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郷実×材前

「…痛いってば!」
佳子は材前の肩を叩くと火照った体を離した。
途端に冷たい空気が二人の間を通り抜ける。
「すまん」
材前は謝るとベッドに仰向けになり左手で顔を覆った。
ふう、と溜息をつくと佳子は頬杖をついて材前の顔を見下ろした。
「十代の男の子のお相手してるのかと思っちゃったわよ?」
「……そうか」乾いた笑いを含ませて材前は答えた。
「どうしたの…?そういう切羽詰まった五郎ちゃんも新鮮で可愛いけど」
教授選の方うまくいってないの?、佳子が耳もとで囁くと
「いや」材前はいつもの笑みを貼付けた。

「大丈夫か」
母親への仕送りをすませた帰り、廊下を歩いていると
材前はふと目眩に襲われた。
とっさに後ろから腕を引かれる。
郷実だった。
「ああ」材前は困ったように笑うと腕を振りほどく。
「顔色が悪いぞ」
寝てるのか?郷実は低い小さな声で囁いた。
「君がいうのか」
材前が言い返すと郷実は本当にすまない顔になって黙ってしまった。
よれよれの郷実の白衣。
ふと廊下の角から息せききった武内が顔をだした。
「郷実先生!急患です!」
「あ、ああ」
郷実は材前をちらりとみると、すまんと言い残し武内の後をおった。
郷実の白衣の背中が遠くなっていった。材前は何気なく手をのばした。
あの背中にさわりたかった。よれよれの白衣の背中。
抱きしめてほしい。
そんなことを思って材前は首を振った。
バカなことだ。

いつもの部屋。
郷実の滑らかな背中に材前は爪をたて、あられもない声をあげた。
自分から郷実を喰らいこむように貪欲に腰を動かす。
その日の材前は哀しいほどに必死だった。
汗でしっとりと濡れた材前の顔を郷実は両手で包んだ。
瞼に涙が滲んでいる。頬は薄紅に染まっている。
「もっと、もっと突いてくれ」
耳もとで囁かれる材前のうわ言。
もっと、もっと。おかしくしてくれ。
「君を壊してしまう」
郷実は腰を回すように材前の中を掻き回し、最もこの男が弱い部分を何度も突いた。
高く小さい喘ぎ声が材前の唇から断続的にもれる。
材前の瞳はどこか遠くを彷徨っている。
郷実は材前の胸の突起を、輪郭をなぞるように舐め、舌でころがした。
だんだんとぷっくりと突起は立ち上がり、ほのかに赤い色をみせる。
押しつぶす、ゆっくりと。そして手を伸ばす。
小ぶりな尻を手でつかみ揉みこむ。材前が小さく声をあげる。
柔らかい肉を回すように揉み、そして自分を喰わえこんでいる
皮膚の襞をゆっくりとなぞる。熱をもって敏感になっている。
郷実は腰の動きをとめて、襞を何度も擦った。
「あ、あ、あ…あ」
人さし指でゆっくりと円を一周すると材前は怒りを含ませた視線をよこす。
「じら…すな…」
腰の動きを再開させる。あっという間に材前は果てた。
体を弓なりにそらすとしばらく痙攣し、ぐったりと倒れこんだ。
お互いの息づかいだけが静かな部屋に漂っている。

郷実はすっかり材前の体に溺れていた。こんなに肉欲に支配されたことなど
今まで一度もなかった筈だ。しかもこの交わりには生産性もなく未来もない。
肩ごしにけだるげな材前の大きな瞳と目があう。
それだけで郷実は興奮し、また欲しくなる。
その欲の先にあるものはこんな簡単なものではないことは気付いていた。
郷実は材前の存在すべてに心を奪われようとしていた。
郷実の瞳の奥が揺れたのを材前は目ざとくみつけ、
赤い舌をちらりと口から覗かせるとたちまち郷実の中心に顔をよせた。
湿った卑猥な音をたてて、材前の舌は何回も行き来をする。
頭の中が真っ白になって郷実は馬鹿なことを口走りそうになる。
柔らかい材前の髪に指を埋め、掻き回す。
気持ちがいいなんてものじゃない。狂いそうだ。
材前の舌は完全に郷実の急所を捉えている。奥の実を指でさわさわと
刺激し、中心を口の奥まで頬張り喉で締め付けた。
薄目をあけると材前の白い双丘が薄く闇に浮かび上がり小刻みに揺れている。
郷実は吸い寄せられるように手を伸ばし、優しく撫であげ、
その奥に潜む小さな穴に指を滑り込ませる。
急な刺激に材前は驚き口の中のものに歯を立てた。
郷実は小さな痛みに顔をしかめたが、そのまま先ほどの余韻に濡れた
そこを愛撫しはじめた。中はしっとりとして温かい。
いつも冷たい表情を崩さない材前の中はこんなに温かい。
指の数を増やし、広げるように掻き回す。
材前の顔がいやらしく紅潮しはじめた。
鼻から高い息が漏れはじめる。乞うように郷実を見上げると
郷実は頷き、柔らかくなった材前のそこに自身をあて、一気に貫いた。
腰の動きに揺れながら材前は郷実の背中に腕をまわし、
肩に顎をあずけしなだれかかった。
材前の喘ぎを間近に聞き、皮膚を感じ、郷実は動きを一層強めた。
乱れた息のなか、静かな声で材前は囁いた。

「これで会うのは最後にしよう」
郷実は一瞬、何を言われたかわからず、いや、わからない振りをしただけかもしれない、
材前の体を離し、顔を覗き込もうとした。
しかし、材前は腕を郷実の首に巻き付け顔をあげようとしなかった。
体の中心はまだ疼いたままだった。
「わかっているだろうが、今、僕は…」
「教授選のことか」
「それだけじゃないが、そんなに余裕のある立場ではない」
材前の口調は硬く冷たく、温かい体温がそれを裏切っていた。
「君は、それでいいのか」
「ああ」
材前は動きを再開させるように郷実に目配せしたが、郷実は材前の瞳を見つめたまま、動こうをしなかった。
材前は溜息をつくと、むきになったように自分から腰を上下させた。たちまち快感が二人を包みはじめる。

材前の瞳は遠くをにらみ揺れている。
僕が欲しいもの。確実なものが欲しい。
それがなければ自分はこの世界に立っていられない、足下から崩れ落ちていく。
確実なもの、それは教授の椅子だ。権威だ。

郷実のよれよれの白衣の背中がフラッシュバックする。
腰から下が快感で溶けそうだ。
光の中で白衣が反射する。
あれが。あれが。欲しい。
郷実の背中。
行くな。

そんな弱い自分などいらない。

郷実の両頬に温かい透明な水が流れていた。
こんな哀しい目があるだろうか。

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