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郷実×材前

まただ。
材前の顔が快楽に歪む。濡れた唇を少し開き、目を細め短い呼吸をくり返す。
まもなく瞼を閉じ、顔を仰向かせ、いやいやをするように首を左右に振り始めるだろう。
イく直前の顔だ。
サイレンは確かに鳴っているのに止められない。
乱暴に欲望を打ち込む。その度に材前の体はガクガクと揺れる。
熱い、熱くて思考がまとまらない。俺は今何をしているんだ。
郷実は一心不乱に腰を打ち付ける。材前の白い胸が汗で光っている。
首筋に噛み付く。甘い汗。材前が薄く瞼を開く。
郷実が唇に手をやると、材前は一瞬下の名前を呟いた気がした。
そんな筈はない。俺は頭がおかしい。
揺れる材前の顔。人形のように小刻みに。
「………っ」
材前が短く高い悲鳴をあげた。
意識をとばした。くったりと動かなくなる。
みるみる体が冷たくなり死んだようになる。
郷実を恐怖が包んだ。体を繋げたまま、材前の頬を叩く。
意識はなかなか戻らない。叩き過ぎて頬は熱をもち始めた。
「材前!!」
珍しく、郷実は声を荒げた。

鈍く材前の瞳が開く。
「おい」郷実は肩を揺さぶった。
「……。また失神してしまったか」
「ああ」郷実はすまなそうに頷いた。
「我ながら、君と僕の体は大変相性がいいらしいな」
材前は皮肉っぽく笑った。
郷実は汗でべっとりとなった材前の前髪をかきあげる。
材前が目で諌めると郷実は今気がついたように材前の体からでていった。
そして沈黙が訪れた。

「修二…」
郷実はびくりとして振り向いた。
「と僕が呼んだと思ったか?」
材前はニヤリと笑った。
君がどんな顔をするかと思ってね。材前は煙草を一本とりだすと煙をくゆらせた。
「意地が悪いな」郷実は溜息をついた。
「先に僕に手をだしたのは君じゃないか」
郷実は言葉に詰まる。
「ああ。俺は最低のことをした。抱きたかったから君を抱いた」
煙草をもつ材前の手が止まった。
「君と俺の今までの関係を一瞬にして無にしてしまった」
最低だ、そう呟くと郷実は頭の後ろを掻きむしった。
「…でも次に君を誘ったのは僕だ」
煙草を灰皿で揉み消すと材前は吐き捨てた。
短い沈黙。紙屑がベッドから落ち、カサ、と乾いた音をたてた。

「何故、俺に抱かれるんだ?」
郷実は材前とは逆の方向を見つめながら言った。
「へんなこと聞くなよ。恋人気取りか」
材前は吹き出しながら答える。
「答えろ」強い口調でくり返す。
「君に抱かれると気がおかしくなるくらい気持ちいいだけさ」
麻薬みたいなものだな。女を抱くのとは全く違った感覚だよ。
やれやれといったように材前は言った。
「それだけか」
「不満か?」
「それだけなら…」
「君を…。僕のところまで引きずり落としてやろうと思ってね」
郷実はゆっくり振り向いた。郷実の顔を確認すると材前は続けた。
「いつも正しい郷実先生が僕の身体においたをして落ちていく様をみたいだけさ」
カチリと二人の視線がぶつかる。
どちらも哀しい瞳をしていた。

「それが本心か」郷実は疲れたように微笑んだ。
「なぁ、材前。本当のことをいってくれ」
五郎…。郷実は材前の肩に額を乗せた。
「本心だとも」
材前は言い切ると郷実の体を倒し、シーツに潜り込んだ。
足首から嘗めあげて股間のあたりを唇が彷徨うと一気に核心を口に含んだ。
「…っ」
郷実はたまらず息を飲んだ。
「おい、話はまだ…」郷実の呟きはかき消される。
「いつも僕は感じていたんだ。君の、僕を見る目は…」
シーツの中からくぐもった声が聞こえる。
「ある欲望をもっていたのさ」
濃厚な愛撫で郷実の中心ははやくも反応を示しはじめた。
それを確認するとシーツを剥ぎ取り、郷実の上にまたがり
自ら自分の中に招き入れた。
苦しそうに息をつめる材前の顔。
全て収まるとふうと息を吐き、ゆっくりと瞬きして郷実を見つめた。
郷実は瞬間にして紅潮した。
材前の白い肌が闇の中で鈍く浮かび上がる。
ゆっくりと腰を上下しはじめる。お互いの皮膚が擦れて
また頭が働かなくなる。快感が支配しはじめる。
材前は腰の動きを激しくしながら、うっとりと郷実を上から見下ろした。
「こうやって僕をめちゃくちゃに犯す欲望だよ」
「なにを…」

郷実は考えがまとまらない。何を言っているんだろう。
俺達は…。
材前は郷実の両手を掴むと背後に持っていき、自ら臀部をつかませた。
郷実の大きな手にすっぽりと包まれた小さな白い肉は
乱暴に揉みしだかれて薄く色付く。
郷実の腰も知らずに材前の動きにあわせて波打ちはじめる。
ある一点を探りあて、無意識にそこを突いてしまう。
材前の体が魚のように跳ねる。唇から唾液が滴り淫らな顔になる。
見ていられなくて郷実は吸い取るように口付けた。
逆に材前の体を倒し、上から覆いかぶさると郷実は材前の顎をつかむ。
快感を貪るのを中断されて材前はあからさまに舌打ちをする。
「お前がその気なら」あえて材前をお前というと郷実はしっかり材前の瞳を見つめた。
「本心を聞くまで俺はお前を抱き続ける」
材前の瞳の奥が驚きに揺れた。しかし、次の瞬間不敵に微笑むと郷実の耳に齧りつく。
「勝手にするさ」
もっと僕を悦がらせてみろよ。
材前は囁くと郷実の頭に両手をうずめ髪を掻き回し、首筋に舌を這わせた。
その夜はお互いの体が離れるまで材前は郷実の瞳を見ようとはしなかった。

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