Top/S-74

羽ト秋

すいません。調子ぶっこいてもう一本ト口イもの投下させてください。
もうこれでやめにしますんで、長いけど許してくださいよモララー。
萌えすぎて死にそうなんです。羽ト×秋です。

 「ア樹レス。朝だよ。剣を見てくれると約束した時間だ」
 軽快な足音と共にパト口ク口スが部屋に入ってくる。しまったと
思いつつも、寝起きの重たい身体を起こし、ア樹レスは年下の従兄
弟を寝台のうえから見つめた。
 側で寝ていた妾たちも何事かと目を擦る。それもそのはず、恋を
交わした翌朝は寝坊して心ゆくまで名残を惜しむのがするのが人と
いうもの。しかし今朝は、雄鶏が暁の訪れを告げたばかりという時
間に眠りを奪われてしまった。この従兄弟のせいで。
 パト口ク口スはおそらくいつものように、召使に取次ぎもせず、
勝手知ったるとばかりに上がってきたのだろう。慌てふためいた様
子で召使がパト口ク口スの後に佇んでいる。数時間前に眠りに落ち
たばかりのア樹レスは溜息を吐いて、枕に顔を埋めた。
 「……眠い」
 「知らないよ。僕は約束したとおりに来ただけだもの」
 「……下がれ」
 従兄弟にではなく、褥を共にした女たちに言うと、妾たちはほと
んど半裸姿で寝所を出て行った。側を通り過ぎる女体を見て、パト
口ク口スの頬が紅くなる。それを見て、ゆっくりと寝台から降りて、
服を纏い始めていたア樹レスは目を細めた。
 「……パト口ク口ス」
 「嫌らしいね。三人もの女たちと夜を過ごすなんて」
 パト口ク口スが尖った声で言う。漁色を責められるのは今に始ま
ったことではなかったので、ア樹レスは聞き流していた。
 「この間教えた型は覚えたんだろうな」
 「覚えているよ。けれど、ア樹レス」
 「男というのはたまには女が必要なんだ」

 
 従兄弟の金髪を宥めるように撫でると、パト口ク口スが眉を寄せ
てみせた。「……僕には許さないくせに」
 「当たり前だ。お前はまだ女の身体を覚えるには早すぎる」
 「けれどもう17だ」
 「知っている」
 「それならどうして。父上はいいと言ってくれたのに」
 「強くなりたいなら私の言うことを聞け」
 そう言いながらも、ア樹レスは内心溜息を吐いていた。実際のと
ころ、パト口ク口スもそろそろ女を抱いてもいい年齢だ。こういっ
たことは下手に初心なままでいれば、却ってそれが命取りになるこ
ともある。それはわかっていたが、ア樹レスはどうしてもパト口ク
口スが女を持つことを許す気にはなれない。
 もう17か。パト口ク口スと共に外に出て朝陽の下を歩きながら、
時が止まってくれればどんなにかよかっただろうと思う。そんな想
いとは裏腹に、ア樹レスの従兄弟は日に日に成長し、さらに美しく
なっていく。
 パト口ク口スほど美しい人間はいまいとア樹レスは思う。春の空
のような色の瞳も、無造作に束ねられた金髪も全てが美しい。毎日
ア樹レスが槍や剣の手合わせをしてやっているせいか、ア樹レスの
恋人だった少年時代にはほっそりとしていた腕や脚は少しずつ筋肉
をつけていっているものの、相変わらず若木のようにどこか可憐だ
った。
 ア樹レスは長くこの年下の従兄弟を恋人としてきた。求愛の印と
して数え切れないほどの雄鶏を贈り、慈しんだものだった。永遠に
このときが続くものと思われたのだが、惜しいかなそうもいかない。
パト口ク口スが長じるにつれて、少年愛の対象として扱われ続ける
ことが世間では不自然とされるようになってしまった。
 とうとうパト口ク口スが15になったとき、友であるオ出ュッセ臼
にもそのような扱いをア樹レスが続ければ、一人前の男として扱わ
れず恥をかくのはパト口ク口スなのだとさりげなく諭され、ア樹レ
スはこの年若い従兄弟の未来のために、しぶしぶ身を引いたのだ。

 しかしこうして少年期を過ぎても、相変わらず自分を慕ってくれ、
輝くばかりに成長していくパト口ク口スを間近で見ていると、捨て
たはずの劣情が疼くことがある。手を伸ばしそうになることもしば
しばで、そのたびにア樹レスは自分を戒め、他の少年なり美しい女
たちなりを抱いて欲望を収めていたのだった。
 それも知らずに。
 まったく無邪気なものだと、ア樹レスは懸命に剣を合わせてくる
従兄弟を見ながら思う。しなやかな身体は、確かにもう少年のよう
なそれではない。男のそれだ。けれど美しいことには変わりはない。
自分はおかしいのだろうかと思う。
 
 そのまま数時間剣を合わせ、そろそろ今日は終わりにしようかと
いうことになった。パト口ク口スが汗を拭くのをア樹レスがぼんや
りと眺めていると、その視線に気づいたパト口ク口スが首を傾げる。
 「何」
 「お前は美しい男になった」
 静かに答えると、パト口ク口スが紅くなってさっと俯いた。それ
を苦い気持ちで見つめる。今は自分が許さなくとも、あと数年もす
れば多くの女や少年が、彼を愛するようになるだろう。それを思う
と確かに嫉妬を感じるのだ。
 「僕はあの頃より成長した?」
 まだア樹レスの腕に抱かれていた頃より。その意味がわかって、
ア樹レスは頷いた。パト口ク口スは嬉しさと悔しさが入り混じった
表情をして呟く。
 「それでは何故いつまでも子供扱いするのかなあ」
 「――女のことなら」
 まだ早いと、そろそろ苦しくなってきた言い訳を繰り返そうとす
ると、パト口ク口スはかぶりを振った。「僕はもう子供じゃないよ。
あなたが僕の年の頃には、もうすっかり大人扱いされてたはずだ」
 「とにかく、まだお前には早い」

 苦々しさを隠しながらそう結論づけると、パト口ク口スはは
っきりと言った。 
 「僕だってたまに持て余すよ」
 何をと、聞かなくともわかる。笑い飛ばせばいいものを、ア樹レ
スは身体が熱くなるのを感じた。地面に腰を降ろしたまま黙ってい
るア樹レスに、パト口ク口スは身を乗り出すようにして囁いた。「
抱いてみたいんだ」
 「――女は駄目だ」
 「ケチ。それではどこかの」
 「少年も駄目だ……」
 こんな言葉で納得するはずはないと思いながら、ア樹レスは答え
る。するとパト口ク口スはふくれてみせた。「やっぱりいつまでも
子供のままだと思ってる」
 「思ってない」
 だからこんなに苦しい。いつまでも手元に置いておける少年のま
まならよかったのに、いつのまにかパト口ク口スは成長して、そし
ていつかは自分から離れて行ってしまうのだ。
 黙っていると、パト口ク口スもふてくされたように口を閉ざした。
その横顔を見て、ア樹レスは躊躇ったのちに低く問うた。
 「好きな女か少年でもできたか」
 「いいえ。今も変わらずあなたが好きだ。だけどア樹レスはもう
少年ではない僕には興味がないんだろ。ほんとにいやらしいよ。あ
なたは」
 乱暴な口調で言うと、パト口ク口スは立ち上がって剣を手に足早
に去っていく。ア樹レスは唖然としてそれを見守っていたが、我に
返って慌てて立ち上がり後を追った。
 「パト口ク口ス」
 肩を掴むと、パト口ク口スは涙目で睨んでみせた。
 「あなたに誰とも寝るなと言われれば僕は誰とも寝られない。嫌
われるのが怖いから。そして、あなたはもう僕とは寝ない。だけど
僕だって男なんだ。欲望を持て余すよ」

 「……パト口ク口ス。私は」
 「あなたは思いつく限りの女や少年と寝て楽しむ。もう僕のこと
なんて考えもしない」
 パト口ク口スは嫉妬している。ア樹レスはそれと悟り、従兄弟
の横顔を見ながら、密かに喜びに震えた。
 「違う。……今でもお前を愛している。誰より愛している」
 深い吐息とともにア樹レスは告白した。こんなに勇気のいること
は、他にないだろうと思った。どんな戦いよりも、この一言を言う
方がア樹レスには勇気がいることだった。
 パト口ク口スはその言葉を聞いて、驚いて足を止めた。
 「ア樹レス、それじゃあ」
 「だからお前が誰かと肌を合わせることを許せずにいたんだ」
 「でもあなたはもう僕とは寝ないのに。もうずっと」
 「……いつまでもそういう扱いをしていれば、お前が他の者に軽
んじられる」
 「そうか。僕のことを思ってくれてたんだね」
 頷くと、パト口ク口スはあどけなさすら残る笑みを浮かべた。
 「……それじゃあ僕はあなたの言うとおり女も少年も抱かない」
 「ああ、そうしてくれ」
 「でも欲望はどうすればいいの」
 意味がわからずア樹レスが視線を泳がせると、パト口ク口スは繰
り返した。「眠れないこともあるんだ。あなたのことを考えて」
 「……僕は本当のことを言えばあなたとしか寝たいと思ったこと
はないよ」
 なんとなく話の行く末がわかって、しかし信じられずにア樹レス
は黙っていた。
 「だから女も少年も抱かない。けどもう17だもの。自信をつけた
いよ」
 

 つまり自信をつけさせてくれと、パト口ク口スはア樹レスに言っ
ているのだ。勇猛果敢にして最強の英雄と囁かれるア樹レスに向か
って。ア樹レスは眩暈を感じた。
 「駄目?僕はあなたに抱かれたいと今でも思うし、同じくらい抱
いてみたいとも思ってたんだ」
 そもそもパト口ク口スがいい年をして男に抱かれていては、もの
笑いの種になると思って自分は身を引いた。それなのにその自分が
パト口ク口スに抱かれるとあっては、もし人に知られればどれほど
嘲笑されるか。――しかし。
 「ダメ?ア樹レス。あなたと寝たいんだ」
 パト口ク口スが腕を掴んで、囁くように言う。その掠れた声と汗
の香りに、ア樹レスは呆気なく自分が陥落するのを感じた。
 頷くと、パト口ク口スが華やかに笑う。そして少しだけ背伸びを
して、ア樹レスの耳にキスをした。「――嬉しいよ」

 人に見られはしないかと気を揉みながら、ア樹レスは寝所の雨戸
を閉めた。家族はもちろん、奴隷達にだってみられてはまずい。―
―ような気がする。
 今朝は乱れていた寝台の上の布は、奴隷の手によって美しく整え
られていた。パト口ク口スは心なしか頬を高潮させ、その寝台に腰
を掛けている。
 ア樹レスは全ての雨戸を閉め切ると、ほとんどしぶしぶといった
態度で従兄弟のものへ歩み寄った。途中ふと思いついて、自分が少
年を抱くときに使う香油を棚から取り出す。やれやれ、こんなもの
を使われるのは、まだ自分が少年だった20年近い昔以来だと思った。
 あの頃は勇猛な男に抱かれ愛されれば、それを誇りには思ったも
のの、決して行為自体を嬉しいとは感じなかった。少年だったア樹
レスが喜んだのはむしろ行為の後の夜伽話、英雄達が自らの戦場で
の経験を語ってくれたことで、抱かれることそのものには特に喜び
はなかったのだ。

 だからはっきり言って、今もア樹レスはこれからの行為への期待
はなかった。パト口ク口スに自信とやらをつけさせてやればいいの
であって、自身の快楽は問題ではないと思っていた。
 「ア樹レス、愛してる」
 だがこの年若い従兄弟に囁かれれば、何故か期待のようなものが
こみ上げる。それを持て余しつつア樹レスは服を脱ぐと、パト口ク
口スの手が促すままに寝台に腰を下ろし、パト口ク口スに口付けた。
 「私もお前を愛している」
 軽く舌を絡めた後囁けば、パト口ク口スはうっとりとした顔をし
てみせる。その表情に微笑んで、自分のそれより淡い色の金髪をゆ
っくりと撫でた。
 どうやら自分はこの従兄弟にはとことん甘いらしい。何をされて
も許してしまうだろう。仕方ないと腹を括って、香油の入った小瓶
を渡すと、パト口ク口スは一瞬きょとんとした顔をしてみせた。
 「……ああ」
 けれど流石に数年前までのことを思い出したらしく、頷いて小瓶
を受け取る。促すままに柔らかい織り布の上に横たわりながら、ア
樹レスは年上らしく言った。
 「言っておくが、苦痛を与えずに抱くのは難しいんだぞ。お前に
は一度も苦しい想いはさせなかったから知らないだろうが」
 「わかってる」
 眉を寄せ、怒ったようにパト口ク口スは言う。ア樹レスは覆い被
さってくるパトロ黒スの服を出来るだけ優しく脱がしながら、忠告を
続けた。
 「一人で意気込んではいけない。――まず優しくくちづけを」
 するものだ、と言うや否や、唇を奪われる。優しさとは程遠い、
荒々しいキスだったが、ア樹レスは自分でも驚くほど興奮した。
 「これでいいの」
 耳元で呟くパト口ク口スの声はどこか硬い。まるで知らない男の
ようで、ア樹レスはぎこちなく頷いた。するとパト口ク口スは少し
考えたあと、ア樹レスの耳を舐め、胸の突起に触れた。

「は……」
 それは驚くような快感だった。今までどんな女や少年と寝ても、
成人前、男に抱かれていた頃も、こんな快楽を感じたことはなかっ
た。思わず身を震わせると、パト口ク口スが顔を覗きこんできた。
 「気持ちいい?あなたがよくこうしてくれたのを思い出して」
 「……こういうときはあまり喋るものじゃない」
 やはりまだまだ子供だ。そうと思いながら言うと、不思議そうな
顔をしてみせる。
 「何故?愛してると囁かないと死にそうだ」
 「わかった。私も愛してるよ」
  笑って腰に手をまわす。パト口ク口スは嬉しげに頷いた。「う
ん。もっと言って」
  
 苦痛がないわけではなかったが、パト口ク口スの愛しているとい
う囁きはそれを消し飛ばしてしまった。結局パト口ク口スが欲望に
急いていたので、十分とは言えない愛撫のまま奥深くに迎えたもの
の、ア樹レス自身も目が眩むほど興奮していたのだ。
 自分の上で単純な律動を繰り返すパト口ク口スの薄い脇腹に触れ、
ア樹レスは低く呻いた。快楽が全身を駆け巡っていく。自分が欲し
かったのは、女でも少年でもない。この従兄弟だったのだと実感す
る。パト口ク口スはもう既にいつものあどけなさも吹き飛ばして、
一人の男として快楽を貪っている。ア樹レスもまた男としてそれを
受け止めながら、パト口ク口スを他の誰とも寝させたくないと思っ
た。
 パト口ク口スがア樹レスの体内で欲望を吐き出す。安堵し
たような溜息を吐いた後、気だるげな、けれど幸福そうな顔で、ア
樹レスのそれに触れて同じように終結を促されると、妙に照れくさ
くて興奮した。
 

 やがてゆっくりと引き抜き、パト口ク口スは上体を起こした。汗
ばんだ額に張り付いた髪を掻き上げる。ア樹レスは寝そべったまま、
その様子を見ていた。いつもよりどこか大人びた顔をしている従兄
弟を見ていると、乗り気でなかったこんな行為も悪くないと思う。
悪くないどころか、ひどく魅力的な行為なのだと知ってしまった。
「ア樹レス、愛してる。すごく素敵だった。綺麗で――昔男たち
が幼いあなたに夢中になったっていうのもわかるよ」
 パト口ク口スはそう言って深く口付ける。ア樹レスは黙っていた。
 「ア樹レス、愛してると言って」
 焦らしの戦法というのを年若い従兄弟は知らない。そういえば抱
いていた頃も猫かわいがりにしてきたから、焦らしたことなんてな
かったなと思いながら、ア樹レスはパト口ク口スを見つめた。
 「ア樹レス、さっきまでのように愛していると」
 じれったげに促す声に、ア樹レスはまだ細い腰を抱き寄せながら
笑った。きっと、こうしているとまたいつか自分はパト口ク口スを
抱いてしまう。抱かせてもしまう。溺れてしまうのは危険だと思ったが、
誘惑には抗えそうにない。どうしたものかとア樹レスは目を瞑った。
 「それとも、もう子供ではない僕にはやはり興味はないの。ア樹
レスは」不安げな声を、ア樹レスは目を閉じたまま遮った。
 
 

 「――私以外の誰とも寝るな。触れるな。そうしたら愛してやる」
 「――そんなのひどいや。あなたは色んな人と寝るくせに」
 「私はいいんだ。お前は駄目だ。お前は私のものだから。だから
他の者とは寝るな。ずっと私の……」
 これは命令ではなく、哀願なのだとア樹レスは自覚している。だ
けれど、パト口ク口スは気づいていないだろう。ア樹レスはパト口
ク口スの指に触れた。
 「……そうしたら何からも守ってやる」
 何からも。絶対に。そう思っていると。パト口ク口スが呟いた。
 「――ア樹レス、ア樹レス、でも僕もあなたを守る」
  ア樹レスは思わず微笑み、パト口ク口スを抱き寄せると、耳元
で愛していると囁いた。
 
 終

お目汚しスマソ。本当にモエな映画すぎて死にそうでした


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