと性的な快感があることは確かだった。 何度も行為を繰り返すうちに、いつもより乱暴だったト゛ンの手も次第に穏やかな動きを 取り戻し、チャーリは前の晩にもそうしたようにト゛ンの上に跨ってキスを繰り返した。繋 がったままで自分から腰を揺らし、名前を呼ぶと上半身を起こしたト゛ンにきつく抱きしめ られた。 「ト゛ン、僕が他の人間と寝ると、嫉妬する?」 行為が終わったあとで抱き合いながらチャ―リーは聞いてみた。チャ―リーはそのことが 知りたかった。だがト゛ンは腕を自分のまぶたの上に落とし、呻いてみせた。「どうしてお 前はそうなんだ?」 「……答えてよ」 言うと、ト゛ンが眉を上げてみせた。事件が行き詰ったときによくそうするように、指先 で眉間を擦り、ため息を吐いてみせる。 「知りたいんだな?チャ―リー」 「……そうだね、知りたい」 小声でチャ―リーは肯定した。例えばチャ―リーはト゛ンが他の誰かと寝るのを想像する と、何も食べたくなくなる。胃が痛み、ト゛ンをどこかに閉じ込めてしまいたいとすら思う。 そういう感情がト゛ンにもあるのか、知りたいと思った。 ト゛ンは長い息を吐き、それから頷いた。「嫉妬する。これで満足か?」 「――自分にとってそれが苦痛なのに、僕にそれを勧めるのは何故?」 弟の言葉にト゛ンはまたため息を吐いた。「お前のためになると思うからだ」 でもそれは決して、会ったばかりのやつと簡単に寝ることじゃない。それは違う。わから ないのか?心配になるんだ。苦い声で言われ、チャーリーはせわしなく頷いて受け流した。 「僕のことを思って我慢してるの?僕は僕のためになるはずのことをすると、ト゛ンに苦 痛を与えるってこと?」 「――黙れチャ―リー。もう話したくない。あと数時間でホテルも出なきゃいけない。昼 近いんだぞ。もう俺は……とにかく眠りたいんだ」 ト゛ンはそう言って目を瞑った。長年の経験から、これ以上話しても無駄なことはわかっ ていたので、チャ―リーは話しかけるのをやめた。その代わり眠らずに、ずっとト゛ンを眺 めていた。ドンは何度も寝返りを打った。チャーリーは彼もまた眠っていないことを知っていた。 ト゛ンには悪いと思ったが、チャ―リーは幸せだった。彼は少し泣いた。 夕方に飛行機に乗る前に、ト゛ンとチャ―リーは踊った。郊外の小さなレストランで。誰 か見てるかもよ、とチャ―リーは言い、ト゛ンは誰か見てるかもな、と弟の言葉に頷いてみ せた。二人のステップはちぐはぐで、決して息が合ってるとは言えないものだったので、ト ゛ンは顔を顰めた。「これはもう既にダンスじゃない」 「いいだろ、別に。僕は楽しいよ」 そう言ってターンをすると、ト゛ンが苦笑したのでチャ―リーもほっとして笑い返した。 ダンスは確かに不恰好で、チャ―リーもこれだったら二人で事件を解決する方がずっといい と思った。お互いの足りないところを補い合え、やはりちぐはぐに見えるときはあるかもし れないが、最後には息の合ったところを周りにも見せられる。FBI捜査官のト゛ンと数学者の チャ―リー。こんなコンビは他にいない。まるでドラマのヒーローたちのようではないか? 踊りながらト゛ンがチャ―リーを見る目には、やはり悲しみとぎこちない愛情が見え隠れ し、チャ―リーはきっと自分がト゛ンを見るときもそうなのだろうと思った。お互いへの愛 ゆえに負い目を感じ、これは正しくない形の愛なのだとも思い、相手のために正しさを追求 しながらも、お互いへの愛も捨てられない。だが何が正しいかなど、誰にわかるだろう?普 通の兄弟がどんなものかを決めるのは誰なのか?ト゛ンとチャ―リーがその規範に収まらな いことを責められる人間などいるだろうか? 自分たちは兄弟で、お互いに代わりはいない。そして少なくとも今この瞬間は、二人とも 幸せなのだ。 そうは言ってもト゛ンが自分のために苦しむ要素は、少しでも減らしたいと思ったので、 帰りの飛行機の中でチャ―リーは思い切って勇気を出した。「ねえ、ト゛ン」 「なんだ?」 眠たげに雑誌を読んでいたト゛ンに問われ、チャ―リーは躊躇ってからわざとらしく微笑 んだ。「あの、実は言わなきゃいけないことがあるんだ」 「おいおいおい、何なんだ?もうやめてくれ」 ト゛ンが悲鳴まじりの声を上げ、周囲の乗客が彼に視線を向けたので、チャ―リーは慌て て声を潜めた。「悪いニュースじゃないと思うよ」 「嘘を吐け。お前に良い報せをもらったことなんてほとんどない」 チャ―リーはその言葉にむっとして顎を上げた。「何それ」 「いつもそうだろ?お前はいつもトラブルをもちこんでばかりで……」 「――トラブルなんて持ち込んでない!むしろ解決してあげてるだろ」 思わず声を上げると、また周囲の視線が集まり、近くにいたフライトアテンダントがうず うずと身体を動かしたので、チャ―リーは我に返ってまた声を潜めた。「――とにかく、悪 いニュースじゃなくて、むしろいいニュースで、でももしかしたらト゛ンが怒るかもってこ となんだけど……」 ト゛ンはそれを聞いて雑誌を伏せ、目を眇めた。 「いいニュースなのに俺が怒るのか?怪しいな」 「……っていうか最終的には喜ぶと思うよ。ただ衝撃を受けるかもしれないってだけ。だ から約束してほしいんだけど、怒らないって」 ト゛ンの片眉が意味深に上がるのを見ながら、チャ―リーは繰り返した。「……怒らない って約束してくれる?」 「……聞いていないのにどうやったら確約できる?」 尤もなことを言われれ、チャ―リーは苛立ちを覚えた。「いいから約束してよ」 ト゛ンがため息を吐く気配がした。数秒して、彼は言った。「わかった。約束する。だか ら言ってみろ」 チャ―リーはごくりと喉を動かしてから、ト゛ンの顔に自分の顔を近づけ、一層声を潜め て告白した。「昨日の話、嘘なんだ」 「――は?」 大声で問われ返され、チャ―リーは無意識のうちに身を仰け反らせた。するとト゛ンが素 早く腕を掴み、すぐ側まで引き戻して言った。「嘘?」 「嘘っていうか、よく思い出してほしいんだけど、僕は言わなかっただろ?セックスした って。ほら、例の知らない男のことだよ。ト゛ンは誤解、そう誤解してたみたいだけど……」 ひそひそ声で弁解すると、ト゛ンは信じられないものを見るような目つきで弟を見た。「 誤解?」 「――悪かったよ。でもほら、知ると気が楽になるかなって思って、やっぱり言わなきゃ なって……」 語尾が怪しくなり、チャ―リーはやがて口を閉ざした。隣のト゛ンがじっと見詰めてくる。 彼の眉間にはくっきりと皺が浮かんでいた。 「ごめんね」 小声でチャ―リーが言うと、ト゛ンは顔を引きつらせた。「――あれは嘘だっていうのか ?」 「嘘っていうか、誤解というか」 「騙したんだな?」 低い声で問い詰められ、チャ―リーは躊躇った後頷いた。「そう、騙したんだ。ごめん」 ジーザス。ト゛ンが呻き、飛行機の狭い天井を睨んでからすぐに頭を振った。「何故そん な馬鹿なことを?お前、俺がどれだけ――くそっ、どうりで跡も何も……」 「カジノで知らないやつに声を掛けられたのは事実なんだ。だから捏造ってわけじゃない。 ちょっとした演出……」 「それを言うなら脚色だろ!……信じられない。信じられない!」 ト゛ンは繰り返し、それから舌打ちをした。「チャ―リー、お前がやったことは馬鹿げて る上に不誠実だ」 「ト゛ン、ごめん。でも……でも不安だったんだ。ちゃんと求められているかどうか、ど うしても知りたかったんだ。僕は……そう、あの男に声を掛けられて、ちょっとだけ考えた んだ。……つまり、ト゛ンが誤解したようなことを。彼はト゛ンに似てて、感じもよかった し、なんていうか……誰かに優しくされたかったんだ。わかるだろ?……ト゛ンに似てたん だ」 ト゛ンは黙ってそれを聞いていた。チャ―リーは手のひらで座席の肘置きを落ち着きなく 握ったり話したりしながら、話を続けた。「……でもすぐにやっぱり嫌だって思った。だっ てト゛ンじゃないし。だから結局、朝になる前にホテルに帰ったんだ。他に、他に代わりは いないんだもの」 そう言ってからチャ―リーは乾いた唇を舐め、それから呟いた。「……ごめん」 返事がないことに不安を覚えて、チャ―リーは肘置きから視線を上げた。ト゛ンはまだじ っとチャ―リーを見詰めていた。 「……怒ってる?」 その言葉にト゛ンが呆れた様子で瞳をくるりと回した。「当たり前だろ」 「だけど、他に確かめようがなかったんだよ」 「――チャ―リー、お前は本当にガキだ。どうしようもない子供だ。信じられない、あん な……」 鋭くそう言い、それからト゛ンは唐突に喉の奥から笑いを零した。「本当にお前はガキだ よ。信じられない」 身を折り曲げるようにして、くつくつと笑う兄を、チャ―リーはただ眺めていた。チャ― リーにはどう反応すればいいのかわからなかった。ここで兄が笑うとは思っていなくて、や はりト゛ンのことはなかなか理解しきれないと思った。 もっと簡単にト゛ンの行動や感情のパターンを読めたらどんなにいいだろう。チャ―リー はそう思った。いつかはそういうものを見つけられるだろうか? 「……僕なりの背理法的証明だったんだけど」 チャ―リーの弁解にト゛ンは冷たく返した。「言ってろよ」 「……怒ってる?」 「当たり前」 「あのさ、じゃあどうして笑ってる?それって、それって――おかしくない?」 「おかしいのはお前だ」 「……嫌いになった?」 チャ―リーが問うと、ト゛ンは目を細めた。目尻に皺が浮かび、チャ―リーが好きなあの 表情になる。ト゛ンは笑いで涙が浮かんだらしいまなじりを乱暴に擦り、それから言った。 「自分で考えろ」 チャ―リーは言われたとおり暫く真剣に考えた。そしてともかくト゛ンが笑っているとい うことは、嫌われていないだろうという結論を出す頃には、カリフォルニアへの到着も近づ いていた。その間ト゛ンはずっと、本気で頭を悩ませる弟のことを、笑いながら見つめてい た。 終 ____________ | __________ | | | | | | | □ STOP. | | | | | | ∧_∧ マタテンプレズレチャッタヨ… | | | | ピッ (・∀・ ;) | | | | ◇⊂ ) __ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| | | °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || | 暗くて生ぬるい内容になっちゃいましたが 原作のこの二人の視線が絡み合うとき、 特にチャーリーは妙に思いつめた感じの表情のくせに、ドラマ自体は 家族団らん・ほのぼのムードでいつも終わるのが好きなのでした… 長々と失礼! #comment