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*藤松 [#p002e86c]
#title(藤松) [#p002e86c]
死帳ムービースレ268です。 
いつぞやは失礼しました。 
再うpじゃないけど、今度は藤松書いてみた。 
本スレは中の人萌えじゃない人もいるかもしれないので、こっちでうpします。 
|>PLAY  ◇⊂(・∀・ )   クウキヨマズニトウカシマース! 









『カット』 
拡声器越しに簡潔な言葉が掛かった途端、あたりがいきなりざわざわと騒がしくなった。 
チェックしまーす、という言葉と共に、スタッフが、モニターの前に集まったり、やれ照明の位置だの、やれ小道具のバミりだのに忙しなく動いている。 
それをぼんやりと眺めながら、藤稿はゆるりと頭を振った。 
舞台の方をより多く経験しているからか、こういった映像での切り替えにたまに頭がついていかないときがある。 
舞台では本番中の二時間強は常にその役に入り込めるからまだ楽だが、映像だと全てが順撮りなどは有り得ない。 
カットが掛かった瞬間に藤稿龍也に戻る為に、予想以上に体力を使うときがあった。 



頭の奥がぐらりと揺れた感覚がして、藤稿は頭を揺らすのをやめた。 
最近撮影し通しで睡眠不足な気も否めない。 
予想以上の観客動員数とその反応に、素直に嬉しい自分もいたが、それに伴い撮影と同時進行で増えるイレギュラーな仕事に少し疲れている自分がいるのも事実だった。 
特に取材などはほとんどが同じ質問である。 
どの質問にどう答えるか、台詞のように暗記してしまった部分もあった。 
ふう、と息をつく。同じシーンを撮っていた女優はいつの間にかいなくなっていた。前室にでも消えたのだろうか。 
話をして気を紛らわそうと考えていた藤稿はそれが叶わなくなったことに対しても息をついた。 
目頭に指をやり揉み解す。自分の髪型などを直しに寄ってきたスタイリストが、大丈夫?、と苦笑した。 
「最近こもりっぱなしだもんねぇ」 
「ちょっと病んできた」 
笑いながら冗談交じりに言葉を返すと、スタイリストが同調して明るく笑った。細い指が自分の前髪を軽く手直しする。 
撮影はしばらく休憩を挟まずに続く予定だ。集中力を維持するのは多少大変だが、困難ではない。 
それに自分の後輩だって同じ状況の中頑張っているのだ。自分が先に弱音を吐くわけにはいかなかった。 



スタイリストが離れていくのをなんとなく目で追っていると、ふと視線を感じた。その方向へと思わず視線を向ける。 
だが目が合った瞬間、ふい、と逸らされた。 
先に逸らしたその人物は、何事も無かったかのように飴玉を口に含んだ。 
口からはみ出た棒が、左右にころころと忙しなく動いている。 
藤稿はしばらくその棒を何の気なしに眺めていた。 
ころ‥、棒の動きが止まる。 
ゆっくりとその視線が上がって、それは再び藤稿と視線を合わせた。 
その右腕には自分とを繋いでいる銀の枷が、鈍く光を反射している。 
「‥‥‥、ま」 
つやま、と思わず呼びかけようとした藤稿の口は、だがその発声をすることはなかった。 
ふ、と視界が一瞬で真っ暗になったのである。 




瞬間的に何人かから上がった悲鳴と同時、弾かれたように、藤稿は辺りを見回した。 
『すいませーん、ちょっと、ブレーカーかわかんないですけど、ちょっとそのままでお願いしまーす、すいませーん』 
ざわめきの中、拡声器でそう伝えるスタッフの慌てた声がした。 
とりあえずそこまで大事な事ではないと認識して、藤稿は今度は安堵のため息をついた。 
が、それもつかの間だった。 
自分の左腕が、金属のこすれる音と共に引っ張り上げられたのだ。 
「え? う、わっ」 
少し間抜けな声を出して、藤稿は少しよろめいた。そのまま転倒するかと危ぶんだが、その前にぐい、と何かに腕を力強く引かれた。 
先よりも安定感のある強い力だったがそれでも何がなんだかわからないまま、思わず目を閉じる。瞬間何かに抱きつかれるような感覚に襲われた。 
「龍也さん」 
その、小さな声と共に。 



それに反射的に反応して、今度は目を見開いた。 
だが辺りは相変わらず暗いままで、今自分が一体どこでどういう格好で立っているのかあまりよく理解できないでいた。ただ、抱きついてきた何かは考える間もなく理解できた。 
「ま、つやま?」 
「ずるい」 
「え?」 
問い返しても、松岾はもうそれ以上口を開くことはなかった。 
ただ、藤稿に抱きついた細長い腕に力が込められるだけで。 
そういえば今日はよく、スタイリスト越しに目が合うことが多かったと思い立つ。それで何となく察知した藤稿は、苦笑交じりに呟いた。 
「‥毎日触ってんじゃん、お前も」 
くしゃりと髪を撫でてみた。撮影開始当初に比べてだいぶ伸びたその髪は、スプレーでセットされてるにも関わらず、すんなりと藤稿の手に馴染んだ。 
少しなだめるようなそれで触れたのだが、松岾は更に力を込めてきた。 



「、った、痛いって、松岾っ」 
「‥っと」 
「は?」 
いい加減怒るぞ、と松岾を引き離そうとした藤稿は、そのくぐもった声に眉を寄せた。藤稿の腹部に顔を埋めているらしい松岾は、埋めたまま、再び言った。 

「もっと、触っててください」 

それに少しだけ驚いた自分ががいた。 
藤稿は松岾を引き離そうとして宙に浮かせた手を、少し逡巡した後、ゆっくりと松岾の頭部に戻した。 
指の隙間に髪の毛が通る。 
辺りではスタッフが未だざわめいていて、誰に聞かれるかわからない、いつ電気がつくかわからない状況で、自分と松岾はこんなに密着していて。 
感じるのは。 
ふと伸ばした指で、松岾の額を手探りで掻き分けた。そのまま、唇を落とす。 
「藤稿さん!」 
瞬間名前を呼ばれて、体が反応した。 



ぎくりと脳に擬音語が聞こえた気分だった。まさかとは思うが、まさか、見られてしまったか? 
焦る藤稿に続けてスタッフの大きな声が聞こえた。だがそれは藤稿の杞憂に終わった。 
「松岾さんも、どこいますか? 大丈夫ですか、前室移動しますかー」 
どうやら気を利かせたスタッフが、自分たちを探してくれているらしい。だが声はまったく明後日の方角に投げられていて、藤稿は思わず含み笑いした。 
「大丈夫、じっとしとく。今龍也さんも隣にいるから」 
すかさず松岾が答えた。するとスタッフの誰かが、さすがLだ、などと答えて、周りのスタッフが笑った。 



その笑い声を尻目に、また藤稿は松岾に唇を落とした。今度は松岾もそれに応える。 
感じるのは。 
少しの背徳感と、少しの興奮。 
「‥お前、意外と甘えたなのな」 
囁くように藤稿が言うと、松岾は少しして、笑って言った。 
「遅いっすよ。‥今頃気付いたんですか?」 
そうして再び抱きついてきた松岾に、藤稿はその日何度目かのため息をつきながら、小さく笑った。 








□ STOP  ◇⊂( ・∀・  )ピッ イジョウデオワリデス!ナマモノナノデオナカコワサナイデネ! 
名前は伏せ字にしました。 
再うpじゃなくてスマソ 
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